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明細書 :薄膜トランジスタ及び薄膜トランジスタの製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5496995号 (P5496995)
公開番号 特開2013-131685 (P2013-131685A)
登録日 平成26年3月14日(2014.3.14)
発行日 平成26年5月21日(2014.5.21)
公開日 平成25年7月4日(2013.7.4)
発明の名称または考案の名称 薄膜トランジスタ及び薄膜トランジスタの製造方法
国際特許分類 H01L  29/786       (2006.01)
H01L  21/316       (2006.01)
FI H01L 29/78 617T
H01L 29/78 618B
H01L 21/316 C
請求項の数または発明の数 11
全頁数 18
出願番号 特願2011-281464 (P2011-281464)
出願日 平成23年12月22日(2011.12.22)
審査請求日 平成25年4月8日(2013.4.8)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
【識別番号】000006264
【氏名又は名称】三菱マテリアル株式会社
【識別番号】597065282
【氏名又は名称】三菱マテリアル電子化成株式会社
発明者または考案者 【氏名】下田 達也
【氏名】塚田 博一
【氏名】宮迫 毅明
個別代理人の代理人 【識別番号】100125450、【弁理士】、【氏名又は名称】河野 広明
審査官 【審査官】竹口 泰裕
参考文献・文献 特開2006-121029(JP,A)
国際公開第2007/010921(WO,A1)
特開2011-216845(JP,A)
国際公開第2011/138958(WO,A1)
調査した分野 H01L21/312-21/32
21/336
21/47-21/475
29/786
特許請求の範囲 【請求項1】
ゲート電極とチャネルとの間に、
ランタン(La)を含む前駆体及びタンタル(Ta)を含む前駆体を溶質とする前駆体溶液を出発材とする前駆体層の状態で塩酸又はその蒸気に曝された後に形成された表面を有する、ランタン(La)とタンタル(Ta)とからなる酸化物層(不可避不純物を含み得る)を備え、かつ
前記表面が前記チャネルに接する、
薄膜トランジスタ。
【請求項2】
ゲート電極とチャネルとの間に、
ランタン(La)を含む前駆体及びタンタル(Ta)を含む前駆体を溶質とする前駆体溶液を出発材とする前駆体層の状態で塩酸の蒸気と硝酸の蒸気との混合蒸気に曝された後に形成された表面を有する、ランタン(La)とタンタル(Ta)とからなる酸化物層(不可避不純物を含み得る)を備え、かつ
前記表面が前記チャネルに接する、
薄膜トランジスタ。
【請求項3】
前記塩酸の蒸気が、前記塩酸が沸騰することによって生成された蒸気である、
請求項1に記載の薄膜トランジスタ。
【請求項4】
前記混合蒸気が、前記塩酸及び前記硝酸が沸騰することによって生成された蒸気である、
請求項2に記載の薄膜トランジスタ。
【請求項5】
前記チャネルが、酸化インジウム層(不可避不純物を含み得る)である、
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の薄膜トランジスタ。
【請求項6】
ランタン(La)を含む前駆体及びタンタル(Ta)を含む前駆体を溶質とする第1前駆体溶液を出発材とする第1前駆体層の一方の表面を塩酸又はその蒸気に曝す曝露工程と、
前記前駆体層を、酸素含有雰囲気中において加熱することにより、前記ランタン(La)と前記タンタル(Ta)とからなる酸化物層(不可避不純物を含み得る)を形成する第1酸化物層形成工程と、を
ゲート電極層形成工程とチャネル用酸化物(不可避不純物を含み得る)を形成するチャネル形成工程との間に含む、
薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項7】
ランタン(La)を含む前駆体及びタンタル(Ta)を含む前駆体を溶質とする第1前駆体溶液を出発材とする第1前駆体層の一方の表面を塩酸の蒸気と硝酸の蒸気との混合蒸気に曝す曝露工程と、
前記前駆体層を、酸素含有雰囲気中において加熱することにより、前記ランタン(La)と前記タンタル(Ta)とからなる酸化物層(不可避不純物を含み得る)を形成する第1酸化物層形成工程と、を
ゲート電極層形成工程とチャネル用酸化物(不可避不純物を含み得る)を形成するチャネル形成工程との間に含む、
薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項8】
前記塩酸の蒸気が、前記塩酸が沸騰することによって生成された蒸気である、
請求項6に記載の薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項9】
前記混合蒸気が、前記塩酸及び前記硝酸が沸騰することによって生成された蒸気である、
請求項7に記載の薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項10】
前記塩酸、前記塩酸の蒸気、又は前記混合蒸気が60℃以上500℃以下に加熱された状態で、前記曝露工程が行われる、
請求項6乃至請求項9のいずれか1項に記載の薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項11】
前記チャネル形成工程が、インジウム(In)を含む前駆体を溶質とする第2前駆体溶液を出発材とする第2前駆体層を、酸素含有雰囲気中において加熱することにより、酸化インジウム層(不可避不純物を含み得る)を形成する工程である、
請求項6乃至請求項10のいずれか1項に記載の薄膜トランジスタの製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、薄膜トランジスタ及び薄膜トランジスタの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、低い駆動電圧で高速にスイッチングすることを目的として、ゲート絶縁層として強誘電体材料(例えば、BLT(Bi4-XLaTi12)、PZT(Pb(Zr,Ti1-X)O))を採用した薄膜トランジスタが開示されている。一方、キャリア濃度を高くすることを目的として、酸化物導電性材料(例えば、インジウム錫酸化物(ITO)、酸化亜鉛(ZnO)、あるいはLSCO(LaSr1-XCuO))をチャネル層として採用した薄膜トランジスタも開示されている(特許文献1)。
