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明細書 :細胞の評価方法、細胞測定用システム、及び細胞測定用プログラム

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4521572号 (P4521572)
登録日 平成22年6月4日(2010.6.4)
発行日 平成22年8月11日(2010.8.11)
発明の名称または考案の名称 細胞の評価方法、細胞測定用システム、及び細胞測定用プログラム
国際特許分類 C12Q   1/02        (2006.01)
G01N  33/48        (2006.01)
G01N  21/78        (2006.01)
FI C12Q 1/02
G01N 33/48 M
G01N 21/78 C
請求項の数または発明の数 9
全頁数 14
出願番号 特願2006-547683 (P2006-547683)
出願日 平成17年10月24日(2005.10.24)
国際出願番号 PCT/JP2005/019517
国際公開番号 WO2006/061958
国際公開日 平成18年6月15日(2006.6.15)
優先権出願番号 2004355235
優先日 平成16年12月8日(2004.12.8)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成19年5月28日(2007.5.28)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
発明者または考案者 【氏名】松永 幸大
【氏名】内山 進
【氏名】福井 希一
個別代理人の代理人 【識別番号】110000556、【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
審査官 【審査官】冨永 みどり
参考文献・文献 国際公開第02/047032(WO,A1)
Plant.Mol.Biol.,2004年,Vol.56,No.2 ,p.225-239
Current Opinion in Plant Biology,2000年,Vol.3,No.6,p.532-537
Proc.Natl.Acad.Sci.USA,2000年,Vol.97,No.7,p.3718-3723
調査した分野 C12Q 1/02
CA/BIOSIS/MEDLINE/WPIDS(STN)
PubMed
JSTPlus(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
(a)特定の生細胞内における染色体の状態を反映する画像を所定時間間隔毎取得する工程、及び、
(b)前記画像に基づいて、染色体の状態に対応するパラメータを算出し、前記算出の結果に基づいて前記特定の生細胞の細胞周期における所定時間間隔毎のステージを判定する工程、を有し、
前記パラメータとして、染色体の円形度、染色体の丸み度、染色体の長軸と短軸の長さの比、染色体の真円度、染色体のフェレ直径、染色体とこれに近接する染色体との重心間の距離、染色体の長軸とこれに近接する染色体の長軸との角度、またはこれらの複数を含む、細胞の評価方法。
【請求項2】
(c)前記工程(a)の前に、前記細胞内で染色体タンパク質と蛍光を発するタンパク質との融合体を発現させる工程、を有し、
前記工程(a)において、前記画像は前記細胞が発する蛍光に由来する蛍光画像である、請求項に記載の細胞の評価方法。
【請求項3】
(d)前記工程(b)の判定の結果に基づいて、前記細胞の活性度を評価する工程、をさらに有する請求項1又は2に記載の細胞の評価方法。
【請求項4】
前記工程(a)において、試料中の複数の細胞に対応する画像を取得し、
前記工程(b)において、複数の細胞についてそれぞれ前記ステージを判定し、
前記工程(d)において、各ステージにある細胞数の割合を算出し、前記算出の結果に基づいて細胞の活性度を評価する、請求項に記載の細胞の評価方法。
【請求項5】
前記工程(d)において、特定の細胞の時間変化に対するステージ変化の情報に基づいて細胞の活性度を評価する、請求項に記載の細胞の評価方法。
【請求項6】
特定の生細胞内の染色体の状態を反映する蛍光を検出する蛍光検出装置と、前記蛍光検出装置で検出した蛍光に由来する蛍光画像を所定時間間隔取得する撮像装置と、前記撮像装置で取得した蛍光画像に基づいて染色体の状態に対応するパラメータを算出し、前記算出の結果に基づいて前記特定の生細胞の細胞周期における所定時間間隔毎のステージを判定する画像解析装置とを備え、
前記パラメータとして、染色体の円形度、染色体の丸み度、染色体の長軸と短軸の長さの比、染色体の真円度、染色体のフェレ直径、染色体とこれに近接する染色体との重心間の距離、染色体の長軸とこれに近接する染色体の長軸との角度、またはこれらの複数を含む、細胞測定用システム。
【請求項7】
前記蛍光検出装置は、試料中の複数の細胞に由来する蛍光を同時に検出し、
前記撮像装置は、試料中の複数の細胞が発する蛍光の情報を含む蛍光画像を取得し、
前記画像解析装置は、前記撮像装置により取得した蛍光画像から、各細胞に対応する蛍光画像を切出し、各細胞について細胞周期におけるステージを判定する、請求項に記載の細胞測定用システム。
