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明細書 :反射材及び光学構造物

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5472833号 (P5472833)
登録日 平成26年2月14日(2014.2.14)
発行日 平成26年4月16日(2014.4.16)
発明の名称または考案の名称 反射材及び光学構造物
国際特許分類 G02B   5/08        (2006.01)
G02B   5/122       (2006.01)
G02B   1/02        (2006.01)
G02B   6/122       (2006.01)
F21V   7/04        (2006.01)
FI G02B 5/08 Z
G02B 5/122
G02B 1/02
G02B 6/12 A
F21V 7/04
請求項の数または発明の数 9
全頁数 36
出願番号 特願2011-547553 (P2011-547553)
出願日 平成22年12月21日(2010.12.21)
国際出願番号 PCT/JP2010/072964
国際公開番号 WO2011/078147
国際公開日 平成23年6月30日(2011.6.30)
優先権出願番号 2009289269
2010045633
優先日 平成21年12月21日(2009.12.21)
平成22年3月2日(2010.3.2)
優先権主張国 日本国(JP)
日本国(JP)
審査請求日 平成24年6月19日(2012.6.19)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
発明者または考案者 【氏名】小林 哲郎
個別代理人の代理人 【識別番号】110000338、【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
審査官 【審査官】後藤 慎平
参考文献・文献 特開2001-296566(JP,A)
特開平11-053756(JP,A)
調査した分野 G02B 5/00-5/136
特許請求の範囲 【請求項1】
光を透過する光学媒質からなる反射材であって、
上記光学媒質は、屈折率nがn>√(4+2√2)であり、
1面は、法線が直角座標系主軸x、y、zの一つと直交し、他の2軸と45°の角度を持つ平面である45斜面を隙間無く配列して形成された面であり、上記第1面の反対側にある第2面、上記直角座標系主軸x、y、zの何れかに平行な法線を持つ平面である主軸面であり、
記光学媒質外より上記第1面に入射した光線は、その入射角に関わらず、直接、上記第2面に当たる場合、あるいは多重反射の後、上記第2面に当たる場合のいずれの場合にも必ず全反射の臨界角以上の角度で当たり、全反射され上記第2面を透過できず、
上記光学媒質外より上記第2面に入射した光線は、その入射角に関わらず、直接、上記第1面に当たる場合、あるいは多重反射の後、上記第1面に当たる場合のいずれの場合にも必ず全反射の臨界角以上の角度で当たり、全反射され第1面を透過できないことを特徴とする反射材
【請求項2】
光を透過する光学媒質からなる反射材であって、
上記光学媒質は、屈折率nがn>Δ・√(4+2√2)(Δ≧1)であり
1面は、法線が直角座標系主軸x、y、zの一つと直交し、他の2軸と45°の角度を持つ平面である45斜面を隙間無く配列して形成された面であり、上記第1面の反対側にある第2面、上記直角座標系主軸x、y、zの何れかに平行な法線を持つ平面である主軸面であり、且つ、上記両面の何れか一方の面の外側、あるいは両面の外側に、屈折率Δの光学媒質層が付されており、
上記光学媒質外より上記第1面に入射した光線は、その入射角に関わらず、直接、主軸面に当たる場合、あるいは多重反射の後、上記第2面に当たる場合のいずれの場合にも必ず全反射の臨界角以上の角度で当たり、全反射され第2面を透過できず、
上記光学媒質外より上記第2面に入射した光線は、その入射角に関わらず、直接、上記第1面に当たる場合、あるいは多重反射の後、上記第1面に当たる場合のいずれの場合にも必ず全反射の臨界角以上の角度で当たり、全反射され第1面を透過できないことを特徴とする反射材
【請求項3】
光透過性の光学媒質の内部に中空部を有する光学構造物であって、
上記光学媒質は、
屈折率nがn>√(4+2√2)であり、且つ、
法線が直角座標系主軸x、y、zの一つと直交し、他の2軸と45°の角度を持つ平面である45斜面を複数組み合わせて形成される45斜複合面と、
上記45斜複合面とは重ならず、直角座標系主軸x、y、zの何れかに平行な法線を持つ平面である主軸面を複数組み合わせて形成される主軸複合面とで形成され、
上記中空部は、上記45斜複合面と主軸複合面との何れか一方の面によって囲まれて形成されており、
上記光学媒質外より45斜複合面に入射した光線は、その入射角に関わらず、直接、主軸複合面に当たる場合、あるいは多重反射の後、主軸複合面に当たる場合のいずれの場合にも必ず全反射の臨界角以上の角度で当たり、全反射され主軸複合面を透過できず、
また、上記光学媒質外より主軸複合面に入射した光線は、その入射角に関わらず、直接、45斜複合面に当たる場合、あるいは多重反射の後、45斜複合面に当たる場合のいずれの場合にも必ず全反射の臨界角以上の角度で当たり、全反射され45斜複合面を透過できないことを特徴とする光学構造物。
【請求項4】
上記光学媒質内に上記中空部が複数個設けられていることを特徴とする請求項3に記載の光学構造物。
【請求項5】
上記光学媒質の中空部内に、間隙を介して、請求項3または4に記載の光学構造物が少なくとも1つ挿入されていることを特徴とする光学構造物。
【請求項6】
上記光学媒質の外面の一部に、当該外面が主軸面からなる主軸複合面であれば上記45斜面からなる領域が形成され、当該外面が45斜面からなる45斜複合面であれば上記主軸面からなる領域が形成されていることを特徴とする請求項3に記載の光学構造物。
【請求項7】
上記光学媒質の屈折率nがn>Δ・√(4+2√2)(Δ≧1)であるとき、
上記光学媒質の外周面に、屈折率がΔである光学材料からなる層が形成されていることを特徴とする請求項3~6の何れか1項に記載の光学構造物。
【請求項8】
光透過性の第一光学媒質からなる光学構造物であって、
上記第一光学媒質は、
屈折率nがn>Δ・√(4+2√2)(Δ≧1)であり、且つ、
法線が主軸の一つと直交し、他の2軸と45°の角度を持つ平面である45斜面を複数組み合わせて形成される45斜複合面と、
上記45斜複合面とは重ならず、直角座標系主軸x、y、zの何れかに平行な法線を持つ平面である主軸面を複数組み合わせて形成される主軸複合面とで形成され、
上記45斜複合面と主軸複合面との何れか一方の面によって囲まれた空間に、屈折率Δの第二光学媒質が充填されており、
上記第一光学媒質外より45斜複合面に入射した光線は、その入射角に関わらず、直接、主軸複合面に当たる場合、あるいは多重反射の後、主軸複合面に当たる場合のいずれの場合にも必ず全反射の臨界角以上の角度で当たり、全反射され主軸複合面を透過できず、
また、上記第一光学媒質外より主軸複合面に入射した光線は、その入射角に関わらず、直接、45斜複合面に当たる場合、あるいは多重反射の後、45斜複合面に当たる場合のいずれの場合にも必ず全反射の臨界角以上の角度で当たり、全反射され45斜複合面を透過できないことを特徴とする光学構造物。
【請求項9】
上記屈折率Δの第二光学媒質が充填された領域に、発光素子または発光制御素子が埋め込まれていることを特徴とする請求項8に記載の光学構造物。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、光学媒質で構成された光に対して高反射(全反射を含む)を達成できる反射材、及び、それらを用いて構成された光導波路、光共振器等の光学構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光に対して高反射を得る反射材や、高反射材を用いた構造物として以下のようなものが挙げられる。
【0003】
(1)誘電体球による高Q値光共振器:一般にはマイクロメートルサイズの微小誘電体球が用いられ、球内では周辺に沿って進む光は全反射をして球内を周回し、反射鏡が無いにも関わらず非常に高いQ値の光共振器を構成する。Whispering Gallery Modeと称し、科学実験でよく用いられる。このような微小球を並べて遅波回路に用いるとか、内部に色素をドープして微小球レーザに利用するなどされている。
【0004】
(2)ミラーボール:表面に鏡の小片を張り詰めた球体、あるいは多面体をモータで回転させる照明演出器具。ミラーボールをスポットライトで照らすと反射光が水玉状に室内に散りばめられ幻想的に演出する。
【0005】
(3)天然あるいは人工宝石:屈折率が非常に高く、内部に入った光は全反射しやすい。特に、表面を多面状にカットしたものは輝きを増す。
【0006】
また、アレイ化したコーナーキューブを光源の周囲に配置して前面反射鏡として用いた照明装置が特許文献1に開示されている。
【0007】
上記のような構造物としては、上に述べた例の他に、光学媒質で構成された光導波路、光共振器等の光学構造物がある。
【0008】
(4)導光路(導波路):光ファイバに代表される透明光学媒質で構成される導光路(導波路)の多くは中央に屈折率の高いコアを配し、その外側に屈折率の小さいクラッドを配し、コア内部の光がクラッドに当たるとき全反射してコアに閉じこめられて外部に放射せず進む導波モードを伝送に用いている。クラッドにあたるときの交差角度が大きく(入射角が小さいことに対応)全反射しないような広がり角の大きい光は外部に光が漏れることになり、伝送損失の大きい放射モードとなる。また、この種の導光路では、高パワー光伝送においては大口径が必要だが重くなることやコアでの光損失が問題になる。
【0009】
他方、中空で外側に光学媒質を配した導光路が中空(ホロー)導波路である。これは大口径でも軽くでき、中空コアなので、高光パワー伝送に向く。これもその外側には放射しない導波モードを利用するとか、さらに外側に金属膜を付け、反射をさせるなどの工夫をしている。
【0010】
いずれにおいても損失少なく伝送する導波モードと外部に放射し伝送損失の大きい放射モードがあり、通常は導波モードのみ利用している。但し、外部機器や他の伝送路と接続する場合、完全なモード整合は難しく一部は放射モードになって結合損失となっている。また、金属膜付き中空導光路では放射モードが抑えられるが金属膜での吸収損が問題となる。
【0011】
一般に導波モードは、光の進行方向が導波路軸方向に対し大きい角度を持たない広がり角の小さい光ビームに対応し、進行方向が導波路軸方向に対し大きい角度を持つ成分を持つ広がり角の大きいビームは全反射が行われず外部にも漏れる放射モードとなる。全反射するには屈折率差で決まる臨界角より大きい入射角が必要なことから、光線的に考えるとほぼ軸方向を向き少し径方向を向いてジグザグで進むのに対応しているモードが導波モードとして使われ、軸方向よりは径方向を向き蛇行が激しくなかなか前には進まないモデルに対応しているモードが放射モードになる。
【0012】
最近脚光をあびている中空導光路としてフォトニック結晶ファイバがある。これは長所を多く持つが、構造が複雑な上、波長程度の周期構造をもつため動作波長域が限られるという欠点を持つ。
【0013】
そこで、上記フォトニック結晶ファイバのような複雑な構造でない中空導光路として、例えば特許文献2に開示された中空導光路がある。この中空導光路は、壁の全反射で導光している。
【0014】
特許文献2に開示された中空導光路は、方形筒の外側を筒軸方向に三角畝を1つから複数並べ、壁の全反射で導光するようになっているので、屈折率によって決まる角度内の光ビームを伝送する必要があり、ビーム広がりを抑えて伝送する伝送路となっている。
【0015】
つまり、特許文献2に開示された中空導光路には、例えば図42に示すように、屈折率によって決まる角度外の光ビームを伝送した場合、光ビームは中空導光路の外部に漏れてしまう、所謂放射モードが存在することになる。勿論逆に外部からも不要光が侵入する。
【0016】
(5)光共振器:従来の光共振器の代表例は2枚の鏡を対向させたファブリ・ペロー共振器であるが、これは光軸に沿った光のみ閉じこめるもので、それ以外の光は周囲に発散する。半導体レーザでは導波路構造を用いているが、放射モードが存在する。最近フォトニック結晶を用いた高Q共振器が研究されてきているが、ただ上述のごとく波長程度の周期構造を用いているので共振器として動作する波長域は限られており、また、場合によっては方位も限られている。
【先行技術文献】
【0017】

