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明細書 :非接触電力供給システム及びそれを用いた医療システム

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4706036号 (P4706036)
公開番号 特開2006-217731 (P2006-217731A)
登録日 平成23年3月25日(2011.3.25)
発行日 平成23年6月22日(2011.6.22)
公開日 平成18年8月17日(2006.8.17)
発明の名称または考案の名称 非接触電力供給システム及びそれを用いた医療システム
国際特許分類 H02J  17/00        (2006.01)
FI H02J 17/00 B
請求項の数または発明の数 5
全頁数 15
出願番号 特願2005-027849 (P2005-027849)
出願日 平成17年2月3日(2005.2.3)
審判番号 不服 2009-019661(P2009-019661/J1)
審査請求日 平成20年2月1日(2008.2.1)
審判請求日 平成21年10月14日(2009.10.14)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】803000115
【氏名又は名称】学校法人東京理科大学
発明者または考案者 【氏名】越地 耕二
【氏名】柴 建次
個別代理人の代理人 【識別番号】100106002、【弁理士】、【氏名又は名称】正林 真之
参考文献・文献 特開平10-322247(JP,A)
実開昭57-163247(JP,U)
特開昭62-5358(JP,A)
調査した分野 H02J17/00
特許請求の範囲 【請求項1】
負荷に供給するための供給側電流および供給側電圧を発生する電力供給部と、
前記電力供給部からの電力を入力する1次コイルと、
前記1次コイルに対する位置が移動可能であり、且つ前記1次コイルと磁気的に結合され、前記電力供給部から前記1次コイルを介して電磁誘導により伝送された電力を前記負荷へ供給する2次コイルと、
前記1次コイルに接続された第1の共振用コンデンサと、
前記2次コイルに接続された第2の共振用コンデンサと、
を備え
前記1次コイルと前記第1の共振用コンデンサ、および前記2次コイルと前記第2の共振用コンデンサを、それぞれ同一周波数で共振させる非接触電力供給システムであって、
前記電力供給部は、
前記1次コイルに入力した前記供給側電流を検知する電流検知部と、
JP0004706036B2_000005t.gifで表される式を用いて、前記負荷に供給される負荷側電圧を目標値とするための前記供給側電圧の目標値を演算する演算部と、
前記演算部で演算された前記供給側電圧の目標値に基づいて、前記電力供給部で発生する前記供給側電圧を制御する電圧制御部と、を備え、
前記1次コイルと前記第1の共振用コンデンサ、および前記2次コイルと前記第2の共振用コンデンサを、それぞれ同一周波数で共振させた状態において、前記1次コイルから前記2次コイルに伝送した電力を前記負荷に供給するとともに、前記電圧制御部において、前記1次コイルと前記2次コイルとの相対的な位置関係の変化に応じて、前記電力供給部で発生させる前記供給側電圧を制御することにより、前記負荷に供給される前記負荷側電圧が目標値となるように制御すること、
を特徴とする非接触電力供給システム。
【請求項2】
前記演算部は、
前記式に、前記負荷側電圧の目標値と、前記1次コイルに入力した前記供給側電圧の実効値、前記負荷インピーダンス、前記1次コイルの巻き線抵抗、前記2次コイルの巻き線抵抗、および前記1次コイルに入力した前記供給側電流の実効値を含むパラメータと、を算入することにより、前記負荷に供給される負荷側電圧を所定の目標値とするための前記供給側電圧の目標値を演算すること、
を特徴とする請求項1に記載の非接触電力供給システム。
【請求項3】
前記電力供給部は、
前記演算部から設定電圧以上の前記供給側電圧の目標値を出力する命令が前記電圧制御部へ出力された場合に、前記供給側電圧の実効値を所定最大値とする保護回路を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の非接触電力供給システム。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一つに記載の非接触電力供給システムと、
