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明細書 :光学活性なトリプチセン誘導体の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2013-223458 (P2013-223458A)
公開日 平成25年10月31日(2013.10.31)
発明の名称または考案の名称 光学活性なトリプチセン誘導体の製造方法
国際特許分類 C12P  15/00        (2006.01)
FI C12P 15/00
請求項の数または発明の数 3
出願形態 OL
全頁数 20
出願番号 特願2012-097595 (P2012-097595)
出願日 平成24年4月23日(2012.4.23)
発明者または考案者 【氏名】竹村 哲雄
【氏名】西村 新之助
【氏名】末永 綱一
【氏名】真崎 康博
出願人 【識別番号】803000115
【氏名又は名称】学校法人東京理科大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100106002、【弁理士】、【氏名又は名称】正林 真之
審査請求 未請求
テーマコード 4B064
Fターム 4B064DA01
4B064DA20
要約 【課題】トリプチセン誘導体の光学異性体混合物から、簡便な方法で、光学活性なトリプチセン誘導体を収率良く製造する方法を提供する。
【解決手段】アシル化され得る官能基を有するトリプチセン誘導体の光学異性体混合物に、酵素を作用させて、光学異性体の一方を優先的にアシル化し、アシル化した光学異性体とアシル化しない光学異性体とを分離して、光学活性なトリプチセン誘導体を製造する。式中、R~R14はそれぞれ独立に、アシル化され得る官能基を有する基等を示す。
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【選択図】なし
特許請求の範囲 【請求項1】
アシル化され得る官能基を有するトリプチセン誘導体の光学異性体混合物に、酵素を作用させ、不斉アシル化することを特徴とする、光学活性なトリプチセン誘導体の製造方法。
【請求項2】
前記アシル化され得る官能基を有するトリプチセン誘導体が、下記式(I)で表される請求項1記載の製造方法。
【化1】
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(式中、R~R14はそれぞれ独立に、アシル化され得る官能基を有する基、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいアルキニル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいヘテロアリール基、置換基を有してもよいアリールアルキル基、置換基を有してもよいヘテロアリールアルキル基、又はハロゲン基を示し、R~Rの少なくとも1つはアシル化され得る官能基を有する基である。)
【請求項3】
前記式(I)のRとRの両方又はRとRの両方がアシル化され得る官能基を有する基であり、その他の置換基にアシル化され得る官能基を有さない、請求項2記載の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、光学活性なトリプチセン誘導体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
トリプチセンは、三個のベンゼン環が三枚羽根の歯車のように配置した構造をとり、ベンゼン環に非対称的に置換基が入ると光学活性になる。光学活性なトリプチセン誘導体は、医薬品や不斉触媒、機能材料等の原料として応用が期待されている。
【0003】
ラセミ体のトリプチセン誘導体の合成法としては、アントラセンとキノンの付加物から誘導する方法(非特許文献1を参照)や、アントラニル酸誘導体のジアゾ化物からベンザインを生成させ、アントラセン誘導体と反応させる方法(特許文献1を参照)等が知られている。
【0004】
光学活性なトリプチセン誘導体の合成法としては、上記の方法によって得られたラセミ体をジアステレオマー塩にし、これを分別結晶して光学活性体を得る方法(非特許文献2を参照)や、酵素を用いて不斉加水分解する方法(特許文献2を参照)が知られている。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特開2004-217536号公報
【特許文献2】特開2006-187225号公報
【0006】

【非特許文献1】The Journal of American Chemical Society,1942年、64巻、p.2649-2653
【非特許文献2】Bulletin of The Chemical Society of Japan,1962年、35巻、p.853-857
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、分別結晶する方法は精製工程が煩雑であり、酵素を用いて不斉加水分解する方法では加水分解され得る官能基を持つトリプチセン誘導体からでないと光学活性体を得ることができなかった。
【0008】
本発明は、以上の状況に鑑みてなされたものであり、トリプチセン誘導体の光学異性体混合物から、簡便な方法で、光学活性なトリプチセン誘導体を収率良く製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、鋭意検討した結果、酵素を用いた不斉アシル化によって光学活性なトリプチセン誘導体を収率良く得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は以下に示される通りのものである。
(1) アシル化され得る官能基を有するトリプチセン誘導体の光学異性体混合物に、酵素を作用させ、不斉アシル化することを特徴とする、光学活性なトリプチセン誘導体の製造方法。
【0011】
(2) 上記アシル化され得る官能基を有するトリプチセン誘導体が、下記式(I)で表される(1)記載の製造方法。
【化1】
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(式中、R~R14はそれぞれ独立に、アシル化され得る官能基を有する基、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいアルキニル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいヘテロアリール基、置換基を有してもよいアリールアルキル基、置換基を有してもよいヘテロアリールアルキル基、又はハロゲン基を示し、R~Rの少なくとも1つはアシル化され得る官能基を有する基である。)
【0012】
(3) 上記式(I)のRとRの両方又はRとRの両方がアシル化され得る官能基を有する基であり、その他の置換基にアシル化され得る官能基を有さない、(2)記載の製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、トリプチセン誘導体の光学異性体混合物から、簡便な方法で、光学活性なトリプチセン誘導体を収率良く製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について説明する。
<トリプチセン誘導体の光学異性体混合物>
本発明で用いられるトリプチセン誘導体の光学異性体混合物は、式(I)で表される化合物の光学異性体混合物である。

