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明細書 :気孔増加剤、ポリペプチド、植物における気孔の数および/または密度の増加方法ならびに植物の収量の増加方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5825574号 (P5825574)
登録日 平成27年10月23日(2015.10.23)
発行日 平成27年12月2日(2015.12.2)
発明の名称または考案の名称 気孔増加剤、ポリペプチド、植物における気孔の数および/または密度の増加方法ならびに植物の収量の増加方法
国際特許分類 C12N  15/09        (2006.01)
C07K  14/415       (2006.01)
A01H   5/00        (2006.01)
A01G   1/00        (2006.01)
FI C12N 15/00 ZNAA
C07K 14/415
A01H 5/00 A
A01G 1/00 301Z
請求項の数または発明の数 6
全頁数 81
出願番号 特願2011-545218 (P2011-545218)
出願日 平成22年12月7日(2010.12.7)
国際出願番号 PCT/JP2010/071934
国際公開番号 WO2011/071050
国際公開日 平成23年6月16日(2011.6.16)
優先権出願番号 2009278065
優先日 平成21年12月7日(2009.12.7)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成25年11月25日(2013.11.25)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
発明者または考案者 【氏名】西村 いくこ
【氏名】菅野 茂夫
【氏名】嶋田 知生
個別代理人の代理人 【識別番号】110000280、【氏名又は名称】特許業務法人サンクレスト国際特許事務所
審査官 【審査官】福澤 洋光
参考文献・文献 特表2002-512035(JP,A)
特表2002-527070(JP,A)
菅野茂夫, 他,気孔分化を促進する新規の分泌性ペプチド,第50回日本植物生理学会年会要旨集,2009年 3月16日,p.202
特許請求の範囲 【請求項1】
植物における気孔の数および/または密度を増加させる化合物を含有してなる気孔増加剤であって、
前記化合物が、(I)配列番号:6に示されるアミノ酸配列、
(II)配列番号:6において、1または数個のアミノ酸残基の置換、欠失、付加または挿入を有し、かつ植物における気孔形成を正に制御する性質を少なくとも有するポリペプチドを構成するアミノ酸配列、
(III)配列番号:6に示されるアミノ酸配列に対して、Cost to open gap 11、Cost to extend gap 1、expect value 10、wordsize 3の条件でBLASTアルゴリズムでアライメントし算出した配列同一性が、95%以上であり、かつコードされるポリペプチドが、植物における気孔形成を正に制御する性質を少なくとも有するアミノ酸配列、および
(IV)配列番号:6に示されるアミノ酸配列をコードする核酸の相補鎖核酸とストリンジェントな条件下にハイブリダイズする核酸によりコードされ、かつコードされるポリペプチドが、植物における気孔形成を正に制御する性質を少なくとも有するアミノ酸配列
からなる群より選ばれたアミノ酸配列からなるポリペプチドである、気孔増加剤。
【請求項2】
I)配列番号:6に示されるアミノ酸配列、
(II)配列番号:6において、1または数個のアミノ酸残基の置換、欠失、付加または挿入を有し、かつ植物における気孔形成を正に制御する性質を少なくとも有するポリペプチドを構成するアミノ酸配列、
(III)配列番号:6に示されるアミノ酸配列に対して、Cost to open gap 11、Cost to extend gap 1、expect value 10、wordsize 3の条件でBLASTアルゴリズムでアライメントし算出した配列同一性が、95%以上であり、かつコードされるポリペプチドが、植物における気孔形成を正に制御する性質を少なくとも有するアミノ酸配列、および
(IV)配列番号:6に示されるアミノ酸配列をコードする核酸の相補鎖核酸とストリンジェントな条件下にハイブリダイズする核酸によりコードされ、かつコードされるポリペプチドが、植物における気孔形成を正に制御する性質を少なくとも有するアミノ酸配列
からなる群より選ばれたアミノ酸配列からなるポリペプチド。
【請求項3】
植物に、請求項1に記載の気孔増加剤を接触させるか、または植物において、請求項のポリペプチドを過剰発現させることを特徴とする、植物における気孔の数および/または密度の増加方法。
【請求項4】
前記植物が維管束植物である、請求項に記載の植物における気孔の数および/または密度の増加方法。
【請求項5】
請求項またはに記載の植物における気孔の数および/または密度の増加方法により得られる植物。
【請求項6】
植物に、請求項1に記載の気孔増加剤を接触させるか、または植物において、請求項3のポリペプチドを過剰発現させることを特徴とする、植物の収量の増加方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、気孔増加剤、ポリペプチド、植物における気孔の数および/または密度の増加方法ならびに植物の収量の増加方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、植物による二酸化炭素の吸収量の増加などに有用な気孔増加剤、ポリペプチド、植物における気孔の数および/または密度の増加方法ならびに植物の生産量の向上などに有用な植物の収量の増加方法に関する。
【背景技術】
【0002】
葉における気孔の発生は、受容体様タンパク質〔トゥー・メニー・マウス(TOO MANY MOUTH);以下、「TMM」と表記する〕およびERECTAファミリー受容体型リン酸化酵素(ER、ERL1およびERL2)によって負に制御されている(例えば、非特許文献1および2参照)。
【0003】
これらの受容体に結合する可能性がある2つのリガンドであるエピダーマルパターニングファクター〔EPIDERMAL PATTERNING FACTOR(以下、「EPF」と表記する)〕1およびEPF2は、負のシグナル伝達因子として、気孔の発生において、異なるステップに影響を与えている(例えば、非特許文献3~5参照)。また、別の負の制御因子であるズブチリシンタイプのプロテアーゼ〔ストマタル・デンシティー・アンド・ディストリビューション1(STOMATAL DENSITY AND DISTRIBUTION 1);以下、「SDD1」と表記する〕は、TMMに依存して機能していることが報告されている(例えば、非特許文献6参照)。
【先行技術文献】
【0004】

【非特許文献1】Nadeau, J. A. & Sack, F. D. Control of stomatal distribution on the Arabidopsis leaf surface. Science 296, 1697-1700 (2002)
【非特許文献2】Shpak, E. D., McAbee, J. M., Pillitteri, L. J. & Torii, K. U. Stomatal patterning and differentiation by synergistic interactions of receptor kinases. Science 309, 290-293 (2005)
【非特許文献3】Hara, K., Kajita, R., Torii, K. U., Bergmann, D. C. & Kakimoto, T. The secretory peptide gene EPF1 enforces the stomatal one-cell-spacing rules. Genes Dev. 21, 1720-1725 (2007)
【非特許文献4】Hunt, L. & Gray, J. E. The signaling peptide EPF2 controls asymmetric cell divisions during stomatal development. Curr. Biol. 19, 864-869 (2009)
【非特許文献5】Hara, K. et al. Epidermal cell density is autoregulated via a secretory peptide, EPIDERMAL PATTERNING FACTOR 2 in Arabidopsis leaves. Plant Cell Physiol. 50, 1019-1031 (2009)
【非特許文献6】Berger,D.&Altmann, T. Asubtilisin-like serine protease involved in the regulation of stomatal density and distribution in Arabidopsis thaliana. Genes Dev. 14,1119-1131 (2000)
【発明の概要】
【0005】
しかしながら、本発明者らは、現時点では、植物における気孔の発達を正に制御し、植物における気孔の数および/または密度を増加することができるシグナル伝達因子を具体的に記載した文献を発見していない。
【0006】
本発明は、前記従来技術に鑑みてなされたものであり、植物における気孔の数および/または密度を増加することができる、気孔増加剤、ポリペプチドならびに植物における気孔の数および/または密度の増加方法を提供することを目的とする。また、本発明は、植物の収量を簡便に増加させることができる、植物の収量の増加方法を提供することを目的とする。
【0007】
すなわち、本発明の要旨は、
(1) 植物における気孔の数および/または密度を増加させる化合物を含有してなる気孔増加剤であって
記化合物が、(I)配列番号:6に示されるアミノ酸配列、
(II)配列番号:6において、1または数個のアミノ酸残基の置換、欠失、付加または挿入を有し、かつ植物における気孔形成を正に制御する性質を少なくとも有するポリペプチドを構成するアミノ酸配列、
(III)配列番号:6に示されるアミノ酸配列に対して、Cost to open gap 11、Cost to extend gap 1、expect value 10、wordsize 3の条件でBLASTアルゴリズムでアライメントし算出した配列同一性が、95%以上であり、かつコードされるポリペプチドが、植物における気孔形成を正に制御する性質を少なくとも有するアミノ酸配列、および
(IV)配列番号:6に示されるアミノ酸配列をコードする核酸の相補鎖核酸とストリンジェントな条件下にハイブリダイズする核酸によりコードされ、かつコードされるポリペプチドが、植物における気孔形成を正に制御する性質を少なくとも有するアミノ酸配列
からなる群より選ばれたアミノ酸配列からなるポリペプチドである、気孔増加剤、
) (I)配列番号:6に示されるアミノ酸配列、
(II)配列番号:6において、1または数個のアミノ酸残基の置換、欠失、付加または挿入を有し、かつ植物における気孔形成を正に制御する性質を少なくとも有するポリペプチドを構成するアミノ酸配列、
(III)配列番号:6に示されるアミノ酸配列に対して、Cost to open gap 11、Cost to extend gap 1、expect value 10、wordsize 3の条件でBLASTアルゴリズムでアライメントし算出した配列同一性が、95%以上であり、かつコードされるポリペプチドが、植物における気孔形成を正に制御する性質を少なくとも有するアミノ酸配列、および
(IV)配列番号:6に示されるアミノ酸配列をコードする核酸の相補鎖核酸とストリンジェントな条件下にハイブリダイズする核酸によりコードされ、かつコードされるポリペプチドが、植物における気孔形成を正に制御する性質を少なくとも有するアミノ酸配列
からなる群より選ばれたアミノ酸配列からなるポリペプチド、
) 植物に、前記(1)に記載の気孔増加剤を接触させるか、または植物において、前記()のポリペプチドを過剰発現させることを特徴とする、植物における気孔の数および/または密度の増加方法、
) 前記植物が維管束植物である、前記()に記載の植物における気孔の数および/または密度の増加方法、
) 前記()または()に記載の植物における気孔の数および/または密度の増加方法により得られる植物、ならびに
) 植物に、前記(1)に記載の気孔増加剤を接触させるか、または植物において、前記()のポリペプチドを過剰発現させることを特徴とする、植物の収量の増加方法
に関する。
【0008】
本発明の気孔増加剤、ポリペプチドならびに植物における気孔の数および/または密度の増加方法によれば、植物における気孔の数および/または密度を増加することができるという優れた効果を奏する。したがって、本発明によれば、植物による二酸化炭素の吸収量の向上を図ることができるので、大気中における二酸化炭素量の低減に有用である。また、本発明によれば、二酸化炭素の吸収量の増大によって植物における炭素固定量を増大させることができるので、植物の収量の増量などを図ることができる。さらに、本発明の植物の収量の増加方法によれば、植物の収量を簡便に増加させることができるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明のポリペプチド(ストマジェン)およびその前駆体(ストマジェン前駆体)の構造を示す図である。
【図2】調製例2で得られた抗ストマジェン抗体のストマジェンに対する特異性を調べた結果を示す図面代用写真である。
【図3】(a)は試験例1において、野生株の成熟した第1葉の裏側表皮を観察した結果を示す微分干渉像の図面代用写真、(b)は試験例1において、ストマジェン発現抑制株10の成熟した第1葉の裏側表皮を観察した結果を示す微分干渉像の図面代用写真、(c)は試験例1において、ストマジェン過剰発現株10の成熟した第1葉の裏側表皮を観察した結果を示す微分干渉像の図面代用写真である。
【図4】試験例1において、野生型、ストマジェン発現抑制株2およびストマジェン過剰発現株2それぞれにおける子葉、茎および果実の表皮を観察した結果を示す微分干渉像ならびに葯の表皮を観察した結果を示す共焦点顕微鏡像の図面代用写真である。
【図5】試験例1において、ストマジェン遺伝子の発現様式と、子葉、果実および茎の各器官における気孔密度との関係を調べた結果を示すグラフである。
【図6】(a)は試験例1において、野生型における子葉の裏側の表皮を観察した結果を示す共焦点顕微鏡像の図面代用写真および(b)は試験例1において、ストマジェン過剰発現株10における子葉の裏側の表皮を観察した結果を示す共焦点顕微鏡像の図面代用写真である。
【図7】(a)は試験例1において、野生型における第1葉の表皮を観察した結果を示す共焦点顕微鏡像の図面代用写真および(b)は試験例1において、ストマジェン過剰発現pTMM::GFP株における第1葉の表皮を観察した結果を示す共焦点顕微鏡像の図面代用写真である。
【図8】試験例2において、発芽後18日目のpSTOMAGEN::GUS株の第9葉の横断切片を観察した結果を示す顕微鏡像の図面代用写真である。
【図9】(a)は試験例2において、葉原基におけるストマジェン遺伝子のアンチセンスプローブを用いたin situハイブリダイゼーション解析を行なった結果を示す顕微鏡像の図面代用写真および(b)は試験例2において、葉原基におけるストマジェン遺伝子のセンスプローブを用いたin situハイブリダイゼーション解析を行なった結果を示す顕微鏡像の図面代用写真である
【図10】(a)はストマジェン遺伝子を含む核酸におけるami-A、ami-BおよびdsRNAそれぞれの標的配列の位置を示す模式図、(b)は試験例3において、野生株、ストマジェン発現抑制株(ami-A)、ストマジェン発現抑制株(ami-B)およびストマジェン発現抑制株(dsRNA)それぞれの成熟した第1葉の裏側表皮を観察した結果を示す微分干渉像の図面代用写真、(c)は試験例3において、気孔密度とストマジェン遺伝子の相対発現量との関係を調べた結果を示すグラフである。
【図11】試験例4において、気孔密度とストマジェン遺伝子の相対発現量との関係を調べた結果を示すグラフである。
【図12】試験例5において、根、葉、茎、花芽および果実それぞれにおけるストマジェン遺伝子の発現の有無を調べた結果を示す電気泳動図の図面代用写真である。
【図13】(a)は試験例6において、pSTOMAGEN::GUS株の発芽後2日目におけるストマジェン遺伝子のプロモーターの発現を解析した結果を示す図面代用写真、(b)は試験例6において、pSTOMAGEN::GUS株の発芽後9日目におけるストマジェン遺伝子のプロモーターの発現を解析した結果を示す図面代用写真および(c)は試験例6において、pSTOMAGEN::GUS株の発芽後16日目におけるストマジェン遺伝子のプロモーターの発現を解析した結果を示す図面代用写真である。
【図14】試験例7において、ストマジェン遺伝子の発現様式と、気孔密度との関係を調べた結果を示すグラフである。
【図15】試験例8において、FM4-64で染色したストマジェン-Venus発現株の発芽後3日後の子葉の裏側表皮を観察した結果を示す共焦点顕微鏡像の図面代用写真である。
【図16】(A)は試験例8において、FM4-64で染色したSP-Venus発現株の発芽後3日後の子葉の裏側表皮を観察した結果を示す共焦点顕微鏡像の図面代用写真および(B)は試験例8において、FM4-64で染色したLti6b-GFP株の発芽後3日後の子葉の裏側表皮を観察した結果を示す共焦点顕微鏡像の図面代用写真を示す。
【図17】実施例2において、ストマジェン-Venus発現株から得られた画分について、抗ストマジェン抗体を用いたウエスタンブロット解析を行なった結果を示す図面代用写真である。
【図18】実施例2において、ストマジェン-VenusのN末端アミノ酸配列を解析した結果を示すグラフである。
【図19】(a)は実施例2において、リジルエンドペプチダーゼを用い、質量分析によってストマジェン-VenusのN末端アミノ酸配列を解析した結果を示すグラフおよび(b)は実施例2において、トリプシンを用い、質量分析によってストマジェン-VenusのN末端アミノ酸配列を解析した結果を示すグラフである。
【図20】実施例2において、Clustal Wによるストマジェンのイネ(Oryza sativa(Os01g0914400))、ブドウ(Vitis vinifera(AM444732))、ポプラ(Populus trichocarpa(Pt02g2557))およびイヌカタヒバ(Selaginella moellendorffii(Sm084711))それぞれにおけるオーソログのマルチプルアライメントの結果を示す図である。
【図21】実施例3において、ストマジェン発現BY-2細胞の培養物について、抗ストマジェン抗体を用いたウエスタンブロット解析を行なった結果を示す図面代用写真である。
【図22】実施例3において、逆相HPLCカラムを用いたストマジェンの精製を行なった際のクロマトグラムである。
【図23】実施例3において、逆相HPLCカラムを用いたクロマトグラフィーの各画分について、SDS-PAGEによって解析した結果を示す電気泳動図の図面代用写真である。
【図24】実施例3において、10~13番目の画分に含まれるストマジェンのN末端アミノ酸配列をエドマン分解によって解析した結果を示す図である。
【図25】実施例3において、精製された組換えストマジェンの電気泳動図の図面代用写真である。
【図26】(a)は実施例4において、精製組換えストマジェンを投与していないLti6b-GFP発現株の子葉の裏側表皮の共焦点顕微鏡像の図面代用写真および(b)は実施例4において、精製組換えストマジェン(2μM)を投与したLti6b-GFP発現株の子葉の裏側表皮の共焦点顕微鏡像の図面代用写真である。
【図27】実施例6において、合成ストマジェン量と気孔密度との関係を調べた結果を示すグラフである。
【図28】(a)は試験例9において、精製組換えストマジェンを投与していないspch変異株の子葉の裏側表皮の共焦点顕微鏡像の図面代用写真、(b)は試験例9において、精製組換えストマジェン(2μM)を投与したspch変異株の子葉の裏側表皮の共焦点顕微鏡像の図面代用写真、(c)は試験例9において、精製組換えストマジェン(2μM)を投与した野生株の子葉の裏側表皮の共焦点顕微鏡像の図面代用写真、(d)は試験例9において、spch変異株の子葉の裏側表皮を観察した結果を示す微分干渉像の図面代用写真、(e)は試験例9において、ストマジェン過剰発現spch変異株の子葉の裏側表皮を観察した結果を示す微分干渉像の図面代用写真、(f)は試験例9において、ストマジェン過剰発現株の子葉の裏側表皮を観察した結果を示す微分干渉像の図面代用写真である。
【図29】(a)は試験例10において、植物体の種類と茎における気孔密度との関係を調べた結果を示すグラフ、(b)は試験例10において、植物体の種類と葉における気孔密度との関係を調べた結果を示すグラフである。
【図30】(A)は試験例10において、野生株、ストマジェン発現抑制株、ストマジェン過剰発現株、tmm変異株、ストマジェン発現抑制tmm変異株およびストマジェン過剰発現tmm変異株それぞれの第1葉の裏側表皮を観察した結果を示す微分干渉像の図面代用写真、(B)は試験例10において、野生株、ストマジェン発現抑制株、ストマジェン過剰発現株、tmm変異株、ストマジェン発現抑制tmm変異株およびストマジェン過剰発現tmm変異株それぞれの茎を観察した結果を示す微分干渉像の図面代用写真である。
【図31】試験例11において、植物体の種類と気孔密度との関係を調べた結果を示すグラフである。
【図32】試験例11において、植物体の種類と非気孔細胞密度との関係を調べた結果を示すグラフである。
【図33】試験例11において、植物体の成熟した第一葉の裏側表皮を観察した結果を示す微分干渉像の図面代用写真である。
【図34】試験例12において、ストマジェン遺伝子の発現様式と光合成速度との関係を調べた結果を示すグラフである。
【図35】試験例12において、ストマジェン遺伝子の発現様式と気孔コンダクタンスとの関係を調べた結果を示すグラフである。
【図36】試験例13において、植物体の種類と気孔密度との関係を調べた結果を示すグラフである。
【図37】試験例13において、ストマジェン過剰発現ダイズの葉を観察した結果を示す微分干渉像の図面代用写真を示す。
【図38】試験例13において、ダイズ(カリユタカ)〔野生株〕の葉を観察した結果を示す微分干渉像の図面代用写真を示す。
【図39】(a)は試験例14において、合成ストマジェンを投与したイネの第2葉の裏側表皮の微分干渉顕微鏡像の図面代用写真および(b)は試験例14において、合成ストマジェンを投与していないイネの第2葉の裏側表皮の微分干渉顕微鏡像の図面代用写真を示す。
【図40】実施例8において、ストマジェン濃度と気孔密度との関係を調べた結果を示すグラフである。
【図41】試験例15において、野生株またはストマジェン発現抑制株に取り込まれた11CO2を測定した結果の図面代用写真である。
【図42】試験例16において、試料の種類と気孔密度との関係を調べた結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
1.本発明の気孔増加剤および本発明のポリペプチド
本発明の気孔増加剤は、植物における気孔の数および/または密度を増加させる化合物を含有していることを特徴とする。かかる気孔増加剤によれば、未分化の表皮細胞を、気孔を構成する孔辺細胞に分化させることができるので、植物における気孔の数および/または密度を増加させることができる。ここで、「植物における気孔の数の増加」とは、少なくとも野生型の植物における気孔の数よりも多いことをいい、「植物における気孔の密度の増加」とは、野生型の植物における気孔の密度よりも高い密度を有することをいう。気孔の数および密度の測定は、例えば、顕微鏡による観察などによって行なうことができる。

