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明細書 :硫黄化合物を含む水溶液から太陽光照射下で水素生成に高活性を示すZnS-CuX固溶体光触媒

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4915719号 (P4915719)
公開番号 特開2007-144304 (P2007-144304A)
登録日 平成24年2月3日(2012.2.3)
発行日 平成24年4月11日(2012.4.11)
公開日 平成19年6月14日(2007.6.14)
発明の名称または考案の名称 硫黄化合物を含む水溶液から太陽光照射下で水素生成に高活性を示すZnS-CuX固溶体光触媒
国際特許分類 B01J  35/02        (2006.01)
B01J  27/122       (2006.01)
B01J  37/08        (2006.01)
FI B01J 35/02 J
B01J 27/122 M
B01J 37/08
請求項の数または発明の数 4
全頁数 11
出願番号 特願2005-341952 (P2005-341952)
出願日 平成17年11月28日(2005.11.28)
審査請求日 平成20年11月27日(2008.11.27)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】803000115
【氏名又は名称】学校法人東京理科大学
発明者または考案者 【氏名】工藤 昭彦
【氏名】辻 一誠
【氏名】加藤 英樹
個別代理人の代理人 【識別番号】100089406、【弁理士】、【氏名又は名称】田中 宏
【識別番号】100096563、【弁理士】、【氏名又は名称】樋口 榮四郎
審査官 【審査官】吉田 直裕
参考文献・文献 特開2005-120117(JP,A)
特開平10-310770(JP,A)
特開2001-239167(JP,A)
特開2004-008922(JP,A)
特開2005-199222(JP,A)
辻一誠 他4名,硫化物固溶体光触媒を用いた可視光照射下での水素生成反応,電気化学会第72回大会講演要旨集,2005年 4月 1日,p.79
辻一誠 他2名,水素分解光触媒材料 可視光照射下で水素生成反応に高活性を示す硫化物光触媒,触媒,2005年 6月10日,Vol.47, No.4,p.273-278
調査した分野 B01J21/00-38/74
JSTPlus(JDreamII)
Science Citation Index Expanded
(Web of Science)
特許請求の範囲 【請求項1】
(ZnS)1-Y(CuX)(ここでYは0.01≦Y≦0.2であり、Xはハロゲン元素である)の組成の太陽光照射下で還元剤を含む水溶液の光水分解により水素を生成する活性を有する固溶体からなる光触媒。
【請求項2】
固溶体の基本結晶構造がZinc blende型である請求項1に記載の光触媒。
【請求項3】
固溶体がZnSとして酸素存在下(空気)において400℃±100℃において2±1時間焼成しXRDスペクトルにおいてZnO及びZnSOに帰属するピークが見られないものを用いCuXと混合し673K~873Kの範囲で焼成することにより得られたものである請求項1又は2に記載の光触媒。
【請求項4】
CuXがCuClおよび/又はCuBrであり還元剤が硫黄化合物である請求項1、2又は3に記載の固溶体からなる光触媒。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、助触媒未担持でも疑似太陽光照射下で、還元剤である硫黄化合物、例えばS2-とSO2-イオンを含む化合物の水溶液からの水素生成反応において、助触媒未担持の条件で、CdS光触媒や本発明者らが報告したCuドーピングZnS光触媒よりも高い活性を示すZnSとCuX、特にXはCl又は/及びBrである、との固溶体からなる光触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
化石資源は無尽蔵とは言えないことから、これらを化学原料などに振り向けることが資源の有効利用の観点から好ましい。また、地球温暖化などの環境問題などの観点から、COの発生を伴わないクリーンなエネルギーへの変換が熱望されている。前記のような環境問題を引き起こさないエネルギーへの変換が取りざたされるなかで、光触媒を用いた水の分解反応は、太陽光を利用して、水を水素と酸素に分解する水素製造のためのクリーンなエネルギーシステムとして期待されている。そして、次世代エネルギー源として水素の利用に大きな注目が集まっている。また、水素をエネルギー源とする、エネルギー変換のための手段として、水素用燃料電池の研究開発や水素を社会や暮らしに取り入れるためのシステムや施設の検討が精力的に行われている。しかしながら、効率的な水素の製造には、現在のところ二酸化炭素の排出を伴う化石燃料に大きく依存しており、高効率な水蒸気改質技術や燃料電池の開発も根本的な環境問題を解決するまでには至っていない。
前記光触媒を用いた水の分解反応は、太陽光を利用して、水を水素と酸素に分解する水素製造のための実用的なクリーンなエネルギーシステムを構築するものとして期待されている。
【0003】

【非特許文献1】文献1:Kato,H.;Kudo,A.Catal.Today 2003,78,561、
【非特許文献2】文献2:Kato, H.;Asakura,K.;Kudo,A.J.Am.Chem.Soc.2003,125,3082.
