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明細書 :球脊髄性筋萎縮症治療薬

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5765839号 (P5765839)
登録日 平成27年6月26日(2015.6.26)
発行日 平成27年8月19日(2015.8.19)
発明の名称または考案の名称 球脊髄性筋萎縮症治療薬
国際特許分類 A61K  31/454       (2006.01)
A61K  31/404       (2006.01)
A61K  31/4196      (2006.01)
A61P  21/00        (2006.01)
A61P  25/02        (2006.01)
FI A61K 31/454
A61K 31/404
A61K 31/4196
A61P 21/00
A61P 25/02
請求項の数または発明の数 5
全頁数 13
出願番号 特願2011-544335 (P2011-544335)
出願日 平成22年12月3日(2010.12.3)
国際出願番号 PCT/JP2010/071702
国際公開番号 WO2011/068208
国際公開日 平成23年6月9日(2011.6.9)
優先権出願番号 2009277101
優先日 平成21年12月5日(2009.12.5)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成25年10月12日(2013.10.12)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人名古屋大学
発明者または考案者 【氏名】祖父江 元
【氏名】南山 誠
【氏名】勝野 雅央
個別代理人の代理人 【識別番号】100114362、【弁理士】、【氏名又は名称】萩野 幹治
審査官 【審査官】上條 のぶよ
参考文献・文献 特表2007-504193(JP,A)
国際公開第2004/016083(WO,A1)
特表2006-508933(JP,A)
国際公開第2008/124930(WO,A1)
国際公開第2008/068230(WO,A1)
特開2006-232705(JP,A)
南山誠,球脊髄性筋萎縮症(SBMA)の病態関連遺伝子CGRP1の解析と治療標的検討,日本神経学会総会プログラム・抄録集,2010年,51,p.259, A25-1158
南山誠,球脊髄性筋萎縮症の病態関連遺伝子の解析,日本神経学会総会プログラム・抄録集,2009年,50,p.259, PI-206
調査した分野 A61K 31/00-33/40
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
特許請求の範囲 【請求項1】
ナラトリプタン、スマトリプタン若しくはリザトリプタン、又はその薬理学的に許容される塩を有効成分として含有する、球脊髄性筋萎縮症治療薬。
【請求項2】
ナラトリプタン塩酸塩を有効成分として含有する、球脊髄性筋萎縮症治療薬。
【請求項3】
長期間に亘って連続的に投与されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の球脊髄性筋萎縮症治療薬。
【請求項4】
球脊髄性筋萎縮症治療薬を製造するための、ナラトリプタン、スマトリプタン若しくはリザトリプタン、又はその薬理学的に許容される塩の使用。
【請求項5】
球脊髄性筋萎縮症治療薬を製造するための、ナラトリプタン塩酸塩の使用。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は球脊髄性筋萎縮症に対して有効な医薬及びその用途に関する。本出願は、2009年12月5日に出願された日本国特許出願第2009-277101号に基づく優先権を主張するものであり、当該特許出願の全内容は参照により援用される。
【背景技術】
【0002】
球脊髄性筋萎縮症(SBMA: spinal and bulbar muscular atrophy)は成人男性に発症する下位運動ニューロン疾患であり、アンドロゲン受容体(AR)遺伝子内のCAG繰り返し配列の異常伸長を原因とするポリグルタミン病の一つである。ポリグルタミン病に共通する分子病態として変異蛋白質の細胞内蓄積やヒストンのアセチル化障害などによる転写障害などいくつかの病態仮説が提示されているが、神経変性の機序についてはまだ不明な点が多い。
【0003】
