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明細書 :化学修飾水溶性エラスチン、化学修飾水溶性エラスチンとコラーゲンとの混合ゲル及びそれらの製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5935094号 (P5935094)
登録日 平成28年5月20日(2016.5.20)
発行日 平成28年6月15日(2016.6.15)
発明の名称または考案の名称 化学修飾水溶性エラスチン、化学修飾水溶性エラスチンとコラーゲンとの混合ゲル及びそれらの製造方法
国際特許分類 C07K  14/78        (2006.01)
C07K   1/02        (2006.01)
C07K   1/10        (2006.01)
A61L  27/00        (2006.01)
FI C07K 14/78
C07K 1/02
C07K 1/10
A61L 27/00 Q
A61L 27/00 P
請求項の数または発明の数 17
全頁数 19
出願番号 特願2012-500615 (P2012-500615)
出願日 平成23年2月16日(2011.2.16)
国際出願番号 PCT/JP2011/053228
国際公開番号 WO2011/102363
国際公開日 平成23年8月25日(2011.8.25)
優先権出願番号 2010034149
優先日 平成22年2月19日(2010.2.19)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成26年1月27日(2014.1.27)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504174135
【氏名又は名称】国立大学法人九州工業大学
発明者または考案者 【氏名】岡元 孝二
【氏名】山田 宏
【氏名】前川 陽祐
【氏名】渡辺 亮太
【氏名】足立 光優
個別代理人の代理人 【識別番号】100101719、【弁理士】、【氏名又は名称】野口 恭弘
審査官 【審査官】鈴木 崇之
参考文献・文献 特開2007-045722(JP,A)
特表2007-528918(JP,A)
国際公開第02/096978(WO,A1)
Polym. Bull.,2009年12月17日,Vol.64,P.707-716
Acta Biomaterialia,2005年,Vol.1,P.155-164
Rad. Phys. Chem.,2009年,Vol.78,P.1046-1048
化学修飾水溶性エラスチン及びI型コラーゲン共存状態における自己集合特性,北九医工誌,2010年 4月14日,Vol.20,P.25-28
調査した分野 C07K 14/78
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
PubMed
DWPI(Thomson Innovation)
特許請求の範囲 【請求項1】
分子量が3万~30万である高分子量水溶性エラスチンの分子中に含まれる第1アミン及び第2アミンの一部又は全部における窒素原子上の水素原子の1つを下記式1で表される基に置換した構造を有し、かつ、該分子中に含まれるカルボキシル基の一部又は全部におけるカルボキシル基中の-OHを下記式2~式4で表される基よりなる群から選ばれた少なくとも1つの基に置換した構造を有する化学修飾水溶性エラスチン。
【化1】
JP0005935094B2_000003t.gif
式1~式4中、Rは水素原子、メチル基又はフェニル基を表し、Rは炭素数1~4のアルキル基を表し、波線部分は他の構造との結合位置を表す。
【請求項2】
分子量が3万~30万である高分子量水溶性エラスチンの分子中に含まれる第1アミン及び第2アミンの一部又は全部における窒素原子上の水素原子の1つを下記式1で表される基に置換した構造を有し、かつ、該分子中に含まれるカルボキシル基の一部又は全部におけるカルボキシル基中の-OHを下記式2~式4で表される基よりなる群から選ばれた少なくとも1つの基に置換した構造を有する化学修飾水溶性エラスチンと、コラーゲンとが混合された化学修飾水溶性エラスチン・コラーゲン混合ゲル。
【化2】
JP0005935094B2_000004t.gif
式1~式4中、Rは水素原子、メチル基又はフェニル基を表し、Rは炭素数1~4のアルキル基を表し、波線部分は他の構造との結合位置を表す。
【請求項3】
化学修飾水溶性エラスチンとコラーゲンとの重量比(化学修飾水溶性エラスチン/コラーゲン)が、1/200~200/1である請求項2記載の化学修飾水溶性エラスチン・コラーゲン混合ゲル。
【請求項4】
化学修飾水溶性エラスチンと、ほぼ同重量のコラーゲンを混合して得られる請求項2又は3記載の化学修飾水溶性エラスチン・コラーゲン混合ゲル。
【請求項5】
化学修飾水溶性エラスチンとコラーゲンを混合して得られる混合ゲルに、放射線を照射したことを特徴とする請求項2~4のいずれか1項記載の化学修飾水溶性エラスチン・コラーゲン混合ゲル。
【請求項6】
(1)分子量が3万~30万である高分子量水溶性エラスチンの分子中に含まれる第1アミン及び第2アミンの一部又は全部をN-アシル化する工程、(2)該高分子量水溶性エラスチンの分子中に含まれるカルボキシル基の一部又は全部をアミノ酸の低級アルキルエステルのアミノ基とカップリングさせる工程、及び、(3)前記(1)と(2)の工程を経て得られた化学修飾水溶性エラスチンを、コラーゲンと溶液状態で混合して混合ゲルを調製する工程からなる化学修飾水溶性エラスチン・コラーゲン混合ゲルの製造方法。
【請求項7】
化学修飾水溶性エラスチンとコラーゲンとの重量比(化学修飾水溶性エラスチン/コラーゲン)が、1/200~200/1である請求項6記載の化学修飾水溶性エラスチン・コラーゲン混合ゲルの製造方法。
【請求項8】
化学修飾水溶性エラスチンと、ほぼ同重量のコラーゲンを混合することからなる請求項6又は7記載の化学修飾水溶性エラスチン・コラーゲン混合ゲルの製造方法。
【請求項9】
(1)分子量が3万~30万である高分子量水溶性エラスチンの分子中に含まれる第1アミン及び第2アミンの一部又は全部をN-アシル化する工程、(2)該高分子量水溶性エラスチンの分子中に含まれるカルボキシル基の一部又は全部をアミノ酸の低級アルキルエステルのアミノ基とカップリングさせる工程、(3)前記(1)と(2)の工程を経て得られた化学修飾水溶性エラスチンを、コラーゲンと溶液状態で混合して混合ゲルを調製する工程、及び、(4)前記(3)で得られた混合ゲルに放射線を照射する工程からなる化学修飾水溶性エラスチン・コラーゲン混合ゲルの製造方法。
【請求項10】
化学修飾水溶性エラスチンと、ほぼ同重量のコラーゲンを混合して放射線照射することからなる請求項9記載の化学修飾水溶性エラスチン・コラーゲン混合ゲルの製造方法。
【請求項11】
化学修飾水溶性エラスチンをコラーゲンよりも少量又は多量に混合して放射線照射することからなる請求項9記載の化学修飾水溶性エラスチン・コラーゲン混合ゲルの製造方法。
【請求項12】
請求項1に記載の化学修飾水溶性エラスチンを含む医療用材料。
【請求項13】
請求項2~5のいずれか1つに記載の化学修飾水溶性エラスチン・コラーゲン混合ゲルを含む医療用材料。
【請求項14】
人工血管材料である、請求項13に記載の医療用材料。
【請求項15】
請求項6~11のいずれか1つに記載の製造方法により製造された化学修飾水溶性エラスチン・コラーゲン混合ゲルを含む医療用材料を製造する工程を含む医療用材料の製造方法。
【請求項16】
前記医療用材料が、人工血管材料である、請求項15に記載の医療用材料の製造方法。
【請求項17】
(1)分子量が3万~30万である高分子量水溶性エラスチンの分子中に含まれる第1アミン及び第2アミンの一部又は全部をN-アシル化する工程、及び、(2)該高分子量水溶性エラスチンの分子中に含まれるカルボキシル基の一部又は全部をアミノ酸の低級アルキルエステルのアミノ基とカップリングさせる工程を含む化学修飾水溶性エラスチンの製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、人工血管用材料等の用途に利用できる可能性がある、化学修飾水溶性エラスチン、化学修飾水溶性エラスチンとコラーゲンとの混合ゲル及びそれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
人工血管は、主として循環器系の病気や怪我に際して、生体の血管の代替品として用いられている。人工血管として現在注目を浴びているものの例として、合成高分子材料にコラーゲン、ゼラチン、エラスチン、あるいはフィブロネクチン等を導入して更に細胞を播種したハイブリッド型人工血管がある。このハイブリッド型人工血管は、激しい血流に影響を受けて細胞が剥がれてしまう問題がある。また、基盤となる材料が合成高分子のため生体適合性の面でも問題があり、直径3mm以下の人工血管を作製して移植した場合、血栓により血管内腔が狭窄しないように抗血液凝固剤を飲み続けなければならないという問題点がある。更に、この人工血管を成長期に移植すると、成長に伴って再度手術により人工血管を移植しなければならないという問題点がある。
【0003】
これらのハイブリッド型人工血管の基盤として用いられる合成高分子としては、現在、延伸多孔質ポリテトラフルオロエチレン(e-PTFE)が主流であるが、このポリマーは非粘着性、屈曲性に優れているものの、強度の面で問題があり、静脈や小動脈(内径4~8mm)のみにしか用いられていない。このように合成高分子は問題があるので、合成高分子に代わる材料として生体高分子が着目されている。生体高分子のうちコラーゲンは、生体中に多量存在し(生体中のタンパク質の約1/3を占める。)、生体適合性や細胞接着性もあり、これを利用した人工血管の作製が試みられているが、コラーゲン100%のものは強度の面で問題がある。
【0004】
コラーゲンと水溶性エラスチンを組合わせて、後述のごとく医療用材料を作成することも知られている。エラスチンとは、動物、特に哺乳動物の皮膚の真皮、靭帯、腱、血管壁等の結合組織の中に、コラーゲンと共に存在するタンパク質である。エラスチンは、通常、生体内においては、3次元の網目構造の不溶性のタンパク質として存在している。かかるエラスチンを、酸又はアルカリで加水分解したり、酵素で処理することによって、前述した水溶性エラスチンが得られることは広く知られている。水溶性エラスチンは、水分を豊富に保持する能力を有することから、化粧品、特に保湿剤として利用されている他、皮膚に弾力を与える等の美容効果があるとして、コラーゲン等と共に健康食品としても利用されている。
【0005】
そして、更に水溶性エラスチンは、これを可溶化コーゲンと混合して成型用組成物を得ること(特許文献1)や、人工血管基材の内壁面にコラーゲン層を設け、これに水溶性エラスチンを架橋剤によって架橋させること(特許文献2)が提案されている。また、架橋されたエラスチンとコラーゲン等の生体高分子との混合物を、医療用材料として用いることも提案されている(特許文献3)。しかしながら、実用に耐える人工血管等は未だ開発されていない。また、本発明者らは、水溶性エラスチンを得る方法を提案している(特許文献4)。
【先行技術文献】
【0006】