該システムからの電力の供給を受ける、体内埋め込み型の医療装置と、を備える医療システム。
【請求項5】
請求項1乃至請求項3のいずれか一つに記載の非接触電力供給システムと、
該システムから電力の供給を受ける、体内に投入するための医療装置と、を備える医療システム。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、負荷に直接接触することなく電力を供給するための非接触電力供給システムに関するものであり、特に、完全埋込型人工心臓やマイクロマシン等の、直接接触することが不可能あるいは困難である対象に対してエネルギーを伝送する場合に適したものである。
【背景技術】
【0002】
従来、負荷に直接接触することなく電気エネルギーを供給するシステムとして、電磁誘導を用いる方法が広く用いられており、その際に負荷側の回路の電圧を所定の目標値に制御する手段として以下のものが提案されている。
【0003】
例えば、下記の非特許文献1において、人体内部の機器に対して電磁誘導を用い非接触で電力を伝送する際の負荷入力電圧安定化の手段として、赤外光などを用いて出力電圧情報を体内から対外に情報伝送するシステムが提案されている。
また、下記の非特許文献2において、血液ポンプの負荷変動、すなわち血液循環量に相当する負荷変動に応じて変動するアクチュエータ駆動電圧の予測と制御を体外で行うようにした完全埋め込み型人工心臓の非接触電力供給システムが提案されている。
【0004】
また、下記の特許文献1において、パルストランスを使って負荷入力電圧情報を1次側にフィードバック制御する絶縁型電源回路が提案されている。
【0005】
また、下記の特許文献2において、1次コイルと2次コイルが正面に並んでいる場合、1次コイル電流を用いて1次コイル面に対する2次コイルの垂直方向の距離を算出して、この距離から2次コイル誘導電圧を求める手段を備えたワイヤレス伝送装置が提案されている。
【0006】
また、下記の特許文献3において、1次コイル電流を用いて1次コイル電流から2次コイル間の距離を測定し、負荷入力電圧が定格電圧値を超えないようにインバータの発振を間欠停止させる手段を備えた携帯電話の充電装置が提案されている。

【非特許文献1】井上雄茂他:レーザダイオードを用いた経皮光テレメトリシステム,日本人工臓器学会会誌 人工臓器,第27巻第2号,P363-367,1998年4月
【非特許文献2】塚越智之,芝健次,越地耕二,土本勝也,塚原金二,角田幸秀,本間彰彦,巽英介,妙中義之,高野久輝,「完全埋込型人工心臓用体外結合型経皮エネルギー伝送システム・アクチュエータ駆動電圧の体外における予測と制御」,人工臓器,第32巻第2号(第41回日本人工臓器学会大会予稿集),(2003.09.15),日本人工臓器学会,p.S-145
【特許文献1】特開平5-260742号公報
【特許文献2】特開平10-322247号公報
【特許文献3】実登3067306号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記非特許文献1、2および特許文献1のシステム又は回路は、1次コイルと2次コイルの距離が近距離の場合に適用できる。このシステム又は回路では情報伝送用の素子の一方を、皮膚を介して向き合うように配置して体内に埋め込む必要があり、装置等が複雑になり信頼性が低下する。また、情報伝送用の素子が赤外線の届く距離以上(10~20mm程度)に離れてしまったり、位置がずれてしまい送信した信号が受信できなくなる(10mm程度)と、通信ができなくなり、制御ができなくなるという欠点もある。
【0008】
また、上記特許文献2の装置は2つのコイルが正面に向かい合って配置されている場合(向きや位置が特定されている場合)のみ利用できるものであり、体内のどこに2次コイルがあるかわからず、1次コイルと2次コイルが向かい合っていないとき(横方向にずれているとき)は利用できない。
【0009】
また、上記特許文献3の装置は、コンデンサで直列共振をとらない場合にのみ有効である。例えば、1次コイルとコンデンサC1、2次コイルとコンデンサC2の間でそれぞれ共振させた場合は、特性が全く異なり、「コイル間の距離が離れるにつれて、出力電圧も減少し、1次(コイル)電流も減る」という理論は単純には成り立たない。
【0010】