【請求項8】
特定の生細胞内の染色体の状態を反映する蛍光を検出し、前記蛍光を蛍光画像として所定時間間隔取得し、前記蛍光画像に基づいて染色体の状態に対応するパラメータを算出し、前記算出の結果に基づいて前記特定の生細胞の細胞周期における所定時間間隔毎のステージを判定する手順をコンピュータに実行させ、
前記パラメータとして、染色体の円形度、染色体の丸み度、染色体の長軸と短軸の長さの比、染色体の真円度、染色体のフェレ直径、染色体とこれに近接する染色体との重心間の距離、染色体の長軸とこれに近接する染色体の長軸との角度、またはこれらの複数を含む、細胞測定用プログラム。
【請求項9】
特定の生細胞内内の染色体の状態を反映する蛍光を検出し、前記蛍光を蛍光画像として所定時間間隔取得し、前記蛍光画像に基づいて染色体の状態に対応するパラメータを算出し、前記算出の結果に基づいて前記特定の生細胞の細胞周期における所定時間間隔毎のステージを判定する手順をコンピュータに実行させ、
前記パラメータとして、染色体の円形度、染色体の丸み度、染色体の長軸と短軸の長さの比、染色体の真円度、染色体のフェレ直径、染色体とこれに近接する染色体との重心間の距離、染色体の長軸とこれに近接する染色体の長軸との角度、またはこれらの複数を含む、細胞測定用プログラムを記録したコンピュータ読取可能な記録媒体。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞の評価方法、細胞測定用システム、及び細胞測定用プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
細胞活性の評価は、細胞の生物、生化学的現象や性質の解明に有用であるばかりでなく、化学物質の生理活性や毒性を調べる手段としても有効であり活性評価の手法の検討がなされている。
【0003】
一般的な細胞活性の評価方法として、トリパンブルーやニュートラルレッドなどの色素の細胞内への取り込み量を吸光光度計で計測し計測結果に基づいて細胞活性を評価する方法、細胞外へ漏出した脱水素酵素などの酵素の量を活性から定量し定量結果に基づいて細胞活性を評価する方法、細胞懸濁液に電極を挿入し、電極に一定電位を印加して細胞の電気的活動に由来する電流値を測定し測定結果に基づいて細胞活性を評価する方法等がある。
【0004】
しかしながら、これらの方法は、細胞活性を間接的に測定し、かかる測定結果に基づいて細胞活性を評価する方法であるため、細胞活性の変化が微少である場合には検出が困難であった。さらに、細胞周期のどのステージにおいて最も影響を受けているか等、細胞活性と細胞の生物学的情報との関係を知ることは困難であった。
【0005】
このような問題点を解決する方法として、細胞または細胞内小器官の形態変化を観察する方法がある。細胞の形態は細胞分裂期に変化するが、この際には、細胞内小器官である染色体の凝縮状態は特に大きく変化し、染色体の分離・分配が起こる。染色体の分離・分配は細胞分裂には必須であり、細胞活性の変化は分裂期での染色体分離に影響を及ぼすことが知られている。従って、染色体の形態変化の様子の観察結果から細胞活性を評価することが可能となる。染色体の形態変化を観察する方法として、蛍光色素を用いて染色体を可視化し、染色体の形態変化を追跡する方法が知られている(特許文献1参照)。

【特許文献1】特開平8-136536号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の方法は、細胞分裂期にある細胞数をカウントし、総数に対する百分率比を対照群と比較することにより薬効を判定する方法である。この際、染色体の蛍光画像を用いて細胞が分裂期にあるか否かを判定しているが、目視によるものであるため、信頼性を欠く上、迅速に判定することが困難である。尚、特許文献1の実施例1においては、分裂細胞の分裂段階をも判定しているが、目視によるさらなる詳細な段階の判定は、困難である上、信頼性を欠くものであると言わざるを得ない。
【0007】
また、特許文献1の方法においては、蛍光色素として4’,6-ジアミジノ-2-フェニルインドール・2塩酸を用いて染色体の構成要素であるDNAを染色することで染色体を可視化しているが、この蛍光色素を一般に用いられる濃度で使用すると細胞が死滅する。細胞が死滅すると、蛍光色素使用時の死んだ状態の細胞中の染色体の形態の観察は可能であるが、生細胞における染色体の形態変化を継続して観察することはできない。また、蛍光色素を用いて染色した染色体の蛍光強度は、細胞分裂ごとに半減し検出限界以下の蛍光強度に到達することから、長時間継続して観察することはできない。さらに、特許文献1の方法においては、細胞の分裂期の形態変化を追跡することにより抗癌剤の薬効を検出できるとの記載があるが、これは細胞分裂期にある細胞数をカウントし、細胞全体に対する百分率比を対照群と比較することにより薬効を判定するもので、一般に分裂期の細胞の比率が細胞全体の4%以下であることを考えると分裂期全体が影響を受ける様な大きな効果の時のみ検出可能な手法で、毒物試験や環境ホルモン試験といった微少な影響を及ぼす場合には検出が困難である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上述した問題点を解決するため、細胞の細胞周期におけるステージ判定を、迅速かつ高い信頼度で行うことができる方法を提供することを目的とする。さらには、細胞を死滅させることなく生きた状態でステージ判定を行うことができる方法を提供することを目的とする。また、前記細胞のステージの判定を自動で判定する細胞測定用システム、及び細胞のステージの判定をコンピュータに実行させる細胞測定用プログラムを提供することを目的とする。
