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明細書 :自己免疫疾患モデル動物

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4873599号 (P4873599)
公開番号 特開2006-141232 (P2006-141232A)
登録日 平成23年12月2日(2011.12.2)
発行日 平成24年2月8日(2012.2.8)
公開日 平成18年6月8日(2006.6.8)
発明の名称または考案の名称 自己免疫疾患モデル動物
国際特許分類 A01K  67/027       (2006.01)
C12N  15/09        (2006.01)
G01N  33/15        (2006.01)
G01N  33/50        (2006.01)
A61K  45/00        (2006.01)
A61P  19/04        (2006.01)
A61P  29/00        (2006.01)
A61P  37/02        (2006.01)
A61P  43/00        (2006.01)
FI A01K 67/027 ZNA
C12N 15/00 A
G01N 33/15 Z
G01N 33/50 Z
A61K 45/00
A61P 19/04
A61P 29/00 101
A61P 37/02
A61P 43/00 111
請求項の数または発明の数 9
全頁数 10
出願番号 特願2004-332700 (P2004-332700)
出願日 平成16年11月17日(2004.11.17)
審査請求日 平成19年11月15日(2007.11.15)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】803000115
【氏名又は名称】学校法人東京理科大学
発明者または考案者 【氏名】田沼 靖一
【氏名】北村 大介
【氏名】水田 龍信
個別代理人の代理人 【識別番号】110000176、【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
審査官 【審査官】水落 登希子
参考文献・文献 特開2001-122900(JP,A)
Biochemistry,2001年,Vol.40, No.1,p.143-152
医学のあゆみ,1998年,Vol.187, No.5,p.324-328
Nature Genet.,2000年,Vol.25,p.177-181
Indian J.Med.Res.Section B,1991年,Vol.94,p.96-98
医学検査,2002年,Vol.51, No.9,p.1256-1264
月刊ナーシング,2004年 4月,Vol.24, No.5,p.82-83
Cell,1995年,Vol.80,p.7-10
Clin.Immunol.Immunopathol.,1979年,Vol.13,p.237-245
調査した分野 A01K 67/027
C12N 15/00-15/90
G01N 33/00-33/98
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII)
BIOSIS/MEDLINE/WPIDS(STN)
GenBank/GeneSeq
特許請求の範囲 【請求項1】
ヒト以外の脊椎動物であって、DNaseγの機能が完全に欠損した、抗dsDNA抗体の産生に起因する自己免疫疾患モデル動物。
【請求項2】
前記DNaseγの機能が、DNase活性であることを特徴とする請求項1に記載のモデル動物。
【請求項3】
DNaseγ遺伝子の変異によりDNaseγの機能が完全に欠損したことを特徴とする請求項1又は2に記載のモデル動物。
【請求項4】
前記自己免疫疾患が、全身性エリトマトーデス(systemic lupus erythematosus;SLE)であることを特徴とする請求項1~のいずれかに記載のモデル動物。
【請求項5】
ヒト以外の脊椎動物においてDNaseγの機能を完全に欠損させる工程を含む、抗dsDNA抗体の産生に起因する自己免疫疾患モデル動物の作製方法。
【請求項6】
前記DNaseγの機能が、DNase活性であることを特徴とする請求項に記載の作製方法。
【請求項7】
DNaseγ遺伝子を変異させることによりDNaseγの機能を完全に欠損させることを特徴とする請求項またはに記載の作製方法。
【請求項8】
自己免疫疾患に対する予防、改善又は治療に有用な物質をスクリーニングする方法であって、
