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明細書 :蛍光分子プローブを用いた新規薬剤スクリーニング方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5099675号 (P5099675)
登録日 平成24年10月5日(2012.10.5)
発行日 平成24年12月19日(2012.12.19)
発明の名称または考案の名称 蛍光分子プローブを用いた新規薬剤スクリーニング方法
国際特許分類 G01N  33/50        (2006.01)
G01N  33/15        (2006.01)
G01N  21/78        (2006.01)
G01N  33/566       (2006.01)
G01N  33/542       (2006.01)
G01N  21/64        (2006.01)
FI G01N 33/50 Z
G01N 33/15 Z
G01N 21/78 C
G01N 33/566
G01N 33/542 A
G01N 21/64 F
G01N 21/64 A
請求項の数または発明の数 7
全頁数 16
出願番号 特願2006-550880 (P2006-550880)
出願日 平成17年12月28日(2005.12.28)
国際出願番号 PCT/JP2005/024274
国際公開番号 WO2006/070941
国際公開日 平成18年7月6日(2006.7.6)
優先権出願番号 2004381671
優先日 平成16年12月28日(2004.12.28)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成20年12月24日(2008.12.24)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】803000115
【氏名又は名称】学校法人東京理科大学
発明者または考案者 【氏名】田沼 靖一
【氏名】吉森 篤史
個別代理人の代理人 【識別番号】100091096、【弁理士】、【氏名又は名称】平木 祐輔
【識別番号】100118773、【弁理士】、【氏名又は名称】藤田 節
【識別番号】100111741、【弁理士】、【氏名又は名称】田中 夏夫
審査官 【審査官】宮澤 浩
参考文献・文献 特開2001-272404(JP,A)
特表2004-530125(JP,A)
特表2003-508788(JP,A)
特開2004-110262(JP,A)
特開2004-123568(JP,A)
特開平02-028542(JP,A)
特表平10-512952(JP,A)
特開2004-347608(JP,A)
特表2004-505636(JP,A)
調査した分野 G01N 33/50
G01N 21/64
G01N 21/78
G01N 33/15
G01N 33/542
G01N 33/566
特許請求の範囲 【請求項1】
標的分子に相互作用し得る化合物のスクリーニング方法であって、化合物ライブラリーから固有に蛍光性を有する分子を選択して蛍光プローブライブラリーを構築し、該蛍光プローブライブラリーから標的分子とのドッキングスタディーにより蛍光分子プローブを選択しまたはさらに構造最適化し、蛍光ラベルすることなく固有に蛍光性を有するリガンドである蛍光分子プローブとして用い、該蛍光分子プローブと候補化合物を標的分子への結合において競合反応させること、および前記蛍光分子プローブと競合する化合物を蛍光分析により選択することを含み
標的分子がタンパク質である、
標的分子に相互作用し得る化合物のスクリーニング方法。
【請求項2】
蛍光分子プローブと候補化合物の標的分子への結合における競合を、溶液中での蛍光分子プローブと標的分子の結合による蛍光シグナルの変動を指標に測定する請求項1に記載の標的分子に相互作用し得る化合物のスクリーニング方法。
【請求項3】
