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明細書 :抗腫瘍剤

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5882889号 (P5882889)
登録日 平成28年2月12日(2016.2.12)
発行日 平成28年3月9日(2016.3.9)
発明の名称または考案の名称 抗腫瘍剤
国際特許分類 A61K  45/00        (2006.01)
A61K  39/395       (2006.01)
A61P  35/00        (2006.01)
A61P  43/00        (2006.01)
A61K  33/00        (2006.01)
A61K  31/375       (2006.01)
A61K  31/07        (2006.01)
A61K  31/355       (2006.01)
A61K  31/51        (2006.01)
FI A61K 45/00
A61K 39/395 D
A61K 39/395 N
A61P 35/00
A61P 43/00 121
A61K 33/00
A61K 31/375
A61K 31/07
A61K 31/355
A61K 31/51
請求項の数または発明の数 4
全頁数 14
出願番号 特願2012-505674 (P2012-505674)
出願日 平成23年3月14日(2011.3.14)
国際出願番号 PCT/JP2011/055947
国際公開番号 WO2011/115062
国際公開日 平成23年9月22日(2011.9.22)
優先権出願番号 2010057284
優先日 平成22年3月15日(2010.3.15)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成26年3月12日(2014.3.12)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504147243
【氏名又は名称】国立大学法人 岡山大学
【識別番号】399015780
【氏名又は名称】医療法人創和会
発明者または考案者 【氏名】大原 利章
【氏名】高岡 宗徳
【氏名】猶本 良夫
【氏名】友野 靖子
個別代理人の代理人 【識別番号】100088904、【弁理士】、【氏名又は名称】庄司 隆
【識別番号】100124453、【弁理士】、【氏名又は名称】資延 由利子
【識別番号】100135208、【弁理士】、【氏名又は名称】大杉 卓也
【識別番号】100152319、【弁理士】、【氏名又は名称】曽我 亜紀
審査官 【審査官】中尾 忍
参考文献・文献 Cancer Res.,1988年 8月 1日,Vol.48,No.15,P.4168-4170
東亞合成研究年報 TREND,2001年 1月 1日,第4号,pp.3-10
Exp. Biol. Med. ,2010年 1月,Vol.235,No.1,P.3-9
Surgery Frontier,日本,2003年12月,Vol.10,No.4,P.359-366
調査した分野 A61K 45/00
A61K 31/07
A61K 31/355
A61K 31/375
A61K 31/51
A61K 33/00
A61K 39/395

JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
特許請求の範囲 【請求項1】
抗VEGF抗体と生体内の鉄分を低減化しうる物質を共に含む抗腫瘍剤であって、前記生体内の鉄分を低減化しうる物質が、鉄分を含まない臨床栄養剤若しくは栄養調整食品であることを特徴とする抗腫瘍剤
【請求項2】
臨床栄養剤若しくは栄養調整食品が、ミネラル成分として、少なくともナトリウム、カルシウム、マグネシウムを含み、鉄分を含まないことを特徴とする請求項1に記載の抗腫瘍剤
【請求項3】
さらに、ビタミンを含むことを特徴とする、請求項2に記載の抗腫瘍剤
【請求項4】
臨床栄養剤が、経口栄養剤、末梢非経口栄養剤、完全静脈栄養剤又は経腸栄養剤である請求項2又は3に記載の抗腫瘍剤
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、抗腫瘍作用補助剤に関する。詳しくは、癌治療剤の作用を増強しうる抗腫瘍作用補助剤に関し、より詳しくは体内の鉄分を低減することで、抗腫瘍作用を増強しうる抗腫瘍作用補助剤に関する。
【0002】
本出願は、参照によりここに援用されるところの日本出願、特願2010-057284号優先権を請求する。
【背景技術】
【0003】
近年、ウイルス性肝炎、非アルコール性脂肪肝炎、アルコール性肝障害などの患者において、肝臓に過剰な鉄が蓄積し、肝機能を障害するという報告があり、また鉄分の多い食品を控えることで肝機能が改善するということが報告されている。肝炎では肝臓の細胞に鉄分が蓄積され、この肝臓細胞内の鉄分により活性酸素が細胞内取り込まれ、アポトーシスが引き起こされる。肝臓では、アポトーシスにより傷付いた肝細胞を排除しようとする免疫機能の働きがあるが、肝炎ではこれらアポトーシスが過剰に機能し、肝硬変に至る場合がある。鉄分が肝臓細胞に過剰に蓄積されている場合には、早急に鉄分を消費させる必要が出てくる。この際、瀉血によって人為的に貧血状態を引き起こさせ、ヘモグロビン合成に鉄分を消費させるという除鉄療法と呼ばれる治療法がある。特にインターフェロンの効き難いC型肝炎では、同治療法の効果が期待されている。
【0004】
C型肝炎から肝癌の発生は、肝細胞中の余剰鉄分による活性酸素の生成が原因とされ、潟血や鉄の少ない食餌が発癌を抑制するといわれている。一方、青石綿による中皮腫の発生も、石綿中の鉄が細胞内で水酸化ラジカルを生成し、DNAを損傷するからではないかといわれている。一般的に鉄分は過剰になり難いミネラルである。大部分の食品の鉄分は植物に多い非ヘム鉄であるから吸収されにくく、90%近くが排泄されるといわれている。また肉類、魚類の鉄分はヘム鉄で、植物含有非ヘム鉄に比べ10倍以上吸収されやすいが、ふすまのフィチン酸、植物のポリフェノールにより吸収阻害されるといわれている。
【0005】
血清鉄を減らす事で、動物に移植した腫瘍の増殖抑制効果が認められるという報告はあったが(非特許文献1)、その機構については解明されていない。そのため、血清鉄を低下させることにより抗腫瘍効果を得る治療法は一般的にはなっていない。また、血清鉄を減らす事で、既存の癌治療剤の効果を増強した報告はない。
【0006】
血清鉄を低下させうる薬剤として、輸血による慢性鉄過剰症に対する治療薬であるデフェラシロクス懸濁用錠(商品名:エクジェイド(R)懸濁用錠)が上市されている(非特許文献2)。しかしながら、血清鉄を低下させることによる、腫瘍をターゲットにした癌治療剤(抗腫瘍剤)及び食品は開発されていない。
【先行技術文献】
【0007】