さらに、一般的に埋込型人工心臓に電力を供給する場合においては、2次コイルは皮下に埋め込まれるが、そのまま埋め込んだのでは埋め込んだ正確な位置が把握しにくい。そこで2次コイル位置をわかりやすくすると同時に、コイル同士の位置のずれを防止するために、2次コイルを厚さ5-20mm程度とした傘型形状にしているものが多かった。ところがこれにより、生体組織に対する負担が大きくなり、またコイル埋込部が目立つため患者に心理的負担が生じるというデメリットを有していた。
【0011】
本発明は、1次コイルに対する2次コイルの位置や向きが変動する場合や2次コイルの正確な位置が分からない場合においても、特別な制御装置を埋め込むことなしに、2次コイルに出力される電圧を一定に制御できる簡単で信頼性の高い非接触電力供給システム及びそれを用いた医療システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するため、本発明は以下のものを提供する。
【0013】
(1)負荷に供給するための供給側電流および供給側電圧を発生する電力供給部と、前記電力供給部からの電力を入力する1次コイルと、前記1次コイルに対する位置が移動可能であり、且つ前記1次コイルと磁気的に結合され、前記電力供給部から前記1次コイルを介して電磁誘導により伝送された電力を前記負荷へ供給する2次コイルと、前記1次コイルに接続された第1の共振用コンデンサと、前記2次コイルに接続された第2の共振用コンデンサと、を備え、前記1次コイルと前記第1の共振用コンデンサ、および前記2次コイルと前記第2の共振用コンデンサを、それぞれ同一周波数で共振させる非接触電力供給システムであって、前記電力供給部は、前記1次コイルに入力した前記供給側電流を検知する電流検知部と、
JP0004706036B2_000002t.gifで表される式を用いて、前記負荷に供給される負荷側電圧を目標値とするための前記供給側電圧の目標値を演算する演算部と、前記演算部で演算された前記供給側電圧の目標値に基づいて、前記電力供給部で発生する前記供給側電圧を制御する電圧制御部と、を備え、前記1次コイルと前記第1の共振用コンデンサ、および前記2次コイルと前記第2の共振用コンデンサを、それぞれ同一周波数で共振させた状態において、前記1次コイルから前記2次コイルに伝送した電力を前記負荷に供給するとともに、前記電圧制御部において、前記1次コイルと前記2次コイルとの相対的な位置関係の変化に応じて、前記電力供給部で発生させる前記供給側電圧を制御することにより、前記負荷に供給される前記負荷側電圧が目標値となるように制御すること、を特徴とする非接触電力供給システム。
【0014】
(1)によれば、上記非接触電力供給システムは、1次コイル側と2次コイル側とを同一周波数で共振させた状態において、前記負荷側電圧を目標値とするための前記供給側電圧の目標値を、前記式を用いて演算し、この演算により得られた前記供給側電圧の目標値に基づいて前記電源制御部を制御することにより、前記負荷側電圧を目標値に制御することができる。このことにより、簡単で信頼性の高い構成で1次コイルと2次コイルの距離、向き、ずれ等の相対的な位置の変化が生じた場合にも、負荷側電圧を所定の目標値に制御することができる。
【0015】
(2)前記演算部は、前記式に、前記負荷側電圧の目標値と、前記1次コイルに入力した前記供給側電圧の実効値、前記負荷インピーダンス、前記1次コイルの巻き線抵抗、前記2次コイルの巻き線抵抗、および前記1次コイルに入力した前記供給側電流の実効値を含むパラメータと、を算入することにより、前記負荷に供給される負荷側電圧を所定の目標値とするための前記供給側電圧の目標値を演算すること、を特徴とする(1)記載の非接触電力供給システム。
【0016】
(2)によれば、上記非接触電力供給システムは、前記式に、記負荷側電圧の目標値と、前記1次コイルに入力した前記供給側電圧の実効値、前記負荷インピーダンス、前記1次コイルの巻き線抵抗、前記2次コイルの巻き線抵抗、および前記1次コイルに入力した前記供給側電流の実効値を含むパラメータと、を算入して演算を行うことにより、前記電源制御部を制御して負荷側電圧を目標値に制御することができる。このことにより、モデルの把握が容易な当該システムの前記式を用いることにより、システム構成の変更に対しても容易に対応することができる。また、上記非接触電力供給システムは、1次コイルと2次コイルの距離、向き、ずれ等の、相対的な位置の変化が生じた場合にも、前記式に、予め求めることができる定数と1次コイル側で得られるパラメーラを算入して演算することにより、前記負荷側電圧を目標値に制御することができる。
