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明細書 :超微小液滴調製装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5645169号 (P5645169)
登録日 平成26年11月14日(2014.11.14)
発行日 平成26年12月24日(2014.12.24)
発明の名称または考案の名称 超微小液滴調製装置
国際特許分類 B01F  11/02        (2006.01)
B01J  19/00        (2006.01)
B01J  19/10        (2006.01)
B01F   3/08        (2006.01)
B01F   5/00        (2006.01)
B01J  13/00        (2006.01)
A61K   8/06        (2006.01)
A61K   9/107       (2006.01)
A61P  35/00        (2006.01)
FI B01F 11/02
B01J 19/00 321
B01J 19/10
B01F 3/08 A
B01F 5/00 A
B01J 13/00 A
A61K 8/06
A61K 9/107
A61P 35/00
請求項の数または発明の数 2
全頁数 19
出願番号 特願2011-540465 (P2011-540465)
出願日 平成22年10月27日(2010.10.27)
国際出願番号 PCT/JP2010/069104
国際公開番号 WO2011/058881
国際公開日 平成23年5月19日(2011.5.19)
優先権出願番号 2009260180
2010209620
優先日 平成21年11月13日(2009.11.13)
平成22年9月17日(2010.9.17)
優先権主張国 日本国(JP)
日本国(JP)
審査請求日 平成25年10月7日(2013.10.7)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504147243
【氏名又は名称】国立大学法人 岡山大学
発明者または考案者 【氏名】神田 岳文
【氏名】鈴森 康一
【氏名】小野 努
【氏名】檜垣 和孝
【氏名】大河原 賢一
個別代理人の代理人 【識別番号】100080160、【弁理士】、【氏名又は名称】松尾 憲一郎
審査官 【審査官】関口 勇
参考文献・文献 特開2009-226271(JP,A)
特開平04-059032(JP,A)
特開2004-354180(JP,A)
特開2006-519685(JP,A)
調査した分野 B01F 11/02
A61K 8/06
A61K 9/107
A61P 35/00
B01F 3/08
B01F 5/00
B01J 13/00
B01J 19/00
B01J 19/10
特許請求の範囲 【請求項1】
連続相を形成する流体と分散相を形成する流体を、微小断面となした単一のマイクロ流路に合流させるマイクロ流路部と、
前記マイクロ流路部に超音波振動を照射する超音波振動照射部を備えて、
超音波振動照射部の駆動周波数をマイクロ流路内に形成させる振動場の共振周波数に一致させることで、エマルションを生成するとともに分散相を超微小液滴に調製可能とした超微小液滴調製装置であって、
板状に形成した基板と、基板と略同形の板状に形成した流路形成体と、基板と略同形の板状に形成しかつ超音波振動照射部の超音波振動子を支持する支持体を重合状態に積層し、
流路形成体には、幅方向に伸延しかつ長手方向に細幅の板厚方向流路を板厚方向に貫通させて形成し、板厚方向流路は流路形成体の長手方向に一定の間隔を開けて多数形成して、隣接する一方の板厚方向流路と下端部同士を下端長手方向流路を介して連通するとともに、隣接する他方の板厚方向流路と上端部同士を上端長手方向流路を介して連通して、板厚方向流路と全幅にわたって連通する拡散流路と上端長手方向流路は上端面が支持体により閉塞され、板厚方向流路と下端長手方向流路は下端面が基板により閉塞されてマイクロ流路が形成され、
各板厚方向流路にはその伸延方向に沿って超音波振動子から支持体を介して超音波が伝播されるとともに、超音波振動子の駆動周波数と板厚方向流路の共振周波数を一致させることで、共振現象により強力な超音波を発生させるようにしたことを特徴とする超微小液滴調製装置。
【請求項2】
連続相を形成する流体と分散相を形成する流体を、微小断面となした単一のマイクロ流路に合流させるマイクロ流路部と、
前記マイクロ流路部に超音波振動を照射する超音波振動照射部を備えて、
超音波振動照射部の駆動周波数をマイクロ流路内に形成させる振動場の共振周波数に一致させることで、エマルションを生成するとともに分散相を超微小液滴に調製可能とした超微小液滴調製装置であって、
板状に形成した基板と、基板と略同形の板状に形成した流路形成体と、基板と略同形の板状に形成しかつ超音波振動照射部の超音波振動子を支持する支持体を重合状態に積層し、
流路形成体には幅方向に伸延する凹条流路を形成し、凹条流路は流路形成体の長手方向に一定の間隔を開けて多数形成して、各凹条流路の両端部には板厚方向縦流路を板厚方向に貫通させて形成し、隣接する板厚方向縦流路の下端部同士は下端長手方向横流路を介して連通し、凹条流路の端部と連通する流路連通路の基端部は基板に形成した流入側連通路と連通して、凹条流路は上端面が支持体により閉塞され、下端長手方向横流路は下端面が基板により閉塞されて、マイクロ流路が形成され、