【非特許文献1】Cancer Res. 1988 Aug 1;48(15):4168-70
【非特許文献2】Efficacy and Safety of Deferasirox, Published: US Hematology Volume 2 download article, 68-73 (2009)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、癌治療剤とは別に、鉄のキレート剤や、鉄分を含まない臨床栄養剤及び/又は栄養調整食品の提供により血清鉄を低減させる事で、腫瘍の増殖自体を抑制し、同時に血管新生が亢進しうることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
即ち、本発明は以下よりなる。
1.癌治療剤と共に使用する抗腫瘍作用補助剤であって、生体内の鉄分を低減化しうる物質からなることを特徴とする抗腫瘍作用補助剤。
2.生体内の鉄分を低減化しうる物質が、鉄キレート剤、又は鉄分を含まない臨床栄養剤若しくは栄養調整食品である、前項1に記載の抗腫瘍作用補助剤。
3.臨床栄養剤若しくは栄養調整食品が、ミネラル成分として、少なくともナトリウム、カルシウム、マグネシウムを含み、鉄分を含まないことを特徴とする前項1又は2に記載の抗腫瘍作用補助剤。
4.さらに、ビタミンを含むことを特徴とする、前項3に記載の抗腫瘍作用補助剤。
5.臨床栄養剤が、経口栄養剤、末梢非経口栄養剤、完全静脈栄養剤又は経腸栄養剤である前項2~4のいずれか1に記載の抗腫瘍作用補助剤。
6.癌治療剤が、血管新生阻害剤である、前項1~5のいずれか1に記載の抗腫瘍作用補助剤。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、書面の走査位置またはその直前(直後)を常に目視可能とするため、書面に垂直な方向に対して傾斜した光路で受光することを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の抗腫瘍作用補助剤により血清鉄を減らす事で、癌細胞や腫瘍の増殖自体を抑制し、同時に血管新生が亢進する事が突き止められた。そこで、血管新生を標的とする癌治療剤(血管新生阻害剤)と組み合わせて使用することで、非常に高い抗腫瘍効果が得られた。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】癌細胞移植マウスにおける抗腫瘍作用補助剤投与後の腫瘍増殖抑制効果を示す図である。(実験例1-2)
【図2】癌細胞移植マウスにおける抗腫瘍作用補助剤投与後の皮下腫瘍組織における鉄分の存在と血管新生のマーカーとなるCD31の存在(免疫組織染色)を示す写真図である。(実験例1-3)
【図3】癌細胞移植マウスにおける抗腫瘍作用補助剤投与後の皮下腫瘍組織における微小血管密度(Micro vessel density)を示す図である。(実験例1-4)
【図4】癌細胞移植マウスにおける抗腫瘍作用補助剤投与後の皮下腫瘍から核蛋白を抽出し、低酸素で誘導されるマーカーであるHIF-1αをウエスタンブロッティング(Western blotting)法にて調べた結果を示す図である。(実験例1-4)
【図5】癌細胞移植マウスにおける血管新生阻害剤(ベバシズマブ)及び抗腫瘍作用補助剤の併用投与後の腫瘍増殖抑制効果を示す図である。(実験例1-5)
【図6】癌細胞移植マウスにおける血管新生阻害剤(ベバシズマブ)及び抗腫瘍作用補助剤の併用投与後の腫瘍体積を示す図である。(実験例1-5)
【図7】癌細胞移植マウスにおける抗腫瘍作用補助剤投与後の皮下腫瘍組織における鉄分の存在と、細胞増殖マーカーとなるKi-67の存在(免疫組織染色)を示す写真図である。(実験例1-6)
【図8】癌細胞移植マウスにおける抗腫瘍作用補助剤投与後の皮下腫瘍組織における腫瘍内の低酸素状況をニトロイミダゾール化合物ピモニダゾール染色した結果により示す図と、血管新生のマーカーとなるCD31の存在(免疫組織染色)を示す写真図である。(実験例1-6)
【図9】A549細胞又はH1299細胞のin vitroでの培養において、鉄キレート剤としてデフェラシロクス(Deferasirox)を投与したときの、細胞生存率を示す図である。(実験例2-1)
【図10】A549細胞又はH1299細胞のin vitroでの培養において、鉄キレート剤を投与したときの、細胞周期における各種細胞の割合を示す図である。(実施例2-1)
【図11】A549細胞又はH1299細胞のin vitroでの培養において、鉄キレート剤を投与したときの、Cyclin D1及びHIF-αの発現をウエスタンブロッティングにより確認した図である。(実施例2-1)
【図12】A549細胞又はH1299細胞のin vitroでの培養において、鉄キレート剤を投与したときの、血管内皮細胞増殖因子 (VEGF)の発現を確認した図である。(実施例2-1)
【図13】癌細胞移植マウスにおける血管新生阻害剤(ベバシズマブ)及び抗腫瘍作用補助剤の併用投与後の腫瘍増殖抑制効果を示す図である。(実験例2-2)
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、癌治療剤と共に使用する抗腫瘍作用補助剤であって、生体内の鉄分を低減化しうる物質からなることを特徴とする抗腫瘍作用補助剤に関する。本発明は、鉄分を含まない、及び/又は鉄キレート作用を有することを特徴とする抗腫瘍作用補助剤に関する。本発明において、抗腫瘍作用補助剤とは、癌治療剤に対する抗腫瘍作用を補助しうる組成物であればよく特に限定されないが、例えば、鉄キレート剤、又は鉄分を含まない臨床栄養剤若しくは栄養調整食品などが挙げられる。従来の鉄代謝に関する治療方法は、鉄過剰症に対するものがほとんどである。一方、腫瘍に関しては、鉄代謝が癌細胞の増殖に影響を与えることは知られているが、それ以外の鉄の影響については、ほとんど解明されていない。

