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明細書 :磁性粒子、及びその製造方法、並びに磁性粒子含有製剤

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5526156号 (P5526156)
登録日 平成26年4月18日(2014.4.18)
発行日 平成26年6月18日(2014.6.18)
発明の名称または考案の名称 磁性粒子、及びその製造方法、並びに磁性粒子含有製剤
国際特許分類 A61K  47/02        (2006.01)
A61K   9/16        (2006.01)
A61K  47/44        (2006.01)
B01J  13/02        (2006.01)
B82Y   5/00        (2011.01)
FI A61K 47/02 ZNM
A61K 9/16
A61K 47/44
B01J 13/02
B82Y 5/00
請求項の数または発明の数 13
全頁数 33
出願番号 特願2011-552707 (P2011-552707)
出願日 平成23年2月4日(2011.2.4)
国際出願番号 PCT/JP2011/000638
国際公開番号 WO2011/096230
国際公開日 平成23年8月11日(2011.8.11)
優先権出願番号 2010025660
優先日 平成22年2月8日(2010.2.8)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成24年8月9日(2012.8.9)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】501083643
【氏名又は名称】学校法人慈恵大学
【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京工業大学
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
発明者または考案者 【氏名】並木 禎尚
【氏名】北本 仁孝
【氏名】渕上 輝顕
【氏名】河村 亮
【氏名】中川 勝
個別代理人の代理人 【識別番号】100103894、【弁理士】、【氏名又は名称】家入 健
審査官 【審査官】伊藤 清子
参考文献・文献 特開2003-522621(JP,A)
特開平06-319985(JP,A)
特開昭64-056137(JP,A)
特開平07-100361(JP,A)
特開2009-013145(JP,A)
特開2010-208875(JP,A)
特開2005-264214(JP,A)
CARUSO, F. ET AL,Magnetic Nanocomposite Particles and Hollow Spheres Constructed by a Sequential Layaering Approach,CHEM MATER,2001年,Vol. 13,p.109-116
LEE, C.W. ET AL,Microstructural evolution of iron oxide hollow nanoparticles toward iron oxide nanotubes in a prolonged sintering condition,MATERIALS LETTERS ,2009年,vol. 63,p.2607-2610
調査した分野 A61K 47/02
A61K 9/16
A61K 47/44
B01J 13/02
B82Y 5/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
内部が中空であって、Fe、Co、Niのいずれかを少なくとも一部に含むナノ粒子を含有する金属系ナノ粒子の焼結体よりなり、かつ前記焼結体を2次元に投影し、これを透過型電子顕微鏡像によって画像処理し、前記焼結体の輪郭内の全面積に対する透過部の割合から求めた空隙率が、1%以上、50%以下である磁性籠状骨格を具備する磁性粒子と、
前記磁性粒子の表層の少なくとも一部を被覆する被覆層とを備え、
前記焼結体は、亜臨界状態、若しくは超臨界状態において水熱処理することにより得たものであり、
前記磁性籠状骨格内、若しくは前記被覆層の少なくともいずれかに薬剤を含有する磁性粒子含有製剤。
【請求項2】
前記磁性籠状骨格は、鉄白金合金、鉄パラジウム合金、コバルト白金合金、マグネタイト、マグヘマイトの少なくともいずれかを含むことを特徴とする請求項1に記載の磁性粒子含有製剤。
【請求項3】
前記被覆層は、生体適合性材料により構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の磁性粒子含有製剤。
【請求項4】
前記被覆層は、脂質膜を含有することを特徴とする請求項1~3の少なくともいずれか1項に記載の磁性粒子含有製剤。
【請求項5】
前記被覆層と会合体を形成する複合形成体をさらに備え、当該複合形成体には薬剤が含有されていることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の磁性粒子含有製剤。
【請求項6】
記磁性粒子の粒径は、50nm以上、400nm以下であることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の磁性粒子含有製剤。
【請求項7】
内部が中空の磁性籠状骨格を具備し、
当該磁性籠状骨格は、Fe、Co、Niのいずれかを少なくとも一部に含むナノ粒子を含有する金属系ナノ粒子の焼結体よりなり、かつ前記焼結体を2次元に投影し、透過型電子顕微鏡像によって画像処理した際の前記焼結体の輪郭内の全面積に対する透過部の割合から求めた空隙率が、1%以上、50%以下であって、
前記焼結体は、亜臨界状態、若しくは超臨界状態において水熱処理することにより得たものである磁性粒子。
【請求項8】
前記磁性籠状骨格は、鉄白金合金、鉄パラジウム合金、コバルト白金合金、マグネタイト、マグヘマイト、のいずれかを含むことを特徴とする請求項に記載の磁性粒子。
【請求項9】
前記磁性籠状骨格の厚みは、5nm以上、50nm以下であることを特徴とする請求項7又は8に記載の磁性粒子。
【請求項10】
前記磁性粒子の粒径は、50nm以上、10μm以下であることを特徴とする請求項7~9のいずれか1項に記載の磁性粒子。
【請求項11】
無機材料からなるプレ鋳型粒子を用意し、
前記プレ鋳型粒子の表面を修飾して、表面が第1の極性を有する鋳型粒子を調製し、
前記鋳型粒子表面に、前記第1の極性とは反対の第2の極性を有し、Fe、Co、Niのいずれかを少なくとも一部に含むナノ粒子を含有する金属系ナノ粒子を吸着、若しくはその場で成長させ、
次いで亜臨界状態、若しくは超臨界状態で水熱処理を行うことによって前記鋳型粒子を除去して焼結させる磁性粒子の製造方法。
【請求項12】
記プレ鋳型粒子は、シリカ、アパタイト、酸化チタンのいずれかであることを特徴とする請求項11に記載の磁性粒子の製造方法。
【請求項13】
記磁性粒子の粒径は、50nm以上、10μm以下であることを特徴とする請求項11又は12に記載の磁性粒子の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、磁性粒子、及びその製造方法に関する。また、前述の磁性粒子を含む磁性粒子含有製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
磁性粒子は、機能性粒子として脚光を浴びており、種々の報告がなされている。例えば、ポリスチレンラテックスの核に、磁性ナノ粒子であるFeと、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロライド)(PDADMAC)若しくはポリ(アリルアミン ヒドロクロライド)(PAH)を交互に積層した磁性粒子(非特許文献1)が提案されている。また、重合体粒子表面に超常磁性を有するフェライトが被覆された磁性粒子(特許文献1)や、特定の混合モノマーの共重合体よりなるポリマー中に磁性体が分散された磁性ポリマー粒子(特許文献2)が提案されている。さらに、空気の存在下、800℃で加熱することにより、コアのポリスチレン重合体を分解してガス化させることによって粒子内部から飛散させ、粒子内部に空孔を持たせた球状酸化クロミウム(特許文献3)が提案されている。
【0003】
ところで、目的とする臓器や組織などの病巣部に、薬物を効果的かつ集中的に送り込む技術として薬物送達システム(ドラックデリバリーシステム)が注目を集めている。この技術により、投与する薬物量や投与回数を軽減し、高効率な治療の実現を図ることが期待できる。
【0004】
次世代型の薬物送達システムとして、病巣部を磁場環境下とし、製剤に含有する磁性粒子の集積特性を利用して薬物を送達する方法が提案されている。非特許文献2においては、ポリエチレンイミンで被覆した磁性微粒子ナノ結晶が提案されている。しかしながら、ポリエチレンイミンには、強い毒性があるため、生体内での利用は大幅に制限されるという問題があった。また、ポリエチレンイミンを主原料とする薬剤の遺伝子治療の臨床治験は報告されていないため、早急な臨床応用の実現は難しいという問題があった。
【0005】
図14に、特許文献4に開示された磁性微粒子を有するリポソームの模式図を示す。このリポソーム100は、脂質二重層膜101、疎水部102、親水部103、閉鎖空間104、磁性微粒子105を有する。リポソーム100内の閉鎖空間104には薬物が内包され、リポソーム100の包皮には、磁性微粒子105が構成成分として含まれている。
【0006】
図15に、本発明者の並木らが提案した自己会合型磁性脂質ナノ粒子の模式図を示す(特許文献5、非特許文献3)。この自己会合型磁性ナノ粒子200は、磁性微粒子ナノ結晶201、脂溶性界面活性剤202、脂溶性薬剤203を含有する。磁性微粒子ナノ結晶201を脂溶性界面活性剤202が被覆し、さらに、脂溶性界面活性剤202を脂溶性薬剤203が被覆する。
【0007】
磁性粒子は、癌の温熱療法(ハイパーサーミア)の発熱素子としても注目されている。図16に、特許文献6に開示された磁性粒子を含有する製剤の模式図を示す。この製剤300は、磁性粒子302の表面に金粒子303が結合し、この金粒子303にメルカプト基などの連結基を有する有機化合物304が化学結合されている。そして、その表面が脂質膜305で被覆されている。脂質膜305の表面には、連結物質308を介して、抗体などの生理機能性物質306や抗腫瘍活性物質307が結合されている。
【先行技術文献】
【0008】

【特許文献1】特開平7-320946号公報
【特許文献2】特開平9-208788号公報
【特許文献3】特開平6-7670号公報
【特許文献4】特開2009-242315号公報
【特許文献5】特開2009-03145号公報
【特許文献6】WO2006/080243号公報
【0009】

