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明細書 :DNA脱メチル化誘導法及びその用途

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6161261号 (P6161261)
公開番号 特開2013-126412 (P2013-126412A)
登録日 平成29年6月23日(2017.6.23)
発行日 平成29年7月12日(2017.7.12)
公開日 平成25年6月27日(2013.6.27)
発明の名称または考案の名称 DNA脱メチル化誘導法及びその用途
国際特許分類 C12N  15/09        (2006.01)
C12N   5/10        (2006.01)
FI C12N 15/00 ZNAA
C12N 5/10
請求項の数または発明の数 9
全頁数 38
出願番号 特願2012-252371 (P2012-252371)
出願日 平成24年11月16日(2012.11.16)
優先権出願番号 2011251004
優先日 平成23年11月16日(2011.11.16)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成27年10月23日(2015.10.23)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503092180
【氏名又は名称】学校法人関西学院
発明者または考案者 【氏名】関 由行
個別代理人の代理人 【識別番号】110000796、【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
審査官 【審査官】小倉 梢
参考文献・文献 国際公開第2010/037001(WO,A1)
Biochem. Biophys. Res. Commun.,2008年,Vol. 367,p. 899-905
生化学,2009年 9月25日,2T5a-18
Nature,2011年 5月19日,Vol. 473,p. 398-402
調査した分野 C12N 15/00 - 15/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
UniProt/GeneSeq
PubMed
WPIDS/WPIX(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
培養細胞内においてDNA脱メチル化を誘導する方法であって、
(1)配列番号1~3のいずれかで表されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、又は該アミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列からなり、かつTET1活性を有するポリペプチド、又はそれを含む融合ポリペプチド;及び
配列番号10~12のいずれかで表わされるアミノ酸配列からなるポリペプチド
をコードするポリヌクレオチドをそれぞれ細胞内に導入することにより過剰発現させることによって、前記二種のポリペプチドの細胞内含量をいずれも増加させる工程
を含む、方法。
【請求項2】
核初期化物質を用いて体細胞からiPS細胞を製造する方法であって、
(1)配列番号1~3のいずれかで表されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、又は該アミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列からなり、かつTET1活性を有するポリペプチド、又はそれを含む融合ポリペプチド;及び
配列番号10~12のいずれかで表わされるアミノ酸配列からなるポリペプチド
をコードするポリヌクレオチドをそれぞれ細胞内に導入することにより過剰発現させることによって、前記二種のポリペプチドの細胞内含量をいずれも増加させる工程
を含む方法。
【請求項3】
(α-1)配列番号1~3のいずれかで表されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、又は該アミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列からなり、かつTET1活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、又は該ポリペプチドを含む融合ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;及び
(α-2)配列番号10~12のいずれかで表わされるアミノ酸配列からなるポリペプチド
を含有する、DNA脱メチル化誘導剤として用いられる組成物。
【請求項4】
(a-1)配列番号1~3のいずれかで表されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、又は該アミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列からなり、かつTET1活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、又は該ポリペプチドを含む融合ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクター;及び
(a-2)配列番号10~12のいずれかで表わされるアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクター
を含有する、組成物。
【請求項5】
(b)配列番号1~3のいずれかで表されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、又は該アミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列からなり、かつTET1活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、又は該ポリペプチドを含む融合ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;及び
配列番号10~12のいずれかで表わされるアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードするポリヌクレオチド
を含む共発現ベクター。
【請求項6】
iPS細胞の品質改善剤として用いられる、請求項3又は4に記載の組成物。
【請求項7】
iPS細胞の品質改善剤として用いられる、請求項5に記載の共発現ベクター。
【請求項8】
iPS細胞の初期化完成度向上剤として用いられる、請求項3又は4に記載の組成物。
【請求項9】
iPS細胞の初期化完成度向上剤として用いられる、請求項5に記載の共発現ベクター。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、DNA脱メチル化誘導法及びその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
CpG配列のシトシンのメチル化は、遺伝子発現制御において極めて重要な役割を担っており、異常なDNAメチル化が癌などの様々な疾患の要因になっていることが分かっている。精子又は卵の起源である始原生殖細胞は、分化全能性の獲得や異常メチル化の蓄積を防ぐために、ゲノム全体のDNAのメチル化を脱メチル化する活性を持っている。このようなゲノム全体の脱メチル化は、生殖系列の細胞のみで起こる極めてユニークな現象であり、生殖系列特異的なDNA脱メチル化機構の存在が示唆されている。しかしながら、そのようなDNA脱メチル化機構の詳細は明らかになっていない(非特許文献1)。
【0003】
また、核初期化物質を用いて体細胞からiPS細胞を製造する方法が知られている。iPS細胞は再生医療への応用等が期待されているが、未分化性維持の不安定さや、分化能の不均一性等の様々な問題が指摘されている。具体的には、iPS細胞はメチル化の状態が正常なES細胞とは大きく異なっており(非特許文献2)、さらにこのDNAメチル化の異常が、iPS細胞の品質に悪影響を与えることが知られている。例えば、多くのiPS細胞において異常なメチル化が原因でDlk1-Dio3遺伝子クラスターの発現が抑制されていることが知られている。そして、かかる発現抑制に起因して、これらのiPS細胞はキメラを作成したり、iPS細胞だけに由来する動物を作成しようとする際に十分に機能しないことが指摘されている(非特許文献3)。
【先行技術文献】
【0004】