【0009】
本発明は、(a)細胞内における染色体の状態を反映する画像を取得する工程、及び、(b)前記画像に基づいて、染色体の状態に対応するパラメータを算出し、前記算出の結果に基づいて前記細胞の細胞周期におけるステージを判定する工程、を有する細胞の評価方法である。
【0010】
前記パラメータとして、好ましくは、染色体の円形度、染色体の丸み度、染色体の長軸と短軸の長さの比、染色体の真円度、染色体のフェレ直径、染色体とこれに近接する染色体との重心間の距離、染色体の長軸とこれに近接する核染色体の長軸との角度、またはこれらの複数を含む。本明細書でいう染色体とは、特に言及しない限り染色体群のことをいう。また、細胞分裂の間期にある染色体群は核ともいうが、本明細書でいう染色体とはこれをも含む。
【0011】
上述の細胞の評価方法の好ましい一形態として、(c)前記工程(a)の前に、前記細胞内で染色体タンパク質と蛍光を発するタンパク質との融合体を発現させる工程、を有するようにする。この場合、前記工程(a)における前記画像は前記細胞が発する蛍光に由来する蛍光画像である。この方法によると、細胞を死滅させることなく、染色体の状態に由来する蛍光画像を取得することができる。
【0012】
上述の細胞の評価方法においは、(d)前記工程(b)の判定の結果に基づいて、前記細胞の活性度を評価する工程、をさらに有する方法であっても良い。
【0013】
上述の細胞の評価方法の一形態においては、前記工程(a)において、試料中の複数の細胞に対応する画像を取得し、前記工程(b)において、複数の細胞についてそれぞれ前記ステージを判定し、前記工程(d)において、各ステージにある細胞数の割合を算出し、前記算出の結果に基づいて細胞の活性度を評価する。
【0014】
また、上述の細胞の評価方法の一形態においては、前記工程(a)において、特定の細胞に対応する画像を所定時間間隔毎取得し、前記工程(b)において、特定の細胞の所定時間間隔毎のステージを判定し、前記工程(d)において、特定の細胞の時間変化に対するステージ変化の情報に基づいて細胞の活性度を評価する。
【0015】
また、本発明は、細胞内の染色体の状態を反映する蛍光を検出する蛍光検出装置と、前記蛍光検出装置で検出した蛍光に由来する蛍光画像を取得する撮像装置と、前記撮像装置で取得した蛍光画像に基づいて染色体の状態に対応するパラメータを算出し、前記算出の結果に基づいて前記細胞の細胞周期におけるステージを判定する画像解析装置とを備える細胞測定用システムである。
【0016】
上述の細胞測定用システムの一形態においては、前記蛍光検出装置は、試料中の複数の細胞に由来する蛍光を同時に検出し、前記撮像装置は、試料中の複数の細胞が発する蛍光の情報を含む蛍光画像を取得し、前記画像解析装置は、前記撮像装置により取得した蛍光画像から、各細胞に対応する蛍光画像を切出し、各細胞について細胞周期におけるステージを判定する。
【0017】
上述の細胞測定用システムの一形態においては、前記撮像装置は、特定の細胞に対応する蛍光画像を所定時間間隔毎取得し、前記画像解析装置は、特定の細胞の所定時間間隔毎の細胞の細胞周期におけるステージを判定する。
【0018】
また、本発明は、細胞内の染色体の状態を反映する細胞が発する蛍光を検出し、前記蛍光を蛍光画像として取得し、前記蛍光画像に基づいて染色体の状態に対応するパラメータを算出し、前記算出の結果に基づいて前記細胞の細胞周期におけるステージを判定する手順をコンピュータに実行させる細胞測定用プログラムである。さらには、上述の細胞測定用プログラムを記録したコンピュータ読取可能な記録媒体である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によると、染色体の状態に対応するパラメータに基づき細胞の評価を行うので、迅速、簡便、かつ信頼性の高い評価を行うことができる。さらに、細胞の分裂期のステージに関する情報を得ることができるので、分裂期全体に影響が及ばないような微少な変化であっても検出することが可能となる。同様に、阻害物質の細胞活性への影響を低濃度であっても評価することができる。
【0020】
請求項3に記載の発明によると、細胞の生死に影響を与える可能性のある化合物を細胞外部から導入することなく細胞の蛍光画像を取得することができる。すなわち、死んだ細胞ではなく、生細胞の活性を評価することが可能である。
【0021】
また、本発明に係る細胞測定用システム及び細胞測定用プログラムによると、生細胞について細胞周期のステージを簡便に判定することができ、かかる判定結果は細胞の活性度を評価するために有用である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1はHeLa細胞の細胞周期の各ステージにおける蛍光顕微鏡像を示す図である。