【0011】
本発明者らは、植物における気孔が、植物において、配列番号:6に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドを過剰発現させること、または植物に前記ポリペプチドを投与することによって増加し、かかるポリペプチドが、表皮細胞における気孔形成において、正の細胞間シグナル伝達因子として働くことを見出した。また、本発明者らは、かかるポリペプチドの前駆体が、気孔が発達する表皮細胞よりも内部の葉肉細胞において発現し、シグナルペプチド配列およびプロペプチド配列が切断され、未分化の表皮細胞の受容体TMMに対して、負の制御因子であるEPF2と競争的に結合することによって、当該未分化の表皮細胞を孔辺細胞に分化させ、気孔を形成することができることを見出した。本発明は、これらの知見に基づくものである。

【0012】
前記化合物としては、例えば、
(I)配列番号:6に示されるアミノ酸配列、
(II)配列番号:6において、1または数個のアミノ酸残基の置換、欠失、付加または挿入を有し、かつ植物における気孔形成を正に制御する性質を少なくとも有するポリペプチドを構成するアミノ酸配列、
(III)配列番号:6に示されるアミノ酸配列に対して、Cost to open gap 11、Cost to extend gap 1、expect value 10、wordsize 3の条件でBLASTアルゴリズムでアライメントし算出した配列同一性が、64%以上であり、かつコードされるポリペプチドが、植物における気孔形成を正に制御する性質を少なくとも有するアミノ酸配列、および
(IV)配列番号:6に示されるアミノ酸配列をコードする核酸の相補鎖核酸とストリンジェントな条件下にハイブリダイズする核酸によりコードされ、かつコードされるポリペプチドが、植物における気孔形成を正に制御する性質を少なくとも有するアミノ酸配列
からなる群より選ばれたアミノ酸配列からなるポリペプチド、前記ポリペプチドに基づく擬似化合物、前記ポリペプチドをコードする核酸に対応するプロモーターを正に制御する物質、ストマジェンの安定化に寄与する物質(例えば、ストマジェンを切断するプロテアーゼに対する阻害剤など)などが挙げられる。

【0013】
前記化合物が前記植物における気孔形成を正に制御する性質を有するかどうかは、例えば、被験対象の化合物を幼若植物に接触させ、数日間生育させ、得られた植物(「処理植物」ともいう)における気孔の密度や数を測定し、かかる処理植物における気孔の密度や数を、前記化合物を接触させていない植物における気孔の密度や数と比較することにより評価することができる。このとき、処理植物における気孔の密度や数が、前記化合物を接触させていない植物における気孔の密度や数に比べて多い場合、前記被験対象の化合物が前記植物における気孔形成を正に制御する性質を有すると評価することができる。

【0014】
なお、前記ポリペプチドは、植物内において過剰発現させることにより、植物における気孔形成を正に制御することもできる。したがって、本発明には、かかるポリペプチドも包含される。

【0015】
前記ポリペプチドは、前記アミノ酸配列を有しているため、植物において、未分化の表皮細胞の受容体TMMに作用して、当該未分化の表皮細胞から、気孔を構成する孔辺細胞への分化を促進し、植物における気孔の密度を増やすことができる。

【0016】
本発明には、前記植物における気孔形成を正に制御する性質を示すのであれば、前記(I)の配列番号:6に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドのバリアントも包含される。本明細書において、かかるバリアントとは、前記(II)~(IV)のいずれかのアミノ酸配列からなるポリペプチドをいう。

【0017】
前記(II)のアミノ酸配列において、「1または数個のアミノ酸残基の置換、欠失、付加または挿入」は、配列番号:6に示されるアミノ酸配列の内部、C末端およびN末端の少なくともいずれかに有している。ここで、「1または数個」とは、前記植物における気孔形成を正に制御する性質を示すポリペプチドを構成する程度の範囲の個数をいい、1~30個、好ましくは1~20個、さらに好ましくは1~10個、より好ましくは1~3個をいう。

【0018】
なお、前記置換は、前記植物における気孔形成を正に制御する性質を十分に確保する観点から、保存的置換が好ましい。かかる保存的置換としては、例えば、特定のアミノ酸残基と、疎水性、電荷、pK、立体構造上における特徴などに類似した機能を発揮するアミノ酸残基(以下、本明細書においては、類似アミノ酸残基ともいう)との置換などが挙げられる。前記保存的置換としては、より具体的には、例えば、グリシン残基およびアラニン残基の相互間での置換、バリン残基、イソロイシン残基およびロイシン残基の相互間での置換、アスパラギン酸残基、グルタミン酸残基、アスパラギン残基およびグルタミン残基の相互間での置換、セリン残基およびスレオニン残基の相互間での置換、リジン残基およびアルギニン残基の相互間での置換、フェニルアラニン残基およびチロシン残基の相互間での置換などが挙げられる。

【0019】
前記(III)のアミノ酸配列において、配列同一性は、前記植物における気孔形成を正に制御する性質を十分に確保する観点から、Cost to open gap 11、Cost to extend gap 1、expect value 10、wordsize 3の条件でBLASTアルゴリズムでアライメントし算出した値として、64%以上であり、好ましくは80%以上、さらに好ましくは95%以上、特に好ましくは100%である。

【0020】
前記(IV)において、「ストリンジェントな条件」とは、例えば、前記相補鎖核酸と、前記相補鎖核酸に対応するハイブリダイゼーション対象の核酸とを、ハイブリダイゼーション用溶液〔組成:6×SSC(組成:0.9M塩化ナトリウム、0.09Mクエン酸ナトリウム、pH7.0に調整)、0.5質量%ドデシル硫酸ナトリウム、5×デンハルト溶液、100μg/ml変性サケ精子DNA、50体積%ホルムアミド〕中で、室温、よりストリンジェントな条件として42℃以上、さらにストリンジェントな条件として60℃以上の温度で10時間インキュベーションし、つぎに、例えば、2×SSC、よりストリンジェントな条件として0.1×SSCのイオン強度条件下で、かつ室温、よりストリンジェントな条件として42℃以上、さらにストリンジェントな条件として60℃以上の温度で洗浄を行なう条件などが挙げられる。また、「相補鎖核酸」とは、前記配列番号:6に示されるアミノ酸配列をコードする核酸に対して完全に相補的な核酸をいう。

【0021】
本発明において、前記ポリペプチドは、前記植物における気孔形成を正に制御する性質を示すのであれば、前記(I)~(IV)のアミノ酸配列の一部からなるポリペプチドであってもよい。

【0022】
前記ポリペプチドは、例えば、ペプチド固相合成法などの化学合成法または前記ポリペプチドをコードする核酸を保持した細胞や細菌を用いる生物学的方法により製造することができる。これらのなかでは、安価で大量に前記ポリペプチドを製造できる観点から、前記生物学的方法が好ましい。

【0023】
前記生物学的方法に用いられる細胞としては、例えば、植物細胞(例えば、BY-2細胞などのタバコ培養細胞など)、酵母細胞、大腸菌、昆虫細胞などの適切な宿主細胞に本発明のポリペプチドをコードする核酸を発現可能に導入した組換え細胞などが挙げられる。前記生物学的方法では、かかる細胞を適切な培地で培養することにより、本発明のポリペプチドを製造することができる。

【0024】
前記ポリペプチドをコードする核酸としては、例えば、配列番号:6に示されるアミノ酸配列をコードする核酸またはその変異型核酸などが挙げられる。前記変異型核酸としては、前記(II)~(IV)のいずれかのアミノ酸配列をコードする核酸などが挙げられる。また、前記変異型核酸は、コードされるポリペプチドが、前記植物における気孔形成を正に制御する性質を示すのであれば、配列番号:6に示されるアミノ酸配列に対応する塩基配列に完全に相補的な塩基配列からなる核酸と前記したストリンジェントな条件下にハイブリダイズする核酸であってもよい。かかる核酸は、エレクトロポレーション法、リポフェクション法、トランスフェクション法、パーティクルガン法などにより前記宿主細胞に導入することができる。

【0025】
ポリペプチドに基づく擬似化合物としては、例えば、前記ポリペプチドに基づく疑似化合物であって、未分化の表皮細胞の受容体TMMに作用して、植物における気孔の数および/または密度を増加させる化合物などが挙げられる。なお、本明細書において、「ポリペプチドに基づく擬似化合物」の概念には、例えば、前記ポリペプチドにおける生理活性に寄与する部分の立体構造を基に設計されたペプチド化合物または非ペプチド化合物、前記ポリペプチドの一部からなるペプチドなどが包含される。

【0026】
また、「ポリペプチドをコードする核酸に対応するプロモーターを正に制御する物質」の概念には、前記プロモーターの活性を増加させる物質などが包含される。

【0027】
本発明の気孔増加剤は、前記化合物のみからなるものであってもよく、前記化合物と適切な助剤とを含むものであってもよい。

【0028】
本発明の気孔増加剤が、前記化合物と適切な助剤とを含むものである場合、当該気孔増加剤中の前記化合物の含有量は、適用対象になる植物やかかる気孔増加剤の用途に応じて適宜設定することができる。

【0029】
前記助剤としては、例えば、前記化合物が有する前記性質や立体構造を安定的に維持することおよび/または植物を維持するのに適した緩衝液、当該気孔増加剤の適用対象となる植物に前記化合物を取り込ませやすくする吸収促進剤、植物を生育するための培地などが挙げられる。

【0030】
前記緩衝液のpHは、当該気孔増加剤を植物に散布、噴霧などにより供給する場合には、前記化合物が有する前記性質や立体構造を安定的に維持するに適した範囲であればよく、例えば、好ましくはpH5.5~8.5、さらに好ましくはpH6~8、より好ましくはpH7.5付近である。また、前記緩衝液のpHは、幼若植物を当該気孔増加剤に浸漬して供給する場合には、例えば、好ましくはpH5~7、より好ましくはpH5.7付近である。

【0031】
前記吸収促進剤としては、例えば、葉などに前記化合物を付着させ、前記葉などと前記化合物との接触時間を長くすることができる程度の粘度を有する溶媒(例えば、多糖類の水溶液など)、葉の内部への前記化合物の浸透を促進する溶媒などが挙げられる。

【0032】
前記培地としては、植物の生育に適したものであればよい。

【0033】
2.植物における気孔の数および/または密度の増加方法
本発明の植物における気孔の数および/または密度の増加方法は、植物に、前述した気孔増加剤を接触させるか、または植物において、前述したポリペプチドを過剰発現させることを特徴としている。

【0034】
本発明の植物における気孔の数および/または密度の増加方法は、1つの側面では、植物に、前述した気孔増加剤を接触させることを特徴とする方法である(以下、「方法1」という)。方法1では、前記気孔増加剤を用いているので、未分化の表皮細胞を、気孔を構成する孔辺細胞に分化させ、植物における気孔の数および/または密度を増加させることができる。

【0035】
方法1において、植物と前記気孔増加剤との接触は、前記気孔増加剤を含む溶液(例えば、前記気孔増加剤と助剤としての培地を少なくとも含む気孔形成剤など)への植物の浸漬や、植物の葉、茎、萼、葯などに対する前記気孔増加剤の直接塗布、散布、噴霧などの操作により行なわれる。方法1においては、植物と前記気孔増加剤との接触を前記したような簡単な操作で行なうことができる。

