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明細書 :SiC半導体ウエーハ熱処理装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5561676号 (P5561676)
公開番号 特開2012-028446 (P2012-028446A)
登録日 平成26年6月20日(2014.6.20)
発行日 平成26年7月30日(2014.7.30)
公開日 平成24年2月9日(2012.2.9)
発明の名称または考案の名称 SiC半導体ウエーハ熱処理装置
国際特許分類 H01L  21/324       (2006.01)
C30B  25/10        (2006.01)
C30B  33/02        (2006.01)
C30B  29/36        (2006.01)
C23C  16/26        (2006.01)
C23C  16/44        (2006.01)
C23C  14/48        (2006.01)
H01L  21/265       (2006.01)
H01L  21/20        (2006.01)
FI H01L 21/324 G
C30B 25/10
C30B 33/02
C30B 29/36 A
C23C 16/26
C23C 16/44 B
C23C 14/48 Z
H01L 21/265 602A
H01L 21/324 X
H01L 21/324 J
H01L 21/324 R
H01L 21/20
請求項の数または発明の数 25
全頁数 36
出願番号 特願2010-164010 (P2010-164010)
出願日 平成22年7月21日(2010.7.21)
審査請求日 平成25年4月17日(2013.4.17)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503092180
【氏名又は名称】学校法人関西学院
発明者または考案者 【氏名】金子 忠昭
【氏名】山本 高稔
【氏名】砂田 英範
【氏名】平島 等
個別代理人の代理人 【識別番号】100118784、【弁理士】、【氏名又は名称】桂川 直己
審査官 【審査官】豊田 直樹
参考文献・文献 特開2009-272328(JP,A)
特開2004-271072(JP,A)
特開2006-339397(JP,A)
特開2005-019725(JP,A)
特開2003-068669(JP,A)
特開2005-273931(JP,A)
特開2008-230944(JP,A)
特開2008-034464(JP,A)
特開2004-292305(JP,A)
特開2000-044398(JP,A)
特開2009-007193(JP,A)
特開2001-007035(JP,A)
特開2005-303010(JP,A)
特開2002-293522(JP,A)
特開2005-093519(JP,A)
特開2010-076954(JP,A)
特開平11-354528(JP,A)
特開2003-173978(JP,A)
調査した分野 H01L 21/26 - 21/268
H01L 21/322 - 21/326
H01L 21/42 - 21/428
H01L 21/477 - 21/479
H01L 21/205
C30B 1/00 - 35/00
特許請求の範囲 【請求項1】
単結晶SiC基板又は少なくとも一側の表面が単結晶SiCで被覆された基板の熱処理を行うSiC半導体ウエーハ熱処理装置において、
前記基板が収容された坩堝が導入される本加熱室と、
前記基板を900℃以上2400℃以下の温度に加熱可能であり、前記本加熱室内の空間を前記基板の表面に平行な面で切断した断面の温度を一様にすることができ、前記基板の表面に垂直な方向で温度を異ならせたり均一にしたりすることができる加熱装置と、
前記本加熱室において、前記坩堝内のSiの圧力を調整可能な調整手段と、
前記坩堝を前記本加熱室へ移動させる移動機構と、
を備え
前記坩堝内には、固体状のSiが配置され、
前記調整手段は、前記移動機構が前記坩堝の位置を変化させて当該坩堝の密閉度合を変化させることにより、前記本加熱室から前記坩堝を取り出すことなく当該坩堝内のSiの圧力を変化させることを特徴とするSiC半導体ウエーハ熱処理装置。
【請求項2】
請求項に記載のSiC半導体ウエーハ熱処理装置であって、
前記坩堝が前記本加熱室に位置している状態において、前記本加熱室に隙間を生じさせることなく当該坩堝内のSiの圧力を調整可能であることを特徴とするSiC半導体ウエーハ熱処理装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のSiC半導体ウエーハ熱処理装置であって、
前記坩堝の材料は、タンタルカーバイド処理を施したタンタルにより構成されており、タンタルカーバイド材料は、炭素分子を吸着するゲッター作用を有することを特徴とするSiC半導体ウエーハ熱処理装置。
【請求項4】
請求項1からまでの何れか一項に記載のSiC半導体ウエーハ熱処理装置であって、
前記坩堝を載せるための受け台を備え、
前記受け台は、タングステンカーバイド、タングステン、モリブデン、タンタル、タンタルカーバイド、タンタルカーバイドをコーティングしたグラファイト及びタンタルカーバイド処理を施したタンタルのうち少なくとも何れかであることを特徴とするSiC半導体ウエーハ熱処理装置。
【請求項5】
請求項1からまでの何れか一項に記載のSiC半導体ウエーハ熱処理装置であって、
前記加熱装置は、
前記基板の周囲を囲むように配置される複数の加熱ヒータと、
それぞれの前記加熱ヒータを支持するヒータ支持部と、
を備え、
それぞれの前記加熱ヒータは、位置が対応する前記ヒータ支持部とともに一体的に取外し可能であることを特徴とするSiC半導体ウエーハ熱処理装置。
【請求項6】
請求項に記載のSiC半導体ウエーハ熱処理装置であって、
前記加熱ヒータ及び前記ヒータ支持部の構成は、3の倍数の多角形状に分割した構成の各辺の矩形のブロックを組み合わせた構成とし、3相交流電源負荷に均等に対応した前記加熱ヒータの構成を合理化したことを特徴とするSiC半導体ウエーハ熱処理装置。
【請求項7】
請求項に記載のSiC半導体ウエーハ熱処理装置であって、
前記加熱ヒータに電流を流すための電源として、単相交流電源又は直流電源を用い、
前記加熱ヒータ及び前記ヒータ支持部は、多角形状に配置されることを特徴とするSiC半導体ウエーハ熱処理装置。
【請求項8】
請求項又はに記載のSiC半導体ウエーハ熱処理装置であって、
前記本加熱室は、前記坩堝を1rpm以上で回転させる坩堝回転機構を備えることを特徴とするSiC半導体ウエーハ熱処理装置。
【請求項9】
請求項からまでの何れか一項に記載のSiC半導体ウエーハ熱処理装置であって、
前記加熱装置は、前記基板の表面に垂直な方向に複数の前記加熱ヒータを備え、
これらの複数の前記加熱ヒータに発生させる熱を個別に制御可能なことを特徴とするSiC半導体ウエーハ熱処理装置。
【請求項10】
請求項からまでの何れか一項に記載のSiC半導体ウエーハ熱処理装置であって、
前記ヒータ支持部同士が弾性部材を介して接続されることを特徴とするSiC半導体ウエーハ熱処理装置。
【請求項11】
請求項から10までの何れか一項に記載のSiC半導体ウエーハ熱処理装置であって、
前記加熱ヒータは、タングステンカーバイド、タングステン、モリブデン、タンタル、タンタルカーバイド、タンタルカーバイドをコーティングしたグラファイト及びタンタルカーバイド処理を施したタンタルのうち少なくとも何れかであることを特徴とするSiC半導体ウエーハ熱処理装置。
【請求項12】
請求項1から11までの何れか一項に記載のSiC半導体ウエーハ熱処理装置であって、
前記本加熱室は、前記加熱装置による熱を前記基板に向けて反射するように配置され、複数枚の熱反射金属板で構成される多層熱反射金属板を備えることを特徴とするSiC半導体ウエーハ熱処理装置。
【請求項13】
請求項12に記載のSiC半導体ウエーハ熱処理装置であって、
前記熱反射金属板同士の間又は、前記多層熱反射金属板の外側に配置される複数の温度検出部を備え、
前記加熱装置は、前記温度検出部の検出結果に基づいて制御されることを特徴とするSiC半導体ウエーハ熱処理装置。
【請求項14】
請求項12又は13に記載のSiC半導体ウエーハ熱処理装置であって、
前記本加熱室に隣接する予備加熱室と、
前記坩堝とともに移動可能であり、前記多層熱反射金属板の積層枚数よりも少ない枚数で構成される第2多層熱反射金属板と、
を備え、
前記坩堝が前記予備加熱室内にあるときには、前記第2多層熱反射金属板が前記本加熱室と前記予備加熱室とを隔てるように位置し、前記加熱装置から発生する熱の一部が前記第2多層熱反射金属板を介して前記予備加熱室に供給されることを特徴とするSiC半導体ウエーハ熱処理装置。
【請求項15】
請求項14に記載のSiC半導体ウエーハ熱処理装置であって、
前記坩堝とともに移動可能であり、前記坩堝が前記本加熱室内にあるときに当該本加熱室と前記予備加熱室とを隔てるように位置する第3多層熱反射金属板と、
前記坩堝とともに移動可能であり、前記坩堝が前記本加熱室内にあるときに前記予備加熱室と外部とを隔てるように位置する第4多層熱反射金属板と、
を備え、
前記第3多層熱反射金属板及び前記第4多層熱反射金属板は、複数の貫通孔を有する熱反射金属板を、当該貫通孔の位置を異ならせながら積層して構成されることを特徴とするSiC半導体ウエーハ熱処理装置。
【請求項16】
請求項15に記載のSiC半導体ウエーハ熱処理装置であって、
本加熱室は、前記第4多層熱反射金属板の外側に、コールドトラップとしての水又は液体窒素を用いた冷却装置を備えることを特徴とするSiC半導体ウエーハ熱処理装置。
【請求項17】
請求項14又は15に記載のSiC半導体ウエーハ熱処理装置であって、
前記予備加熱室に隣接する第1断熱室と、
前記第1断熱室に隣接する第2断熱室と、
