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明細書 :電子移動抑制剤とその利用

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5467275号 (P5467275)
登録日 平成26年2月7日(2014.2.7)
発行日 平成26年4月9日(2014.4.9)
発明の名称または考案の名称 電子移動抑制剤とその利用
国際特許分類 G01N  21/64        (2006.01)
G01N  21/78        (2006.01)
C09K  11/06        (2006.01)
C12N  15/09        (2006.01)
FI G01N 21/64 F
G01N 21/78 C
C09K 11/06
C12N 15/00 ZNAA
請求項の数または発明の数 16
全頁数 41
出願番号 特願2012-501910 (P2012-501910)
出願日 平成23年2月28日(2011.2.28)
国際出願番号 PCT/JP2011/054555
国際公開番号 WO2011/105610
国際公開日 平成23年9月1日(2011.9.1)
優先権出願番号 2010042632
優先日 平成22年2月26日(2010.2.26)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成25年10月31日(2013.10.31)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人名古屋大学
発明者または考案者 【氏名】樫田 啓
【氏名】浅沼 浩之
【氏名】関口 康司
【氏名】東山 尚史
早期審査対象出願または早期審理対象出願 早期審査対象出願
個別代理人の代理人 【識別番号】110000110、【氏名又は名称】特許業務法人快友国際特許事務所
審査官 【審査官】伊藤 裕美
参考文献・文献 国際公開第08/108074(WO,A1)
国際公開第04/009709(WO,A1)
特開2006-70250(JP,A)
特開2004-177348(JP,A)
特表2006-526988(JP,A)
WILSON,James N. et al.,Quenching of Fluorescent Nucleobases by NeighboringDNA: The “Insulator” Concept,ChemBioChem,2008年,9,279-285
調査した分野 G01N 21/62-21/83
C09K 11/06
C12N 15/09
特許請求の範囲 【請求項1】
電子移動を抑制する電子移動抑制剤であって、
前記電子移動は、蛍光標識と蛍光標識との間又は蛍光標識と核酸塩基との間の電子移動であり、
前記蛍光標識は、核酸塩基を備えるバックボーン構造体に連結されており、
前記電子移動抑制剤は、炭素数が4以上7以下であって置換されていてもよい非平面構造の単環式アルカンを有する環状体を前記蛍光標識に隣接して備える、電子移動抑制剤。
【請求項2】
前記電子移動抑制は、前記環状体を一つの前記蛍光標識の両側に隣接して備える、請求項1に記載の電子移動抑制剤。
【請求項3】
前記環状体は、前記バックボーン構造体又は前記バックボーン構造体の前記核酸塩基と相補する核酸塩基を備える別のバックボーン構造体に連結されて用いられる、請求項1又は2に記載の電子移動抑制剤。
【請求項4】
前記単環式アルカンは、シクロヘキサン誘導体である、請求項1~3のいずれかに記載の電子移動抑制剤。
【請求項5】
前記環状体は、以下から選択される、請求項4に記載の電子移動抑制剤。
【化27】
JP0005467275B2_000029t.gif

【請求項6】
ラベル化剤であって、
核酸塩基を備えるバックボーン構造体に連結された、蛍光標識を有する一又は二以上の蛍光標識ユニットと、
前記バックボーン構造体及び/又は前記バックボーン構造体の前記核酸塩基と相補する核酸塩基を備える別のバックボーン構造体に連結された炭素数が4以上7以下であって置換されていてもよい非平面構造の単環式アルカンを有する環状体を含む電子移動を抑制するための一又は二以上の電子移動抑制ユニットと、
を備え、
前記電子移動は、蛍光標識と蛍光標識との間又は蛍光標識と核酸塩基との間の電子移動であり、
前記一又は二以上の電子移動抑制ユニットを、前記蛍光標識ユニットと前記蛍光標識ユニットとの間又は前記蛍光標識ユニットと前記核酸塩基との間に備える、ラベル化剤。
【請求項7】
前記二つの電子移動抑制ユニットを、前記一つの蛍光標識ユニットの両側に隣接して備える、請求項6に記載のラベル化剤。
【請求項8】
前記バックボーン構造体は、リン酸-糖バックボーン及び/又はリン酸-アルキレン鎖バックボーンのいずれかである、請求項6又は7に記載のラベル化剤。
【請求項9】
前記蛍光標識ユニットは、以下の式(1)で表される、請求項6~8のいずれかに記載のラベル化剤。
【化28】
JP0005467275B2_000030t.gif
(式中、Xは蛍光標識を表し、R1は、炭素数が2又は3であって置換されていてもよいアルキレン鎖を表し、R2は、直接の結合又は炭素数が1以上2以下であって置換されていてもよいアルキレン鎖を表し、Zは、直接の結合又は連結基を表す。)
【請求項10】
前記電子移動抑制ユニットは、以下の式(2)で表される、請求項6~9いずれかに記載のラベル化剤。
【化29】
JP0005467275B2_000031t.gif
(式中、Yは前記環状体を表し、R1は、炭素数が2又は3であって置換されていてもよいアルキレン鎖を表し、R2は、直接の結合又は炭素数が1以上2以下であって置換されていてもよいアルキレン鎖を表し、Zは、直接の結合又は連結基を表す。)
【請求項11】
前記蛍光標識は、シアニン系色素、メロシアニン系色素、縮合芳香環系色素、キサンテン系色素、クマリン系色素及びアクリジン系色素からなる群から選択される、請求項6~10のいずれかに記載のラベル化剤。
【請求項12】
請求項6~11のいずれかに記載のラベル化剤をオリゴヌクレオチドの一部に備える、ラベル化されたオリゴヌクレオチド。
【請求項13】
以下の式(3)で表される、炭素数が4以上7以下であって置換されていてもよい非平面構造の単環式アルカンを有する環状体を備える、蛍光標識と蛍光標識との間又は蛍光標識と核酸塩基との間の電子移動を抑制する電子移動抑制剤用材料。
【化30】
JP0005467275B2_000032t.gif
(式中、Yは前記環状体を表し、R1は、炭素数が2又は3であって置換されていてもよいアルキレン鎖を表し、R2は、直接の結合又は炭素数が1以上2以下であって置換されていてもよいアルキレン鎖を表し、Zは、直接の結合又は連結基を表す。C1は、水素原子又は水酸基保護基を表し、D1は、水素原子、水酸基保護基又はホスホアミダイト基を表す。)
【請求項14】
前記環状体は、以下から選択される、請求項13に記載の電子移動抑制剤用材料。
【化31】
JP0005467275B2_000033t.gif

【請求項15】
生体分子の検出方法であって、
生体分子を、請求項6~11のいずれかに記載のラベル化剤の前記蛍光標識に基づくシグナルによって検出する工程、
を備える、方法。
【請求項16】
蛍光標識されたオリゴヌクレオチドの生産方法であって、
請求項6~11のいずれかに記載のラベル化剤を含んだオリゴヌクレオチドを合成する工程、を備える、生産方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本願は、2010年2月26日出願の日本国特許出願である特願2010-042632号を優先権の主張の基礎とするものであり、引用によりその出願内容の全てが本願に取り込まれるものとする。本発明は、インスレーター及びその利用に関する。
【背景技術】
【0002】
核酸やタンパク質などの生体分子のラベル化法として、フルオレッセインやCy3といった蛍光色素を一分子結合させる手法がある。この手法によれば、検出強度は、一分子の蛍光色素の蛍光強度に依存することになる。蛍光強度は、蛍光色素の二つの特性である光の吸収と量子収率とに比例する。蛍光色素は量子収率が高いものの、一分子で用いられるため、光の吸収が小さく、結果として高い蛍光強度が得られていない。
【0003】
加えて、蛍光色素をDNA等の核酸に結合させた場合、隣接するヌクレオチドのグアニンやチミンなどの核酸塩基によってその蛍光色素が消光され蛍光強度が低下してしまうという現象があった。このため、隣接する核酸塩基による消光を抑制するためのインスレーター分子が提案されている(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【0004】

