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明細書 :生体埋め込み型流量センサ

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5626689号 (P5626689)
登録日 平成26年10月10日(2014.10.10)
発行日 平成26年11月19日(2014.11.19)
発明の名称または考案の名称 生体埋め込み型流量センサ
国際特許分類 G01F   1/684       (2006.01)
G01F   1/00        (2006.01)
A61B   5/087       (2006.01)
FI G01F 1/68 101Z
G01F 1/00 Q
A61B 5/08 200
請求項の数または発明の数 3
全頁数 18
出願番号 特願2011-536071 (P2011-536071)
出願日 平成22年8月10日(2010.8.10)
国際出願番号 PCT/JP2010/063568
国際公開番号 WO2011/045974
国際公開日 平成23年4月21日(2011.4.21)
優先権出願番号 2009237300
優先日 平成21年10月14日(2009.10.14)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成25年8月12日(2013.8.12)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人名古屋大学
発明者または考案者 【氏名】式田 光宏
【氏名】川部 勤
【氏名】松島 充代子
【氏名】横田 拓央
【氏名】岩井 聡
【氏名】松永 直之
個別代理人の代理人 【識別番号】110000578、【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
審査官 【審査官】岸 智史
参考文献・文献 米国特許出願公開第2007/0249950(US,A1)
特開平09-215666(JP,A)
特開2007-127538(JP,A)
特開2009-168480(JP,A)
調査した分野 G01F 1/00-1/699
A61B 5/08
特許請求の範囲 【請求項1】
ヒータを形成したフレキシブル基材を、媒体が流れる生体内の管状器官に沿うように配置された配管内に実装し、実装されたフレキシブル基材の前記ヒータから発生する熱量が前記媒体に伝達される状態を検出することで、生体内の管状器官内を流れる媒体の流量を測定する流量センサであって、
前記フレキシブル基材上に二つ以上形成されたヒータのそれぞれが、同一条件において同一の加熱性能を有した対称構造をなし、かつ、前記各ヒータに前記生体外部から電力を供給する線状部材が、同一条件において同一の加熱性能を有する対称構造をなすことで、前記配管内のヒータ及び線状部材による熱分布が対称となるように構成し、
前記複数の線状部材は、前記管状器官内から前記生体外部へ、前記管状器官内壁に対し交差するように突出していることを特徴とする生体埋め込み型流量センサ。
【請求項2】
請求項1に記載の生体埋め込み型流量センサにおいて、
前記生体は、一定範囲内で動く作動部位を有し、
該作動部位の作動範囲外に、前記線状部材のうち生体外部へ突出した部分が設けられていることを特徴とする生体埋め込み型流量センサ。
【請求項3】
請求項2に記載の生体埋め込み型流量センサにおいて、
前記生体埋め込み形流量センサが設置される位置が、動物の気管であり、
前記線状部材に接続された電気配線部材が、前記動物の背部から動物の外部に取り出されることを特徴とする生体埋め込み型流量センサ。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、生体の管状器官内を流れる気体、液体等の媒体の流量を検出することができる生体埋め込み型流量センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、フレキシブル基材にヒータを形成し、このフレキシブル基材を管内壁形状に沿うように管内壁に実装するような構造の流量センサがある。この流量センサは、厚さ数ミクロンのフィルム上にセンサを作製し、これを流速が最も小さくなる配管の内壁面に実装しているため、センサ設置に伴う流体抵抗の増加を極限まで低減できるという特徴がある(例えば、特許文献1参照)。また、上記流量センサを熱収縮チューブにより小型化する技術もある(例えば、特許文献2参照)。

