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明細書 :TN型液晶素子及びその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5648925号 (P5648925)
登録日 平成26年11月21日(2014.11.21)
発行日 平成27年1月7日(2015.1.7)
発明の名称または考案の名称 TN型液晶素子及びその製造方法
国際特許分類 G02F   1/139       (2006.01)
G02F   1/1337      (2006.01)
FI G02F 1/139
G02F 1/1337
請求項の数または発明の数 6
全頁数 17
出願番号 特願2011-547542 (P2011-547542)
出願日 平成22年12月20日(2010.12.20)
国際出願番号 PCT/JP2010/072916
国際公開番号 WO2011/078126
国際公開日 平成23年6月30日(2011.6.30)
優先権出願番号 2009294992
優先日 平成21年12月25日(2009.12.25)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成25年12月5日(2013.12.5)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】803000115
【氏名又は名称】学校法人東京理科大学
発明者または考案者 【氏名】高頭 孝毅
【氏名】穐本 光弘
【氏名】篠原 和也
個別代理人の代理人 【識別番号】100106002、【弁理士】、【氏名又は名称】正林 真之
審査官 【審査官】福村 拓
参考文献・文献 特開平06-160814(JP,A)
特開2005-010202(JP,A)
特開2000-347175(JP,A)
特開2007-293278(JP,A)
調査した分野 G02F 1/139
G02F 1/1337
特許請求の範囲 【請求項1】
略平行に配置され、少なくとも一方が透明な1組の基板と、
前記1組の基板の対向面に設けられ、液晶材料中の液晶分子が同一方向を向くように表面に配向処理が施された1組の配向膜と、
前記1組の配向膜の間に配置された、液晶材料及びカイラル剤を含む液晶層と、を備え、
前記1組の配向膜の配向処理方向のなす角αは70~110度であり、かつ、その配向処理方向は、前記液晶層が前記なす角αだけねじれていた場合にユニフォームツイスト構造を形成する方向であり、
無電界状態で安定なねじれ角α+180(度)のSTN型液晶が、ねじれ角α(度)のTN型液晶として高分子安定化されていることを特徴とするTN型液晶素子。
【請求項2】
同一の液晶表示素子においてねじれ角α+180(度)のSTN型液晶の自由エネルギーはねじれ角α(度)のTN型液晶の自由エネルギーよりも低く、
前記液晶層はねじれ角α(度)で高分子安定化されていることを特徴とする請求項1記載のTN型液晶素子。
【請求項3】
前記液晶層の厚さをd、前記液晶材料のカイラルピッチをpとしたとき、0.5≦p/d≦1.6であることを特徴とする請求項1記載のTN型液晶素子。
【請求項4】
前記配向膜のプレチルト角が5度以下であることを特徴とする請求項1記載のTN型液晶素子。
【請求項5】
少なくとも一方が透明な1組の基板のそれぞれ一方の面に配向膜を形成する工程と、
液晶材料中の液晶分子が同一方向を向くように、1組の前記配向膜の表面に配向処理を施す工程と、
1組の前記配向膜が対向するように、前記1組の基板を配置する工程と、
1組の前記配向膜の間に、カイラル剤及び光硬化性モノマーを含む液晶材料を充填して液晶層を形成する工程と、
前記1組の基板の間に電圧を印加する工程と、
電圧の印加を停止し又は減少させた後、前記光硬化性モノマーを光硬化する工程と、を有し、
1組の前記配向膜の配向処理方向のなす角αは70~110度であり、かつ、その配向処理方向は、前記液晶層が前記なす角αだけねじれていた場合にユニフォームツイスト構造を形成する方向であり、
前記電圧を印加する工程では、電圧の印加により前記液晶層を垂直配向状態にした後、電圧の印加を停止し又は減少させることにより、前記液晶層を一時的にねじれ角α+180(度)のSTN型液晶からねじれ角α(度)のTN型液晶へと転移させ、
前記光硬化する工程では、前記光硬化性モノマーを光硬化することにより、前記液晶層をねじれ角α(度)で高分子安定化することを特徴とするTN型液晶素子の製造方法。
【請求項6】
前記液晶層の厚さをd、前記液晶材料のカイラルピッチをpとしたとき、0.5≦p/d≦1.6であることを特徴とする請求項5記載のTN型液晶素子の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、TN型液晶素子及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶素子は、近年、携帯電話用途の小型のものから液晶テレビジョン用途の大型のものまで、その市場を拡大してきている。
この液晶素子は、上下基板の配向処理方向が90度ねじれた構造をもつ、いわゆるTN(Twisted Nematic)型液晶素子を中心に発展してきたが、大型テレビジョン等の視野角が特に要求される分野では、MVA(Multi domain Vertical Aligned)、IPS(In Plane Switching)等の方式が主流になりつつある。しかしながら、TN方式には他方式に比べてセル厚の変化に対して透過率の変化(ギャップムラ)が少ない等の利点があり、パーソナルコンピュータ用途など、特に視野角の要求が厳しくない用途に用いられている。
さらに近年、TN型液晶の視野角を拡大することのできるワイドビューフィルムと呼ばれる光学フィルムと組み合わせることにより、TN型液晶素子も26インチ程度までのテレビジョン用途に用いられるようになっており、26インチまでの大きさの液晶テレビジョンでは既に80%がTN型液晶になっている。
【0003】
一般に、テレビジョン用途の液晶素子には特に高速応答性が求められる。TN型液晶の応答速度は下記式(1)、(2)で表される。
【0004】
【数1】
JP0005648925B2_000002t.gif