【0019】
(3)前記電力供給部は、前記演算部から設定電圧以上の前記供給側電圧の目標値を出力する命令が前記電圧制御部へ出力された場合に、前記供給側電圧の実効値を所定最大値とする保護回路を備えることを特徴とする(1)又は(2)に記載の非接触電力供給システム。
【0020】
(3)によれば、1次コイルと2次コイルとの間の距離が離れることにより、前記演算部から設定電圧以上の前記供給側電圧の目標値を出力する命令が前記電圧制御部へ出力された場合には、前記保護回路により前記供給側電圧の実効値所定最大値とするように制御されるので、システムや他の事物等を保護することができる。
【0021】
(4)上記(1)乃至(3)のいずれか一つに記載の非接触電力供給システムと、該システムからの電力の供給を受ける、体内埋め込み型の医療装置と、を備える医療システム。
(4)によれば、例えば完全埋込型人工心臓等の、体内埋め込み型の医療装置に上記非接触電力供給システムを利用することにより、当該医療装置に接触することなくエネルギーを供給することができる。その際に、前記1次コイルと前記2次コイルの正確な位置が分からない場合や、医療装置を埋め込んだ患者が姿勢を変えるなどして前記1次コイルと2次コイルの相対位置にずれが生じた場合であっても、前記システムにより負荷側電圧を所定の目標値に制御することができる。このことにより、前記医療装置の動作あるいは充電のために安定した電圧を供給することができると同時に、前記医療装置を利用する患者の負担を減らすことができる。
【0022】
(5)上記(1)乃至(3)のいずれか一つに記載の非接触電力供給システムと、該システムから電力の供給を受ける、体内に投入するための医療装置と、を備える医療システム。
(5)によれば、例えば患者の口から飲み込まれることにより胃などの消化器内部を撮影するカプセル型の胃カメラ等の、体内に一時的に投入される医療装置に上記非接触電力供給システムを利用することにより、当該医療装置にエネルギーを体外から供給し続けることができる。その際に、当該医療装置を利用する患者や医療装置自体が動くことにより、前記1次コイルと2次コイルの相対位置にずれが生じた場合や、医療装置が移動することにより正確な位置がわからない場合であっても、前記システムにより負荷側電圧を所定の目標値に制御することができる。このことにより、前記医療装置の動作のため、あるいは充電のために安定した電圧を供給することができるとともに、システムの簡潔な構成から医療装置の小型化が可能となり、患者の負担を減らすことができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、1次コイルの面の向きと2次コイルの面の向きは向かい合っていなくてもよく、お互いのコイルがどこにあっても、特に、2次コイル側を複雑化することなく簡潔な構成で、負荷側電圧の制御が可能となる。これにより、2次コイルの位置や向きが固定されていないときでも、負荷側の装置等の信頼性の向上や医療装置に応用した場合の患者の負担の軽減などを図りつつ、負荷側電圧の安定化が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明を実施するための最良の形態について図を参照しながら説明する。なお、これはあくまでも一例であって、本発明の技術範囲はこれに限られるものではない。
【0029】
[非接触電力供給システム]
図1は、本発明に係る非接触電力供給システム100の構成を示すブロック図を示す。非接触電力供給システム100は、供給側システム110および負荷側システム160から構成されている。
【0030】
[供給側システム]
供給側システム110は、主な構成要素として、電力供給部111、1次コイル152、1次コイル共振用コンデンサ156を有する。
【0031】
電力供給部111は、商用電力や直流電源から変換装置等を経て得られる交流電源などから1次コイル152に電力を供給する。電力供給部111は、電流検知部120と、演算部130と、電圧制御部113とを備える。
【0032】