【特許文献1】特開2007-127538号公報
【特許文献2】特開2009-168480号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、特許文献1および特許文献2で述べられている流量センサは、カテーテル構造に流量センサを組み込む形態になっており、流量センサを生体の管状器官に埋め込んで管状器官内の媒体の流量を計測すること、例えば、動物実験用のラットなどの気道に埋め込むことはできない。また、従来のカテーテル構造の流量センサでは、配管内の流体の流れ方向に沿って、センサへの電気的配線が伸びているために、配管内の流体の流れの向きにより、流量に対するセンサ出力特性(上流側から流れる場合の出力値と、下流側から流れる場合の出力値)が異なってしまい、呼気吸気などの往復流を正確に計測できないという問題がある。
【0004】
以下にその態様を詳細に述べる。特許文献1では、「ヒータへの電極取出しは、ヒータが形成されたフレキシブル基板の一部を、内部に流体が流れる配管の端部にて管外に折り曲げて行われる」と記載されており、また、願書の添付図面の記載によれば、「ヒータに連結する薄膜配線はヒータと同様にフレキシブル基板上に形成され、かつ、配線は配管の一方向から取り出す構造」になっている。
【0005】
このことから、特許文献1では、「ヒータへの電力供給は、先ず管内にて配管の一方向から薄膜配線で取り出され、最終的に配管端部にて管外に折り曲げられて外部に接続する構成である」ので、配管内の流体の流れが上流側から流れる場合と下流側から流れる場合とで、センサ出力特性が異なるという現象が生じている。
【0006】
特許文献2も基本的には、上記特許文献1と同様に、「ヒータへの電力供給をする薄膜配線は配管内部にて管の一方向から取り出される構造」になっているので、同様の現象が生じている。
【0007】
このような「ヒータへ電力を供給する配線が配管内で、かつ、配管の一方向から薄膜配線で取り出す構造になっている場合に、配管内の媒体の往復流を正確に計測できない」の理由を詳細に検討したところ、以下のように考察することができた。
【0008】
すなわち、ヒータへ電力を供給する薄膜配線も電気的抵抗値を有しているために、わずかではあるが薄膜配線部は、発熱体と同様の機能を果たす。従って、上記のようにヒータに対して、薄膜配線を配管内の流体の流れ方向から取り出すと、薄膜配線も発熱体になるため、ヒータ上での熱分布が非対称となり、その結果、配管を流れる流体の方向によりセンサの出力特性が変化する。
【0009】
その結果、一方向の流れに対してのみ流量計測するのであれば何ら問題は生じないが、呼気吸気などの往復流計測に適用すると、流体の流れの方向によりセンサ出力値が異なり、流体の流量を正確に計測できないという課題が生じていたのである。
【0010】
本発明は、上記課題を解決するもので、生体の管状器官に埋め込んで管状器官内の媒体の流量計測を正確に行うことができる生体埋め込み型流量センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するためになされた本発明の第1局面の生体埋め込み型流量センサは、ヒータを形成したフレキシブル基材を、媒体が流れる生体内の管状器官に沿うように配置された配管内に実装し、実装されたフレキシブル基材の前記ヒータから発生する熱量が前記媒体に伝達される状態を検出することで、生体内の管状器官内を流れる媒体の流量を測定する流量センサであって、
前記フレキシブル基材上に二つ以上形成されたヒータのそれぞれが、同一条件において同一の加熱性能を有した対称構造をなし、かつ、前記各ヒータに前記生体外部から電力を供給する線状部材が、同一条件において同一の加熱性能を有する対称構造をなすことで、前記配管内のヒータ及び線状部材による熱分布が対称となるように構成し、
前記複数の線状部材は、前記管状器官内から前記生体外部へ、前記管状器官内壁に対し交差するように突出していることを特徴とする。