【0003】
ここで、上述の薄膜トランジスタの製造方法について見てみると、まず、ゲート電極としてTi及びPtの積層膜が、電子ビーム蒸着法により形成されている。そのゲート電極上に、ゾルゲル法によって上述のBLT又はPZTからなるゲート絶縁層が形成される。さらに、そのゲート絶縁層上には、RFスパッタ法により、ITOからなるチャネル層が形成される。続いて、そのチャネル層上にTi及びPtが電子ビーム蒸着法によって形成されることにより、ソース電極とドレイン電極とが形成される。その後、RIE法及びウェットエッチング法(HFとHClと混合溶液)により、素子領域が他の素子領域から分離されることになる(特許文献1)。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特開2006-121029号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の薄膜トランジスタでは、ゲート絶縁層又はチャネルが複合酸化物によって形成された例は幾つか存在するが、薄膜トランジスタとしての高い特性を実現する材料及びそのための適切な製造方法の選定は、未だ道半ばである。特に、これまでに広く採用されてきたゲート絶縁膜等は、真空プロセスやフォトリソグラフィー法を用いたプロセス等、比較的長時間、及び/又は高価な設備を要するプロセスによって形成されるのが一般的であるため、原材料や製造エネルギーの使用効率が非常に悪くなる。このような製造方法が採用された場合、薄膜トランジスタを製造するために多くの処理と長時間を要するため、工業性ないし量産性の観点から好ましくない。また、従来技術には、大面積化が比較的困難であるという問題も存在する。
【0006】
本発明は、上述の諸問題の少なくとも1つを解決することにより、ゲート絶縁層として酸化物層を用いた薄膜トランジスタの高性能化、又はそのような薄膜トランジスタの製造プロセスの簡素化と省エネルギー化を実現する。その結果、本発明は、工業性ないし量産性に優れた薄膜トランジスタの提供に大きく貢献するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明者らは、数多く存在する酸化物の中から、ゲート絶縁膜としての機能を適切に発揮させる酸化物を選定すべく鋭意研究と分析を重ねた。例えば、ゲート絶縁層としての重要な資質の1つであるリーク電流の低い酸化物層であっても、いわゆる電子移動度が低いためにその適性を欠く材料が存在する。従って、低いリーク電流とともに、トランジスタを構成した際に高い電子移動度を備える酸化物を見出すことは容易ではない。加えて、従来と比較してその酸化物の製造の容易化が図られなければ、産業界にとって魅力的なものとは言えない。
【0008】
しかしながら、本願発明者らが上述の問題を解決すべく研究開発に鋭意取り組んだ結果、新たな事象が見出された。それは、たとえ一般的に電子移動度が低い材料であることが知られている酸化物であっても、ある特定の酸化物の前駆体に対して、特殊な処理を施す、より具体的には酸の蒸気に曝すことにより、その移動度を格段に高めることが可能であるという知見である。また、本願発明者らは、その酸化物を採用した薄膜トランジスタが、トランジスタとして機能し得る、又は機能するのに十分なドレイン電流のON/OFF比が得られることも見出した。加えて、その酸化物は、従来と比べて容易に製造し得るものであることも併せて見出された。本発明は上述の知見に基づいて創出された。
【0009】
本発明の1つの薄膜トランジスタは、ゲート電極とチャネルとの間に、ランタン(La)を含む前駆体及びタンタル(Ta)を含む前駆体を溶質とする前駆体溶液を出発材とする前駆体層の状態で塩酸又はその蒸気に曝された後に形成された表面を有する、ランタン(La)とタンタル(Ta)とからなる酸化物層(不可避不純物を含み得る)を備えている。加えて、この薄膜トランジスタにおいては、前述の酸化物層の表面が前述のチャネルに接している。
【0010】
この薄膜トランジスタによれば、上述のように、所定の酸化物の前駆体の表面を酸の蒸気に曝すことより、未だそのメカニズムは明らかにされていないが、その表面を含む前駆体の改質と考えられる作用が働くことにより、最終的に得られる酸化物層の絶縁層としての機能が向上し得る。特に、上述の酸化物層を備える薄膜トランジスタは、低いリーク電流を実現するとともに、チャネルとの界面が影響する電気特性であると考えられる電子移動度の格段の向上を実現し得る。
【0011】
また、本発明のもう1つの薄膜トランジスタは、ゲート電極とチャネルとの間に、ランタン(La)を含む前駆体及びタンタル(Ta)を含む前駆体を溶質とする前駆体溶液を出発材とする前駆体層の状態で塩酸の蒸気と硝酸の蒸気との混合蒸気に曝された後に形成された表面を有する、ランタン(La)とタンタル(Ta)とからなる酸化物層(不可避不純物を含み得る)を備えている。加えて、この薄膜トランジスタにおいては、前述の酸化物層の表面が前述のチャネルに接している。
【0012】
この薄膜トランジスタによれば、上述のように、所定の酸化物の前駆体の表面を酸の蒸気に曝すことより、未だそのメカニズムは明らかにされていないが、その表面を含む前駆体の改質と考えられる作用が働くことにより、最終的に得られる酸化物層の絶縁層としての機能が向上し得る。特に、上述の酸化物層を備える薄膜トランジスタは、低いリーク電流を実現するとともに、チャネルとの界面が影響する電気特性であると考えられる電子移動度の格段の向上を実現し得る。
【0013】
上述の各薄膜トランジスタの別態様として、さらに、上述のチャネルが、酸化インジウム層(不可避不純物を含み得る)であることは、好ましい一態様である。これにより、ゲート絶縁層及びチャネルが酸化物によって形成された高性能の薄膜トランジスタが実現される。
【0014】
また、本発明の1つの薄膜トランジスタの製造方法は、次の(1)及び(2)の各工程を、ゲート電極層形成工程とチャネル用酸化物(不可避不純物を含み得る)を形成するチャネル形成工程との間に含んでいる。
(1)ランタン(La)を含む前駆体及びタンタル(Ta)を含む前駆体を溶質とする第1前駆体溶液を出発材とする第1前駆体層の一方の表面を塩酸又はその蒸気に曝す曝露工程