【非特許文献1】J. N. Wilson et al. ChemBioChem, 2008, 9, 279-285
【発明の概要】
【0005】
本発明者らは、蛍光色素の使用が一分子に限定されていることによる低い検出感度を改善するには、蛍光色素を多数結合して光の吸収を増大させて蛍光強度を増大させることが有効であると考えた。しかしながら、複数の蛍光色素を導入した場合には、多くの蛍光色素は二量体を形成し、量子収率が低下してしまい、結果として消光してしまうという問題があった。非特許文献1に開示されるインスレーター分子は、蛍光色素を多数結合した際の消光現象を抑制することを意図するものではなく、蛍光色素に隣接するヌクレオチドの塩基による消光現象の抑制を目的としていた。したがって、非特許文献1に記載のインスレーター分子が蛍光色素間の消光が可能であるかどうかは不明であった。また、現状において、蛍光色素間の消光抑制に有効な構造を予測できる報告はなされていない。
【0006】
また、蛍光色素の種類によっては、隣接するヌクレオチドの核酸塩基による影響が大きい場合もある。非特許文献1には、アミノプリンとピレンという2種類の蛍光色素についてヌクレオチドの塩基との間に導入するのに好ましいインスレーター分子が開示されているに留まっている。
【0007】
そこで、本明細書の開示は、隣接する蛍光色素又は核酸塩基の影響を抑制して、蛍光色素の蛍光強度を増大させることができるインスレーター及びその利用を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、隣接する蛍光色素間の電子移動を抑制するためのインスレーターについて種々検討したところ、ある種の骨格を有することが有効であるという知見を得た。さらに、こうした骨格を有するインスレーターを用いることで、蛍光色素を集積化して蛍光強度を増大させうるという知見も得た。また、隣接するヌクレオチドなどの核酸塩基による蛍光色素の消光を抑制するための塩基に対するインスレーター機能についても確認した。これらの知見によれば、以下の手段が提供される。
【0009】
本明細書の開示によれば、非平面の構造の環状体を有し、1又は2以上の蛍光標識に隣接して前記蛍光標識の蛍光強度を増強するインスレーターが提供される。前記環状体は、炭素数が4以上7以下の単環体及び炭素数が8以上12以下の二環以上の環状体から選択されてもよいし、前記環状体は、炭素数が4以上7以下の少なくとも一つの単環式アルカンであってもよい。さらに、前記環状体は、シクロヘキサン誘導体であってもよい。
【0010】
また、本明細書の開示によれば、核酸塩基を有するバックボーン構造体であって、蛍光標識を有する1又は2以上の蛍光標識ユニットと、非平面構造の環状体を有する分子を含む1又は2以上のインスレーターユニットと、を備え、前記蛍光標識ユニットは前記バックボーン構造体に連結され、1又は2以上の前記インスレーターユニットを、前記蛍光標識ユニットの一方又は両方に隣接して配置可能に備える、構造体が提供される。前記バックボーン構造体は、前記蛍光標識ユニットを前記インスレーターユニット間に有していてもよい。前記バックボーン構造体は、前記蛍光標識ユニットを構造体内部に有していてもよいし、端部(5’末端及び/又は3’末端)側に有していてもよい。特に、バックボーン構造体が塩基対合に基づく相補鎖を含むとき、前記蛍光標識ユニットを前記インスレーターユニットとともに二重鎖内部に有していてもよいし、これらを二重鎖部分でない端部(5’末端及び/又は3’末端)側に有していてもよい。
【0011】
さらに、本明細書の開示によれば、前記構造体から含むラベル化剤が提供される。前記ラベル化剤は、前記蛍光標識ユニット及び前記インスレーターユニットを、核酸塩基を備えるバックボーン及び/又はこのバックボーンの相補鎖に備えていてもよい。前記ラベル化剤は、前記インスレーターユニットを、少なくとも1つの前記分子を2つの前記蛍光標識の間に配置可能に、前記バックボーン及び/又はその相補鎖に備えるものであってもよい。さらに、前記インスレーターユニットを、少なくとも1つの前記分子が1つの前記蛍光標識の両側のそれぞれに隣接して配置可能に、前記バックボーン又はその相補鎖に備えるものであってもよい。さらに、2以上の前記蛍光標識ユニットを備えるbyものであってもよい。
【0012】
前記蛍光標識ユニットは、以下の式(1)で表されるものであってもよい。
【化1】
JP0005467275B2_000002t.gif
(式中、Xは蛍光標識を表し、R1は、炭素数が2又は3であって置換されていてもよいアルキレン鎖を表し、R2は、炭素数が0以上2以下であって置換されていてもよいアルキレン鎖を表し、Zは、直接の結合又は連結基を表す。)
【0013】
また、前記インスレーターユニットは、以下の式(2)で表されるものであってもよい。
【化2】
JP0005467275B2_000003t.gif
(式中、Yはインスレーターを表し、R1は、炭素数が2又は3であって置換されていてもよいアルキレン鎖を表し、R2は、炭素数が0以上2以下であって置換されていてもよいアルキレン鎖を表し、Zは、直接の結合又は連結基を表す。)
【0014】
前記蛍光標識は、シアニン系色素、メロシアニン系色素、縮合芳香環系色素、キサンテン系色素、クマリン系色素及びアクリジン系色素からなる群から選択されるものであってもよい。
【0015】
さらにまた、本明細書の開示によれば、前記インスレーターを有する化合物も提供される。 即ち、本発明の化合物は、非平面構造の環状体を有するインスレーターを含み、以下の式(3)で表される。
【化3】
JP0005467275B2_000004t.gif
(式中、Yは前記インスレーターを表し、R1は、炭素数が2又は3であって置換されていてもよいアルキレン鎖を表し、R2は、炭素数が0以上2以下であって置換されていてもよいアルキレン鎖を表し、Zは、直接の結合又は連結基を表す。C1は、水素原子又は水酸基保護基を表し、D1は、水素原子、水酸基保護基、ホスホアミダイト基又は固相担体に結合される若しくは結合された連結基を表す。)
【0016】
本明細書の開示によれば、生体分子の検出方法であって、生体分子を、上記ラベル化剤の前記蛍光標識に基づくシグナルによって検出する工程、を備える、方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本明細書に開示されるラベル化剤の一例を示す図である。
【図2】本明細書に開示されるラベル化剤の他の一例を示す図である。
【図3】本明細書に開示されるラベル化剤のさらに他の一例を示す図である。
【図4】本明細書に開示されるラベル化剤のさらに他の一例を示す図である。
【図5】実施例4における蛍光標識(ピレン)に隣接されるインスレーターを有する二重鎖オリゴヌクレオチドの蛍光強度の測定結果を示す図である。
【図6】実施例6における蛍光標識(ペリレンビスイミド)に隣接されるインスレーターを有する二重鎖オリゴヌクレオチドの蛍光強度の測定結果を示す図である。
【図7】実施例8における複数の蛍光標識(ピレン)間に介在されるインスレーターを有する二重鎖オリゴヌクレオチドの蛍光強度の測定結果を示す図である。
【図8】実施例9で合成したオリゴヌクレオチド中の蛍光標識ユニット(F)及びインスレーターユニット(H)と、相補鎖と塩基対合させた二重鎖オリゴヌクレオチドの形態を示す図である。
【図9】末端に蛍光標識ユニットとインスレーターユニットとを備える二重鎖オリゴヌクレオチドの蛍光強度の測定結果を示す図である。上段はpH7における結果を示し、下段はpH9における結果を示す。
【図10】実施例11における二重鎖オリゴヌクレオチドの蛍光強度の測定結果を示す図である。
【図11】実施例12における一重鎖及び二重鎖オリゴヌクレオチドの蛍光強度の測定結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本明細書の開示は、インスレーター、該インスレーターを備えるヌクレオシド誘導体、さらに該インスレーターを備えるインスレーターユニットを備えるラベル化剤等に関する。本明細書に開示されるインスレーターによれば、2つの蛍光標識間あるいは1つの蛍光標識に隣接して配置することにより、これらの蛍光標識間あるいは蛍光標識と隣接する核酸塩基との間の電子移動を抑制して、蛍光標識の収率の低下を抑制し、結果として、消光を抑制できる。これにより、蛍光標識による蛍光強度の増強効果を得ることができる。本明細書の開示を限定するものではないが、こうした電子移動の抑制は、非平面構造の環状体によって、塩基や色素のスタッキングを乱すことによって生じるものと推論される。

【0019】
こうしたインスレーターによれば、検出感度に優れたラベル化剤、ラベル化剤等に用いることのできるヌクレオシド誘導体、アミダイト体、こうしたラベル化剤を用いた生体分子の検出方法が提供される。以下、本明細書の開示に含まれる種々の実施形態について適宜図面を参照しながら説明する。図1は、本明細書に開示されるラベル化剤の一例を示す図であり、図2は、ラベル化剤のさらに他の一例を示す図であり、図3はさらに他の一例を示す図である。図4はさらに他の一例を示す図である。

【0020】
(インスレーター)
本明細書に開示されるインスレーターは、1又は2以上の蛍光標識に隣接して、隣接する蛍光色素、さらには隣接する可能性のある核酸塩基への電子移動を抑制することにより蛍光標識の蛍光強度の低下を抑制する分子又はその分子の構造を実質的に維持する基である。インスレーターは、これにより蛍光色素の蛍光強度を増強する増強剤として機能する。また、インスレーターを介在させて核酸塩基や蛍光塩基への電子移動を抑制することで、pHによって発光強度が影響される蛍光標識もpHにかかわらず発光強度を増強することができる。このため、蛍光を検出するために、ハイブリダイゼーション時とは異なるpHの適用が求められていたような蛍光標識であっても、蛍光検出のためのpH範囲の要請が緩まりpHの自由度が高まることで、実験操作におけるpH調整の簡略化や省略化が可能となる。