蛍光分子プローブと候補化合物の標的分子への結合における競合を、蛍光相関分光法、蛍光強度分布解析法または蛍光偏光解析法で測定する請求項2記載の標的分子に相互作用し得る化合物のスクリーニング方法。
【請求項4】
化合物ライブラリーからの蛍光プローブライブラリーの構築が、以下の(a)~(c)の手法の少なくとも1手法により行われる請求項1~3のいずれか1項記載の標的分子に相互作用し得る化合物のスクリーニング方法。
(a) 蛍光団を部分構造として有する化合物を化合物の構造式から選択する
(b) 分子軌道計算ソフトウェアにより、蛍光性を有する化合物を選択する、および
(c) 光吸収分析装置を用いての実測により蛍光性を有する化合物を選択する
【請求項5】
蛍光分子プローブの構造最適化が置換基の導入により行われる請求項1~4のいずれか1項に記載の標的分子に相互作用し得る化合物のスクリーニング方法。
【請求項6】
あらかじめ標的分子と蛍光分子プローブの所望の結合定数を設定し、標的分子と蛍光分子プローブの結合定数が、前記設定された所望の結合定数より大きい場合に、該蛍光分子プローブを標的分子の蛍光分子プローブとして選択する請求項1~5のいずれか1項に記載の標的分子に相互作用し得る化合物のスクリーニング方法。
【請求項7】
蛍光分子プローブの最適励起波長および最適蛍光波長を予め測定し、該最適励起波長付近の波長で蛍光分子プローブを励起させ、該最適蛍光波長付近の波長で蛍光を検出する、請求項1~6のいずれか1項に記載の標的分子に相互作用し得る化合物のスクリーニング方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】

本発明は、固有に蛍光性を有する蛍光分子プローブを用いた蛍光分析方法に関し、さらに該プローブを用いた創薬スクリーニング系に関する。
【背景技術】

レセプター等のタンパク質と該タンパク質とリガンドとの相互作用の解析方法として、従来より蛍光性化合物でラベル(標識)したリガンドが用いられていた。例えば、特定のレセプタータンパク質と相互作用する、薬剤候補となり得る化合物をスクリーニングする場合、前記タンパク質と相互作用することが知られている化合物を蛍光性物質で標識し、該蛍光性物質と薬剤候補化合物を標的タンパク質への結合において、競合させ、タンパク質と相互作用する薬剤候補化合物をスクリーニングしていた。この場合、例えば、標的物質であるタンパク質をプレート等に固相化し、該固相化タンパク質へ蛍光ラベルリガンドを結合させ、相互作用の検討が行われていた。しかしながら、タンパク質を固相化することにより、タンパク質の立体構造が天然状態の構造とは変化する等により、生体内で起こる相互作用を正しく解析することはできなかった。
そこで、タンパク質を固相化することなく、溶液中で相互作用を解析する方法として、蛍光相関分光法、蛍光強度分布解析法または蛍光偏光解析法等の1分子蛍光分析法が開発された(WO2002/048693号国際公開パンフレットおよび特開2003-275000号公報参照)。
しかしながら、上記1分子蛍光分析法も含めて、従来の蛍光性化合物を用いたタンパク質と化合物の相互作用の解析においては、化合物をTAMRA等の蛍光性化合物でラベルして用いていた。これは、特定の標的タンパク質に結合する化合物であって固有の蛍光を発しえる化合物が存在しなかったためである。また、蛍光性物質を用いて他の化合物をラベルする方法も種々報告されており、蛍光性化合物を用いたタンパク質とリガンドとの相互作用解析において、タンパク質と相互作用し得る化合物を蛍光ラベルして用いるのが、標準的方法として確立されている。
【図面の簡単な説明】

図1は、蛍光プローブライブラリーの構築の概念図を示す。
図2は、最適蛍光分子プローブの選択方法の概念図を示す。
図3は、最適蛍光分子プローブの選択方法の概念図であり、標的分子ごとに固有の励起および蛍光波長を有する蛍光分子プローブが存在することを示す図である。
図4は、標的分子と相互作用し得る化合物の選択方法の概念図を示す。
図5は、本発明の装置の構成を示す図である。
図6は、DNaseγの立体構造を示す図である。