(2)前述の前駆体層を、酸素含有雰囲気中において加熱することにより、前述のランタン(La)と前述のタンタル(Ta)とからなる酸化物層(不可避不純物を含み得る)を形成する第1酸化物層形成工程
なお、各工程の間に基板の移動や検査等の本発明の要旨とは関係のない工程が行われることを妨げるものではない。
【0015】
この薄膜トランジスタの製造方法によれば、フォトリソグラフィー法を用いない比較的簡素な処理(例えば、インクジェット法、スクリーン印刷法、凹版/凸版印刷法、又はナノインプリント法)によって第1酸化物層が形成され得る。加えて、大面積化も容易である。従って、この薄膜トランジスタの製造方法によれば、工業性ないし量産性に優れた薄膜トランジスタの製造方法を提供することができる。
【0016】
また、本発明のもう1つの薄膜トランジスタの製造方法は、次の(1)及び(2)の各工程を、ゲート電極層形成工程とチャネル用酸化物(不可避不純物を含み得る)を形成するチャネル形成工程との間に含んでいる。
(1)ランタン(La)を含む前駆体及びタンタル(Ta)を含む前駆体を溶質とする第1前駆体溶液を出発材とする第1前駆体層の一方の表面を塩酸の蒸気と硝酸の蒸気との混合蒸気に曝す曝露工程
(2)前述の前駆体層を、酸素含有雰囲気中において加熱することにより、前述のランタン(La)と前述のタンタル(Ta)とからなる酸化物層(不可避不純物を含み得る)を形成する第1酸化物層形成工程
なお、各工程の間に基板の移動や検査等の本発明の要旨とは関係のない工程が行われることを妨げるものではない。
【0017】
この薄膜トランジスタの製造方法によれば、フォトリソグラフィー法を用いない比較的簡素な処理(例えば、インクジェット法、スクリーン印刷法、凹版/凸版印刷法、又はナノインプリント法)によって第1酸化物層が形成され得る。加えて、大面積化も容易である。従って、この薄膜トランジスタの製造方法によれば、工業性ないし量産性に優れた薄膜トランジスタの製造方法を提供することができる。
【0018】
また、上述の各薄膜トランジスタの製造方法の別態様として、さらに、前述のチャネル形成工程が、インジウム(In)を含む前駆体を溶質とする第2前駆体溶液を出発材とする第2前駆体層を、酸素含有雰囲気中において加熱することにより、酸化インジウム層(不可避不純物を含み得る)を形成する工程であることは、好ましい一態様である。これにより、ゲート絶縁層及びチャネルが酸化物によって形成された高性能の薄膜トランジスタが実現される。
【0019】
ところで、本願において、「型押し」は「ナノインプリント」と呼ばれることもある。
【発明の効果】
【0020】
本発明の1つの薄膜トランジスタは、低いリーク電流を実現するとともに、チャネルとの界面が影響する電気特性であると考えられる電子移動度の格段の向上を実現し得る。また、本発明の1つの薄膜トランジスタの製造方法によれば、比較的簡素な処理によって酸化物層が形成されるため、工業性ないし量産性に優れた薄膜トランジスタの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1A】本発明の第1の実施形態における薄膜トランジスタの製造方法の一過程を示す断面模式図である。
【図1B】本発明の第1の実施形態における薄膜トランジスタの製造方法の一過程を示す断面模式図である。
【図1C】本発明の第1の実施形態における薄膜トランジスタの製造方法の一過程を示す断面模式図である。
【図1D】本発明の第1の実施形態における薄膜トランジスタの製造方法の一過程を示す断面模式図である。
【図1E】本発明の第1の実施形態における薄膜トランジスタの製造方法の一過程を示す断面模式図である。
【図1F】本発明の第1の実施形態における薄膜トランジスタの製造方法の一過程を示す断面模式図である。
【図1G】本発明の第1の実施形態における薄膜トランジスタの製造方法の一過程を示す断面模式図である。
【図1H】本発明の第1の実施形態における薄膜トランジスタの製造方法の一過程を示す断面模式図である。
【図1J】本発明の第1の実施形態における薄膜トランジスタの製造方法の一過程を示す断面模式図である。
【図2】本発明の第1の実施形態における薄膜トランジスタのVg-Id特性を示すグラフである。
【図3】比較例(1)のVg-Id特性を示すグラフである。
【図4】本発明の第2の実施形態における薄膜トランジスタの製造方法の一過程を示す断面模式図である。
【図5】本発明の第2の実施形態における薄膜トランジスタのVg-Id特性を示すグラフである。
【図6】比較例(2)のVg-Id特性を示すグラフである。
【図7A】本発明の第3の実施形態における薄膜トランジスタの製造方法の一過程を示す断面模式図である。
【図7B】本発明の第3の実施形態における薄膜トランジスタの製造方法の一過程を示す断面模式図である。
【図7C】本発明の第3の実施形態における薄膜トランジスタの製造方法の一過程を示す断面模式図である。
【図7D】本発明の第3の実施形態における薄膜トランジスタの製造方法の一過程を示す断面模式図である。
【図7E】本発明の第3の実施形態における薄膜トランジスタの製造方法の一過程を示す断面模式図である。
【図7F】本発明の第3の実施形態における薄膜トランジスタの製造方法の一過程を示す断面模式図である。
【図7G】本発明の第3の実施形態における薄膜トランジスタの製造方法の一過程を示す断面模式図である。
【図7H】本発明の第3の実施形態における薄膜トランジスタの製造方法の一過程を示す断面模式図である。
【図7J】本発明の第3の実施形態における薄膜トランジスタの製造方法の一過程を示す断面模式図である。
【図8】その他の実施形態における薄膜トランジスタのVg-Id特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の実施形態である薄膜トランジスタ100及びその製造方法を、添付する図面に基づいて詳細に述べる。なお、文字の見やすさを考慮して、図1Hの後の図面番号を図1Jとする。また、本実施形態の薄膜トランジスタは、いわゆるボトムゲート構造を採用しているが、本実施形態はこの構造に限定されない。従って、当業者であれば、通常の技術常識を以って本実施形態の説明を参照することにより、工程の順序を変更することにより、トップゲート構造を形成することができる。また、本出願における温度の表示は、ヒーターの設定温度を表している。また、図面を簡略化するため、各電極からの引き出し電極のパターニングについての記載は省略する。