【0005】
ここで、τonは立ち上がり(電圧無印加状態から電圧印加状態への応答)の応答時間を示し、τoffは立ち下がり(電圧印加状態から電圧無印加状態への応答)の応答時間を示す。
また、γは液晶材料の回転粘性、εは真空の誘電率、Δεは誘電率異方性、dは液晶層の厚さ、Vは印加電圧、Vthは閾値電圧、Kは液晶材料の弾性率をそれぞれ示す。TN型液晶では、K=K11-0.5K22+0.25K33であり、K11,K22,K33はスプレイ変形、ツイスト変形、ベンド変形に関する弾性率をそれぞれ示す。
【0006】
上記式(1)から分かるように、立ち上がりの応答速度は印加電圧に依存するため、印加電圧の掛け方で高速化することができる。一方、立ち下がりの応答速度は印加電圧に依存しないため、信号電圧による高速化はできない。そのため、液晶素子には立ち上がりの応答速度よりも立ち下がりの応答速度を高速化することがより求められている。
【0007】
上記式(2)から、立ち下がりの応答速度を高速化するには、γ(回転粘性)を減少させる、K(弾性率)を大きくする等の材料面からの改良、及びd(液晶層の厚さ)を薄くする等のデバイス面からの改良が考えられる。このうち液晶層の厚さに関しては、TN型液晶の場合、Δn・d≧0.50(μm)(Δnは液晶材料の屈折率異方性)を満たさなければならないことが知られている。この条件を満たさない場合、液晶素子の透過率が減少する。現行の液晶材料ではΔn=0.25が限界と言われているため、d=2(μm)が限界と考えられる。液晶材料に関しては、回転粘性、弾性率の改善に限界がある。このため、TN型液晶の立ち下がりの応答速度は、上記式(2)の関係からは大きな改善が難しい。
【0008】
上記式(1)、(2)には表現されない方法として、カイラル剤と呼ばれる光学活性物質を液晶材料中に添加すること等により、液晶材料のカイラルピッチpと液晶層の厚さdとの比(p/d)を小さくし、立ち下がりの応答速度を向上させる方法が知られている。この方法に関してはこれまで下記の報告がある。
【0009】
特許文献1,2には、液晶層の厚さを0.5~3μmとし、p/dの値を15未満にすることで、液晶素子を高速化する技術が開示されている。
特許文献3には、0.25<d/p<1(すなわち1<p/d<4)の範囲でTN型液晶を高速化する技術が開示されている。この特許文献3には、d/p=0.04(p/d=25)からd/p=1(p/d=1)までの立ち下がりの応答速度のシミュレーションの値が記載されている。また、実際の実験データとしては、d/p=0.51(p/d=2.0)のデータが記載されている。
特許文献4には、液晶材料のカイラルピッチを短くした場合、立ち下がりの応答速度が高速化することが記載されている。また、配向膜のプレチルト角を大きくすることにより、短ピッチの液晶材料を用いても90度のねじれ状態を安定化できることが記載されている。具体的には、プレチルト角を13.6度とすることにより、本来であれば液晶素子内で210度のねじれ状態となる液晶材料であっても、90度のねじれ状態を保つことができるとされている。なお、210度のねじれ状態とはp/d=1.7に相当する。
【0010】
非特許文献1には、12μmの厚さの液晶層において、液晶材料のカイラルピッチを70μm(p/d=5)から25μm(p/d=2.1)まで短くすることにより、立ち下がりの応答速度が400msから200msまで改善されたことが記載されている。
【先行技術文献】
【0011】

【特許文献1】特開2007-193362号公報
【特許文献2】特開2008-176343号公報
【特許文献3】特開2003-161962号公報
【特許文献4】特開2000-199901号公報
【0012】