前記坩堝とともに移動可能であり、複数の貫通孔を有する熱反射金属板を、当該貫通孔の位置を異ならせながら積層して構成され、前記坩堝が前記予備加熱室内にあるときに前記第2断熱室と外部とを隔てるように位置する第5多層熱反射金属板と、
前記第5多層熱反射金属板の外側に配置され、コールドトラップとしての水又は液体窒素を用いた冷却装置と、
を備えることを特徴とするSiC半導体ウエーハ熱処理装置。
【請求項18】
請求項12から17までの何れか一項に記載のSiC半導体ウエーハ熱処理装置であって、
前記熱反射金属板は、タングステンカーバイド、タングステン、モリブデン、タンタル、タングステンカーバイド、タンタルカーバイドをコーティングしたグラファイト及びタンタルカーバイド処理を施したタンタルのうち少なくとも何れかであることを特徴とするSiC半導体ウエーハ熱処理装置。
【請求項19】
請求項1から18までの何れか一項に記載のSiC半導体ウエーハ熱処理装置であって、
前記本加熱室は、10-2Pa以下の圧力にすることが可能に構成されることを特徴とするSiC半導体ウエーハ熱処理装置。
【請求項20】
請求項1から18までの何れか一項に記載のSiC半導体ウエーハ熱処理装置であって、
前記本加熱室は、10-2Pa以下の圧力に到達した後に、不活性ガスを導入した10Pa以下の圧力にすることが可能に構成されることを特徴とするSiC半導体ウエーハ熱処理装置。
【請求項21】
請求項1から20までの何れか一項に記載のSiC半導体ウエーハ熱処理装置であって、
前記基板又は前記坩堝に付着している酸素及び水を除去可能であるグローブボックスと、
前記グローブボックス内に配置される露点計と、
を備え、
前記露点計の検出結果に基づいて不活性ガスを注入することによりガス消費量を抑えることが可能であることを特徴とするSiC半導体ウエーハ熱処理装置。
【請求項22】
請求項1から21までの何れか一項に記載のSiC半導体ウエーハ熱処理装置であって、
前記基板が収容された前記坩堝を前記本加熱室に導入し、前記調整手段により前記坩堝内の雰囲気をSi蒸気圧にして、1500℃以上2400℃以下の温度に加熱することにより、前記基板に気相エッチングを行って当該基板の表面を分子レベルに平坦化する平坦化工程と、
前記坩堝の温度を900℃以上2400℃以下に保持しながら前記調整手段により前記坩堝内の雰囲気を真空にして、前記基板を900℃以上2400℃以下の温度で加熱することにより、Si原子が基板全面にわたり短時間に同時に昇華してC原子同士が斉一に再配置できることにより、分子レベルに均一なグラフェン分子を形成させて、基板に対してグラフェン層を全面に均一に形成させるグラフェン層形成工程と、
を実現可能であることを特徴とするSiC半導体ウエーハ熱処理装置。
【請求項23】
請求項22に記載のSiC半導体ウエーハ熱処理装置であって、
当該SiC半導体ウエーハ熱処理装置が実現可能な工程は、前記平坦化工程の前に行われる、前記基板の表面上に隙間を有するように多結晶SiC基板を配置し、前記調整手段により前記坩堝内の雰囲気をSi蒸気圧にして、1500℃以上2400℃以下の温度に加熱することにより、基板の表面に気相エピタキシャル層を成長させて基板表面の結晶欠陥を修復する欠陥修復工程を含み、
前記グラフェン層形成工程では、前記気相エピタキシャル層の表面にグラフェン層を分子レベルに均一に形成させることを特徴とするSiC半導体ウエーハ熱処理装置。
【請求項24】
請求項23に記載のSiC半導体ウエーハ熱処理装置であって、
前記平坦化工程の前に、前記基板にイオン注入が行われ、
前記グラフェン層形成工程では、グラフェン層が形成された後に加熱処理を続行することでイオン活性化アニールが行われ、
前記グラフェン層形成工程の後に、前記調整手段により前記坩堝内の雰囲気をSi蒸気圧にして、前記基板を温度範囲が1500℃以上2400℃以下のSi蒸気圧下で加熱することで前記グラフェン層を除去するグラフェン層除去工程が行われることを特徴とするSiC半導体ウエーハ熱処理装置。
【請求項25】
単結晶SiC基板又は少なくとも一側の表面が単結晶SiCで被覆された基板の熱処理を行うSiC半導体ウエーハ熱処理装置において、
前記基板が導入される2つの本加熱室と、
前記基板を900℃以上2400℃以下の温度に加熱可能であり、それぞれの前記本加熱室内の空間を前記基板の表面に平行な面で切断した断面の温度を一様にすることができ、前記基板の表面に垂直な方向で温度を異ならせることができる2つの加熱装置と、
2つの前記本加熱室間で前記基板を行き来させることができる搬送装置と、
を備え
一方の前記本加熱室における基板の周囲の雰囲気をSi蒸気圧にし、
他方の前記本加熱室における基板の周囲の雰囲気を真空にし、
前記一方の前記本加熱室において、
前記本加熱室の外部に、予備加熱室、断熱室、及び第2断熱室を備え、前記基板を前記本加熱室に位置したときに各室を仕切るように配置される複数の多層熱反射金属板を備え、
加熱ヒータと多層熱反射金属板の材質に、炭素分子を吸着するゲッター作用を有する、タンタルカーバイド処理を施したタンタル材を用い、前記多層熱反射金属板には貫通孔が形成されておらず、
前記他方の前記本加熱室において、
当該本加熱室の外部に予備加熱室を備え、前記基板が前記本加熱室に位置したときに各室を仕切るように配置される複数の多層熱反射金属板を備え、前記多層熱反射金属板には複数の貫通孔が形成されることにより、前記本加熱室内を真空に保つことが可能に構成されることを特徴とするSiC半導体ウエーハ熱処理装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、主要には、高真空且つ高温に維持した雰囲気、又は不活性ガスを若干含む高温雰囲気を形成し、この雰囲気下において、結晶成長、化学反応又は成膜等の化学変化及び物理変化を被処理物に生じさせるための熱処理装置の構成に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばCVD(Chemical Vapor Deposition)等を行うための結晶成長炉や化学反応炉と呼ばれる熱処理装置において、真空雰囲気又はガス雰囲気を高温状態に維持する加熱室と、当該加熱室内で被処理物を加熱するための加熱手段とを備え、この加熱室に配置された被処理物に対して熱処理を行う構成のものが知られている。
【0003】
例えば特許文献1は、この種の熱処理装置において、本加熱室と予備加熱室を備え、先ず予備加熱室で予備加熱処理を行った後、予備加熱室から本加熱室へ被処理物を移動させることで本加熱処理を行う構成を開示する。特許文献2~5においても、同様の構成を有する熱処理装置が開示されている。
【0004】
特許文献6は気相エピタキシャル成長法を開示し、特許文献7及び文献8は気相エッチング基板表面改質平坦化を開示し、特許文献9には熱処理装置において本加熱室の真下に予備加熱室を備え、加熱ヒータを本加熱室にのみ備える構成の熱処理装置が開示されている。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特開2004-292305号公報
【特許文献2】特開2004-297034号公報
【特許文献3】特開2004-271072号公報
【特許文献4】特開2005-273931号公報
【特許文献5】特開2006-41544号公報
【特許文献6】特開2006-339397号公報
【特許文献7】特開2008-16691号公報
【特許文献8】特開2008-294110号公報
【特許文献9】特開2009-7193号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1~9の構成は何れも、予備加熱室を介して被処理物を本加熱室に移動して熱処理を行う。この熱処理を行うときにおける被処理物の周囲の雰囲気としては、Si蒸気圧下又は真空下等が用いられる。しかし、上記特許文献1~9の構成では、被処理物を加熱炉に挿入したままで雰囲気を変えることができず、被処理物をSi蒸気圧下で熱処理した後に、当該被処理物をいったん炉外に取り出して、再度被処理物を本加熱室に挿入して真空下で熱処理することを余儀なくされていた。
【0007】
しかしながら近年のグラフェン半導体ウエーハの製法においては、SiC半導体ウエーハをSi蒸気圧下で熱処理して気相エッチングして表面を平坦化させ、更に高温かつ真空下で炭化処理を行うことによりグラフェン層を形成する工程を連続的に行うことができる製法の開発が不可欠となっている。
【0008】
また、上記特許文献1~9の構成は本加熱室内の温度を一様に制御する構成であり、本加熱室内の温度分布を制御することができず、昇華法等を用いる際に好適ではなかった。
【0009】
本発明は上記の事情に鑑みてされたものであり、その主要な目的は、被処理物を加熱処理する雰囲気をSi蒸気圧下又は真空下に自在に制御してグラフェン半導体ウエーハやSiC半導体ウエーハの製造を可能とする熱処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0010】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0011】
(1)本発明の第1の観点によれば、以下の構成のSiC半導体ウエーハ熱処理装置が提供される。即ち、このSiC半導体ウエーハ熱処理装置は、単結晶SiC基板又は少なくとも一側の表面が単結晶SiCで被覆された基板の熱処理を行うものであって、本加熱室と、加熱装置と、調整手段と、移動機構と、を備える。前記本加熱室には、前記基板が収容された坩堝が導入される。前記加熱装置は、前記基板を900℃以上2400℃以下の温度に加熱可能であり、前記本加熱室内の空間を前記基板の表面に平行な面で切断した断面の温度を一様にすることができ、前記基板の表面に垂直な方向で温度を異ならせたり均一にしたりすることができる。前記調整手段は、前記本加熱室において、前記坩堝内のSiの圧力を調整可能である。前記移動機構は、前記坩堝を前記本加熱室へ移動させる。また、前記坩堝内には、固体状のSiが配置され、前記調整手段は、前記移動機構が前記坩堝の位置を変化させて当該坩堝の密閉度合を変化させることにより、前記本加熱室から前記坩堝を取り出すことなく当該坩堝内のSiの圧力を変化させる。

