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明細書 :有機化合物溶存量測定装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5696311号 (P5696311)
公開番号 特開2011-174826 (P2011-174826A)
登録日 平成27年2月20日(2015.2.20)
発行日 平成27年4月8日(2015.4.8)
公開日 平成23年9月8日(2011.9.8)
発明の名称または考案の名称 有機化合物溶存量測定装置
国際特許分類 G01N  33/18        (2006.01)
G01N  31/00        (2006.01)
G01N  21/64        (2006.01)
FI G01N 33/18 B
G01N 31/00 V
G01N 21/64 Z
請求項の数または発明の数 3
全頁数 8
出願番号 特願2010-039509 (P2010-039509)
出願日 平成22年2月25日(2010.2.25)
審査請求日 平成25年2月22日(2013.2.22)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
発明者または考案者 【氏名】梶井 克純
【氏名】中嶋 吉弘
個別代理人の代理人 【識別番号】100150876、【弁理士】、【氏名又は名称】松山 裕一郎
審査官 【審査官】赤坂 祐樹
参考文献・文献 特開2003-075347(JP,A)
特開平07-167850(JP,A)
特開昭54-127392(JP,A)
OHラジカル寿命観測による都市大気質の診断II -東京都心部における総合観測-,中嶋 吉弘 ほか,大気環境学会誌,2009年 1月10日,44(1),33-41
調査した分野 G01N 33/18
G01N 31/00
G01N 21/64
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
特許請求の範囲 【請求項1】
有機化合物が溶存された液状の試料が貯留される貯留部を有する液体試料供給部と、
前記貯留部に貯留された前記試料を気化する加熱部と、
気化された前記試料にオゾンガス及び標準ガスを供給するオゾン添加希釈部と、
前記オゾンガスからOHラジカルを生成して前記試料と反応させるOHラジカル生成反
応部と、
前記OHラジカルの濃度の時間変化を計測するOHラジカル検出部と、
前記時間変化から前記試料に含有された有機化合物量を算出する制御部と、
を備えていることを特徴とする有機化合物溶存量測定装置。
【請求項2】
前記オゾン添加希釈部が、供給する前記標準ガスの供給量を追加調整する追加流量調節部を備えていることを特徴とする請求項1に記載の有機化合物溶存量測定装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の有機化合物溶存量測定装置を使用しての水質診断方法であって、
診断対象となる水を気化する加熱工程と、
気化された前記水にオゾンガス及び標準ガスを供給するオゾン添加希釈工程と、
前記オゾンガスからOHラジカルを生成して前記水と反応させるOHラジカル生成反応工程と、
前記OHラジカルの濃度の時間変化を計測するOHラジカル検出工程と、
前記時間変化から前記試料に含有された有機化合物量を算出する演算工程と、
を備えていることを特徴とする水質診断方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、水等の液体に含まれる有機化合物の溶存量を測定するための有機化合物溶存量測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液性の溶媒に可溶な物質を測定する方法として、液体クロマトグラフィーが知られている。この方法は、非常に高感度で、かつ高精度な定性定量分析法であるが、装置が大掛かりになり取り扱いが複雑となってしまう。そこで、化学物質の特定までは不要である場合には、分析時間を短縮するために、溶媒中の導電度の測定によって濃度を算出している。
【0003】
ただし、電解質物質のみの検出となるので、有機化合物等の非電解質物質への濃度は測定できない。このような場合、例えば、n型半導体触媒膜に吸着させた測定対象水に光源から光を照射し、この際に酸化分解して放出されたハロゲンイオン量の変化を参照電極との電位差として検出して測定対象化合物を定量する方法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特開2002-014078号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の場合、光を照射してイオン分解させているので、物質に応じた光を照射する必要があり不便である。本発明は上記事情に鑑みて成されたものであり、簡便にかつ迅速に液体溶媒中の有機化合物量を測定することができる有機化合物溶存量測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用する。
本発明に係る有機化合物溶存量測定装置は、有機化合物が溶存された液状の試料が貯留される貯留部を有する液体試料供給部と、前記貯留部に貯留された前記試料を気化する加熱部と、気化された前記試料にオゾンガス及び標準ガスを供給するオゾン添加希釈部と、前記オゾンガスからOHラジカルを生成して前記試料と反応させるOHラジカル生成反応部と、前記OHラジカルの濃度の時間変化を計測するOHラジカル検出部と、を備えていることを特徴とする。
【0007】
この発明は、気化した試料にオゾンガスとともに標準ガスを加えて希釈し、添加したオゾンガスからOHラジカルを発生させ、試料中の有機化合物と反応させた際に減衰するOHラジカルの寿命から、反応した有機化合物量、すなわち、試料中の有機化合物量を算出する。
【0008】
また、本発明に係る有機化合物溶存量測定装置は、前記有機化合物溶存量測定装置であって、前記オゾン添加希釈部が、供給する前記標準ガスの供給量を追加調整する追加流量調節部を備えていることを特徴とする。
【0009】
この発明は、OHラジカル生成反応部にて生成されるOHラジカル量に比べて試料中の有機化合物量が多い場合には、供給する標準ガス量を増加してOHラジカル生成反応部内でOHラジカルが残存可能な程度にまで試料を希釈する。
【0010】
本発明に係る水質診断方法は、本発明に係る有機化合物溶存量測定装置を使用しての水質診断方法であって、診断対象となる水を気化する加熱工程と、気化された前記水にオゾンガス及び標準ガスを供給するオゾン添加希釈工程と、前記オゾンガスを生成するからOHラジカルを生成して前記水と反応させるOHラジカル生成反応工程と、前記OHラジカルの濃度の時間変化を計測するOHラジカル検出工程と、前記時間変化から前記試料に含有された有機化合物量を算出する演算工程と、を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、簡便にかつ迅速に液体溶媒中の有機化合物量を測定することができる。また、試料中の有機化合物量にかかわらず、OHラジカルの濃度の時間変化を計測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係る水質診断装置を示す概要図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る水質診断装置におけるオゾン添加希釈部を示す概要図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る水質診断方法を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に係る一実施形態について、図1から図3を参照して説明する。
本実施形態に係る水質診断装置(有機化合物溶存量測定装置)1は、液体試料供給部2と、加熱部3と、オゾン添加希釈部5と、OHラジカル生成反応部6と、OHラジカル検出部7と、制御部8と、を備えている。