ヒト以外の脊椎動物であってDNaseγの機能が完全に欠損した、抗dsDNA抗体の産生に起因する自己免疫疾患モデル動物を用いることを特徴とするスクリーニング方法。
【請求項9】
前記モデル動物にスクリーニング対象物質を投与する前後で、前記モデル動物における自己抗体量を測定し、
前記物質を投与する前後の前記自己抗体量を比較することを特徴とする請求項に記載のスクリーニング方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、自己免疫疾患モデル動物及びその作製方法、並びに、自己免疫疾患モデル動物を用いた自己免疫疾患の予防、改善又は治療に有用な物質のスクリーニング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
全身性エリテマトーデス、バセドウ氏病、重症筋無力症、インスリン抵抗性糖尿病などの自己免疫疾患は、それぞれ抗核抗体、抗TSH受容体抗体、抗アセチルコリンレセプター抗体、抗インスリン受容体抗体などの自己抗体の産生の増加に起因することが知られている。
【0003】
近年、このような自己免疫疾患を発症するモデル動物、例えば、Fas又はFasリガンドの機能を欠損したマウス(非特許文献1及び2参照)や、DNaseI遺伝子を欠損したマウス(非特許文献3参照)を作製し、自己免疫疾患に対して予防、改善、又は治療に有用な物質の開発が試みられている。

【非特許文献1】Cell 76, 969-976, 1994
【非特許文献2】Nature 356, 314-317, 1992
【非特許文献3】Nat. Genet. 25, 177-181, 2000
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、新規な自己免疫疾患モデル動物及びその作製方法、並びに、自己免疫疾患モデル動物を用いた自己免疫疾患の予防、改善又は治療に有用な物質のスクリーニング方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
DNaseγは、DNAを切断する際、二重鎖DNAを解離させる。そのうち一方のDNA鎖が結合する活性中心に存在する2つのHis(GenBank Accession No.AAD09222のアミノ酸配列における160及び279番目のHis)のどちらか一方に変異を導入すると、DNaseγのDNase活性を完全に抑制できることが明らかとなっている。
【0006】
そこで、本発明者らは、DNaseγのin vivoにおける役割を明らかにするために、160番目のHisをコードするヌクレオチドを含むエクソン5の一部を欠失したノックアウトマウスを作製し、ホモ接合にすることによりDNaseγ欠損マウスを得た。このDNaseγ欠損マウスの血清中には、野生型マウスに比べて自己抗体(抗dsDNA抗体)の濃度が増加していた。この結果から、DNaseγの機能を欠損させることにより、その動物において自己免疫疾患が発症することが示され、本発明者らは本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明に係る自己免疫疾患モデル動物は、ヒト以外の脊椎動物であって、DNaseγの機能が完全に又は部分的に欠損したことを特徴とする。前記DNaseγの機能は、例えば、DNase活性などである。上記モデル動物は、DNaseγ遺伝子の変異によりDNaseγの機能が完全に又は部分的に欠損したことを特徴としてもよい。
【0008】
前記自己免疫疾患は、例えば、抗dsDNA抗体の産生に起因する疾患であることが好ましい。具体的には、全身性エリトマトーデスなどである。
【0009】
また、本発明に係る自己免疫疾患モデル動物の作製方法は、ヒト以外の脊椎動物においてDNaseγの機能を完全に又は部分的に欠損させる工程を含む。前記DNaseγの機能は、例えば、DNase活性などである。上記作製方法は、DNaseγ遺伝子を変異させることによりDNaseγの機能を完全に又は部分的に欠損させる工程を含むこととしてもよい。
【0010】
さらに、本発明に係るスクリーニング方法は、自己免疫疾患に対する予防、改善又は治療に有用な物質をスクリーニングする方法であって、ヒト以外の脊椎動物であってDNaseγの機能が欠損した自己免疫疾患モデル動物を用いることを特徴とする。上記スクリーニング方法は、前記モデル動物にスクリーニング対象物質を投与する前後で、前記モデル動物における自己抗体量を測定し、前記物質を投与する前後の前記自己抗体量を比較する工程を含むこととしてもよい。
【0011】