【0012】
上記した構成では、流量計測のためのフレキシブル基材上に二つ以上形成されたヒータが同一条件において同一の加熱性能を有した対称構造をなし、かつ、各ヒータに前記生体外部から電力を供給する線状部材が、同一条件において同一の加熱性能を有した対称構造をなすことで、前記配管内のヒータ及び線状部材による熱分布が対称となるように構成されているため、配管内の媒体の流れの向きに寄らずに、配管内を流れる媒体の流量に対するセンサ出力特性を同じにすることができ、その結果、呼気吸気などの往復流を正確に計測できる。また、フレキシブル基材を生体内の管状器官の内壁形状に沿うように生体内の管状器官の内壁に実装した場合、センサ設置に伴う流体抵抗を極限まで低減できる。
【0013】
また、「複数のヒータが、同一条件において同一の加熱性能を有する」とは、例えば、複数のヒータが同じ材料で形成されている場合には、同一の大きさ及び形状をしている場合であり、材料が異なれば同一の大きさや形状でない場合も含まれる。また、「線状部材が同一条件において同一の加熱性能を有する」構造とは、上記ヒ—タの構造と同様の内容を意味する。
【0014】
そして、複数の線状部材は、前記管状器官内から前記生体外部へ交差するように突出しているので、複数の線状部材を介してフレキシブル基板上のヒータに生体外部から電力を供給することできる。それにより、例えば、人間や動物などの生体内の管状器官に埋め込んでも、センサ部分に外部からセンサへの信号のやり取りが可能である。なお、生体内の管状器官としては、媒体として空気が流れる気道以外に、媒体として液体が流れる血管や尿管あるいは固形流動物が流れる腸管などが考えられる。
【0015】
ところで、線状部材に対して外部から電源を供給するには、種々の方法が考えられるが、複数の線状部材に対して外部から有線又は無線で電源を供給するため、線状部材は生体内の管状器官を貫通して前記生体の外部へ突出するように構成されるとよい。
【0016】
このようにすると、外部から電源供給を行うことができるので、電池の容量に制限されず、長時間に亘る生体内の管状器官内の媒体の流量を計測することができる。
なお、「有線で電源を供給する線状部材」とは、例えば、生体に可能な限り悪影響を与えないように被覆された銅線やアルミ線などの電源配線を意味しており、「無線で電源を供給する線状部材」とは、例えば、線状やループ状の空中線(アンテナ)を意味している。
【0017】
また、生体は、手足や口、あるいは尾といった作動部位を有しているため、管状器官内の媒体の流量検出の際、線状部材がそれら作動部位によって破壊される可能性がある。そこで、本発明の第2局面のように、前記生体は、一定範囲内で動く作動部位を有し、
該作動部位の作動範囲外に、前記線状部材のうち生体外部へ突出した部分が設けられているのが望ましい。
【0018】
更には、線状部材のうち生体外部へ突出した部分が生体の作動部位によって破壊されない位置であるようにすると、管状器官内の媒体の流量計測中に、生体の作動部位によって線状部材が破壊されないので、都合がよい。
【0019】
さらに、本発明の第3局面のように、生体埋め込み形流量センサが設置される位置が、動物の気管であり、前記線状部材に接続された電気配線部材が、前記動物の背部から動物の外部に取り出される。
【0020】
このように生体埋め込み形流量センサが設置される位置が気管である場合、線状部材が前記気管から突き出るように外部に取り出され、前記線状部材に接続された電気配線部材は、前記生体の背部まで引き回された後に、前記背部から動物の外部に取り出されるのが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本実施形態の埋め込み型小型流量センサの使用概念を示す図である。
【図2】本実施形態の具現化した埋め込み型小型流量センサの構造を示す図である。
【図3A-3D】本実施形態の埋め込み型小型流量センサに用いられているフィルム基板の薄膜配線とワイヤー状電気配線との接続方法を示す図である。
【図4】本実施形態のフィルム状流量センサの写真を示す図である。
【図5A-5F】本実施形態の埋め込み型小型流量センサを埋め込みが可能な外径数ミリメートル以下に小型化する手法を示す図である。
【図6】本実施形態の埋め込み型小型流量センサの実装の様子を示す図である。
【図7】本実施形態の流量センサの入力電力と検出流量との関係例を示す図である。
【図8A-8C】比較例として従来タイプの流量センサ(従来センサ)における電気的配線取出し構造の場合における、ヒータ上での温度分布と、流量とセンサ出力との関係を示す図である。
【図9A-9C】本実施形態の流量センサにおける電気的配線取出し構造の場合における、ヒータ上での温度分布と、流量とセンサ出力との関係を示す図である。
【図10A-10B】本実施形態の埋め込み型小型流量センサを実験動物であるラットに埋め込んだときの実装の様子を示す図である。
【図11】本実施形態の埋め込み型小型流量センサをラットの気道に埋め込んだ後、流量センサで、直接、ラット活動時の気道での呼気吸気特性を評価したときの結果を示す図である。
【符号の説明】
【0022】
1…実験用動物、2…気道(管状器官)、3…埋め込み型小型流量センサ、4…ワイヤー状電気配線(電気配線部材)、5…フィルム状フレキシブル電気配線、10…フィルム状流量センサ、11…フィルム基板、12…ヒータ、13…薄膜配線(線状部材)、15…異方性導電フィルム、20…熱絶縁用空洞構造、21…流路、30…配管、40…位置合わせ用冶具、41…溝、42…樹脂フィルム、50…熱収縮チューブ、51…配線取り出し用スリット。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を実施するための最良の形態をより詳細に説明する。
本発明を具体化した実施の形態の埋め込み型小型流量センサの使用概念を図1に示す。ラットおよびマウスなどの実験用動物1の気道2に、埋め込み型小型流量センサ3を埋め込み、実験用動物1の活動時における呼気吸気状態を定量的に埋め込み型小型流量センサ3にて計測評価する。

