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明細書 :電解めっき用陽極および該陽極を用いる電解めっき法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5522484号 (P5522484)
公開番号 特開2013-060622 (P2013-060622A)
登録日 平成26年4月18日(2014.4.18)
発行日 平成26年6月18日(2014.6.18)
公開日 平成25年4月4日(2013.4.4)
発明の名称または考案の名称 電解めっき用陽極および該陽極を用いる電解めっき法
国際特許分類 C25D  17/10        (2006.01)
FI C25D 17/10 101A
請求項の数または発明の数 12
全頁数 13
出願番号 特願2011-199258 (P2011-199258)
出願日 平成23年9月13日(2011.9.13)
審査請求日 平成25年12月27日(2013.12.27)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503027931
【氏名又は名称】学校法人同志社
発明者または考案者 【氏名】盛満 正嗣
早期審査対象出願または早期審理対象出願 早期審査対象出願
個別代理人の代理人 【識別番号】110000475、【氏名又は名称】特許業務法人みのり特許事務所
審査官 【審査官】瀧口 博史
参考文献・文献 特開2000-110000(JP,A)
国際公開第2009/151044(WO,A1)
特開2011-122183(JP,A)
特許第4916040(JP,B1)
調査した分野 C25D 17/10
特許請求の範囲 【請求項1】
水溶液を電解液とする電気めっきの陽極であって、非晶質の酸化ルテニウムと非晶質の酸化タンタルを含む触媒層を導電性基体上に形成したものであることを特徴とする電気めっき用陽極。
【請求項2】
前記触媒層が非晶質の酸化ルテニウムと非晶質の酸化タンタルからなることを特徴とする請求項1に記載の電気めっき用陽極。
【請求項3】
前記触媒層におけるルテニウムとタンタルのモル比が50:50であることを特徴とする請求項1または2に記載の電気めっき用陽極。
【請求項4】
前記触媒層と前記導電性基体の間に、中間層が形成されていることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の電気めっき用陽極。
【請求項5】
前記中間層が、タンタル、ニオブ、タングステン、モリブデン、チタン、白金、またはこれらのいずれかの金属の合金からなることを特徴とする請求項4に記載の電気めっき用陽極。
【請求項6】
前記中間層が、結晶質の酸化イリジウムと非晶質の酸化タンタルを含むことを特徴とする請求項4に記載の電気めっき用陽極。
【請求項7】
前記中間層が、結晶質のルテニウムとチタンの複合酸化物を含むことを特徴とする請求項4に記載の電気めっき用陽極。
【請求項8】
前記中間層が、結晶質の酸化ルテニウムと非晶質の酸化タンタルを含むことを特徴とする請求項4に記載の電気めっき用陽極。
【請求項9】
前記中間層が、導電性ダイヤモンドであることを特徴とする請求項4に記載の電気めっき用陽極。
【請求項10】
電気めっきされる金属が、銅、亜鉛、スズ、ニッケル、コバルト、鉛、クロム、インジウム、白金、銀、イリジウム、ルテニウム、パラジウムのうち、いずれか1つであることを特徴とする請求項1~9のいずれかに記載の電気めっき用陽極。
【請求項11】
水溶液を電解液とする電気めっき法であって、請求項1~9のいずれかに記載の電気めっき用陽極を用いて所望の金属を電気めっきすることを特徴とする電気めっき法。
【請求項12】
電気めっきされる金属が、銅、亜鉛、スズ、ニッケル、コバルト、鉛、クロム、インジウム、白金、銀、イリジウム、ルテニウム、パラジウムのうち、いずれか1つであることを特徴とする請求項11に記載の電気めっき法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、水溶液中の金属イオンを陰極上で還元して、所望する金属膜または金属箔を作製する電気めっきに用いる電気めっき用陽極、および水溶液中の金属イオンを陰極上で還元して、所望する金属膜または金属箔を作製する電気めっき法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気めっきは金属イオンを含む溶液(以下、電解液と記す)に通電して金属膜または金属箔を作製する方法であり、例えば、自動車の車体に用いられる電気亜鉛めっき鋼板は、亜鉛イオンを溶解した水溶液に鋼板を浸漬し、鋼板を陰極として亜鉛イオンを還元して、鋼板上に亜鉛膜を形成したものである。また、鋼板のような導電性基体上に金属膜を形成するだけでなく、電気めっきには、例えば電解銅箔製造のように、銅イオンを含む水溶液に、回転可能な円柱状の陰極の一部を浸漬し、陰極を回転させながらその表面に銅薄膜を連続して析出させ、同時に陰極の一端からこの薄膜を剥離して、銅箔を製造するプロセスも含まれる。このような電気めっきされる金属の例としては、銅、亜鉛、スズ、ニッケル、コバルト、鉛、クロム、インジウム、白金族金属(白金、イリジウム、ルテニウム、パラジウムなど)、貴金属(銀、金)、その他の遷移金属元素、レアメタルまたはクリティカルメタルに総称される金属、あるいはこれらの合金が挙げられる。このような電気めっきの陽極には、作製する金属膜や金属箔に応じて様々な形状のものが用いられるが、陽極材料の点からは、黒鉛、グラッシーカーボンなどの炭素電極、鉛合金電極、白金被覆チタン電極、酸化物被覆チタン電極が挙げられる。特に、金属イオンを含む硫酸酸性水溶液を用いる電気亜鉛めっきや電解銅箔製造には、酸化イリジウムを含む触媒層でチタン基体を被覆した酸化物被覆チタン電極が、また金属イオンを含む塩化物系水溶液を用いる電気めっきには、酸化ルテニウムを含む触媒層でチタン基体を被覆した酸化物被覆チタン電極が、用いられる。本願発明者は、このような電気めっき用陽極に用いる酸化物被覆チタン電極として、結晶質または非晶質の酸化イリジウムを含む触媒層を導電性基体上に形成した電極を特許文献1、特許文献2に開示している。これ以外にも、例えば、特許文献3、特許文献4に電気めっきに用いる酸化物被覆チタン電極が開示されている。これらの特許文献では、主に硫酸酸性水溶液のような酸性の水溶液を用いる電気めっきの例が述べられているが、電気めっきは略中性やアルカリ性の水溶液を用いて行うこともあり、本願発明で対象とする電気めっきも、酸性からアルカリ性までの広いpHの範囲の水溶液を用いる電気めっきや、塩化物系水溶液を用いる電気めっきを対象とする。
【0003】
電気めっきで消費されるエネルギーは、電解電圧と通電した電気量の積であり、陰極で析出する金属の量はこの電気量に比例する。したがって、電気めっきされる金属の単位重量あたりで必要となる電気エネルギー(以下、電力量原単位と記す)は、電解電圧が低いほど小さくなる。この電解電圧は、陽極と陰極の電位差であり、陰極反応は陰極で電気めっきされる金属によって異なり、その反応の種類によって陰極の電位も異なる。一方、陽極の主反応は、塩化物イオンを高濃度含有する水溶液を電解液とする場合は塩素発生であり、これを除いて、広いpHの範囲の水溶液においては酸素発生である。例えば、電気めっきによる電解銅箔製造では硫酸酸性水溶液が用いられており、電気金めっきにはアルカリ性の水溶液が用いられる。これらの電解液での陽極反応は酸素発生であるか、少なくとも陽極の主反応は酸素発生である。電気めっきを行う際の陽極の電位は、陽極に用いる材料によって変化する。例えば、陽極反応である酸素発生や塩素発生に対して触媒活性が低い材料と高い材料では、触媒活性が高い材料ほど陽極の電位は低くなる。したがって、同じ電解液を用いて電気めっきを行う場合、電力量原単位を小さくするためには、陽極に触媒活性の高い材料を用いて、陽極の電位を低くすることが重要であり、また必要である。
【0004】
さらに、電気めっきに用いる陽極には、酸素発生や塩素発生に対する高い触媒活性に加えて、これらの主反応以外に陽極上で生じる可能性がある反応(以下、副反応と記す)には、主反応とは反対に触媒活性が低いことが求められる。例えば、先に述べた電解銅箔製造に用いる硫酸酸性水溶液には、電解液中の必須成分である銅イオンのほかに、鉛イオンが不純物として含まれている。この鉛イオンは陽極上で酸化されて、陽極上に二酸化鉛として析出する場合がある。このような二酸化鉛の陽極上への析出は、陽極での主反応である酸素発生と同時に生じることになるが、二酸化鉛は酸素発生に対する触媒活性が低いため、陽極上での酸素発生反応を阻害し、結果として陽極の電位を上昇させ、電解電圧が増加する原因となる。このような陽極上への副反応による金属酸化物の析出と蓄積は、電解電圧の上昇を引き起こし、同時に陽極の寿命・耐久性を低下させる原因となる。
【0005】
上記のような理由から、水溶液を電解液とする電気めっきの陽極には、1)酸素発生および/または塩素発生に対する触媒活性が高く、2)陽極上に金属酸化物の析出を生じる副反応や、さらには金属成分を含まなくても陽極上に付着・蓄積するような析出物を生じる副反応に対する触媒活性は低く、3)したがって、主反応に対する高い選択性があり、4)その結果、陽極の電位が低く、言い換えれば陽極反応に対する過電圧が小さく、かつ電気めっきを続けても副反応の影響による陽極電位の上昇を生じることがなく、5)したがって、電解電圧が低く、かつ低い電解電圧が維持され、これによって目的とする金属を電気めっきするための電力量原単位が小さくなり、6)同時に副反応の影響による陽極の寿命・耐久性の低下がなく、7)主反応に対して高い耐久性を有する材料を使用することが望まれる。このような要求に対して、本願発明者は、電解銅箔製造などの硫酸系電解液を使用する電気めっきに適した陽極として、特許文献2に非晶質の酸化イリジウムを含む触媒層を導電性基体上に形成した陽極をすでに開示した。また、非晶質の酸化イリジウムを含む触媒層を形成したチタン電極は、特許文献3にも開示されている。
【先行技術文献】
【0006】