【非特許文献1】S. Aftergut and H. S. Cole Jr., J. Appl. Phys. Lett., 30(8), p.363,(1977)
【非特許文献2】神崎・市村・船田・石井・松浦, シャープ技報, 39(35),(1988)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上記のように、p/dの値を小さくすることにより立ち下がりの応答速度を高速化することが可能である。しかし、液晶層のねじれ角がα(度)の場合、短ピッチ化するとねじれ角がα+180(度)に転移することが知られている(非特許文献2参照)。このため、ねじれ角が90度であるTN型液晶の場合、短ピッチ化するとねじれ角が270度であるSTN(Super Twisted Nematic)型液晶が形成されてしまう。なお、非特許文献2ではp/d=2が下限とされている。
【0014】
上記特許文献3には1<p/d<4の範囲の液晶素子のシミュレーション結果が記載されているが、これはあくまでシミュレーション計算の結果であり、実際に測定されたものではない。実際に測定された値として最小のものはp/d=2.0である。
ここで、上記特許文献4に記載されているように、配向膜のプレチルト角を大きくすることにより、短ピッチの液晶材料を用いても90度のねじれ状態を安定化することが可能である。しかし、たとえプレチルト角を大きくしても実現可能なp/dの値には限界があり、特許文献4においてもp/d=1.7が示されているだけである。また、このような状態のTN型液晶は不安定であることが予想され、一度形成されても、温度変化、応力の印加、振動等によりSTN型液晶に転移することが考えられる。
【0015】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、TN型液晶の状態で安定であり、かつ、立ち下がりの応答速度が高速化されたTN型液晶素子及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた。その結果、p/dの値を小さくし、ねじれ角がα(度)であるTN型液晶よりもねじれ角がα+180(度)であるSTN型液晶の方が安定になった場合においても、STN型液晶がスプレイ構造をとるような条件では、電圧を印加するとスプレイ構造が解消され、一時的にねじれ角がα(度)の状態で保たれることを見出した。さらに、液晶材料中に光硬化性モノマーを添加し、一時的にねじれ角がα(度)となった状態で光硬化性モノマーを光硬化させることで、液晶層をねじれ角α(度)で高分子安定化できることを見出した。本発明は、このような知見に基づいて完成されたものであり、より具体的には以下のとおりである。
【0017】
(1) 略平行に配置され、少なくとも一方が透明な1組の基板と、
上記1組の基板の対向面に設けられ、液晶材料中の液晶分子が同一方向を向くように表面に配向処理が施された1組の配向膜と、
上記1組の配向膜の間に配置された、液晶材料及びカイラル剤を含む液晶層と、を備え、
上記1組の配向膜の配向処理方向のなす角αは70~110度であり、かつ、その配向処理方向は、上記液晶層が上記なす角αだけねじれていた場合にユニフォームツイスト構造を形成する方向であり、
無電界状態で安定なねじれ角α+180(度)のSTN型液晶が、ねじれ角α(度)のTN型液晶として高分子安定化されていることを特徴とするTN型液晶表示素子。
【0018】
(2) 同一の液晶表示素子においてねじれ角α+180(度)のSTN型液晶の自由エネルギーはねじれ角α(度)のTN型液晶の自由エネルギーよりも低く、
上記液晶層はねじれ角α(度)で高分子安定化されていることを特徴とする上記(1)記載のTN型液晶表示素子。
【0019】
(3) 上記液晶層の厚さをd、上記液晶材料のカイラルピッチをpとしたとき、0.5≦p/d≦1.6であることを特徴とする上記(1)又は(2)記載のTN型液晶素子。
【0020】
(4) 上記配向膜のプレチルト角が5度以下であることを特徴とする上記(1)から(3)のいずれか1項記載のTN型液晶素子。
【0021】
(5) 少なくとも一方が透明な1組の基板のそれぞれ一方の面に配向膜を形成する工程と、
液晶材料中の液晶分子が同一方向を向くように、1組の上記配向膜の表面に配向処理を施す工程と、
1組の上記配向膜が対向するように、上記1組の基板を配置する工程と、
1組の上記配向膜の間に、カイラル剤及び光硬化性モノマーを含む液晶材料を充填して液晶層を形成する工程と、
上記1組の基板の間に電圧を印加する工程と、
電圧の印加を停止し又は減少させた後、上記光硬化性モノマーを光硬化する工程と、を有し、
1組の上記配向膜の配向処理方向のなす角αは70~110度であり、かつ、その配向処理方向は、上記液晶層が上記なす角αだけねじれていた場合にユニフォームツイスト構造を形成する方向であり、
上記電圧を印加する工程では、電圧の印加により上記液晶層を垂直配向状態にした後、電圧の印加を停止し又は減少させることにより、上記液晶層を一時的にねじれ角α+180(度)のSTN型液晶からねじれ角α(度)のTN型液晶へと転移させ、
上記光硬化する工程では、上記光硬化性モノマーを光硬化することにより、上記液晶層をねじれ角α(度)で高分子安定化することを特徴とするTN型液晶素子の製造方法。
【0022】
(6) 上記液晶層の厚さをd、上記液晶材料のカイラルピッチをpとしたとき、0.5≦p/d≦1.6であることを特徴とする上記(5)記載のTN型液晶素子の製造方法。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、TN型液晶の状態で安定であり、かつ、立ち下がりの応答速度が高速化されたTN型液晶素子及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係るTN型液晶素子の製造方法の一例を示す図である。
【図2】配向処理の方向及び液晶分子の立ち上がり方向を概念的に示す図である。
【図3】液晶分子が左回りにねじれて配列している様子を概念的に示す図である。
【図4】液晶分子が右回りにねじれて配列している様子を概念的に示す図である。
【図5】液晶材料のカイラルピッチを変化させたときの立ち下がりの応答時間τoffのシミュレーション結果を示す図である。
【図6】実施例1における上下の配向膜の配向処理方向を示す図である。
【図7】実施例1で作製した液晶素子に電圧を印加したときに観察される液晶層の変化を示す図である。
【図8】実施例1で作製した5つのTN型液晶素子(素子1~5)について、25℃においてV10の電圧印加状態から電圧を切ったときの立ち下がりの応答時間τoffを測定した結果を示す箱ひげ図である。
【図9】実施例1で作製した5つのTN型液晶素子(素子1~5)について、20msの時点でV50の電圧印加状態とし、520msの時点で電圧無印加状態としたときの透過率の時間変化を示す図である。
【図10】図9の510msの時点から570msの時点までを拡大して示す図である。
【図11】実施例1で作製した5つのTN型液晶素子(素子1~5)について、-20℃においてV10の電圧印加状態から電圧を切ったときの立ち下がりの応答時間τoffを測定した結果を示す箱ひげ図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の具体的な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
以下ではまず、液晶層を構成する液晶材料について説明し、次いで、本発明に係るTN型液晶素子の製造方法について説明し、最後に本発明に係るTN型液晶素子について説明する。

