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明細書 :カーボンナノリング及びその製造原料として好適な輪状の化合物の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5713324号 (P5713324)
登録日 平成27年3月20日(2015.3.20)
発行日 平成27年5月7日(2015.5.7)
発明の名称または考案の名称 カーボンナノリング及びその製造原料として好適な輪状の化合物の製造方法
国際特許分類 C07C   1/20        (2006.01)
C07C  15/14        (2006.01)
C07B  61/00        (2006.01)
FI C07C 1/20
C07C 15/14
C07B 61/00 300
請求項の数または発明の数 11
全頁数 52
出願番号 特願2012-504485 (P2012-504485)
出願日 平成23年3月8日(2011.3.8)
国際出願番号 PCT/JP2011/055423
国際公開番号 WO2011/111719
国際公開日 平成23年9月15日(2011.9.15)
優先権出願番号 2010196175
2010051045
優先日 平成22年9月1日(2010.9.1)
平成22年3月8日(2010.3.8)
優先権主張国 日本国(JP)
日本国(JP)
審査請求日 平成26年2月18日(2014.2.18)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人名古屋大学
発明者または考案者 【氏名】伊丹 健一郎
【氏名】瀬川 泰知
【氏名】宮本 慎平
【氏名】大町 遼
【氏名】松浦 沙奈枝
【氏名】セネル ペトル
個別代理人の代理人 【識別番号】110000796、【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
審査官 【審査官】太田 千香子
参考文献・文献 Journal of Physical Chemistry C,2009年,Vol.113, No.52,p.21921-7
Journal of the American Chemical Society,2008年,Vol.130, No.52,p.17646-7
Chemical & Engineering News,2008年,Vol.86, No.51,p.9
Symp Organomet Jpn,2009年,Vol.58th,p.62,講演番号:P2A-15
Angewandte Chemie. International Edition,2009年,Vol.48, No.33,p.6112-6
調査した分野 C07C 1/20
C07C 15/14
CAplus(STN)
REGISTRY(STN)
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
特許請求の範囲 【請求項1】
下記一般式(1):
【化1】
JP0005713324B2_000065t.gif
[式中、n個のRは同じか又は異なり、それぞれ2価の芳香族炭化水素基、2価の脂環式炭化水素基若しくは2価の複素環式基;のうち少なくとも1つは下記一般式(2):
【化2】
JP0005713324B2_000066t.gif
(式中、Rは同じか又は異なり、それぞれ水素原子又は水酸基の保護基である。)
で表される2価の基;nは1以上の整数;mは2以上の整数である。]
で表される輪状の化合物の製造方法であって、
(I)ニッケル化合物の存在下で、下記一般式(3):
【化3】
JP0005713324B2_000067t.gif
[式中、R及びnは前記に同じ;Xは同じか又は異なり、それぞれハロゲン原子である。]
で表される化合物を用いて、一般式(1)で表される輪状の化合物を形成する工程
を備える、製造方法。
【請求項2】
上記一般式(3)で表される化合物が、下記一般式(3a):
【化4】
JP0005713324B2_000068t.gif
[式中、X及びRは前記に同じ;sは1以上の整数;tは1以上の整数;s+t=n+1(nは前記に同じ)である。]
で表される化合物である、請求項1に記載の輪状の化合物の製造方法。
【請求項3】
上記一般式(3)で表される化合物が、下記一般式(3b):
【化5】
JP0005713324B2_000069t.gif
[式中、X及びRは前記に同じ;u個のRは同じか又は異なり、それぞれ2価の芳香族炭化水素基、2価の脂環式炭化水素基若しくは2価の複素環式基;uは1以上の整数;u=n-4である。]
で表される化合物である、請求項1に記載の輪状の化合物の製造方法。
【請求項4】
上記一般式(3)で表される化合物が、下記一般式(3a-1):
【化6】
JP0005713324B2_000070t.gif
[式中、X及びRは前記に同じである。]
で表される化合物であり、且つ、上記一般式(1)においてmが4である、請求項1又は2に記載の輪状の化合物の製造方法。
【請求項5】
上記一般式(3)で表される化合物が、下記一般式(3a-1):
【化7】
JP0005713324B2_000071t.gif
[式中、X及びRは前記に同じである。]
で表される化合物であり、且つ、上記一般式(1)においてmが3である、請求項1又は2に記載の輪状の化合物の製造方法。
【請求項6】
上記一般式(1)においてmが2であり、且つ、上記一般式(3b)においてuが1又は2である、請求項3に記載の輪状化合物の製造方法。
【請求項7】
下記一般式(4):
【化8】
JP0005713324B2_000072t.gif
[式中、n’個のR1’は同じか又は異なり、それぞれ2価の芳香族炭化水素基、2価の脂環式炭化水素基若しくは2価の複素環式基;1’のうち少なくとも1つはp-フェニレン基;n’は1以上の整数;mは2以上の整数である。]
で表されるカーボンナノリングの製造方法であって、
(II)請求項1~6のいずれかに記載の製造方法で得られた輪状の化合物が有するシクロヘキサン環部をベンゼン環に変換する工程
を備える、製造方法。
【請求項8】
前記工程(II)が、前記輪状の化合物(1)に対して酸化反応を施す工程である、請求項7に記載のカーボンナノリングの製造方法。
【請求項9】
上記一般式(4)においてR1’が上記一般式(2)で表され、n’が1であり、mが4である、請求項7又は8に記載のカーボンナノリングの製造方法。
【請求項10】
上記一般式(4)においてR1’が上記一般式(2)で表され、n’が1であり、mが3である、請求項7又は8に記載のカーボンナノリングの製造方法。
【請求項11】
上記一般式(4)においてR1’が下記一般式(5):
【化9】
JP0005713324B2_000073t.gif
[式中、R及びRは前記に同じ;u’は1又は2である。]
で表され、n’が1であり、mが2である、請求項7又は8に記載のカーボンナノリングの製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、2価の芳香族炭化水素基等の有機環基が輪状に結合されてなるカーボンナノリングの製造方法、及び該カーボンナノリングの製造原料として好適な輪状の化合物の製造方法に関する。
【0002】
なお、本明細書において、カーボンナノリングを構成する「有機環基」は、フェニレン基、ナフチレン基等の2価の芳香族炭化水素基、シクロヘキシレン基等の2価の脂環式炭化水素基、ピリジリデン基、ピリミジニリデン基等の2価の複素環式基、又はこれらの基を構成する炭素原子に結合した水素原子が、官能基により置換されてなる誘導体基を意味する。
【背景技術】
【0003】
従来、炭素原子を含むナノ構造体としては、2次元のグラフェンシートを筒状に巻いた構造を有するカーボンナノチューブ、このカーボンナノチューブからなる輪状カーボンナノチューブ等が知られている。
【0004】
カーボンナノチューブは、機械的強度も極めて高く、高温にも耐えうること、そして、電圧をかけると効率よく電子を放出する等の優れた性質を有していることから、化学分野、電子工学分野、生命科学分野等の様々な分野への応用が期待されている。
【0005】
カーボンナノチューブの製造方法としては、アーク放電法、レーザー・ファネス法及び化学気相成長法等が知られている。しかし、これらの製造方法では、様々な太さと長さのカーボンナノチューブが混合物という形でしか得られないという問題がある。
【0006】
近年、カーボンナノチューブのように、炭素原子の連続的な結合により、一定以上の長さを有する管状のナノ構造体ではなく、輪状のナノ構造体が検討されつつある。例えば、非特許文献1には、シクロヘキサンジオンとジヨードベンゼンとを用いて、2価の芳香族炭化水素基であるフェニレン基が12個連なったシクロパラフェニレン化合物の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【0007】

【非特許文献1】Takaba,H.;Omachi,H.;Yamamoto,Y.;Bouffard,J.;Itami,K. Angew.Chem. Int. Ed.2009, 48, 6112
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記非特許文献には、パラジウム化合物の存在下で製造した、フェニレン基が12個連なったシクロパラフェニレン化合物とその製造方法が開示されている。この非特許文献に記載された、フェニレン基が12個連なったシクロパラフェニレン化合物の製造方法は、原料化合物を1つずつ結合させて、原料化合物の環状4量化体を経て、フェニレン基が12個連なったシクロパラフェニレン化合物を合成する方法である。しかし、この方法では、原料化合物を1つ結合させる毎に反応工程が必要であり、例えば、フェニレン基が12個連なったシクロパラフェニレン化合物の合成では、原料化合物の環状4量体を合成するまでに、4工程が必要であり、複雑及び煩雑な製造方法であり、多大なコストを要し、効率的な製造方法として満足できるものではない。
【0009】
本発明の目的は、所望の数の有機環基が連続的に結合してなる輪状構造の化合物からなるカーボンナノリングを、短工程で効率良く製造する方法、並びに、このカーボンナノリングの製造方法により得られるカーボンナノリング、及びシクロパラフェニレン化合物からなるカーボンナノリングを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題に鑑み鋭意研究を重ねた結果、本発明者らは、下記反応式1で表されるスキームを経ることで、所望の数の有機環基が輪状に結合されたカーボンナノリングを、短工程で効率よく製造できることを見出した。
【0011】
【化1】
JP0005713324B2_000002t.gif

【0012】
[式中、n個のRは同じか又は異なり、それぞれ2価の芳香族炭化水素基、2価の脂環式炭化水素基若しくは2価の複素環式基又はこれらの誘導体基;Rのうち少なくとも1つは下記一般式(2):
【0013】
【化2】
JP0005713324B2_000003t.gif

【0014】
(式中、Rは同じか又は異なり、それぞれ水素原子又は水酸基の保護基である。)
で表される2価の基;n’個のR1’は同じか又は異なり、それぞれ2価の芳香族炭化水素基、2価の脂環式炭化水素基若しくは2価の複素環式基又はこれらの誘導体基;R1’のうち少なくとも1つはp-フェニレン基;nは1以上の整数;n’は1以上の整数;mは2以上の整数である。]
【0015】
本発明は、このような知見に基づき、さらに研究を重ねた結果、完成されたものである。すなわち、本発明は、以下の項1~13の輪状の化合物及びカーボンナノリングの製造方法、並びに輪状の化合物及びその製造方法を包含する。
項1.下記一般式(1):
【0016】
【化3】
JP0005713324B2_000004t.gif

【0017】
[式中、n個のRは同じか又は異なり、それぞれ2価の芳香族炭化水素基、2価の脂環式炭化水素基若しくは2価の複素環式基又はこれらの誘導体基(以下、単に「有機環基」と言うこともある。);Rのうち少なくとも1つは下記一般式(2):
【0018】
【化4】
JP0005713324B2_000005t.gif

【0019】
(式中、Rは同じか又は異なり、それぞれ水素原子又は水酸基の保護基である。)
で表される2価の基(2);nは1以上の整数;mは2以上の整数である。]
で表される輪状の化合物(1)の製造方法であって、
(I)ニッケル化合物の存在下で、下記一般式(3):
【0020】
【化5】
JP0005713324B2_000006t.gif

【0021】
[式中、R及びnは前記に同じ;Xは同じか又は異なり、それぞれハロゲン原子である。]
で表される化合物(3)を用いて、一般式(1)で表される輪状の化合物を形成する工程を備える、製造方法。
項2.上記一般式(3)で表される化合物が、下記一般式(3a):
【0022】
【化6】
JP0005713324B2_000007t.gif

【0023】
[式中、X及びRは前記に同じ;sは1以上の整数;tは1以上の整数;s+t=n+1(nは前記に同じ)である。]
で表される化合物(3a)である、項1に記載の輪状の化合物の製造方法。
項3.上記一般式(3)で表される化合物が、下記一般式(3b):
【0024】
【化7】
JP0005713324B2_000008t.gif

【0025】
[式中、X及びRは前記に同じ;u個のRは同じか又は異なり、それぞれ2価の芳香族炭化水素基、2価の脂環式炭化水素基若しくは2価の複素環式基又はこれらの誘導体基;uは1以上の整数;u=n-4である。]
で表される化合物(3c)である、項1に記載の輪状の化合物の製造方法。
項4.上記一般式(3)で表される化合物が、下記一般式(3a-1):
【0026】
【化8】
JP0005713324B2_000009t.gif

【0027】
[式中、X及びRは前記に同じである。]
で表される化合物(3a-1)であり、且つ、上記一般式(1)においてmが4である、項1又は2に記載の輪状の化合物の製造方法。
項5.上記一般式(3)で表される化合物が、下記一般式(3a-1):
【0028】
【化9】
JP0005713324B2_000010t.gif

【0029】
[式中、X及びRは前記に同じである。]
で表される化合物(3a-1)であり、且つ、上記一般式(1)においてmが3である、項1又は2に記載の輪状の化合物(1)の製造方法。
項6.上記一般式(1)においてmが2であり、且つ、上記一般式(3b)においてuが1又は2である、項3に記載の輪状化合物の製造方法。
項7.下記一般式(4):
【0030】
【化10】
JP0005713324B2_000011t.gif

