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明細書 :哺乳類生物における選択的スプライシングの発現プロファイルおよび制御機構を明らかにするトランスジェニックレポーターシステム

発行国 日本国特許庁(JP)
公表番号 特表2013-529889 (P2013-529889A)
公報種別 特許公報(B2)
公表日 平成25年7月25日(2013.7.25)
特許番号 特許第5875009号 (P5875009)
登録日 平成28年1月29日(2016.1.29)
発行日 平成28年3月2日(2016.3.2)
発明の名称または考案の名称 哺乳類生物における選択的スプライシングの発現プロファイルおよび制御機構を明らかにするトランスジェニックレポーターシステム
国際特許分類 C12N  15/09        (2006.01)
C12Q   1/68        (2006.01)
FI C12N 15/00 ZNAA
C12Q 1/68 A
請求項の数または発明の数 12
全頁数 65
出願番号 特願2012-554135 (P2012-554135)
出願日 平成23年5月31日(2011.5.31)
国際出願番号 PCT/JP2011/003059
国際公開番号 WO2011/152043
国際公開日 平成23年12月8日(2011.12.8)
優先権出願番号 61/350,420
優先日 平成22年6月1日(2010.6.1)
優先権主張国 アメリカ合衆国(US)
審査請求日 平成26年4月28日(2014.4.28)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
発明者または考案者 【氏名】萩原 正敏
【氏名】武内 章英
個別代理人の代理人 【識別番号】100102978、【弁理士】、【氏名又は名称】清水 初志
【識別番号】100102118、【弁理士】、【氏名又は名称】春名 雅夫
【識別番号】100160923、【弁理士】、【氏名又は名称】山口 裕孝
【識別番号】100119507、【弁理士】、【氏名又は名称】刑部 俊
【識別番号】100142929、【弁理士】、【氏名又は名称】井上 隆一
【識別番号】100148699、【弁理士】、【氏名又は名称】佐藤 利光
【識別番号】100128048、【弁理士】、【氏名又は名称】新見 浩一
【識別番号】100129506、【弁理士】、【氏名又は名称】小林 智彦
【識別番号】100114340、【弁理士】、【氏名又は名称】大関 雅人
【識別番号】100114889、【弁理士】、【氏名又は名称】五十嵐 義弘
【識別番号】100121072、【弁理士】、【氏名又は名称】川本 和弥
審査官 【審査官】福間 信子
参考文献・文献 米国特許出願公開第2008/0095712(US,A1)
米国特許出願公開第2009/0286246(US,A1)
Proc Natl Acad Sci USA, 2008, vol.105, no.32, p.11218-11223
RNA, 2006, vol.12, p.1129-1141
細胞工学, 2010年1月, vol.29, no.2, p.161-167
Gene, 2008, vol.427, p.104-110
調査した分野 C12N 15/00-90
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
特許請求の範囲 【請求項1】
哺乳類多細胞生物における特定の遺伝子の相互排他的選択的スプライシングを検出するための方法であって、
(a)相互排他的選択的スプライシングを受ける該特定の遺伝子の3'側に少なくとも2種類の異なるレポーター遺伝子が異なる読み枠でタンデムに挿入され、かつ、該特定の遺伝子の5'側にN末端タグをコードするDNAが挿入されるように、該多細胞生物にDNA構築物を導入する段階であって、該異なるレポーター遺伝子の転写物それぞれが相互排他的選択的スプライシングによって生じる少なくとも2種類の異なる成熟mRNAにおけるエクソンのそれぞれとインフレームで融合するように、該レポーター遺伝子が挿入される、段階;および
(b)該レポーター遺伝子の発現によって、該多細胞生物における該特定の遺伝子の相互排他的選択的スプライシングを検出する段階
を含む、方法。
【請求項2】
被験化合物が特定の遺伝子の相互排他的選択的スプライシングに影響を及ぼすか否かを試験するための方法であって、
(a)相互排他的選択的スプライシングを受ける該特定の遺伝子の3'側に少なくとも2種類の異なるレポーター遺伝子が異なる読み枠でタンデムに挿入され、かつ、該特定の遺伝子の5'側にN末端タグをコードするDNAが挿入されるように、哺乳類多細胞生物にDNA構築物を導入する段階であって、該異なるレポーター遺伝子の転写物それぞれが相互排他的選択的スプライシングによって生じる少なくとも2種類の異なる成熟mRNAにおけるエクソンのそれぞれとインフレームで融合するように、該レポーター遺伝子が挿入される、段階;
(b)該多細胞生物を該被験化合物と接触させる段階;
(c)該レポーター遺伝子の発現によって、該多細胞生物における該特定の遺伝子の相互排他的選択的スプライシングを検出する段階;および
(d)該被験化合物と接触させていない対照における該レポーター遺伝子の発現と比べ、(c)で検出された該レポーター遺伝子の発現が変化したか否かを判定する段階
を含む、方法。
【請求項3】
特定の遺伝子の相互排他的選択的スプライシングに影響を及ぼす遺伝子領域を同定するための方法であって、
(a)相互排他的選択的スプライシングを受ける該特定の遺伝子の3'側に少なくとも2種類の異なるレポーター遺伝子が異なる読み枠でタンデムに挿入され、かつ、該特定の遺伝子の5'側にN末端タグをコードするDNAが挿入されるように、哺乳類多細胞生物にDNA構築物を導入する段階であって、該異なるレポーター遺伝子の転写物それぞれが相互排他的選択的スプライシングによって生じる少なくとも2種類の異なる成熟mRNAにおけるエクソンのそれぞれとインフレームで融合するように、該レポーター遺伝子が挿入される、段階;
(b)該多細胞生物を変異原で処理する段階;
(c)該レポーター遺伝子の発現によって、該多細胞生物における該特定の遺伝子の相互排他的選択的スプライシングを検出する段階;
(d)該変異原処理に供されていない対照における該レポーター遺伝子の発現と比べ、(c)で検出された該レポーター遺伝子の発現が変化した個体を選択する段階;および
(e)該個体における突然変異した遺伝子領域を同定する段階
を含む、方法。
【請求項4】
特定の遺伝子の相互排他的選択的スプライシングに影響を及ぼす該特定の遺伝子内の領域を同定するための方法であって、
(a)突然変異が導入されておりかつ相互排他的選択的スプライシングを受ける該特定の遺伝子の3'側に、少なくとも2種類の異なるレポーター遺伝子が異なる読み枠でタンデムに挿入され、かつ、該特定の遺伝子の5'側にN末端タグをコードするDNAが挿入されるように、哺乳類多細胞生物にDNA構築物を導入する段階であって、該異なるレポーター遺伝子の転写物それぞれが相互排他的選択的スプライシングによって生じる少なくとも2種類の成熟mRNAにおけるエクソンのそれぞれとインフレームで融合するように、該レポーター遺伝子が挿入される、段階;
(b)該レポーター遺伝子の発現によって、該多細胞生物における該特定の遺伝子の相互排他的選択的スプライシングを検出する段階;および
(c)該特定の遺伝子に突然変異が導入されていない対照における該レポーター遺伝子の発現と比べ、(b)で検出された該レポーター遺伝子の発現が変化したか否かを判定する段階
を含む、方法。
【請求項5】
特定の遺伝子が1つのプロモーターの調節下で機能するように該特定の遺伝子が該プロモーターと連結されており、該プロモーターが組織特異的プロモーターおよび発生段階特異的プロモーターのいずれかである、請求項1~4のいずれか一項記載の方法。
【請求項6】
多細胞生物がマウスに由来する、請求項1~4のいずれか一項記載の方法。
【請求項7】
特定の遺伝子がFGFR2である、請求項1~4のいずれか一項記載の方法。
【請求項8】
レポーター遺伝子が蛍光タンパク質をコードする遺伝子である、請求項1~4のいずれか一項記載の方法。
【請求項9】
選択的スプライシングパターンを可視化するためのDNAベクターを調製するため
(1)関心対象の遺伝子に含まれるエクソンaおよびbを有する増幅されたDNA領域のDNA構築物を調製する段階;
(2)該DNA構築物の両端にattBを付加する段階;
(3)上記(2)のDNA構築物と、選択用遺伝子およびタンデムに配置されたattPを有するドナーベクターとの組換え体を得る段階;
(4)上記(3)のDNA構築物上のエクソンaにフレームシフト突然変異を導入する段階;
(5)下記(i)~(iii)の組み換え体:
(i)上記(4)のDNA構築物
(ii)選択用遺伝子と、2種類のレポーター遺伝子が連結された構造を有するDNAの両端に互いに対抗する向きに配置されたattLを有するDNAとを含む、DNAベクター
(iii)3'カセットDNAと、プロモーターと、選択用遺伝子を有するDNAの両端に互いに対抗する向きに配置されたattRを有するDNAとを含む、DNAベクター
を得る段階
さらに含む、請求項1~4のいずれか一項記載の方法。
【請求項10】
関心対象の遺伝子がFGFR2遺伝子である、請求項9記載の方法。
【請求項11】
エクソンaおよびbがFGFR2遺伝子のエクソン8および9である、請求項10記載の方法。
【請求項12】
レポーター遺伝子が蛍光タンパク質をコードする遺伝子である、請求項911のいずれか一項記載の方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、哺乳類多細胞生物における選択的スプライシングを検出するための方法、ならびに哺乳類多細胞生物における選択的スプライシングに影響を及ぼす物質および遺伝子領域を同定するための方法などに関する。
【0002】
優先権
本発明は、2010年6月1日に提出された米国特許出願第61/350,420号の恩典を主張し、その内容はすべて、参照により本明細書に組み入れられる。
【背景技術】
【0003】
ゲノムプロジェクトにより、後生動物は限られた数の遺伝子から極めて多様なプロテオームを生み出すことが示された。この知見は、単一の遺伝子による構造的および機能的に異なる複数のタンパク質アイソフォームの生成を可能にする、選択的スプライシングの重要性を強調するものである。さらに、スプライシング感受性マイクロアレイまたはディープシーケンサーを用いた最近のトランスクリプトーム解析により、選択的スプライシングはヒトにおいて複数のエクソンを有する遺伝子の90%超で起こること(非特許文献1)、およびこれらの事例の60%以上は組織特異的かつ細胞型特異的な様式で制御されること(非特許文献2)が、明らかになっている。選択的スプライシングは、隣接エクソンのスプライシングを促進または抑制する制御タンパク質とともに補助的シスエレメントによって制御されるが(非特許文献3、4)、限られた数の制御因子によって多数の遺伝子がさまざまな組織特異的様式で制御される機序は未だに不明である。
【0004】
哺乳動物において、線維芽細胞増殖因子受容体2(FGFR2)は、最も特徴が明らかにされている遺伝子の1つであり、相互排他的選択的スプライシングによって2つのアイソフォームが産生される。エクソン8(IIIbとも呼ばれる)アイソフォームは上皮組織で特異的に発現し、一方、エクソン9(またはIIIc)アイソフォームは非上皮性組織または間葉組織において選択される(非特許文献5、6)。2つのスプライスアイソフォームの構造的な違いはリガンド-受容体結合の特異性に顕著な影響を及ぼし(非特許文献7、8、9)、マウスにおける発生にはエクソン切り替えが必須であることが示されている(非特許文献10、11)。FGFR2の選択的エクソンのいずれかを正または負の方向に独立に制御する因子がいくつか同定されている。エクソン8の制御に関して、Del Gatto-Konczakらは、ヘテロ核リボヌクレオタンパク質hnRNP A1がエクソン8(K-SAMエクソンとも呼ばれる)にESS(エクソン性スプライシングサイレンサー)として結合し、その包含を抑制することを見いだした(非特許文献12)。Carstensらは、ポリピリミジントラクト結合タンパク質(PTB)が、ISS-1およびISS-2(イントロン性スプライシングサイレンサー-1および2)を通してエクソン8包含を抑制することを見いだした(非特許文献13)。Warzechaらは近年、上皮特異的なエクソン8包含活性化因子としてRBM35aおよびRBM35bをクローニングし、それぞれ上皮性スプライシング制御タンパク質1および2(ESRP1およびESPR2)と再命名した(非特許文献14)。エクソン9の制御に関して、Chenらは、Tra2βがエクソン9の選択を抑制することを見いだした(非特許文献15)。Baraniakらは、Fox2がイントロン8中のUGCAUG配列との結合を通してエクソン9の選択を抑制することを報告した(非特許文献16)。Hovhannisyanらは、hnRNP MがISS-3と結合して、エクソン9の包含を抑制することを見いだした(非特許文献17)。Maugerらは、hnRNP HおよびFがFox2と相互作用して、エクソン9包含を抑制することを示した(非特許文献18)。また、イントロン9中のISE(イントロン性スプライシングエンハンサー)を通したエクソン9の包含については、未知のエンハンサーの存在も推測されている(非特許文献14)。
【先行技術文献】
【0005】