【0015】
【化2】
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【0016】
式中、R~R14はそれぞれ独立に、アシル化され得る官能基を有する基、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいアルキニル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいヘテロアリール基、置換基を有してもよいアリールアルキル基、置換基を有してもよいヘテロアリールアルキル基、又はハロゲン基を示し、R~Rの少なくとも1つはアシル化され得る官能基を有する基である。

【0017】
上記のアシル化され得る官能基とは、ヒドロキシ基、アミノ基、スルファニル基等が挙げられる。特にヒドロキシ基、アミノ基は本発明の酵素を用いるアシル化反応に好適である。

【0018】
アシル化され得る官能基は、トリプチセン骨格に直接導入されていても、アシル化に関与しない炭素数0~6を有する2価の置換基を介してトリプチセン骨格に導入されていてもよい。より好ましくは、トリプチセン骨格に直接導入されるか、又はアシル化に関与しない炭素数0~3を有する2価の置換基を介してトリプチセン骨格に導入される。アシル化されうる官能基を有する基としては、ヒドロキシ基、ヒドロキシアルキル基、ヒドロキシアルコキシ基、アミノ基、アミノアルキル基、アミノアルコキシ基、スルファニル基、スルファニルアルキル基等が挙げられる。具体的には、ヒドロキシ基、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシメトキシ基、アミノ基、アミノメチル基、アミノエチル基、アミノエトキシ基、スルファニル基、スルファニルメチル基、スルファニルエチル基等が挙げられる。

【0019】
~R14のアルキル基としては、炭素数1~10のアルキル基が好ましく、炭素数1~6のアルキル基がより好ましい。アルキル基は、直鎖であっても分岐であっても環状であってもよい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。

【0020】
~R14のアルケニル基としては、炭素数1~10のアルケニル基が好ましく、炭素数1~6のアルケニル基がより好ましい。具体的には、ビニル基、アリル基、シクロヘキサ-1-エン-1-イル基等が挙げられる。

【0021】
~R14のアルキニル基としては、炭素数1~10のアルキニル基が好ましく、炭素数1~6のアルキニル基がより好ましい。具体的には、エチニル基、プロパ-2-イン-1-イル基等が挙げられる。

【0022】
~R14のアリール基としては、炭素数6~20の単環式又は多環式芳香族炭化水素基が好ましく、炭素数6~12の単環式又は多環式芳香族炭化水素基がより好ましい。具体的には、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基等が挙げられる。

【0023】
~R14のヘテロアリール基としては、酸素原子、硫黄原子及び窒素原子から選ばれるヘテロ原子を1~4個含む、環構成炭素数2~9の単環式又は多環式芳香族複素環基が好ましく、環構成炭素数3~5の単環式芳香族複素環基がより好ましい。具体的には、ピリジル基、ピラジル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、イソオキサゾリル基等が挙げられる。

【0024】
~R14のアリールアルキル基としては、上記アリール基で置換された炭素数1~6のアルキル基が好ましく、上記アリール基で置換された炭素数1~4のアルキル基がより好ましい。具体的には、ベンジル基、フェネチル基、3-フェニルプロピル基、4-フェニルブチル基、1-フェニルエチル基、2-フェニルプロパン-2-イル基等が挙げられる。

【0025】
~R14のヘテロアリールアルキル基としては、上記ヘテロアリール基で置換された炭素数1~6のアルキル基が好ましく、上記ヘテロアリール基で置換された炭素数1~4のアルキル基がより好ましい。具体的には、ピリジルメチル基、ピリジルエチル基、ピラジルメチル基、ピリミジニルメチル基、ピリダジニルメチル基、イミダゾリルメチル基、ピラゾリルメチル基等が挙げられる。

【0026】
該アルキル基、アルケニル基、アルキニル基が有してもよい置換基としては、炭素数1~4のアルコキシ基、ハロゲン基等が挙げられる。また、該アリール基、ヘテロアリール基、アリールアルキル基、ヘテロアリールアルキル基が有してもよい置換基としては、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルケニル基、炭素数1~6のアルキニル基、炭素数1~4のアルコキシ基、ハロゲン基等が挙げられる。

【0027】
~R14のハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。

【0028】
本発明で用いられるトリプチセン誘導体は、式(I)において、R~Rの少なくとも1つはアシル化され得る官能基を有するが、好ましくは、RとRの両方又は、RとRの両方がアシル化され得る官能基を有する基であり、その他の置換基にアシル化され得る官能基を有さないことが好ましい。この位置にアシル化され得る官能基を有する基が置換されていると、酵素反応を進行させやすい。より好ましくは、RとRの両方又は、RとRの両方は、ヒドロキシメチル基又はアミノ基である。具体的には、(±)-2,6-ビス(ヒドロキシメチル)トリプチセン、(±)-1,5-ジアミノトリプチセン等が挙げられる。

【0029】
本発明で用いられるトリプチセン誘導体の光学異性体混合物において、光学異性体の混合比は任意であり、1:1のラセミ体でもよく、一方の比率を高めたものを用いてもよい。

【0030】
<ラセミ体のトリプチセン誘導体の製造>
本発明で用いられるラセミ体のトリプチセン誘導体は、置換アントラセンに、アントラニル酸と亜硝酸イソアミルを反応させて、トリプチセン骨格を形成させ、置換基を変換することにより製造することができる。