なお、本発明の自己免疫疾患モデル動物としては、例えば、マウス、ラットなどのヒト以外の脊椎動物である。
【0012】
また、本発明において「自己免疫疾患」とは、自己抗体の産生に起因する疾患をいう。自己抗体としては、例えば、抗dsDNA抗体などがある。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、新規な自己免疫疾患モデル動物及びその作製方法、並びに、自己免疫疾患モデル動物を用いた自己免疫疾患の予防、改善又は治療に有用な物質のスクリーニング方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、上記知見に基づき完成した本発明の実施の形態を、実施例を挙げながら詳細に説明する。実施の形態及び実施例に特に説明がない場合には、J. Sambrook, E. F. Fritsch & T. Maniatis (Ed.), Molecular cloning, a laboratory manual (3rd edition), Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor, New York (2001); F. M. Ausubel, R. Brent, R. E. Kingston, D. D. Moore, J.G. Seidman, J. A. Smith, K. Struhl (Ed.), Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons Ltd.などの標準的なプロトコール集に記載の方法、あるいはそれを修飾したり、改変した方法を用いる。また、市販の試薬キットや測定装置を用いている場合には、特に説明が無い場合、それらに添付のプロトコールを用いる。
【0015】
なお、本発明の目的、特徴、利点、及びそのアイデアは、本明細書の記載により、当業者には明らかであり、本明細書の記載から、当業者であれば、容易に本発明を再現できる。以下に記載された発明の実施の形態及び具体的に実施例などは、本発明の好ましい実施態様を示すものであり、例示又は説明のために示されているのであって、本発明をそれらに限定するものではない。本明細書で開示されている本発明の意図並びに範囲内で、本明細書の記載に基づき、様々な改変並びに修飾ができることは、当業者にとって明らかである。
【0016】
==自己免疫疾患モデル動物の有用性==
DNaseγは、アポトーシスの最終段階で、DNAを切断する酵素として知られている。DNaseγのDNase活性中心の一つである160番目のHis残基をコードするヌクレオチドを含むDNaseγ遺伝子のエクソン5の一部を欠失させたノックアウトマウスを作製したところ、このマウスが自己免疫疾患の症状(血清中の自己抗体の増加)を示すことが明らかになった。この自己抗体の増加は、DNaseγ遺伝子のエクソン5の一部を欠失させたことにより、DNaseγのDNase活性が欠失又は低下し、アポトーシスを起こした細胞から、切断されなかったDNAが多量に遊離して、自己抗原として作用することにより生じたと考えられる。
【0017】
以上のことから、DNaseγのDNase活性を欠損又は低下させた動物は、ヒトの自己免疫疾患のモデルとして有用であると考えられる。このモデル動物は、抗dsDNA抗体の増加を示すことから、全身性エリテマトーデス(特に活動性ループス腎炎や円板状ループス)、シェーグレン症候群などの膠原病、混合性結合組織病、自己免疫性リウマチ疾患などのモデルとして有用であると考えられる。
【0018】
さらに、DNaseγのDNase活性を欠損又は低下させた動物を用いることにより、上記疾患に対する予防、改善又は治療するための物質をスクリーニングすることができると考えられる。
【0019】
==自己免疫疾患モデル動物の作製==
自己免疫疾患モデル動物は、動物個体に対し、DNaseγの機能(DNAを切断するDNase活性)を欠損又は低下させる処理を施すことにより作製することができる。動物においてDNaseγの機能を欠損又は低下させるには、少なくともDNaseγの機能に重要な部位、又はそれらをコードするDNA又はその転写産物を標的とする。例えば、相同組換えなどを用いたDNaseγ遺伝子への変異(欠失、置換、付加、挿入などを含む)の導入による変異体(条件突然変異体も含む)の作製、ドミナント・ネガティブ変異をもつ変異タンパク質を有するトランスジェニック動物の作製、アンチセンスRNAやRNAi、またはそれらをコードするDNAを用いたノックダウン動物の作製を用いることにより行うことができる。
【0020】