【0014】
本発明の鉄キレート剤としては、特に限定されないが、例えばデフェラシロクス(4-[(3,5‐Bis-(2‐hydroxy-phenyl)-1,2,4)triazol-1-yl]-benzoic acid)、デフェリプロン(1,2 dimethyl-3-hidroxypyridin-4-one)やデフェロキサミン(desferoxamine: DFO)等が挙げられる。補助剤として使用するためには、生体内から鉄をキレートするのが好適であり、例えばデフェラシロクスやデフェリプロンが好適であり、最も好適にはデフェラシロクスが挙げられる。こられより選択されるいずれかの鉄キレート剤は、それぞれ購入により、入手が可能である。

【0015】
本発明において臨床栄養剤とは、臨床の現場において通常用いられる意味で定義されるが、例えば患者に対して細胞に十分な栄養素と酸素を与えて、細胞の代謝を正常にする栄養剤をいう。

【0016】
栄養調整食品とは、特に厳密な定義はないが、不足しがちなビタミン・ミネラル・食物繊維などを添加したり、あるいはそれらを多く含む食品を原料に用いて日々の食事を補う食品が挙げられる。一般的には、サプリメントともいい、例えば厚生労働省から認可を得ることで特定の保健用途における効能を表示することが可能な特定保健用食品や、ビタミンとミネラルのいずれかが一定量含まれ、その栄養素の機能を厚生労働省に届出や申請なしに表示できる食品である栄養機能食品などが挙げられる。

【0017】
2005年現在の栄養機能食品の規格基準では、例えば、1日当たりの摂取目安量に含まれる栄養成分量の上限値・下限値が定められており、ミネラル成分としては、例えば亜鉛(3~15mg)、カルシウム(250~600mg)、鉄(4~10mg)、銅(0.5~5mg)、マグネシウム(80~300mg)などを含むことが基準として示されている。従来の臨床栄養剤や栄養調整食品には、上記規格基準に示すように、鉄分を含むことが求められる。鉄は、赤血球を作るのに必要な栄養素であるからである。

【0018】
本発明の抗腫瘍作用補助剤は、例えば、上述の臨床栄養剤及び/又は栄養調整食品を構成する組成物から鉄分を除去してなる組成物である。本発明の抗腫瘍作用補助剤には、ミネラルとして少なくともナトリウム、カルシウム、マグネシウムを含み、鉄分を含まないことを特徴とする。さらには、ビタミン類を含んでいても良い。ビタミンの種類としては、水溶性ビタミンであっても脂溶性ビタミンであってもよく、特に限定されないが、本発明の抗腫瘍作用補助剤の剤型や用途に応じて適宜決定される。水溶性ビタミンの例としては、ビタミンC、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ナイアシン、ビオチン、パントテン酸や葉酸が挙げられ、脂溶性ビタミンの例としては、ビタミンA、ビタミンDやビタミンEが挙げられる。

【0019】
本発明の抗腫瘍作用補助剤は、例えば、蛋白質、脂質、糖質、食物繊維、灰分、水分、ビタミン類(ビタミンA,RE,D,E,K,B1,B2,B6,B12,C、ナイアシン、葉酸、ビオチン、パントテン酸)、ミネラル(ナトリウム,カリウム,カルシウム,マグネシウム,リン,亜鉛,銅,マンガン,クロム,モリブデン,セレン,ヨウ素,塩素)等から選択される必要な成分を適宜含むことができる。

【0020】
本発明の抗腫瘍作用補助剤は、さらには炭水化物を含んでいても良い。炭水化物としては、グリセリン、グルコース、スクロース、フルクトース、マルトース、アラビノース、キシロース、ガラクトースから選択される必要な成分を適宜含むことができる。上記の糖類は単独または任意の比率で混合してグリセリンと併用して用いることができる。これらの成分は速く吸収され、低血糖時に血中グルコース濃度を早急に高める作用がある。特にグリセリンは、食物中の糖類と異なり、腸管より腸壁に吸収され、直接門脈を経て肝臓に運ばれるため、生体内でより速く利用される。また、グリセリンは3炭糖であるため、6炭糖のグルコースなどよりも代謝されるのが速く、エネルギー産生もより速やかである。