【課題を解決するための手段及び効果】
【0012】
これにより、坩堝内のSiの圧力を調整して加熱を行うことで、SiC基板表面を分子レベルで平坦化したり、グラフェンキャップを形成したり、このグラフェンキャップを除去したりすることができる。また、坩堝内のSiの圧力を調整しつつ、基板の表面にC供給源としての多結晶SiC材料板をSiC単結晶基板の表面上に、ある間隔をおいて配置し、多結晶板と単結晶板との間に積極的に温度差を設けることにより、エピタキシャル層を効率的に成長させることができる。また、坩堝内を密閉した場合は、この坩堝内をSi蒸気圧にすることが可能である。一方、坩堝内を開放して本加熱室内をポンプによって脱気処理を行った場合は、坩堝内を真空にすることが可能である。このように、上記の構成によれば簡単な構成で坩堝内のSiの圧力を調整することができる。

【課題を解決するための手段及び効果】
【0015】
(3)前記のSiC半導体ウエーハ熱処理装置においては、前記坩堝が前記本加熱室に位置している状態において、前記本加熱室に隙間を生じさせることなく当該坩堝内のSiの圧力を調整可能であることが好ましい。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0016】
これにより、坩堝内のSiの圧力を調整している間に熱が逃げることを防止できる。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0017】
(4)前記のSiC半導体ウエーハ熱処理装置においては、前記坩堝の材料は、タンタルカーバイド処理を施したタンタルにより構成されており、タンタルカーバイド材料は、炭素分子を吸着するゲッター作用を有することが好ましい。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0018】
このように、坩堝の材料がタンタルカーバイド処理を施したタンタルで構成されることで、基板から昇華されるSiC蒸気の中の炭素のみが坩堝の表面から坩堝の材料の内部に取り込まれて、Si分子は坩堝の内部空間に蓄積される。この結果、坩堝内のSi蒸気圧の維持に貢献することができる。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0019】
(5)前記のSiC半導体ウエーハ熱処理装置においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、このSiC半導体ウエーハ熱処理装置は、前記坩堝を載せるための受け台を備える。前記受け台は、タングステンカーバイド、タングステン、モリブデン、タンタル、タンタルカーバイド、タンタルカーバイドをコーティングしたグラファイト及びタンタルカーバイド処理を施したタンタルのうち少なくとも何れかである。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0020】
これにより、高い温度での熱処理に最適な受け台を提供できる。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0021】
(6)前記のSiC半導体ウエーハ熱処理装置においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記加熱装置は、複数の加熱ヒータと、それぞれの前記加熱ヒータを支持するヒータ支持部と、を備える。複数の前記加熱ヒータは、前記基板の周囲を囲むように配置される。そして、前記加熱ヒータは、位置が対応する前記ヒータ支持部とともに一体的に取外し可能である。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0022】
これにより、1つの加熱ヒータに不具合が発生した場合にその加熱ヒータのみを交換できるため、加熱装置全体でのランニングコストを低減させることができる。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0023】
(7)前記のSiC半導体ウエーハ熱処理装置においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記加熱ヒータ及び前記ヒータ支持部の構成は、3の倍数の多角形状に分割した構成の各辺の矩形のブロックを組み合わせた構成とし、3相交流電源負荷に均等に対応した前記加熱ヒータの構成を合理化している。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0024】
これにより、電流を効率的に供給できるとともに、電線の配置を単純にすることができる。また、矩形のブロック(ヒータブロック)毎に取外可能であるため、補修が容易であり、それぞれの加熱ヒータの寿命を有効に活用することができる。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0025】
(8)前記のSiC半導体ウエーハ熱処理装置においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記加熱ヒータに電流を流すための電源として、単相交流電源又は直流電源を用いる。前記加熱ヒータ及び前記ヒータ支持部は、多角形状に配置される。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0026】
これにより、多角形のそれぞれの辺を構成するヒータブロック(加熱ヒータ及びヒータ支持部)を個別に取外可能であるため、補修が容易であり、それぞれの加熱ヒータの寿命を有効に活用することができる。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0027】
(9)前記のSiC半導体ウエーハ熱処理装置においては、前記本加熱室は、前記坩堝を1rpm以上で回転させる坩堝回転機構を備えることが好ましい。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0028】
これにより、本加熱室内の温度が部分的に異なる場合であっても、基板の表面を均一に加熱することができる。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0029】
(10)前記のSiC半導体ウエーハ熱処理装置においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記加熱装置は、前記基板の表面に垂直な方向に複数の前記加熱ヒータを備える。そして、これらの複数の前記加熱ヒータに発生させる熱を個別に制御可能である。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0030】
これにより、基板の表面に垂直な方向の温度を精度良く制御することができる。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0031】
(11)前記のSiC半導体ウエーハ熱処理装置においては、前記ヒータ支持部同士が弾性部材を介して接続されることが好ましい。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0032】
これにより、熱伸縮によってヒータ支持部同士が及ぼし合う力を吸収することができるので、当該ヒータ支持部の疲労破壊を防止することができる。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0033】
(12)前記のSiC半導体ウエーハ熱処理装置においては、前記加熱ヒータは、タングステンカーバイド、タングステン、モリブデン、タンタル、タンタルカーバイド、タンタルカーバイドをコーティングしたグラファイト及びタンタルカーバイド処理を施したタンタルのうち少なくとも何れかであることが好ましい。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0034】
これにより、高い温度での熱処理に最適な加熱ヒータを提供できる。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0035】
(13)前記のSiC半導体ウエーハ熱処理装置においては、前記本加熱室は、前記加熱装置による熱を前記基板に向けて反射するように配置され、複数枚の熱反射金属板で構成される多層熱反射金属板を備えることが好ましい。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0036】
これにより、本加熱室から熱が逃げることを防止できるので、本加熱室を効率良く昇温させることができる。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0037】
(14)前記のSiC半導体ウエーハ熱処理装置においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記熱反射金属板同士の間又は、前記多層熱反射金属板の外側に配置される複数の温度検出部を備える。前記加熱装置は、前記温度検出部の検出結果に基づいて制御される。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0038】
これにより、検出された複数箇所の温度に基づいて本加熱室内の温度分布を推定し、それに基づいて加熱装置を制御することで、本加熱室内の温度分布を精度良く制御することができる。また、温度検出部が本加熱室内の熱に直接さらされないため、本加熱室の温度が高温になっても、当該温度検出部が破損することがない。更に、昇華法、気相エピタキシャル成長、及び液相エピタキシャル成長等の結晶成長を精度良く制御することができる。また、温度分布を計測することにより、加熱ヒータや熱反射金属板の劣化診断を行うことができる。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0039】
(15)前記のSiC半導体ウエーハ熱処理装置においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、このSiC半導体ウエーハ熱処理装置は、予備加熱室と、第2多層熱反射金属板と、を備える。前記予備加熱室は、前記本加熱室に隣接する。前記第2多層熱反射金属板は、前記坩堝とともに移動可能であり、前記多層熱反射金属板の積層枚数よりも少ない枚数で構成される。前記坩堝が前記予備加熱室内にあるときには、前記第2多層熱反射金属板が前記本加熱室と前記予備加熱室とを隔てるように位置し、前記加熱装置から発生する熱の一部が前記第2多層熱反射金属板を介して前記予備加熱室に供給される。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0040】
これにより、予備加熱時に、本加熱室の熱の一部が第2多層熱反射金属板を通じて予備加熱室へ適当に分配される。従って、予備加熱室を昇温するための加熱ヒータを省略又は低減することができる。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0041】
(16)前記のSiC半導体ウエーハ熱処理装置においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、このSiC半導体ウエーハ熱処理装置は、第3多層熱反射金属板と、第4多層熱反射金属板と、を備える。前記第3多層熱反射金属板は、前記坩堝とともに移動可能であり、前記坩堝が前記本加熱室内にあるときに当該本加熱室と前記予備加熱室とを隔てるように位置する。前記第4多層熱反射金属板は、前記坩堝とともに移動可能であり、前記坩堝が前記本加熱室内にあるときに前記予備加熱室と外部とを隔てるように位置する。そして、前記第3多層熱反射金属板及び前記第4多層熱反射金属板は、複数の貫通孔を有する熱反射金属板を、当該貫通孔の位置を異ならせながら積層して構成される。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0042】
これにより、本加熱室で発生する不要なガスを、貫通孔を通じて良好に排気することができる。従って、良好な環境下で加熱処理を行うことができる。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0043】
(17)前記のSiC半導体ウエーハ熱処理装置においては、本加熱室は、前記第4多層熱反射金属板の外側に、コールドトラップとしての水又は液体窒素を用いた冷却装置を備えることが好ましい。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0044】
これにより、冷却装置と接触した気体分子が吸着されるため、不要なガスが加熱室に混入されることを防止できる。従って、良好な環境下で加熱処理を行うことができる。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0045】
(18)前記のSiC半導体ウエーハ熱処理装置においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、このSiC半導体ウエーハ熱処理装置は、第1断熱室と、第2断熱室と、第5多層熱反射金属板と、冷却装置と、を備える。前記第1断熱室は、前記予備加熱室に隣接する。前記第2断熱室は、前記第1断熱室に隣接する。前記第5多層熱反射金属板は、前記坩堝とともに移動可能であり、複数の貫通孔を有する熱反射金属板を、当該貫通孔の位置を異ならせながら積層して構成され、前記坩堝が前記予備加熱室内にあるときに前記第2断熱室と外部とを隔てるように位置する。前記冷却装置は、前記第5多層熱反射金属板の外側に配置され、コールドトラップとしての水又は液体窒素を用いる。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0046】
これにより、本加熱室からの外部への温度の損失が軽減され省エネルギー設計のSiC半導体ウエーハ熱処理装置が実現できる。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0047】
(19)前記のSiC半導体ウエーハ熱処理装置においては、前記熱反射金属板は、タングステンカーバイド、タングステン、モリブデン、タンタル、タンタルカーバイド、タンタルカーバイドをコーティングしたグラファイト及びタンタルカーバイド処理を施したタンタルのうち少なくとも何れかであることが好ましい。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0048】
これにより、高い温度での熱処理に最適な熱反射金属板を提供できる。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0049】
(20)前記のSiC半導体ウエーハ熱処理装置においては、前記本加熱室は、10-2Pa以下の圧力にすることが可能に構成されることが好ましい。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0050】
(21)前記のSiC半導体ウエーハ熱処理装置においては、前記本加熱室は、10-2Pa以下の圧力に到達した後に、不活性ガスを導入した10Pa以下の圧力にすることが可能に構成されることが好ましい。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0051】
これにより、真空度の高い雰囲気が必要な工程に適切に対応することができる。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0052】
(22)前記のSiC半導体ウエーハ熱処理装置においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、このSiC半導体ウエーハ熱処理装置は、グローブボックスと、露点計と、を備える。前記グローブボックスは、前記基板又は前記坩堝に付着している酸素及び水を除去可能である。前記露点計は、前記グローブボックス内に配置される。そして、前記露点計の検出結果に基づいて不活性ガスを注入することによりガス消費量を抑えることが可能である。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0053】
これにより、雰囲気中の水分の増加を検知して必要なときだけ効率良く不活性ガスを注入して、酸素及び水の少ない雰囲気の中で作業を行うことができる。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0054】
(23)前記のSiC半導体ウエーハ熱処理装置においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、このSiC半導体ウエーハ熱処理装置は、平坦化工程と、グラフェン層形成工程と、を実現可能である。前記平坦化工程は、前記基板が収容された前記坩堝を前記本加熱室に導入し、前記調整手段により前記坩堝内の雰囲気をSi蒸気圧にして、1500℃以上2400℃以下の温度に加熱することにより、前記基板に気相エッチングを行って当該基板の表面を分子レベルに平坦化する。前記グラフェン層形成工程は、前記坩堝の温度を900℃以上2400℃以下に保持しながら前記調整手段により前記坩堝内の雰囲気を真空にして、前記基板を900℃以上2400℃以下の温度で加熱することにより、Si原子が基板全面にわたり短時間に同時に昇華してC原子同士が斉一に再配置できることにより、分子レベルに均一なグラフェン分子を形成させて、基板に対してグラフェン層を全面に均一に形成させる。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0055】
これにより、平坦化工程とグラフェン層形成工程との間で基板を加熱炉外に取り出す必要がないため、平坦化工程とグラフェン層形成工程とを一連の高温処理によって行ってグラフェン半導体ウエーハを製造することができる。また、基板が900℃以下の低い温度で真空下に曝されると、Si原子の昇華の確率が低いためにC原子同士の再配置が部分的にしか進まないので、不均一なグラフェン分子が形成されてしまう。この点、上記の構成では、平坦化工程後であってグラフェン層形成工程前において、本加熱室内の温度を900℃以上2400℃以下(好ましくは、1500℃以上2400℃以下)に保つことで、不均一なグラフェン分子の形成を防止することができる。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0056】
(24)前記のSiC半導体ウエーハ熱処理装置においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、当該SiC半導体ウエーハ熱処理装置が実現可能な工程は、前記平坦化工程の前に行われる、前記基板の表面上に隙間を有するように多結晶SiC基板を配置して坩堝内に収容し、前記調整手段により前記坩堝内の雰囲気をSi蒸気圧にして、1500℃以上2400℃以下の温度に加熱することにより、基板の表面に気相エピタキシャル層を成長させて基板表面の結晶欠陥を修復する欠陥修復工程を含む。前記グラフェン層形成工程では、前記気相エピタキシャル層の表面にグラフェン層を分子レベルに均一に形成させる。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0057】
これにより、欠陥修復工程を経ることにより、マイクロパイプ等の結晶欠陥が少なく表面が平坦な基板を得ることができ、その表面にグラフェン層を形成させることができる。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0058】
(25)前記のSiC半導体ウエーハ熱処理装置においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記平坦化工程の前に、前記基板にイオン注入が行われる。前記グラフェン層形成工程では、グラフェン層が形成された後に加熱処理を続行することでイオン活性化アニールが行われる。前記グラフェン層形成工程の後に、前記調整手段により前記坩堝内の雰囲気をSi蒸気圧にして、前記基板を温度範囲が1500℃以上2400℃以下のSi蒸気圧下で加熱することで前記グラフェン層を除去するグラフェン層除去工程が行われる。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0059】
これにより、基板の表面にグラフェン層が分子レベルに平坦に形成されることによって、イオン活性化の加熱処理におけるSi及びSiCの昇華を効果的に抑制できる。従って、Si及びSiCがSiC層の表面から昇華することによって生じる平坦度の悪化を効果的に防止した構成のSiC半導体ウエーハを製造することができる。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0060】
(26)本発明の第2の観点によれば、以下の構成のSiC半導体ウエーハ熱処理装置が提供される。即ち、このSiC半導体ウエーハ熱処理装置は、単結晶SiC基板又は少なくとも一側の表面が単結晶SiCで被覆された基板の熱処理を行うものであって、2つの本加熱室と、2つの加熱装置と、搬送装置と、を備える。前記本加熱室には、前記基板が導入される。前記加熱装置は、前記基板を900℃以上2400℃以下の温度に加熱可能であり、それぞれの前記本加熱室内の空間を前記基板の表面に平行な面で切断した断面の温度を一様にすることができ、前記基板の表面に垂直な方向で温度を異ならせることができる。前記搬送装置は、2つの前記本加熱室間で前記基板を行き来させることができる。また、一方の前記本加熱室における基板の周囲の雰囲気をSi蒸気圧にし、他方の前記本加熱室における基板の周囲の雰囲気を真空にする。前記一方の前記本加熱室において、前記本加熱室の外部に、予備加熱室、断熱室、及び第2断熱室を備え、前記基板を前記本加熱室に位置したときに各室を仕切るように配置される複数の多層熱反射金属板を備え、加熱ヒータと多層熱反射金属板の材質に、炭素分子を吸着するゲッター作用を有する、タンタルカーバイド処理を施したタンタル材を用い、前記多層熱反射金属板には貫通孔が形成されていない。また、前記他方の前記本加熱室において、当該本加熱室の外部に予備加熱室を備え、前記基板が前記本加熱室に位置したときに各室を仕切るように配置される複数の多層熱反射金属板を備え、前記多層熱反射金属板には複数の貫通孔が形成されることにより、前記本加熱室内を真空に保つことが可能である。