【0021】
(環状体)
本インスレーターは非平面構造の1又は2以上の環状体を有している。非平面構造とは、その環状体の立体構造が非平面構造であることをいい、非平面構造を有しているとは、こうした非平面構造が許容されていることを意味する。こうした環状体としては、例えば、結合軸周りの回転が許容された結合を少なくとも2以上備えている環状体が挙げられ、具体的には、sp3結合様式を含む炭素-炭素結合を2以上有する環状体が挙げられる。こうした環状体としては、各種の単環炭化水素、橋かけ環炭化水素、スピロ炭化水素及びこれらの誘導体が挙げられる。

【0022】
環状体としては、例えば、炭素数が4以上7以下の単環体が挙げられる。すなわち、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクヘプタン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン並びにこれらの誘導体が挙げられる。これらのうち、環状体は、炭素数が4以上7以下の少なくとも一つの単環式アルカンであることが好ましい。より好ましくは、シクロヘキサン又はその誘導体である。また、例えば、炭素数が8以上12以下の二環以上の環状体が挙げられる。二環以上の環状体は、橋かけ環炭化水素であってもよいしスピロ環炭化水素であってもよいし、集合環であってもよい。

【0023】
環状体に連結する1又は2以上の水素原子は置換されていてもよい。置換基は特に限定されないが、炭素数が1以上8以下の直鎖状又は分岐状のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基などの炭化水素基が挙げられる。好ましくはアルキル基であり、より好ましくは、炭素数が1以上5以下の直鎖状又は分岐状のアルキル基である。

【0024】
こうした環状体としては、例えば、以下の化合物等が挙げられる。なお、以下の化合物は、後述する主鎖やユニットへの連結部を含めて示している。なお、連結部は、例示される部位に限られるものではなく、適宜決定される。

【0025】
【化4】
JP0005467275B2_000005t.gif

【0026】
インスレーターは、こうした環状体を備えるほか、芳香族環を備えていてもよく、こうした芳香族環は、環状体に直接炭素-炭素結合を介して連結されていてもよいし、適当な連結基を介して連結されていてもよい。また、インスレーターは、後述する主鎖や核酸塩基を備えるバックボーンに備えられる蛍光標識に隣接させるために、主鎖やこのバックボーン又はこの相補鎖に連結するための連結基を備えることもできる。

【0027】
(蛍光標識)
インスレーターは、1又は2以上の蛍光標識に隣接されて用いられる。ごく通常には、後述するように、蛍光標識を備えるラベル化剤においてインスレーターとして用いられる。蛍光標識は、特に限定しないで公知の蛍光標識を利用できる。例えば、シアニン系色素、メロシアニン系色素、アクリジン系色素、クマリン系色素、エチジウム系色素、フラビン系色素、縮合芳香環系色素、キサンテン系色素等が挙げられ、これらから適宜選択して使用できる。より具体的には、シアニン系色素、クマリン系色素、エチジウム系色素、縮合芳香族環色素、キサンテン系色素が好ましく用いることができる。さらに具体的には、Cy3,Cy5,チアゾールオレンジ、オキサゾールイエロー、ピレン、ペリレン、ペリレンビスイミド、フルオレッセイン、ローダミン、テトラメチルローダミン及びテキサスレッド並びにこれらの誘導体からなる群から選択される。
特に、ペリレンビスイミドは光化学的に安定であり、他の蛍光色素と比べ光退色に非常に強いという特長があるため、好ましい。ペリレンビスイミドは、本発明のインスレーターと組み合わせることにより他の蛍光色素同等もしくはそれ以上の量子収率を得ることが出来る。本発明によれば、好適なペリレンビスイミドは、以下の式Aで表される。

【0028】
【化5】
JP0005467275B2_000006t.gif

【0029】
(式中、Rは、アルキル基を示す。好ましくは、分枝アルキル基であり、C1~C8、より好ましくはC2~C5の分枝アルキル基、特にイソプロピル基である。)

【0030】
また、pHに応じて蛍光強度が変化する蛍光標識としては、キサンテン系色素が挙げられる。なかでも、プロトン化に応じて消光する蛍光標識が挙げられる。こうした蛍光標識としては、例えば、以下の標識が挙げられる。なお、以下の各式においては、-CO-をユニットへの連結基の一例として記載しているが、これに限定するものではない。

【0031】
【化6】
JP0005467275B2_000007t.gif

【0032】
蛍光標識とインスレーターとは、どのような形態で隣接されているかは問わない。例えば、公知のラベル化剤に許容される構造において両者は隣接されて備えられていてもよい。例えば、1又は2以上の蛍光標識をアミノ基、SH基、アルデヒド基、カルボキシル基及び水酸基などから選択される反応性基を複数個備える適当な高分子の主鎖に結合されて備えられていてもよいし、主鎖の一形態である「核酸塩基を備えるバックボーン構造体」に結合されて備えられていてもよい。核酸塩基とは、天然のアデニン(A)、チミン(T)、グアニン(G)、シトシン(C)及びウラシル(U)並びにこれらの誘導体が挙げられる。また、こうした核酸塩基を備えるバックボーンの構造体は特に限定されないが、互いに相補的な塩基配列のとき、核酸塩基の塩基対を形成可能な二重鎖を構成できる構造を有していることが好ましい。例えば、ホスホジエステル結合により5単糖であるリボースやデオキシリボースが連なったリン酸-糖バックボーンのほか、PNAなどのペプチド結合によるペプチドバックボーン、さらに後述するように本明細書に開示されるリン酸-アルキレン鎖のバックボーン等が挙げられる。こうしたバックボーン構造体は、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド又はこれらの誘導体、PNA等として合成又は入手可能である。

【0033】
主鎖の一形態としての、「核酸塩基を備えるバックボーン構造体」は、通常、2以上の核酸塩基を備えることが好ましく、例えば、10mer以上100mer以下程度の塩基長を有するものであってもよい。特にその数を限定するものではなく100merを越える場合であっても、本明細書のバックボーン構造体に含まれる。また、バックボーン構造体は、1重鎖であってもよいし、塩基対合による相補鎖を含んで二重鎖を有するものであってもよい。なお、ここでいう相補鎖とは、一重鎖のバックボーン構造体の有する塩基又はその配列と塩基対を形成可能な核酸塩基の塩基又はその配列を有するバックボーン構造体を意味している。

【0034】
こうしたインスレーターによれば、蛍光標識に隣接されるときに当該蛍光標識からインスレーターをおいて隔てた他の電子移動可能な化合物、例えば核酸塩基や他の蛍光標識などのへの電子移動を抑制して、当該蛍光標識の量子収率の低下を抑制して蛍光強度の低下を抑制し、結果として蛍光強度をインスレーター不在のとき(インスレーターによって隣接されないとき)よりも増強できる。したがって、本インスレーターは感度の良好なラベル化剤のための要素となる。

【0035】
本インスレーターは、蛍光標識と蛍光標識との間に1又は2以上を配置する状態で、これらの蛍光標識間の電子移動を抑制できる。また、蛍光標識と核酸塩基との間に1又は2以上を配置する状態で、これらの間の電子移動を抑制できる。したがって、本インスレーターは、蛍光標識と蛍光標識との間に1又は2以上が配置されるように備えられてもよいし、蛍光標識と核酸塩基との間に1又は2以上が配置されるように備えられていてもよい。さらに、インスレーターは、蛍光標識の一方又は双方に隣接するように備えられていてもよい。

【0036】
影響を抑制する対象となる核酸塩基や蛍光標識との間に配置される本インスレーターの個数が多いほど、電子移動の抑制効果が高い傾向にある。したがって、電子移動の抑制効果の観点からは、本インスレーターの個数は、2以上が好ましく、より好ましくは3個以上であり、さらに4個以上であることが好ましい。

【0037】
(ラベル化剤)
本明細書に開示されるラベル化剤は、蛍光標識を有する1又は2以上の蛍光標識ユニットと、非平面構造の環状体を有するインスレーターを含むインスレーターユニットと、を備え、インスレーターユニットを、前記インスレーターを1又は2以上の前記蛍光標識に隣接して配置可能に備えることができる。ここで、非平面構造の環状体を有するインスレーターは、本明細書に開示されるインスレーターである。