【非特許文献1】Frank Caruso, et al. Adv. Mater, 1999, 11, 950-953
【非特許文献2】Povey, A.C. et al. Journal of Pharmaceutical sciences, 1986, 75, 831-7.
【非特許文献3】Namiki, Y. et al. Nature Nanotechnology, 2009, 4, 598-606
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
最適な薬の形態は、薬剤を送達する標的となる組織や臓器に応じて、さらには、治療の目的などに応じて異なる。また、最適な剤形は、薬剤の種類に応じて異なる。そこで、公知例とは異なる磁性粒子を利用した新たな製剤を提案できれば、薬物送達システムを利用可能な薬剤を増やすことができる。また、最適な薬の形態や剤形を選択可能とすることにより、薬効の向上、副作用の軽減等を期待できる。
【0011】
また、薬剤搭載量を向上可能な技術や、磁気応答効率を高めることが可能な技術を提供できれば、飛躍的な性能向上を期待できる。さらに、新規構造の磁性粒子を提供できれば、医用分野に留まらず、様々な技術分野への応用展開が期待できる。
【0012】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、新規構造の磁性粒子、及びその製造方法、並びに磁性粒子含有製剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る磁性粒子含有製剤は、内部が中空であって、Fe、Co、Niのいずれかを少なくとも一部に含むナノ粒子を含有する金属系ナノ粒子の焼結体よりなり、かつ前記焼結体を2次元に投影し、これを透過型電子顕微鏡像によって画像処理し、前記輪郭内の全面積に対する透過部から算出される空隙率が、1%以上、50%以下である磁性籠状骨格を具備する磁性粒子と、前記磁性粒子の表層の少なくとも一部を被覆する被覆層とを備え、前記磁性籠状骨格内、若しくは前記被覆層の少なくともいずれかに薬剤を含有するものである。
【0014】
本発明に係る第1の態様の磁性粒子は、内部が中空の磁性籠状骨格を具備し、当該磁性籠状骨格は、Fe、Co、Niのいずれかを少なくとも一部に含むナノ粒子を含有する金属系ナノ粒子の焼結体よりなり、かつ前記焼結体を2次元に投影し、透過型電子顕微鏡像によって画像処理した際の前記焼結体の輪郭内の全面積に対する透過部の割合から求めた空隙率が、1%以上、50%以下であるものである。
【0015】
本発明に係る磁性粒子の製造方法は、無機材料からなるプレ鋳型粒子を用意し、前記プレ鋳型粒子の表面を修飾して、表面が第1の極性を有する鋳型粒子を調製し、前記鋳型粒子表面に、前記第1の極性とは反対の第2の極性を有し、Fe,Co,Niのいずれかを少なくとも一部に含むナノ粒子を含有する金属系ナノ粒子を吸着、若しくはその場で成長させ、次いで水熱処理を行うことによって、焼結させるものである。
【0016】
本発明に係る第2の態様の磁性粒子は、無機材料からなるプレ鋳型粒子を用意し、前記プレ鋳型粒子の表面を修飾して、表面が第1の極性を有する鋳型粒子を調製し、前記鋳型粒子表面に、前記第1の極性とは反対の第2の極性を有し、Fe,Co,Niのいずれかを少なくとも一部に含むナノ粒子を含有する金属系ナノ粒子を吸着、若しくはその場で成長させることにより得たものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、新規構造の磁性粒子、及びその製造方法、並びに磁性微粒子含有製剤を提供することができるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1A】実施形態1に係る磁性粒子の模式的概念図。
【図1B】図1AのIB-IB切断部における模式的斜視図。
【図2A】実施形態1に係る磁性粒子の製造工程を説明するための概念図。
【図2B】実施形態1に係る磁性粒子の製造工程を説明するための概念図。
【図2C】実施形態1に係る磁性粒子の製造工程を説明するための概念図。
【図2D】実施形態1に係る磁性粒子の製造工程を説明するための概念図。
【図3A】実施形態2に係る磁性粒子含有製剤の模式的概念図。
【図3B】図3AのIIIB-IIIB切断部における模式的斜視図。
【図4A】実施形態2に係る被覆層の模式的部分拡大図。
【図4B】実施形態2に係る被覆層の模式的部分拡大図。
【図4C】実施形態2に係る被覆層の模式的部分拡大図。
【図4D】実施形態2に係る被覆層の模式的部分拡大図。
【図4E】実施形態2に係る被覆層の模式的部分拡大図。
【図5】変形例に係る磁性粒子含有製剤の模式的概念図。
【図6】実施形態2に係る磁性粒子含有製剤を薬物送達システムとして利用する場合の一例を示す説明図。
【図7】実施形態3に係る被覆層の模式的部分拡大図。
【図8A】実施例1に係る磁性粒子の透過型電子顕微鏡像。
【図8B】実施例2に係る磁性粒子の透過型電子顕微鏡像。
【図8C】実施例3に係る磁性粒子の透過型電子顕微鏡像。
【図8D】実施例4に係る磁性粒子の透過型電子顕微鏡像。
【図8E】実施例5に係る磁性粒子の透過型電子顕微鏡像。
【図8F】実施例6に係る磁性粒子の透過型電子顕微鏡像。
【図9A】実施例7に係る磁性粒子の透過型電子顕微鏡像。
【図9B】実施例7に係る磁性粒子の透過型電子顕微鏡像から空隙率を算出する方法を説明するための図。
【図10A】実施例8に係る磁性粒子の透過型電子顕微鏡像。
【図10B】実施例8に係る磁性粒子の透過型電子顕微鏡像から空隙率を算出する方法を説明するための図。
【図11A】実施例9に係る磁性粒子含有製剤の透過型電子顕微鏡像。
【図11B】図11Aの部分拡大図。
【図12】実施例9に係る磁性粒子含有製剤の磁気誘導実験結果を示す図。
【図13A】実施例10、比較例3~5の細胞生存率を示すグラフ。
【図13B】実施例10、比較例6~10の細胞生存率を示すグラフ。
【図14】特許文献4に記載の磁性微粒子を有するリポソームの模式図。
【図15】特許文献5に記載の自己会合型磁性脂質ナノ粒子の模式図。
【図16】特許文献6に記載の磁性粒子の模式図。
【図17A】比較例1に係る磁性粒子の透過型電子顕微鏡像。
【図17B】比較例1に係る磁性粒子の透過型電子顕微鏡像。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を適用した実施形態の一例について説明する。なお、本発明の趣旨に合致する限り、他の実施形態も本発明の範疇に属し得ることは言うまでもない。また、以降の図における各部材のサイズや比率は、説明の便宜上のものであり、実際のものとは異なる。

【0020】
[実施形態1]
図1Aに、本実施形態1に係る磁性粒子1の一例を示す概念図を、図1Bに、図1AのIB-IB切断線における模式的斜視図を示す。本実施形態1に係る磁性粒子1は、磁性籠状骨格10により構成されている。磁性籠状骨格10は、図1A,図1Bに示すように、概ね球状の骨格を成し、その内部は、中空構造12となっている。磁性籠状骨格10は、Fe(鉄)、Co(コバルト)、Ni(ニッケル)のいずれかを少なくとも一部に含むナノ粒子を含有する金属系ナノ粒子の焼結体よりなる。

【0021】
磁性籠状骨格10には、多数の多孔体状の空隙11が形成されている。空隙11は、輪郭を画定する磁性籠状骨格10の内部と外部とを連通するように形成されている。本明細書においては、空隙11の割合である空隙率を以下の方法により求めた。すなわち、磁性籠状骨格10の焼結体を2次元に投影し、これを100keVの透過型電子顕微鏡(日立H7100透過型電子顕微鏡)によって画像処理し、白黒二値化する。この際、最低の明るさを0%、最高の明るさを100%とし、明度が80%以上となるものを白色と判断するものとする。空隙率は、焼結体の凡その輪郭内の全面積に対する透過部(上記白黒二値化により、白色と判定された領域)の割合と定義する。上記方法により算出された空隙率を、1%以上、50%以下とする。

【0022】
磁性籠状骨格10の空隙率が1%未満の場合には、本発明に係る磁性粒子の製造、及び製剤含有磁性微粒子の製造が困難となる恐れがある。一方、空隙率が50%を超えると、骨格を保持することが難しくなる恐れがある。空隙率は、製造安定性の観点からは、5%以上、30%以下とすることが好ましい。空隙11のサイズや形状は、磁性籠状骨格10の骨格を維持できるものであれば特に限定されない。

【0023】
なお、本明細書の空隙率算出方法によれば、磁性籠状骨格10を2次元に投影し、白黒二値化して透過部を算出する方式を採用しているので、実際の空隙率より小さな値となる。上記空隙率をより正確に測定する方法としては、窒素等のガス吸着を調べ、単位質量、又は体積当たりのガス吸着量を調べる方法が好ましい。但し、この場合には、中空磁性粒子の構造を明確に判別できないので、上記透過型電子顕微鏡像の画像処理法と併用することが望ましい。

【0024】
磁性籠状骨格10の厚みは、特に限定されないが、好ましくは5nm以上、50nm以下である。磁性籠状骨格10の厚みを5nm以上とすることにより、構造欠陥を抑制し安定した製造とすることができる。また、50nm以下とすることにより、磁性籠状骨格10の内部への薬剤等の含有率を高くすることができる。

【0025】
なお、磁性籠状骨格10の形状は、特に限定されるものではなく、後述する鋳型粒子の形状を制御することにより、例えば、楕円球形状としたり、棒形状としたりすることが可能である。

【0026】
磁性籠状骨格10の材料は、焼結体を形成することが可能であり、少なくともその一部にFe,Co,Niのいずれかが少なくとも一部に含有されているナノ粒子を含有する金属系ナノ粒子であれば制限なく用いることができる。なお、「Fe,Co,Niのいずれかが少なくとも一部に含有されているナノ粒子」とは、Fe,Co,Niの1つが一部に含まれているナノ粒子の他、Fe,Co,Niの2種類以上が一部に含有されているナノ粒子も含まれる。また、「金属系ナノ粒子」には、金属のみにより構成されるナノ粒子の他、金属酸化物、金属窒化物などのナノ粒子も含む。

【0027】
焼結体を形成するための焼結体前駆体の好適な材料の例としては、下記のものを挙げることができる。(1)鉄白金合金(FePt)、コバルト白金合金(CoPt)、鉄パラジウム合金(FePd)、コバルト白金合金(CoPt)などの遷移金属-貴金属合金、(2)マグネタイト(Fe)、マグヘマイト(γー三酸化二鉄・γーFe)、マンガン(Mn)フェライトを含めた酸化鉄系化合物、(3)鉄ネオジムボロン(NdFeB),サマリウムコバルト合金(SmCo)などの希土類-遷移金属合金、(4)鉄(Fe)、鉄コバルト合金(FeCo)、ニッケル鉄合金(NiFe)、(5)Fe16などの窒化鉄系化合物などの遷移金属合金などを挙げることができる。金属合金の他、金属酸化物を含む金属系ナノ粒子も好適に適用することができる。なお、上記例において、微量の他の元素が含まれているものも好適に適用することができる。例えば、鉄白金合金において、Cu、Agなどの第3元素を添加したものも好適に適用することができる。