上述のDNaseγの機能に重要な部位としては、核内移行活性を有するDNaseγのC末端ドメイン(GenBank Accession No.AAD09222のアミノ酸配列における302~306番目のアミノ酸配列)、2本鎖DNAを解離しながらDNAを切断する際に、切断する側のDNA鎖が結合するDNaseγの酵素活性中心(GenBank Accession No.AAD09222のアミノ酸配列における160及び279番目のHisを含む領域)、及び、切断されるDNA鎖とは異なるもう一方のDNA鎖が結合するDNA結合ポケットを構成すると考えられているアミノ酸残基(GenBank Accession No.AAD09222のアミノ酸配列における35~39番目、64~69番目、97番目、102~106番目のアミノ酸残基)などの部位を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0021】
なお、上述においては、DNaseγの機能に重要な部位若しくはそれを含む領域、又はそれらをコードするDNA又はRNAを標的としているが、遺伝子を変異させることによってDNaseγの機能が損なわれるものであれば、これらに限定されるものではない。
【0022】
他の手段として、DNaseγの機能を阻害又は抑制する物質を用いて、動物個体におけるDNaseγの機能を欠損又は低下させてもよい。例えば、DNaseγは、アポトーシスの誘発に伴い核内に移行し、DNAを切断するため、DNaseγ遺伝子を欠失させること以外に、DNaseγが有する核内移行活性や、DNAを切断するDNase活性などの機能を阻害することにより、DNaseγの機能を欠損又は低下させることができると考えられる。
【0023】
上述のDNaseγの機能を阻害又は抑制する物質としては、例えば、DNaseγのDNase活性を阻害する下式(1)~(4)のいずれかの化合物、抗DNaseγ抗体などを用いることができる。
【化1】
JP0004873599B2_000002t.gif

【0024】
==自己免疫疾患モデル動物を用いたスクリーニング方法==
本発明の自己免疫疾患モデル動物を用いることにより、自己免疫疾患に対して予防、改善又は治療に有用な物質をスクリーニングすることができる。
【0025】
例えば、DNaseγの機能が欠損した自己免疫疾患モデル動物に、スクリーニングの対象となる物質を投与する。そして、投与前後で、自己免疫疾患モデル動物から血清を採取し、血清中における自己抗体の量を測定する。自己抗体の量は、例えば、EIA(enzyme immunoassay)、ELISA(Enzyme Iinked Immunosorbent Assay)、PHA(Passive Hemagglutination Assay)、二重免疫拡散法(Double Radial Immunodiffusion)、FAT(fluorescent antibody test)、PA(Particle Agglutination)法、RIA(radioimmunoassay)等によって測定することができる。
【0026】
投与前後の自己抗体の量を比較し、投与後に自己抗体の量が減少しているかどうかを調べることにより、自己免疫疾患に対して予防、改善又は治療に有用な物質を同定することができる。なお、スクリーニング対象となる物質を投与した動物における自己抗体量は、同じ動物個体の投与前の自己抗体量と比較しているが、同じ種類の正常動物個体における自己抗体量と比較してもよい。
【実施例】
【0027】
以下、本発明の実施例について詳細に述べる。
【0028】
[実施例1]DNaseγノックアウトマウスの作製
1-1 マウスDNaseγ遺伝子のゲノムDNAの単離
C57BL/6マウスゲノムライブラリーより、プラークハイブリダイゼーション法でマウスDNaseγ遺伝子をスクリーニングした。
【0029】
まず、約1×106プラークをBiodyne A nylon membrane (PALL)へトランスファーし、そのフィルターをAlkaline Solution(1.5M NaCl, 0.5N NaOH)中で変性させ(5分)、Neutralizing Solution (1.5M NaCl, 0.5M Tris-HCl)で中和し(5分)、2×SSCでリンス(5分)した後、UV照射にてファージDNAをフィルターへ固定した。そのフィルターをハイブリダイゼーションバッファー(50% ホルムアミド, 5×SSPE(0.15M NaCl, 10mM NaHPO4(pH7.4), 1mM EDTA), 5% Irish Cream, 0.1% SDS)中で、32Pでランダムラベルしたエクソン5を含む0.5kbのEcoRI/DNA断片をプローブとして42℃で一晩ハイブリダイゼーションした。その後、2×SSC-0.1%SDSで洗い(65℃,30分)を行った後、0.1×SSC-0.1%SDSで洗い(65℃,30分×2回)を行い、X線フィルムに-80℃で感光させた。単離したファージクローンのDNAをlambda DNA Maxi preparation kit(QIAGEN)で抽出し、DNaseγ遺伝子のイントロン4からエクソン8の一部を含む14.5kbのDNA断片(図1のA参照)をpBSSK(+) vector(STRATAGENE)にサブクローニングした (NotIサイトへ挿入)。