【0031】
[式中、n’個のR1’は同じか又は異なり、それぞれ2価の芳香族炭化水素基、2価の脂環式炭化水素基若しくは2価の複素環式基又はこれらの誘導体基;R1’のうち少なくとも1つはp-フェニレン基;n’は1以上の整数;mは2以上の整数である。]
で表されるカーボンナノリング(4)の製造方法であって、
(II)項1~6のいずれかに記載の製造方法で得られた輪状の化合物(1)が有するシクロヘキサン環部をベンゼン環に変換する工程
を備える、製造方法。
項8.前記工程(II)が、前記輪状の化合物(1)に対して酸化反応を施す工程である、項7に記載のカーボンナノリングの製造方法。
項9.上記一般式(4)においてR1’が上記一般式(2)で表され、n’が1であり、mが4である、項7又は8に記載のカーボンナノリングの製造方法。
項10.上記一般式(4)においてR1’が上記一般式(2)で表され、n’が1であり、mが3である、項7又は8に記載のカーボンナノリングの製造方法。
項11.上記一般式(4)においてR1’が下記一般式(5):
【0032】
【化11】
JP0005713324B2_000012t.gif

【0033】
[式中、R及びRは前記に同じ;u’は1又は2である。]
で表され、n’が1であり、mが2である、項7又は8に記載のカーボンナノリングの製造方法。
項12.下記一般式(1b):
【0034】
【化12】
JP0005713324B2_000013t.gif

【0035】
[式中、Rは同じか又は異なり、それぞれ水素原子又は水酸基の保護基である。]
で表される輪状の化合物。
項13.下記式(4b):
【0036】
【化13】
JP0005713324B2_000014t.gif

【0037】
で表される、9個のp-フェニレン基からなるカーボンナノリング(4b)の製造方法であって、
(IIb)下記一般式(1b):
【0038】
【化14】
JP0005713324B2_000015t.gif

【0039】
[式中、Rは同じか又は異なり、それぞれ水素原子又は水酸基の保護基である。]
で表される輪状の化合物が有するシクロヘキサン環部をベンゼン環に変換する工程
を備える、製造方法。
【発明の効果】
【0040】
本発明において、原材料として使用する化合物(3)は、分子の両末端に、ハロゲン原子を有するベンゼン環を有し、且つ、上記の2価の基(2)、即ち、シクロヘキサン環に由来する基を有している。そして、当該シクロヘキサン環は、1位及び4位の2箇所でベンゼン環、有機環基等と結合しており、このシクロヘキサン環と結合するベンゼン環、有機環基等が、それぞれアキシアル、エクアトリアルの配置にあるいす形配座による非直線構造(L字型形状)を有している。なお、原材料として使用する化合物(3)は、必ずしもシクロヘキサン環が1つのみのものである必要はなく、シクロヘキサン環を2つ有する化合物を原材料として使用してもよく、当該化合物は、全体としてU字型形状を有している。
【0041】
このような形状を有する化合物(3)をニッケル化合物の存在下でホモカップリングさせることにより、所望の数の有機環基が連続的に結合してなる、輪状の化合物(1)を製造することができる。その後、シクロヘキサン環をベンゼン環に変換することにより、カーボンナノリングを短工程で効率良く製造することができる。即ち、2段階のみという少ない工程で、カーボンナノリングを製造することができ、経済的である。
【0042】
例えば、化合物(3)として化合物(3a)を用いた場合、所望の数の有機環基(フェニレン基)が連続的に結合してなり、且つ、炭素原子及び水素原子からなる輪状の化合物から得られるカーボンナノリングを正確に設計し、得ることができる。
【0043】
具体的には、化合物(3)として、全体としてL字形形状を有する化合物(3a-1)を用いた場合、輪状の化合物(1)として当該化合物の四量体(後述の一般式(1a-1)で表される化合物)を得ることができる。その後、シクロヘキサン環をベンゼン環に変換すれば、12個のフェニレン基が連続的に結合しているシクロパラフェニレン化合物からなるカーボンナノリングを短工程で効率良く製造することができる。また、この場合、輪状の化合物(1)として、化合物(3a-1)の四量体だけでなく、三量体である輪状の化合物(1b)も得ることができる。その後、シクロヘキサン環をベンゼン環に変換すれば、9個のフェニレン基が連続的に結合しているシクロパラフェニレン化合物からなるカーボンナノリングを短工程で効率良く製造することができる。
【0044】
また、化合物(3)として、全体としてU字形形状を有する化合物(3c)を用いた場合、輪状の化合物(1)として当該化合物の二量体(後述の一般式(1c)で表される化合物)を得ることができる。その後、シクロヘキサン環をベンゼン環に変換すれば、14個、16個等のフェニレン基が連続的に結合しているシクロパラフェニレン化合物からなるカーボンナノリングを短工程で効率良く製造することができる。
【0045】
以上より、本発明では、正確に設計された、所望の数の有機環基が連続的に結合してなるカーボンナノリングを短工程で効率良く製造できる。そして、フェニレン基等の有機環基の数に応じた径を有するカーボンナノチューブの合成方法にも有用である。
【0046】
また、本発明の製造方法により得られたカーボンナノリングは、特に電子材料、発光材料等に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】熱振動楕円体作画ソフト(ORTEP)による、n-ヘキサンを包接する[12]シクロパラフェニレン結晶の構造を示す図面である。
【図2】熱振動楕円体作画ソフト(ORTEP)による、[12]シクロパラフェニレン結晶の集合体の一部を示す図面である。
【図3】熱振動楕円体作画ソフト(ORTEP)による、酢酸エチルを包摂する輪状の化合物(1b-1)結晶の構造を示す図面である。
【図4】熱振動楕円体作画ソフト(ORTEP)による、THFを包摂する[9]シクロパラフェニレン結晶の構造を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
本発明において、カーボンナノリング(4)は、下記反応式1:

【0049】
【化15】
JP0005713324B2_000016t.gif

【0050】
[式中、n個のRは同じか又は異なり、それぞれ2価の芳香族炭化水素基、2価の脂環式炭化水素基若しくは2価の複素環式基又はこれらの誘導体基;Rのうち少なくとも1つは下記一般式(2):

【0051】
【化16】
JP0005713324B2_000017t.gif

【0052】
(式中、Rは同じか又は異なり、それぞれ水素原子又は水酸基の保護基である。)
で表される2価の基;n’個のR1’は同じか又は異なり、それぞれ2価の芳香族炭化水素基、2価の脂環式炭化水素基若しくは2価の複素環式基又はこれらの誘導体基;R1’のうち少なくとも1つはp-フェニレン基;nは1以上の整数;n’は1以上の整数;mは2以上の整数である。]
で表されるスキームを経ることで得られる。

【0053】
上記反応式1における一般式(3)では、Xはハロゲン原子であれば特に限定されない。具体的には、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられる。本発明においては、工程(I)における反応を円滑に進められることから、臭素原子及びヨウ素原子が好ましく、特にヨウ素原子が好ましい。また、上記一般式(3)において、2つのXは同一であっても異なっていてもよい。

【0054】
上記反応式1における一般式(1)及び(3)において、Rは、2価の芳香族炭化水素基、2価の脂環式炭化水素基、若しくは2価の複素環式基又はこれらの誘導体基から選ばれる有機環基(以下、単に「有機環基」と言うこともある。)の1種又は2種以上を示し、少なくとも1つは一般式(2)で表されるシクロヘキシレン誘導体基である。

【0055】
言い方を代えれば、Rにおいて、少なくとも1つは一般式(2)で表されるシクロヘキシレン誘導体基であり、そのシクロヘキシレン誘導体基以外に、他の有機環基を有していてもよい。

【0056】
上記一般式(2)において、Rは水素原子又は水酸基の保護基である。水酸基の保護基としては、特に制限されるわけではないが、アルキル基、アシル基、シリル基、アルコキシアルキル基、テトラヒドロピラニル基(THP)、ベンジル基等が挙げられ、好ましくはアルコキシアルキル基である。

【0057】
上記アルキル基は、分岐を有するものでも、直鎖状のものでも構わない。また、環状のものであってもよい。アルキル基の炭素数は、特に限定されないが、好ましくは、炭素数は1~20であり、より好ましくは1~10であり、更に好ましくは1~5である。具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、sec-ブチル基、ペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。

【0058】
上記アシル基は、-CO-R2aで表される1価の基をいう。このアシル基を構成するR2aは、アルキル基であり、分岐を有するものでも、直鎖状のものでも構わない。アシル基を構成するアルキル基の炭素数は、特に限定されないが、好ましくは、炭素数は1~20であり、より好ましくは1~10であり、更に好ましくは1~5である。具体的には、アセチル基、プロピオニル基等が挙げられる。

【0059】
上記シリル基としては、-SiR1bで表される1価の基をいう(但し、複数のR1bは同一であっても異なっていてもよい。)。このシリル基を構成するR1bとしては、水素原子、ヒドロキシル基、アルキル基、アルコキシ基、アリル基、アリール基及びアミノ基等が挙げられる。R1bがアルキル基又はアルコキシ基である場合、アルキル基及びアルコキシ基を構成するアルキル基は、分岐を有するものでも、直鎖状のものでも構わない。このアルキル基の炭素数は、特に限定されないが、好ましくは、炭素数は1~20であり、より好ましくは1~10であり、更に好ましくは1~5である。また、R1bがアリール基である場合、アリール基を構成する芳香族炭化水素の環の数は、特に限定されないが、好ましくは1~3である。芳香族炭化水素の環が複数存在する場合、それらの複数の環は縮合していてもよく、縮合していなくてもよい。アリール基は、他の置換基(官能基)を1種又は2種以上有していてもよい。例えば、上記アリール基に含まれる芳香環は、他の置換基(官能基)を1種又は2種以上有していてもよい。この置換基(官能基)の位置は、オルト位、メタ位及びパラ位のいずれでもよい。上記置換基(官能基)として具体的には、例えば、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、ニトロ基、アミノ基、水酸基、及びアルコキシ基の1種又は2種以上が挙げられる。これらの置換基(官能基)が芳香環を構成する炭素原子に結合する場合、該置換基(官能基)の位置は、オルト位、メタ位及びパラ位のいずれでもよい。具体的には、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、t-ブチルジメチルシリル基等が挙げられる。

【0060】
上記アルコキシアルキル基は、-R1c-O-R1dで表される1価の基をいう。このアルコキシアルキル基を構成するR1cは、直鎖状若しくは分岐状のアルキレン基であり、炭素数は、通常、1~20であり、より好ましくは1~10であり、更に好ましくは1~5である。また、R1dは、直鎖状若しくは分岐状のアルキル基であり、炭素数は、通常、1~20であり、より好ましくは1~10であり、更に好ましくは1~5である。上記アルコキシアルキル基としては、好ましくは、メトキシメチル基(-CH-O-CH、以下、「-MOM」と表記する場合がある)が挙げられる。

【0061】
上記保護基(特にメトキシメチル基)は、アルコール(水酸基)を形成する水素原子と置換されて、アルコールの保護基として機能するものである。

【0062】
また、保護基のなかでも、メトキシメチル基は、保護基を形成させるアルコールにクロロメチルメチルエーテル(Cl-CH-O-CH)を反応させることにより得られる。

【0063】
また、上記一般式(2)において、2つのRは同一であっても異なっていてもよい。後述する化合物(1)を、カーボンナノリング(4)の製造原料として用いる場合には、Rはメトキシメチル基(-CH-O-CH)であることが好ましい。

【0064】
一方、他の有機環基としては、上記の有機環基であれば特に制限はない。具体的には、他の有機環基は、芳香環、シクロアルカン及び複素環から選ばれる有機環を備える2価の基であり、この有機環を構成する2つの炭素原子に結合する水素原子をそれぞれ、1つずつ脱離させてなる基である。なお、この有機環を構成する炭素に結合する水素原子が、官能基により置換された誘導体基(2価の誘導体基)であってもよい。なお、他の有機環基を複数有する場合には、複数の他の有機環基は、同じものであってもよいし異なるものであってもよい。

【0065】
上記芳香環としては、ベンゼン環だけでなく、複数のベンゼン環を縮合した環(ベンゼン縮合環)、ベンゼン環と他の環を縮合させた環等も挙げられる(以下、複数のベンゼン環を縮合した環及びベンゼン環と他の環を縮合させた環をまとめて、単に「縮合環」と言うことがある)。上記縮合環としては、例えば、ペンタレン環、インデン環、ナフタレン環、アントラセン環、テトラセン環、ペンタセン環、ピレン環、ペリレン環、トリフェニレン環、アズレン環、ヘプタレン環、ビフェニレン環、インダセン環、アセナフチレン環、フルオレン環、フェナレン環、フェナントレン環等が挙げられる。

【0066】
上記シクロアルカンとしては、炭素数3~10のものであれば限定はなく、シクロプロパン環、シクロヘキサン環等が挙げられる。シクロヘキサン環は、非平面構造の配座を有している。他の有機環基としてのシクロヘキサン環の配座(構造)としては、いす形配座(L字型構造)を除く、舟形配座及びねじれ舟形配座等が挙げられる。