【0038】
本ラベル化剤は、蛍光標識ユニットとインスレーターユニットとを、インスレーターが蛍光標識に隣接して配置されていれば、特に、その構造を問うものではない。例えば、上述のように1又は2以上の蛍光標識をアミノ基、SH基、アルデヒド基、カルボキシル基及び水酸基などから選択される反応性基を複数個備える適当な高分子の主鎖に結合させた上、これらの蛍光標識の一方又は双方に隣接するように、1又は2以上のインスレーターを同一の主鎖の前記反応性基に結合させることで構成してもよい。この場合、一本の主鎖上に蛍光標識とインスレーターとが配置されることになる。換言すれば、蛍光標識ユニットとインスレーターユニットとが連結された構成となる。

【0039】
本ラベル化剤の蛍光標識ユニットとインスレーターユニットとは、好ましくは、既に説明した核酸塩基を備えるバックボーン構造体に備えられることが好ましい。すなわち、一重鎖のバックボーン構造体に備えられていてもよいし、二重鎖のバックボーン構造体の一方の鎖又は双方の鎖に備えられていてもよい。これらのユニットを一重鎖のバックボーン構造体に備えることで、蛍光標識を複数個スタックして備えることができるとともに、蛍光標識間や隣接する塩基との間にインスレーターを容易に導入することができる。また、これらのユニットを、二重鎖のバックボーン構造体の一方の鎖又は双方の鎖に備える場合には、二重鎖の間の塩基対形成を利用してより有効に蛍光標識間及び蛍光標識と核酸塩基との間にインスレーターを配置させることができ、インスレーターの優れた機能を効果的に発揮させることができる。例えば、式Aで表されるペリレンビスイミドを有する蛍光標識ユニットが好適なものとして挙げられる。

【0040】
(蛍光標識ユニット)
蛍光標識ユニットは、蛍光標識を有してラベル化剤を構成する単位である。蛍光標識以外のユニット構成部分は、主鎖又はバックボーン構造体の種類に依存した構成を有することができる。例えば、バックボーンがリン酸-糖バックボーン構造である場合、蛍光標識ユニットは、リン酸-糖部分を有することができる。すなわち、オリゴヌクレオチドを構成するヌクレオチド単位の塩基以外の骨格単位を備えることができる。また、バックボーン構造がPNAのバックボーン構造の場合には、当該PNAの骨格単位を備えることができる。さらに、バックボーン構造がリン酸-アルキレン鎖バックボーンである場合、リン酸-アルキレン鎖の骨格単位を備えることができる。リン酸-アルキレン鎖バックボーンは、合成の簡便性の観点から本ラベル化剤に有利である。また、蛍光標識ユニットは、主鎖又はバックボーンの種類に依存した構成を必ずしも採る必要はない。例えば、バックボーンがリン酸-糖バックボーンであっても、リン酸-アルキレン鎖の骨格単位を有していてもよい。リン酸-アルキレン鎖バックボーンを構成する蛍光標識ユニットは、例えば、以下の式(1)で表される。

【0041】
【化7】
JP0005467275B2_000008t.gif
(式中、Xは蛍光標識を表し、R1は、炭素数が2又は3であって置換されていてもよいアルキレン鎖を表し、R2は、炭素数が0以上2以下であって置換されていてもよいアルキレン鎖を表し、Zは、直接の結合又は連結基を表す。)

【0042】
R2は、R1のアルキレン鎖の5’側の酸素原子から2つ目の炭素原子に結合していることが好ましい。連結基としてのZは、例えば、-NHCO-、NHCS-、CONH-、-O-等あるいはこれらの基を含むものが挙げられる。なお、連結基への連結部分(点線部分)において、蛍光標識の大きさやインスレーターとの関係を考慮して、置換されていてもよいアルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基を介在させてもよい。また、蛍光標識として使用する化合物は、式(1)で表されるユニットに連結されるために適宜誘導体化されていてもよい。また、式(1)で表されるユニットに対して連結される蛍光標識上の原子は特に限定されない。

【0043】
(インスレーターユニット)
インスレーターユニットは、インスレーターを有してラベル化剤を構成する単位である。蛍光標識ユニットと同様、インスレーター以外のユニット構成部分は、主鎖又はバックボーンの種類に依存した構成を有していてもよいし、異なる構成を有していてもよい。リン酸-アルキレン鎖バックボーンを構成するインスレーターユニットは、例えば、以下の式(2)で表される。

【0044】
【化8】
JP0005467275B2_000009t.gif
(式中、Yはインスレーターを表し、R1は、炭素数が2又は3であって置換されていてもよいアルキレン鎖を表し、R2は、炭素数が0以上2以下であって置換されていてもよいアルキレン鎖を表し、Zは、直接の結合又は連結基を表す。)

【0045】
式(2)におけるR1、R2、Zについては、式(1)におけるのと同義である。なお、連結基への連結部分(点線部分)において、蛍光標識への隣接程度や対合鎖にあるインスレーターとの関係を考慮して、置換されていてもよいアルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基を介在させてもよい。また、インスレーターとして使用する化合物は、式(2)で表されるユニットに連結されるために適宜誘導体化されていてもよい。また、式(2)で表されるユニットに対して連結されるインスレーター上の原子は特に限定されない。

【0046】
式(1)及び式(2)における上記R1~R2の置換基としては、未置換の又はハロゲン原子、水酸基、アミノ基、ニトロ基、カルボキシル基等で置換された炭素数1~20、好ましくは1~10、より好ましくは1~4のアルキル基又はアルコキシ基;未置換又はハロゲン原子、水酸基、アミノ基、ニトロ基、カルボキシ基等で置換された炭素原子2~20、好ましくは2~10、より好ましくは2~4のアルケニル基若しくはアルキニル基;水酸基、ハロゲン原子、アミノ基、ニトロ基又はカルボキシ基等が挙げられる。さらに、水酸基、ハロゲン原子、アミノ基、ニトロ基又はカルボキシ基が挙げられる。R1の置換基は、アルキレン鎖のいずれの炭素原子に連結されていてもよいが、5’の酸素から2つ目又は3つ目の炭素原子に連結されることが好ましい。

【0047】
一のラベル化剤において用いられる蛍光標識ユニット及びインスレーターユニットに関し、式(1)及び式(2)における、R1におけるアルキレン鎖の炭素数は、同一であっても異なっていてもよい。

【0048】
例えば、式(1)又は式(2)で表されるユニットとして以下のものが挙げられる。
【化9】
JP0005467275B2_000010t.gif
【化10】
JP0005467275B2_000011t.gif
【化11】
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【0049】
こうしたインスレーターユニット及び蛍光標識ユニットは、各種態様の核酸塩基を備えるバックボーンに連結可能に誘導体化されていてもよい。例えば、アミダイトモノマー化されていてもよい。

【0050】
なお、ラベル化剤が、二重鎖を有するバックボーン構造体からなるとき、各鎖は、インスレーターによって蛍光標識の量子収率の低下を抑制するのに有効な程度に、インスレーターと蛍光標識とが隣接するような量の塩基対を形成できることが好ましい。好ましい塩基対の数は特に限定しないが、が好ましい。こうした塩基対は、蛍光標識及びインスレーターの個数や配置にもよるが、5bp以上100bp以下程度とすることができる。

【0051】
インスレーターユニットは、少なくとも1つのインスレーターを2つの蛍光標識の間に配置可能に、一重鎖又は二重鎖のバックボーン構造体に備えられることが好ましい。こうした形態によれば、複数の蛍光標識間の電子移動を抑制して蛍光強度を増強できる。また、インスレーターユニットは、少なくとも1つのインスレーターが1つの蛍光標識の両側のそれぞれに配置可能に、一重鎖又は二重鎖のバックボーン構造体に備えられることが好ましい。こうした形態によれば、蛍光標識と核酸塩基との間の電子移動を抑制して蛍光強度を増強できる。また、インスレーターユニットは、少なくとも一つのインスレーターが核酸塩基と蛍光標識の間に介在するように、一重鎖又は二重鎖のバックボーン構造体に備えられていることも好ましい。

【0052】
蛍光標識ユニットとインスレーターユニットとを、塩基対を形成する一重鎖又は二重鎖のバックボーン構造体に備える形態を図1~図4に例示する。図1は、独立した2本の一重鎖からなる二重鎖のバックボーン構造体であって、隣接する核酸塩基への電子移動の抑制を意図したものである。図1(a)は、1の蛍光標識ユニットを備える一方のバックボーン構造体の両側に1又は2以上のインスレーターユニットを備え、他方のバックボーン構造体にはインスレーターユニットを備えない形態である。図1(b)は、1の蛍光標識ユニットを備える一方のバックボーン構造体の両側に、他方のバックボーン構造体に備えられた1又は2以上のインスレーターユニットが配置される形態である。こうした形態によれば、蛍光標識にインスレーターを隣接させることができる。また、こうした形態によれば、蛍光標識と核酸塩基との間にインスレーターを介在させることができる。