【特許文献1】特許第3654204号公報
【特許文献2】特許第3914162号公報
【特許文献3】特開2007-146215号公報
【特許文献4】特開2011-26691号公報
【特許文献5】特開2011-17084号公報
【特許文献6】米国特許出願公開第2009/0288958号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述の通り、本願発明者は、特許文献2において、非晶質の酸化イリジウムを含む触媒層を導電性基体上に形成した電気銅めっき用の酸素発生用陽極を開示し、これによって電気めっきで銅箔を製造する際の酸素発生に対する陽極電位、および電解電圧の低減が可能であることや、陽極の副反応として生じる二酸化鉛の析出を抑制できることなどを明らかにした。しかし、電解銅箔製造を含めて、水溶液を電解液とする様々な電気めっきに対しては、陽極反応に対する触媒活性をさらに高めることで、さらなる陽極電位の低下と、これに伴う電解電圧のさらなる低減が求められていた。また、電気めっきの電力量原単位の削減とともに、特許文献1~4に開示されている酸化物被覆チタン電極のように、イリジウムのような高価な金属を成分として含む触媒層を用いた陽極ではなく、これよりもより安価な触媒層を形成した陽極またはより製造コストが低い陽極が求められていた。さらに、水溶液を電解液とする電気めっき法についても、電解電圧のさらなる低減が可能で、かつ陽極のコストを低減して、よりコストを低くできる電気めっき法が求められていた。
【0008】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、その課題とするところは、水溶液を電解液とする電気めっきにおいて、鉛電極、鉛合金電極、金属被覆電極、金属酸化物被覆電極に比べて、陽極の主反応に対する触媒性が高く、陽極の電位が低いことで、電気めっきにおける電解電圧の低減と、電気めっきされる金属に対する電力量原単位の削減が可能であり、かつ様々な種類の金属の電気めっきの陽極として利用が可能で、同時に電気めっきに使用されている金属酸化物被覆電極、特に酸化イリジウムを含む触媒層で導電性基体を被覆した電極に比べて、触媒層のコストおよび陽極のコストを低下させることができる電気めっき用陽極を提供することであり、これとともに、水溶液を電解液とする電気めっき法において、陽極の電位および電解電圧が低く、したがって電気めっきの電力量原単位を低減することが可能で、かつ陽極にかかる初期コスト・維持コストも低く、したがって電気めっき全体のコストを低減できる電気めっき法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明者は、上記の課題を解決するために種々検討した結果、非晶質の酸化ルテニウムと非晶質の酸化タンタルを含む触媒層を導電性基体上に形成した陽極、およびこれを用いた電気めっき法によって上記の課題が解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
すなわち、上記課題を解決するための本発明の電気めっき用陽極は、水溶液を電解液とする電気めっきの陽極であって、非晶質の酸化ルテニウムと非晶質の酸化タンタルを含む触媒層を導電性基体上に形成したものであることを特徴とする。
【0011】
ここで、導電性基体としては、チタン、タンタル、ジルコニウム、ニオブ、タングステン、モリブデン等のバルブ金属や、チタン-タンタル、チタン-ニオブ、チタン-パラジウム、チタン-タンタル-ニオブ等のバルブ金属を主体とする合金、バルブ金属と白金族金属および/または遷移金属との合金、または導電性ダイヤモンド(例えば、ホウ素をドープしたダイヤモンド)が好ましいが、これに限定されるものではない。また、その形状は、板状、網状、棒状、シート状、管状、線状、多孔板状、多孔質状、真球状の金属粒子を結合させた三次元多孔体等の種々の形状とすることができる。導電性基体としては、上記のものの他、上記のバルブ金属、合金、導電性ダイヤモンドなどを鉄、ニッケル等のバルブ金属以外の金属または導電性セラミックス表面に被覆させたものを使用してもよい。
【0012】
非晶質の酸化ルテニウムと非晶質の酸化タンタルを含む触媒層は、水溶液を電解液とする電気めっきでの酸素発生および塩素発生に対して、選択的に高い触媒活性を示し、陽極の電位が著しく低くなるという作用を有する。本願発明者は、特許文献2において、結晶質の酸化イリジウムを含む触媒層を導電性基体上に形成した電極が、鉛電極や鉛合金電極よりも硫酸系水溶液中における酸素発生の電位が低いこと、さらに非晶質の酸化イリジウムを含む触媒層を導電性基体上に形成した電極は、これらに対してさらに酸素発生の電位が低く、同時に副反応を抑制できることを開示したが、本願発明者は、本発明の電気めっき用陽極がこれらの電極よりもさらに触媒活性が高いことを見出した。これによって、本発明の電気めっき用陽極は、陰極で電気めっきされる金属の種類によらず、水溶液を電解液とする電気めっきにおいて、他の陽極を用いる場合に比べて、電解電圧を低減することができるという作用を有する。特に、この作用は、本願発明者が特許文献2ですでに開示した非晶質の酸化イリジウムを含む触媒層を形成した陽極、特に非晶質の酸化イリジウムと非晶質の酸化タンタルを含む触媒層を形成した陽極を用いて電気めっきを行う場合よりも、さらに陽極の電位を低下させることが可能で、電解電圧を低減できるという、極めて進歩性が高く、かつ新規で特異的な作用である。また、このように陽極の電位が低くなり、酸素発生が他の副反応に対して優先されることによって、二酸化鉛などの陽極での析出・蓄積といった陽極での副反応が抑制されるという作用を有する。さらに、ルテニウムはイリジウムに比べて1/3以下の価格であることから、非晶質の酸化イリジウムと非晶質の酸化タンタルを含む触媒層の触媒活性以上の高い触媒活性を、非晶質の酸化ルテニウムと非晶質の酸化タンタルを含む触媒層では、より安価な触媒層で達成することができるという作用を有する。
【0013】
また、本願発明者は、非晶質の酸化ルテニウムを非晶質の酸化タンタルとの混合物とすることによって、水溶液を電解液とする電気めっきに応用可能な耐久性が得られることも見出した。すなわち、特許文献5では比較例の一つとして、480℃の熱分解で得られたルテニウムとタンタルを金属成分とするコーティング層の硫酸溶液中における耐久性が極めて低かったことが開示されているが、このような結果は、熱分解を少なくとも350℃以上の温度で行って得られるような結晶質の酸化ルテニウムを含む場合において生じる問題であり、これに対して、本願発明者は、酸化ルテニウムを、非晶質の酸化タンタルとの混合物の中で非晶質とした状態の触媒層を形成した陽極が、水溶液を電解液とする電気めっき用陽極として、特許文献5のような耐久性の問題を生じないことを見出した。