【0067】
上記複素環としては、例えば、窒素原子、酸素原子、ホウ素原子、リン原子、ケイ素原子及び硫黄原子から選ばれる少なくとも1種の原子を有する複素環(具体的には、複素芳香環又は複素脂肪族環、特に複素芳香環)が挙げられる。複素環の具体例としては、フラン環、チオフェン環、ピロール環、シロール環、ボロール環、ホスホール環、オキサゾール環、チアゾール環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環等が挙げられる。また、これら同士又はこれらとベンゼン環、上記縮合環等との複素縮合環等(チエノチオフェン環、キノリン環等)も使用できる。

【0068】
また、Rにおいて、他の有機環基が、シクロアルカン(いす形配座のシクロヘキサンを除く。)から構成される有機環基である場合、置換基(官能基)の有無は、特に限定されないが、脂環式炭化水素基を構成する炭素原子に結合する水素原子が、他の官能基に置換されてなる、2価の誘導体基が好ましい。この場合における置換基(官能基)としては、上記一般式(2)における-ORが好ましい。Rが、-ORを有するシクロアルキレン基(上記一般式(2)で表されるシクロヘキシレン誘導体基を除く。)を含む場合、後述する工程(II)により、環を構成する炭素原子-炭素原子結合を、二重結合に変性することができる。

【0069】
本発明において、Rを構成する他の有機環基としては、上記の環のなかでも、2価の6員芳香環又は2価の6員複素芳香環を備える基であって、パラ位に結合手を有する基が好ましい。

【0070】
本発明において、Rを構成する他の有機環基としては、単環又はその縮合環に由来する基が好ましく、単環に由来する基がより好ましい。具体的には、Rにおける他の有機環基は、好ましくはフェニレン基(特にp-フェニレン基)及びナフチレン基(特に1,5-ナフチレン基又は2,6-ナフチレン基)であり、より好ましくはフェニレン基(特にp-フェニレン基)である。

【0071】
1’は、上記のRにおいて、一般式(2)で表されるシクロヘキサン環に由来する2価の基がp-フェニレン基に変換すること以外は同様である。したがって、R1’も、Rにおける他の有機環基と同様に、上記の有機環基であれば特に制限はない。具体的には、他の有機環基は、芳香環、シクロアルカン及び複素環から選ばれる有機環を備える2価の基であり、この有機環を構成する2つの炭素原子に結合する水素原子をそれぞれ、1つずつ脱離させてなる基である。なお、この有機環を構成する炭素に結合する水素原子が、官能基により置換された誘導体基(2価の誘導体基)であってもよい。なお、R1’を複数有する場合には、複数の他の有機環基は、同じものであってもよいし異なるものであってもよい。

【0072】
上記芳香環としては、ベンゼン環だけでなく、縮合環であってもよい。上記縮合環としては、例えば、ペンタレン環、インデン環、ナフタレン環、アントラセン環、テトラセン環、ペンタセン環、ピレン環、ペリレン環、トリフェニレン環、アズレン環、ヘプタレン環、ビフェニレン環、インダセン環、アセナフチレン環、フルオレン環、フェナレン環、フェナントレン環等が挙げられる。ただし、Rは一般式(2)で表されるシクロヘキサン環に由来する2価の基を少なくとも1つ有しているため、R1’も、ベンゼン環を少なくとも1つ有している。

【0073】
上記シクロアルカンとしては、炭素数3~10のものであれば限定はなく、シクロプロパン環、シクロヘキサン環等が挙げられる。シクロヘキサン環は、非平面構造の配座を有している。他の有機環基としてのシクロヘキサン環の配座(構造)としては、Rにおける他の有機環基とは異なり、いす形配座(L字型構造)であってもよいし、舟形配座、ねじれ舟形配座等であってもよい。

【0074】
上記複素環としては、例えば、窒素原子、酸素原子、ホウ素原子、リン原子、ケイ素原子及び硫黄原子から選ばれる少なくとも1種の原子を有する複素環(具体的には、複素芳香環又は複素脂肪族環、特に複素芳香環)が挙げられる。複素環の具体例としては、フラン環、チオフェン環、ピロール環、シロール環、ボロール環、ホスホール環、オキサゾール環、チアゾール環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環等が挙げられる。また、これら同士又はこれらとベンゼン環、上記縮合環等との複素縮合環等(チエノチオフェン環、キノリン環等)も使用できる。

【0075】
また、R1’がシクロアルカンから構成される有機環基である場合、置換基(官能基)の有無は、特に限定されないが、脂環式炭化水素基を構成する炭素原子に結合する水素原子が、他の官能基に置換されてなる、2価の誘導体基が好ましい。この場合における置換基(官能基)としては、上記一般式(2)における-ORが好ましい。Rが、-ORを有するシクロアルキレン基を含む場合、後述する工程(II)により、環を構成する炭素原子-炭素原子結合を、二重結合に変性することができる。

【0076】
本発明において、R1’としては、上記の環のなかでも、2価の6員芳香環又は2価の6員複素芳香環を備える基であって、パラ位に結合手を有する基が好ましい。

【0077】
本発明において、R1’としては、単環又はその縮合環に由来する基が好ましく、単環に由来する基がより好ましい。具体的には、R1’は、好ましくはフェニレン基(特にp-フェニレン基)及びナフチレン基(特に1,5-ナフチレン基又は2,6-ナフチレン基)であり、より好ましくはフェニレン基(特にp-フェニレン基)である。

【0078】
上記一般式(1)及び(3)において、nは1以上の整数であり、好ましくは20以下、より好ましくは10以下、更に好ましくは5以下、特に好ましくは1又は2である。nが2以上の場合、Rは複数存在し、これらのRは同一であっても異なっていてもよい。

【0079】
上記一般式(4)において、n’はnと同様に、1以上の整数であり、好ましくは20以下、より好ましくは10以下、更に好ましくは5以下、特に好ましくは1又は2である。n’が2以上の場合、R1’は複数存在し、これらのR1’は同一であっても異なっていてもよい。なお、n’は、本発明において原材料である化合物(3)を示す一般式(3)におけるnと同じである。

【0080】
また、上記一般式(1)及び(4)におけるmは、2以上の整数であれば、特に限定されないが、通常、10以下であり、好ましくは6以下であり、より好ましくは2~4であり、さらに好ましくは4である。

【0081】
[1]輪状の化合物(1)の製造方法
本発明の輪状の化合物(1)の製造方法は、
(I)ニッケル化合物の存在下で、化合物(3)を用いて、化合物(1)を形成する工程
を備える。

【0082】
この工程(I)では、複数且つ同種の化合物(3)が、結合(ホモカップリング)して輪状の化合物(Z)が形成される。この工程(I)における、複数且つ同種の化合物(3)同士の結合は、所謂、山本カップリングとして知られる結合反応である。化合物(3)は、2つのハロゲン原子を持っており、ニッケル化合物を用いることにより、そのハロゲン原子が結合している炭素原子同士、即ち、1の化合物(3)におけるハロゲン原子に結合している炭素原子と、他の化合物(3)におけるハロゲン原子に結合している炭素原子と、を結合させることができる。それにより、連続的に、化合物(3)同士のカップリング反応を進め、炭素原子同士を結合させ、輪状の化合物(1)を得ることができる。

【0083】
化合物(3)は、上記一般式(3)で表される化合物である。また、化合物(3)は、分子の両末端にハロゲン原子を有するベンゼン環を有し、少なくとも上記一般式(2)で表される脂環式炭化水素基の誘導体基(以下、「一般式(2)で表される2価の基」と言うこともある。)を含む有機環基を有している。さらに、一般式(3)におけるnの数に基づいて、この有機環基が連続して結合している化合物である。

【0084】
本発明に用いる化合物(3)は、上記一般式(3)で表されるように、ハロゲン原子Xを有するフェニレン基と、少なくとも1つの上記一般式(2)で表される2価の基を有する化合物である。

【0085】
フェニレン基を構成するベンゼン環は、一般に、剛直な平面構造である。一方、上記一般式(2)で表される2価の基を構成するシクロヘキサン環は、1位及び4位の2箇所でベンゼン環又は有機環基と結合しており、このベンゼン環又は有機環基が、それぞれアキシアル、エクアトリアルの配置にあるいす形配座による非直線構造(L字型形状)を有している。このため、化合物(3)は、直線構造とは異なる非平面及び非直線構造にすることができる。

【0086】
また、上述のとおり、シクロヘキサン環には、いす形配座以外に、舟形配座、ねじれ舟形配座等による非平面構造のシクロヘキサン環もある。従って、種々の有機環基を適宜複数選択することにより、様々な構造を有する化合物(3)とすることも可能である。

【0087】
例えば、化合物(3)が、いす形配座のシクロヘキシレン誘導体基を1つのみ有し、その他の有機環基が、フェニレン基等の平面構造の有機環基からなる場合、化合物(3)は、1位及び4位の2箇所でベンゼン環又は有機環基と結合しており、このベンゼン環又は有機環基が、それぞれアキシアル、エクアトリアルの配置にあることにより、L字型の構造を有する化合物とすることができる。また、この場合のL字形構造は、シクロヘキシレン誘導体基における折れ曲がった鋭角部分の角度(以下、「内角」という)が、ほぼ90度の構造となる。更に、化合物(3)が、いす型のシクロヘキサン環からなる有機環基を2つ有する場合には、内角がそれぞれ約90度であるU字形構造とすることができる。また、その他の有機環基との組み合わせから、化合物(3)をV字形構造、W字形構造等に設計することも可能である。

【0088】
また、工程(I)において、複数且つ同種の化合物(3)をホモカップリングさせることにより、輪状の化合物(1)が形成される。この場合、化合物(3)の結合数(カップリング数)は、通常、化合物(3)の構造に依存するものであり、特に限定されない。従って、上記一般式(2)で表されるシクロヘキシレン誘導体基等により折れ曲がった構造を有する化合物(3)に依存して、化合物(3)の結合数(カップリング数)が決定される。例えば、化合物(3)が、L字型構造であり内角が約90度の構造である場合、化合物(3)を、例えば3つ又は4つ結合させ、三量体化又は四量体化させることにより、輪状の化合物(1)を形成させることができる。また、化合物(3)が、内角約60度のV字型構造である場合、化合物(3)を、例えば3つ結合させ、三量体化させることにより、輪状の化合物(1)を形成させることもできる。また、化合物(3)が、内角約120度のL字型構造である場合、化合物(3)を、例えば5つ又は6つ結合させ、五量体化又は六量体化させることにより、輪状の化合物(1)を形成させることができる。なお、上記では、工程(I)におけるホモカップリングの典型例について示したが、上記例示したものに限られず、輪状の化合物(1)を合成できる反応であれば種々多様な態様が採用できる。

【0089】
カーボンナノリングは、シクロパラフェニレン等の、輪状構造を有する化合物からなる。化合物(3)として、L字型構造等の構造を有する化合物を用いることにより、輪状構造を有する化合物の形成を容易にすることができる。この点において、本発明に用いる化合物(3)を好適に選択することにより、連結する有機環基の個数を自在に設計することができ、所望の数の有機環基が連続的に結合してなる輪状構造の化合物からなるカーボンナノリングを、短工程で効率良く製造することができる。

【0090】
また、化合物(3)の好ましい態様としては、特に制限されるわけではないが、シクロヘキシレン誘導体基を1つ有し、その他の有機環基がフェニレン基である下記一般式(3a):

【0091】
【化17】
JP0005713324B2_000018t.gif

【0092】
[式中、X及びRは前記に同じ;sは1以上の整数;tは1以上の整数;s+t=n+1(nは前記に同じ)である。]
で表される化合物(3a)等が挙げられる。

【0093】
上記一般式(3a)におけるs及びtは、それぞれ1以上の整数であり、好ましくは10以下、より好ましくは5以下、更に好ましくは3以下である。ただし、sとtの合計は、n+1と同じである(nは、上記一般式(3)におけるnである)。

【0094】
この化合物(3a)の典型例としては、上記一般式(3a)におけるs及びtが1である下記一般式(3a-1):

【0095】
【化18】
JP0005713324B2_000019t.gif

【0096】
[式中、X及びRは前記に同じである。]
で表される化合物(3a-1)を使用することができる。

【0097】
また、化合物(3a)は、L字型構造の化合物に限られず、U字型構造の化合物も使用できる。その具体例としては、特に制限されないが、例えば、下記一般式(3c):

【0098】
【化19】
JP0005713324B2_000020t.gif

【0099】
[式中、X及びRは前記に同じ;u個のRは同じか又は異なり、それぞれ2価の芳香族炭化水素基、2価の脂環式炭化水素基若しくは2価の複素環式基又はこれらの誘導体基;uは1以上の整数;u=n-4である。]
で表される化合物(3c)を使用することもできる。

【0100】
なお、Rは、上記のR1’と同様とすることができる。

【0101】
上記一般式(3c)におけるuは、1以上の整数であり、好ましくは10以下、より好ましくは5以下、更に好ましくは3以下である。ただし、uは、n-4と同じである(nは、上記一般式(3)におけるnである)。

【0102】
化合物(3c)の具体例としては、Rがp-フェニレン基で、uが1である下記一般式(3c-1):

【0103】
【化20】
JP0005713324B2_000021t.gif

【0104】
[式中、X及びRは前記に同じである。]
で表される化合物(3c-1)を使用することもできるし、Rがp-フェニレン基で、uが2である下記一般式(3c-2):