【0024】
埋め込み型小型流量センサ3と外部との電気的な信号のやり取りは、埋め込み型小型流量センサ3に接続したワイヤー状電気配線4を用い、このワイヤー状電気配線4を実験用動物の皮膚下で、背の部分まで回し、背にて外部に取り出す。

【0025】
これにより、実験用動物1が活動時における呼気吸気状態を計測評価する際に、動物の手・足や口、あるいは尾等の作動部位でもってワイヤー状電気配線4を引っ掻くのを防止するので、ワイヤー状電気配線4は動物の手等の作動部位でもって破壊されない。

【0026】
なお、埋め込み型小型流量センサの外径は、適用する実験動物の気道2の大きさに併せて決定するのが望ましい。例えば、マウスの場合、埋め込み型小型流量センサの外径は、1.5mmから1.8mm程度で、ラットの場合は1.8mmから2.0mm程度が望ましい。

【0027】
次に、本発明を具現化した実施の形態の埋め込み型小型流量センサの構造を図2に示す。
埋め込み型小型流量センサ3は、配管内壁に沿うように配置したフィルム状流量センサ10と熱絶縁用空洞構造20と流路21と配管30とからなる。フィルム状流量センサ10は、フィルム基板11上にヒータ12と、ヒータに電力を供給する薄膜配線13とからなる。フィルム基板11は配管30の内壁に沿うように配置されており、これにより配管30内にセンサ10の設置に伴う、配管30内の流路21を流れる流体の流れの乱れを極限まで低減している。

【0028】
また、フィルム基板11上に形成した二組のヒータ12と薄膜配線13は、何れも同一形状であって、同一条件において同一の加熱性能を有した対称構造をなすことで、前記配管30内のヒータ12及び薄膜配線13による熱分布を対称となるように構成している。

【0029】
更に、薄膜配線13は、管状器官である気道から生体外部へ突出するように配置されている。具体的には、配管30内の流路21を流れる流体の流れに対して、交差(垂直)するように配管30内から外部に取り出されており、流れの向きが反転した場合でも、二組のヒータ12と薄膜配線13とが同一条件で反転した状態になっている。これにより、配管30内の媒体の流れの向きに寄らずに、流量に対するセンサ出力特性が同じになる。

【0030】
また、フィルム基板11に設けた薄膜配線13の端部には異方性導電フィルム15を用いてワイヤー状電気配線4が接続されている。これにより、埋め込み型小型流量センサ3を動物の気道に埋め込んだ場合でも、皮膚下においてワイヤー状電気配線4を容易に背の部分に引き回すことができ、かつ、背部から取り出した後も、信頼性の高い配線取出しが可能となる。

【0031】
なお、ワイヤー状電気配線4には、物理的な張力がかかる可能性を考慮して、適用すべき直径を決定することが望ましい。なお、異方性導電フィルム15を介してワイヤー状電気配線4(電気配線部材)に接続されている薄膜配線13が、埋め込み型小型流量センサ3のヒータ12に電力を供給する線状部材として機能している。

【0032】
埋め込み型小型流量センサ3にはフィルム基板11上に形成したヒータ12の熱絶縁を図るために、ヒータ外周部に熱絶縁用空洞構造20が形成されている。熱絶縁用空洞構造20を形成するために、埋め込み型小型流量センサ3の配管30は樹脂材による二重構造になっている。これにより、ヒータ基板に対する熱絶縁が図られ、一分間に10~20回の呼吸を計測することが可能となる。

【0033】
また、異方性導電性フィルム15を用いて薄膜配線12とワイヤー状電気配線4とを接続している部分は、更に外側に樹脂材による円筒構造が設けられ、この部分から流体が漏れることなく、ワイヤー状電気配線4のみを外部に取り出す構造になっている。

【0034】
なお、図2には、二組のヒータを用いて、配管内の流量とその向きを検出する場合を示したが、用途に応じて、一つのヒータと、その両外に検出用のセンサを設けるという方法もある。この場合には、測定できる流量範囲が狭くなるが、その反面、少ない流量において高精度に流量計測できるという特徴がある。