【0014】
以下に、本発明の内容をさらに詳細に説明する。導電性基体上に非晶質の酸化ルテニウムと非晶質の酸化タンタルを含む触媒層を形成する方法には、ルテニウムとタンタルを含む前駆体溶液を導電性基体上に塗布した後、所定の温度で熱処理する熱分解法の他、スパッタリング法やCVD法など各種の物理蒸着法や化学蒸着法などを用いることが可能である。ここで、本発明の電気めっき用陽極を作製する方法の中で、特に熱分解法による作製方法についてさらに述べる。例えば、無機化合物、有機化合物、イオン、錯体などの様々な形態のルテニウムおよびタンタルを含む前駆体溶液をチタン基体上に塗布し、これを少なくとも350℃よりも低い温度範囲で熱分解すると、チタン基体上に非晶質の酸化ルテニウムと非晶質の酸化タンタルを含む触媒層が形成される。例えば、塩化ルテニウム水和物と塩化タンタルを溶解したブタノール溶液を前駆体溶液として、これをチタン基体上に塗布して熱分解するとき、例えばブタノール溶液中のルテニウムとタンタルのモル比が10:90~90:10であるとき、熱分解温度を300℃とすると、非晶質の酸化ルテニウムと非晶質の酸化タンタルを含む触媒層が形成される。また、上記の前駆体溶液を塗布した後に、280℃で熱分解すると、非晶質の酸化ルテニウムと非晶質の酸化タンタルの混合物からなる触媒層が形成される。なお、本発明の電気めっき用陽極の触媒層におけるルテニウムとタンタルのモル比は、上記の範囲に限定されるものではない。
【0015】
熱分解法において非晶質の酸化ルテニウムと非晶質の酸化タンタルを含む触媒層を導電性基体上に形成する場合、チタン基体に塗布する前駆体溶液中に含まれるルテニウムとタンタルのモル比、熱分解温度、さらには前駆体溶液中にルテニウムとタンタル以外の金属成分が含まれる場合は、その金属成分の種類と前駆体溶液に含まれる全金属成分中でのモル比などによっても、触媒層中に非晶質の酸化ルテニウムと非晶質の酸化タンタルが含まれるかどうかは変化する。例えば、前駆体溶液に含まれる金属成分以外の成分が同じであり、かつ金属成分としてはルテニウムとタンタルだけが含まれる場合では、前駆体溶液中のルテニウムのモル比が低いほうが、非晶質の酸化ルテニウムと非晶質の酸化タンタルを含む触媒層が得られる熱分解温度の範囲は広くなる傾向を示す。また、このような金属成分のモル比だけでなく、非晶質の酸化ルテニウムと非晶質の酸化タンタルが含まれる触媒層を形成する条件は、前駆体溶液の調製方法や材料、例えば前駆体溶液の調製の際に用いるルテニウムおよびタンタルの原材料、溶媒の種類、熱分解を促進するために添加されるような添加剤の種類や濃度によっても変化する。
【0016】
したがって、本発明の電気めっき用陽極において、熱分解法で非晶質の酸化ルテニウムと非晶質の酸化タンタルを含む触媒層を形成する際の条件は、上記に述べた熱分解法おけるブタノール溶媒の使用、ルテニウムとタンタルのモル比やこれに関連した熱分解温度の範囲に限定されたものではなく、上記の条件はあくまでその一例であり、本発明の電気めっき用陽極の作製方法は、上記に示した以外のあらゆる方法において、導電性基体上に非晶質の酸化ルテニウムと非晶質の酸化タンタルを含む触媒層を形成できるものであれば、これらはすべて含まれる。例えば、このような方法には、特許文献6で開示されているような、前駆体溶液の調製過程で加熱処理を伴うような方法も当然に含まれる。なお、非晶質の酸化ルテニウムと非晶質の酸化タンタルを含む触媒層の形成については、一般的に用いられるX線回折法によって、酸化ルテニウムまたは酸化タンタルに対応する回折ピークが観察されないか、またはブロードになっていることによって知ることができる。
【0017】
また、本発明は、触媒層と導電性基体の間に、中間層が形成されていることを特徴とする電気めっき用陽極である。ここで、中間層とは、触媒層に比べて陽極の主反応に対する触媒活性は低いが、導電性基体を十分に被覆しており、導電性基体の腐食を抑制する作用を有するものであり、金属、合金、ボロンドープダイヤモンド(導電性ダイヤモンド)などの炭素系材料、酸化物や硫化物などの金属化合物、金属複合酸化物などの複合化合物などが挙げられる。例えば、金属であればタンタル、ニオブなどの薄膜が好適であり、また合金であればタンタル、ニオブ、タングステン、モリブデン、チタン、白金などの合金が好適である。このような金属または合金が触媒層と導電性基体の間に中間層として形成され、同時に導電性基体の表面を被覆していることによって、触媒層中に電解液が浸透しても、導電性基体に到達することを防止し、したがって導電性基体が電解液によって腐食し、腐食生成物によって導電性基体と触媒層の間で電流が円滑に流れなくなることを抑制するという作用を有する。また、ボロンドープダイヤモンド(導電性ダイヤモンド)などの炭素系材料を用いた中間層についても同様な作用を有する。上記の金属、合金、炭素系材料からなる中間層は、熱分解法、スパッタリング法やCVD法など各種の物理蒸着法や化学蒸着法、溶融めっき法、電気めっき法などの様々な方法により形成することができる。酸化物や硫化物などの金属化合物、または金属複合酸化物からなる中間層としては、例えば、結晶質の酸化イリジウムを含む酸化物からなる中間層などが好適である。特に、触媒層を熱分解法で作製する場合、同じ熱分解法で酸化物や複合酸化物からなる中間層を形成することは、陽極の作製工程の簡素化の点で有利である。また、本発明の電気めっき用陽極の触媒層とは異なる酸化物や複合酸化物からなる中間層は、非晶質の酸化ルテニウムと非晶質の酸化タンタルを含む触媒層に比べて陽極の主反応に対する触媒活性が低いため、したがって触媒層中を電解液が浸透して中間層に至った場合でも、中間層では酸素発生や塩素発生が触媒層に比べて優先的に起こらないことから、触媒層よりも耐久性が高く、よって導電性基体を保護する作用を有する。同時に、このような耐久性のより高い酸化物または複合酸化物が導電性基体を被覆することで、中間層がない場合に比べて、電解液による導電性基体の腐食を抑制することができるという作用を有する。
【0018】