電流検知部120は、高周波電流検出器により供給側電流としての出力電流を検知する。演算部130は、電力供給部の出力電圧と電流検知部120の検知結果とに基づいて出力すべき電圧を演算する。電圧制御部113は、演算部130の演算結果に基づき発振振幅を変化させることにより出力電圧を制御することができる発振器112及び高速絶縁増幅器114を含む。1次コイル152は、前記電力供給部から電力の入力を受ける。1次コイル共振用コンデンサ156は、1次コイル152に接続されていて1次コイル側回路の共振をとるためのものである。
【0033】
[負荷側システム]
また、前記負荷側システム160は、主な構成要素として、負荷162、2次コイル154、2次コイル共振用コンデンサ158を有する。
【0034】
負荷162は、電力供給対象である。2次コイル154は、1次コイル152と磁気的に結合されていて負荷162に電力を入力する。2次コイル共振用コンデンサ158は、2次コイル154に接続されていて2次コイル側回路の共振をとるためのものである。
【0035】
[制御方法]
まず、エネルギー伝送条件の設定を行う。伝送角周波数ω、1次コイル及び2次コイルの線の種類、サイズ、形状、巻き数を決定し、これにより1次コイル及び2次コイルを調整する。LCRメータにより、角周波数ωで1次コイルと2次コイルのインダクタンスをそれぞれ測定し、角周波数ωで1次コイルとの直列共振が取れるコンデンサCの容量の値と、該角周波数ωで2次コイルと直列共振がとれるコンデンサCの容量の値を式(1)より算出する。
【0036】
【数1】
JP0004706036B2_000003t.gif

【0037】
ここで1次コイルと1次コイル用のコンデンサ、2次コイルと2次コイル用のコンデンサがそれぞれ直列共振していれば、1次コイル電圧、1次コイル電流の位相が同相、2次コイル出力電圧、2次コイル電流の位相が同相、1次コイル電圧と2次コイル出力電圧の位相が90度ずれる。なお、本発明においては、1次コイルの巻き数、寸法、形状等に制限はない。また、2次コイルも同様、巻き数、寸法、形状に制限はない。さらに、1次コイルや2次コイルの磁気結合度を上げる目的で、フェライトなどの磁性体にコイルを巻いたり、ノイズを抑制する目的でフェライトやアモルファス磁性線などの磁性体シートをコイルに貼りつけたりしてもよい。
【0038】
次に制御動作について説明する。図1の非接触電力供給システム100において、1次コイル入力電圧の実効値をV、1次コイル電流の実効値をI、2次コイル出力電圧(=負荷入力電圧)の実効値をV2、2次コイル電流の実効値をIとする。また、1次コイルの巻き線抵抗をr、2次コイルの巻き線抵抗をrとする。目標の2次コイル出力電圧の実効値をV2idとする。V2idを出力するための目標の1次コイル電圧の実効値をV1idとする。
【0039】
非接触電力供給システム100では、エネルギー伝送用電源の1次コイル入力電圧Vを調節して2次コイル出力電圧Vを安定化させている(図1参照)。1次コイルと2次コイルの位置関係は、具体的には相互インダクタンスMだけで表される。すなわち、本システムの等価回路の閉路方程式より求められるV1idとV2idの関係式にMを代入することにより、Mを消去することができる(式(2))。
【0040】
【数2】
JP0004706036B2_000004t.gif

【0041】
したがって、Mが変化した場合であっても、2次コイル出力電圧Vの制御に必要であるV1idを1次側(体外側)のパラメータだけで決定することができる。この制御に必要な1次側のパラメータは、1次コイル電圧の実効値V、負荷インピーダンスR、1次コイルの巻き線抵抗r、2次コイルの巻き線抵抗rおよび1次コイル電流の実効値Iである。
【0042】
電流検知部120で測定した1次コイル電流は整流平滑回路122と実効値変換回路124を介して演算部130に入力される。あらかじめわかっているV、R、r、rは演算部130に入力される。演算部130において、電流検知部120の測定結果はA/D変換回路部132においてデジタル信号に変換され、マイクロコンピュータ134(もしくはパソコン)によって式(2)の演算が行われ、D/A変換回路部において再びアナログ信号に変換される。発振器112に目標の2次コイルの電圧(=負荷の入力電圧)V2idを出力するための1次コイル電圧V1idの情報が入力され、発振器からは、角周波数ω、振幅実効値V1idの正弦波が出力される。そして再び、新しく設定されたV1idによって新しい1次コイル電流の値Iが変化し電流検知部120より測定される。この制御処理ループを繰り返すことで2次コイル出力電圧を目標値にする制御が可能である。