【0053】
図2は、図1と同様二重鎖の形態であって隣接する塩基への電子移動を意図したものであるが、インスレーターユニットを蛍光標識ユニットを一方のバックボーン構造体と他方のバックボーン構造体とに分配して備える形態である。すなわち、図2(a)及び図2(b)は、1の蛍光標識ユニットを備える一方のバックボーン構造体の両側に隣接するように、一方及び他方のバックボーン構造体にインスレーターユニットを備える形態である。インスレーターは、蛍光標識の両側にそれぞれ1又は2以上配置されるようになっている。こうした形態によれば、蛍光標識にインスレーターを隣接させることができるし、蛍光標識と核酸塩基との間にインスレーターを介在させることができる。

【0054】
また、図2(c)は、蛍光標識ユニットは、一方のバックボーン構造体とこれに対する相補鎖となる他方のバックボーン構造体との双方に備えられており、インスレーターユニットも、一方のバックボーン構造体及び他方のバックボーン構造体の双方に備えられており、この両者の鎖の内部に配置される蛍光標識の両側にそれぞれの鎖に備えたインスレーターユニットのインスレーターが配置されるようになっている。

【0055】
図3は、一重鎖であっても塩基対の形成による二重鎖を形成可能となるようにループとステムとを有するモレキュラービーコンの形態である。図3では、ステムが図2(c)と同様の構成を有している。

【0056】
図4は、二重鎖を有するバックボーン構造体の形態である。これらの形態では、二重鎖部分から突き出た主鎖又はバックボーン部分に蛍光標識ユニットとインスレーターユニットとを備えている。

【0057】
これらの例示形態は各種修飾が可能である。いずれの形態においても、蛍光標識に隣接するインスレーターをバックボーン構造体及び相補鎖のいずれか一方にのみ配置してもよいし双方であてもよい。隣接する核酸塩基や蛍光標識との間に配置されるインスレーターは1以上であればよく、2以上でも3以上であってもよい。完全二重鎖によってバックボーンと相補鎖とを構成してもよいし、一重鎖でこれらを構成してもよい。

【0058】
ラベル化剤は、ラベル化対象である生体分子等に結合させるための要素を備えることができる。ラベル化対象がタンパク質などの場合には、タンパク質中のアミノ基、SH基、カルボキシル基及び水酸基などから選択される官能基に対して共有結合を形成する反応性基を有することができる。また、ラベル化対象が核酸の場合、核酸中のこうした官能基あるいは連結のために導入した官能基に対して共有結合を形成する反応性基を有していればよい。さらに、本ラベル化剤が上記バックボーン構造体を備えていれば、バックボーン構造体又は相補鎖の一部に粘着末端を形成することで、核酸試料のラベル化のほか、プローブ、プライマー等となりうるオリゴヌクレオチドのラベル化が容易に可能である。こうしてラベル化されたオリゴヌクレオチドや二重鎖オリゴヌクレオチド等は、ラベル化試料として、あるいは検出対象であるターゲット核酸、プライマー、プローブ等として用いられる。

【0059】
ラベル化剤は、例えば、通常の固相合成法において、ヌクレオチドに対応するアミダイト誘導体や当該誘導体に代えてこの種のユニットを導入なアミダイド誘導体を用いることによって可能となる。例えば、上記したユニットの導入にあたっては、D-トレオニールや3-アミノ1,2-プロパンジールなどのアミノアルキルジオール類のアミノ基をアリルオキシカルボニル基などの適当な保護基で保護した上、一方の水酸基をジメトキシトリチルクロリド等で保護し、その後、他方の水酸基に2-シアノエチルN,N,N,N-テトライソプロピルホスホロジアミダイドを導入してアミダイト体を得る。そしてこのアミダイト体に対して、蛍光標識又はインスレーターを導入してアミダイトモノマー化してもよい。例えば、アゾベンゼン系化合物、ペリレン系化合物については、例えば、ネイチャー・プロトコルズ(Nature Protocols)誌2007年第2巻203ページから212ページに記載の方法で、ジャーナル・オブ・ジ・アメリカン・ケミカル・ソサエティー(Journal of the American Chemical Society)誌2003年125巻2217-2223頁記載の方法で、テトラへドロン・レターズ(Tetrahedron Letters)誌2007年第48巻6759-6762頁記載の方法を適用することができる。こうしたモノマーを取得した場合には、従来公知のDNA合成法、例えばネイチャー・プロトコルズ(Nature Protocols)誌2007年第2巻203ページから212ページに記載の方法にしたがって、所望の部位に蛍光標識やインスレーターを連結したユニットを備えるオリゴヌクレオチドを合成することができる。

【0060】
また、蛍光標識やインスレーターは、アリルオキシカルボニル基等でアミノ基を保護した上記アミダイト体を所望の位置に備えるオリゴヌクレオチドを合成後に導入してもよい。例えば、アミノ基を保護したままのユニットを備えたオリゴヌクレオチドをCPG担体上においてアミノ基を脱保護した後、当該アミノ基と反応可能にカルボン酸基やイソシアネート基を導入したあるいは保持する蛍光標識やインスレーターを反応させることで、フルオロホア等を導入してもよい。

【0061】
以上の実施形態によれば、核酸塩基を有するバックボーン構造体であって、インスレーターユニットと蛍光標識ユニットとを備え、前記インスレーターユニットを、前記バックボーン構造体の核酸塩基と蛍光標識ユニットとの間に介在させて備える、構造体も本発明の一実施形態である。典型的には、ラベル化剤によりラベル化されたオリゴヌクレオチドなどのバックボーン構造体であるこのバックボーン構造体は、核酸試料、プローブあるいはプライマーでありうる。このバックボーン構造体は、一重鎖であってもよいし二重鎖であってもよい。また、このバックボーン構造体は、1又は2以上、好ましくは一つの蛍光標識ユニットを2つのインスレーターユニット間に有していてもよい。さらに、バックボーン構造体は、蛍光標識ユニットを構造体内部に有していてもよいし、端部(5’末端及び/又は3’末端)側に有していてもよい。特に、バックボーン構造体が塩基対合に基づく相補鎖を備えるとき、蛍光標識ユニットをインスレーターユニットとともに二重鎖内部に有していてもよいし、これらを二重鎖部分でない端部(5’末端及び/又は3’末端)側に有していてもよい。

【0062】
また、以上の実施形態によれば、インスレーターを有する種々の態様のバックボーン単位を形成可能な化合物(アミダイト化合物を含む)も本明細書の開示に含まれる。インスレーターを備える化合物は、例えば、以下の構造を採ることができる。

【0063】
【化12】
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(上記式(3)中、Yは前記分子を表し、R1は、炭素数が2又は3であって置換されていてもよいアルキレン鎖を表し、R2は、炭素数が0以上2以下であって置換されていてもよいアルキレン鎖を表し、Zは、直接の結合又は連結基を表す。C1は、水素原子又は水酸基保護基を表し、D1は、水素原子、水酸基保護基、ホスホアミダイト基又は固相担体に結合される若しくは結合された連結基を表す。)なお、本発明において、ホスホアミダイト基とは、このようにホスホアミダイト法に使用することができるものを全て含むものとする。上記式において、R1、R2及びZについては既に説明したとおりである。

【0064】
上記式(3)において、C1は、水素原子又は水酸基保護基を表す。水酸基保護基は、特に限定されないが、従来公知の水酸基保護基を用いることができる。例えば、フルオレニルメトキシカルボニル基(FMOC基)、ジメトキシトリチル基(DMT基)、四級ブチルジメチルシリル基(TBDMS基)、モノメトキシトリチル基、トリフルオロアセチル基、レブリニル基、またはシリル基が挙げられる。好ましい保護基は、トリチル基であり、例えば、モノメチルトリチル(MMT)ジメトキシトリチル(DMT)及び四級ブチルジメチルシリル基(TBDMS基)から選択される。

【0065】
また、D1は、水素原子、水酸基保護基、ホスホアミダイト基又は固相担体に結合される若しくは結合された連結基を表す。D1がホスホアミダイト基である化合物(アミダイト化合物)は、ホスホアミダイト法によるホスホアミダイト試薬として用いて、オリゴヌクレオチドを合成するのに用いることができる。なお、本発明において、ホスホアミダイト基は、以下の式(4)で表すことができる。

【0066】
【化13】
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(上記式(4)中、各Q1は独立して、同一であっても異なっていてもよく、分枝状又は直鎖状の炭素数1~5個のアルキル基を表し、Q2は、分枝状又は直鎖状の炭素数1~5個のアルキル基又は置換されていてもよいアルコキシル基を表す。)

【0067】
上記式中、Q1は、特に限定しないがイソプロピル基が好ましいものとして挙げられ、また、Q2としては、-OCHCHCN等が挙げられる。例えば、ホスホアミド基としては、下記式(5)の化合物が挙げられる。

