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明細書 :ポリアミン固相合成反応方法と固相反応担体

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3576044号 (P3576044)
公開番号 特開2001-064208 (P2001-064208A)
登録日 平成16年7月16日(2004.7.16)
発行日 平成16年10月13日(2004.10.13)
公開日 平成13年3月13日(2001.3.13)
発明の名称または考案の名称 ポリアミン固相合成反応方法と固相反応担体
国際特許分類 C07D209/18      
C07B 61/00      
FI C07D 209/18
C07B 61/00 C
請求項の数または発明の数 2
全頁数 9
出願番号 特願平11-240361 (P1999-240361)
出願日 平成11年8月26日(1999.8.26)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用申請有り 1999年6月18日 発行の「Tetrahedron Lettres Vol.40 No.25」に発表
審査請求日 平成13年5月1日(2001.5.1)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人 科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】福山 透
個別代理人の代理人 【識別番号】100093230、【弁理士】、【氏名又は名称】西澤 利夫
審査官 【審査官】藤森 知郎
参考文献・文献 Tetrahedron Lett., Vol.40, No.25 (June 1999) p.4711-p.4714
調査した分野 C07D209/18
C07B 43/04
C07B 51/00
C07B 61/00
特許請求の範囲 【請求項1】
式(A)
【化1】
JP0003576044B2_000012t.gif
(式中のPAはポリマー固相を示)で表わされる固相反応担体に次式(B)
【化2】
JP0003576044B2_000013t.gif
(式中のNsは、2-ニトロベンゼンスルホニル基を示す)で表わされるポリアミン類の第1級アミノ基を反応連結し、次いで保護基Nsを脱離させた後に前記固相反応担体から次式(C)
【化3】
JP0003576044B2_000014t.gif
で表わされるくも毒HO-416b化合物を切り出すことを特徴とするポリアミン固相合成反応方法。
【請求項2】
次式(A)
【化4】
JP0003576044B2_000015t.gif
(式中のPAはポリマー固相を示す)で表わされ、ポリアミン類の第1級アミノ基を反応連結することを特徴とするポリアミン類固相反応用の担体
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】
この出願の発明は、ポリアミン固相合成反応方法と固相反応担体に関するものである。さらに詳しくは、この出願の発明は、充填効率が高く、高い極性を持つポリアミン類を、煩雑な精製操作を必要とすることなく単離精製することをも可能とする新しい固相反応担体の使用によるポリアミン固相合成反応方法と、このための固相反応担体に関するものである。
【0002】
【従来の技術とその課題】
従来より、固相合成法は、1960年にマレーフィールドがその方法論を発表して以来、ペプチドや核酸のような高分子化合物の合成に盛んに用いられてきている。そして近年になって、新規薬物探索のために一度に数万種類の化合物を合成するコンビナトリアルケミストリーの観点からも注目されているのが固相合成法である。
【0003】
これまでにもこの固相合成についてはより効率の高い固相の開発について様々な検討が加えられてきており、数多くの固相反応担体が提案されてもいる。
しかしながら、従来の固相合成とそのための固相反応担体についての数多くの提案にもかかわらず、アミノ基窒素原子を連結する固相反応担体についてはいずれも一長一短があった。たとえば固相からの切り出しに強い条件が必要であったり、充填効率が低い等の問題があった。
【0004】
この出願の発明者らは、従来その全合成が極めて困難であったポリアミン類の一種としての次式(C)
【0005】
【化5】
JP0003576044B2_000002t.gifで表わされるくも毒HO-416bの全合成を可能とすべく検討し、この全合成において固相合成反応を採用しようとしてきた。しかし、従来の固相合成のための担体等の手段の適用は難しいのが実情であった。