【0023】
<第1の実施形態>
図1A~図1Gは、それぞれ、本実施形態における薄膜トランジスタ100の製造方法の一過程を示す断面模式図である。なお、本出願における温度の表示は、ヒーターの設定温度を表している。また、図面を簡略化するため、各電極からの引き出し電極のパターニングについての記載は省略する。

【0024】
[薄膜トランジスタ100の製造工程]
(1)ゲート電極の形成
本実施形態の薄膜トランジスタ100のゲート電極20は、図1Aに示すように、白金(Pt)層によって形成されている。この白金層は、公知のスパッタリング法により基材であるSiO/Si基板(すなわち、シリコン基板上に酸化シリコン膜を形成した基板、以下、単に「基板」といもいう。)10上に形成される。なお、白金層と基材であるSiO/Si基板との接着性を高めるために、本実施形態では、SiO上に約10nm厚のTiO膜(図示しない)が形成されている。

【0025】
ここで、本実施形態では、上述の基材としてSiO/Si基板が採用されているが、本実施形態の基材は高耐熱ガラスに限定されない。例えば、高耐熱ガラス以外の絶縁性基板(例えば、高耐熱ガラス、アルミナ(Al)基板、STO(SrTiO)基板、Si基板の表面にSiO層及びTi層を介してSTO(SrTiO)層を形成した絶縁性基板など。)、半導体基板(例えば、Si基板、SiC基板、Ge基板など。)を含む、種々の基材を用いることができる。

【0026】
(2)第1前駆体層の形成
次に、図1Bに示すように、ゲート電極20上に、公知のスピンコーティング法により、ランタン(La)を含む前駆体及びタンタル(Ta)を含む前駆体を溶質とする前駆体溶液(第1前駆体溶液ともいう。)を出発材とする第1前駆体層30を形成する。その後、予備焼成として、第1前駆体層30を約5分間、250℃で加熱する。なお、この予備焼成は、酸素雰囲気中又は大気中(以下、総称して、「酸素含有雰囲気」ともいう。)で行われる。本実施形態では、最終的に十分なゲート絶縁層としての第1酸化物層32の厚み(例えば、約160nm)を得るために、前述のスピンコーティング法による第1前駆体層30の形成と予備焼成を計7回実施した。