神経変性疾患をはじめ多くの疾患に対して、未解明の病態を解明する一つの手段としてcDNAマイクロアレイによる遺伝子発現解析が用いられている。本発明者らは、SBMAのモデルマウス(ヒト変異ARトランスジェニックマウス、特許文献1)の各病期(発症前、発症初期、発症後期)の脊髄から抽出したmRNAを用いてマイクロアレイ解析を行い、病態関連遺伝子を探索した結果として、対照と比較して発症前より発現変動に有意な差を認める遺伝子を抽出し、そのうち発症前から対照と比較し有意に発現の亢進のみられる遺伝子としてcalcitonin gene-related polypeptide 1(CGRP1)を同定したことを報告した(第50回日本神経学会総会にて報告。非特許文献1を参照)。詳しくは、まずRT-PCRによりDNAマイクロアレイ結果の裏付けを行い、SBMAマウス脊髄においてmRNAレベルでCGRP1の発現が亢進していることを確認した。次に、SBMAの培養細胞モデル(SHSY5Y-mutant AR stable cell line)においてもアンドロゲン添加による変異AR誘発によりCGRP1の発現が亢進することが示された。そこで、上記モデル細胞におけるCGRP1の発現をRNAi法で抑制し生存率アッセイ(viability assay)を行ったところ、CGRP1の発現抑制によりSBMAモデル細胞の生存率(viability)が改善した。次に、マウス個体におけるCGRP1の病態への関与について検討した。SBMAモデルマウスとCGRP1ノックアウトマウスを交配し、AR97Q(+/-)/CGRP1(+/+)およびAR97Q(+/-)/CGRP1(-/-)マウスを作製し、表現型(phenotype)の解析を行ったところ、AR97Q(+/-)/CGRP1(-/-)マウスではAR97Q(+/-)/CGRP1(+/+)マウスに比べ運動機能(rotarod task)、体重、握力、行動量(cage activity)、生存率において有意な改善が認められた(図4、5を参照)。尚、CGRP1は体内に広く分布し、血管拡張作用、胃酸分泌の制御、インスリン作用の拮抗、骨リモデリングなどの多彩な機能を有する神経ペプチドである。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】国際公開第2004/016083号パンフレット
【0005】

【非特許文献1】第50回日本神経学会総会 プログラム・抄録集、259頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、球脊髄性筋萎縮症(SBMA)に対する新たな治療戦略を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、CGRP1はSBMAモデルマウスの神経症状発症前から病態に強く関与している遺伝子でありSBMAの治療における新しい標的(ターゲット)になると考えた。この着眼点に基づき、CGRP1の阻害がSBMAに対する有効な治療戦略になると仮定し、細胞レベル及び動物レベルの実験を通して検討を重ねた。始めにトリプタン系薬剤のCGPR1を阻害する活性に注目するとともに、SBMAが慢性疾患でありその治療には持続的な効果を発揮する薬剤が好ましいと考え、効果の持続時間の長いナラトリプタンを候補薬剤としてSBMAに対するその薬効を調べることにした。結果、SBMAモデル細胞を用いた実験により、ナラトリプタンが細胞の生存率を有意に改善することが判明した。一方、SBMAモデルマウスにナラトリプタンを投与したところ、SBMAの病態を著明に抑制した。特筆すべきことに、ナラトリプタンを投与したSBMAモデルマウスの生存率は、CGRP1遺伝子を欠損させたモデルマウス(AR97Q(+/-)/CGRP1(-/-)マウス)の生存率を凌駕していた。即ち、分子標的としたCGRP1遺伝子を欠損させた場合よりも、ナラトリプタンによってCGRP1の発現を抑制した場合の方が生存率が高いという、驚くべき現象を認めた。このことは、当該薬剤がSBMAに対して極めて有効であることを示唆する。以上の知見を得た後、他のトリプタン系薬剤の効果を比較した。その結果、程度の差はあるものの、SBMAに対する治療効果はトリプタン系薬剤に共通する特性であることが明らかとなった。換言すれば、広くトリプタン系薬剤がSBMAの治療に有効であることが判明した。検討を進めた結果、作用メカニズムに関する有益且つ重要な知見が得られ、トリプタン系薬剤の有効性が更に裏付けられた。ここで、トリプタン系薬剤は偏頭痛の治療薬として認可・臨床応用されている薬剤であり、その適用法として「長期間に亘る連続的な投与」は想定されていない。また、長期間に亘って連続的に投与された場合の効果は不明である。本発明者らの検討の末に見出された知見、即ち「トリプタン系薬剤の長期間に亘る連続的投与がSBMAに対する治療効果を発揮すること」は、従来の適用とは全く異なる上に、従来の使用実績からは到底予想できない、トリプタン系薬剤の使用目的・使用態様を提供するものであり、その意義は極めて大きい。
【0008】
以下に列挙する本発明は主として以上の成果・知見に基づく。
[1]トリプタン又はその薬理学的に許容される塩を有効成分として含有する、球脊髄性筋萎縮症治療薬。
[2]トリプタンがナラトリプタン、スマトリプタン、ゾルミトリプタン、エレトリプタン又はリザトリプタンである、[1]に記載の球脊髄性筋萎縮症治療薬。
[3]トリプタンがナラトリプタン、スマトリプタン又はリザトリプタンである、[1]に記載の球脊髄性筋萎縮症治療薬。
[4]有効成分がナラトリプタン塩酸塩である、[1]に記載の球脊髄性筋萎縮症治療薬。
[5]長期間に亘って連続的に投与されることを特徴とする、[1]~[4]のいずれか一項に記載の球脊髄性筋萎縮症治療薬。
