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明細書 :非破壊検査方法及び非破壊検査装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5007989号 (P5007989)
公開番号 特開2007-127508 (P2007-127508A)
登録日 平成24年6月8日(2012.6.8)
発行日 平成24年8月22日(2012.8.22)
公開日 平成19年5月24日(2007.5.24)
発明の名称または考案の名称 非破壊検査方法及び非破壊検査装置
国際特許分類 G01N  27/82        (2006.01)
FI G01N 27/82
請求項の数または発明の数 6
全頁数 10
出願番号 特願2005-320127 (P2005-320127)
出願日 平成17年11月2日(2005.11.2)
審査請求日 平成20年10月29日(2008.10.29)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】803000115
【氏名又は名称】学校法人東京理科大学
発明者または考案者 【氏名】中曽根 祐司
【氏名】岩崎 祥史
個別代理人の代理人 【識別番号】100079049、【弁理士】、【氏名又は名称】中島 淳
【識別番号】100084995、【弁理士】、【氏名又は名称】加藤 和詳
【識別番号】100085279、【弁理士】、【氏名又は名称】西元 勝一
【識別番号】100099025、【弁理士】、【氏名又は名称】福田 浩志
審査官 【審査官】田中 洋介
参考文献・文献 特開2002-277442(JP,A)
特開平06-308092(JP,A)
岩崎祥史 他,SUS304鋼母材および溶接材の疲労き裂近傍における塑性誘起マルテンサイト変態,日本機械学会 M&M信州スプリングシンポジウム講演論文集,2005年 3月13日,No.05-03,pp.75-76
岩崎祥史 他,マルテンサイト変態を利用したSUS304鋼溶接材中の貫通疲労き裂の非破壊評価,日本機械学会 M&M2004材料力学カンファレンス講演論文集,2004年,No.04-6,pp.557-558
調査した分野 G01N 27/72-27/90
JSTPlus/JST7580(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
非磁性体からなる被検査体のマルテンサイト相変態率の分布をフェライトスコープで測定し、
前記測定されたマルテンサイト相変態率Vα’の分布のマルテンサイト相変態率ピーク値Vα’maxに基づいて、前記被検査体の損傷程度Kが、K=定数A×Vα’maxであると推定し、前記損傷程度Kに対応する応力拡大係数の範囲及び最大値を算出する非破壊検査方法。
【請求項2】
前記測定されたマルテンサイト相変態率の分布パターンに基づいて、前記被検査体のマルテンサイト相変態率の低い部分から高い部分へ向かって損傷が進展したことを推定する、請求項1に記載の非破壊検査方法。
【請求項3】
前記被検査体は、ステンレス鋼であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の非破壊検査方法。
【請求項4】
非磁性体からなる被検査体のマルテンサイト相変態率の分布をフェライトスコープで測定する測定手段と、
前記測定手段により測定されたマルテンサイト相変態率Vα’の分布のマルテンサイト相変態率ピーク値Vα’maxに基づいて、前記被検査体の損傷程度Kが、K=定数A×Vα’maxであると推定し、前記損傷程度Kに対応する応力拡大係数の範囲及び最大値を算出する推定手段と、
を備えた非破壊検査装置。
【請求項5】
前記測定手段により測定されたマルテンサイト相変態率の分布に基づいて、前記被検査体のマルテンサイト相変態率の低い部分から高い部分へ向かって損傷が進展したことを示す損傷進展パターンを出力する出力手段と、
を備えた請求項4に記載の非破壊検査装置。
【請求項6】
前記被検査体は、ステンレス鋼であることを特徴とする請求項4または請求項5に記載の非破壊検査装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、非破壊検査方法及び非破壊検査装置に係り、特に、非破壊で被検査体の損傷について検査する非破壊検査方法および非破壊検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、鋼管や鋼板に入ったき裂の位置や大きさなどの検出方法は種々提案されている。例えば、特許文献1では、アモルファス磁芯のヒステリシス特性を利用して、強磁性体からなる被検査体の強制磁化に起因する漏洩磁束や誘導磁化に起因する微小な磁束密度変化を検出し、各種の非破壊検査を行う方法が提案されている。