【0105】
【化21】
JP0005713324B2_000022t.gif

【0106】
[式中、X及びRは前記に同じである。]
で表される化合物(3c-2)を使用することもできる。

【0107】
本発明の工程(I)においては、ニッケル化合物が用いられる。このニッケル化合物としては、特に限定されないが、0価のNiの塩又は2価のNiの塩が好ましい。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの錯体は、試薬として投入するもの及び反応中で生成するものの両方を意味する。

【0108】
上記0価のNiの塩としては、特に制限されないが、ビス(1,5-シクロオクタジエン)ニッケル(0)、ビス(トリフェニルホスフィン)ニッケルジカルボニル、ニッケルカルボニル等が挙げられる。

【0109】
また、上記2価のNiの塩としては、酢酸ニッケル(II)、トリフルオロ酢酸ニッケル(II)、硝酸ニッケル(II)、塩化ニッケル(II)、臭化ニッケル(II)、ニッケル(II)アセチルアセトナート、過塩素酸ニッケル(II)、クエン酸ニッケル(II)、シュウ酸ニッケル(II)、シクロヘキサン酪酸ニッケル(II)、安息香酸ニッケル(II)、ステアリン酸ニッケル(II)、ステアリン酸ニッケル(II)、スルファミンニッケル(II)、炭酸ニッケル(II)、チオシアン酸ニッケル(II)、トリフルオロメタンスルホン酸ニッケル(II)、ビス(1,5-シクロオクタジエン)ニッケル(II)、ビス(4-ジエチルアミノジチオベンジル)ニッケル(II)、シアン化ニッケル(II)、フッ化ニッケル(II)、ホウ化ニッケル(II)、ホウ酸ニッケル(II)、次亜リン酸ニッケル(II)、硫酸アンモニウムニッケル(II)、水酸化ニッケル(II)、シクロペンタジエニルニッケル(II)、及びこれらの水和物、並びにこれらの混合物等が挙げられる。

【0110】
0価のNiの塩及び2価のNiの塩としては、配位子を事前に配位させた化合物を使用してもよい。

【0111】
上記ニッケル化合物の使用量は、原料の上記化合物(3)1モルに対して、通常、試薬として投入するニッケル化合物の量が0.01~50モル、好ましくは0.1~10モル、より好ましくは0.5~5モルであり、特に好ましくは1~3モルである。

【0112】
本発明の製造方法において、ニッケル化合物とともに、ニッケル(ニッケル原子)に配位し得る配位子を用いることができる。この配位子としては、例えば、カルボン酸系、アミド系、ホスフィン系、オキシム系、スルホン酸系、1,3-ジケトン系、シッフ塩基系、オキサゾリン系、ジアミン系、一酸化炭素、カルベン系の配位子等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。上記配位子における配位原子は窒素原子、リン原子、酸素原子、硫黄原子等であり、これらの配位子には配位原子を1箇所のみ有する単座配位子と2箇所以上を有する多座配位子がある。また、一酸化炭素、カルベン系に関しては、炭素原子を配位原子とする配位子である。

【0113】
上記単座の配位子としては、トリフェニルホスフィン、トリメトキシホスフィン、トリエチルホスフィン、トリ(i-プロピル)ホスフィン、トリ(tert-ブチル)ホスフィン、トリ(n-ブチル)ホスフィン、トリ(イソプロポキシ)ホスフィン、トリ(シクロペンチル)ホスフィン、トリ(シクロヘキシル)ホスフィン、トリ(オルト-トルイル)ホスフィン、トリ(メシチル)ホスフィン、トリ(フェノキシ)ホスフィン、トリ-(2-フリル)ホスフィン、ビス(p-スルホナートフェニル)フェニルホスフィンカリウム、ジ(tert-ブチル)メチルホスフィン、メチルジフェニルホスフィン、ジメチルフェニルホスフィン、トリエチルアミン、ピリジン等が挙げられる。

【0114】
上記二座の配位子としては、2,2’-ビピリジン、4,4’-(tert-ブチル)ビピリジン、フェナントロリン、2,2’-ビピリミジル、1,4-ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン、2-(ジメチルアミノ)エタノール、テトラメチルエチレンジアミン、N,N-ジメチルエチレンジアミン、N,N’-ジメチルエチレンジアミン、2-アミノメチルピリジン、又は(NE)-N-(ピリジン-2-イルメチリデン)アニリン、1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン、1,1’-ビス(tert-ブチル)フェロセン、ジフェニルホスフィノメタン、1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、1,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、1,5-ビス(ジフェニルホスフィノ)ペンタン、1,2-ビス(ジペンタフルオロフェニルホスフィノ)エタン、1,2-ビス(ジシクロヘキシルホスフィノ)エタン、1,3-(ジシクロヘキシルホスフィノ)プロパン、1,2-ビス(ジ-tert-ブチルホスフィノ)エタン、1,3-ビス(ジ-tert-ブチルホスフィノ)プロパン、1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)ベンゼン、1,5-シクロオクタジエン、BINAP、BIPHEMP、PROPHOS、DIOP、DEGUPHOS、DIPAMP、DuPHOS、NORPHOS、PNNP、SKEWPHOS、BPPFA、SEGPHOS、CHIRAPHOS、JOSIPHOS等、及びこれらの混合物が挙げられる。

【0115】
また、上記BINAPとしては、BINAPの誘導体も含まれ、具体例としては、2,2’-ビス(ジフェニルホスフィノ)-1,1’-ビナフチル、2,2’-ビス(ジ-p-トリルホスフィノ)-1,1’-ビナフチル、2,2’-ビス(ジ-p-第3級ブチルフェニルホスフィノ)-1,1’-ビナフチル、2,2’-ビス(ジ-m-トリルホスフィノ)-1,1’-ビナフチル、2,2’-ビス(ジ-3,5-ジメチルフェニルホスフィノ)-1,1’-ビナフチル、2,2’-ビス(ジ-p-メトキシフェニルホスフィノ)-1,1’-ビナフチル、2,2’-ビス(ジシクロペンチルホスフィノ)-1,1’-ビナフチル、2,2’-ビス(ジシクロヘキシルホスフィノ)-1,1’-ビナフチル、2-ジ(β-ナフチル)ホスフィノ-2’-ジフェニルホスフィノ-1,1’-ビナフチル、2-ジフェニルホスフィノ-2’-ジ(p-トリフルオロメチルフェニル)ホスフィノ-1,1’-ビナフチル等が挙げられる。

【0116】
また、上記BIPHEMPとしては、BIPHEMPの誘導体も含まれ、具体例としては、2,2’-ジメチル-6,6’-ビス(ジフェニルホスフィノ-1,1’-ビフェニル、2,2’-ジメチル-6,6’-ビス(ジシクロヘキシルホスフィノ)-1,1’-ビフェニル、2,2’-ジメチル-4,4’-ビス(ジメチルアミノ)-6,6’-ビス(ジフェニルホスフィノ)-1,1’-ビフェニル、2,2’,4,4’-テトラメチル-6,6‘-ビス(ジフェニルホスフィノ)-1,1’-ビフェニル、2,2’-ジメトキシ-6,6’-ビス(ジフェニルホスフィノ)-1,1’-ビフェニル、2,2’,3,3’-テトラメトキシ-6,6’-ビス(ジフェニルホスフィノ)-1,1’-ビフェニル、2,2’,4,4’-テトラメチル-3,3’ジメトキシ-6,6’-ビス(ジフェニルホスフィノ)-1,1’-ビフェニル、2,2’-ジメチル-6,6’-ビス(ジ-p-トリルホスフィノ)-1,1’-ビフェニル、2,2’-ジメチル-6,6’-ビス(ジ-p-第3級ブチルフェニルホスフィノ)-1,1’-ビフェニル、2,2’,4,4’-テトラメチル-3,3’-ジメトキシ-6,6’-ビス(ジ-p-メトキシフェニルホスフィノ)-1,1’-ビフェニル等が挙げられる。

【0117】
上記配位子を使用する場合、その使用量は、原料の上記化合物(3)1モルに対して、通常、0.01~50モル、好ましくは0.1~10モル、より好ましくは0.5~5モルであり、特に好ましくは1~3モルである。

【0118】
上記工程(I)における反応は、通常、反応溶媒の存在下で行われる。この反応溶媒としては、脂肪族炭化水素類(ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン等)、脂肪族ハロゲン化炭化水素類(ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエタン等)、芳香族炭化水素類(ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン等)、エーテル類(ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、ジメトキシエタン(DME)、シクロペンチルメチルエーテル(CPME)、tert-ブチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等)、エステル類(酢酸エチル、プロピオン酸エチル等)、酸アミド類(ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセタミド(DMA)、N-メチルピロリドン(1-メチル-2-ピロリジノン)(NMP)、ニトリル類(アセトニトリル、プロピオニトリル等)、ジメチルスルホキシド(DMSO)等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。

【0119】
上記工程(I)における溶媒量は、原料の上記化合物(3)100質量部に対して、通常、1~1000質量部、好ましくは5~200質量部、より好ましくは10~100質量部である。

【0120】
上記工程(I)における反応温度は、通常、0℃以上であり且つ上記反応溶媒の沸点温度以下である範囲から選択される。

【0121】
また、反応雰囲気は、特に限定されないが、好ましくは不活性ガス雰囲気であり、アルゴンガス雰囲気、窒素ガス雰囲気等とすることができる。なお、空気雰囲気とすることもできる。

【0122】
上記工程(I)では、複数且つ同種の化合物(3)がカップリングして、下記一般式(1):

【0123】
【化22】
JP0005713324B2_000023t.gif

【0124】
[式中、R、n及びmは前記に同じである。]
で表される輪状の化合物(1)が形成される。

【0125】
上記化合物(1)は、有機環基からなるR及びフェニレン基が連続的に結合してなる、輪状の化合物である。上述したように、化合物(3)の形状及び環の数により、一般式(1)におけるn及びmの数を調整できるため、輪状の化合物(1)が有するR及びフェニレン基の総数を調整することが可能である。

【0126】
上記工程(I)において、化合物(3)として、上記一般式(3a)で表される化合物を用いた場合、通常、この化合物が4つ結合(カップリング)した四量体、即ち、下記式(1a):

【0127】
【化23】
JP0005713324B2_000024t.gif

【0128】
[式中、R、s及びtは前記に同じである。]
で表される輪状の化合物(1a)を得ることができる。

【0129】
[2]カーボンナノリング(4)の製造方法
本発明のカーボンナノリング(4)の製造方法は、上記の工程(I)により輪状の化合物(1)を製造した後、
(II)輪状の化合物(1)が有するシクロヘキサン環部をベンゼン環に変換する工程
を経ることにより得ることができる。

【0130】
例えば、前記輪状の化合物(1)に対して、一般的な酸化反応を施せばよい。その具体例としては、例えば、酸の存在下、輪状の化合物(1)を加熱する(酸処理する)方法の他、酸素存在下(空気雰囲気、酸素雰囲気等)加熱する方法、キノン類、金属酸化剤等と反応させる方法等も挙げられる。これにより、通常、脱水素反応等が適用され、輪状の化合物(1)が有するシクロヘキサン環部を、ベンゼン環に化学変化(芳香化)させて、カーボンナノリング(4)を合成することができる。即ち、変換前の輪状の化合物(1)が有する、シクロヘキサン環部におけるORも脱離され、且つ脱水素反応も進行して、カーボンナノリング(4)が得られる。

【0131】
具体的には、工程(I)により得られた輪状の化合物(1)が有するシクロヘキサン環部をベンゼン環に変換させ、下記一般式(4):

【0132】
【化24】
JP0005713324B2_000025t.gif

【0133】
[式中、R1’、n’及びmは前記に同じである。]
で表されるカーボンナノリング(4)を得ることができる。

【0134】
また、輪状の化合物(1)に含まれた、化合物(3)に由来するシクロヘキサン環部は、脱水素反応等によりフェニレン基とすることができる。特に、上記一般式(2)のシクロヘキシレン誘導体基は、シクロヘキシレン基の1位及び4位の位置に水酸基等のORを有するため、より効率よく、フェニレン基に変性することができる。

【0135】
例えば、工程(I)により得られた化合物(1)が、上記化合物(1a)である場合、工程(II)により、化合物(1)が有するシクロヘキサン環部をベンゼン環に変換させ、下記一般式(4a):

【0136】
【化25】
JP0005713324B2_000026t.gif

【0137】
[式中、s及びtは前記に同じである。]
で表される化合物(4a)を得ることができる。

【0138】
上記工程(II)における好ましい方法は、酸の存在下、輪状の化合物(1)に加熱処理等(以下、「酸処理」という)を施して、輪状の化合物(1)が有するシクロヘキサン環部を、ベンゼン環に化学変化させる方法である。

【0139】
上記酸処理を行う場合、その具体的な方法は、特に限定されないが、例えば、以下の方法が挙げられる。
(A)輪状の化合物(1)と酸とを溶媒に溶解させた後、得られた溶液を加熱して反応させる方法。
(B)輪状の化合物(1)を溶媒に溶解させた後、得られた溶液と酸とを混合して得られた混合物を加熱して反応させる方法。