【0031】
【化3】
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【0032】
置換アントラセンの置換基としては、アルキル基、アシル基等が挙げられる。例えば、アルキル基を酸化してカルボキシル基とし、これを還元すればヒドロキシアルキル基へ変換できる。アシル基をアジ化ナトリウム、トリクロロ酢酸と反応させてアセチルアミノ基とし、これを加水分解すれば、アミノ基へ変換できる。ヒドロキシアルキル基をハロゲン化水素と反応させてハロゲン化アルキル基とし、これに水硫化ナトリウムを反応させれば、スルファニル基へ変換できる。このようにして、ヒドロキシ基、アミノ基、スルファニル基等のアシル化され得る官能基を有するトリプチセン誘導体を合成できる。

【0033】
<光学活性なトリプチセン誘導体の製造方法>
本発明の光学活性なトリプチセン誘導体の製造方法は、式(I)で表されるトリプチセン誘導体の光学異性体混合物に、酵素を作用させ、光学異性体の一方を優先的にアシル化し、アシル化した光学異性体とアシル化しない光学異性体とを分離する方法である。

【0034】
本発明で用いられる酵素は、上記式(I)で表されるトリプチセン誘導体のアシル化され得る官能基を認識し、光学異性体の一方を優先的にアシル化する能力を有する酵素であればよい。このような能力を有するアシル化酵素は、狭義のリパーゼを含む狭義のアシラーゼ、エステラーゼ、アシルアミダーゼを含むアミダーゼ、プロテアーゼ、エーテルヒドロラーゼ、グリコシダーゼ、チオエーテルヒドロラーゼ、ニトリルヒドロラーゼ等であり、ウシ、ブタ、ヒト等の動物由来でも、ヒマ等の植物由来でも、キサントモナス属、シュードモナス属、アスペルギルス属、キャンディダ属、フザリウム属、ジオトリカム属、ムコール属、ノカルディア属、ペニシリウム属、リゾプス属、サッカロマイセス属、アクロモバクター属、アシネトバクター属、アルカリジェネス属、クロモバクテリウム属、エシェリヒア属、スフィンゴモナス属、バチルス属、バークホルデリア属、モレキセラ属、ラクトバチルス属、スタフィロコッカス属、セラチア属、ヤロウイア属等に属する微生物由来でもかまわない。また、これらのアシル化酵素の遺伝子を組換えDNA技術により単離し、同じ属に属する宿主細胞又は異なる属に属する宿主細胞に導入することにより得られた形質転換体が産生するアシル化酵素でもよい。アシル化酵素の中でも、特にリパーゼが好ましく用いられる。

【0035】
本発明で用いられるアシル化酵素は、それ自体を含有する微生物又は細胞の培養物の形で反応に利用してもよいが、該培養物又は当該アシル化酵素を含有する組織から分離して粗酵素や精製酵素等の形で反応に利用してもよい。このような粗酵素や精製酵素等は、例えば、1)超音波処理、2)ガラスビーズ又はアルミナを用いる摩砕処理、3)フレンチプレス処理、4)リゾチーム等の酵素処理、5)ワーリングブレンダー処理等により菌体、細胞、又は組織等を破砕し、得られた破砕物から6)硫安等を用いる塩析、7)有機溶媒、ポリエチレングリコール等の有機ポリマーによる沈澱、8)イオン交換クロマトグラフィ、疎水クロマトグラフィ、ゲル濾過クロマトグラフィ、アフィニティクロマトグラフィ等の各種のクロマトグラフィ、9)電気泳動等の通常の方法により調製することができる。また、アシル化酵素を、共有結合、イオン結合、吸着等により担体に結合させる担体結合法、高分子の網目構造の中に閉じ込める包括法等の固定化の方法によって不溶化し、反応液から容易に分離可能な状態に加工した固定物の形で利用することもできる。

【0036】
具体的には、Lipase PS Amano SD、Lipase AH、Lipase AK、PPL、CHE-XE、Lipase AY、Lipase FVL、Lipase M、CCL、CRL、Novozym435、Lipase PS SD、LIP300、Lipase AY-30G、Lipase OF、Lipase A amano6等を用いることができる。この中でも特に、Novozym435、Lipase PS Amano SDが好適である。

【0037】
本発明で行う酵素反応の反応温度は、10~70℃が可能であるが、酵素の至適温度と安定性の点から、25~50℃の範囲がより好ましい。

【0038】
本発明で行う酵素反応は緩衝液中で行うが、必要に応じ、トリプチセン誘導体を溶解するためにエタノール等の有機溶媒や界面活性剤、酵素の安定化剤を添加してもよい。緩衝液としては、pH5~9の通常の緩衝液、例えばリン酸緩衝液、酢酸緩衝液、トリス-塩酸緩衝液、各種グッドバッファー等を挙げることができる。酵素の至適pHと安定性の点から、pH6~8で反応を行うことがより好ましい。

【0039】
本発明で行う酵素反応の反応時間は、1時間から1週間であるが、6時間から3日間がより好ましい。

【0040】
本発明で行う酵素反応の反応液から、反応生成物を回収する方法は、ジエチルエーテルや酢酸エチル等の有機溶媒を用いる抽出、分別蒸留、シリカゲルやイオン交換樹脂等を用いるカラムクマトグラフィを適宜用いることができる。特に、ジエチルエーテルを用いて抽出後、有機溶媒を減圧濃縮し、シリカゲルカラムクラマトグラフィで精製する方法が簡便に用いられる。