【図2】図2は実施例における細胞測定用システムの電気的構成を示すブロック図である。
【図3】図3は実施例における細胞測定用システムの外観構成の一例を模式的に示す図である。
【図4】図4は実施例の細胞測定用システムにおける処理手順を示す図である。
【図5】図5は実施例の細胞測定用システムにおけるステージ判定の処理手順を示す図である。
【図6】図6は実施例におけるステージ判定結果の表示の一例を示す図である。
【図7】図7は実施例の細胞測定用システムにおけるステージ判定の他の処理手順を示す図である。
【図8】図8は実験におけるタイムラプス解析結果を示す図である。
【符号の説明】
【0023】
1、1a 細胞測定用システム
2 蛍光検出装置
2a 蛍光顕微鏡
3 撮像装置
3a ビデオカメラ
4 画像解析装置
4a パーソナルコンピュータ
5 出力装置
5a モニター
6 入力装置
6a キーボード
6b マウス
7 補助記憶装置
8 プログラム記憶媒体
41 制御部
42 記憶部
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0025】
本発明の細胞の評価方法は、細胞内における染色体の状態を反映する画像を取得し、前記画像に基づいて、染色体の状態に対応するパラメータを算出し、前記算出の結果に基づいて前記細胞の細胞周期におけるステージを判定する細胞の評価方法である。かかる評価に基づき、細胞の活性の評価を行うことができる。
【0026】
細胞内における染色体の状態を反映する画像を取得する方法としては公知の種々の方法を採用し得るが、好ましい方法の一つとして、前記細胞内で染色体タンパク質と蛍光を発するタンパク質との融合体を発現させ、前記細胞が発する蛍光を蛍光画像として取得する方法が挙げられる。この方法によると、細胞外部から細胞に毒性を及ぼす可能性のある化合物を導入する必要がなく、容易に生細胞を評価対象とすることが可能である。以下、本方法を採用する場合について説明する。
【0027】
評価対象の細胞としては、蛍光タンパク質を導入しても死滅せず、細胞分裂活性を持ち、前記融合体が正常に染色体上に局在する細胞とする。本発明に係る方法は、例えば、ヒト子宮頸癌細胞であるHeLa細胞、チャイニーズハムスター卵巣繊維芽細胞であるCHO細胞、タバコ懸濁培養細胞であるBY-2細胞、ヒト喉頭癌由来細胞であるHep細胞などの評価に用いられる。
【0028】
前記染色体タンパク質としては、細胞分裂期に染色体への局在を示すものであり、蛍光タンパク質の付加により前記局在が変化しない染色体タンパク質とする。例えば、ヒストン、コンデンシン、トポイソメラーゼが好ましく用いられる。
【0029】
前記蛍光タンパク質としては、緑色蛍光タンパク質(GFP)、黄色蛍光タンパク質(YFP)、赤色蛍光タンパク質(dsRed)、及びこれらの改変体等が挙げられる。
【0030】
染色体タンパク質と蛍光タンパク質との融合体を発現する細胞の構築方法としては、公知の方法が挙げられる。
【0031】
染色体は、DNAと染色体タンパク質から構築されているため、DNAの蛍光画像より染色体の凝縮度や形態変化に関する情報を得ることができる。一方、染色体タンパク質を直接観察することは難しいが、本実施形態のように染色体タンパク質と融合させた蛍光タンパク質の蛍光画像よりDNAの蛍光画像と同じく染色体の凝縮度や形態変化に関する情報を得ることができる。以下は、このことを示す実験例である。
【0032】
図1は、HeLa細胞の細胞周期の各ステージにおける蛍光顕微鏡像を示す。本明細書においては、細胞周期を間期と分裂期とに分け、さらに分裂期を前期、前中期、中期、後期、終期のステージに分けることとする。図1においては、間期、前中期、中期、後期の蛍光顕微鏡像を示す。図1の蛍光顕微鏡像を取得する実験においては、GFP-ヒストンH1融合体を細胞内で発現させるとともに、細胞内のDNAをヘキスト(Hoechst33342)で染色した。図1(a)は、ヘキストを励起してヘキストの蛍光波長に対応するフィルターを通して取得した蛍光顕微鏡像、すなわちDNAの蛍光顕微鏡像である。図1(b)は、GFPを励起してGFPの蛍光波長に対応するフィルターを通して取得した蛍光顕微鏡像である。図1(c)は、図1(a)の蛍光顕微鏡像と図1(b)の蛍光顕微鏡像とを重ね合わせた蛍光顕微鏡像である。図1(a)の蛍光顕微鏡像と、図1(b)の蛍光顕微鏡像がほぼ一致することがわかる。すなわち、染色体はDNAと染色体タンパク質から構築されているため、DNAの蛍光顕微鏡像を得ることにより染色体の凝縮度や形態変化を知ることができるが、GFPの蛍光顕微鏡像からも染色体の凝縮度や形態変化を知ることができる。
【0033】