各凹条流路にはその深さ方向、また、各板厚方向縦流路にはその伸延方向に沿って超音波振動子から支持体を介して超音波が伝播されるとともに、超音波振動子の駆動周波数と振動場である各凹条流路及び各板厚方向縦流路の共振周波数を一致させることで、共振現象により強力な超音波を発生させるようにしたことを特徴とする超微小液滴調製装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬品、電子材料、食品、化粧品等の生成において、液体中の微小液滴(以下、「エマルション」ともいう。)を超微小液滴に調製することが可能な装置であって、特に、制癌剤の薬液エマルションを超微小液滴に調製して生成することが可能な超微小液滴調製装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体中の微小液滴(エマルション)は、o/w(oil in water)、w/o(water in oil)などの形を取る。発明者のうち大河原・檜垣らは、液状製剤の抗がん剤であるパクリタキセルのエマルション製剤が効果的であることを確認している。この実験では、周波数20kHzの音波振動子による乳化を基本とした方法により、エマルションを生成している。しかし、従来、安定的に直径が揃ったエマルション製剤を得ることは困難であった。
【0003】
一方、このほかにエマルション生成の方法としては、複数のマイクロ流路をY字・T字型に組み合わせた流体のせん断作用を利用する方法が知られている。例えば、岡山大学の吉澤らによるもの(特許文献1)、東大の鳥居らによるもの(特許文献2、特許文献3)がある。このような方法では、物質によっては小さい径を持つエマルション生成に成功しているものの、液体の粘度や表面エネルギーの制約がある。また、発明者である神田らによる超音波振動子と微細孔を組み合わせた装置による液滴生成(特許文献4、特許文献5)では、微細孔の加工限界から直径数マイクロメートル以下のエマルションを生成することは難しい。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特開2008-238117号公報
【特許文献2】特開2004-59802号公報
【特許文献3】特開2004-67953号公報
【特許文献4】特開2008-246277号公報
【特許文献5】特開2008-246278号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のうち、周波数20kHzの超音波振動子プローブによる乳化を基本とした方法では、従来、安定的に直径が揃ったエマルション製剤を得ることは困難であるうえ、生成に用いる装置は大型かつ騒音の激しいものであった。さらに回分(バッチ)式であり、連続的に必要量を随時生成することはできない。
【0006】
また、小型化が容易であるY字型の流路による流体のせん断作用を利用したエマルション生成方法では、上記の製剤についてサブミクロンレベルの安定的なエマルションは得られていない。これはT字型の流路においても同様と考えられる。
【0007】
以上のような実状から、薬液エマルションの安定的微細化、生成装置の小型化を実現する必要性が生じている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、本発明では、薬液エマルションの安定的微細化、生成装置の小型化を実現することができる下記の超微小液滴調製装置を提供するものである。
【0009】
請求項1記載の発明に係る超微小液滴調製装置は、連続相を形成する流体と分散相を形成する流体を、微小断面となした単一のマイクロ流路に合流させるマイクロ流路部と、前記マイクロ流路部に超音波振動を照射する超音波振動照射部を備えて、超音波振動照射部の駆動周波数をマイクロ流路内に形成させる振動場の共振周波数に一致させることで、エマルションを生成するとともに分散相を超微小液滴に調製可能とした超微小液滴調製装置であって、板状に形成した基板と、基板と略同形の板状に形成した流路形成体と、基板と略同形の板状に形成しかつ超音波振動照射部の超音波振動子を支持する支持体を重合状態に積層し、流路形成体には、幅方向に伸延しかつ長手方向に細幅の板厚方向流路を板厚方向に貫通させて形成し、板厚方向流路は流路形成体の長手方向に一定の間隔を開けて多数形成して、隣接する一方の板厚方向流路と下端部同士を下端長手方向流路を介して連通するとともに、隣接する他方の板厚方向流路と上端部同士を上端長手方向流路を介して連通して、板厚方向流路と全幅にわたって連通する拡散流路と上端長手方向流路は上端面が支持体により閉塞され、板厚方向流路と下端長手方向流路は下端面が基板により閉塞されてマイクロ流路が形成され、各板厚方向流路にはその伸延方向に沿って超音波振動子から支持体を介して超音波が伝播されるとともに、超音波振動子の駆動周波数と板厚方向流路の共振周波数を一致させることで、共振現象により強力な超音波を発生させるようにしたことを特徴とする。
【0010】
このように、板厚方向流路と上端長手方向流路と拡散流路は上端面が支持体により閉塞され、板厚方向流路と下端長手方向流路は下端面が基板により閉塞されて、マイクロ流路を形成している。そして、各板厚方向流路にはその伸延方向に沿って超音波振動子から支持体を介して超音波が伝播される。しかも、超音波振動子の駆動周波数と板厚方向流路の共振周波数を一致させることで、共振現象により強力な超音波を発生させるようにしている。その結果、連続相としての流体と分散相としての流体は、超微細にかつ均一(均質)にエマルション化される。
【0011】
請求項2記載の発明に係る超微小液滴調製装置は、連続相を形成する流体と分散相を形成する流体を、微小断面となした単一のマイクロ流路に合流させるマイクロ流路部と、前記マイクロ流路部に超音波振動を照射する超音波振動照射部を備えて、超音波振動照射部の駆動周波数をマイクロ流路内に形成させる振動場の共振周波数に一致させることで、エマルションを生成するとともに分散相を超微小液滴に調製可能とした超微小液滴調製装置であって、板状に形成した基板と、基板と略同形の板状に形成した流路形成体と、基板と略同形の板状に形成しかつ超音波振動照射部の超音波振動子を支持する支持体を重合状態に積層し、流路形成体には幅方向に伸延する凹条流路を形成し、凹条流路は流路形成体の長手方向に一定の間隔を開けて多数形成して、各凹条流路の両端部には板厚方向縦流路を板厚方向に貫通させて形成し、隣接する板厚方向縦流路の下端部同士は下端長手方向横流路を介して連通し、凹条流路の端部と連通する流路連通路の基端部は基板に形成した流入側連通路と連通して、凹条流路は上端面が支持体により閉塞され、下端長手方向横流路は下端面が基板により閉塞されて、マイクロ流路が形成され、各凹条流路にはその深さ方向、また、各板厚方向縦流路にはその伸延方向に沿って超音波振動子から支持体を介して超音波が伝播されるとともに、超音波振動子の駆動周波数と振動場である各凹条流路及び各板厚方向縦流路の共振周波数を一致させることで、共振現象により強力な超音波を発生させるようにしたことを特徴とする。