【0027】
(3)酸の蒸気への曝露工程
次に、ゲート電極20上に形成した第1前駆体層30の表面を酸の蒸気に曝す曝露工程を行う。本実施形態では、図1Cに示すように、酸蒸気曝露装置80が用いられる。具体的には、蒸気送給装置86により、酸素(O)をキャリアガスとして、9質量%塩酸水溶液に5質量%未満の硝酸が混合された水溶液から生成された蒸気70が、導入口84aを介してチャンバー81内に導入される。また、チャンバー81内には、ゲート電極20上に形成された第1前駆体層30を備える基板10が、ステージ82上に載置されている。チャンバー81内における塩酸及び硝酸の蒸気70の一部は、第1前駆体層30の表面に接触する。その後、塩酸及び硝酸の蒸気70は、排気口84bを介して公知のガス(酸用)スクラバー88に送られる。なお、このときのキャリアガスである酸素ガスの流量は400ml/min.であった。また、チャンバーの設定温度は、約30秒間で室温から最高で500℃にまで上昇させることができる高速熱処理装置(RTA:rapid thermal anneal)装置(図示しない)が用いられた。本実施形態では、このRTA装置を用いて約30秒間で最高温度に到達するように設定したが、そのような最高温度に至らない温度に上限を設定することも可能である。また、蒸気70への曝露時間は、約30秒であった。上述の曝露工程を経ることにより、第1前駆体層30は、図1Dに示すように、塩酸及び硝酸の蒸気70に曝された表面30aを備えることになる。ところで、図1Cに示す蒸気70は、説明の便宜上、敢えて丸印で記載したものであり、他の図面においても同様に記載する。

【0028】
ところで、本実施形態の蒸気70は、上述の塩酸と硝酸とが混合された水溶液が沸騰することによって生成された蒸気である。他方、本実施形態の別態様として、沸騰するまで加熱しない状態(代表的には、60℃以上沸点未満に加熱した状態)、換言すれば沸騰させない状態で形成された蒸気を用いて曝露工程を行う場合も、トランジスタとしての一定の電気特性の向上が図られることが確認された。但し、これまでに本発明者らが知見した結果から言えば、沸騰させることによって形成した蒸気(代表的には、沸点以上500℃以下に加熱した蒸気)を用いて上述の曝露工程を行うことは、トランジスタとしての電気特性を向上させる観点から言えばより好適な一態様である。

【0029】
(4)第1酸化物層の焼成
第1前駆体層30は、チャンバー81から取り出された後、本焼成として、酸素雰囲気中(例えば100体積%であるが、これに限定されない。以下の「酸素雰囲気」についても同じ。)、約10分乃至約20分間、550℃に加熱される。その結果、図1Eに示すように、ゲート電極20上に、上述の酸の蒸気に曝露された表面32aを有する、ランタン(La)とタンタル(Ta)とからなる第1酸化物層32(不可避不純物を含み得る。以下、同じ。)が形成される。なお、ランタン(La)とタンタル(Ta)とからなる第1酸化物層32は、LTO層とも呼ばれる。加えて、本焼成が、チャンバー81内にて行われることも他の採用し得る一態様である。

【0030】
なお、本実施形態における第1酸化物層32のためのランタン(La)を含む前駆体の例は、酢酸ランタンである。その他の例として、硝酸ランタン、塩化ランタン、又は各種のランタンアルコキシド(例えば、ランタンイソプロポキシド、ランタンブトキシド、ランタンエトキシド、ランタンメトキシエトキシド)が採用され得る。また、本実施形態における第1酸化物層32のためのタンタル(Ta)を含む前駆体の例は、タンタルブトキシドである。その他の例として、硝酸タンタル、塩化タンタル、又はその他の各種のタンタルアルコキシド(例えば、タンタルイソプロポキシド、タンタルエトキシド、タンタルメトキシエトキシド)が採用され得る。

【0031】
(5)ソース電極及びドレイン電極の形成
さらにその後、図1Fに示すように、第1酸化物層32上に、公知のフォトリソグラフィー法によってパターニングされたレジスト膜900が形成された後、第1酸化物層32及びレジスト膜900上に、公知のスパッタリング法により白金層40を形成する。その後、レジスト膜900が除去されると、図1Gに示すように、第1酸化物層32上に、白金層からなるソース電極42及びドレイン電極44が形成される。本実施形態では、その後、酸素雰囲気中、450℃で加熱処理が行われた。

【0032】
(6)チャネルの形成
その後、図1Hに示すように、第1酸化物層32、ソース電極42、及びドレイン電極44上に、公知のスピンコーティング法により、インジウム(In)を含む前駆体を溶質とするチャネル用前駆体溶液(第2前駆体溶液ともいう。)を出発材とするチャネル用前駆体層(第2前駆体層ともいう。)50を形成する。その後、予備焼成として、第2前駆体層を約5分間、300℃に加熱する。その後、公知のフォトリソグラフィー法、及び公知のアルゴン(Ar)プラズマによるドライエッチング法によるパターニング工程が行われる。さらにその後、本焼成として、チャネル用前駆体層50を、酸素雰囲気中、約15分間、450℃に加熱することにより、酸化インジウム層(不可避不純物を含み得る。以下、同じ。)が形成される。

【0033】
第1酸化物層32、ソース電極42、及びドレイン電極44上の一部にのみ残されるように、チャネル用酸化物層52となる酸化インジウム層が形成された結果、薄膜トランジスタ100が製造される。なお、本実施形態のチャネル用酸化物層52の厚みは、約15nmであった。

【0034】
ここで、本実施形態におけるチャネル用酸化物層52のためのインジウム(In)を含む前駆体の例は、インジウムアセチルアセトナートである。その他の例として、硝酸インジウム、塩化インジウム、又は各種のインジウムアルコキシド(例えば、インジウムイソプロポキシド、インジウムブトキシド、インジウムエトキシド、インジウムメトキシエトキシド)が採用され得る。