【非特許文献1】Science Vol. 324, 15 May, 2009, pp.930-935
【非特許文献2】Nature Vol 471, 3 March, 2011, pp.68-73
【非特許文献3】Nature Vol 465, 13 May, 2010, pp.175-183
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は以下の通りである。
(1)細胞内においてDNA脱メチル化を誘導する方法を提供すること。
(2)より品質の向上したiPS細胞を提供すること。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、鋭意検討を重ね、TET1活性を介したDNA脱メチル化が、PRDM14活性により促進されることを見出した。本発明者は、さらに、TET1活性単独では脱メチル化できない領域であっても、PRDM14活性を併用することで脱メチル化できることを見出した。かかる新しい知見に基づいて本発明者は、TET1及びPRDM14の細胞内含量を増加させる工程を用いることにより、細胞内においてDNA脱メチル化を誘導できることを見出した。
【0007】
これに加えて、本発明者は、分化させたES細胞にPRDM14を発現させることで、ES細胞への脱分化を誘導できることを見出した。
【0008】
さらに、本発明者は、iPS細胞の品質に悪影響を与えることが知られているDNAメチル化の異常を、本発明のDNA脱メチル化誘導方法によって正常化できることを見出した。かかる新しい知見に基づいて本発明者は、DNA脱メチル化誘導方法を、核初期化物質を用いて体細胞からiPS細胞を製造する方法に適用することにより、より品質の向上したiPS細胞を提供できることを見出した。
【0009】
本発明はかかる知見に基づきさらに検討を重ねた結果完成されたものであり、下記に掲げるものである。
[1.DNA脱メチル化誘導方法]
[1.] 細胞内においてDNA脱メチル化を誘導する方法であって、
(1)TET1活性ドメイン若しくはその改変体、又はそれを含む融合ポリペプチド;及び
PRDM14活性ドメイン若しくはその改変体、又はそれを含む融合ポリペプチド
の細胞内含量を増加させる工程
を含む、方法。
[1.1.1] 前記細胞がヒト細胞である、1.に記載の方法。
[1.1.2] 前記細胞がマウス細胞である、1.に記載の方法。
[1.1.3] 前記細胞が培養細胞である、1.~1.1.2のいずれかに記載の方法。
[1.1.3.1] 前記培養細胞が体細胞である、1.1.3に記載の方法。
[1.1.4] 前記細胞が生体内の細胞である、1.~1.1.2のいずれかに記載の方法。
[1.1.4.1] 前記生体内の細胞がエピゲノム変異を修復するDNAメチル化の異常を有する細胞である、1.1.4 に記載の方法。
[1.1.4.2] 前記生体内の細胞ががん細胞である、1.1.4 に記載の方法。
[1.2.1] 前記工程(1)が、
TET1活性ドメイン若しくはその改変体、又はそれを含む融合ポリペプチド;及び
PRDM14活性ドメイン若しくはその改変体、又はそれを含む融合ポリペプチド
を細胞内に導入する工程である、1.~1.1.4.2のいずれかに記載の方法。
[1.2.2] 前記工程(1)が、
TET1活性ドメイン若しくはその改変体、又はそれを含む融合ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;及び
PRDM14活性ドメイン若しくはその改変体、又はそれを含む融合ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド
を細胞内に導入する工程である、1.~1.1.4.2のいずれかに記載の方法。
[1.2.2.1] 前記工程(1)が、
TET1活性ドメイン若しくはその改変体、又はそれを含む融合ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;及び
PRDM14活性ドメイン若しくはその改変体、又はそれを含む融合ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド
を細胞内で過剰発現させる工程である、1.2.2に記載の方法。
[1.3.1] TET1活性ドメインの改変体、並びにTET1活性ドメインを含む融合ポリペプチド及びTET1活性ドメインの改変体を含む融合ポリペプチドが、TET1活性を有する、1.~1.2.2.1のいずれかに記載の方法。
[1.3.1.1] TET1活性が、5-メチルシトシン(5mC)を5-ヒドロキシメチルシトシン(hmC)へと変換する活性である、1.3.1に記載の方法。
[1.4.1] PRDM14活性ドメインの改変体、並びにPRDM14活性ドメインを含む融合ポリペプチド及びPRDM14活性ドメインの改変体を含む融合ポリペプチドが、PRDM14活性を有する、1.~1.3.1.1のいずれかに記載の方法。
[1.4.1.1] PRDM14活性が、TET1活性を促進する活性である、1.4.1に記載の方法。
[1.5] TET1活性ドメイン又はその改変体を含む融合ポリペプチドが、
(i)メチル化シトシン結合ドメイン;及び
(ii)TET1活性ドメイン又はその改変体からなる活性ドメイン
を含む、1.~1.4.1.1のいずれかに記載の方法。
[1.6] PRDM14又はその改変体を含む融合ポリペプチドが、
(i)標的遺伝子領域に結合するDNA結合ドメイン;及び
(ii)PRDM14又はその改変体からなる活性ドメイン
を含む、1.~1.5のいずれかに記載の方法。
[1.6.1] 標的遺伝子領域が標的遺伝子のプロモーター領域である、1.6に記載の方法。
[1.6.1.1]標的遺伝子ががん抑制遺伝子である、1.6.1に記載の方法。
[1.6.1.1.1] がん抑制遺伝子がp16、p53又はE-cadherinである、1.6.1.1に記載の方法。
[1.7.1] TET1活性ドメインが、配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドである、1.~1.6.1.1.1のいずれかに記載の方法。
[1.7.1.1] TET1活性ドメインの改変体が、1.7.1に記載のポリペプチドと同一性が80%以上のポリペプチドからなる、1.7.1に記載の方法。
[1.7.1.2] TET1活性ドメインの改変体が、1.7.1に記載のポリペプチドと同一性が85%以上のポリペプチドからなる、1.7.1に記載の方法。
[1.7.1.3] TET1活性ドメインの改変体が、1.7.1に記載のポリペプチドと同一性が90%以上のポリペプチドからなる、1.7.1に記載の方法。
[1.7.1.4] TET1活性ドメインの改変体が、1.7.1に記載のポリペプチドと同一性が95%以上のポリペプチドからなる、1.7.1に記載の方法。
[1.7.1.5] TET1活性ドメインの改変体が、1.7.1に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなる、1.7.1に記載の方法。
[1.7.2] TET1活性ドメインが、配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドである、1.~1.6.1.1.1のいずれかに記載の方法。
[1.7.2.1] TET1活性ドメインの改変体が、1.7.2に記載のポリペプチドと同一性が80%以上のポリペプチドからなる、1.7.2に記載の方法。
[1.7.2.2] TET1活性ドメインの改変体が、1.7.2に記載のポリペプチドと同一性が85%以上のポリペプチドからなる、1.7.2に記載の方法。
[1.7.2.3] TET1活性ドメインの改変体が、1.7.2に記載のポリペプチドと同一性が90%以上のポリペプチドからなる、1.7.2に記載の方法。
[1.7.2.4] TET1活性ドメインの改変体が、1.7.2に記載のポリペプチドと同一性が95%以上のポリペプチドからなる、1.7.2に記載の方法。
[1.7.2.5] TET1活性ドメインの改変体が、1.7.2に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなる、1.7.2に記載の方法。
[1.7.3] TET1活性ドメインが、配列番号3で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドである、1.~1.6.1.1.1のいずれかに記載の方法。
[1.7.3.1] TET1活性ドメインの改変体が、1.7.3に記載のポリペプチドと同一性が80%以上のポリペプチドからなる、1.7.3に記載の方法。
[1.7.3.2] TET1活性ドメインの改変体が、1.7.3に記載のポリペプチドと同一性が85%以上のポリペプチドからなる、1.7.3に記載の方法。
[1.7.3.3] TET1活性ドメインの改変体が、1.7.3に記載のポリペプチドと同一性が90%以上のポリペプチドからなる、1.7.3に記載の方法。
[1.7.3.4] TET1活性ドメインの改変体が、1.7.3に記載のポリペプチドと同一性が95%以上のポリペプチドからなる、1.7.3に記載の方法。
[1.7.3.5] TET1活性ドメインの改変体が、1.7.3に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなる、1.7.3に記載の方法。
[1.8.1] PRDM14活性ドメインが、配列番号4で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドである、1.~1.7.3.5のいずれかに記載の方法。
[1.8.1.1] PRDM14活性ドメインの改変体が、1.8.1に記載のポリペプチドと同一性が80%以上のポリペプチドからなる、1.8.1に記載の方法。
[1.8.1.2] PRDM14活性ドメインの改変体が、1.8.1に記載のポリペプチドと同一性が85%以上のポリペプチドからなる、1.8.1に記載の方法。
[1.8.1.3] PRDM14活性ドメインの改変体が、1.8.1に記載のポリペプチドと同一性が90%以上のポリペプチドからなる、1.8.1に記載の方法。
[1.8.1.4] PRDM14活性ドメインの改変体が、1.8.1に記載のポリペプチドと同一性が95%以上のポリペプチドからなる、1.8.1に記載の方法。
[1.8.1.5] PRDM14活性ドメインの改変体が、1.8.1に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなる、1.8.1に記載の方法。
[1.8.2] PRDM14活性ドメインが、配列番号5で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドである、1.~1.7.3.5のいずれかに記載の方法。
[1.8.2.1] PRDM14活性ドメインの改変体が、1.8.2に記載のポリペプチドと同一性が80%以上のポリペプチドからなる、1.8.2に記載の方法。
[1.8.2.2] PRDM14活性ドメインの改変体が、1.8.2に記載のポリペプチドと同一性が85%以上のポリペプチドからなる、1.8.2に記載の方法。
[1.8.2.3] PRDM14活性ドメインの改変体が、1.8.2に記載のポリペプチドと同一性が90%以上のポリペプチドからなる、1.8.2に記載の方法。
[1.8.2.4] PRDM14活性ドメインの改変体が、1.8.2に記載のポリペプチドと同一性が95%以上のポリペプチドからなる、1.8.2に記載の方法。
[1.8.2.5] PRDM14活性ドメインの改変体が、1.8.2に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなる、1.8.2に記載の方法。
[1.8.3] PRDM14活性ドメインが、配列番号6で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドである、1.~1.7.3.5のいずれかに記載の方法。
[1.8.3.1] PRDM14活性ドメインの改変体が、1.8.3に記載のポリペプチドと同一性が80%以上のポリペプチドからなる、1.8.3に記載の方法。
[1.8.3.2] PRDM14活性ドメインの改変体が、1.8.3に記載のポリペプチドと同一性が85%以上のポリペプチドからなる、1.8.3に記載の方法。
[1.8.3.3] PRDM14活性ドメインの改変体が、1.8.3に記載のポリペプチドと同一性が90%以上のポリペプチドからなる、1.8.3に記載の方法。
[1.8.3.4] PRDM14活性ドメインの改変体が、1.8.3に記載のポリペプチドと同一性が95%以上のポリペプチドからなる、1.8.3に記載の方法。
[1.8.3.5] PRDM14活性ドメインの改変体が、1.8.3に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなる、1.8.3に記載の方法。
[1.9] TET1活性ドメイン又はその改変体を含む融合ポリペプチドが、それぞれTET1及びその改変体である、1.~1.6.1.1.1、及び1.8.1~1.8.3.5のいずれかに記載の方法。
[1.9.1] TET1が、配列番号7で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドである、1.9に記載の方法。
[1.9.1.1] TET1の改変体が、1.9.1に記載のポリペプチドと同一性が80%以上のポリペプチドからなる、1.9.1に記載の方法。
[1.9.1.2] TET1の改変体が、1.9.1に記載のポリペプチドと同一性が85%以上のポリペプチドからなる、1.9.1に記載の方法。
[1.9.1.3] TET1の改変体が、1.9.1に記載のポリペプチドと同一性が90%以上のポリペプチドからなる、1.9.1に記載の方法。
[1.9.1.4] TET1の改変体が、1.9.1に記載のポリペプチドと同一性が95%以上のポリペプチドからなる、1.9.1に記載の方法。
[1.9.1.5] TET1の改変体が、1.9.1に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなる、1.9.1に記載の方法。
[1.9.2] TET1が、配列番号8で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドである、1.9に記載の方法。
[1.9.2.1] TET1の改変体が、1.9.2に記載のポリペプチドと同一性が80%以上のポリペプチドからなる、1.9.2に記載の方法。
[1.9.2.2] TET1の改変体が、1.9.2に記載のポリペプチドと同一性が85%以上のポリペプチドからなる、1.9.2に記載の方法。
[1.9.2.3] TET1の改変体が、1.9.2に記載のポリペプチドと同一性が90%以上のポリペプチドからなる、1.9.2に記載の方法。
[1.9.2.4] TET1の改変体が、1.9.2に記載のポリペプチドと同一性が95%以上のポリペプチドからなる、1.9.2に記載の方法。
[1.9.2.5] TET1の改変体が、1.9.2に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなる、1.9.2に記載の方法。
[1.9.3] TET1が、配列番号9で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドである、1.9に記載の方法。
[1.9.3.1] TET1の改変体が、1.9.3に記載のポリペプチドと同一性が80%以上のポリペプチドからなる、1.9.3に記載の方法。
[1.9.3.2] TET1の改変体が、1.9.3に記載のポリペプチドと同一性が85%以上のポリペプチドからなる、1.9.3に記載の方法。
[1.9.3.3] TET1の改変体が、1.9.3に記載のポリペプチドと同一性が90%以上のポリペプチドからなる、1.9.3に記載の方法。
[1.9.3.4] TET1の改変体が、1.9.3に記載のポリペプチドと同一性が95%以上のポリペプチドからなる、1.9.3に記載の方法。
[1.9.3.5] TET1の改変体が、1.9.3に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなる、1.9.3に記載の方法。
[1.10] PRDM14活性ドメイン又はその改変体を含む融合ポリペプチドが、それぞれPRDM14及びその改変体である、1.~1.7.3.5、及び1.9~1.9.3.5のいずれかに記載の方法。
[1.10.1] PRDM14が、配列番号10で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドである、1.10に記載の方法。
[1.10.1.1] PRDM14の改変体が、1.10.1に記載のポリペプチドと同一性が80%以上のポリペプチドからなる、1.10.1に記載の方法。
[1.10.1.2] PRDM14の改変体が、1.10.1に記載のポリペプチドと同一性が85%以上のポリペプチドからなる、1.10.1に記載の方法。
[1.10.1.3] PRDM14の改変体が、1.10.1に記載のポリペプチドと同一性が90%以上のポリペプチドからなる、1.10.1に記載の方法。
[1.10.1.4] PRDM14の改変体が、1.10.1に記載のポリペプチドと同一性が95%以上のポリペプチドからなる、1.10.1に記載の方法。
[1.10.1.5] PRDM14の改変体が、1.10.1に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなる、1.10.1に記載の方法。
[1.10.2] PRDM14が、配列番号11で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドである、1.10に記載の方法。
[1.10.2.1] PRDM14の改変体が、1.10.2に記載のポリペプチドと同一性が80%以上のポリペプチドからなる、1.10.2に記載の方法。
[1.10.2.2] PRDM14の改変体が、1.10.2に記載のポリペプチドと同一性が85%以上のポリペプチドからなる、1.10.2に記載の方法。
[1.10.2.3] PRDM14の改変体が、1.10.2に記載のポリペプチドと同一性が90%以上のポリペプチドからなる、1.10.2に記載の方法。
[1.10.2.4] PRDM14の改変体が、1.10.2に記載のポリペプチドと同一性が95%以上のポリペプチドからなる、1.10.2に記載の方法。
[1.10.2.5] PRDM14の改変体が、1.10.2に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなる、1.10.2に記載の方法。
[1.10.3] PRDM14が、配列番号12で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドである、1.10に記載の方法。
[1.10.3.1] PRDM14の改変体が、1.10.3に記載のポリペプチドと同一性が80%以上のポリペプチドからなる、1.10.3に記載の方法。
[1.10.3.2] PRDM14の改変体が、1.10.3に記載のポリペプチドと同一性が85%以上のポリペプチドからなる、1.10.3に記載の方法。
[1.10.3.3] PRDM14の改変体が、1.10.3に記載のポリペプチドと同一性が90%以上のポリペプチドからなる、1.10.3に記載の方法。
[1.10.3.4] PRDM14の改変体が、1.10.3に記載のポリペプチドと同一性が95%以上のポリペプチドからなる、1.10.3に記載の方法。
[1.10.3.5] PRDM14の改変体が、1.10.3に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなる、1.10.3に記載の方法。
【0010】
[2.治療方法]
[2.] ヒトを治療する方法であって、
(1)TET1活性ドメイン若しくはその改変体、又はそれを含む融合ポリペプチド;及び
PRDM14活性ドメイン若しくはその改変体、又はそれを含む融合ポリペプチド
の細胞内含量を増加させる工程
を含む方法。
[2.1.1] エピゲノム変異を修復するDNAメチル化の異常に起因する疾患を治療する方法である、2.に記載の方法。
[2.1.1.1] がんを治療する方法である、2.1.1に記載の方法。
[2.1.1.2] 神経精神疾患を治療する方法である、2.1.1に記載の方法。
[2.1.1.2.1] 神経精神疾患が、躁うつ病又は反復うつ病である、2.1.1.2に記載の方法。
[2.2] 前記工程(1)が、1.1.1~1.10.3.5のいずれかに記載の工程(1)である、2.~2.1.1.2.1のいずれかに記載の方法。
【0011】
[3.iPS細胞製造方法]
[3A.] 核初期化物質を用いて体細胞からiPS細胞を製造する方法であって、
(1)TET1活性ドメイン若しくはその改変体、又はそれを含む融合ポリペプチド;及び
PRDM14活性ドメイン若しくはその改変体、又はそれを含む融合ポリペプチド
の細胞内含量を増加させる工程
を含む方法。
[3A.1.1] 前記体細胞がヒト細胞である、3A.に記載の方法。
[3A.1.2] 前記体細胞がマウス細胞である、3A.に記載の方法。
[3A.1.3] 前記体細胞がイヌ細胞である、3A.に記載の方法。
[3A.2] 前記工程(1)が、1.1.1~1.10.3.5のいずれかに記載の工程(1)である、3A.~3A.1.3のいずれかに記載の方法。
[3A.3] 前記工程(1)を体細胞に対して行う、3A~3A.2のいずれかに記載の方法。
[3A.3.1] 前記工程(1)が、
(1A-1)TET1活性ドメイン若しくはその改変体、又はそれを含む融合ポリペプチド;及び
PRDM14活性ドメイン若しくはその改変体、又はそれを含む融合ポリペプチド
の体細胞内含量を増加させ、かつ
核初期化物質を体細胞に接触させることにより体細胞をiPS細胞に変換する工程
である、3A.3に記載の方法。
[3A.3.2] 前記工程(1)が、
(1A-1)TET1活性ドメイン若しくはその改変体、又はそれを含む融合ポリペプチド;及び
PRDM14活性ドメイン若しくはその改変体、又はそれを含む融合ポリペプチド
の体細胞内含量を増加させ、かつ
核初期化物質を体細胞に接触させることにより体細胞を初期化完成度の高いiPS細胞に変換する工程である、3A.3に記載の方法。
[3A.4] (I)核初期化物質を体細胞に接触させることにより体細胞を高品質iPS細胞、低品質iPS細胞及びpre-iPS細胞に変換する工程;
(II)工程(I)で得られた細胞の評価を行い、高品質iPS細胞、低品質iPS細胞及びpre-iPS細胞に選別する工程;及び
(III)工程(II)で選別された低品質iPS細胞及びpre-iPS細胞に対して、工程(1)を行う工程
を含む、3A.~3A.2のいずれかに記載の方法。
[3A.4.1] 前記工程(1)が、
(1A-2)TET1活性ドメイン若しくはその改変体、又はそれを含む融合ポリペプチド;及び
PRDM14活性ドメイン若しくはその改変体、又はそれを含む融合ポリペプチド
の低品質iPS細胞及びpre-iPS細胞における細胞内含量を増加させ、かつ
核初期化物質を低品質iPS細胞及びpre-iPS細胞に接触させる工程
である、3A.4に記載の方法。
[3A.4.2] 前記工程(I)が、3A.3.1に記載の工程(1A-1)である、3A.4に記載の方法。
[3A.4.3] 工程(III)における細胞の評価を、GTL2遺伝子のDNA発現又はDNAメチル化をES細胞との間で比較することにより低品質iPS細胞を選別する工程、及び内在性のNANOG遺伝子の発現をES細胞との間で比較することによりpre-iPS細胞を選別する工程を含む方法により行う、3A.4~3A.4.2のいずれかに記載の方法。
[3B.] pre-iPS細胞に対して工程(1)を行うことにより、iPS細胞を得る方法。
[3B.1] 前記工程(1)が、
(1B)TET1活性ドメイン若しくはその改変体、又はそれを含む融合ポリペプチド;及び
PRDM14活性ドメイン若しくはその改変体、又はそれを含む融合ポリペプチド
のpre-iPS細胞内含量を増加させ、かつ
核初期化物質をpre-iPS細胞に接触させる工程
である、3B.に記載の方法。
[3C.] 低品質iPS細胞に対して工程(1)を行うことにより、高品質iPS細胞を得る方法。
[3C.1] 前記工程(1)が、
(1C)TET1活性ドメイン若しくはその改変体、又はそれを含む融合ポリペプチド;及び
PRDM14活性ドメイン若しくはその改変体、又はそれを含む融合ポリペプチド
の低品質iPS細胞内含量を増加させ、かつ
核初期化物質を低品質iPS細胞に接触させる工程
である、3C.に記載の方法。
[3.1]核初期化物質が、OCT4、SOX2、KLF4及びMYCからなる群より選択される少なくとも1種である、3A.~3C.1のいずれかに記載の方法。
[3.2]核初期化物質が、OCT4、SOX2及びKLF4からなる群より選択される少なくとも1種である、3A.~3C.1のいずれかに記載の方法。
[3.3]核初期化物質が、OCT4及びSOX2からなる群より選択される少なくとも1種である、3A.~3C.1のいずれかに記載の方法。
[3.4]核初期化物質が、OCT4である、3A.~3C.1のいずれかに記載の方法。
【0012】
[4.ポリペプチド含有組成物]
[4.] (A-1)TET1活性ドメイン若しくはその改変体、又はそれを含む融合ポリペプチド;及び
(A-2)PRDM14活性ドメイン若しくはその改変体、又はそれを含む融合ポリペプチド
を含有する、組成物。
[4.1] TET1活性ドメイン若しくはその改変体、又はそれを含む融合ポリペプチドが、1.3.1~1.10.3.5のいずれかに記載のポリペプチドである、4.に記載の組成物。
[4.2] PRDM14活性ドメイン若しくはその改変体、又はそれを含む融合ポリペプチドが、1.3.1~1.10.3.5のいずれかに記載のポリペプチドである、4.又は4.1に記載の組成物。
[4.3.1] DNA脱メチル化誘導剤として用いられる、4~4.2のいずれかに記載の組成物。
[4.3.2] 医薬として用いられる、4~4.2のいずれかに記載の組成物。
[4.3.2.1] エピゲノム変異を修復するDNAメチル化の異常に起因する疾患に対する治療剤として用いられる、4.3.2に記載の組成物。
[4.3.2.2] 抗がん剤として用いられる、4.3.2に記載の組成物。
[4.3.2.3] 神経精神疾患治療剤として用いられる、4.3.2に記載の組成物。
[4.3.2.4] 躁うつ病治療剤又は反復うつ病治療剤として用いられる、4.3.2に記載の組成物。
[4.3.3] iPS細胞の品質改善剤として用いられる、4~4.2のいずれかに記載の組成物。
[4.3.4] iPS細胞の初期化完成度向上剤として用いられる、4~4.2のいずれかに記載の組成物。
【0013】
[5.ポリヌクレオチド含有組成物]
[5.] (α-1)TET1活性ドメイン若しくはその改変体、又はそれを含む融合ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;及び
(α-2)PRDM14活性ドメイン若しくはその改変体、又はそれを含む融合ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド
を含有する、組成物。
[5.1] TET1活性ドメイン若しくはその改変体、又はそれを含む融合ポリペプチドが、1.3.1~1.10.3.5のいずれかに記載のポリペプチドである、5.に記載の組成物。
[5.2] PRDM14活性ドメイン若しくはその改変体、又はそれを含む融合ポリペプチドが、1.3.1~1.10.3.5のいずれかに記載のポリペプチドである、5.又は5.1に記載の組成物。
[5.3.1] ポリヌクレオチドがDNAである、5~5.2のいずれかに記載の組成物。
[5.3.2] ポリヌクレオチドがRNAである、5~5.2のいずれかに記載の組成物。
[5.4.1] DNA脱メチル化誘導剤として用いられる、5~5.3.2のいずれかに記載の組成物。
[5.4.2] 医薬として用いられる、5~5.3.2のいずれかに記載の組成物。
[5.4.2.1] エピゲノム変異を修復するDNAメチル化の異常に起因する疾患に対する治療剤として用いられる、5.4.2に記載の組成物。
[5.4.2.2] 抗がん剤として用いられる、5.4.2に記載の組成物。
[5.4.2.3] 神経精神疾患治療剤として用いられる、5.4.2に記載の組成物。
[5.4.2.4] 躁うつ病治療剤又は反復うつ病治療剤として用いられる、5.4.2に記載の組成物。
[5.4.3] iPS細胞の品質改善剤として用いられる、5~5.3.2のいずれかに記載の組成物。
[5.4.4] iPS細胞の初期化完成度向上剤として用いられる、5~5.3.2のいずれかに記載の組成物。
【0014】
[6.発現ベクター含有組成物]
[6.] (a-1)TET1活性ドメイン若しくはその改変体、又はそれを含む融合ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクター;及び
(a-2)PRDM14活性ドメイン若しくはその改変体、又はそれを含む融合ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクター
を含有する、組成物。
[6.1] TET1活性ドメイン若しくはその改変体、又はそれを含む融合ポリペプチドが、1.3.1~1.10.3.5のいずれかに記載のポリペプチドである、6.に記載の組成物。
[6.2] PRDM14活性ドメイン若しくはその改変体、又はそれを含む融合ポリペプチドが、1.3.1~1.10.2.5のいずれかに記載のポリペプチドである、6.又は6.1に記載の組成物。
[6.3.1] ポリヌクレオチドがDNAである、6~6.2のいずれかに記載の組成物。
[6.3.2] ポリヌクレオチドがRNAである、6~6.2のいずれかに記載の組成物。
[6.4.1] DNA脱メチル化誘導剤として用いられる、6~6.3.2のいずれかに記載の組成物。
[6.4.2] 医薬として用いられる、6~6.3.2のいずれかに記載の組成物。
[6.4.2.1] エピゲノム変異を修復するDNAメチル化の異常に起因する疾患に対する治療剤として用いられる、6.4.2に記載の組成物。
[6.4.2.2] 抗がん剤として用いられる、6.4.2に記載の組成物。
[6.4.2.3] 神経精神疾患治療剤として用いられる、6.4.2に記載の組成物。
[6.4.2.4] 双極性障害(躁うつ病)治療剤、反復うつ病治療剤、統合失調症として用いられる、6.4.2に記載の組成物。
[6.4.3] iPS細胞の品質改善剤として用いられる、6~6.3.2のいずれかに記載の組成物。
[6.4.4] iPS細胞の初期化完成度向上剤として用いられる、6~6.3.2のいずれかに記載の組成物。
【0015】
[7.共発現ベクター]
[7.] (b)TET1活性ドメイン若しくはその改変体、又はそれを含む融合ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;及び
PRDM14活性ドメイン若しくはその改変体、又はそれを含む融合ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド
を含む共発現ベクター。
[7.1] TET1活性ドメイン若しくはその改変体、又はそれを含む融合ポリペプチドが、1.3.1~1.10.3.5のいずれかに記載のポリペプチドである、7.に記載の共発現ベクター。
[7.2] PRDM14活性ドメイン若しくはその改変体、又はそれを含む融合ポリペプチドが、1.3.1~1.10.3.5のいずれかに記載のポリペプチドである、7.又は7.1に記載の共発現ベクター。
[7.3.1] ポリヌクレオチドがDNAである、7~7.2のいずれかに記載の共発現ベクター。
[7.3.2] ポリヌクレオチドがRNAである、7~7.2のいずれかに記載の共発現ベクター。
[7.4.1] DNA脱メチル化誘導剤として用いられる、7~7.3.2のいずれかに記載の共発現ベクター。
[7.4.2] 医薬として用いられる、7~7.3.2のいずれかに記載の共発現ベクター。
[7.4.2.1] エピゲノム変異を修復するDNAメチル化の異常に起因する疾患に対する治療剤として用いられる、7.4.2に記載の共発現ベクター。
[7.4.2.2] 抗がん剤として用いられる、7.4.2に記載の共発現ベクター。
[7.4.2.3] 神経精神疾患治療剤として用いられる、7.4.2に記載の共発現ベクター。
[7.4.2.4] 躁うつ病治療剤又は反復うつ病治療剤として用いられる、7.4.2に記載の共発現ベクター。
[7.4.3] iPS細胞の品質改善剤として用いられる、7~7.3.2のいずれかに記載の共発現ベクター。
[7.4.4] iPS細胞の初期化完成度向上剤として用いられる、7~7.3.2のいずれかに記載の共発現ベクター。
【発明の効果】
【0016】
本発明のDNA脱メチル化誘導方法を利用することにより、人為的にDNA脱メチル化を行うことができる。また、このDNA脱メチル化誘導方法をiPS細胞の製造方法に適用することにより、品質の向上したiPS細胞を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施例1.の結果を示す図面である。なお、上図はLINE-1を示している。
【図2】実施例2.の結果を示す、PRDM14高発現ES細胞及びDnmts TKO ES細胞で遺伝子発現上昇が観察された遺伝子のVenn diagramである。
【図3】メチル化シトシンのヒドロキシル化を引き金としたDNA脱メチル化経路を示した図面である。
【図4】実施例3.の結果を示す図面である。
【図5】実施例4.の結果を示す図面である。
【図6】山中ファクター(OCT4、SOX2、KLF4、MYC:OSKM)を繊維芽細胞に導入することでiPS細胞を樹立する過程において、リプログラミングが不完全なpre-iPS細胞や低品質iPS細胞が出現する経路を示した図面である。
【図7】実施例5.の結果を示す図面である。
【図8】実施例6.の結果を示す図面である。縦軸はLINE-1領域内CCGG配列のメチル化量を、横軸はそれぞれの細胞名を表している。
【図9】実施例7.の結果を示す図面である。
【図10】実施例7.の結果を示す図面である。
【図11】実施例7.の結果を示す図面である。
【図12】実施例8.の結果を示す図面である。
【図13】実施例9.の結果を示す図面である。
【図14】実施例9.の結果を示す図面である。
【図15】実施例9.の結果を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[1.DNA脱メチル化誘導方法]
本発明のDNA脱メチル化誘導方法は、細胞内においてDNA脱メチル化を誘導する方法であって、
(1)TET1活性ドメイン若しくはその改変体、又はそれを含む融合ポリペプチド(以下、「TET1活性ドメイン等」ということがある。);及び
PRDM14活性ドメイン若しくはその改変体、又はそれを含む融合ポリペプチド(以下、「PRDM14活性ドメイン等」ということがある。)
の細胞内含量を増加させる工程
を含む、方法である。