【0028】
磁力による送達効率を高める観点からは、磁性籠状骨格10の材料が強磁性を示す金属系ナノ粒子であることが好ましい。生体内利用を目的とする場合には、毒性による有害事象を回避する観点より、Fe、Co、Niの少なくともいずれかを一部に含むナノ粒子として、マグネタイト(四酸化三鉄・Fe)やマグヘマイト(γー三酸化二鉄・γーFe)、一酸化鉄、窒化鉄、鉄、鉄白金合金、鉄パラジウム合金などを用いることが好ましい。

【0029】
磁性籠状骨格10は、単独材料のみにより構成してもよいし、複数の材料から構成してもよい。使用目的等に応じた磁力となるよう、Fe、Co、Niのいずれかを少なくとも一部に含むナノ粒子の材料、及び含有量を適宜選定する。金属系ナノ粒子は、Fe、Co、Niのいずれかを少なくとも一部に含むナノ粒子のみから構成してもよいが、他の金属系ナノ粒子とブレンドして用いてもよい。使用する金属元素の種類は特に限定されず、用途に応じて適宜選定することができる。例えば、銅、クロム、チタン、タンタル、タングステン、ニッケル、モリブデン、マンガン、アルミニウム、イットリウムから選ばれる1種以上の組み合わせからなる合金、あるいは金属単体等を用いてもよい。

【0030】
磁性籠状骨格10の粒径は、特に限定されず、用途に応じて適宜選定することができる。磁性籠状骨格10の粒径は、後述する鋳型粒子の大きさを制御することにより容易にコントロールすることができる。製造容易性の観点からは、50nm以上とすることが好ましく、10μm以下とすることが好ましい。癌治療を目的とした磁気誘導薬物伝送システムに用いる場合では、新生血管の血管壁の透過性を考慮して、50nm以上、400nm以下の粒径であることが望ましい。

【0031】
次に、中空の磁性粒子1の製造方法について図2A~図2Dを用いつつ説明する。まず、プレ鋳型粒子21(図2A参照)の水分散液を調製する。プレ鋳型粒子21の好適な材料としては、シリカ(SiO)、酸化チタン(TiO)、フッ化マグネシウム(MgF)、フッ化アルミニウム(AlF)、フッ化リチウム(LiF)、フッ化ナトリウム(NaF)、酸化アルミニウム(Al)、酸化ジルコニア(ZrO)、酸化ニオブ(Nb)、インジウムスズ酸化物(ITO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO)、セリア(CeO)、酸化イットリウム(Y)、酸化ビスマス(Bi)、アパタイト、ガラス等の無機材料を挙げることができる。プレ鋳型粒子21は、単一材料からなるものであってもよいし、複数の材料を混合した粒子であってもよい。また、予め2種類以上の材料を混練、混合し、造粒、分級した粒子でもよい。

【0032】
プレ鋳型粒子21の調製方法は、特に限定されないが、例えば、転動造粒、流動層造粒、撹拌造粒、解砕・粉砕造粒、圧縮造粒、押出造粒、融着造粒、混合造粒、噴霧冷却造粒、噴霧乾燥造粒、沈澱・析出造粒、凍結乾燥造粒、懸濁凝集造粒、滴下冷却造粒等の物理的造粒法を用いて造粒することができる。必要に応じて分級を実施する。プレ鋳型粒子21が市販品として入手できる場合は、それを使用してもよい。

【0033】
プレ鋳型粒子21の粒径の範囲は、特に限定されないが、通常、10nm~10μm程度である。粒径が10μmを超えるとプレ鋳型粒子21が溶媒に分散しないことがある。なお、プレ鋳型粒子21の形状は、特に限定されないが、通常、球形状、若しくは概ね球形状である。中空の磁性粒子1の形状は、前述したように、プレ鋳型粒子21の形状により調節することができる。

【0034】
次いで、プレ鋳型粒子21の表面に第1の極性を有するコーティング層(不図示)を被覆させた鋳型粒子22(図2B参照)の水分散液を調製する。鋳型粒子22は、コーティング層が被覆されているので、プレ鋳型粒子21より粒子径が大きくなる。コーティング層の厚みは、特に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、適宜設定することができる。コーティング層は、必ずしもプレ鋳型粒子21の表面の全体に亘って被覆されている必要はなく、被覆されていない領域があってもよい。

【0035】
プレ鋳型粒子21へのコーティング層の被覆方法は、特に限定されないが、静電結合により被覆する方法が簡便である。プレ鋳型粒子21が負に帯電している粒子の場合、正に帯電しているコーティング層を被覆することができる。また、プレ鋳型粒子21が正に帯電している粒子の場合、負に帯電しているコーティング層を被覆することができる。負に帯電しているコーティング層にさらに正に帯電しているコーティング層を被覆することも可能である。

【0036】
コーティング層としては、鋳型粒子22が第1の極性を発現できるものであればよく、特に限定されないが、好適な例として、イオン性ポリマー(カチオン性ポリマー、アニオン性ポリマー)を挙げることができる。上記イオン性ポリマーとして、荷電を有する官能基を主鎖、又は側鎖に持つ高分子を挙げることができる。正の電荷を有するイオン性ポリマーとしては、一般に、4級アンモニウム基、アミノ基などの正荷電を帯びているか、若しくは帯びることのできる官能基を有するものを挙げることができる。具体的には、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリアリルアミン塩酸塩(PAH)、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド(PDDA)、ポリビニルピリジン(PVP)、ポリリジンなどである。一方、負の電荷を有するイオン性ポリマーとしては、一般的に、スルホン酸、硫酸、カルボン酸など負電荷を帯びているか、帯びることのできる官能基を有するものを挙げることができる。具体的には、ポリスチレンスルホン酸(PSS)、ポリビニル硫酸(PVS)、デキストラン硫酸、コンドロイチン硫酸、ポリアクリル酸(PAA)、ポリメタクリル酸(PMA)、ポリマレイン酸、ポリフマル酸などである。

【0037】
得られた水分散液のゼータ電位は、第1の極性がプラスの場合には+5mV以上とすることが好ましい。+5mV未満では、鋳型粒子2が水中で凝集沈降してしまう恐れがある。上限は特に限定されないが、通常、+80mV以下である。一方、第1の極性がマイナスの場合には、上記と同様の理由から、-5mV以下とすることが好ましい。また、下限は特に限定されないが、通常-80mV以上である。

【0038】
次に、鋳型粒子22表面に磁性籠状骨格10を形成するための材料であるFe、Co、Niのいずれかを少なくとも一部に含むナノ粒子を含有する金属系ナノ粒子(以下、略記して「磁性-金属系ナノ粒子23」とも云う)材料を吸着、若しくはその場で成長させる。これにより、付着型の磁性粒子2(図2C参照)を得る。具体的には、鋳型粒子22の均一な分散液中で、磁性籠状骨格10を形成するための材料を溶解させた溶液を加え、これらを鋳型粒子22に吸着、若しくはその場で成長させる。加える磁性-金属系ナノ粒子23は、鋳型粒子22の表面の極性とは反対の極性のものとする。すなわち、磁性-金属系ナノ粒子23は、鋳型粒子22の表面の第1の極性とは反対の極性を有する第2の極性のものを用いる。

【0039】
磁性-金属系ナノ粒子23の形状は、特に限定されず、用途や目的に応じて不定形粉末、扁平状粉末、球状粉末、棒状粉末等を適宜選定することができる。磁性-金属系ナノ粒子23がブレンドの場合には、複数の形状のものが混在していてもよい。また、磁性-金属系ナノ粒子23内には、後述する焼結工程において、除去される成分が含まれていてもよい。

【0040】
磁性-金属系ナノ粒子23の平均粒径は、特に限定されないが、1nm以上とすることが好ましく、薬剤含有量の向上の観点から50nm以下とすることが好ましい。なお、磁性-金属系ナノ粒子23は、焼結前に磁性を帯びていることは必須ではなく、焼結により磁性特性を発現するものも含む。磁性-金属系ナノ粒子23の平均粒径は、磁性粒子含有製剤7の肥大化を抑制する観点から25nm以下とすることがより好ましく、15nm以下とすることが特に好ましい。Fe、Co、Niを含む磁性ナノ粒子の粒子径は、小さくても高い磁気誘導特性を有する磁気異方性の高い材料が好ましい。磁性ナノ粒子の好ましい材料としては、FePt粒子や、FePt粒子と他の磁性金属元素を含むナノ粒子との複合体を挙げることができる。磁性ナノ粒子以外の磁性-金属系ナノ粒子23の平均粒径の好ましい範囲も、同様である。

【0041】
続いて、付着型の磁性粒子2を水熱反応により処理する。これにより、吸着、若しくはその場で成長させた磁性-金属系ナノ粒子23が融着することにより、融着型の磁性粒子3(図2D参照)を得る。水熱反応により、磁性籠状骨格10を得るまで焼結することにより、鋳型粒子22が除去し、図1Aに示すような中空の磁性粒子1を得る。

【0042】
水熱反応は、亜臨界状態とすることが好ましく、超臨界状態とすることが特に好ましい。亜臨界、又は超臨界状態の水中における水熱反応の条件としては、特に限定されないが、中空の磁性粒子1とするために、鋳型粒子の溶解除去が可能な条件とする。鋳型粒子の大きさが大きくなれば反応時間は長くなる。また、得られる磁性金属元素を含むナノ粒子の空隙率が小さければ反応時間が長くなる。鋳型材料の種類、大きさ、及び付着型の磁性粒子2におけるナノ粒子の被覆率に依存する。粒子径約300nmのシリカ微粒子の場合、例えば、400℃、37MPa、反応時間3時間などとすることができる。

【0043】
なお、本実施形態1においては、中空の磁性粒子1を得る製造方法を説明したが、用途に応じ、所望の磁性粒子を利用することができる。具体的には、磁性粒子として、付着型の磁性粒子2や融着型の磁性粒子3を製造することができる。また、鋳型粒子22のコーティング層のみを除去し、磁性籠状骨格10とプレ鋳型粒子21から構成される磁性粒子を用いることもできる。さらに、プレ鋳型粒子21のサイズを小さくさせたプレ鋳型粒子と磁性籠状骨格10とから構成される磁性粒子を用いることもできる。鋳型粒子の残存方法としては、上記水熱反応の条件を温和な条件に設定することにより、容易に製造することができる。