【特許文献1】特公平6-30616号公報
【特許文献2】特開平8-33661号公報
【特許文献3】国際公開第2002/96978号パンフレット
【特許文献4】特開2007-45722号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、水溶性エラスチンとコラーゲンを利用して、生体適合性に優れ、かつ、十分な強度、弾性、及び伸展性を有する人工血管等の医療用材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題は、下記のような本発明の各態様によって達成される。
【0009】
本発明の態様の1つは、高分子量水溶性エラスチンの分子中に含まれる第1アミン及び第2アミンの一部又は全部をN-アシル化すると共に、該分子中に含まれるカルボキシル基の一部又は全部をアミノ酸のアルキルエステルのアミノ基とカップリングさせて得られる化学修飾水溶性エラスチンである。N-アシル化にはN-ホルミル化、N-アセチル化、N-ベンゾイル化などがあるが、N-アセチル化が好ましい。また、N-アシル化にはウレタン型やアルキル型を用いてもよい。前記エラスチンのカルボキシル基のアミノ酸アルキルエステルによる酸アミド化に用いるアミノ酸はタンパク質を構成するグリシン、バリン、フェニルアラニンなどの約20種類の中から選ばれる。本発明において「高分子量水溶性エラスチン」とは、分子量が約1万以上、好ましくは約3~30万のものを意味する。
【0010】
本発明の他の態様は、高分子量水溶性エラスチンの分子中に含まれる第1アミン及び第2アミンの一部又は全部をN-アシル化すると共に、該分子中に含まれるカルボキシル基の一部又は全部をアミノ酸のアルキルエステルのアミノ基とカップリングさせて得られる化学修飾水溶性エラスチンと、コラーゲンを混合して得られる化学修飾水溶性エラスチン・コラーゲン混合ゲルである。この態様においては、化学修飾水溶性エラスチンと、ほぼ同重量のコラーゲンを混合して得られる化学修飾水溶性エラスチン・コラーゲン混合ゲルが好ましい。また、化学修飾水溶性エラスチンと、それよりも少量又は多量のコラーゲンを混合して得られる化学修飾水溶性エラスチン・コラーゲン混合ゲルも好ましい。「ほぼ同重量」とは、化学修飾水溶性エラスチンとコラーゲンとの重量比が95~105重量%以内であることをいう。
【0011】
本発明の更に他の態様は、前記化学修飾水溶性エラスチン・コラーゲン混合ゲルの製造方法であって、(1)高分子量水溶性エラスチンの分子中に含まれる第1アミン及び第2アミンの一部又は全部をN-アシル化する工程、(2)該高分子量水溶性エラスチンの分子中に含まれるカルボキシル基の一部又は全部をアミノ酸の低級アルキルエステルのアミノ基とカップリングさせる工程、及び、(3)前記(1)と(2)の工程を経て得られた化学修飾水溶性エラスチンを、コラーゲンと溶液状態で混合して混合ゲルを調製する工程からなる化学修飾水溶性エラスチン・コラーゲン混合ゲルの製造方法である。この態様においても、化学修飾水溶性エラスチンと、ほぼ同重量のコラーゲンを混合する方法が好ましい。また、化学修飾水溶性エラスチンと、それよりも少量又は多量のコラーゲンを混合する方法も好ましい。
【0012】
本発明の更なる態様は、(1)高分子量水溶性エラスチンの分子中に含まれる第1アミン及び第2アミンの一部又は全部をN-アシル化する工程、(2)該高分子量水溶性エラスチンの分子中に含まれるカルボキシル基の一部又は全部をアミノ酸の低級アルキルエステルのアミノ基とカップリングさせる工程、(3)前記(1)と(2)の工程を経て得られた化学修飾水溶性エラスチンを、コラーゲンと溶液状態で混合して混合ゲルを調製する工程、及び、(4)前記(3)で得られた混合ゲルに放射線を照射する工程からなる化学修飾水溶性エラスチン・コラーゲン混合ゲルの製造方法である。この態様においても、化学修飾水溶性エラスチンと、ほぼ同重量のコラーゲンを混合する方法が好ましい。また、化学修飾水溶性エラスチンと、それよりも少量又は多量のコラーゲンを混合する方法も好ましい。
本発明の更に他の態様は、上記の化学修飾水溶性エラスチンの医療用材料としての使用である。また、本発明の更に他の態様は、上記の化学修飾水溶性エラスチン・コラーゲン混合ゲル、又は、上記の製造方法により製造された化学修飾水溶性エラスチン・コラーゲン混合ゲルの医療用材料としての使用である。ここで、医療用材料には人工血管材料等が含まれる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の化学修飾水溶性エラスチン・コラーゲン混合ゲルから得られた材料は、エラスチン又はコラーゲン単独、あるいはそれらの混合物に比べ、強度、弾性及び伸展性が大幅に改善されるので、人工血管等の医療用材料として利用できる可能性が高い。化学修飾に用いるアミノ酸として疎水度の大きいアミノ酸を用いた場合や、疎水性の大きいペプチドを化学修飾に用いた場合には、ブタやイヌの大動脈の応力と同程度あるいはそれよりも強度、弾性及び伸展性のある人工血管材料等が作製できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】未修飾水溶性エラスチン(Ela)のpH5.0、7.4及び9.0における温度と濁度の関係を示す曲線(濁度曲線)。