【0036】
植物に接触させる前記気孔増加剤の量は、植物に形成させる気孔の量などに応じて適宜設定することができる。また、植物と前記気孔増加剤との接触時間は、植物の種類などに応じて、適宜設定することができる。

【0037】
かかる方法1を適用する対象となる植物は、気孔を有し、かつ前記気孔増加剤中に含まれる前記化合物が結合するレセプターを有する植物であればよい。前記植物は、気孔形成効果が大きいことから、維管束植物が好ましい。前記維管束植物としては、特に限定されないが、例えば、ダイズなどに代表されるマメ科植物、イネなどに代表されるイネ科植物、シロイヌナズナに代表されるアブラナ科植物、ブラックコットンウッドなどに代表されるヤナギ科植物、イヌカタヒバに代表されるイワヒバ科植物などが挙げられる。また、前記植物は、気孔形成効果が大きいことから、若い葉や葉芽を有することが好ましい。特に、植物を、前記気孔増加剤を含む溶液(例えば、前記気孔増加剤と助剤としての培地を少なくとも含む気孔形成剤など)に浸漬させる場合には、気孔形成効果が大きいことから、幼若植物(例えば、2~16日齢の植物など)が好ましい。

【0038】
さらに、本発明の植物における気孔の数および/または密度の増加方法は、他の側面では、植物において、前述したポリペプチドを過剰発現させることを特徴とする方法である(以下、「方法2」という)。方法2では、植物において、前記ポリペプチドを過剰発現させるので、未分化の表皮細胞を、気孔を構成する孔辺細胞に分化させ、植物における気孔の数および/または密度を増加させることができる。

【0039】
植物において、前記ポリペプチドを過剰発現させる方法(ポリペプチド過剰発現法)としては、例えば、方法2を適用する対象となる植物のプロトプラスト、カルスまたはリーフディスクに、本発明のポリペプチドをコードする核酸を、エレクトロポレーション法、パーティクルガン法、トランスフェクション法などで導入し、葉、根などに再分化させ、植物体を再生する方法などが挙げられる。葉への再分化は、例えば、プロトプラストの場合、該プロトプラストを固体栄養培地で培養して、細胞壁を合成させ、ついで、液体培地中で、激しく攪拌させながら、培養し、カルスを得、得られたカルスをオーキシンおよびサイトカイニンの存在下に培養することにより行なわれうる。また、カルスから葉への再分化は、例えば、低濃度のオーキシンと高濃度のサイトカイニンとの存在下に培養することにより行なわれうる。リーフディスクから葉の再分化は、例えば、リーフディスクを低濃度のオーキシンと高濃度のサイトカイニンとの存在下に培養することにより行なわれうる。前記葉への再分化の際に用いられる培地としては、植物の種類などに応じて適宜選択することができ、例えば、カルス誘導培地(1mg/Lインドール酢酸と1mg/Lベンジルアミノプリンとを含むMS培地)、シュート誘導培地(0.1mg/Lインドール酢酸と1mg/Lベンジルアミノプリンとを含むMS培地)などが挙げられる。なお、本明細書において、「過剰発現」とは、少なくとも野生型の植物における前記ポリペプチドの発現量よりも多く本発明のポリペプチドを産生することをいう。

【0040】
かかる方法2を適用する対象となる植物は、方法1を適用する対象となる植物と同様である。

【0041】
以上のように、本発明の気孔増加剤、ポリペプチド、植物における気孔の数および/または密度の増加方法によれば、植物における気孔、例えば、植物の葉、茎、萼、葯などにおいて、気孔形成を正に制御して、未分化の表皮細胞を孔辺細胞に分化させ、気孔の数および/または密度を増加することができる。したがって、本発明によれば、植物による二酸化炭素の吸収量の向上を図ることができるので、大気中における二酸化炭素量の低減に有用である。また、本発明によれば、二酸化炭素の吸収量の増大によって植物における炭素固定量を増大させることができるので、植物体としての収量の増量などを図ることができる。

【0042】
3.植物における気孔の数および/または密度の増加方法により得られる植物
前述した植物における気孔の数および/または密度の増加方法により得られる植物は、野生型の植物に比べて、気孔の数および/または密度が増加している。したがって、本発明の植物によれば、二酸化炭素の吸収量が向上しているので、大気中における二酸化炭素量を低減することが可能になる。また、本発明の植物によれば、二酸化炭素の吸収量の増大によって炭素固定量が増大しているので、収量の増量などを図ることができる。

【0043】
前記植物としては、気孔の数および/または密度の増加による効果が大きいことから、維管束植物が好ましい。前記維管束植物としては、特に限定されないが、例えば、ダイズなどに代表されるマメ科植物、イネなどに代表されるイネ科植物、シロイヌナズナに代表されるアブラナ科植物、ブラックコットンウッドなどに代表されるヤナギ科植物、イヌカタヒバに代表されるイワヒバ科植物などが挙げられる。

【0044】
4.植物の収量の増加方法
本発明の植物の収量の増加方法は、植物に、前述した気孔増加剤を接触させるか、または植物において、前述したポリペプチドを過剰発現させることを特徴としている。

【0045】
本発明の植物の収量の増加方法は、1つの側面では、植物に、前記気孔増加剤を接触させることを特徴とする方法である(以下、「方法3」という)。方法3では、前記気孔増加剤を用いているため、野生型の植物(野生株)と比べて、植物における気孔の数および/または密度を増加させることができ、植物における炭素固定量を増加させ、植物の収量を増加させることができる。また、かかる方法3では、例えば、前記気孔増加剤を植物に直接塗布、散布または噴霧することなどの簡単な操作を行なうことで、簡便に植物の収量を増加させることができる。

【0046】
植物と前記気孔増加剤との接触は、前記方法1における植物と前記気孔増加剤との接触と同様の方法により行なうことができる。また、植物に接触させる前記気孔増加剤の量および植物と前記気孔増加剤との接触時間は、前記方法1における植物に接触させる前記気孔増加剤の量および植物と前記気孔増加剤との接触時間と同様である。さらに、方法3を適用する対象となる植物は、前記方法1を適用する対象となる植物と同様である。

【0047】
本発明の植物の収量の増加方法は、他の側面では、植物において、前記ポリペプチドを過剰発現させることを特徴とする方法である(以下、「方法4」という)。方法4では、植物において、前記ポリペプチドを過剰発現させるので、前記ポリペプチドを過剰発現していない野生型の植物(野生株)と比べて、植物における気孔の数および/または密度を増加させることができ、植物における炭素固定量を増加させ、植物の収量を増加させることができる。

【0048】
植物における前記ポリペプチドの過剰発現は、前記方法2におけるポリペプチド過剰発現法と同様の手法により行なうことができる。方法4を適用する対象となる植物は、前記方法2を適用する対象となる植物と同様である。

【0049】
以上の説明したように、本発明の植物の収量の増加方法によれば、植物における炭素固定量を増加させ、植物の収量を増加させることができる。したがって、本発明の植物の収量の増加方法は、食糧の増産、植物による有用物質の生産量の増加などに有用である。

【0050】
5.気孔増加剤の評価方法
植物において、本発明のポリペプチドの発現量または当該ポリペプチドをコードする核酸の量を指標として、気孔増加剤を評価することができる。具体的には、被験物質を、本発明のポリペプチドを発現する細胞または当該細胞を少なくとも保持する植物と接触させ、前記被験物質の非接触時における前記ポリペプチドの発現量に対する前記被験物質の接触時におけるポリペプチドの発現量の変化、および前記被験物質の非接触時における前記ポリペプチドをコードする核酸の量に対する前記被験物質の接触時におけるポリペプチドをコードする核酸の量の変化の少なくとも1つを測定する。

【0051】
ここで、前記被験物質としては、特に限定されないが、例えば、無機化合物、有機化合物、植物や微生物の抽出物、動物代謝産物、微生物培養物などが挙げられる。前記被験物質は、そのまま用いてもよく、必要に応じて、溶媒に溶解させて用いてもよい。前記溶媒は、前記生理学的事象の測定に影響を与えない溶媒であることが好ましい。前記溶媒としては、例えば、生理的食塩水、水などが挙げられる。

【0052】
被験物質と前記細胞との接触は、前記被験物質を含む培地で前記細胞を培養することなどにより行なうことができる。また、被験物質と前記植物との接触は、前記被験物質を含む溶液に前記植物を浸漬させること、前記植物の葉、茎、萼、葯などに被験物質を直接塗布、散布、噴霧などをすることなどにより行なわれる。

【0053】
前記培地としては、前記細胞または植物が生育するのに適した成分〔例えば、グルコース、アミノ酸、ペプトン、ビタミンなど〕を含む培地であればよい。前記培地は、慣用の基本培地に前記成分を補った培地であってもよく、市販されている培地であってもよい。かかる培地は、細胞や植物の種類に応じて適宜選択することができる。

【0054】
また、前記溶液を構成する溶媒としては、前記細胞や植物を維持するに適した緩衝液などが挙げられる。

【0055】
植物に接触させる被験物質の量は、被験物質の種類に応じて適宜設定することができる。

【0056】
ポリペプチドの発現量の発現量は、前記ポリペプチドに結合する抗体を用い、例えば、ウエスタンブロット法、ELISA法などを行なうことにより測定することができる。また、核酸の量は、前記核酸に基づいて作製されたプローブを用いたサザンブロット法やノーザンブロット法、前記核酸に基づいて作製されたプライマー対などを用いたリアルタイムPCRなどにより測定することができる。