【非特許文献1】Pan Q, Shai O, Lee LJ, Frey BJ, Blencowe BJ (2008) Deep surveying of alternative splicing complexity in the human transcriptome by high-throughput sequencing. Nat Genet 40: 1413-1415
【非特許文献2】Wang ET, Sandberg R, Luo S, Khrebtukova I, Zhang L, et al. (2008) Alternative isoform regulation in human tissue transcriptomes. Nature 456: 470-476
【非特許文献3】Matlin AJ, Clark F, Smith CW (2005) Understanding alternative splicing: towards a cellular code. Nat Rev Mol Cell Biol 6: 386-398
【非特許文献4】Black DL (2003) Mechanisms of alternative pre-messenger RNA splicing. Annu Rev Biochem 72: 291-336
【非特許文献5】Gilbert E, Del Gatto F, Champion-Arnaud P, Gesnel MC, Breathnach R (1993) Control of BEK and K-SAM splice sites in alternative splicing of the fibroblast growth factor receptor 2 pre-mRNA. Mol Cell Biol 13: 5461-5468
【非特許文献6】Savagner P, Valles AM, Jouanneau J, Yamada KM, Thiery JP (1994) Alternative splicing in fibroblast growth factor receptor 2 is associated with induced epithelial-mesenchymal transition in rat bladder carcinoma cells. Mol Biol Cell 5: 851-862
【非特許文献7】Ornitz DM, Xu J, Colvin JS, McEwen DG, MacArthur CA, et al. (1996) Receptor specificity of the fibroblast growth factor family. J Biol Chem 271: 15292-15297
【非特許文献8】Eswarakumar VP, Lax I, Schlessinger J (2005) Cellular signaling by fibroblast growth factor receptors. Cytokine Growth Factor Rev 16: 139-149
【非特許文献9】Zhang X, Ibrahimi OA, Olsen SK, Umemori H, Mohammadi M, et al. (2006) Receptor specificity of the fibroblast growth factor family. The complete mammalian FGF family. J Biol Chem 281: 15694-15700
【非特許文献10】De Moerlooze L, Spencer-Dene B, Revest JM, Hajihosseini M, Rosewell I, et al. (2000) An important role for the IIIb isoform of fibroblast growth factor receptor 2 (FGFR2) in mesenchymal-epithelial signalling during mouse organogenesis. Development 127: 483-492
【非特許文献11】Eswarakumar VP, Monsonego-Ornan E, Pines M, Antonopoulou I, Morriss-Kay GM, et al. (2002) The IIIc alternative of Fgfr2 is a positive regulator of bone formation. Development 129: 3783-3793
【非特許文献12】Del Gatto-Konczak F, Olive M, Gesnel MC, Breathnach R (1999) hnRNP A1 recruited to an exon in vivo can function as an exon splicing silencer. Mol Cell Biol 19: 251-260
【非特許文献13】Carstens RP, Wagner EJ, Garcia-Blanco MA (2000) An intronic splicing silencer causes skipping of the IIIb exon of fibroblast growth factor receptor 2 through involvement of polypyrimidine tract binding protein. Mol Cell Biol 20: 7388-7400
【非特許文献14】Warzecha CC, Sato TK, Nabet B, Hogenesch JB, Carstens RP (2009) ESRP1 and ESRP2 are epithelial cell-type-specific regulators of FGFR2 splicing. Mol Cell 33: 591-601
【非特許文献15】Chen X, Huang J, Li J, Han Y, Wu K, et al. (2004) Tra2betal regulates P19 neuronal differentiation and the splicing of FGF-2R and GluR-B minigenes. Cell Biol Int 28: 791-799
【非特許文献16】Baraniak AP, Chen JR, Garcia-Blanco MA (2006) Fox-2 mediates epithelial cell-specific fibroblast growth factor receptor 2 exon choice. Mol Cell Biol 26: 1209-1222
【非特許文献17】Hovhannisyan RH, Carstens RP (2007) Heterogeneous ribonucleoprotein m is a splicing regulatory protein that can enhance or silence splicing of alternatively spliced exons. J Biol Chem 282: 36265-36274
【非特許文献18】Mauger DM, Lin C, Garcia-Blanco MA (2008) hnRNP H and hnRNP F complex with Fox2 to silence fibroblast growth factor receptor 2 exon IIIc. Mol Cell Biol 28: 5403-5419
【発明の概要】
【0006】
技術的課題
本発明の1つの目的は、哺乳類生物における新たな選択的スプライシング・レポーターシステムを開発すること、ならびに、該選択的スプライシング・レポーターシステムを利用して、哺乳類多細胞生物における選択的スプライシングパターンをより正確に検出するための方法、ならびに哺乳類多細胞生物における選択的スプライシングに影響を及ぼす物質および遺伝子領域を効率的に同定するための方法などを提供することである。
【0007】
課題の解決
プロテオームの組織特異的多様性を生み出すにはmRNA前駆体(pre-mRNA)の選択的スプライシングが必須であるため、発生過程または組織特異的機能を理解するにはその制御機構を解明することが不可欠である。本発明者らは線虫において、選択的エクソンの相互排他的選択の組織特異的制御についてトランスジェニックスプライシング・レポーターを用いて詳細に調べたが、その理由は、これが選択的スプライシングの典型的な分子機構に当たると仮説を立てたためである。これまで、相互排他的スプライシングの制御は、選択的エクソンのいずれかを個別に増強または抑制する複数の制御因子の均衡の結果として説明されてきた。しかし、この「均衡」モデルには、いくつかの候補からの唯一の適切なエクソンの選択をどのように確実に行うのか、およびそれらをどのように切り替えるのかという点に関して疑問が残っている。これらの疑問を解明するために、本発明者らは、線維芽細胞増殖因子受容体2(FGFR2)遺伝子をモデルとして用いる、哺乳動物用の独自の2色蛍光スプライシング・レポーターシステムを作製した。このスプライシング・レポーターを用いることにより、本発明者らは、重要な制御因子が2つの相互排他的エクソンの順序づけられたスプライス部位認識を変更し、最終的に単一エクソン選択およびそれらの明確な切り替えを確実にする「スイッチ様」機構によってFGFR2遺伝子が制御されることを実証した。また、この知見により、組織特異的に発現されるRNA結合タンパク質と広範囲に発現されるRNA結合タンパク質との組み合わせによって特定の遺伝子の選択的スプライシングが組織特異的な様式で制御される、進化的に保存されている「スプライス暗号」も解明された。これらの知見は、スプライシングを受けた多数の遺伝子が限られた数の制御因子によってさまざまな組織特異的様式でどのように制御されるのかを理解するための、最終的には発生過程または組織特異的な機能を理解するための、重大な手がかりを与える。
【0008】
本発明は、本発明者らによる上記の経験または発見に基づくものであり、上記の課題を解決するための手段は、以下の通りである。具体的には、
哺乳類多細胞生物における特定の遺伝子の選択的スプライシングを検出するための本発明の第一の方法は、
(a)選択的スプライシングを受ける該特定の遺伝子に少なくとも2種類の異なるレポーター遺伝子が挿入されるように、該哺乳類多細胞生物にDNA構築物を導入する段階であって、該異なるレポーター遺伝子の転写物それぞれが選択的スプライシングによって生じる少なくとも2種類の異なる成熟mRNAのそれぞれと融合するように、該レポーター遺伝子が挿入される、段階;および
(b)該レポーター遺伝子の発現によって、該哺乳類多細胞生物における該特定の遺伝子の選択的スプライシングを検出する段階
を含む。
【0009】
被験化合物が特定の遺伝子の選択的スプライシングに影響を及ぼすか否かを試験するための本発明の第一の方法は、
(a)選択的スプライシングを受ける該特定の遺伝子に少なくとも2種類の異なるレポーター遺伝子が挿入されるように、哺乳類多細胞生物にDNA構築物を導入する段階であって、該異なるレポーター遺伝子の転写物それぞれが選択的スプライシングによって生じる少なくとも2種類の異なる成熟mRNAのそれぞれと融合するように、該レポーター遺伝子が挿入される、段階;
(b)該哺乳類多細胞生物を該被験化合物と接触させる段階;
(c)該レポーター遺伝子の発現によって、該哺乳類多細胞生物における該特定の遺伝子の選択的スプライシングを検出する段階;および
(d)該被験化合物と接触させていない対照における該レポーター遺伝子の発現と比べ、(c)で検出された該レポーター遺伝子の発現が変化したか否かを判定する段階
を含む。
【0010】
特定の遺伝子の選択的スプライシングに影響を及ぼす遺伝子領域を同定するための本発明の第一の方法は、
(a)選択的スプライシングを受ける該特定の遺伝子に少なくとも2種類の異なるレポーター遺伝子が挿入されるように、哺乳類多細胞生物にDNA構築物を導入する段階であって、該異なるレポーター遺伝子の転写物それぞれが選択的スプライシングによって生じる少なくとも2種類の異なる成熟mRNAのそれぞれと融合するように、該レポーター遺伝子が挿入される、段階;
(b)該哺乳類多細胞生物を変異原で処理する段階;
(c)該レポーター遺伝子の発現によって、該哺乳類多細胞生物における該特定の遺伝子の選択的スプライシングを検出する段階;
(d)該変異原処理に供されていない対照における該レポーター遺伝子の発現と比べ、(c)で検出された該レポーター遺伝子の発現が変化した個体を選択する段階;および
(e)該個体における突然変異した遺伝子領域を同定する段階
を含む。
【0011】
特定の遺伝子の選択的スプライシングに影響を及ぼす該特定の遺伝子内の領域を同定するための本発明の第一の方法は、
(a)突然変異が導入されておりかつ選択的スプライシングを受ける該特定の遺伝子に、少なくとも2種類の異なるレポーター遺伝子が挿入されるように、哺乳類多細胞生物にDNA構築物を導入する段階であって、該異なるレポーター遺伝子の転写物それぞれが選択的スプライシングによって生じる少なくとも2種類の成熟mRNAのそれぞれと融合するように、該レポーター遺伝子が挿入される、段階;
(b)該レポーター遺伝子の発現によって、該哺乳類多細胞生物における該特定の遺伝子の選択的スプライシングを検出する段階;および
(c)該特定の遺伝子に突然変異が導入されていない対照における該レポーター遺伝子の発現と比べ、(b)で検出された該レポーター遺伝子の発現が変化したか否かを判定する段階
を含む。
【0012】
哺乳類多細胞生物における特定の遺伝子の選択的スプライシングを検出するための本発明の第二の方法は、
(a)該哺乳類多細胞生物にDNA構築物の組み合わせを導入する段階であって、該DNA構築物中で、選択的スプライシングを受ける該特定の遺伝子にレポーター遺伝子が挿入され、かつ、該DNA構築物の組み合わせが、以下の条件(i)~(iv):
(i)各DNA構築物に挿入されるレポーター遺伝子は互いに異なり、
(ii)各DNA構築物中で、該レポーター遺伝子の転写物が選択的スプライシングによって生じる複数の成熟mRNAと融合するように、該レポーター遺伝子は該特定の遺伝子に挿入され、
(iii)各DNA構築物から選択的スプライシングによって生じる該複数の成熟mRNAのうちただ1つの成熟mRNAのみにおいて、該レポーター遺伝子の転写物部分が正しい読み枠で翻訳され、かつ
(iv)選択的スプライシングパターンの中から特定のスプライシングが選択された場合にのみ各DNA構築物において正しい読み枠での翻訳が誘導され、かつ、該正しい読み枠での翻訳を誘導する特定のスプライシングが各DNA構築物によって異なる
のすべてを満たす、段階;ならびに
(b)該レポーター遺伝子の発現によって、該哺乳類多細胞生物における該特定の遺伝子の選択的スプライシングを検出する段階
を含む。
【0013】
被験化合物が特定の遺伝子の選択的スプライシングに影響を及ぼすか否かを試験するための本発明の第二の方法は、
(a)哺乳類多細胞生物にDNA構築物の組み合わせを導入する段階であって、該DNA構築物中で、選択的スプライシングを受ける該特定の遺伝子にレポーター遺伝子が挿入され、かつ、該DNA構築物の組み合わせが以下の条件(i)~(iv):
(i)各DNA構築物に挿入されるレポーター遺伝子は互いに異なり、
(ii)各DNA構築物中で、該レポーター遺伝子の転写物が選択的スプライシングによって生じる複数の成熟mRNAと融合するように、該レポーター遺伝子は該特定の遺伝子に挿入され、
(iii)各DNA構築物から選択的スプライシングによって生じる該複数の成熟mRNAのうちただ1つの成熟mRNAのみにおいて、該レポーター遺伝子の転写物部分が正しい読み枠で翻訳され、かつ
(iv)選択的スプライシングパターンの中から特定のスプライシングが選択された場合にのみ各DNA構築物において正しい読み枠での翻訳が誘導され、かつ、該正しい読み枠での翻訳を誘導する特定のスプライシングが各DNA構築物によって異なる
のすべてを満たす、段階;
(b)該哺乳類多細胞生物を該被験化合物と接触させる段階;
(c)該レポーター遺伝子の発現によって、該哺乳類多細胞生物における該特定の遺伝子の選択的スプライシングを検出する段階;ならびに
(d)該被験化合物と接触させていない対照における該レポーター遺伝子の発現と比べ、(c)で検出された該レポーター遺伝子の発現が変化したか否かを判定する段階
を含む。
【0014】
特定の遺伝子の選択的スプライシングに影響を及ぼす遺伝子領域を同定するための本発明の第二の方法は、
(a)哺乳類多細胞生物にDNA構築物の組み合わせを導入する段階であって、該DNA構築物中で、選択的スプライシングを受ける該特定の遺伝子にレポーター遺伝子が挿入され、かつ、該DNA構築物の組み合わせが以下の条件(i)~(iv):
(i)各DNA構築物に挿入されるレポーター遺伝子は互いに異なり、
(ii)各DNA構築物中で、該レポーター遺伝子の転写物が選択的スプライシングによって生じる複数の成熟mRNAと融合するように、該レポーター遺伝子は該特定の遺伝子に挿入され、
(iii)各DNA構築物から選択的スプライシングによって生じる該複数の成熟mRNAのうちただ1つの成熟mRNAのみにおいて、該レポーター遺伝子の転写物部分が正しい読み枠で翻訳され、かつ
(iv)選択的スプライシングパターンの中から特定のスプライシングが選択された場合にのみ各DNA構築物において正しい読み枠での翻訳が誘導され、かつ、該正しい読み枠での翻訳を誘導する特定のスプライシングが各DNA構築物によって異なる
のすべてを満たす、段階;
(b)該哺乳類多細胞生物を変異原で処理する段階;
(c)該レポーター遺伝子の発現によって、該哺乳類多細胞生物における該特定の遺伝子の選択的スプライシングを検出する段階;
(d)該変異原処理に供されていない対照における該レポーター遺伝子の発現と比べ、(c)で検出された該レポーター遺伝子の発現が変化した個体を選択する段階;ならびに
(e)該個体における突然変異した遺伝子領域を同定する段階
を含む。
【0015】
特定の遺伝子の選択的スプライシングに影響を及ぼす該特定の遺伝子内の領域を同定するための本発明の第二の方法は、
(a)哺乳類多細胞生物にDNA構築物の組み合わせを導入する段階であって、該DNA構築物中で、突然変異が導入されておりかつ選択的スプライシングを受ける該特定の遺伝子にレポーター遺伝子が挿入され、該DNA構築物の組み合わせが以下の条件(i)~(iv):
(i)各DNA構築物に挿入されるレポーター遺伝子は互いに異なり、
(ii)各DNA構築物中で、該レポーター遺伝子の転写物が選択的スプライシングによって生じる複数の成熟mRNAと融合するように、該レポーター遺伝子は該特定の遺伝子に挿入され、
(iii)各DNA構築物から選択的スプライシングによって生じる該複数の成熟mRNAのうちただ1つの成熟mRNAのみにおいて、該レポーター遺伝子の転写物部分が正しい読み枠で翻訳され、かつ
(iv)選択的スプライシングパターンの中から特定のスプライシングが選択された場合に各DNA構築物において正しい読み枠での翻訳が誘導され、かつ、該正しい読み枠での翻訳を誘導する特定のスプライシングが各DNA構築物によって異なる
のすべてを満たす、段階;
(b)該レポーター遺伝子の発現によって、該哺乳類多細胞生物における該特定の遺伝子の選択的スプライシングを検出する段階;ならびに
(c)該特定の遺伝子に突然変異が導入されていない対照における該レポーター遺伝子の発現と比べ、(b)で検出された該レポーター遺伝子の発現が変化したか否かを判定する段階
を含む。
【0016】
本発明は、従来の課題を解決することができ、上述の目的を達成することができ、かつ、哺乳類多細胞生物における選択的スプライシングパターンを検出するための方法、哺乳類多細胞生物における選択的スプライシングに影響を及ぼす物質および遺伝子領域を効率的に同定するための方法などを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】蛍光スプライシング・レポーターによるスプライシングイベントの単細胞での検出を示す。全体像:蛍光選択的スプライシング・レポーターミニ遺伝子の構築。
【図2】蛍光レポーターミニ遺伝子および予想されるmRNAの模式的構造を示す。(A、B)相互排他的エクソン(A)およびカセットエクソン(B)用の2構築物型蛍光選択的スプライシング・クローニングレポーターミニ遺伝子。(C、D)カセットエクソン(C)および相互排他的エクソン(D)用の1構築物型蛍光選択的スプライシング・クローニングレポーターミニ遺伝子。四角枠はエクソンを表す。CE、カセットエクソン。解析対象の選択的エクソンは黒で表す。GFP、RFPおよびGSTのcDNAは灰色で示す。白丸、菱形および二重矢尻はそれぞれ、人為的な翻訳開始コドン、終止コドンおよび人為的なフレームシフトを表す。attB部位は矢印で示す。予想されるmRNAのオープンリーディングフレームには色付けしている。
【図3】MultiSite Gatewayシステムを利用する「2断片」組換え反応による「発現」クローンの構築を示す。(A)「BP」反応による「エントリー」ベクター中の関心対象のDNA断片のクローニング。attBに隣接するPCR産物および2つのMultiSite Gateway「ドナー」ベクターを別々の「BP」組換え反応に用いて、一方がattL1部位およびattR5部位を有し、もう一方がattL5部位およびattL2部位を有する、2つの「エントリー」クローンを作製する。att部位はパリンドローム性でなく、向きは1つである。矢尻の方向は、挿入物に対する各att部位の向きを明示する;矢尻が挿入物の方を向いていない場合には、attB5部位またはattP5部位に「r」を付している。[これは左のパネルではattB5rまたはattP5rとして表す]。(B)「LR」反応による「発現」クローンの構築。2つの「エントリー」クローンおよび1つの「デスティネーション」ベクターを「LR」組換え反応に併せて用いて、2つのDNA断片を含む「発現」クローンを作製する。
【図4】解析の例を示す。(A、B)C.エレガンス(C. elegans)における相互排他的選択的スプライシングの可視化。(A)3つの相互排他的エクソン(a、bおよびc)の選択プロファイルをモニターするための3つ組のレポーターミニ遺伝子の模式的構造。プロモーター、構成的第1イントロンおよび3'カセットは「デスティネーション」ベクターによって設けられた。2つの終止コドン(菱形)が、各構築物中の選択的エクソンのうち2つに導入されている。attB部位は矢印で示す。(B)(A)のミニ遺伝子を保有する蛍光選択的スプライシング・レポーター線虫の顕微鏡写真。Venus(緑色)、mRFP(赤色)およびECFP(青色)の発現は組織特異性を示す。(C、D)ウイルス誘導性イントロン保持の可視化。(C)選択的に保持されたイントロンのスプライシングをモニターするためのレポーターミニ遺伝子およびそれに由来するmRNAの模式的構造。選択的イントロンが正しくスプライシングされた場合にのみ、RFPタンパク質が産生される。(D)非感染(左)およびVenus-HSV-2感染(右)HeLa細胞の顕微鏡写真。非感染細胞はいずれもRFPを発現するが(マゼンダ色)、Venus-HSV-2に感染した細胞(緑色)ではRFP発現が遮断される。(E、F)マウスにおける組織特異的選択的スプライシングの可視化。(E)相互排他的選択的エクソンの選択をモニターするためのレポーターミニ遺伝子およびそれに由来するmRNAの模式的構造。エクソンaのみが選択されるとGFPタンパク質が産生され、エクソンbのみが選択されるとRFPが産生される。(F)マウス胚のE14.5時点での顕微鏡写真。(左)GFPの発現は表皮で検出される(矢尻)。(右)RFPの発現は神経系および間葉組織で検出される。
【図5】図1~4で用いている各記号の意味を示す。
【図6】FGFR2スプライシング・レポーターベクターの構築およびそれらの発現パターンを示す。(A)FGFR2スプライシング・レポーターベクターの模式図。エクソン7から10までを含むマウスFGFR2のゲノム断片を増幅して、CAGGSプロモーターおよび読み枠の異なるRFP-EGFPを含むレポーターベクター中に導入した。改変グルタチオン-S-トランスフェラーゼ遺伝子(「G」と表示)を、エクソン7の前にインフレームで挿入した。選択的スプライシング制御下にあるレポーターに由来するmRNAの模式図も示す;数字は読み枠を表す。(B)スプライシング・レポーターのインビトロでの発現パターン。レポーターベクターを、異なる細胞型特異性を有する2つのラット前立腺癌細胞株AT-3およびDT-3に導入した。スケール=200μm。(C)スプライシング・レポーターのインビボでの発現パターン。トランスジェニックレポーターマウス胚のE14.5時点での蛍光画像。Tg(+)はレポーターベクターを保有する胚であり、Tg(-)はベクターを有しないその同腹仔の1つである。Tg(+)における矢尻は、ひげ(上方の矢尻)および肢端(下方の矢尻)のパターンを有するEGFPシグナルを示しており、それらを両方とも拡大して、それぞれ左上隅および右下隅に白い矩形によって表示する(スケール=1mm)。(D)E16.5時点のトランスジェニックレポーターマウス胚からの切片。各パネルは表記の組織からの切片を示しており、上方のものはTg(+)由来、下方のものはTg(-)由来である。EGFPシグナルを発現する部分は白の矢印で示す(スケール=100μm)。
【図7】3'スプライス部位の不均衡な配列が相互排他的エクソン選択のために必須であることを示す。(A)エクソン8および9上の3'スプライス部位突然変異に関する模式図。大文字はイントロンであり、小文字はエクソン配列である。黒地に白文字は、3'スプライス部位およびポリピリミジン部分における保存的コンセンサス配列とのミスマッチを示しており、下線部は突然変異した配列を示す。「プライマー」と記した灰色の矢印は、RT-PCRで増幅された位置を表す。(B)表記のベクターをトランスフェクトしたAT-3およびDT-3細胞からのRT-PCR。エクソン9を含むPCR産物を一義的に切断するEcoRVでスプライス産物を消化した。各バンドを特定し、スプライス産物の模式図とともに示す。矢尻は、シーケンシングによって確認した非特異的PCR産物を示す。星印は、エクソン8およびエクソン9の二重包含によって生じるスプライス産物を示す。棒グラフは各スプライシング産物の量を示しており、これは3回の独立した実験による算出値に基づく;各スプライス産物に関する平均値を、各々のカラムにおいて、SD(標準誤差)を示すエラーバーとともに示す。
【図8】エクソン9の3'スプライス部位の破壊によるエクソン8選択の促進を示す。(A)エクソン9上の3'および5'スプライス部位突然変異の模式図。大文字はイントロンであり、小文字はエクソン配列であり、黒地に白文字は、突然変異した配列を示す。(B)表記のベクターが導入されたAT-3細胞からのRT-PCR。矢尻は、エクソン9の内部の潜在的5'スプライス部位を用いた異常スプライス産物を示す。棒グラフは、各スプライシング産物の量を表しており、3回の独立した実験による算出値に基づく;各スプライス産物に関する平均値を、各々のカラムにおいて、SD(標準誤差)を示すエラーバーとともに示す。(C)インビトロでのスプライス部位認識アッセイの結果。エクソン9に関する模式図では、スプライス部位突然変異の位置を「x」として示す。「X結合」は、インビトロでのスプライシング反応後の試料におけるUV誘発性架橋の有無を示す。「U1オリゴ」および「U2オリゴ」は、U1またはU2に対する相補的オリゴ体を加えた、RNアーゼHによるRNA試料の消化を表す。星印付きの矢尻で示すバンドは、それが5'ss突然変異プローブ中で検出されかつU1オリゴの存在下で消化されたことから、エクソン9内部の潜在的5'スプライス部位に結合するU1と架橋結合したプローブである可能性がある。
【図9】エクソン9認識に関するサイレンシングエレメントの同定を示す。(A)エクソン9の上流に位置するUGCAUGおよびISE/ISS-3に対するシス突然変異実験の模式図。黒地に白文字は、突然変異した配列または欠失を表す。(B)表記のベクターを導入したAT-3細胞からのRT-PCR。棒グラフは各スプライシング産物の量を示しており、これは3回の独立した実験による算出値に基づく;各スプライス産物に関する平均値を、各々のカラム内に、SD(標準誤差)を示すエラーバーとともに示す。(C)内因性FGFR2、Fox1、Fox2、ESRP1およびESRP2の増幅を示す、AT-3およびDT-3細胞からのRT-PCR。ESRP1における矢尻は、シーケンシングによって確認された2つのスプライスアイソフォームに対応する。
【図10】エクソン9の抑制を通してエクソン8への切り替えを促進する、FoxおよびESRPを示す。(A)Fox2 siRNAの存在下または非存在下で野生型レポーターおよび表記のcDNA発現ベクターをトランスフェクトしたHeLa細胞からのRT-PCR。棒グラフは各スプライシング産物の量を示す。(B)野生型レポーターを表記のcDNA発現ベクターとともにトランスフェクトしたHeLa細胞の蛍光顕微鏡画像(スケールバー=200μm)。(C)インビトロでのスプライス部位認識アッセイの結果。エクソン9のRNAプローブに関する模式図は、UGCAUGおよびISE/ISS-3の位置を示す。星印は、エクソン9内部の潜在的5'スプライス部位に結合するU1と架橋結合したプローブを示す。
【図11】スプライシング・レポーターマウス胚におけるFoxおよびESRPの発現パターンを示す。E16.5時点のトランスジェニックレポーター胚由来の切片。EGFPシグナルはエクソン8のスプライシングパターンを示し、インサイチューハイブリダイゼーションは連続切片を用いて表記のプローブにより行った。EGFPシグナルは白色の矢印で示す。mRNA局在を示す紫色のシグナルは矢印で示しており、核はメチルグリーンで対比染色した(スケールバー=100μm)。
【図12】FGFR2遺伝子の組織特異的スプライシング制御のモデルを示す。(A)「ナイトフォーク」制御モデル:非上皮性組織または間葉組織では、エクソン9がエクソン8よりも強い3'スプライス部位を有するため、「一次」エクソンとして選択される(「一次」エクソンが選ばれる「デフォルト」選択)。上皮組織では、「重要な制御因子」が、エクソン認識に関するその3'スプライス部位依存性を利用してエクソン9を抑制し、「二次」エクソンへの切り替えを引き起こす(「二次」エクソンが選ばれる「選択的」選択)。順序づけられたスプライス部位認識を組織特異的様式で変更することによって、少数の「重要な制御因子」が2つの相互排他的エクソンを調節可能であり、これは、チェスの駒がルークへの攻めとキングへの王手かけを同時に行うことができるのと似た様式である。(B)線虫において、線虫のFGFR相同遺伝子であるegl-15の相互排他的スプライシングは、広範囲に発現されるFox-1/ASD-1ファミリーと筋特異的RNA結合モチーフタンパク質(RBM)であるSUP-12(線虫mRBM24相同体)との協調によって制御されており、これらは選択的エクソン5Bの包含を抑制するように一緒に作用して、エクソン5Aの筋特異的発現を促進する。哺乳類FGFR2の場合には、Foxファミリーが組織特異的因子ESRP(RBM35aおよびb)と協働してエクソン9の選択的包含を抑制し、かつエクソン8の上皮組織特異的発現を促進する。
【図13】UGCAUGおよびISE/ISS-3を介してエクソン9を抑制することによってエクソン切り替えを促進する、FoxおよびESRPを示す。Fox2 siRNAの存在下または非存在下で表記の野生型またはシス突然変異レポーターベクターならびにFox2および/またはESRP1発現ベクターをトランスフェクトしたHeLa細胞からのRT-PCR。Fox2をUGCAUG部位突然変異レポーターとともにトランスフェクトした場合には、Fox2がエクソン8包含を促進する効果は失われた(図13、レーン7)。ESRP1の過剰発現は依然としてUGCAUG突然変異レポーターのエクソン切り替えを促進していたが、野生型レポーター(図13、レーン3)と比較してエクソン8選択の比率は幾分低下した(図13、レーン8)。その反対に、ISE/ISS-3を突然変異させた場合には、ESRPがエクソン切り替えを促進する効果は著しく低下し(図13、レーン13)、Fox2の効果は残っていた(図13、レーン12および15)。UGCAUGおよびISE/ISS-3の両方を突然変異させた場合には、Fox2もESRP1も劇的な切り替えを全く引き起こさなかった(図13、レーン16~20)。棒グラフは各スプライシング産物の量を示しており、これは3回の独立した実験による算出値に基づく;各スプライス産物に関する平均値を、各々のカラム内に、SD(標準誤差)を示すエラーバーとともに示す。
【図14】選択的スプライシングを操作することのできる化合物のスクリーニングのための戦略を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(第1および第2の選択的スプライシング・レポーターシステム)
第1の局面において、本発明は、選択的スプライシングを受ける特定の遺伝子に少なくとも2種類の異なるレポーター遺伝子が挿入されているDNA構築物(例えば、図2Cおよび2Dを参照)を用いる、哺乳類多細胞生物における選択的スプライシング・レポーターシステムに関する。第2の局面において、本発明は、選択的スプライシングを受ける特定の遺伝子に1つのレポーター遺伝子が挿入されているDNA構築物の組み合わせ(少なくとも2種類の異なるDNA構築物の組み合わせ)(例えば、図2Aおよび2Bを参照)を用いる、哺乳類多細胞生物における選択的スプライシング・レポーターシステムに関する。