【課題を解決するための手段及び効果】
【0061】
これにより、2つの環境を持つ本加熱室を実現できるため、加熱処理を分担することで、効率的に半導体ウエーハを製造することができる。また、坩堝内の雰囲気がSi蒸気圧になるように調整した本加熱室で、平坦化工程、欠陥修復工程及びグラフェン層除去工程等を行い、坩堝内の雰囲気が真空になるように調整した本加熱室で、グラフェン層形成工程等を行うことにより、効率的に半導体ウエーハを製造することができる。また、一方の本加熱室においては、タンタルカーバイド処理を施したタンタル材を使うことによってSi蒸気の流失を防ぐことにより、前記本加熱室内を常時Si蒸気圧に保つことができる。また、他方の前記本加熱室の雰囲気は、常に真空に保つことが可能となる。従って、雰囲気をSi蒸気圧或いは真空に制御する調整手段が不必要となるので、SiC半導体ウエーハ熱処理装置の構成を簡単にすることができる。また、本加熱室に挿入する際に前記基板を坩堝に収納する必要をなくすことができる。

【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の第1実施形態に係るSiC半導体ウエーハ熱処理装置の概要を説明する模式平面図。
【図2】SiC半導体ウエーハの熱処理に用いられる加熱炉を示す模式正面図。
【図3】加熱炉の本加熱室及び予備加熱室を詳細に示す正面断面図。
【図4】(a)坩堝が予備加熱室内にあるときの加熱炉の正面断面図。(b)密閉された坩堝が加熱室内にあるときの加熱炉の正面断面図。(c)開放された坩堝が加熱室内にあるときの加熱炉の正面断面図。
【図5】炭素ゲッター効果を有する坩堝の外観写真及び断面写真。
【図6】炭素ゲッター効果を説明する模式図。
【図7】密閉度合を調整するための、坩堝及び蓋部の構成例を示す断面図。
【図8】(a)メッシュヒータが九角形状に配置された本実施形態の加熱装置の構成を示す平面図。(b)A方向から見たヒータブロックの構成を示す平面図。
【図9】メッシュヒータの給電ポイント及び熱電対設置位置を示す概略平面図。
【図10】(a)正方形状のメッシュヒータを垂直方向に並べたヒータブロックを示す平面図。(b)正方形状のメッシュヒータを垂直方向に並べたヒータブロックを示す正面図。(c)長方形状のメッシュヒータを垂直方向に並べたヒータブロックを示す平面図。(d)長方形状のメッシュヒータを垂直方向に並べたヒータブロックを示す正面図。
【図11】(a)坩堝回転機構を備えた加熱炉の構成を示す概略平面図。(b)坩堝回転機構を備えた加熱炉の構成を示す概略正面図。
【図12】シュラウド及び貫通孔によって不要なガスを取り除く仕組みを説明する模式正面図。
【図13】(a)第3多層熱反射金属板及び第4多層熱反射金属板の拡大正面図。(b)一方の熱反射金属板の平面図。(c)他方の熱反射金属板の平面図。
【図14】不活性ガスの消費量を抑えてグローブボックスを動作させる構成を説明する模式図。
【図15】単結晶SiCで構成される基板を用いた半導体素子の製造過程において、各工程後の基板表面の様子を示す模式図。
【図16】各工程における坩堝の状態を示す模式図。
【図17】気相エピタキシャル成長膜によって基板の結晶欠陥が修復される様子を示す工程図。
【図18】気相エピタキシャル成長温度と基板表面のマイクロパイプ欠陥密度との関係を示すグラフ。
【図19】気相エピタキシャル成長時の基板と炭素フィード基板との距離と、基板表面に成長した気相エピタキシャル成長膜の表面粗さと、の関係を示すグラフ。
【図20】単結晶SiC基板の表面が加熱処理によって平坦化される様子を示した模式図。
【図21】基板表面のSi原子が昇華してC原子同士が再配置されてグラフェン層が形成されたときの原子配列を示す模式平面図及び模式断面図。
【図22】従来のグラフェンキャップ形成工程と本実施形態のグラフェンキャップ形成工程とを比較する図。
【図23】基板の表面を段階的に示す顕微鏡写真。
【図24】本発明の第2実施形態に係るSiC半導体ウエーハ熱処理装置の概要を説明する模式平面図。
【図25】第2実施形態に係る加熱炉の構成を示す正面断面図。
【発明を実施するための形態】
【0067】
次に、図面を参照して本発明の第1実施形態を説明する。初めに、図1を参照して本実施形態のSiC半導体ウエーハ熱処理装置1について説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係るSiC半導体ウエーハ熱処理装置1の概要を説明する模式平面図である。

【0068】
図1に示すように、SiC半導体ウエーハ熱処理装置1は、加熱炉11と、導入室12と、搬送機構13と、搬送路14と、を備える。

【0069】
導入室12は、被処理物が収容された坩堝2をSiC半導体ウエーハ熱処理装置1に導入するためのものである。また、搬送機構13は、水平方向(図1の左右方向)に移動可能な図略の搬送アームを備え、この搬送アームによって、導入室12に導入された坩堝2を搬送路14に沿って加熱炉11まで搬送することができる。坩堝2が加熱炉11に搬送されると、当該加熱炉11による熱処理が行われる。

【0070】
次に、加熱炉11の詳細な構成について図2から図4までを参照して説明する。図2は、SiC半導体ウエーハの熱処理に用いられる加熱炉11を示す模式正面図である。図3は、加熱炉11の本加熱室21及び予備加熱室22を詳細に示す正面断面図である。図4は、加熱処理を行うときにおける加熱炉11の坩堝2等の配置を示した正面断面図である。

【0071】
図2及び図3に示すように、加熱炉11は、坩堝2に収容された被処理物を900℃以上2400℃以下の温度に加熱することが可能な本加熱室21と、被処理物を500℃以上の温度に予備加熱可能な予備加熱室22と、を備えている。予備加熱室22は本加熱室21の下方に配置され、本加熱室21に対して上下方向に隣接している。

【0072】
加熱炉11は真空チャンバ19を備え、前記本加熱室21と予備加熱室22は、この真空チャンバ19の内部に備えられている。真空チャンバ19には真空形成装置としてのターボ分子ポンプ34が接続されており、例えば10-2Pa以下、望ましくは10-7Pa以下の真空を真空チャンバ19内に得ることができるようになっている。また、不活性ガスを導入して10Pa以下の圧力にすることも可能である。これにより、真空度の高い雰囲気が必要な工程に適切に対応することができる。

【0073】
また、ターボ分子ポンプ34と真空チャンバ19との間には、ゲートバルブ25が介設される。また、ターボ分子ポンプ34には、補助のためのロータリポンプ26が接続される。

【0074】
加熱炉11には、真空度を測定するための真空計31、及び、質量分析法を行うための質量分析装置32が設けられている。また、前記真空チャンバ19の一側は、搬送路14を通じて前記導入室12と接続されている。なお、この搬送路14は、ゲートバルブ36によって開閉可能になっている。

【0075】
前記本加熱室21は、平面断面視で正九角形に形成されるとともに、真空チャンバ19の内部空間に配置される。図3に示すように、本加熱室21の内部には、加熱装置33が備えられている。この加熱装置33は、本加熱室21を取り囲むように配置されるメッシュヒータ(加熱ヒータ)80及びこのメッシュヒータ80に電流を流すための電源等で構成される。なお、加熱装置33が備えるメッシュヒータ80の配置及びその変形例等については後述する。

【0076】
また、本加熱室21の側壁や天井には第1多層熱反射金属板41が固定され、この第1多層熱反射金属板41によって、メッシュヒータ80が発生させた熱を本加熱室21の中央部に向けて反射させるように構成されている。

【0077】
これにより、本加熱室21内において、加熱処理対象としての被処理物を取り囲むようにメッシュヒータ80が配置され、更にその外側に多層熱反射金属板41が配置されるレイアウトが実現されている。従って、被処理物を強力且つ均等に加熱し、900℃以上2400℃以下の温度まで昇温させることができる。

【0078】
本加熱室21の天井側は第1多層熱反射金属板41によって閉鎖される一方、底面の第1多層熱反射金属板41には開放部55が形成されている。坩堝2は、この開放部55を介して、本加熱室21と前記予備加熱室22との間を移動できるようになっている。

【0079】
予備加熱室22は、本加熱室21の下側の空間を、多層熱反射金属板46で囲うことにより構成されている。この予備加熱室22は、平面断面視で円状となるように構成されている。なお、予備加熱室22内には、加熱装置33のような加熱手段は備えられていない。