【0041】
このようにして回収した光学活性なトリプチセン誘導体は、通常有機合成で用いられる方法により、他の光学活性なトリプチセン誘導体に変換することができる。例えば、回収された光学活性なアシル化トリプチセン誘導体をアルカリや酸によって加水分解すれば、対応する光学活性なアミノトリプチセン、光学活性なヒドロキシトリプチセン等へ変換することができる。

【0042】
本発明では、アシル化酵素を用い、トリプチセン誘導体の光学異性体混合物から光学異性体の一方を優先的にアシル化させることにより光学活性なトリプチセン誘導体を製造したが、加水分解酵素を用いれば同様に光学異性体の一方を優先的に加水分解させて光学活性なトリプチセン誘導体を得ることができる。

【0043】
<土壌細菌を用いたトリプチセン誘導体の酸化反応による光学活性なトリプチセン誘導体の製造>
酵素の代わりに、土壌から単離した微生物を用いても、トリプチセン誘導体の光学異性体混合物から、光学分割なトリプチセン誘導体を製造することができる。(±)-2,6-ビス(ヒドロキシメチル)トリプチセンを炭素源に増殖するシュードモナスニトロレデュセンスは(±)-1,5-ビス(ヒドロキシメチル)トリプチセンの一方の光学異性体を優先的に酸化する。