また、本発明は、中間層が、結晶質の酸化イリジウムと非晶質の酸化タンタルを含むことを特徴とする電気めっき用陽極である。結晶質の酸化イリジウムと非晶質の酸化タンタルを含む中間層は、すでに述べた作用に加えて酸素発生に対する耐久性が高く、また触媒層中の酸化ルテニウムと中間層中の酸化イリジウムが同じ結晶系に属し、原子間距離が近いことから、中間層上に形成される触媒層との間の密着性がよく、よって、陽極の主反応が酸素発生である場合に、耐久性が特に向上するという作用を有する。結晶質の酸化イリジウムと非晶質の酸化タンタルを含む中間層は、イリジウムとタンタルを含む前駆体溶液を導電性基体上に塗布した後、所定の温度で熱処理する熱分解法の他、スパッタリング法やCVD法など各種の物理蒸着法や化学蒸着法などの方法により作製することが可能である。例えば、熱分解法の場合、イリジウムとタンタルを含む前駆体溶液を400℃~550℃の温度で熱分解して得られる結晶質の酸化イリジウムと非晶質の酸化タンタルからなる中間層などは好適である。
【0019】
また、本発明は、中間層が、結晶質のルテニウムとチタンの複合酸化物を含むことを特徴とする電気めっき用陽極である。結晶質のルテニウムとチタンの複合酸化物を含む中間層は、すでに述べた作用に加えて塩素発生に対する耐久性が高く、また触媒層中の酸化ルテニウムと中間層中の複合酸化物が同じ結晶系に属し、原子間距離が近いことから、中間層上に形成される触媒層との間の密着性がよく、よって、陽極の主反応が塩素発生である場合に、耐久性が特に向上するという作用を有する。結晶質のルテニウムとチタンの複合酸化物を含む中間層は、ルテニウムとチタンを含む前駆体溶液を導電性基体上に塗布した後、所定の温度で熱処理する熱分解法の他、スパッタリング法やCVD法など各種の物理蒸着法や化学蒸着法などの方法により作製することが可能である。例えば、熱分解法の場合、ルテニウムとチタンを含む前駆体溶液を450℃~550℃の温度で熱分解して得られる結晶質のルテニウムとチタンの複合酸化物からなる中間層などは好適である。
【0020】
また、本発明は、中間層が、結晶質の酸化ルテニウムと非晶質の酸化タンタルを含むことを特徴とする電気めっき用陽極である。結晶質の酸化ルテニウムと非晶質の酸化タンタルを含む中間層は、すでに述べた作用に加えて塩素発生に対する耐久性が高く、また触媒層中の酸化ルテニウムと中間層中の酸化ルテニウムが同じ結晶系に属し、原子間距離が近いことから、中間層上に形成される触媒層との間の密着性がよく、よって、陽極の主反応が塩素発生である場合に、耐久性が特に向上するという作用を有する。結晶質の酸化ルテニウムと非晶質の酸化タンタルを含む中間層は、ルテニウムとタンタルを含む前駆体溶液を導電性基体上に塗布した後、所定の温度で熱処理する熱分解法の他、スパッタリング法やCVD法など各種の物理蒸着法や化学蒸着法などの方法により作製することが可能である。例えば、熱分解法の場合、ルテニウムとタンタルを含む前駆体溶液を400℃~550℃の温度で熱分解して得られる結晶質の酸化ルテニウムと非晶質の酸化タンタルからなる中間層などは好適である。
【0021】
また、本発明は、電気めっきされる金属が、銅、亜鉛、スズ、ニッケル、コバルト、鉛、クロム、インジウム、白金、銀、イリジウム、ルテニウム、パラジウムのうち、いずれか1つであることを特徴とする電気めっき用陽極である。また、本発明は、水溶液を電解液とする電気めっき法であって、本発明の電気めっき用陽極を用いて所望の金属を電気めっきすることを特徴とする電気めっき法であり、またその電気めっきされる金属が、銅、亜鉛、スズ、ニッケル、コバルト、鉛、クロム、インジウム、白金、銀、イリジウム、ルテニウム、パラジウムのうち、いずれか1つであることを特徴とする電気めっき法である。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば下記の効果が得られる。
1)水溶液を電解液とする電気めっきにおいて、従来に比べて、陽極の電位を低くすることができることから、電気めっきする金属の種類に関わらず、電気めっきの電解電圧を低減することが可能となり、これによって電力量原単位を大幅に削減できるという効果を有する。
2)また、従来に比べて、陽極の電位を低くすることができることから、陽極上で生じる可能性がある様々な副反応を抑制することが可能となり、長期間の電気めっきにおいて電解電圧の上昇を抑制することができるという効果を有する。
3)上記の効果とともに、副反応によって陽極上に析出・蓄積する酸化物やその他の化合物を取り除く必要がなくなる、または軽減されることから、このような作業による陽極のダメージが抑制され、したがって陽極の寿命が長くなるという効果を有する。
4)上記の効果とともに、副反応によって陽極上に析出・蓄積した酸化物やその他の化合物を取り除く作業が不要、または少なくなることから、電気めっきにおける陽極のメンテナンス・交換が抑制または軽減されるという効果を有する。また、このような除去作業によって、電気めっきを休止する必要性が抑えられるため、連続的かつより安定した電気めっきが可能になるという効果を有する。
5)上記の効果とともに、陽極上への析出物が抑制されることから、析出物によって陽極の有効表面積が制限され、または陽極での電解可能な面積が不均一となり、陰極上に金属が不均一に電気めっきされ、平滑性が乏しい、密度が低いといった電気めっきで得られる金属膜または金属箔の品質低下を抑制することができるという効果を有する。
6)また、上記のような理由で陰極上で不均一に成長した金属が、陽極に達してショートし、電気めっきができなくなることを防止することができるという効果を有する。また、陰極上で金属が不均一にかつデンドライト成長することが抑制されるため、陽極と陰極の極間距離を短くすることができ、電解液のオーム損による電解電圧の増加を抑制できるという効果を有する。
7)また、上記のように、副反応で生じる陽極上への析出物による様々な問題が解消されることによって、安定で連続的な電気めっきが可能になり、電気めっきにおける保守・管理作業を低減することができるとともに、電気めっきされる金属の製品管理が容易になるという効果を有する。また、長期間の電気めっきにおける陽極のコストを低減できるという効果を有する。
8)また、本発明によれば、従来の酸化イリジウムを含む触媒層を形成したチタン電極に比べて、酸化ルテニウムを用いることにより触媒層のコストが削減され、また熱分解温度が低いことから触媒層の形成工程におけるコストも削減されるという効果を有する。
9)上記の効果とともに、様々な金属の電気めっきにおいて、電気めっき全体の生産コストを大幅に低減できるという効果を有する。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を実施例、比較例を用いて詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、本発明は亜鉛、銅、ニッケル、白金以外の他の金属の電気めっきにも適用可能である。