図7は、DNaseγの最適蛍光分子プローブであるR396842の構造を示す図である。
図8は、DNaseγと最適蛍光プローブの結合を示す図である。
図9は、ATA(Autin Tricarboxylic Acid)によるDNaseγと最適蛍光プローブDR396842複合体の解離を示す図である。
【発明の開示】

上記のように、従来のタンパク質と化合物の相互作用の解析において、化合物を蛍光性物質でラベルして用いていた。しかしながら、化合物を蛍光性物質でラベルする方法は、種々確立されているものの、ラベルには手間とコストがかかり、多数の標的タンパク質の相互作用の解析を行うのは容易ではなかった。また、蛍光性物質は化合物の官能基を利用した共有結合により該化合物に結合させるが、低分子化合物等においては、蛍光性物質を結合させることにより、化合物の立体構造が変化し、ラベルしない場合に比較して、タンパク質との結合親和性が低下する等の問題があった。
本発明は、上記の従来の問題点を解決するために、標的タンパク質と相互作用し、かつ固有の蛍光性を有する化合物を探索し、該化合物を用いて標的タンパク質と化合物との相互作用を解析する方法、解析する装置および解析するキットの提供を目的とする。
本発明者等は、従来の蛍光色素等の蛍光性物質を用いてラベルした蛍光プローブを用いたタンパク質と化合物の蛍光分析における上記問題点を解決すべく鋭意検討を行った結果、数百万種類の化合物を含む化合物ライブラリーから固有に蛍光を有し、なおかつ特定の標的分子に結合し得る化合物である蛍光分子プローブをスクリーニングすることにより、標的分子と相互作用し得る化合物のスクリーニングを上記の問題が生じることなく行えることを見出した。すなわち、本発明者等は化合物ライブラリーから固有に蛍光性を有する化合物を選択し、蛍光プローブライブラリーを構築し、さらに該蛍光プローブライブラリーからコンピューター上でのドッキングスタディーにより、標的分子と結合性を有する化合物を選択することにより、任意の標的分子に対して結合し、なおかつ固有に蛍光性を有する化合物を入手できることを見出し、該化合物を用いた薬剤候補化合物のスクリーニングに関する本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明の態様は以下のとおりである。
[1] 標的分子に相互作用し得る化合物のスクリーニング方法であって、該標的分子に結合し得、蛍光ラベルすることなく固有に蛍光性を有するリガンドを蛍光分子プローブとして用い、該蛍光分子プローブと候補化合物を標的分子への結合において競合反応させること、および前記蛍光分子プローブと競合する化合物を蛍光分析により選択することを含む、標的分子に相互作用し得る化合物のスクリーニング方法。
[2] 標的分子がタンパク質である[1]の標的分子に相互作用し得る化合物のスクリーニング方法。
[3] 蛍光分子プローブと候補化合物の標的分子への結合における競合を、溶液中での蛍光分子プローブと標的分子の結合による蛍光シグナルの変動を指標に測定する[1]または[2]の標的分子に相互作用し得る化合物のスクリーニング方法。
[4] 蛍光分子プローブと候補化合物の標的分子への結合における競合を、蛍光相関分光法、蛍光強度分布解析法または蛍光偏光解析法で測定する[3]の標的分子に相互作用し得る化合物のスクリーニング方法。
[5] 蛍光分子プローブが化合物ライブラリーから標的分子との結合性を指標に選択されたものである[1]~[4]のいずれかの標的分子に相互作用し得る化合物のスクリーニング方法。
[6] 蛍光分子プローブが、化合物ライブラリーから固有に蛍光性を有する分子を選択して構築された蛍光プローブライブラリーから、標的分子とのドッキングスタディーにより選択され、またはさらに構造最適化されたものである[1]~[5]のいずれかの標的分子に相互作用し得る化合物のスクリーニング方法。
[7] 化合物ライブラリーからの蛍光プローブライブラリーの構築が、以下の(a)~(c)の手法の少なくとも1手法により行われる[6]の標的分子に相互作用し得る化合物のスクリーニング方法。