【特許文献1】日本国公開特許公報「特開2008-89977号公報(2008年4月17日公開)」
【特許文献2】米国特許公報「第4,260,220号明細書(1981年4月7日)」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
しかしながら、上述のような従来技術には、以下の問題がある。
【0019】
(1)誘電体球による高Q値光共振器:全ての角度の光に対して全反射を得ることはできず、球面に直角に近い角度で進む光は全反射しないので外にでてくる。また、外部からも光が入り、透過もする。内部は詰まっており、実験空間等を設けることはできない。また、大きいサイズのものは重くなる。
【0020】
(2)ミラーボール:ミラーボールは通常の反射鏡を球面(多面体)に張り付けているだけなので、多くの反射鏡が必要である。また、鏡で全面を覆いつくすことは不可能に近い。また、球内については全く機能を持たない。
【0021】
(3)天然あるいは人工宝石:極めて高価である。また、内部を空洞とすることも困難で、重量も大きい。さらに、全ての光線に対しての全反射もできない。
【0022】
また、上記構造物として、導光路、光共振器とした場合であっても、以下に示すような問題がある。
【0023】
(4)導光路(導波路):特許文献2では、光学媒質として実施例には低屈折率のアクリル板(屈折率n≒1.49)が使用されているので、放射モードも出やすく、外部から入射する光も導光路に容易に侵入する可能性がある。特許文献2は基本的には放射モードを伴う1本の光導波路に関するものであり、導波路でも重要な分岐や曲げ構造、反射構造への適用はそのままではできないし、そのような記載もない。反射部がないと構成できないから当然であるが内部で光を共振させる光共振器として使用することができず、共振器に関する記述もない。
【0024】
(5)光共振器:従来の光共振器は簡単な構成では開放形で特定の方向にしか光閉じこめ効果がなく、複雑な構造を用いても、共振器として動作する波長帯域が限られるあるいは指向性が限定される、大きい実験空間がとれないなど課題は多い。
【0025】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、その第1の目的は、内部を中空とし、かつ内部からはどのような角度からも全反射で光が外にでないような構造、あるいは、外部からのどのような入射角に対しても全反射を実現し内部に光が入らない構造を、軽量化かつ大型化が容易な構造として提供することにある。
【0026】
また、第2の目的は、従来のミラーボール、照明装置、および宝石等では実現できなかった光学特性を持つ構造物を提供することにある。
【0027】
さらに、第3の目的は、第1の目的をより具体化し、光学材料の構造形状、屈折率を具体的に与え、構造が簡単で、動作波長域の制限を無くし、どの方向にも光が閉じこめられ外部に光が放射されない、あるいは外部から光が入射されない、かつ、大きい利用空間も用意できる無放射モードの光学構造物を具体的に提供することにある。
【0028】
また、第4の目的は、導光路で重要な曲がりや分岐などにも適用できる応用範囲の広い無放射モードの光学構造物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0029】
上記の課題を解決するために、本発明の構造物は、光を透過する材質からなり、第1面が斜面を隙間無く配列して形成された面であり、第1面の反対側にある第2面が平面あるいは平面に近い緩やかな曲面である反射材によって、内部が中空となるように囲みこんだ多面体、あるいは球体となる構造であり、上記反射材は、上記第1面もしくは第2面から入射した光が、対向する面に対して直接、あるいは、内部で反射を繰り返した後も、反射材内部から入射する時には常に全反射の臨界角よりも大きい入射角で入射するような第1面の形状および屈折率を有することを特徴としている。
【0030】
上記の構成によれば、光が反射材の第2面から入射する場合は、第2面を透過して反射材内部に出射される際に、反射材の屈折率との作用により、第2面からの光の内部への出射角が制限される。そして、この内部への出射角が制限された光が第1面に到達するときには、その入射角は第1面での全反射の臨界角以上となるような形状を有しているため、全反射が実現される。さらに全反射の後、第1面の別の斜面に入射するときや第2面に戻った後再度第1面の戻るなど構造内部で反射を繰り返した後も第1面に入射するときについても常に臨界角以上となるような形状を有しているため、第1面では常に全反射が実現される。つまり、第2面から入射した光は反射材内部ででどのような経路を経るにしても第1面にあたるときは必ず全反射し第1面を絶対に透過しない形状になっている。一方、逆に光が反射材の第1面から入射する場合も光の相反性から当然、反射材内部でどのような経路を経るにしても第2面に入射する場合は、常に全反射が実現され、第2面を透過することはない。
【0031】
このように、反射材の一方の面から入射した光は、他方の面を通り抜けることができず、入射面側に戻るため、該反射材によって内部が中空となるように囲みこんだ本構造は、光が漏れない非常に高い光学的Q値をもつことができる。
【0032】
また、本発明の他の構造物は、光を透過する材質からなり、第1面が斜面を隙間無く配列して形成された面であり、第1面の反対側にある第2面が平面あるいは平面に近い緩やかな曲面である反射材によって、内部が中空となるように囲みこんだ多面体、あるいは球体となる構造物であり、上記反射材は、上記第2面から入射する光において、その入射角がある特定の入射角より小さければ、その入射光を全反射させ、その入射角がある特定の入射角より大きければ、その入射光の一部が第1面を透過するような、第1面の形状および屈折率を有することを特徴としている。
【0033】
上記の構成によれば、反射材の一方の面から入射した光は、入射角によって、全反射を受けるか、あるいは一部の光の透過を許容する。さらに、透過光については、第2面である平面と第1面における斜面とを通過するため、プリズム効果によって屈折する。このため、真正面を見れば端が見えたり端から見ると真正面が見えたりなどの思いがけない光学特性を得ることができる。
【0034】
また、上記構造物では、上記反射材の第1面は、三角畝、或いは多角錐を隙間無く配列して形成された面である構成とすることができる。
【0035】
さらに、本発明者は、上記の目的を達成するために、直角座標系主軸x、y、zに平行な法線を持つ平面からなる主軸面と、法線が上記主軸の一つと直交し、他の2軸と45°の角度を持つ平面からなる45斜面とに着目し、光導波路、光共振器としての理想的な構造を成し得る光学構造物を見出した。
【0036】
すなわち、上記主軸面および45斜面のもつ特異性から、上記主軸面を通して屈折率nの光学媒質に入射した光線は、主軸面および45斜面でいくら反射を繰り返しても、光線ベクトルのもつ3つの成分(x成分、y成分、z成分)は、相互に交換したり正負号を入れ替えたりはするが、これ以外のものに変わることはない。3種を重複せず3つに分配する組み合わせは6(3!)通り、それぞれが正負号がとれるので8通り(2の3乗)、両方考慮して全部で48(6×8)通りなので、主軸面を通して屈折率nの光学媒質に入射した光線は、主軸面および45斜面でいくら内部反射を繰り返してもこの48種の光線のどれかに限定される。これら48種の光線のいずれもが、光学媒質の屈折率nがn>√(4+2√2)であるとき、全ての45斜面で全反射することを本発明者は後述するように初めて数学的に証明し、これが本発明の理論的根拠となっている。基本物理原理が本発明者独自のものであるのでそれに基づく発明は当然従来にはない新規なものとなっている。
【0037】
この結果、これら48通りの光線、すなわち上記主軸面を通して屈折率nの光学媒質に入射した光線は、どのような内部反射を繰り返そうと45斜面では必ず全反射し、45斜面からは出られない。また、光の相反性から45斜面から入射した光はどのような経路を経ようとも主軸面では必ず全反射し、主軸面から出られないことになる(相反性の補足説明:もし、45斜面から入射した光が主軸面から出られる光線経路があれば、それを逆に辿れば主軸面から入射し45斜面を通り抜けることができ、矛盾が生じる)。
【0038】
従って、一方の面が主軸面で反対側の面が上述の45斜面となっている構造の中空の筒は放射モードのない伝送路となり、中空が閉じた場合には中から外には光線が出られないし、外から中には光線が入れない完全密閉形の光共振器となる。
【0039】
従って、上記光導波路、光共振器としての理想的な構造を成し得る光学構造物として、本発明の光学構造物は、光透過性の光学媒質の内部に中空部を有する光学構造物であって、上記光学媒質は、屈折率nがn>√(4+2√2)であり、且つ、直角座標系主軸x、y、zに平行な法線を持つ平面からなる主軸面を複数組み合わせて形成される第2面と、上記第2面とは重ならず、法線が上記主軸の一つと直交し、他の2軸と45°の角度を持つ平面からなる45斜面を複数組み合わせて形成される第1面とで形成され、上記中空部は、上記第1面と第2面との何れか一方の面によって囲まれて形成されていることを特徴としている。
【0040】
上記構成によれば、中空部を囲んでいる面が第2面である場合には、中空部からの光線は第2面で一部反射、一部透過となるが、透過して光学媒質に出射された光線は、上述のように、第1面において全て反射され、その後、第1面や第2面でどのように反射を繰り返そうが最終的には第2面を介して中空部に戻る。また、中空部を囲んでいる面が第1面である場合には、中空部内から光学媒質に透過した光は第2面で必ず全反射するため、第2面から外側に光線が漏れ出すことはなく、内部反射を繰り返しても最終的には中空部に戻る。外部から入射した場合も同様で、光学媒質を経て中空部を覆っている面では全て全反射されるので、当該中空部には外部からの光線が入射されることがない。
【0041】
従って、上記構成の光学構造物により得られる導光路の場合は、放射モードの存在しない導光路となり、共振器の場合は、完全方位全反射の共振器(媒質損失がなければQが∞の共振器)となる。
【0042】
つまり、構造が簡単で、動作波長域の制限を無くし、どの方向にも光が閉じこめられ外部に光が放射されない、あるいは外部から光が入射されない、かつ、大きい利用空間も用意できる無放射モードの光学構造物を提供でき、しかも、導光路で重要な曲がりや分岐などにも適用できる応用範囲の広い無放射モードの光学構造物を提供できるという効果を奏する。
【0043】
上記構成の光学構造物を、光を導くための導光路を有する光導波路に適用した場合、光の進行方向が光導波路軸方向に対し大きい角度を持つ成分を持つ広がり角の大きい光線であっても、中空部内における全反射あるいは光学媒質内での全反射となり、光学構造物の外部に光が漏れることはないので、放射モードの無い光導波路を実現することができる。
【0044】
また、上記構成の光学構造物を、光を共振させるための共振部を有する光共振器に適用した場合、中空部において、光軸に沿った光のみ閉じこめるものでなく、それ以外の光をも閉じ込めることができる。つまり、上記構成の光学構造物では、どの波長域でもどの方位でも光が完全反射されるので、非常に高いQ値をもつ光共振器を簡単な構成で容易に実現できる。
【0045】
上記光学媒質は、光学板からなり、上記光学板の外面が上記第1面であるとき、当該光学板の内面が上記第2面であり、上記光学板の外面が上記第2面であるとき、当該光学板の内面が上記第1面であってもよい。
【0046】
上記光学媒質内に上記中空部を複数個設けてもよい。
【0047】
これにより、光学媒質を介して複数の中空部間で光線のやりとりが可能な複合共振器、複合導波路となり、光学構造物全体として、強度をもたせたままで、大口径または大空間の中空部を実現できる。また、各中空部に役割を分担させ複合機能を持たせることも可能である(例えば光源と測定サンプル、光源と増幅部、変調部など)。
【0048】