【0021】
また、中程度の速度で吸収される成分として、例えばマンノース、マルトデキストリン、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、乳果オリゴ糖、大豆オリゴ糖、乳糖、果糖等の炭水化物から選択される必要な成分を適宜含むことができる。これらものは、単独で用いてもよいし混合して使用してもよい。

【0022】
本発明の抗腫瘍作用補助剤に用いる脂質としては、脂肪すなわち、乳脂肪、サフラワー油、カノーラ(canola)油、卵黄油、オリーブ油、コーン油、綿実油、ココナッツ油、パーム油、パーム核(kemel)油、大豆油、ヒマワリ油、魚油及びそれらから得られた油の画分、例えば、パーム・オレイン、中鎖トリグリセリド(MCT)、並びに脂肪酸のエステル等が挙げられる。これらの油脂類は、単独で用いてもよいし併用して用いてもよい。より好ましくは、吸収速度が速いMCT油が挙げられる。また、分画あるいは精製した脂肪酸とグリセリンから合成した生成油を用いてもよい。脂質は高カロリー食品であり、カロリー源として有用である。脂質の配合量は、45重量%未満であり、好ましくは、3~35重量%である。なお、食品形態が水分を多量に含むドリンク剤やゼリー飲料については、外観や作業性の面で脂質を含まないほうが好ましい場合がある。

【0023】
本発明の抗腫瘍作用補助剤は、上述の成分の他にさらに食物繊維を配合することができる。本発明に用いる食物繊維としては、可溶性、不溶性、発酵性、非発酵性の繊維、例えば、大豆繊維、ペクチン、特定の耐性デンプン、オリゴフルクトース、イヌリン、オート(oat)繊維、ユンドウマメ(pea)繊維、グアー・ガム、アラビアガム、修飾セルロース等を挙げることができる。これらの食物繊維は、単独で用いてもよいし併用してもよい。

【0024】
本発明の抗腫瘍作用補助剤には、乳化剤、安定剤、ゲル化剤として、例えば、レシチン(例えば、卵又は大豆)、修飾レシチン(例えば、酵素又はアセチル化されたもの)、カラギーナン、キサンタン・ガム、モノ-及びジグリセリド、グアー・ガム、力ルボキシメチル・セルロース、ステアロイル・ラクチレートコハク酸モノグリセリド、ショ糖脂肪酸エステル、モノグリセリドのジアシル酒石酸エステル、脂肪酸のポリグリセロール・エステル等を用いることができる。

【0025】
本発明の抗腫瘍作用補助剤には、場合により、嗜好性を高めるために他の食品や天然又は人工香料等を1種以上添加することができる。ただし、この場合においても、鉄分を含まない物質であることが必要である。

【0026】
本発明の本発明の抗腫瘍作用補助剤は、種々の形態にして提供することが可能である。臨床栄養剤としては、例えば経口栄養剤、末梢非経口栄養剤、完全静脈栄養剤や経腸栄養剤として提供することができる。栄養調整食品としては、例えば、飲料、半固体形態とすることができ、例えば、プディング、あるいは固体形態、例えば、栄養バー又はクッキーなどの形態で提供することができる。

【0027】
本発明の抗腫瘍作用補助剤は、鉄分を含まないので、例えば継続的に摂取することで、血清中の鉄分を低減化させることができる。例えば、癌細胞を移植したマウスに本発明の抗腫瘍作用補助剤を与えることで、血清成分の鉄分を低減化させることができ、そこで癌細胞の増殖自体を抑制し、同時に血管新生を亢進させることができる。この作用は、ヒトにおいても期待することができる。

【0028】
本発明の抗腫瘍作用補助剤は、癌治療剤に対して補助的に作用しうる組成物であり、具体的には癌治療剤に対する抗腫瘍作用増強剤として機能しうる。癌治療剤としては、血管新生阻害剤が挙げられ、例えば抗VEGFヒト化モノクローナル抗体であるベバシズマブに対して、優れた補助剤となり、抗腫瘍作用増強剤となりうる。本発明の抗腫瘍作用補助剤は、血管新生作用を増強させうることから、増強した分子標的(新生血管)に対して特異的に作用する薬剤に対して優れた補助剤となり得、具体的にはベバシズマブに対して、優れた補助剤となりうる。