【0035】
また、図2には円筒状の管を用いた場合を示したが、これ以外の形状の管(例えば、楕円および四角形断面)の場合でも、本センサはフィルム基板11の柔軟性を活かして、管内壁構造に応じて変形させ、内壁に適応させることもできる。従って、管内壁上に設置するセンサ形態も測定したい管の形状に応じて変更することが望ましい。

【0036】
次に、本実施の形態の埋め込み型小型流量センサに用いられているフィルム基板の薄膜配線とワイヤー状電気配線との接続方法を図3A-3Dに示す。
図3Aにおいて、先ず、位置合わせ用治具40に設けた溝41にワイヤー状電気配線4を挿入し、ワイヤー状電気配線4を固定する。なお、最後の接続工程で、異方性導電性フィルム15が位置合わせ用治具40に密着するのを防止するために、接続箇所のワイヤー状電気配線4の下側には、樹脂フィルム42を設けておく。

【0037】
なお、樹脂フィルム42については、適用先に応じてその材質を決定することが望ましい。また、接続箇所のワイヤー状電気配線4の一部は、異方性導電性フィルム15でフィルム基板11に形成した薄膜配線13と電気的な接続をするために、絶縁被覆が取り除かれている。

【0038】
図3Bにおいて、接続箇所のワイヤー状電気配線4の上に、異方性導電性フィルム15を載せる。
図3Cにおいて、フィルム基板11に設けた薄膜配線13を、薄膜配線13が異方性導電フィルム側になるようにし、かつ、薄膜配線13と接続箇所のワイヤー状電気配線4とが電気的に導通するように位置合わせを行う。最後に、接続箇所を熱圧着により密着させ、薄膜配線13とワイヤー状電気配線4とを、物理的かつ電気的に接続する。なお、フィルム基板11上へのヒータ12と薄膜配線12の作製には、金属薄膜形成技術とホトリソグラフィー技術を用いる。

【0039】
図3Dにおいて、上記方法にて作製したフィルム状流量センサ10の概観を示す。
本発明のフィルム状流量センサの写真を図4に示す。図4内の上側にはヒータ部分の拡大写真を、そして下側にはフィルム状流量センサ10の全体の様子を示してある。

【0040】
図4には、厚さ数ミクロンの樹脂フィルム上に、クロム(50ナノメートル)、金(250ナノメートル)でヒータ12と薄膜配線13とを形成した場合を示してある。なお、図4には、二組のヒータを用いて、配管内の流量とその向きを検出する場合を示したが、用途に応じて、一つのヒータと、その両外に検出用のセンサを設けるという方法もある。この場合には、測定できる流量範囲が狭くなるが、その反面、少ない流量において高精度に流量計測できるという特徴がある。

【0041】
次に、本実施の形態の埋め込み型小型流量センサを埋め込みが可能な外径数ミリメートル以下に小型化する手法を図5A-5Fに示す。本実施の形態では、熱収縮性樹脂チューブを用いて、フィルム状流量センサ10を配管内壁に実装し、かつ、その大きさを数ミリメートル以下になるように設計している。以下にその詳細を述べる。

【0042】
図5Aにおいて、先ず、フィルム状流量センサ10のヒータ12の両側に熱収縮チューブ50を挿入する。この場合、熱収縮チューブの大きさは、例えば、内径1.27ミリメートルと比較的大きく、フィルム状流量センサ10の両側に熱収縮チューブ50を挿入できる。

【0043】
フィルム状流量センサ10の両側に熱収縮チューブ50を挿入したときの断面図を図5Aの右側に示してある。本手法では、挿入時に、フィルム状流量センサ10が配管内壁に沿う必要がなく、単に、フィルム状流量センサ10のヒータ12の両側に熱収縮チューブ50を挿入すればよく、容易な操作になっている。なお、ヒータ12の部分には、熱収縮チューブ50は設けず、結果、この部分が最終的には熱絶縁用の空洞構造20になる。

【0044】
また、フィルム状流量センサ10に設けたワイヤー状電気配線4は熱収縮チューブ50間から外部へ取り出されるようになっている。なお、熱収縮チューブの大きさ及び材質、流量センサの大きさは、適宜、使用条件に応じて決定されることが望ましい。

【0045】
図5Bにおいて、フィルム状流量センサ10のヒータ12の両側に設けた熱収縮チューブ50に熱を加え、熱収縮チューブ50を所望の大きさまで収縮させる。このとき、熱収縮チューブ50の収縮に伴い、フィルム状流量センサ10の両端部分は自動的に管内壁に沿うように実装される。