上記光学媒質の中空部内に、間隙を介して、上記構造の光学構造物が少なくとも1つ挿入されていてもよい。挿入された光学構造物に含まれる中空部からはその構造物の外面、つまり光学構造物が挿入された中空部には光が出られず。さらにこの中空部からさらに外には光線が出られないので、奥の中空部からは2重に遮断されよりQ値の高い共振器が形成される。上記光学媒質の中空部内に、間隙を介して、上記構造の光学構造物が複数挿入された場合は、複数の光学構造物に含まれる中空部間の結合は遮断される。
【0049】
上記光学構造物を以下のように多重構造としてもよい。
【0050】
すなわち、最外縁の光学構造物を、1番目の光学構造物としたとき、1番目の光学構造物の中空部に、2番目の光学構造物が挿入され、2番目の光学構造物の中空部に、3番目の光学構造物が挿入され、・・・、k(k>1の整数)番目の光学構造物の中空部に、k+1番目の光学構造物が挿入されていることを特徴としている。
【0051】
また、上記光学媒質の外面の一部に、当該外面が主軸面からなる第2面であれば上記45斜面からなる領域が形成され、当該外面が45斜面からなる第1面であれば上記主軸面からなる領域が形成されていてもよい。
【0052】
上記構成によれば、光学媒質の一部に形成された領域は光の入出力部として機能する。
【0053】
つまり、外面が主軸面からなり内面が45斜面からなるとき45斜面に囲まれた中空からの光は主軸面の外面からは全反射のため外部には出られないが、その外面の一部が45斜面になっていれば、そこから出射できる。当然、逆にここより中空部にも光が入りうる。外面が45斜面、内面が主軸面の場合は外面の一部を主軸面としておけばここが主軸面で囲まれた中空との出入り口になる。
【0054】
この入出力部となる領域以外から光が漏れることはない。
【0055】
ここで、上記構造の光学構造物を光共振器として用いた場合、光の出口が存在することになるので、共振器のQ値がある程度下がるものの、他の部分に放射損失がないので、共振器としては理想的なものとなる。
【0056】
また、高いQ値が必要な場合には、入出力部の領域を小さくすればよく、また、レーザ発振器などに用いる場合には最適結合になるよう入出力部の領域サイズを調節すればよい。
【0057】
通常、上記構成の光学構造物において、中空部内の光が外面において全反射し外に出ないように構成されているものの、厳密には全反射してもエバネッセント波が光学媒質から外部に滲みでている。滲み出ているエバネッセント波は外に放射する波でないので損失とならないのだが光学構造物を宙ぶらりに置くのでなければ他の物質と接することになりここよりエバネッセント波が接した物質内に侵入し吸収されたり、物質内に伝搬したりして損失を生む。
【0058】
そこで、上記エバネッセント波の光学媒質から別物質へ漏れを抑制するために、以下のような構成にするのが好ましい。
【0059】
すなわち、上記光学媒質の屈折率nがn>Δ・√(4+2√2)であるとき、上記光学媒質の外周面に、屈折率がΔ(Δ≧1)である光学材料からなる層を形成するのが好ましい。
【0060】
この屈折率がΔの光学材料からなる層の厚さがエバネッセント波が減衰するに十分な厚さであれば、他の物質がそのさらに外で接触していても光の損失、散逸は防げる。また、この光学構造物を宙ぶらり状態でなく安定して保持し、あるいは基板上に構成することも可能になる。
【0061】
上記構成の光学構造物において中空部を光学媒質で充填してもよい。
【0062】
すなわち、上記光学媒質は、屈折率nがn>Δ・√(4+2√2)(Δ≧1)であり、且つ、直角座標系主軸x、y、zに平行な法線を持つ平面からなる主軸面を複数組み合わせて形成される第2面と、上記第2面とは重ならず、法線が上記主軸の一つと直交し、他の2軸と45°の角度を持つ平面からなる45斜面を複数組み合わせて形成される第1面とで形成され、上記第1面と第2面との何れか一方の面によって囲まれた空間に、屈折率Δの光学媒質が充填されていることが好ましい。
【0063】
上記の構成によれば、中空部内に別の光学構造物を挿入した場合に、挿入した光学構造物を中空部内に充填された屈折率Δの光学媒質により保持することができる。
【0064】
また、上記屈折率Δの光学媒質が充填された領域に、発光素子または発光制御素子が埋め込まれていてもよい。
【0065】
これにより、上記屈折率Δの光学媒質により、中空部内において発光素子または発光制御素子を安定して保持することができる。
【0066】
上記第1面または第2面が、任意の曲率半径となる線上に複数面形成されていてもよい。
【0067】
この場合、曲率半径を非常に大きい値とすれば、曲面は局地的に見ればほぼ平面である。従って、これを主軸面の一つとしてその上、あるいは下に45斜面からなるの構造を余裕を見て屈折率nが√(4+2√2)より若干大きめの屈折率をもつ光学媒質で作れば、近似的に無放射条件が得られる。これにより、大口径導光路を実現することが可能となる。
【発明の効果】
【0068】
本発明の構造物は、光を透過する材質からなり、第1面が斜面を隙間無く配列して形成された面であり、第1面の反対側にある第2面が平面あるいは平面に近い緩やかな曲面である反射材によって、内部が中空となるように囲みこんだ多面体、あるいは球体となる構造であり、上記反射材は、上記第1面もしくは第2面から入射した光が、対向する面に対して直接、あるいは、内部で反射を繰り返した後も、反射材内部から入射する時には常に全反射の臨界角よりも大きい入射角で入射するような第1面の形状および屈折率を有する構成である。
【0069】
それゆえ、反射材の一方の面から入射した光は、他方の面を通り抜けることができず、入射面側に戻るため、該反射材によって内部が中空となるように囲みこんだ本構造は、光が漏れない非常に高い光学的Q値をもち、光学実験球、光学実験多面体、もしくは、中空で軽いにも関わらず大きく輝く装飾光具、人工宝石として機能させることができる。
【0070】
また、本発明の他の構造物は、光を透過する材質からなり、第1面が斜面を隙間無く配列して形成された面であり、第1面の反対側にある第2面が平面あるいは平面に近い緩やかな曲面である反射材によって、内部が中空となるように囲みこんだ多面体、あるいは球体となる構造物であり、上記反射材は、上記第2面から入射する光において、その入射角がある特定の入射角より小さければ、その入射光を全反射させ、その入射角がある特定の入射角より大きければ、その入射光の一部が第1面を透過するような、第1面の形状および屈折率を有する構造である。
【0071】
それゆえ、反射材の一方の面から入射した光は、入射角によって、全反射を受けるか、あるいは一部の光の透過を許容する。さらに、透過光については、第2面である平面と第1面における斜面とを通過するため、プリズム効果によって屈折する。このため、真正面を見れば端が見えたり端から見ると真正面が見えたりなどの思いがけない光学特性を得ることができ、内部に光源を入れて装飾照明等として機能させることができる。
【0072】
また、より具体的な本発明の他の光学構造物は、光透過性の光学媒質の内部に中空部を有する光学構造物であって、上記光学媒質は、屈折率nがn>√(4+2√2)であり、且つ、直角座標系主軸x、y、zに平行な法線を持つ平面からなる主軸面を複数組み合わせて形成される第2面と、上記第2面とは重ならず、法線が上記主軸の一つと直交し、他の2軸と45°の角度を持つ平面からなる45斜面を複数組み合わせて形成される第1面とで形成され、上記中空部は、上記第1面と第2面との何れか一方の面によって囲まれて形成されている構成である。
【0073】
これにより、構造が簡単で、動作波長域の制限を無くし、どの方向にも光が閉じこめられ外部に光が放射されない、あるいは外部から光が入射されない、かつ、大きい利用空間も用意できる無放射モードの光学構造物を提供でき、しかも、導光路で重要な曲がりや分岐などにも適用できる応用範囲の広い無放射モードの光学構造物を提供できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1(a)】本発明の一実施形態を示すものであり、構造物の構成例を示す斜視図である。
【図1(b)】本発明の一実施形態を示すものであり、構造物の構成例を示す斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態を示すものであり、反射材の一構成例を示す斜視図である。
【図3】本発明の一実施形態を示すものであり、反射材の他の構成例を示す斜視図である。
【図4】本発明の一実施形態を示すものであり、反射材の他の構成例を示す斜視図である。
【図5】(a)~(e)は、直角三角畝構造の反射材を例にとり、全反射が生じる原理を示す断面図である。
【図6(a)】実施の形態2にかかる構造物の簡易な構成例を示す斜視図である。
【図6(b)】実施の形態2にかかる構造物の簡易な構成例を示す斜視図である。
【図7】エッジ部分に入射した光に対するエッジ効果を示す図である。
【図8】曲板構造を持つ反射材において、透過率を平板の臨界屈折率と同じにした場合に、曲げによって生じる透過光の存在を示す図である。
【図9】実施の形態3にかかる構造物で使用される反射材の、光の反射および透過の原理を示す断面図である。
【図10(a)】実施の形態3に係る構造物を装飾電球に応用した場合の例を示す図である。
【図10(b)】実施の形態3に係る構造物を装飾電球に応用した場合の例を示す図である。
【図11】実施の形態4にかかる構造物を人工宝石として装飾物に適用した場合の例を示す図である。
【図12】本発明の基本構成を示す光学構造物の概略斜視図である。
【図13】本発明の実施の形態5に係る中空導光路の概略斜視図である。
【図14】本発明の実施の形態5に係る他の中空導光路の概略斜視図である。
【図15】本発明の実施の形態5に係るさらに他の中空導光路の概略斜視図である。
【図16】(a)~(d)は、本発明の実施の形態5に係るさらに他の中空導光路の概略断面図である。
【図17】本発明の実施の形態5に係るさらに他の中空導光路の概略斜視図である。
【図18】本発明の実施の形態5に係るさらに他の中空導光路の概略斜視図である。
【図19】本発明の実施の形態5に係るさらに他の中空導光路の概略斜視図である。
【図20】(a)は、本発明の実施の形態5に係るさらに他の中空導光路の概略斜視図であり、(b)は、(a)に示した中空導光路を上部から見た概略断面図である。
【図21】(a)は、本発明の実施の形態5に係るさらに他の中空導光路の概略斜視図であり、(b)は、(a)に示した中空導光路を上部から見た概略断面図である。
【図22】本発明の実施の形態5に係るさらに他の中空導光路の概略斜視図である。
【図23】本本発明の実施の形態5に係るさらに他の中空導光路の概略斜視図である。
【図24】(a)(b)は、中空導光路の他の概略断面図である。
【図25】本発明の実施の形態6に係る光共振器の概略斜視図である。
【図26】(a)(b)は、図25に示す光共振器の概略断面図である。
【図27】本発明の実施の形態6に係る他の光共振器の概略斜視図である。
【図28】本発明の実施の形態6に係るさらに他の光共振器の概略斜視図である。
【図29】本発明の実施の形態6に係るさらに他の光共振器の概略斜視図である。
【図30】本発明の実施の形態6に係るさらに他の光共振器の概略斜視図である。
【図31】本発明の実施の形態6に係る具体的な共振回路の概略斜視図である。
【図32】本発明の実施の形態5及び6に係る中空の光学構造物の他の例を示す概略断面図である。
【図33】本発明の実施の形態5及び6に係る中空の光学構造物の他の例を示す概略断面図である。
【図34】本発明の実施の形態5及び6に係る中空の光学構造物の他の例を示す概略断面図である。
【図35】本発明の実施の形態5に係る中空の光学構造物の他の例を示す概略斜視図である。
【図36】本発明の原理を説明するための図である。
【図37】本発明の原理を説明するための図である。
【図38】本発明の原理を説明するための図である。
【図39】本発明の原理を説明するための図である。
【図40】本発明の原理を説明するための図である。
【図41】本発明の原理を説明するための図である。
【図42】従来の中空導光路の概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0075】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。