【0019】
第1および第2のシステムはいずれも、合計で少なくとも2種類の異なるレポーター遺伝子が挿入されているDNA構築物(またはDNA構築物の組み合わせ)を哺乳類多細胞生物に導入することによって、その哺乳類多細胞生物におけるインビボ(またはインビトロまたはエクスビボ)での特定の遺伝子の選択的スプライシングパターンの検出を可能にする。第1および第2のシステムはそれぞれ、後述する本発明の「(1)哺乳類多細胞生物における特定の遺伝子の選択的スプライシングを検出するための方法」、「(2)被験化合物が特定の遺伝子の選択的スプライシングに影響を及ぼすか否かを試験するための方法」、「(3)特定の遺伝子の選択的スプライシングに影響を及ぼす遺伝子領域を同定するための方法」、および「(4)特定の遺伝子の選択的スプライシングに影響を及ぼす該特定の遺伝子内の領域を同定するための方法」のために好適に利用される。

【0020】
インビボでの組織特異的および/または段階特異的な選択的スプライシングパターンを、培養細胞などを用いる選択的スプライシングに関する従来のインビトロ試験の結果から正確に予測することは困難であった。第1および第2のシステムの使用により、哺乳類多細胞生物におけるインビボでの組織特異的および/または段階特異的な選択的スプライシングパターンの直接的かつ正確な検出が可能になる。したがって、第1および第2のシステムは、哺乳類多細胞生物における選択的スプライシングの機構を解明するための強力な実験ツールになりうると考えられる。

【0021】
<多細胞生物>
第1および第2のシステムにおいて、「哺乳類多細胞生物」は特に限定されず、それが多くの細胞からなりかつ選択的スプライシングの機構を有する限り、用途に応じて適切に選択されることができ、例えばマウスおよびラットを含む。すなわち、本発明に用いられる哺乳動物は、好ましくは非ヒト動物、例えば齧歯類動物(すなわち、マウス、ラットなど)である。本発明の「哺乳類多細胞生物」は、哺乳類動物に由来する細胞を含む。すなわち、本発明は、哺乳類動物に由来する細胞を用いる方法を包含する。

【0022】
<選択的スプライシングを受ける特定の遺伝子>
第1および第2のシステムにおける「選択的スプライシングを受ける特定の遺伝子」(以下、本明細書では、単に「特定の遺伝子」と称することもある)は特に限定されず、それが哺乳類多細胞生物の遺伝子でありかつ、選択的スプライシングの結果としてエクソンの種々の組み合わせからなる成熟mRNAの複数のアイソフォームを産生しうる限り、用途に応じて適切に選択されることができる。

【0023】
本明細書において「選択的スプライシング」とは、RNAスプライシングによってイントロンがmRNA前駆体から除去されるとスプライシングのパターンが変化することによって、エクソンの種々の組み合わせからなる成熟mRNAの複数のアイソフォームが細胞内で産生される現象を指す。この現象は、選択的スプライシング機構を有する生物が単一の遺伝子から様々なタンパク質を産生することを可能にする。

【0024】
<レポーター遺伝子>
第1および第2のシステムにおいて、「レポーター遺伝子」は特に限定されず、用途に応じて適切に選択することができる。レポーター遺伝子の例には、緑色蛍光タンパク質(GFP)および赤色蛍光タンパク質(RFP)などの蛍光タンパク質遺伝子、色素生成反応または発色反応または発光反応を触媒する酵素遺伝子などが含まれる。第1および第2のシステムでは、合計で少なくとも2種類の異なるレポーター遺伝子を用いる。それらの発現を蛍光または発色の違いに基づいて互いと区別することができる限り、それらの組み合わせは特に限定されず、用途に応じて適切に選択することができる。例えば、緑色蛍光タンパク質(GFP)と赤色蛍光タンパク質(RFP)との組み合わせなどを好適に用いることができる。

【0025】
<DNA構築物>
‐第1のシステムのDNA構築物‐
第1のシステムにおけるDNA構築物は、選択的スプライシングを受ける特定の遺伝子に少なくとも2種類の異なるレポーター遺伝子が挿入されているものである。この少なくとも2種類の異なるレポーター遺伝子は、該少なくとも2種類の異なるレポーター遺伝子の転写物それぞれが特定の遺伝子の選択的スプライシングによって生じる少なくとも2種類の異なる成熟mRNAのそれぞれと融合するように、該特定の遺伝子に挿入される。

【0026】
好ましくは、少なくとも2種類の異なるレポーター遺伝子はそれぞれ、特定の遺伝子の選択的スプライシングによって生じる少なくとも2種類の異なる転写物(成熟mRNA)の中に含まれる異なるエクソンと連結される(例えば、図2Cおよび2Dを参照)。各レポーター遺伝子は、各エクソンの上流(5'側)に連結されてもよく、またはそれらの下流(3'側)に連結されてもよい;しかし、各レポーター遺伝子は、各レポーター遺伝子が連結している各エクソンが正しい読み枠で翻訳される場合にのみ各レポーター遺伝子が正しい読み枠で翻訳されるように、各エクソンと連結される必要がある。DNA構築物のそのような構造により、各レポーター遺伝子の発現が検出された時に、各レポーター遺伝子が連結している各エクソンが正しい読み枠で翻訳されているか否かを確認することが可能になる。すなわち、少なくとも2種類の異なるレポーター遺伝子の各発現パターンの解析により、特定の遺伝子の選択的スプライシングパターンを網羅的に確認することが可能になる。

【0027】
‐第2のシステムのDNA構築物‐
一方、第2のシステムにおけるDNA構築物は、選択的スプライシングを受ける特定の遺伝子1つに1つのレポーター遺伝子が挿入されているものである。第2のシステムは、そのようなDNA構築物の組み合わせ(少なくとも2種類の異なるDNA構築物の組み合わせ)を用いることを特徴とする。ここで、DNA構築物の組み合わせは、以下(i)~(iv)のすべての条件を満たす:
(i)各DNA構築物に挿入されるレポーター遺伝子は互いに異なり;
(ii)各DNA構築物中で、レポーター遺伝子の転写物が選択的スプライシングによって生じる複数の成熟mRNAと融合するように、該レポーター遺伝子が特定の遺伝子に挿入され;
(iii)各DNA構築物から選択的スプライシングによって生じた複数の成熟mRNAのうち1つの成熟mRNAのみにおいて、レポーター遺伝子の転写物部分は正しい読み枠で翻訳され;かつ
(iv)選択的スプライシングパターンの中で特定のスプライシングが選択された場合にのみ、各DNA構築物において正しい読み枠での翻訳が誘導され、かつ、正しい読み枠での翻訳を誘導する特定のスプライシングは各DNA構築物によって異なる。

【0028】
好ましくは、各DNA構築物における各レポーター遺伝子は、特定の遺伝子の選択的スプライシングによって生じる少なくとも2種類の異なる転写物(成熟mRNA)に含まれる複数の異なるエクソンの1つと連結される(例えば、図2Aおよび2Bを参照)。各レポーター遺伝子は、各エクソンの上流(5'側)に連結されてもよく、またはそれらの下流(3'側)に連結されてもよい;しかし、各レポーター遺伝子は、各レポーター遺伝子が連結している各エクソンが正しい読み枠で翻訳される場合にのみ各レポーター遺伝子が正しい読み枠で翻訳されるように、各エクソンと連結される必要がある。そのような様式で構築されたDNA構築物の組み合わせの使用により、各レポーター遺伝子の発現が検出された時に、各レポーター遺伝子が連結している各エクソンが正しい読み枠で翻訳されているか否かを確認することが可能になる。すなわち、DNA構築物の組み合わせにおける各レポーター遺伝子の各発現パターンの解析により、特定の遺伝子の選択的スプライシングパターンを網羅的に確認することが可能になる。