【0003】
しかしながら、この非破壊検査方法では被検査体が強磁性体である場合には亀裂の位置の検出はできるものの、被検査体が非磁性体の場合には、亀裂を検出することはできないという問題があった。

【特許文献1】特開平06-294850号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記問題点を解消するためになされたもので、披検査体が非磁性体であっても亀裂を検出することが可能な非破壊検査方法および非破壊検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、第1の発明の非破壊検査方法は、非磁性体からなる被検査体のマルテンサイト相変態率の分布をフェライトスコープで測定し、
前記測定されたマルテンサイト相変態率Vα’の分布のマルテンサイト相変態率ピーク値Vα’maxに基づいて、前記被検査体の損傷程度Kが、K=定数A×Vα’maxであると推定し、前記損傷程度Kに対応する応力拡大係数の範囲及び最大値を算出するものである。
【0006】
また、第3の発明の非破壊検査装置は、非磁性体からなる被検査体のマルテンサイト相変態率の分布をフェライトスコープで測定する測定手段と、
前記測定手段により測定されたマルテンサイト相変態率Vα’の分布のマルテンサイト相変態率ピーク値Vα’maxに基づいて、前記被検査体の損傷程度Kが、K=定数A×Vα’maxであると推定し、前記損傷程度Kに対応する応力拡大係数の範囲及び最大値を算出する推定手段と、を備えている。
【0007】
非磁性体からなる被検査体が強変形や大きな応力を受けると、その部分がマルテンサイト相へ変態して脆性かつ強磁性の特性を示すようになる。そして、マルテンサイト相変態率分布におけるピーク値と損傷程度とは、線形関係となることがわかった。そこで、第1及び第3の発明では、被検査体のマルテンサイト相変態率の分布を測定し、測定されたマルテンサイト相変態率の分布におけるマルテンサイト相変態率ピーク値Vα’maxに基づいて、被検査体の損傷程度Kが、K=定数A×Vα’maxであると推定する。ここでの損傷程度Kとしては、応力拡大係数などを対応づけることができる。また、ここでの定数Aは、被検査体の材質などにより決定されるものである。
【0008】
第1及び第3の発明によれば、マルテンサイト相変態率のピーク値に基づいて、非破壊で被検査体の損傷程度を推定することができる。
【0009】
第2の発明の非破壊検査方法は、第1の発明の非破壊検査方法において、前記測定されたマルテンサイト相変態率の分布パターンに基づいて前記被検査体の、マルテンサイト相変態率の低い部分から高い部分へ向かって損傷が進展したことを推定する。
【0010】
また、第4の発明の非破壊検査装置は、第3の発明の非破壊検査装置において、前記測定手段により測定されたマルテンサイト相変態率の分布に基づいて、前記被検査体のマルテンサイト相変態率の低い部分から高い部分へ向かって損傷が進展したことを示す損傷進展パターンを出力する出力手段と、を備えている。
【0011】
前述のように、非磁性体からなる被検査体が強変形や大きな応力を受けると、その部分がマルテンサイト相へ変態するが、損傷の先端部分においてマルテンサイト相変態率は最も高く、初期に損傷を受けている損傷中心部分のマルテンサイト相変態率は後に損傷を受けた部分よりも低い。そこで、第2及び第4の発明では、被検査体のマルテンサイト相変態率の分布を測定し、測定されたマルテンサイト相変態率の分布に基づいて、マルテンサイト相変態率の低い部分から高い部分へ向かって前記被検査体の損傷が進展したことを推定する。
【0012】
第2及び第4の発明によれば、マルテンサイト相変態率の分布に基づいて、非破壊で被検査体の損傷過程を推定することができる。
【0013】
なお、第1乃至第4の発明での被検査体としては、ステンレス鋼、特に、オーステナイト系ステンレス鋼が好適に用いられる。
【0014】