(a) 蛍光団を部分構造として有する化合物を化合物の構造式から選択する
(b) 分子軌道計算ソフトウェアにより、蛍光性を有する化合物を選択する、および
(c) 光吸収分析装置を用いての実測により蛍光性を有する化合物を選択する
[8] 蛍光分子プローブの構造最適化が置換基の導入により行われる[6]または[7]の標的分子に相互作用し得る化合物のスクリーニング方法。
[9] あらかじめ標的分子と蛍光分子プローブの所望の結合定数を設定し、標的分子と蛍光分子プローブの結合定数が、前記設定された所望の結合定数より大きい場合に、該蛍光分子プローブを標的分子の蛍光分子プローブとして選択する[5]~[8]のいずれかの標的分子に相互作用し得る化合物のスクリーニング方法。
[10] 蛍光分子プローブの最適励起波長および最適蛍光波長を予め測定し、該最適励起波長付近の波長で蛍光分子プローブを励起させ、該最適蛍光波長付近の波長で蛍光を検出する、[1]~[9]のいずれかの標的分子に相互作用し得る化合物のスクリーニング方法。
[11] 標的分子に相互作用し得る化合物のスクリーニングであって、該標的分子に結合し得、蛍光ラベルすることなく固有に蛍光性を有するリガンドを前記標的分子特異的蛍光分子プローブとして用いる、スクリーニングのための蛍光分析装置であって、用いる標的分子特異的蛍光分子プローブの励起光の波長の光を照射し得る連続的に照射光の波長を変え得る光照射手段、用いる標的分子特異的蛍光分子プローブの蛍光の波長の光を検出し得る連続的に検出光の波長を変え得る光検出手段、上記蛍光分子プローブと候補化合物とを標的分子との結合において競合反応させる反応手段を含む、蛍光分析装置。
[12] 標的分子がタンパク質である[11]の蛍光分析装置。
[13] 予め測定した標的分子特異的蛍光分子プローブの励起波長および蛍光波長に適合させて、照射光の波長および検出光の波長を変えることが可能な、[11]または[12]の蛍光分析装置。
[14] 反応手段が溶液中で蛍光分子プローブと候補化合物とを標的分子との結合において競合反応させる反応容器である、[11]~[13]のいずれかの蛍光分析装置。
[15] 蛍光分子プローブと候補化合物の標的分子への結合における競合を、蛍光相関分光法、蛍光強度分布解析法または蛍光偏光解析法で測定する[11]~[14]のいずれかの蛍光分析装置。
[16] 標的分子および該標的分子に結合し得、蛍光ラベルすることなく固有に蛍光性を有するリガンドである標的分子特異的蛍光分子プローブを含む、標的分子に相互作用し得る化合物のスクリーニング用キット。
[17] 標的分子がタンパク質である[16]のスクリーニング用キット。
[18] 蛍光分子プローブが化合物ライブラリーから標的分子との結合性を指標に選択されたものである[16]または[17]の標的分子に相互作用し得る化合物のスクリーニング用キット。
[19] 蛍光分子プローブが、化合物ライブラリーから固有に蛍光性を有する分子を選択して構築された蛍光プローブライブラリーから、標的分子とのドッキングスタディーにより選択され、またはさらに構造最適化されたものである[16]~[18]のいずれかの標的分子に相互作用し得る化合物のスクリーニング用キット。
[20] 化合物ライブラリーからの蛍光プローブライブラリーの構築が、以下の(a)~(c)の手法の少なくとも1手法により行われる[19]の標的分子に相互作用し得る化合物のスクリーニング用キット。
(a) 蛍光団を部分構造として有する化合物を化合物の構造式から選択する
(b) 分子軌道計算ソフトウェアにより、蛍光性を有する化合物を選択する、および
(c) 光吸収分析装置を用いての実測により蛍光性を有する化合物を選択する
[21] 蛍光分子プローブの構造最適化が置換基の導入により行われる[19]または[20]の標的分子に相互作用し得る化合物のスクリーニング用キット。
本明細書は本願の優先権の基礎である日本国特許出願2004-381671号の明細書および/または図面に記載される内容を包含する。