【0012】
このように、凹条流路は上端面が支持体により閉塞され、下端長手方向横流路は下端面が基板により閉塞されて、マイクロ流路を形成している。そして、各凹条流路にはその深さ方向、また、各板厚方向縦流路にはその伸延方向に沿って超音波振動子から支持体を介して超音波が伝播される。しかも、超音波振動子の駆動周波数と振動場である各凹条流路及び各板厚方向縦流路の共振周波数を一致させることで、共振現象により強力な超音波を発生させるようにしている。その結果、連続相としての流体と分散相としての流体は、超微細にかつ均一(均質)にエマルション化される。
【発明の効果】
【0029】
本発明では、連続相としての流体と分散相としての流体を均一(均質)に混合してエマルション生成を実現することができる。しかも、分散相としての流体は、サブミクロンレベルで安定的に微細化して、径の揃った液滴となすことができて、液滴の径の均一化を確保することができる。そのため、血管径との関係から特定部位への製剤投与が可能となる。特に、サブミクロンレベルのエマルション製剤の効果は大きい。
【0030】
また、本発明では、フロー系で流路一体型の小型の装置とすることができるため、連続的処理が簡易となる。そのため、必要量をオンデマンドに得ることが可能となる。そして、装置の小型化は、可搬性を高められるという点でも重要である。エマルション生成部だけであれば手のひら大であり、周辺装置を含めても数十cm角程度に設置可能の装置を構成することができる。また、エマルション生成部は小型かつ一体であるため、オートクレイブによる滅菌も比較的容易である。その結果、エマルション生成過程において外気に触れないフロー型システムによる無菌性の確保が実現できる。また、本発明では2MHz以上と、人間の可聴域(20kHz程度)に比べて圧倒的に高い周波数を用いるため、騒音の被害が非常に小さい。その結果、静音性を確保することができる。以上から、医療現場での利用も容易と考えられる。
【0031】
本発明に係る装置自体の効果が認められれば研究開発用途への波及効果も期待される。従来の装置に比べて小型で安定的にナノエマルションの生成が可能であるため、一般的に液状の高分子物質を用いた製剤の生成、各種有機材料を用いたエマルション生成にも用いることができる。エマルションの生成は製薬の分野のみならず、食品、電子材料など幅広い分野で必要となっている技術である。設置規模が小さく導入コストが低いため、中小規模の試験研究機関や企業でも導入が可能である。さらに同様の理由から、一般の病院に比べて規模が小さいペット・家畜向けの医療機関への導入も可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明に係る超微小液滴調製装置の分解斜視説明図。
【図2】本発明に係る超微小液滴調製装置の一部切欠側面図。
【図3】図2のI-I線矢視説明図。
【図4】第1実施形態としてのマイクロ流路本体の端面説明図。
【図5】支持体と超音波振動子の厚さの説明図。
【図6】第2実施形態としてのマイクロ流路本体の端面説明図。
【図7】第3実施形態としてのマイクロ流路本体の端面説明図。
【図8】第4実施形態としてのマイクロ流路本体の端面説明図。
【図9】第5実施形態としての超微小液滴調製装置の説明図。
【図10】第6実施形態としての超微小液滴調製装置の説明図。
【図11】第7実施形態としての超微小液滴調製装置の分解斜視説明図。
【図12】第7実施形態としての超微小液滴調製装置の一部断面側面図。
【図13】第7実施形態としてのマイクロ流路の説明図。
【図14】第7実施形態としてのマイクロ流路内の圧力分布。
【図15】第8実施形態としての超微小液滴調製装置の分解斜視説明図。
【図16】第8実施形態としての超微小液滴調製装置の一部断面側面図。
【図17】第8実施形態としてのマイクロ流路の説明図。
【図18】本発明に係る超微小液滴調製装置としての実験装置の説明図。
【図19】マイクロ流路の断面説明図(a)とマイクロ流路の平面説明図(b)。
【図20】Y型マイクロ流路で生成されたエマルションの光学顕微鏡写真。
【図21】超音波照射されたマイクロ流路で生成されたエマルションの光学顕微鏡写真。
【図22】動的光散乱法によるエマルション径の計測結果-印加電圧比較を示すグラフ。
【図23】動的光散乱法によるエマルション径の計測結果-油相流量比較を示すグラフ。
【図24】駆動周波数2.21MHzにおける超音波照射後のエマルションの光学顕微鏡写真。
【図25】駆動周波数2.23MHzにおける超音波照射後のエマルションの光学顕微鏡写真。
【図26】駆動周波数2.27MHzにおける超音波照射後のエマルションの光学顕微鏡写真。
【図27】Y型マイクロ流路で生成されたエマルションの光学顕微鏡写真。
【図28】駆動周波数83kHzにおける超音波照射後のエマルションの光学顕微鏡写真。
【図29】駆動周波数83kHzにおける超音波照射後のエマルション径の動的光散乱法による計測結果を示すグラフ。
【図30】駆動周波数2.25MHzにおける超音波照射後のエマルションの光学顕微鏡写真。
【図31】駆動周波数1.354MHzにおける超音波照射後のエマルションの光学顕微鏡写真。
【図32】動的光散乱法による計測結果-流量比較を示すグラフ。
【図33】流路深さが0.35mmのマイクロ流路内の圧力分布。
【図34】流路深さが0.65mmのマイクロ流路内の圧力分布。
【図35】動的光散乱法によるエマルション径の計測結果-流路深さ比較を示すグラフ(水相:油相が100-1μl/min)。
【図36】動的光散乱法によるエマルション径の計測結果-流路深さ比較を示すグラフ(水相:油相が100-5μl/min、100-8μl/min)。
【図37】キャビテーション閾値の周波数依存性を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明の実施形態を、図面を参照しながら説明する。