【0044】
<トリプチセン類のミセル化>
トリプチセン誘導体は、置換基にアルキルアンモニウム塩を導入すれば、界面活性剤にもなり得、ミセルを形成することもある。
【実施例】
【0045】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
[合成例1]
<(±)-1,5-ジアミノトリプチセンの合成>
【実施例】
【0046】
【化4】
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【実施例】
【0047】
500ml三口フラスコに、ジクロロメタン200mlと乳鉢ですりつぶした塩化アルミニウム36.0447gを加えた。これに氷浴下で塩化アセチル14mlを加え、撹拌した。更に氷浴下、アントラセン(1)11.8234gを2~3回に分けて加えた。そのあと、室温下で4時間撹拌し、反応を進行させたところ、反応の前後で反応溶液が赤色から黄色を帯びた茶色に変化した。
反応後、氷浴下で50%塩酸を塩素が出なくなるまで加え、塩化アルミニウムを失活させた。次に、三口フラスコにイオン交換水を加え、ジクロロメタン層と、塩酸を含む水層に分離した。ジクロロメタン層をエバポレーターし、粗生成物である黄色い固体を得た。
この粗生成物を濃縮溶液にし、クロロホルムを溶媒として、シリカゲルカラムクロマトグラフィで精製した。粗生成物を溶媒クロロホルムで薄層クロマトグラフィに展開したとき、生成物はRf値0.825付近である。Rf値0.2付近が未反応のアントラセン(無色)で、Rf値0.5付近が一置換体(うすい黄色)、Rf値0.95付近が1,8位にアセチル基のついたアントラセン(赤褐色)である。
カラムクロマトグラフィで目的物を分取し、エバポレーターで溶媒を除去し、結晶化した結果、黄色い結晶である1,5-ジアセチルアントラセン(2)が収率38.6%で得られた。物性値を以下に示す。
【実施例】
【0048】
H NMR(400MHz,CDCl,TMS,δ=ppm)δ:2.82(6H,s,-CH),7.53(2H,dd,-CH),8.01(2H,d,-CH),8.26(2H,d,-CH),9.57(2H,s,-CH).
【実施例】
【0049】
次に、1,5-ジアセチルアントラセン(2)2.0452g、クロロホルム20mlを300ml三口フラスコに入れた。これを還流管につなぎ、油浴温度120℃で還流した。これに、亜硝酸イソアミル10.2mlとアントラニル酸10.4gを5回に分けて加えた。亜硝酸イソアミルとアントラニル酸をはじめに加えてから10時間還流を続け、その後、放冷した。
次に、エタノール11mlと10%水酸化ナトリウム91mlを加え、20分間撹拌した。これをエバポレーターで濃縮して減量し、吸引濾過してくすんだ白色の濾物を得た。
濾物にトリエチレンジメチルエーテル24.6mlを加え、120℃で還流した。ここに無水マレイン酸1.6254gを加え、20分間還流した後、放冷し、エタノール4.3ml、10%水酸化ナトリウム水溶液61ml加え、撹拌した。
次に、この溶液を氷浴下で冷却し、吸引濾過で濾物を得た。ここで得た濾物をクロロホルムにとかし、吸引濾過後、濾液を回収した。
この濾液を濃縮し、クロロホルム-ヘキサンから、再結晶し白色結晶が析出した。吸引濾過し、1,5-ジアセチルトリプチセン(3)を収率95.2%で得ることができた。
【実施例】
【0050】
H NMR(400MHz,CDCl,TMS,δ=ppm)δ:2.62(6H,s,-CH),6.77(2H,s,-CH),7.00-7.02(2H,m,-CH),7.07(2H,t,-CH),7.42(4H,m,-CH),7.60(2H,d,-CH).
【実施例】
【0051】
300ml三口フラスコに、トリクロロ酢酸9.0989gと1,5-ジアセチルトリプチセン(3)を604.6mg加え、油浴温度70℃で還流した。ここにアジ化ナトリウム605.4mgを3~4回に分けて加え、48時間還流した。還流後、氷浴下でイオン交換水500mlを加え、半日ほど室温下で撹拌を続けた。析出物を吸引濾過し、粗生成物を得た。粗生成物をエタノールで再結晶し、白色結晶の1,5-ジアミドトリプチセン(4)を収率57.7%で得た。
【実施例】
【0052】
HNMR(400MHz,DMSO-d,TMS,δ=ppm)δ:2.25(s,6H,-COCH),5.82(s,2H,-CH),7.00(t,2H,-CH),7.05(m,2H,-CH),7.13(d,2H,-CH),7.31(d,2H,-CH),7.48(m,2H,-CH),9.79(s,2H,-NH).
【実施例】
【0053】
500mlフラスコに、1,5-ジアミドトリプチセン(4)を405.5mg、エタノールを256ml加えた。これを室温下撹拌し、塩酸150mlを少しずつ加えた。更に10分ほど室温下撹拌した後、油浴温度120℃で48時間還流を行った。反応後、放冷し、エバポレーターで濃縮して減量し、ここにジエチルエーテルを20ml、水酸化ナトリウム水溶液を加え、pH試験紙で溶液が塩基性になったことを確認した。ジエチルエーテルを更に加え、ジエチルエーテル層を抽出した。ジエチルエーテル層をエバポレーターで濃縮すると、褐色の濃縮液体が残った。これを、展開溶媒が酢酸エチル:ヘキサン=1:1の混合溶媒のカラムクロマトグラフィにかけ、目的物を分離した。更に、エタノール-ヘキサンで再結晶したところ、(±)-1,5-ジアミノトリプチセン(5)を収率55.5%で得ることができた。
【実施例】
【0054】
H NMR(400MHz,DMSO-d,TMS,δ=ppm)δ:3.77(s,4H,-NH2),5.39(s,2H,-CH),6.40(d,2H,-CH),6.78(t,2H,-CH),6.87(d,2H,-CH),6.97(m,2H,-CH),7.36(m,2H,-CH).
【実施例】
【0055】
[実施例1]
<1,5-ジアミノトリプチセンの不斉アシル化>
【化5】
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【実施例】
【0056】