【0019】
細胞の由来は特に限定されないが、例えばヒト細胞、マウス細胞、イヌ細胞、等が挙げられる。

【0020】
細胞は培養細胞であってもよく、生体内の細胞であってもよい。

【0021】
培養細胞は、体細胞であってもよく、幹細胞等の未分化の細胞であってもよい。

【0022】
体細胞としては、特に限定されないが、例えば、角質化する上皮細胞、湿潤かつ多層構造をとり境界面を構成する上皮細胞(粘膜上皮細胞)、外分泌腺に専門化した上皮細胞、ホルモン分泌用に専門化した細胞、消化管、外分泌腺及び尿生殖路の吸収上皮細胞、代謝と貯蔵用に専門化した細胞、主に境界面を構成し、肺、消化管、外分泌腺及び尿生殖路の内腔に面する上皮細胞、体内で閉じた管腔の内面を形成している上皮細胞、運搬機能をもつ繊毛のある細胞、細胞外マトリックスの分泌用に特化した細胞、収縮性細胞、血液細胞、免疫細胞、感覚に関与する細胞、自律神経系のニューロン、感覚器官及び抹消ニューロンの支持細胞、中枢神経系の神経細胞とグリア細胞、レンズ(水晶体)細胞、色素細胞、並びに哺育細胞等が挙げられる。

【0023】
角質化する上皮細胞としては、特に限定されないが、例えば、表皮の角化細胞、爪の角化細胞、毛幹の細胞、毛根鞘細胞等が挙げられる。

【0024】
湿潤かつ多層構造をとり境界面を構成する上皮細胞(粘膜上皮細胞)としては、特に限定されないが、例えば、表面が重層扁平上皮である上皮細胞(角膜、舌、口腔、食道、肛門、遠位尿道及び膣等の上皮細胞)等が挙げられる。

【0025】
外分泌腺に専門化した上皮細胞としては、特に限定されないが、例えば、だ液腺細胞、舌のフォンエブナー腺細胞、乳腺細胞、涙腺細胞、耳動腺細胞、エクリン汗腺細胞、アポクリン汗腺細胞等が挙げられる。

【0026】
ホルモン分泌用に専門化した細胞としては、特に限定されないが、例えば、脳下垂体前葉細胞、脳下垂体中葉細胞、脳下垂体後葉細胞、消化管及び気道の細胞、甲状腺の細胞、副甲状腺(上皮小体)細胞、副腎の細胞、生殖腺細胞、腎臓の傍糸球体装置の細胞等が挙げられる。

【0027】
消化管、外分泌腺及び尿生殖路の吸収上皮細胞としては、特に限定されないが、例えば、腸の刷子縁細胞、外分泌腺の線条管細胞、胆嚢上皮細胞等が挙げられる。

【0028】
代謝と貯蔵用に専門化した細胞としては、特に限定されないが、例えば、肝細胞、脂肪細胞等が挙げられる。

【0029】
主に境界面を構成し、肺、消化管、外分泌腺及び尿生殖路の内腔に面する上皮細胞としては、特に限定されないが、例えば、I型肺胞細胞、膵臓導管細胞、腺房中心細胞、汗腺、だ液腺、乳腺等の導管細胞、腎糸球体の壁細胞、腎糸球体のタコ足細胞等が挙げられる。

【0030】
体内で閉じた管腔の内面を形成している上皮細胞としては、特に限定されないが、例えば、血管とリンパ管の内皮細胞、滑液細胞、漿膜細胞等が挙げられる。

【0031】
運搬機能をもつ繊毛のある細胞としては、特に限定されないが、例えば、気道の上皮細胞、卵管と子宮内膜の上皮細胞、中枢神経系の細胞等が挙げられる。

【0032】
細胞外マトリックスの分泌用に特化した細胞としては、特に限定されないが、例えば、造エナメル細胞、繊維芽細胞、毛細血管の周細胞、椎間板の髄核細胞、セメント芽細胞、象牙芽細胞、軟骨細胞、骨芽細胞、目のガラス体の形成細胞等が挙げられる。

【0033】
収縮性細胞としては、特に限定されないが、例えば、骨格筋細胞、心筋細胞、平滑筋細胞、筋上皮細胞等が挙げられる。

【0034】
血液細胞としては、特に限定されないが、例えば、赤血球、巨核球、マクロファージと類縁細胞、好中球、好酸球、好塩基球等が挙げられる。

【0035】
免疫細胞としては、特に限定されないが、例えば、肥満細胞(マスト細胞)、Tリンパ球(T細胞)、Bリンパ球、K(キラー)細胞等が挙げられる。

【0036】
感覚に関与する細胞としては、特に限定されないが、例えば、桿体細胞、錐体細胞、コルチ器官の内側有毛細胞、コルチ器官の外側有毛細胞、II型味蕾細胞、嗅覚神経細胞、嗅上皮の基底細胞、頚動脈小体の細胞、表皮のメルケル細胞、触覚用に特殊化した一次感覚ニューロン、温度感覚用に専門化した一次感覚ニューロン、痛覚用に特殊化した一次感覚ニューロン、深部一次感覚ニューロン等が挙げられる。