【0044】
本実施形態1によれば、新規構造の磁性粒子、及びその製造方法を提供することができる。本実施形態1に係る磁性粒子は、鋳型粒子の粒子径、粒子径分布、粒子形状をコントロールすることにより、中空の磁性粒子の粒径、中空径を制御することが可能であるという優れたメリットを有する。ニーズに応じた形状とすることが可能なため、様々な分野で応用展開することが期待できる。また、本実施形態1に係る磁性粒子によれば、金属材料により磁性粒子の骨格を形成しているので、優れた強度、耐熱性を有するという効果を奏する。

【0045】
なお、本実施形態1に係る磁性粒子1は、磁性籠状骨格10のみにより構成された例について説明したが、後述する実施形態のように薬剤等の他の成分や部材を含有させることも可能である。

【0046】
[実施形態2]
次に、磁性粒子含有製剤の一例について説明する。なお、以降の説明において、上記実施形態1と同一の要素部材は同一の符号を付し、適宜その説明を省略する。

【0047】
図3に、本実施形態2に係る磁性粒子含有製剤7の一例を示す概念図を示す。本実施形態2に係る磁性粒子含有製剤7は、薬剤内包型の磁性粒子6を被覆層40により被覆した構成より成る。ここで、薬剤内包型の磁性粒子6とは、中空の磁性粒子1内に薬剤30が含有されたものを総称するものとする。薬剤30の搭載量を高める観点からは、中空の磁性粒子1内に薬剤30が充填されている状態が好ましい。薬剤30は、特に制限なく適用することが可能である。

【0048】
本実施形態2に係る薬剤30は、広義の治療、診断、予防等の目的に適用される物質全般を含み、特に限定されない。薬剤の一例としては、抗癌剤、光感受性物質、遺伝子治療薬をはじめとする狭義の治療薬や、造影剤等の狭義の診断薬の他、ペプチド、タンパク質、核酸(例えば、DNA、RNA若しくはこれらの類似体、又は誘導体(例えば、ペプチド核酸、ホスホロチオエートDNA等))、糖、これらの複合体等を挙げることができる。なお、核酸は、一本鎖であると二本鎖であるとを問わず、形状も線状や環状等、特に限定されない。薬剤30には、上記以外の目的の物質(保存剤、安定剤、媒体)等が含まれていてもよい。

【0049】
磁性粒子含有製剤7の薬剤搭載量を高める観点からは、磁性籠状骨格10が骨格を維持できる範囲において空隙率が大きい方が好ましい。

【0050】
被覆層40は、薬剤内包型の磁性粒子6の少なくとも一部を被覆する。被覆層40の主成分を構成する膜の材料、及び製造方法は、特に制限なく利用することができる。被覆層40は、磁性籠状骨格10と相互作用をするものであってもよいし、磁性籠状骨格10内部に搭載した薬剤30と相互作用をするものであってもよい。磁性籠状骨格10の空隙率や、磁性籠状骨格10内に搭載する薬剤30などにより適宜選択することができる。

【0051】
被覆層40の主成分の好適な例としては、脂質膜、若しくは高分子膜を挙げることができる。好適な例として、脂質、界面活性剤、末端にアルコキシシリル基、クロロシリ基、イソシアナトシリル基、メルカプト基等を有するポリエチレングリコール等の高分子などを挙げられる。

【0052】
生体内利用を目的とした場合、毒性による有害事象回避のために、生体適合性を有する膜を適用することが好ましい。生体適合性材料としては、その名称の如く、対象となる生体に適合する材料であれば特に限定されないが、脂質膜、生体適合性ポリマー等を用いることが好ましい。

【0053】
脂質膜の好適な例としては、中性脂質、陽性荷電脂質、陰性荷電脂質などを挙げることができる。中性脂質としては、例えば、ジアシルホスファチジルコリン、ジアシルホスファチジルエタノールアミン、コレステロール、セラミド、スフィンゴミエリン、セファリン、セレブロシド等が挙げられる。陽性荷電脂質としては、例えば、DOTAP(1,2-dioleoyloxy-3-trimethylammonio propane)、DC-6-14(O,O'-ditetradecanoyl-N-(α-trimethylammonioacetyl)diethanolamine chloride、DC-Chol(3beta-N-(N,N,-dimethyl-aminoethane)carbamol cholesterol)、TMAG(N-(α-trimethylammonioacetyl)didodecyl-D-glutamate chloride)、DOTMA(N-2,3-di-oleyloxypropyl-N,N,N-trimethylammonium)、DODAC(dioctadecyldimethylammonium chloride)、DDAB(didodecyl-ammonium bromide)、DOSPA(2,3-dioleyloxy-N-[2(sperminecarboxamido)ethyl]-N,N-dimethyl-1-propanaminum trifluoroacetane)等が挙げられる。

【0054】
高分子膜の好適な例としては、ブロック共重合体(スチレン-イソプレン-スチレン、スチレン-ブタンジエン-スチレン)、アルブミン、ドコサヘキサエン酸、ポリグルタミン酸、ポリエチレングリコール・ポリアスパラギン酸、ポリエチレングリコール・ポリアスパラギン酸の側鎖に疎水基・親水基の一方、若しくは両方を修飾したブロックコポリマー、ポリエチレングリコール・ポリ(ジエチレントリアミン)、ポリエチレングリコール-ポリ(β-ベンジル アスパルテート)を挙げることができる。また、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリラクチド共重合体、ポリエチレンオキシド、ポリジオキサノン、ポリカプロラクトン、ポリホスファゼン、ポリアンハイドライド、ポリアミノ酸、セルロースアセテートブチレート、セルローストリアセテート、ポリアクリレート、ポリアクリルアミド、ポリウレタン、ポリシロキサン、ポリビニルピロリドン(PVP)、及びこれらの共重合体などが挙げられる。

【0055】
さらに、生体適合性高分子膜に用いる合成高分子としては、水溶性モノマーの重合体又は水溶性高分子が挙げられる。水溶性モノマーの好適例としては、n-イソプロピルアクリルアミド、アクリルアミド、アクリル酸、メタクリル酸、ビニルピロリドン又はこれらの組み合わせが挙げられる。また、水溶性高分子の好適な例としては、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアリルアミン、ポリビニルアミン、脂肪族及び芳香族ジイソシアナート、CNBrによりアミノ基を導入したPVA又はこれらの組み合わせを挙げることができる。なお、これらは一例であって、公知となっているものは全て使用できることは言うまでもない。

【0056】
図4Aに、被覆層40の主成分を構成する膜として、両親媒性界面活性剤50からなる脂質膜41を用いた場合の部分拡大断面図を示す。図4Aに示す脂質膜41は、親水部51が表層側に配置され、疎水部52側が互いに向き合うように配置された2層膜構造となっている。

【0057】
両親媒性界面活性剤50の種類としては、例えば、オレイン酸、リノレイン酸、リノレン酸等の炭素数18の脂溶性不飽和脂肪酸が好ましい。その中でも二重結合数が最小である、すなわち、酸化耐性の高いオレイン酸が好ましい。その他、オレイルアミン、チオールなども好適に使用できる。但し、被覆層の上述した条件を満たしていれば、界面活性剤の種類に何ら制限なく用いることができる。また、必要に応じて2種種以上の界面活性剤を混合して用いることも可能である。

【0058】
図4Bに、脂質膜41の表面に親水性ポリマー42を修飾した被覆層40bの部分拡大概念図を示す。生体内利用を目的とする場合、磁性粒子含有製剤表面に親水性ポリマーを有することが好ましい。磁性粒子含有製剤表面に親水性ポリマーを修飾することにより血管内滞留時間を延長することが可能になる。

【0059】
親水性ポリマー42は、脂質膜41を構成する脂質の少なくとも一部に修飾することにより容易に表面に配置することができる。例えば、脂質が有する官能基と親水性ポリマー42が有する官能基とを反応させることにより、共有結合を介して結合させることができる。共有結合を形成可能な官能基の組み合わせとしては、例えば、アミノ基/カルボキシル基、アミノ基/ハロゲン化アシル基、アミノ基/N-ヒドロキシスクシンイミドエステル基、アミノ基/ベンゾトリアゾールカーボネート基、アミノ基/アルデヒド基、チオール基/マレイミド基、チオール基/ビニルスルホン基等が挙げられる。

【0060】
脂質膜41に対する親水性ポリマー42の含有量は、特に限定されないが、1~10%(モル比)、好ましくは7~10%(モル比)である。親水性ポリマーが修飾された脂質は、親水性ポリマー42の主鎖末端と結合する形態が好ましいが、側鎖と結合していてもよい。

【0061】
親水性ポリマー42の種類は特に限定されるものではなく、例えば、ポリアルキレングリコール(例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリヘキサメチレングリコール)、デキストラン、プルラン、フィコール、ポリビニルアルコール、スチレン-無水マレイン酸交互共重合体、ジビニルエーテル-無水マレイン酸交互共重合体、アミロース、アミロペクチン、キトサン、マンナン、シクロデキストリン、ペクチン、カラギーナン等が挙げられるが、ポリアルキレングリコールが好ましく、ポリエチレングリコールがさらに好ましい。

【0062】
親水性ポリマー42がポリアルキレングリコールである場合、その分子量は、通常300~10000、好ましくは1000~5000である。

【0063】
親水性ポリマー42には、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、t-ペンチル基、ネオペンチル基等)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、s-ブトキシ基、t-ブトキシ基等)、ヒドロキシル基、カルボニル基、アルコキシカルボニル基、シアノ基等の置換基が導入されていてもよい。

【0064】
図4Cに、被覆層40c内に脂溶性薬剤31を内包した場合の一例を示す部分拡大断面図を示す。脂溶性薬剤31は、脂質膜41の疎水部52に内包されている。脂溶性薬剤31としては、例えば、クロリンe6(以下、「Ce6」と称する)エステル、カルモフール(フルオロウラシル系抗癌剤)、カンプトテシン、レチノイン酸、パクリタキセル等を挙げることができる。このように、被覆層内に薬剤を含有させることが可能である。また、薬剤が膜形成物質可能な物質である場合、被覆層40を構成する主成分膜を薬剤により構成することも可能である。