【0080】
また、予備加熱室22の側壁をなす多層熱反射金属板46において、前記搬送路14と対面する部位に図略の開閉部材を備えている。そして、この開閉部材によって、搬送路14と対面する部位に通路孔を形成して坩堝2を搬送可能に構成する状態と、当該通路孔を閉鎖して加熱処理を行うことが可能な状態と、を切り替えることができる。

【0081】
また、図3に示すように、予備加熱室22の底面部においては、前記多層熱反射金属板46に開放部56が形成されている。

【0082】
加熱炉11は、坩堝2を上下方向に移動させるための構成として、移動機構100を備えている。この移動機構100は、第1支持体111と第2支持体121とを独立して上下方向に動作させることが可能に構成されている。

【0083】
第1支持体111の上部には第1昇降シャフト112が接続されており、この第1昇降シャフト112の上部には、第4多層熱反射金属板44が配置されている。そして、この第4多層熱反射金属板44と、その上方に位置する第3多層熱反射金属板43と、更に上方に位置する第2多層熱反射金属板42と、は互いに間隔を空けて配置されるとともに、垂直方向に設けた柱部113によって互いに連結されている。また、第2多層熱反射金属板42には、坩堝2の密閉具合を調整するための蓋部(調整手段)114が取り付けられており、この蓋部114は後述の受け台123の上方に位置している。なお、第2多層熱反射金属板42の積層枚数は、本加熱室21の第1多層熱反射金属板41の積層枚数よりも少なくなっている。

【0084】
一方、第2支持体121の上部には、第2昇降シャフト122が接続されている。この第2昇降シャフト122は、第3多層熱反射金属板43及び第4多層熱反射金属板44の中心に形成された孔を挿通するように配置されており、この第3多層熱反射金属板43及び第4多層熱反射金属板44に対して相対移動可能に構成されている。そして、第2昇降シャフト122の上端部には、坩堝2を載置するためのタングステン製の受け台123が接続されている。また、本実施形態で用いる坩堝2は上部に孔が形成されており、この孔と前記蓋部114との位置関係を変えることにより、坩堝2内の密閉度合を調整することができる。

【0085】
以上の構成の加熱炉11により行われる加熱処理の流れの一例について説明する。初めに、被処理物及びシリコンペレットを収容した坩堝2を搬送路14から真空チャンバ19の内部へ導入し、予備加熱室22内にある前記受け台123上に載置する(図4(a)参照)。この状態で前記加熱装置33を駆動すると、本加熱室21が900℃以上2400℃以下の所定の温度(例えば約1800℃)に加熱される。またこのとき、前記ターボ分子ポンプ34の駆動によって、真空チャンバ19内の圧力は10-2Pa以下、好ましくは10-7Pa以下となるように調整されている。

【0086】
前述したとおり、第2多層熱反射金属板42の積層枚数は、前記第1多層熱反射金属板41の積層枚数よりも少なくなっている。従って、加熱装置33のメッシュヒータ80が発生する熱の一部が第2多層熱反射金属板42を介して予備加熱室22に適度に供給(分配)され、予備加熱室22内の被処理物を500℃以上の所定の温度(例えば800℃)となるように予備加熱することができる。即ち、予備加熱室22にヒータを設置しなくても予備加熱を実現でき、予備加熱室22の簡素な構造が実現できている。

【0087】
上記の予備加熱処理を所定時間行った後、第1支持体111及び第1昇降シャフト112を上昇させる。これにより、坩堝2が開放部55を通過して本加熱室21に移動するとともに、当該本加熱室21を第3多層熱反射金属板43によって閉鎖することができる。これにより、直ちに加熱処理が開始され、本加熱室21内の被処理物を所定の温度(約1800℃)に急速に昇温させることができる。

【0088】
このとき、第2支持体121を上下させて蓋部114と坩堝2の密閉具合を調整することにより、加熱処理を行うときの雰囲気を選択することができる。例えば、図4(b)に示すように、坩堝2を密閉して、Si雰囲気で加熱処理を行うことができる。また、図4(c)に示すように、坩堝2を開放して真空下で加熱処理を行うこともできる。更に、坩堝2を密閉してSi雰囲気で加熱処理を行った後に、第2支持体121を下降させて坩堝2を開放して、真空下で加熱処理を行うこともできる。この場合、第3多層熱反射金属板43によって本加熱室21が閉鎖された状態を維持しつつ(隙間を生じさせることなく)、雰囲気を調整して加熱処理を行うことができる。これにより、坩堝内のSiの圧力を調整している間に熱が逃げることを防止できる。

【0089】
また、以上で示した多層熱反射金属板41~44,46は何れも、金属板(タングステン製)を所定の間隔をあけて積層した構造になっている。

【0090】
多層熱反射金属板41~44,46の材質としては、メッシュヒータ80の熱輻射に対して十分な加熱特性を有し、また、融点が雰囲気温度より高い物質であれば、任意のものを用いることができる。例えば、前記タングステンのほか、タンタル、ニオブ、モリブデン等の高融点金属材料を多層熱反射金属板41~44,46として用いることができる。また、タングステンカーバイド、ジリコニウムカーバイド、タンタルカーバイド、ハフニウムカーバイド、モリブデンカーバイド等の炭化物を、多層熱反射金属板41~44,46として用いることもできる。また、その反射面に、金やタングステンカーバイド等からなる赤外線反射膜を更に形成しても良い。

【0091】
次に、坩堝2について図5及び図6を参照して説明する。図5は、炭素ゲッター効果を有する坩堝2の外観写真及び断面写真である。図6は、炭素ゲッター効果を説明する模式図である。

【0092】
図5(a)に示すように、坩堝2は互いに嵌合可能な上容器2aと下容器2bとを備える嵌合容器である。なお、図5(a)では、密閉度合を調整するための孔を形成する前の上容器2aを示している。この坩堝2は、高温処理を行う場合に後述の炭素ゲッター効果を発揮するように構成されており、具体的には、タンタル金属からなるとともに、炭化タンタル層を内部空間に露出させるようにして備えている。

【0093】
更に詳細に説明すると、坩堝2は図5(b)に示すように、その最表層の部分にTaC層を形成し、このTaC層の内側にTa2C層を形成し、更にその内側に基材としてのタンタル金属を配置した構成となっている。なお、タンタルと炭素の結合状態は温度依存性を示すため、前記坩堝2は、炭素濃度が高いTaCを最も表層の部分に配置するとともに、炭素濃度が若干低いTa2Cが内側に配置される。そして、Ta2Cの更に内側には、炭素濃度がゼロである基材のタンタル金属を配置した構成となっている。

【0094】
また、前記坩堝2は上述したように、その表面が炭化タンタル層に覆われており、当該炭化タンタル層(TaC層)が坩堝2の内部空間に露出する構成になっている。従って、上述のように真空下で加熱処理を続ける限りにおいて、坩堝2は図6に示すように、炭化タンタル層の表面から連続的に炭素を吸着して取り込む機能を奏する。この意味で、本実施形態の坩堝2は炭素吸着イオンポンプ機能(イオンゲッター機能)を有するということができる。これにより、加熱処理時に坩堝2内の雰囲気に含まれているSi蒸気及び炭化珪素蒸気のうち、炭素だけが坩堝2に選択的に吸蔵されるので、坩堝2内を高純度のSi雰囲気に保つことができる。

【0095】
また、坩堝2及び蓋部114の形状については上記で示した構成に限られず、様々な形状を用いることができる。以下、図7を参照して、その具体例を説明する。図7は、密閉度合を調整するための、坩堝2及び蓋部114の構成例を示す断面図である。

【0096】
図7(a)における坩堝2は、本実施形態の下容器2bと同様に、底面を有する円筒形状に構成されている。そして、図7(a)における蓋部114は、カバーとして機能する円板状部を上面側に有し、坩堝2の外径よりも僅かに大きな内径を有する円筒形状に構成されている。

【0097】
図7(b)における坩堝2は、底面と、孔が形成された上面部分と、を有する円筒形状に構成されている。なお、この上面部分は底面に対して少し傾斜する円錐状に形成されており、その中央に貫通孔が形成されている。そして、図7(b)における蓋部114は、上面に形成された孔よりも比較的大きな径を有し、当該上面と同じ傾斜を有する円錐板状に構成されている。

【0098】
図7(c)における坩堝2は、円板形状に構成されている。そして、図7(c)における蓋部114は、上面を有し、坩堝2よりも小さな径の円筒形状に構成されている。この円筒部分の下端が円板状の坩堝2の上面に接触することで、閉鎖された空間を形成することができる。

【0099】
図7(d)における坩堝2は、図7(c)における坩堝2と同様に円板形状に構成されている。そして、図7(d)における蓋部114は、上面と、坩堝2よりも僅かに大きな径の孔が形成された底面と、を有する円筒形状に構成されている。この変形例では、蓋部114の底面側の孔を円板状の坩堝2が塞ぐことで、閉鎖された空間を形成することができる。

【0100】
なお、本明細書においては、加熱処理を行うために基板を収容し、あるいは基板を載せた状態で、蓋部114によって閉鎖された空間を当該基板の周囲に形成することができる部材を「坩堝」と称するものとする。従って、本明細書においては、図7(c)及び図7(d)のように円板形状の部材も坩堝に該当する。

【0101】
以上に示したように、本実施形態のSiC半導体ウエーハ熱処理装置1において、坩堝2内の密閉度合を変化させることにより、当該坩堝2内のSiの圧力を調整可能である。

【0102】
これにより、坩堝2を密閉してSi蒸気圧下で加熱処理を行うことができる。一方、坩堝2を開放してターボ分子ポンプ34によって脱気処理を行い、真空下で加熱処理を行うこともできる。

【0103】
また、本実施形態のSiC半導体ウエーハ熱処理装置1において、坩堝2が本加熱室21に位置している状態において、本加熱室21に隙間を生じさせることなく当該坩堝2内のSiの圧力を調整可能である。

【0104】
これにより、坩堝2内のSiの圧力を調整している間に熱が逃げることを防止できる。

【0105】
次に、本実施形態の加熱装置33及びメッシュヒータ80の配置例の構成及びその変更例について、図8から図11までを参照して説明する。図8は、加熱装置33及びヒータブロック90を示す図である。図9は、給電ポイント等を説明する概略正面図である。図10は、垂直方向に温度差を設けることが可能な加熱炉11の変形例を示す図である。図11は、坩堝回転機構85を備えた加熱炉の構成を示す概略平面図及び正面図である。なお、本明細書では基板70の表面に垂直な方向を単に「垂直方向」と称することがある。

【0106】
図8及び図9に示すように、加熱装置33は、加熱ヒータとしてのメッシュヒータ80を複数備えている。このメッシュヒータ80は、図8(a)に示すように、正九角形の本加熱室21の各辺に2個ずつ、計18個配置されている。また、この1組(2個)のメッシュヒータ80は、図8(b)に示すように、それぞれの下端同士が電気的に接続されている。なお、本実施形態におけるメッシュヒータ80は、タングステンで構成される。