【0068】
【化14】
JP0005467275B2_000015t.gif

【0069】
また、式(3)においてD1が固相担体に結合される連結基である化合物は、当該連結基とアミノ基など固相担体上の所定の官能基とを結合させることにより、固相担体に保持される。そして、式(3)において、D1が固相担体に結合された連結基である化合物は、連結基を介して本オリゴヌクレオチドが固相担体に結合されているため、各種の核酸固相合成法の出発材料として用いることができる。

【0070】
さらに、本発明によれば、式Aで表されるペリレンビスイミドを有する蛍光標識ユニットを製造するための以下の式Bで表される化合物(アミダイト体)も提供される。
【化15】
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【0071】
(式中、PBは上記式Aで表されるペリレンビスイミドを表し、R1は、炭素数が2又は3であって置換されていてもよいアルキレン鎖を表し、R2は、炭素数が0以上2以下であって置換されていてもよいアルキレン鎖を表し、Zは、直接の結合又は連結基を表す。C1は、水素原子又は水酸基保護基を表し、D1は、水素原子、水酸基保護基、ホスホアミダイト基又は固相担体に結合される若しくは結合された連結基を表す。)なお、式BにおけるR1、R2、C1及びD1は、式(3)におけるのと同一の意義を有し、式(3)に含まれ得これらの各種実施形態を包含している。

【0072】
(生体分子の検出方法)
本明細書に開示の生体分子の検出方法は、生体分子を本ラベル化剤の蛍光標識に基づくシグナルによって検出する工程を備えることができる。本検出方法によれば、感度よく生体分子を検出することができる。生体分子の検出形態は特に限定されない。生体分子自体を本ラベル化剤でラベルして検出してもよいし、ラベル化されかつ生体分子を特異的に検出可能な検出用試薬、例えば、抗体、プローブ、プライマーなどによって、生体分子を検出してもよい。