【0037】
感覚器官及び抹消ニューロンの支持細胞としては、特に限定されないが、例えば、コルチ器官の支持細胞、前庭の支持細胞、味蕾の支持細胞、嗅上皮の支持細胞、シュワン細胞、随伴細胞、腸管のグリア細胞等が挙げられる。

【0038】
体細胞として、好ましくはT細胞が用いられる。T細胞はCD4陽性若しくはCD8陽性、又はCD4/CD8両陽性であってもよい。T細胞は、特に限定されないが、例えば、脾臓、リンパ節、末梢血又は臍帯血等から、公知の方法により単離できる。公知の単離方法としては、特に限定されないが、例えば、セルソーターを用い、CD4、CD8及びCD3等の細胞表面マーカーに対する抗体を利用してフローサイトメトリーにより単離する方法等が挙げられる。

【0039】
体細胞には通常TET1が発現していない。本発明者は、TET1活性を介したDNA脱メチル化が、PRDM14活性により促進されることを見出した。かかる新規の知見に基づいて本発明者は、体細胞においてはTET1活性ドメイン等及びPRDM14活性ドメイン等の細胞内含量を同時に増加させることによりDNA脱メチル化が顕著に促進されることを見出した。

【0040】
生体内の細胞は、正常な細胞であってもよく、異常な細胞であってもよい。異常な細胞は特に限定されないが、例えば、DNAメチル化の異常を有する細胞等が挙げられる。そのような細胞に本発明を適用してDNA脱メチル化を誘導することによって、DNAメチル化を正常な状態に近づけることができる。DNAメチル化の異常を有する細胞としては、特に限定されないが、例えば、がん細胞、精神神経疾患の細胞、エピゲノム変異を修復するDNAメチル化の異常を有する細胞等が挙げられる。

【0041】
工程(1)の具体例としては、例えば、次のような工程が挙げられる。
(1A)TET1活性ドメイン若しくはその改変体、又はそれを含む融合ポリペプチド;及び
PRDM14活性ドメイン若しくはその改変体、又はそれを含む融合ポリペプチド
を細胞内に導入する工程。
(1B)TET1活性ドメイン若しくはその改変体、又はそれを含む融合ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;及び
PRDM14活性ドメイン若しくはその改変体、又はそれを含む融合ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド
を細胞内に導入する工程。

【0042】
工程(1B)の具体例としては、例えば、
(1b)TET1活性ドメイン若しくはその改変体、又はそれを含む融合ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;及び
PRDM14活性ドメイン若しくはその改変体、又はそれを含む融合ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド
を細胞内で過剰発現させる工程が挙げられる。

【0043】
工程(1A)において、後述する4.ポリペプチド含有組成物を用いることができる。
工程(1B)において、5.ポリヌクレオチド含有組成物、6.発現ベクター含有組成物、及び7.共発現ベクターを用いることができる。また、工程(1b)において、6.発現ベクター含有組成物、及び7.共発現ベクターを用いることができる。

【0044】
ポリヌクレオチドの過剰発現は、一過的であってもよいし、恒常的であってもよい。一過的に過剰発現させる場合は、特に限定されないが、発現系として、CMVプロモーター及びCAGGSプロモーターを用いることができる。恒常的に過剰発現させる場合は、特に限定されないが、発現系として、CMVプロモーター及びCAGGSプロモーターを用いることができる。

【0045】
TET1は、急性骨髄性白血病(acute myeloid leukemia)において、H3K4メチル化酵素MLL(mixed lineage leukemia)の融合パートナーとして発見されたタンパク質である。TET1は、特に限定されないが、ヒト由来、マウス由来、イヌ、ラット由来のものが挙げられる。ヒト由来のTET1としては、例えば、配列番号7で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドが挙げられる。マウス由来のTET1としては、例えば、配列番号8で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドが挙げられる。イヌ由来のTET1としては、例えば、配列番号9で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドが挙げられる。ラット由来のTET1としては、例えば、配列番号13で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドが挙げられる。

【0046】
TET1活性ドメインとは、TET1を構成するポリペプチドのうち、TET1活性を担う領域を含む部分ポリペプチドをいう。例えば、ヒト由来のTET1の場合、TET1活性を担う領域とは、配列番号7において1418~2136番目のアミノ酸配列からなる領域をいう。マウス由来のTET1の場合、TET1活性を担う領域とは、配列番号8において1367~2039番目のアミノ酸配列からなる領域をいう。イヌ由来のTET1の場合、TET1活性を担う領域とは、配列番号9において1419~2137番目のアミノ酸配列からなる領域をいう。

【0047】
TET1活性ドメインは、TET1の中でTET1活性を担う領域を取り囲んでいるアミノ酸又はポリペプチドであって、TET1活性とは無関係なものが付加したものであってもよい。そのようなTET1活性ドメインは、例えばTET1からTET1活性を担う領域を含んだ部分ポリペプチドを切り出すこと等によって得ることができる。TET1活性ドメインは、好ましくはCpG islandを認識するCxxCモチーフを欠いたTET1の部分ポリペプチドである。ヒト由来TET1活性ドメインは、好ましくは、配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドである。マウス由来TET1活性ドメインは、好ましくは、配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドである。イヌ由来TET1活性ドメインは、好ましくは、配列番号3で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドである。

【0048】
TET1活性は、5-メチルシトシン(5mC)を5-ヒドロキシメチルシトシン(hmC)へと変換する活性である。細胞としてHEK293細胞を用い、被検体を細胞内に導入することにより5mCからhmCへの変換が促進される場合は、かかる被検体がTET1活性を有すると判定する。5mCから5hmcへの変換は、5hmCに対する特異的抗体を用いたDot-blot法により検出する。

【0049】
TET1活性ドメインの改変体、並びにTET1活性ドメインを含む融合ポリペプチド及びTET1活性ドメインの改変体を含む融合ポリペプチド(以下、「TET1活性ドメイン改変体等」ということがある。)は、TET1活性を有する。

【0050】
TET1活性ドメインの改変体は、特に限定されないが、TET1活性ドメインとアミノ酸の同一性が好ましくは80%以上、85%以上、90%以上、又は95%以上のポリペプチドからなる。左記においてアミノ酸の同一性は高ければ高いほど好ましい。あるいは、TET1活性ドメインの改変体は、TET1活性ドメインのアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加(以下、「改変等」ということがある。)されたアミノ酸配列からなる。

【0051】
TET1活性ドメインにおいて、改変等を加えることによってTET1活性が消失してしまうアミノ酸としては、1671番目、1673番目のもの等が知られている。TET1活性を有するTET1活性ドメインの改変体は、例えば上記のようなアミノ酸への改変等を避けながら他のアミノ酸への改変等を加えることによって得ることができる。

【0052】
TET1活性ドメイン又はその改変体を含む融合ポリペプチド(以下、「TET1活性ドメイン等融合ポリペプチド」ということがある。)は、TET1活性ドメイン等のC末端、N末端又は両端にアミノ酸又はポリペプチドがそれぞれ付加されてなるものである。
特に限定されないが、例えばTET1活性ドメイン等に、TET1活性とは無関係な機能を有するか、あるいは特にそれ自体何ら機能を有さず、かつTET1活性ドメイン等のTET1活性を阻害しないか、あるいは阻害したとしても著しく阻害しないアミノ酸又はポリペプチドが融合されてなるものである。TET1活性とは無関係な機能としては、特定の塩基配列又は核酸の三次構造に結合する機能等が挙げられる。そのような機能を有するポリペプチドとしては、特に限定されないが、例えば、メチル化シトシン結合ドメイン(MBD)等が挙げられる。MBDとしては、特に限定されないが、例えば、MECP2の部分配列が挙げられる。ヒト由来MECP2の場合は、例えば、配列番号14で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチド等を挙げることができる。配列番号14で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドは、ヒトMECP2の62~169番目のアミノ酸配列からなるポリペプチドである。そのような機能を有するポリペプチドが融合されてなるTET1活性ドメイン等融合ポリペプチドを用いることによって、特定の塩基配列又は核酸の三次構造を有するポリヌクレオチド領域のみに選択的にTET1活性を発現させることができる。TET1活性とは無関係な機能を有するか、あるいは特にそれ自体何ら機能を有さず、かつTET1活性ドメイン等のTET1活性を阻害しないか、あるいは阻害したとしても著しく阻害しないポリペプチドの長さとしては、特に限定されないが、TET1活性ドメイン等の20%以下、好ましくは10%以下、より好ましくは5%以下等が挙げられる。

【0053】
TET1活性ドメイン等融合ポリペプチドは、TET1そのものであってもよいし、TET1の改変体であってもよい。あるいは、TET1活性ドメイン等融合ポリペプチドは、TETファミリーに属するタンパク質そのものであってもよいし、TETファミリーに属するタンパク質の改変体であってもよい。TETファミリーに属するタンパク質としては、TET1のほかにTET2、TET3が挙げられる。ここでいう改変体とは、特に限定されないが、例えば、元となるポリペプチドとアミノ酸の同一性が好ましくは80%以上、85%以上、90%以上、又は95%以上のポリペプチドからなるものであってもよい。左記においてアミノ酸の同一性は高ければ高いほど好ましい。あるいは、ここでいう改変体は、元となるポリペプチドのアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が改変等されたアミノ酸配列からなるものであってもよい。

【0054】
PRDM14は、始原生殖細胞の形成及び初期分化に必須である転写制御因子として本発明者により発見されたタンパク質である。PRDM14は、特に限定されないが、ヒト由来、マウス由来、イヌ由来、ラット由来のものが挙げられる。ヒト由来のPRDM14としては、例えば、配列番号10で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドが挙げられる。マウス由来のPRDM14としては、例えば、配列番号11で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドが挙げられる。イヌ由来のPRDM14としては、例えば、配列番号12で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドが挙げられる。

【0055】
PRDM14活性ドメインとは、PRDM14を構成するポリペプチドのうち、PRDM14活性を担う領域を含む部分ポリペプチドをいう。例えば、ヒト由来のPRDM14の場合、PRDM14活性を担う領域とは、配列番号10において254~571番目のアミノ酸配列からなる領域をいう。マウス由来のPRDM14の場合、PRDM14活性を担う領域とは、配列番号11において244~561番目のアミノ酸配列からなる領域をいう。イヌ由来のPRDM14の場合、PRDM14活性を担う領域とは、配列番号12において254~571番目のアミノ酸配列からなる領域をいう。

【0056】
PRDM14活性ドメインは、PRDM14の中でPRDM14活性を担う領域を取り囲んでいるアミノ酸又はポリペプチドであって、PRDM14活性とは無関係なものが付加したものであってもよい。そのようなPRDM14活性ドメインは、例えばPRDM14からPRDM14活性を担う領域を含んだ部分ポリペプチドを切り出すこと等によって得ることができる。PRDM14活性ドメインは、例えば、C末端に存在するZing fingerドメインを欠いたPRDM14の部分ポリペプチドである。Zing fingerドメインを欠く場合、ヒトPRDM14活性ドメインは、好ましくは、配列番号10において254~488番目、より好ましくは254~373番目のアミノ酸配列からなる領域をいう。Zing fingerドメインを欠く場合、マウスPRDM14活性ドメインは、好ましくは、配列番号11において244~478番目、より好ましくは244~363番目のアミノ酸配列からなる領域をいう。

【0057】
PRDM14活性は、TET1と相互作用し、TET1活性を促進する活性である。細胞としてHEK293細胞を用い、被検体をTET1と共に細胞に導入した場合にTET1活性を介したDNA脱メチル化が促進される場合は、かかる被検体がPRDM14活性を有すると判定する。

【0058】
PRDM14活性ドメインの改変体、並びにPRDM14活性ドメインを含む融合ポリペプチド及びPRDM14活性ドメインの改変体を含む融合ポリペプチド(以下、「PRDM14活性ドメイン改変体等」ということがある。)は、PRDM14活性を有する。

【0059】
PRDM14活性ドメインの改変体は、特に限定されないが、PRDM14活性ドメインとアミノ酸の同一性が好ましくは80%以上、85%以上、90%以上、又は95%以上のポリペプチドからなる。左記においてアミノ酸の同一性は高ければ高いほど好ましい。あるいは、PRDM14活性ドメインの改変体は、PRDM14活性ドメインのアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が改変等されたアミノ酸配列からなる。

【0060】
PRDM14活性を有するPRDM14活性ドメインの改変体は、PRDM14活性ドメインにおいて、改変等を加えることによってPRDM14活性が消失してしまうアミノ酸への改変等を避けながら他のアミノ酸への改変等を加えることによって得ることができる。

【0061】
PRDM14活性ドメイン又はその改変体を含む融合ポリペプチド(以下、「PRDM14活性ドメイン等融合ポリペプチド」ということがある。)は、PRDM14活性ドメイン等のC末端、N末端又は両端にアミノ酸又はポリペプチドがそれぞれ付加されてなるものである。特に限定されないが、例えばPRDM14活性ドメイン等に、PRDM14活性とは無関係な機能を有するか、あるいは特にそれ自体何ら機能を有さず、かつPRDM14活性ドメイン等のPRDM14活性を阻害しないか、あるいは阻害したとしても著しく阻害しないアミノ酸又はポリペプチドが融合されてなるものである。PRDM14活性とは無関係な機能としては、特定の塩基配列又は核酸の三次構造に結合する機能等が挙げられる。そのような機能を有するポリペプチドとしては、特に限定されないが、例えば、標的遺伝子領域に結合するDNA結合ドメイン等が挙げられる。そのような機能を有するポリペプチドが融合されてなるPRDM14活性ドメイン等融合ポリペプチドを用いることによって、特定の塩基配列又は核酸の三次構造を有するポリヌクレオチド領域のみにおいて選択的にTET1活性を促進させることができる。PRDM14活性とは無関係な機能を有するか、あるいは特にそれ自体何ら機能を有さず、かつPRDM14活性ドメイン等のPRDM14活性を阻害しないか、あるいは阻害したとしても著しく阻害しないポリペプチドの長さとしては、特に限定されないが、PRDM14活性ドメイン等の20%以下、好ましくは10%以下、より好ましくは5%以下等が挙げられる。