【0006】
そこで、この出願の発明は、以上のとおりの従来技術の問題点を解消し、充填効率が高く、しかも切り出し操作等も容易であって、生理活性機序の検討にとっても有用なくも毒HO-416bの全合成への適用も可能とする。新しいポリアミン固相合成反応方法とそのための固相反応担体を提供することを課題としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
この出願の発明は、上記のとおりの課題を解決するものとして、第1には、第1級アミノ基を有するポリアミン類の第1級アミノ基を次式(A)
【0008】
【化6】
JP0003576044B2_000003t.gif(式中のPAはポリマー固相を示し、式中のベンゼン環は許容される置換基を有していてもよい。)
で表わされる固相反応担体に反応連結し、連結された前記第1級アミノ基以外の少くとも一つのアミノ基を化学反応させることを特徴とするポリアミン固相合成反応方法を提供する。
【0009】
また、この出願の発明は、第2には、化学反応の終了後に酸性条件下に固相反応担体から切り出す前記ポリアミン固相合成反応方法を提供し、第3には、ポリアミン類が次式(B)
【0010】
【化7】
JP0003576044B2_000004t.gif(式中のNsは、2-ニトロベンゼンスルホニル基を示す)
で表わされるものであって、Ns基の脱保護を行い、次式(C)
【0011】
【化8】
JP0003576044B2_000005t.gifで表わされるくも毒HO-416b化合物もしくはその誘導体を合成する前記の固相合成反応方法を提供する。
【0012】
さらにこの出願は、第4には、次式(A)
【0013】
【化9】
JP0003576044B2_000006t.gif(式中のPAはポリマー固相を示し、式中のベンゼン環は許容される置換基を有していてもよい。)
で表わされるポリアミン類の固相反応担体も提供する。
【0014】
【発明の実施の形態】
この出願の発明は、上記のとおりの特徴をもつものであるが、以下にその実施の形態について説明する。
【0015】
この出願の発明のポリアミン固相合成反応方法では、前記のとおりの式(A)で表わされる固相反応担体を用いる。このものは、従来市販の1級アミンの連結に用いられる固相担体よりも充填効率が高く、なおかつ切り出し等の操作が容易であるという優れた特徴を有している。なお、この発明の式(A)における固相反応担体は、前記のとおり、構造中のベンゼン環には、アルキル基をはじめとする許容される置換基を有していてもよく、また、ポリマー固相(PA)については、各種ポリマーにより構成されていてよく、代表的にはポリスチレンであるものが例示される。このポリスチレン固相のものは、たとえば市販のMerrifield resinより製造することができる。
【0016】
以上のこの発明の固相反応担体を用いてのポリアミン固相合成反応方法では、第1級アミノ基、すなわち-NH基を持つポリアミン類のこの第1級アミノ基を前記の固相反応担体に反応連結し、連結されていないアミノ基について所望の化学反応を行わせることになる。この場合の反応は各種のものでよく、窒素原子との結合の形成、窒素原子の置換等の広範な反応が考慮される。当然のこととして、この反応には、通常の意味で示される保護基による窒素原子の保護や、保護基の脱離の反応も含まれる。
【0017】
また、対象とする原料のポリアミン類、そして目的とする反応生成物も各種のものであってよい。原料ポリアミンとしては、前記のとおりの第1級アミノ基(-NH)を持つ、さらに他にアミノ基を分子構造中に有しているものとして特定される。なかでも第1級アミノ基(-NH)が、さらにはこの第1級アミノ基(-NH)と他のアミノ基とがともに、脂肪族炭素(鎖)に結合しているポリアミン類が好適なものとして例示される。
【0018】
反応終了後のこの発明の固相反応担体からの切り出しは、たとえば酸性条件下で容易に行うことができ、溶媒を留去するのみで純粋な反応生成化合物を取得することもでき、煩雑な精製操作をほとんど必要としていない。
【0019】
以上のとおりのこの発明の固相合成反応方法により、たとえば後述の実施例にも示したように、従来その全合成が難しかったくも毒HO-416b化合物、もしくはその誘導体の効率的な全工程も可能となる。
【0020】
そこで以下に実施例を示し、さらに詳しくこの出願の発明について説明する。
【0021】
【実施例】
(実施例1)
次の反応式;
【0022】
【化10】