【発明を実施するための最良の形態】

以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の標的分子と相互作用する化合物のスクリーニング方法において、標的分子は、限定されず生体内に存在する、すべての他の物質と相互作用する分子が含まれる。標的分子は、好ましくはDNA、RNA、タンパク質であり、さらに好ましくはタンパク質であり、特に好ましくは特定のリガンドと相互作用し得るレセプタータンパク質である。レセプタータンパク質は特定のリガンドと相互作用し、レセプターシグナルを伝達し、生体内で種々の反応を引き起こす。望ましくは、レセプタータンパク質のシグナルが生体内の種々の疾患と関連するものが望ましい。該レセプタータンパク質と相互作用する化合物は、生体内での該レセプタータンパク質のシグナル伝達を制御することにより、疾患の予防または治療薬として機能することができる。本発明において、標的分子となるタンパク質の例として、DNase、Gタンパク質共役レセプター等が挙げられる。
標的分子と相互作用し得る化合物は、例えば標的分子と相互作用し得るリガンド化合物である。リガンド化合物とは、タンパク質等の生体高分子に結合する低分子量の化合物をいう。標的分子と相互作用し得るリガンド化合物とは、標的分子に結合し、標的分子の機能を活性化し、あるいは阻害し得るリガンド化合物をいう。該リガンド化合物は、アゴニストまたはアンタゴニストとして作用し得る。アゴニストとはレセプターと結合して種々の生理作用を示す物質をいい、アンタゴニストとはレセプターに結合してアゴニストの効果を阻害する物質をいう。化合物の種類、分子量等は限定されない。本発明の方法により、スクリーニングする化合物は、レセプター等の特定のタンパク質と相互作用して、生理作用を示し、該レセプターが関与する疾患の予防薬、または治療薬として使用し得ることが期待される。また、前記化合物は創薬におけるリード化合物としても用いることができる。
本発明のスクリーニング方法においては、蛍光ラベルすることなく固有に蛍光性を有し、かつ標的分子と相互作用し得るリガンドを用いる。該リガンドを本発明において、蛍光分子プローブという。蛍光分子プローブは、標的分子ごとに、標的分子に特異的に相互作用し得るものとして、調製される。本発明で用いる蛍光分子プローブは、450nm~650nmの波長範囲内に励起・蛍光波長を有する化合物である。蛍光分子プローブの調製は以下のようにして行う。
まず、化合物ライブラリーから固有に蛍光性を有する化合物を選択する。化合物ライブラリーとは、構造が既知の化合物の化学式構造や立体構造情報を含むライブラリーである。化合物ライブラリーは、市販の試薬や天然物質を含む化合物の集合だけでなく、化合物の情報を格納したコンピュータ上に構築したデータベースも含む。化合物ライブラリーは、数百万種類の化合物の情報を含む。化合物ライブラリーとしては、現存するデータベースに格納されている種々の化合物を利用することができる。数百万化合物の巨大ライブラリーも市販されており、これらの市販のライブラリーを用いてもよい。
該化合物ライブラリーから部分構造検索、蛍光・吸収スペクトル予測または光吸収分析装置を用いた実測により、固有に蛍光を発する蛍光性化合物を選択し、蛍光プローブライブラリーを構築する。部分構造検索は、蛍光団を部分構造として有する化合物を検索する。蛍光団としては、キサンテン骨格、アゾベンゼン骨格、ベンゾフラン骨格、インドール骨格、アントラセン骨格等が挙げられる。部分構造検索は、化合物ライブラリーを格納したデータベースを用いるだけでなく、既知の化合物のカタログ、文献等から化学構造を指標に選択してもよい。