【0062】
標的遺伝子領域は、標的遺伝子のプロモーター領域であってもよい。標的遺伝子は特に限定されないが、例えば、がん抑制遺伝子等が挙げられる。がん抑制遺伝子としては、特に限定されないが、例えば、p16、p53、E-cadherin等が挙げられる。

【0063】
標的遺伝子領域に結合するDNA結合ドメインとしては、特に限定されないが、例えば、転写因子のDNA結合ドメイン、又はそれを改変したものを用いることができる。そのような転写因子のDNA結合ドメインとしては、例えば、p16のプロモーター領域に結合することが知られているCTCFs等が挙げられる。

【0064】
PRDM14活性ドメイン等融合ポリペプチドは、PRDM14そのものであってもよいし、PRDM14の改変体であってもよい。ここでいうPRDM14の改変体とは、特に限定されないが、例えば、PRDM14とアミノ酸の同一性が好ましくは80%以上、85%以上、90%以上、又は95%以上のポリペプチドからなるものであってもよい。
左記においてアミノ酸の同一性は高ければ高いほど好ましい。あるいは、ここでいうPRDM14の改変体は、PRDM14のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が改変等されたアミノ酸配列からなるものであってもよい。

【0065】
[2.治療方法]
本発明の治療方法は、ヒトを治療する方法であって、
(1)TET1活性ドメイン若しくはその改変体、又はそれを含む融合ポリペプチド;及び
PRDM14活性ドメイン若しくはその改変体、又はそれを含む融合ポリペプチド
の細胞内含量を増加させる工程
を含む方法である。

【0066】
工程(1)は、1.において説明したのと同様である。

【0067】
本発明の治療方法は、好ましくは、エピゲノム変異を修復するDNAメチル化の異常に起因する疾患を治療する方法である。より好ましくは、がん、又は神経精神疾患を治療する方法である。神経精神疾患としては、エピゲノム変異を修復するDNAメチル化の異常に起因するものであれば特に限定されないが、例えば、双極性障害(躁うつ病)、反復うつ病、統合失調症等が挙げられる。

【0068】
本発明の治療方法においては、後述する4.ポリペプチド含有組成物、5.ポリヌクレオチド含有組成物、6.発現ベクター含有組成物及び7.共発現ベクターを用いることができる。本発明の治療方法においては、4.~7.のそれぞれを、医薬目的での使用方法として後述されるところに従って使用することができる。

【0069】
[3.iPS細胞の製造方法]
本発明のiPS細胞の製造方法としては、
[3A-1.] 核初期化物質を用いて体細胞からiPS細胞を製造する方法であって、(1)TET1活性ドメイン若しくはその改変体、又はそれを含む融合ポリペプチド;及び
PRDM14活性ドメイン若しくはその改変体、又はそれを含む融合ポリペプチド
の細胞内含量を増加させる工程
を含む方法が挙げられる。

【0070】
工程(1)は、1.において説明したのと同様である。

【0071】
本発明のiPS細胞の製造方法は、
(i)核初期化物質を体細胞に接触させることにより体細胞をiPS細胞に変換する工程を含む。かかる変換工程としては、公知のものを用いることができる。公知の変換工程としては、特に限定されないが、例えば、レトロウイルスを用いた感染、リポソーム法によるエピソーマルベクターの遺伝子導入等が挙げられる。

【0072】
核初期化物質を用いて体細胞からiPS細胞を製造する工程においては、高品質iPS細胞、低品質iPS細胞及びpre-iPS細胞からなる群より選択される少なくとも1種の細胞が得られることが知られている。ここで、高品質iPS細胞とはDNAメチル化の異常がみられないiPS細胞であると定義される。pre-iPS細胞とはリプログラミングが不完全な細胞であると定義される。pre-iPS細胞におけるリプログラミング不全は、ドナー細胞のエピゲノム情報が未だ維持されていることが原因であると考えられている。pre-iPS細胞とは、より詳細には、iPS細胞作成過程で出現するiPS細胞様細胞であって、形態的にはiPS細胞に似ているが、外来遺伝子の発現抑制は起きておらず、また内在性の多能性関連遺伝子(Nanog、Oct3/4、Rex-1等)の発現上昇も観察されない細胞である。また、低品質iPS細胞とはDNAメチル化に異常がみられるiPS細胞であると定義される。低品質iPS細胞とは、より詳細には、GTL2遺伝子領域に異常なメチル化が付加されており、テトラプロイドキメラ胚の作製を行うことができないiPS細胞である。本発明者は、iPS細胞の品質に悪影響を与えることが知られているDNAメチル化の異常を、本発明のDNA脱メチル化誘導方法によって正常化できることを見出した。具体的には、低品質iPS細胞にみられるDNAメチル化の異常を、本発明のDNA脱メチル化誘導方法によって正常化でき、低品質iPS細胞を高品質iPS細胞に改良できることを見出した。さらに本発明者は、本発明のDNA脱メチル化誘導方法によってpre-iPS細胞におけるリプログラミングを完全なものとできることを見出した。具体的には、pre-iPS細胞において維持されているドナー細胞のエピゲノム情報を本発明のDNA脱メチル化誘導方法によって消失せしめ、pre-iPS細胞をiPS細胞へと変換できることを見出した。したがって、低品質iPS細胞及びpre-iPS細胞に対して工程(1)を行うことによって、それぞれを高品質iPS細胞及びiPS細胞に変換できる。また、同様の効果を得るためには必ずしも低品質iPS細胞及びpre-iPS細胞に直接工程(1)を行う必要はない。例えば、体細胞に対して工程(1)を工程(i)と併せて行うことによっても同様の効果が得られる。

【0073】
以上の通り、工程(1)では、体細胞、低品質iPS細胞及びpre-iPS細胞からなる群より選択される少なくとも1種の細胞において、TET1活性ドメイン等融合ポリペプチド及びPRDM14活性ドメイン等融合ポリペプチドの細胞内含量を増加させる。

【0074】
したがって、変換工程(i)は、工程(1)の前に行ってもよいし、工程(1)と同時に行ってもよいし、あるいは工程(1)の後に行ってもよい。工程(i)を工程(1)の前に行う場合は、工程(1)を少なくとも低品質iPS細胞又はpre-iPS細胞に対して行うことになる。工程(i)を工程(1)と同時に、又は後に行う場合は、工程(1)を少なくとも体細胞に対して行うことになる。工程(i)を工程(1)と同時に行う場合、工程(1)は、言い換えれば、
(1A-1)TET1活性ドメイン若しくはその改変体、又はそれを含む融合ポリペプチド;及び
PRDM14活性ドメイン若しくはその改変体、又はそれを含む融合ポリペプチド
の体細胞内含量を増加させ、かつ
核初期化物質を体細胞に接触させることにより体細胞をiPS細胞に変換する工程
である。

【0075】
本発明のiPS細胞の製造方法としては、
[3A-2.] (I)核初期化物質を体細胞に接触させることにより体細胞を高品質iPS細胞、低品質iPS細胞及びpre-iPS細胞に変換する工程;
(II)工程(I)で得られた細胞の評価を行い、高品質iPS細胞、低品質iPS細胞及びpre-iPS細胞に選別する工程;及び
(III)工程(II)で選別された低品質iPS細胞及びpre-iPS細胞に対して、工程(1)を行う工程
を含む方法が挙げられる。

【0076】
GTL2遺伝子領域はゲノム刷り込み領域であり、通常父由来のゲノムのみがメチル化受けている。しかしながら、低品質iPS細胞では母由来・父由来の両ゲノム共にメチル化を受けており、この異常なメチル化がiPS細胞の品質低下の原因となっていると考えられている。また、本発明者はPRDM14が、GTL2遺伝子領域の異常なメチル化を消去する活性を持つことを見出した。本発明においては、GTL2遺伝子領域に80%以上メチル化が付加されているiPS細胞を低品質と定義し、PRDM14を導入することで60%以下に減少した場合品質が改善したと判断する。また、GTL2に異常なメチル化があると、GTL2の遺伝子発現が抑制される。そこで、低品質iPS細胞にPRDM14を導入することで、野生型ES細胞と同レベルまでGTL2の発現が回復したかどうかで、PRDM14による品質改善効果を迅速に検証できる。

【0077】
したがって、工程(II)においては、工程(I)で得られた細胞についてGTL2遺伝子領域のメチル化の程度を調べ、80%以上メチル化が付加されているiPS細胞を低品質と判定することにより、低品質iPS細胞を選別することができる。

【0078】
別の方法として、工程(II)においては、工程(I)で得られた細胞についてGTL2遺伝子の発現の程度を調べ、野生型ES細胞における同遺伝子の発現の程度との比較を行い、発現の程度がより低いiPS細胞を低品質と判定することにより、低品質iPS細胞を選別することができる。

【0079】
また、工程(II)においては、工程(I)で得られた細胞について内在性のNANOG遺伝子の発現の程度を調べ、発現が観察されないiPS細胞をpre-iPS細胞と判定することにより、pre-iPS細胞を選別することができる。
これらpre-iPS細胞及び低品質iPS細胞、並びにそれらの中間的な細胞、例えば、Nanogが弱陽性であり、かつGtl2が高メチル化されている細胞等、はいずれも初期化が不完全なiPS細胞といえ、再生医療などに適用する際には、排除すべきiPS細胞である。工程(II)において、高品質iPS細胞、低品質iPS細胞及びpre-iPS細胞に加えて、さらに上記のような中間的な細胞を選別してもよい。このように選別された中間的な細胞は、さらに工程(III)において低品質iPS細胞及びpre-iPS細胞に対するのと同様の処理を受ける。これにより、iPS細胞群の中からこのような初期化が不完全なiPS細胞の数を低減することができ、高品質なiPS細胞など初期化の完成度の高いiPS細胞を樹立することが可能となる。

【0080】
工程(II)における細胞の評価及び選別は、特に限定されないが、例えば、細胞をコロニー化した上で行うことができる。具体的には、単一の細胞からそれぞれ派生した個々のコロニーから一部の細胞をサンプリングし、その細胞を評価することによってその細胞が属するコロニーの評価を行い、かかる評価結果に基づいてコロニー単位での選別を行うことができる。

【0081】
工程(III)においては、工程(II)で選別されたpre-iPS細胞及び低品質iPS細胞に対して、工程(1)を行う。工程(II)で選別された低品質iPS細胞はDNAメチル化に異常がみられ、同様に選別されたpre-iPS細胞はリプログラミングが不完全である。工程(III)においてこれらの低品質iPS細胞及びpre-iPS細胞に対して工程(1)を行うことにより、低品質iPS細胞及びpre-iPS細胞をそれぞれ高品質iPS細胞及びiPS細胞へと変換することができる。工程(II)及び(III)は、必要な数の高品質iPS細胞が得られるまで、繰り返し行うことができる。繰り返し行う場合、工程(II)における「工程(I)で得られた細胞」なる記載は「工程(III)で得られた細胞」に読み替える。繰り返し行うことにより、より多くの低品質iPS細胞及びpre-iPS細胞をそれぞれ高品質iPS細胞及びiPS細胞へと変換することができ、ひいてはより多くの高品質iPS細胞を得ることができる。

【0082】
工程3A-2.においては、工程(III)における工程(1)を工程(i)と同時に行ってもよい。この場合は、工程(III)における工程(1)を、
(1A-2)TET1活性ドメイン若しくはその改変体、又はそれを含む融合ポリペプチド;及び
PRDM14活性ドメイン若しくはその改変体、又はそれを含む融合ポリペプチド
の低品質iPS細胞及びpre-iPS細胞における細胞内含量を増加させ、かつ
核初期化物質を低品質iPS細胞及びpre-iPS細胞に接触させる工程
であると言い換えることができる。

【0083】
工程3A-2.においては、工程(1)をまず体細胞に対して行い、続いて工程(II)で選別された低品質iPS細胞及びpre-iPS細胞に対して工程(1)を行ってもよい。この場合は、最初の工程(1)を工程(i)と同時に行ってもよい。この場合も、工程(I)を前記工程(1A-1)であると言い換えることができる。

【0084】
本発明のiPS細胞の製造方法としては、
[3B.] pre-iPS細胞に対して工程(1)を行うことにより、iPS細胞を得る方法が挙げられる。この場合、工程(1)は核初期化物質の存在下で行ってもよく、工程(1)を、
(1B)TET1活性ドメイン若しくはその改変体、又はそれを含む融合ポリペプチド;及び
PRDM14活性ドメイン若しくはその改変体、又はそれを含む融合ポリペプチド
のpre-iPS細胞内含量を増加させ、かつ
核初期化物質をpre-iPS細胞に接触させる工程
であると言い換えることができる。

【0085】
本発明のiPS細胞の製造方法としては、
[3C.] 低品質iPS細胞に対して工程(1)を行うことにより、高品質iPS細胞を得る方法が挙げられる。この場合、工程(1)は核初期化物質の存在下で行ってもよく、工程(1)を、
(1C)TET1活性ドメイン若しくはその改変体、又はそれを含む融合ポリペプチド;及び
PRDM14活性ドメイン若しくはその改変体、又はそれを含む融合ポリペプチド
の低品質iPS細胞内含量を増加させ、かつ
核初期化物質を低品質iPS細胞に接触させる工程
であると言い換えることができる。