【0043】
[制御動作の例]
図2に示した円状の1次コイルと2次コイルの場合について制御動作の例を説明する。1次2次ともに、コイル外径は5.5cm、コイル内径は2cm、厚さ0.09cm、巻き数20回とする。
1次コイルにはじめに5Vの電圧を加えたとして、2次コイル出力電圧(=負荷入力電圧)を6Vの目標値に固定させるための制御を行う。ここでr=0.4485Ω、r=0.3915Ω、R=4.6Ω、f=150kHzとする。
【0044】
1次コイルと2次コイルが図3のステップ1のようにずれている状態から、2次コイルをx方向に動かし2つのコイルを重ね(ステップ2)、さらにy方向にずらした場合(ステップ3)を考える。x方向のずれは0.6cm、y方向のずれは3.8cmとする。
【0045】
まず、制御していない場合、2次コイル出力電圧は、ステップ1の状態で1.87V、ステップ2で7.62V、ステップ3で3.87Vとなり、6±4.1V近くまで変化した。この一方で、制御を行った場合、ステップ1で5.94V、ステップ2で6.11V、ステップ3で6.19Vとなり、6±0.2V以内に収まった。したがって安定化していることがわかる。
【0046】
応答性に関しては、制御速度は早い方が制御の精度が良いが、2次コイルの動く速度は体の動きから生じるので高速な動きになることは少なく、早くても1Hz程度のゆっくりとした動作であると考えられるので、制御処理ループの繰り返し周期が0.01秒程度であれば制御により、出力を十分に電圧安定化することができる。
【0047】
[保護回路]
供給側システム110に含まれる電力供給部111は、保護回路126を備える。保護回路126は、演算部130からの演算結果が所定の値以上である場合に、前記所定の値を演算結果とする。図4に保護回路126のブロック図を示す。保護回路126がないと、1次コイル152と2次コイル154の間の距離が離れるほど、相互インダクタンスMが小さくなるため、目的の2次コイル出力電圧(=負荷入力電圧)を出すための1次コイル電圧は大きくなるよう制御される。したがって、1次コイル152と2次コイル154の間の距離が離れた場合、電源制御113から大電圧が出力されるが、過大な電圧が出力されるように命令が出されると供給側システム及び負荷側システム並びに医療装置に利用した場合には人体にとって危険である。保護回路126は、演算部130より設定電圧以上の1次コイル電圧が出力されるような命令が出た場合には、1次コイル電圧の実効値が設定値V1max(最大値)になるようにする。このことにより、システムや他の事物等を保護する。保護回路126はヒステリシス特性を有しており、設定値よりも数V下がったときに、制御が再開されるように設定されている(図4参照)。
【0048】
[埋込型人工心臓装置]
図5は、本発明の別の実施形態である埋込型人工心臓システム500のブロック図を示す。埋込型人工心臓システム500は、主な構成要素として、体内埋込型の駆動部としての人工心臓駆動部560、人工心臓駆動部560を駆動する電力を発生するための電力供給部520、および人工心臓駆動部560を駆動するための電力を伝送するためのエネルギー伝送部540を有する。
【0049】
[人工心臓駆動部]
人工心臓駆動部560はアクチュエータである人工心臓ポンプ566、外部からの電力を整流平滑して人工心臓ポンプ566に供給するための整流平滑回路562、充放電により電力を一時的に蓄える2次電池568、人工心臓ポンプ566に対する電力の供給源を整流平滑回路562または2次電池568のいずれかに切り替える切替回路564とを有する。本システムによる電力伝送が絶たれた際には体内に埋込んだバックアップ用の2次電池568により人工心臓ポンプ566を駆動する。駆動部には、人工心臓ポンプ566を駆動するため供給される電力による駆動部側電圧が生じる。本実施形態において、この駆動部側電圧は、整流平滑回路562の変換出力電圧である。
【0050】
整流平滑回路562は交流を直流に変換する回路である。代表的な整流平滑回路562としてはセンタータップ全波方式整流回路とブリッジ全波方式整流回路が挙げられる。双方ともに全波整流を行うが、センタータップ全波整流方式の場合には2次コイルである体内コイルが二つ必要となる。ただし、大きな損失を生むダイオードは高いシステム効率を考えた場合少ないほうが良いことからセンタータップ全波方式を使用している。ダイオードの順方向電圧による損失は発熱となり、システム効率だけでなく体内に置くことを考えた場合、生体組織に悪影響を及ぼす可能性もあるので、ダイオードは少ないほうが良いといえる。また、素子が少なく回路が簡単であることは故障の可能性が低減され、より安全であるともいえる。整流平滑回路562は、チョークインプット型の平滑回路を内蔵する。人工心臓ポンプ566は、例えば直流用アクチュエータを用いた定常流型のタイプのものを使用することができる。