また、第1乃至第4の発明でのマルテンサイト相変態率の測定は、フェライトスコープで行うことができる。フェライトスコープで測定されるのはフェライト相量であるが、フェライト相量とマルテンサイト相変態量との間には相関関係があることから、フェライトスコープを用いてマルテンサイト相変態率を測定することができる。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、第1及び第3の発明によれば、測定されたマルテンサイト相変態率のピーク値に基づいて、非破壊で被検査体の損傷程度を推定することができる。
【0016】
また、第2及び第4の発明によれば、測定されたマルテンサイト相変態率の分布に基づいて、非破壊で被検査体の損傷過程を推定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
[第1実施形態]
本実施形態の非破壊検査装置10は、図1に示すように、Z軸スタンド16のリフト部先端16Aに固定された測定手段12を備えている。測定手段12は、配線を介して本体14と接続されている。本体14には、パーソナルコンピュータ26が接続されている。また、載置台18Aが、測定手段12の下方に位置するようにXYテーブル18が配置され、XYテーブル18を構成するX軸テーブル18BおよびY軸テーブル18Cがステージコントローラ20と接続されている。ステージコントローラ20はパーソナルコンピュータ26と接続されている。なお、測定手段として、フェライトスコープを使用することができる。
【0018】
次に、非破壊検査装置での測定及び損傷程度の推定について説明する。
【0019】
まず、図2の手順1に示す測定を行う。測定では、まず、ステンレス鋼で構成される被検査体28を非破壊検査装置10のXYステージ載置台18A上に載置する。そして、Z軸スタンド16を調整して測定手段12と被検査体28とを接触させ、被検査体28のマルテンサイト相変態率Vα’を測定する。測定は、パーソナルコンピュータ26でXYテーブル18を制御することにより1mm間隔で被検査体28を移動させて行い、被検査体28のマルテンサイト相変態率Vα’の分布パターンを得る。得られた結果は、分布パターンとしてパーソナルコンピュータ26へ出力され、パーソナルコンピュータ26の記憶部26Bに記憶される。また、図3に示すように、パーソナルコンピュータ26の表示部26Aに表示される。図3では、等高線によって、マルテンサイト相変態率Vα’の分布が示されている。領域Aが最もマルテンサイト相変態率Vα’が高く、領域B>C>D>E>F>Gの順に、マルテンサイト相変態率Vα’が低くなっている。
【0020】
次に、手順2で、得られたマルテンサイト相変態率Vα’の分布パターンから、マルテンサイト相変態率Vα’のピーク値Vα’maxを得る。そして、手順3で、得られたマルテンサイト相変態率Vα’のピーク値Vα’maxと、当該被検査体28の係数A1とから、損傷程度Kを推定する。損傷程度Kは、ピーク値Vα’maxと線形関係にあることから、K=A1×Vα’maxで求めることができる。
【0021】
上記のようにして、マルテンサイト相変態率Vα’の分布に基づいて、被検査体28の損傷程度Kを求めることができる。
【0022】
なお、ここでの損傷程度Kは、応力拡大係数の最大値Kmax、応力拡大係数の範囲ΔKなどに対応させたものである。
【0023】
また、被検査体28では、損傷の先端部分においてマルテンサイト相変態率Vα’は最も高く、初期に損傷を受けている損傷中心部分のマルテンサイト相変態率Vα’は後に損傷を受けた部分よりも低い。したがって、得られたマルテンサイト相変態率Vα’の分布パターンから、損傷は、マルテンサイト相変態率Vα’の低い部分から高い部分へ進展していったことを推定することができる。
【0024】
[第2実施形態]
図4には、第2実施形態の非破壊検査装置50が示されている。図4に示す非破壊検査装置50は、配管などの円筒状の被検査体を検査する場合に用いられる。非破壊検査装置50は、中央の検査孔56に被検査体60を挿通可能な円形の環状体52を備え、環状体52に測定手段54が取り付けられている。測定手段54は、環状体52の円の径方向Rに移動可能とされている。また、環状体52は円周方向Cへの回転、この回転の軸方向Aへの移動が可能とされており、被検査体60の外周面を走査することができる。環状体52及び測定手段54は、パーソナルコンピュータ58と接続されており、パーソナルコンピュータ58により制御されている。
【0025】