尚、染色体の凝縮度や形態変化の情報は、細胞の細胞周期におけるステージを判定するのに有用である。本発明者は、染色体の凝縮度や形態変化等の染色体の状態に関する情報を数値化して得ることにより、細胞の細胞周期におけるステージ判定を簡便、迅速、正確に行うことができると考え、染色体の状態に対応する種々のパラメータを探索し、細胞の細胞分裂におけるステージ判定に有用なパラメータを検討した。検討の結果、染色体の円形度、染色体の丸み度、染色体とこれに近接する染色体との重心間距離、染色体の長軸とこれに近接する染色体の長軸との角度、染色体の長軸と短軸の比、染色体の真円度、及び染色体のフェレ直径は、有効なパラメータとして利用できることを見出した。また、これらを適宜選択し組み合わせて判定材料とすることにより、染色体の状態に関するより詳細な情報が得られることがわかった。
【0034】
下記の実施例においては、これらのパラメータの複数を判定材料として用いることにより細胞の細胞周期におけるステージを判定している。しかしながら、これらのパラメータに基づく判定に限定されることはない。本実施形態において、染色体に関する各パラメータを算出する際には、染色体群の輪郭を外周とする図形を染色体に対応する図形とみなしている。すなわち、染色体群の輪郭を外周とする図形の円形度、丸み度等を染色体の円形度、丸み度等としている。
【0035】
本明細書でいう染色体の円形度とは面積の4π倍値を外周長の2乗値で割った値のことである。染色体の丸み度とは長軸の長さを0.5乗した値をπ倍した値で面積の4倍値を割った値のことである。近接する染色体とは、対象となる染色体との重心間距離が最小となる染色体をいう。染色体の長軸と近接する染色体の長軸の角度とは、それぞれの染色体の図形に最も近い楕円を想定し算出した長軸間の最小角度のことである。染色体の長軸と短軸の比とは、染色体の図形に最も近い楕円を想定し算出した長軸と短軸の比のことである。染色体の真円度とは、理想的な真円からの偏差を示す値で、2つの同心円ではさんだ時、同心円の半径の差が最小になる中心に対して測定した最大半径と最小半径との差をいう。染色体のフェレ直径とは、染色体の図形の外周上に2つの点を想定したとき、2点間の距離が最大になる長さをいう。
【0036】
次に、細胞の細胞周期におけるステージの判定結果に基づいて、細胞の活性度を評価する本発明における方法の具体例について説明する。例えば、同一試料内に含まれる複数の細胞を対象として各細胞について細胞周期におけるステージを判定し、全体の細胞数に対する各ステージにある細胞の数の割合を求め(以下、「カウントモード」とも称す)、その割合から細胞の活性度を評価する方法、特定の細胞(単数であっても複数であってもよい)について時間変化に対するステージの移行の様子を検出し(以下、「タイムラプスモード」とも称す)、その検出結果から細胞の活性度を評価する方法が挙げられる。複数の方法を組み合わせても良い。これらのいずれの方法も、対照のデータとの比較により細胞の活性度を評価する。例えば、細胞の試薬応答性を検出するために本発明に係る細胞の活性評価方法を適用する場合について説明する。カウントモードによる場合は、試薬に接触させた細胞に関し全体の細胞数に対する各ステージにある細胞の数の割合を求め、かかる割合に基づく細胞分布グラフを作成し、試薬への接触を行わない細胞に関する細胞分布グラフと比較する。細胞分布グラフに有意な差が生じている場合には、試薬により細胞が何らかの影響を受けていることがわかる。例えば間期にある細胞の割合が増大し、分裂期にある細胞の割合が減少した場合には、細胞の細胞分裂活性が低下していることがわかる。
【0037】
上述の細胞の細胞周期におけるステージの判定工程、続く細胞の活性度の評価工程は、自動で行う装置によっても、観察者が目視で行っても良い。下記の実施例において、細胞の細胞周期におけるステージの判定を、自動細胞測定用システムにより行い、続く細胞活性度の評価工程を観察者が目視で行う場合を示す。
【実施例】
【0038】
[自動細胞測定用システム]
以下、本実施例に係る細胞測定用システムについて説明する。
【0039】
図2は、本実例における細胞測定用システム1の電気的構成を示すブロック図である。本実施例における細胞測定用システム1は、蛍光を検出する蛍光検出装置2と、蛍光検出装置2で検出された蛍光に由来する蛍光画像を撮像する撮像装置3と、撮像装置3にて撮像された蛍光画像を解析する画像解析装置4と、画像解析装置4での解析結果が出力される出力装置5と、各種操作を行うための入力装置6とからなる。画像解析装置4は、制御部41と記憶部42とを備え、後述の処理を実行する細胞ステージ判定プログラムが記憶部42に格納され、制御部41にて当該プログラムに従って画像解析等を行うとともに各装置を制御する。
【0040】
図3は、図2に示す細胞測定用システムの外観構成の一例を模式的に示す図である。図3の細胞測定用システム1aは、蛍光を検出する蛍光顕微鏡2aと、蛍光顕微鏡2aで検出される蛍光を蛍光画像として撮像するビデオカメラ3aと、ビデオカメラ3aにて撮像された蛍光画像を解析するパーソナルコンピュータ(以下、PCと称する)4aと、PC4aでの解析結果が出力されるモニター5aと、各種操作を行うためのキーボード6a及びマウス6bとからなる。細胞周期のステージ判定の際には、蛍光顕微鏡2aの載置台に試料が載置される。
【0041】