【0107】
また、メッシュヒータ80は、外側に配置されたヒータ支持部としての第1多層熱反射金属板41によって支持されている。なお、第1多層熱反射金属板41は正九角形の本加熱室21の各辺に1組ずつ配置されており、2個のメッシュヒータ80を1組の第1多層熱反射金属板41が支持する構成となっている。以下の説明では、メッシュヒータ80と位置が対応する第1多層熱反射金属板41とをまとめてヒータブロック90と称する。なお、図8(b)には、図8(a)のA方向から見たときのヒータブロック90を示している。

【0108】
また、このヒータブロック90は、取り外して交換することができるように構成されている。この分割構成により、寿命の到来したメッシュヒータ80だけを交換することが可能になり、メンテナンス費用を低減できる。

【0109】
この隣り合うヒータブロック90同士は、図8(a)に示すように、弾性部材としての緩衝板84を介して接続されている。これにより、熱伸縮によって第1多層熱反射金属板41同士が及ぼし合う力を吸収させて、疲労破壊を防止することができる。なお、弾性部材としては板状の部材に限らずバネ等様々な部材を用いることができる。

【0110】
前述のように1組のメッシュヒータ80は下端同士が電気的に接続されており、隣り合う組のメッシュヒータ80同士は、図9に示すリード線83で接続されている。また、加熱装置33は、メッシュヒータ80に電流を流すための図略の三相交流電源を備えている。そして、この電源による電圧の供給(給電)は、図9に示す3箇所において行われる。

【0111】
また、図9に示すように、9組の第1多層熱反射金属板41のうち、3組の第1多層熱反射金属板41の中間部の外部(本加熱室21の外側)には、温度検出部としての熱電対82が、それぞれ垂直方向の高さを異ならせつつ設置されている。これにより、本加熱室21内の温度分布を3次元的に正確に把握してメッシュヒータ80をフィードバック制御することができる。本実施形態の加熱装置33は本加熱室21内の温度を垂直方向で異ならせることが可能に構成されているため、このフィードバック制御を行うことにより、本加熱室21内の温度分布を正確に制御することができる。

【0112】
また、第1多層熱反射金属板41の中間部の外部に熱電対82を配置することにより、本加熱室21内の温度に熱電対82が直接曝されることを防止しつつ本加熱室21内の温度分布を把握することができる。なお、熱電対82を第1多層熱反射金属板41の中間部の外部に配置することに代えて、第1多層熱反射金属板41の中間部であって、積層される熱反射金属板と熱反射金属板との間に配置しても良い。また、熱電対82の個数も3個に限られず、任意の個数の熱電対82を用いることができる。

【0113】
また、加熱装置33を九角形状に構成することに代えて、例えば、六角形状又は十二角形状に構成しても良い。このように頂点の数が3の倍数の多角形状に加熱装置33を構成して三相交流電源を用いることにより、電流を効率的に供給できるとともに、電線の配置を単純にすることができる。

【0114】
次に、本加熱室21内の温度を垂直方向で異ならせる構成について説明する。図8(b)に示すように、本実施形態のメッシュヒータ80は、前記垂直方向に並べられた、第1メッシュヒータ80aと第2メッシュヒータ80bとから構成されている。この第1メッシュヒータ80aと第2メッシュヒータ80bとは電気抵抗が異なるように構成されているため、発生させる熱を異ならせることができる。これにより、本加熱室21内の温度を垂直方向で異ならせることができる(即ち、垂直方向での温度傾斜を積極的に作り出すことができる)。

【0115】
また、上記の構成に代えて、例えば図10に示すように、メッシュヒータ80を上部及び下部に配置する構成にして、上部のメッシュヒータ80に供給する電圧と、下部のメッシュヒータ80に供給する電圧と、を個別に変更できる構成にしても良い。この場合、本加熱室21内の温度を垂直方向でより正確に制御することができる。なお、図10(a)及び図10(b)のヒータブロック90には、正方形状のメッシュヒータ80が、2個で1組として、垂直方向に2組並べて配置されている。そして、各組のメッシュヒータ80に供給する電圧を異ならせることができる。なお、このヒータブロック90は、本加熱室21の側面に沿うように複数配置されている。また、図10(c)及び図10(d)のヒータブロック90では、水平方向とメッシュヒータ80の長手方向とが一致するように当該メッシュヒータ80を配置して、より高い抵抗値を得る構造を実現している。メッシュヒータ80の抵抗値を高くすることにより、供給する電圧を上げることができるとともに、供給する電流を下げることができる。そして、上部及び下部に2組並べて配置されている各組のメッシュヒータ80に供給する電圧を異ならせることができる。なお、このヒータブロック90は、本加熱室21の側面に沿うように複数配置されている。

【0116】
次に、基板70の表面をより均一な温度で加熱処理できる構成の加熱炉11を説明する。この加熱炉11は、図11(b)に示すように、本加熱室21と同じ高さに予備加熱室22を設けた構成となっている。従って、本加熱室21と予備加熱室22との間の坩堝2の移動は水平方向に行われる。また、この構成におけるメッシュヒータ80は水平方向に3分割(前、中、後)して配置されるとともに、垂直方向にも上下に2分割して配置されているため、それぞれのメッシュヒータ80に供給する電圧を変えることにより、水平方向及び垂直方向の両方の方向で温度を制御することが可能に構成されている。

【0117】
また、図11(b)に示すように、この構成の加熱炉11は、本加熱室21に導入された坩堝2を回転させるための坩堝回転機構85を備えている。坩堝2は、図略の支持部によって坩堝回転機構85の軸部に固定されており、当該軸部を回転させる事により、坩堝2を回転させることができる。これにより、本加熱室21内の温度が部分的に異なる場合であっても、基板70の表面を均一に加熱することができる。なお、この坩堝回転機構85は、坩堝2を1rpm以上の回転速度で回転させることが可能に構成されている。

【0118】
以上に示したように、本実施形態のSiC半導体ウエーハ熱処理装置1において、加熱装置33は、基板70の表面に垂直な方向に複数のメッシュヒータ80を備える。そして、これらのメッシュヒータ80に発生させる熱を異ならせることができる。

【0119】
また、本実施形態のSiC半導体ウエーハ熱処理装置1は、第1多層熱反射金属板41の金属板間又は第1多層熱反射金属板41の外側に配置される複数の熱電対82を備える。そして、加熱装置33のメッシュヒータ80は、熱電対82の検出結果に基づいて制御される。

【0120】
これにより、検出された複数箇所の温度に基づいて本加熱室21内の温度分布を推定し、それに基づいてメッシュヒータ80を制御することで、本加熱室21内の温度分布を精度良く制御することができる。また、熱電対82が本加熱室21内の熱に直接曝されないため、本加熱室21の温度が高温になっても、熱電対82が破損することがない。

【0121】
次に、本実施形態の加熱炉11において、本加熱室21内の不要なガスを除去する構成について、図12及び図13を参照して説明する。図12は、シュラウド(冷却装置)60及び貫通孔49によって不要なガスを取り除く仕組みを説明する模式正面図である。図13は、貫通孔49の配置を示す図である。

【0122】
本加熱室21では、加熱処理時に被処理物から不要なガスが発生したり、外部から不要なガスが混入したりすることがあり、これらを排気する必要がある。この点、本実施形態の多層熱反射金属板42~44は、形成された貫通孔49によって不要なガスを効果的に排気することができる。

【0123】
具体的には、多層熱反射金属板43,44は、図13(a)に示すように、2種類の熱反射金属板40a,40bが交互に配置された構成となっている。そして、熱反射金属板40aの平面図を図13(b)に示し、熱反射金属板40bの平面図を図13(c)に示す。これらの図に示すように、熱反射金属板40a,40bは、小さな貫通孔49が多数形成されたパンチメタル構造を有している。そして、熱反射金属板40aと熱反射金属板40bとでは、貫通孔49の位置が異なるようになっている。

【0124】
この構成により、加熱処理時に被処理物から発生するガス等を、第3多層熱反射金属板43及び第4多層熱反射金属板44の各金属板の貫通孔49を通じて良好に排気することができる。従って、不要なガスによる被処理物や本加熱室21の汚染を防止できる。一方で、貫通孔49の位置が互い違いに配置されているので、熱が過剰に逃げることを抑制することができる。

【0125】
また、図12に示すように、第4多層熱反射金属板44の下方には、内部に液体窒素が循環されているシュラウド60が配置されている。これにより、本加熱室21から排気された不要なガスは、シュラウド60と接触した際に表面に吸着するので、本加熱室21から不要なガスを良好に排気して真空度を保つことができる。なお、液体窒素に代えて水を用いた冷却装置を備え、これをシュラウド60の代わりに用いることができる。

【0126】
次に、坩堝2を導入室12に導入する際に、坩堝2及び被処理物に付着した不純物を除去するために備えられるグローブボックス62について、図14を参照して説明する。図14は、不活性ガスの消費量を抑えてグローブボックス62を動作させる構成を説明する模式図である。

【0127】
図14に示すように、グローブボックス62には、内部の湿度を求めるための露点計63が接続されている。そして、図14に示す各構成は、この露点計63の検出結果に基づいて動作するように制御されている。この制御では、2つの閾値a1及びa2(a1<a2)が設定されており、これらの閾値及び露点計63の検出結果に基づいて、以下のように動作を行うように構成されている。

【0128】
即ち、露点計63が検出した湿度がa2より大きい場合は、バルブ66a及びバルブ66bが開放され、バルブ67a及びバルブ67bが閉じられる。これにより、アルゴン等の不活性ガスが、バルブ66aを介してグローブボックス62内に供給される。そして、グローブボックス62内のガスがバルブ66bを介して排気される。これにより、グローブボックス62内の水蒸気を排気して湿度を下げることができる。

【0129】
一方、露点計63が検出した湿度がa1より小さい場合、バルブ66a及びバルブ66bが閉じられ、バルブ67a及びバルブ67bが開放され、更にポンプ64が駆動する。これにより、グローブボックス62内のガスは、バルブ67a及びバルブ67bを介して循環する。また、この循環の途中においてガスがフィルタ65を通過し、当該ガスに含まれる不純物が吸着されるため、グローブボックス62内の雰囲気を高純度にすることができる。なお、循環状態で湿度がa2より大きくなれば、バルブ67a及びバルブ67bを閉じ、バルブ66a及びバルブ66bを開放して不活性ガスを流した状態にすることで、再び湿度を下げることができる。

【0130】
以上のように露点計63の検出結果に基づいて不活性ガスを供給することにより、雰囲気中の水分の増加を検知して必要なときだけ効率良く不活性ガスを注入して、酸素及び水の少ない雰囲気の中で作業を行うことができる。

【0131】
次に、本実施形態の半導体素子の製造方法について説明する。初めに、単結晶SiCで構成される基板70の表面にエピタキシャル層71を形成する工程について、図15から図19までを参照して説明する。図15は、単結晶SiCで構成される基板70を用いた半導体素子の製造過程において、各工程後の基板表面の様子を示す模式図である。図16は、各工程における坩堝2の状態を示す模式図である。図17は、エピタキシャル層71によって基板70の結晶欠陥が修復される様子を示す工程図である。図18は、気相エピタキシャル成長温度と基板表面のマイクロパイプ欠陥密度との関係を示すグラフである。図19は、気相エピタキシャル成長時の基板と炭素フィード基板との距離と、基板表面に成長した気相エピタキシャル成長膜の表面粗さと、の関係を示すグラフである。