【0029】
本発明は、抗腫瘍作用補助剤の作製方法にも及ぶ。臨床栄養剤及び/又は栄養調整食品から鉄分を除去することによる。
【実施例】
【0030】
以下、実施例及び実験例に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0031】
(実施例1)抗腫瘍作用補助剤(鉄分欠乏食)
本発明の抗腫瘍作用補助剤の一例として、マウス餌(日本クレア製)の組成物から、鉄分を除去したものを作製した(表1参照)。なお、以下の実験例では、マウスに対する抗腫瘍作用を確認したので、本実施例ではマウスの餌から鉄分を除去したもの(鉄分欠乏食)を抗腫瘍作用補助剤としたが、例えばヒトに対する抗腫瘍作用補助剤として適用する場合は、表1に示される組成物に限定されるものではない。
【実施例】
【0032】
【表1】
JP0005882889B2_000002t.gif
【実施例】
【0033】
(実験例1-1)抗腫瘍作用補助剤投与後の血液組成
ヌードマウスを8匹用意し、実施例1の鉄分含有食(対照)投与群と鉄分欠乏食(抗腫瘍作用補助剤)投与群の2群に分け、4匹あたり100g×2/週で3週間投与した。各群について、全血組成及び血清鉄の値を測定した結果、ヘモグロビン(Hb)及び血清鉄について有意な低下が認められた(表2)。一方、赤血球、白血球及びヘマトクリットについては、若干の減少を認めたものの、有意な減少とはいえなかった。
【実施例】
【0034】
【表2】
JP0005882889B2_000003t.gif
【実施例】
【0035】
(実験例1-2)抗腫瘍作用補助剤投与後の腫瘍増殖抑制効果の確認
ヌードマウスを16匹用意し、鉄分含有食(対照)投与群(8匹)と鉄分欠乏食(抗腫瘍作用補助剤)投与群(8匹)の2群に分け、4匹あたり100g×2/週で3週間投与した。その後、ヒト肺腺癌A549細胞(300万個/マウス)を移植し、皮下腫瘍を作製した。その後、鉄分含有食(対照)と鉄分欠乏食(抗腫瘍作用補助剤)をさらに、42日間投与した。その結果、鉄分欠乏食を投与した場合に、癌細胞増殖の抑制が有意に認められた(図1)。
【実施例】
【0036】
(実験例1-3)抗腫瘍作用補助剤投与後の癌細胞における免疫組織染色
上記実験例の実験終了時に皮下腫瘍を回収し、間質の違いを解明するために、鉄分及び血管新生のマーカーとなるCD31について確認した。鉄成分検出のために、ベルリンブルー染色を行なった。またCD31検出のために、標識した抗CD31抗体(Santa Cruz Biotechnology社)を用いて免疫組織染色を行った。その結果、鉄分含有食(対照)投与群では癌細胞の間質に鉄の成分が認められたが(図2A)、鉄分欠乏食(抗腫瘍作用補助剤)投与群では鉄成分は全く認められなかった(図2B)。CD31免疫染色では、鉄分含有食(対照)投与群(図2C)に比較して鉄分欠乏食投与群の癌細胞間質の血管周囲が強く染色され、血管新生の増強が示唆された(図2D)。
【実施例】
【0037】
(実験例1-4)抗腫瘍作用補助剤投与後の腫瘍内血管新生の確認
上記実験例の実験終了時に皮下腫瘍を回収し、微小血管密度(Micro vessel density)を調べた。その結果、有意に鉄分欠乏食(抗腫瘍作用補助剤)投与群で血管新生の増強が確認された(図3)。
【実施例】
【0038】
更に回収した皮下腫瘍から核蛋白を抽出し(n=3)、鉄の取り込み機構に係るトランスフェリン受容体1(TFR-1)及び低酸素で誘導されるマーカーであるHIF-1αをウエスタンブロッティング(Western blotting)法にて調べた。抗体は抗HIF-1α抗体(Cell Signaling社)及び抗TFR-1α抗体(Invitrogen社)を用いた。その結果、HIF-1α及びTFR-1は、鉄分欠乏食(抗腫瘍作用補助剤)投与群で強く検出され、組織低酸素が起こる事により、血管新生が増強されている事が示唆された(図4)。
【実施例】
【0039】
(実験例1-5)既存の癌治療剤と抗腫瘍作用補助剤の併用効果の確認