[6]球脊髄性筋萎縮症治療薬を製造するための、トリプタン又はその薬理学的に許容される塩の使用。
[7]球脊髄性筋萎縮症の患者に対して、トリプタン又はその薬理学的に許容される塩を治療上有効量投与するステップを含む、球脊髄性筋萎縮症の治療法。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】SBMAモデル細胞に対するナラトリプタン塩酸塩の効果を示すグラフ。ナラトリプタン塩酸塩はCGRP1の転写抑制効果を示す(左)。また、細胞生存率を改善する(右)。*p<0.01(Dunnett's testによる)【図3】ナラトリプタン塩酸塩を自由飲水で投与したSBMAモデルマウス(右)及び無処理のSBMAモデルマウス(左)の脊髄(胸髄、15週)を抗CGRP抗体を用いて免疫染色した結果(倍率:400倍)。
【図4】CGRP1遺伝子をノックアウトしたSBMAモデルマウスAR-97Q(+/-)/CGRP(-/-)(雄)の作製方法の概略。ノックアウトマウス(-/-)ではCGRP1の発現を認めないことを確認した(右下のグラフ)。
【図5】SBMAモデルマウスにおいてCGRP1遺伝子をノックアウトした場合の表現型の変化を示すグラフ。ノックアウトマウスAR-97Q(+/-)/CGRP(-/-)の体重変化(左上)、運動機能(Rotorod)の変化(右上)、生存率の推移(左下)、及び握力の変化(右下)をSBMAモデルマウスAR-97Q(+/-)/CGRP(+/+)と比較した。
【図6】SBMAモデル細胞に対する各種トリプタンの効果を示すグラフ。ナラトリプタン(左上)、スマトリプタン(左下)及びリザトリプタン(右上)はいずれもSBMAモデル細胞に対して治療効果を示した。
【図7】細胞生存率アッセイ(n=6)の結果(左)とLDHアッセイ(n=6)の結果(右)のグラフ。*p<0.05(Dunnett's testによる) **p<0.01(Dunnett's testによる)【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の第1の局面は球脊髄性筋萎縮症(以下、SBMA)の治療薬を提供する。「治療薬」とは、標的の疾病ないし病態であるSBMAに対する治療的又は予防的効果を示す医薬のことをいう。治療的効果には、SBMAに特徴的な症状又は随伴症状を緩和すること(軽症化)、症状の悪化を阻止ないし遅延すること等が含まれる。後者については、重症化を予防するという点において予防的効果の一つと捉えることができる。このように、治療的効果と予防的効果は一部において重複する概念であることから、明確に区別して捉えることは困難であり、またそうすることの実益は少ない。尚、予防的効果の典型的なものは、SBMAに特徴的な症状の再発を阻止ないし遅延することである。尚、SBMAに対して何らかの治療的効果又は予防的効果、或いはこの両者を示す限り、SBMA治療薬に該当する。

【0011】
本発明の医薬の治療対象はSBMAである。SBMAの病態は脊髄前角細胞や顔面神経核、舌下神経核の変性、脱落であり、その原因はアンドロゲン受容体(AR)第1エクソン内のCAGリピートの異常延長である(La Spada, A.R., Wilson, E.M., Lubahn, D.B., Harding, A.E., and Fischbeck, K.H. (1991). Androgen receptor gene mutations in X-linked spinal and bulbar muscular atrophy. Nature 352, 77-79.)。ARのCAGリピート数は、正常では12~34程度であるが患者では40~62程度に延長している。このためSBMAは、ハンチントン病や脊髄小脳変性症などと並んで、ポリグルタミン病と呼ばれ、これらの疾患においては表現促進現象(anticipation)やCAGリピート数のばらつき(体細胞モザイク)(Tanaka, F., Reeves, M.F., Ito, Y., Matsumoto, M., Li, M., Miwa, S., Inukai, A., Yamamoto, M., Doyu, M., Yoshida, M., Hashizume, Y., Terao, S., Mitsuma, T., and Sobue, G. (1999). Tissue-specific somatic mosaicism in spinal and bulbar muscular atrophy is dependent on CAG-repeat length and androgen receptor--gene expression level. Am. J. Hum. Genet. 65, 966-973.)、主に神経組織が選択的に障害されるという、共通の病態が観察される。また、他のポリグルタミン病と同様SBMAにおいても、CAGリピート数は筋力低下の発症年齢と負の相関を示し、年齢補正した重症度とは正の相関を示す(Doyu, M., Sobue, G., Mukai, E., Kachi, T., Yasuda, T., Mitsuma, T., and Takahashi, A. (1992). Severity of X-linked recessive bulbospinal neuronopathy correlates with size of the tandem CAG repeat in androgen receptor gene. Ann. Neurol. 32, 707-710.)。