細胞測定用システム1における蛍光検出装置2としては、試料から発せられる蛍光の強度を検出できる装置であれば良く、蛍光顕微鏡2aが好ましく用いられ、その他蛍光スキャナを用いることもできる。撮像装置3には、例えば、蛍光検出装置2からの画像信号を2次元白黒画像として撮像するビデオカメラ3aを用いることができる。画像解析装置4は、一定間隔ごとの撮像画面を実時間で処理できる画像処理回路、並びにCPU、ROM、RAMおよびI/Oポートからなるマイクロコンピュータで構成できる。画像解析装置4は、例えばPC4aで構成することも可能である。画像解析装置4の記憶部42はROMやRAMで構成され解析用プログラムが記憶されているが、フロッピー(登録商標)ディスクやCD-ROM等のプログラム記録媒体8に記憶された解析用プログラムを、プログラム記録媒体8を機械的に読取・書込する装置(フロッピー(登録商標)ディスクドライブやCD-ROMドライブ等)である補助記憶装置7を介して記憶部42に読み込むようにしても良い。出力装置5には、例えばCRTや液晶ディスプレイに表示するようなモニター5aや、レーザプリンタのように紙に印刷する印刷装置を用いることができる。入力装置6には、キーボード6aやマウス6b等を用いることができる。
【0042】
図4は、細胞測定用システム1における処理手順を示す図である。尚、細胞測定用システム1における制御が開始される前に、操作者はタイムラプスモード、カウントモードのいずれかを入力装置6を用いて選択する。また、タイムラプスモードを選択した場合は、追跡時間を入力する。また、試料を蛍光検出装置2にセットする。まず、ステップS1において、蛍光検出装置2で検出した蛍光に由来する蛍光画像を撮像し、この蛍光画像を画像データとして取り込む。つづくステップS2にて画像データから細胞画像の切出しを行い、切出した細胞画像を画像解析装置4の記憶部42の画像メモリに格納する。通常、一つの試料に複数個の細胞が含まれるが、このステップS2においては、各細胞にNo.1から順に識別番号を付し、切出した各細胞画像を識別番号と対応させて画像メモリに格納する。この際、各細胞の染色体の重心の割り出しも行い、識別番号に対応させて重心位置を画像メモリに格納する。細胞分裂期の後期及び終期にある細胞については、一つの細胞内に二つの染色体画像が存在することになるが、この場合は各染色体画像に対応する重心を割り出し画像メモリに格納する。尚、二つの染色体画像の重心間距離が所定値より小さい場合は、当該二つの染色体画像は一つの細胞に由来するものと判断する処理を行い、かかる判断に基づき細胞画像の切り出しを行っても良い。次にステップS3にて、各細胞のステージ判定を行う。
【0043】
図5は、ステップS3における各細胞のステージ判定の具体的な処理手順を示す図である。尚、図5は、GFP-ヒストンH1融合体を発現している細胞である場合の制御手順を示す。細胞測定用システム1の好ましい態様は、細胞の種類に応じて各パラメータについて判定基準となる数値が選択されるように構成されているものとする。図5に示すように、ステージ判定を開始すると、まず識別番号No.1の細胞画像に基づいて識別番号No.1の細胞に関し、以下の処理を行う。
【0044】
まずステップS101にて円形度を計算する。そして、ステップS102にて円形度が0.8以下であるかを判定し、違う場合(NO)はステップS112にて細胞のステージを間期と判定する。ステップS101における円形度の基準値として、ここでは0.8を採用したが、0.60~0.99の範囲内の数値を好ましく用いることができる。円形度が0.8以下である場合(YES)は、ステップS103にて染色体とこれに近接する染色体との重心間の距離を計算する。近接する染色体は、同一細胞内の染色体である場合も、異なる細胞の染色体である場合もある。そして、ステップS104にてステップS103にて計算した染色体の重心間の距離が基準値以上かを判定する。ステップS104にて基準値以上でない場合(NO)はステップS107へ進む。ステップS104における基準値は、使用する細胞ごとに定める。例えば、HeLa細胞を用いた場合は、好ましくは15~21μmの範囲内の値、特に好ましくは18μm、CHO細胞を用いた場合は、好ましくは14~20μmの範囲内の値、特に好ましくは17μm、BY-2細胞を用いた場合は、好ましくは17~23μmの範囲内の値、特に好ましくは20μmの基準値を用いることができる。一方、ステップS103で計算した重心間の距離が基準値以上である場合(YES)は、ステップS105にて染色体の長軸とこれに近接する染色体の長軸との角度を計算する。
【0045】
ステップS106にてS105で計算した角度が20度以上であるかを判定し、違う場合(NO)はステップS107へ進む。一方、S105で計算した角度が20度以上である場合(YES)は、ステップS109へ進む。ステップS107では染色体丸み度を計算する。ステップS108では、さらに丸み度が0.5以上であるかを判定する。丸み度が0.5以上である場合(YES)は、ステップS115にて細胞のステージを終期と判定する。丸み度が0.5以上でない場合(NO)は、ステップS114にて細胞のステージを後期と判定する。
【0046】