【0026】
[液晶材料]
本発明において液晶層を構成する液晶材料は、カイラル剤及び光硬化性モノマーを含むものである。
液晶材料としてはネマティック液晶が用いられる。その種類は特に限定されないが、前述した立ち下がりの応答速度に関する式(2)を考慮すると、回転粘性がより低く、弾性率がより大きな液晶材料が好ましい。

【0027】
カイラル剤としては、特に限定されるものではなく、従来公知のものを使用できる。一例としては、S—811、R811、CB—15、MLC6247、MLC6248、R1011、S1011(いずれもメルク社製)等が挙げられる。このカイラル剤の含有量を調整することにより、液晶材料のカイラルピッチを調整することができる。

【0028】
光硬化性モノマーとしては、特に限定されるものではない。一例としては、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、メチルカルビトール(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシ(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノ(メタ)アクリレート、モルホリノエチル(メタ)アクリレート、ペルフルオロアルキル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、脂肪族ジ(メタ)アクリレート、エピクロルヒドリン変性1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エピクロルヒドリン変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ブチレンオキサイド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、3,3-ジメチロールペンタンジ(メタ)アクリレート、3,3-ジメチロールヘプタンジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピルアクリルアミド等が挙げられる。
また、光硬化性モノマーとしては液晶性を示すものが好ましい。液晶性を示す光硬化性モノマーについては、例えば、特開平8-3111号公報、特開2000-178233号公報、特開2000-119222号公報、特開2000-327632号公報、特開2002-220421号公報、特開2003-55661号公報、特開2003-12762号公報等に記載されている。
光硬化性モノマーの含有量は、光硬化性モノマーの種類や配向膜のプレチルト角によっても異なるが、液晶材料に対して0.1~15質量%が好ましく、0.5~10質量%がより好ましい。含有量を0.1質量%以上とすることで、後述する高分子安定化の効果を十分に得ることができる。また、含有量を15質量%以下とすることで、液晶素子の駆動電圧が高くなったり、コントラストが低下したりすることを抑えることができる。

【0029】
[TN型液晶素子の製造方法]
本発明に係るTN型液晶素子の製造方法は、少なくとも一方が透明な1組の基板のそれぞれ一方の面に配向膜を形成する工程と、液晶材料中の液晶分子が同一方向を向くように、1組の上記配向膜の表面に配向処理を施す工程と、1組の上記配向膜が対向するように、上記1組の基板を配置する工程と、1組の上記配向膜の間に、カイラル剤及び光硬化性モノマーを含む液晶材料を充填して液晶層を形成する工程と、上記1組の基板の間に電圧を印加する工程と、電圧の印加を停止し又は減少させた後、上記光硬化性モノマーを光硬化する工程と、を有し、1組の上記配向膜の配向処理方向のなす角αは70~110度であり、かつ、その配向処理方向は、上記液晶層が上記なす角αだけねじれていた場合にユニフォームツイスト構造を形成する方向であり、上記電圧を印加する工程では、電圧の印加により上記液晶層を垂直配向状態にした後、電圧の印加を停止し又は減少させることにより、上記液晶層を一時的にねじれ角α+180(度)のSTN型液晶からねじれ角α(度)のTN型液晶へと変化させ、上記光硬化する工程では、上記光硬化性モノマーを光硬化することにより、上記液晶層をねじれ角α(度)で高分子安定化することを特徴とするものである。

【0030】
以下、本発明に係るTN型液晶素子の製造方法の一例について、図1を適宜参照しながら詳細に説明する。図1は、TN型液晶素子の製造プロセスを各ステップに分けて示したものである。

【0031】
まず、少なくとも一方が透明な1組の基板の表面を洗浄し、乾燥する(ステップS10,S11)。次に、上記1組の基板のそれぞれ一方の面にポリイミドを塗布し、乾燥・焼成することにより配向膜(ポリイミド膜)を形成する(ステップS12,S13)。そして、液晶材料中の液晶分子が同一方向を向くように、各配向膜の表面にラビング処理(配向処理)を施す(ステップS14)。