【非特許文献3】文献3:Hwang,D.W.;Kim,H.G.;Kim,J.;Cha,K.Y.;Kim,Y.G.;Lee,J.S.J.Catal.2000,193,40.
【非特許文献4】文献4:Maeda,K.;Takata,T.;Hara, M.;Saito,N.;Inoue,Y.;Kobayashi,H.;Domen,K.J.Am..Chem.Soc.2005,127,8286)
【非特許文献5】文献5:Sayama,K.; Mukasa,K.;Abe,R.;Abe,Y.;Arakawa,H.Chem.Commun.2001,2416.
【非特許文献6】文献6:Abe R.; Takata T.; Sugihara H.; Domen K.Chem.Commun. 2005, 3829.
【非特許文献7】文献7:、Abe R.; Sayama K.; Sugihara H. J. Phys. Chem. B 2005, 109, 16052、
【非特許文献8】文献8:Kato, H.; Hori, M.; Konta, R.; Shimodaira, Y.; Kudo, A. Chem. Lett. 2004, 331348.
【特許文献1】特開2005-199187、特許請求の範囲
【非特許文献9】文献9:Kudo, A.; Sekizawa, M. Catal. Lett. 1999,58、241、
【非特許文献10】文献10:Kudo, A.; Sekizawa, M. Chem. Comm.2000, 1371
【非特許文献11】文献11:Tsuji, I.; Kudo, A. J. Photochem. Photobiol., A 2003, 156, 249
【特許文献2】特開2004-255355、特許請求の範囲
【非特許文献12】文献13:Tsuji, I.; Kato, H.; Kobayashi, H.; Kudo, A. J. Am. Chem. Soc. 2004, 126, 13406.、
【非特許文献13】文献14:Tsuji, I.; Kato, H.; Kobayashi, H.; Kudo, A. J. Phys. Chem. B 2005, 109, 7323、
【非特許文献14】文献15:Tsuji, I.; Kato, H.; Kudo, A. Angew. Chem. Int. Ed. 2005, 44, 3565.
【特許文献3】特開2005-199222、特許請求の範囲
【0004】
一方、太陽光のほぼ95%以上が可視光およびそれより長波長側領域であることから、太陽光エネルギーを有効利用して水を分解し水素を得る新しいエネルギーシステムの構築には可視光応答性光触媒の開発が不可欠である。これまでに、紫外光照射下であれば水を水素と酸素に分解できる高効率な光触媒がいくつか見出されている(非特許文献1-3)。可視光照射下においては,効率は現在のところ低いが、GaN:ZnS固溶体(非特許文献4)や水素または酸素生成の半反応に活性を示す光触媒を組み合わせたIO3-/IレドックスPt/SrTiO:Cr、Ta-Pt/W0、Pt/TaON:Pt/WOや Fe3+/Fe2+レドックスPt/SrTiO:Rh-BiVOなどのZスキーム系により水の完全分解が成功している(非特許文献5-8、特許文献1)。
このような中で、本発明者のグループは,犠牲試薬としてS2-やSO2-などの還元剤を用いた水からの水素生成、すなわち水分解の半反応において、可視光照射下で高活性を示す硫化物光触媒の開発をおこなっている(非特許文献9-10)。また、NiやCuなどの遷移金属イオンをドーピングしたZnSは、これらの金属によるバンド構造の変化により、Ptのような貴金属助触媒が未担持でも可視光照射下で高活性を示すことを報告している(非特許文献11)。更に、カルコパイライト構造のAgGaSはRhを担持することで,量子収率25%(波長:440nm)の高活性が得られることが報告している(特許文献2)。更に、ZnSとCuInS、AgInSとの固溶体光触媒においては、Ruを助触媒として担持した(CuAg)15In0.3Zn1.55固溶体光触媒が疑似太陽光照射下においても水素生成反応において高い活性(見掛けの量子収率及び水素発生速度の特性において。)