【0029】
第1および第2のシステムのDNA構築物において、特定の遺伝子およびレポーター遺伝子は、それらが哺乳類多細胞生物において発現可能なように、プロモーターの下流で連結されていることが好ましい。プロモーターは特に限定されず、用途に応じて適切に選択することができる。その例には、CAGGSプロモーターなどの組織特異的プロモーターが含まれる。

【0030】
DNA構築物は限定されない任意の方法によって構築することができ、公知の手法を適切に用いることができる。例えば、レポーター遺伝子のcDNAが特定の遺伝子のゲノムDNA断片中に挿入されているレポーターカセットを、所望のプロモーターを含む発現ベクター中に組み込むことによって、DNA構築物を構築できる。

【0031】
例えば、本発明のために用いられるDNA構築物は、図1または3に示した方法によって作製することができる。

【0032】
以下、本明細書において、第1および第2の選択的スプライシング・レポーターシステムを利用する、本発明によるさまざまな方法を説明する。

【0033】
((1)哺乳類多細胞生物における特定の遺伝子の選択的スプライシングを検出するための方法)
本発明の、哺乳類多細胞生物における特定の遺伝子の選択的スプライシングを検出するための方法は、
(a)哺乳類多細胞生物に、第1のシステムにおけるDNA構築物または第2のシステムにおけるDNA構築物の組み合わせ(それぞれが該特定の遺伝子およびレポーター遺伝子を含む)を導入する段階、および
(b)該レポーター遺伝子の発現を検出することによって、哺乳類多細胞生物における特定の遺伝子の選択的スプライシングを検出する段階
を含む。

【0034】
<段階(a)>
段階(a)では、第1のシステムにおけるDNA構築物または第2のシステムにおけるDNA構築物の組み合わせを哺乳類多細胞生物に導入して、トランスジェニック哺乳類多細胞生物を作製する。DNA構築物またはDNA構築物の組み合わせは、限定されない任意の方法によって、哺乳類多細胞生物に導入することができる。例えば、マイクロインジェクションなどの従来より公知である遺伝子移入技術を適切に利用することができる。

【0035】
<段階(b)>
段階(b)では、哺乳類多細胞生物における特定の遺伝子の選択的スプライシングを、レポーター遺伝子の発現を検出することによって検出する。レポーター遺伝子の発現は、限定されない任意の方法によって検出することができ、レポーター遺伝子の種類に応じて公知の検出方法を適切に利用することができる。例えば、蛍光タンパク質をレポーターとして用いる場合には、蛍光顕微鏡または蛍光利用ソーター(fluorescence-assisted sorter)を用いて発現を検出することができる。

【0036】
DNA構築物またはDNA構築物の組み合わせは合計で少なくとも2種類の異なるレポーター遺伝子を含み、かつ上記の通り、これらのレポーター遺伝子は、異なるレポーター遺伝子の転写物が、選択的スプライシングによって生じる複数の成熟mRNAそれぞれと融合されるように、該特定の遺伝子に挿入される。したがって、段階(b)におけるこれらの少なくとも2種類の異なるレポーター遺伝子の発現を検出することによって、選択的スプライシングによってどの形態の成熟mRNAが産生されたかを確認することができる;換言すれば、哺乳類多細胞生物におけるインビボでの特定の遺伝子の選択的スプライシングパターンの検出が可能になる。哺乳類多細胞生物における特定の遺伝子の選択的スプライシングを検出するための方法はまた、DNA構築物もしくはDNA構築物の組み合わせに含まれるプロモーターの種類を変更することにより、または用いる哺乳類多細胞生物の発生段階を変更することにより、組織特異的かつ/または発生段階特異的な選択的スプライシングパターンの詳細な検出も可能にする。

【0037】
((2)被験化合物が特定の遺伝子の選択的スプライシングに影響を及ぼすか否かを試験するための方法)
本発明の、被験化合物が特定の遺伝子の選択的スプライシングに影響を及ぼすか否かを試験するための方法は、
(a)哺乳類多細胞生物に、第1のシステムにおけるDNA構築物または第2のシステムにおけるDNA構築物の組み合わせ(それぞれが該特定の遺伝子およびレポーター遺伝子を含む)を導入する段階、
(b)哺乳類多細胞生物を被験化合物と接触させる段階、
(c)レポーター遺伝子の発現を検出することによって、哺乳類多細胞生物における特定の遺伝子の選択的スプライシングを検出する段階;および
(d)該被験化合物と接触させていない対照における該レポーター遺伝子の発現と比べ、(c)で検出された該レポーター遺伝子の発現が変化したか否かを判定する段階
を含む。

【0038】
<段階(a)および段階(c)>
段階(a)および段階(c)は、上述の「哺乳類多細胞生物における特定の遺伝子の選択的スプライシングを検出するための方法」における段階(a)および段階(b)と、それぞれ同じ様式で行うことができる。

【0039】
<段階(b)>
段階(b)では、段階(a)でDNA構築物またはDNA構築物の組み合わせが導入された哺乳類多細胞生物を、被験化合物と接触させる。「被験化合物」は特に限定されず、特定の遺伝子の選択的スプライシングに影響を及ぼすか否かについて試験したい物質から、用途に応じて適切に選択することができる。その例には、精製タンパク質、部分精製タンパク質、ペプチド、非ペプチド性化合物、人工的に合成された化合物、天然の化合物などが含まれる。加えて、哺乳類多細胞生物を「被験化合物」と接触させるための方法も特に限定されない;その例には、「被験化合物」をマイクロインジェクションによって注入する方法、「被験化合物」を飼料中に混合することによって哺乳類多細胞生物に供給する方法などが含まれる。

【0040】
<段階(d)>
段階(d)では、被験化合物と接触させていない対照におけるレポーター遺伝子の発現と比べ、(c)で検出された該レポーター遺伝子の発現が変化したか否かを判定する。レポーター遺伝子の発現の変化は特に限定されない;その例には、一方のレポーター遺伝子の発現が他方のレポーター遺伝子の発現に置き換わること、1つのレポーター遺伝子の発現レベルが低下または上昇することなどが含まれる。段階(d)において、被験化合物と接触させていない対照におけるレポーター遺伝子の発現と比べ、段階(c)で検出された該レポーター遺伝子の発現が変化したと判定されたならば、該被験化合物は該特定の遺伝子の選択的スプライシングに影響を及ぼすと評価することができる。

【0041】
((3)特定の遺伝子の選択的スプライシングに影響を及ぼす遺伝子領域を同定するための方法)
本発明の、特定の遺伝子の選択的スプライシングに影響を及ぼす遺伝子領域を同定するための方法は、
(a)哺乳類多細胞生物に、第1のシステムにおけるDNA構築物または第2のシステムにおけるDNA構築物の組み合わせ(それぞれが該特定の遺伝子およびレポーター遺伝子を含む)を導入する段階、
(b)哺乳類多細胞生物を変異原で処理する段階、
(c)レポーター遺伝子の発現を検出することによって、哺乳類多細胞生物における特定の遺伝子の選択的スプライシングを検出する段階、
(d)該変異原処理に供されていない対照における該レポーター遺伝子の発現と比べ、段階(c)で検出された該レポーター遺伝子の発現が変化した個体を選択する段階、および
(e)該個体における突然変異した遺伝子領域を同定する段階
を含む。この方法は、特定の遺伝子の選択的スプライシングに影響を及ぼすトランス作用因子の同定を可能にする。

【0042】
<段階(a)および段階(c)>
段階(a)および段階(c)は、上述の「哺乳類多細胞生物における特定の遺伝子の選択的スプライシングを検出するための方法」における段階(a)および段階(b)と、それぞれ同じ様式で行うことができる。

【0043】
<段階(b)>
段階(b)では、段階(a)においてDNA構築物またはDNA構築物の組み合わせが導入された哺乳類多細胞生物を、変異原で処理する。哺乳類多細胞生物の変異原処理は特に限定されず、公知の方法によって行うことができる。その例には、エチルメタンスルホネート(EMS)による処理、UVによる処理などが含まれる。

【0044】
<段階(d)>
段階(d)では、変異原処理に供されていない対照におけるレポーター遺伝子の発現と比べ、段階(c)で検出された該レポーター遺伝子の発現が変化した個体を選択する。レポーター遺伝子の発現の変化は特に限定されない;その例には、一方のレポーター遺伝子の発現が他方のレポーター遺伝子の発現に置き換わること、レポーター遺伝子の発現レベルが低下または上昇することなどが含まれる。

【0045】
<段階(e)>
段階(e)では、レポーター遺伝子の発現が変化した個体における、突然変異した遺伝子領域を同定する。遺伝子領域を同定するための方法は特に限定されず、従来より公知の染色体マッピングなどを適切に利用することができる。

【0046】
((4)特定の遺伝子の選択的スプライシングに影響を及ぼす該特定の遺伝子内の領域を同定するための方法)
本発明の、特定の遺伝子の選択的スプライシングに影響を及ぼす該特定の遺伝子内の領域を同定するための方法は、
(a)哺乳類多細胞生物に、第1のシステムにおけるDNA構築物または第2のシステムにおけるDNA構築物の組み合わせ(それぞれが該特定の遺伝子およびレポーター遺伝子を含む)を導入する段階であって、該DNA構築物またはDNA構築物の組み合わせにおいて、該特定の遺伝子に突然変異が導入されている、段階
(b)該レポーター遺伝子の発現を検出することによって、哺乳類多細胞生物における特定の遺伝子の選択的スプライシングを検出する段階、および
(c)該特定の遺伝子に突然変異が導入されていない対照における該レポーター遺伝子の発現と比べ、(b)で検出された該レポーター遺伝子の発現が変化したか否かを判定する段階
を含む。この方法は、特定の遺伝子の選択的スプライシングに影響を及ぼすシス作用性DNA配列の同定を可能にする。

【0047】
<段階(a)>
段階(a)では、第1のシステムにおけるDNA構築物または第2のシステムにおけるDNA構築物の組み合わせ(それぞれが該特定の遺伝子およびレポーター遺伝子を含む)を哺乳類多細胞生物に導入し、ここで該DNA構築物またはDNA構築物の組み合わせにおいて、特定の遺伝子には突然変異が導入されている。特定の遺伝子に突然変異を導入するための方法は特に限定されず、従来より公知の手法を利用することによって、欠失、挿入、置換などを特定の遺伝子内で適切に誘導することができる。加えて、突然変異が導入される特定の遺伝子中の領域は特に限定されず、該特定の遺伝子の選択的スプライシングに影響を及ぼすか否かを評価したい領域を適切に選択することができる。

【0048】
<段階(b)>
段階(b)は、上述の「哺乳類多細胞生物における特定の遺伝子の選択的スプライシングを検出するための方法」における段階(b)と同じ様式で行うことができる。

【0049】
<段階(c)>
段階(c)では、特定の遺伝子に突然変異が導入されていない対照におけるレポーター遺伝子の発現と比べ、(b)で検出された該レポーター遺伝子の発現が変化したか否かを判定する。レポーター遺伝子の発現の変化は特に限定されない;その例には、一方のレポーター遺伝子の発現が他方のレポーター遺伝子の発現に置き換わること、レポーター遺伝子の発現レベルが低下または上昇することなどが含まれる。特定の遺伝子に突然変異が導入されていない対照におけるレポーター遺伝子の発現と比べ、(b)で検出された該レポーター遺伝子の発現が変化したと判定されたならば、突然変異が導入された該特定の遺伝子内の領域を、該特定の遺伝子の選択的スプライシングに影響を及ぼす領域として同定することができる。

【0050】
本発明の方法:
本発明者らによって開発された第1および第2の選択的スプライシング・レポーターシステムを利用する、「(1)哺乳類多細胞生物における特定の遺伝子の選択的スプライシングを検出するための方法」、「(2)被験化合物が特定の遺伝子の選択的スプライシングに影響を及ぼすか否かを試験するための方法」、「(3)特定の遺伝子の選択的スプライシングに影響を及ぼす遺伝子領域を同定するための方法」、および「(4)特定の遺伝子の選択的スプライシングに影響を及ぼす該特定の遺伝子内の領域を同定するための方法」は、哺乳類多細胞生物における選択的スプライシングの制御機構の網羅的研究のための非常に有用な方策となりうる。

【0051】
本発明は、蛍光選択的スプライシング・レポーターミニ遺伝子を構築するための方法に関する。

【0052】
1つの好ましい態様において、本出願は、選択的スプライシングパターンを可視化するためのDNAベクターを調製するための方法であって、
(1)関心対象の遺伝子に含まれるエクソンaおよびbを有する増幅されたDNA領域のDNA構築物を調製する段階;
(2)該DNA構築物の両端にattBを付加する段階;
(3)上記(2)のDNA構築物と、選択用遺伝子およびタンデムに配置されたattPを有するドナーベクターとの組換え体を得る段階;
(4)上記(3)のDNA構築物上のエクソンaにフレームシフト突然変異を導入する段階;
(5)下記(i)~(iii)の組み換え体:
(i)上記(4)のDNA構築物
(ii)選択用遺伝子と、2種類のレポーター遺伝子が連結された構造を有するDNAの両端に互いに対抗する向きに配置されたattLを有するDNAとを含む、DNAベクター
(iii)3'カセットDNAと、プロモーターと、選択用遺伝子を有するDNAの両端に互いに対抗する向きに配置されたattRを有するDNAとを含む、DNAベクター
を得る段階
を含む、方法を提示する。

【0053】
この態様において、関心対象の遺伝子は特に限定されず、FGFR2遺伝子であることができる。例えば、エクソンaおよびbは、FGFR2遺伝子のエクソン8および9である。レポーター遺伝子は限定されず、蛍光タンパク質をコードする遺伝子であることができる。

【0054】
1つの好ましい態様において、蛍光選択的スプライシング・レポーターミニ遺伝子は、図1または3に明示する方法によって構築することができる。

【0055】
2.理論的背景
2.1.複数の蛍光タンパク質による選択的スプライシングパターンの可視化
生細胞における選択的スプライシングの制御機構を明らかにするために、複数のエクソンおよびイントロンを含むレポーターミニ遺伝子構築物が用いられることが多い。ミニ遺伝子由来のmRNAのスプライシングパターンは通常、トランスフェクト細胞から全RNAを抽出した後の逆転写(RT)-ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)産物の比率を用いて定量的に解析される。スプライシングパターンの解析における手間を要する多数の工程によって、しばしば結果の偏りが引き起こされ、かつ選択的スプライシングのハイスループット解析が妨げられてきた。

【0056】
蛍光タンパク質を発現する蛍光選択的スプライシング・レポーターの利用により、状況が変わってきている。初期には単色すなわち単一色の蛍光レポーターが、培養細胞におけるスプライシングイベントの指標として用いられた。選択的エクソンの正しいスプライシングまたはスキッピングをモニターするために単色レポーターミニ遺伝子が設計され、これが、選択的スプライシングの制御に欠陥のある突然変異細胞株の単離(Sheives, P. and Lynch, K.W. (2002). RNA 8, 1473-1481.)、スプライシング制御エレメントの機能的スクリーニング(Wang, Z. et al., (2004). Cell 119, 831-845.)およびスプライシングパターンを改変する低分子化合物のスクリーニング(Levinson, N.et al., (2006). RNA 12, 925-930.)のために用いられている。単色レポーターの利点は、それらの構造の単純さにある。しかし、単色レポーターの読み取り値は、転写および翻訳などの遺伝子発現に対する作用によって影響を受ける可能性がある。

【0057】
多色選択的スプライシング・レポーターは、単色レポーターの注意事項の大部分を克服している。多色レポーターミニ遺伝子は、各蛍光タンパク質の発現がある特定のスプライシングイベントを表すように設計された。多色蛍光レポーターの利点とは、個々の細胞において、発現された蛍光タンパク質の比率がmRNAアイソフォームの比率を反映すること、または蛍光タンパク質の1つが発現レベルの内部対照としての役割を果たすことである。このため、多色レポーターは、多細胞生物における選択的スプライシングパターンの可視化のために適している。