【0032】
配向処理の方向と液晶分子の立ち上がり方向とを図2に概念的に示す。配向膜100の表面に配向処理が施されていると、配向膜表面の液晶分子101は、図中矢印で示す配向処理方向と配向膜100に垂直な方向とを含む面内で、その配向処理方向に対してある角度θで傾いて立ち上がる。この角θがプレチルト角と呼ばれる。

【0033】
本発明における配向膜のプレチルト角は5度以下が好ましい。プレチルト角を5度以下とすることで、立ち下がりの応答速度をより高速化することができる。

【0034】
次に、ラビング処理後の基板を洗浄・乾燥した後(ステップS15)、スペーサーを散布する(ステップS16)。そして、シール剤を基板の周縁に塗布し、乾燥させる(ステップS17)。このとき、シールには、液晶材料注入のための注入口及び排気口を形成しておく。

【0035】
次に、上記1組の基板を組み立てた後(ステップS18)、シール剤を加熱硬化させ、液晶素子の外周部を封着する(ステップS19)。組み立ての際には、1組の上記配向膜が対向するように、上記1組の基板を配置する。ただし、両配向膜の配向処理方向のなす角αは70~110度である。なす角αが70度未満あるいは110度超の場合、黒表示の際に光漏れが起こり、コントラストが低くなる。また、黒表示の際に見る方向によっては光抜けが大きくなる。なお、なす角αを80~100度とすることで、コントラスト・視野角依存性をさらに向上させることができる。

【0036】
また、両配向膜の配向処理方向は、液晶層が上記なす角αだけねじれていた場合にユニフォームツイスト構造を形成する方向である。
ここで、配向処理方向のなす角αが90度である1組の配向膜間に液晶材料を充填した状況を考える。図3において液晶分子112は、上の配向膜110及び下の配向膜111からプレチルト角θだけ傾いて立ち上がっている。そして、上下の配向膜間では、このプレチルト角θを保ったまま、上の配向膜110から下の配向膜111へと右回り(時計回り)に90度ねじれて配列している。
一方、図4において液晶分子122は、上の配向膜120及び下の配向膜121からプレチルト角θだけ傾いて立ち上がっている。そして、上下の配向膜間では、液晶分子の極角(液晶分子と配向膜とのなす角)がプレチルト角から連続的に変化しながら、上の配向膜でθ、中央部で0度(基板と平行)となり、下の配向膜でθとなっている。基板と垂直方向にはこのようなねじれを伴いつつ、上の配向膜110から下の配向膜111へと左回り(反時計回り)に90度ねじれて配列している。この図4のような構造をスプレイ構造と呼ぶ。
図4のようなスプレイ構造は、液晶分子が上下方向にもねじれているため自由エネルギーが高い。したがって、液晶材料がカイラル剤を含有せず固有のねじれを持たない場合には、液晶材料は自発的に右回りに90度ねじれる。なお、液晶材料に右回りのねじれを誘起するカイラル剤を添加した場合にも、図3のように右回りに90度ねじれる。
つまり、図3のような配向処理方向であれば、上記液晶材料が上記なす角αだけねじれていた場合にスプレイ構造を形成せず、ユニフォームツイスト構造を形成する。これに対して、上下の配向膜の一方の配向処理方向が逆になった状況で上記と同じ液晶材料を用いた場合には、スプレイ構造を形成する。なお、図3の配向処理方向でも、左回りのねじれを誘起するカイラル剤を液晶材料に添加した場合にはスプレイ構造を形成する。
なお、図3のような配向処理方向では、右回りのねじれを誘起するカイラル剤の添加等により液晶材料のねじれ角が270度になるとスプレイ構造を形成する。

【0037】
次に、1組の上記配向膜の間に、上述したカイラル剤及び光硬化性モノマーを含む液晶材料を注入して液晶層を形成し(ステップS20)、注入口及び排気口を封口する(ステップS21)。上述したように、カイラル剤の含有量を調整することにより液晶材料のカイラルピッチを調整することができる。本発明においては、立ち下がりの応答速度を高速化するため、液晶材料のカイラルピッチpと液晶層の厚さdとの比(p/d)を0.5≦p/d≦1.6とすることが好ましく、1.0≦p/d≦1.6とすることがより好ましい。

【0038】
ここで、本発明においては、ねじれ角α+180(度)のSTN型液晶が無電界状態で安定になっている。すなわち、同一の液晶表示素子においてねじれ角α+180(度)のSTN型液晶の自由エネルギーがねじれ角α(度)のTN型液晶の自由エネルギーよりも低い状態とされている。
「同一の液晶表示素子」とは、液晶材料及びそのカイラルピッチ、液晶層の厚さ、あるいは配向膜の材料、ラビング方向、ラビング強度等の、液晶素子の性能に影響を及ぼす全ての要素が同一であるものを指す。
また、「ねじれ角α+180(度)のSTN型液晶の自由エネルギーがねじれ角α(度)のTN型液晶の自由エネルギーよりも低い」とは、ねじれ角α(度)のTN型液晶になる場合もねじれ角α+180(度)のSTN型液晶になる場合もあるが、ねじれ角α+180(度)のSTN型液晶の自由エネルギーの方が低いことを指す。ただし、厳密な意味での自由エネルギーを求めることは困難であるため、「STN型液晶の自由エネルギーの方が低い」とは、具体的には室温で放置することで、経時(数秒~数時間)によりTN型液晶からSTN型液晶へと転移するものを指すこととする。