【0046】
図5Cにおいて、再度、熱収縮チューブ50を用意し、これの中に、先ほどの工程で形成した熱収縮型流量センサチューブを挿入する。本チューブには、先ほどのチューブとは異なり、熱収縮チューブ50の一部に、電気配線を外部に取り出すためのスリット51が設けられている。

【0047】
図5Dにおいて、再度、熱を加えて外側の熱収縮チューブ50を縮小させるとともに、内側のチューブに密着させて、熱絶縁用空洞構造20を形成する。また、チューブの収縮過程において、電気配線用フィルム部分を挟んだ状態でスリット51を閉じさせる。

【0048】
図5Eにおいて、異方性導電性フィルム15による薄膜配線12とワイヤー状電気配線4との接続箇所を物理的に保護することを目的として、再度、この接続箇所部分のみを覆うような熱収縮チューブ50を用意し、先ほどの工程で形成した熱収縮型流量センサチューブを挿入する。

【0049】
図5Fにおいて、再度、熱を加えて配線接続保護用熱収縮チューブを縮小させるとともに、内側のチューブを密着させて、ワイヤー状電気配線4のみが熱収縮型流量センサチューブからむき出しになった構造にする。

【0050】
以上のようなプロセスを用いることで、フレキシブル基板11上に設けた二組のヒータ12及び薄膜配線13が、同一形状で、かつ、薄膜配線13は流路21を流れる流体の流れに対して、垂直に配管内から外部に取り出されており、流れの向きが反転した場合でも、二組のヒータ12と薄膜配線13とが同一条件で反転した状態になる。これにより、流れの向きに寄らず流量に対するセンサ出力特性を同じになり、結果、呼気吸気などの往復流を正確に計測できるようになる。

【0051】
また、異方性導電フィルム15による薄膜配線12とワイヤー状電気配線4との接続箇所は、熱収縮チューブ50に保護され、かつ、ワイヤー状電気配線4のみが熱収縮型流量センサチューブからむき出しになっており、埋め込み型小型流量センサ3を動物の気道に埋め込んだ場合でも、皮膚下においてワイヤー状電気配線4を容易に背の部分に引き回すことができ、かつ、背部から取り出した後も、機械的負荷に対して信頼性の高い配線取出しが可能となる。

【0052】
本発明の埋め込み型小型流量センサの実装の様子を図6に示す。上記にて説明したように、ワイヤー状電気配線4のみが熱収縮型流量センサチューブからむき出しになっており、動物の気道に容易に埋め込みができるようになっている。

【0053】
次に、本実施の形態の流量センサの入力電力と検出流量との関係例を図7に示す。ヒータ素子自体を流量センサとして用いる場合の流量に対するセンサブリッジ回路への入力電力を図7に示した。図7に示したように、流量に応じて入力電力が変化しており、これを校正曲線とすることで、本センサでは未知の流量を算出できる。

【0054】
ここで、比較例として、従来の形態の流量センサ(従来センサ)における電気的配線取出し構造と、ヒータ周辺の温度分布と、流量とセンサ出力との関係を図8A-8Cに示す。図8Aは、従来センサにおける電気的配線取出し構造を示す図であり、図8Bは、ヒータ周辺の温度分布の概念図と測定結果を示した図であり、図8Cは、流量とセンサ出力との関係を示した図である。

【0055】
図8Aに示したように、従来の形態では、ヒータ112へ電力を供給する薄膜配線113は配管内部にて管の一方向から取り出された構造になっているので、薄膜配線113も発熱体になるために、図8Bに示したように、ヒータ上での熱分布が非対称となる。

【0056】
その結果、図8Cに示したように、配管内を流れる流体の向きにより、センサの出力値が異なってしまうという現象が起きていた。これは、ヒータ112へ電力を供給する薄膜配線113は電気的抵抗値を有しているために、わずかではあるが薄膜配線113も発熱体になり、上記のようにヒータ112に対して、薄膜配線113を配管内の流体の流れ方向から取り出すと、薄膜配線113の発熱により、ヒータ112上での熱分布が非対称となり、その結果、配管を流れる流体の方向によりセンサの出力特性が変化するからである。