蛍光・吸収スペクトルの予測は、上記化合物ライブラリーの分子構造情報から行う。該予測は、例えば分子軌道計算によって行うことができる。分子軌道とは、分子内の電子の存在確率分布のことをいう。分子軌道を計算することにより、電子が分子内にどのくらいのエネルギーで存在しているかがわかるので、そのエネルギー分布を調べることにより、光吸収などの光物性を予測することが可能となる。例えば、MOS-Fプログラムを用いることにより、紫外・可視吸収・蛍光スペクトルを予測することができる。MOS-Fプログラムによるスペクトルの計算は、例えば、J.Abe and Y.Shirai,J.Am.Chem.Soc.,118,4705(1996)、J.Abe,Y.Shirai,N.Nemoto and Y.Nagase,J.Phys.Chem.B,101,1910(1997)、J.Abe,Y.Shirai,N.Nemoto and Y.Nagase,J.Phys.Chem.A,101,1(1997)、J.Abe,Y.Shirai,N.Nemoto,Y.Nagase and T.Iyoda,J.Phys.Chem.B,101,145(1997)、S.Tatsuura,W.Sotoyama,K.Motoyoshi,A.Matsuura,T.Hayano and T.Yoshimura,Appl.Phys.Lett.,62,2182(1993)、K.Hiruta,S.Tokita and K.Nishimoto,J.Chem.Soc.Perkin Trans.2,1443(1995)などの記載に従って行うことができる。また、市販のMOS-Fプログラムソフトウェアを用いることもでき、例えば富士通社のWinMOPAC 3.9などを用いればよい。
光吸収分析装置を用いた実測は、化合物ライブラリーに含まれる化合物を入手して、市販の光吸収分析装置を用いて実際に化合物の蛍光・励起波長を測定し、蛍光性化合物を選択する。
蛍光分子プローブライブラリーの構築の概念図を図1に示す。
このようにして得られた蛍光プローブライブラリーから、標的分子に対して親和性を有する蛍光分子を標的分子ごとに選択する。ここで、標的分子に対して親和性を有する蛍光分子プローブを標的分子特異的蛍光分子プローブといい、その中で最終的に選択された標的分子に対して親和性が高く、固有に蛍光性を有する蛍光分子プローブを最適蛍光分子プローブという。蛍光プローブライブラリーからの最適蛍光プローブの選択は、まず蛍光プローブライブラリーから標的分子に結合し得る結合性蛍光分子プローブを選択し、結合性蛍光プローブライブラリーを構築する。蛍光プローブライブラリーに含まれる蛍光分子プローブが標的分子と結合するか否かは、例えばドッキングスタディーにより行えばよい。ドッキングスタディーとは、コンピュータ上で、創薬ターゲットとなる標的分子とリガンドとを仮想的に結合させ、その結合親和性スコアを計算し、複合体構造を予測する手法をいう。結合親和性スコアの計算には、分子場に基づくスコア関数(forcefield-based scoring function)、経験的スコア関数(empirical scoring function)、知識に基づくスコア関数(knowledge-based scoring function)などがある(Gohlke H et al.,Angew Chem.Int.Ed.Engl.(2002)41,2644-2676)。また、標的分子とリガンド分子との複合体構造の探索には、遺伝的アルゴリズム、焼き鈍し法、タブー検索などが利用される(Taylor RD et al.,J.Comput.Aided Mol.Des.(2002)16,151-166)。このようにスコア関数及び検索手法を利用した複数のドッキングプログラムが開発されており(Taylor RD et al.,J.Comput.Aided Mol.Des.(2002)16,151-166)、阻害剤の同定及び設計に利用されている。これまでに、ドッキングプログラムを用いてHIV-1プロテアーゼ阻害剤(DesJarlais RL et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1990)87,6644-6648)、キネシン阻害剤(Hopkins SC et al.,Biochemistry(2000)39,2805-2814)、Bcl-2阻害剤(Wang JL et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1990)97,7124-7129)など多くの新規阻害剤の同定、設計に成功している。