【0076】
〔実施の形態1:反射材の基本構造例〕
先ずは、本実施の形態における反射材の基本構造例を説明する。本実施の形態の反射材は、図2~4に示すように、直角三角畝構造、直角四角錐構造、三角錐構造等を有するものである。

【0077】
図2~4に示す反射材10の構成において、一方の面(以下、第1面)11が三角畝、四角錐、または三角錐の形成面となっており、これと反対側の面(以下、第2面)12は平面となっている。すなわち、本発明に係る反射材10は、第1面11が斜面を隙間無く配列して形成された面となっている。

【0078】
ここで、図2に示す反射材10は、直角三角畝構造を有するものであり、一対の対向2面が直交する三角畝を平行に配列したものである。図3に示す反射材10は、直角四角錐構造を有するものであり、底面が正方形であり、4つの側面のそれぞれ対向する2面が直交する四角錐をアレイ状に配置したものである。図4に示す反射材10は、三角錐構造を有するものであり、底面が正三角形の三角錐をアレイ状に配置したものである。

【0079】
尚、本発明の反射材10において、第1面のそれぞれの斜面の大きさは特に限定されるものではない。但し、反射材の板厚および面積に対して十分に微小な斜面とすれば、当該反射材をほぼ平板に近い材料として提供することができる。また、第2面は、図のような平面に限られるものではなく、平面に近い緩やかな曲面であってもよい。すなわち、第2面が完全な平面でなくても、反射材において所望の光学特性が得られる範囲であれば、第2面が曲面であることも許容可能である。これについては後述する。

【0080】
上記構成の反射材は、透明、かつ高屈折率を有する材質で形成することにより、光を透過させず全反射させることができる。

【0081】
ここで、最も簡単な構成の直角三角畝構造を例にとり、全反射が生じる原理を図5の(a)~(e)を参照して説明する。説明を簡単にするため、図5の(a)~(e)における紙面内の断面を光線が進むと仮定する。

【0082】
まず、図5の(a)のA光線に示すように、第2面に入射角θで入射した光は、スネルの法則に従って屈折してθの角度で板内に入射し、さらに第1面の斜面にθの入射角で当たる。この時、第1面から外に出る出射角をθとすると、反射材の屈折率をnとして、スネルの法則より、
sinθ=n sinθ,sinθ=n sinθ
の式が成り立つ。ここで、n sinθ≧1になればこの式を満足するθは存在せず、全反射となる。

【0083】
図5の(b)に示すB光線に示すように、第2面に直交入射する場合は、θ=θ=0,θ=45°なので、n≧1/sin(45°)=√2=1.4142…であれば、第1面の斜面での全反射を2度し、元に戻る。第2面での内部反射があるが、これも同様に斜面で全反射して結局は元の方向に戻る。

【0084】
屈折率がさらに大きくなると、図5の(c)に示すC光線のように、直交でなくて有限の入射角で入射しても全反射で元に返される。紙面内の光線に限らず、図5の(d)に示す図中P点から入射する光線を考えると、
sinθ=n sinθ,|sinθ|≦1より、
|θ|≦sin-1(1/n)となり、
入射する光線のθのとれる範囲は図5の(d)の円錐内の範囲となる。これが最も小さい入射角で第1面の内部表面に入射するのは円錐との最初の接点(図ではQ点)であり、θ=45°±θなので、最小の入射角|θ3min|=45°-sin-1(1/n)でn sinθ≧1を満足するなら、全ての入射光線に対して全反射が生じることになる。

【0085】
ここで、以下の数(1)より数(2)となる。すなわち、

【0086】
【数1】
JP0005472833B2_000002t.gif

【0087】
より、

【0088】
【数2】
JP0005472833B2_000003t.gif

【0089】
となる。つまりncritical=2.6131…より大きい屈折率を持つ材料で図2に示す直角三角畝構造の反射材を形成した場合、光はどちらの面からもどのような入射角でも反対側には全く通り抜けることができない。

【0090】
次に第1面で全反射の後の光線がどのように進むかを考察する。三角畝構造の場合の光線解析は簡単であり、紙面に直交する方向は無視して光線軌跡を描くと、図5の(e)に示す光線D(実線矢印)と光線E(点線矢印)との2通りしかない。

【0091】
図5の(e)のD光線の場合、第2面からの入射光は入射面に戻るまでに2つの斜面で反射され、第1面のある斜面で全反射した光は、次に第1面の別の斜面にあたる場合は45°+|θ|で入射し、これはさらに大きい入射角であるので全反射して入射時と平行になり、入射面に帰る。

【0092】
図5の(e)のE光線の場合、第1面のある斜面で全反射した光が、次に入射面(第2面)にあたって全反射し、さらに第1面の別の斜面に左右対称的にあたって全反射し元の入射面に対称的に帰る。尚、途中の入射面での反射については、透過しても構わないが、ここでの入射角αは(θ+45°)となり、θよりも45°大きくなり、θで全反射する条件であることから、必ず全反射する。

【0093】
尚、D光線およびE光線の何れの場合も、透過を生じさせる角度で入射面に戻って入射しても、全てが透過するわけではなく、一部の反射光も生じる。しかしながら、この反射光は、入射時と全く同じ角度で斜面に向かい、再び、D光線またはE光線の軌跡となり、第1面では必ず全反射し透過は生じないので、最終的には全ての光が入射面を通過する。

【0094】
今までは光線の進行方向を紙面内としてきたが、紙面に直交する成分が含まれる場合は斜面への入射角はさらに大きくなるので、さらに容易に全反射が達成されるため、ncritical=2.6131…より大きい屈折率を持つ材料で図2に示す直角三角畝構造の反射材を形成した場合、光はどちらの面からどのような向きのどのような入射角でも反対側には全く通り抜けることができないと結論できる。尚、四角錐構造の場合も同様である。

【0095】
以上のように、第2面を通過することでθの範囲が限定された入射光は、反射材の内部から第1面の斜面に到達するが、この斜面において臨界角以上の入射角で入射するような構造を有していれば、第1面において全反射を生じさせることができる。第1面で必ず全反射を起こさせれば、入射光は最終的には入射面から外部に出射する。

【0096】
また、光の相反性から明らかであるが、本実施の形態にかかる反射材では、光が反射材の第1面から入射する場合においても全反射の機能を得ることができる。すなわち、この場合は、光が上記反射材の第1面を透過して反射材内部に出射される際に、第1面の形状と反射材の屈折率との作用により、反射材の内部から第2面に到達する光の入射角が制限され、第2面での入射角が常に全反射の臨界角θn(θn=sin-1(1/n))以上となることにより全反射が実現される。

【0097】
このように、本実施の形態にかかる反射材では第1面の形状と反射材の屈折率との条件に基づいて全反射の機能が得られる。上記直角三角畝板構造および直角四角錐板構造では、上述したように、√(4+2√(2))=2.6131…以上の屈折率にて全反射が得られる。

【0098】
上記説明は光線解析を容易に行うために直角三角板構造を例示したが、上記反射材において、直角三角畝構造および直角四角錐構造では、どのような角度からも光が全反射されるには、2.6131…以上の屈折率が必要である。赤外域ではSi、Ge、GaAsなど多くの半導体が、また、可視域ではZnTe、SiCなどの材料がこのような屈折率を持っている。

【0099】
一方、本発明の反射材において、第1面に形成される微小構造は、全反射する構造ならよいので、三角錐、五角、六角錐など種々の変形も含まれる。そして、このような変形例でも、第1面の形状および材料の屈折率次第で、全ての角度からの光を全反射させることが可能であると推測できる。

【0100】
なお、従来より、微小斜面を配列させて全反射をさせる構造として3斜面が直交した3角錐のコーナーキューブが知られているが、これは、再帰性反射板として用いられるものであって、微小斜面の配列面を鏡面とするものであり、本願発明とは反射の原理が全く異なる。また、本発明において、コーナーキューブ形状三角錐を用いた場合、最初の斜面での全反射条件はn≧2.175…であり、一見、本発明のもつ働きをしそうであるが、入射面を含む内部反射を数回繰り返すだけで少なくともn≦7.278…では斜面から抜け出すことが本発明の過程で光線解析から示され、本発明に用いる第1面の構造には適しておらず、別の形状が必要である。全反射用に多用されるコーナキューブプリズムの底面に垂直入射する場合も、斜面で2度全反射した後、さらに入射面で全反射した光は、残りの斜面にわずか15.8°で入射し、n>3.674でなければ全反射せず通過する。反射鏡を付けていないコーナキューブプリズムは常識に反し、全反射鏡として働かず、本発明では殆ど役に立たないことがわかり、本発明の新規性がこれからも確かめられる。

【0101】
高屈折率を有し、可視域で透明な材料としては、例えば、ZnTe(屈折率2.92)、SiC(同2.63)、LiNbO、LiTaO(同2.2程度)、ZnSe(同2.4)、GaN(同2.4)、ZnS(同2.55~2.33)等、多くある。これらの材料には、人工合成が可能で容易に大サイズのものが得られる可能性を持ち、かつ、加工が容易なものも多い。また、住田光学では屈折率2以上のガラスも研究開発されつつあり、これからも新しい材料が出てきそうである。