【0057】
かかる気孔増加剤の評価方法では、前記被験物質の非接触時における前記ポリペプチドの発現量に対して、前記被験物質の接触時におけるポリペプチドの発現量が多くなっている場合、および前記被験物質の非接触時における前記ポリペプチドをコードする核酸の量に対して、前記被験物質の接触時におけるポリペプチドをコードする核酸の量が多くなっている場合のそれぞれにおいて、被験物質が気孔増加剤であると評価することができる。
【実施例】
【0058】
以下、実施例などにより、本発明を詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例のみに限定されるものではない。
【実施例】
【0059】
なお、以下の実施例などにおいて、配列番号:6に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドを「ストマジェン」とも表記する。また、前記ストマジェンをコードする遺伝子を「ストマジェン遺伝子」とも表記する。さらに、配列番号:6に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドの前駆体であるポリペプチド(配列番号:1)についても、便宜的に、「ストマジェン」と表記することもある。
【実施例】
【0060】
(実施例1)
コンピュータによる遺伝子の探索(in silico screening)
シロイヌナズナのトランスクリプトームのデータベースATTED-II(ウェブページアドレス http://atted.jp/)と、プログラムとしてATTED-IIのToolにある「NetworkDrawer」とを用いてコンピュータによる遺伝子探索を行ない、TMM遺伝子、SDD1遺伝子およびEPF1遺伝子それぞれと共発現している遺伝子を検討した。遺伝子探索は、Function 3の中で[Execute]、[MR-rank method]および[top 300 genes in 22,263 genes]を選択する工程、At1g80080(TMM遺伝子)、At1g04110(SDD1遺伝子)およびAt2g20875(EPF1遺伝子)の3つの遺伝子を入力する工程、ならびに「submit」で解析する工程を行なうことにより実施した。
【実施例】
【0061】
かかる解析結果に基づいて、EPFファミリーに属するEPFL9遺伝子(At4g12970)という機能未知の遺伝子(ストマジェン遺伝子)に注目した。
【実施例】
【0062】
(調製例1)
プライマーのデザイン
以下の実施例などに用いるプライマーおよびその塩基配列を表1に示す。
【実施例】
【0063】
【表1】
JP0005825574B2_000002t.gif
【実施例】
【0064】
なお、プライマーCACC_amiA、プライマーP10ami1_I miR-s、プライマーP10ami1_II miR-a、プライマーP10ami1_III miR*s、プライマーP10ami1_IV miR*a、プライマーP10ami2_ImiR-s、プライマーP10ami2_IImiR-a、プライマーP10ami2_IIImiR*s、プライマーP10ami2_IVmiR*aおよびプライマーamiBは、ストマジェン遺伝子(遺伝子番号At4g12970)の発現抑制を行なうための人工マイクロRNAを含むヘアピン構造を形成する配列を作製するためのプライマーである。かかる人工マイクロRNAは、ストマジェン遺伝子の3’末端側のコーディング領域をターゲットにしている。人工マイクロRNAの設計には、マイクロRNAデザインプログラムWMD2〔ウェブアドレス http://wmd2.weigelworld.org/cgi-bin/mirnatools.pl〕を用いた。
【実施例】
【0065】
(調製例2)
ストマジェンに対する抗体の作製
シロイナズナCol-0系統(CS60000)〔野生株〕のゲノムDNAを鋳型とし、表1に示されたプライマーP10_FおよびプライマーP10_Rを用い、ストマジェンをコードしている領域をPCRで増幅した。その後、得られたPCR産物をベクター〔pET32(Novagen社製)に由来するベクター(文献23参照)〕に挿入した。得られた構築物を、大腸菌(Escherichia coli)BL21系統に導入し、ストマジェンを発現させた。
【実施例】
【0066】
前記大腸菌の発現産物を、アフィニティーカラム〔GEヘルスケア社製、商品名:Hi-Trap キレーティングカラム〕を用いたアフィニティークロマトグラフィーに供した後、陰イオン交換カラム〔GEヘルスケア社製、商品名:H-SP〕を用いたクロマトグラフィーに供して組換えタンパク質(ストマジェン)の精製を行なった。
【実施例】
【0067】
つぎに、得られた精製産物を、文献26の記載に従って、ウサギに注射した。その後、ウサギの血清を採取した。得られた血清から、ストマジェンに対する抗体(以下、「抗ストマジェン抗体」を得た。
【実施例】
【0068】
(調製例3)
タバコ培養細胞BY-2を用いた組み換えタンパク質の発現
ストマジェンと緑色蛍光タンパク質(以下、「GFP」という)との融合タンパク質(以下、「ストマジェン-GFP」という)およびEPF1とGFPとの融合タンパク質(以下、「EPF1-GFP」という)を、文献20に記載の方法に準じ、トマトモザイクウィルスによる発現ベクターと誘導型ウィルス感染システムを用いたタバコ培養細胞系を用いて作製した。
【実施例】
【0069】
まず、ストマジェンをコードするDNAを、シロイナズナCol-0系統(CS60000)〔野生株〕のゲノムDNAを鋳型とし、表1に示されたプライマーP10_FおよびプライマーP10Rを用いてPCRを行なうことにより得た。また、GFPをコードするDNAを、GFPのcDNAを鋳型とし、表1に示されたプライマーGFP-CfusF BstおよびプライマーGFP-CfusR Bstを用いてPCRを行なうことにより得た。ストマジェンをコードするDNAと、GFPをコードするDNAとを連結して、DNA構築物(以下、「ストマジェン-GFP DNA」という)を得た。つぎに、トマトモザイクウィルスベクターpBICER8-ToMV-C0.3-HuIFNγ-SRz22中のHuIFNγ遺伝子の領域を、ストマジェン-GFP DNAと置き換え、ストマジェン-GFPを発現させるためのベクター(以下、「ストマジェン-GFP発現ベクター」という)を得た。
【実施例】
【0070】
また、EPF1をコードするDNAを、シロイナズナCol-0系統(CS60000)〔野生株〕のゲノムDNAを鋳型とし、表1に示されたプライマーEPF1_FおよびプライマーEPF1_Rを用いてPCRを行なうことにより得た。EPF1をコードするDNAと、GFPをコードするDNAとを連結して、DNA構築物(以下、「EPF1-GFP DNA」という)を得た。つぎに、トマトモザイクウィルスベクターpBICER8-ToMV-C0.3-HuIFNγ-SRz22中のHuIFNγ遺伝子の領域を、EPF1-GFP DNAと置き換え、EPF1-GFPを発現させるためのベクター(以下、「EPF1-GFP発現ベクター」という)を得た。
【実施例】
【0071】
得られたストマジェン-GFP発現ベクターまたはEPF1-GFP発現ベクターを、エストロジェンで誘導される転写因子であるXVEを持つBY-2細胞に導入した。その後、文献20に記載の方法に従い、β-エストロジェンによる誘導を行なった。その後、細胞を回収し、破砕した。得られた破砕物を800rpmで3分間の遠心分離に供して、上清を得た。得られた上清からストマジェン-GFPまたはEPF1-GFPを含む画分を得た。
【実施例】
【0072】
(実験例1)
抗ストマジェン抗体の特異性の評価
調製例3で得られたストマジェン-GFPを含む画分およびEPF1-GFPを含む画分それぞれをSDS変性ポリアクリルアミドゲルに負荷し、SDS-PAGEを行なった。SDS-PAGE後のゲルと、抗ストマジェン抗体および抗GFP抗体それぞれとを用い、文献24に記載の方法に準じてウエスタンブロット解析を行ない、調製例2で得られた抗ストマジェン抗体の特異性を評価した。なお、抗ストマジェン抗体は、1/1000の濃度で用いた。二次抗体として、西洋ワサビペルオキシダーゼ結合型抗ウサギIgG-ヤギ抗体〔GEヘルスケア社製、商品名:NA934〕を1/5000の濃度で用いた。また、SDS-PAGE後のゲルをクマシーブリリアントブルー(CBB)で染色した。調製例2で得られた抗ストマジェン抗体の特異性を調べた結果を図2に示す。図中、矢印はストマジェン-GFPに対応するバンドの位置、アスタリスクは非特異的なバンドの位置を示す。
【実施例】
【0073】
図2に示された結果から、抗ストマジェン抗体は、ストマジェン-GFPに結合するが(図2のレーン6参照)、EPF1-GFPには結合しないことがわかる(図2のレーン5参照)。すなわち、抗ストマジェン抗体は、ストマジェン-GFPのみを認識し、EPF1-GFPを認識しないことがわかる。これに対し、抗GFP抗体は、ストマジェン-GFPおよびEPF1-GFPの両方に結合することがわかる(図2のレーン3および4参照)。すなわち、抗GFP抗体は、ストマジェン-GFPおよびEPF1-GFPの両方を認識することがわかる。
【実施例】
【0074】
(調製例4)
まず、以下のように操作を行ない、ゲートウェイ・クローニング・テクノロジー〔Gateway cloning technology{インビトロジェン(Invitrogen)}〕に基づくプラント・バイナリーベクター(Plant binary vector)を利用してストマジェン過剰発現用ベクターの作製を行なった。ストマジェンをコードするDNAを、シロイナズナCol-0系統(CS60000)のゲノムDNAを鋳型とし、表1に示されたプライマーP10_FおよびプライマーP10_Rを用いてPCRを行なうことにより得た。BPクロナーゼ〔インビトロジェン(Invitrogen)社製〕を用い、前記DNAをベクター〔インビトロジェン(Invitrogen)社製、商品名:pENTR/D-TOPO〕に導入した。その後、得られた構築物とLRクロナーゼとを用い、前記DNAを前記構築物からバイナリーベクターpB2GW7〔Gent大学VIBより供与〕に移しかえた。これにより、ストマジェン過剰発現用ベクターを得た。
【実施例】
【0075】
つぎに、ストマジェン過剰発現用ベクターをアグロバクテリウム(系統GV3101)に導入した。つぎに、得られたアグロバクテリウムをシロイヌナズナCol-0系統(ストック番号CS60000)に感染させることにより、前記DNAをシロイヌナズナCol-0系統に導入した。その後、得られたシロイヌナズナを生育させ、種子を採取した。採取された種子を、グルホシネートアンモニウム含有GM培地〔50μMグルホシネートアンモニウム、0.5質量%MSソルト、1質量%ショ糖、0.5質量%MES-KOH緩衝液(pH5.7)、0.5質量% ゲランガム〕に播種し、22℃で光量を一定に維持しながら生育させた。これにより、グルホシネートアンモニウム耐性の個体を選抜した。
【実施例】
【0076】
選抜された個体(T1)を、個体ごとに生育させて次世代の種子(T2)を得た。選抜された個体(T1)のうちの10番目の個体(T1)から得た種子をストマジェン過剰発現株10とした。選抜された個体(T1)のうちの2番目の個体(T1)から得た種子をストマジェン過剰発現株2とした。
【実施例】
【0077】
(調製例5)
人工マイクロRNAクローニング用プラスミドpRS300〔デトレフ・ウェイゲル(Detlef Weigel)博士より供与〕を鋳型とし、表1に示されたプライマーCACC_amiA、プライマーP10ami_1 miR-s、プライマーP10ami1_II miR-a、プライマーP10ami1_III miR-*s、プライマーP10ami1_IV miR*a、プライマーamiBを用いて人工マイクロRNA(amiRNA)を含むヘアピン構造を形成する配列からなるDNAを作製し、ベクター〔インビトロジェン(Invitrogen)社製、商品名:pENTR/D-TOPO〕に導入した。その後、得られた構築物とLRクロナーゼとを用い、前記DNAを前記構築物からバイナリーベクターpB2GW7〔Gent大学VIBより供与〕に移しかえた。これにより、ストマジェン発現抑制用ベクターを得た。
【実施例】
【0078】
つぎに、ストマジェン発現抑制用ベクターをアグロバクテリウム(系統GV3101)に導入した。つぎに、得られたアグロバクテリウムをシロイヌナズナCol-0系統(ストック番号CS60000)に感染させることにより、前記DNAをシロイヌナズナCol-0系統に導入した。その後、得られたシロイヌナズナを生育させ、種子を採取した。採取された種子を、グルホシネートアンモニウム含有GM培地に播種し、22℃で光量を一定に維持しながら生育させた。これにより、グルホシネートアンモニウム耐性の個体を選抜した。
【実施例】
【0079】
選抜された個体(T1)を、個体ごとに生育させて次世代の種子(T2)を得た。選抜された個体(T1)のうちの10番目の個体(T1)から得た種子をストマジェン発現抑制株10(STOMAGEN-RNAi)とした。選抜された個体(T1)のうちの2番目の個体(T1)から得た種子をストマジェン発現抑制株2とした。
【実施例】
【0080】
(調製例6)
ストマジェン過剰発現用ベクターを導入したアグロバクテリウム(系統GV3101)を、シロイヌナズナpTMM::GFP系統〔島根大学の中川強博士より供与〕に感染させたことを除き、調製例4と同様の操作を行ない、ストマジェン過剰発現pTMM::GFP株を得た。
【実施例】
【0081】
(試験例1)
植物の表現型に対するストマジェンの作用の評価
シロイナズナCol-0系統(ストック番号CS60000)〔野生株〕、調製例4で得られたストマジェン過剰発現株10および調製例5で得られたストマジェン発現抑制株10(STOMAGEN-RNAi)それぞれの成熟した第1葉を採取した。つぎに、前記第1葉を、固定液(エタノール:酢酸(体積比)=9:1)で7時間以上固定し、その後、抱水クロラール水溶液(抱水クロラール:水:グリセロール(体積比)=8:2:1)で透明化した。抱水クロラールを水で除いた後、1μg/mLサフラニン水溶液〔1μgサフラニン-O/mL水〕で気孔を染色した。その後、前記第1葉の裏側表皮を、微分干渉顕微鏡〔ツアイス(Zeiss)社製、商品名:Axioskop plus顕微鏡〕を用いて観察した。試験例1において、野生株の成熟した第1葉の裏側表皮を観察した結果を示す微分干渉像を図3(a)、試験例1において、ストマジェン発現抑制株10の成熟した第1葉の裏側表皮を観察した結果を示す微分干渉像を図3(b)および試験例1において、ストマジェン過剰発現株10の成熟した第1葉の裏側表皮を観察した結果を示す微分干渉像を図3(c)に示す。図中、スケールバーは50μmを示す。
【実施例】
【0082】
また、野生株、調製例4で得られたストマジェン過剰発現株2および調製例5で得られたストマジェン発現抑制株2それぞれの発芽後23日目の子葉、成長が終わった第2節間の茎、成熟した果実、一定の大きさの花についた葯をそれぞれ採取した。つぎに、前記と同様の操作を行なうことにより、前記子葉、茎および果実それぞれを、固定し、透明化した後、気孔を染色した。その後、前記子葉、茎および果実それぞれの表皮を、微分干渉顕微鏡〔ツアイス(Zeiss)社製、商品名:Axioskop plus顕微鏡〕を用いて観察した。また、前記葯の表皮を、共焦点顕微鏡〔ツアイス(Zeiss)社製、商品名:LSM510 META顕微鏡〕と488nmおよび544nmの40mW Ar/Krレーザーを用いて観察した。試験例1において、野生株、ストマジェン発現抑制株2およびストマジェン過剰発現株2それぞれにおける子葉、茎および果実の表皮を観察した結果を示す微分干渉像ならびに葯の表皮を観察した結果を示す共焦点顕微鏡像を図4に示す。図中、矢尻は、気孔を示す。また、図中、スケールバーは100μmを示す。
【実施例】
【0083】
また、シロイナズナCol-0系統(ストック番号CS60000)〔野生株〕、調製例4で得られたストマジェン過剰発現株2および調製例5で得られたストマジェン発現抑制株2それぞれの発芽後23日目の子葉、成熟した果実または成長が終わった第2節間の茎を採取した。つぎに、前記子葉、果実または茎の表面を、微分干渉顕微鏡〔ツアイス(Zeiss)社製、商品名:Axioskop plus顕微鏡〕を用いて観察し、0.22mm2の正方形の範囲における気孔の数を測定した。そして、気孔密度を算出した。なお、統計解析には、統計解析ソフトR(ウェブアドレス http://www.R-project.org)を用いた。試験例1において、ストマジェン遺伝子の発現様式と、子葉、果実および茎の各器官における気孔密度との関係を調べた結果を図5に示す。図中、レーン1は野生株、レーン2はストマジェン発現抑制株2およびレーン3はストマジェン過剰発現株2を示す。
【実施例】
【0084】
さらに、野生株および調製例4で得られたストマジェン過剰発現株10それぞれの発芽後2.5日目の子葉を採取した。つぎに、子葉を蛍光色素〔インビトロジェン(Invitrogen)社製、商品名:FM4-64〕で染色した。染色後の子葉の表皮を、共焦点顕微鏡〔ツアイス(Zeiss)社製、商品名:LSM510 META顕微鏡〕と488nmおよび544nmの40-mW Ar/Krレーザーを用いて観察した。試験例1において、野生株における子葉の裏側の表皮を観察した結果を示す共焦点顕微鏡像を図6(a)および試験例1において、ストマジェン過剰発現株10における子葉の裏側の表皮を観察した結果を示す共焦点顕微鏡像を図6(b)に示す。図6(a)および(b)それぞれにおいて、右上図は、右下図の四角で示した部分を拡大したものである。図中、水平方向のスケールバーは50μm、垂直方向のスケールバーは500μmを示す。
【実施例】
【0085】