【0024】
[電気亜鉛めっき]
(実施例1)
市販のチタン板(長さ5cm、幅1cm、厚さ1mm)を10%のシュウ酸溶液中に90℃で60分間浸漬してエッチング処理を行った後、水洗し、乾燥した。次に、6vol%の濃塩酸を含むブタノール(n-COH)溶液に、ルテニウムとタンタルのモル比が50:50で、ルテニウムとタンタルの合計が金属換算で50g/Lとなるように三塩化ルテニウム三水和物(RuCl・3HO)と五塩化タンタル(TaCl)を添加した塗布液を調製した。この塗布液を上記乾燥後のチタン板に塗布し、120℃で10分間乾燥し、次いで280℃に保持した電気炉内で20分間熱分解した。この塗布、乾燥、熱分解を計7回繰り返し行い、導電性基体であるチタン板上に触媒層を形成した陽極を作製した。

【0025】
実施例1の陽極をX線回折法により構造解析したところ、X線回折像にはRuOに相当する回折ピークは見られず、またTaに相当する回折ピークも見られなかった。また、XPS(X線光電子分光法)によるルテニウム、タンタル、酸素の化学状態の分析結果から、触媒層はRuOとTaの混合物であることが判った。すなわち、実施例1の陽極には、チタン板上に非晶質の酸化ルテニウムと非晶質の酸化タンタルからなる触媒層が形成されていた。