非破壊検査装置50での測定の際には、環状体52を軸方向Aへ移動させて被検査体60を端部から検査孔56に挿入させる。そして、検査開始位置から環状体52を円周方向Cへ回転させつつ所定の間隔毎に被検査体60に接触させて、マルテンサイト相変態率Vα’を測定する。1周分の測定が終了したら、所定間隔分環状体52を軸方向Aへ移動させて同様に測定を行う。測定結果は、パーソナルコンピュータ58へ出力され、パーソナルコンピュータ58内の記憶部58Bに記憶される。これにより、被検査体60の外周面のマルテンサイト相変態率Vα’の分布パターンが得られる。得られたマルテンサイト相変態率Vα’の分布パターンは、パーソナルコンピュータ58の表示部58Aに表示される。
【0026】
上記のマルテンサイト相変態率Vα’の分布パターンから、第1実施形態と同様にして被検査体60の損傷程度Kを推定することができる。
【0027】
また、損傷は、マルテンサイト相変態率Vα’の低い部分から高い部分へ進展していったことを推定することができる。
【実施例】
【0028】
SUS304鋼平板を用いて以下の条件で疲労試験を実施し、マルテンサイト相変態率Vα’の分布を測定して、き裂とマルテンサイト相変態率Vα’との関係を調査した。
【0029】
試験片は、図5に示すように、厚さt=5mmのSUS304鋼平板に、表面長2a=1.0mm、深さb=1.0mmの半長円状切欠きを放電加工したものを用い、応力比をR=0.1~0.5として行った。マルテンサイト相変態率Vα’のピーク値Vα’maxと応力拡大係数の最大値Kmaxとの関係を図6に、マルテンサイト相変態率Vα’のピーク値Vα’maxと応力拡大係数範囲ΔKとの関係を図7に示す。図6、に示されるように、Vα’maxと負荷されたKmaxとの間には、線形的な関係が成立している。また、異なった応力比Rに対しても、同じKmax値に対してはほぼ同じ値のVα’maxが得られた。したがって、Kmax=定数A×Vα’maxで表すことができる。また、図7に示すように、応力比Rを一定にした場合には、マルテンサイト相変態率Vα’のピーク値Vα’maxと応力拡大係数範囲ΔKとの間にも、線形関係が成立している。
【0030】
上記より、測定されたマルテンサイト相変態率Vα’のピーク値Vα’maxはKmax値、ΔK値に依存することが分かる。したがって、Vα’maxを測定することによって、部材の受けた損傷程度を推定することができる。なお、上記の応力拡大係数の最大値Kmax、応力拡大係数範囲ΔKは、Newman-Raju式によって算出した。
【0031】
また、き裂表面長2aが約1~2mm伸びる毎に、負荷応力の最大値σmaxを一定にしたままR=0.5でビーチマークを導入し、試験片破断後に破面観察を行った。CCDカメラにより破断面を観察すると、図8(A)に示すように、き裂形状は、き裂貫通までほぼ半楕円形状を保ち、最初のき裂部分Aから外側に向かって進行していったことがわかる。この破断面のマルテンサイト相変態率Vα’分布を測定すると、図8(B)に示すように、最初のき裂部分Aから外側に向かう程、マルテンサイト相変態率Vα’が高くなっている。
【0032】
これにより、マルテンサイト相変態率Vα’の低い部分から高い部分へ、被検査体の損傷が進展していったことがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明に係る第1実施形態の非破壊検査装置の概略構成図である。
【図2】第1実施形態の非破壊検査手順の概略を示す図である。
【図3】測定されたマルテンサイト相変態率の分布を示す図である。
【図4】本発明に係る第2実施形態の非破壊検査装置の概略構成図である。
【図5】本発明の実施例で用いた被検査体の図である。
【図6】マルテンサイト相変態率のピーク値と応力拡大係数の最大値との関係を示すグラフである。
【図7】マルテンサイト相変態率のピーク値と応力拡大係数範囲との関係を示すグラフである。
【図8】(A)は破断面の状態を示す観察図であり、(B)は破断面のマルテンサイト相変態率分布を示す分布図である。
【符号の説明】
【0034】
10 非破壊検査装置
12 測定手段
26 パーソナルコンピュータ
26A 表示部
28 被検査体
50 非破壊検査装置
52 環状体
52 所定間隔分環状体
54 測定手段
56 検査孔
58 パーソナルコンピュータ
58B 記憶部
58A 表示部
K 損傷程度
Vα’ マルテンサイト相変態率
Vα’max マルテンサイト相変態率ピーク値
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図4】
2
【図5】
3
【図6】
4
【図7】
5
【図3】
6
【図8】
7