また、野生株および調製例6で得られたストマジェン過剰発現pTMM::GFP株それぞれの発芽後5日目の第1葉を採取した。つぎに、前記第1葉の表皮を、共焦点顕微鏡〔ツアイス(Zeiss)社製、商品名:LSM510 META顕微鏡〕と488nmおよび544nmの40-mW Ar/Krレーザーとを用いて観察した。なお、共焦点顕微鏡での観察の際には、励起フィルター〔ツアイス(Zeiss)社製、商品名:BP450-490〕、ダイクロニックミラー〔ツアイス(Zeiss)社製、商品名:FT510〕、吸収フィルター〔ツアイス(Zeiss)社製、商品名:BP515-565〕を用いた。試験例1において、野生株における第1葉の表皮を観察した結果を示す共焦点顕微鏡像を図7(a)および試験例1において、ストマジェン過剰発現pTMM::GFP株における第1葉の表皮を観察した結果を示す共焦点顕微鏡像を図7(b)に示す。図中、スケールバーは50μmを示す。
【実施例】
【0086】
図3、図4および図5に示された結果から、At4g12970遺伝子、すなわち、ストマジェン遺伝子を過剰発現した場合(ストマジェン過剰発現株)、野生株やストマジェン発現抑制株と比べて、気孔が存在する様々な器官(葉、子葉、茎、果実、葯)において気孔密度が増加することがわかる。このような現象は、独立に作出した13系統のT2植物(各々7個体)で確認された。かかるストマジェン過剰発現株の表現型は、気孔密度が減少するという表現型を示すEPF1およびEPF2の過剰発現株(文献4-6)とは全く逆の表現型である。
【実施例】
【0087】
なお、ほとんどの双子葉植物では気孔同士は少なくとも一つの「非気孔細胞」によって隔てられており、そのパターンは、ガスの取り込みの効率を上げていると考えられている(文献12)。図3に示された結果から、ストマジェン遺伝子の過剰発現株の成長した葉では、クラスター化した気孔が多数存在する傾向があることがわかる。一方、図6および図7に示された結果から、未熟な子葉などでは、サテライトメリステモイド(気孔前駆細胞)が孔辺細胞やその前駆細胞に接していることがわかる。これらの結果から、ストマジェン過剰発現株では、気孔系列の細胞の細胞分裂の方向が野生株とは異なることに起因して、野生株とは異なる形態的特徴を示すことが考えられる。
【実施例】
【0088】
(試験例2)
(1)ストマジェン遺伝子の発現の局在性
ストマジェン遺伝子(STOMAGEN)の開始コドン上流2kbpの領域(プロモーター領域)のDNAを、シロイナズナCol-0系統(CS60000)のゲノムDNAを鋳型とし、表1に示されたプライマーP10_prom_FおよびプライマーP10_prom_Rを用いてPCRを行なうことにより得た。BPクロナーゼ〔インビトロジェン(Invitrogen)社製〕を用い、前記DNAをベクター〔インビトロジェン(Invitrogen)社製、商品名:pENTR/D-TOPO〕に導入した。その後、得られた構築物とLRクロナーゼとを用い、前記DNAを前記構築物からベクターpBGWFS7〔Gent大学VIBより供与〕に移しかえた。前記pBGWFS7は、プロモーターのためのリポーター遺伝子としてβ-グルクロニダーゼ(GUS)遺伝子を保持している。これにより、プロモーター発現用ベクターを得た。
【実施例】
【0089】
つぎに、プロモーター発現用ベクターをアグロバクテリウム(系統GV3101)に導入した。つぎに、得られたアグロバクテリウムをシロイヌナズナCol-0系統(ストック番号CS60000)に感染させることにより、前記DNAをシロイヌナズナCol-0系統に導入した。その後、得られたシロイヌナズナを生育させ、種子を採取した。採取された種子を、グルホシネートアンモニウム含有GM培地に播種し、22℃で光量を一定に維持しながら生育させた。これにより、グルホシネートアンモニウム耐性の個体を選抜した。
【実施例】
【0090】
選抜された個体(T1)を、個体ごとに生育させて次世代の種子(T2)を得た。得られた種子(T2)をpSTOMAGEN::GUS株とした。そして、発芽後18日目のpSTOMAGEN::GUS株の第9葉の横断切片を作製した。得られた横断切片を用い、ストマジェン遺伝子のプロモーターに基づくGUS活性の発現を調べた。なお、GUS活性の発現は、サンプルを4℃で7~10時間固定したことを除き、文献26に記載のGUS染色の手法と同様に操作を行なうことによって確認した。試験例2において、発芽後18日目のpSTOMAGEN::GUS株の第9葉の横断切片を観察した結果を示す顕微鏡像を図8に示す。
【実施例】
【0091】
図8に示された結果から、ストマジェン遺伝子のプロモーターに基づくGUS活性の発現は、主に葉肉組織に多く見られる傾向にあることがわかる。したがって、この結果から、ストマジェン遺伝子は、葉肉組織で発現していることが示唆される。
【実施例】
【0092】
(2)in situ ハイブリダイゼーション
シロイナズナCol-0系統(ストック番号CS60000)〔野生株〕の葉と、ストマジェン遺伝子(STOMAGEN)のcDNA(306bp)を標識したプローブ(センスプローブ)または前記cDNAに対応するアンチセンス鎖を標識したプローブ(アンチセンスプローブ)とを用い、in situ ハイブリダイゼーションを行なった。in situ ハイブリダイゼーションは、文献24に記載の手法と同様の操作により行なった。試験例2において、葉原基におけるストマジェン遺伝子のアンチセンスプローブを用いたin situハイブリダイゼーション解析を行なった結果を示す顕微鏡像を図9(a)および試験例2において、葉原基におけるストマジェン遺伝子のセンスプローブを用いたin situハイブリダイゼーション解析を行なった結果を示す顕微鏡像を図9(b)に示す。
【実施例】
【0093】
図9(a)および(b)に示された結果から、対照であるセンスプローブに起因するシグナルは検出できないのに対して〔図9(b)参照〕、アンチセンスプローブに起因するシグナルが葉肉組織に見られることがわかる〔図9(a)参照〕。
【実施例】
【0094】
これらの結果から、図6および図7で見られたストマジェン過剰発現株における形態的特徴は、ストマジェンの過剰発現に用いられたベクターに含まれる35Sプロモーターを使用したことにより、ストマジェン遺伝子が表皮細胞において過剰に発現したためであると考えられる。
【実施例】
【0095】
(調製例7)
調製例5において、表1に示されたプライマーP10ami1_I miR-s、プライマーP10ami1_II miR-a、プライマーP10ami1_III miR*sおよびプライマーP10ami1_IV miR*aの代わりに、表1に示されたプライマーP10ami2_ImiR-s、プライマーP10ami2_IImiR-a、プライマーP10ami2_IIImiR*sおよびプライマーP10ami2_IVmiR*aを用いたことを除き、調製例5と同様の操作を行ない、ストマジェン発現抑制株(ami-B)を得た。なお、ストマジェン発現抑制株(ami-B)では、人工マイクロRNAであるami-Bによってストマジェンの発現が抑制されている。ストマジェン遺伝子を含む核酸におけるami-Bの標的配列の位置は、図10(a)に示されるとおりである。
【実施例】
【0096】
(調製例8)
調製例5において、鋳型として、人工マイクロRNAクローニング用プラスミドpRS300の代わりに、シロイナズナCol-0系統(CS60000)のゲノムDNAを用いたこと、表1に示されたプライマーCACC_amiA、プライマーP10ami_1 miR-s、プライマーP10ami1_II miR-a、プライマーP10ami1_III miR-*s、プライマーP10ami1_IV miR*aおよびプライマーamiBの代わりに、表1に示されたプライマーP10_RNAi_FおよびプライマーP10_RNAi_Rを用いたことならびにバイナリーベクターpB2GW7〔Gent大学VIBより供与〕の代わりに、ベクターpB2GWI(2)WG7〔Gent大学VIBより供与〕を用いたことを除き、調製例5と同様の操作を行ない、ストマジェン発現抑制株(dsRNA)を得た。なお、ストマジェン発現抑制株(dsRNA)では、dsRNAによってストマジェンの発現が抑制されている。ストマジェン遺伝子を含む核酸におけるdsRNAの標的配列の位置は、図10(a)に示されるとおりである。
【実施例】
【0097】
(試験例3)
シロイナズナCol-0系統(ストック番号CS60000)〔野生株〕、調製例5で得られたストマジェン発現抑制株(ストマジェン発現抑制株10、「ami-A」ともいう)、調製例7で得られたストマジェン発現抑制株(ami-B)および調製例8で得られたストマジェン発現抑制株(dsRNA)それぞれの成熟した第1葉を採取した。つぎに、試験例1と同様の操作を行なうことにより、前記第1葉を、固定し、透明化した後、気孔を染色した。その後、前記第1葉の裏側表皮を、微分干渉顕微鏡〔ツアイス(Zeiss)社製、商品名:Axioskop plus顕微鏡〕を用いて観察した。試験例3において、野生株、ストマジェン発現抑制株(ami-A)、ストマジェン発現抑制株(ami-B)およびストマジェン発現抑制株(dsRNA)それぞれの成熟した第1葉の裏側表皮を観察した結果を示す微分干渉像を図10(b)に示す。図10(b)中、(I)は野生株、(II)はストマジェン発現抑制株(ami-A)、(III)はストマジェン発現抑制株(ami-B)および(IV)はストマジェン発現抑制株(dsRNA)を示す。また、図10(b)中、スケールバーは50μmを示す。
【実施例】
【0098】
また、シロイナズナCol-0系統(ストック番号CS60000)〔野生株〕、調製例5で得られたストマジェン発現抑制株(ami-A)、調製例7で得られたストマジェン発現抑制株(ami-B)および調製例8で得られたストマジェン発現抑制株(dsRNA)それぞれの発芽後5日目の第1葉を採取した。つぎに、前記第1葉の表面を、微分干渉顕微鏡〔ツアイス(Zeiss)社製、商品名:Axioskop plus顕微鏡〕を用いて観察し、0.22mm2の正方形の範囲における気孔の数を測定した。そして、気孔密度を算出した。なお、統計解析には、統計解析ソフトRを用いた。さらに、シロイナズナCol-0系統(ストック番号CS60000)〔野生株〕、調製例5で得られたストマジェン発現抑制株(ami-A)の独立した12系統、調製例7で得られたストマジェン発現抑制株(ami-B)の独立した12系統および調製例8で得られたストマジェン発現抑制株(dsRNA)の独立した4系統それぞれの発芽後5日目の第1葉におけるストマジェン遺伝子の発現量を測定した。また、対照として、前記第1葉におけるアクチン8遺伝子の発現量を測定した。発現量の測定は、鋳型として文献24に従って抽出したRNAと、リアルタイムPCR用キット〔ライフテクノロジー(Life Technology)社製、商品名:7500 Fast Real-Time PCR system〕と遺伝子発現アッセイ用キット〔ライフテクノロジー(Life Technology)社製、商品名:TaqMan gene expression assay kit〕とを用いたリアルタイムPCRによって行なった。用いられたTaqmanプローブの番号は、ストマジェン遺伝子の発現量の測定の場合、At02219575_g1、アクチン8遺伝子の発現量の測定の場合、At02270958_gHである。そして、アクチン8遺伝子に対するストマジェン遺伝子の相対発現量を算出した。相対定量のためにthreshold cycle法を用いた(文献25)。試験例3において、気孔密度とストマジェン遺伝子の相対発現量との関係を調べた結果を図10(c)に示す。図10(c)中、黒丸はストマジェン発現抑制株(ami-A)、黒三角はストマジェン発現抑制株(ami-B)、四角はストマジェン発現抑制株(dsRNA)を示す。また、図10(c)において、野生株は相対発現量1を示す。エラーバーは標準偏差を示す。
【実施例】
【0099】
図10(b)に示された結果から、ストマジェン発現抑制株(ami-A)、ストマジェン発現抑制株(ami-B)およびストマジェン発現抑制株(dsRNA)それぞれの成熟した第1葉は、図3に示されたストマジェン発現抑制株10と同様の表現型を示すことがわかる。また、図10(c)に示された結果から、ストマジェン遺伝子の相対発現量が1である野生株に対して、ストマジェン遺伝子の相対発現量が1未満であるストマジェン発現抑制株(ami-A)、ストマジェン発現抑制株(ami-B)およびストマジェン発現抑制株(dsRNA)では、気孔密度が著しく低いことがわかる。これらの結果から、ストマジェン遺伝子は、気孔の発生に必要であるということが示唆される。
【実施例】
【0100】
(試験例4)
シロイナズナCol-0系統(ストック番号CS60000)〔野生株〕、調製例4で得られたストマジェン過剰発現株10および調製例5で得られたストマジェン発現抑制株10それぞれの発芽後23日目の成熟した第1葉を採取した。つぎに、前記第1葉の表面を、微分干渉顕微鏡〔ツアイス(Zeiss)社製、商品名:Axioskop plus顕微鏡〕を用いて観察し、0.22mm2の正方形の範囲における気孔の数を測定した。そして、気孔密度を算出した。なお、統計解析には、統計解析ソフトRを用いた。また、試験例3と同様に操作を行なうことにより、野生株、ストマジェン過剰発現株10およびストマジェン発現抑制株10それぞれの発芽後23日目の成熟した第1葉におけるストマジェン遺伝子の相対発現量を求めた。試験例4において、気孔密度とストマジェン遺伝子の相対発現量との関係を調べた結果を図11に示す。図中、丸は野生株、三角はストマジェン発現抑制株10、四角はストマジェン過剰発現株10およびエラーバーは標準偏差を示す。
【実施例】
【0101】
また、野生株、ストマジェン過剰発現株10およびストマジェン発現抑制株10それぞれの発芽後23日目の成熟した第1葉の裏側の表皮を微分干渉顕微鏡〔ツアイス(Zeiss)社製、商品名:Axioskop plus顕微鏡〕を用いて観察し、気孔の数および表皮細胞の数を測定した。そして、気孔インデックス〔気孔の数/(気孔の数+表皮細胞の数)〕を算出した。その結果を表2に示す。
【実施例】
【0102】
【表2】
JP0005825574B2_000003t.gif
【実施例】
【0103】
図11および表2に示された結果から、ストマジェン遺伝子の発現量と気孔密度または気孔インデックスとの間には正の相関があることがわかる。
【実施例】
【0104】
したがって、これらの結果から、ストマジェン遺伝子が気孔分化の正の制御因子であることが示唆される。
【実施例】
【0105】
(試験例5)
発芽後9日目(未熟期)および23日目(成熟期)それぞれのシロイナズナCol-0系統(ストック番号CS60000)の根、葉または茎から、文献24に記載の方法に従ってRNAを抽出した。また、シロイナズナCol-0系統(ストック番号CS60000)の未熟な花芽または未熟な果実から、文献24に記載の方法に従ってRNAを抽出した。
【実施例】
【0106】
得られたRNAを鋳型として用い、試験例3と同様の操作を行なうことにより、RT-PCRを行なった。そして、アガロースゲル電気泳動法により、根、葉、茎、花芽および果実それぞれにおけるストマジェン遺伝子の発現の有無を調べた。なお、内部対照として、アクチン遺伝子を用いた。試験例5において、根、葉、茎、花芽および果実それぞれにおけるストマジェン遺伝子の発現の有無を調べた結果を示す電気泳動図を図12に示す。図中、「i」は未熟期および「m」は成熟期を示す。
【実施例】
【0107】
図12に示された結果から、ストマジェン遺伝子は、未熟期の葉、茎や花芽などの器官に主に発現していることがわかる。
【実施例】
【0108】
(試験例6)
試験例2で作製されたpSTOMAGEN::GUS株の発芽後2日目、9日目または16日目の未熟な子葉および幼若葉におけるGUS活性の発現の有無を観察した。試験例6において、pSTOMAGEN::GUS株の発芽後2日目におけるストマジェン遺伝子のプロモーターの発現を解析した結果を図13(a)、試験例6において、pSTOMAGEN::GUS株の発芽後9日目におけるストマジェン遺伝子のプロモーターの発現を解析した結果を図13(b)および試験例6において、pSTOMAGEN::GUS株の発芽後16日目におけるストマジェン遺伝子のプロモーターの発現を解析した結果を図13(c)に示す。図中、「C」は子葉および「J」は幼若葉を示す。
【実施例】
【0109】
図13に示された結果から、pSTOMAGEN::GUSにおいて、未熟な子葉や葉ではGUS活性が確認されたが、十分に発生が進むとGUS活性が見られなくなることがわかる。また、かかる現象は、図12に示された結果とも一致している。これらの発現パターンは気孔の発生は未熟期の器官で進むという事実(文献2)と符合している。また、驚くべきことに、ストマジェン遺伝子のプロモーターに基づくGUS活性は、葉肉組織で確認することができたが、気孔が分化する表皮組織では確認することができなかった(図8参照)。また、in situ RNAハイブリダイゼーション解析においても同様の結果が示された(図9参照)。
【実施例】
【0110】
これらの結果により、ストマジェンは、葉肉組織で産生されており、表皮へと伝わるシグナルとして気孔の発生を制御していることが推察される。ストマジェン遺伝子(STOMAGEN)の発現パターンは、気孔の発生に関与する遺伝子のほとんどが表皮組織に特異的に発現するということ(文献10、13、14)に対して、逆の例となっていることがわかる。
【実施例】
【0111】
(調製例9~11)
Venusに4つのグリシンがC末端に結合したもの(Venus-G4)をコードするDNA、カボチャ2Sアルブミンのシグナルペプチド(SP)をコードするDNAおよびストップコドンを除いたストマジェン遺伝子のオープンリーディングフレームをコードするDNAそれぞれをPCRによって作製した。なお、Venusに4つのグリシンがC末端に結合したもの(Venus-G4)をコードするDNAの作製には、表1に示されたプライマーP10_F、P-V_F、プライマーP-V_RおよびプライマーVenus_Rを用いた。カボチャ2SアルブミンのシグナルペプチドをコードするDNAの作製には、プライマー2Ssp_F、2Ssp<——p10m、2Ssp——>p10mおよびP10_Rを用いた(文献22参照)。