【0026】
市販の電気亜鉛めっき浴(マルイ鍍金工業製、亜鉛濃度 約80g/L、pH=-1)を電解液とし、この電解液に亜鉛板(2cm×2cm)を陰極として浸漬した。また、上記の陽極をポリテトラフルオロエチレン製ホルダーに埋設し、電解液に接触する電極面積を1cmに規制した状態で、同じく電解液に上記の陰極と所定の極間距離をおいて対向配置した。また、電解液とは別の容器に塩化カリウム飽和水溶液を入れ、これに市販の銀-塩化銀電極を参照極として浸漬した。この塩化カリウム飽和水溶液と電解液を塩橋とルギン管を用いて接続し、3電極式の電気化学測定セルを作製した。陽極と陰極との間に、陽極の電極面積基準で電流密度10mA/cmまたは20mA/cmのいずれかの電解電流を流して陰極上で電気亜鉛めっきを行いながら、参照極に対する陽極の電位を測定した。なお、電解液の温度は恒温水槽を用いて40℃とした。

【0027】
(比較例1)
市販のチタン板(長さ5cm、幅1cm、厚さ1mm)を10%のシュウ酸溶液中に90℃で60分間浸漬してエッチング処理を行った後、水洗し、乾燥した。次に、6vol%の濃塩酸を含むブタノール(n-COH)溶液に、イリジウムとタンタルのモル比が50:50でイリジウムとタンタルの合計が金属換算で70g/Lとなるように塩化イリジウム酸六水和物(HIrCl・6HO)と塩化タンタル(TaCl)を添加した塗布液を調製した。この塗布液を上記乾燥後のチタン板に塗布し、120℃で10分間乾燥し、次いで360℃に保持した電気炉内で20分間熱分解した。この塗布、乾燥、熱分解を計5回繰り返し行い、導電性基体であるチタン板上に触媒層を形成した陽極を作製した。