【0057】
それに対し、本実施形態の流量センサは上記課題を克服した薄膜配線の構造になっている。本実施形態の流量センサにおける電気的配線取出し構造と、ヒータ周辺の温度分布と、流量とセンサ出力との関係を図9A-9Cに示す。図9Aは、本実施形態における電気的配線取出し構造を示す図であり、図9Bは、ヒータ周辺の温度分布の概念図と測定結果を示した図であり、図9Cは、流量とセンサ出力との関係を示した図である。

【0058】
図9Aに示したように、本実施形態では、二組のヒータ12と薄膜配線13は、何れも同一形状であって、同一条件において同一の加熱性能を有した対称構造をなすことで、配管内のヒータ12による熱分布を対称となるように構成し、更に、薄膜配線13は流路を流れる流体の流れに対して、交差するように配管内から外部に取り出されている。

【0059】
これにより、図9Bに示したように、ヒータ上での熱分布が対称となり、その結果、図9Cに示したように、配管内を流れる流体の向きによらずに、流量に対するセンサ出力特性が同じになり、配管内を流れる流体の往復流を正確に計測できる。

【0060】
次に、本実施の形態の埋め込み型小型流量センサを実験動物であるラットに埋め込んだときの実装の様子を図10A-10Bに示す。
図10Aにおいて、本発明の埋め込み型小型流量センサをラットの気道内に埋め込んだ後の様子を示している。

【0061】
図10Bにおいて、埋め込み型小型流量センサを気道内に埋め込んだ後に、ワイヤー状電気配線4は皮膚下でラットの頭部背面まで引き回され、その後、ラットの背の部分にて外界に引き出されている様子を示している。

【0062】
本実施の形態の小型流量センサをラットの気道に埋め込んだ後、流量センサで、直接、ラット活動時の気道での呼気吸気特性を評価したときの結果を図11に示す。この結果は、本発明の埋め込み型小型流量センサ3で実際にラット活動時での気道での呼気吸気が定量的に評価できることを示している。

【0063】
上記の図1から図7にて記載した事項は、本流量センサの一例で、その具体的な仕様はいずれも使用目的に応じて変更することが望ましい。また、本センサで対象とする流体は主に気体であり、気体であればどのような種類でも適用できる。なお、血液や尿などの液体や固体流動物の場合にも適用可能である。

【0064】
このように本実施の形態では、フィルム基板11上に形成した二組のヒータ12と薄膜配線13は、何れも同一形状で、かつ、薄膜配線13は流路21を流れる流体の流れに対して、垂直に配管内から外部に取り出されており、流れの向きが反転した場合でも、二組のヒータ12と薄膜配線13とが同一条件で反転した状態になっている。これにより、配管内の流体の流れの向きに寄らずに、流体流量に対するセンサ出力特性を同じになった。

【0065】
また、フィルム基板11に設けた薄膜配線13の端部には異方性導電フィルム15を用いてワイヤー状電気配線4が接続されている。これにより、埋め込み型小型流量センサ3をラット(小動物)の気道に埋め込んだ場合でも、皮膚下においてワイヤー状電気配線4を容易に背の部分に引き回すことができ、かつ、背部から取り出した後も、信頼性の高い配線取出しが可能となった。その結果、ワイヤー状電気配線4は、ラットの背部まで引き回された後に、ラットの背部からラットの外部に取り出されるよう構成されている。

【0066】
また、フィルム基板11は配管30の内壁に沿うように配置されており、これによりセンサ設置に伴う管内での流れの乱れを極限まで低減した。
(その他の実施形態)
上記実施形態では、ラットの外部から、ワイヤー状電気配線により、薄膜配線13を介してヒータ12に電力を供給していたが、ワイヤー状電気配線をアンテナとして使用し、薄膜配線13上にマイクロ波受信機を装着するようにしてもよい。

【0067】
そして、外部からマイクロ波を供給し、アンテナとしてのワイヤー状電気配線でマイクロ波を受信して、マイクロ波受信機で電力に変換し、薄膜配線13を介してヒータ12に電力を供給するのである。この場合、マイクロ波受信機及びアンテナとして使用されるワイヤー状電気配線でもって、生体外部と信号の受け渡しが可能となっており、生体の手・足等の作動部位が接触しにくい構成になっている。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3A-3D】
2
【図4】
3
【図5A-5F】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8A-8C】
7
【図9A-9C】
8
【図10A-10B】
9
【図11】
10