ヌードマウス20匹を用意し、実験例2と同様に、鉄分含有食(対照)投与群と鉄分欠乏食(抗腫瘍作用補助剤)投与群の2群に分け、各々投与した後、ヒト肺腺癌A549細胞(300万個/マウス)を移植し、皮下腫瘍を作製した。その後、それらの2群についてさらに血管新生阻害剤(Bevacizumab:ベバシズマブ)投与群と生理食塩液投与群の2群に分けた。腫瘍体積が約50mm3となった時点(移植後2日目)から、血管新生阻害剤投与群にはベバシズマブを5mg/kg、週2回、腹腔内投与を行った。その結果、鉄分欠乏食(抗腫瘍作用補助剤)投与群では、鉄分含有食(対照)投与群と比較して、有意に癌細胞増殖が抑制され、かつ血管新生阻害剤を併用する事で相加的に高い増殖抑制効果が認められた(図5)。移植後39日目の各群における腫瘍の大きさを図2に示した。上記において、ベバシズマブは、血管内皮細胞増殖因子 (VEGF) に対するモノクローナル抗体である。VEGFの働きを阻害することにより、血管新生を抑えたり癌細胞の増殖や転移を抑制する作用を有することが確認された。
【実施例】
【0040】
(実験例1-6)抗腫瘍作用補助剤投与後の腫瘍における組織染色
実験例1-3と同手法により皮下腫瘍を回収し、癌細胞について、各種マーカーについて組織染色又は免疫組織染色を行った。
1)鉄分検出
フェロシアン化カリウムと塩酸で3価の鉄イオンをフェロシアン化鉄(ベルリン青)として検出した。
その結果、鉄分含有食(対照)投与群では癌細胞の間質に鉄の成分が認められたが、鉄分欠乏食(抗腫瘍作用補助剤)投与群では鉄成分は全く認められなかった(図7)。
【実施例】
【0041】
2)細胞増殖マーカーKi-67の検出
Ki-67は細胞の核で発現している蛋白で、細胞周期制御因子のサイクリン(cyclin)やCDK (Cyclin-dependent kinase)とは別に、いわゆる細胞増殖マーカーと称される細胞増殖関連蛋白である。Ki-67検出のために、標識した抗Ki-67抗体(Dako社)を用いて免疫組織化学染色を行った。
その結果、鉄分含有食(対照)投与群では鉄分欠乏食(抗腫瘍作用補助剤)投与群に比較してKi-67陽性細胞が多く認められ、Ki-67陽性率(labeling index)でも有意差が認められた(図7)。
(鉄分含有食 vs 鉄分欠乏食 = 0.211±0.035 vs 0.133±0.032; p=0.0459).
この事は鉄を欠乏させることで、細胞増殖が抑制されている事を示している。
【実施例】
【0042】
3)低酸素状態の検出
癌細胞内の低酸素状況を、ニトロイミダゾール化合物ピモニダゾール(pimonidazole )を用いて染色を行い、確認した。ピモニダゾールは、低酸素状態の細胞に結合する低酸素マーカーである。
その結果、鉄分含有食(対照)投与群ではピモニダゾールでほとんど染色されないのに対して、鉄分欠乏食(抗腫瘍作用補助剤)投与群では多くの部位で強く染色されており、鉄分欠乏食(抗腫瘍作用補助剤)投与群では組織が低酸素状態になっていると考えられた(図8)。
【実施例】
【0043】
4)血管新生状況の検出
血管新生のマーカーとなるCD31について確認した。CD31検出のために、標識した抗CD31抗体(Santa Cruz Biotechnology社)を用いて免疫組織染色を行った。
その結果、CD31免疫組織染色では、鉄分含有食(対照)投与群(図2C)に比較して鉄分欠乏食(抗腫瘍作用補助剤)投与群の癌細胞間質の血管周囲が強く染色され、血管新生の増強が示唆された(図8)。
【実施例】
【0044】
(実施例2)抗腫瘍作用補助剤(鉄キレート剤)
本発明の抗腫瘍作用補助剤の一例として、鉄キレート剤の効果について確認した。鉄キレート剤としてデフェラシロクス(Deferasirox)を用いた。
【実施例】
【0045】
(実験例2-1)鉄キレート剤の効果(in vitro)
ヒト肺腺癌由来細胞(A549)及びヒト非小細胞性肺癌由来細胞(H1299)を培養し、鉄キレート剤の抗腫瘍効果をin vitroにて確認した。各細胞を、24時間10%FCSを含む培養液で培養し、各濃度のデフェラシロクス(NOVARTIS社)を添加し、さらに24時間培養した。その後、細胞生存率、細胞周期における各細胞比率を確認し、さらに核蛋白及び培養上清について、HIF-1α及びVEGFの発現を確認した。