【0065】
図4Dに、被覆層40dを構成する脂質膜41dの構成として、疎水部52が表層側に配置され、親水部51側が互いに向き合うように配置された2層膜構造である場合の部分拡大断面図を示す。疎水部52に親水性ポリマー42dを修飾させることにより血管内滞留時間を延長させることが可能となる。

【0066】
図4Eに、被覆層40eを構成する脂質膜41eとして、リン脂質60を用いた場合の例について説明する。図4Eに示す脂質膜41eは、親水部61が表層側に配置され、疎水部62側が互いに向き合うように配置された2層膜構造となっている。

【0067】
本発明において用いられるリン脂質としては、例えば、卵黄レシチン、大豆レシチン、カルジオリピン、スフィンゴミエリン、ホスファチジン酸、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルコリン(例えば、ジオレオイルホスファチジルコリン、ジラウロイルホスファチジルコリン、ジミリストイルホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン、ジステアロイルホスファチジルコリン等)、ホスファチジルグリセロール(例えば、ジオレオイルホスファチジルグリセロール、ジラウロイルホスファチジルグリセロール、ジミリストイルホスファチジルグリセロール、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール、ジステアロイルホスファチジルグリセロール等)、ホスファチジルエタノールアミン(例えば、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン、ジラウロイルホスファチジルエタノールアミン、ジミリストイルホスファチジルエタノールアミン、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン、ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン等)及びこれらの水素添加物等が挙げられる。リン脂質は通常、単独で使用されるが、2種以上併用して混合使用してもよい。なお、用いる薬剤がリン脂質である場合には、被覆層40を薬剤により構成することができる。磁性籠状骨格10内に薬剤を搭載するとともに、被覆層40も薬剤により構成することにより、薬剤の搭載量を多くすることができるというメリットを有する。

【0068】
被覆層40を構成する分子としては、上述した分子の他、糖脂質、コレステロール、脂肪酸などを用いてもよい。糖脂質の例としては、例えば、スフィンゴ糖脂質(例えば、ガンクリオシド、ガラクトシルセレブロシド、ラクトシルセレブロシド等)、グリセロ糖脂質(例えば、スルホキシリボシルグリセリド、ジグリコシルジグリセリド、ジガラクトシルジグリセリド、ガラクトシルジグリセリド、グリコシルジグリセリド等)等が挙げられる。

【0069】
コレステロールの例としては、例えば、動物由来ステロール(例えば、コレステロール、コレステロールコハク酸、ラノステロール、ジヒドロラノステロール、デスモステロール、ジヒドロコレステロール等)、植物由来ステロール(フィトステロール)(例えば、スチグマステロール、シトステロール、カンペステロール、ブラシカステロール等)、微生物由来ステロール(例えば、チモステロール、エルゴステロール等)等が挙げられる。

【0070】
飽和又は不飽和の脂肪酸としては、例えば、パルミチン酸、オレイン酸、ステアリン酸、アラキドン酸、ミリスチン酸等の炭素数12~20の不飽和、又は飽和の脂肪酸が挙げられる。

【0071】
なお、図4A~図4Eの被覆層の構成は一例であって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。例えば、被覆層40は、上述したように脂質膜に限定されるものではなく、上記条件を満たす範囲で種々の材料を適用することができる。例えば、抗体などの生理機能性物質や抗腫瘍活性物質などを結合させてもよい。被覆層は、単層膜に限定されず、二層膜等の多層膜構造としてもよい。

【0072】
本発明に係る磁性粒子含有製剤7の粒径は、標的部位や目的に応じて任意に設定可能である。磁性粒子含有製剤7の平均粒子径は、特に限定されないが、5nm以上、3000nm以下であることが好ましい。但し、生体内の血管系を循環させる場合には、毛細血管(最小で約5μm程度)をぎりぎり通過する程度のサイズとすると、肝臓などの細網内皮系に取り込まれやすくなり、効率が低下するという問題がある。また、粒子径がマイクロサイズとなると、製造工程中に沈殿が生じやすくなるという問題もある。一方、粒子径が小さすぎても腎臓のろ過作用により尿から排出されてしまう。このため、磁性粒子含有製剤7は、ナノ粒子であることが好ましい。長期血中滞留の観点からは、500nm以下、腎排泄防止の観点からは2nm以上とすることが好ましい。被覆層40の膜厚は、特に限定されないが、2分子膜の場合には通常、5nm以上、30nm以下程度である。

【0073】
次に、本発明の磁性粒子含有製剤7の製造方法の一例について説明する。ここでは、被覆層40として脂質膜を適用した例について説明する。まず、骨格となる中空の磁性粒子1を製造する。製造方法は、例えば、上記実施形態1で述べた方法により製造することができる。

【0074】
次いで、中空の磁性粒子1内に薬剤30を内包させることにより、薬剤内包型の磁性粒子6を調製する。次いで、被覆層40により薬剤内包型の磁性粒子6をコーティングする。

【0075】
水溶性の薬剤を用いる場合、薬剤を水や水溶液等の溶媒中に溶解させる。そして、これに中空磁性粒子を加えて分散させた後、溶媒を留去して混合物を得る。得られた混合物を、薬剤が不溶、又は微溶の有機溶媒に超音波撹拌等で分散させる。次いで、これに脂質膜を形成する物質を加えて撹拌する。このとき、予め有機溶剤に脂質膜を形成する物質を溶解させておいてもよい。有機溶媒を留去した後に、水や生理食塩水に超音波撹拌等で再分散させることにより、磁性粒子含有製剤7が得られる。

【0076】
磁気誘導薬物伝送システムに用いる場合、予め、分散水溶液に所定の磁場を示す磁石を近づけて、集積性のよい磁性粒子含有製剤を回収して、生理食塩水等に再分散させてもよい。

【0077】
有機溶剤に可溶な薬剤を用いる場合、薬剤30を有機溶媒中に溶解させる。そして、これに中空の磁性粒子1を加えて分散させた後に、溶媒を留去して混合物を得る。微量の有機溶媒に溶解させた脂質分子と、上記工程により得た混合物に、水又は生理食塩水を加え、超音波撹拌等により分散させる。これにより、薬剤が導入された磁性粒子含有製剤が得られる。必要に応じて、分散水溶液に所定の磁場を示す磁石を近づけて、磁気誘導特性に優れる磁性粒子含有製剤7のみを回収して、生理食塩水等に再分散させてもよい。

【0078】
また、予め生体適合性に優れた分子や高分子で中空の磁性粒子表面を修飾して、上記のように薬剤を加えてもよい。この場合、脂質膜を形成する分子や高分子を加えなくてもよい。これらの製造工程により、中空の磁性粒子の内部、若しくは被覆層の少なくともいずれかに薬剤を含有する磁性粒子含有製剤7を得ることができる。

【0079】
被覆層40の形成は、例えば、本発明者の並木らが提案した上記非特許文献3、上記特許文献5の方法に従って形成することができる。

【0080】
なお、上記製造方法は一例であって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の方法を適用することが可能である。被覆層40の主成分を構成する膜として高分子膜を用いる場合には、薬剤内包型の磁性粒子6に被覆させる工程を経ることにより製造することができる。

【0081】
なお、水溶性薬剤には、緩衝塩(例えば、リン酸緩衝塩、クエン酸緩衝塩、酢酸緩衝塩等)、糖類、多価アルコール、水溶性高分子、非イオン性界面活性剤、抗酸化剤、水和促進剤、pH調整剤等を適宜用いることができる。脂溶性薬剤においても同様に、調整剤、保存剤等を適宜用いることができる。

【0082】
また、薬剤導入率は、例えば、磁性粒子含有製剤を熱重量分析することにより求めることができる。より具体的には、脂質等の被覆層の分解温度以下の重量減少量を求めることにより、薬剤導入率を求めることができる。また、予め薬剤のごく一部に蛍光色素(水溶性薬剤であれば水溶性蛍光色素、脂溶性薬剤であれば脂溶性蛍光色素)を混入させ、磁性粒子含有製剤を精製して分散させた後に、励起波長光を照射して、蛍光強度を測定することにより間接的に定量してもよい。また、放射性同位元素を用いて薬剤を標識する方法を用いてもよい。

【0083】
また、上記非特許文献3に開示したように、脂質膜外層の定量については、リン脂質の場合、マラカイトグリーン試薬(BIOMOL GREEN Reagent: BIOMOL Research laboratories, PA, USA)でリン脂質をリン酸に分解して定量することが可能である。また、コレステロールの場合、コレステロール定量化キット(Calbiochem, Darmstadt, Germany)を用いて定量することができる。

【0084】
図5は、図3Aの磁性粒子含有製剤7と、これと静電相互作用などにより自己会合可能な複合形成体70とからなる会合型の磁性粒子含有製剤8の模式的概念図である。説明の便宜上、内部を可視化するように複合形成体70を透明体として表記する。図5に示すように、複合形成体70を磁性粒子含有製剤7の外側に設けることも可能である。複合形成体70は、内部に薬剤を内包することができる。また、複合形成体70自体が薬剤であってもよい。磁性粒子含有製剤7内には薬剤を設けずに、複合形成体70のみに薬剤を搭載することも可能である。また、複合形成体70に薬剤を搭載せず、別の機能を持たせることも可能である。

【0085】
送達を目的とする物質が核酸である場合、被覆層40の主成分を構成する膜を陽性荷電脂質により構成し、陰性荷電をもつ核酸を複合形成体70とし、これらの静電的相互作用を介して、磁性粒子含有製剤7と核酸からなる会合型の磁性粒子含有製剤8を形成することができる(上記特許文献5参照)。この場合において、磁性粒子含有製剤7内にも薬剤を含ませれば、薬剤搭載量の大幅な増加を図ることができる。なお、図5の磁性粒子含有製剤と薬剤を含有する複合形成体の形成方法は、一例であって、これに限定されるものではない。

【0086】
上記磁性粒子含有製剤7、会合型の磁性粒子含有製剤8は、一例であって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変形が可能である。