【0140】
なお、上記工程(II)を行う場合、無溶媒による酸処理とすることもできる。

【0141】
上記(A)及び(B)の方法に用いられる酸は、特に限定されないが、触媒等に使用される強酸が好ましい。例えば、硫酸、メタンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、タングストリン酸、タングストケイ酸、モリブドリン酸、モリブドケイ酸、三フッ化ホウ素エチラート、硫酸水素ナトリウム、四塩化スズ等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。

【0142】
また、上記酸の使用量は、製造条件等により異なるが、上記(A)の方法の場合、輪状の化合物(1)に対して、0.01~100モル当量が好ましく、0.5~50モル当量がより好ましく、1~20モル当量がより好ましい。

【0143】
また、上記(B)の方法の場合、上記酸の使用量は、輪状の化合物(1)に対して、0.01~100モル当量が好ましく、0.5~50モル当量がより好ましく、1~20モル当量がより好ましい。

【0144】
また、酸処理の反応に用いられる溶媒は、非極性溶媒であっても極性溶媒であってもよい。例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等のアルカン類;塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、塩化エチレン等のハロアルカン類;ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、ペンタメチルベンゼン等のベンゼン類;クロルベンゼン、ブロムベンゼン等のハロベンゼン類;ジエチルエーテル、アニソール等のエーテル類;ジメチルスルホキシド等が挙げられる。上記溶媒は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。溶媒を用いる場合において、輪状の化合物(1)からカーボンナノリングに至るまでの反応中間体が、使用した1の溶媒に対して低い溶解性となることがあり、この場合、他の溶媒を、予め、又は、反応の途中から、添加しておいてもよい。

【0145】
また、上記溶媒を使用する場合のその使用量は、製造条件等により、適宜、選択されるが、上記輪状の化合物(1)100質量部に対して、100~100000質量部が好ましく、1000~10000質量部がより好ましい。

【0146】
上記(A)及び(B)における加熱温度は、通常、50℃以上であり、好ましくは80℃以上であり、より好ましくは100℃以上であり、更に好ましくは120℃以上である。溶媒を用いる場合は、上記溶媒の沸点温度以下の範囲から選択される。

【0147】
加熱手段としては、オイルバス、アルミブロック恒温槽、ヒートガン、バーナー、マイクロ波の照射等が挙げられる。マイクロ波を照射する場合には、マイクロ波反応に使用される公知のマイクロ波反応装置を用いることができる。加熱の際には、還流冷却を併用してもよい。

【0148】
また、上記酸処理における反応雰囲気は、特に限定されないが、好ましくは不活性ガス雰囲気であり、アルゴンガス雰囲気、窒素ガス雰囲気等とすることができる。なお、空気雰囲気とすることもできる。

【0149】
さらに、本発明のカーボンナノリングの製造方法は、工程(I)の後、及び/又は、工程(II)の後に、必要に応じて、精製工程を備えることができる。即ち、溶媒除去、洗浄、クロマト分離等といった一般的な後処理に供することができる。特に、工程(II)の後、得られるカーボンナノリングは、通常、アモルファス(非晶質)であるので、従来、公知の、有機化合物の再結晶法を利用して、結晶化させることができる。結晶化物においては、再結晶操作において用いた有機溶媒が、分子を構成する輪の内部に包接されることがある。

【0150】
本発明のカーボンナノリングの製造方法により得られるカーボンナノリングは、2価の、芳香族炭化水素基、脂環式炭化水素基及び複素環式基等から選ばれる少なくとも1種の有機環基が連続的に結合してなる輪状構造を有する化合物からなる。本発明の製造方法により、有機環基の数を9個以上、好ましくは12個以上とすることができる。この有機環基の数は、特に限定されないが、100個以下とすることができ、好ましくは50個以下、より好ましくは30個以下、更に好ましくは20個以下である。

【0151】
本発明の製造方法においては、上記のように、多様な構造を有する化合物(3)を用いることができるので、得られるカーボンナノリング(4)において、この輪状構造を有する化合物に含まれる有機環を構成する炭素原子に結合する水素原子が、官能基により置換されたものとすることができる。

【0152】
また、カーボンナノリング(4)の大きさは、有機環基(特にp-フェニレン基)を12~16個程度有する場合、直径は1.8~2.4nm程度である。また、有機環基(特にフェニレン基)を9~16個程度有する場合には、直径は1.2~2.4nm程度である。

【0153】
また、カーボンナノリング(4)としては、上記有機環基のうち、少なくとも8個以上は芳香環に由来する基であることが好ましく、有機環基の全てが芳香族炭化水素基であることがより好ましい。なお、さらに好ましいカーボンナノリング(4)は、全ての有機環基がフェニレン基(特にp-フェニレン基)である化合物からなるカーボンナノリングである。

【0154】
また、カーボンナノリング(4)において、全ての有機環基がフェニレン基である場合、上記フェニレン基を9個以上、特に12個以上有するシクロパラフェニレン化合物が特に好ましい。そして、このシクロパラフェニレン化合物は、フェニレン基が、その1位と4位との位置に直接結合していることが好ましい。

【0155】
このように、特定の数のフェニレン基により構成されている場合には、特定の数値範囲にある半径を有するカーボンナノチューブの合成材料(純粋合成の材料)として有用であり、また、電子材料、発光材料等にも好適に用いることができる。

【0156】
[3]原材料の製造方法
以下、本発明に用いられる化合物(3)の製造方法について、説明する。

【0157】
<化合物(3a-1)>
上記一般式(3a-1)で表される化合物は、下記式(6):

【0158】
【化26】
JP0005713324B2_000027t.gif

【0159】
で表される1,4-シクロヘキサンジオンと、下記一般式(7):

【0160】
【化27】
JP0005713324B2_000028t.gif

【0161】
[Xは前記に同じである。]
で表される化合物(以下、「芳香族ジハロゲン化合物」ともいう)とを反応させて得ることができる。

【0162】
また、上記一般式(7)で示される芳香族ジハロゲン化合物としては、1位及び4位にハロゲン原子を有する化合物であれば、特に限定されない。具体的には、1,4-ジブロモベンゼン、1,4-ジヨードベンゼン、1-ブロモ-4-ヨードベンゼン等が挙げられる。

【0163】
上記化合物(3)である、一般式(3a-1)で表される化合物を製造する場合、1,4-シクロヘキサンジオン及び上記一般式(7)で示される芳香族ジハロゲン化合物の使用量については、以下のとおりである。即ち、上記芳香族ジハロゲン化合物の使用量は、1,4-シクロヘキサンジオン1モルに対して、好ましくは2.0~10モルであり、より好ましくは2.3~5.0モルであり、更に好ましくは2.5~3.5モルである。

【0164】
上記原料を用いた製造方法は、特に限定されない。具体的には、芳香族ジハロゲン化合物と有機アルカリ金属化合物とを反応させて、アルカリ金属とハロゲン原子との交換反応により、芳香族ジハロゲン化合物の1つのハロゲン原子が、有機アルカリ金属化合物由来の炭化水素基に交換された、ハロゲン原子と炭化水素基とを有する前駆化合物を得る。次いで、この前駆化合物と1,4-シクロヘキサンジオンとを反応させて、求核付加反応により、一般式(3a-1)で表される化合物を製造することができる。

【0165】
上記有機アルカリ金属化合物としては、有機リチウム化合物、有機ナトリウム化合物等が挙げられ、特に有機リチウム化合物が好ましい。有機リチウム化合物としては、例えば、有機モノリチウム化合物、有機ジリチウム化合物、有機ポリリチウム化合物が用いられる。

【0166】
上記有機リチウム化合物の具体例としては、エチルリチウム、n-プロピルリチウム、イソプロピルリチウム、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、tert-ブチルリチウム、ペンチルリチウム、ヘキシルリチウム、シクロヘキシルリチウム、フェニルリチウム、ヘキサメチレンジリチウム、シクロペンタジエニルリチウム、インデニルリチウム、1,1-ジフェニル-n-ヘキシルリチウム、1,1-ジフェニル-3-メチルペンチルリチウム、リチウムナフタレン、ブタジエニルジリチウム、イソプロペニルジリチウム、m-ジイソプレニルジリチウム、1,3-フェニレン-ビス-(3-メチル-1-フェニルペンチリデン)ビスリチウム、1,3-フェニレン-ビス-(3-メチル-1,[4-メチルフェニル]ペンチリデン)ビスリチウム、1,3-フェニレン-ビス-(3-メチル-1,[4-ドデシルフェニル]ペンチリデン)ビスリチウム、1,1,4,4-テトラフェニル-1,4-ジリチオブタン、ポリブタジエニルリチウム、ポリイソプレニルリチウム、ポリスチレン-ブタジエニルリチウム、ポリスチレニルリチウム、ポリエチレニルリチウム、ポリ-1,3-シクロヘキサジエニルリチウム、ポリスチレン-1,3-シクロヘキサジエニルリチウム、ポリブタジエン-1,3-シクロヘキサジエニルリチウム等が挙げられる。これらのうち、n-ブチルリチウム等が好ましい。

【0167】
上記有機アルカリ金属化合物の使用量は、上記一般式(7)で示される芳香族ジハロゲン化合物1モルに対して、好ましくは0.8~5モルであり、より好ましくは0.9~3.0モルであり、更に好ましくは0.9~1.2モルである。

【0168】
上記一般式(3a-1)で表される化合物の製造方法において、特に好ましい原料の組み合わせは、以下のとおりである。芳香族ジハロゲン化合物としては、1,4-ジヨードベンゼン及び1,4-ジブロモベンゼンであり、有機アルカリ金属化合物としてはn-ブチルリチウムである。芳香族ジハロゲン化合物として、1,4-ジヨードベンゼンを用いる場合、1,4-ジヨードベンゼン及びn-ブチルリチウムの反応によって、4-ヨードフェニルリチウムを生成させる。次いで、この4-ヨードフェニルリチウムと、シクロヘキサン1,4-ジオンと、を求核付加反応により反応させることにより、下記式(3a-1a):

【0169】
【化28】
JP0005713324B2_000029t.gif

【0170】
で表される化合物が得られる。この化合物は、表される化合物(3a-1)である。

【0171】
上記芳香族ジハロゲン化合物及び有機アルカリ金属化合物の反応は、通常、反応溶媒の存在下で行われる。この反応溶媒としては、本発明における結合工程で用いられる、上述の反応溶媒を使用することができる。

【0172】
上記芳香族ジハロゲン化合物及び有機アルカリ金属化合物の反応温度は、通常、0℃以上であり且つ上記反応溶媒の沸点温度以下である範囲から選択される。

【0173】
また、反応雰囲気は、特に限定されないが、好ましくは不活性ガス雰囲気であり、アルゴンガス雰囲気、窒素ガス雰囲気等とすることができる。尚、空気雰囲気とすることもできる。

【0174】
<化合物(3a)>
また、上記一般式(3a-1)(具体的には、上記一般式(3a-1a))で表される化合物と、その他の化合物とを反応させて、他の化合物(3)を形成することができる。

【0175】
例えば、下記一般式(8):

【0176】
【化29】
JP0005713324B2_000030t.gif

【0177】
[式中、Yはハロゲン原子又は下記一般式(9):

【0178】
【化30】
JP0005713324B2_000031t.gif

【0179】
(式中、Rは同じか又は異なり、それぞれ水素原子又は炭素数1~10のアルキル基であり、Rは互いに結合して、隣接する-O-B-O-とともに環を形成してもよい。)
で表される基;2つのYのうち少なくとも1つはハロゲン原子;2つのYがハロゲン原子である場合、これらのYは同一であっても異なっていてもよい;sは前記に同じである。]、又は
一般式(10):

【0180】
【化31】
JP0005713324B2_000032t.gif

【0181】
[式中、Y及びtは前記に同じである。]
で表される化合物と、上記一般式(3a-1)で表される化合物とを反応させることにより、上記一般式(3a)で表される化合物が得られる。

【0182】
上記一般式(8)及び(10)において、Yにおけるハロゲン原子としては、具体的には、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられる。

【0183】
また、上記一般式(9)で表される基は、1価のボロン酸又はそのエステル基である。上記一般式(8)及び(10)におけるYが、上記一般式(9)で表される基である場合には、化合物(3a-1)と、所謂、鈴木カップリングにより結合させることができる。

【0184】
上記一般式(9)で表される基としては、例えば、下記式(9a)~(9c)で表される基とすることができる。上記一般式(9)で表される基が、下記式(9a)~(9c)で表される基であると、上記一般式(3a-1)で表される化合物に、上記一般式(8)又は(10)で表される化合物を結合させて、各種の化合物(3)を形成することを、効率良く行うことができる。

【0185】
【化32】
JP0005713324B2_000033t.gif

【0186】
<化合物(3c)>
化合物(3c)は、下記反応式2:

【0187】
【化33】
JP0005713324B2_000034t.gif

【0188】
[式中、X、R、R及びuは前記に同じ;Zは同じか又は異なり、それぞれ一般式(9):

【0189】
【化34】
JP0005713324B2_000035t.gif

【0190】
(式中、Rは前記に同じである。)
で示される基である。]
で示されるスキームを経ることで得ることができる。

【0191】
以下、該反応について説明する。

【0192】
化合物(3c)は、化合物(3a-1)と、下記一般式(11):