【0035】
上述のとおり、本実施形態の薄膜トランジスタ100は、ゲート絶縁層及びチャネルが、いずれも金属酸化物によって形成されている点は特筆すべきである。加えて、本実施形態では、ゲート絶縁層及びチャネルが、いずれも各種の前駆体溶液を酸素含有雰囲気中で加熱することによって形成されているため、従来の方法と比較して大面積化が容易になるとともに、工業性ないし量産性が格段に高められる。

【0036】
[薄膜トランジスタ100の特性]
次に、発明者らは、上述の製造方法によって製造した薄膜トランジスタ100の電流-電圧特性について調査を行った。

【0037】
図2は、薄膜トランジスタ100のVg-Id特性を示すグラフである。また、表1は、薄膜トランジスタ100における、サブスレッショルド特性(SS)、電界効果移動度(μFE)、及びON/OFF比に関する特性を示している。なお、比較例(1)として、上述の各工程のうち、酸の蒸気への曝露工程が行われていない点を除いて、その他の工程が同じであるサンプルを準備した。図3は、比較例(1)のサンプルのVg-Id特性を示すグラフである。

【0038】
【表1】
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【0039】
図2、図3、及び表1に示すように、比較例(1)のサンプルはトランジスタとしての機能を発揮し難いものであることが確認されたが、一方で、第1の実施形態における薄膜トランジスタ100は、トランジスタとしての非常に良好な電気特性を実現し得ることが確認された。なお、薄膜トランジスタ100の電気特性においては、ON/OFF比が概ね10のオーダーであることに加え、サブスレッショルド特性(SS)が92(mV/dec.)であり、かつ電界効果移動度が600(cm/Vs)という極めて高い値であることは特筆に値する。前述の各数値が得られたことは、ゲート絶縁層とチャネルのいずれもが酸化物で形成された薄膜トランジスタとして、注目に値する結果であるといえる。

【0040】
<第2の実施形態>
本実施形態は、第1の実施形態における酸の蒸気への曝露工程(図1Cに該当する)が異なる点を除いて、第1の実施形態と同様である。したがって、第1の実施形態と重複する説明は省略され得る。

【0041】
本実施形態における曝露工程では、図4に示すように、9質量%塩酸水溶液93が収めされた収容部91aと蓋部91bとが公知の環状の酸耐性シール材94(例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製のシール材)を介して接合された上で、ボルト及びナット97によって気密に一体化された密閉チャンバー90内が用いられる。密閉チャンバー90内には、ゲート電極20上に形成された第1前駆体層30を備える基板10が、ステージ82上に載置されている。

【0042】
本実施形態では、ヒーター(図示しない)によって約60℃に加熱された塩酸水溶液93から蒸気71が形成される。その蒸気71の一部は、第1の実施形態と同様に、第1前駆体層30の表面の一部又は全部に接触する。基板10は、密閉チャンバー90が十分に冷却された後、取り出される。その後、第1の実施形態と同様に薄膜トランジスタが製造される。なお、他の比較例(比較例(2))として、上述の曝露工程を行う代わりに、塩酸水溶液93を、本焼成を行った後の酸化インジウム層52に直接滴下する工程を採用した薄膜トランジスタも製造した。

【0043】
図5は、本実施形態における薄膜トランジスタのVg-Id特性を示すグラフである。また、図6は、比較例(2)の薄膜トランジスタのVg-Id特性を示すグラフである。

【0044】
図5に示すように、ゲート電極への電圧印加に伴うドレイン電流の増減において、いわゆるヒステリシスが存在するが、トランジスタとしての重要な機能の一つであるON/OFFを実現することが確認された。従って、上述の曝露工程を経ないで形成された図3に示す比較例(1)や図6に示す比較例(2)との対比をすると、トランジスタとしての一定の電気特性の向上が図られることが分かった。

【0045】
なお、本実施形態で採用した蒸気のように、沸騰させない状態で形成された蒸気を用いて曝露工程を行った場合も、トランジスタとしての電気特性の向上が図られることが確認された。但し、これまでに本発明者らが知見した結果から言えば、第1の実施形態のように、沸騰させることによって形成した蒸気(代表的には、沸点以上500℃以下に加熱した蒸気)を用いて上述の曝露工程を行うことは、トランジスタとしての電気特性を向上させる観点から言えばより好適な一態様である。

【0046】
<第3の実施形態>
本実施形態では、主として、第1の実施形態における一部の層の形成過程において型押し加工が施されている点を除いて、第1の実施形態と同様である。したがって、第1の実施形態と重複する説明は省略され得る。

【0047】
[薄膜トランジスタ200の製造工程]
図7A~図7Jは、それぞれ、本実施形態における薄膜トランジスタ200の製造方法の一過程を示す断面模式図である。また、図面を簡略化するため、各電極からの引き出し電極のパターニングについての記載は省略する。

【0048】
(1)ゲート電極の形成
本実施形態では、図7Aに示すように、まず、基板10上に、第1の実施形態と同様にゲート電極20となる白金(Pt)層が形成される。なお、本実施形態においても、白金層と基板10との接着性を高めるために、SiO上に約10nm厚のTiO膜(図示しない)が形成されている。