【0087】
本実施形態2によれば、親水部と親和性の高い薬剤、疎水部と親和性の高い薬剤など、薬剤の特性に応じて個別具体的に剤形を設計することが可能となる。薬剤は、前述したとおり、薬剤内包型の磁性粒子6、被覆層40に含有させることができる。被覆層40に含有する薬剤は、主成分を構成する分子に内包されたものであってもよいし、主成分を構成する分子自体であってもよい。

【0088】
上記のように構成された磁性粒子含有製剤7は、公知の磁気送達システムを利用して、生体内などの治療や診断に適用することができる。例えば、上記特許文献4のように外部磁場を利用して、生体内に磁性粒子含有製剤7を送達することができる。また、図6の概念図に示すように、被検体80の患部である胃81等に磁気照射装置82を設置し、磁性粒子含有製剤7を含む薬84を注射83により血液中に注入するなどの方法を採用することができる。血液中に注入された磁性を帯びた薬物が磁気照射装置82の磁力により患部に集積される。磁気照射装置82としては、本発明者の並木らが提案した上記特許文献5や、特願2008-304288号などの技術を好適に適用することができる。

【0089】
磁性粒子含有製剤7を送達すべき標的細胞が由来する生物種は、例えば、動物、植物、微生物等、特に限定されることはないが、動物由来であることが好ましく、例えば、ヒト、サル、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、ブタ、ウサギ、イヌ、ネコ、マウス、ラット、モルモット等、哺乳動物であることがより好ましい。また、該標的細胞の種類は、例えば、体細胞、生殖細胞、幹細胞又はこれらの培養細胞等、特に限定されない。

【0090】
磁性粒子含有製剤7は、生体内、生体外のいずれにおいても使用することができる。生体内で使用する場合、投与経路としては、例えば、静脈内、動脈内、門脈内、実質臓器内(例えば、脳、目、甲状腺、乳腺、心臓、肺、肝臓、膵臓、腎臓、副腎、卵巣、精巣等)、管腔臓器の管腔内(例えば、食道、胃、十二指腸、空腸、回腸、大腸、胆嚢、尿管、膀胱内等)、脳脊髄腔内、胸腔内、腹腔内、筋肉内、関節内、皮下、皮内等、特に限定されない。

【0091】
目的物質を結合した、又は、目的物質との複合体を形成した磁性粒子含有製剤7の標的細胞への送達後、該標的細胞による磁性粒子含有製剤7の取り込み効率を向上させるため、必要に応じて、細胞膜表面の受容体と結合可能な物質(例えば、抗体あるいはその断片(例えば、Fab断片、F(ab)'2断片、単鎖抗体等)、インスリン、トランスフェリン、葉酸、ヒアルロン酸、糖鎖、アポリポタンパク(例えば、アポA-1、アポB-48、アポB-100、アポE等)、成長因子(例えば、上皮成長因子、肝細胞成長因子、線維芽細胞成長因子、インスリン様成長因子等)等、特に限定されることなく磁性粒子含有製剤7表面に結合することが可能である。

【0092】
従来、磁性金属元素を含むナノ粒子を含有させた剤形において、薬剤含有率を高めることが難しかった。本実施形態2によれば、骨格である磁性籠状骨格10に空隙11を設けて、その内部に薬剤を搭載する構成としているので、薬剤含有率を高めることが可能である。

【0093】
また、本実施形態2によれば、磁性ナノ粒子が剤形の中心部に配置されている場合や剤形に均一に分散されている場合に比して、磁気応答効率を高めることができる。また、磁気応答効率の向上に伴って、剤形中に含有させる磁性金属元素の必要量を減らすことが可能となる。その結果、薬剤の搭載量を増やすことも可能となる。

【0094】
さらに、本実施形態2によれば、被覆層40の主成分を構成する膜を薬剤により構成すれば、薬剤搭載量のさらなる向上を図ることができる。この場合、薬剤内包型の磁性粒子6に含有させる薬剤と、被覆層40に含有させる薬剤を別個独立に設計することが可能であるため、複数の薬剤を含有させたい用途等にも好適である。本発明によれば、薬剤搭載量を高めることが可能であり、かつ、設計自由度を高めることができるという優れた効果を有する。

【0095】
また、本実施形態2によれば、主原料として好適なリン脂質や両親媒性界面活性剤は、毒性を回避することが容易である。しかも、選択可能な脂質は無数に存在するので、脂質の種類、組み合わせ及び比率の選択により、薬物送達システムの高性能化が容易である。さらに、脂質を主な原料とするナノ粒子を用いたドラッグデリバリーシステム、遺伝子治療の臨床治験は、これまでも数多く存在するというメリットもある。

【0096】
さらに、磁性粒子含有製剤7と薬剤を含有する複合形成体よりなる会合型の磁性粒子含有製剤8を適用することにより、磁性特性を利用した薬物送達システムを利用可能な薬剤の種類をさらに増加させることが期待できる。また、この場合において、磁性粒子含有製剤7内にも薬剤を含ませれば、薬剤搭載量の大幅な増加を図ることができる。

【0097】
本実施形態2によれば、磁性粒子含有製剤7を血液等に投与し、病巣部である患部を磁場環境下におくことにより、直接的かつ効率的に薬剤を送達して集積させることができる。このため、治療の効果の飛躍的向上が期待できる。また、本発明によれば、磁場環境下に集積させるシステムを用いているので、標的部位以外の組織・臓器に障害をきたす可能性を最小限にとどめることができる。従って、毒性が強く、治療域が極めて狭くて副作用により薬剤の投与を制限せざるを得なかった治療などに、本実施形態2に係る磁性粒子含有製剤は特に有用である。

【0098】
[実施形態3]
次に、上記実施形態2とは異なる磁性粒子含有製剤の一例について説明する。上記実施形態2に係る磁性粒子含有製剤7においては、少なくとも薬剤成分を中空の磁性粒子1内に内包させていたが、本実施形態3に係る磁性粒子含有製剤は、少なくとも薬剤を被覆層に含有させている点において相違する。

【0099】
図7に、本実施形態3に係る磁性粒子含有製剤7mの被覆層40mの部分拡大図を示す。同図に示すように、被覆層40mは、脂質膜41mに抗腫瘍活性物質45が結合されている。これにより、本実施形態3に係る磁性粒子含有製剤7mは、腫瘍部に検出用として送達されるだけでなく、腫瘍組織に特異的に作用することができる。従って、腫瘍組織の検出能に優れた造影剤として用いることができる。また、交番磁場照射、又は超音波照射などのエネルギー照射を用いた温熱療法により、腫瘍組織の温度を局部的に上昇させることができる。さらに、磁性粒子内、若しくは被覆層に治療用の薬剤を含有させておくことにより、腫瘍組織に作用する治療剤として用いることができる。これらは、任意に併用することが可能である。

【0100】
磁性粒子含有製剤7mの内部は、前述したように治療用の薬剤を含有させてもよいし、被覆層40mの形成を促す物質を充填したり、中空としたりしてもよい。また、用いる磁性粒子として、中空の磁性粒子1に代えて、付着型の磁性粒子2、融着型の磁性粒子3を適用することも可能である。

【0101】
なお、本実施形態3においては、被覆層40mに抗腫瘍活性物質45を結合させる例を説明したが、薬理活性物質、遺伝子導入媒介物質、免疫増強物質、生理機能性物質、細胞融合物質等から選らばれる生理活性物質、治療剤などを脂質膜41m等に結合させることも可能である。

【0102】
本発明に係る磁性粒子(中空の磁性粒子1、付着型の磁性粒子2、融着型の磁性粒子3)、及び磁性粒子含有製剤(磁性粒子含有製剤7の他、薬剤内包型の磁性粒子6、会合型の磁性粒子含有製剤8も含む)は、一例であって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の変形が可能である。また、医用分野にとどまらず、電子材料分野、化学分野等において広範に適用することができる。

【0103】
<実施例>
以下、本発明を具体的実施例により更に詳細に説明する。但し、本発明は、以下の実施例に何ら限定されるものではない。

【0104】
(実施例1;付着型の磁性粒子2Aの合成)
正のゼータ電位を有する鋳型粒子を以下の方法により調製した。まず、プレ鋳型粒子であるシリカ粒子(日本触媒社製シーホスターKE-P30、直径0.28μm)0.64gと脱イオン水80mlを100mlビーカーに入れ、10分間ホモジナイザーで分散処理することにより、シリカ粒子の水分散液を得た。

【0105】
次いで、ポリ(塩化ジアリルジメチルアンモニウム)((以下、「PDDA」と略記する)重量平均分子量Mw100000~200000、Sigma-Aldrich社製)1.5gと脱イオン水28.5gを遠沈管に入れた。この遠沈管を、超音波洗浄機により10分間超音波照射してPDDAを溶解させた。このPDDA水溶液に、シリカ粒子水分散液5mlを超音波照射しながら滴下した。滴下終了後、さらに超音波照射下で10分間放置した。回転数10000rpm、時間10分間の条件で脱イオン水による遠心分離精製を3回繰返し、シリカ粒子に吸着しなかったPDDAを除去した。これにより、5mlの脱イオン水に分散させたPDDA被覆シリカ粒子(鋳型粒子)の水分散液を得た。

【0106】
この水分散液を10mmol/dmのNaCl水溶液に加え、大塚電子社製ゼータ電位計(ELS8000)によりPDDA被覆シリカ粒子のゼータ電位を25Cで測定した。ゼータ電位は、+60mVであり、未修飾のシリカ粒子のゼータ電位-30mVから電位が反転したことを確認した。すなわち、シリカ粒子が、カチオン性ポリマーのPDDAにより被覆されていることを確認した。以後、このように調製したPDDA被覆シリカ粒子を「PDDA/SiO-OH」と表記する。

【0107】
次いで、FePtナノ粒子吸着PDDA被覆シリカ粒子(付着型の磁性粒子)の合成を行った。テトラエチレングルコール(Sigma-Aldrich社製)50ml、上述した工程で得たPDDA/SiO-OH水分散液5ml(計算により求めたSiOの含有量;0.04g)を100mlのナス型フラスコに加え、エバポレーションにより水を除去した。フラスコの内容物を100mlの三口フラスコに移し替え、鉄(III)エトキシド(Alfa Aesar社製)0.086g(0.45mmol)、アセチルアセトナト白金(II)(Sigma-Aldrich社製)0.196g(0.500mmol)を加え、窒素ガス雰囲気下にした後、室温で24時間撹拌した。窒素ガス雰囲気下、回転数200rpmで撹拌しながら、10C毎分で室温から230Cまで昇温して、230Cで2時間加熱した。室温まで放冷後、エタノールを用いた遠心分離を3回繰返し、その後20mlの脱イオン水に分散させることにより、FePt磁性-金属系ナノ粒子23Aが付着したFePtナノ粒子吸着PDDA被覆シリカ粒子の水分散液を調製した。FePtナノ粒子吸着PDDA被覆シリカ粒子の収量は、0.088gであった。