【0039】
上述のようにp/dの値を0.5≦p/d≦1.6の範囲とした場合、経時によりTN型液晶からSTN型液晶へと転移する(必要であれば非特許文献2参照)。これは、STN型液晶の自由エネルギーがTN型液晶の自由エネルギーよりも低いためである。つまり、0.5≦p/d≦1.6の範囲は、「同一の液晶表示素子においてねじれ角α+180(度)のSTN型液晶の自由エネルギーがねじれ角α(度)のTN型液晶の自由エネルギーよりも低い」状態である。

【0040】
次に、基板間に電圧を印加する(ステップS22)。具体的には、電圧を印加して液晶層を垂直配向状態にした後、電圧の印加を停止し又は減少させることにより、液晶層を一時的にねじれ角α+180(度)のSTN型液晶からねじれ角α(度)のTN型液晶へと転移させる。なお、電圧を減少させる場合の減少程度は、液晶層を垂直配向状態からねじれ角α(度)のねじれ状態へと変化させるのに十分な程度に低ければよい。
上述したように、本発明においては、同一の液晶表示素子においてねじれ角α+180(度)のSTN型液晶の自由エネルギーがねじれ角α(度)のTN型液晶の自由エネルギーよりも低い状態とされているため、経時によりTN型液晶からSTN型液晶へと転移する。しかし、飽和電圧よりも十分に高い電圧を印加することで、一時的にSTN型液晶からTN型液晶へと転移させることができる。これは、STN型液晶の状態では液晶層はスプレイ構造を形成しているが、飽和電圧よりも十分に高い電圧を印加することでスプレイ構造が解消され、均一なねじれ構造になるためと考えられる。
印加する電圧は液晶材料の種類等によっても異なるが、飽和電圧の1.5~5倍が好ましい。また、印加時間は数十秒間~数分間が好ましい。

【0041】
次に、液晶材料中の光硬化性モノマーに紫外線を照射して光硬化することにより、液晶層をねじれ角α(度)で高分子安定化する(ステップS23)。このように高分子安定化することで、上述のようにp/dの値を0.5≦p/d≦1.6の範囲とした場合であっても、TN型液晶からSTN型液晶へと転移することを抑えることができる。
なお、液晶層がねじれ角α(度)のねじれ状態に保たれる時間は、液晶材料の種類や配向膜のプレチルト角によっても異なる。プレチルト角が大きくなるとねじれ角α(度)のTN型液晶がより安定となるため、ねじれ角α(度)のねじれ状態に保たれる時間が長くなる。

【0042】
[TN型液晶素子]
本発明に係るTN型液晶素子は、略平行に配置され、少なくとも一方が透明な1組の基板と、上記1組の基板の対向面に設けられ、液晶材料中の液晶分子が同一方向を向くように表面に配向処理が施された1組の配向膜と、上記1組の配向膜の間に配置された、液晶材料及びカイラル剤を含む液晶層と、を備え、上記1組の配向膜の配向処理方向のなす角αは70~110度であり、かつ、その配向処理方向は、上記液晶層が上記なす角αだけねじれていた場合にユニフォームツイスト構造を形成する方向であり、無電界状態で安定なねじれ角α+180(度)のSTN型液晶が、ねじれ角α(度)のTN型液晶として高分子安定化されていることを特徴とするものである。