示すことを報告している(非特許文献12-14、特許文献3)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、基本的には、助触媒なしにおいてもより活性な水素生成反応を示し、長波長の可視光で水分解活性を有するZnSを用いた光触媒を提供することである。そこでZnSとCuXとの固溶体を、前記原料の調製と焼成温度(673K~873K)などを工夫して作製し、合成条件と得られた固溶体の特定(粉末X線パターン)、走査電子顕微鏡像)と光触媒活性を検討し、基本的な結晶構造がZinc blende型の結晶構造である、ZnSとCuClやCuBrとのヘテロ固溶体を形成することで、Cu3d軌道が価電子帯の形成に関与することにより、硫黄化合物を犠牲薬とする水素生成光触媒活性の高い光触媒が得られることを発見し、前記課題を解決することができた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、(1)(ZnS)1-Y(CuX)(ここでYは0.01≦Y≦0.2、好ましくは0.05≦Y≦0.2であり、Xはハロゲン元素である)の組成の太陽光照射下で還元剤を含む水溶液の光水分解により水素を生成する活性を有する固溶体からなる光触媒である。好ましくは、(2)固溶体の結晶構造が基本的にはZinc blende型である前記(1)に記載の光触媒であり、より好ましくは、(3)固溶体がZnSとして酸素存在下(空気)において400℃±100℃において2±1時間焼成しXRDスペクトルにおいてZnO及びZnSO4に帰属するピークが見られないものを用いCuXと混合し673K~873Kの範囲で焼成することにより得られたものである前記(1)又は(2)に記載の光触媒である。また、本発明は(4)
CuXがCuClおよび/又はCuBrであり還元剤が硫黄化合物である前記(1)、(2)及び(3)に記載の固溶体からなる光触媒である。
【発明の効果】
【0007】
発明の効果として、助触媒未担持において疑似太陽光照射下において、安定で450nmまでの広い波長域の可視光を利用できる水の光分解水素生成触媒系を構築できたことを挙げることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
先ず、本発明の評価機器、測定装置などを説明する。
A.測定機器、実験装置の概要;
調製された硫黄固溶体類の分析;
1)硫化物固溶体の粉末の同定;X線回折(Rigaku;MiniFlex)による。
2)触媒の比表面積の測定;BET等温吸着法 (Coulter;SA3100) による。
3)紫外-可視-近赤外拡散反射スペクトル(DRS);紫外可視近赤外分光光度計(Jascow;UbestV-570)で測定。得られた拡散反射スペクトルは,Kubelka-Munk法により、吸収モードに変換
4)発光測定;蛍光強度計(Spex;Fluorolog)
5)走査電子顕微鏡;JEOL;JSW-7400F
B.光触媒の活性測定:
1)図1に記載の、循環系C、発生水素ガス排気系V.L、発生ガス分析ガスクロマトグラフィーG、C、撹拌子MX、高温糟T.B、光源Lを配置した反応器R.Vを備えた閉鎖循環系。
2)水素生成光分解実験溶液;硫黄化合物を含む水溶液、好ましくは、SO2-とS2-イオンが存在する水溶液、より好ましくは、還元剤であるKSOとNaSとの混合水溶液中(0.5M KSO+0.1M NaSまたは、0.25M KSO+ 0.35M NaS)
3)生成した水素の定量;ガスクロマトグラフG.C(Shimazu; GC-8A, MS-5A column, TCD, Ar carrier)
4)光源L;300WのXe ランプ(ILC technology;CERMAX LX-300)とCut-off filter (HOYA L42)を組み合わせた、420nmより長波長の光源
5)太陽光シミュレーター(YAMASHITA DENSO;YSS-80QA,AM1.5,100mW/cm)の光源を用いた活性の評価。(この場合、反応は開放系で行い、生成したガスは水上置換で定量した。)
6)みかけの量子収率(QY)(%)の測定には、前記Cut-offフィルター(HOYA)とband-passフィルター(Kenko)により単色光を照射して行った。光量測定は,フォトダイオード(OPHIR;a PD300-UV SH head and a NOVA energy monitor)を用いて行った。