【0132】
この気相エピタキシャル層形成工程は、図4(b)に示すように本加熱室21内で坩堝2を密閉した状態で行われる。また、本工程では、図16(a)に示すようにSi供給源としてのシリコンペレット77が坩堝2内に配置されており、Si蒸気圧下で加熱処理が行われる。そして、本工程では、基板70の上方に、スペーサ76を介して炭素フィード基板78が配置される。なお、このスペーサ76は、例えばタンタルやタンタルカーバイドにより構成されている。

【0133】
炭素フィード基板78は、SiC単結晶で構成されるエピタキシャル層の形成に必要な炭素原子を供給するためのものである。炭素フィード基板78としては、例えば、3C-SiC多結晶、4H-SiC多結晶、又は6H-SiC多結晶で構成される基板を用いることができる。

【0134】
そして、本工程における加熱処理は、1500℃以上2400℃未満で行われる。なお、本工程前の基板70には多数のマイクロパイプ79が含まれているが(図17(a)参照)、加熱処理が行われることにより、上記マイクロパイプ79の開口を埋めるようにSiC分子による気相エピタキシャル成長が起こり、基板70の表面にエピタキシャル層71が形成される(図17(b)参照)。即ち、基板70の表面のマイクロパイプ欠陥がエピタキシャル層71により修復されることになる。その後、スペーサ76及び炭素フィード基板78を取り去りことにより、エピタキシャル層71が形成された基板70を得ることができる(図17(c)参照)。

【0135】
次に、加熱温度(気相エピタキシャル成長温度)とマイクロパイプ欠陥密度との関係性を調べるために行った実験について、図18を参照して説明する。この実験では、気相エピタキシャル成長温度を1400℃、1600℃、1800℃、1900℃の4段階に変化させながら加熱処理を行い、処理後の基板70のマイクロパイプ欠陥密度を計測した。この結果、図18に示すように、1400℃の気相エピタキシャル成長温度ではマイクロパイプ欠陥の密度は100個/cm2程度であったが、1600℃、1800℃と気相エピタキシャル成長温度が上昇するに従ってマイクロパイプ欠陥の密度が減少し、1800℃及び1900℃の気相エピタキシャル成長温度ではマイクロパイプ欠陥密度が数個/cm2程度以下となった。

【0136】
一方、基板70と炭素フィード基板78の隙間を10mm以上に十分に大きくした場合の比較例では、1400℃、1800℃、1900℃の何れの加熱温度(プロセス温度)でも、マイクロパイプ欠陥の密度は、あまり減少しなかった。

【0137】
次に、基板70と炭素フィード基板78との間の距離(基板間距離)が気相エピタキシャル成長に与える影響を調べるために行った実験について、図19を参照して説明する。この実験では、基板間距離を複数設定し、これらの設定条件で加熱処理を行ったときの基板70の表面粗さを計測した。この結果、図19に示すように、密接させた場合(基板間距離が約0の場合)の表面粗さは数nm程度となった。また、基板間距離が0.1mm以上0.3mm以下の範囲にしたときの表面粗さは0.1nm程度と、極めて良好な結果となった。それ以上基板間距離を大きくした場合、基板間距離が大きくなるにつれて表面粗さは徐々に増大する結果となった。特に、基板間距離を10mm以上に十分に大きくした場合の比較例では、表面粗さが数10nmオーダーに悪化することが判った。

【0138】
このように、気相エピタキシャル層形成工程では、加熱温度及び基板間距離が気相エピタキシャル層の成長速度に影響を与えることが判る。この点、本実施形態では、上記で説明したように高精度に温度の制御が可能であるため、適切にエピタキシャル層71を成長させることができる。特に、炭素フィード基板78の表面の温度が高くなるように本加熱室21内の温度を調整することで、効率良くエピタキシャル層71を成長させることができる。

【0139】
次に、エピタキシャル層71が形成された基板70(図15(a)参照)にイオン注入を行う。このイオン注入は、対象物にイオンを照射する機能を有するイオンドーピング装置を用いて行う。イオンドーピング装置によって、エピタキシャル層71の表面の全面又は一部に選択的にイオンが注入される。そして、イオンが注入されたイオン注入部分72に基づいて半導体素子の所望の領域が形成されることになる。また、図15(b)に示すように、イオンが注入されることによって、イオン注入部分72を含むエピタキシャル層71の表面が荒れた状態になる(基板70の表面が損傷し、平坦度が悪化する)。

【0140】
次に、イオンが注入された基板70に行う平坦化工程について図20を参照して説明する。図20は、基板70の表面が加熱処理によって平坦化される様子を示した模式図である。

【0141】
本工程では、図4(b)及び図16(b)に示すように、坩堝2を密閉した状態(即ち、Si蒸気圧下)で加熱処理が行われる。また、この加熱処理は、1500℃以上2400℃以下の温度範囲で行うことが好ましい。このとき、本加熱室21で加熱処理を行う前に、図4(a)で示すように坩堝2を配置して、予備加熱室22において800℃以上の温度で加熱しておくことが望ましい。これにより、基板70を坩堝2に収容して事前に予備加熱しておき、予備加熱室から本加熱室へ移動させることで、基板70を急速に昇温させて加熱処理を行うことができる。

【0142】
この処理により、前述のイオン注入によって荒れた表面部分が平坦化する。即ち、Si蒸気圧下で高温加熱することによって、図20(b)に示すように、エピタキシャル層71の表面のSiCがSi2C又はSiC2になって昇華するとともに、Si雰囲気中のSiがエピタキシャル層の表面でCと結合し、自己組織化が起こり、平坦化されるのである(図15(c)参照)。なお、1500℃以上2400℃以下の温度範囲に加熱温度を制御するのは、以下の理由である。即ち、加熱温度が1500℃未満の場合には、上述した自己組織化が起こりにくくなるからである。また、加熱温度を2400℃以下とした理由は、加熱温度が高いほど自己組織化が起こり易くなるものの、2400℃を超えると、加熱炉や坩堝2の材料設備の消耗と寿命の問題が発生するからである。

【0143】
次に、平坦化工程が行われた後に行うグラフェンキャップ(グラフェン層)形成工程について、図21及び図22を参照して説明する。図21は、グラフェンキャップ73が形成されたときの原子配列を示す模式平面図及び模式断面図である。図22は、従来のグラフェンキャップ形成工程と本実施形態のグラフェンキャップ形成工程とを比較する図である。

【0144】
本工程では、図4(c)及び図16(c)に示すように、坩堝2を開放した状態(即ち、真空下)で加熱処理が行われる。なお、この加熱処理は、900℃以上(望ましくは1500℃以上)2400℃以下で行う。

【0145】
なお、基板70が900℃以下の低い温度で真空下に曝されると、Si原子の昇華の確率が低いためにC原子同士の再配置が部分的にしか進まないので、不均一なグラフェン分子が形成されてしまう。これを防止するために、平坦化工程後であってグラフェンキャップ形成工程の加熱処理前においても、本加熱室21内の温度を900℃以上2400℃以下に保つことが望ましい。

【0146】
そして、加熱処理によって、エピタキシャル層71の表面のSiが昇華し、残ったCによってエピタキシャル層71の表面にグラフェンキャップ73が形成される(図15(d)参照)。

【0147】
図21(a)に示すように、グラフェンキャップ73は、SiC結晶格子の上にグラフェン結晶格子が重なるように形成される。図21(b)に示すように、グラフェンキャップ73は複数の層から構成されている。(0001)Si面の場合、グラフェン層とSiC層(エピタキシャル層の表面)との間(境界)には界面層(インタフェース層)が形成されており、複数のグラフェン層はこの界面層に積層される形になっている。ここで、面内におけるSiC結晶格子の炭素分子配列距離は、SiC格子定数と界面層(インタフェース層)の炭素原子再構成周期との積によって算出することができる。即ち、SiC格子定数(3.073Å)×炭素原子再構成周期(6√3)=SiC結晶格子の炭素分子配列距離(31.935Å)となる。一方、グラフェン結晶格子の炭素分子配列距離は、グラフェン格子定数とグラフェンの炭素原子再構成周期との積によって算出することができる。即ち、グラフェン格子定数(2.456Å)×炭素原子再構成周期(13)=グラフェン結晶格子の炭素分子配列距離(31.928Å)となる。SiC結晶格子の炭素分子配列距離(31.935Å)と、グラフェン結晶格子の炭素分子配列距離(31.928Å)と、が非常に近い値になっており、この結果から、SiC単結晶の表面にグラフェン層を安定して形成できることが判る。

【0148】
次に、従来のグラフェンキャップ形成工程と、1700℃以上で加熱した場合のグラフェンキャップ形成工程と、を比較して説明する。図22に示すように、従来のグラフェン層形成方法は、低温の真空環境から高温の真空環境に加熱昇温させるため、1414℃のSiの融点に達する前からSiC半導体基板表面に部分的なSiの昇華が始まり、不均一なグラフェン層しか生成できなかった。一方、本発明では、平坦化工程から連続してグラフェン層を生成させており、1700℃以上2400℃未満の高温でSiC半導体基板表面のSi原子を同時に均一に昇華させるので、分子レベルに平坦で均一なグラフェン層を形成することができる。

【0149】
グラフェンキャップ形成工程の後には、イオン活性化工程を行う。本工程では、アニール処理(加熱処理)を行って、イオンドープを活性化させる(図15(e)参照)。なお、この加熱処理は、1600℃以上2400℃未満で行う。1600℃以上とした理由は、加熱温度が低いとイオンの活性化が不十分となるおそれがあるからである。また、イオン活性化工程は、グラフェンキャップ形成工程と連続的に行うことも可能である。

【0150】
次に、イオン活性化工程が行われた後に行うグラフェンキャップ除去工程について説明する。本工程では、図4(b)及び図16(d)に示すように、本加熱室21内で坩堝2を密閉した状態(即ち、Si蒸気圧下)で加熱処理が行われる。なお、この加熱処理は、1500℃以上2400℃以下で行う。この加熱処理を行うことにより、グラフェンキャップ73が除去される(図15(f)参照)。

【0151】
グラフェンキャップ73が除去されることで、イオン注入部分72を含むエピタキシャル層71の表面が露出し、この表面が半導体素子の表面になる。また、グラフェンキャップ73が基板70のイオン注入部分72を含むエピタキシャル層71の表面から除去される工程では、基板70のイオン注入部分72を含むエピタキシャル層71の表面がエッチングされた状態になる。

【0152】
ところで、イオンが注入された直後の基板70(図15(b)参照)のイオン注入部分72を含むエピタキシャル層71のイオン濃度は、表面から離れるに従って徐々に増加し、その後、一定の値をとった後、減少する挙動を示すことが判っている。即ち、イオン注入後のエピタキシャル層71の表面近傍では、イオン濃度が十分に達していないおそれがある。しかしながら、本実施形態の製造方法では、基板70のイオン注入部分72を含むエピタキシャル層71の表面を平坦化する工程と、グラフェンキャップ73を形成する工程と、当該グラフェンキャップ73を除去する工程と、を経ることで、基板70のイオン注入部分72を含むエピタキシャル層71の表面がエッチングされて平坦化され、イオン濃度が十分に達していない部分を除去することができる。