1,5-ジアミノトリプチセン(5)6.0mg(21.1×10-3mmol),酵素としてNovozym435を240PLU、又はLipase PS Amano SDを552U、そして、アシルドナーとして酢酸ビニル 0.422mmol、アセトニトリル1.5mlをスクリュー管にいれた。これを40℃に保った水浴中で撹拌し、3時間毎に30時間、反応の進行をHPLCで調べた。サンプルは50μLずつ抽出し、ジエチルエーテルとイオン交換水を加えてジエチルエーテル層を抽出、濾過し、得た濾液を濃縮した。これをHPLCで測定した。
HPLC条件:Chiral HPLC(ID),ヘキサン:イソプロパノール=7:3、流速1.0ml/min
30時間後の生成物の収率及び光学純度を表1に示す。
【実施例】
【0057】
【表1】
JP2013223458A_000007t.gif
【実施例】
【0058】
[合成例2]
<(±)-2,6-ビス(ヒドロキシメチル)トリプチセンの合成>
【化6】
JP2013223458A_000008t.gif
【実施例】
【0059】
1L三口フラスコにベンジルアルコール(8)52mL(0.5mol,1eq.)と、トルエン215mL(2.0mol,4eq.)を入れ、氷浴で系を0℃にしてしばらく撹拌した。その後、塩化アルミニウム266.68g(2.0mol,4eq.)をゆっくりと少量ずつ加えた。加え終わったら、オイルバスで110℃に加熱し、3時間撹拌した。反応後、砕いた氷を45g、水を300mL、35%HCl溶液を200mL加えて、冷やしながらしばらく撹拌を続けた。析出した結晶を吸引濾過し、水(50mL×3)とヘキサン(50mL×3)で洗浄した。取り出した粗結晶を乾燥させ、ヘキサンで数回洗浄したのち、少量の酢酸エチルで洗浄した。ここで得られた結晶を乾燥させると、2,6-ジメチルアントラセン(9)がきれいな灰色結晶として23.8426g(115.6mmol、収率46.2%)得られた。物性値を以下に示す。
【実施例】
【0060】
H NMR(400MHz,CDCl,TMS,δ=ppm)δ:2.54(6H,s,-CH),7.26(2H,d,-CH),7.72(2H,s,-CH),7.88(2H,d,-CH),8.26(2H,s,-CH).
【実施例】
【0061】
200mL二口フラスコに2,6-ジメチルアントラセン(9)を870.2mg(4.2mmol,1eq.)を入れ、ジクロロメタン70mLで溶かした。オイルバスにて加熱還流をし、亜硝酸イソアミル2.5mL(18.6mmol,4eq.)とアントラニル酸2.4860g(18.1mmol,4eq.)を1時間かけて交互に少しずつ滴下し、その後更に2時間還流した。反応後、常温まで冷却したらエバポレーターで溶媒を除去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィ(ジクロロメタン:クロロホルム=1:1)で2,6-ジメチルトリプチセン(10)を分取した。溶媒を除去し、973.2mg(3.4mmol)の無色固体が得られた(収率81.7%)。物性値を以下に示す。
【実施例】
【0062】
H NMR(400MHz,CDCl,TMS,δ=ppm)δ:2.24(6H,s,-CH),5.31(2H,s,-CH),6.77(2H,d,-CH),6.95(4H,d,-CH),7.22(2H,s,-CH),7.33(2H,d,-CH).
【実施例】
【0063】
100mLナスフラスコに2,6-ジメチルトリプチセン(10)を117.5mg(0.42mmol,1eq.)を入れ、ピリジン7mL、水10mLを加えて撹拌しながらウォーターバスで加熱し、溶液を沸騰させた。そこで、KMnO 546.2mg(3.5mmol,8.3eq.)を少量ずつ加えたら、室温に戻して16時間撹拌した。反応後、吸引濾過で析出した二酸化マンガンを取り除き、熱水で洗浄した。得られた濾液に氷冷下で35%HCl溶液を30mL加えて、析出した粗結晶を吸引濾過で回収し、冷水で洗浄した。乾燥させた粗結晶をシリカゲルカラムクロマトグラフィ(ヘキサン:アセトン=1:1)で精製し、ジクロロメタンとヘキサンで再結晶を行い、2,6-ジカルボキシトリプチセン(11)の無色結晶126.7mg(0.32mmol、収率89.0%)を得た。物性値を以下に示す。
【実施例】
【0064】
H NMR(400MHz,CDCl,TMS,δ=ppm)δ:5.59(2H,s,-CH),7.07(2H,m,-CH),7.44-7.50(4H,m,-CH),7.82(2H,m,-CH),8.11(2H,m,-CH).
【実施例】
【0065】
200mL二口フラスコに水素化アルミニウムリチウムを70mg(2.1mmol,6eq.)入れ、系内を真空ポンプで真空にし、窒素を注入して置換した。2,6-ジカルボキシトリプチセン(11)91.5mg(0.29mmol,1eq.)を無水THF20mLで溶かしたものをシリンジ(注射器)で少しずつ滴下した。室温下で6時間撹拌し、反応後に固相抽出を行って乾燥させると粗結晶が得られた。粗結晶をシリカゲルカラムクロマトグラフィ(ヘキサン:アセトン=1:1)で精製し、ジクロロメタンとヘキサンで再結晶を行ったところ、(±)-2,6-ビス(ヒドロキシメチル)トリプチセン(12)が無色の固体92.9mg(0.30mmol,収率96.0%)として得られた。物性値を以下に示す。
【実施例】
【0066】
H NMR(400MHz,CDCl,TMS,δ=ppm)δ:4.58(4H,s,-CH),5.42(2H,s,-CH),6.96-7.00(4H,m,-CH),7.34-7.42(6H,m,-CH);
13C NMR(400MHz,CDCl,δ=ppm)δ:53.9(1C,-CH-),65.3(1C,C-O)122.7,123.7,123.7,124.0,125.3(5C,ArC-H,138.0(1C,ArC-CHOH),144.8,145.0,145.7(3C,ArC-C).
【実施例】
【0067】
[実施例2]
<(±)-2,6-ビス(ヒドロキシメチル)トリプチセンの不斉エステル化>
【化7】
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【実施例】
【0068】
9ccスクリュー管瓶に(±)-2,6-ビス(ヒドロキシメチル)トリプチセン((±)-12)を10mg入れ、乾燥アセトニトリル1.0mLで溶かし、そこへLipase PS Amano SD 20mgを加えてよく撹拌し、ヘキサン酸ビニルを30μL加えたら、室温で24時間撹拌した後、サンプルを採取し、HPLCで生成物の反応率と光学純度を測定した。結果を表2に示す。