なおQY(%)は、
QY={(生成物の生成に要した電指数又は正孔数)/(入射光子数)}×100
で算出される。
【実施例1】
【0009】
A.ZnS-CuCl固溶体:(ZnS)1-Y(CuCl)(ここでYは0.01≦Y≦0.20である)の合成;
(1)CuClは、CuClとCu金属片を含む塩酸水溶液を熱して合成した。
(2)ZnS(Kojundo)は空気中において400℃で1-3時間焼成処理したXDRからZnOやZnSOに帰属するピークが観察されないものを用いた。
(3)前記合成した原料を混練し、石英アンプルに入れ673K-873Kで熱処理することによりZnS-CuCl固溶体を得た。
この工程において、混練時間はCuClが硫化されない程度の長さ(色が茶色くならない程度に混錬:見た目で判断)とすることにより光触媒活性の良い固溶体が得られた。前記(2)の処理も混練時のCuClの硫化を進めないために重要なファクターである。
B.ZnS-CuBr固溶体の合成;
前記ZnS-CuCl固溶体の場合と同様の方法により合成できる。
【0010】
C.比較サンプルとして、
1)ZnSとCuSまたはCuSとの固相反応により得られたZn1-YCuS、
2)前記非特許文献9に記載のCuドーピングZnS合成方法、すなわち、Zn(NOとCu(NOの混合水溶液中に、NaS水溶液を添加して沈澱を得た後、その状態で15時間程度撹拌・熟成した。得られたペースト状の沈殿物を純水を用いて洗浄し、乾燥せずに光触媒「Cu(4.5mol%)光触媒」とした。及び
3)CdS触媒;高純度化学から購入したCdSを石英アンプル中で1023Kで熱処理し、Wurtzite型としたもの。
【0011】
試料の特性;
図2及び図3に(ZnS)1-Y(CuCl)(Y=0.01-0.2)の固溶体(b-f)、ZnS(a)、CuCl(g)、CuSから合成したZn0.9Cu0.1Sの触媒(h)、及びCuSから合成したZn0.9Cu0.1Sの触媒(i)の粉末X線回折パターン(図2)及び拡散反射スペクトル(図3)を示す。これらの試料は段落〔0010〕で説明した合成法に従って作製した。得られた(ZnS)1-Y(CuCl)固溶体の回折パターンは、28.7度および47.7度付近に特徴的なピークを示しており、得られた試料の結晶構造はZnSやCuClと同じZinc blende型であることがわかった。わずかにWurtziteの結晶相が現れているサンプルもあった。Y=0.01以外の固溶体は,不純物として不定比のCuS(▽印)が確認され固溶量の増加に伴いそのピーク強度は大きくなっていた。しかし、このCuSのZnSに対するピーク比は非常に小さく、ほとんどのCuClはZnSとの固溶体を形成していると考えられる。(ZnS)1-Y(CuCl)固溶体は,結晶性が良く、同じ固溶量で比較した場合、(ZnS)0.9(CuCl)0.1はCuSやCuSから合成したZn0.9Cu0.1S固溶体よりも半値幅が狭くなっていた。これはCuClがフラックスとして働いているためだと考えられる。図3の固溶体の拡散反射スペクトルは、(a)ZnSおよび(g)CuClは400nm以下の紫外光しか吸収を示さないが、ZnSとCuClとを固溶することで可視光領域まで吸収を示した。 (ZnS)0.9(CuCl)0.1、(ZnS)0.85CuCl)0.15、(ZnS)0.8(CuCl)0.2は可視光領域にはっきりとした吸収端を持つスペクトルとなった。Zn0.9Cu0.1S固溶体のスペクトル(h)(i)は、ZnS基礎吸収から可視光領域に裾がのびたブロードなスペクトルとなり、同じCuの固溶量の(ZnS)0.9(CuCl)0.1とは異なっていた。
【0012】
図4は石英アンプル中において773Kで5時間熱処理することにより得られた(ZnS)0.9(CuCl)0.1固溶体の走査型電子顕微鏡(SEM)による観察写真である。粒子サイズが100-300nm程度の結晶性のよい微粒子が観察された。SEM-EDSの測定からは,固溶体粒子中にCuとClとが1:1に近い比で存在していることが確認された。この固溶体のBET比表面積は4.1m-1であった。