【0014】
液体試料供給部2は、農薬や洗剤成分等の有機化合物が溶存された水(液状の試料)Wが貯留される貯留部10と、貯留部10と加熱部3とを連通する配管11と、所定量の水Wを加熱部3へ移送するための移動ガス供給部12と、を備えている。移動ガス供給部12は、制御部8の指示に基づき、例えば所定量の窒素ガスNを貯留部10に供給する。

【0015】
加熱部3は、配管11と連通された気化室13と、気化室13を覆う第一ヒーター15と、を備えている。そして、貯留部10から気化室13に移送された水Wを第一ヒーター15で加熱して気化する。

【0016】
オゾン添加希釈部5は、例えば、窒素ガスN及び酸素ガスOのみから構成される零位調整標準ガスである標準ガスZGが供給されて、標準ガスZG中の酸素ガスからオゾンガスを生成するオゾン生成部16と、オゾン生成部16と連通されてオゾンガス生成に必要な標準ガスZGの供給量を調整するガス流量調節部17と、を備えている。

【0017】
オゾン添加希釈部5は、加熱部3とOHラジカル生成反応部6との間に接続されて、加熱部3で気化された水Wにオゾンガス及び標準ガスZGを供給する。ここで、オゾン添加希釈部5は、オゾン生成部16の出口側配管18と連通される複数の追加ガス流量調節部(追加流量調節部)20と、それぞれに対応するバルブ21と、を備えていてもよい。例えば、本実施形態では、3つの追加ガス流量調節部20が配されている。これら追加ガス流量調節部20は、OHラジカルの減衰速度を所定範囲内に抑えて測定分解能を上げるために、標準ガスZGで水Wを希釈する。

【0018】
ここで、標準ガスZGの汚染を極力抑えるため、標準ガスZGの供給系統には、ポンプ等の機械的な動力源を配さないようにしている。

【0019】
OHラジカル生成反応部6は、例えば、“OHラジカル寿命観測による都市大気質の診断”、吉野彩子他、大気環境学会誌、第40巻、第1号に記載のものと同様のものとされ、真空チャンバー22と、その周囲に巻回された第二ヒーター23と、真空チャンバー22内に配された不図示のレーザー照射部と、を備えている。そして、水W及びオゾンガスからOHラジカルを生成して水Wと反応させる。

【0020】
OHラジカル検出部7は、OHラジカル生成反応部6と連通して配され、例えば、上記の文献に記載のようにレーザー誘起法を利用して、OHラジカル生成反応部6におけるOHラジカル濃度の時間変化を計測する。

【0021】
制御部8は、移動ガス供給部12において、所定量の水Wを気化室13に移送するための窒素ガス量の制御や、ガス流量調節部17における標準ガスZGのガス量の制御を行う。また、OHラジカル検出部7にて検出されたOHラジカル濃度の時間変化から、OHラジカルの消失速度を算出して、例えば、上記文献記載の方法のように、予め計測しておいた各種有機化合物の濃度とOHラジカルの寿命との関係を適用する等により、水W中の有機化合物量の総量を定量的に算出する。

【0022】
次に、本実施形態に係る水質診断装置1による水質診断方法について説明する。
本実施形態に係る水質診断方法は、診断対象となる水Wを気化する加熱工程(S01)と、気化された水にオゾンガス及び標準ガスZGを供給するオゾン添加希釈工程(S02)と、オゾンガスを生成するからOHラジカルを生成して水と反応させるOHラジカル生成反応工程(S03)と、OHラジカルの濃度の時間変化を計測するOHラジカル検出工程(S04)と、この時間変化から水Wに含有された有機化合物量を算出する演算工程(S05)と、を備えている。