【0043】
このTN型液晶素子は、上述したTN型液晶素子の製造方法によって製造されるものであるため、詳細な説明を省略する。

【0044】
このようなTN型液晶素子はp/dの値を0.5≦p/d≦1.6の範囲とすることが可能であるため、通常のTN型液晶素子よりも立ち下がりの応答速度を高速化することができる。
ここで、液晶分子配列シミュレーターLCDマスター(シンテック社製)を用いたシミュレーション結果を図5に示す。図5は、液晶材料ZL1-4792(メルク社製)のパラメータを用い、配向膜のプレチルト角を20度、配向膜間の距離(すなわち液晶層の厚さ)を5μmとして、液晶材料のカイラルピッチを変化させたときの立ち下がりの応答時間τoffの変化を示したものである。このτoffは、電圧無印加時の透過率に対して50%の透過率となる電圧を印加した状態から電圧を0Vとし、電圧無印加時の透過率を100、透過率50%を0としたとき、透過率が10から90へと変化するのに要する時間である。図5から分かるように、液晶材料のカイラルピッチが小さくなるほど立ち下がりの応答時間τoffが短くなっている。このことから、p/dの値を従来困難であった0.5≦p/d≦1.6の範囲とすることにより、液晶素子の立ち下がりの応答速度が従来よりも高速化され、動画特性が向上することが理解される。
【実施例】
【0045】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0046】
[実施例1、比較例1]
2cm×2cm×1.1cmの大きさのガラス基板上に、1cm×1cmの透明電極及び電極を外部に取り出すための電極部分を形成した。このように準備したガラス基板に、チッソ石油化学社製の液晶配向膜用ポリイミドであるPIA-x768-01xとPIA-x359-01xとを45:55の割合で混合したものを約0.1μmの厚さで塗布し、配向膜を形成した。この配向膜に対して、木綿製のベルベット布を用いてラビング処理を施した。ラビング処理の方向(配向処理方向)は図6に示すとおりである。なお、配向膜のプレチルト角は21度であった。
次いで、一方の配向膜上に直径5μmのシリカ製スペーサー(ハイプシカUF 5ミクロン、宇部日東化成社製)を散布した後、エポキシ系シール剤を周縁に塗布し、150℃で1時間加熱して硬化させた。シールには液晶材料注入のための注入口及び排気口の2つの穴を作った。
【実施例】
【0047】
次いで、エポキシ系シール剤でシールされた空間に液晶材料を注入した。液晶材料は、カイラル剤の添加によってカイラルピッチを左巻き、7.5μmに調整したZLI-4792US123(メルク社製)475mgに対して、光硬化性モノマーUCL-003(DIC社製)27mgを加え、100℃のホットプレート上で3分間加熱して調製した。この液晶材料は左巻きの7.5μmのピッチ長を持つ。すなわちp/d=1.5である。この液晶材料を注入口に付け、毛細管現象を用いて液晶素子全面に液晶材料を注入した。
液晶材料の注入後、徐冷して液晶の配向状態を偏光顕微鏡で観察したところ、液晶の配向は全面均一であった。2枚の偏光板を吸収軸が直交する、いわゆるクロスニコルに組み、偏光板の透過軸とラビング方向とが平行になるように液晶素子を2枚の偏光板の間に配置して観察したところ、全面が青色に着色していた。液晶層が基板間で90度ねじれている場合、このような観察において着色は発生せず白色の状態となるはずである。このため、この状態は液晶層が基板間で270度ねじれた状態と考えることができる。
【実施例】
【0048】
次いで、液晶素子の電極に20Vの矩形波を印加して液晶層を垂直配向状態にし、5分間その状態を保持した。この間の変化を偏光顕微鏡で観察したところ、均一な状態(図7(a))から徐々に異なる液晶配列が点状に現れた(図7(b))。そして、その液晶配列が徐々に広がり(図7(c),(d))、最終的には新しく生じた液晶配列が全面均一に形成された(図7(e))。この変化は、ねじれ角270度のSTN型液晶状態に、ねじれ角90度のTN型液晶状態が出現したものと考えられる。
このことを確認するため、2枚の偏光板をクロスニコルに組み、偏光板の透過軸とラビング方向とが平行になるように液晶素子を2枚の偏光板の間に配置して観察したところ、電圧印加前には全面が青色に着色していたのに対して、電圧印加により生じた液晶配列では着色は観察されなかった。このことから、電圧印加前の液晶配列がねじれ角270度のSTN型液晶に対応し、電圧印加により生じた液晶配列がねじれ角90度のTN型液晶に対応することが確認された。
【実施例】
【0049】
電圧の印加を停止してすぐに、Longlife(登録商標)フィルタ(スペクトロライン社製)を介して365nmの波長の紫外線を5分間照射し、光硬化性モノマーを光硬化した。紫外線照射後、そのままの状態で30日間放置したが、ねじれ角90度のTN型液晶状態は保持された。なお、具体的なデータは示さないが、電圧の印加を停止した後、紫外線を照射しなくても、数分間~数時間であればねじれ角90度のTN型液晶状態が保持された。
上記の方法により、実施例1の5つのTN型液晶素子を作製した。
【実施例】
【0050】
また、液晶材料にカイラル剤及び光硬化性モノマーを添加しないほかは、実施例1と同様にして比較例1の5つのTN型液晶素子を作製した。
【実施例】
【0051】
作製した実施例1、比較例1の各5つのTN型液晶素子について、液晶素子電気光学特性測定装置LCD5200(大塚電子社製)を用いて、25℃における立ち下がりの応答時間を求めた。具体的には、電圧無印加状態を100%とし、クロスニコルの偏光板の透過率を0%としたとき、50%、10%の透過率が得られる印加電圧V50、V10について、V50、V10の電圧印加状態から電圧を切ったときの応答時間(τoff)を測定した。このτoffは、電圧無印加時の透過率を100%、各電圧印加時の透過率を0%としたとき、透過率が10%から90%へと変化するのに要する時間である。各5つのTN型液晶素子の測定値の平均値及び2σの値を下記の表1に示す。また、印加電圧V10の場合の測定値を図8の箱ひげ図に示す。