【0051】
[電力供給部]
電力供給部520は、電源部524と、電流検知部526と、電圧制御部522とを備える。電力供給部520は、人工心臓駆動部を駆動する電力を出力するため、供給側電流および供給側電圧を発生する。
【0052】
電源部524は、商用電力などから1次コイル542に供給する。電流検知部526は、電源部524に接続され、供給側電流としての出力電流を検知する。電圧制御部522は、電流検知部526の検知結果および電源部524からの出力電圧に基づいて電源部524の出力電圧を制御する。
【0053】
本実施形態では、供給側電圧は電源部524の出力電圧であり、供給側電流は電源部524の出力電流である。
【0054】
[エネルギー伝送部]
エネルギー伝送部540は、1次コイル542および2次コイル544を有している。1次コイル542は、体外に置かれており電力供給部520に接続され、電力供給部520からの電力が入力される。2次コイル544は、体内埋込み可能であって人工心臓駆動部560に接続され、人工心臓駆動部560に電力を供給する(図2参照)。なお、本実施形態では、体内埋め込み型の医療装置として人工心臓駆動部の例を説明するが、本発明は例えば、体内に投入可能とするための医療装置(例えば、飲み込んで使用するカプセル型内視鏡)といった、他の医療装置に応用することもできる。
【0055】
本実施形態の埋込型人工心臓装置システム500では、電流検知部526の検知結果および電源部524の出力電圧を、予め求められた、人工心臓駆動部560に供給される人工心臓駆動部側電圧を制御するために、供給側電圧と人工心臓駆動部側電圧の関係式に代入して用いる。本実施形態において、供給側電圧は電源部524の出力電圧すなわち1次コイル542に掛かる電圧であり、供給側電流は電源部524の出力電流すなわち1次コイル542に流れる電流であり、人工心臓駆動部側電圧は、2次コイル544の出力電圧である。
【0056】
本発明に係る非接触電力供給システムを人工心臓に用いる場合、人工心臓ポンプ566を直流で動作する人工心臓アクチュエータとした場合には、負荷(電力供給対象物)は、整流平滑回路と人工心臓アクチュエータドライバと人工心臓アクチュエータを組み合せたものをとして考えることもできる。電磁誘導で誘導した交流で直接動作する人工心臓アクチュエータは、人工心臓アクチュエータそのものが負荷に相当する。体内に2次コイルが入り、体外においた1次コイルから、常時、駆動に必要な1-40W程度のエネルギーを経皮的に伝送するが、皮膚が間に入ることによる影響は全くない。
【0057】
体動により1次コイル152の位置が多少ずれても、ずれを1次側で制御して負荷入力電圧を一定にすることができる(図6参照)。従来のように、負荷入力電圧を制御するための通信手段が必要ないため、患者に負担をかけることもない。また、2次コイルは皮下に埋め込まれるが、埋め込んだ正確な位置が把握しにくいことが多く、2次コイルの位置をわかりやすくすると同時に、ずれを防止するために、2次コイルを厚さ5-20mm程度とした傘型形状にしているものが多かった。本発明では、2次コイル154に対する1次コイル152の位置が多少ずれていても制御回路により負荷入力電圧を安定化できるため、多少2次コイル位置がずれたり動いたりしてもよく、2次コイルを傘型にする必要がない。2次コイルを平面型にできることは、生体組織に対する負担が小さくなる、コイル埋込部が目立たないため患者が気にならないというメリットがある。
【0058】
人工心臓は流量を1次側からの命令で変更する場合があるが、本実施形態のように直流で動作する人工心臓アクチュエータによる人工心臓ポンプ566を用いた場合は、これは負荷の値が変化したことになる。ただし、流量の変化命令の内容は1次側でわかっているので、流量と負荷の値の関係をあらかじめ求めておくことで負荷は1次側で推測が可能である。図7に流量—負荷の値の表の例を示す。
【0059】
[マイクロマシン]