本発明においてはこれらの文献の記載に基づいてドッキングスタディーを行うことができ、その他にAutoDock3.0がよく知られており(Goodsell DS et al.,Proteins(1990)8,195-202;Goodsell DS et al.,J Mol Design(1996)9,1-5;Morris GM et al.,J Comp Aided Mol Design(1996)10,293-304;Morris GM et al.,J Comput Chem(1998)19,1639-1662)、好適に用いることができる。また、市販のドッキングスタディー(ドッキングシミュレーション)ソフトウェアプログラムを用いてもよい。市販のドッキングスタディーソフトウェアプログラムとしては、例えばBioPackage(MolSoft社)、LigandFit(アクセルリス社)等がある。
ドッキングスタディーを行うには、まず標的分子の立体構造を入手する。立体構造情報は、Protein Data Bank(http://www.rcsb.org/pdb等の立体構造データベースから入手することができる。標的分子の立体構造が立体構造データベースに登録されていない場合は、類縁分子の立体構造を基にホモロジーモデリング法を用いて予測立体構造を構築すればよい。ここで、ホモロジーモデリングとは、配列上相同性のあるタンパク質の立体構造を基として、標的タンパク質の立体構造を推定する方法をいう。ホモロジーモデリングにおいては、モデリングするタンパク質のアミノ酸配列を決定し、二次構造を持つ部分やループ部分の予測を行った後に、ホモロジー検索をする。ホモロジー検索は、既知のドメインとの相同性を検索し、配列が短い場合はそのままの長さで行い、配列が長い場合は適当な長さのドメインに分けて行う。次いで、鋳型にするタンパク質構造を特定し、シークエンスの相同性が高く、合理的なものを選択する。この際、相同性が低い場合は二次構造の相同性が高いものを選択する。さらに、ホモロジーモデリングに使う鋳型の情報を整理し、タンパク質の立体構造を表示させ、モデリングソフト上で、アミノ酸配列を鋳型に対してアラインメントする。最後に構造最適化を行い、モデル構造の妥当性を検証する。ホモロジーモデリングは、上記のドッキングスタディー用ソフトウェアプログラムを用いて行うことができ、また種々ホモロジーモデリング用ソフトウェアプログラムも存在し(例えば、PDFAMS Pro、PDFAMS Ligandなど)、それらを用いて行うこともできる。標的分子上の蛍光分子プローブを結合させる標的部位の決定は、活性部位、相互作用部位などの任意の部位を指定すればよい。次いで、上記蛍光プローブライブラリーの蛍光性化合物と標的部位の立体構造を用いてドッキングスタディーを行い、結合性を有する化合物を選択し、結合性蛍光プローブライブラリーに格納する。ドッキングスタディーにおいて、種々のアルゴリズムを採用することができる。例えば、形状指向ドッキングアルゴリズムは、形状比較フィルターにより結合部位の形状と発生した複数のリガンドコンフォメーションとの形状を一つ一つ比較し、互いにマッチする最適なリガンドのポーズを探索する。フィルターにより峻別されたポーズは、続いて、グリッドベース手法により結合部位においてタンパク質とリガンドの相互作用エネルギーが評価され、ミニマイズされる。このときエネルギーグリッドを用いることによる誤差は非線型の内挿により大幅に軽減されている。また、結合部位と比較して小さなリガンド候補が欲しい場合には、結合部位を小さな区分に分割してドッキングするsite partitioningを行えばよい。実際に特定の標的分子に対する蛍光分子プローブを選択する場合、あらかじめ最低必要と考えられる任意の結合定数X[M-1]を設定し、蛍光プローブライブラリー中の化合物の結合定数Yをコンピュータ上でまたは実測により測定し、条件1<Y/X<10を満たすもを結合性蛍光プローブライブラリーに格納する。通常蛍光分子プローブの結合定数は、1×10[M-1]~1×10[M-1]程度であることが望ましい。