【0012】
本発明の医薬は有効成分としてトリプタン又はその薬理学的に許容される塩を含む。換言すれば、トリプタン系薬剤が有効成分であることにより特徴付けられる。トリプタン系薬剤は、共通した薬理作用として5-HT1B/1D受容体に対する選択的なアゴニスト作用を有し、偏頭痛の治療薬として利用されている。偏頭痛に対するトリプタン系薬剤の作用機序は、以下の三点、即ち(1)脳硬膜血管壁に存在する5-HT1B受容体に作用し、選択的に頭蓋内の血管を収縮させること、(2)頭蓋血管周囲の三叉神経に存在する5-HT1D受容体に作用し、神経ペプチド(CGRPやサブスタンスP)の遊離を抑制し、血管の拡張と炎症を抑制すること、(3)脳幹の三叉神経節に存在する5-HT1D受容体に作用し、三叉神経を伝導する疼痛シグナルを抑制すること、であると考えられている。本発明は、その病態や発症機構など、あらゆる点において偏頭痛と相違するSBMAに対してトリプタン系薬剤を用いるものであり、その産業的価値は勿論のこと、医学的見地からの意義も極めて大きい。

【0013】
トリプタンの例はナラトリプタン、スマトリプタン、ゾルミトリプタン、エレトリプタン、リザトリプタンである。また、薬理学的に許容される塩の例としてナラトリプタン塩酸塩、スマトリプタンコハク酸塩、臭化水素酸エレトリプタン、安息香酸リザトリプタンを挙げることができる。以上の例示は、「薬理学的に許容される塩」が限定解釈されるために用いられるべきではない。即ち、「薬理学的に許容される塩」は、広義に解釈されるべきであり、酸付加塩、金属塩、アンモニウム塩、有機アミン付加塩、アミノ酸付加塩等、各種の塩を含む用語である。酸付加塩の例としてはトリフルオロ酢酸塩塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、臭化水素酸塩などの無機酸塩、酢酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、クエン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、リンゴ酸塩、シュウ酸塩、メタンスルホン酸塩、酒石酸塩などの有機酸塩が挙げられる。金属塩の例としてはナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩などのアルカリ金属塩、マグネシウム塩、カルシウム塩などのアルカリ土類金属塩、アルミニウム塩、亜鉛塩が挙げられる。アンモニウム塩の例としてはアンモニウム、テトラメチルアンモニウムなどの塩が挙げられる。有機アミン付加塩の例としてはモルホリン付加塩、ピペリジン付加塩が挙げられる。アミノ酸付加塩の例としてはグリシン付加塩、フェニルアラニン付加塩、リジン付加塩、アスパラギン酸付加塩、グルタミン酸付加塩が挙げられる。

【0014】
尚、いくつかのトリプタン系薬剤は、以下の通り、片頭痛及び/又は群発頭痛に対する医薬としての販売・使用実績がある。
イミグラン(登録商標)錠50(グラクソ・スミスクライン株式会社)、イミグラン(登録商標)点鼻液20(グラクソ・スミスクライン株式会社)、イミグラン(登録商標)注3(グラクソ・スミスクライン株式会社)、ゾーミック(登録商標)錠2.5mg(アストラゼネカ株式会社)、ゾーミック(登録商標)錠RM2.5mg(アストラゼネカ株式会社)、レルパックス(登録商標)錠(ファイザー製薬株式会社)、マクサルト(登録商標)錠 10mg(エーザイ株式会社)、マクサルトRPD(登録商標)錠 10mg(エーザイ株式会社)、アマージ(登録商標)錠2.5mg(グラクソ・スミスクライン株式会社)

【0015】
本発明の医薬の製剤化は常法に従って行うことができる。製剤化する場合には、製剤上許容される他の成分(例えば、担体、賦形剤、崩壊剤、緩衝剤、乳化剤、懸濁剤、無痛化剤、安定剤、保存剤、防腐剤、生理食塩水など)を含有させることができる。賦形剤としては乳糖、デンプン、ソルビトール、D-マンニトール、白糖等を用いることができる。崩壊剤としてはデンプン、カルボキシメチルセルロース、炭酸カルシウム等を用いることができる。緩衝剤としてはリン酸塩、クエン酸塩、酢酸塩等を用いることができる。乳化剤としてはアラビアゴム、アルギン酸ナトリウム、トラガント等を用いることができる。懸濁剤としてはモノステアリン酸グリセリン、モノステアリン酸アルミニウム、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ラウリル硫酸ナトリウム等を用いることができる。無痛化剤としてはベンジルアルコール、クロロブタノール、ソルビトール等を用いることができる。安定剤としてはプロピレングリコール、アスコルビン酸等を用いることができる。保存剤としてはフェノール、塩化ベンザルコニウム、ベンジルアルコール、クロロブタノール、メチルパラベン等を用いることができる。防腐剤としては塩化ベンザルコニウム、パラオキシ安息香酸、クロロブタノール等と用いることができる。