ステップS109では、染色体の長軸と短軸の比(長軸/短軸)を計算し、ステップS110では長軸/短軸が1.5以上であるかを判定し、違う場合(NO)はステップS116にて細胞のステージを前期と判定する。長軸/短軸が1.5以上である場合(YES)は、ステップS111で染色体の丸み度を計算し、ステップS112にて丸み度が0.5以上であるかを判定する。丸み度が0.5以上でない場合(NO)は、ステップS117にて細胞のステージを中期と判定する。丸み度が0.5以上である場合(YES)は、ステップS118にて細胞のステージを前中期と判定する。
【0047】
ステップS113、S114、S115、S116、S117、S118のいずれかで細胞のステージを判定の後、ステップS119にて、判定結果を細胞の識別番号と対応させて記憶部42に格納し、ステップS120へ進む。ステップS120では、全ての細胞画像について判定が終了したかを判定し、終了していない場合(NO)は、再びステップS101に戻り、次の識別番号の細胞について上記と同様の処理を行う。全ての細胞画像について判定が終了している場合(YES)は、ステージ判定の処理を終了する。尚、ステップS107では、後期又は終期にある細胞についての染色体の丸み度を計算することになるため、通常一つの細胞画像に二つの染色体画像が含まれるが、ここでの丸み度は二つの染色体画像の平均値であっても良いし、一つの染色体画像のデータに基づくものであっても良い。ステップS101においても、一つの細胞画像に二つの染色体画像が含まれる場合については、同様とする。
【0048】
図4に戻って、ステップS3にてステージ判定が終了すると、ステップS4にて判定結果を表示する。尚、出力装置5としてモニター5aを使用した場合は、ステップS4に示すように判定結果をモニターに表示するが、例えば出力装置5として印刷装置を用いる場合は判定結果を印刷する。図6は、ステップS4における判定結果の表示の一例を示す図である。図6では、各ステージにある細胞の割合を円グラフで表わしている。ステップS3にて、全ての細胞のステージ判定が終了しているので、かかるステージ判定の結果に基づいて、例えば図6に示すように、各ステージにある細胞数の割合を円グラフで表すことができる。
【0049】
次に、ステップS5にて、操作者により設定されたモードがタイムラプスモードであるか、カウントモードであるかを判別し、カウントモードである場合は、処理を終了する。一方、タイムラプスモードである場合は、ステップS6において、設定された追跡時間が経過したかを判定する。経過していない場合(NO)は、ステップS1に戻り同様の処理を行う。尚、ステップS1における撮像は、所定時間毎に行われるように設定されており、例えば1秒に1回行われるように設定されている。ステップS6にて、設定時間が経過していると判定された場合(YES)は、ステップS7に進み、全細胞についてタイムラプス解析を行う。そして、タイムラプス解析結果に基づいて、分裂期の全工程を経た細胞を判定し、これらの細胞についてのみ、ステップS8にて分裂期部分のタイムラプス解析結果を表示する。また、ステップS8にて、これらの細胞のタイムラプス解析結果の平均値を表示する。
【0050】
図4の処理において、カウントモードの場合、ステップS4にて表示される判定結果と、対照となる細胞のデータとを比較することにより、対象の活性の程度(例えば、対象が活性であるか否か)を操作者が目視で判定することができる。尚、画像解析装置4において、対照との比較が自動でなされ、活性の程度が自動で判定されるようにしてもよい。
【0051】
図4の処理において、タイムラプスモードの場合、ステップS8にて表示される判定結果と、対照となる細胞のデータとを比較することにより、対象の活性の程度(例えば、対象が活性であるか否か)を操作者が目視で判定することができる。尚、画像解析装置4において、対照との比較が自動でなされ、活性の程度が自動で判定されるようにしてもよい。また、タイムラプスモードにおいては、上述のカウントモードと同様に、ステップS4にて表示される判定結果に基づいて対象の活性度の判定を行うこともできる。
【0052】
以下、図4のフローチャートのステップS3における処理が、図5に示すフローチャートに従った処理とは異なる実施例について説明する。本実施例においては、ステップS3における処理のみ上述の例と異なり、他の部分は共通であるため、共通部分については説明を省略する。
【0053】
図7は、図4のフローチャートのステップS3における各細胞のステージ判定の本実施例における具体的な処理手順を示す図である。尚、図7は、評価対象の細胞がHeLa細胞である場合の制御手順を示す。図7に示すように、ステージ判定を開始すると、まず識別番号No.1の細胞画像に基づいて識別番号No.1の細胞に関し、以下の処理を行う。ステップS201にて真円度を計算する。そして、ステップS202にて真円度が0.875以下であるかを判定し、違う場合(NO)はステップS212にて細胞のステージを間期と判定する。真円度が0.875以下である場合(YES)は、ステップS203にて染色体とこれに近接する染色体との重心間の距離を計算する。そして、ステップS204で、ステップS203で計算した重心間の距離が17μm以上かを判定し、違う場合(NO)はステップS207へ進む。一方、ステップS203で計算した重心間の距離が17μm以上である場合(YES)は、ステップS205にて染色体の長軸とこれに近接する染色体の長軸との角度を計算する。そして、ステップS206で、ステップS205で計算した角度が20度以上であるかを判定し、違う場合(NO)はステップS207へ進む。一方、ステップS205で計算した角度が20度以上である場合(YES)は、ステップS208へ進む。