【図2】N-アセチル水溶性エラスチン(N-Ac-Ela)とグリシン(G)メチルエステルをWSCI(100eq)を用いてカップリングさせて作製したN-アセチル-O-G-メチルエステル水溶性エラスチン(Cm(G)-Ela)のpH5.0、7.4及び9.0における濁度曲線。
【図3】N-Ac-Elaとグリシン(G)メチルエステルをWSCI(10eq)を用いてカップリングさせて作製したN-アセチル-O-G-メチルエステル水溶性エラスチン(Cm(G)-Ela)のpH5.0、7.4及び9.0における濁度曲線。
【図4】N-Ac-Elaとグリシン(G)メチルエステルをWSCI(50eq)を用いてカップリングさせて作製したN-アセチル-O-G-メチルエステル水溶性エラスチン(Cm(G)-Ela)のpH5.0、7.4及び9.0における濁度曲線。
【図5】3種類の異なる化学修飾水溶性エラスチン(Cm-Ela)であるN-アセチル-O-G-メチルエステル水溶性エラスチン(Cm(G)-Ela)、N-アセチル-O-V-メチルエステル水溶性エラスチン(Cm(V)-Ela)、N-アセチル-O-F-メチルエステル水溶性エラスチン(Cm(F)-Ela)のpH7.4における濁度曲線。
【図6】コラーゲン(Col)単独の濃度1.5mg/ml、3.0mg/ml、4.5mg/mlでのpH7.4における濁度曲線。
【図7】Ela・Col混合溶液(混合比1.5mg/ml:1.5mg/ml)、Cm(G)-Ela・Col混合溶液(混合比1.5mg/ml:1.5mg/ml)、Cm(V)-Ela・Col混合溶液(混合比1.5mg/ml:1.5mg/ml)、Cm(F)-Ela・Col混合溶液(混合比1.5mg/ml:1.5mg/ml)のpH7.4における濁度曲線。
【図8】Col単独ゲル(1.5mg/ml)、Ela・Col混合ゲル(混合比1.5mg/ml:1.5mg/ml)、Cm(G)-Ela・Col混合ゲル(混合比1.5mg/ml:1.5mg/ml)の応力-ひずみ曲線。
【図9】Colに対してCm(G)-Elaの混合比が異なるCm(G)-Ela・Col混合ゲル(混合比1.5mg/ml:1.5mg/ml)及びCm(G)-Ela・Col混合ゲル(混合比4.5mg/ml:1.5mg/mlの応力-ひずみ曲線。
【図10】3種の異なる混合ゲルであるCm(G)-Ela・Col混合ゲル(混合比1.5mg/ml:1.5mg/ml)、Cm(V)-Ela・Col混合ゲル(混合比1.5mg/ml:1.5mg/ml)、Cm(F)-Ela・Col混合ゲル(混合比1.5mg/ml:1.5mg/ml)及びブタ大動脈の60%ひずみまでの応力とひずみを比較した応力-ひずみ曲線。
【図11】Cm(G)-Ela・Col混合ゲル(混合比1.5mg/ml:1.5mg/ml)から作製した内径5mm、外径8mmの人工血管
【図12】Ela・Col混合ゲル(混合比1.5mg/ml:1.5mg/ml)とγ線照射Ela・Col混合ゲル(混合比1.5mg/ml:1.5mg/ml)の応力-ひずみ曲線。
【図13】Cm(G)-Ela・Col混合ゲル(混合比1.5mg/ml:1.5mg/ml)とγ線照射Cm(G)-Ela・Col混合ゲル(混合比1.5mg/ml:1.5mg/ml)の応力-ひずみ曲線。
【図14】Ela・Col混合ゲル(混合比1.5mg/ml:1.5mg/ml)、γ線照射Ela・Col混合ゲル(混合比1.5mg/ml:1.5mg/ml)、Cm(G)-Ela・Col混合ゲル(混合比1.5mg/ml:1.5mg/ml)、γ線照射Cm(G)-Ela・Col混合ゲル(混合比1.5mg/ml:1.5mg/ml)及び、ブタ大動脈の応力とひずみを比較した応力-ひずみ曲線。
【図15】Ela・Col混合ゲル(混合比1.5mg/ml:1.5mg/ml)、γ線照射Ela・Col混合ゲル(混合比1.5mg/ml:1.5mg/ml)、Cm(G)-Ela・Col混合ゲル(混合比1.5mg/ml:1.5mg/ml)、γ線照射Cm(G)-Ela・Col混合ゲル(混合比1.5mg/ml:1.5mg/ml)及び、ブタ大動脈の50%ひずみまでの応力とひずみを比較した応力-ひずみ曲線。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の水溶性エラスチンは、哺乳動物及び鳥類由来の場合には、エラスチンを構成するアミノ酸の約78~85%がプロリン、グリシン、アラニン、バリンからなり、約2~4%がアスパラギン酸とグルタミン酸からなり、約1~2%がリジン、ヒスチジン、アルギニンからなり、約0.1~0.4%がデスモシンとイソデスモシンからなる、分子量約1万~30万、好ましくは約3万~30万の高分子量水溶性エラスチンである。また本発明の水溶性エラスチンは、魚類由来の場合には、エラスチンを構成するアミノ酸の約67~77%がプロリン、グリシン、アラニン、バリンからなり、約4~6%がアスパラギン酸とグルタミン酸からなり、約2~4%がリジン、ヒスチジン、アルギニンからなり、約0.1~0.4%がデスモシンとイソデスモシンからなる、分子量約1万~30万、好ましくは約3万~30万の高分子量水溶性エラスチンである。