【0016】
製剤化する場合の剤形も特に限定されない。剤形の例は錠剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、カプセル剤、シロップ剤、注射剤、外用剤、及び座剤である。本発明の医薬には、期待される治療効果(又は予防効果)を得るために必要な量(即ち治療上有効量)の有効成分が含有される。本発明の医薬中の有効成分量は一般に剤形によって異なるが、所望の投与量を達成できるように有効成分量を例えば約0.1重量%~約95重量%の範囲内で設定する。

【0017】
本発明の医薬はその剤形に応じて経口投与又は非経口投与(静脈内、動脈内、皮下、皮内、筋肉内、又は腹腔内注射、経皮、経鼻、経粘膜など)によって患者に適用される。これらの投与経路は互いに排他的なものではなく、任意に選択される二つ以上を併用することもできる(例えば、経口投与と同時に又は所定時間経過後に静脈注射等を行う等)。全身投与によらず、局所投与することにしてもよい。局所投与として、目的の組織への直接注入又は塗布を例示することができる。

【0018】
本発明の医薬の投与量及び投与スケジュールは、期待される治療効果が得られるように設定される。治療上有効な投与量の設定においては一般に患者の症状、年齢、性別、及び体重などが考慮される。尚、当業者であればこれらの事項を考慮して適当な投与量を設定することが可能である。例えば、成人(体重約60kg)を対象として一日当たりの有効成分量が約1mg~約300mg、好ましくは約5mg~約200mgとなるよう投与量を設定することができる。後述の実施例に示す通り、本発明の医薬においては長期間に亘る連続的な投与が有効であることが示唆された。そこで、長期間に亘って連続的な投与が行われるように投与スケジュールを作成することが好ましい。「長期間に亘る連続的な投与」とは、トリプタン系薬剤の従来の投薬方法、即ち症状又はその兆候が現れたときに投与する(単回投与)のとは異なり、長期間に亘る投薬期間内に複数回の投薬を行うことを意味する。ここでの「長期間」とは1週間以上の期間を意味し、具体的には例えば1月~数年の間で投与期間を設定することができる。一日当たりの投与回数は例えば1~5回とする。SBMAが慢性疾患であり、その治療のためには薬剤が常に作用していることが好ましいことや有効成分の血中半減期を考慮すれば、投与スケジュールとして連日投与を採用することが好ましい。但し、患者の状態や経過によっては、投与しない日を設けることにしてもよい(即ち、隔日投与などの投与スケジュールを採用してもよい)。

【0019】
以上の記述から明らかな通り本出願は、SBMAの患者に対して本発明の医薬を治療上有効量投与することを特徴とする、SBMAの治療法も提供する。
【実施例】
【0020】
CGRP1は球脊髄性筋萎縮症(SBMA)モデルマウスの神経症状発症前から病態に強く関与している遺伝子である。SBMAの治療における標的としてCGRP1が有望であるとの考えの下、CGRP1の阻害がSBMAに対する有効な治療戦略になると仮定し、以下の実験を行った。
【実施例】
【0021】
1.SBMAモデル細胞に対するCGRP1インヒビターの効果
細胞レベル及び動物(マウス)レベルでCGRP1がSBMAの病態に関与することが示唆されたことから、SBMAの治療法の確立を目指し、CGRP1を抑制する薬剤を探索した。CGRP1を抑制できる可能性のある薬剤として片頭痛薬のトリプタンを候補とした。ナラトリプタン(ナラトリプタン塩酸塩、グラクソ・スミスクライン社)はトリプタンの中でも血中濃度半減期が長く副作用の少ない薬剤であり脳血液関門を通過しやすいことから、慢性疾患であるSBMAに適応しやすいと考えられた。そこで、まずSBMAモデル細胞における、ナラトリプタンの効果を検討した。
【実施例】
【0022】
(1)SBMAモデル細胞におけるナラトリプタンのCGRP1発現抑制効果
SBMAのモデル細胞(SH-SY5Y mAR97Q stable cell line(神経芽細胞腫SH-SY5YにSBMAの原因タンパクである変異アンドロゲンレセプター(mAR)の遺伝子を導入し安定発現細胞株として作製したもの))を5%FCS、20μMレチノイン酸及び1nM DHTを添加したD-MEM/F-12培地で培養し、2日後に各濃度(0, 100nM, 1μM, 10μM)のナラトリプタン塩酸塩(Toronto Research Chemicals)を添加し、16時間後に細胞を回収した。各細胞のmRNAをRneasy Mini Kit (キアゲン)を用いて抽出し、SuoerScript III(インビトロジェン)を用いてcDNAを調製した後、iCycler (バイオ・ラッド)によるリアルタイムRT-PCRにてCGRP1発現量を比較した。プロトコールは各メーカーのものに従った。結果を図1左に示す。ナラトリプタン塩酸塩はCGRP1の転写を有意に抑制した。
【実施例】
【0023】