【0054】
ステップS207では、ステップS203で計算した重心間の距離が12μm以上であるかを判定する。重心間の距離が12μm以上である場合(YES)は、ステップS214にて細胞のステージを終期と判定する。分裂期染色体の重心間の距離が12μm以上でない場合(NO)は、ステップS213にて細胞のステージを後期と判定する。ステップS208では、染色体の長軸と短軸の比(長軸/短軸)を計算し、ステップS209では長軸/短軸が2.3以下であるかを判定し、違う場合(NO)はステップS215にて細胞のステージを中期と判定する。長軸/短軸が2.3以下である場合(YES)は、ステップS210で染色体のフェレ直径を計算し、ステップS211にてフェレ直径が17μm以上であるかを判定する。フェレ直径が17μm以上でない場合(NO)は、ステップS216にて細胞のステージを前期と判定する。フェレ直径が17μm以上である場合(YES)は、ステップS217にて細胞のステージを前中期と判定する。ステップS212、S213、S214、S215、S216、S217のいずれかで細胞のステージを判定の後、ステップS218にて、細胞の識別番号と対応させて判定結果を記憶部42に格納し、ステップS219へ進む。ステップS219では、全ての細胞画像について判定が終了したかを判定し、終了していない場合(NO)は、再びステップS201に戻り、次の識別番号の細胞について上記と同様の処理を行う。全ての細胞画像について判定が終了している場合(YES)は、ステージ判定の処理を終了する。尚、ステップS201においては、一つの細胞画像に二つの染色体画像が含まれることがあるが、この場合、二つの染色体画像の平均値であっても良いし、一つの染色体画像のデータに基づくものであっても良い。
[実験]
1.GFP-ヒストンH1発現HeLa細胞の構築
染色体はDNAと染色体タンパク質から構成されるが、本実施例で、主要な染色体タンパク質であるヒストンH1を蛍光タンパク質であるGFPと融合させることで生細胞における染色体の可視化をほぼ全ての組織で恒常的に発現している(Meergans et al.,1997)ヒストンH1.2を選択した。
【0055】
ヒストンH1.2遺伝子をPCRによりヒトゲノムより獲得しpUC18にサブクローニング後、制限酵素処理による切り出しを経て動物細胞におけるGFP融合タンパク質発現ベクターであるpEGFP-C1(Clontech社)へのクローニングを行った。
【0056】
構築したベクターをリポフェクトアミン(Invitrogen社)によりHeLa細胞に導入した。抗生物質G418(最終濃度800mg/mL)による形質転換体の選択を行った。選抜されたクローンは4回継代(各回1/10濃度に希釈)を行っても全ての細胞で融合タンパク質の発現が確認されたことから、恒常的にGFP-ヒストンH1融合タンパク質を発現するクローンと判断した。更に、本クローンは液体窒素中における凍結保存、融解を行った後でも融合遺伝子の発現能力を維持していることを確認した。
【0057】
2.染色体構造変化識別法による細胞活性評価
GFP-ヒストンH1発現HeLa細胞について、上述の細胞測定用システムの内、図4におけるステップS3のステージ判定に図7に示すフローチャートを採用したシステムにより、タイムラプスモードにて測定を行った。図8は、図4のステップS8における平均値をタイムラプス解析結果として示す。図8(a)は対照のタイムラプス解析結果、図8(b)は中期阻害剤ノコダゾールを15ng/mlの最終濃度で添加した対象のタイムラプス解析結果、図8(c)は中期阻害剤ノコダゾールを150ng/mlの最終濃度で添加した対象のタイムラプス解析結果を示す。尚、図8(a)~(c)において、横軸は時間を表し、P1は間期、P2は前期、P3は前中期、P4は中期、P5は後期、P6は終期を表す。図8(c)より、中期阻害剤ノコダゾールを150ng/mlの最終濃度で添加すると、前中期で細胞分裂が停止した状態であることがわかる。また図8(b)より、中期阻害剤ノコダゾールを15ng/mlの最終濃度で添加すると、前中期が遅延したことがわかる。この様に細胞活性の低下を細胞分裂期の特定のステージにある時間の変化として捉えることができ、従来の固定細胞による細胞活性評価法では検出できなかった様な低濃度における阻害物質の細胞活性への影響を評価することが可能になったことを示している。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明に係る細胞の評価方法、細胞測定用システム、及び細胞測定用プログラムは、毒物試験、環境ホルモン試験、薬品応答性試験等に有用である。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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