【0086】
本発明のiPS細胞の製造方法において、体細胞としては、特に限定されないが、例えば、ヒト細胞、マウス細胞、サル等が挙げられる。

【0087】
本発明のiPS細胞の製造方法において、核初期化物質は、公知のものを用いることができる。核初期化物質としては、特に限定されないが、例えば、OCT4、SOX2、KLF4、MYC等が挙げられる。

【0088】
[4.ポリペプチド含有組成物]
本発明のポリペプチド含有組成物は、
(A-1)TET1活性ドメイン若しくはその改変体、又はそれを含む融合ポリペプチド;及び
(A-2)PRDM14活性ドメイン若しくはその改変体、又はそれを含む融合ポリペプチド
を含有する、組成物である。

【0089】
TET1活性ドメイン若しくはその改変体、又はそれを含む融合ポリペプチドは、1.において説明したのと同様である。

【0090】
PRDM14活性ドメイン若しくはその改変体、又はそれを含む融合ポリペプチドは、1.において説明したのと同様である。

【0091】
本発明のポリペプチド含有組成物は、例えば、1.で説明した通り、細胞内においてDNA脱メチル化を誘導するという用途に用いることができる。

【0092】
本発明のポリペプチド含有組成物は、具体的には、例えば、DNAメチル化の異常を有する細胞等に対して適用することによって、DNAメチル化を正常化するという用途に用いることができる。DNAメチル化の異常が何らかの疾患に関連しており、その正常化がかかる疾患の治療に結びつく場合は、本発明のポリペプチド含有組成物は、医薬として用いることができる。本発明のポリペプチド含有組成物は、より具体的には、例えば、エピゲノム変異を修復するDNAメチル化の異常に起因する疾患に対する治療剤として用いることができる。
なお、現在、抗癌剤として臨床試験されているアザシチジン(ビダーザ(登録商標))のようなDNA脱メチル化剤は、DNMT1によるメチル化の維持を阻害することで、DNA複製依存的(受動的)に脱メチル化を誘導するものであり、DNMT1はゲノム全体のメチル化を維持しているので、領域の選択性がなく、ゲノム全体を脱メチル化する結果、副作用が避けられない。これに対し、本発明のポリペプチド含有組成物を治療剤として用いる場合は、塩基除去修復を介して領域選択的にDNA脱メチル化を誘導することができるので、副作用の少ない治療剤を提供し得る。また上記既知DNA脱メチル化剤は分裂細胞に対して効果を有するに止まるが、本発明のポリペプチド含有組成物を治療剤として用いる場合は、非分裂細胞に対しても有効であるという優位性もある。
上記の治療剤としては、特に限定されないが、例えば、抗がん剤、神経精神疾患治療剤等が挙げられる。神経精神疾患治療剤としては、特に限定されないが、例えば、躁うつ病(双極性障害)治療剤、反復うつ病治療剤、統合性失調症等を挙げることができる。

【0093】
医薬として用いられる場合、本発明のポリペプチド含有組成物(この場合、以下「医薬用途ポリペプチド含有組成物」ということがある。)は、ポリペプチド(A-1)及び(A-2)をそれぞれ有効成分として含有する。本発明のポリペプチド含有組成物は、さらにこれら有効成分に加えて必要に応じてさらに他の成分を含んでいてもよい。そのような成分としては例えば、剤型に応じて製剤化のために必要となる製剤成分、保存安定のために必要となる保存安定成分、及びその他の有効成分等が挙げられる。その他の有効成分としては、例えば、抗炎症剤及び抗菌剤等が挙げられる。

【0094】
本発明の医薬用途ポリペプチド含有組成物におけるポリペプチド(A-1)及び(A-2)の含有割合は、投与形態、剤型、投与量及び投与頻度等に応じて決められる。

【0095】
本発明の医薬用途ポリペプチド含有組成物の投与形態は、適用対象患部等に応じて適宜設定される。全身的投与であってもよいし、局所的投与であってもよい。全身的投与としては、経口投与又は非経口投与が挙げられる。さらに非経口投与としては、静脈内注射、皮下注射及び筋肉内注射等が挙げられる。局所的投与としては、皮膚、粘膜、鼻内又は眼内等に対する投与を挙げることができる。

【0096】
本発明の医薬用途ポリペプチド含有組成物の剤型は、投与形態等に応じて適宜設定される。例えば、経口投与する場合、錠剤、顆粒、散剤、坐剤及びカプセル剤等の固形製剤や液状等が挙げられる。非経口投与する場合、クリーム剤、ゲル剤及び軟膏剤等の半固形状、並びに液剤及びローション剤等の液剤等が挙げられる。通常注射剤として投与するのが好ましい場合が多い。

【0097】
本発明の医薬用途ポリペプチド含有組成物の投与量及び投与頻度は、投与形態、投与方法及び剤型の他、被投与者の状態、並びにポリペプチド(A-1)及び(A-2)のDNA脱メチル化活性の程度等に応じて適宜設定される。適切な投与量及び投薬法は、当業者に公知の通常の投与量決定技術に従い決定することができる。

【0098】
一回あたりの投与量は治療有効量であればよい。

【0099】
本発明のポリペプチド含有組成物は、3.で説明した通り、iPS細胞を製造するという用途に用いることができる。言い換えれば、本発明のポリペプチド含有組成物は、iPS細胞の初期化完成度の向上剤又は品質改善剤として用いることができる。この場合、本発明のポリペプチド含有組成物は、ポリペプチド(A-1)及び(A-2)をそれぞれ有効成分として含有する。本発明のポリペプチド含有組成物は、さらにこれら有効成分に加えて必要に応じてさらに他の成分を含んでいてもよい。そのような成分としては例えば、剤型に応じて製剤化のために必要となる製剤成分、保存安定のために必要となる保存安定成分、及びその他の有効成分等が挙げられる。その他の有効成分としては、例えば、核初期化物質等が挙げられる。
核初期化物質としては、公知のものを用いることができる。

【0100】
[5.ポリヌクレオチド含有組成物]
本発明のポリヌクレオチド含有組成物は、
(α-1)TET1活性ドメイン若しくはその改変体、又はそれを含む融合ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;及び
(α-2)PRDM14活性ドメイン若しくはその改変体、又はそれを含む融合ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド
を含有する、組成物である。

【0101】
TET1活性ドメイン若しくはその改変体、又はそれを含む融合ポリペプチドは、1.において説明したのと同様である。

【0102】
PRDM14活性ドメイン若しくはその改変体、又はそれを含む融合ポリペプチドは、1.において説明したのと同様である。

【0103】
ポリヌクレオチドは、DNA又はRNAである。ポリヌクレオチドは、好ましくはDNAである。

【0104】
本発明のポリヌクレオチド含有組成物は、4.で説明した本発明のポリペプチド含有組成物と同じ用途に用いることができる。

【0105】
医薬として用いられる場合、本発明のポリヌクレオチド含有組成物(この場合、以下「医薬用途ポリヌクレオチド含有組成物」ということがある。)は、ポリヌクレオチド(α-1)及び(α-2)をそれぞれ有効成分として含有する。本発明のポリヌクレオチド含有組成物は、さらにこれら有効成分に加えて必要に応じてさらに他の成分を含んでいてもよい。そのような成分としては例えば、剤型に応じて製剤化のために必要となる製剤成分、保存安定のために必要となる保存安定成分、及びその他の有効成分等が挙げられる。その他の有効成分としては、例えば、抗炎症剤及び抗菌剤等が挙げられる。

【0106】
本発明の医薬用途ポリヌクレオチド含有組成物におけるポリヌクレオチド(α-1)及び(α-2)の含有割合は、投与形態、剤型、投与量及び投与頻度等に応じて決められる。

【0107】
本発明の医薬用途ポリヌクレオチド含有組成物の投与形態は、適用対象患部等に応じて適宜設定される。全身的投与であってもよいし、局所的投与であってもよい。全身的投与としては、経口投与又は非経口投与が挙げられる。さらに非経口投与としては、静脈内注射、皮下注射及び筋肉内注射等が挙げられる。局所的投与としては、皮膚、粘膜、鼻内又は眼内等に対する投与を挙げることができる。

【0108】
本発明の医薬用途ポリヌクレオチド含有組成物の剤型は、投与形態等に応じて適宜設定される。例えば、経口投与する場合、錠剤、顆粒、散剤、坐剤及びカプセル剤等の固形製剤や液状等が挙げられる。非経口投与する場合、クリーム剤、ゲル剤及び軟膏剤等の半固形状、並びに液剤及びローション剤等の液剤等が挙げられる。通常注射剤として投与するのが好ましい場合が多い。

【0109】
本発明の医薬用途ポリヌクレオチド含有組成物の投与量及び投与頻度は、投与形態、投与方法及び剤型の他、被投与者の状態、並びにポリヌクレオチド(α-1)及び(α-2)のDNA脱メチル化活性の程度等に応じて適宜設定される。適切な投与量及び投薬法は、当業者に公知の通常の投与量決定技術に従い決定することができる。

【0110】
一回あたりの投与量は治療有効量であればよい。

【0111】
本発明のポリヌクレオチド含有組成物は、3.で説明した通り、初期化の完成度がより向上したiPS細胞、とりわけ高品質のiPS細胞を製造するという用途に用いることができる。言い換えれば、本発明のポリヌクレオチド含有組成物は、iPS細胞の初期化完成度の向上剤又は品質改善剤として用いることができる。より具体的には、実施例で示されるように、pre—iPS細胞、低品質iPS細胞及びそれらの中間的な細胞などの、初期化が不完全なiPS細胞にPRDM14を発現させることでNanog領域の脱メチル化や異常メチル化の低減といったiPS細胞の初期化の完成度を高め、品質改善が達成される。この場合、本発明のポリペプチド含有組成物は、ポリヌクレオチド(α-1)及び(α-2)をそれぞれ有効成分として含有する。本発明のポリヌクレオチド含有組成物は、さらにこれら有効成分に加えて必要に応じてさらに他の成分を含んでいてもよい。そのような成分としては例えば、剤型に応じて製剤化のために必要となる製剤成分、保存安定のために必要となる保存安定成分、及びその他の有効成分等が挙げられる。その他の有効成分としては、例えば、核初期化物質等が挙げられる。核初期化物質としては、公知のものを用いることができる。

【0112】
[6.発現ベクター含有組成物]
本発明の発現ベクター含有組成物は、
(a-1)TET1活性ドメイン若しくはその改変体、又はそれを含む融合ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクター;及び
(a-2)PRDM14活性ドメイン若しくはその改変体、又はそれを含む融合ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクター
を含有する、組成物である。

【0113】
TET1活性ドメイン若しくはその改変体、又はそれを含む融合ポリペプチドは、1.において説明したのと同様である。

【0114】
PRDM14活性ドメイン若しくはその改変体、又はそれを含む融合ポリペプチドは、1.において説明したのと同様である。

【0115】
ポリヌクレオチドは、DNA又はRNAである。ポリヌクレオチドは、好ましくはDNAである。

【0116】
本発明の発現ベクター含有組成物は、例えば、1.で説明した通り、細胞内においてDNA脱メチル化を誘導するという用途に用いることができる。この場合、発現ベクター(a-1)及び(a-2)は、それぞれ併用したときにDNA脱メチル化を誘導するという作用を有していればよい。言い換えると、発現ベクター(a-1)は、TET1活性ドメイン等融合ポリペプチドに、TET1活性及びPRDM14活性を阻害しないか、あるいは著しく阻害しないアミノ酸又はポリペプチドがさらに付加されてなるポリペプチドを発現するベクターであってもよい。このような発現ベクターは、発現ベクター(a-2)と併用した際にTET1活性を発現し得、かつ発現ベクター(a-2)が発現するPRDM14活性を阻害しないので、本発明の効果を奏しうる。同様に、発現ベクター(a-2)は、PRDM14活性ドメイン等融合ポリペプチドに、TET1活性及びPRDM14活性を阻害しないか、あるいは著しく阻害しないアミノ酸又はポリペプチドがさらに付加されてなるポリペプチドを発現するベクターであってもよい。このような発現ベクターは、発現ベクター(a-1)と併用した際にPRDM14活性を発現し得、かつ発現ベクター(a-1)が発現するTET1活性を阻害しないので、本発明の効果を奏しうる。上述のように、TET1活性ドメイン等融合ポリペプチドに付加されていてもよいポリペプチドとしては、例えば、シグナルペプチド等が挙げられる。TET1活性ドメイン等融合ポリペプチドに付加されていてもよいポリペプチドの長さとしては、特に限定されないが、例えば、2~30個のアミノ酸、好ましくは2~10個のアミノ酸、より好ましくは2~7個のアミノ酸が挙げられる。また、上述のように、PRDM14活性ドメイン等融合ポリペプチドに付加されていてもよいポリペプチドとしては、例えば、シグナルペプチド等が挙げられる。PRDM14活性ドメイン等融合ポリペプチドに付加されていてもよいポリペプチドの長さとしては、特に限定されないが、例えば、2~30個のアミノ酸、好ましくは2~10個のアミノ酸、より好ましくは2~7個のアミノ酸が挙げられる。

【0117】
発現ベクターとしては、特に限定されず、公知のものを適宜用いることができる。例えば、pCAGGS-1 vector、pCDNA3.1 vector等が挙げられる。

【0118】
プロモーターとしては、特に限定されないが、一過的発現を企図する場合には例えばCMV、CAGGS等が挙げられる。また、恒常的発現を企図する場合にはpstein-Barr Virus(EBV)由来の複製起点OriPを持ち、かつEBV Nuclear Antigen 1(EBNA1)遺伝子を発現するエピソーマルベクターが挙げられる。