(2)SBMAモデル細胞におけるナラトリプタンの細胞生存率(cell viability)に対する効果
SBMAのモデル細胞(SH-SY5Y mAR97Q stable cell line)を10%FCS添加D-MEM/F-12培地を用いて24ウエルプレートに播種した。翌日、5%FCS、20μMレチノイン酸及び1nM DHTを添加したD-MEM/F-12培地に交換し、各濃度(0, 100nM, 1μM, 10μM)のナラトリプタン塩酸塩(Toronto Research Chemicals)を添加した(0日目)。翌日(1日目)に培地と薬剤の交換を行い、2日目にWST-1を各ウエルに50μl滴下混合し、4時間37℃下で培養した後、反応液を96ウエルプレートに移し、PowerScan HT(大日本製薬)にて吸光度測定した。プロトコールはメーカーのものに従った。結果を図1右に示す。ナラトリプタン塩酸塩は細胞生存率を有意に改善した。
【実施例】
【0024】
2.SBMAモデルマウスに対するCGRP1インヒビターの効果
SBMAモデルマウス(ヒト変異ARのトランスジェニックマウス:AR-97Q)(WO2004/016083、Katsuno,M., et al.(2002). Testosterone Reduction Prevents Phenotypic Expression in a Transgenic Mouse Model of Spinal and Bulbar Muscular Atrophy. Neuron, 35, 843-854)に対するナラトリプタンの効果を検討した。ナラトリプタン塩酸塩(Toronto Research Chemical)を所定の濃度(0μM(コントロール), 1.8μM, 18μM)に水で溶解し、生後5週よりSBMAマウス(雄)に任意に飲水させた。生後5週より毎週、以下の各項目を測定した。
(a)体重
(b)運動機能(Rotorod): Economex rotarod (Colombus Instruments)を用いて回転(16/分)するロッド上に各マウスを3分間乗せ落下するまでの時間を測定した。
(c)生存率(Survival rate): 各群のマウスの生存率をKaplan-Meierを用いてデータ解析した。
(d)握力(Grip): 斉藤式マウス用握力測定装置(MUROMACHI)を用いて測定した。
【実施例】
【0025】
体重、運動機能、生存率、握力の各評価において、ナラトリプタン塩酸塩の投与による有意な改善効果を認めた(図2)。尚、抗CGRP抗体(サンタクルーズ社N-20 (1:200))を使用し、自動免疫染色機ベンタナXTシステム ディスカバリー(ロシュ・ダイアグノスティックス)を利用して免疫染色したところ(SBMAモデルマウスの脊髄(胸髄、15週)のパラフィンブロックよりプレパラート切片を作製)、前角細胞に濃染していたCGRP1はナラトリプタン投与マウスにおいて有意に減少していることが判明した(図3)。
【実施例】
【0026】
3.CGRP1のノックアウトによる表現型改善効果
SBMAモデルマウス(ヒト変異ARのトランスジェニックマウス:AR-97Q)とCGRP1ノックアウトマウス(CGRP KO)とを交配し、CGRP1をノックアウトしたSBMAモデルマウスAR-97Q(+/-)/CGRP(-/-) (雄)を作製した(図4)。CGRP1ノックアウトマウスは東京大学代謝生理化学教室の栗原裕基教授より譲渡を受けた。作製したAR-97Q(+/-)/CGRP(-/-) (雄)とSBMAモデルマウスAR-97Q(+/-)/CGRP(+/+)について生後5週より毎週、以下の各項目を測定した。
(a)体重
(b)運動機能(Rotorod): Economex rotarod (Colombus Instruments)を用いて回転(16/分)するロッド上に各マウスを3分間乗せ落下するまでの時間を測定した。
(c)生存率(Survival rate): 各群のマウスの生存率をKaplan-Meierを用いてデータ解析した。
(d)握力(Grip): 斉藤式マウス用握力測定装置(MUROMACHI)を用いて測定した。
【実施例】
【0027】
体重、運動機能、生存率、握力の各評価において、CGRP1のノックアウトによる有意な改善効果を認めた(図5)。注目すべきことに、AR-97Q(+/-)/CGRP(-/-)の生存率(図5)とナラトリプタンを投与したSBMAモデルマウスの生存率(図2)を比較すると、後者の方が改善効果が高い。即ち、分子標的としたCGRP1遺伝子を欠損させた場合よりも、ナラトリプタンの投与によってCGRP1の発現を抑制した場合の方が生存率が高くなるという、驚くべき現象を認めた。このことは、ナラトリプタンがSBMAに対して極めて有効であることを示唆する。
【実施例】
【0028】
4.各種トリプタンの比較