【実施例】
【0069】
【表2】
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【実施例】
【0070】
表2に示すように、99%eeを超える高光学純度のジオール化合物(12)及びジエステル化合物(14)を得ることができた。これらを単離し、X線構造解析を行ったところ、ジオールは(S,S)-(+)体、ジエステルは(R,R)-(-)体であることがわかった。
【実施例】
【0071】
[合成例3]
<(±)2,6-ジカルボキシトリプチセンジブチルエステルの合成>
【化8】
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【実施例】
【0072】
合成例2において、中間体として得られた2,6-ジカルボキシトリプチセン(11)を原料に用いる。50mlナスフラスコに、(±)-2,6-ジカルボキシトリプチセン((±)11)0.1942g、1-ブタノール20ml、濃硫酸1mlを入れ、加熱還流した。TLCで反応の進行を確認し、還流を終了した。その後氷冷水に反応溶液を注ぎいれ、ジエチルエーテルで抽出し、抽出した層を水で2回洗浄した。エーテル層を取り出して硫酸マグネシウムで脱水、エバポレーターで濃縮した後、シリカゲルクロマトグラフィ(ヘキサン:アセトン=1:1)で精製し(±)-2,6-ジカルボキシトリプチセンジブチルエステル(15)を0.1932g(収率83.2%)得た。物性値を以下に示す。
【実施例】
【0073】
H NMR(400MHz,CDCl,TMS,δ=ppm)δ:1.35(6H,t),4.32(4H,q),5.54(2H,s),7.03(4H,m),7.42(2H,m),7.75(2H,m),8.05(2H,m).
【実施例】
【0074】
[参考例1]
<(±)-2,6-ジカルボキシトリプチセンジブチルエステルの不斉加水分解>
【化9】
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【実施例】
【0075】
9ccスクリュー管瓶に、(±)-2,6-ジカルボキシトリプチセンジブチルエステル((±)-15)を5mg、アセトニトリルを500μl、0.1Mリン酸バッファーを1ml、Lipase AKを15mg入れ、室温で撹拌した。72時間後にジエチルエーテルで分液、抽出し、溶媒を除去した後、HPLCにて測定を行った。収率と光学純度を表3に示す。
【実施例】
【0076】
【表3】
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【実施例】
【0077】
[参考例2]
<土壌細菌によるトリプチセン類の不斉酸化>
≪土壌細菌のスクリーニング≫
土壌や活性汚泥(77サンプル)を単離源として、(±)-2,6-ビス(ヒドロキシメチル)トリプチセン(12)を変換することができる新規微生物を単離するために、(±)-2,6-ビス(ヒドロキシメチル)トリプチセン(12)が唯一の炭素源となるような培地(CFMM)を用いてスクリーニングを行った。
CFMMプレート上に単離されている菌体を、試験管中のLB培地3mlに植菌し、インキュベーターを用いて24時間振とう培養した。生育を確認できたら、試験管から培養液を100μlとり、500ml三角フラスコ中のLB培地100mlへ植菌し、同様に24時間振とう培養した。
【実施例】
【0078】
使用した培地の組成は以下の通りである。
CFMM培地
NaHPO 2.2g/l
KHPO 0.8g/l
NHNO 3.0g/l
CaCl・2HO 0.01g/l
FeSO・7HO 0.01g/l
MgSO・7HO 0.01g/l
2,6-ビス(ヒドロキシメチル)トリプチセン(5%(wt/vol))
0.15 mg/ml
アガロース 16g/l
LB培地
Bacto tryptone 10g/l
Yeast extract 5g/l
NaCl 10g/l
【実施例】
【0079】
OD600を測定し、OD600=5.0となるように、LB培地で培養液を希釈した。培養液を試験管に2970μlずつ分けとり、基質溶液を30μlそれぞれに加え、基質濃度を0.05mg/mlとした。振とう培養を行い、24時間毎に培養液を試験管一本分抽出した。
更に、以下の手順で処理を行った。
1)食塩の入った遠心分離管に培養液を移し、塩析を起こした。
2)希塩酸で培養液をpH=1~2に調整した。
3)ジエチルエーテル3mlを加え、ボルテックスミキサーで1分間懸濁させた後、遠心分離を行い、上澄みを分取した。
4)下層に酢酸エチル3mlを加え、抽出した。
5)再び下層に酢酸エチル3mlを加え、抽出した。
有機相を回収し、フィルター濾過して、不純物を取り除いた。
濾液をエバポレーターにかけて溶媒を飛ばした後、酢酸エチル100μlを加え、これを、抽出サンプルとして、HPLCによる解析を行ったところ、1サンプルで(±)-2,6-ビス(ヒドロキシメチル)トリプチセンの減少が確認された。
【実施例】
【0080】
≪菌体の特定≫
上記で(±)-2,6-ビス(ヒドロキシメチル)トリプチセン(12)の減少が確認された菌体について、アガロースゲル電気泳動にかけ鋳型を特定し、PCRをした。反応終了後、PCR反応液の一部をアガロースゲル電気泳動し、DNAを切り出し、シークエンスしたところ、シュードモナスニトロレデュセンスであることがわかった。
【実施例】
【0081】
≪(±)-1,5-ビス(ヒドロキシメチル)トリプチセンの不斉酸化≫
LB培地3mlにOD600=0.510、基質濃度0.05mg/mlとなるように、シュードモナスニトロレデュセンス、(±)-1,5-ビス(ヒドロキシメチル)トリプチセン(19)を加えた。30℃、300rpmで培養したところ、6日後に光学純度52.2%eeの(S,S)-1,5-ビス(ヒドロキシメチル)トリプチセンが収率52.4%で回収された。
【実施例】
【0082】
≪(±)-2,6-ビス(ヒドロキシメチル)トリプチセンの不斉酸化≫
LB培地3mlにOD600=0.510、基質濃度0.05mg/mlとなるように、シュードモナスニトロレデュセンス、(±)-2,6-ビス(ヒドロキシメチル)トリプチセン(12)を加えた。30℃、300rpmで培養したところ、6日後に光学純度99.9%eeの(S,S)-2,6-ビス(ヒドロキシメチル)トリプチセンが収率24.2%で回収された。