【実施例】
【0046】
上記の結果を図9~12に示した。鉄キレート剤投与により細胞増殖抑制効果が確認された(図9)。鉄キレート剤投与により各細胞においてG1停止(G1 arrest)を起こして細胞周期を止め、細胞増殖が抑制されていることが確認された(図10)。これにより、鉄キレート剤による細胞増殖抑制のメカニズムが確認された。次に、低酸素で誘導される細胞マーカーとして、HIF-1αの発現をウエスタンブロッティング法により確認した。抗体は、抗HIF-1α抗体(Cell signaling社)を用いた。HIF-1αは実験例1-4と同様に鉄キレート剤の濃度依存的に増加していることが確認された(図11)。また、VEGFをELISA kit(R&D Systems社)を用いて検出し、HIF-1αによりVEGFが誘導されていることが確認された(図12)。
【実施例】
【0047】
(実験例2-2)鉄キレート剤の効果(in vivo)
ヌードマウス20匹を用意し、ヒト肺腺癌由来細胞(A549)300万個/マウスを移植し、皮下腫瘍を作製した。移植後7日目より、対照群(生理食塩水投与群)とデフェラシロクス投与群(50mg/kg)の2群に分け、それぞれを週5回連続で投与した。それらの2群についてさらに血管新生阻害剤(Bevacizumab:ベバシズマブ)投与群と生理食塩液投与群の2群に分けた。腫瘍体積が約50mm3となった時点(移植後7日目)から、血管新生阻害剤投与群にはベバシズマブを5mg/kg、週2回、腹腔内投与を行った。その結果、鉄キレート剤は、癌細胞の増殖抑制作用を有し、更にベバシズマブと併用することで高い増殖抑制効果が認められた。この事は、鉄制限食のみならず鉄キレート剤を用いて体内鉄を減らしても同様にベバシズマブの効果を増強出来ることを示している(図13)。
【産業上の利用可能性】
【0048】
以上詳述したように、癌治療剤とは別に、本発明の抗腫瘍作用補助剤の提供により血清鉄を低減させる事で、癌細胞の増殖自体を抑制し、同時に血管新生が亢進する事が突き止められた。そこで、本発明の抗腫瘍作用補助剤と血管新生を標的とする癌治療剤(血管新生阻害剤)との組み合わせで非常に高い抗腫瘍効果が得られることが確認できた。血清鉄は臨床栄養剤及び/又は栄養調整食品として投与することによっても減らす事も可能である。薬による副作用を回避する事と、非常に高価な癌治療剤の複数使用を抑制する事で医療経済的にも優れている。また、現在、血管新生阻害薬が認可されている癌腫(大腸癌、非小細胞肺癌、海外では乳癌)に対して、その抗腫瘍効果を増強する可能性が高く、これらの患者数(毎年の死亡推計数は肺癌134万人、大腸癌50万人、乳癌40万人)から考えると、市場性も有望であると見込まれる。
図面
【図1】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図9】
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【図10】
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【図12】
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【図13】
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【図2】
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【図4】
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【図7】
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【図8】
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【図11】
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