【0049】
(2)第1前駆体層の形成
次に、図7Bに示すように、ゲート電極20上に、第1の実施形態と同様に、第1前駆体溶液を出発材とする第1前駆体層30を形成する。その後、第1の実施形態と同様に、予備焼成として、第1前駆体層30を約5分間、150℃で加熱する。本実施形態においても、最終的に十分なゲート絶縁層としての第1酸化物層32の厚み(例えば、約160nm)を得るために、スピンコーティング法による第1前駆体層30の形成と予備焼成を実施した。前述の予備焼成により、第1前駆体層30中の溶媒を十分に蒸発させるとともに、将来的な塑性変形を可能にする特性を発現させるために好ましいゲル状態(熱分解前であって有機鎖が残存している状態と考えられる)を形成することができる。その後、第1前駆体層30のパターニングを行うために、図7Cに示すように、180℃に加熱した状態で、第1前駆体層用型M1を用いて、10MPaの圧力で型押し加工を施す。その結果、図7Cに示すように、本実施形態の第1前駆体層用型M1により、層厚が約100nm~300nmの厚層部と層厚が約10nm~約100nmの薄層部とを備える第1前駆体層30が形成される。

【0050】
その後、第1前駆体層30を全面エッチングすることにより、型押し加工によって残すべき第1前駆体層30以外の領域では、第1前駆体層30が完全に除去される(第1前駆体層30の全面に対するエッチング工程)。なお、本実施形態のエッチング工程は、真空プロセスを用いることないウェットエッチング技術を用いて行われたが、プラズマを用いた、いわゆるドライエッチング技術によってエッチングされることを妨げない。なお、プラズマ処理を大気圧下において行う公知技術を採用することも可能である。

【0051】
(3)酸の蒸気への曝露工程
次に、パターニングされた第1前駆体層30の表面を酸の蒸気に曝す曝露工程を行う。本実施形態では、第1の実施形態と同様に、図1Cに示す酸蒸気曝露装置80が用いられる。その結果、チャンバー81内における塩酸及び硝酸の蒸気70の一部は、第1前駆体層30の表面に接触する。前述の曝露工程を経ることにより、第1前駆体層30は、図7Dに示すように、塩酸及び硝酸の蒸気70に曝された表面32aを備えることになる。

【0052】
(4)第1酸化物層の焼成
第1前駆体層30は、チャンバー81から取り出された後、本焼成として、酸素雰囲気中、約10分乃至約20分間、550℃に加熱される。その結果、図7Eに示すように、ゲート電極20上に、上述の酸の蒸気に曝露された表面32aを有する、ランタン(La)とタンタル(Ta)とからなる第1酸化物層32が形成される。

【0053】
さらにその後、図7Fに示すように、第1の実施形態と同様に、第1酸化物層32上に白金層からなるソース電極42及びドレイン電極44が形成される。本実施形態では、その後、酸素雰囲気中、450℃で加熱処理が行われた。

【0054】
(6)チャネルの形成
その後、図7Gに示すように、基板10、第1酸化物層32、ソース電極42、及びドレイン電極44上に、第2前駆体溶液を出発材とする第2前駆体層であるチャネル用前駆体層50が形成される。その後、予備焼成として、第2前駆体層を約5分間、150℃に加熱する。

【0055】
続いて、第1前駆体層の形成時と同様に、チャネル用前駆体層50のパターニングを行うために、図7Hに示すように、200℃に加熱した状態で、第2前駆体層用型M2を用いて、8MPaの圧力で型押し加工を施す。その結果、図7Hに示すように、層厚が約100nm~300nmの厚層部と層厚が約10nm~約100nmの薄層部とを備えるチャネル用前駆体層50が形成される。

【0056】
その後、チャネル用前駆体層50を全面エッチングすることにより、型押し加工によって残すべきチャネル用前駆体層50以外の領域では、チャネル用前駆体層50が完全に除去される(チャネル用前駆体層50の全面に対するエッチング工程)。なお、本実施形態のエッチング工程においても、ウェットエッチング技術のほか、プラズマを用いた、いわゆるドライエッチング技術によってエッチングされることもできる。なお、プラズマ処理を大気圧下において行う公知技術を採用することも可能である。

【0057】
その後、本焼成として、チャネル用前駆体層50を、酸素雰囲気中、約15分間、450℃に加熱することにより、図7Jに示すように、酸化インジウム層(不可避不純物を含み得る。以下、同じ。)52が形成される。その結果、薄膜トランジスタ200が製造される。

【0058】
上述のとおり、本実施形態の薄膜トランジスタ200は、ゲート絶縁層及びチャネルが、いずれも金属酸化物によって形成されているとともに、型押し加工によって形成されている。従って、従来の方法と比較して大面積化が容易になるとともに、工業性ないし量産性が格段に高められる。加えて、本実施形態の薄膜トランジスタ200も薄膜トランジスタ100と同等の電気特性を有している。

【0059】
<その他の実施形態>
上述の各実施形態においては、第1前駆体層30の表面を酸の蒸気に曝す曝露工程について説明したが、塩酸水溶液93を第1前駆体層30の表面に滴下することによって曝露する工程も採用し得る他の一態様である。