【0016】
本発明の化学修飾水溶性エラスチンは、高分子量水溶性エラスチンの分子中に含まれる第1アミン及び第2アミンの一部又は全部をN-アシル化すると共に、該分子中に含まれるカルボキシル基の一部又は全部をアミノ酸のアルキルエステルのアミノ基とカップリングさせて得られる化学修飾水溶性エラスチンである。N-アシル化には、N-ホルミル化、N-アセチル化、N-ベンゾイル化などがあるが、N-アセチル化が好ましい。また、N-アシル化にはウレタン型やアルキル型を用いてもよい。前記エラスチンのカルボキシル基のアミノ酸アルキルエステルによる酸アミド化に用いるアミノ酸は、タンパク質を構成するグリシン、バリン、フェニルアラニンなどの約20種類のうちのいずれでもよい。

【0017】
本発明の他の態様である化学修飾水溶性エラスチン・コラーゲン混合ゲルは、先ず、高分子量水溶性エラスチンの分子中に含まれる第1アミン及び第2アミンの一部又は全部をN-アシル化する工程(第1工程)、次いで、得られたN-アシル化水溶性エラスチン分子中に含まれるカルボキシル基の一部又は全部をアミノ酸の低級アルキルエステルのアミノ基とカップリングさせ化学修飾する工程(第2工程)、その後、得られた化学修飾水溶性エラスチンを、ほぼ同重量の、あるいはそれよりも少量又は多量のコラーゲンと溶液状態で混合して混合ゲルを調製する工程(第3工程)によって製造される。

【0018】
本発明の更なる態様である放射線照射した化学修飾水溶性エラスチン・コラーゲン混合ゲルは、先ず高分子量水溶性エラスチンの分子中に含まれる第1アミン及び第2アミンの一部又は全部をN-アシル化し(第1工程)、次いで得られたN-アシル化水溶性エラスチン分子中に含まれるカルボキシル基の一部又は全部をアミノ酸の低級アルキルエステルのアミノ基とカップリングさせ化学修飾し(第2工程)、さらに第1工程と第2工程を経て得られた化学修飾水溶性エラスチンを、コラーゲンと溶液状態で混合して混合ゲルを調製し(第3工程)、その後に、得られた混合ゲルに放射線を照射することによって得られる(第4工程)。この態様においても、化学修飾水溶性エラスチンを、ほぼ同重量の、あるいはそれよりも少量又は多量のコラーゲンと溶液状態で混合して混合ゲルを調製する工程によって製造される。化学修飾水溶性エラスチンとコラーゲンとの重量比(化学修飾水溶性エラスチン/コラーゲン)は、好ましくは1/200~200/1であり、より好ましくは1/100~50/1であり、さらに好ましくは1/50~5/1であり、特に好ましくは1/3~3/1である。
例えば、本発明の化学修飾水溶性エラスチン・コラーゲン混合ゲルを使用して生体組織の代替としての人工靭帯、人工皮膚、人工腱、人工血管等を作製する場合は、前記重量比が1/50~5/1であることが好ましく、生体組織の代替ではなく人工の線維、人工癒着防止膜、人工縫合糸あるいは人工膜等を作製する場合には、エラスチン重量/コラーゲン重量の範囲が広い方がよく、前記重量比が1/100~50/1であることが好ましく、また、生体以外の例えば合成繊維や合成膜等に応用していく場合は、エラスチン重量/コラーゲン重量の範囲がさらに広い方がよく、前記重量比が1/200~200/1であることが好ましい。

【0019】
本発明においては、水溶性エラスチンのN末端及びリジン、アルギニン等のアミノ酸残基側鎖のアミノ基等をアシル化し、引き続き、C末端及びアスパラギン酸、グルタミン酸等のアミノ酸残基側鎖のカルボキシル基等とアミノ酸アルキルエステルのアミノ基をカップリングさせて化学修飾水溶性エラスチンが得られる。化学修飾によってアミノ基等とカルボキシル基等が保護されることにより、エラスチンの荷電が消失し、その結果、エラスチン分子間の疎水的相互作用が増し、得られた化学修飾水溶性エラスチンは、未修飾エラスチンに比べて高い自己集合性を有するようになるものと考えられる。

【0020】
水溶性エラスチンを得る方法・手段は色々と提案されている。好ましいのは、本発明者が提案した下記の方法である(特許文献4参照)。

【0021】
第1の方法は、動物性生体組織からコラーゲンやその他の不要タンパク質の除去処理を行って不溶性エラスチンを得、次いでこの不溶性エラスチンをシュウ酸や水酸化ナトリウム等の可溶化液に浸漬・溶解させ、水溶性エラスチンを製造する。コラーゲンやその他の不要タンパク質の除去処理は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウムの少なくともいずれか一つを含むアルカリ性溶液であって、このアルカリ性溶液中に添加した水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウムの総量を、1Lあたり0.05~0.5mol、好ましくは0.05~0.3molで90~105℃としたアルカリ性溶液中に、動物性生体組織を5~60分間、好ましくは10~20分間浸漬して行うのが好ましい。また、コラーゲンやその他の不要タンパク質の除去処理に際しては、アルカリ性溶液による処理の前に、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化バリウムの少なくともいずれか一つを含む塩溶液に、動物性生体組織を浸漬させる浸漬処理(前処理)を行うのも好ましい。

【0022】
動物性生体組織としては、特に制限はないが、エラスチンの含量が多い点で、豚、馬、牛、羊などの哺乳動物から得られた項靱帯や大動脈血管を使用することが好ましい。また鳥類の大動脈血管やエラスチン含量の多い魚類の動脈球(心臓)などを使用してもよい。動物性生体組織は、先ず、ホモジナイザーを用いてホモジナイズするのが良い。ホモジナイズはミキサー、ミートチョッパーなど動物性生体組織を細断できれば良く、好ましくは3ミリメートル角以下、さらに好ましくはペースト状に細断できる器具を用いると良い。細断した動物性生体組織の粒が小さいほど、コラーゲンやその他の不要なタンパク質の除去効率を上げることができるので好ましい。ホモジナイズした動物性生体組織は、例えば、熱水又は熱希薄アルカリ水溶液で煮沸するか、もしくは有機溶媒で処理することによって脱脂処理を行っても良い。

【0023】
前記可溶化液としては、シュウ酸、蟻酸、酢酸、コハク酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、ベタイン、ジフルオロ酢酸、トリフルオロ酢酸、リン酸、スルファミン酸、過塩素酸、トリクロロ酢酸の少なくともいずれか一つを含む酸性溶液が用いられる。そして、この酸性溶液の酸の総量は、1Lあたり0.05~5mol、好ましくは0.1~2molとし、かつ、液温を90~105℃とするのが好ましい。

【0024】
前記可溶化液は、また、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウムの少なくともいずれか一つを含むアルカリ性溶液であっても良い。このアルカリ性溶液中に添加した水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウムの総量を、1Lあたり0.05~5mol、好ましくは0.05~2molとし、かつ、液温が90~105℃のアルカリ性溶液とするのが好ましい。

【0025】
第2の方法は、動物性生体組織の不要部分の除去処理、動物性生体組織の細断処理、動物性生体組織の脱脂処理と塩処理の少なくともいずれか一つを含む前処理工程と、前処理された動物性生体組織をアルカリ性溶液に浸漬してコラーゲンやその他の不要タンパク質を濾別するアルカリ抽出工程と、アルカリ抽出工程後の残渣をアルカリで溶解するアルカリ溶解工程を所定回数繰り返し、濾別により水溶性エラスチンを含む濾液を得る濾液回収工程と、濾液から水溶性エラスチンを生成する水溶性エラスチン生成工程とを順次行って水溶性エラスチンを製造する方法である。前記アルカリ溶解工程で用いるアルカリとしては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウムのいずれか一つ又は混合物が好ましい。