【実施例】
【0112】
前記Venus-G4をコードするDNAと前記シグナルペプチドをコードするDNAと前記ストップコドンを除いたストマジェン遺伝子のオープンリーディングフレームをコードするDNAとをプライマー伸長法で連結させることで、ストマジェン-Venus融合遺伝子を作製した。得られた融合遺伝子をベクター〔インビトロジェン(Invitrogen)社製、商品名:pENTR/D-TOPO〕に導入した。その後、得られた構築物とLRクロナーゼとを用い、前記DNAを前記構築物からベクターpB2GW7〔Gent大学VIBより供与〕に移しかえた。これにより、ストマジェン-Venus発現用ベクターを得た。
【実施例】
【0113】
得られたストマジェン-Venus発現用ベクターをアグロバクテリウム(系統GV3101)に導入した。得られたアグロバクテリウムをシロイヌナズナCol-0系統(ストック番号CS60000)に感染させることにより、前記DNAをシロイヌナズナCol-0系統に導入した。その後、得られたシロイヌナズナを生育させ、種子を採取した。採取された種子を、グルホシネートアンモニウム含有GM培地に播種し、22℃で光量を一定に維持しながら生育させた。これにより、グルホシネートアンモニウム耐性の個体を選抜した。選抜された個体(T1)を、個体ごとに生育させて次世代の種子(T2)を得た。T2種子のうち、グルホシネートアンモニウム含有GM培地に播種し、22℃で光量を一定に維持しながら生育させたときに生存個体:死滅個体(数比)が3:1となるものをさらに選抜し、次世代の種子(T3種子)を採取した。つぎに、T3種子のうち、グルホシネートアンモニウム含有GM培地に播種し、22℃で光量を一定に維持しながら生育させたときに全ての個体が生き残る系統(ホモ個体)を確立した。得られた個体をストマジェン-Venus発現株とした(調製例9)。
【実施例】
【0114】
また、前記シグナルペプチドをコードするDNAと前記ストップコドンを除いたストマジェン遺伝子のオープンリーディングフレームをコードするDNAとをプライマー伸長法によって連結させることにより、STOMAGEN*(成熟型ストマジェンのN末端にシグナルペプチドが付加されたポリペプチド)をコードするDNAを得た。その後、ストマジェン-Venus融合遺伝子の代わりに、STOMAGEN*をコードするDNAを用いたことを除き、前記と同様に操作を行ない、STOMAGEN*発現株を得た(調製例10)。
【実施例】
【0115】
さらに、前記シグナルペプチドをコードするDNAと前記Venus-G4をコードするDNAとをプライマー伸長法によって連結させることにより、シグナルペプチドとVenusとの融合物(SP-Venus)をコードするDNAを得た。ストマジェン-Venus融合遺伝子の代わりに、SP-VenusをコードするDNAを用いたことを除き、前記と同様に操作を行ない、SP-Venus発現株を得た(調製例11)。
【実施例】
【0116】
(試験例7)
シロイナズナCol-0系統(ストック番号CS60000)〔野生株〕、調製例4で得られたストマジェン過剰発現株10、調製例10で得られたSTOMAGEN*発現株および調製例9で得られたストマジェン-Venus発現株それぞれの発芽後23日目の第1葉を採取した。前記第1葉の表面を、微分干渉顕微鏡〔ツアイス(Zeiss)社製、商品名:Axioskop plus顕微鏡〕を用いて観察し、0.22mm2の正方形の範囲における気孔の数を測定した。そして、気孔密度を算出した。なお、統計解析には、統計解析ソフトR(ウェブアドレス http://www.R-project.org)を用いた。また、Studentの両側t検定を行なった。試験例7において、ストマジェン遺伝子の発現様式と、気孔密度との関係を調べた結果を図14に示す。図中、レーン1は野生株、レーン2はストマジェン過剰発現株10、レーン3はSTOMAGEN*発現株およびレーン4はストマジェン-Venus発現株を示す。また、図中、エラーバーは標準偏差およびアスタリスクは野生株に比較してp値が0.01未満であることを示す。
【実施例】
【0117】
図14に示された結果から、調製例10で得られたSTOMAGEN*発現株および調製例9で得られたストマジェン-Venus発現株は、ストマジェン発現株と同様の表現型を示すことがわかる。
【実施例】
【0118】
(試験例8)
調製例9で得られたストマジェン-Venus発現株の発芽後3日目の子葉を脱塩水または0.8Mマンニトールで処理した。処理後の子葉を蛍光色素〔インビトロジェン(Invitrogen)社製、商品名:FM4-64〕で染色した。
【実施例】
【0119】
FM4-64で染色したストマジェン-Venus発現株の発芽後3日後の子葉の裏側表皮を共焦点顕微鏡で観察した。このとき、Venusに基づく蛍光の検出には、励起フィルター〔ツアイス(Zeiss)社製、商品名:BP450-490〕、ダイクロニックミラー〔ツアイス(Zeiss)社製、商品名:FT510〕、吸収フィルター〔ツアイス(Zeiss)社製、商品名:BP515-565〕を用いた。また、FM4-64に基づく蛍光の検出には、励起フィルター〔ツアイス(Zeiss)社製、商品名:BP515-560)、ダイクロニックミラー〔ツアイス(Zeiss)社製、商品名:FT510〕、吸収フィルター〔ツアイス(Zeiss)社製、商品名:BP515-565〕を用いた。試験例8において、FM4-64で染色したストマジェン-Venus発現株の発芽後3日後の子葉の裏側表皮を観察した結果を示す共焦点顕微鏡像を図15に示す。図中、(a)、(b)および(c)は脱塩水で処理した子葉、(d)、(e)および(f)は0.8Mマンニトールで処理した子葉である。また、図中、(a)および(d)はFM4-64に基づく蛍光を検出した結果、(b)および(e)はVenusに基づく蛍光を検出した結果、(c)および(f)はFM4-64に基づく蛍光を検出した結果とVenusに基づく蛍光を検出した結果との重ね合わせを示す。
【実施例】
【0120】
また、調製例9で得られたストマジェン-Venus発現株の代わりに、調製例11で得られたSP-Venus株またはLti6b-GFP株〔スタンフォード大学、クリス・サマービル(Cris Somerville)博士より供与〕を用いたことを除き、前記と同様にして、発芽後3日後の子葉の裏側表皮を観察した。なお、GFPに基づく蛍光の検出には、励起フィルター〔ツアイス(Zeiss)社製、商品名:BP450-490〕、ダイクロニックミラー〔ツアイス(Zeiss)社製、商品名:FT510〕、吸収フィルター〔ツアイス(Zeiss)社製、商品名:BP515-565〕を用いた。試験例8において、FM4-64で染色したSP-Venus発現株の発芽後3日後の子葉の裏側表皮を観察した結果を示す共焦点顕微鏡像を図16(A)および試験例8において、FM4-64で染色したLti6b-GFP株の発芽後3日後の子葉の裏側表皮を観察した結果を示す共焦点顕微鏡像を図16(B)に示す。図16(A)および(B)中、(a)、(b)および(c)は脱塩水で処理した子葉、(d)、(e)および(f)は0.8Mマンニトールで処理した子葉である。また、図16(A)中、(a)および(d)はFM4-64に基づく蛍光を検出した結果、(b)および(e)はVenusに基づく蛍光を検出した結果、(c)および(f)はFM4-64に基づく蛍光を検出した結果とVenusに基づく蛍光を検出した結果との重ね合わせを示す。図16(B)中、(a)および(d)はFM4-64に基づく蛍光を検出した結果、(b)および(e)はGFPに基づく蛍光を検出した結果、(c)および(f)はFM4-64に基づく蛍光を検出した結果とGFPに基づく蛍光を検出した結果との重ね合わせを示す。
【実施例】
【0121】
図15および図16に示された結果から、Venusの蛍光は、原形質分離した細胞の外側に見られることがわかる。かかる結果から、ストマジェンが細胞からアポプラストに分泌されていることが示唆される。従来、「葉肉-表皮の相互作用」を考える場合、従来の知見は葉肉組織の空隙と気孔の位置に関係があるかという形態学的な問題に終始していた(文献12、15)。しかしながら、本発明者らによるこれらの知見によれば、表皮-葉肉相互作用により気孔密度が制御されているという新規の重要な視点が提供される。
【実施例】
【0122】
(実施例2)
シロイナズナCol-0系統(ストック番号CS60000)〔野生型〕または調製例9で得られたストマジェン-Venus発現株7gを破砕した産物を、溶液〔組成:50mMトリス塩酸緩衝液(pH7.5)、50mM塩化ナトリウム、1体積%CAPS液〕5mLに溶解させた。つぎに、得られた試料を、タンパク質単離用キット〔ミルテニー・バイオテック(Milteny Biotech)社製、商品名:μMACS GFP-tag protein isolation kit〕のanti-GFPビーズ200μLと混ぜた。得られた混合物を4℃で静置した。ビーズを磁性カラムに吸着させた後、ビーズについたタンパク質を前記タンパク質単離用キットに付属の緩衝溶液で溶出させた。
【実施例】
【0123】
得られた画分と調製例2で得られた抗ストマジェン抗体とを用い、文献24に記載の方法に準じてウエスタンブロット解析を行なった。なお、抗ストマジェン抗体は、1/1000の濃度で用いた。二次抗体として、西洋ワサビペルオキシダーゼ結合型抗ウサギIgG-ヤギ抗体〔GEヘルスケア社製、商品名:NA934〕を1/5000の濃度で用いた。実施例2において、ストマジェン-Venus発現株から得られた画分について、抗ストマジェン抗体を用いたウエスタンブロット解析を行なった結果を図17に示す。
【実施例】
【0124】
図17に示された結果から、単一のバンドが検出されたことから、前記画分には、抗ストマジェン抗体が結合するポリペプチドが含まれていることがわかる。
【実施例】
【0125】
つぎに、前記画分をSDS-PAGEで分離した。得られた分離産物をPVDF膜(Immobilon-P、ミリポア社製)にブロットし、CBB染色または抗ストマジェン抗体による検出を行なった。そして、抗ストマジェン抗体が結合したバンドに対応するCBB染色されたバンドを切り出した後、ポリペプチドを抽出した。自動ペプチドシーケンサー〔ライフテクノロジー(Life Technology)社製、商品名:Procise 492cLC〕を用いて、抽出されたポリペプチド(ストマジェン)のN末端アミノ酸配列を決定した。実施例2において、ストマジェンーVenusのN末端アミノ酸配列を解析した結果を図18に示す。
【実施例】
【0126】
ストマジェン遺伝子は、N末端側にシグナルペプチドと予測されるアミノ酸配列を有する102アミノ酸からなる小さなタンパク質をコードしている(図1参照)。図18に示された結果から、ストマジェン-Venus発現株で産生されたポリペプチドのN末端アミノ酸配列は、IGSTAPTXTY(Xは決定不能)(配列番号:1の一部のアミノ酸残基)であり、ストマジェン遺伝子から推定されるアミノ酸配列の58番目のイソロイシンからの配列と同一であることがわかる。
【実施例】
【0127】
つぎに、前記ポリペプチドを、文献27に記載の方法に準じて質量分析によって同定した。まず、前記画分を、SDS-PAGEで分離し、銀染色で染色した。各バンドは、それぞれ、別々に切り出し、緩衝溶液〔組成:50mM炭酸アンモニウム(pH8.0)、2体積%アセトニトリル〕中で、トリプシンまたはリジルエンドペプチダーゼ(Promega社製)で1日間処理することによってゲル内消化を行なった。消化産物を、質量分析装置〔ブルッカー・ダルトニクス(Brucker Daltonics)社製、商品名:ultraflex TOF/TOF〕を用いたマトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間質量分析法〔matrix-assisted laser desorption/ionization time-of-flight mass spectrometry(MALDI-TOF/MS)〕に供して質量分析を行なった。実施例2において、リジルエンドペプチダーゼを用い、質量分析によってストマジェン-VenusのN末端アミノ酸配列を解析した結果を図19(a)および実施例2において、トリプシンを用い、質量分析によってストマジェン-VenusのN末端アミノ酸配列を解析した結果を図19(b)に示す。
【実施例】
【0128】
図19に示された結果から、トリプシン分解産物のアミノ酸配列はIGSTAPTCTYNECR(配列番号:1の一部のアミノ酸残基)であり、リジルエンドペプチダーゼ分解産物のアミノ酸配列はIGSTAPTCTYNECRGCRYK(配列番号:1の一部のアミノ酸残基)であることがわかる。かかる結果は、ペプチドシークエンサーによる解析結果と一致している。これらの結果から、ストマジェンは、植物の中で6つのシステインを有する45アミノ酸のペプチドを生じるように切断されていることがわかる。
【実施例】
【0129】
Clustal Wにより、ストマジェンのイネ(Oryza sativa(Os01g0914400))、ブドウ(Vitis vinifera(AM444732))、ポプラ(Populus trichocarpa(Pt02g2557))およびイヌカタヒバ(Selaginella moellendorffii(Sm084711))それぞれにおけるオーソログを調べた。実施例2において、Clustal Wによるストマジェンのイネ(Oryza sativa(Os01g0914400))、ブドウ(Vitis vinifera(AM444732))、ポプラ(Populus trichocarpa(Pt02g2557))およびイヌカタヒバ(Selaginella moellendorffii(Sm084711))それぞれにおけるオーソログのマルチプルアライメントの結果を図20に示す。
【実施例】
【0130】
ストマジェンにシグナルペプチドをつけて過剰に発現させた形質転換体(SP-ストマジェン発現株)では、気孔密度が増加した(10の独立な系統、T2植物で観察、図14参照)。これは、45アミノ酸のペプチドが気孔分化を誘導するのに十分であることを示している。また、図20に示された結果から、ストマジェン様のペプチドをコードする遺伝子は様々な植物に見られ、興味深いことに、原始的な維管束植物であるイヌカタヒバ(Selaginella moellendorffii)にも見られることがわかる。これらの結果から、ストマジェンは維管束植物に広く分布しているものと考えられる。したがって、かかるストマジェンは、維管束植物をはじめとする植物において機能すると考えられる。
【実施例】
【0131】
(実施例3)
純度の高いストマジェン(stomagen)を得るためにタバコの培養細胞BY-2にストマジェン遺伝子(STOMAGEN)を導入した。
【実施例】
【0132】
トマトモザイクウィルスベクターpBICER8-ToMV-C0.3-HuIFNγ-SRz22中のHuIFNγ遺伝子の領域を、ストマジェンをコードするDNAと置き換え、ストマジェンを発現させるためのベクター(以下、「ストマジェン発現ベクター」という)を得た。
【実施例】
【0133】
得られたストマジェン発現ベクターを、エストロジェンで誘導される転写因子であるXVEを持つBY-2細胞に導入し、ストマジェン発現BY-2細胞を得た。つぎに、文献20に記載の方法に従い、β-エストロジェンによる誘導を行なった。その後、培養物を、100000×gで1時間の超遠心分離に供して上清(培地上清)を得た。また、細胞を破砕した後、得られた破砕物を800rpmで3分間の遠心分離に供して、上清(細胞抽出物)を得た。
【実施例】
【0134】
前記培地上清または細胞抽出物と調製例2で得られた抗ストマジェン抗体とを用い、文献24に記載の方法に準じてウエスタンブロット解析を行なった。なお、抗ストマジェン抗体は、1/1000の濃度で用いた。二次抗体として、西洋ワサビペルオキシダーゼ結合型抗ウサギIgG-ヤギ抗体〔GEヘルスケア社製、商品名:NA934〕を1/5000の濃度で用いた。また、対照として、BY-2細胞の培養物の上清を用いた。実施例3において、ストマジェン発現BY-2細胞の培養物について、抗ストマジェン抗体を用いたウエスタンブロット解析を行なった結果を図21に示す。図中、「C」は細胞抽出物、「M」は培地上清を示す。また、図中、「T」はストマジェン発現BY-2細胞、「NT」はBY-2細胞を示す。
【実施例】
【0135】
図21に示された結果から、培地上清には、抗ストマジェン抗体が結合するポリペプチド、すなわち、ストマジェンが含まれていることがわかる。そこで、前記培地上清を用い、以下のように操作を行ない、ストマジェンの精製を行なった。前記培地上清を0.22μm孔フィルター〔ミレックス(Millex)社製〕に通して濾過した。得られた濾液を逆相HPLCカラム〔ファルマシア(Pharmacia)社製、商品名:mRPC C2/C18 SP4/6〕に充填した後、洗浄溶液〔組成:5体積%メタノール、0.5体積%トリフルオロ酢酸(以下、「TFA」という)、残部水〕で前記カラムを洗浄した。つぎに、展開溶媒A〔組成:90体積%メタノール、0.5体積%TFA、残部水〕と、洗浄溶液とを用い、メタノールの濃度勾配が5体積%から90体積%となるようにリニア勾配をかけて前記カラムに流すことで溶出を行なった。溶出液を1mL分取した。各画分について、溶媒を蒸発させることにより、約100μLに濃縮した。実施例3において、逆相HPLCカラムを用いたストマジェンの精製を行なった際のクロマトグラムを図22に示す。また、実施例3において、逆相HPLCカラムを用いたクロマトグラフィーの各画分について、SDS-PAGEによって解析した結果を示す電気泳動図を図23に示す。
【実施例】
【0136】