JP0003576044B2_000007t.gifに従って、固相反応担体としての4-(クロルジフェニルメチル)フェノキシメチル-ポリスチレンを製造した。
【0023】
すなわち、1.40g(1.68mmol)のMerrifield Resinと、4.64g(16.8mmol)のP-ヒドロキシトリチルアルコールの30mlDMFの懸濁液に、室温およびアルゴン雰囲気下に11.6g(84.0mmol)の炭酸カリウムを添加し、60℃の温度で20時間加熱した。その後室温に冷却した。
【0024】
生成物を濾別し、HO:THF(1:9)およびEtOにより洗浄し、次いで真空乾燥して1.54gの樹脂生成物を得た。
この樹脂生成物のCHCl懸濁液に、室温およびアルゴン雰囲気下でSOClを添加した。30分間攪拌した。溶媒を蒸発除去した後に、真空乾燥して、1.54gの4-(クロルジフェニルメチル)フェノキシメチル-ポリスチレンを得た。
(実施例2)
次の反応式に従って、固相合成による脱保護基反応を行った。
【0025】
【化11】
JP0003576044B2_000008t.gifすなわち、まず、次式
【0026】
【化12】
JP0003576044B2_000009t.gifで表わされるNs(2-ニトロベンゼンスルホニル)基により保護された、65mg(0.068mmol)のHO-416b化合物(13)を、2.5mlのCHCl溶媒中において、0.141ml(0.828mmol)のiPrNEtの存在下に、実施例により製造した固相反応担体と室温にて反応させた。
【0027】
48時間振とう後、0.1mlのMeOHを添加し、濾別した後に、固相分をMeOH:CHCl(1:9)、HO:MeOH:CHCl(1:1:8)、並びにCHClにより洗浄し、その後真空乾燥した。以上のようにして、前記化合物(13)をこの固相反応担体に連結担持させた。
【0028】
この担持樹脂の1.5ml DMF懸濁液に、0.140ml(2.00mmol)のメルカプトエタノールおよび0.30ml(2.00mmol)のDBUを、室温およびアルゴン雰囲気下に添加した。
【0029】
26時間振とう後、濾別し、HO:THF(1:9)、MeOH:CHCl(1:9)、並びにCHClにより洗浄し、真空乾燥した。これによりNs保護基の脱離を行った。
【0030】
次に、樹脂固相分の2.5ml CHCl混合物に、25μl(0.324mmol)のTFAを室温において添加した。5分間振とう後、濾別し、MeOH:CHCl(1:9)により洗浄した。
【0031】
このような酸性条件下の切り出し操作をさらに3回繰り返した。
洗浄後の液を一緒にして蒸発処理し、真空乾燥して、くも毒HO-416b(25.5mg、68%)をTFA塩として得た。
【0032】
また、回収された樹脂固相担体はSOCl:CHCl(1:9)で処理することにより再利用された。
以上のことから、次のことが結論づけられる。
【0033】
充填効率の高い、新しい固相を開発した。ニトロベンゼンスルホンアミドの脱保護をその固相上で行い、切り出すことによりポリアミンを得た。高い極性をもつポリアミンを、煩雑な精製操作をすることなく、溶媒を留去するのみで単離できたことは画期的である。
(実施例3)
実施例2において用いたNs基により保護されたHO-416b化合物(13)について、次の反応式に従って合成した。
【0034】
【化13】
JP0003576044B2_000010t.gif反応条件(a)~(i)は次のとおりである。
【0035】
【表1】
JP0003576044B2_000011t.gif以上の合成反応においては、たとえば化合物(9)と化合物(11)と反応収率が94%であるように、Ns保護基の採用によって極めて高い選択性で目的とするNs保護HO-416b化合物(13)が得られている。
【0036】
以上のことから次のことが確認された。
1)通常は困難であることが知られている、ジアミンの片方のみの選択的保護を、ニトロベンゼンスルホンアミド保護基により達成した。その保護されたジアミンを原料として用いることにより、効率的にHO-416b化合物の全合成を終了できた。
【0037】
2)すべての炭素-窒素結合を、スルホンアミドとハライドとのアルキル化反応により構築した。これらはスケールアップが可能であるばかりでなく、容易に入手可能な種々のハライドを用いることにより多様な化合物を合成可能である。
【0038】
【発明の効果】
以上詳しく説明したとおり、この出願の発明によって、充填効率が高く、しかも切り出し操作等も容易であって、生理活性機序の検討にとっても有用なくも毒HO-416bの全合成への適用も可能とされる、新しいポリアミン固相合成反応方法とそのための固相反応担体が提供される。