【0034】
[第1実施形態]
図1及び図2に示す1は本発明に係る超微小液滴調製装置である。超微小液滴調製装置1は、マイクロ流路部10と超音波振動照射部30を重合状態にかつ一体的に連結して、フロー系で流路一体型の小型の装置として構成している。

【0035】
マイクロ流路部10は、図1~図4に示すように、四角形板状に形成した基板11の上面部に、上面が開口した断面凹状で微小断面(流路幅Wも流路深さDも1mm未満の四角形断面)となした単一のマイクロ流路12を形成している。そして、マイクロ流路12は、上流側の始端部13と下流側の終端部14を左右方向に配置して、中途部を基板11の上面に沿わせて前後方向に折り返し状に蛇行させて形成することで、流路長を所望の長さに確保している。ここで、基板11は、ステンレス鋼(SUS)等の金属、プラスチック、ガラス、セラミック等の材質によって成形することができる。

【0036】
マイクロ流路12の始端部13には、流入側連通路15を介して流入流路16を接続している。流入流路16の基端部には複数(本実施形態では二つ)の第1・第2分岐流路17,18の先端部を接続してY字状となしている。第1分岐流路17の基端部には、連続相としての流体を供給する第1流体供給部19を接続する一方、第2分岐流路18の基端部には、分散相としての流体を供給する第2流体供給部20を接続している。21は流出側連通路、22は流出流路であり、マイクロ流路12の終端部14に流出側連通路21を介して流出流路22を接続している。なお、第1・第2流体供給部19,20からそれぞれ供給される流体の量は、制御装置(パソコン等)により調節可能とすることができる。

【0037】
超音波振動照射部30は、図1~図3に示すように、超音波振動を生起する超音波振動子31と、この超音波振動子31を支持する支持体32とから形成している。超音波振動子31は、単板の圧電体とその両面の電極(不図示)からなり、四角形板状に形成している。そして、超音波振動子31の左右幅は、図3に示すように、マイクロ流路12の始端部13と終端部14との間隔よりもやや幅広に形成するとともに、前後幅はマイクロ流路12の前後幅(前後折り返し幅)よりもやや幅狭に形成している。33,34は電極に先端を接続した電線であり、電線の基端は電源に接続している。このようにして、電極間に交流電圧が印加されると、圧電体に厚み振動が励起されるようにしている。

【0038】
支持体32は、超音波振動子31で励起された超音波振動をマイクロ流路部10に伝播する振動板としても機能するものであり、マイクロ流路部10の基板11と略同形の四角形板状に形成している。支持体32の上面中央部には超音波振動子31を連設して、超音波振動子31の周囲に支持体32の厚さ方向に貫通する多数の支持体用ビス孔35を形成している。基板11には支持体用ビス孔35に符合させて基板11の厚さ方向に貫通する多数の基板用ビス孔23を形成して、基板11の上面に支持体32の下面を面接触させてビス36により重合状態に連結している。支持体32は、ステンレス鋼(SUS)等の金属、プラスチック、ガラス、セラミック等の材質によって成形することができる。

【0039】
このように、基板11の上面に支持体32の下面を面接触させて重合状態に連結することで、開口したマイクロ流路12の上面を閉塞している。そして、超音波振動子31の駆動周波数をマイクロ流路12内に形成させる振動場の共振周波数に一致させることで、エマルションを生成するとともに分散相を超微小液滴に調製可能としている。なお、超音波振動子31としては、上記した構成に限らず、圧電体層と電極層が積層された積層型圧電アクチュエータを使用することもできる。

【0040】
超微小液滴調製装置1は、上記のように構成しているものである。そして、マイクロ流路部10において、第1流体供給部19から連続相としての流体を一定量供給するとともに、第2流体供給部20から分散相としての流体を一定量供給し、両流体を流入流路16に合流させて、流入側連通路15→マイクロ流路12の始端部13→マイクロ流路12→マイクロ流路12の終端部14→流出側連通路21→流出流路22から流出させるようにしている。この際、連続相としての流体と分散相としての流体は、マイクロ流路12中を蛇行しながら流動する際に、せん断作用によりエマルション化されるようにしている。すなわち、マイクロ流路部10は、分散相としての流体をマイクロレベルに微小液滴化するマイクロリアクタとして機能するようにしている。なお、エマルション化された流体は、流出流路22を通して流出させることで回収することができる。

【0041】
また、超音波振動照射部30において、超音波振動子31で励起された超音波の振動は、超音波振動子31と支持体32の厚さ方向に伝播されて、図4に示すように、支持体32からマイクロ流路12内を流動する流体にマイクロ流路12の深さ方向に伝播されるようにしている。図4において、Uは超音波振動である。しかも、超音波振動子31の駆動周波数とマイクロ流路12の深さ方向の共振周波数を一致させることで、共振現象により強力な超音波を発生させるようにしている。

【0042】
すなわち、図5に示すように、t=n・λ/2、t’=n’・λ’/2を満たすように設定する。ここで、tは支持体32の厚さ、t’は超音波振動子31の厚さ、λ、λ’はそれぞれ支持体材料、超音波振動子材料の音速から得られる波長、nは整数である。このように、支持体32の厚さtと超音波振動子31の厚さt’を、それぞれ支持体材料、超音波振動子材料の音速から得られる波長λ、λ’の0.5倍またはその整数倍と一致させることで、共振現象により強力な超音波を発生させるようにしている。そして、マイクロ流路12に面接して超音波振動を伝播する支持体32の下面(伝播面)に超音波振動の腹が位置するようにして、共振現象による強力な超音波発生効果が生起されるようにしている。同様に、マイクロ流路12の深さDも、マイクロ流路12中を流動する流体内の音速から得られる波長の0.5倍またはその整数倍と一致させることで、共振現象により強力な超音波を発生させるようにしている。