【0102】
直角三角畝板構造および直角四角錐板構造では、完全に全反射を得るには2.613以上の屈折率が必要となるが、可視域ではZnTe(屈折率2.92)、SiC(同2.63)などがこれに相当する。これらは現時点では純度、損失等で課題が多いが今後の品質向上次第では有望となろう。赤外域の光に対して透過を示す材料であれば、Si(屈折率3.4)、Ge(屈折率4.0)と、多くの半導体材料が屈折率3以上で人工合成が可能である。このため、赤外光Q値共振器として科学研究用や赤外光デバイスへの応用が可能である。

【0103】
また、この条件下では、反射材のどちらの面からも光が入射すれば全反射で入射面側に戻るので、用途により、表裏を反転して用いることができる。

【0104】
さらに、上記構成の反射材では、その屈折率を上記値よりも小さくしても良い。この場合は、一部の透過光を生じるが、その透過光の出射方向において、通常のガラス板等とは全く異なる特性を得ることができる。これについては、後述する。

【0105】
本実施の形態にかかる反射材は、上述した材質の平板に対して、第1面をエッチングや切削加工によって形成することなどで作成することができる。あるいは、硬質ガラスで形成するような場合には、高温で溶融状態とすれば押し出し加工やプレス加工によっても作成できる。何れの方法でも、大面積化や量産化を図ることは容易である。

【0106】
〔実施の形態2:反射材を用いた第1の構造例〕
本実施の形態2にかかる構造物は、実施の形態1に係る反射材10で囲みこんだ中空の多面体箱(図1(a)参照)、あるいは、球(楕円体を含む曲面体)の構造(図1(b)参照)を持つものである。尚、図では、多面体箱の構造物を四角錐構造の反射材とし、球体の構造物を三角畝構造の反射材としているが、これはあくまで例示に過ぎない。構造物の形状に対して、反射材の第1面の構造をどのようにするかは任意である。

【0107】
本実施の形態2では、上記構造物を構成する反射材10において、箱内(または球内)あるいは箱外(または球外)のいかなる方向から光を入射しても全反射のために反対側に通り抜けないように光学媒質の屈折率を構造に依存する臨界値よりも大きくしたことを特徴とする。

【0108】
上記構造物は、光が漏れない非常に高い光学的Q値をもつ、光学実験球、光学実験多面体、もしくは、中空で軽いにも関わらず大きく輝く装飾光具、人工宝石として機能させることができる。

【0109】
尚、上記構造物において、これを構成する反射材10の表裏は任意であるため、例えば、光学実験球、光学実験多面体として機能させる場合には反射材の第2面を内面側とし、装飾光具、人工宝石として機能させる場合には反射材の第2面を外面側とすることができる。

【0110】
本実施の形態2にかかる構造物として、最も簡単な構成は、図6(a)に示すように、立方体の各面に、対面が互いに直交する一つの四角錐構造を貼り付け、中も立方体にくりぬいた構造となる。このような構造でも、エッジからの入射、放射を無視すれば、n>2.613…で完全反射を得ることができる。完全反射とは、全反射により、内部からの光は外に出ることができず、外部からの光は中に入ることができないことを指す。図6(b)も同様に簡単な構造の例である。立方体(正六面体)の上下2面上に四角錐構造を貼り付け、側面の4面に直角三角畝構造を貼り付け、中を立方体にくり抜いた構造であるが、2つの貼り合わせた四角錐構造の内部を立方体でくり抜いた構造とも見ることができる。これも、n>2.613…で完全反射を得ることができる。

【0111】
ここで、エッジ部分での効果について述べる。上記反射材の面に入射した場合には全反射する光も、図7に示すように、エッジ部分に入射すれば入射角が定まらず散乱され微量ながら透過することが考えられる。このため高いQ値の共振器を構成する場合には、エッジ部の大きさを波長に比べ小さくしてこの透過を小さくする必要がある。

【0112】
また、本実施の形態2に係る構造物を多面体箱とした場合には、それぞれの面を構成する反射材は平板構造(第2面が平面)とすることができるが、構造物を球体構造とする場合には、当然ながら反射材も曲板構造(第2面が曲面)となる。

【0113】
曲板構造を持つ反射材では、曲げのため板内から境界への入射角が若干変わるので、臨界屈折率は若干大きくなるが、基本作用は平板構造の場合と同じである。図8には、透過率を平板の臨界屈折率と同じにした場合に、曲げによって生じる透過光の存在を図示している。このような曲げによる透過光を無くすためには、球面では平板の場合の臨界値より数%程度屈折率を大きくすることが望まれる。また、多面体構造の場合でも、隣接する面の境界部では、反射板の曲げ構造が発生するため、この部分での全反射を確保するために、平板の場合の臨界値より数%程度屈折率を大きくすることが望まれる。

【0114】
多面体箱、球面の構造の作成法として種々のものが考えられる。光学材は光学特性が維持されればよいので、ガラスやアモルファスでもよく、型を作り溶融して流し込む方法が適用できれば最も容易である。

【0115】
また、数cm以上の大型構造で板厚が薄いものであれば、アモルファスでなく結晶でも大きい歪みを生ぜずに、曲面を構成できる。さらに、多面体の場合は各面を作成後、端を光学研磨し互いに光学接着(オプティカルコンタクト)すればよい。ミリメートルやサブミリメートルの微小球面はアモルファスやガラス状でないと作成が困難と予想されるが、ボール・セミコンダクタ(同名の社名の米国会社や(株)山武が開発)という球面上に集積回路を作成する技術も既にあり、球を2分割し中をくり抜いて2つの半球形状とし、それぞれに表面形状を付け、あとで光学接着することも可能である。また、現在のシリコンホトニクス技術は非常に高度で本発明の構造作製に十分対応している。

【0116】
〔実施の形態3:反射材を用いた第2の構造例〕
本実施の形態3にかかる構造物は、実施の形態2と同様に、実施の形態1に係る反射材で囲みこんだ中空の多面体箱(図1(a)参照)、あるいは、球(楕円体を含む曲面体)の構造(図1(b)参照)を持つものである。尚、本実施の形態においても、構造物の形状に対して、反射材の第1面の構造をどのようにするかは任意である。

【0117】
但し、本実施の形態3では、上記構造物を構成する反射材において、その屈折率を全反射を起こさせる臨界値よりも小さくし、一部の透過光を生じさせるようにしたことを特徴とする。このように、形状は実施の形態2と同じであるが、屈折率を僅かに低くして、一部の透過光を許容することにより、例えば、装飾電球等への適用が考えられる。

【0118】
三角畝構造を例にとって説明すれば、三角畝のある第1面からの光は、正面に近い方向からの光は第2面側に抜けうるが、抜け出た光は第2面の表面に沿って寝た形になる(図9の(a)参照)。また、反射材の双方性より、第2面の表面に沿うくらい寝た方向(入射角が90°に近い方向)から入射させた光は、第1面の正面方向に近い方角に通り抜けることができる。さらに、第2面の正面方向からの光や、第1面の寝た方向からの光は全反射にて入射面側に戻ってくる(図9の(b),(c)参照)。

【0119】
言い換えれば、第2面から入射する光において、その入射角がある特定の入射角より小さければ(正面方向に近い方向からの入射)、その入射光を全反射させることができるが、その入射角がある特定の入射角より大きければ(表面に沿った方向からの入射)、その入射光の一部は第1面を透過する。ここで、透過光が発生するか否かの境界となる上記特定の入射角は、第1面の形状と反射材の屈折率によって決まる。

【0120】
このように、反射材において、その屈折率を全反射を起こさせる臨界値よりも小さくする場合、図9の(a)に示すような透過光が発生する。しかしながら、この場合、プリズム効果で光が屈折するため、思いもかけぬ方向に光が通り抜ける(眼で観測すれば、真正面を見れば端が見えたり端から見ると真正面が見えたりなど思いもかけぬ方向が見えることになる)。

【0121】
本実施の形態3に係る構造物を装飾電球に応用し、図10(a)に示すように、内側を第1面として中心部に発光体を置くと、外部からは中心部が暗く、装飾電球の周辺のみから光がくるように見える。また、図10(b)に示すように、内側を第2面とすれば、中心部に発光体を置いた場合には、発光は全反射するばかりで外には出てこず、屈折率が臨界値以下でも上記発光体には高Q共振器になるが、発光体を中心からずらして置けば、透過光が発生し、特定の方向からのみ外部からも光って見える。

【0122】
〔実施の形態4:反射材を用いた第3の構造例〕
本実施の形態4にかかる構造物は、実施の形態2および3とは異なり、反射材で中空の球や多面体を構成せず、その一部からなる構造を持つものである。

【0123】
例えば、図11に示すように、本発明の反射材にて球体の一部(例えば半球)を形成し、人工宝石として装飾物に適用することなどが考えられる。このような構成でも、構造物の周辺部を除く殆どの領域では、入射光に対する全反射を達成することができる。

【0124】
ここで、本発明の光学構造物は、光透過性の光学媒質からなり、当該光学媒質の内部に、周囲の光学媒質と異なる屈折率の光学媒質が充填された中空部を有する。ここで、上記中空部とは、当該中空部を囲んでいる光学媒質とは異なる屈折率の光学媒質が充填された空間部を示す。従って、屈折率が異なる光学媒質の一つとして空気であってもよく、この空気の場合には、中空部は空洞となる。

【0125】
また、本発明の光学構造物は、中空内部から光を外部に漏らさず、また、中空外部からの光を入射させえない、所謂全反射のみを実現する構造物である。以下に示す実施の形態5では、本発明の光学構造物を導光路に適用した場合の光導波路の例について説明し、実施の形態6では、本発明の光学構造物を共振器に適用した場合の光共振器の例について説明する。

【0126】
最初に、実施の形態5、6を説明する前に、本発明の中空構造物における全反射の原理について説明する。

【0127】
〔全反射原理説明〕
まず、本発明における光学構造物を構成する主軸面と45斜面について説明する。

【0128】
直角座標系の主軸x、y、z軸に平行な単位ベクトルをそれぞれ、数(3)とすると、法線ベクトルが数(4)の6種の平面が主軸面(第2面)で図36に示す立方体(正六面体)の6面に相当する。面の法線がこれら3軸の1軸に直交し、他の2軸とは45°で交わる平面(45斜面:第1面)は、その法線ベクトルが、数(5)の(12種)の平面であり、図37~図39に示される。図37~図39に示す直方体において、断面が正方形の筒をx、y、z軸のいずれかに平行にしつつもその軸を回転軸に45°回転したときの筒の側面にあたる。