【0013】
図5に、室温で測定した(ZnS)1-Y(CuX)固溶体の励起・発光スペクトルを示す。365nmの光で励起すると558nm付近に極大値をもつ鮮やかな黄色い発光を示した。これらの黄色い発光は良く知られた蛍光体である、付活剤としてCu、共付活剤としてClを共ドーピングしたZnSのD-A間の青または緑色の発光とは異なっていた。
図5の(ZnS)1-Y(CuCl)固溶体の励起スペクトル側は、Y=0.01(a)、Y=0.05(b)、Y=0.10(c)、Y=0.15(d)、およびY=0.20(e)であり、発光側は、Y=0.01(a’)、Y=0.05(b’)、Y=0.10(c’)、Y=0.15(d’)、およびY=0.20(e’)である。
【0014】
光触媒反応;
図1に示す閉鎖循環系の実験装置を用いた。
パイレックス製の上方照射型反応容器R.Vに表1に示す触媒を0.3g挿入し、反応溶液として、還元剤として0.5mol/LのKSO及び0.1mol/LのNaS加えた水150mLを加え、撹拌・循環させ、前記300W Xeランプ(λ≧420nm)を照射してH生成速度を循環系に配設された前記のガスクロマトグラフで定量した。
結果を表1に示す。
触媒の比表面積BET(m/g)、及びバンドギャップエネルギー(BG)も記載した。
【0015】
【表1】
JP0004915719B2_000002t.gif

【0016】
表1から、ZnS単独ではほとんど活性を示さないが、CuClと固溶することで高い水素生成活性を示すことが分かる。光触媒活性はYが0から0.1の間ではCuClの割合の増加に伴い向上した。固溶量の大きなY=0.15,0.2では活性が若干低下した。これはXRDからも明らかなように、固溶量の増加に伴い硫化銅の遊離の程度が大きくなることが原因であると考えられる。Y=0.1の時に最も高い水素生成活性を示した。CuSおよびCuSから固相法により合成したZn0.9Cu0.1S固溶体の活性は,同じ量のCuを固溶した(ZnS)0.9(CuCl)0.1と比べると低活性であった。以上の結果から、ZnSとCuClとを固溶した触媒のみが,可視光照射下において水素生成反応に高活性を示すことが明らかとなった。特にY=0.05-0.2の範囲で比較的活性の高い固溶体が得られることがわかった。
(ZnS)0.9(CuBr)0.1固溶体(BG;2.77eV)も可視光領域に吸収を示し、673μmol/hと高い水素生成活性を示した。
(ZnS)0.9(CuCl)0.1光触媒による水素生成反応の量子収率(QY)は、460nm単色光照射下においても量子収率(QY)3.1%と比較的高い値を示した。バンドギャップ遷移である420nmの単色光照射下では、量子収率16.3%と高い値を示した。この値は以前に報告したCuドーピングZnS光触媒(QY=3.7%)よりも高く(前記非特許文献7)、発明者らの知る限り助触媒未担持という条件においては,可視光照射下での水素生成反応で最も高い値と見なせる。
【0017】
(ZnS)0.9(CuCl)0.1固溶体を製造する際の熱処理条件と、得られる固溶体の比表面積及び水素生成活性との相関;
表2に様々な条件で熱処理をして合成した(ZnS)0.9(CuCl)0.1固溶体の比表面積と水素生成反応活性の結果を示す。
【0018】
【表2】
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【0019】
673Kの熱処理では,比表面積は大きいものの結晶性が悪く,触媒の色もくすんでおり低活性であった。773Kで熱処理した場合にもっとも高い活性を示し,活性は焼成時間にはあまり依存性がなかった。一方,比較的高温の873Kでの熱処理では活性が低下してしまった。
【0020】
水溶液の組成と光触媒の水素生成反応との相関の測定;