【0060】
例えば、第1の実施形態と同様に250℃で予備焼成を行った第1前駆体層30の表面全体に行き渡るように、0.01質量%の塩酸水溶液を滴下した後、公知のスピンコーターを用いて、その表面上の塩酸水溶液を飛散させて除去する。図8は、前述の工程を除いて第1の実施形態の製造工程と同様の工程によって製造された薄膜トランジスタのVg-Id特性を示すグラフである。図8に示すように、前述の製造方法によって形成された酸化物層を備えた薄膜トランジスタも、トランジスタとして機能し得る、又は機能するのに十分なドレイン電流のON/OFF比が得られることが確認できた。従って、蒸気ではなく、液体状の塩酸が用いられた場合であっても、酸化物膜の前駆体表面を含む前駆体の改質と考えられる作用が働くことにより、最終的に得られる酸化物層の絶縁層としての機能が向上し得る。

【0061】
ところで、上述の各実施形態における効果を適切に奏させるために、第1前駆体溶液の溶媒は、エタノール、プロパノール、ブタノール、2メトキシエタノール、2エトキシエタノール、2ブトキシエタノールの群から選択される1種又は2種のアルコール溶媒、又は酢酸、プロピオン酸、オクチル酸の群から選択される1種又は2種のカルボン酸である溶媒であることが好ましい。また、チャネル用前駆体溶液(第2前駆体溶液)の溶媒は、エタノール、プロパノール、ブタノール、2メトキシエタノール、2エトキシエタノール、2ブトキシエタノールの群から選択される1種又は2種のアルコール溶媒、又は酢酸、プロピオン酸、オクチル酸の群から選択される1種又は2種のカルボン酸である溶媒であることが好ましい。

【0062】
また、上述の各実施形態における各酸化物層を形成するための予備焼成の際、予備焼成温度は、100℃以上250℃以下が好ましい。これは、各種の前駆体層中の溶媒を確度高く蒸発させることが出来るからである。また、特に、その後に型押し工程を行う場合は、前述の温度範囲で予備焼成を行うことにより、将来的な塑性変形を可能にする特性を発現させるために好ましいゲル状態(熱分解前であって有機鎖が残存している状態と考えられる)を形成することができる。

【0063】
また、上述の第3の実施形態における型押し工程において、予め80℃以上300℃以下に加熱した型(代表的には、第1前駆体層用型M1及び第2前駆体層用型M2)を用いて型押し加工を施すことは、他の好ましい一態様である。

【0064】
上述の温度範囲(80℃以上300℃以下)で加熱した型を用いて型押し工程を実施することにより、型押し加工を施している間に、各前駆体層の塑性変形能力が低下することを確度高く防止することができるため、所望の型押し構造を一層高い精度で形成することが可能となる。

【0065】
なお、上述の型の加熱温度を80℃以上300℃以下としたのは、以下の理由による。まず、型押し加工時の型の加熱温度が80℃未満である場合には、各前駆体層における残存溶媒によって、型押し構造の成型時の成型の実現性、又は成型後の信頼性ないし安定性が乏しくなる。また、型押し加工時の型の加熱温度が300℃を超える場合には、塑性変形能の根源である有機鎖の分解(酸化熱分解)が進むため、塑性変形能力が低下するからである。上記観点から言えば、上述の型の加熱温度は、100℃以上250℃以下に加熱した型を用いて型押し加工を施すことがより好ましい。

【0066】
また、上述の型押し工程において、予め、型押し面が接触することになる各前駆体層の表面に対する離型処理及び/又はその型の型押し面に対する離型処理を施しておき、その後、各前駆体層に対して型押し加工を施すことが好ましい。そのような処理を施すことにより、各前駆体層と型との間の摩擦力を低減することができるため、各前駆体層に対してより一層精度良く型押し加工を施すことが可能となる。なお、離型処理に用いることができる離型剤としては、界面活性剤(例えば、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤等)、フッ素含有ダイヤモンドライクカーボン等を例示することができる。

【0067】
以上述べたとおり、上述の各実施形態の開示は、それらの実施形態の説明のために記載したものであって、本発明を限定するために記載したものではない。加えて、各実施形態の他の組合せを含む本発明の範囲内に存在する変形例もまた、特許請求の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0068】
10 基板
20 ゲート電極
30 第1前駆体層
30a 第1前駆体層の表面
32 第1酸化物層
32a 第1酸化物層の表面
40 白金層
42 ソース電極
44 ドレイン電極
50 チャネル用前駆体層(第2前駆体層)
52 チャネル用酸化物層
70,71 蒸気
80 酸蒸気曝露装置
81 チャンバー
82 ステージ
84a 導入口
84b 排気口
86 蒸気送給装置
88 スクラバー
90 密閉チャンバー
91a 収容部
91b 蓋部
93 塩酸水溶液
94 酸耐性シール材
97 ナット
100,200, 薄膜トランジスタ
900 レジスト膜
M1 第1前駆体層用型
M2 第2前駆体層用型
図面
【図1A】
0
【図1B】
1
【図1C】
2
【図1D】
3
【図1E】
4
【図1F】
5
【図1G】
6
【図1H】
7
【図1J】
8
【図2】
9
【図3】
10
【図4】
11
【図5】
12
【図6】
13
【図7A】
14
【図7B】
15
【図7C】
16
【図7D】
17
【図7E】
18
【図7F】
19
【図7G】
20
【図7H】
21
【図7J】
22
【図8】
23