【0026】
この操作は、前記の、組織からコラーゲンやその他の不要タンパク質を除去して不溶性エラスチンを得て、次いで、この不溶性エラスチンを可溶化して水溶性エラスチンを得る第1の方法とは異なり、組織から不溶性エラスチンを得ることなく、直接水溶性エラスチンを得る方法である。即ち、1Lあたり0.05~0.5mol、好ましくは0.05~0.3molで90~105℃としたアルカリ性溶液中に、細断、脱脂、塩処理した動物性生体組織を5~60分間、好ましくは10~20分間浸漬し、エラスチン以外のコラーゲンや不要タンパク質を除去した処理組織を得、次いで、この処理組織を1Lあたり0.05~5mol、好ましくは0.05~2mol(アルカリ液の濃度がより高濃度)で90~105℃のアルカリ性溶液中に5~420分間、好ましくは10~240分間(時間がより長い)浸漬して溶解し、水溶性エラスチンを得る方法である。

【0027】
前記のごとく第1又は第2の方法で得られた水溶性エラスチンは水溶性エラスチンを含む水溶液を中和し、次いで、その中和溶液を、例えば、透析処理することによって又はナノフィルトレート(NF)膜等を用いた膜処理によって脱塩し、及び低分子量のものを除去して、本発明で用いられる高分子量水溶性エラスチンが得られる。

【0028】
本発明で用いられるコラーゲンは、医療用途として知られているどのようなものでも用いることができる。通常、医療用途に適したコラーゲンは、主として原料である動物から、酸、アルカリ、中性等の条件下で酵素などにより抽出し、粘調なコラーゲン溶液又はこの溶液を乾燥させた固体の状態として得る方法が一般的に用いられている。また、更に、ペプシン処理を施すことによって抗原性発現部位を除去し、体内又は体表面に移植した際に抗原性が無い、より医療基材に好適なコラーゲン(アテロコラーゲン)を得ることもできる。本発明で用いられる代表的なコラーゲンとしては、酸可溶化コラーゲン、アルカリ可溶化コラーゲン、酵素可溶化コラーゲン、中性可溶化コラーゲン等の可溶化コラーゲンが挙げられ、特に、可溶化処理と同時にコラーゲンの抗原決定基であるテロペプタイドの除去処理が施されている、アテロコラーゲンが好適である。

【0029】
本発明の化学修飾水溶性エラスチン・コラーゲン混合ゲルの製造においては、先ず、高分子量水溶性エラスチンの分子中に含まれる第1アミン及び第2アミンの一部又は全部をN-アシル化、好ましくは、N-アセチル化してN-アセチル化水溶性エラスチンを得る。エラスチンを構成するアミノ酸残基の中で、反応性の第1アミン又は第2アミンを有するアミノ酸(塩基性アミノ酸)としては、リシン、アルギニン及びヒスチジンが挙げられるが、高分子量水溶性エラスチンの分子中に含まれる第1アミンとしては、末端アミノ基も含まれる。

【0030】
本発明においては、高分子量水溶性エラスチンの分子中に含まれる第1アミン及び第2アミンの一部又は全部が、好ましくは、無水酢酸等のアセチル化試薬によってN-アセチル化されるが、N-アセチル化の程度は、下記式で表される修飾率で95%以上であるものが好ましい。
修飾率(%)=(1-B/A)×100
Aは、水溶性エラスチンの吸光度(波長345nm)の平均値からブランクの吸光度の平均値を引いた値を表す。Bは、N-アセチル化水溶性エラスチンの吸光度(波長345nm)の平均値からブランクの吸光度の平均値を引いた値を表す。

【0031】
本発明においては、次いで、得られたN-アシル化、好ましくは、N-アセチル化水溶性エラスチン分子中に含まれるカルボキシル基の一部又は全部をアミノ酸のアルキルエステルのアミノ基とカップリングさせ化学修飾し化学修飾水溶性エラスチンを得る。本発明においては炭素数1~4の低級アルキルエステルが好ましいが、特にメチルエステルが好ましい。またベンジルエステルなどのようなものを用いてもよい。エラスチンを構成するアミノ酸残基の中で、カルボキシル基を有するアミノ酸(酸性アミノ酸)としては、アスパラギン酸とグルタミン酸があるが、高分子量水溶性エラスチンの分子中に含まれるカルボキシル基としては、末端カルボキシル基も含まれる。

【0032】
本発明においては、N-アシル化、好ましくは、N-アセチル化水溶性エラスチン分子中に含まれるカルボキシル基のほぼ全部が、アミノ酸のアルキルエステルのアミノ基とカップリングしているものが好ましい。カップリング反応に際しては、カルボジイミド等のカップリング剤又は縮合剤を用いるのが便利である。

【0033】
次いで、本発明においては、前記のごとくして得られた化学修飾水溶性エラスチンと前述したコラーゲンの各水溶液を作成し、それぞれをほぼ同重量含む水溶液状態、あるいはコラーゲンに対して化学修飾水溶性エラスチンを増量あるいは減量した水溶液状態で混合して混合ゲルを調製する。かかる方法で本発明の化学修飾水溶性エラスチン・コラーゲン混合ゲルが得られる。そして、得られた混合ゲルは、そのままあるいは適当な加工を経て、人工血管等医療用材料の基盤として用いることができる。