【0193】
【化35】
JP0005713324B2_000036t.gif

【0194】
[式中、Z、R及びuは前記に同じである。]
で示される化合物(11)とを含む原料を、パラジウム系触媒の存在下に反応させることにより得られる。

【0195】
上記化合物(3a-1)と化合物(11)との反応は、鈴木・宮浦カップリング反応を用いることができる。

【0196】
また、鈴木・宮浦カップリング反応では、触媒が用いられるが、上記反応においても、触媒が使用され、本発明においてはパラジウム系触媒が好ましい。

【0197】
また、上記一般式(11)におけるZは、上記一般式(9)に示される1価のボロン酸又はそのエステル基である。一般式(11)において、2つのZは同一であっても異なっていてもよいし、一般式(9)における2つのRは同一であっても異なっていてもよい。また、Rがアルキル基である場合には、それぞれのアルキル基を構成する炭素原子が、互いに結合してホウ素原子及び酸素原子とともに環を形成してもよい。

【0198】
上記一般式(11)に示されるZとしては、例えば、下記式(9a)~(9c):

【0199】
【化36】
JP0005713324B2_000037t.gif

【0200】
で示される基とすることができる。上記一般式(11)におけるZが、上記式(9a)~(9c)で示される基であると、化合物(3a-1)及び化合物(11)の反応を、より効率的に進行させることができる。

【0201】
上記反応における化合物(3a-1)及び化合物(11)の使用量は、化合物(3c)の収率の観点から、以下のとおりである。即ち、上記化合物(11)の使用量は、上記化合物(3a-1)1モルに対して、好ましくは0.01~0.5モル、より好ましくは0.05~0.4モル、更に好ましくは0.08~0.2モルである。

【0202】
上記反応においては、上記のように、通常、パラジウム系触媒が用いられる。このパラジウム系触媒としては、金属パラジウムをはじめ、有機化合物(高分子化合物を含む)等の合成用触媒として公知のパラジウム化合物等が挙げられる。本発明においては、鈴木・宮浦カップリング反応に使用されるパラジウム系触媒(パラジウム化合物)を用いることができる。具体的には、Pd(PPh(Phはフェニル基)、PdCl(PPh(Phはフェニル基)、Pd(OAc)(Acはアセチル基)、トリス(ジベンジリデンアセトン)二パラジウム(0)(Pd(dba))、トリス(ジベンジリデンアセトン)二パラジウム(0)クロロホルム錯体、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)、ビス(トリt-ブチルホスフィノ)パラジウム(0)、及び(1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン)ジクロロパラジウム(II)等が挙げられる。これらのうち、Pd(PPh等が好ましい。

【0203】
上記パラジウム系触媒の使用量は、収率の観点から、原料の上記化合物(3a-1)1モルに対して、通常、0.0001~0.1モル、好ましくは0.0005~0.02モル、より好ましくは0.001~0.01モルである。

【0204】
また、上記反応において、必要に応じて、上記パラジウム系触媒の中心元素であるパラジウム原子に配位し得る、リン配位子を使用することができる。このリン配位子としては、例えば、トリフェニルホスフィン、トリ-o-トリルホスフィン、トリ-m-トリルホスフィン、トリ-p-トリルホスフィン、トリス(2,6-ジメトキシフェニル)ホスフィン、トリス[2-(ジフェニルホスフィノ)エチル]ホスフィン、ビス(2-メトキシフェニル)フェニルホスフィン、2-(ジ-t-ブチルホスフィノ)ビフェニル、2-(ジシクロヘキシルホスフィノ)ビフェニル、2-(ジフェニルホスフィノ)-2’-(N,N-ジメチルアミノ)ビフェニル、トリ-t-ブチルホスフィン、ビス(ジフェニルホスフィノ)メタン、1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、1,2-ビス(ジメチルホスフィノ)エタン、1,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、1,4-ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン、1,5-ビス(ジフェニルホスフィノ)ペンタン、1,6-ビス(ジフェニルホスフィノ)ヘキサン、1,2-ビス(ジメチルホスフィノ)エタン、1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン、ビス(2-ジフェニルホスフィノエチル)フェニルホスフィン、2-(ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,6’-ジメトキシ-1,1’-ビフェニル(S-Phos)、2-(ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,4’,6’-トリ-イソプロピル-1,1’-ビフェニル(X-Phos)、ビス(2-ジフェニルホスフィノフェニル)エーテル(DPEPhos)等が挙げられる。これらのうち、2-(ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,4’,6’-トリ-イソプロピル-1,1’-ビフェニル(X-Phos)等が好ましい。

【0205】
上記リン配位子を使用する場合、その使用量は、収率の観点から、原料の上記化合物(3a-1)1モルに対して、通常、0.001~1.0モル、好ましくは0.01~0.8モル、より好ましくは0.05~0.3モルである。

【0206】
上記反応においては、上記パラジウム系触媒に加えて、必要に応じて、塩基(ホウ素原子の活性化剤)を使用してもよい。この塩基は、鈴木・宮浦カップリング反応において、ホウ素原子上にアート錯体を形成し得る化合物であれば特に限定はされない。具体的には、フッ化カリウム、フッ化セシウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメトキシド、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、リン酸カリウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸カルシウム等が挙げられる。これらのうち、好ましくは、フッ化セシウム、炭酸セシウム及びリン酸カリウムである。この塩基(上記活性化剤)の使用量は、原料の上記化合物(3a-1)1モルに対して、通常、0.01~10モル、好ましくは0.1~5.0モル、より好ましくは0.5~1.0モルである。

【0207】
上記反応は、通常、反応溶媒の存在下で行われる。この反応溶媒としては、トルエン、キシレン、ベンゼン等の芳香族炭化水素類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメトキシエタン、ジイソプロピルエーテル等の環状エーテル類;塩化メチル、クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、ジブロモエタン等のハロゲン化炭化水素類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類、アセトニトリル等のニトリル類;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類;ジメチルスルホキシド等が挙げられる。これらは、1種のみを用いてよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらのうち、本発明では、テトラヒドロフラン等が好ましい。

【0208】
上記反応の温度は、通常、0℃以上であり且つ上記反応溶媒の沸点温度以下である範囲から選択される。

【0209】
また、反応雰囲気は、特に限定されないが、好ましくは不活性ガス雰囲気であり、アルゴンガス雰囲気、窒素ガス雰囲気等とすることができる。なお、空気雰囲気とすることもできる。

【0210】
化合物(3c)を製造する場合には、上記反応工程の後、必要に応じて、精製工程を備えることができる。この精製工程において、溶媒(溶剤)除去、洗浄、クロマト分離等といった一般的な後処理に供することができる。

【0211】
化合物(3c)は、化合物(3a-1)と化合物(11)とをカップリングさせることにより、形成させることができる。従って、化合物(11)におけるRの数uを適宜選択することにより、化合物(3c)の有機環の数、即ち、長さを自由に且つ正確に設計することができる。これにより、化合物(3c)の長さを正確に設計することができる。

【0212】
[4]具体的態様
以下、本発明における具体的態様を示す。

【0213】
<(a)12個のp-フェニレン基からなるカーボンナノリング>
原材料となる化合物(3)として、一般式(3a-1):

【0214】
【化37】
JP0005713324B2_000038t.gif

【0215】
[式中、X及びRは前記に同じである。]
で表される化合物(3a-1)を用いれば、四量体が形成され、上記一般式(1)において、Rが一般式(2):

【0216】
【化38】
JP0005713324B2_000039t.gif

【0217】
(式中、Rは前記に同じである。)
で表される2価の基、nが1、mが4である、一般式(1a-1):

【0218】
【化39】
JP0005713324B2_000040t.gif

【0219】
[式中、Rは前記に同じである。]
で表される輪状の化合物(1a-1)を得ることができる。

【0220】
また、当該化合物に、工程(II)を施すことで、下記式(4a-1):

【0221】
【化40】
JP0005713324B2_000041t.gif

【0222】
で表される、12個のp-フェニレン基からなるシクロパラフェニレン化合物(以下、「[12]シクロパラフェニレン」又は「[12]Cycloparaphenylene」と言うこともある。)を得ることができる。つまり、この[12]シクロパラフェニレンからなるカーボンナノリングは、上記一般式(3a-1)で表される化合物を原料として用いることにより、容易に製造することができる。

【0223】
<(b)9個のp-フェニレン基からなるカーボンナノリング>
原材料となる化合物(3)として、一般式(3a-1):

【0224】
【化41】
JP0005713324B2_000042t.gif

【0225】
[式中、X及びRは前記に同じである。]
で表される化合物(3a-1)を用いれば、四量体だけでなく三量体も形成され、上記一般式(1)において、Rが一般式(2):

【0226】
【化42】
JP0005713324B2_000043t.gif

【0227】
(式中、Rは前記に同じである。)
で表される2価の基、nが1、mが3である、一般式(1b):

【0228】
【化43】
JP0005713324B2_000044t.gif

【0229】
[式中、Rは前記に同じである。]
で表される輪状の化合物(1b)を得ることができる。

【0230】
なお、この輪状の化合物(1b)は、文献未記載の新規化合物である。

【0231】
また、当該化合物に、工程(II)を施すことで、下記式(4b):

【0232】
【化44】
JP0005713324B2_000045t.gif

【0233】
で表される、9個のp-フェニレン基からなるシクロパラフェニレン化合物(以下、「[9]シクロパラフェニレン」又は「[9]Cycloparaphenylene」と言うこともある。)を得ることができる。つまり、この[9]シクロパラフェニレンからなるカーボンナノリングは、上記一般式(3a-1)で表される化合物を原料として用いることにより、容易に製造することができる。

【0234】
このように、原料として、化合物(3a-1)を使用すれば、三量体と四量体が混在することとなるが、クロマト(特にシリカゲルカラムクロマトグラフィー)分離により、容易に分離精製することができる。

【0235】
<(c)14個以上のp-フェニレン基からなるカーボンナノリング>
原材料となる化合物(3)として、一般式(3c):

【0236】
【化45】
JP0005713324B2_000046t.gif

【0237】
[式中、X、R、R及びuは前記に同じである。]
で表される化合物(3c)を用いれば、二量体が形成され、上記一般式(1)において、Rが一般式(5):

【0238】
【化46】
JP0005713324B2_000047t.gif

【0239】
[式中、R、R及びu’は前記に同じである。]
で表される2価の基、nが1、mが2である、一般式(1c):

【0240】
【化47】
JP0005713324B2_000048t.gif

【0241】
[式中、R、R及びuは前記に同じである。]
で表される輪状の化合物(1c)を得ることができる。

【0242】
また、当該化合物に、工程(II)を施すことで、下記式(4c):