【0030】
1-2 マウスDNaseγ遺伝子のターゲティングベクター (pLNTK-γ-KO3)の作製
A.5’-armのサブクローニング
クローニングしたDNaseγゲノムDNAと、プライマー(DNaseF8 (SalI linker;GACGTCGACCCCCAACAACTTGGCTATGGGTCC:配列番号1)及びDNaseR4 (SpeI linker;CTCACTAGTGGGGACAATCACGAAGTCCTTGAC:配列番号2))とを用いて、PfuTurbo DNA Polymerase (STRATAGENE)によるPCRを行い、ターゲッティングベクターの5’-側の相同領域となる部分を増幅した。増幅した4.9kbの断片をpCR-XL-TOPO (STRATAGENE)へサブクローニングした。
【0031】
B.3’-armのサブクローニング
クローニングしたDNaseγゲノムDNAをAcc Iで切断し、Klenow処理を行って平滑末端にした後、6.0kbの断片をpUK21(GenBank Accession No. AF223640)のSma Iサイトへサブクローニングした。
【0032】
C.ターゲッティングベクターの作製
4.9kbの断片を含むpCR-XL-TOPOをSal I及びXho Iで切断することにより得られた5’-arm断片(4.9kb)をpLNTK(Immunity 5, 241-252, 1996;図1のB参照)のSal Iサイトへ挿入した。次に、6.0kbの断片を含むpUK21をSal I及びXho Iで切断することにより得られた3’-arm断片(6.0kb)を、5’-arm断片を含むpLNTKのXho Iサイトへ挿入し、5’-arm、両端にloxP配列を含むPGK-Neomycin resistance遺伝子(NEO)、3’-arm、及びherpes simplex virus Thymidine kinase (HSV-TK)を含む全長18.0kbのターゲッティングベクター (pLNTK-γ-KO3)を作製した(図1参照)。
【0033】
1-3 DNaseγヘテロ変異体ES細胞の調製
A.ES (Embryonic Stem) 細胞の培養
0.1% ゼラチンでコートした細胞培養用ディッシュ(10cm)に、マイトマイシンCで処理したBALB/c由来のEF(Embryonic Fibroblast)細胞(フィーダー細胞;3×106個)を播種し、翌日、C57BL/6の胚盤胞由来のES細胞(Bruce4細胞株;5×106個)を播種してCO2インキュベーターを用いて37℃で培養した。なお、培養培地として、DMEM (ダルベッコ改変イーグル培地;GIBCO), 15% FCS, 10μM 2-ME (2-メルカプトエタノール), 5×10-4 LIF (leukemia inhibitory factor)からなる培地を用いた。
【0034】
B.ターゲッティングベクターの導入
GENE PULSER II (BIORAD)及びCAPACITANCE EXTENDER II (BIORAD)を用いて、210V・500μFの条件で、0.8mlの培養液中で1×107個のES細胞にpLNTK-γ-KO3 (PvuIで切断) 25μgを導入する操作を3回繰り返し行った。
【0035】
C.スクリーニング
pLNTK-γ-KO3を導入したES細胞(3×107個)を48時間培養し、その後、G418による選別 (200μg/ml)(Positive Selection)を開始し、さらに、2日後にガンシクロビア(GANC)による選別 (2μM)(Negative Selection)を開始し、生き残ったG418・GANC耐性のES細胞コロニー(96個)を単離した。
【0036】
D.サザンブロット解析