【0153】
以上に示したように、基板70を図15(a)から図15(f)のように処理することで、平坦度及び十分な電気的活性を有する半導体素子表面が形成される。

【0154】
次に、図23を参照して、グラフェンキャップ73を形成してから除去するまでの基板70の状態について説明する。図23は、基板の状態を段階的に示した模式図及び顕微鏡写真である。図23(a)、図23(b)、図23(c)には、それぞれ基板を示した模式図と、当該基板の表面の状態を示した顕微鏡写真と、が示されている。

【0155】
この図23(a)で示す基板70は、図15(c)の平坦化工程後の基板70に相当する。図23(a)の写真からは、Si蒸気圧下で基板を加熱処理することで、基板70の表面が分子レベルのステップで終端していることが判る。

【0156】
図23(b)で示す基板70は、図15(d)のグラフェンキャップ形成工程後の基板70に相当する。また、図23(b)の写真からは、基板70の表面を平坦化した状態で真空加熱処理することで、基板70の表面が炭化されてグラフェンキャップ73が形成されていることが判る。

【0157】
図23(c)で示す基板70は、図15(f)のグラフェンキャップ除去工程後の基板70に相当する。そして、図23(c)の写真からは、グラフェンキャップが形成された基板に対してSi蒸気圧下の気相アニール(高温環境の加熱処理)を行うことによって、グラフェンキャップ73が除去されるとともに、表面が規則的なステップで終端することが判る。また、図23(c)の写真からは、グラフェンキャップ73の除去によって、基板70(エピタキシャル層71)の表面が平坦化され、エッチングされた状態になっていることが判る。

【0158】
以上に説明したように、本実施形態のSiC半導体ウエーハ熱処理装置1は、本加熱室21と、加熱装置33と、蓋部114と、を備える。本加熱室21には、基板70が収容された坩堝2が導入される。加熱装置33は、基板70を900℃以上2400℃以下の温度に加熱可能であり、本加熱室21内の空間を基板70の表面に平行な面で切断した断面の温度を一様にすることができ、基板70の表面に垂直な方向で温度を異ならせたり均一にしたりすることができる。蓋部114は、坩堝2の密閉度合を調整して坩堝2内のSiの圧力を調整可能である。

【0159】
これにより、坩堝2内のSiの圧力を調整して加熱を行うことで、SiC基板表面を分子レベルで平坦化したり(平坦化工程)、グラフェンキャップを形成したり(グラフェンキャップ形成工程)、このグラフェンキャップを除去したり(グラフェンキャップ除去工程)することができる。また、坩堝2内のSiの圧力を調整しつつ、基板70の表面に炭素フィード基板78をある間隔をおいて配置し、基板70と炭素フィード基板78との間に積極的に温度差を設けることにより、エピタキシャル層71を効率的に成長させることができる。また、平坦化工程とグラフェン層形成工程とグラフェン層除去工程等の各工程の間で基板を加熱炉11から外に取り出す必要がないため、効率的に半導体ウエーハを製造することができる。

【0160】
次に、図24及び図25を参照して、第2実施形態を説明する。図24は、本発明の第2実施形態に係るSiC半導体ウエーハ熱処理装置1の概要を説明する模式平面図である。図25は、第2実施形態に係る加熱炉11aの構成を示す正面断面図である。なお、この第2実施形態の説明においては、前述の第1実施形態と同一又は類似の部材には図面に同一の符号を付し、説明を省略する場合がある。

【0161】
図24に示すように、本実施形態のSiC半導体ウエーハ熱処理装置1は、前述の加熱炉11に加えて加熱炉11aを備えており、この加熱炉11と加熱炉11aとの間に、搬送室15を備えている。更に、SiC半導体ウエーハ熱処理装置1は、搬送機構13a、搬送機構13b、及び搬送機構13cを備える構成となっている。

【0162】
加熱炉11aは、前述の加熱炉11に変更を加えた装置であり、詳細な構成については後述する。導入室12は、前述のように、坩堝2をSiC半導体ウエーハ熱処理装置1に導入するためのものである。

【0163】
そして、搬送機構13aは、水平方向に移動可能な図略の搬送アームを備え、この搬送アームによって、導入室12に導入された坩堝2を搬送室15に搬送することができる。また、搬送機構13bは搬送室15に搬送された坩堝2を加熱炉11aに搬送することができ、搬送機構13cは搬送室15に搬送された坩堝2を加熱炉11に搬送することができる。このように、搬送機構13b,13cは、本加熱室21間を行き来させる搬送装置として機能する。

【0164】
この構成により、導入室12に導入された坩堝2を加熱炉11a又は加熱炉11に移動させたり、この坩堝2を加熱炉11と加熱炉11aとの間で移動させたりすることができる。

【0165】
次に、加熱炉11aの構成について説明する。図25に示すように、加熱炉11aには、予備加熱室22の下側に、第1断熱室23が配置されている。この第1断熱室23は、その上側を多層熱反射金属板46によって覆われ、側部及び下側を多層熱反射金属板47によって覆われている。なお、下側を覆う多層熱反射金属板47には、坩堝2等を通過させるための開放部57が形成されている。

【0166】
また、加熱炉11aには、この第1断熱室23の下側に更に、第2断熱室24が配置されている。この第2断熱室24は、その上側を多層熱反射金属板47によって覆われ、側部及び下側を多層熱反射金属板48によって覆われている。なお、下側を覆う多層熱反射金属板48には、坩堝2等を通過させるための開放部58が形成されている。

【0167】
以上の構成により、例えば坩堝2が予備加熱室22内に位置するときは、図25に示すように、予備加熱室と第1断熱室が第3多層熱反射金属板43によって閉鎖され、第1断熱室23と第2断熱室24とが第4多層熱反射金属板44によって閉鎖されて、第2断熱室24とその外部の空間とが第5多層熱反射金属板45によって隔てられる。従って、予備加熱時においては第1断熱室23及び第2断熱室24の閉鎖状態が実現され、2つの断熱室の断熱効果によって一層の熱効率向上が図られる。

【0168】
次に、第2実施形態に係るSiC半導体ウエーハ熱処理装置1を用いて、半導体素子を製造する方法について説明する。本実施形態では、加熱炉11aの本加熱室21内を常にSi蒸気圧下に保ち、加熱炉11の本加熱室21内を常に真空下に保つことにより、Siの圧力を調整する手間を軽減させている。

【0169】
本実施形態では、ターボ分子ポンプ34の排気能力を制御しつつ加熱炉11aの本加熱室21内にシリコンペレット77等を配置して、この本加熱室21内を常にSi蒸気圧下に保つように構成する。そのため、気体のSiが逃げることを防ぐために、加熱炉11aが備える多層熱反射金属板42~45は、貫通孔49が形成されていないことが望ましい。なお、この多層熱反射金属板42~45は、タンタルカーバイド処理を施したタンタル材を使い、炭素分子を吸着するゲッター作用を持たせているため、高純度のSi雰囲気を実現できる。

【0170】
一方、加熱炉11の本加熱室21内は、常に真空を保つように制御される。そのため、加熱炉11が備える多層熱反射金属板42、43は、径の大きな貫通孔49(あるいは多数の貫通孔49)が形成されることが望ましい。

【0171】
半導体素子の製造を行うときは、初めに、エピタキシャル層71が形成され、かつイオン注入がなされた基板70を坩堝2に入れ、この坩堝2を導入室12に坩堝2を導入する。そして、この坩堝2を搬送機構13aによって搬送室15まで搬送し、更に、搬送機構13bによって加熱炉11aまで搬送する。そして、前述の平坦化工程を行うことで、イオン注入部分72を平坦化する。

【0172】
その後、坩堝2を搬送機構13aによって搬送室15まで搬送し、更に、搬送機構13cによって加熱炉11まで搬送する。そして、前述のグラフェンキャップ形成工程を行ってグラフェンキャップ73を形成し、更にイオン活性化工程が行ってイオンの活性化を行う。

【0173】
その後、坩堝2を搬送機構13cによって搬送室15まで搬送し、更に、搬送機構13bによって加熱炉11aまで搬送する。そして、前述のグラフェンキャップ除去工程を行う。これにより、平坦度及び十分な電気的活性を有する半導体素子表面が形成される。

【0174】
なお、この加熱処理では、坩堝2内の雰囲気を調整する必要がないため、坩堝2を備えずに加熱処理を行うこともできる。

【0175】
以上により、Si蒸気圧と真空との2つの環境を持つ本加熱室を実現して加熱処理を分担することで、効率的に半導体ウエーハを製造することができる。

【0176】
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。

【0177】
受け台123の材質としては、上記で示したタングステンのみならず、タングステンカーバイドモリブデン、タンタル、タンタルカーバイド、タンタルカーバイドをコーティングしたグラファイト、及びタンタルカーバイド処理を施したタンタル等を用いることができる。

【0178】
メッシュヒータ80の材質としては、上記で示したタングステンのみならず、タングステンカーバイド、モリブデン、タンタル、タンタルカーバイド、タンタルカーバイドをコーティングしたグラファイト及びタンタルカーバイド処理を施したタンタル等を用いることができる。

【0179】
メッシュヒータ80に電流を供給するための電源としては、上記で示した三相交流電源のみならず、単相交流電源又は直流電源を用いることができる。この場合、ヒータブロック90を3の倍数の多角形状に構成しても良いし、3の倍数ではない多角形(例えば5角形、7角形、及び8角形等)状に構成しても良い。

【0180】
図11で示した坩堝回転機構85を第2昇降シャフト122に設けるように構成することもできる。

【0181】
加熱炉11の構成としては、形状及び部材の配置等を適宜変更したものを用いることができる。例えば、第2実施形態で示した加熱炉11aの第3多層熱反射金属板43、第4多層熱反射金属板44、及び第5多層熱反射金属板45に貫通孔49を形成し、第5多層熱反射金属板45の下方にシュラウド60を備えた構成の加熱炉を用いることもできる。
【符号の説明】
【0182】
1 SiC半導体ウエーハ熱処理装置
2 坩堝
11 加熱炉
21 本加熱室
22 予備加熱室
33 加熱装置
41 第1多層熱反射金属板
42 第2多層熱反射金属板
43 第3多層熱反射金属板
44 第4多層熱反射金属板
49 貫通孔
60 シュラウド(冷却装置)
62 グローブボックス
63 露点計
70 基板
71 エピタキシャル層
72 イオン注入部分
73 グラフェンキャップ
80 メッシュヒータ(加熱ヒータ)
81 ヒータ支持部
82 熱電対(温度検出部)
90 ヒータブロック
100 移動機構
114 蓋部(調整手段)
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図6】
4
【図7】
5
【図8】
6
【図9】
7
【図10】
8
【図11】
9
【図12】
10
【図13】
11
【図14】
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【図15】
13
【図16】
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【図17】
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【図18】
16
【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図24】
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【図25】
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【図5】
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【図23】
24