【実施例】
【0083】
[合成例4]
<アルキルアンモニウム塩を有するトリプチセン誘導体の製造>
【化10】
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【実施例】
【0084】
200ml二口フラスコに合成例1で製造した1,5-ジアセチルトリプチセン(3)を2.01g、ジオキサン60mlを入れ、氷冷下で撹拌させた。ビーカーに水酸化カリウム20.34g、臭素5mlを混合したもの用意し、滴下ロートでゆっくりとフラスコ内へ滴下させた。滴下が終了したら室温で4時間撹拌した。反応に使われなかった臭素を失活させるために亜硫酸水素ナトリウム2gと水100ml、ジエチルエーテル50mlを加え、分液ロートにて水層部分を抽出した。水層に希塩酸を加えて、pH=1とし、ジエチルエーテルで抽出した。ジエチルエーテル相を飽和食塩水で洗い、濃縮して、減圧乾燥した。エタノールで再結晶し、白色結晶として1,5-ジカルボキシルトリプチセン(18)を収率90%で得た。
【実施例】
【0085】
H NMR(400MHz,DMSO,δ=ppm)δ:6.85(2H,s,-C-H),7.03,7.03,7.04,7.05(q,Ar-H),7.08,7.10,7.12(t,Ar-H),7.44,7.45,7.46,7.46(q,Ar-H),7.53,7.55(d,Ar-H),7.61,7.62(d,Ar-H).
【実施例】
【0086】
次に、200ml三口フラスコに水素化アルミニウムリチウム545.2mgを入れ、窒素置換した。1,5-ジカルボキシルトリプチセン(18)973.0mgをテトラヒドロフラン120mlに溶解し、フラスコに加え、60℃で6時間撹拌した。その後、水素化アルミニウムリチウムを失活させるため10%の水酸化カリウム水溶液1.93mlと水1.55mlを加え4時間撹拌を続けた。系内が白く濁った後に吸引濾過をして、濾液をエバポレーションし溶媒を除去した。得られた生成物をクロロホルムに溶解し再結晶した。更にシリカゲルカラムクラマトグラフィ(展開溶媒アセトン:ヘキサン=1:1)で精製し、濃縮、減圧乾燥して1,5-ビス(ヒドロキシメチル)トルプチセン(19)を収率84%で得た。
【実施例】
【0087】
H NMR(400MHz,CDCl,δ=ppm)δ:2.17(2H,s,OH),4.90,4.91(4H,d,CH),5.92(2H,s,bridgehead),6.96-7.01(6H,m,Ar-H),7.38,7.39,7.39,7.40(2H,dd,Ar-H),7.41,7.42,7.42,7.43(2H,dd,Ar-H);
13C NMR(400MHz,CDCl,δ=ppm)δ:30.9(1C,-CH-),44.2(1C,C-O),104.4,104.5,105.7,105.8,106.0(5C,ArC-H) , 115.3(1C,ArC-CHOH),125.3,125.8,126.5(3C,ArC-C).
【実施例】
【0088】
30mlナスフラスコに1,5-ビス(ヒドロキシメチル)トルプチセン(19)を180ml入れ、90℃に加熱した臭化水素水9mlを加え2時間撹拌した。その後、吸引濾過、減圧乾燥し、石油エーテルで再結晶したところ、1,5-ビス(ブロモメチル)トリプチセン(20)を収率99%で得た。
【実施例】
【0089】
100ml二口フラスコ中に、1,5-ビス(ブロモメチル)トリプチセン(20)200mgをクロロホルム中に溶解させた。N,N-ジメチル-n-ドデシルアミン1.18gのクロロホルム溶液をゆっくり滴下しながら100℃で42時間加熱還流を行った。その後、溶媒をエバポレーションで除去した。これにN,N-ジメチル-n-ドデシルアミンを加えて溶解させ限外濾過を行った。クロロホルムで再結晶し、1,5-ビス(N,N-ジメチル-n-ドデシルアンモニウム)トリプチセン(21)を収率27%で得た。
【実施例】
【0090】
[合成例5]
<アルキルアンモニウム塩を有するトリプチセン誘導体の製造>
【化11】
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【実施例】
【0091】
200ml二口フラスコに合成例2で製造した2,6-ジメチルトリプチセン(10)0.5g、N-ブロモスクシンイミド0.95g、過酸化ベンゾイル0.13g、四塩化炭素40 mlを入れ、加熱還流を行った。80℃にて2時間、引き続き温度を100℃に上げ2時間行った。減圧濾過にて沈殿物を取り除き、濾液をエバポレーターにて減圧濃縮し黄色粉末結晶を得た。次いでカラムクロマトグラフィ(展開溶媒クロロホルム)で精製し、濃縮して、2,6-ビス(ブロモメチル)トリプチセン(22)を透明粉末結晶として0.92g(収率85%)得た。HPLC純度は91.9%だった。(HPLC DAICEL Chiralcel IA,ヘキサン:2-プロパノール=9:1、流速1.0ml/min.,検出254.0nm)
【実施例】
【0092】
100ml三口フラスコに2,6-ビス(ブロモメチル)トリプチセン(22)0.30g、クロロホルム20mlを入れ油浴温度100℃にて加熱還流を行った。そこへクロロホルム20mlに溶かしたN,N-ジメチル-n-ドデシルアミン1.46gを1時間かけて滴下した。滴下開始より積算して40時間加熱還流を続けた。反応物を減圧濃縮したところ、粘性黄色液体と、N,N-ジメチル-n-ドデシルアミンとが層分離状態になった。氷浴して粘性黄色液体を粉末化し、限外濾過を行った。N,N-ジメチル-n-ドデシルアミンで洗浄し、次いでヘキサンで洗浄し粗結晶を得た。メタノール+酢酸エチルから再結晶し、2,6-ビス(N,N-ジメチル-n-ドデシルアンモニウム)トリプチセン400.2mgを収率83.1%で得た。物性値は以下の通りである。
【実施例】
【0093】
HPLC純度 99.9%
融点 218.5℃
H NMR(400MHz,CDCl)δ7.70(2H,s),7.40-7.20(6H,m),7.10(2H,t),5.35(2H,d),5.18-4.90(4H,q),3.15(12H,d),2.18(6H,s),1.75(4H,t),1.40-1.20(32H,m),0.88(6H,t).