【0119】
本発明の発現ベクター含有組成物は、4.で説明した本発明のポリペプチド含有組成物と同じ用途に用いることができる。

【0120】
医薬として用いられる場合、本発明の発現ベクター含有組成物(この場合、以下「医薬用途発現ベクター含有組成物」ということがある。)は、発現ベクター(a-1)及び(a-2)をそれぞれ有効成分として含有する。本発明の発現ベクター含有組成物は、さらにこれら有効成分に加えて必要に応じてさらに他の成分を含んでいてもよい。そのような成分としては例えば、剤型に応じて製剤化のために必要となる製剤成分、保存安定のために必要となる保存安定成分、及びその他の有効成分等が挙げられる。その他の有効成分としては、例えば、抗炎症剤及び抗菌剤等が挙げられる。

【0121】
本発明の医薬用途発現ベクター含有組成物における発現ベクター(a-1)及び(a-2)の含有割合は、投与形態、剤型、投与量及び投与頻度等に応じて決められる。

【0122】
本発明の医薬用途発現ベクター含有組成物の投与形態は、適用対象患部等に応じて適宜設定される。全身的投与であってもよいし、局所的投与であってもよい。全身的投与としては、経口投与又は非経口投与が挙げられる。さらに非経口投与としては、静脈内注射、皮下注射及び筋肉内注射等が挙げられる。局所的投与としては、皮膚、粘膜、鼻内又は眼内等に対する投与を挙げることができる。

【0123】
本発明の医薬用途発現ベクター含有組成物の剤型は、投与形態等に応じて適宜設定される。例えば、経口投与する場合、錠剤、顆粒、散剤、坐剤及びカプセル剤等の固形製剤や液状等が挙げられる。非経口投与する場合、クリーム剤、ゲル剤及び軟膏剤等の半固形状、並びに液剤及びローション剤等の液剤等が挙げられる。通常注射剤として投与するのが好ましい場合が多い。

【0124】
本発明の医薬用途発現ベクター含有組成物の投与量及び投与頻度は、投与形態、投与方法及び剤型の他、被投与者の状態、並びに発現ベクター(a-1)及び(a-2)のDNA脱メチル化活性の程度等に応じて適宜設定される。適切な投与量及び投薬法は、当業者に公知の通常の投与量決定技術に従い決定することができる。

【0125】
一回あたりの投与量は治療有効量であればよい。

【0126】
本発明の発現ベクター含有組成物は、3.で説明した通り、iPS細胞を製造するという用途に用いることができる。言い換えれば、本発明の発現ベクター含有組成物は、iPS細胞の初期化完成度の向上剤又は品質改善剤として用いることができる。この場合、本発明の発現ベクター含有組成物は、発現ベクター(a-1)及び(a-2)をそれぞれ有効成分として含有する。本発明の発現ベクター含有組成物は、さらにこれら有効成分に加えて必要に応じてさらに他の成分を含んでいてもよい。そのような成分としては例えば、剤型に応じて製剤化のために必要となる製剤成分、保存安定のために必要となる保存安定成分、及びその他の有効成分等が挙げられる。その他の有効成分としては、例えば、核初期化物質等が挙げられる。
核初期化物質としては、公知のものを用いることができる。

【0127】
[7.共発現ベクター]
本発明の共発現ベクターは、
(b)TET1活性ドメイン若しくはその改変体、又はそれを含む融合ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;及び
PRDM14活性ドメイン若しくはその改変体、又はそれを含む融合ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド
を含む共発現ベクターである。

【0128】
TET1活性ドメイン若しくはその改変体、又はそれを含む融合ポリペプチドは、1.において説明したのと同様である。

【0129】
PRDM14活性ドメイン若しくはその改変体、又はそれを含む融合ポリペプチドは、1.において説明したのと同様である。

【0130】
ポリヌクレオチドは、DNA又はRNAである。ポリヌクレオチドは、好ましくはDNAである。

【0131】
本発明の共発現ベクター含有組成物は、例えば、1.で説明した通り、細胞内においてDNA脱メチル化を誘導するという用途に用いることができる。この場合、共発現ベクター(b)は、DNA脱メチル化を誘導するという作用を有していればよい。言い換えると、共発現ベクター(b)は、TET1活性ドメイン等融合ポリペプチドに、TET1活性及びPRDM14活性を阻害しないか、あるいは著しく阻害しないアミノ酸又はポリペプチドがさらに付加されてなるポリペプチドを発現し、かつ、PRDM14活性ドメイン等融合ポリペプチドに、TET1活性及びPRDM14活性を阻害しないか、あるいは著しく阻害しないアミノ酸又はポリペプチドがさらに付加されてなるポリペプチドを発現するベクターであってもよい。このような共発現ベクターは、TET1活性及びPRDM14活性を発現しうるので、本発明の効果を奏しうる。上述のように、TET1活性ドメイン等融合ポリペプチドに付加されていてもよいポリペプチドとしては、例えば、シグナルペプチド等が挙げられる。TET1活性ドメイン等融合ポリペプチドに付加されていてもよいポリペプチドの長さとしては、特に限定されないが、例えば、2~30個のアミノ酸、好ましくは2~10個のアミノ酸、より好ましくは2~7個のアミノ酸が挙げられる。また、上述のように、PRDM14活性ドメイン等融合ポリペプチドに付加されていてもよいポリペプチドとしては、例えば、シグナルペプチド等が挙げられる。PRDM14活性ドメイン等融合ポリペプチドに付加されていてもよいポリペプチドの長さとしては、特に限定されないが、例えば、2~30個のアミノ酸、好ましくは2~10個のアミノ酸、より好ましくは2~7個のアミノ酸が挙げられる。

【0132】
発現ベクターとしては、特に限定されず、公知のものを適宜用いることができる。例えば、pCAGGS-1 vector、pCDNA3.1 vector等が挙げられる。

【0133】
プロモーターとしては、特に限定されないが、一過的発現を企図する場合には例えばCMV、CAGGS等が挙げられる。また、恒常的発現を企図する場合にはpstein-Barr Virus(EBV)由来の複製起点OriPを持ち、かつEBV Nuclear Antigen 1(EBNA1)遺伝子を発現するエピソーマルベクターが挙げられる。

【0134】
本発明の共発現ベクター含有組成物は、4.で説明した本発明のポリペプチド含有組成物と同じ用途に用いることができる。

【0135】
医薬として用いられる場合、本発明の共発現ベクター含有組成物(この場合、以下「医薬用途共発現ベクター含有組成物」ということがある。)は、共発現ベクター(b)を有効成分として含有する。本発明の共発現ベクター含有組成物は、さらにこの有効成分に加えて必要に応じてさらに他の成分を含んでいてもよい。そのような成分としては例えば、剤型に応じて製剤化のために必要となる製剤成分、保存安定のために必要となる保存安定成分、及びその他の有効成分等が挙げられる。その他の有効成分としては、例えば、抗炎症剤及び抗菌剤等が挙げられる。

【0136】
本発明の医薬用途共発現ベクター含有組成物における共発現ベクター(b)の含有割合は、投与形態、剤型、投与量及び投与頻度等に応じて決められる。

【0137】
本発明の医薬用途共発現ベクター含有組成物の投与形態は、適用対象患部等に応じて適宜設定される。全身的投与であってもよいし、局所的投与であってもよい。全身的投与としては、経口投与又は非経口投与が挙げられる。さらに非経口投与としては、静脈内注射、皮下注射及び筋肉内注射等が挙げられる。局所的投与としては、皮膚、粘膜、鼻内又は眼内等に対する投与を挙げることができる。

【0138】
本発明の医薬用途共発現ベクター含有組成物の剤型は、投与形態等に応じて適宜設定される。例えば、経口投与する場合、錠剤、顆粒、散剤、坐剤及びカプセル剤等の固形製剤や液状等が挙げられる。非経口投与する場合、クリーム剤、ゲル剤及び軟膏剤等の半固形状、並びに液剤及びローション剤等の液剤等が挙げられる。通常注射剤として投与するのが好ましい場合が多い。

【0139】
本発明の医薬用途共発現ベクター含有組成物の投与量及び投与頻度は、投与形態、投与方法及び剤型の他、被投与者の状態、並びに共発現ベクター(b)のDNA脱メチル化活性の程度等に応じて適宜設定される。適切な投与量及び投薬法は、当業者に公知の通常の投与量決定技術に従い決定することができる。