【0108】
図8Aに、FePtナノ粒子吸着PDDA被覆シリカ粒子(付着型の磁性粒子)の透過型電子顕微鏡像を示す。

【0109】
(実施例2)FePtナノ粒子吸着PDDA被覆シリカ粒子(付着型の磁性粒子)の合成の際、PDDA/SiO-OH水分散液の添加量を10ml(計算により求めたSiOの含有量;0.08g)に変更した以外は、上記実施例1と同様の方法にて、FePtナノ粒子吸着PDDA被覆シリカ粒子の水分散液を調製した。FePtナノ粒子吸着PDDA被覆シリカ粒子の収量は、0.056gであった。図8Bに、実施例2で得られたFePtナノ粒子吸着PDDA被覆シリカ粒子の透過型電子顕微鏡像を示す。

【0110】
(実施例3)FePtナノ粒子吸着PDDA被覆シリカ粒子(付着型の磁性粒子)の合成の際、PDDA/SiO-OH水分散液の添加量を25ml(計算により求めたSiOの含有量;0.2g)に変更した以外は、上記実施例1と同様の方法にて、FePtナノ粒子吸着PDDA被覆シリカ粒子の水分散液を調製した。FePtナノ粒子吸着PDDA被覆シリカ粒子の収量は、0.082gであった。図8Cに、実施例3で得られたFePtナノ粒子吸着PDDA被覆シリカ粒子の透過型電子顕微鏡像を示す。

【0111】
(実施例4)FePtナノ粒子吸着PDDA被覆シリカ粒子(付着型の磁性粒子)の合成の際、PDDA/SiO-OH水分散液の添加量を2.5ml(計算により求めたSiOの含有量;0.02g)に変更した以外は、上記実施例1と同様の方法にて、FePtナノ粒子吸着PDDA被覆シリカ粒子の水分散液を調製した。FePtナノ粒子吸着PDDA被覆シリカ粒子の収量は、0.044gであった。図8Dに、実施例4で得られたFePtナノ粒子吸着PDDA被覆シリカ粒子の透過型電子顕微鏡像を示す。

【0112】
(実施例5)FePtナノ粒子吸着PDDA被覆シリカ粒子(付着型の磁性粒子)の合成の際、PDDA/SiO-OH水分散液の添加量を1ml(計算により求めたSiOの含有量;0.008g)に変更した以外は、上記実施例1と同様の方法にて、FePtナノ粒子吸着PDDA被覆シリカ粒子の水分散液を調製した。FePtナノ粒子吸着PDDA被覆シリカ粒子の収量は、0.032gであった。図8Eに、実施例5で得られたFePtナノ粒子吸着PDDA被覆シリカ粒子の透過型電子顕微鏡像を示す。

【0113】
(実施例6)
プレ鋳型粒子であるシリカ粒子(日本触媒社製シーホスターKE-P30、直径0.28μm)1.6gとエタノール80mlを100mlビーカーに入れ、10分間ホモジナイザーで分散処理することにより、シリカ粒子のエタノール分散液を得た。3-アミノプロピルトリエトキシシラン(以下、「APTE」と略記する)100mg滴下し、さらにホモジナイザーで5分間処理した後、40℃で24時間スターラーを用いて撹拌した。反応後、エタノールで3回遠心分離精製を行い、200mlのエタノールに再分散させ、PDDAの代わりに、修飾基としてアミノプロピル基を有するAPET被覆シリカ粒子(APET/SiO-OH)のエタノール分散液200mlを得た。10mmol/dm-3のNaCl溶液中でゼータ電位を測定(25℃)した結果、ゼータ電位は+50mVであった。これより、シリカ微粒子の表面がアミノプロピル基で被覆されていることを確認した。

【0114】
次いで、実施例1におけるPDDA/SiO-OH水分散液5ml(計算により求めたSiOの含有量;0.04g)を加える代わりに、APTE/SiO-OH水分散液5ml(計算により求めたSiOの含有量;0.04g)を用いた以外の条件は、実施例1と同様とし、FePtナノ粒子吸着APTE被覆シリカ粒子の水分散液を調製した。FePtナノ粒子吸着APTE被覆シリカ粒子の収量は、0.112gであった。図8Fに、実施例6で得られたFePtナノ粒子吸着APTE被覆シリカ粒子の透過型電子顕微鏡像を示す。

【0115】
(比較例1)実施例1におけるPDDA/SiO-OH水分散液5ml(計算により求めたSiOの含有量;0.04g)を加える代わりに、シリカ粒子(日本触媒社製シーホスターKE-P30)の水分散液5ml(計算により求めたSiOの含有量;0.04g)以外の条件は、実施例1と同様とし、FePtナノ粒子吸着APTE被覆シリカ粒子の水分散液を調製した。10mmol/dm-3のNaCl溶液中でゼータ電位を測定(25℃)したところ、-33mVという値が得られた。図17Aに、比較例1で得られたシリカ粒子の透過型電子顕微鏡像を示す。これより、負のゼータ電位を示すシリカ微粒子表面にFePtナノ粒子が吸着せず、付着型の磁性粒子が得られないことがわかる。

【0116】
(比較例2)実施例6における3-アミノプロピルトリエトキシシランの代わりに3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン(以下、「MPTE」と略記する)100mgを用いて行う以外、実施例6と同様の方法により3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン被覆シリカ粒子(MPTE/SiO-OH)を得た。ゼータ電位は、-20mVであった。そして、実施例1と同様の方法により、FePtナノ粒子吸着MPTE被覆シリカ粒子の水分散液を調製した。図17Bに、比較例2で得られたFePtナノ粒子吸着MPTE被覆シリカ粒子の透過型電子顕微鏡像を示す。

【0117】
実施例1~6においては、芯材であるプレ鋳型粒子のシリカ粒子に黒色のFePtナノ粒子が吸着していることがわかる。一方、比較例1においては、シリカ粒子にFePtナノ粒子が付着していないことがわかる。これより、鋳型粒子と金属系ナノ粒子とは異極性とすることが必要であることがわかる。また、比較例2においては、チオール修飾シリカ粒子に、FePtナノ粒子が付着していないことがわかる。負のゼータ電位のチオール修飾の場合には、付着型の磁性粒子が得られないことがわかる。

【0118】
(実施例7;中空の磁性粒子1Aの合成)
上記実施例1により得られたFePtナノ粒子吸着PDDA被覆シリカ粒子(付着型の磁性粒子)の水分散液を、超音波洗浄機を用いて超音波下で再分散させた。20mlのうち5mlを耐圧硝子工業社製の密閉型超臨界反応容器TSC-0011(容積11ml)に入れ、トルクレンチで密栓した。密栓した反応容器を400Cに予め加熱した電気炉に入れ、圧力約37MPaの条件下で3時間加熱処理を施した。反応容器を水槽に入れ、急冷した。反応容器の栓を開け、超音波処理を施した後に、FePt-中空磁性粒子(磁性粒子1A)の水分散液を得た。

【0119】
図9Aに、FePt-中空磁性粒子(磁性粒子1A)の100keVの透過型電子顕微鏡(日立H7100透過型電子顕微鏡)像を示す。同図より、芯材のシリカ粒子が溶解して除去されていることがわかる。また、FePtナノ粒子同士が融着して、表面に空隙を有する磁性籠状骨格10Aが形成されていることがわかる。

【0120】
次に、FePt-中空磁性粒子の空隙率を測定した。図9Bの透過型電子顕微鏡像は、中空の磁性粒子を2次元平面に投影した像である。これを100keVの透過型電子顕微鏡(日立H7100透過型電子顕微鏡)によって画像処理し、白黒二値化した。この際、最低の明るさと最高の明るさを規格化し、明度が80%以上となるものを白色と定義し、凡その輪郭(円形)の形状の面積に対する電子線透過部(上記白黒二値化により、白色と判定された領域)の面積の百分率を算出した。その結果、中空磁性粒子の輪郭内の全面積が179206ピクセル、透過部が4977ピクセルであり、空隙率2.78%と算出された。

【0121】
(実施例8;中空の磁性粒子1Bの合成)

【0122】
上記実施例3により得られたFePtナノ粒子吸着PDDA被覆シリカ粒子(付着型の磁性粒子)の水分散液を用意し、上記実施例7と同様の方法により、FePt-中空磁性粒子(磁性粒子1B)の水分散液を得た。

【0123】
図10Aに、FePt-中空磁性粒子(磁性粒子1A)の100keVの透過型電子顕微鏡像を示す。同図より、芯材のシリカ粒子が溶解して除去されていることがわかる。また、FePtナノ粒子同士が融着して、表面に空隙を有する磁性籠状骨格10Bが形成されていることがわかる。

【0124】
図10Bの透過型電子顕微鏡像は、中空の磁性粒子を2次元平面に投影した像である。この磁性粒子の空隙率を、実施例7と同様の方法によって算出した。その結果、中空の磁性粒子の輪郭内の全面積が170349ピクセル、透過部が17367ピクセルであり、空隙率10.2%と算出された。

【0125】
(実施例9:磁性粒子含有製剤の調製)
上記実施例7で得られたFePt-中空磁性粒子(磁性粒子1A)内部に各種抗癌剤を封入し、磁性籠状骨格を脂質膜で密封することにより癌治療用強磁性ナノ粒子を作製した。具体的には、水熱処理後のFePt-中空磁性粒子分散液を、蒸留水を用いて透析・精製した。得られたFePt-中空磁性粒子分散液に各種抗癌剤を添加後、さらにリン脂質であるホスファチジルコリンを溶解したクロロホルム溶液を加えた。