単離したES細胞からDNAを抽出し、得られたDNAをHind III、Spe I及びKpn Iでそれぞれ切断し、サザンブロット解析により相同組換えを起こしたES細胞(DNaseγヘテロ変異体ES細胞)を同定した。なお、サザンブロット解析は、2つのプローブ(5’-プローブ及び3’-プローブ)を用いて行った(図1参照)。5’-プローブとしては、C57BL/6ゲノムDNAと、プライマー(mG3(GCTTGAGCACAAGGCTGCTAGTGAGTC:配列番号3)及びmNGSP4(CTCCATCCTGATAGTCATGGTAGTGG:配列番号4))とを用いて、LA-PCR polymerase (TAKARA)によるPCRを行って増幅した6.3kbの断片(エクソン2及び3、ならびにその周辺部を含む)を鋳型として、プライマー(DNaseF5(CCTTGTCAACAACAACCACC:配列番号5)及びDNaseR3(ACCATGCCTTGCCTAGAATC:配列番号6))を用いたPCRにより増幅した366bpの断片(エクソン3及びその周辺部)を用いた。また、3’-プローブとしては、DNaseγゲノムDNAと、プライマー(mGSP5(AGTCAACTCCGTGGTTCCCCGTTCC:配列番号7)及びHA1(GTGATCACTGACATCCAGGG:配列番号8))とを用いたPCRにより増幅した306bpの断片(エクソン8及びその周辺部)を用いた。
【0037】
1-4 DNaseγ欠損マウスの作製
DNaseγヘテロ変異体ES細胞(C57BL/6由来)を、Balb/cマウスから取り出した胚盤胞へマイクロインジェクションし、偽妊娠マウス(ICR系)の卵巣へ移植してキメラマウス(ヘテロ接合体;DNaseγ+/-マウス)を得た。続いて、ヘテロ接合マウス同士を交配させて、DNaseγのDNase活性を消失したDNaseγ欠損マウス(DNaseγ-/-マウス)を得た。
【0038】
[実施例2]DNaseγの機能の欠損による自己抗体価の上昇
実施例1で得られたDNaseγ欠損マウスは、外見上特に異常が認められなかった。そこで、DNaseγの機能の欠損による影響を明らかにするため、DNaseγ欠損マウスから血清を採取し、自己抗体の産生量の変化を調べた。
【0039】
96ウエルプレートに、蒸留水で希釈した0.001% 硫酸プロタミンを50μlずつ分注し、室温で1時間放置した後、蒸留水で洗浄した。その後、0.15M NaCl及び0.015M クエン酸ナトリウムを含む溶液(pH8.0)で希釈したdsDNA (最終濃度で20μg/ml) を50μlずつ96ウエルプレートに分注し、完全にウエル内の水分が完全になくなるまで37℃で約12~18時間乾燥させた。
【0040】
このようにしてウエル底面に抗原をコートした96ウエルプレートを、0.05% Tweenを含むPBS-で洗浄した後、3% BSAを含むPBS-を100μlずつ分注して37℃で1時間放置してブロッキングした。続いて自己免疫疾患モデルマウス(NZB/W F1マウス)の血清をスタンダードとして用いて、野生型マウス、DNaseγ欠損マウス、及びNZB/W F1マウスから採取した血清の希釈系列を作製し、ブロッキングしたプレートに50μlずつ添加し、37℃で1時間放置した。その後、0.05% Tweenを含む PBS-で洗浄し、ヤギ由来の抗-マウスIgG(H+L)-HRP (Southern Biotechnology Associates,Inc.) をPBS-で1000倍に希釈した溶液を50μlずつ添加して37℃で1時間放置した。その後、0.05% tweenを含むPBS-で洗浄し、TMB Peroxidase EIA Substrate Kit (BIO-RAD) を用いて発色させて450nmの吸光度で抗dsDNA-IgG抗体の量を測定し、NZB/W F1マウスに対する抗体価の比を求めた。その結果を図2に示す。
【0041】
図2に示すように、10週齢(10W)の野生型マウス(WT)とDNaseγ欠損マウス(KO)との間においては、抗dsDNA-IgG抗体量の有意な差が確認できなかったが、週齢をかさねるごとにDNaseγ欠損マウスでの抗dsDNA-IgG抗体量が高くなっていくことがわかった。特に70週齢以上のマウスではすべてのマウスにおいて野生型マウスに比べて抗体量が高くなっていた。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の一実施例において、野生型対立遺伝子、ターゲッティングベクター、及びターゲッティングベクターによって相同組換えを起こした変異型対立遺伝子の構造、並びに、pLNTKベクターの構造を示す図である。
【図2】本発明の一実施例において、作製された遺伝子組換えマウスの血清における抗dsDNA抗体量を測定した結果を示す図である。なお、図中の「n」は、個体数を、バーは平均値をそれぞれ意味する。
図面
【図1】
0
【図2】
1