図22および図23に示された結果から、いくつかの画分で約5kDaの大きさのシングルバンドが見られることがわかる。そこで、10~13番目の画分に含まれるストマジェンのN末端アミノ酸配列をエドマン分解により決定した。実施例3において、10~13番目の画分に含まれるストマジェンのN末端アミノ酸配列をエドマン分解によって解析した結果を図24に示す。また、実施例3において、精製された組換えストマジェンの電気泳動図を図25に示す。
【実施例】
【0137】
図24および図25に示された結果から、野生型のストマジェンと同様のN末端配列を有する組換えストマジェンが得られていることがわかる。
【実施例】
【0138】
(実施例4)
シロイヌナズナ〔Lti6b-GFP株〕の種子を、滅菌したB5メディウム〔日本製薬(株)製、カタログ番号:399-00621〕で維持して発芽させた。発芽後2日目のLti6b-GFP株に対して、実施例2で得られた精製組換えストマジェンをその濃度が2μMとなるように投与した。その後、Lti6b-GFP株を22℃で3日間生育させ、共焦点顕微鏡を用いて子葉の裏側表皮を観察した。対照として、ストマジェンを投与していないLti6b-GFP株を用い、前記と同様に操作を行ない、子葉の裏側表皮を観察した。実施例4において、精製組換えストマジェンを投与していないLti6b-GFP発現株の子葉の裏側表皮の共焦点顕微鏡像を図26(a)および実施例4において、精製組換えストマジェン(2μM)を投与したLti6b-GFP発現株の子葉の裏側表皮の共焦点顕微鏡像を図26(b)に示す。図中、スケールバーは50μmを示す。
【実施例】
【0139】
図26に示された結果から、精製組換えストマジェンを投与したLti6b-GFP発現株の子葉の裏側表皮〔図26(b)参照〕では、精製組換えストマジェンを投与していないLti6b-GFP発現株の子葉の裏側表皮〔図26(a)参照〕と比べて、気孔の数および気孔密度が増加していることがわかる。なお、液体培養時におけるエチレンの影響は、チオ硫酸銀を用いて評価したところ、ストマジェンの効果は、エチレンとは無関係であることが確認された。したがって、この結果から、ストマジェンを植物に投与することにより、植物における気孔の数および/または気孔密度を増加させることができることが示唆される。
【実施例】
【0140】
(実施例5)
配列番号:1に示されるアミノ酸配列のうち58番目~102番目のアミノ酸残基からなるポリペプチド(45アミノ酸)を化学合成した。得られたポリペプチドを含むポリペプチド溶液(0.5mg/mL)を、溶液〔20mMトリス塩酸緩衝液(pH8.8)、50mM塩化ナトリウム〕に溶解させた。その後、得られた試料を、透析膜〔スペクトラム・ラボラトリーズ(Spectrum Laboratories)社製、商品名:Spectra/Por3MWCO、3500〕を用い、4℃で1日間、透析用水溶液〔組成:0.5mMグルタチオン(酸化型および還元型の両方、和光純薬(株)製、酸化型について、カタログ番号:077-03334、還元型について、カタログ番号:194679)、200mM L-アルギニン(pH8.0)〕に対して透析した。得られた透析産物を、溶液〔20mMトリス塩酸緩衝液(pH8.8)、50mM塩化ナトリウム〕に対して3回、1.5日間にわたって透析し、グルタチオンを除去した。これにより、合成ストマジェンを得た。なお、得られた合成ストマジェンは、SDS-PAGEにより、純度などを確認した。
【実施例】
【0141】
(実施例6)
シロイヌナズナ〔Lti6b-GFP株〕の種子を、滅菌したB5メディウムで維持して発芽させた。発芽後2日目のLti6b-GFP株に対して、実施例5で得られた合成ストマジェンをその濃度が300nMとなるように投与した。その後、Lti6b-GFP株を22℃で3日間生育させた。つぎに、子葉を採取し、その表面を、共焦点顕微鏡〔ツアイス(Zeiss)社製、商品名:LSM510 META顕微鏡〕を用いて観察し、0.22mm2の正方形の範囲における気孔の数を測定した。そして、気孔密度を算出した。なお、統計解析には、統計解析ソフトR(ウェブアドレス http://www.R-project.org)を用いた。なお、対照として、ストマジェンを投与していないLti6b-GFP株を用い、前記と同様に操作を行ない、気孔密度を算出した。実施例6において、合成ストマジェン量と気孔密度との関係を調べた結果を図27に示す。
【実施例】
【0142】
図27に示された結果から、合成ストマジェンを投与したLti6b-GFP発現株の子葉の裏側表皮では、合成ストマジェンを投与していないLti6b-GFP発現株の子葉の裏側表皮と比べて、気孔密度が増加していることがわかる。なお、液体培養時におけるエチレンの影響は、チオ硫酸銀を用いて評価したところ、ストマジェンの効果は、エチレンとは無関係であることが確認された。したがって、この結果から、合成ストマジェンを植物に投与することにより、植物の気孔密度を増加させることができることが示唆される。以上の結果から、BY-2細胞で発現させた組換えストマジェン(実施例2)および化学合成されたストマジェン(実施例4)の両方とも、気孔密度を濃度依存的に増加させることができることがわかる。かかる結果から、ストマジェンが気孔誘導因子であることが証明された。
【実施例】
【0143】
(調製例12)
Arabidopsis stock center(ABRC,米国)から取り寄せた種子(系統番号SAIL_36_B6)を発芽させ、芽生えのDNAを抽出して、表1に示されたプライマーspch SAIL_36_B6 LPおよびプライマーSAIL_36_B6_RPを用いてPCRを行うことで、SPCH遺伝子にT-DNAが挿入された個体を選抜した。これにより、SPCH遺伝子を欠損した変異体のシロイヌナズナ(spch変異株)を得た。
【実施例】
【0144】
(調製例13)
調製例4において、シロイヌナズナCol-0系統の代わりに調製例12で得られたspch変異株を用いたことを除き、調製例4と同様の操作を行ない、ストマジェン過剰発現spch変異株を得た。
【実施例】
【0145】
(試験例9)
気孔系列の形成は、SPEECHLESS(SPCH)と呼ばれるbHLH型の転写因子によって開始されると考えられている(文献13および文献14を参照)。そこで、調製例12で得られたspch変異株および調製例13で得られたストマジェン過剰発現spch変異株を用い、ストマジェンによる影響を調べた。
【実施例】
【0146】
spch変異株の種子またはシロイナズナCol-0系統(ストック番号CS60000)〔野生株〕の種子を、滅菌したB5メディウムで維持して発芽させた。発芽後2日目のspch変異株または野生株に対して、実施例2で得られた精製組換えストマジェンをその濃度が2μMとなるように投与した。その後、pch変異株または野生株を22℃で3日間生育させ、共焦点顕微鏡〔ツアイス(Zeiss)社製、商品名:LSM510 META顕微鏡〕を用いて子葉の裏側表皮を観察した。対照として、ストマジェンを投与していないspch株を用い、前記と同様に操作を行ない、子葉の裏側表皮を観察した。試験例9において、精製組換えストマジェンを投与していないspch変異株の子葉の裏側表皮の共焦点顕微鏡像を図28(a)、試験例9において、精製組換えストマジェン(2μM)を投与したspch変異株の子葉の裏側表皮の共焦点顕微鏡像を図28(b)および試験例9において、精製組換えストマジェン(2μM)を投与した野生株の子葉の裏側表皮の共焦点顕微鏡像を図28(c)に示す。
【実施例】
【0147】
また、spch変異株、ストマジェン過剰発現spch変異株または調製例4で得られたストマジェン過剰発現株(ストマジェン過剰発現株10)それぞれの発芽後23日目の子葉を採取した。つぎに、試験例1と同様の操作を行なうことにより、前記子葉を、固定し、透明化した後、気孔を染色した。その後、前記第1葉の裏側表皮を、微分干渉顕微鏡〔ツアイス(Zeiss)社製、商品名:Axioskop plus顕微鏡〕を用いて観察した。試験例9において、spch変異株の子葉の裏側表皮を観察した結果を示す微分干渉像を図28(d)、試験例9において、ストマジェン過剰発現spch変異株の子葉の裏側表皮を観察した結果を示す微分干渉像を図28(e)および試験例9において、ストマジェン過剰発現株の子葉の裏側表皮を観察した結果を示す微分干渉像を図28(f)に示す。なお、図28中、スケールバーは50μmを示す。
【実施例】
【0148】
図28に示された結果から、spch変異株にストマジェンを投与した場合およびspch変異株中においてストマジェンを過剰発現させた場合のいずれにおいても、気孔は増加しないことがわかる〔図28(b)および(e)参照〕。したがって、これらの結果から、ストマジェン遺伝子は、SPCH遺伝子が支配する経路に依存して気孔を増やしていることが示唆される。
【実施例】
【0149】
(調製例14)
調製例12において、ABRCから取り寄せた種子(系統番号SAIL_36_B6)の代わりに系統番号SALK_011958を用いたこと、表1に示されたプライマーspch SAIL_36_B6 LPおよびプライマーSAIL_36_B6_RPの代わりに表1に示されたプライマーtmm SALK_011958-LPおよびプライマーSALK_011958-RPを用いたこと、を除き、調製例12と同様の操作を行ない、TMM遺伝子を欠損した変異体のシロイヌナズナ(tmm変異株)を得た。
【実施例】
【0150】
(調製例15)
調製例4において、シロイヌナズナCol-0系統の代わりに調製例14で得られたtmm変異株を用いたことを除き、調製例4と同様の操作を行ない、ストマジェン過剰発現tmm変異株を得た。
【実施例】
【0151】
(調製例16)
調製例5において、シロイヌナズナCol-0系統の代わりに調製例14で得られたtmm変異株を用いたことを除き、調製例5と同様の操作を行ない、ストマジェン発現抑制tmm変異株を得た。
【実施例】
【0152】
(試験例10)
SPCHは、受容体様タンパク質TMMとそのリガンド候補であるEPF1とEPF2の遺伝子発現を制御している(文献5、13、14)。TMMは、気孔の分化において葉では負に働くが、茎では正に働く(文献16)。一方、EPF1とEPF2は両方の器官で負に働く(文献4、5)。
【実施例】
【0153】
そこで、まず、ストマジェンと受容体様タンパク質TMMとの相互作用を調べた。シロイナズナCol-0系統(ストック番号CS60000)〔野生株〕、調製例5で得られたストマジェン発現抑制株(ストマジェン発現抑制株10)、調製例4で得られたストマジェン過剰発現株(ストマジェン過剰発現株10)、調製例14で得られたtmm変異株、調製例15で得られたストマジェン発現抑制tmm変異株および調製例16で得られたストマジェン過剰発現tmm変異株それぞれの成熟した茎または第1葉を採取した。つぎに、茎または第1葉の表面を微分干渉顕微鏡〔ツアイス(Zeiss)社製、商品名:Axioskop plus顕微鏡〕を用いて観察し、0.22mm2の正方形の範囲における気孔の数を測定した。そして、気孔密度を算出した。なお、統計解析には、統計解析ソフトRを用いた。なお、Kruskal-Wallis検定を行なった。試験例10において、植物体の種類と茎における気孔密度との関係を調べた結果を図29(a)および試験例10において、植物体の種類と葉における気孔密度との関係を調べた結果を図29(b)に示す。図中、レーン1は野生株、レーン2はストマジェン発現抑制株、レーン3はストマジェン過剰発現株、レーン4はtmm変異株、レーン5はストマジェン発現抑制tmm変異株およびレーン6はストマジェン過剰発現tmm変異株を示す。
【実施例】
【0154】
また、試験例1と同様の操作を行なうことにより、野生株、ストマジェン発現抑制株、ストマジェン過剰発現株、tmm変異株、ストマジェン発現抑制tmm変異株およびストマジェン過剰発現tmm変異株それぞれの成熟した第1葉または茎を、固定し、透明化した後、気孔を染色した。その後、前記第1葉の裏側表皮または茎を、微分干渉顕微鏡〔ツアイス(Zeiss)社製、商品名:Axioskop plus顕微鏡〕を用いて観察した。試験例10において、野生株、ストマジェン発現抑制株、ストマジェン過剰発現株、tmm変異株、ストマジェン発現抑制tmm変異株およびストマジェン過剰発現tmm変異株それぞれの第1葉の裏側表皮を観察した結果を示す微分干渉像を図30(A)、試験例10において、野生株、ストマジェン発現抑制株、ストマジェン過剰発現株、tmm変異株、ストマジェン発現抑制tmm変異株およびストマジェン過剰発現tmm変異株それぞれの茎を観察した結果を示す微分干渉像を図30(B)に示す。なお、図中、(a)は野生株、(b)はストマジェン発現抑制株、(c)はストマジェン過剰発現株、(d)はtmm変異株、(e)はストマジェン発現抑制tmm変異株および(f)はストマジェン過剰発現tmm変異株を示す。また、図中、スケールバーは100μmを示す。
【実施例】
【0155】
図29および図30に示された結果から、驚くべきことに、tmm変異株(10の独立した系統T2植物)において、野生株におけるストマジェン遺伝子の発現量の44.8±16.7倍の発現量となるようにストマジェン遺伝子の過剰発現を行なっても、葉と茎の両方で気孔の数を増やすことができないことがわかる。また、ストマジェン遺伝子の発現抑制をtmm変異体(10の独立した系統T2植物)で行なっても、効果がないことがわかった(10の独立の系統T2植物で観察、図29および図30参照)。これらの結果から、ストマジェンが気孔の発生を正に制御するには、TMMが必要であることを示している。なお、EPF1およびEPF2は、TMMにリガンドとして結合することで、気孔分化を負に制御していると考えられている。図29および図30に示された結果から、ストマジェンは、EPF1またはEPF2と競争的にTMMと結合しているという可能性が示唆される。
【実施例】
【0156】
(調製例17)
調製例12において、ABRCから取り寄せた種子(系統番号SAIL_36_B6)の代わりに系統番号SALK_137549を用いたことならびに表1に示されたプライマーspch SAIL_36_B6 LPおよびプライマーSAIL_36_B6_RPの代わりに表1に示されたプライマーepf1SALK_137549-LPおよびプライマーSALK_137549-RPを用いたことを除き、調製例12と同様の操作を行ない、EPF1遺伝子を欠損した変異体のシロイヌナズナ(epf1変異株)を得た。
【実施例】
【0157】
(調製例18)
調製例5において、シロイヌナズナCol-0系統の代わりに調製例17で得られたepf1変異株を用いたことを除き、調製例5と同様の操作を行ない、ストマジェン発現抑制epf1変異株を得た。
【実施例】
【0158】
(調製例19)
調製例12において、ABRCから取り寄せた種子(系統番号SAIL_36_B6)の代わりに系統番号SALK_047918を用いたことならびに表1に示されたプライマーspch SAIL_36_B6 LPおよびプライマーSAIL_36_B6_RPの代わりに表1に示されたプライマーepf2SALK_047918-LPおよびプライマーSALK_047918-RPを用いたことを除き、調製例12と同様の操作を行ない、EPF2遺伝子を欠損した変異体のシロイヌナズナ(epf2変異株)を得た。
【実施例】
【0159】
(調製例20)
調製例5において、シロイヌナズナCol-0系統の代わりに調製例20で得られたepf2変異株を用いたことを除き、調製例5と同様の操作を行ない、ストマジェン発現抑制epf2変異株を得た。
【実施例】
【0160】
(調製例21)
調製例17において得られたepf1変異株と調製例19において得られたepf2変異株とのかけあわせを行ない、後代のF2世代の個体を発芽させたのちDNAを抽出し、表1に示されたプライマーepf1SALK_137549-LPおよびプライマーSALK_137549-RPならびにプライマーepf2SALK_047918-LPおよびプライマーSALK_047918-RPを用い、EPF1遺伝子およびEPF2遺伝子双方にT-DNAが挿入されている個体を選抜した。これにより、EPF1遺伝子およびEPF2遺伝子を欠損した二重変異体のシロイヌナズナ(epf2・epf2二重変異株)を得た。
【実施例】
【0161】
(調製例22)
調製例5において、シロイヌナズナCol-0系統の代わりに調製例21で得られたepf2・epf2二重変異株を用いたことを除き、調製例5と同様の操作を行ない、ストマジェン発現抑制epf2・epf2二重変異株を得た。
【実施例】
【0162】
(試験例11)
ストマジェンと、EPF1またはEPF2との「競争的結合」の可能性を調べるために、epf1変異株またはepf2変異株に対してストマジェン遺伝子の発現を抑制し、「気孔密度」と「非気孔細胞密度(気孔以外の細胞の密度)」という2つの指標を解析した。
【実施例】
【0163】
シロイナズナCol-0系統(ストック番号CS60000)〔野生株〕、調製例5で得られたストマジェン発現抑制株(ストマジェン発現抑制株10)、調製例17で得られたepf1変異株、調製例18で得られたストマジェン発現抑制epf1変異株、調製例19で得られたepf2変異株、調製例20で得られたストマジェン発現抑制epf2変異株、調製例21で得られたepf1・epf2二重変異株および調製例22で得られたストマジェン発現抑制epf1・epf2二重変異株それぞれの成熟した第1葉を採取した。つぎに、第1葉の表面を微分干渉顕微鏡〔ツアイス(Zeiss)社製、商品名:Axioskop plus顕微鏡〕を用いて観察し、0.22mm2の正方形の範囲における気孔の数を測定した。そして、気孔密度および非気孔細胞密度を算出した。また、統計解析には、統計解析ソフトRを用いた。また、Studentの両側t検定を行なった。試験例11において、植物体の種類と気孔密度との関係を調べた結果を図31に示す。また、試験例11において、植物体の種類と非気孔細胞密度との関係を調べた結果を図32に示す。図中、レーン1は野生株、レーン2はストマジェン発現抑制株、レーン3はepf1変異株、レーン4はストマジェン発現抑制epf1変異株、レーン5はepf2変異株、レーン6はストマジェン発現抑制epf2変異株、レーン7はepf1・epf2二重変異株およびレーン8はストマジェン発現抑制epf1・epf2二重変異株を示す。アスタリスクは、p値が0.01未満であることを示す。