【0028】
比較例1の陽極をX線回折法により構造解析したところ、X線回折像にはIrOに相当する回折ピークは見られず、またTaに相当する回折ピークも見られなかった。また、XPS(X線光電子分光法)によるイリジウム、タンタル、酸素の化学状態の分析結果から、触媒層はIrOとTaの混合物であることが判った。すなわち、比較例1の陽極には、チタン板上に非晶質の酸化イリジウムと非晶質の酸化タンタルからなる触媒層が形成されていた。

【0029】
実施例1と同じ電解液、電気化学測定セルを用い、実施例1の陽極の代わりに、比較例1の陽極を用いたことを除いて、他の条件は同一として、陽極と陰極との間に、陽極の電極面積基準で電流密度10mA/cmまたは20mA/cmのいずれかの電解電流を流して陰極上で電気亜鉛めっきを行いながら、参照極に対する陽極の電位を測定した。

【0030】
実施例1、比較例1の電解亜鉛めっきを行った際の陽極電位は、表1のようになった。
【表1】
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【0031】
表1に示したように、電気亜鉛めっきにおいて、非晶質の酸化ルテニウムと非晶質の酸化タンタルからなる触媒層を使用した実施例1は、非晶質の酸化イリジウムと非晶質の酸化タンタルからなる触媒層を使用した比較例1に対して、電解電圧が0.04V~0.05V低かった。すなわち、非晶質の酸化ルテニウムと非晶質の酸化タンタルからなる触媒層を形成した陽極(実施例1)は、非晶質の酸化イリジウムと非晶質の酸化タンタルからなる触媒層を形成した陽極(比較例1)よりも、さらに陽極電位が低くなり、電気亜鉛めっきの電解電圧を低減できることが判った。

【0032】
[電気銅めっき]
(実施例2)
実施例1における電解液を、市販の電気銅めっき浴(マルイ鍍金工業製、銅濃度 約91g/L、pH=6.6)に変えたことを除いて、他の条件は実施例1と同じとして、電気銅めっきを行いながら、参照極に対する陽極の電位を測定した。