【0023】
加熱工程(S01)では、まず、診断対象となる水Wを貯留部10に入れる。そして、移動ガス供給部12により所定量の窒素ガスNを貯留部10に供給し、供給量に応じた水Wの一部を気化室13に移送する。そして、第一ヒーター15によって気化室13内の水Wを加熱して気化する。

【0024】
オゾン添加希釈工程(S02)では、オゾン添加希釈部5のガス流量調節部17にて、所定量の標準ガスZGをオゾン生成部16に供給する。そして、オゾン生成部16にて、標準ガスZG中の酸素から公知の方法によってオゾンガスを生成する。

【0025】
そして、OHラジカル生成反応工程(S03)に移行して、オゾン添加希釈部5で生成されたオゾンガスと標準ガスZGとを気化した水Wに供給して、これらの混合ガスを生成する。そして、OHラジカル生成反応部6内にて、公知の方法によってオゾンガスを光分解してOHラジカルを発生させる。

【0026】
このとき、OHラジカルは真空チャンバー22内で混合ガス中の有機化合物と反応して減衰する。OHラジカル検出工程(S04)では、OHラジカル検出部7内でレーザー光を照射して励起させ、発せられた蛍光を光電子増倍管等によって検出して計測し、OHラジカル濃度の時間変化を測定する。こうして、演算工程(S05)に移行して、OHラジカルの寿命を算出する。

【0027】
この際、OHラジカルの減衰速度が大きい場合には、混合ガス中の有機化合物量が多すぎるためと考えられる。そこで、オゾン添加希釈部5よりオゾンガスを供給する際に、制御部8の指示に基づき、追加ガス流量調節部20を順次作動させて標準ガスZGの供給量を増加してさらに希釈して、希釈量に応じた補正を制御部8にて行う。

【0028】
すなわち、加熱工程(S01)にて供給される窒素ガスの流量をQw、オゾン添加希釈工程(S02)にて添加されるオゾンガスの添加流量をQo3及び標準ガスZGの流量をQzg、としたとき、総ガス流量Qtは、Qw+Qo3+Gzgとなるので、希釈率nは、Qw/Qtとなる。当初、デフォルトとしてこの希釈率nはある値に設定される。そして、実際にOHラジカル寿命を測定したときの測定値(τmeans)が、測定可能なOHラジカル寿命の下限値(τmax)よりも下回る場合には、τmaxを上回るように希釈率nを変更して再度、上記各工程を繰り返す。

【0029】
こうして、τmeans×nの関係式から算出したものを水W中の有機化合物と反応させた際に減衰するみかけ上のOHラジカルの寿命(τsample)とする。そして、あらかじめ基準となる試料水(例えば純水)のOHラジカル寿命(τstandard)を同様に測定したものとの差(τsample-τstandard)を、水W中の有機化合物と反応させた際に減衰する真のOHラジカルの寿命(τtrue)として、この大きさから水Wの水質診断を行なう。

【0030】
この水質診断装置1によれば、気化した水Wにオゾンガスとともに標準ガスZGを加えて希釈し、添加したオゾンガスからOHラジカルを発生させ、水W中の有機化合物と反応させた際に減衰するOHラジカルの寿命(τsample)を計測することができる。そして、これから、さらに上述のようにτtrueを算出することにより、水Wの水質診断を行なうことができる。このとき、OHラジカル寿命を特定の1種類の有機化合物濃度に換算することができ(例えばベンゼン換算濃度)、反応した有機化合物量、すなわち、水W中の有機化合物量の総量を定量的に算出することができる。

【0031】
特に、オゾン添加希釈部5が、供給する標準ガスZGの供給量を追加調整する追加ガス流量調節部20を備えている。そのため、OHラジカル生成反応部6にて生成されるOHラジカル量に比べて水W中の有機化合物量が多い場合には、供給する標準ガスZGの量を増加してOHラジカル生成反応部6内でOHラジカルが残存可能な程度にまで試料を希釈することができる。そして、水W中の有機化合物量にかかわらず、OHラジカルの濃度の時間変化を計測することができる。

【0032】
なお、本発明の技術範囲は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上記実施形態では、オゾン添加希釈部5が3つの追加ガス流量調節部20を備えているとしているが、これに限らず、測定対象試料の量とOHラジカルの減衰速度との関係から決めればよい。
【符号の説明】
【0033】
1 水質診断装置(有機化合物溶存量測定装置)
2 液体試料供給部
3 加熱部
5 オゾン添加希釈部
6 OHラジカル生成反応部
7 OHラジカル検出部
8 制御部
10 貯留部
20 追加ガス流量調節部(追加流量調節部)
W 水(試料)
ZG 標準ガス
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2