【0129】
【数3】
JP0005472833B2_000004t.gif

【0130】
【数4】
JP0005472833B2_000005t.gif

【0131】
【数5】
JP0005472833B2_000006t.gif

【0132】
次に、全反射の原理について説明する。

【0133】
直角座標系の主軸x、y、z軸に平行な単位ベクトルをそれぞれ上記数(3)とすると、内面或いは外面はその法線ベクトルが上記数(4)の全部で6種の平面のいずれかである平面(つまり前述の主軸面を複合させた主軸複合面)を組み合わせたものとなる。つまり、主軸複合面は、後述の45斜複合面とは重ならず、直角座標系主軸x、y、zの何れかに平行な法線を持つ平面からなる主軸面を複数組み合わせて形成される。

【0134】
この主軸面と反対側の面、外面或いは内面はその法線がこれら3軸の1軸に直交し、他の2軸とは45°で交わる斜面(前述の45斜面を複合させた45斜複合面)からなっているので、法線ベクトルが上記数(5)の12種の全部あるいは一部である平面の組み合わせからなっている。つまり、45斜複合面は、法線が上記主軸の一つと直交し、他の2軸と45°の角度を持つ平面からなる45斜面を複数組み合わせて形成される。

【0135】
上記45斜面の法線ベクトルは2つの主軸の2等分線方向にあるので、光線がこれらに当たり反射するとこれら主軸成分をお互いに交換する(符号を変えることもあるが)。例えば、光線ベクトルが数(6)を満たす光線が45斜面の1つで法線が数(7)で示される面に入射すると、ベクトルのu成分はそのままで、図40からも分かるようにベクトルv成分とベクトルw成分は符号を変えて入れ替わり、反射光の線ベクトルは数(8)となる。

【0136】
【数6】
JP0005472833B2_000007t.gif

【0137】
【数7】
JP0005472833B2_000008t.gif

【0138】
【数8】
JP0005472833B2_000009t.gif

【0139】
一方、法線が主軸を示す上記数(4)の面にあたると、これらの成分の符号が変わるだけである。図41には、主軸の面で反射する例を示している。

【0140】
例えば、ベクトルw面を通って屈折率1の媒質から屈折率nの光学媒質に入射後の光線の光線ベクトルは一般に、数(9)と書けるが、上の結果を踏まえると、この光線が屈折率nの光学媒質内でどの外面、内面で反射され続けても、その後の光線ベクトルの上記数(3)成分は数(10)に示す値のどれかを重複せずにとることになる。

【0141】
【数9】
JP0005472833B2_000010t.gif

【0142】
【数10】
JP0005472833B2_000011t.gif

【0143】
つまり、符号は随意に選べるとして、屈折率nの光学媒質内の光線ベクトルは数(11)で示す48種しかないことになる。ここで、上式で正負号に順位はなくどちらもとれるので1つの式は8とおりの組み合わせがあり、6つの式があるので48種となる。

【0144】
【数11】
JP0005472833B2_000012t.gif

【0145】
また、数(12)で示される光線と例えば45斜面の1つの面の法線を示す上記数(7)との内積(スカラー積)はこの光線のこの45斜面への入射角の余弦(コサイン)であり数(13)の関係式を満たす。

【0146】
【数12】
JP0005472833B2_000013t.gif

【0147】
【数13】
JP0005472833B2_000014t.gif

【0148】
これから分かるように、これらの光線と45斜面の法線との交差角(入射角)の余弦は、2成分の和差を√2で割ったものになり、前述の48種の光線と前述の12種の全部の45斜面の法線との交差角の余弦は、数(14)で示すように、たったの12種となってしまう。

【0149】
【数14】
JP0005472833B2_000015t.gif

【0150】
反射するには入射角が90°以内で余弦が正で無ければならないので、結局、余弦は以下の数(15)で示す6つの値(6種の角度に対応)しかない。

【0151】
【数15】
JP0005472833B2_000016t.gif

【0152】
これらをいまΓとおくと、入射角の正弦(サイン)は√(1-Γ)となり、全反射条件は√(1-Γ)>1/n、変形すれば、Γ<√(1-1/n)となる。ここで、nを中空構造物を構成する光媒質の屈折率とする。つまり、Γ<√(1-1/n)を満たしているなら全反射することになる。

【0153】
ここで、数(16)の関係式を満たしている場合、1/n<√(1-1/n)であれば、全反射となる。これは、n>√2を満たしている。

【0154】
【数16】
JP0005472833B2_000017t.gif

【0155】
また、0≦θ≦sin-1(1/n)であるので、sinθ、cosθともに正となり、以下の数(17)の関係式を満たしている場合、0≦θ≦sin-1(1/n)よりn>√2であれば、θ<π/4で、この範囲ではsin(θ+π/4)はθの増加関数となり、その最大値はθ=sin-1(1/n)の場合に与えられ、よって、上記数(17)は、以下の数(18)となる。

【0156】
【数17】
JP0005472833B2_000018t.gif

【0157】
【数18】
JP0005472833B2_000019t.gif

【0158】
ここで、上記の数(18)から全反射の条件は、数(19)の関係式となる。両辺に√2×nをかけて整理すると、√(n-1)>1+√2で、これよりn>√(4+2√2)となる。

【0159】
【数19】
JP0005472833B2_000020t.gif

【0160】
また、上記の数(15)における最後の項、数(20)項においても数(17)と同様に、≦sin(θ+π/4)となり、n>√(4+2√2)≒2.6131・・・となる。これは、n>√2も満足しており、45斜面の全反射条件は、n>√(4+2√2)≒2.6131・・・と結論できる。

【0161】
【数20】
JP0005472833B2_000021t.gif

【0162】
また、上記の数(4)の面(主軸面)への入射角の余弦は、定義からも分かるように、以下の数(21)に示すように、3通りである。このうち前の2つは、数(22)の関係が得られ、これは数(16)と同じで、前述したように、n>√2で、√(1-1/n)より小さくなり、全反射となる。一方、最後の1つは、cosθ=√(1-sinθ)>√(1-1/n)で全反射しない。これは最初の入射時と同じ角度であるから当然である。

【0163】
【数21】
JP0005472833B2_000022t.gif

【0164】
【数22】
JP0005472833B2_000023t.gif

【0165】
従って、上記の数(4)の面では、全反射もすれば透過することもある。

【0166】
これら48通りの光線は、つまり上記数(4)で示した面(主軸面)を通して屈折率nの光学媒質に入射した光線は、どのような内部反射を繰り返そうと45斜面では必ず全反射し、45斜面からは出られない。また、光の相反性から45斜面から入射した光はどのような経路を経ようとも主軸面では必ず全反射し、主軸面から出られないことになる。この結果、一方の面が主軸面で反対側の面が上述の45斜面となっている構造の中空の筒は放射モードのない伝送路となり、中空が閉じた場合には中から外には光線が出られない、あるいは外から中には入れない密閉された光学空間となる。

【0167】
以上述べてきた45斜面と主軸面からなる光学媒質の多重反射も含めた光線解析と全反射条件の導出は発明者によって初めてなされたものであり、従ってこれを原理としている本発明は全く新規なものといえる。

【0168】
〔本発明の基本構成〕
図12は本発明の光学構造物の典型的な基本構成例の概略斜視図である。外形は直方体で屈折率nがn≧√(4+2√2)を満たす光学媒質からなっており、その内部が図に示すような一見複雑な形でくり抜かれている。外面1は、図から分かるように面の法線ベクトルが主軸x、y、z軸に平行な主軸面の6面からなっている。内面2については中央の筒部は面の平面の法線がy軸に直交し、x、z軸に45°の4面であり、両端は、面の法線がy、z軸に45°でx軸に直交する面(上下4面)、あるいは、y、x軸に45°でz軸に直交する面(左右4面)からなり、合わせて内面2は45斜面12面の全てからなっている。つまり、図12では、上記外面1は、主軸面を複数組み合わせて形成される第2面であり、上記内面2は、45斜面を複数組合わせて形成される第1面となる。なお、外面1と内面2との関係は逆であってもよい、すなわち、外面1は、45斜面を複数組合わせて形成される第1面であり、内面2は、主軸面を複数組み合わせて形成される第2面であってもよい。

【0169】
従って、外部から主軸面を通って光学媒質に入射した光は内面2の45斜面では直接当たっても、また内部で反射を繰り返した後当たっても全て全反射され、中空部には入れない。つまり、外部から中空部に入る光線の経路が全くないということなので、中空部から45斜面を通って外面1の主軸面から外に抜ける光線の経路もないということになる。もしあれば、この経路を逆にたどれば外部から中空部に入る経路が存在することになる。これが光の相反性である。つまり、この構成によると、外部からは中空部には光が内面2の全反射のために全く入れず、中空部からは外面1の全反射のために外部には全く出られない。従って、完全に光が閉じこめられたで光の箱、光共振器、光貯蔵庫として機能する。

【0170】
図12に示す光学構造物において、空洞部の筒部のみ残すように、直方体の両端を切断すれば、これは下記の実施の形態5の図13に示す導光路となることも分かる。

【0171】
〔実施の形態5:光導波路例〕
本実施の形態では、本発明の光学構造物を導光路に適用した光導波路の例について説明する。

【0172】
図13は、本発明の光学構造物を適用して最も単純化した導光路の概略斜視図である。

【0173】
上記導光路は、図13に示すように、外面1が主軸面の±ベクトルu面、±ベクトルw面で屈折率nがn≧√(4+2√2)を満たす光学媒質からなる直方体の内部を、これとは45度傾いた直方体でくり抜いた形状をしている。

【0174】
従って、内面2の法線ベクトルは(ベクトルu±ベクトルw)/√2と(-ベクトルu±ベクトルw)/√2との4面(いずれも原理のところで述べた45斜面)で、原理のところで述べたように、中空部から光学媒質に入射した光はどのような経路を経ても外面では全反射し、かつ、図13に示す構造の場合、入り口、出口以外を除いて±ベクトルv面は関係せず、また、光線が当たり反射等をする側面は、±ベクトルu面、±ベクトルw面と(±ベクトルu±ベクトルw)/√2面で何れもベクトルvが含まれていないので、光線ベクトルのベクトルv成分は反射で変化することがない。つまり、光線ベクトルのベクトルv成分は反射しても変化せず光が進む。勿論、放射モードは存在しない。

【0175】
従って、レンズや異なる導光路からの光でも中空部に集中して導入すれば、結合損なく、放射モードへの変換はなく出口まで伝送されることになる。

【0176】
図13に示す中空導光路は、上述のように、外面1が主軸面、内面2が45斜面で構成されているが、図14に示すように、内面2が主軸面、外面1が45斜面で構成された導光路であっても同様の効果を奏する。

【0177】
また、図15に示すように、図14に示す導光路2本をx方向にずらせて中空部が重なるように形成してもよい。つまり、図13、14、15においては、何れもy方向には変化のない導光路(導光路の内面、外面とも面の法線がy軸と直交(法線ベクトルのベクトルv成分が0)で面はy軸と平行)では、y方向への速度は反射をしても変わらないという長所をもつ。

【0178】
そこで、y方向には変化のない導光路の他の導光路の例として、図16の(a)~図16の(d)に、y軸に直交する断面を示す。

【0179】
図16の(a)は、図15に示す導光路の内外面を入れ替えた中空導光路のy軸に直交する断面、図16の(b)は、図16の(a)に示す導光路の中空部の断面形状をM型となるように、内面2の形状を変更した導光路のy軸に直交する断面、図16の(c)は、図15に示す導光路の外面1の三角畝1aの数を増加させた導光路のy軸に直交する断面、図16の(d)は、図16の(c)に示す導光路の内外面を入れ替えた導光路のy軸に直交する断面を示している。