【0073】
以下、本明細書の開示を実施例を挙げて具体的に説明するが、以下の実施例は本明細書に開示を限定するものではない。
【実施例1】
【0074】
(4-シクロヘキシル安息香酸(インスレーターI)を結合したインスレーターユニットの合成及びそのアミダイトモノマー化)
本実施例では、以下に示す、インスレーターを有するユニット(炭素数3)を合成し、さらにそのアミダイトモノマーを以下のスキームに従い合成した。300mlのナスフラスコにD-トレオニノール(0.50g,4.6mmol)をジメチルホルムアミド(DMF)20mlに溶解させ、4-シクロヘキシル安息香酸(1.04g,5.1mmol)及び1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(0.81g,6.0mmol)を加え、攪拌した。次に、10mlのDMFに溶解させておいたジシクロヘキシルカルボジイミド(1.24g,6.0mmol)を、室温で上記のDMF溶液に滴下した。室温で終夜攪拌後、溶媒をエバポレーターで留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフ法(展開溶媒 クロロホルム:メタノール=5:1)で精製し、化合物1-1を得た。
【実施例1】
【0075】
【化16】
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【実施例1】
【0076】
次に、得られた化合物1-1(1.11g、3.81mmol)を200mlの二口ナスフラスコに採取し、窒素下で脱水ピリジン30mlを加えて溶解させ、これにN,N,ジイソプロピリエチルアミン(DIPEA:1.0mL、5.71mmol)を加えて攪拌した。次に、50mlの二口ナスフラスコにジメトキシトリチルクロリド(DMT-Cl:1.94g、5.71mmol)とジメチルアミノピリジン(DMAP:0.058g、0.48mmol)を加え、さらに溶媒として脱水ジクロロメタン10mlを加えて溶解させた。その後、このジクロロメタン溶液を、上記のピリジン溶液に氷浴中でゆっくりと滴下した。15分ほど氷浴下で攪拌した後に氷浴を取り除いて室温で攪拌を続け、ジクロロメタン溶液滴下後3時間後に反応を停止した。溶媒をエバポレーターで留去した後、シリカゲルカラムクロマトグラフ法(展開溶媒 ヘキサン:酢酸エチル:トリエチルアミン=50:50:3)で精製し、化合物1-2を得た。
【実施例1】
【0077】
化合物1-2(0.35g,0.59mmol)を二口ナスフラスコに採取し、脱水アセトニトリル8mlで3回共沸して水分を除去した後、脱水アセトニトリル30mlを加えて溶解させ、これに更に2-シアノエチルN,N,N’,N’-テトライソプロピルホスホロジアミダイト(2-cyanoethyl N,N,N¢,N¢ -tetraisopropylphosphordiamidite:0.22ml,0.71mmol)を加えて攪拌した。別の二口ナスフラスコに1H-テトラゾール(1H-tetrazole:0.054g、0.77mmol)を採取し、脱水アセトニトリル8mlで3回共沸して水分を除去した後、脱水アセトニトリル15mlを加えて溶解させた。この1H-テトラゾール溶液を、上記の化合物1-2のアセトニトリル溶液に氷浴下で滴下し、15分程度攪拌した後に氷浴を除き、室温に戻して更に攪拌を続けた。この後およそ1時間30分程度で反応を停止した。この後溶媒をエバポレーターで留去した後、残ったオイル状の化合物に酢酸エチルを加えて溶解した。この酢酸エチル溶液を、分液ロートを用いて重炭酸ナトリウムの飽和水溶液で2回振とうし、続いて塩化ナトリウムの飽和水溶液で同様に2回振とうした。この後、硫酸マグネシウムを加えて水分を除いてから酢酸エチルをエバポレーターで留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフ法(展開溶媒 ヘキサン:酢酸エチル:トリエチルアミン=50:50:3)精製し、化合物Aを得た。
【実施例2】
【0078】
(蛍光標識ユニット及びインスレーターユニットの合成)
以下に示す蛍光標識(P:ペリレン)を備える蛍光標識ユニット、インスレーターHを備えるインスレーターユニット(化合物B)及びインスレーターJを備えるインスレーターユニット(化合物C)を合成した。なお、これらのユニットは、いずれも、核酸合成のためのアミダイトモノマーの形態で合成した。蛍光標識ユニットは、化合物Aを用いたケミストリー・アン・ユーロピアン・ジャーナル(Chemistry An European Journal)誌2010年第16巻2479-2486頁記載の方法で得、化合物B及びCは、原料としてtrans-4-イソプロピルシクロヘキサンカルボン酸及びビフェニル-4-カルボン酸を使用すること以外は、実施例1と同様の方法により得た。
【実施例2】
【0079】
【化17】
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【実施例3】
【0080】
(オリゴヌクレオチドの合成)
本実施例では、実施例1~2で合成した蛍光標識ユニット及びインスレーターユニットが導入された、以下に示すオリゴヌクレオチドをそれぞれ合成した。
【実施例3】
【0081】
【化18】
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【実施例3】
【0082】
オリゴヌクレオチドへの蛍光標識及びインスレーターの導入は、アリルオキシカルボニル基で保護したホスホロアミダイトモノマーを経由した以下のスキームに示す方法で行った。
【実施例3】
【0083】
すなわち、ABI3400型DNA合成機を使用し、4つの天然の塩基に対応する市販のホスホロアミダイトモノマー、既述の蛍光標識及びインスレーターを備える各種アミダイトモノマーを適宜用いて、コントロールドポアグラス(CPG)担体上に所定の配列を持つDNAを伸長させた。このCPG担体(10mg,0.45μmol)を、フィルターを装着しているプラスチックのシリンジに秤取り、アセトニトリル1mLで3回、続いてジクロロメタン1mLで3回洗浄した。続いて、ネイチャー・プロトコルズ(Nature Protocols)誌2007年第2巻203ページから212ページに記載の方法でCPG担体からDNAを切り出し、高速液体クロマトグラフィーで同誌同頁に記載の方法で目的とするDNAを分離精製した)。
【実施例4】
【0084】
(二重鎖オリゴヌクレオチドの蛍光強度の測定)
実施例4で合成した各種オリゴヌクレオチドを以下に示す組み合わせで二重鎖として、合計6種類の二重鎖オリゴヌクレオチドを取得した。これらのオリゴヌクレオチドにつき、以下の条件で蛍光強度を測定した。結果を図5に示す。
DNA:1.0μmol/l
塩化ナトリウム:0.1mol/l
リン酸バッファー:10mmol/l(pH7.0)
【実施例4】
【0085】
【化19】
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【実施例4】
【0086】
図5に示すように、インスレーターI又はHがインスレーターとして有効であることがわかった。一方、インスレーターJは有効でなかった。以上の結果から、消光の抑制には、非平面構造を有する環状体が有効であることがわかった。また、P1/S0の蛍光量子収率は0.01以下であったが、I1PA/I1B及びI3PA/I3Bの蛍光量子収率は、0.16及び0.44であり、蛍光量子収率は数百倍向上したことがわかった。さらに、インスレーターの数が増加するとインスレーターの効果も増大することがわかった。
【実施例5】
【0087】
(オリゴヌクレオチドの合成)
本実施例では、以下に示す、蛍光標識としてペリレンビスイミド(B)を有する蛍光標識ユニット(アミダイトモノマー)を合成し、インスレーターI、Hを有するインスレーターユニット(アミダイトモノマー)とともに以下に示すオリゴヌクレオチドを、実施例4に準じて合成した。
【実施例5】
【0088】
【化20】
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【化21】
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【実施例5】
【0089】
なお、蛍光標識ユニットのアミダイトモノマー(化合物D)は以下のようにして合成した。
【化22】
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【実施例5】
【0090】
(ペリレンビスイミドを結合したD-トレオニノール(D-threoninol)のアミダイトモノマー化 )
本実施例では、蛍光標識を連結するユニット(炭素数3)のアミダイトモノマー(化合物A)を以下のスキームに従い合成した。100mlのナスフラスコにD-トレオニノール(1.00g,9.51mmol)を脱水メタノール15mlに溶解させ、攪拌した。次に、トリフルオロ酢酸エチル(1.25ml,10.5mmol)を、氷浴下上記のメタノール溶液に滴下した。氷浴下で2時間攪拌後、溶媒をエバポレーターで留去し、化合物1-7を得た。
次に、得られた化合物1-7(1.76g、8.75mmol)を200mlの二口ナスフラスコに採取し、窒素下で脱水ピリジン20mlを加えて溶解させ、これにN,N,ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA:1.74mL、10.5mmol)を加えて攪拌した。次に、100mlの二口ナスフラスコにジメトキシトリチルクロリド(DMT-Cl:3.56g、10.5mmol)とジメチルアミノピリジン(DMAP:0.16g、1.31mmol)を窒素下で加え、さらに溶媒として脱水ジクロロメタン15mlを加えて溶解させた。その後、このジクロロメタン溶液を、上記のピリジン溶液に氷浴中でゆっくりと滴下した。15分ほど氷浴下で攪拌した後に氷浴を取り除いて室温で攪拌を続け、ジクロロメタン溶液滴下後3時間後に反応を停止した。溶媒をエバポレーターで留去した後、シリカゲルカラムクロマトグラフ法(展開溶媒 ヘキサン:酢酸エチル:トリエチルアミン=80:20:3)で精製し、化合物1-8を得た。
【実施例5】
【0091】
化合物1-8(3.61g、7.17mmol)を200mlのナスフラスコに採取し、メタノール60mlを加えて溶解させ、これに28%アンモニア溶液120mlを加えて室温で終夜攪拌した。溶媒をエバポレーターで留去し、化合物1-9を得た。
【実施例5】
【0092】
化合物1-9(0.676g、1.66mmol)、酢酸亜鉛二水和物(0.729g、3.32mmol)、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸二無水物(0.651g、1.66mmol)を200mlの二口ナスフラスコに採取し、窒素下で脱水ピリジン100mlを加えて溶解させ、これにトリエチルアミン(3.45mL、10.5mmol)を加えて90℃で12時間還流した。次に、上記の溶液にイソプロピルアミン(2.84ml、33.2mmol)を窒素下で加え、さらに16時間還流した。その後、溶媒をエバポレーターで留去した後、シリカゲルカラムクロマトグラフ法(展開溶媒 ヘキサン:クロロホルム:トリエチルアミン=50:50:3)で精製し、化合物1-10を得た。
【実施例5】
【0093】
化合物1-10(0.16g,0.19mmol)を二口ナスフラスコに採取し、脱水アセトニトリル8mlで3回共沸して水分を除去した後、脱水アセトニトリル30mlを加えて溶解させ、これに更に2-シアノエチルN,N,N’,N’-テトライソプロピルホスホロジアミダイト(2-cyanoethyl N,N,N¢,N¢ -tetraisopropylphosphordiamidite:0.08ml,0.25mmol)を加えて攪拌した。別の二口ナスフラスコに1H-テトラゾール(1H-tetrazole:0.018g、0.25mmol)を採取し、脱水アセトニトリル8mlで3回共沸して水分を除去した後、脱水アセトニトリル15mlを加えて溶解させた。この1H-テトラゾール溶液を、上記の化合物1-10のアセトニトリル溶液に氷浴下で滴下し、15分程度攪拌した後に氷浴を除き、室温に戻して更に攪拌を続けた。この後およそ1時間30分程度で反応を停止した。この後溶媒をエバポレーターで留去した後、残ったオイル状の化合物に酢酸エチルを加えて溶解した。この酢酸エチル溶液を、分液ロートを用いて重炭酸ナトリウムの飽和水溶液で2回振とうし、続いて塩化ナトリウムの飽和水溶液で同様に2回振とうした。この後、硫酸マグネシウムを加えて水分を除いてから酢酸エチルをエバポレーターで留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフ法(展開溶媒 ヘキサン:酢酸エチル:トリエチルアミン=60:40:3)精製し、化合物Dを得た。
【実施例6】
【0094】
(二重鎖オリゴヌクレオチドの蛍光強度の測定)