【0140】
一回あたりの投与量は治療有効量であればよい。

【0141】
本発明の共発現ベクター含有組成物は、3.で説明した通り、iPS細胞を製造するという用途に用いることができる。言い換えれば、本発明の共発現ベクター含有組成物は、iPS細胞の初期化完成度の向上剤又は品質改善剤として用いることができる。この場合、本発明の共発現ベクター含有組成物は、共発現ベクター(b)を有効成分として含有する。本発明の共発現ベクター含有組成物は、さらにこの有効成分に加えて必要に応じてさらに他の成分を含んでいてもよい。そのような成分としては例えば、剤型に応じて製剤化のために必要となる製剤成分、保存安定のために必要となる保存安定成分、及びその他の有効成分等が挙げられる。
その他の有効成分としては、例えば、核初期化物質等が挙げられる。核初期化物質としては、公知のものを用いることができる。
【実施例】
【0142】
1.PRDM14によるLINE-1領域のDNA脱メチル化
PRDM14をES細胞に高発現させることで、ゲノム全体の脱メチル化を誘導できるかどうか検証するために、PRDM14高発現ES細胞におけるLINE-1のメチル化解析を行った。
【実施例】
【0143】
LINE-1とはトランスポゾン配列(外来性配列)であり、マウスのゲノムの約2割を占めているが(図1)、通常DNAのメチル化により発現が抑制されている。
【実施例】
【0144】
DNAのメチル化解析は、Bisulfite-Sequencing法により行った。ゲノムをBisulfite処理するとシトシンはウラシルへ変換されるが、メチル化シトシンは、メチル化シトシンとして残るため、シークエンスで配列を確認することで、ゲノム中のメチル化シトシンレベルを定量することができる。本実験では、LINE-1の5‘UTRに存在する9つのCpG siteのメチル化状態を解析した。図1において、青の棒グラフはそれぞれのCpG siteのメチル化量を、赤の棒グラフはCpG site全体のメチル化率を表している。
【実施例】
【0145】
実験方法、並びに結果及び考察は以下の通りである。
[実験方法]
(1)PRDM14高発現ES細胞の作製
CAGGSプロモーターの下流にPrdm14-ires-puroの遺伝子を挿入したプラスミドをリポフェクション法によりES細胞に遺伝子導入を行った。遺伝子導入48時間後ピューロマイシンで選別を行い、単一コロニーをピックアップし継代・培養を行った。ピックアップ細胞からRNAを抽出し、定量的RT-PCR法によりPrdm14の発現を確認し、コントロール(空ベクター導入)ES細胞と比較し50倍以上発現している細胞をPrdm14高発現ES細胞とした。
(2)DNAのメチル化解析
コントロールES細胞及びPRDM14高発現ES細胞からゲノムDNAを単離し、亜硫酸処理により非メチル化シトシンのウラシルへの変換を行った。このDNAを鋳型としてLINE-1の配列に対するプライマーを用いてPCRを行い、増幅産物をTAベクターにクローニングした後に、シーケンスで配列を確認した。非メチル化シトシンは最終的にはTへと置換されるがメチル化シトシンはシトシンとして残るため、CG部位がTGの場合非メチル化、CGの場合メチル化と判定した。
[結果及び考察]
野生型ES細胞で約8割程度のCpG siteがメチル化されていたのに対して、PRDM14高発現ES細胞(PRDM14 O.E.)では、約3割程度しかメチル化されておらず、PRDM14をES細胞に高発現させることで、LINE-1領域の顕著な脱メチル化を誘導できることが明らかとなった。
2.PRDM14による広範囲にわたる遺伝子領域のDNA脱メチル化
PRDM14によるDNA脱メチル化でどの程度の遺伝子領域が影響を受けるのか検証するために、ゲノムにDNAのメチル化をほとんど持たない、DNAメチル化酵素の欠損ES細胞 (Dnmts TKO)と遺伝子発現プロファイルの比較をマイクロアレイにより解析した。
【実施例】
【0146】
実験方法、並びに結果及び考察は以下の通りである。
[実験方法]
(1)マイクロアレイによる解析
コントロールES細胞、PRDM14高発現ES細胞及びDnmts TK ES細胞よりRNAを抽出して、Agilent社のマウスwhole genome マイクロアレイプラットフォームを用いて解析を行った。PRDM14高発現ES細胞及びDnmts TKO ES細胞において、野生型ES細胞より2倍以上発現している遺伝子群を抽出し、Biovennを用いてVenn diagramを作製した。
[結果及び考察]
Dnmts TKOES細胞で発現が上昇した遺伝子の約35%が、PRDM14 O.E. ES細胞でも発現が上昇しており(図2)、この結果は、PRDM14が約35%の遺伝子領域のDNA脱メチル化を誘導していることを示唆している。
3.PRDM14とヒドロキシメチル化を介したDNA脱メチル化
メチル化シトシンのヒドロキシル化を引き金としたDNA脱メチル化経路を図3に示す。DNAメチル化酵素の働きによって生じたメチル化シトシンは、TETタンパク質によりヒドロキシル化を受けヒドロキシメチル化シトシンへ変換される。ヒドロキシメチル化シトシンは、脱アミノ化酵素によってヒドロキシメチル化ウラシルへと変換され、最終的には塩基除去修復経路によりシトシンへと脱メチル化される。PRDM14が、この経路を促進することでDNA脱メチル化を誘導している可能性を検証するために、PRDM14高発現ES細胞におけるゲノム全体のメチル化シトシン、及びヒドロキシメチル化シトシンの量を定量した。
【実施例】
【0147】
それぞれのゲノムをニトロセルロース膜に吸着させ、その後抗メチル化シトシン抗体もしくは抗ヒドロキシメチル化シトシン抗体を用いてDot blotを行った。
【実施例】
【0148】
実験方法、並びに結果及び考察は以下の通りである。
[実験方法]
(1)ゲノムの調製
ゲノムDNAは、Promega社のWizard SV Genomic DNA purification systemを用いてプロトコールに従って調製した。
(2)Dot blot
ゲノムDNAを95℃で変性させた後に、ニトロセルロース膜に吸着させ、その後抗メチル化シトシン抗体もしくは抗ヒドロキシメチル化シトシン抗体を用いてDot blotを行った。検出にはHRP標識した2次抗体を用いた。
[結果及び考察]
Dnmts KO ES細胞では、メチル化シトシン、ヒドロキシメチル化シトシン共にゲノム中の量が減少していたのに対して、PRDM14 O.E. ES細胞では、メチル化シトシンは減少していたが、ヒドロキシメチル化シトシンの量は反対に上昇していた(図4)。したがってPRDM14はメチル化シトシンのヒドロキシメチル化を促進することで、DNA脱メチル化を誘導している可能性が考えられる。
4.PRDM14によるDNA脱メチル化における塩基除去修復
PRDM14が、図3の経路を促進することでDNA脱メチル化を誘導しているならば、PRDM14によるDNA脱メチル化は塩基除去修復阻害剤でキャンセルされるはずである。そこで、PRDM14によるDNA脱メチル化による遺伝子発現上昇が、塩基除去修復阻害投与により阻害されるか否か検証した。塩基除去修復阻害剤には、塩基除去修復の主要な因子であるPARP1及びAPE1の阻害剤を用いた(それぞれ3AB及びCRT)。
【実施例】
【0149】
実験方法、並びに結果及び考察は以下の通りである。
[実験方法]
Empty vector及びPrdm14発現VectorをES細胞に導入し、薬剤選別によりPrdm14陽性細胞濃縮させ、6日間培養する。6日間培養したES細胞からRNAを回収し、定量的RT-PCR法を用いて標的遺伝子の発現変化を、Empty vector導入細胞とPrdm14 vector導入細胞間で比較した。
[結果及び考察]
3AB及びCRTをそれぞれ投与することにより、PRDM14により発現誘導を受ける遺伝子の大部分の発現誘導が抑制されることが明らかになった(図5)。本実験の結果から、PRDM14が、図3の経路を促進することでDNA脱メチル化を誘導していることが示された。一方、体細胞は本来TET1を有しないことが知られているが、TET1を体細胞において過剰発現させることによって、5-メチルシトシン(5-mC)から5-ヒドロキシメチルシトシンへの変換が起こることが報告されている(Science Vol. 324, 15 May, 2009, pp.930-935)。3.の実験結果と考え合わせると、体細胞においてTET1とPRDM14の細胞内含量を増加させることによって、TET1だけの細胞内含量を増加させた場合に比べて5-ヒドロキシメチルシトシンへの変換がより促進され、ひいてはDNA脱メチル化がより促進されることが示された。
5.PRDM14によるDNA脱メチル化を介した多能性幹細胞の誘導
iPS細胞は山中ファクター(OCT4、SOX2、KLF4及びMYC;総称して「OSKM」ということがある。)を繊維芽細胞に導入することで樹立することができる。
樹立の過程でリプログラミングが不完全なpre-iPS細胞や、低品質iPS細胞が出現するが、これらの細胞におけるリプログラミング不全は、ドナー細胞(繊維芽細胞等)のエピゲノム情報の維持が原因であると考えられている(図6)。
【実施例】
【0150】
本実験では、ES細胞を分化させて作製するエピブラスト様細胞(EpiLC)にPRDM14を発現させることによる、ES細胞への影響を調べた。ES細胞は、サイトカインであるLIF存在下では自己複製を行うことができるが、0.1%KSR、bFGF及びACTIVIN A存在下で培養することで、in vitroのエピブラスト(胎生6.5日胚)に性質の近いEpiLCsへ分化誘導することができる。EpiLCsを再びES細胞培養液で培養すると細胞はさらに分化するが、本実験では、EpiLCsにPRDM14を発現させた後にES細胞培養液で培養するとEpiLCsにどのような変化が観察されるかを確認した。
【実施例】
【0151】
実験方法、並びに結果及び考察は以下の通りである。
[実験方法]
テトラサイクリン非存在下でPRDM14を発現するPRDM14誘導性ES細胞を用いた。ES細胞をフィブロネクチンコートシャーレ上で、0.1%KSR、bFGF及びACTIVIN A存在下で2日間培養する。その後、テトラサイクリン存在下・非存在下でさらに2日間培養し、ES細胞培養液(LIF存在下)に懸濁し継代した。培養開始0、2、4日後にRNAを回収し、Oct3/4, Sox2,Klf2の遺伝子発現変化を定量的RT-PCRにて定量した。また、ES細胞培地で継代した細胞を3日間培養し、4% PFAで固定後アルカリフォスファターゼ染色によりES細胞を判定した。
[結果及び考察]
EpiLCsにPRDM14を発現させた後にES細胞培養液で培養するとES細胞様コロニー(アルカリフォスファターゼ陽性:AP陽性)が出現した。また多能性関連遺伝子であるKlf2の発現量が増加することが確認された。(図7)。したがって、PRDM14には多能性を消失した細胞に多能性を付与する活性があることが示された。
また、EpiLCsからES細胞に脱分化する過程において、Klf2領域の5hmCが上昇し、5mCが減少していた。これらの結果から、PRDM14がTET1と協調して5hmCを介したDNA脱メチル化を行うことで、EpiLCsからES細胞への脱分化を誘導していることが示唆された。
6.体細胞におけるTET1・PERDM14共発現によるDNA脱メチルの誘導
[実験方法]
Empty vector、Tet1発現Vector、Prdm14発現VectorをHEK293細胞に導入し、薬剤選別によりPrdm14陽性細胞を濃縮させ、4日間培養した。4日間培養したHEK293細胞からゲノムDNAを回収し、その後メチル化感受性酵素HpaIIの処理を行った。HpaIIは、CCGG部位を認識して切断する制限酵素であるが、メチル化されていると切断することができない。HpaII未処理、処理のゲノムDNAを鋳型として、LINE-1領域に対するプライマーを設計して定量的PCRを行った。HpaII未処理のPCR増幅曲線からHpaII処理の増幅曲線のThreshold Cycle (Ct)を引くことで、それぞれの細胞におけるLINE-1領域のメチル化状態を定量した。
[結果及び考察]
TET1単独及びPRDM14単独ではLINE-1領域の脱メチル化は誘導できなかったが、TET1とPRDM14を共に発現させることで、有意な脱メチル化が観察された(図8)。
7.PRDM14とTET1の共発現によるDNA脱メチル化誘導
ES細胞にPRDM14を発現させることで、LINE-1領域の脱メチル化が観察された。ES細胞は内在性のTET1を高発現しているが、ヒト胎児腎臓由来の細胞株であるHEK293細胞はTET1の発現がほとんど観察されない。そこで、HEK293細胞において、PRDM14又はTET1をそれぞれ単独で発現させ、あるいはPRDM14とTET1を共発現させ、それぞれの細胞においてLINE-1領域のメチル化変動を調べることにより、PRDM14とTET1の併用効果を検証した。
[実験方法]
(1)DNAのメチル化解析
コントロール細胞、PRDM14を高発現する細胞、TET1を高発現する細胞、PRDM14及びTET1を高発現する細胞(全てHE293細胞)からゲノムDNAを単離し、亜硫酸処理により非メチル化シトシンのウラシルへの変換を行った。このDNAを鋳型としてLINE-1の配列に対するプライマーを用いてPCRを行い、増幅産物をTAベクターにクローニングした後に、シーケンスで配列を確認した。非メチル化シトシンは最終的にはTへと置換されるがメチル化シトシンはシトシンとして残るため、CG部位がTGの場合非メチル化、CGの場合メチル化と判定した。また、上記の亜硫酸処理によるDNAメチル化解析では、5-メチルシトシンと5-ヒドロキシメチルシトシンを区別することができない。そこで、グルコース転移酵素を用いた検出方法で5-メチルシトシンと5-ヒドロキシメチルシトシンの識別を行った。
それぞれの細胞からゲノムDNAを回収した後に、ゲノムDNAをグルコシルトランスフェラーゼと基質のグルコースと反応させる。5-メチルシトシンにはグルコースは転移しないが、5-ヒドロキシメチルシトシンにはグルコースが転移される。グルコースが転移された5-ヒドロキシメチルシトシンを含むCCGG配列は制限酵素であるMsp Iで切断することができない。HpaIIとMspIで切断後、CCGG配列を挟んで増幅するプライマーを用いて定量的PCRを行い、5-メチルシトシンおよび5-ヒドロキシメチルシトシンの量を定量した(この定量的PCRのことを以下、「GlucMS-qPCR」と呼ぶ。)。
(2)定量的RT-PCR
コントロール細胞、PRDM14を高発現する細胞、TET1を高発現する細胞、PRDM14及びTET1を高発現する細胞(全てHE293細胞)から、mRNAを抽出し逆転写反応によりcDNAを作製した。このcDNAを鋳型としてLINE-1に対するプライマー用いて定量的PCRを行い、それぞれの細胞におけるLINE-1の転写量を測定した。
[結果及び考察]
コントロール細胞、PRDM14を高発現する細胞、TET1を高発現する細胞、PRDM14及びTET1を高発現する細胞のLINE-1領域のメチル化状態を解析した結果、PRDM14を高発現する細胞、TET1を高発現する細胞と比較して、PRDM14及びTET1を高発現する細胞において顕著な脱メチル化が観察された(図9)。また、5-メチルシトシンと5-ヒドロキシメチルシトシンの量を比較したところ、PRDM14及びTET1を高発現する細胞では5-メチルシトシンのみの脱メチル化が観察された(図10)。さらに、PRDM14及びTET1を高発現する細胞ではLINE-1の顕著な発現誘導も観察された(図11)。これらの結果から、PRDM14とTET1を組み合わせることで、LINE-1領域の脱メチル化を誘導できることが明らかとなった。
8.PRDM14によるDNA脱メチル化おけるTet1及びTet2(以下Tet1/2と記載する)の機能解析
ES細胞には内在的なTet1/2が高発現している。PRDM14によるDNA脱メチル化にTet1/2が機能的に必要か否か検証するために、Tet1/2ダブルノックダウンES細胞にPRDM14を発現させ、脱メチル化によって発現上昇する遺伝子の発現と、プロモーター領域のメチル化変化を解析した。
[実験方法]
(1)Prdm14誘導的発現ES細胞の樹立
ES細胞にドキシサイクリン存在下で活性を持つtTAをコードしたプラスミドと、tTAの制御領域の下流にPrdm14の遺伝子を挿入したプラスミドをトランスフェクションし、薬剤選別を行うことでドキシサイクリン誘導性Prdm14発現ES細胞の樹立を行った。
(2)Tet1/2ノックダウン/ドキシサイクリン誘導性Prdm14発現ES細胞の樹立
(1)で作製したドキシサイクリン誘導性Prdm14発現ES細胞に、Tet1/2に対するshRNAを発現するレンチウイルスを感染させ、Tet1/2ノックダウン/ドキシサイクリン誘導性Prdm14発現ES細胞を樹立した。
[結果及び考察]
結果を図12に示す。コントロールES細胞及びTet1/2ノックダウンES細胞にPrdm14を誘導的に発現させ、Slc25a31およびPiwil2の発現変化を定量的RT-PCRで解析した。その結果、コントロール細胞ではSlc25a31およびPiwil2ともに顕著な発現上昇が観察されたのに対して、Tet1/2ノックダウン細胞では発現上昇の抑制が観察された。また、Slc25a31およびPiwil2のプロモーター領域の5-メチルシトシン、5-ヒドロキシメチルシトシンの量を解析したところ、コントロール細胞では5-メチルシトシンの減少が観察されたが、Tet1/2ノックダウンES細胞では脱メチル化が不完全であった。これらの結果から、PRDM14によるDNA脱メチル化誘導にはTET1/2の機能が必須であり、PRDM14とTETの組み合わせが効率的な脱メチル化誘導に必要であることが示された。
9.PRDM14による低品質iPS細胞の品質改善
PRDM14によるDNA脱メチル化誘導活性をiPS細胞の品質改善への応用の可能性を検証した。iPS細胞は株間ごとに性質が大きく異なり、分化の方向性の偏りや分化抵抗性などの問題が報告されている。今回、多能性誘導因子であるNanog遺伝子の発現が低い低品質iPS細胞にPrdm14を発現させることで、品質改善の可能性を検証した。
[実験方法]
Oct4、Sox2、Klf4及びc-mycをレトロウイルスを用いて、Nanogの発現をGFPで可視化することができる、Nanog-EGFP-Ires-Puroトランスジェニックマウスから樹立した胎児繊維芽細胞に発現させた。培養後、ES細胞と形態が酷似しているが、EGFPの発現が低い細胞(低品質iPS細胞)を樹立した。その後、ドキシサイクリン誘導性Prdm14高発現低品質iPS細胞を作製し、Prdm14の発現誘導に伴うEGFPの発現変動、遺伝子発現変動を解析した。また、Nanog遺伝子のプロモーター領域のメチル化状態は、GlucMS-qPCRで定量した。
[結果及び考察]
結果を図13~15に示す。Prdm14の発現誘導に伴い、多能性誘導因子NanogおよびKlf2の発現上昇が観察された(図14)。また、低品質iPS細胞ではTet1/2の高発現が観察されたため、Prdm14がTet1/2と協調してDNA脱メチル化誘導を行っている可能性が考えられた。そこで、Nanogプロモーター領域のメチル化解析を行った結果、Prdm14の発現誘導に伴いDNAメチル化の減少が観察された(図15)。これらの結果は、PRDM14とTETを組み合わせることで、低品質iPS細胞の異常メチル化を修復できることを示している。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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