【0058】
多色レポーターミニ遺伝子は、多構築物型および1構築物型という2つの型にさらに分類することができる。前者は、そのそれぞれが単一の蛍光タンパク質をコードする複数のミニ遺伝子からなり、後者は2つの蛍光タンパク質cDNAを単一のミニ遺伝子構築物中に含む。多構築物型レポーターは、培養細胞のフローサイトメトリーによってトランス因子およびシスエレメントを検索するため(Newman, E.A. et al., (2006). RNA 12, 1129-1141.)、ならびに、C.エレガンスにおいて発生的に制御される選択的スプライシングを可視化するため、さらには遺伝子解析のため(Ohno, G. et al., (2008). Genes Dev 22, 360-374.)に利用されている。1構築物型2色レポーターの際立った特徴とは、単一の蛍光タンパク質をそれぞれがコードする2つの選択的mRNAアイソフォームが、1つの共通のmRNA前駆体から相互排他的な様式で生じることである。このため、1構築物型レポーターは、選択的スプライシングパターンのわずかな変化に対しても感受性がある。これらのレポーターは、制御因子を解析するため(Orengo, J.P. et al., (2006). Nucleic Acids Res 34, e148.)、スプライシング制御を変更させる化学物質に関するハイスループットスクリーニングのため(Stoilov, P. et al., (2008). Proc Natl Acad Sci U S A 105, 11218-11223.)、ならびに、C.エレガンス(Kuroyanagi, H. et al., (2006). Nat Methods 3, 909-915.)およびマウスにおける細胞型特異的な選択的スプライシングの可視化のために利用されている。

【0059】
2.2.スプライシングパターンをモニターするための蛍光レポーターミニ遺伝子の設計
ここで本発明者らは、本発明者らが実施例に記載した通りに構築した多色選択的スプライシング・レポーターミニ遺伝子の典型的な構造(図2)を示し、各蛍光タンパク質の発現が特定の選択的スプライシングイベントをどのように知らせるのかを説明する。本明細書に記載されたレポーターミニ遺伝子は、可能な選択的スプライシング・レポーターの数例に過ぎないことに留意されたい。可視化しようとする関心対象の選択的スプライシングイベントに応じて、各レポーターを柔軟に設計することができる。理想的なミニ遺伝子は、特定の蛍光タンパク質の発現が、特定のmRNAアイソフォームまたは特定の選択的スプライシングイベントを明白に示すように設計されるべきである(Kuroyanagi, H. et al.,(in press). Visualization and genetic analysis of alternative splicing regulation in vivo using fluorescence reporters in transgenic Caenorhabditis elegans. Nat Protoc.)。

【0060】
上述したように、図2におけるミニ遺伝子は、多構築物型(図2A、B)および1構築物型(図2C、D)に分けることができる。レポーターの型の選択は、生物、およびミニ遺伝子移入の方法に左右される。標準的なマイクロインジェクション方法によって産生されたトランスジェニック線虫は、プラスミドDNAの数百ものコピーを染色体外アレイとして保有しており(Mello, C.C. et al., (1991). EMBO J 10, 3959-3970.)、したがって一般的に、同一のベクター骨格を持つ数種類のミニ遺伝子の混合物の注入によって、すべての構築物が染色体外アレイに比例して組み込まれると想定されている。多構築物型レポーターの利点の1つは、セクション4で述べるように、一緒に導入するミニ遺伝子の数を3種類以上に増やすことができることである。移入するミニ遺伝子のコピー数が少ないかまたは不定である状況では、1構築物型レポーターの方が好ましい可能性がある。

【0061】
図2Aは、相互排他的エクソンに関する一対のレポーターミニ遺伝子の模式的構造を示す。上流の構成的エクソンから下流の構成的エクソンまでの関心対象のゲノム断片が、1つの共通プロモーターおよび1つの構成的イントロンの下流に配置され、その後に2種の蛍光タンパク質いずれか1つのcDNAおよび3'カセットが続いている。ゲノム断片の5'末端にはインフレームの翻訳開始コドンが人為的に導入されている。各構築物において、2つの選択的エクソンの一方には終止コドンが人為的に導入されている。図2Aに示されたミニ遺伝子に由来する、エクソンaのみが含まれたmRNAアイソフォームからはGFP融合タンパク質が産生され、エクソンbのみが選択されたmRNAアイソフォームからはRFP融合タンパク質が産生される。

【0062】
図2Bは、カセットエクソンの包含およびスキッピングをモニターするための一対のレポーターミニ遺伝子の模式的構造を示す。断片カセットの順序および組成は、図2Aの通りである。図2Bに示す場合において、カセットエクソンの長さは3塩基の倍数ではなく、そのため、カセットエクソンの包含により下流エクソンの読み枠が変化する。カセットエクソンが含まれる場合にはGFP cDNAがインフレームで連結され、カセットエクソンが除外される場合にはRFP cDNAがインフレームで連結される。

【0063】
図2Cおよび2Dは、1構築物型2色レポーターの模式的構造を示す。これらの構築物は、選択的読み枠の1つが終止コドンを持たないという、一部の蛍光タンパク質cDNAの独特な特徴に依拠している(Orengo, J.P. et al., (2006). Nucleic Acids Res 34, e148.)。図2Cおよび2Dに示す場合において、RFP cDNAの選択的フレームの翻訳がGFP cDNAからの蛍光タンパク質の生成を導くように、RFPおよびGFPのcDNAが異なる読み枠で連結されている。蛍光タンパク質がRFP cDNAから生成される場合、翻訳はそれ自体の終止コドンで停止すると考えられる。図2Cに示したミニ遺伝子は、カセットエクソンの包含およびスキッピングをモニターするためのものである。カセットエクソンが含まれる場合はGFP cDNAがインフレームにあり、カセットエクソンが除外される場合はRFP cDNAがインフレームにある。図2Dに示されたミニ遺伝子は相互排他的エクソンの選択をモニターするためのものである。この場合、このエクソンが選択された場合にはヌクレオチド1個がエクソンaの中に挿入され、フレームシフトが引き起こされる。大腸菌(E. coli)のグルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)を、融合タンパク質の発現のためのN末端タグとして用いる。エクソンaのみが含まれた場合にはGFP融合タンパク質が産生され、エクソンbのみが選択された場合にはRFP融合タンパク質が産生される。両方のエクソンが含まれるかまたはスキップされた場合には、どちらの蛍光タンパク質も産生されない。

【0064】
2.3.蛍光レポーターミニ遺伝子の構築
本発明者らは、MultiSite Gatewayシステム(Invitrogen)を利用する部位特異的組換えによって、蛍光選択的スプライシング・レポーターミニ遺伝子を構築する。ミニ遺伝子構築における相同組換えの主な利点は、「エントリー」ベクターおよび「デスティネーション」ベクターの中にクローニングされたモジュール式DNA断片を組み立てることによって、上記のような種々の構造を有する「発現」ベクターを容易かつ迅速に構築できることである。このセクションで、本発明者らは、MultiSite Gatewayシステムの実際の利用、および蛍光レポーターミニ遺伝子の設計において考慮すべき他の局面に焦点を当てる。

【0065】
2.3.1.MultiSite Gatewayシステム
MultiSite Gatewayシステムは、部位特異的組換えクローニングを用いて、関心対象の別個のDNA断片2つ、3つまたは4つを規定の順序および向きで同時クローニングさせる。図3は、「2断片」組換え反応を行うことによる「発現」クローンの構築を模式的に説明している。関心対象のゲノムDNA断片を「エントリー」ベクター中にクローニングして(図3A)、「デスティネーション」ベクターの相同組換え部位との間で断片を組み立てる(図3B)。MultiSite Gatewayシステムの重要な特徴とは、5組の改変att部位が一方向を向いており、標準的なGatewayシステムにおけるような相同組換えの特異性を示すことである:例えば、「BP」反応ではattB1部位はattP1部位のみと反応して他のattP部位とは反応せず、attL1部位およびattR1部位を生じ(図3A)、「LR」反応ではattL5部位はattR5部位のみと反応して他のattR部位とは反応せず、attB5部位およびattP5部位が生じる(図3B)。MultiSite Gatewayシステム、ならびに「3断片」および「4断片」組換え反応のそれ以上の詳細については、供給元のウェブサイト(www.invitrogen.com)を参照されたい。

【0066】
本発明者らのレポーターミニ遺伝子、または「発現」クローンにおけるatt部位はすべてattB部位であり、エクソン中にある(図2および3)。attB配列(21~25塩基対)は、att部位すべての中で最も短い区間である。本発明者らは、C.エレガンスまたは哺乳類細胞のいずれにおいてもattB配列内部での潜在的スプライシングに遭遇したことはない。attB配列には固定の読み枠を用いることが推奨されており、本発明者らは通常そのようにした(セクション3を参照)。attB1、attB5およびattB2の配列はATGおよび終止コドンをいずれのフレームにも有しないため、それらは理論的にはあらゆるフレームで用いることができる。

【0067】
2.3.2.ミニ遺伝子の構築において考慮すべき他の局面
早期終止(ナンセンス)コドン(PTC)を有するmRNAは、ナンセンス変異依存mRNA分解(NMD)と呼ばれる品質管理機構によって選択的に分解される。哺乳動物では、RNAスプライシング後にエクソン-エクソン境界部の上流に集積するタンパク質複合体であるエクソン接合部複合体(EJC)が1回目の翻訳の際に終止コドンの下流に存在する場合に、NMDが誘導されると考えられている(Chang, Y.F. et al., (2007). Annu Rev Biochem 76, 51-74., Isken, O. and Maquat, L.E. (2007). Genes Dev 21, 1833-1856.)。蛍光タンパク質をコードするmRNAアイソフォームがNMDを回避するように蛍光レポーターミニ遺伝子を設計することが、極めて重要である。GFP cDNAおよびRFP cDNAが、図2に示されたミニ遺伝子中の最終エクソン中に存在する場合には、これらのミニ遺伝子由来の産生型アイソフォーム(productive isoform)は、哺乳動物におけるNMDを回避すると考えられる。C.エレガンス(Kuroyanagi, H. et al., (2007). Mol Cell Biol 27, 8612-8621., Pulak, R. and Anderson, P. (1993). Genes Dev 7, 1885-1897.)および酵母(Kebaara, B.W. and Atkin, A.L. (2009). Nucleic Acids Res 37, 2771-2778., Amrani, N. et al., (2004). Nature 432, 112-118.)では、長い3'非翻訳領域(UTR)によってエクソン-エクソン境界部とは無関係にNMDが誘発されるため、したがって、これらの生物では、図2Cおよび2DにおいてRFPタンパク質をコードするmRNAアイソフォームはNMDによって分解されると考えられる。

【0068】
ミニ遺伝子構築物中に利用されるゲノム断片は通常、正しいスプライシングを受ける。しかし、構成的エクソンのトリミングおよび/または長いイントロン領域の欠失は、非効率的なスプライシングを導く、または選択的スプライシングの制御解除を導く可能性がある。内因性遺伝子の選択的スプライシングパターンを反映するレポーターを確立するためには、ミニ遺伝子最適化の繰り返しが必要となる可能性がある。本発明者らはGFP cDNAおよびRFP cDNAのいずれにおいても潜在的スプライシングに遭遇したことはないが、N末端およびC末端タグに対する他のcDNAが潜在的スプライス部位としてはたらく可能性がある。
関心対象の遺伝子に由来するアミノ酸配列は、蛍光性融合タンパク質のフォールディング、安定性および/または細胞内局在に大きな影響を及ぼす可能性がある。このため、ミニ遺伝子の設計においては、融合タンパク質の特性を予想することが重要である。GST(図2D)などのさまざまなN末端タグは、融合タンパク質の発現を安定化して、結果を改善する可能性がある。また、設計した開始コドンでの翻訳開始を強制的に行わせることも極めて重要である。エクソン領域におけるおよびN末端タグにおけるATGコドンは、異常翻訳開始の原因となり得、蛍光タンパク質の産生を減少させ得る。

【0069】
FGFR2遺伝子のスプライシング制御を可視化するためのレポーターシステムは、いくつかのグループにより作製されてきた。Newmanらは、AT-3およびDT-3細胞における内因性スプライシング制御を反映しうる最小ゲノム領域を有する蛍光レポーターベクターを作製した。彼らはこのレポーターを用いて、ISS/ISS-3を含む特異的ISEを同定し、これらはFox制御に応答する[Newman EA, Muh SJ, et al. (2006) Rna 12: 1129-1141.]。Bonanoらはエクソン8の周りのゲノム断片を用いることによって別の蛍光レポーターベクターを構築し、彼らはマウスにおけるエクソン8包含の制御を可視化した[Bonano VI, et al. (2006) Rna 12: 2073-2079.]。本発明において、本発明者らは、FGFR2遺伝子をモデルとして用いるトランスジェニックレポーターシステムを独自に開発し、マウスにおけるEGFPおよびRFPの差次的発現によって相互排他的エクソンの組織特異的発現プロファイルを可視化することに初めて成功した。本発明者らは、選択的エクソンの周りのゲノム領域ほぼ全体を、それらの上方および下方の構成的エクソンとともに用いて、制御のために真に重要なのはどのスプライス部位配列およびシスエレメントであるかを評価することができた。このシステムは、1)インビボでのスプライシング制御の変遷を単一細胞分解能でモニターするため、2)本研究のように、必須のシスエレメントおよびトランス因子を同定するため、ならびにスプライシング制御の隠された機構を明らかにするため、3)蛍光色の変化によって必須因子候補を同定するため、またはcDNAライブラリーもしくはsiRNAライブラリーを用いて制御因子をスクリーニングするための、大きな利点を有する。このように、スプライシング・レポーターシステムは、隠されたスプライスコードを解読するため、かつまた発生中または成体において選択的スプライシングによって組織特異的または細胞型特異的な様式で制御される重要な役割を明らかにするための、大きな利点を有する。

【0070】
スプライシング・レポーターシステムを用いて、本発明者らは、FGFR2遺伝子の2つの相互排他的エクソンが「一次」的な運命および「二次」的な運命を有するように思われることを示した。組織特異的制御因子がないと、「一次」エクソン9が「デフォルト」として選択され、「二次」エクソン8はそれらの3'スプライス部位の相対的強度に応じて無視される(図12A、非上皮性制御または間葉性制御)。重要な組織特異的制御因子ESRPが発現されると、これらの因子は「一次」エクソン9の3'スプライス部位の近傍にFoxとともに結合して、エクソン9の認識を抑制する(図12A、上皮性制御)。線虫では、組織特異的因子による順序づけられたスプライシング認識を通じて制御される相互排他的選択的スプライシングが観察されている[Ohno G, et al. (2008) Genes Dev 22: 360-374.]。この順序づけられたスプライス部位認識により、トランス作用性制御因子は、チェスの駒、通常はナイトが、ルークへの攻めとキングへの王手かけを同時に行い、これにより前者を必ず取ることができるのと類似した様式で、相互排他的エクソンの選択を組織特異的な様式で逐次的に制御することができる(図12A)。この制御機構は、上述した本発明者らの最初の疑問に対する明らかな回答となる。これまで、組織特異的な選択的スプライシング制御は、特異的シスエレメントを通じてトランス因子によって媒介される選択的エクソンの増強とサイレンシングの間の均衡という見地から理解されてきた[Matlin AJ, et al. (2005) Nat Rev Mol Cell Biol 6: 386-398.]。この考え方では、各選択的エクソンは別個に制御され、最終的なスプライシングアイソフォームはこれらの独立した制御の総和および均衡によって決定される。もし相互排他的選択的スプライシングにもこれが当てはまるのであれば、最初のスプライシング産物は、単一エクソン包含形態、二重包含形態、および二重スキップ形態の混合物であったと考えられる。後者2つのアイソフォームはNMDによって除去されたであろうから[Chang YF, et al. (2007) Annu Rev Biochem 76: 51-74.]、単一エクソン包含形態のみが最終的なスプライシング産物として残ったと考えられる。一方、相互排他的スプライシングがスイッチ様の様式で制御されるのであれば、最初のスプライシング産物は主として単一包含形態の一方からなったと考えられる。AT-3細胞におけるエクソン選択が、エクソン9に対するエンハンサーとエクソン8に対するリプレッサーとの複合制御の均衡にかかっているのであれば、エクソン9に対するリプレッサーの過剰発現により、大部分は二重スキップ形態が産生されたはずである。しかし、本発明者らはこれを認めなかった(図10A)。さらに、レポーター中のエクソン8の3'スプライス(slice)部位をエクソン9のそれと同じくらい強くなるように変化させた場合には、エクソン8に影響を及ぼすトランス作用因子および特異的シスエレメントのいかなる変化も伴うことなく、二重包含スプライシング産物がAT-3細胞において優位になった(図7、レーン2)。また、非上皮性AT-3細胞において、エクソン9のスプライス部位突然変異は上皮性エクソン8への切り替えを引き起こした(図8、レーン2および4)。これらの結果は、選択的スプライシングが複数の制御因子の複雑な均衡によって達成されるのではなく、重要な制御因子によって唯一の適切なエクソンが選択されて切り替えられる単純なスイッチ様機構によって規定されることを示唆している。