【0243】
【化48】
JP0005713324B2_000049t.gif

【0244】
[式中、R及びuは前記に同じである。]
で表される、14個以上(例えば、14個、16個等)のp-フェニレン基からなるシクロパラフェニレン化合物を得ることができる。つまり、このシクロパラフェニレンからなるカーボンナノリングは、上記一般式(3c)で表される化合物を原料として用いることにより、容易に製造することができる。
【実施例】
【0245】
以下、本発明について、実施例を挙げて具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら制約されるものではない。また、合成例及び実施例で、NMR測定の測定は、JEOL社製、核磁気共鳴装置「A-400」(型式名)により行った。
【実施例】
【0246】
本実施例では、シクロパラフェニレンからなるカーボンナノリングを製造した。初めに、シス-1,4-ビス(4-ヨードフェニル)-1,4-シクロヘキサンジオールを製造した(合成例1~3)後、このシス-1,4-ビス(4-ヨードフェニル)-1,4-シクロヘキサンジオールを用いて、シス-1,4-ビス(4-ヨードフェニル)-1,4-ビス(メトキシメチルエーテル)シクロヘキサンを製造した(合成例4)。次いで、このシス-1,4-ビス(4-ヨードフェニル)-1,4-ビス(メトキシメチルエーテル)シクロヘキサンを用いて、カーボンナノリングを製造した(実施例1~3)。そして、実施例1~3により得られたシクロパラフェニレンを結晶化させ、構造解析を行った。また、実施例4~5において、9個のp-フェニレン基からなるシクロパラフェニレン化合物、及び16個のp-フェニレン基からなるシクロパラフェニレン化合物も製造し、その解析を行った。
【実施例】
【0247】
合成例1:シス-1,4-ビス(4-ヨードフェニル)-1,4-シクロヘキサンジオール(化合物(3a-1a))の合成(その1)
アルゴンガス雰囲気とした反応容器に、1,4-ジヨードベンゼン(49.5g,150mmol)と無水テトラヒドロフラン(300cm)とを室温(25℃)で収容し、溶液を得た後、-78℃に冷却した。次いで、この溶液に、n-ブチルリチウムのヘキサン溶液(93.8cm,1.6M,150mmol)をゆっくりと加え(添加速度3cm/分)、添加完了後、温度(-78℃)を保持しながら1時間撹拌した。その後、反応液を撹拌しながら、アルゴンガス雰囲気で別途に調製した、シクロヘキサン-1,4-ジエン(5.68g,50mmol)無水テトラヒドロフラン(160cm)溶液を加え、-78℃で1時間、更に、室温(25℃)で2時間反応させた。反応終了後、25℃に調整した反応液に、蒸留水(100cm)及び酢酸エチル(500cm)を加え、混合物を分液漏斗に収容した。この分液漏斗を用いた抽出操作により、酢酸エチル層(i)及び水層からなる2層に分離した。酢酸エチル層(i)を回収した後、分離した水層に酢酸エチル500cmを加えて、再度、抽出分離して、酢酸エチル層である有機層(ii)を回収した。分離した水層に、再度、酢酸エチル500cmを加えて抽出分離して、酢酸エチル層である有機層(iii)を回収した。そして、酢酸エチル層(i)と、更なる抽出操作により得られた生成物を含む有機層(ii)及び(iii)とを合わせた混合液を、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、減圧下、溶媒留去して粗生成物を得た。次に、上記の操作で得た粗生成物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(n-ヘキサン:酢酸エチル=3:1→1:1)に供し、12.6gの無色固体物質を得た。そして、核磁気共鳴分析(H-NMR)によって、この物質を解析した結果、下式(3a-1a):
【実施例】
【0248】
【化49】
JP0005713324B2_000050t.gif
【実施例】
【0249】
で表される化合物(3a-1a)のシス-1,4-ビス(4-ヨードフェニル)-1,4-シクロヘキサンジオールであった。収率は48%であった。
【実施例】
【0250】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ1.70 (s, 2H), 2.06 (s, 8H), 7.21 (d, J = 8.6 Hz, 4H), 7.68 (d, J = 8.6 Hz, 4H). 13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ 35.29, 72.53, 92.27, 127.61, 137.79.
【実施例】
【0251】
合成例2:シス-1,4-ビス(4-ヨードフェニル)-1,4-シクロヘキサンジオール(化合物(3a-1a))の合成(その2)
アルゴンガス雰囲気とした反応容器に、1,4-ジヨードベンゼン(49.5g,150mmol)と無水テトラヒドロフラン(500cm)とを室温(25℃)で収容し、溶液を得た後、-78℃に冷却した。その後、この溶液に、n-ブチルリチウムのヘキサン溶液(93.8cm,1.6M,150mmol)をゆっくりと加え(添加速度3cm/分)、添加完了後、温度(-78℃)を保持しながら1時間撹拌した。次いで、反応液を撹拌しながら、アルゴンガス雰囲気で別途に調製した、シクロヘキサン-1,4-ジエン(5.68g,50mmol)無水テトラヒドロフラン(70cm)溶液を加え、添加完了後、-78℃で1時間、更に、室温(25℃)で2時間撹拌し反応させた。その後、塩化アンモニウム飽和水溶液(300cm)を加え、反応を停止させ。次いで、反応生成物を含む混合物を分液漏斗に収容した。この分液漏斗を用いた抽出操作により、テトラヒドロフラン層(i)及び水層からなる2層に分離した。テトラヒドロフラン層(i)を回収した後、分離した水層に酢酸エチル300cmを加えて、再度、抽出分離して、テトラヒドロフラン層である有機層を回収した。この操作を合計3回繰り返し、テトラヒドロフラン層である有機層を回収した。そして、テトラヒドロフラン層(i)と、更なる抽出操作により得られた生成物を含む有機層(3回分)とを合わせた混合液を、塩化アンモニウム飽和水溶液を用いて洗浄した。その後、洗浄した有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧下、溶媒留去して粗生成物を得た。次に、上記の操作で得た粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム)に供し、14.3gの無色固体物質を得た。そして、核磁気共鳴分析(H-NMR)によって、この物質を解析した結果、上記合成例1と同様に、化合物(3a-1a)(シス-1,4-ビス(4-ヨードフェニル)-1,4-シクロヘキサンジオール)であった。収率は55%であった。
【実施例】
【0252】
合成例3:シス-1,4-ビス(4-ヨードフェニル)-1,4-シクロヘキサンジオール(化合物(3a-1a))の合成(その3)
アルゴンガス雰囲気とした反応容器に、乾燥三塩化セシウム(III)(4.93g,20.0mmol)と塩化リチウム(1.70g,40.1mmol)とを室温(25℃)で収容した。この反応容器を減圧にし、収容物を150℃で2時間加熱した。次いで、反応容器が熱いうちに、アルゴンガスを充填し、テトラヒドロフラン(100cm)を加え、室温(25℃)で12時間撹拌した。その後、-78℃に冷却し、三塩化セシウム混合物を調製した。
【実施例】
【0253】
次に、アルゴンガス雰囲気とした反応容器に、1,4-ジヨードベンゼン(6.60g,20.0mmol)と無水テトラヒドロフラン(260cm)とを室温(25℃)で収容し、溶液を得た後、-78℃に冷却した。次いで、この溶液に、n-ブチルリチウムのヘキサン溶液(12.2cm,1.65M,20.1mmol)をゆっくりと加え、添加完了後、温度(-78℃)を保持しながら1.5時間撹拌し反応させた。その後、この反応溶液を、上記した三塩化セシウム混合物に、-78℃で加え、-78℃で1時間、更に、0℃で30分撹拌した。次いで、この反応混合物を撹拌しながら、アルゴンガス雰囲気で別途に調製した、シクロヘキサン-1,4-ジエン(898mg,8.01mmol)無水テトラヒドロフラン(20cm)溶液を加え、添加完了後、0℃で30分撹拌し反応させた。その後、反応溶液を室温(25℃)に調整し、塩化アンモニウム飽和水溶液を加え、反応を停止させた。反応生成物を含む混合物に酢酸エチルを加えて、合成例1と同様にして、抽出分離し、抽出後の有機層をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n-ヘキサン/酢酸エチル)に供し、3.13gの白色固体物質を得た。そして、核磁気共鳴分析(H-NMR)によって、この物質を解析した結果、化合物(3a-1a)(シス-1,4-ビス(4-ヨードフェニル)-1,4-シクロヘキサンジオール)であった。収率は75%であった。
【実施例】
【0254】
合成例4:シス-1,4-ビス(4-ヨードフェニル)-1,4-ビス(メトキシメチルエーテル)シクロヘキサン(化合物(3a-1b))の合成
アルゴンガス雰囲気とした反応容器に、合成例1~3で得られたシス-1,4-ビス(4-ヨードフェニル)-1,4-シクロヘキサンジオール(化合物(3a-1a);1.67g,3.22mmol)、ジイソプロピルエチルアミン(4.26cm,24.5mmol)及び無水ジクロロメタン(15cm)を室温(25℃)収容し、溶液を調製した。次いで、この溶液を撹拌しながら、クロロメチルメチルエーテル(1.86cm,24.5mmol)をゆっくりと加え(添加速度0.2cm/分)、添加完了後、室温(25℃)で19時間撹拌を継続し反応させた。反応終了後、反応液に塩化アンモニウム飽和水溶液(30cm)を加え、混合物を分液漏斗に収容した。この分液漏斗を用いた抽出操作により、ジクロロメタン層(i)及び水層からなる2層に分離した。ジクロロメタン層(i)を回収した後、分離した水層にジクロロメタン20cmを加えて、再度、抽出分離して、ジクロロメタン層である有機層を回収した。この操作を合計3回繰り返し、ジクロロメタン層である有機層を回収した。そして、ジクロロメタン層(i)と、更なる抽出操作により得られた生成物を含む有機層(3回分)とを合わせた混合液を、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、減圧下、溶媒留去して粗生成物を得た。次に、上記の操作で得た粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n-ヘキサン:酢酸エチル=10:1)に供し、1.93gの無色固体物質を得た。そして、核磁気共鳴分析(H-NMR)によって、この物質を解析した結果、下記式(3a-1b):
【実施例】
【0255】
【化50】
JP0005713324B2_000051t.gif
【実施例】
【0256】
で表されるシス-1,4-ビス(4-ヨードフェニル)-1,4-ビス(メトキシメチルエーテル)シクロヘキサン(化合物(3a-1b))であった。収率は98%であった。
【実施例】
【0257】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ2.01 (brs, 4H), 2.28 (brs, 4H), 3.39 (s, 6H), 4.41 (s, 4H), 7.16 (d, J = 8.3 Hz, 4H), 7.65 (d, J = 8.7 Hz, 4H). 13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ32.74, 56.01, 77.84, 92.15, 93.44, 128.82, 137.49.
【実施例】
【0258】
実施例1:[12]シクロパラフェニレンの製造(その1)
<輪状の化合物(1a-1a)の製造>
アルゴンガス雰囲気とした反応容器に、ビス(1,5-シクロオクタジエン)ニッケル(0価)(88.0mg,0.32mmol)を室温(25℃)で収容した。これに合成例4で得られたシス-1,4-ビス(4-ヨードフェニル)-1,4-ビス(メトキシメチルエーテル)シクロヘキサン)(化合物(3a-1b);97.3mg,0.16mmol)、2,2’-ビピリジン(12.5mg,0.08mmol)、1,5-シクロオクタジエン(29.4mg,0.27mmol)及び無水1-メチル-2-ピロリジノン(3.6cm)を加えて、溶液とした。次いで、反応容器を密閉し、溶液を撹拌しながら、90℃で24時間反応させた。その後、放冷し、反応液に酢酸エチル(14.4cm)及び飽和塩化アンモニウム水溶液(14.4cm)を加え、混合物を分液漏斗に収容した。この分液漏斗を用いた抽出操作により、酢酸エチル層(i)及び水層からなる2層に分離した。酢酸エチル層(i)を回収した後、分離した水層に酢酸エチル14.4cmを加えて、再度、抽出分離して、酢酸エチル層である有機層を回収した。この操作を合計3回繰り返し、酢酸エチル層である有機層を回収した。そして、酢酸エチル層(i)と、更なる抽出操作により得られた生成物を含む有機層(3回分)とを合わせた混合液を、塩化アンモニウム飽和水溶液を用いて洗浄した。その後、洗浄した有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下、溶媒留去して粗生成物を得た。上記の操作で得た粗生成物をシリカゲル分取薄層クロマトグラフィー(n-ヘキサン:酢酸エチル=1:2)に供した。R値0.25に位置するシリカゲルから酢酸エチルを用いて有機物を抽出し、減圧下、溶媒留去して、11.3mgの無色固体を得た。そして、核磁気共鳴分析(H-NMR)によって、この物質を解析した結果、下記式(1a-1a):
【実施例】
【0259】
【化51】
JP0005713324B2_000052t.gif
【実施例】
【0260】
で表される、シス-1,4-ビス(4-ヨードフェニル)-1,4-ビス(メトキシメチルエーテル)シクロヘキサンの四量体(輪状の化合物(1a-1a);以下、「環化四量体」と言うこともある。)であった。収率は20%であった。
【実施例】
【0261】
1H NMR (400 MHz CDCl3) δ2.16 (brs, 16H), 2.37 (brs, 16H), 3.42 (s, 16H), 4.45 (s, 16H), 7.50 (s, 32H).
【実施例】
【0262】
また、1,5-シクロオクタジエンを用いずに、同様の操作をしたところ、環化四量体の収率は14%であった。
【実施例】
【0263】
<[12]シクロパラフェニレンの製造>
バイオタージ・ジャパン株式会社製マイクロウェーブ装置「Initiator」(商品名)の専用反応容器に、上記により得られた上記式(1a-1a)で表される環化四量体(9.9mg,6.98μmol)、パラトルエンスルホン酸・一水和物(1.3mg,6.98μmol)及びメタキシレン(1.4cm)を、室温(25℃)で収容して密閉し、溶液を調製した。次いで、上記装置におけるマイクロ波の最大照射出力を400ワットとして、上記溶液を撹拌しながら、150℃で30分間加熱した。その後、反応液を放冷し、ジクロロメタン(2.0cm)及び酢酸エチル(2.0cm)を加えた。吸引濾過器を用いて濾過を行い、不溶物を除去した後、濾液から減圧下、溶媒留去して粗生成物を得た。上記の操作で得た粗生成物をシリカゲル分取薄層クロマトグラフィー(n-ヘキサン:クロロホルム=1:1)に供した。R値0.37に位置するシリカゲルから酢酸エチルを用いて有機物を抽出し、減圧下、溶媒留去して、1.2mgの淡黄色固体を得た。そして、核磁気共鳴分析(H-NMR)によって、この物質を解析した結果、下記式(4a-1):