【0034】
本発明の更なる態様においては、前記のごとくして得られた化学修飾水溶性エラスチン・コラーゲン混合ゲルに、溶液で膨潤した状態あるいは乾燥状態で、電子線やγ線等の放射線を照射して、放射線照射化学修飾水溶性エラスチン・コラーゲン混合ゲルが得られる。放射線としてはγ線が好ましく、混合ゲルのヤング率を好ましくは2倍以上上昇させるために必要な線量照射する。
γ線等で照射することによって、混合ゲルは滅菌架橋され、更に材料の強度の増強が図られる。照射条件は特に限定されるものではないが、例えば、Co-60γ線の場合、20~50℃、好ましくは30~40℃で0.5~50kGy程度、好ましくは5~40kGy程度の照射が適当である。
【実施例】
【0035】
以下、実施例により本発明を詳述する。各種測定法は以下のとおりである。
【実施例】
【0036】
[N-アセチル化の修飾率]
N-アセチル化の修飾率は、TNBS(2,4,6-トリニトロベンゼンスルホン酸)法より以下のようにして測定し計算される。1mg/mlのN-アセチル化水溶性エラスチン(N-Ac-Ela)水溶液に、4%の炭酸水素ナトリウム溶液、0.1%のTNBS水溶液を、それぞれ1ml加えた。4%の炭酸水素ナトリウム溶液、0.1%のTNBS水溶液をそれぞれ1ml加えただけのものを、ブランクとした(n=3)。作製した溶液をアルミホイルで遮光し、40℃で2時間反応させた。反応終了後、作製した溶液0.17mlに10%SDS1ml、1N・HClを0.5ml加え、345nmにおける吸光度をそれぞれ測定した。また、修飾率は以下の式より求めた。
【実施例】
【0037】
エラスチン水溶液の吸光度の平均値からブランクの吸光度の平均値を引いたものをA、N-Ac-Ela水溶液の吸光度の平均値からブランクの吸光度の平均値を引いたものをBとする。修飾率は、修飾率(%)=(1-B/A)×100で表される。
【実施例】
【0038】
[濁度測定]
水溶性エラスチン(Ela)、3種類の化学修飾水溶性エラスチン(Cm-Ela)、I型コラーゲン(Col)の各々をPBS(リン酸緩衝生理食塩水、pH7.4)又はpH5.0、7.4、9.0の溶液に溶解した。これらの各溶液をEla単独、3種Cm-Ela単独、Col単独、ElaとCol共存状態、3種Cm-ElaとCol共存状態で波長400nm、温度範囲5℃から65℃、温度上昇0.5℃/min、窒素気流下の条件で濁度測定を行った。溶媒は超純水又は生理的条件下を考慮してPBSを用い、測定機器はペルチェ式温度コントローラー付分光光度計(日本分光(株)製:Ubest-50)を用いた。
【実施例】
【0039】
[ブタ由来水溶性エラスチンの作製]
1)ブタ由来不溶性エラスチンの単離
以下の手順に従ってブタ大動脈脱脂組織からNaCl可溶及びNaOH可溶のエラスチン以外の不要タンパク質やコラーゲンを抽出、除去した。
【実施例】
【0040】
ブタ大動脈脱脂組織(生体組織)を用い、前処理として付着している脂肪や筋肉などエラスチン含量の低い部分を、刃物などを用いて削ぎ落とすことで不要部分の除去処理を行い、次いで、生体組織をホモジナイザーを用いてホモジナイズすることで細断処理を行った。ホモジナイズした生体組織を熱水、熱希薄アルカリ水溶液又はアセトン等の有機溶媒で処理して脱脂処理を行った後に乾燥させた。ついで脱脂乾燥組織重量の約10倍容量の1M塩化ナトリウムを加え、室温で1時間撹拌してNaCl可溶の不要タンパク質を抽出、除去した。この操作を5回繰り返し、その後蒸留水で洗浄し、遠心分離(3,000rpm、5分)により水切りした。
【実施例】
【0041】
上記のようにして脱脂及び塩処理した生体組織の重量に対して約10倍容量(重量1g当たり10ml)の0.1N水酸化ナトリウム水溶液を加え、100℃で15分間撹拌し、エラスチン以外のコラーゲンや不要タンパク質を除去する工程を行った。そして、生体組織とアルカリ性溶液とを分離した。分離したアルカリ性溶液を、例えば、ビューレット法にて総タンパク質の定量を行い、アルカリ性溶液中に含まれる総タンパク質量が0.1mg/mL以下になるまで、この操作を繰返した。その後、冷却して遠心分離(5,000rpm、20分)により洗浄し、残渣を乾燥して不溶性エラスチンを得た。
【実施例】
【0042】
2)高分子量ブタ由来水溶性エラスチンの調製
ブタ由来不溶性エラスチンにその乾燥重量の10倍容量の0.5Nの水酸化ナトリウムを加え、100℃で30分撹拌した。反応後、溶液を速やかに氷冷し酢酸又は塩酸で中和した。その後、分子量6,000~8,000以上を分画する透析膜を用いて1週間透析した。その後、凍結乾燥し高分子量ブタ由来水溶性エラスチンを得た。
【実施例】
【0043】
[化学修飾水溶性エラスチンの作製]
下記のとおり、高分子量ブタ由来水溶性エラスチンをN-アセチル化及びO-アミノ酸メチルエステルのカップリングによる化学修飾を行った。
【実施例】
【0044】
1)N-アセチル水溶性エラスチンの作製
前記で得られたブタ由来水溶性エラスチンを、少量のトリフルオロエタノール(TFE)に溶解したものに、ピリジン(100eq)と無水酢酸(100eq)を加え、1晩撹拌した。ニンヒドリン試験によってアセチル化が定量的に進行したことを確認した後、反応液をエバポレーターにより減圧濃縮した。このN-アセチル化は、TNBS法よりアミノ基等の修飾率が95%以上になるまで、数回繰り返し行った。その後、この溶液を1週間透析して溶媒や未反応試薬を除去し、凍結乾燥してN-アセチル水溶性エラスチンを得た。
なお、本発明において、N-アセチル水溶性エラスチンの平均分子量から求めた使用原料のモル数(1モル当量)を基準にして、試薬のモル当量数(eq)を表示した。図面の簡単な説明においても同様である。
【実施例】
【0045】
2)アミノ酸メチルエステルのカップリング反応
前記で得られたN-アセチル水溶性エラスチン(N-Ac-Ela)を、少量のジメチルホルムアミド(DMF)に溶解したものに、水溶性カルボジイミド(WSCI)を加えた。15分撹拌後、3種類のアミノ酸メチルエステル、即ち、グリシン(G)のメチルエステル(H-G-OMe)、バリン(V)のメチルエステル(H-V-OMe)、フェニルアラニン(F)のメチルエステル(H-F-OMe)の各々と、トリエチルアミンを溶かした少量のDMF溶液を加えた。一昼夜撹拌後、この溶液を1週間透析し、溶媒や未反応試薬等を除去し、凍結乾燥して3種類の化学修飾水溶性エラスチン、即ち、N-アセチル-O-G-メチルエステル水溶性エラスチン(Cm(G)-Ela)、N-アセチル-O-V-メチルエステル水溶性エラスチン(Cm(V)-Ela)、N-アセチル-O-F-メチルエステル水溶性エラスチン(Cm(F)-Ela)を得た。
【実施例】
【0046】
未修飾Elaの結果を図1に、N-Ac-Elaにアミノ酸メチルエステルをWSCIを用いてカップリングした結果を、図2~4に示した。図1は、未修飾ElaのpH5.0、7.4及び9.0における温度と濁度の関係を示す曲線(濁度曲線)、図2は、N-Ac-Elaとグリシン(G)メチルエステルをWSCI(100eq)を用いてカップリングさせて作製したCm(G)-ElaのpH5.0、7.4及び9.0における濁度曲線である。図1より、Elaは生理条件である37℃、pH7.4では自己集合していない。自己集合しない理由としては、Elaは等電点が酸性側(pH5.5付近)にあるからである。そこで、等電点をpH7.4付近に持ってくるために、本発明では、アミノ基をN-アセチル化、カルボキシル基をアミノ酸メチルエステルのカップリングによる化学修飾を行うものである。