【0071】
本発明者らの以前の研究により、線虫FGFR相同遺伝子egl-15の相互排他的スプライシングは、広範に発現されるFox-1/ASD-1ファミリーと筋特異的RNA結合モチーフタンパク質(RBM)であるSUP-12(mRBM24の線虫相同体)との協調によって制御されており、それらが共に作用して選択的エクソン5Bの包含を抑制し、エクソン5Aの筋特異的発現を促進することが示された[Kuroyanagi H, et al.(2006) Nat Methods 3: 909-915., Kuroyanagi H, et al. (2007) Mol Cell Biol 27: 8612-8621.](図12B、線虫)。哺乳類FGFR2の場合には、全身性に発現されたFoxファミリーが組織特異的因子ESRP(RBM35aおよびb)と協働してエクソン9の選択的包含を抑制し、かつエクソン8の上皮組織特異的発現を促進する(図12B、哺乳動物)。さらに、線虫および哺乳類のFoxファミリータンパク質はいずれもUGCAUGエレメントに結合し、SUP-12およびESRPはGU区間に結合する。線虫は哺乳動物と比較してかなり類似した数の遺伝子(およそ20,000個)を有するが、そのゲノムのサイズははるかに小さく(約30分の1)、イントロンは非常に短い(平均561bp)。そのため、線虫における選択的スプライシングは極めて簡単な規則によって制御されていると考えられる[Zahler AM (2005) WormBook: 1-13., Kabat JL, et al. (2006) PLoS Comput Biol 2: e86.]。このように、組織特異的選択的スプライシングの制御機構が線虫から哺乳動物まで進化的に保存されていることは驚くべきことであり、Foxおよび別の組織特異的RBMを通じた制御が、複数の遺伝子の組織特異的選択的スプライシングを制御するための広範な必須の現象であることが判明する可能性がある。本発明者らの知見はまた、スプライシングを受ける多数の遺伝子が限られた数の制御因子によってさまざまな組織特異的様式でどのように制御されるのかを理解するため、最終的には、一見複雑であるように思われる発生過程または組織特異的機能を理解するための、重大な手がかりをも与えるものである。