本発明に係る非接触電力供給システムをマイクロマシンへの電力供給に利用した、更に別の実施形態について説明する。本実施形態の主な構成要素は、非接触電力供給システムと負荷として電力の供給を受けるマイクロマシンである。
【0060】
マイクロマシン(MEMS:Micro Electro Mechanical Systems、超小型電気的・機械的複合体)とは、半導体集積回路製造技術の1つである微細加工技術を利用してシリコン基板上に立体的な微小構造体を形成することにより、例えば数十ミクロン程度の大きさの微小なモーターを作る技術である。この技術は、機械材料として優れた特性をもつ単結晶シリコン基板上にリソグラフィ技術を用いて形成したパターンをマスクとし、エッチング速度が結晶軸方向や不純物濃度等に依存するという性質を利用して立体構造物を作製するもので、シリコンダイヤフラム圧力センサなどに代表されるマイクロセンサの分野では既に実用化されている。
【0061】
負荷として非接触電力供給システムより電力の供給を受けるマイクロマシンには、マイクロマシンの本来の目的を達成するためのアクチュエータ、センサ、マイクロプロセッサ等の各要素のほか、本システムを構成する2次コイルと2次コイルに接続された2次コイル共振用コンデンサが搭載されている。2次コイルは、マイクロマシンの各要素に接続されている。これにより2次コイルからの電力は上記各要素に供給される。
【0062】
マイクロマシンの移動などにより搭載された2次コイルの位置が変動したり、精密な位置が不明であったりする場合がある。この場合にも本発明の作用・効果によりマイクロマシンの動作及び制御等に必要な電力について、安定した電圧の電力を供給することができる。
【0063】
なお、実施形態において、1次コイル共振用コンデンサが電力供給部の外部に配置されている構成として説明しているが、本発明はこれに限らず、該コンデンサが電力供給部と一体として電力供給部の筐体内部に配置するものであってよい。また、2次コイル共振用コンデンサについても、負荷部と一体として構成するものであってよく、また、負荷部の外部に配置して構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明に係る非接触電力供給システムの構成を示すブロック図である。
【図2】1次コイルと2次コイルの例を示す図である。
【図3】1次コイルと2次コイルの位置のずれや距離の変化を示す図である。
【図4】供給側システムの保護回路を示すブロック図である。
【図5】本発明を利用した埋込型人工心臓システムの構成例を示すブロック図である。
【図6】本発明を利用した埋込型人工心臓システムの、1次コイルと2次コイルの位置のずれを示す図である。
【図7】直流で動作する人工心臓アクチュエータの、流量と負荷の関係の例を示した表である。
【符号の説明】
【0065】
100 非接触電力供給システム
110 供給側システム
111 電力供給部
112 発振器
113 電圧制御部
114 高速絶縁増幅器
116 1次コイル巻き線抵抗
120 電流検知部
122 整流平滑回路
124 実効値変換回路
126 保護回路
130 演算部
132 A/D変換回路部
134 マイクロコンピュータ
136 D/A変換回路部
140 接地端子
150 エネルギー伝送部
152 1次コイル
154 2次コイル
156 1次コイル共振用コンデンサ
158 2次コイル共振用コンデンサ
160 負荷側システム
162 負荷(電力供給対象物)
164 2次コイル巻き線抵抗
400 供給側システム
420 ヒステリシスコンパレータ
440 最大基準電圧(V1max)設定用電源
460 スイッチ
500 埋込型人工心臓システム
520 電力供給部
522 電圧制御部
524 電源部
526 電流検知部
528 演算部
530 1次コイル共振用コンデンサ
540 エネルギー伝送部
542 1次コイル
544 2次コイル
560 人工心臓駆動部
562 整流平滑回路
564 切替回路
566 人工心臓ポンプ
568 2次電池
570 2次コイル共振用コンデンサ
600 埋込型人工心臓電力供給システム
620 整流平滑回路+人工心臓アクチュエータドライバ+人工心臓アクチュエータ
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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