【実施例】
【0164】
また、野生株、ストマジェン発現抑制株、epf1変異株、ストマジェン発現抑制epf1変異株、epf2変異株、ストマジェン発現抑制epf2変異株、epf1・epf2二重変異株およびストマジェン発現抑制epf1・epf2二重変異株それぞれの成熟した第1葉を採取した。そして、試験例1と同様の操作を行なうことにより、前記第1葉を、固定し、透明化した後、気孔を染色した。その後、前記茎を、微分干渉顕微鏡〔ツアイス(Zeiss)社製、商品名:Axioskop plus顕微鏡〕を用いて観察した。試験例11において、植物体の第1葉の裏側表皮を観察した結果を示す微分干渉像を図33に示す。図中、(a)は試験例11において、野生株の第1葉の裏側表皮を観察した結果を示す微分干渉像の図面代用写真、(b)は試験例11において、ストマジェン発現抑制株の第1葉の裏側表皮を観察した結果を示す微分干渉像の図面代用写真、(c)は試験例11において、epf1変異株の第1葉の裏側表皮を観察した結果を示す微分干渉像の図面代用写真、(d)は試験例11において、ストマジェン発現抑制epf1変異株の第1葉の裏側表皮を観察した結果を示す微分干渉像の図面代用写真、(e)は試験例11において、epf2変異株の第1葉の裏側表皮を観察した結果を示す微分干渉像の図面代用写真、(f)は試験例11において、ストマジェン発現抑制epf2変異株の第1葉の裏側表皮を観察した結果を示す微分干渉像の図面代用写真、(g)は試験例11において、epf1・epf2二重変異株の第1葉の裏側表皮を観察した結果を示す微分干渉像の図面代用写真および(h)は試験例11において、ストマジェン発現抑制epf1・epf2二重変異株の第1葉の裏側表皮を観察した結果を示す微分干渉像の図面代用写真である。図中、スケールバーは100μmを示す。
【実施例】
【0165】
図31および図33に示された結果から、epf1変異株およびepf2変異株それぞれの気孔密度は、野生株の気孔密度よりも高くなっているが、epf1変異株およびepf2変異株それぞれにおいて、ストマジェン遺伝子の発現を抑制させた場合、減少することがわかる。これらの結果から、ストマジェンが気孔密度をEPF1やEPF2とは独立に制御していることが示唆される。
【実施例】
【0166】
一方で、「非気孔細胞密度」を調べると異なった結果が得られた(図32参照)。EPF2は、気孔系列細胞への分化を負に制御する機能をもっている。図32に示された結果から、epf2変異体の非気孔細胞密度は、野生株の非気孔細胞密度よりも高くなっていることがわかる。また、野生株において、ストマジェン遺伝子の発現が抑制された場合、非気孔細胞密度が減少することがわかる(14個の独立な系統T2植物で観察)。一方、epf2変異体において、ストマジェン遺伝子の発現が抑制された場合、非気孔細胞密度が減少しなかった(11個の独立な系統T2植物で観察)。これらの結果から、ストマジェンは、EPF2に依存した形で気孔系列細胞の分化を制御していると考えられる。以上のことから、ストマジェン遺伝子は、EPF2依存的な気孔系列細胞の分化およびEPF1やEPF2に非依存的な気孔細胞の分化の2つの機能を持っていることが推察される。
【実施例】
【0167】
以上の結果から、3つのシグナル伝達因子、すなわち、ストマジェン、EPF1およびEPF2が共通の受容体TMMを介して気孔分化を制御していると考えられる。これらのシグナル伝達因子に加えて、SDD1遺伝子がTMM遺伝子の上流で働くことが知られている(文献9)。SDD1は負の制御因子の前駆体を切断することで気孔の分化を負に制御していると考えられてきた(文献9、18)。しかしながら、SDD1は、EPF1およびEPF2とは遺伝的に独立であることが示されている(文献4~6)。別の可能性として、SDD1は正の制御因子であるストマジェン(stomagen)を分解することで気孔分化に負の影響を与えている、という仮説が考えられる。
【実施例】
【0168】
また、以上の結果から、気孔の分化は、促進性シグナルであるストマジェンと、抑制性シグナルであるEPF1およびEPF2という2つの相反する性質を有するシグナルによって制御されているということが示唆される。このような双方向的なシグナルによる制御システムは、気孔密度をより厳密に制御するために重要であろう。また、葉肉細胞に由来するストマジェン(stomagen)が表皮細胞における気孔系列細胞を気孔に分化させるということも示された。このような組織間相互作用は、気孔分化の概念を発展させる。すなわち、「二酸化炭素の効率的な取り込みのために、光合成をする組織(葉肉)が気孔密度を最適化している」という新しい考え方が提供される。また、ストマジェン(stomagen)は応用上でも重要である。ストマジェン(stomagen)を遺伝子組み換えするか、あるいは発達中の作物、樹木などの植物に対して直接投与することで気孔の数および/または気孔密度を増加させて二酸化炭素吸収量を増大させることができることが示唆される。
【実施例】
【0169】
(試験例12)
調製例5で得られたストマジェン発現抑制株(ストマジェン発現抑制株10)、シロイナズナCol-0系統(CS60000)〔野生株〕または調製例4で得られたストマジェン過剰発現株(ストマジェン過剰発現株10)を短日条件下で9週間生育させた。
【実施例】
【0170】
光合成測定装置〔LI-Cor社製、商品名:LI-6400〕を、大気CO2を用いてキャリブレーションをした。つぎに、光合成測定装置のチャンバーの光強度を設定した。そして、野生株、ストマジェン発現抑制株またはストマジェン過剰発現株の葉を挟み、光合成測定装置の測定値が安定するまで維持した。その後、ストマジェン発現抑制株、野生株またはストマジェン過剰発現株について、光合成速度と、ガス交換能の指標としての気孔コンダクタンスとを測定した。試験例12において、ストマジェン遺伝子の発現様式と光合成速度との関係を調べた結果を図34に示す。また、試験例12において、ストマジェン遺伝子の発現様式と気孔コンダクタンスとの関係を調べた結果を図35に示す。図中、レーン1はストマジェン発現抑制株、レーン2は野生株およびレーン3はストマジェン過剰発現株を示す。
【実施例】
【0171】
図34および図35に示された結果から、ストマジェン過剰発現株において、光合成速度が最も大きく、かつガス交換能が最も高いことがわかる。一方、図34および図35に示された結果から、ストマジェン発現抑制株において、光合成速度が最も小さく、かつガス交換能が最も低いことがわかる。これらの結果から、植物におけるストマジェン遺伝子の発現量が多くなるほど、光合成速度が大きくなり、かつガス交換能が高くなることが示唆される。
【実施例】
【0172】
(実施例7)
ストマジェンをコードするcDNAを、pB2GW7に導入し、ストマジェン発現用ベクターを得た。得られたストマジェン発現用ベクターを用い、文献28に記載の手法に準じて、北海道大学山田哲也博士の下で、ストマジェン過剰発現ダイズを作製した。
【実施例】
【0173】
(試験例13)
実施例7で得られたストマジェン過剰発現ダイズおよびダイズ(カリユタカ)〔野生株〕それぞれの葉を採取した。つぎに、葉の表面を微分干渉顕微鏡〔ツアイス(Zeiss)社製、商品名:Axioskop plus顕微鏡〕を用いて観察し、0.22mm2の正方形の範囲における気孔の数を測定した。そして、気孔密度を算出した。また、統計解析には、統計解析ソフトRを用いた。試験例13において、植物体の種類と気孔密度との関係を調べた結果を図36に示す。図中、レーン1はストマジェン過剰発現ダイズおよびレーン2は野生株を示す。
【実施例】
【0174】
また、ストマジェン過剰発現ダイズおよびダイズ(カリユタカ)〔野生株〕それぞれの葉を採取した。そして、試験例1と同様の操作を行なうことにより、前記葉を、固定し、透明化した後、気孔を染色した。その後、前記葉を、微分干渉顕微鏡〔ツアイス(Zeiss)社製、商品名:Axioskop plus顕微鏡〕を用いて観察した。試験例13において、ストマジェン過剰発現ダイズの葉を観察した結果を示す微分干渉像を図37に示す。また、試験例13において、ダイズ(カリユタカ)〔野生株〕の葉を観察した結果を示す微分干渉像を図38に示す。図中、枠で囲った部分は気孔を示す。また、図中、スケールバーは100μmを示す。
【実施例】
【0175】
図36、図37および図38に示された結果から、ダイズにおいて、ストマジェンを過剰発現させた場合にも、ダイズ(カリユタカ)〔野生株〕(図38参照)と比べて、気孔密度が増加することがわかる。したがって、かかる結果から、ストマジェンを過剰発現させることにより、ダイズにおける気孔の数および/または気孔密度を増加させることができることがわかる。
【実施例】
【0176】
(試験例14)
イネ〔系統「日本晴」〕の種子を、脱塩水5mLが入った容器〔50mL容、グライナー社製〕に播種した後、80μMストマジェン(実施例5で得られた合成ストマジェン)200μLを添加した。そして、種子を22℃で8日間維持した。その後、植物体を、滅菌したB5メディウム中、22℃で生育させた。播種後32日目のイネの第2葉を採取した。そして、試験例1と同様の操作を行なうことにより、前記第2葉を、固定し、透明化した後、気孔を染色した。その後、前記第2葉の裏側表皮を、微分干渉顕微鏡〔ツアイス(Zeiss)社製、商品名:Axioskop plus顕微鏡〕を用いて観察した。対照として、ストマジェンを投与していないイネを用い、前記と同様に操作を行ない、播種後32日目のイネの第2葉の裏側表皮を観察した。試験例14において、合成ストマジェンを投与したイネの第2葉の裏側表皮の微分干渉顕微鏡像を図39(a)および試験例14において、合成ストマジェンを投与していないイネの第2葉の裏側表皮の微分干渉顕微鏡像を図39(b)に示す。図中、枠で囲った部分は気孔を示す。図中、スケールバーは50μmを示す。
【実施例】
【0177】
図39に示された結果から、合成ストマジェンを投与したイネの第2葉の裏側表皮〔図39(a)参照〕では、合成ストマジェンを投与していないイネの第2葉の裏側表皮〔図39(b)参照〕と比べて、気孔の数および気孔密度が増加していることがわかる。したがって、この結果から、ストマジェンをイネに投与することにより、イネにおける気孔の数および気孔密度を増加させることができることが示唆される。
【実施例】
【0178】
(実施例8)
ダイズ(カリユタカ)の種子を、培養土を含むポットに播種、発芽させたのち第2葉期まで成育させて、実施例5で得られた合成ストマジェンを、その濃度が1μM、10μMまたは100μMとなるように茎頂に添加した。その後、一週間生育させて、微分干渉顕微鏡〔ツアイス(Zeiss)社製、商品名:Axioskop plus顕微鏡〕を用いて観察し、0.22mm2の正方形の範囲における気孔の数を測定した。そして、気孔密度を算出した。また、統計解析には、統計解析ソフトRを用いた。また、実施例5で得られた合成ストマジェンの代わりに、不活性なポリペプチド(ストマジェンのアミノ酸配列中の6つのシステイン残基がセリンに置換されたポリペプチド)を、その濃度が100μMとなるように添加したことを除き、前記と同様の操作を行ない、気孔密度を算出した。実施例8において、ストマジェン濃度と気孔密度との関係を調べた結果を図40に示す。なお、図中、白三角、白四角および白丸は、それぞれ異なる個体を示す
【実施例】
【0179】
図40に示された結果から、ストマジェン濃度と気孔密度とは、正の相関関係を有することがわかる。
【実施例】
【0180】
(試験例15)
11Cで標識された二酸化炭素(11CO2)を含む空気を、シロイナズナCol-0系統(ストック番号CS60000)〔野生株〕または調製例5で得られたストマジェン発現抑制株(ストマジェン発現抑制株10)に与えた。その後、ポジトロンイメージング装置〔浜松ホトニクス(株)製、商品名:PETIS〕を用いて、野生株またはストマジェン発現抑制株に取り込まれた11CO2を測定した。試験例15において、野生株またはストマジェン発現抑制株に取り込まれた11CO2を測定した結果を図41に示す。図中、(a)は通常の写真、(b)はポジトロンイメージを示す。
【実施例】
【0181】
図41に示された結果から、正常にストマジェンを発現している野生株における二酸化炭素固定量は、ストマジェン発現抑制株における二酸化炭素固定量と比べて、著しく高くなっていることがわかる。これらの結果から、植物におけるストマジェンの発現により、二酸化炭素固定能が増加することが示唆される。したがって、ストマジェンにより、植物体としての収量の増量を図ることができることが示唆される。
【実施例】
【0182】
(試験例16)
実施例5で得られた化学合成ストマジェンを60℃で5分間(試料番号3)または90℃で5分間(試料番号4)インキュベーションした。また、実施例5で得られた化学合成ストマジェンを凍結乾燥させた(試料番号5)。
【実施例】
【0183】
シロイナズナCol-0系統(ストック番号CS60000)の種子を、滅菌したB5メディウムで維持して発芽させた。発芽後2日目のシロイナズナCol-0系統(ストック番号CS60000)に対して、未処理ストマジェン(試料番号2)、60℃で5分間インキュベーションしたストマジェン(試料番号3)、90℃で5分間インキュベーションしたストマジェン(試料番号4)または凍結乾燥させたストマジェン(試料番号5)を、その濃度が3μMとなるように投与した。
【実施例】
【0184】
その後、シロイナズナCol-0系統(ストック番号CS60000)を22℃で3日間生育させた。つぎに、子葉を採取し、その表面を、共焦点顕微鏡〔ツアイス(Zeiss)社製、商品名:LSM510 META顕微鏡〕を用いて観察し、0.22mm2の正方形の範囲における気孔の数を測定した。そして、気孔密度を算出した。なお、統計解析には、統計解析ソフトR(ウェブアドレス http://www.R-project.org)を用いた。なお、対照として、ストマジェンを投与していないシロイナズナCol-0系統(ストック番号CS60000)を用い、前記と同様に操作を行ない、気孔密度を算出した(試料番号1)。試験例16において、試料の種類と気孔密度との関係を調べた結果を図42に示す。
【実施例】
【0185】
図42に示された結果から、ストマジェンは、熱や乾燥に対して安定であることがわかる。
【実施例】
【0186】
以上の結果から、植物におけるストマジェンの過剰発現または植物に対するストマジェンの投与により、植物における気孔の数および/または気孔密度を増加させることができ、しかも、これにより、植物体としての収量の増量を図ることができることが示唆される。
【実施例】
【0187】
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【配列表フリ-テキスト】
【0188】
配列番号:7は、P10_prom_Fの配列である。
配列番号:8は、P10_prom_Rの配列である。
配列番号:9は、P10_Fの配列である。
配列番号:10は、P10_Rの配列である。
配列番号:11は、EPF1_Fの配列である。
配列番号:12は、EPF1_Rの配列である。
配列番号:13は、GFP-CfusF Bstの配列である。
配列番号:14は、GFP-CfusR Bstの配列である。
配列番号:15は、P-V_Fの配列である。
配列番号:16は、P-V_Rの配列である。
配列番号:17は、Venus_Rの配列である。
配列番号:18は、2Ssp_Fの配列である。
配列番号:19は、2Ssp<--p10mの配列である。p10mの配列である。
配列番号:21は、P10m_Fの配列である。
配列番号:22は、CACC_amiAの配列である。
配列番号:23は、P10ami1_I miR-sの配列である。
配列番号:24は、P10ami1_II miR-aの配列である。
配列番号:25は、P10ami1_III miR*sの配列である。
配列番号:26は、P10ami1_IV miR*aの配列である。
配列番号:27は、P10ami2_ImiR-sの配列である。
配列番号:28は、P10ami2_IImiR-aの配列である。
配列番号:29は、P10ami2_IIImiR*sの配列である。
配列番号:30は、P10ami2_IVmiR*aの配列である。
配列番号:31は、amiBの配列である。
配列番号:32は、P10_RNAi_Fの配列である。
配列番号:33は、P10_RNAi_Rの配列である。
配列番号:34は、tmm SALK_011958-LPの配列である。
配列番号:35は、SALK_011958-RPの配列である。
配列番号:36は、epf1SALK_137549-LPの配列である。
配列番号:37は、SALK_137549-RPの配列である。
配列番号:38は、epf2SALK_047918-LPの配列である。
配列番号:39は、SALK_047918-RPの配列である。
配列番号:40は、spch SAIL_36_B6 LPの配列である。
配列番号:41は、SAIL_36_B6_RPの配列である。
図面
【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図40】
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【図42】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図15】
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【図18】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図41】
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