【0043】
ここで、超音波振動子31から照射される超音波振動の周波数(超音波振動子31の駆動周波数)は、2MHz以上(好ましくは2.25MHz)の高い周波数、すなわち、人間の可聴域(20kHz程度)に比べて圧倒的に高い周波数を用いることで、静音性を確保して、騒音の被害を小さくすることができる。従って、医療現場での利用も容易となる。

【0044】
そして、この強力な超音波をマイクロ流路12に照射することで、マイクロ流路12中を流動する連続相としての流体と分散相としての流体を均一(均質)に混合してエマルション生成を実現することができる。この際、分散相は超微小液滴(注射器中で100nm~150nmレベル)に調製することができる。その結果、分散相を安定的に微細化することができて、径の揃った液滴を生成することができる。

【0045】
[第2実施形態]
第2実施形態としての超微小液滴調製装置1は、図6に示すように、基本的構造を第1実施形態の超微小液滴調製装置1と同じく構成しているが、マイクロ流路12の形状が異なる。すなわち、超音波振動照射部30から照射される超音波振動は、マイクロ流路12の内壁面で反射させて、マイクロ流路12内における微小断面の所定箇所Kに反射波を集中させるようにしている。具体的には、マイクロ流路12の内壁面を左右線対称の傾斜面12a,12aとなして、マイクロ流路12の断面形状を頂部12bが鋭角の逆二等辺三角形状に形成している。

【0046】
このように、超音波振動をマイクロ流路12内における微小断面の所定箇所Kに集中させることで、マイクロ流路12中を流動している流体に圧縮(特に大きい場合はキャビテーション)作用やせん断作用等の物理的な作用を付与して、エマルションの超微細化(注射器中で100nm~150nmレベル)と均一化(均質化)を実現することができる。なお、反射面となるマイクロ流路12の内壁面は、単純な傾斜面に限らず、例えば、指数関数などに従った超音波ホーンの形状となすことで、流路先端側(図5の下側)での超音波の作用を大きくすることができる。

【0047】
また、第2実施形態の変形例として、マイクロ流路12の断面形状を頂部12bが鈍角の逆二等辺三角形状に形成して、超音波振動照射部30から照射される超音波振動が、マイクロ流路12の内壁面で反射して、マイクロ流路12内で反射波が交差するように構成することもできる。

【0048】
このように、マイクロ流路12内で反射波を交差させることで、マイクロ流路12中を流動している流体に対する反射波によるせん断作用を増大させて、エマルションの超微細化(注射器中で100nm~150nmレベル)と均一化(均質化)を実現することができる。この際、マイクロ流路内で作用する圧力は均一化される傾向となり、エマルションの均一化(均質化)が促進される。

【0049】
[第3実施形態]
第3実施形態としての超微小液滴調製装置1は、図7に示すように、基本的構造を第1実施形態の超微小液滴調製装置1と同じく構成しているが、マイクロ流路12の形状が異なる。すなわち、マイクロ流路12の上面を形成す支持体32の下面の部分を上方へ円弧状に湾曲する凹面32aに形成して、超音波振動照射部30から照射される超音波振動が支持体32内を伝播して凹面32aで屈折されて、マイクロ流路12内における微小断面の所定箇所Kに集中するようにしている。

【0050】
このように、凹面32aを円弧状の湾曲面となすことで音響レンズとしての効果が得られる。そして、超音波振動をマイクロ流路12内における微小断面の所定箇所Kに集中させることで、マイクロ流路12中を流動している流体に圧縮(特に大きい場合はキャビテーション)作用やせん断作用等の物理的な作用を付与して、エマルションの超微細化(注射器中で100nm~150nmレベル)と均一化(均質化)を実現することができる。なお、超音波が収束する箇所は、円弧状に形成した凹面32aの曲率を変えることで自由に設定することができる。

【0051】
[第4実施形態]
第4実施形態としての超微小液滴調製装置1は、図8に示すように、基本的構造を第1実施形態の超微小液滴調製装置1と同じく構成しているが、マイクロ流路12の形状が異なる。すなわち、超音波振動照射部30から照射される超音波振動は、マイクロ流路12の内壁面で屈折させて、マイクロ流路内に拡散させるようにしている。具体的には、マイクロ流路12の上面を形成す支持体32の下面の部分を下方へ円弧状に湾曲する凸面32bに形成して、超音波振動照射部30から照射される超音波振動が支持体32内を伝播して凸面32bで屈折されて、マイクロ流路12内における微小断面内で拡散されるようにしている。

【0052】
このように、凸面32bを円弧状の湾曲面となすことで音響レンズとしての効果が得られる。そして、超音波振動をマイクロ流路内に拡散させることで、エマルションの均一化(均質化)をより一層促進させることができる。なお、円弧状に形成した凸面32bの曲率を変えることで、超音波の拡散状態を適宜変更することで、エマルションの均一化(均質化)を促進させることができる。

【0053】
また、第4実施形態の変形例として、マイクロ流路12の下面を上方へ円弧状に湾曲する凸面(不図示)に形成して、超音波振動照射部30から照射される超音波振動が、マイクロ流路12の凸面で反射して、マイクロ流路12内で反射波が拡散するように構成することもできる。この場合も、エマルションの均一化(均質化)をより一層促進させることができる。