【実施例】
【0052】
【表1】
JP0005648925B2_000003t.gif
【実施例】
【0053】
表1及び図8から分かるように、カイラル剤を添加してp/d=1.5とするともに、ねじれ角90度のTN型液晶状態で高分子安定化した実施例1のTN型液晶素子は、カイラル剤及び光硬化性モノマーを添加していない比較例1のTN型液晶素子よりも、立ち下がりの応答速度が顕著に高速化していた。
【実施例】
【0054】
実施例1で作製した5つのTN型液晶素子(素子1~5)について、20msの時点でV50の電圧印加状態とし、520msの時点で電圧無印加状態としたときの、25℃における透過率の時間変化を図9に示す。また、図9の立ち下がり部分(510msの時点から570msの時点まで)を拡大して図10に示す。
図9,10から分かるように、立ち上がり、立ち下がりの応答特性には再現性があった。また、応答速度が高速であることからTN型液晶状態が固定されていることが分かる。
【実施例】
【0055】
また、作製した実施例1、比較例1の各5つのTN型液晶素子について、液晶素子電気光学特性測定装置LCD5200(大塚電子社製)を用いて、-20℃における立ち下がりの応答時間を求めた。具体的には、V10の電圧印加状態から電圧を切ったときの応答時間(τoff)を測定した。各5つのTN型液晶素子の測定値の平均値及び2σの値を下記の表2に示す。また、印加電圧V10の場合の測定値を図11の箱ひげ図に示す。
【実施例】
【0056】
【表2】
JP0005648925B2_000004t.gif
【実施例】
【0057】
表2及び図11から分かるように、カイラル剤を添加してp/d=1.5とするともに、ねじれ角90度のTN型液晶状態で高分子安定化した実施例1のTN型液晶素子は、-20℃の低温においても、カイラル剤及び光硬化性モノマーを添加していない比較例1のTN型液晶素子よりも、立ち下がりの応答速度が顕著に高速化していた。
【実施例】
【0058】
[実施例2]
配向膜のプレチルト角を3度とし、光硬化性モノマーUCL-003(DIC社製)の添加量を52.8mgとしたほかは、実施例1と同様にして実施例2の5つのTN型液晶素子を作製した。
この5つのTN型液晶素子について、液晶素子電気光学特性測定装置LCD5200(大塚電子社製)を用いて、25℃における立ち下がりの応答時間を求めた。具体的には、V50、V10の電圧印加状態から電圧を切ったときの応答時間(τoff)を測定した。5つのTN型液晶素子の測定値の平均値及び2σの値を下記の表3に示す。なお、表3には参考のため、実施例1の5つのTN型液晶素子の測定値についても併せて示す。
【実施例】
【0059】
【表3】
JP0005648925B2_000005t.gif
【実施例】
【0060】
表3から分かるように、プレチルト角が3度である実施例2のTN型液晶素子は、プレチルト角が21度である実施例1のTN型液晶素子よりも、立ち下がりの応答速度が顕著に高速化していた。
【実施例】
【0061】
[実施例3]
カイラル剤の添加によってカイラルピッチを左巻き、5.0μmに調整したZLI-4792US184(メルク社製)475mgに対して、光硬化性モノマーUCL-003(DIC社製)57mgを加えた液晶材料を用いたほかは、実施例1と同様にして実施例3の4つのTN型液晶素子を作製した(p/d=1.0)。
この4つのTN型液晶素子について、液晶素子電気光学特性測定装置LCD5200(大塚電子社製)を用いて、25℃における立ち下がりの応答時間を求めた。具体的には、V50の電圧印加状態から電圧を切ったときの応答時間(τoff)を測定した。4つのTN型液晶素子の測定値の平均値及び2σの値を下記の表4に示す。なお、表4には参考のため、実施例1の5つのTN型液晶素子の測定値についても併せて示す。
【実施例】
【0062】
【表4】
JP0005648925B2_000006t.gif
【実施例】
【0063】
表4から分かるように、p/d=1.0である実施例3のTN型液晶素子は、p/d=1.5である実施例1のTN型液晶素子よりも、立ち下がりの応答速度が顕著に高速化していた。
【実施例】
【0064】
[参考例1,2]
液晶材料に光硬化性モノマーを添加しないほかは、実施例1と同様にして参考例1の5つのTN型液晶素子を作製した(p/d=1.5)。また、液晶材料に光硬化性モノマーを添加せず、かつ、カイラル剤の量を変更して液晶材料のピッチ長を10μmとしたほかは、実施例1と同様にして参考例2の5つのTN型液晶素子を作製した(p/d=2.0)。そして、ねじれ角90度のTN型液晶からねじれ角270度のSTN型液晶へと転移するまでの間に、実施例1と同様にして25℃における立ち下がりの応答時間を求めた。各5つのTN型液晶素子の測定値の平均値及び2σの値を下記の表5に示す。
【実施例】
【0065】
【表5】
JP0005648925B2_000007t.gif
【実施例】
【0066】
表5の参考例1から分かるように、光硬化性モノマーを添加しない場合であっても、TN型液晶からSTN型液晶へと転移するまでの間であれば比較例1よりも立ち下がりの応答速度は高速化した。しかし、実施例1よりも応答速度は遅くなっているため、高分子安定化によっても立ち下がりの応答速度は高速化することが分かる。また、参考例1,2から、液晶材料を短ピッチ化することにより立ち下がりの応答速度が高速化することが確認された。
【符号の説明】
【0067】
100 配向膜、 101 液晶分子、 110 上の配向膜、 111 下の配向膜、 112 液晶分子、 120 上の配向膜、 121 下の配向膜、 122 液晶分子
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図8】
6
【図9】
7
【図10】
8
【図11】
9
【図7】
10