ナラトリプタン以外のトリプタンもSBMAに対して薬効を示すか否かを調べた。スマトリプタン(Toronto Research Chemical)及び安息香酸リザトリプタン(Toronto Research Chemical)を評価対象とした。SBMAのモデル細胞(SH-SY5Y mAR97Q stable cell line)をOpti-MEM(インビトロジェン)培地を用いて24ウエルプレートに播種した。翌日、20μMレチノイン酸及び1nM DHTを添加したOpti-MEM(インビトロジェン)培地に交換した。この培地交換から4日後に各濃度(0, 1μM, 10μM, 100μM)で各トリプタンを添加した(各n=6)。投与24時間後にLDHアッセイを行った。いずれのトリプタンもSBMAモデル細胞に対する治療効果を示した(図6)。即ち、SBMAに対する治療効果はトリプタン系薬剤に共通する特性であることが明らかとなった。尚、ナラトリプタンは低濃度で高い効果を示し、特に有効であるといえる。
【実施例】
【0029】
5.CGRP1の作用部位の同定
CGRP1の作用部位を調べるため、細胞生存率アッセイ及びLDHアッセイを行った。細胞生存率アッセイでは、運動ニューロンのモデル細胞であるヒト神経芽細胞腫のSH-SY5YにCGRP1(ぺプチド研究所)を投与した。培地はD-MEM/F12 (Dulbecco’s Modified Eagle Medium : Nutrient Mixture F-12, GIBCO)に10%ウシ血清(FCS), ペニシリンーストレプトマイシン(各20U/ml, 20μg/ml, GIBCO)を添加したものを用いた。24ウエルプレートに細胞を播種し、37℃細胞培養インキュベータに静置した。2日後、D-MEM/F12(5%ウシ血清含有)の培地にレチノイン酸(20μM)を添加することで分化を誘導するとともにアンドロゲン(DHT, 1nM)を同時添加した(0日目)。培地は2日目に交換し、4日目に各濃度(0, 10, 100, 1000nM)のCGRP1をD-MEM/F12、20μMレチノイン酸、1nM DHTの無血清培地下に投与した。投与2時間後にWST-1(Roche Applied Science)を各ウエルに50μl滴下混合し37℃細胞培養インキュベータに静置した。4時間後に反応液を96ウエルプレートに移し、PowerScan HT(大日本製薬)にて吸光度測定した。各プロトコールはメーカーのものに従った。
【実施例】
【0030】
LDHアッセイには、SBMAモデル細胞としてSH-SY5Yに変異アンドロゲンレセプター(AR-97Q)を遺伝子導入した安定細胞株(SH-SY5Y AR97Q stable cell line)を使用した。培地、実験方法は上記SH-SY5Yの実験と同様であり、4日目に各濃度(0, 10, 100, 1000nM)のCGRP受容体拮抗薬CGRP8-37(ぺプチド研究所)をD-MEM/F12、20μMレチノイン酸、1nM DHTの無血清培地下に投与した。投与4時間後に各ウエルの培養液を96ウエルプレートに移し、ロシュの細胞障害性検出キットPLUS(LDH)を用い、PowerScan HT(大日本製薬)にて吸光度測定した。各プロトコールはメーカーのものに従った。
【実施例】
【0031】
結果を図7に示す。運動ニューロンのモデル細胞であるSH-SY5YにCGRP1を直接投与すると細胞の活性は低下し、SBMAモデル細胞(SH-SY5Yに変異アンドロゲン受容体(AR97Q)を遺伝子導入した定常発現細胞)にCGRPの受容体拮抗薬を投与すると細胞毒性が軽減された。この結果より、CGRP1は細胞表面の受容体を介して作用していることが示された。
【実施例】
【0032】
6.SBMAモデルマウス脊髄におけるGFAPの免疫組織化学
SBMAモデルマウス脊髄におけるGFAPの発現を調べた。まず、CGRP1コントロールSBMAモデルマウス(97Q CGRP(+/+))、CGRP1ノックアウトSBMAモデルマウス(97Q CGRP(-/-))、及びSBMAコントロールマウス(24Q)の各脊髄(胸髄、15週)のパラフィンブロックよりプレパラート切片を作成した。一次抗体は抗GFAP抗体(Cell Signaling Technology, #3670 (1:1000))を使用し、免疫染色はEnVision+ Kit(Dako)を用いた。プロトコールはメーカーのものに従った。免疫染色された胸髄水平断で中心管を一角とする前角側4分の1部分のGFAP陽性領域を画像解析ソフトWinROOF(三谷商事)により半定量し、コントロールと比較した。
【実施例】
【0033】
結果を図8に示す。GFAPはアストログリア特異的な中間径フィラメントであり、SBMAを含む神経疾患で増加することが知られている。GFAP増加は神経変性を反映する所見と考えられている。24Qマウスと97Qマウス(SBMAモデルマウス)の比較では明らかに97QマウスにおいてGFAPが濃染された。一方、97Qマウスにおいて、CGRP1のノックアウトによりGFAPの染色は軽減された。以上のように、SBMAモデルマウスのCGRP1遺伝子ノックアウトによって脊髄前角におけるGFAPが減少することが明らかとなった。
【実施例】
【0034】
7.ナラトリプタンを投与したSBMAモデルマウス脊髄におけるGFAPの免疫組織化学