実施例5で合成した各種オリゴヌクレオチドを、B1a/S0、I1BA/I1B、H1BA/H1B、H3BA/H3Bで組み合わせて二重鎖オリゴヌクレオチドとして準備した。これらのオリゴヌクレオチドにつき、以下の条件でこの蛍光強度を測定した。結果を図6に示す。
DNA:1.0μmol/l
塩化ナトリウム:0.1mol/l
リン酸バッファー:10mmol/l(pH7.0)
【実施例6】
【0095】
図6に示すように、この蛍光標識(ペリレンビスイミド)に対しても、インスレーターユニットH、Iが有効であることがわかった。特に、それぞれ3個のインスレーターユニットを蛍光標識の両側に配置することでは、量子収率は1000倍以上程度上昇することがわかった。以上の結果から、インスレーターユニットI、Hがインスレーターとして有効であることがわかった。さらに、インスレーターの数が増加するとインスレーターの効果も増大することがわかった。ペリレンビスイミドは光化学的に安定であり、他の蛍光色素と比べ光退色に非常に強いという特長がある。また、インスレーターと組み合わせることにより他の蛍光色素同等もしくはそれ以上の量子収率を得ることが出来る。
【実施例7】
【0096】
(オリゴヌクレオチドの合成)
本実施例では、以下に示す、実施例1及び実施例2で準備した蛍光標識ユニットとインスレーターユニット(化合物A、B)を用いて、以下に示すオリゴヌクレオチドを、実施例3に準じて合成した。
【実施例7】
【0097】
【化23】
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【実施例8】
【0098】
(二重鎖オリゴヌクレオチドの蛍光強度の測定)
実施例7で合成した各種オリゴヌクレオチドを、以下の組み合わせで二重鎖オリゴヌクレオチドとして準備した。これらのオリゴヌクレオチドにつき、以下の条件で蛍光強度を測定した。結果を図7に示す。また、発光量を測定した。結果を以下に示す。
DNA:1.0μmol/l
塩化ナトリウム:0.1mol/l
リン酸バッファー:10mmol/l(pH7.0)
【実施例8】
【0099】
【化24】
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【実施例8】
【0100】
図7に示すように、複数個の蛍光標識(ピレン)の両側にインスレーターH、Iを配することで、蛍光強度が約20倍となった。また、表1に示すように、エキシマー発光を含めた発光量(ピーク面積)は、28倍程度増加していた。
【実施例8】
【0101】
【表1】
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【実施例9】
【0102】
インスレーターユニット及び蛍光標識を備えたオリゴヌクレオチドの合成)
インスレーターH及び蛍光標識としてFITCを有するオリゴヌクレオチドは、アリルオキシカルボニル基で保護したホスホロアミダイトモノマーを経由し、合成後のオリゴヌクレオチドに対して、FITCを導入するというスキームで行った。まず、ABI394型DNA合成機を使用し、実施例2で合成したインスレーターHを備えるインスレーターユニット(化合物B)、D-トレオニノールのアミノ基をアリルオキシカルボニル基で保護したホスホロアミダイトモノマーA、4つの天然の塩基に対応する市販のホスホロアミダイトモノマーを用いて、以下に示す3種のオリゴヌクレオチドをFITCに相当する部位にホスホロアミダイトモノマーAが配置されるオリゴヌクレオチドF1H0p(5’-FGGCAGCGTAGGTCCT-3’)及びF1H2p(5’-HFHGGCAGCGTAGGTCCT-3’)を合成した。なお、4つの天然の塩基に対応する市販のホスホロアミダイトモノマーを用いて、相補鎖q(3’-CCGTCGCATCCAGGA-5’)も合成した。
オリゴヌクレオチドp及び相補鎖qを塩基対を形成させて得られる二重鎖オリゴヌクレオチドの形態を図8に示す。
【実施例9】
【0103】
【化25】
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【実施例9】
【0104】
F1H0p…5’-FGGCAGCGTAGGTCCT-3’
F1H2p…5’-HFHGGCAGCGTAGGTCCT-3’
F…蛍光色素(FITC)
H…インスレーター(trans-Isopropylcyclohexane)
相補鎖q…3’-CCGTCGCATCCAGGA-5’(DNA)
【実施例9】
【0105】
すなわち、コントロールドポアグラス(CPG)担体上に所定の配列を持つオリゴヌクレオチドを伸長させ、このCPG担体(10mg,0.45μmol)を、フィルターを装着しているプラスチックのシリンジに秤取り、アセトニトリル1mLで3回、続いてジクロロメタン1mLで3回洗浄した。次にPd(Ph(5.2mg,4.5μmol)を溶解させたジクロロメタン溶液500μLにN-メチルアニリン48.8μL(450μmol)を加え、これを上述のCPG担体に加えて35℃で3時間反応させることで、アリルオキシカルボニル基のみをCPG担体上から脱保護した。
【実施例9】
【0106】
次に、FITC(14.02mg、18μmol)のDMF溶液(500μL)にDIPEA(6.12μl,18μmol)を加え、これをアリルオキシカルボニル基のみを脱保護したCPG担体(10mg,0.36μmol)に加え三日間攪拌した後、この後、反応溶液をろ過で除き、続いて0.1MのPPTSのDMF溶液1mLをシリンジに加えて1分間振とうしてCPG担体を洗浄し、更にDMF1mLで3回、続いてジクロロメタン1mで3回洗浄して、FITCを導入したCPG担体を得た。
【実施例9】
【0107】
続いて、ネイチャー・プロトコルズ(Nature Protocols)誌2007年第2巻203ページから212ページに記載の方法でCPG担体からDNAを切り出し、高速液体クロマトグラフィーで同誌同頁に記載の方法で目的とするインスレーター及びFITCを備えるオリゴヌクレオチドを分離精製した。
【実施例9】
【0108】
なお、D-トレオニノールのアミノ基をアリルオキシカルボニル基で保護したホスホロアミダイトモノマーAは、以下のスキームに従い合成した。300mlのナスフラスコにD-トレオニノール(0.99g,9.41mmol)をテトラヒドロフラン(THF)75mlに溶解させ、トリエチルアミン15mlを加え、攪拌した。次に、75mlのTHFに溶解させておいたクロロギ酸アリル(1.01ml,9.51mmol)を、氷浴中で上記のTHF溶液に滴下した。15分後に氷浴を除いて室温に戻し、そのまま攪拌を続け、THF溶液を滴下し終わってから1時間30分後に反応を停止した。この後、溶媒をエバポレーターで留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフ法(展開溶媒 クロロホルム:メタノール=3:1)で精製し、化合物1-1を得た。
【実施例9】
【0109】
【化26】
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【実施例9】
【0110】
次に、得られた化合物1(1.72g、9.09mmol)を200mlの二口ナスフラスコに採取し、窒素下で脱水ピリジン30mlを加えて溶解させ、これにN,N,ジイソプロピリエチルアミン(DIPEA:1.54mL、9.09mmol)を加えて攪拌した。次に、50mlの二口ナスフラスコにジメトキシトリチルクロリド(DMT-Cl:3.08g、9.09mmol)とジメチルアミノピリジン(DMAP:0.14g、1.14mmol)を加え、さらに溶媒として脱水ジクロロメタン10mlを加えて溶解させた。えこのジクロロメタン溶液を、上記のピリジン溶液に氷浴中でゆっくりと滴下した。15分ほど氷浴下で攪拌した後に氷浴を取り除いて室温で攪拌を続け、ジクロロメタン溶液滴下後4時間30分後に反応を停止した。溶媒をエバポレーターで留去した後、シリカゲルカラムクロマトグラフ法(展開溶媒 ヘキサン:酢酸エチル:トリエチルアミン=66:33:3)で精製し、化合物1-2を得た。
【実施例9】
【0111】
化合物1-2(0.74g,1.51mmol)を二口ナスフラスコに採取し、脱水アセトニトリル8mlで3回共沸して水分を除去した後、脱水アセトニトリル30mlを加えて溶解させ、これに更に2-シアノエチルN,N,N’,N’-テトライソプロピルホスホロジアミダイト(2-cyanoethyl N,N,N',N' -tetraisopropylphosphordiamidite:0.54g,1.79mmol)を加えて攪拌した。別の二口ナスフラスコに1H-テトラゾール(1H-tetrazole:0.137g、1.51mmol)を採取し、脱水アセトニトリル8mlで3回共沸して水分を除去した後、脱水アセトニトリル15mlを加えて溶解させた。この1H-テトラゾール溶液を、上記の化合物1-2のアセトニトリル溶液に氷浴下で滴下し、15分程度攪拌した後に氷浴を除き、室温に戻して更に攪拌を続けた。この後およそ1時間30分程度で反応を停止した。この後溶媒をエバポレーターで留去した後、残ったオイル状の化合物に酢酸エチルを加えて溶解した。この酢酸エチル溶液を、分液ロートを用いて重炭酸ナトリウムの飽和水溶液で2回振とうし、続いて塩化ナトリウムの飽和水溶液で同様に2回振とうした。この後、硫酸マグネシウムを加えて水分を除いてから酢酸エチルをエバポレーターで留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフ法(展開溶媒 ヘキサン:酢酸エチル:トリエチルアミン=50:50:3)精製し、ホスホロアミダイトモノマーAを得た。
【実施例10】
【0112】
(二重鎖オリゴヌクレオチドの蛍光強度の測定)
実施例8で合成した各種オリゴヌクレオチドを、図8示す組み合わせで二重鎖オリゴヌクレオチドとして準備した。これらのオリゴヌクレオチドにつき、2つの異なるpH条件(7及び9)で蛍光強度を測定した。結果を図9に示す。
【実施例10】
【0113】
条件1:pH7
DNA:1.0μmol/l
塩化ナトリウム:0.1mol/l
リン酸バッファー:10mmol/l(pH7.0)
温度:20℃
条件2:pH9
DNA:1.0μmol/l
塩化ナトリウム:0.1mol/l
Trisバッファー:10mmol/l(pH9.0)
温度:20℃
【実施例10】
【0114】
図9に示すように、pH 7及びpH9において、FITC一分子の場合と比べ、FITCの両側にインスレーター(H)を導入したオリゴヌクレオチドの方が4倍程度蛍光強度が増大した。この結果から、FITCのような、pHによって蛍光強度が変化する蛍光色素であっても、インスレーターユニットの導入によって、中性(pH7程度)からアルカリ(pH9程度)において、安定して蛍光強度を増強することができることがわかった。したがって、この種の蛍光色素に関して蛍光強度の測定時のpH条件の選択自由度が高まるため、ハイブリダイゼーション~蛍光強度測定操作におけるpH条件の調整操作などを簡略化したり省略したりすることができることがわかった。
【実施例11】
【0115】
本実施例では、既に作製したユニットを用いて、以下のオリゴヌクレオチドを合成した。これらのオリゴヌクレオチドにつき、以下の条件で、蛍光強度を測定した。結果を図10に示す。
【実施例11】
【0116】
Fp 5’-FGGCAGCGTAGGTCCT-3’
HFHp 5’-HFHGGCAGCGTAGGTCCT-3’
HFp 5’-HFGGCAGCGTAGGTCCT-3’
FHp 5’-FHGGCAGCGTAGGTCCT-3’
FHHp 5’-FHHGGCAGCGTAGGTCCT-3’
q(Target) 3’-CCGTCGCATCCAGGA-5’ (DNA)

(測定条件)
DNA:1.0μmol/l
塩化ナトリウム:0.1mol/l
リン酸バッファー:10mmol/l(pH7.0)
【実施例11】
【0117】
図10に示すように、蛍光色素をインスレーターで挟むことで最も高い蛍光強度が得られ、次いで、通常塩基に対して二つのインスレーターを隔てて蛍光色素を有すとき、高い蛍光強度が得られた。
【実施例12】
【0118】
本実施例では、既に作製したユニットを用いて、以下のオリゴヌクレオチドを合成した。これらのオリゴヌクレオチドを一本鎖(I1PAのみ)及び二重鎖として、以下の条件で蛍光強度を測定した。結果を図11に示す。
【実施例12】
【0119】
I1PA 5’-GGTATCIPIGCAATC-3’
I1B 3’-CCATAGIICGTTAG-3’
DNA:1.0μmol/l
塩化ナトリウム:0.1mol/l
リン酸バッファー:10mmol/l(pH7.0)
【実施例12】
【0120】
図11に示すように、一本鎖のラベル化剤(構造体)よりも二本鎖のラベル化剤(構造体)のほうが高い効果が得られた。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10