【実施例】
【0047】
その結果、得られた化学修飾水溶性エラスチン(Cm-Ela)の自己集合開始温度は、図2に示したように、Elaの自己集合開始温度に対して低温側にシフトし、生理条件(pH7.4付近)において十分な濁度強度を示していることが分かる。また、濁度強度が上昇していること、更に、異なるpHでもほぼ同じ濁度曲線が得られたことから、アミノ酸メチルエステのカップリングによるカルボキシル基等の修飾率は、ほぼ完全であることが分かる。
【実施例】
【0048】
図3と図4とは、N-Ac-Elaとアミノ酸メチルエステルのカップリング反応に際しての、カップリング剤(WSCI)の添加量と濁度曲線との関連を示す図である。図3はWSCIが10eq、図4はWSCIが50eqの場合である。添加するWSCIの量が修飾率に大きく影響していることが分かるが、図2のWSCIが100eqであることを考慮すると、100eqの使用でカップリング反応はほぼ完全に進行していることが分かる。
【実施例】
【0049】
図5には、3種類の異なる化学修飾水溶性エラスチンであるCm(G)-Ela、Cm(V)-Ela、Cm(F)-Elaの濁度曲線を示した。用いたアミノ酸であるグリシン(G)、バリン(V)、フェニルアラニン(F)の疎水度が高くなるにつれ、自己集合開始温度は早くなり、濁度強度も増加していることが分かる。これはElaの自己集合は、分子の疎水性が高いほど促進されるということを示唆している。
【実施例】
【0050】
[水溶性エラスチン・コラーゲン混合ゲル及び化学修飾水溶性エラスチン・コラーゲン混合ゲルの作製]
コラーゲンと水溶性エラスチン、又は、コラーゲンと化学修飾水溶性エラスチンが各々1.5mg/ml:1.5mg/mlとなるように、またコラーゲンと化学修飾水溶性エラスチンが1.5mg/ml:4.5mg/mlとなるように、総量2mlの溶液を調製した。溶媒はPBS(pH7.4)を用いた。これを37℃で1時間静置しゲル化させた。その後、乾燥させてガラス化し、ついでPBS(pH7.4)を2ml加えて48時間静置することで膨潤させて本発明の化学修飾水溶性エラスチン・コラーゲン混合ゲルを得た。
【実施例】
【0051】
[化学修飾水溶性エラスチン・コラーゲン混合ゲルの各種性能の測定]
【実施例】
【0052】
[濁度曲線]
図6はCol単独溶液の濁度曲線を示す。図7には、ColとEla混合溶液及びColと3種Cm-Ela混合溶液の濁度曲線を示した。ElaとCol混合溶液において濁度曲線はCol単独と同型であり、濁度強度はCol単独時より低下した。このことから、未修飾Elaでは自己集合開始時には周囲の分子を取り込むColのゲル化の特性により、Ela分子は自己集合しない状態でColに取り込まれていると考えられる。濁度強度の低下については、Col単独でゲル化するよりも、自己集合していないEla分子の取り込みによるものと考えられる。3種Cm-ElaとCol混合溶液では、それらの自己集合開始温度は3種Cm-Elaの各々の単独の場合と同様な自己集合開始温度を示したが、濁度強度は上昇した。これは、Cm-ElaとCol混合溶液の自己集合開始温度が、Col単独時の自己集合開始温度(ゲル化温度)より早かったことから、その自己集合開始時に、Cm-Elaの自己集合が大きく影響を与えているためであると考えられる。
【実施例】
【0053】
[引張試験]
ElaとColの混合ゲル及びCm-ElaとColの混合ゲルの、各々の初期長が5mmになるように両端をネジ式材料試験機(オートグラフAG-S-J、(株)島津製作所)に固定した後、各ゲルの厚みと幅を測定し、それぞれ横断面積を求めた。ついで各ゲルを変位速度0.05mm/sで3mm(ひずみ60%)だけ伸展したときの応力とひずみの関係を測定した。さらに各ゲルを変位速度0.05mm/sで破断まで引張り、破断応力を測定し、破断まで引っ張ったときの応力とひずみの関係を測定した。
【実施例】
【0054】
Col単独ゲル、ElaとCol混合ゲル、Cm(G)-ElaとCol混合ゲルの応力-ひずみ曲線を図8に示した。図8より、Col単独ゲルの破断応力は89kPa、最大ひずみは84%であった。Ela・Col混合ゲルの破断応力は87kPa、最大ひずみは101%であり、これはCol単独ゲルと同程度の破断応力を示し、最大ひずみはCol単独ゲルで増加した。またCm(G)-Ela・Col混合ゲルの破断応力は106kPa、最大ひずみは109%であり、これは破断応力、最大ひずみともにEla・Col混合ゲルよりも増加した。これらの結果はColにElaを加えることによりゲルに弾性が付加され、さらに自己集合能の高いCm(G)-Elaを加えることにより、剛性とさらに大きな弾性が付加されたためであると考えられる。
【実施例】
【0055】
Colに対してCm(G)-Elaの混合比が異なるCm(G)-ElaとCol混合ゲルの応力-ひずみ曲線を図9に示した。図9より、Cm(G)-Ela・Col混合ゲル(混合比1.5mg/ml:1.5mg/ml)の破断応力106kPa、最大ひずみ109%に比べて、Cm(G)-Ela・Col混合ゲル(混合比4.5mg/ml:1.5mg/ml)の破断応力は114kPa、最大ひずみは130%であり、破断応力、最大ひずみともに増加した。これはCm(G)-Elaの添加量を増やすことにより、さらに大きな弾性と剛性が付加されたためであると考えられる。また破断応力の増加率(8%)よりも最大ひずみの増加率(20%)が大きかったことから、Elaの剛性よりも弾性向上への寄与がより大きいことが考えられる。
【実施例】
【0056】
Cm(G)-ElaとCol混合ゲル、Cm(V)-ElaとCol混合ゲル、Cm(F)-ElaとCol混合ゲル、及びブタ大動脈の応力-ひずみ曲線を図10に示した。図10より、60%ひずみに対する応力はCm(G)-Ela・Col混合ゲル(混合比1.5mg/ml:1.5mg/ml)で43kPa、Cm(V)-Ela・Col混合ゲル(混合比1.5mg/ml:1.5mg/ml)で63kPa、Cm(F)-Ela・Col混合ゲル(混合比1.5mg/ml:1.5mg/ml)で78kPaであった。すなわち疎水性の大きいアミノ酸メチルエステルでカップリングした化学修飾水溶性エラスチンとコラーゲンの混合ゲルほど応力は大きかった。これより、Elaの混合ゲルにおける応力向上への寄与の大きさは、Elaの自己集合能の大きさに依存することが考えられる。
【実施例】
【0057】
表1には、本発明の3種の化学修飾水溶性エラスチン・コラーゲン混合ゲルであるCm(G)-Ela・Col混合ゲル(混合比1.5mg/ml:1.5mg/ml)、Cm(V)-Ela・Col混合ゲル(混合比1.5mg/ml:1.5mg/ml)、Cm(F)-Ela・Col混合ゲル(混合比1.5mg/ml:1.5mg/ml)及びCm(G)-Ela・Col混合ゲルに15kGy、30kGyのγ線照射した15kGyγ線照射Cm(G)-Ela・Col混合ゲル(混合比1.5mg/ml:1.5mg/ml)、30kGyγ線照射Cm(G)-Ela・Col混合ゲル(混合比1.5mg/ml:1.5mg/ml)の50%ひずみに対する応力を、ブタ大動脈やイヌ腹部大動脈と比較した値を示した。
【実施例】
【0058】
【表1】
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【実施例】
【0059】