【0033】
(比較例2)
比較例1における電解液を、市販の電気銅めっき浴(マルイ鍍金工業製、銅濃度 約91g/L、pH=6.6)に変えたことを除いて、他の条件は比較例1と同じとして、電気銅めっきを行いながら、参照極に対する陽極の電位を測定した。

【0034】
実施例2、比較例2の電気銅めっきを行った際の陽極電位は、表2のようになった。
【表2】
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【0035】
表2に示したように、電気銅めっきにおいて、非晶質の酸化ルテニウムと非晶質の酸化タンタルからなる触媒層を使用した実施例2は、非晶質の酸化イリジウムと非晶質の酸化タンタルからなる触媒層を使用した比較例2に対して、電解電圧が0.09V~0.10V低かった。すなわち、非晶質の酸化ルテニウムと非晶質の酸化タンタルからなる触媒層を形成した陽極(実施例2)は、非晶質の酸化イリジウムと非晶質の酸化タンタルからなる触媒層を形成した陽極(比較例2)よりも、さらに陽極電位が低くなり、電気銅めっきの電解電圧を低減できることが判った。

【0036】
[電気ニッケルめっき]
(実施例3)
実施例1における電解液を、市販の電気ニッケルめっき浴(マルイ鍍金工業製、ニッケル塩18%、pH=7.7)に変えたことを除いて、他の条件は実施例1と同じとして、電気ニッケルめっきを行いながら、参照極に対する陽極の電位を測定した。

【0037】
(比較例3)
比較例1における電解液を、市販の電気ニッケルめっき浴(マルイ鍍金工業製、ニッケル塩18%、pH=7.7)に変えたことを除いて、他の条件は比較例1と同じとして、電気ニッケルめっきを行いながら、参照極に対する陽極の電位を測定した。

【0038】
実施例3、比較例3の電気ニッケルめっきを行った際の陽極電位は、表3のようになった。
【表3】
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【0039】
表3に示したように、電気ニッケルめっきにおいて、非晶質の酸化ルテニウムと非晶質の酸化タンタルからなる触媒層を使用した実施例3は、非晶質の酸化イリジウムと非晶質の酸化タンタルからなる触媒層を使用した比較例3に対して、電解電圧が0.15V低かった。すなわち、非晶質の酸化ルテニウムと非晶質の酸化タンタルからなる触媒層を形成した陽極(実施例3)は、非晶質の酸化イリジウムと非晶質の酸化タンタルからなる触媒層を形成した陽極(比較例3)よりも、さらに陽極電位が低くなり、電気ニッケルめっきの電解電圧を低減できることが判った。

【0040】
[電気白金めっき]
(実施例4)
実施例1における電解液を、市販の電気白金めっき浴(マルイ鍍金工業製、白金化合物約2%、水酸化カリウム約1.5%、pH=12.2)に変えたことを除いて、他の条件は実施例1と同じとして、電気白金めっきを行いながら、参照極に対する陽極の電位を測定した。

【0041】
(比較例4)
比較例1における電解液を、市販の電気白金めっき浴(マルイ鍍金工業製、白金化合物約2%、水酸化カリウム約1.5%、pH=12.2)に変えたことを除いて、他の条件は比較例1と同じとして、電気白金めっきを行いながら、参照極に対する陽極の電位を測定した。

【0042】
実施例4の電気白金めっきを行った際の陽極電位は、電流密度が10mA/cmのときに0.95V、20mA/cmのとき1.24Vとなった。なお、比較例4についても陽極電位の測定を行ったが、通電開始直後から電位が安定せず、また電位が急激に上昇して安定した陽極電位を測定することができなかった。比較例4の陽極電位測定後に電解液から陽極を取り出したところ、チタン板上の触媒層の形態の変化が認められ、触媒層が劣化したことが判った。

【0043】
[電気スズめっき]
(実施例5)
実施例1における電解液を、市販の電気スズめっき浴(マルイ鍍金工業製、pH=0.13)とし、温度を25℃に変えたことを除いて、他の条件は実施例1と同じとして、電気スズめっきを行いながら、参照極に対する陽極の電位を測定した。

【0044】
(比較例5)
比較例1における電解液を、市販の電気スズめっき浴(マルイ鍍金工業製、pH=0.13)とし、温度を25℃に変えたことを除いて、他の条件は比較例1と同じとして、電気ニッケルめっきを行いながら、参照極に対する陽極の電位を測定した。

【0045】
実施例5、比較例5の電気スズめっきを行った際の陽極電位は、表4のようになった。
【表4】
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【0046】
表4に示したように、電気スズめっきにおいて、非晶質の酸化ルテニウムと非晶質の酸化タンタルからなる触媒層を使用した実施例5は、非晶質の酸化イリジウムと非晶質の酸化タンタルからなる触媒層を使用した比較例5に対して、電解電圧が0.22V低かった。すなわち、非晶質の酸化ルテニウムと非晶質の酸化タンタルからなる触媒層を形成した陽極(実施例5)は、非晶質の酸化イリジウムと非晶質の酸化タンタルからなる触媒層を形成した陽極(比較例5)よりも、さらに陽極電位が低くなり、電気スズめっきの電解電圧を低減できることが判った。