【0072】
本明細書中に引用した先行技術文献はすべて、参照により本明細書に組み入れられる。
【実施例】
【0073】
以下に本発明の実施例を説明するが、これらは本発明を限定するものとみなされるべきではない。
【実施例】
【0074】
[実施例1] プロトコール
1.「エントリー」ベクター中のゲノムDNA断片カセットの構築
本発明者らは、「BP」反応を行って、MultiSite Gatewayシステムの「エントリー」ベクター中に関心対象のゲノム断片をクローニングした。attBに隣接するゲノム断片を増幅するために、本発明者らは通常、2段階PCR手法を行う。1回目のPCRは、遺伝子特異的でありかつattB配列の一部を自身の5'末端に含むプライマーを用いて行う。続いて1回目のPCR産物を、attBアダプタープライマーとともに、2回目のPCRのためのテンプレートとして用いる。2段階PCR手法の利点は、合成すべき遺伝子特異的プライマー(GSP)がより短くなると考えられること、およびattBアダプタープライマーを、異なるミニ遺伝子プロジェクトで他のDNA断片をクローニングするために繰り返して使用可能であることである。ここで本発明者らは、図3Aに図式的に示したように、「2断片」組換え反応のための「エントリー」クローンをどのように構築するのかを示す。ゲノムDNA断片を、構築しようとするミニ遺伝子の設計に応じた「エントリー」ベクターのいずれかにクローニングする(セクション2.2参照)。「3断片」および「4断片」組換え反応をミニ遺伝子構築に利用することもできるが、これらは効率が低いため、本発明者らはほとんど用いたことがない。
【実施例】
【0075】
1.1.プライマーの設計
GSPは、5'末端に12塩基のattB部位、その後に18~25塩基のテンプレート特異的または遺伝子特異的な配列(表1;「エントリー」クローンを構築するために用いるプライマーの配列)を有するものとする。表1に示すように、コザックコンセンサス配列をattB1配列と遺伝子特異的配列との間に挿入して、翻訳開始を強制的に行わせることができる。終止コドンは、レポーターミニ遺伝子の設計に応じて、逆方向GSP内に含めるか、またはそこから除くものとする。DNA断片をN末端および/またはC末端タグと融合するように設計している場合には、表1に表示したようなattB配列中の正しい読み枠が維持されるようにGSPを注意深く設計しなければならない。
【実施例】
【0076】
2回目のPCRのためのattBアダプタープライマーは、以下の共通構造からなる:5'末端に4つのグアニン(G)残基、その後に22塩基または25塩基の完全attB配列(表1)。
【実施例】
【0077】
【表1】
JP0005875009B2_000002t.gif
下線部は、GSP中に含まれる12塩基のattB配列を示す。
【実施例】
【0078】
1.2.PCRの実施
PCRは、PrimeSTAR HS DNAポリメラーゼ(TaKaRa)などのプルーフリーディングポリメラーゼを用いて行うべきである。アニーリング配列がわずか12塩基対であるため、2回目のPCRのアニーリング温度は45℃であるべきである。
【実施例】
【0079】
プロトコール1:attB-DNA断片の2段階PCR増幅
1.各0.2μMのGSPとともに標準的な試薬を含む25マイクロリットル(μL)の混合物中で1回目のPCRを行う。PCRの条件は、テンプレートの量および増幅しようとする断片のサイズに応じて最適化すべきである。PCR産物を標準的なアガロースゲル電気泳動によって確認する。
2.標準的な試薬および各0.3μMのattBアダプタープライマーを含む2回目のPCR混合物50マイクロリットル(μL)を調製する。混合物を1回目のPCR反応混合物10マイクロリットル(μL)に添加して、アニーリング温度を45℃とした5サイクルのPCRを行う。PCR産物の量が2回目のPCRで増加したことをアガロースゲル電気泳動によって確認する。
3.任意で、1マイクロリットル(μL)のDpn I*(New England Biolabs)を添加し、37℃で1時間インキュベートして、テンプレートDNAを破壊する。*PCRテンプレートがカナマイシン耐性遺伝子を含むプラスミドである場合には、attB-PCR産物を精製する前にPCR混合物をDpn Iで処理すべきである。Dpn Iは細菌由来DNA中のメチル化GATC部位を認識する。Dpn I処理は、「BP」組換え反応におけるテンプレート混入に伴うバックグラウンドを大きく減少させる。
4.標準的なDNA精製カラムを用いてattB-PCR産物を精製する。
【実施例】
【0080】
1.3.「BP」組換え反応および「エントリー」クローンの選択
attBに隣接する各DNA断片と適切なattP含有「ドナー」ベクターとの間の「BP」組換え反応(表2:「BP」反応によって「エントリー」クローンを構築するための「ドナー」ベクターの選択)を行って、「エントリー」クローンを作製する。
【実施例】
【0081】
【表2】
JP0005875009B2_000003t.gif
【実施例】
【0082】
プロトコール2:BPクロナーゼII反応、および適切な「エントリー」クローンの選択
1.以下の構成成分を1.5ml微量遠心管に添加して混合する:attB-PCR産物(15~150ng)、pDONRベクター(スーパーコイル、75ng)、最終容量4マイクロリットル(μL)の脱イオン蒸留水(DDW)またはTE。1マイクロリットル(μL)のBPクロナーゼII酵素ミックス(Invitrogen)を上記の構成成分に添加して、短時間のボルテックス処理またはタッピングによって十分に混合する。
2.「BP」反応混合物を室温または25℃で1時間または一晩インキュベートする。本発明者らは通常、プロテイナーゼK消化を省略している。
3.大腸菌株DH5αまたは他の菌株*を、1~3マイクロリットル(μL)の反応混合物によって形質転換させて、カナマイシン耐性「エントリー」クローンを選択する。挿入物の配列を確認する。*F'エピソームを有する大腸菌株(例えば、TOP10F')は、「エントリー」クローンを選択するための形質転換に用いることができない。これらの菌株はccdA遺伝子を含み、pDONRベクター中のccdB遺伝子による陰性選択を妨げると考えられる。
【実施例】
【0083】
1.4.「エントリー」クローンの改変(任意)
ミニ遺伝子の設計に応じて、終止コドンまたはフレームシフトをエクソンに導入し、かつ/または「エントリー」クローンの推定シスエレメントを改変もしくは欠損させる。ゲノム断片の配列は、推定シス制御エレメントの欠失を避けるように注意深く改変すべきである。本発明者らは、近縁種の間であまり保存されていない区間中に終止コドンまたはフレームシフトを導入している。本発明者らはQuickchange IIまたはQuickchange II XL(Stratagene)を部位指定突然変異誘発に利用している。本発明者らは通常、突然変異誘発後に挿入物全体のシーケンシングを行う。
【実施例】
【0084】
2.「LR」組換え反応、および「発現」クローンの選択
通常、Gateway「デスティネーション」ベクターにより、プロモーターおよび3'カセットが与えられる(図2)。培養細胞における発現用の種々の「デスティネーション」ベクターが市販されている。また、「デスティネーション」ベクターを、アンピシリン耐性遺伝子を含む既存のベクター中への連結に基づくデスティネーションベクターカセット(Invitrogen)挿入によって構築することもできる。本発明者らは、既存の発現ベクターを、本発明者らの以前の研究で用いた「デスティネーション」ベクターに変換するために、「BP」反応を行った[Ohno, G., et al., (2008) Genes Dev 22, 360-374., Kuroyanagi, H. et al., (2006) Nat Methods 3, 909-915., Kuroyanagi, H. et al., (2007) Mol Cell Biol 27, 8612-8621.]。本発明者らは、アンピシリン耐性遺伝子を含むあらゆる既存のベクターを、「デスティネーション」ベクターに、所望の位置で、所望のフレームを有するように変換することができる。変換方法の詳細は他所に記載されるであろう[Kuroyanagi, H. et al., (in press) Nat Protoc.]。C.エレガンスにおける発現のために本発明者らが構築した「デスティネーション」ベクターのヌクレオチド配列は、C.エレガンスのPromoter/Marker Database(http://www.shigen.nig.ac.jp/c.elegans/promoter/index.jsp)で入手可能である。
【実施例】
【0085】
本発明者らは、開始コドンおよび/または終止コドンを伴うかまたは伴わない、pENTR-L1-R5ベクターおよびpENTR-L5-L2ベクター中にある蛍光タンパク質カセットの種々の「エントリー」クローンを構築した。
【実施例】
【0086】
プロトコール3:LRクロナーゼII Plus反応、および適切な「発現」クローンの選択
1.以下の構成成分を1.5ml微量遠心管に添加して混合する:「デスティネーション」ベクター(75ng)、「エントリー」クローン(各15~100ng)、最終容量4マイクロリットル(μL)のDDWまたはTE。1マイクロリットル(μL)のLRクロナーゼII Plus酵素ミックス(Invitrogen)を上記の構成成分に添加して、短時間のボルテックス処理またはタッピングによって十分に混合する。
2.「LR」反応混合物を25℃または室温で一晩インキュベートする。本発明者らは通常、プロテイナーゼK消化を省略している。
3.大腸菌株DH5αまたは他の菌株*を、1~3マイクロリットル(μL)の反応混合物によって形質転換させて、アンピシリン/カルベニシリン耐性「発現」クローンを選択する。本発明者らは、アンピシリン/カルベニシリン耐性コロニーのアンピシリン/カルベニシリン、クロラムフェニコール、およびカナマイシンに対する耐性を日常的に確認している。*F'エピソームを有する大腸菌株は、「発現」クローンを選択するために用いることができない。
4.アンピシリン/カルベニシリンのみに対して耐性のあるクローンを選択し、mini-prepプラスミドDNAの制限酵素消化パターンを確認し、DNA断片の境界部のシーケンシングを行う。
【実施例】
【0087】
3.培養細胞のトランスフェクションおよびトランスジェニック動物の作製
蛍光レポーターミニ遺伝子による培養細胞の一過性トランスフェクションを、標準的なトランスフェクション試薬を用いて行う。蛍光タンパク質の発現は、標準的な複合顕微鏡、フローサイトメトリーおよび他の装置を利用することによって解析可能である。
【実施例】
【0088】
トランスジェニック動物は標準的な方法によって作製することができる。マウスにおける蛍光タンパク質の発現は、複合顕微鏡または共焦点顕微鏡の下で切片を観察することによって解析可能である。本発明者らは通常、高倍率蛍光解剖顕微鏡または共焦点顕微鏡を利用して、トランスジェニック線虫における蛍光レポータータンパク質の細胞特異的および組織特異的な発現を解析した。
【実施例】
【0089】
4.ミニ遺伝子由来mRNAのスプライシングパターンの確認
本発明者らは、レポーターミニ遺伝子が発現され正しくスプライシングされていること、および、選択的スプライシングパターンが内因性遺伝子のスプライシングパターンから予想された通りでありかつ発現された蛍光タンパク質の比率とも一致していることを確認するために、ミニ遺伝子由来mRNAのスプライシングパターンを解析することを強く推奨する。
【実施例】
【0090】
プロトコール4:ミニ遺伝子由来mRNAのRT-PCR解析
1.RNeasy Mini(QIAGEN)または同等物、およびDNase Iを製造元の指示に従って利用することによって、全RNAを細胞、組織または生物から抽出する。
2.PrimeScript(TaKaRa)またはSuperscript II(Invitrogen)、およびプライマーとしてのオリゴ(dT)を製造元の指示に従って用いて、RTで、1~2マイクログラムの全RNAを逆転写させる。
3.PCRに関して、本発明者らは通常、Ex Taq(TaKaRa)およびBIOTAQ(BIOLINE)などの非プルーフリーディングポリメラーゼ、ならびにミニ遺伝子特異的プライマーセットを用いている。GFP特異的リバースプライマーとして、本発明者らは
5'-TGTGGCCGTTTACGTCG-3'(SEQ ID NO:10)または
5'-TTTACTTGTACAGCTCGT-3'(SEQ ID NO:11)
を用いている。mRFP特異的リバースプライマーとして、本発明者らは
5'-GGAGCCGTACTGGAACTGAG-3'(SEQ ID NO:12)または
5'-TTAGGCGCCGGTGGAGTG-3'(SEQ ID NO:13)
を用いている。attBアダプタープライマーを用いることもできる。
4.RT-PCR産物を解析するために、精製産物を直接シーケンシングするか、または産物をpGEM-T Easy(Promega)などのTA-ベクター中にクローニングしてそれらをシーケンシングする。
【実施例】
【0091】
[実施例2] 実験例
図4Aおよび4Bは、C.エレガンスにおける相互排他的エクソンの組織特異的選択的スプライシングの可視化の一例を示す。図4Cおよび4Dは、HeLa細胞におけるウイルス感染誘導性イントロン保持の可視化の一例を示す[Nojima, T. et al., (2009) Nucleic Acids Res 37, 6515-6527.]。図4Eおよび4Fは、マウスにおける相互排他的選択的スプライシングの可視化の一例を示す。
【実施例】
【0092】
本明細書中に用いている略号の正式名称を以下に示す。
略号
EJC、エクソン接合部複合体;
GFP、緑色蛍光タンパク質;
GSP、遺伝子特異的プライマー;
GST、グルタチオンS-トランスフェラーゼ;
mRNA、メッセンジャーRNA;
NMD、ナンセンス変異依存mRNA分解;
PCR、ポリメラーゼ連鎖反応;
PTC、早期終止コドン;
RFP、赤色蛍光タンパク質;
RT、逆転写;
UTR、非翻訳領域。
【実施例】
【0093】
材料および用語解説
【実施例】
【0094】
【表3】
JP0005875009B2_000004t.gif
【実施例】
【0095】
材料および方法
プラスミドの構築
本発明者らは、本質的には本文中に記載した通りにレポーターベクターを構築した。マウスゲノムDNAのエクソン7からエクソン10までの範囲にわたるFGFR2ゲノム領域をPCRによって増幅し、CAGGSプロモーターの調節下にあるEGFP(Clontech)およびmRFP[Campbell RE, et al. (2002) Proc Natl Acad Sci U S A 99: 7877-7882.]の両方を異なる読み枠で保有するGatewayデスティネーションベクター(Invitrogen)中に、クローニングした。レポータータンパク質発現の安定化および増強のために、改変グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)遺伝子(QIAGEN)の人工配列をFGFR2ゲノム断片の前方に導入し、エクソン7とインフレームで連結させた。FGFR2のイントロン9の中心部の1kbp断片は、mRNA発現を顕著に低下させる効果を有するので、除去した。シスエレメントの突然変異はQuikChange XL II(Stratagene)を用いることによって導入した。マウスのFox1 cDNAおよびFox2 cDNAは、Dr. Kawamotoに寄贈いただき[Nakahata S, Kawamoto S (2005) Nucleic Acids Res 33: 2078-2089.]、CAGGSプロモーターによって作動するGatewayデスティネーションベクター中にクローニングした。FGFR2を増幅するため、イントロン9の中央部の1kbpを欠失させるため、および突然変異を導入するためのプライマー配列を、以下に示した。
【実施例】
【0096】
FGFR2を増幅するため、イントロン9の中央部の1kbpを欠失させるため、および突然変異を導入するためのプライマー配列は以下である。
FGFR2 amplify-F:ggctgccctacctcaaggtcctg(SEQ ID NO: 14)
FGFR2 amplify-R:ctctctcacaggcgctgggttgcag(SEQ ID NO: 15)
intron 9 partial deletion-F:gcatgccttgatagagtggcctctc-ctgttgaaccttcccctggag(SEQ ID NO: 16)
intron 9 partial deletion-R:ctccaggggaaggttcaacag-gagaggccactctatcaaggcatgc(SEQ ID NO: 17)
exon 9 mutation for deleting PTC-F:gaggttctctatattcggaatgtTacttttgaggatgctggg(SEQ ID NO: 18)
exon 9 mutation for deleting PTC-R:cccagcatcctcaaaagtAacattccgaatatagagaacctc(SEQ ID NO: 19)
exon 9 3' splice site mutation-F:gcttcgtttgttttctctgccgccggtgttaacaccacggac(SEQ ID NO: 20)
exon 9 3' splice site mutation-R:gtccgtggtgttaacaccggcggcagagaaaacaaacgaagc(SEQ ID NO: 21)
exon 9 5' splice site mutation-F:ctgcatggttgacagttctgccaccaacatactgctctttctctc(SEQ ID NO: 22)
exon 9 5' splice site mutation-R:gagagaaagagcagtatgttggtggcagaactgtcaaccatgcag(SEQ ID NO: 23)
TGCATG mutation-F:gggccaatttttccatgtgttcaatttacgtacgttctaggtggtgacg(SEQ ID NO: 24)
TGCATG mutation-R:cgtcaccacctagaacgtacgtaaattgaacacatggaaaaattggccc(SEQ ID NO: 25)
ISE/ISS-3 mutation-F:taggtggtgacgccgaatctcctgatggcc(SEQ ID NO: 26)
ISE/ISS-3 mutation-R:ggccatcaggagattcggcgtcaccaccta(SEQ ID NO: 27)
【実施例】
【0097】
FGFR2スプライシング・レポーターマウスの作製
構築したFGFR2スプライシング・レポーターベクターを直鎖化して、C57BL/6卵母細胞の前核に注入した。出生後および後期胚の尾部、またはより初期の胚の卵黄嚢由来のゲノムDNAを用い、EGFPに対するプライマーを用いるPCRによってマウスの遺伝子型を判定した。実験はすべて、東京医科歯科大学の動物実験委員会によって認証されたプロトコール(承認番号#0070220、#0080179および#0090084)に従って行った。
【実施例】
【0098】
細胞培養およびトランスフェクション
ラットのAT-3およびDT-3前立腺癌細胞株は、Dr. Garcia-BlancoおよびDr. Carsteinに寄贈いただいた。10%ウシ胎仔血清(FCS)を加えたDulbecco改変イーグル培地(D-MEM)中で細胞を維持し、TransFectin(BioRad)を用いてベクターをトランスフェクトした。内因性Fox2に対するノックダウン実験にはステルスsiRNAを用い、これは、Lipofectamine RNAiMAX(Invitrogen)を用いてトランスフェクトした。
【実施例】
【0099】
顕微鏡検査
レポータートランスジェニックマウスの胚全体の蛍光画像を、電荷結合素子(CCD)カメラ(DP71、Olympus)を備えた蛍光顕微鏡(MZ16FA、Lecia)下で取り込んだ。本発明者らはまた、切片化したトランスジェニック胚の蛍光画像を取り込むために共焦点顕微鏡(Fluoview FV1000、Olympus)も用い、取り込んだ画像はMetamorph(Molecular Devices)によって加工処理した。培養細胞の蛍光画像、およびインサイチューハイブリダイゼーションを示す明視野画像は、CCDカメラ(DP71、Olympus)を備えたNikon Eclipse E600顕微鏡を用いることによって取り込んだ。
【実施例】
【0100】
RT-PCR
全RNAおよびRT-PCRは以前に記載された通りに行った[Kuroyanagi H, et al., (2006) Nat Methods 3: 909-915., Takeuchi A, et al. (1998) Eur J Neurosci 10: 1613-1620.]。すべてのスプライシングバリアントの正体をシーケンシングによって確認した。2100 BioAnalyzerをAgilent DNA1000キット(Agilent Technology)とともに用いてPCR産物の量を測定し、定量解析は3回を上回る独立した実験にて行った。
【実施例】
【0101】
RT-PCRアッセイに用いたプライマー配列を以下に列挙する。
RT-PCRアッセイに用いたプライマー配列は以下である。
レポーターFGFR2-F 5'-GGCCTTTGCAGGGCTGGC-3'(SEQ ID NO: 28)
レポーターFGFR2-R 5'-GGAGCCGTACTGGAACTGAGG-3'(SEQ ID NO: 29)
Fox1-F 5'-GGCACCGCCACACAGACAGATGA-3'(SEQ ID NO: 30)
Fox1-R 5'-TCCTGGTTGGCCTGGCACAACAG-3'(SEQ ID NO: 31)
Fox2-F 5'-CAACAACTCCTGACGCAATGGTTCAGC-3'(SEQ ID NO: 32)
Fox2-R 5'-GATTTTACGGCCCTCTACCACGGTG-3'(SEQ ID NO: 33)
ESRP1-F 5'-CAGGAGATGCCTTTATCCAGATGAAGTC-3'(SEQ ID NO: 34)
ESRP1-R 5'-CAGTATTGTAGGCCAGGCCCTG-3'(SEQ ID NO: 35)
ESRP2-F 5'-CCTACACAGCCACCATTGAAGACATTC-3'(SEQ ID NO: 36)
ESRP2-R 5'-GGTGAGGTAGCCCACAGTAGTG-3'(SEQ ID NO: 37)
【実施例】
【0102】
インビトロでのエクソン認識アッセイ
T7-ex 9 wt(マウスFGFR2のイントロン8、200nt;エクソン9、145nt;およびイントロン9、105nt)、イントロン8中にUGCAUGおよびISE/ISS-3を含むT7-ex 9(イントロン8、237nt;エクソン9、145nt;およびイントロン9、74nt)およびT7-ex 8 wt(イントロン8、200nt;エクソン8、149nt;およびイントロン9、100nt)のPCR産物を、T7転写のためのDNAテンプレートとして用いた。図3Aに示したように、イントロン8中の3'ssおよびイントロン9中の5'ssの突然変異DNAテンプレートを突然変異レポーターベクターから調製した。RNA基質をインビトロでのT7転写によって32Pで標識した。インビトロでのスプライシング反応およびUV架橋は、Sawaによって記載された条件下で行った[Sawa H, Shimura Y (1992) Genes Dev 6: 244-254.]。UV架橋によってシフトしたバンドを同定するために、U1(5'-CGGAGTGCAATG-3'/SEQ ID NO:38)またはU2(5'-CAGATACTACACTTG-3'/SEQ ID NO:39)に対する予熱cDNAオリゴ(10マイクログラム/mL)をUV架橋後のRNAに添加し、U1またはU2 cDNAオリゴ/RNA混合物を30℃で10分間、50U/mLのRNアーゼHで消化した。図5Cでは、高精製Flag-Fox2およびFlag-ESRP1をRNAに添加して、室温で5分間インキュベートした後にスプライシング反応を行い、それらがU1 snRNAまたはU2 snRNAのエクソン認識に与える阻害効果または活性化効果を検討した。これらの反応後に、RNAを変性PAGE解析およびオートラジオグラフィーに供した。
【実施例】
【0103】
インサイチューハイブリダイゼーション
インサイチューハイブリダイゼーションは、以前に記載されたもの[Takeuchi A, et al. (2003) Nat Genet 33: 172-176., Takeuchi A, O'Leary DD (2006) J Neurosci 26: 4460-4464.]に修正を加えて行った。手短に述べると、胚を4%パラホルムアルデヒドで固定し、30%スクロースで凍結保護処理し、最適切削温度(OCT)化合物中に包埋し、20μm厚の切片として切り出した。ジゴキシゲニンで標識したアンチセンスRNAプローブを、アルカリホスファターゼを結合させたジゴキシゲニン抗体(Roche)由来のFab断片および5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリルリン酸(BCIP)/ニトロブルーテトラゾリウム(NBT)溶液によって可視化した。メチルグリーンで切片を対比染色した。以下のcDNAをリボプローブとして用いた:Fox1(マウスcDNA由来の131~865bp)、Fox2(マウスcDNA由来の2261~2991bp)、ESRP1(マウスcDNA由来の1168~1708bp)およびESRP2(マウスcDNA由来の208~807bp)。
【実施例】
【0104】
[実施例3] FGFR2スプライシング・レポーターシステムの作製
本発明者らは、上流および下流エクソン(エクソン7および10)に隣接した2つの選択的エクソン(エクソン8および9)と、それらの間のイントロンとを含む、FGFR2遺伝子の3.7kbゲノム断片を用いた(図6A)。選択的エクソン周辺のゲノム領域のほとんどすべてを用いることにより、このレポーターシステムは、組織特異的制御に必須な制御性シスエレメントのすべてを含みかつどのスプライス部位配列およびシスエレメントが制御のために真に重要であるかを伝えることが、予想された。RFPおよびEGFPを異なる読み枠でタンデムに含むベクター中に、このゲノム断片をクローニングした[Orengo, J.P. et al., (2006). Nucleic Acids Res 34, e148.]。このレポーターシステムにより、エクソン8が選択された場合にはEGFPを発現し、エクソン9が選択された場合にはRFPを発現する単一のレポーターベクターから、スプライシング制御がモニターできたと考えられる(図6A)。
【実施例】
【0105】
本発明者らは次に、2つの前立腺癌細胞株であるAT-3およびDT-3細胞を用いることにより、本レポーターシステムが細胞型特異的なスプライシング制御を反映できるか否かを検討した。AT-3細胞は内因性FGFR2のエクソン9アイソフォームを特異的に発現する間葉型細胞であり、DT-3細胞はエクソン8アイソフォームを優位に発現する上皮型細胞である[Yan G, et al., (1993) Mol Cell Biol 13: 4513-4522.]。このレポーターシステムをこれらの2つの細胞株に導入したところ、AT-3細胞はエクソン9-RFPを特異的に発現し、DT-3細胞はエクソン8-EGFPを優位に発現した(図6B)。したがって本発明者らは、これらのレポーターベクターが内因性FGFR2スプライシングの細胞型特異的制御を反映すると結論づけることができた。