ナラトリプタンを投与した場合のGFAPの発現変化を調べた。ナラトリプタンを投与したSBMAモデルマウス(97Qナラトリプタン)及び投与しないSBMAモデルマウス(97Qコントロール)、並びにSBMAコントロールマウス(24Qコントロール)について、脊髄(胸髄、15週)のパラフィンブロックよりプレパラート切片を作成した。その他の方法は6.の実験と同様である。
【実施例】
【0035】
結果を図9に示す。ナラトリプタンの投与によってもGFAPの染色が軽減されることが示された。即ち、本治療により神経変性が抑止されることが更に裏付けられた。
【実施例】
【0036】
8.SBMAモデル細胞に対するJNK阻害薬SP-600125の効果
CGRP1がどのようなメカニズムを介して神経変性を惹起するかを解析した。SBMAモデル細胞に対し、6.の実験と同様の方法で4日目に各濃度(0, 0.01, 0.1μM)のJNK阻害薬SP-600125(Calbiochem)を投与した。24時間後に各ウエルの培養液を96ウエルのプレートに移し、ロシュの細胞障害性検出キットPLUS(LDH)を用い、PowerScan HT(大日本製薬)にて吸光度測定した。各プロトコールはメーカーのものに従った。
【実施例】
【0037】
結果を図10に示す。SBMAモデル細胞に対しJNK阻害剤であるSP-600125を投与すると細胞毒性が軽減することが示された。即ち、神経変性の惹起にJNK経路が深く関与していることが明らかとなった。尚、JNKは細胞のストレスに応答するシグナルでアポトーシスなどに関与する。
【実施例】
【0038】
9.SBMAモデルマウス脊髄におけるp-c-Junの免疫組織化学
SBMAモデルマウスの病態へのJNK経路の関与について更に検討した。SBMAモデルマウス(97Q)、コントロールマウス(24Q)、CGRP1コントロールSBMAモデルマウス(97Q CGRP(+/+))、CGRP1ノックアウトSBMAモデルマウス(97Q CGRP(-/-))、ナラトリプタンを投与しないSBMAモデルマウス(97Qコントロール)、及びナラトリプタンを投与したSBMAモデルマウス(97Qナラトリプタン)について、脊髄(胸髄、15週)のパラフィンブロックよりプレパラート切片を作成した。一次抗体は抗p-c-Jun抗体(Cell Signaling Technology, #2361 (1:1000))を使用し、免疫染色はEnVision+ Kit(Dako)を用いた。プロトコールはメーカーのものに従った。免疫染色された胸髄水平断で中心管を一角とする前角側4分の1部分のp-c-Jun陽性領域を画像解析ソフトWinROOF(三谷商事)により半定量し、コントロールと比較した。
【実施例】
【0039】
結果を図11に示す。SBMAモデルマウスの脊髄運動ニューロンにおいてJNK経路の鍵となる転写因子c-Junの活性化物p-c-Junの濃染が認められた。CGRP1のノックアウトによりp-c-Junの染色は低下し、ナラトリプタンの投与によっても同様の結果となることが示され、細胞内ストレスの改善が示唆された。これらの検討により、CGRP1はJNKの活性化を介して神経細胞を障害すると考えられた。
【実施例】
【0040】
<まとめ>
以上の実験の結果、「トリプタン系薬剤はSBMAに対して治療効果を示し、中でもナラトリプタンの効果は高いこと」及び「SBMAに対する治療戦略としてトリプタン系薬剤の長期間に亘る連続的投与が有効であること」が明らかとなった。トリプタン系薬剤は偏頭痛の治療薬として認可・臨床応用されている薬剤であり、その適用法として「長期間に亘る連続的な投与」は想定されていない。上記知見は、従来の適用とは全く異なることはもとより従来の使用実績からは到底予想できない、トリプタン系薬剤の新たな用途を提供する。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明の医薬はSBMAの治療に用いられる。SBMAはポリグルタミン病の一つである。ポリグルタミン病では、特定の遺伝子におけるCAGリピートの異常延長が原因であること、CAGリピート長が長いほど発症年齢が若年化し重症化すること、表現促進現象(世代を経るごとに発症年齢が若年化する現象)が認められること、神経組織が選択的に障害を受けること、及び神経細胞内に変異タンパク質の凝集が認められるとともに核内封入体が観察されることなど、多くの共通点が認められる。疾患原因をはじめとした、これらの共通点に鑑みれば、SBMAに対して有効であることが判明したトリプタン系薬剤が他のポリグルタミン病についても薬効を示すことが大いに期待される。
【0042】
この発明は、上記発明の実施の形態及び実施例の説明に何ら限定されるものではない。特許請求の範囲の記載を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様もこの発明に含まれる。
本明細書の中で明示した論文、公開特許公報、及び特許公報などの内容は、その全ての内容を援用によって引用することとする。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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