【0126】
混合液を超音波攪拌しながら、ロータリーエバポレーターを用いて10mmHg程度まで急激に減圧した。上記工程等を経て、磁性籠状骨格がリン脂質で覆われ、骨格内部に抗癌剤を有する癌治療用強磁性ナノ粒子(磁性粒子含有製剤7A)を作製した。

【0127】
図11Aに、FePt-中空磁性粒子(磁性粒子1A)内部に抗癌剤のドキソルビシンを密封した癌治療用ナノ粒子である磁性粒子含有製剤7Aの透過型電子顕微鏡像を、図11Bに、その骨格表面の脂質膜よりなる被覆層40A近傍の拡大透過型電子顕微鏡像を示す。これらの図中のスケールバーは20nmに相当する。

【0128】
得られた磁性粒子含有製剤7Aの粒子を透過型電子顕微鏡観察により測定したところ、平均外径352nm、平均脂質膜厚8nm、磁性骨格厚18nm、平均内径300nmであった。磁性粒子含有製剤7Aの体積に対し、磁性籠状骨格10Aの内部の体積を求めたところ、61.9%であった。換言すると、薬剤搭載率は、61.9%であった。但し、計算の便宜上、磁性籠状骨格10Aの空隙率を0%として算出した。従って、実際には、前述の薬剤搭載率よりも高いと考えられる。

【0129】
次に、上記癌治療用ナノ粒子である磁性粒子含有製剤7Aの磁気誘導を行った結果について説明する。96ウェルプレートのウェル(A)に癌治療用ナノ粒子分散液200μlを入れ、500mTのネオジム磁石をウェル(A)底面に設置し、5分後に上清100μlをウェル(B)に移した。次いで、プレートをドキソルビシンの励起波長480nm、蛍光波長580nmで観察することにより、ウェル(A)における磁性粒子含有製剤7Aの磁気集積特性を確認した(図12参照)。

【0130】
(実施例10)
実施例7で得られたFePt-中空磁性粒子(磁性粒子1A)を、蒸留水を用いて透析・精製後、エタノールで洗浄・凍結乾燥を行った。得られた乾燥FePt-中空磁性粒子粉末と、抗癌剤のドキソルビシン水溶液(100μg/ml)を良く混合し、ナス型フラスコに入れ、ロータリーエバポレーターに接続し、高真空条件(10mmHg程度)にすることにより、中空磁性粒子内部の空気をドキソルビシン水溶液に完全に置換した。次いで、リン脂質であるホスファチジルコリンを溶解したクロロホルム溶液を加えた。混合液を超音波撹拌しながら、ロータリーエバポレーターを用いて10mmHg程度まで急激に減圧した。上記工程等を経て、磁性籠状骨格がリン脂質で覆われ、骨格内部に抗癌剤を有する癌治療用強磁性ナノ粒子(磁性粒子含有製剤7A)を作製した。さらに、磁力により、リン脂質で覆われた癌治療用強磁性ナノ粒子を集積し、磁性籠状骨格を含まないリン脂質のみからなるリポソームを除去・精製した。引き続き、精製試料の一部をとり、クロロホルムを加え超音波処理、遠心分離することにより、水層(上層)、クロロホルム層(下層)に分離させた。この処理により、リン脂質被膜はクロロホルム層に溶解、ドキソルビシンは水層に溶解した。

【0131】
ドキソルビシンを含む水層を、励起波長/蛍光波長=510nm/550nmにて、蛍光強度を測定し、あらかじめ既知量のドキソルビシンにより作成した検量線から、ドキソルビシン含有量を決定し、1μg/mlのドキソルビシンを含む癌治療用強磁性ナノ粒子分散液を細胞に加えた。濃度は、10%胎児ウシ血清/細胞培養液RPMI1640で希釈することにより調整した。次に、胃癌細胞株MKN-45とこの癌治療用強磁性ナノ粒子を15分間インキュベーションした。この際、容器の底面にネオジウム磁石を設置した。15分後に磁石を外し、培養液で細胞を洗浄後、培養液に置き換えて培養した。インキュベーションと培養の合計時間が計4日間となるようにした。

【0132】
(比較例3)
容器の底面にネオジウム磁石を設置しない以外は、上記実施例10と同様の方法・条件とした。

【0133】
(比較例4)
FePt-中空磁性粒子分散液に、抗癌剤のドキソルビシンを添加しない点以外は、上記実施例10と同様とした。

【0134】
(比較例5)
容器の底面にネオジウム磁石を設置しない以外は、上記比較例4と同様の方法・条件とした。

【0135】
図13Aに、実施例10及び比較例3~5のサンプルについて、それぞれ6回実験を行った際の細胞生存率%の平均値と標準偏差のグラフを示す。図13Aより、実施例10においては、細胞生存率が25.7%であったのに対し、比較例3~比較例5においては、細胞生存率が90%以上であった。すなわち、実施例10においては、胃癌細胞株MKN-45に対して優れた抗腫瘍効果を発揮することがわかった。比較例3においては、ネオジウム磁石を設置しない点以外は、実施例10と共通しているが、細胞生存率が高かった。これらの結果より、実施例10に係る癌治療用強磁性ナノ粒子の優れた磁気集積特性による効率的集積効果、及び優れた抗腫瘍効果は明らかである。

【0136】
(比較例6)
癌治療用強磁性ナノ粒子を用いずに、抗癌剤のドキソルビシンも添加しないリファレンス溶液を胃癌細胞株MNK-45とインキュベーションさせた。インキュベーション時間は、4日間とした。また、容器の底面にネオジウム磁石を設置しなかった。それ以外の方法・条件は、上記実施例10と同様とした。

【0137】
(比較例7)
癌治療用強磁性ナノ粒子を用いずに、1μg/ml濃度のドキソルビシンを胃癌細胞株MNK-45とインキュベーションさせた。インキュベーション時間は、15分とした。また、容器の底面にネオジウム磁石を設置しなかった。それ以外の方法・条件は、上記実施例10と同様とした。

【0138】
(比較例8)
癌治療用強磁性ナノ粒子を用いずに、20μg/ml濃度のドキソルビシンを胃癌細胞株MNK-45とインキュベーションさせた。インキュベーション時間は、15分とした。また、容器の底面にネオジウム磁石を設置しなかった。それ以外の方法・条件は、上記実施例10と同様とした。

【0139】
(比較例9)
癌治療用強磁性ナノ粒子を用いずに、400μg/ml濃度のドキソルビシンを胃癌細胞株MNK-45とインキュベーションさせた。インキュベーション時間は、15分とした。また、容器の底面にネオジウム磁石を設置しなかった。それ以外の方法・条件は、上記実施例10と同様とした。

【0140】
(比較例10)
癌治療用強磁性ナノ粒子を用いずに、1μg/ml濃度のドキソルビシンを胃癌細胞株MNK-45とインキュベーションさせた。インキュベーション時間は、4日間とした。また、容器の底面にネオジウム磁石を設置しなかった。それ以外の方法・条件は、上記実施例10と同様とした。

【0141】
図13Bに、実施例10及び比較例6~10のサンプルについて、それぞれ6回実験を行った際の細胞生存率%の平均値と標準偏差のグラフを示す。比較例6のリファレンスの細胞生存率は、凡そ100%であった。また、比較例7は、90%以上の細胞生存率であった。これに対し、比較例8、9のようにドキソルビシンの含有量を上げていくと、抗腫瘍効果が認められる。さらに、比較例10より、ドキソルビシンの含有量を実施例10と同じとした場合であっても、インキュベーション時間を長くすれば、抗腫瘍効果が認められることがわかる。しかしながら、薬物投与量を多くする方法、薬物投与時間を長くする方法は、生体への負荷が大きい。本発明に係る実施例10の癌治療用強磁性ナノ粒子によれば、磁気集積特性を活用することにより、少ない薬物量で、しかも、短時間で細胞生存率を低減させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0142】
本発明の磁性粒子は、薬剤を内包等により保持させることにより、細胞や動物組織への遺伝子導入等のバイオテクノロジー分野での利用や、遺伝子・薬物の患部への送達による疾患の治療に適用することができる。また、本発明の磁性粒子は、交流磁場による温熱療法による疾患の治療用に好適に利用することができる。また、本発明の磁性粒子は、患部に集積した当該粒子の微量磁気検出装置、若しくはMRI(magnetic resonance imaging:核磁気共鳴画像法)による検出・患部に集積した放射性同位元素あるいは造影剤を含有させた磁性粒子の検出による疾患の診断用にも使用可能である。さらに、磁性粒子内部にマイクロバブルを封入し、超音波を適用して薬剤・遺伝子・高分子物質などを細胞に導入する手段としても使用可能である。また、本発明の磁性粒子は、インフルエンザ等の検査薬、診断薬担体、細菌分離単体、細胞分離担体、核酸分離精製担体、蛋白分離精製担体、固定化酵素担体、磁性トナー、磁性インク、磁性塗料、触媒担体、触媒、燃料電池等への応用展開も可能である。
【0143】
この出願は、2010年2月8日に出願された日本出願特願2010-25660を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
【符号の説明】
【0144】
1 中空の磁性粒子
2 付着型の磁性粒子
3 融着型の磁性粒子
6 薬剤内包型の磁性粒子
7 磁性粒子含有製剤
8 会合型の磁性粒子含有製剤
10 磁性籠状骨格
11 空隙
12 中空
30 薬剤
31 脂溶性薬剤
40 被覆層
41 脂質膜
42 親水性ポリマー
45 抗腫瘍活性物質
50 両親媒性界面活性剤
51 親水部
52 疎水部
60 リン脂質
61 親水部
62 疎水部
70 複合形成体
80 被検体
81 胃
82 磁気照射装置
83 注射
84 薬
図面
【図1A】
0
【図1B】
1
【図2A】
2
【図2B】
3
【図2C】
4
【図2D】
5
【図3A】
6
【図3B】
7
【図4A】
8
【図4B】
9
【図4C】
10
【図4D】
11
【図4E】
12
【図5】
13
【図6】
14
【図7】
15
【図8A】
16
【図8B】
17
【図8C】
18
【図8D】
19
【図8E】
20
【図8F】
21
【図9A】
22
【図9B】
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【図10A】
24
【図10B】
25
【図11A】
26
【図11B】
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【図12】
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【図13A】
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【図13B】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17A】
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【図17B】
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