【0180】
次に、外面1、内面2の法線ベクトルのベクトルv方向成分(導光路のy軸方向成分)が0でない45斜面を有する導光路を図17、図18に示す。

【0181】
図17に示す導光路では、外面に45斜面8面が利用されており、図18に示す導光路では、45斜面12種の全てが利用されている。これらでは、中空部(内面2)が主軸面で構成されているが、勿論内面2と外面1を入れ替えてもよい。この導光路では、光線ベクトルのベクトルv成分も45斜面での反射で値を変えるため、y軸方向に簡単には進めず、前後にも反射を繰り返し光をため込みながらゆっくり進むことになるので遅波線路、あるいは蓄積伝送路となる。

【0182】
ここまでの導光路の中空部としては、少なくとも2面が開放され、一方の面から入射された光が他方の面から出射される直線型の伝送構造をしている場合について説明したが、これに限定されるものではなく、中空部の構造としては、1面のみが開放され同じ開放面で光入射及び出射が行われる反射構造、入射した光が途中で屈曲して進行して出射される屈曲構造、入射した光が途中で分岐される分岐構造であってもよい。

【0183】
中空部が反射構造の導光路としては、例えば図19に示す導光路がある。

【0184】
図19に示す導光路は、中空部の端を45°の角度でくさび状に狭めた形状となっている。このくさび状の中空部3の部分において、光は反射あるいは透過する。仮に、くさび状の中空部3の部分において光が透過したとしても、この部分における面も45斜面であるので、透過した光も上述の全反射の原理で示したように外面1では全反射し、外には出ない。従って、図19に示す導光路では、結果として100%反射となり、外部から中空部に入射された光は、内部で反射して再び戻る。すなわち、無放射モード伝送路を逆行することになる。

【0185】
また、中空部の屈曲構造の導光路としては、例えば図20の(a)(b)に示す中空導光路がある。

【0186】
上記中空導光路は、図20の(a)(b)に示すように、中空部の曲がり突き当たり部分(曲がり部4)を45斜面として形成している。この中空部の45斜面として形成した部分において、光は一部反射して中空部内を90°向きを変えて進む一方、一部は光学媒質に屈折して入り外面で全反射し元の方向に戻る。しかしながら、内面2と外面1との関係から、中空部の内面2から透過した光は、外面1にて全反射する無放射なので、導光路の外部に光が漏れることはない。

【0187】
上記の屈曲構造の導光路を応用して、入射した光が途中で分岐される分岐構造としてもよい。例えば図21の(a)(b)に示す導光路は中空部が分岐構造をしている。

【0188】
上記中空導光路は、図21の(a)(b)に示すように、中空部内に一つの三叉路5、2つの曲がり部4を有している。

【0189】
上記三叉路5は、45斜面で構成されたくさび状の出っ張り1つで形成されており、上記曲がり部4は図20で示された構成と同じである。従って、上述した全反射の原理に従えば、入力から無放射モードで伝送してきた光が、三叉路5、曲がり部4で複雑な反射を繰り返すものの、外面1では必ず全反射するので、外部には漏れることがなく大部分は2つの伝送路に等分されて伝送され、一部が反射されて戻ることになる。しかしながら、中空部の内面2から透過した光は外面1において全反射するので、導光路の光の入出部以外の箇所から光が外部に絶対に漏れない構造となっている。

【0190】
ところで、上記全反射の原理から、光学構造物内に、複数個の中空部を設けた場合、面の取り方により、中空部間を結合させたり、あるいは結合を完全に遮断したりすることができる。

【0191】
例えば、図22に、2つの中空部の結合が遮断されている2重導光路の一例を示す。

【0192】
上記2重導光路では、図22に示すように、主軸面である内面2と45斜面である外面1を対抗させて構成した光学構造物の中空部に間隙を挟み、内面2により構成された中空部内に、別の導光路を浮かせた状態で形成することになるが、導光路の入出力部で支持するように構成されている。なお、導光路の入出力部で支持することが困難な場合は、中空部等に低屈折率材料(屈折率Δ)を充填し、そこに内側の構造物を埋め込んで保持する。この場合、高屈折率材料の屈折率を√(4+2√2)・Δより大きくすればよい。(ここで、Δ≧1である。)
このように、本発明の中空構造物を適用すれば、主軸面と45斜面を対抗させて構成した中空光学構造物の中空部に間隙を挟み、同上の中空構造物を挿入して2重、あるいは3重、多重の中空構造物を構成することが可能となる。

【0193】
また、上記全反射の原理から、図13に示す導光路を2つ結合させて、図23に示す結合導光路としてもよい。

【0194】
この結合導光路では、2本の導光路の光は相互に出入りし、また、光の伝送を行うものの、外部には絶対放射しないようになっている。

【0195】
図23に示す中空導光路では、2本の空洞(中空部)が平行に走った構成となっている。この中空導光路では、前述のように、互いに光は行き交いするので2本の導光路ともとれるが、合わせて一本の導光路ともとれる。

【0196】
また、このような空洞を数多く並べ、空洞部の占める割合を増やせば1つの口径の大きい空洞とみなすことができるので、一つの口径の大きい空洞の場合と同様に大電力光伝送に適する。このように、複数の空洞を並べて配置した場合、その断面形状は、図24の(a)(b)に示すように、ヘチマ構造となっているので、同じ容量となる1つの口径の大きい空洞と比べて、軽く強度の高い導光路を構築することが可能となる。

【0197】
図24の(b)は、図24の(a)の導光路を45°回転させた中空導光路であり、図24の(a)の導光路と同様の作用効果を有する。

【0198】
〔実施の形態6:共振器例〕
本実施の形態では、本発明の光学構造物を共振器に適用した光共振器の例について説明する。

【0199】
本発明の光学構造物を光共振器に適用した基本構成例は本発明の基本構成として既に図12で示した。同様に、本発明の光学構造物を共振器に適用した典型的な構造の共振器の例を図25、図26に示している。図25は概略斜視図であり、図26の(a)は、図25に示す共振器を側面から見た場合の概略断面図であり、図26の(b)は、図25に示す共振器を上面から見た場合の概略断面図である。

【0200】
図25に示す共振器は、図19の反射導光路を応用したもので、図13に示した基本的構成の導光路の中空部の一端が垂直方向にくさび形で狭まって閉じ(斜面はz軸、y軸と±45°)、他端は水平方向にくさび形で狭まって閉じて(斜面はx軸とy軸に45°)空洞共振器となる中空部(空洞)2つが、y軸に沿って、図26の(a)(b)に示すように、ちょうど鏡で向かい合ったように並んで配置された構成となっている。

【0201】
上記空洞(中空部)の側面(内面2)は、x軸とz軸に45°傾いた4面からなっているので、空洞の面は12種の45斜面全てを持つ。また、空洞を包む屈折率が√(4+2√2)よりも大きい光学媒質の外側は直方体でその外面1は主軸面で6面ある。

【0202】
上記構成の共振器は、上述した全反射の原理で説明した全ての面を含んだ構成となっている。

【0203】
したがって、全反射の原理のところで述べたように、上記構成の共振器では空洞部から出射されたいかなる光線も外面1では全反射し、外には出ないようになっているが、空洞にあたると全反射もすれば部分透過、部分反射もする。このように、上記構成の共振器では、2つの空洞部は独立でなく光が行き交いする結合空洞となっている。このような構造では、例えば一方の空洞に光源を入れ、他方の空洞にサンプル、あるいは測定計を置くなどの種々の応用的な利用が可能となる。

【0204】
また、図27は本発明の光学構造物を共振器に適用した単純かつ基本的な構造の共振器を示す概略斜視図であり、図19に示す反射構造の導光路において、中空部の開放端側も反射構造とした構造と同じ構造となっている。すなわち、図27に示す共振器は、図19に示す中空導光路の反射構造を中空部の両側に備えたもので、主軸面で構成された光学媒質からなる直方体の内部に45斜面のみでくり抜かれた空洞が構成され、空洞からは全く光が外に漏れない光共振器、逆に外部から絶対空洞には光を入れることができない光共振器となっている。

【0205】
上記構成の共振器は、1材料のみで多層構造や周期構造を用いない簡単な構造であるが、光学材料が屈折率条件を満たす波長域で動作する広帯域共振器であり、全反射のみ使用しているので理論上∞のQ値となる理想的な光共振器となる。

【0206】
従って、上記構成の共振器は、波長域が限られるフォトニック結晶構造を用いた共振器や、中に空間がとれない誘電体微小球に比べて勝っている。特に優れているのは、中空部に大きい空間がとれこの内部には種々の発光源などを置けることである。

【0207】
また、図27に示す共振器の外面1と内面2との構成を入れ替えた図28に示す共振器も同じ機能を有する。すなわち、図28に示す共振器は、図27に示す共振器とは逆に空洞の壁面を主軸面とし、光学媒質の外面を45斜面とし、さらに、全体を90°回転した構造となっており、完全密閉共振器を構成している。

【0208】
図29に示す共振器は、図27に示す共振器の空胴の胴体部分を最短にしたもの(但し全体を図26の(a)(b)に示す状態から90°回転している)である。これも、内外面を入れ替えれば、直方体の空洞を備えた密閉型の共振器を構成できる。

【0209】
さらに、図29に示す密閉型の共振器を応用した例として、図30に示す共振器がある。図30に示す共振器は、図29に示した共振器をy軸方向に沿って複数個(ここでは3個)並べて構成されている。この場合、中空部を形成する空洞においては光が透過するので、空洞間で光の行き交いが可能なように、各空洞が結合される。ここで、空洞の一つは発振部、1つは増幅部、制御部等々とすれば、複雑な光システム構成を実現できる。また、並べて、端の共振器のみ外部に突き出す構造すれば、直接はつながらないが伝送する導光路として機能する。これにも上述の種々の機能を取り込める。

【0210】
以上、本発明の光学構造物を用いた光共振器は、光が外部に漏れないことから非常に高いQ値の光共振器となる。このため、例えば非常に発振しきい値の低いレーザなどに利用することが可能となる。但し、内部から光を取り出す必要があるので、これまで説明した図28や図29に示すような光共振器に代えて、図31に示すように、光の入出力口が設けられた光共振器を用いる。

【0211】
図31に示す光共振器は、45斜面を外面1とし、内部に主軸面で空洞をつくり構成した光共振器の外面1の一部だけ主軸面にした構造となっている。この主軸面が光の入出力部として機能する。この入出力部から光を光学媒質中に入射すると、その光は45斜面では必ず全反射し、光は入出力部以外では外部には漏れ出さないが、内面2の主軸面では透過もする。結局、この入出力部がこの光共振器の入出力部となる。光の出口があるので、共振器のQ値はある程度下がるものの、他の部分に放射損失がないので、共振器としては理想的なものとなる。高いQ値が必要な場合には入出力部を小さくすればよく、レーザなどの場合には最適結合になるようサイズを調節すればよい。