表1より、疎水度の大きいアミノ酸メチルエステルでカップリングした、化学修飾水溶性エラスチンとコラーゲンとの混合ゲルCm(F)-Ela・Col混合ゲルの50%ひずみに対する応力は、ブタ大動脈及びイヌ腹部大動脈の応力に近い強度を示した。さらにγ線照射したCm(G)-Ela・Col混合ゲルの応力はブタ大動脈及びイヌ腹部大動脈の応力よりも大きな強度を示した。このことから、本発明の混合ゲル及びγ線照射混合ゲルは、生体組織の血管と同等あるいはそれ以上の強度、弾性、伸展性を示すことより、ヒトの血管に十分使用できる可能性が示唆された。
【実施例】
【0060】
そして、化学修飾水溶性エラスチンの添加量を増加させることにより、また、アミノ酸よりももっと疎水度の大きいペプチド(例えば、F-F、F-F-F)のアルキルエステルをカップリングさせた化学修飾水溶性エラスチンを作製し、コラーゲンとの混合ゲルを作製すれば、更に大きな強度の人工血管用材料が得られる可能も示唆される。
【実施例】
【0061】
[TEM観察]
グリッド作製において、2%コロジオン処理したグリッドはSuper High Clean Vacuum Coater SVC-700 Turbo(サンユー電子(株)製)を用いて、カーボンを約200Åの厚さで蒸着され、試料を吸着させる前にQuick Coater SC-701(サンユー電子(株)製)を用いて、ベンジルアミンをカーボン膜状に薄く散布する処理を行った。試料は凍結乾燥したゲルを剃刀で薄く切り、その切片を作製したグリッドにそのまま置き、倍率×6400でTEMによる観察を行った。
【実施例】
【0062】
その結果、Colは分子量30万程度だが、ゲル化すると三次元網目構造を持つCol線維を形成していた。そして、このCol線維の間に分子量20万程度のCm-Elaが入り込み自己集合することで、コラーゲン線維に絡み合い、より丈夫な構造が形成されている状態が観察された。
【実施例】
【0063】
[人工血管の作製]
低温下でPBS(pH7.4)を用いて調製したCm(G)-Ela・Col混合溶液(混合比1.5mg/ml:1.5mg/ml)を径8mmの管内に注入し、次いで径5mmの中棒を挿入することにより径8mmと径5mmの間に混合溶液を管状に形成させた。その後、混合溶液を37℃で約1時間静置してゲル化させ、さらに37℃で乾燥した後にPBSを加えて48時間静置して膨潤させ、中棒を抜いて人工血管を作製した(図11)。
【実施例】
【0064】
[化学修飾水溶性エラスチン・コラーゲン混合ゲルに対する放射線の照射]
Ela・Col混合溶液(混合比1.5mg/ml:1.5mg/ml)、Cm(G)-Ela・Col混合溶液(混合比1.5mg/ml:1.5mg/ml)を37℃、1時間でゲル化させて、凍結乾燥し、PBS 2mlを加えて48時間膨潤させた。その後、γ線照射を、照射量15kGy及び30kGy、照射温度は40~50℃で行った。そして、放射線照射された本発明の化学修飾水溶性エラスチン・コラーゲン混合ゲルを得た。
【実施例】
【0065】
[放射線照射された本発明の化学修飾水溶性エラスチン・コラーゲン混合ゲルの引張試験]
上記で得られた放射線照射混合ゲルを、初期長が5mmとなるようにネジ式材料試験機(オートグラフAG-S-J、(株)島津製作所製)に固定した。ゲルの厚みと幅を測定し、断面積を求めた。混合ゲルを0.05mm/sの変位速度で伸展したときの応力とひずみの関係を測定し、また2.5mm(ひずみ50%)だけ伸長したときの応力とひずみの関係を測定した。さらに各ゲルを変位速度0.05mm/sで破断まで引張り、破断応力を測定し、破断まで引っ張ったときの応力とひずみの関係を測定した。
【実施例】
【0066】
未照射とγ線照射時の比較のために、Ela・Col混合ゲルとγ線照射Ela・Col混合ゲルの応力-ひずみ曲線を図12に示した。γ線照射Ela・Col混合ゲルは、非照射Ela・Col混合ゲルより大きな破断強度を示した。Cm(G)-Ela・Col混合ゲルとγ線照射Cm(G)-Ela・Col混合ゲルの応力-ひずみ曲線を図13に示した。γ線照射Cm(G)-Ela・Col混合ゲルの破断強度は、非照射Cm(G)-Ela・Col混合ゲルよりも大きく、また、γ線照射Ela・Col混合ゲル(図12参照)よりも大きかった。
【実施例】
【0067】
Ela・Col混合ゲル、γ線照射Ela・Col混合ゲル、Cm(G)-Ela・Col混合ゲル、γ線照射Cm(G)-Ela・Col混合ゲル、ブタ大動脈の応力-ひずみ曲線を図14、ひずみ50%までの応力-ひずみ曲線を図15に示した。
【実施例】
【0068】
図12から明らかなように、Ela・Col混合ゲルに対してγ線照射Ela・Col混合ゲルの最大応力は約1.5倍、最大ひずみは約0.5倍であった(図12)。また、Cm(G)-Ela・Col混合ゲルに対して、γ線照射Cm(G)-Ela・Col混合ゲルの最大応力は測定機器の限界値を超えるほど高かった(図13)。これはγ線照射により混合ゲルが架橋されたためと考えられる。また、γ線の照射に関わらず、Ela・Col混合ゲルに対してCm(G)-Ela・Col混合ゲルの最大応力が高かったことから、Elaの自己集合能は、混合ゲルの強度に寄与していると考えられる。実際に各混合ゲルとブタ大動脈の応力-ひずみ曲線を比較すると、γ線照射Cm(G)-Ela・Col混合ゲルは、ブタ大動脈よりも強度が大きかった(図14及び図15)。
【実施例】
【0069】
γ線照射Ela・Col混合ゲルでは、最大ひずみが小さくなる結果となったが、強度が大きくなっているので、γ線照射Ela・Colゲルのひずみでも素材として十分である。また、γ線照射Cm(G)-Ela・Col混合ゲルでは、測定機器の限界値に達したため、最大応力と最大ひずみが測定できないほど強度が増加していた。このことからγ線照射は人工血管用素材作製のための有用な手段であり、γ線照射混合ゲルは人工血管用素材として使用できるということが示唆された。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明の化学修飾水溶性エラスチン・コラーゲン混合ゲルは、人工血管としてヒト血管の代替として用いることができ、動脈硬化や動脈瘤等の循環器疾患の治療に用いることができる。また、人工靭帯、人工腱、人工皮膚、人工肺胞、人工子宮などにも応用できる。更に、シワとりなどのために皮膚に埋め込む美容整形にも応用できる。
【0071】
また、本発明の化学修飾水溶性エラスチン・コラーゲン混合ゲルは、その混合ゲルに上皮細胞、内皮細胞、線維芽細胞、平滑筋細胞、軟骨細胞等を播種して増殖させた人工組織としても有用である。
【0072】
さらに、本発明の化学修飾水溶性エラスチン・コラーゲン混合ゲルは、その混合ゲルに上皮成長因子、線維芽細胞成長因子、インスリン様成長因子、血管内皮細胞増殖因子、トランスフォーミング成長因子、血小板由来成長因子等の成長因子(増殖因子)、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、ヘパラン硫酸、ケラタン硫酸、ヘパリン、ヒアルロン酸等のグリコサミノグリカン、フィブロネクチン、ラミニン、ビトロネクチン、テネイシン、トロンボスポンジン、エンタクチン、オステオポンチン、フォンビルブランド因子、フィブリノーゲン等の細胞接着性タンパク質を加えた人工組織としても有用である。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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