【0054】
[第5実施形態]
第5実施形態としての超微小液滴調製装置1は、図9に示すように、基本的構造を第1実施形態の超微小液滴調製装置1と同じく構成しているが、マイクロ流路12を上流側から下流側に向けて複数(本実施形態では第1区分Z1~第4区分Z4)に区分けし、各第1区分Z1~第4区分Z4に対応させて計4個の超音波振動子31を配置して、各超音波振動子31から照射される超音波振動の駆動周波数を異ならせるとともに、各第1区分Z1~第4区分Z4における各超音波振動子31の駆動周波数はマイクロ流路12の上流側から下流側に向けて漸次階段状に増大させている点で異なる。ここで、超音波振動子31の駆動周波数とマイクロ流路12方向の共振周波数は一致させることで、共振現象により強力な超音波を発生させる必要性があるため、駆動周波数は次数(あるいはモード)の異なる共振周波数に設定する。

【0055】
このように、駆動周波数をマイクロ流路の上流側から下流側に向けて漸次階段状に増大させることで、流体の種類や粘性等に応じて効率良くエマルション生成を実現することができる。

【0056】
[第6実施形態]
第6実施形態としての超微小液滴調製装置1は、図10に示すように、基本的構造を第5実施形態の超微小液滴調製装置1と同じく構成しているが、各第1区分Z1~第4区分Z4における各超音波振動子31の駆動周波数はマイクロ流路12の上流側から下流側に向けて漸次階段状に減少させている点で異なる。

【0057】
このように、駆動周波数をマイクロ流路12の上流側から下流側に向けて漸次減少させることで、流体の種類や粘性等に応じて効率良くエマルション生成を実現することができる。

【0058】
[第7実施形態]
第7実施形態としての超微小液滴調製装置1は、図11~図13に示すように、前記した第1実施形態としての超微小液滴調製装置1と基本的構造を同じくしているが、マイクロ流路12を立体的に形成している点で異なる。すなわち、第1実施形態のマイクロ流路12は細紐状の流路を同一平面上に蛇行させて形成した状態であるのに対して、第7実施形態のマイクロ流路12は薄帯状の流路を超音波照射方向に蛇行させて形成した状態である点で異なる。

【0059】
具体的には、第7実施形態としての超微小液滴調製装置1は、図11に示すように、基板11と流路形成体25と支持体32を重合状態に積層して構成している。流路形成体25は基板11と略同形の四角形板状に形成して、板厚をやや薄肉に形成している。流路形成体25には幅方向に伸延しかつ長手方向に細幅の板厚方向流路12cを板厚方向(本実施形態では上下方向)に貫通させて形成している。そして、板厚方向流路12cは流路形成体25の長手方向に一定の間隔を開けて多数形成している。各板厚方向流路12cは、隣接する一方の板厚方向流路12cと下端部同士を下端長手方向流路12dを介して連通するとともに、隣接する他方の板厚方向流路12cと上端部同士を上端長手方向流路12eを介して連通している。26は板厚方向流路12cと全幅にわたって連通する拡散流路である。27は拡散流路26の基端側と連通する流路連通路であり、流路連通路27の基端部は基板11に形成した流入側連通路15と連通している。

【0060】
このようにして、板厚方向流路12cと上端長手方向流路12eと拡散流路26は上端面が支持体32により閉塞され、板厚方向流路12cと下端長手方向流路12dは下端面が基板11により閉塞されて、マイクロ流路12を形成している。そして、第1・第2流体供給部19,20から供給された流体は流入側連通路15→流路連通路27→拡散流路26を通してマイクロ流路12を蛇行しながら流動する。この際、各板厚方向流路12cにはその伸延方向に沿って超音波振動子31から支持体32を介して超音波が伝播される。しかも、超音波振動子31の駆動周波数と板厚方向流路12cの共振周波数を一致させることで、共振現象により強力な超音波を発生させるようにしている。図14は板厚方向流路12c内での圧力分布(超音波照射は下面から)である。板厚方向流路12cの流路伸延方向に複数波長の圧力分布が形成されている。その結果、連続相としての流体と分散相としての流体は、超微細にかつ均一(均質)にエマルション化される。

【0061】
[第8実施形態]
第8実施形態としての超微小液滴調製装置1は、図15~図19に示すように、前記した第1実施形態としての超微小液滴調製装置1と基本的構造を同じくしているが、マイクロ流路12を立体的に形成している点で異なる。すなわち、第1実施形態のマイクロ流路12は細紐状の流路を同一平面上に蛇行させて形成した状態であるのに対して、第8実施形態のマイクロ流路12は細紐状の流路を超音波照射方向にも蛇行させて形成した状態である点で異なる。

【0062】
具体的には、第8実施形態としての超微小液滴調製装置1は、図15に示すように、基板11と流路形成体25と支持体32を重合状態に積層して構成している。流路形成体25は基板11と略同形の四角形板状に形成している。流路形成体25には幅方向に伸延する凹条流路12fを形成している。そして、凹条流路12fは流路形成体25の長手方向に一定の間隔を開けて多数形成している。各凹条流路12fの両端部には板厚方向縦流路12gを板厚方向(本実施形態では上下方向)に貫通させて形成している。隣接する板厚方向縦流路12gの下端部同士は下端長手方向横流路12hを介して連通している。28は凹条流路12dの端部と連通する流路連通路であり、流路連通路28の基端部は基板11に形成した流入側連通路15と連通している。