【実施例】
【0264】
【化52】
JP0005713324B2_000053t.gif
【実施例】
【0265】
で表される、12個のp-フェニレン基からなる[12]シクロパラフェニレン(アモルファス)であった。収率は19%であった。
【実施例】
【0266】
1H NMR (400 MHz CDCl3) δ7.61 (s, 48H). 13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ 127.33, 138.52.
【実施例】
【0267】
実施例2:[12]シクロパラフェニレンの製造(その2)
反応容器において、上記により得られた上記式(1a-1a)で表される環化四量体(9.3mg,6.56μmol)を、メタキシレン(1.4cm)に溶解させた後、この溶液に、濃硫酸(1.3mg,131μmol)を室温(25℃)で加えた。次いで、この混合物を、オイルバスを用いて、150℃で24時間加熱還流した。その後、反応液を放冷し、ジクロロメタン(1.9cm)及び酢酸エチル(1.9cm)を加えた。吸引濾過器を用いて濾過を行い、不溶物を除去した後、濾液から減圧下、溶媒留去して粗生成物を得た。上記の操作で得た粗生成物をシリカゲル分取薄層クロマトグラフィー(n-ヘキサン:クロロホルム=1:1)に供した。R値0.37に位置するシリカゲルから酢酸エチルを用いて有機物を抽出し、減圧下、溶媒留去して、1.2mgの淡黄色固体を得た。そして、核磁気共鳴分析(H-NMR)によって、この物質を解析した結果、上記式(4a-1)で表される、12個のp-フェニレン基からなる[12]シクロパラフェニレン(アモルファス)であった。収率は20%であった。
【実施例】
【0268】
実施例3:[12]シクロパラフェニレンの製造(その3)
反応容器に、上記により得られた上記式(1a-1a)で表される環化四量体(14.2mg,10.0μmol)、メタキシレン(1.5cm)、ジメチルスルホキシド(1cm)及び硫酸水素ナトリウム・一水和物(28.2mg,204μmol)を室温(25℃)で収容した。次いで、この混合物を、オイルバスを用いて、150℃で60時間加熱還流した。その後、反応液を放冷し、クロロホルムを加え、混合物を分液漏斗に収容した。この分液漏斗を用いた抽出操作により、クロロホルム層を回収し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、減圧下、溶媒留去して粗生成物を得た。上記の操作で得た粗生成物をシリカゲル分取薄層クロマトグラフィー(塩化メチレン:n-ヘキサン=1:1)に供した。R値0.37に位置するシリカゲルから酢酸エチルを用いて有機物を抽出し、減圧下、溶媒留去して、5.9mgの白色固体を得た。そして、核磁気共鳴分析(H-NMR)によって、この物質を解析した結果、上記式(4a-1)で表される、12個のp-フェニレン基からなる[12]シクロパラフェニレン(アモルファス)であった。収率は65%であった。
【実施例】
【0269】
参考例1:[12]シクロパラフェニレンの結晶化
上記実施例1~3で得られた、[12]シクロパラフェニレン(アモルファス)と、クロロホルムとを反応容器に収容し、飽和溶液とした。次いで、この反応容器を開口した状態で、n-ヘキサンの蒸気中に静置(25℃、24時間)することにより、[12]シクロパラフェニレンの結晶を得た。
【実施例】
【0270】
参考例2:[12]シクロパラフェニレン結晶のX線構造解析
リガク社製CCD単結晶自動X線構造解析装置「Saturn」(商品名)を用いて、[12]シクロパラフェニレン結晶のX線構造解析を行った。その結果を表1に示す。
【実施例】
【0271】
【表1】
JP0005713324B2_000054t.gif
【実施例】
【0272】
また、X線構造解析から下記の知見を得た。
(1)[12]シクロパラフェニレン結晶の輪の中に、2つのn-ヘキサン分子が包接されていた(図1参照)。
(2)[12]シクロパラフェニレン結晶は、隣り合うものどうしで、5度~45度の角度を維持しつつ、これらが規則的に配列しており(図2(A)参照)、図2(A)の右側から見た場合には、結晶の配列により、多数の輪からなる筒状を形成していた(図2(B)参照)。
【実施例】
【0273】
図1及び図2は、いずれも、熱振動楕円体作画ソフト(ORTEP)によるものであり、図1において、水素原子は未表示である。また、図2において、水素原子及びn-ヘキサン分子は未表示である。
【実施例】
【0274】
実施例4:[9]シクロパラフェニレンの製造
<輪状の化合物(1b-1)の製造>
200mLの攪拌機つきの、ガラスの丸底フラスコに、ビス(1,5-シクロオクタジエン)ニッケル(0価)(452mg,1.64mmol)、合成例4と同様にして得られた一般式(3a-1c):
【実施例】
【0275】
【化53】
JP0005713324B2_000055t.gif
【実施例】
【0276】
で表されるシス-1,4-ビス(4-ブロモフェニル)-1,4-ビス(メトキシメチルエーテル)シクロヘキサン(化合物(3a-1c);423mg,823μmol)、2,2’-ビピリジン(257mg,1.65mmol)を収容した。ここに、THF(166mL)をシリンジで添加した。次いで、混合物を還流下に24時間攪拌した。室温まで冷却した後、シリカゲル層を通過させ、EtOAc/CHClの混合溶媒で洗浄した。その後、減圧下に、溶媒を除去した。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/EtOAc)で精製し、下記式(1a-1a):
【実施例】
【0277】
【化54】
JP0005713324B2_000056t.gif
【実施例】
【0278】
で表される環化四量体(68.1mg)と、下記式(1b-1):
【実施例】
【0279】
【化55】
JP0005713324B2_000057t.gif
【実施例】
【0280】
で表される環化三量体(95.5mg)とを得た。収率は、それぞれ、環化四量体が23%、環化三量体が32%であった。これらの物質については、H-NMR及び13H-NMRによって解析した。
【実施例】
【0281】
環化三量体:
1H NMR (600 MHz, 50 °C, CDCl3) δ 2.07 (brs, 12H), 2.28-2.34 (m, 12H), 3.43 (s, 18H), 4.58 (s, 12H), 7.40 (d, J = 8 Hz, 12H), 7.46 (d, J = 8 Hz, 12H);
13C NMR (150 MHz, 50 °C, CDCl3) δ 33.3 (CH2), 55.9 (CH3), 78.1 (4°), 92.4 (CH2), 126.8 (CH), 127.3 (CH), 139.4 (4°), 141.2 (4°);
HRMS (FAB) m/z calcd for C66H78NaO12 [M・Na]+: 1085.5391, found: 1085.538; mp : 182.3-187.0 °C.
【実施例】
【0282】
<[9]シクロパラフェニレンの製造>
20mLの攪拌機及び冷却器つきシュレンク管に、上記式(1b-1)で表される環化三量体(26.6mg,25μmol)、硫酸水素ナトリウム・一水和物(69.1mg,400μmol)、乾燥したジメチルスルホキシド(1.5mL)及び乾燥したm-キシレン(5mL)を収容し、攪拌しながら150℃で48時間加熱した。室温まで冷却した後、混合物(反応液)をCHClで抽出した。抽出後、NaSOで乾燥した後に、減圧下、溶媒留去して粗生成物を得た。その後、TLC(CHCl/ヘキサン)により、黄色固体(4.2mg)を単離した。そして、H-NMR及び13C-NMRによって、この物質を解析した結果、下記式(4b):
【実施例】
【0283】
【化56】
JP0005713324B2_000058t.gif
【実施例】
【0284】
で表される、9個のp-フェニレン基からなる[9]シクロパラフェニレン(アモルファス)であった。収率は24%であった。
【実施例】
【0285】
1H NMR (600 MHz, CDCl3) δ7.52 (s, 36H);
13C NMR (150 MHz, CDCl3) δ 127.3 (CH), 137.9 (4°);
HRMS (MALDI-TOF) m/z calcd for C54H36 [M・]+: 684.2817, found: 684.2834.
【実施例】
【0286】
参考例3:[9]シクロパラフェニレンの結晶化
上記実施例4で得られた、[9]シクロパラフェニレン(アモルファス)と、THFとを反応容器に収容し、飽和溶液とした。次いで、この反応容器を開口した状態で、ペンタンの蒸気中に静置(10℃、24時間)することにより、[9]シクロパラフェニレンの結晶を得た。
【実施例】
【0287】
参考例4:[9]シクロパラフェニレン結晶のX線構造解析
リガク社製CCD単結晶自動X線構造解析装置「Saturn」(商品名)を用いて、[9]シクロパラフェニレン結晶のX線構造解析を行った。その結果を表2に示す。
【実施例】
【0288】
【表2】
JP0005713324B2_000059t.gif
【実施例】
【0289】
また、X線構造解析から下記の知見を得た。
(1)輪状の化合物(1b-1)結晶の輪の中に、酢酸エチルが包摂されていた(図3参照)。
(2)[9]シクロパラフェニレン結晶の輪の中に、THFが包接されていた(図4参照)。
(3)[9]シクロパラフェニレン結晶は、隣り合うものどうしで、5度~45度の角度を維持しつつ、これらが規則的に配列しており、結晶の配列により、多数の輪からなる筒状を形成していた。
【実施例】
【0290】
図3及び図4は、いずれも、ORTEPによるものであり、図3において、水素原子は未表示である。また、図4において、全ての水素原子及び一部のTHF分子は未表示である。
【実施例】
【0291】
合成例5:化合物(3c-2a)の製造
攪拌子を入れた50ml丸底フラスコにフッ化セシウム(Cesium fluoride)165mg(1.1mmol)、合成例4と同様にして得られた一般式(3a-1c):
【実施例】
【0292】
【化57】
JP0005713324B2_000060t.gif
【実施例】
【0293】
で表されるシス-1,4-ビス(4-ブロモフェニル)-1,4-ビス(メトキシメチルエーテル)シクロヘキサン(化合物(3a-1c);521.3mg,1mmol)、下記式(12):
【実施例】
【0294】
【化58】
JP0005713324B2_000061t.gif
【実施例】
【0295】
に示される、4,4’-Biphenyldiboronic acid neopentyl glycol ester(購入可能)75.5mg(0.2mmol)、及び[Pd(PPh]6.8mg(6μmol)を入れ、アルゴンガスをフラスコ内に充填した。そこに、乾燥させたTHF60mlを導入し、混合物とした後に、この混合物を撹拌しながら、65℃で26時間反応させた。次いで、フラスコ内の混合物(反応液)を室温に冷却し、混合物(反応液)をセライトでろ過した。得られたろ液をエバポレーターで溶媒を減圧留去した後に、残渣(濃縮物)をシリカゲルクロマトグラフィー(hexane/EtOAc)で精製し、白色固体物質(126.5mg)を得た。そして、核磁気共鳴分析(H-NMR、13C-NMR)及び質量分析によって、この白色固体物質を解析した結果、下記式(3c-2):
【実施例】
【0296】
【化59】
JP0005713324B2_000062t.gif
【実施例】
【0297】
で示される化合物(3c-2)であった。この化合物(3c-2)の収率は62%であった。
【実施例】
【0298】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ2.11 (brs, 8H), 2.34-2.37 (brm, 8H), 3.41 (s, 6H), 3.43 (s, 6H), 4.44 (s, 4H), 4.48 (s, 4H), 7.33 (d, J = 9 Hz, 4H), 7.45 (d, J = 9 Hz, 4H), 7.51 (d, J = 9 Hz, 4H), 7.60 (d, J = 9 Hz, 4H), 7.65 (s, 4H);
13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ33.0 (CH2), 56.0 (CH3), 77.2 (4), 77.9 (4), 78.1 (4), 92.2 (CH2), 92.3 (CH2), 121.7 (4), 126.9 (CH), 127.4 (CH), 128.7 (4), 131.5 (CH), 139.5 (4), 139.8 (4);
HRMS (FAB) m/z calcd for C56H60Br2O8Na [M+Na]+: 1041.2553, found 1041.2532.
【実施例】
【0299】
実施例5:輪状の化合物(1c-1)の製造
20mLの攪拌機つきのシュレンク管に、ビス(1,5-シクロオクタジエン)ニッケル(0価)(55.2mg,0.20mmol)、合成例5で得られた化合物(3c-2)(104.6mg,0.10mmol)及び2,2’-ビピリジン(31.6mg,0.20mmol)を収容した。ここに、乾燥したTHF(10mL)をシリンジで添加した。次いで、混合物を還流下に24時間攪拌した。室温まで冷却した後、シリカゲル層を通過させ、減圧下に、溶媒を除去した。その後、TLC(EtOAc/CHCl)により、白色固体(15.1mg)を単離した。そして、H-NMR及び13C-NMRによって、この物質を解析した結果、下記式(1c-1):
【実施例】
【0300】
【化60】
JP0005713324B2_000063t.gif
【実施例】
【0301】
で表される、輪状の化合物であった。収率は17%であった。
【実施例】
【0302】
1H NMR (270 MHz, CDCl3) δ 2.18 (brs, 16H), 2.39 (brs, 16H), 3.43 (s, 12H), 3.45 (s, 12H), 4.47 (s, 8H), 4.50 (s, 8H), 7.50-7.70 (m, 48H);
13C NMR (98.5 MHz, CDCl3) δ 33.0 (CH2), 56.0 (CH3), 78.1 (4o), 92.2 (CH2), 126.8 (CH), 127.3 (CH), 139.5 (CH), 139.7 (4o);
HRMS (FAB) m/z calcd for C112H120O16Na [M+Na]+: 1743.8474, found 1743.8496.
【実施例】
【0303】
なお、当該輪状の化合物(1c-1)を用いて、実施例1~4と同様にして、シクロヘキサン環をベンゼン環に変換すれば、下記式(4c-1):
【実施例】
【0304】
【化61】
JP0005713324B2_000064t.gif
【実施例】
【0305】
で表される、16個のp-フェニレン基からなる、[16]シクロパラフェニレンを得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0306】
本発明のカーボンナノリングの製造方法は、所望の構造を有するカーボンナノリングの大量生産に好適であり、得られるカーボンナノリングは、特定の数値範囲にある半径を有するカーボンナノチューブの原料、電子材料、発光材料等に好適である。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3