【0212】
図31では、光学媒質の外面1の一部に、外面1が45斜面からなる第1面であれば上記主軸面からなる領域が形成されている例を示したが、これに限定されるものではなく、外面1が主軸面からなる第2面であれば、上記45斜面からなる領域が形成される。

【0213】
ところで、上述の各実施の形態において説明した導光路、共振器は、何れも光は外面1では全反射し外に出ないようになっているものの、厳密には全反射してもエバネッセント波が光学媒質から外部に滲みでている。従って、このような状態の中空構造物を他の物資と接触させれば接触部分から光が漏れたり光が吸収されたりする可能性がある。また、保護上からも外部被覆が必要である。その他、電子回路などで使用する場合は基板上にこの構造を作製する必要があり、やはり、他の物質と接することは避けられない。そこで動作を妨げず、光も漏れさせない緩衝層を外面のさらに外側に付ける必要が生じる。

【0214】
ここで、上記構造物は、Δを1あるいは1より大きいとして光学媒質の屈折率をΔ・√(4+2√2)より大きくし、この光学媒質の表面に屈折率Δの保護、緩衝層を付せば、全反射の条件は全て満足し、かつ、保護層、緩衝層となるほか、支持層の機能も持たせることが可能になる。

【0215】
例えば、図32に示す光学構造物は、図14に示す導光路、あるいは、図28に示す共振器の外部(外周面)に屈折率Δ(≧1)の緩衝層を付け、その外部に保護被覆を施したものの断面図であり、保護被覆があるので壁や床に這わしても導光路や共振器としての機能は損なわれない。なお、緩衝層は、エバネッセント波を十分に減衰する程度の厚さ(数波長程度かそれ以上)が必要である。中空部側の緩衝層は設けても設けなくてもよい。

【0216】
図33は、基板の上に緩衝層を乗せその上に本発明の主体である中空構造物を構成したもので、隣接デバイスとの遮断の関係もあり周りも同様に緩衝材質で囲んでいる。特に図33の右側の例では緩衝層は中空構造物の安定支持体としての働きもしている。この構成でも中空部側の緩衝層は設けても設けなくてもよい。

【0217】
図34は、中空部(内部)を低屈折率媒質で一部あるいは殆どを充填し、その内部に発光、あるいは光増幅、光制御機能を持つ素子(発光素子、発光制御素子など)を埋め込んだ構造の光学構造物を示す。

【0218】
ここで、低屈折率媒質の屈折率をΔ(≧1)とすれば、主光学媒質の屈折率nは、当然、n>Δ・√(4+2√2)を満足する材料を用いる。埋め込んだ素子の形状や屈折率には関係なくここから発せられる光は全てこの中空構造物内に閉じこめられる。また、素子は低屈折媒質で安定に保持される。

【0219】
図34に示す構造の中空構造物によれば、当該中空構造物が共振器の場合は低しきい値レーザ等の発光デバイスとなり、当該中空構造物が結合共振器や中空導光路の場合は光増幅機能や光制御機能を付すことが可能となる。

【0220】
ところで、非常に曲率半径の大きい緩やかな曲面は局地的に見ればほぼ平面である。従って、これを主軸面の一つとしてその上、あるいは下に45斜面からなるの構造を余裕を見て√(4+2√2)より若干大きめの屈折率をもつ光学媒質で作れば、近似的には無放射条件が得られる。このような構造としては、例えば、図35に示す大口径導光路が考えられる。

【0221】
<本発明の光学構造物の製造>
上記の実施の形態5,6で説明した光学構造物を構成する光学媒質にはシリコンやゲルマニウムが使える。これらの材料では光集積回路や半導体レーザなどで培われたプロセス技術、微小光学技術が豊富であり、これらを利用すれば製造することができる。

【0222】
なお、光学構造物のサイズがmm単位から数十cm単位といったようなサイズのものになると、機械加工、研磨と光学的接着を利用して製造することもできる。

【0223】
<応用分野>
本発明の中空構造物で使用する光媒質として、屈折率が2.613・・・よりも大きい光媒質が必要である。

【0224】
そこで、可視波長で利用できるものとしてはZnTe(屈折率2.92)、SiC(同2.63)等がある。これらの物質は、現状では純度が低く光の吸収が多いので、小さいデバイスはともかく、大きいデバイスになると高性能の中空構造物を得ることは難しい。なお、SiCは、多方面で有用な材料であり高性能化への研究開発が進められているので、将来的に非常に有望な光媒質となる。また、住田光学などで屈折率2以上のガラスも研究開発されつつあり、将来的にはガラスも光媒質としての可能性がないわけではない。

【0225】
一方、近赤外、赤外波長域では、Si(屈折率3.4)、Ge(同4.0)など多くの半導体が透明でかつ屈折率も大きい物質であるので、好適な光媒質となる。

【0226】
特に、Si(シリコン)は、最も中心的存在の半導体材料であり、純度、加工、プロセス技術が進んでおり、光回路にも既に多く使われ、本発明に適した材料と言える。

【0227】
また、本発明の光学構造物において、無放射伝送路、高Q共振器、分岐、遅波伝送路等々をシリコンで構成し、集積化することも容易である。この場合、本発明は、この分野に使用されつつあるフォトニック結晶デバイスに将来的に置き換わる可能性がある。

【0228】
また、上記フォトニック結晶デバイスと本発明の光学構造物とを融合させることで、様々の効果、様々な利用分野に好適なデバイスを実現することができる。

【0229】
また、SiC技術が進めば大口径光パイプなどで、太陽光など自然光の伝送に有効に利用できる。指向性を要求しないのでどのような光線も伝送できるので、エネルギー伝送、医学(光メス)、農業、照明等多くの分野で本発明の光学構造物を適用することが可能となる。

【0230】
さらに、本発明の光学構造物のように、波長制限を受けずに放射モードが存在しない中空伝送路が構成できれば、結合損失や放射損失がなくなり、ハイパワー光エネルギー伝送などの用途には非常に有用となる。また、中空部に光の散乱物質が浮遊していて光が散乱を受けても、この散乱光さえ外部に抜けることがないので損失にはならないという利点もある。さらに、激しい蛇行でも放射せずに伝送可能なモードがあれば、遅波伝送路としても有用である。

【0231】
また、最近フォトニック結晶を用いた高Q共振器が研究されてきており、これが本発明に対向するものである。但し、背景技術の欄でも述べた通り、波長程度の周期構造を用いているので共振器として動作する波長域は限られており、また、場合によっては方位も限られている。

【0232】
これに対して、本発明の光学物質によれば、上記のフォトニック結晶を用いた高Q共振器において実現できなかった、光学媒質の屈折率条件がありさえすればどの波長域でもどの方位でも光が完全反射され、非常に高いQ値をもつ光共振器が簡単な構成で達成できるという効果を奏する。しかも1材料1層でも可能であり、この点においても、フォトニック結晶以上に有用となる可能性を秘めている。

【0233】
なお、前記の各実施の形態は、組み合わせることで、共振器だけでなく導光路、光デバイスへの適用が可能となり、よりよい特許となる。

【0234】
ところで、前記実施の形態1~4に開示した構造物は、光を透過する材質からなり、第1面が斜面を隙間無く配列して形成された面であり、第1面の反対側にある第2面が平面あるいは平面に近い緩やかな曲面である反射材によって、内部が中空となるように囲みこんだ多面体、あるいは球体となる構造であり、上記反射材は、上記第1面もしくは第2面から入射した光が、対向する面に対して直接、あるいは、内部で反射を繰り返した後も、反射材内部から入射する時には常に全反射の臨界角よりも大きい入射角で入射するような第1面の形状および屈折率を有する構成である。

【0235】
それゆえ、反射材の一方の面から入射した光は、他方の面を通り抜けることができず、入射面側に戻るため、該反射材によって内部が中空となるように囲みこんだ本構造は、光が漏れない非常に高い光学的Q値をもち、光学実験球、光学実験多面体、もしくは、中空で軽いにも関わらず大きく輝く装飾光具、人工宝石として機能させることができる。

【0236】
また、前記実施の形態1~4に開示した他の構造物は、光を透過する材質からなり、第1面が斜面を隙間無く配列して形成された面であり、第1面の反対側にある第2面が平面あるいは平面に近い緩やかな曲面である反射材によって、内部が中空となるように囲みこんだ多面体、あるいは球体となる構造物であり、上記反射材は、上記第2面から入射する光において、その入射角がある特定の入射角より小さければ、その入射光を全反射させ、その入射角がある特定の入射角より大きければ、その入射光の一部が第1面を透過するような、第1面の形状および屈折率を有する構造である。

【0237】
それゆえ、反射材の一方の面から入射した光は、入射角によって、全反射を受けるか、あるいは一部の光の透過を許容する。さらに、透過光については、第2面である平面と第1面における斜面とを通過するため、プリズム効果によって屈折する。このため、真正面を見れば端が見えたり端から見ると真正面が見えたりなどの思いがけない光学特性を得ることができ、内部に光源を入れて装飾照明等として機能させることができる。

【0238】
このような前記実施の形態1~4に開示された構造物と、前記実施の形態5,6に開示された光学構造物の構成とを組み合わせることにより、それぞれの実施の形態における構造物による効果に比べて、さらなる効果を奏する。

【0239】
前記実施の形態1~4では、反射板、光閉じこめ箱に過ぎなかったが、前記実施の形態5~6では、閉じこめ箱(共振器)、導波、光取りだし、結合共振器、増幅、制御と多岐にわたる光エレクトロニクス応用、展開が可能である。

【0240】
このように、本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0241】
本発明は、内部を中空とし、かつ内部からはどのような角度からも全反射で光が外にでないような構造、あるいは、外部からのどのような入射角に対しても全反射を実現し内部に光が入らない構造において、軽量化かつ大型化が可能であり、光学実験球、光学実験多面体に利用することができる。あるいは、従来のミラーボール、照明装置、および宝石等では実現できなかった光学特性を持つ構造物を提供でき、装飾照明や人工宝石に利用することができ、しかも、光学的な分野において、特に光伝送、共振等の分野において好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0242】
1 外面
2 内面
10 反射材
11 第1面
12 第2面
図面
【図1(a)】
0
【図1(b)】
1
【図2】
2
【図3】
3
【図4】
4
【図5】
5
【図6(a)】
6
【図6(b)】
7
【図7】
8
【図8】
9
【図9】
10
【図10(a)】
11
【図10(b)】
12
【図11】
13
【図12】
14
【図13】
15
【図14】
16
【図15】
17
【図16】
18
【図17】
19
【図18】
20
【図19】
21
【図20】
22
【図21】
23
【図22】
24
【図23】
25
【図24】
26
【図25】
27
【図26】
28
【図27】
29
【図28】
30
【図29】
31
【図30】
32
【図31】
33
【図32】
34
【図33】
35
【図34】
36
【図35】
37
【図36】
38
【図37】
39
【図38】
40
【図39】
41
【図40】
42
【図41】
43
【図42】
44