還元剤としてS2-またはSO2-を含む水溶液、S2-とSO2-をともに含む水溶液(触媒0.3g)からの水素生成反応と、良く知られたCdS(d、溶液組成は0.1M NaS+0.5M KSO)との比較を図6に示す。(a)0.5M KSO下ではほとんど活性を示さなかった。(b)0.1M NaSの反応では、反応初期で400μmol/hほどの高い水素生成活性を示したが2時間目以降から失活してしまった。一方、(c)の0.1M NaS+0.5M KSOの反応では,ほぼ定常的に水素を生成し続けた(460μmol/h)。よく知られている高活性な光触媒であるCdSと比較した場合、(c)(ZnS)0.9(CuCl)0.1の方が4倍以上もの高い水素生成活性を示した。また,以前我々が報告したCu(4.5mol%)ドーピングZnSを(c)と同じ反応条件下で測定すると、活性は98μmol/hであり,今回報告見出したZnS-CuCl固溶体の方が高い活性を示した。
【0021】
疑似太陽光照射下の水素生成反応活性の測定;
(ZnS)0.9(CuCl)0.1固溶体触媒は、図7に示すように、疑似太陽光照射下においても高い活性を示し、比較的安定に水素を生成し続けた。因みに、反応溶液には0.3gの光触媒を加え、前記溶液の組成は0.1mol/L KSO+0.5mol/L NaSであり、溶液の量は150mL、光源は300W Xeランプ(AM1.5フィルター)、照射面積33cmである。照射面積から換算した1平方メートル当たりの水素生成量は、反応初期で3.1Lh-1であった。反応後の触媒はXRD観察から触媒の状態の変化は見られなかった。
【産業上の利用可能性】
【0022】
ZnSとCuClから調製された(ZnS)1-Y(CuCl)固溶体が高活性な可視光応答性光触媒であることが明らかとなり、すなわち、これらの固溶体はPtやRuといった貴金属助触媒を担持しなくても水素生成反応において高い活性を示した。疑似太陽光照射下においても水素生成反応に活性を示し、また、CdSや以前報告したCuドーピングZnS光触媒と比較してもより高い活性を示すことは、より産業上の利用性を可能としたものである。更に、CuClがフラックスとして働くことやCuとClの共置換による電荷補償効果がCuの安定な価電子帯の形成に寄与していることが高活性の要因として考えられ、また、ZnSとCuBrとの固溶体においてもZnS-CuCl固溶体と同様に可視光照射下で、水素生成反応に高い活性を示すことの発見は、水素生成反応に高い活性を示す光触媒の開発の方向性を示したことにおいても、産業上の効果は顕著である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】可視光応答性光水分解水素生成系光触媒の評価用閉鎖循環型反応装置
【図2】(ZnS)1-Y(CuCl)(Y=0.01-0.2)の固溶体(b-f)、ZnS(a)、CuCl(g)、CuSから合成したZn0.9Cu0.1Sの触媒(h)、及びCuSから合成したZn0.9Cu0.1Sの触媒(i)の粉末X線回折パターン
【図3】(ZnS)1-Y(CuCl)(Y=0.01-0.2)の固溶体(b-f)、ZnS(a)、CuCl(g)、CuSから合成したZn0.9Cu0.1Sの触媒(h)、及びCuSから合成したZn0.9Cu0.1Sの触媒(i)の拡散反射スペクトル
【図4】石英アンプル中において773Kで5時間熱処理することにより得られた(ZnS)0.9(CuCl)0.1固溶体の走査型電子顕微鏡(SEM)による観察写真
【図5】室温で測定した(ZnS)1-Y(CuX)固溶体の励起・発光スペクトル。(ZnS)1-Y(CuCl)固溶体の励起スペクトル側は、Y=0.01(a)、Y=0.05(b)、Y=0.10(c)、Y=0.15(d)、およびY=0.20(e)であり、発光側は、Y=0.01(a’)、Y=0.05(b’)、Y=0.10(c’)、Y=0.15(d’)、およびY=0.20(e’)である
【図6】水溶液の組成と(ZnS)0.9(CuCl)0.1固溶体光触媒の水素生成反応との相関:水溶液の組成の組成は(a)0.5M KSO、(b)0.1M NaS、及び(c)の0.5M KSO+0.1M NaSである。(d)はCdS(溶液組成は0.5M KSO+0.1M NaS)
【図7】(ZnS)0.9(CuCl)0.1固溶体触媒の疑似太陽光照射下の水素生成反応活性
【符号の説明】
【0024】
V.L 真空ライン G 圧力計 C 循環器 T.B 高温槽 S スターラー
MX 撹拌子 L 可視光(λ>420nm) R.V 反応容器
L.C リービッヒ冷却管 G.C ガスクロマトグラフィー
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6