【0063】
このようにして、凹条流路12fは上端面が支持体32により閉塞され、下端長手方向横流路12hは下端面が基板11により閉塞されて、マイクロ流路12を形成している。そして、第1・第2流体供給部19,20から供給された流体は流入側連通路15→流路連通路28を通してマイクロ流路12を蛇行しながら流動する。この際、各凹条流路12fにはその深さ方向、また、各板厚方向縦流路12gにはその伸延方向に沿って超音波振動子31から支持体32を介して超音波が伝播される。しかも、超音波振動子31の駆動周波数と振動場である各凹条流路12f及び各板厚方向縦流路12gの共振周波数を一致させることで、共振現象により強力な超音波を発生させるようにしている。その結果、連続相としての流体と分散相としての流体は、超微細にかつ均一(均質)にエマルション化される。
【実施例】
【0064】
[実験1]
図18に示す超微小液滴調製装置1により、薬液エマルションを生成する実験を行った。図18において、超微小液滴調製装置1は第1実施形態の超微小液滴調製装置1と基本的構造を同じくした。40は流入流路16と第1・第2分岐流路17,18をY字状に接続してなるY型マイクロ流路である。41は第1流体供給部19としての水相供給シリンジポンプ、42は第2流体供給部20としての油相供給シリンジポンプ、43はエマルション回収容器、Eは生成されたエマルションである。
【実施例】
【0065】
ここで、第1分岐流路17の流路幅は141μm、第2分岐流路18の流路幅は104μm、流入流路16の流路幅は137μmに形成した。マイクロ流路部10のマイクロ流路12は、図19(a)の断面説明図に示すように、流路幅Wは0.711mm、流路深さDは0.35mm、角部の曲率半径R1は0.3mmに形成した。また、図19(b)の平面説明図に示すように、マイクロ流路12の前後幅Lは30.2mm、折り返し部の曲率半径R2は0.6mmに形成した。基板11は縦幅50mm、横幅80mm、厚さ7mmのステンレス鋼製の四角形平板とし、支持体32は縦幅50mm、横幅80mm、厚さ5mmのステンレス鋼製の四角形平板とした。
【実施例】
【0066】
水相供給シリンジポンプ41から連続相としての水相(2.25wt%グリセリン水溶液)を、また、油相供給シリンジポンプ42から分散相としての油相(トリカプリリン+トリカプロイン+Tween80+レシチン)をY型マイクロ流路40に供給してある程度の大きさのエマルションを生成した。Y型マイクロ流路40で生成されたエマルションを含む液体を、マイクロ流路12に導入するとともに、超音波振動子31に交流電圧を印加することによって、マイクロ流路12に超音波照射を行なった。そして、生成されたエマルションをエマルション回収容器43に回収して観察し、評価を行った。
【実施例】
【0067】
図20にY型マイクロ流路40から吐出された直後(超音波振動照射部30へ入る前)の様子を示す。エマルションが生成されているものの、ばらつきが大きく、直径が数十マイクロメートル以上のものも多い。図21に超音波照射後のエマルションの様子を示す。超音波振動子31の駆動周波数は2.25MHz、印加電圧は100Vp-pにした。
【実施例】
【0068】
次に、印加電圧を50Vp-p、80Vp-p、100Vp-pと変化させて実験を行った。これは印加電圧の変化によって生じる、照射強度の違いによるエマルション生成への影響を調べるためである。図22に水相100μl/min、油相1μl/min、印加周波数2.25MHzとした動的光散乱法によるエマルション径の計測結果-印加電圧比較を示す。そして、表1にそれぞれの電圧、つまり周波数2.25MHzにおける電圧変化時のP.d.i値を示す。ここで、P.d.i値とは、polydisperse degree index(多分散度指数)の略で、単分散かどうかの指標となる値である。一般的に10%以下であると単分散といえるといわれている。
【実施例】
【0069】
【表1】
JP0005645169B2_000002t.gif
【実施例】
【0070】
図22から、印加電圧が上がることで生成されるエマルションのピークが狭まり、約200nmの大きさのエマルションが生成されることが分かる。しかし、一方で数μmの大きさのエマルションが少し残っていることが分かる。また、表1から、P.d.iの値は小さくなっており、単分散に近くなっていることが分かる。
【実施例】
【0071】
次に、水相の流量を100μl/minで固定し、油相の流量を2μl/min、5μl/min、8μl/minと変化させて実験を行った。これは油相流量の変化によって生じる、水相:油相の流量比の違いによる均一なエマルション生成の影響を調べるためである。図23に水相:油相の流量比が100:2(100-2μl/min)、100:5(100-5μl/min)、100:8(100-8μl/min)、印加周波数2.25MHzとした動的光散乱法によるエマルション径の計測結果-油相流量比較を示す。この結果、水相:油相の流量比が100:5(100-5μl/min)まで均一なエマルションを生成可能であることが分かった。
【実施例】
【0072】
次に、共振周波数2.25MHz付近において非共振となるように設定した場合のエマルション生成状況を確認した。すなわち、駆動周波数を2.21MHz、2.23MHz、2.27 MHzに設定してエマルションを生成実験をした。その結果、駆動周波数2.21、2.23、2.27 MHzのいずれにおいても、共振周波数2.25MHzを駆動周波数とした場合とは異なる分布となった。動的光散乱法による測定結果では、特に直径数μm以上に分布が見られる。サブミクロンレベルの液滴の分布も、2.25MHz駆動の際と比べて単調ではない。また、図24~図26に示すように、光学顕微鏡でも大きな液滴が観察され、いずれの場合にもサブミクロンレベルでピークを得ることができず、サブミクロンレベルの液滴のみを生成するには至っていない。
【実施例】
【0073】
[実験2]