本発明者らは次に、このレポーターからトランスジェニックマウスを作製することによって、本レポーターシステムがインビボでのFGFR2スプライシングの組織特異的制御を示しうるか否かを確認した。E14.5からE16.5までの発生段階にあるマウスにおいて、FGFR2スプライシングアイソフォームに変化が起こることは周知である。これらの段階では、未来の上皮細胞の分化が誘導され、それらはFGFR2のエクソン8アイソフォームを発現して、間葉細胞からFGF-10などのモルフォゲンシグナルを受け取り始める[Finch PW, et al., (1995) Dev Dyn 203: 223-240.]。トランスジェニック胚全体をE14.5時点で調べたところ、広範なRFPシグナルが全体にわたって検出され、特異的EGFPシグナルはひげのパターンとして、および肢端または身体の端でも検出された(図6C)。本発明者らはさらに、後期発生段階E16.5のトランスジェニック胚の一連の切片を検討することにより、詳細な発現プロファイルを評価した(図6D)。EGFPシグナルは皮膚および毛包球の表面上の細胞において特異的に検出され、ここに分化した上皮細胞が位置していた(図6D、矢印で示す)。また、EGFPシグナルは肺胞内、食道内および結腸内の上皮細胞において、胸腺上皮において、ならびに唾液腺管細胞でも検出された(図6D、上方および中央のパネル内の矢印)。発生中の脳(海馬)および末梢神経系(三叉神経節)では強いRFPシグナルが検出された(図6D、下方パネル内の矢印)。EGFPの発現パターンは、報告されたFGFR2のエクソン8の発現パターンに合致し[Finch PW, et al., (1995) Dev Dyn 203: 223-240., Orr-Urtreger A, et al. (1993) Dev Biol 158: 475-486.]、これにより、本発明者らのレポーターシステムがインビボでのFGFR2の内因性スプライシング制御を反映し、かつベクター中に用いたゲノム断片が相互排他的エクソンの組織特異的切り替えのために必要な制御エレメントを含むことが示された。
【実施例】
【0106】
[実施例4] 3'スプライス部位の不均衡な配列は、相互排他的エクソン選択のために必須である
スプライシングレポータートランスジェニックマウスの胚において、RFPはほぼ全身にわたって発現され、EGFPは上皮細胞内で特異的に発現されていた。この発現パターンは、レポータートランスジェニックマウスにおいてエクソン9が「デフォルト」として優位に選択され、上皮特異的制御因子によってエクソン8の包含が促進されうるという制御機構の可能性を示唆する。この仮説を検証するために、本発明者らはまず、その3'および5'スプライス部位を含む選択的エクソンの配列を比較した。これらの2つのエクソン間で同定された主な違いとは、エクソン8は、弱い3'スプライス部位と、コンセンサス配列に対するいくつかのミスマッチを含むポリピリミジン部分とを有する(図7A、TGTTCTAG ca/SEQ ID NO:40)一方、エクソン9は、保存的コンセンサス配列を有する強い3'スプライス部位を有する(図7A、TTTTCTAG gc/SEQ ID NO:41)という点である。それらの5'スプライス部位には明らかな違いはない(データは示さず)。不均衡な3'スプライス部位が非上皮細胞におけるエクソン9の「デフォルト」選択のために必須であるか否かを検討するために、本発明者らはそれらの3'スプライス部位に突然変異を導入して、スプライシング制御の変化について観察した。本発明者らは2つの型の突然変異ベクターを調製した。一方は、同一の強い方の3'スプライス部位をエクソン8および9の両方に有し(図7A、E8-Sベクター)、もう一方は、同一の弱い方の3'スプライス部位をエクソン8および9の両方に有する(図7A、E9-Wベクター)。これらのベクターをAT-3およびDT-3細胞にトランスフェクトして、スプライシング制御の変化をRT-PCRによって検討した。WTベクターをAT-3細胞に導入した場合にはそのほぼ100%がエクソン9形態をとったが、DT-3細胞では単一包含産物のうち45%前後{34.5/(34.5+42.7)%}がエクソン8形態をとり(図7B、レーン1、4)、これは、図6Bにおける蛍光の発現パターンと一致した。ナンセンス変異依存分解(NMD)反応を回避するため、本発明者らのスプライシング・レポーターは、二重包含形態において初期早期終止コドンが生じないように設計された[Chang YF, et al., (2007) Annu Rev Biochem 76: 51-74.]。したがって本発明者らは、二重包含形態および二重スキップ形態を含むすべてのスプライシング産物をモニターすることができた。注目に値することとして、E8-SベクターをトランスフェクトしたらAT-3細胞のほとんどが二重包含形態を発現し、これは、2つの選択的エクソンが構成的エクソンとしてプロセシングを受けたことを意味する(図7B、レーン2)。この結果は、非上皮性AT-3細胞において2つの相互排他的エクソンからエクソン9を単一エクソン選択するためには、エクソン8の弱い方の3'スプライス部位が極めて重要であることを示している(図7B、レーン2)。また、これらのベクター内で、エクソン8周辺の報告されているエクソン性およびイントロン性のスプライシングサイレンサー配列は突然変異していないことから、この結果により、AT-3細胞におけるエクソン8は仮定のリプレッサーによって完全にサイレンシングされるのではなく、その弱い3'スプライス部位のためにWTベクター中で非エクソン配列として単に無視されているに過ぎないことも示された[Carstens RP, et al., (2000) Mol Cell Biol 20: 7388-7400., Del Gatto F, Breathnach R (1995) Mol Cell Biol 15: 4825-4834., Wagner EJ, et al. (2005) J Biol Chem 280: 14017-14027.]。エクソン9の3'スプライス部位を弱くすると(E9-Wベクター)、DT-3細胞における選択はほぼ完全にエクソン8に切り替わり(図7B、レーン4および6)、このことは、エクソン9の完全な抑制が上皮性DT-3細胞におけるエクソン8包含のために重要である可能性を示している。したがって、相互排他的エクソンからの単一エクソン選択およびそれらの切り替えのためには不均衡な3'スプライス部位が必須である。
【実施例】
【0107】
[実施例5] エクソン9の破壊はエクソン8への切り替えを引き起こす
図7における結果から、非上皮性AT-3細胞におけるエクソン9の単一エクソン選択のためには、エクソン8の弱い方の3'スプライス部位が必須であることが示された。さらに、エクソン9の3'スプライス部位を弱い方にすると、上皮性DT-3細胞はエクソン8形態を効率的に選択した。これらの所見は、エクソン9の抑制によってエクソン8への切り替えが引き起こされている可能性を示唆する。この仮説を検討するために、本発明者らは、エクソン9の3'および5'スプライス部位の一方または両方に、抑制を模してそのスプライス部位コンセンサス配列を破壊するための突然変異を導入し、これらをAT-3細胞にトランスフェクトした(図8A)。エクソン9の両方のスプライス部位を突然変異させた場合(図8A、3'&5'ss Mut)、AT-3細胞はエクソン8形態(22.9%)および二重スキップ形態(77.1%)を発現した(図8B、レーン4)。これらの結果から、AT-3細胞におけるエクソン9の遮断は、少なくとも部分的にエクソン8への切り替えを促進することが示された。興味深いことに、この切り替えを引き起こすためには3'スプライス部位の突然変異(図8A、3'ss Mut)だけで十分であった(図8B、レーン2)が、5'スプライス部位の突然変異(図8A、5'ss Mut)は、エクソン9中のggGTにおける潜在的5'スプライス部位を用いたエクソン9の異常スプライシング産物を生じさせた(図8B、レーン3に矢尻で示し、模式図を右側に図示している)。これらの結果により、エクソン9選択のために3'スプライス部位の認識が必須であることが示され、このことは、エクソン9の認識がその3'スプライス部位に依存している可能性を示唆する。この仮説を検証するために、本発明者らは、U2およびU1 snRNA/snRNPの結合によるスプライス部位認識を直接モニターするためのインビトロスプライシングアッセイを行った(図8C)。フランキングイントロンを含む野生型および突然変異型のエクソン9に対する32P標識RNAプローブ(図8Cの上方パネル)を、HeLa核抽出物とのインキュベーション後にUV照射によって架橋させ、電気泳動によって分離した。図10Aに示したように、HeLa細胞は非上皮性細胞の特徴を有することが確認された。U2またはU1結合の特異性は、U2またはU1に相補的なオリゴヌクレオチドの添加、およびRNアーゼH消化によって確認された[Konarska MM, Sharp PA (1986) Cell 46: 845-855., Sawa H, Shimura Y (1992) Genes Dev 6: 244-254.](図8C)。スプライシング条件下で、WT RNAプローブを用いてU1およびU2 snRNAの結合およびシフトが観察され、U1およびU2のバンドは一致した(図8C、レーン1~4、矢印で示す)。注目に値することとして、3'スプライス部位の突然変異を保有するプローブは、U1およびU2の両方で、シフトしたバンドの完全消失をもたらした(図8C、レーン5~8)。これらの結果から、エクソン9の認識はU2 snRNAの3'スプライス部位への結合に全面的に依存することが示された。それとは反対に、5'スプライス部位の突然変異(5'ss突然変異)を保有するプローブではU1およびU2両方の結合が保たれ(図8C、レーン9~12)、これは図8B、レーン3に示されたRT-PCRの結果によく一致した。これらの結果は、U2 snRNAの結合がU1 snRNAの結合を支持し、その結果、エクソン9中のはるかに弱い潜在的5'スプライス部位がその5'ss突然変異の際に用いられたことを示唆する(図8B、レーン3および図8C、レーン12、星印を付した矢尻で示す)。これらの所見は、非上皮性細胞におけるエクソン9の選択的使用がなぜその3'スプライス部位の相対的強度に依存しているかを説明することができる。図12A、非上皮性制御または間葉性制御に示されたモデルを提唱しうるであろう。
【実施例】
【0108】
[実施例6] エクソン9認識のためのサイレンシングエレメントの同定
図12A、非上皮性制御または間葉性制御に示されているように、非上皮性細胞におけるエクソン9の単一エクソン選択のためには不均衡な3'スプライス部位が必須であり、エクソン9の認識はその3'スプライス部位に依存的である。また、このエクソン9の3'スプライス部位の欠失は、エクソン8への切り替えも部分的に引き起こした。これらの結果は、上皮細胞においてエクソン8への切り替えを引き起こす、エクソン9に対するサイレンサーの存在を示唆している。この仮説を検証するために、本発明者らはまず、エクソン9の3'スプライス部位の近傍に位置する抑制性シスエレメントのスクリーニングを行い、高度に保存されている2つの配列、すなわちイントロン8中のUGCAUG配列およびISE/ISS-3(イントロン性スプライシングエンハンサー/サイレンサー-3)を取り出したが、これらはいずれもエクソン9に対するサイレンシング性シスエレメントであることが報告されている[Baraniak AP, et al., (2006) Mol Cell Biol 26: 1209-1222., Hovhannisyan RH, Carstens RP (2005) Mol Cell Biol 25: 250-263.](図9A)。これらの2つのシスエレメントがエクソン9のサイレンシングに必須であるか否かを検討するために、本発明者らはUGCAUGおよびISE/ISS-3の一方または両方のそれらのレポーターに突然変異を導入し、上皮性DT-3細胞にトランスフェクトした。本発明者らはまず、エクソン9のリプレッサーであることが報告されているFoxのRNA結合タンパク質への結合を妨害するために、UACGUACGUG(SEQ ID NO:43)をUGCAUGCAUG(SEQ ID NO:42)で置換した[Baraniak AP, et al.,(2006) Mol Cell Biol 26: 1209-1222.]。すると、DT-3細胞におけるエクソン8選択の比率は2分の1に低下した(44.7%から21.9%、図9B、レーン2)。次に本発明者らは、いくつかのジヌクレオチドGU配列を含む85bp配列である、ISE/ISS-3を欠失させた。ISE/ISS-3の欠失により、エクソン8包含の比率は4分の1まで低下した(44.7%から12.4%、図9B、レーン3)。これらのエレメントの両方を突然変異させると、DT-3細胞はもはやエクソン8を選択することができず、すべてのスプライシング産物がエクソン9形態になった(図9B、レーン4)。これらの結果は、おそらくその3'スプライス部位を介してエクソン9をサイレンシングすることによってエクソン8を選択するために、DT-3細胞がこれらのシスエレメントの両方を用いることを示している。
【実施例】
【0109】
[実施例7] エクソンを切り替えるためのトランス作用因子の制御機構
図9からの結果により、エクソン8の選択のためにはUGCAUGおよびISE/ISS-3の両方が必要かつ十分であることが示唆される。以前の研究により、Fox2はイントロン8中のUGCAUGを通してエクソン8包含を促進することが示されている[Baraniak AP, et al.,(2006) Mol Cell Biol 26: 1209-1222.]。また、cDNAライブラリースクリーニングによる最近の研究により、ISE/ISS-3への結合を通してエクソン8包含を媒介する上皮性スプライシング制御タンパク質ESRP1およびESRP2も同定されている[Warzecha CC, et al., (2009) Mol Cell 33: 591-601.]。このため、本発明者らは、Fox1、Fox2、ESRP1およびESRP2がエクソン9からエクソン8への切り替えを促進するか否かを検討した。本発明者らはまず、AT-3細胞とDT-3細胞との間でこれらのRNA結合タンパク質の発現レベルをRT-PCRによって検討して比較した。Fox2は両方の細胞株で同程度のレベルで発現されたが、上皮型DT-3細胞ではFox1の発現は検出不能であり(図9C)、ESRP1およびESRP2の両方が特異的に発現された(図9C)。UGCAUGおよびISE/ISS-3の両方がエクソン8の選択のために必須なシスエレメントであるという所見を考慮すると(図9B)、広く発現されるFox2はエクソン8包含に関して上皮特異的ESRP1およびESRP2と協働する可能性がある。この仮説を検証するために、本発明者らは、それらのFGFR2スプライシング・レポーターを、Fox1、Fox2、ESRP1もしくはESRP2またはこれらの組み合わせとともに、非上皮性細胞の特徴を有するHeLa細胞にトランスフェクトした(図10A、レーン1)。Fox1またはFox2をHeLa細胞に導入したところ、エクソン8の選択が用量依存的な様式で増加し、それぞれ10%(図10A、レーン2~4)または40%(図10A、レーン5~7)に達した。ESRP1またはESRP2を導入した場合にもエクソン8の選択は用量依存的な様式で増加し、90%超に達した(図10A、それぞれレーン8~10および15~17)。HeLa細胞は内因性Fox2をAT-3細胞と類似した様式で発現するため(図10A、レーン1)、本発明者らはESRP1またはESRP2をFox2ノックダウン条件下で導入し、ESRP1またはESRP2と内因性Fox2との協調効果について評価した。Fox2のノックダウン効率はmRNAレベルでは80%を上回った(平均81.2%)。内因性Fox2のノックダウンはESRP1またはESRP2によって促進されるエクソン8選択の比率を低下させ、最大低下率はそれぞれ24%(35.1~11.0% 図10A、レーン8対レーン11)または23%(55.9~32.6%、レーン15対レーン18)であった。Fox2およびESRP1の両方をトランスフェクトした場合、エクソン8包含の比率は、ESRP1の単独トランスフェクションで得られたものと同程度であった(図10A、レーン21~24)。これらの結果は、導入されたESRPが内因性Fox2とともにエクソン8包含を促進することを示し、これは、Fox2およびESRPがエクソン8包含のために共に協調して作用することを示唆する。これらの結果は、Fox1、Fox2、ESRP1もしくはESRP2、またはFox2およびESRP1の両方をコトランスフェクトしたスプライシング・レポーターからの蛍光によっても確認された(図10B)。ESRP1またはESRP2の過剰発現は色を赤色から緑色に変化させたが、Fox1またはFox2のみが色変化に与える影響はそれより小さかった。Fox2およびESRP1のコトランスフェクションは、相互排他的エクソンによってコードされるタンパク質の切り替えを反映した色の切り替えに対して最大の影響を及ぼした。本発明者らは続いて、Fox2およびESRP1によるエクソン切り替えがイントロン8中のUGCAUGおよびISE/ISS-3に依存するか否かを検証した。本発明者らは、UGCAUG、ISE/ISS-3、またはこの両方を突然変異させたレポーターベクターにおけるFox2および/またはESRP1の過剰発現試験を行って、FoxおよびESRPによって引き起こされるエクソン切り替えがそれぞれUGCAUGおよびISE/ISS-3に左右されることを確認した(図13)。これらの結果から、FoxおよびESRPは、エクソン9の近傍に位置するUGCAUGおよびISE/ISS-3というシスエレメントを通して、エクソン8から9への切り替えを協調的に促進することが示された。
【実施例】
【0110】
次に本発明者らは、Foxおよび/またはESRPがエクソン9認識の妨害を通してエクソン9からエクソン8への切り替えを引き起こすのかどうかを検証した。本発明者らはこれを、UGCAUGおよびISE/ISS-3部位を含むイントロンを有するエクソン9の32P標識RNAプローブ(図10C、上方パネル)、ならびに、同じ区間のエクソン8 RNAプローブを用いた、インビトロでのスプライシング条件下で検討した。エクソン9プローブをHeLa核抽出物とのインキュベーション後にUV照射によって架橋させ、電気泳動によって分離したところ、図8Cと同様、U1およびU2の架橋によってシフトしたバンドが一致して観察された(図10C、レーン2、矢印で示す)。しかしエクソン8プローブでは、U1によってシフトしたバンドのみが観察され(図10C、レーン8、矢印で示す、RNアーゼH消化に関してはデータを示さず)、これはおそらくその弱い方の3'スプライス部位に起因すると考えられた。組換えFox2またはESRP1タンパク質をエクソン9プローブとともに添加したところ、U1およびU2 snRNAによりシフトしたバンドは減少し(図10C、それぞれレーン4および5)、Fox2およびESRP1タンパク質の両方の添加によってほとんど消失した(図10C、レーン6)。しかし、エクソン8プローブを用いると、Fox2または/およびESRP1の抑制効果も活性化効果もみられなかった(図10C、レーン9~12)。これらのデータは、FoxおよびESRPの両方がインビトロでのエクソン9認識を妨害することを示している。図10および図13の結果を総合すると、FoxおよびESRPは、UGCAUGおよびISE/ISS-3を通したその3'スプライス部位に起因するエクソン9の認識を妨害し、エクソン8への切り替えを促進したことが示される。図12A、上皮性制御に示されたモデルを提唱しうるであろう。
【実施例】
【0111】
[実施例8] FoxおよびESRPの発現プロファイルはインビボでのエクソン8-EGFPと一致する
UGCAUGおよびISE/ISS-3を介したFoxおよびESRPによるエクソン9のその3'スプライス部位からの認識の妨害により、エクソン8への切り替えが促進されることが、インビトロ試験によって示された。残る疑問は、FoxおよびESRPの発現が、インビボでの発生の際の組織特異的な様式におけるエクソン8形態の発現と一致するか否かである。本発明者らは、Fox1、Fox2、ESRP1およびESRP2の発現プロファイルを、E16.5でのそれらのレポータートランスジェニックマウス胚からの連続切片を用いるインサイチューハイブリダイゼーションによって検討した(図11)。本発明者らが図6Dで既に示したように、エクソン8-EGFPの発現は左のパネルにある(白の矢印で示す)。隣接切片を用いて行ったインサイチューハイブリダイゼーションにおいて、Fox1 mRNAはこの段階の胚全体にわたって広範に検出され、その発現は上皮組織に局在するエクソン8-EGFPシグナルと一致した(黒の矢印で示す)。しかし、EGFPシグナルが観察された組織ではFox2が検出されなかった一方、同じ切片中の神経組織および筋肉ではFox2の強いシグナルが検出された(データは示さず)。ESRP1およびESRP2の発現は上皮組織で特異的に検出され(黒の矢印で示す)、これらの発現は発生段階の際のエクソン8-EGFPシグナルとほぼ完全に重なり合った。インビボでのこれらの所見は、組織特異的因子ESRPが全身的に発現されるFoxファミリーと共に作用してエクソン8包含を促進するという、図12Aにおける上皮性制御モデルを裏づけるものである。
【実施例】
【0112】
[実施例9] 被験化合物が哺乳類多細胞生物において特定の遺伝子の選択的スプライシングに影響を及ぼすか否かを試験するための方法
被験化合物が哺乳類多細胞生物において特定の遺伝子の選択的スプライシングに影響を及ぼすか否かを試験するための方法の戦略は、図14に示されている。
【実施例】
【0113】
該方法のために用いたレポータータンパク質はGFPおよびFRPである。該方法の結果は表4-1~4-22に示されている。これらの結果は、特定の遺伝子の選択的スプライシングに影響を及ぼす化合物が、本発明の方法によって実際に単離されていることを実証している。
【実施例】
【0114】
【表4-1】
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表4-2は表4-1の続きである。
【実施例】
【0115】
【表4-2】
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表4-3は表4-2の続きである。
【実施例】
【0116】
【表4-3】
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表4-4は表4-3の続きである。
【実施例】
【0117】
【表4-4】
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表4-5は表4-4の続きである。
【実施例】
【0118】
【表4-5】
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表4-6は表4-5の続きである。
【実施例】
【0119】
【表4-6】
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表4-7は表4-6の続きである。
【実施例】
【0120】
【表4-7】
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表4-8は表4-7の続きである。
【実施例】
【0121】
【表4-8】
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表4-9は表4-8の続きである。
【実施例】
【0122】
【表4-9】
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表4-10は表4-9の続きである。
【実施例】
【0123】
【表4-10】
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表4-11は表4-10の続きである。
【実施例】
【0124】
【表4-11】
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表4-12は表4-11の続きである。
【実施例】
【0125】
【表4-12】
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表4-13は表4-12の続きである。
【実施例】
【0126】
【表4-13】
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表4-14は表4-13の続きである。
【実施例】
【0127】
【表4-14】
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表4-15は表4-14の続きである。
【実施例】
【0128】
【表4-15】
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表4-16は表4-15の続きである。
【実施例】
【0129】
【表4-16】
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表4-17は表4-16の続きである。
【実施例】
【0130】
【表4-17】
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表4-18は表4-17の続きである。
【実施例】
【0131】
【表4-18】
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表4-19は表4-18の続きである。
【実施例】
【0132】
【表4-19】
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表4-20は表4-19の続きである。
【実施例】
【0133】
【表4-20】
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表4-21は表4-20の続きである。
【実施例】
【0134】
【表4-21】
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表4-22は表4-21の続きである。
【実施例】
【0135】
【表4-22】
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【実施例】
【0136】
産業上の利用可能性
多色蛍光レポーターは、培養細胞および生きている生物における選択的スプライシングのパターンを単一細胞分解能で可視化するために有用なツールである。多色レポーターは、選択的スプライシングの制御に関与するシスエレメントおよびトランス作用因子の探索のため、ならびにスプライシングパターンに影響を及ぼす化学物質のスクリーニングのために利用されている。本発明において、本発明者らは、線虫セノラブディティス・エレガンス(Caenorhabditis elegans)、培養細胞およびマウス用の蛍光選択的スプライシング・レポーターミニ遺伝子をどのように構築するのかを記載している。ミニ遺伝子の構築は部位指定組換えに基づいており、別々のベクター中にあるプロモーター、タグタンパク質cDNA、関心対象のゲノム断片、蛍光タンパク質cDNA、および3'カセットなどのモジュール式DNA断片を組み立てることによって、さまざまなミニ遺伝子を容易に構築することができる。本発明者らはまた、蛍光選択的スプライシング・レポーターの設計において考慮すべき点も記載している。このスプライシング・レポーターシステムは、理論的にはあらゆる他の生物に対して適用可能である。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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