実験2として、周波数変更によるエマルション生成への影響を調べる実験を行った。最初に、実験1に使用した超微小液滴調整装置1で、周波数を超音波振動照射部30で共振が得られる周波数の一つである83kHzに変更した。流量の条件を実験1と同様に水相100μl/min、油相1μl/minと固定し、薬品の条件も同一としてエマルション生成実験を行った。この結果、エマルション生成の様子は実験1とは異なるものとなった。
【実施例】
【0074】
最初に、Y型マイクロ流路40を用いて生成したエマルションの写真を図27に示す(上段倍率5倍、下段倍率20倍)。図27から、生成されたエマルションの大きさにばらつきがあることが分かる。駆動周波数83kHzにおける超音波照射後のエマルションの写真を図28に示す(上段倍率5倍、下段倍率20倍)。印加電圧は150Vp-pで行った。図28から、生成されたエマルションは、液滴径の小さいエマルションが生成されているが、液滴径の大きなエマルションがまだ残っていることが分かる。駆動周波数83kHzにおける超音波照射後のエマルション径の動的光散乱法による計測結果を図29に示す。図29からも、生成されたエマルションの大きさにばらつきがあることが分かる。
【実施例】
【0075】
次に、駆動周波数を超音波振動子31で厚み共振周波数となる2.25MHzに変更して実験を行った。流量を水相100μl/min、油相1μl/minとし、印加電圧を100Vp-pとして実験を行った。その結果を図30に示す(上段倍率20倍、下段倍率50倍)。比較対象として、同じく高周波のMHzの領域で共振を得られる駆動周波数1.354MHzで実験を行った。流量および、水相・油相の条件を薬剤として用いる薬品の生成条件と同じとし、印加電圧50Vp-pで実験を行った。この時のエマルションの写真を図31に示す(上段倍率20倍、下段倍率50倍)。図30及び図31の比較から、生成されたエマルションの液滴径は、明らかに周波数2.25MHzの時の方が小さくなっていることが分かる。以上から、現在の装置においては、駆動周波数2.25MHzが最もよい周波数であるといえる。
【実施例】
【0076】
次に、印加周波数2.25MHz、印加電圧100Vp-pとし、水相と油相の流量を変化させて、エマルション生成実験を行った。これは、滞留時間の変化によるエマルション生成への影響を調べるためである。水相と油相の比は100:1とし、水相100μl/min、油相1μl/min、水相200μl/min、油相2μl/min、水相50μl/min、油相0.5μl/minで行った。それぞれの流量における滞留時間を表2に、それぞれの流量におけるP.d.i値を表3に、動的光散乱法による計測結果-流量比較を図32に示す。
【実施例】
【0077】
【表2】
JP0005645169B2_000003t.gif
【実施例】
【0078】
【表3】
JP0005645169B2_000004t.gif
【実施例】
【0079】
図32から、生成されるエマルションは流量を変化させても200nm程度の大きさとなっている。よって、流量変化によるエマルション生成への影響はほとんどないと考えられる。これは、表3のP.d.i値を比較しても分かる。
【実施例】
【0080】
[実験3]
実験3として、マイクロ流路体積の変更(滞留時間の延長)によるエマルション生成への影響を調べる実験を行った。実験3で使用した超微小液滴調製装置1は、実験1で使用した超微小液滴調製装置1と基本的構造を同じくするが、マイクロ流路部10のマイクロ流路12の流路深さDを0.65mmに形成した点で異なる。すなわち、流路を深くすることで、流体の滞留時間を増加させた。
【実施例】
【0081】
図33は実験1で使用した流路深さDが0.35mmのマイクロ流路12内の圧力分布である(超音波照射は下面から)。そのマイクロ流路12内には半波長の圧力分布が形成されている。図34は流路深さDが0.65mmのマイクロ流路12内の圧力分布である(超音波照射は下面から)。そのマイクロ流路12内には1波長の圧力分布が形成されている。図35は、動的光散乱法によるエマルション径の計測結果-流路深さ比較を示すグラフである。つまり、水相:油相が100-1μl/minでの流路深さDが0.35mmと流路深さDが0.65mmにおけるエマルション径の分布である。これより流路深さDを大きくして流体の滞留時間を増加させることで、エマルションの液滴径の減少(200nmから80nmに)を実現できたことを確認することができた。
【実施例】
【0082】
また、図36は、動的光散乱法によるエマルション径の計測結果-流路深さ比較を示すグラフである。つまり、水相:油相が100-5μl/min、100-8μl/minでの流路深さDが0.35mmと流路深さDが0.65mmにおけるエマルション径の分布である。これより滞留時間増加によるエマルションの液滴径の減少と均一化が実現できたことを確認することができた。このように、超音波照射時間を長くすることで、エマルションの液滴径を小径化させるとともに均一化させることができた。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明に係る超微小液滴調製装置は、製薬、食品、電子材料など幅広い分野において必要とされているエマルションの生成が可能である。しかも、本発明に係る超微小液滴調製装置は、設置規模が小さく導入コストが低いため、中小規模の試験研究機関や企業でも導入が可能である。さらに同様の理由から、一般の病院に比べて規模が小さいペット・家畜向けの医療機関への導入も可能となる。
【符号の説明】
【0084】
1 超微小液滴調製装置
10 マイクロ流路部
11 基板
12 マイクロ流路
30 超音波振動照射部
31 超音波振動子
32 支持体
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12
【図14】
13
【図15】
14
【図16】
15
【図17】
16
【図18】
17
【図19】
18
【図20】
19
【図21】
20
【図22】
21
【図23】
22
【図24】
23
【図25】
24
【図26】
25
【図27】
26
【図28】
27
【図29】
28
【図30】
29
【図31】
30
【図32】
31
【図33】
32
【図34】
33
【図35】
34
【図36】
35
【図37】
36