上記のように、化合物ライブラリー、蛍光プローブライブラリーおよび結合性蛍光プローブライブラリーの構築という各ステップを行い、なおかつ後記の構造最適化を適切に行うことにより、任意の標的ライブラリーに対する蛍光分子プローブを選択することが可能である。
次いで、蛍光プローブライブラリーから選択された化合物の実物を入手し、標的分子に応じたin vitroアッセイを用いて、標的分子に結合する蛍光分子プローブを同定する。十分な親和性をもって結合する場合、該蛍光分子プローブを最適蛍光分子プローブとする。より強い親和性を必要とする場合は、選択された蛍光分子プローブを母格とし、母格に広い範囲の多様性を有する置換基を導入し、母格を多様化し、さらにドッキングスタディーを行い、親和性を高める置換基を決定する。親和性が高くなった蛍光分子プローブを合成し、再度in vitroアッセイを行う。必要な親和性を有する化合物が得られるまで、母格の多様化、ドッキングスタディーおよびin vitroアッセイを繰り返し、最終的に最適蛍光分子プローブを得る。この一連の工程を構造最適化という。得られた最適蛍光分子プローブについて、光吸収分析装置またはMOS-F等の分子軌道計算プログラムを用いて最適励波長および最適蛍光波長を測定し、以降のスクリーニングに用いる。最適蛍光分子プローブは、標的分子と化合物との相互作用の検討を行うのに充分な蛍光を発し、標的分子と設定した親和性以上の親和性をもって結合し得る化合物をいう。最適蛍光分子プローブの選択方法の概念図を図2および図3に示す。図3は、標的分子(図3中のA、B、C等)ごとに固有の励起および蛍光波長を有する蛍光分子プローブ(図3中のa、b、c等)が存在し、各々の蛍光分子プローブに対して最適励起波長/蛍光波長(図3中のn/m、n/m、n/m等)が決定されることを示す。1つの標的分子に対して複数の最適蛍光分子プローブが存在し得る。
上記の方法で選択した標的分子に結合し得、蛍光ラベルすることなく固有に蛍光性を有するリガンドを蛍光分子プローブとして用いて標的分子と相互作用する化合物であって標的分子と相互作用することにより薬剤としての作用を発揮し得る化合物をスクリーニングする。このスクリーニングは、蛍光分子プローブと薬物候補である候補化合物とが標的分子の標的部位に対し、競合して結合する現象を利用して行う。すなわち、対象とする化合物が標的部位に結合する場合、蛍光分子プローブは標的部位に結合できず、遊離される。従って、標的分子/蛍光分子プローブ複合体と遊離の蛍光分子プローブの存在比により、化合物の標的分子への結合度度合いを定量的に測定することができる。実際には、蛍光分子プローブが標的分子と結合した場合の蛍光シグナルの変動を測定すればよい。ここで、蛍光シグナルの変動とは、蛍光分子プローブと標的分子の結合により、検出できるようになるシグナルの変化をいい、後述のように1分子蛍光分析方法や蛍光偏光解析法による蛍光強度等の変化のみならず、蛍光分子プローブと標的分子との複合体と遊離の蛍光分子プローブを分離した後に検出される蛍光強度の変化等も含まれる。本発明の方法において、標的分子を96ウェルプレート等の固相担体に固相化させ、該固相化標的分子に一定量の候補化合物と標的分子に対する最適蛍光分子プローブである蛍光分子プローブを添加し、蛍光分子プローブと候補化合物を標的分子への結合において競合反応させ、遊離の蛍光分子プローブと標的分子/蛍光分子プローブ複合体とを分離し、固相化標的分子に結合した蛍光分子プローブの蛍光または固相化しない遊離の蛍光分子プローブの蛍光を、蛍光分子に特徴的な励起波長と蛍光波長を用いて測定することにより、候補化合物と標的分子との相互作用を測定することができる。この際、一定の量の蛍光分子プローブが標的分子に結合させた場合の蛍光を予め測定して標準曲線を作成しておけばよい。但し、標的分子を固相化した場合、該標的分子の立体構造は、生体内に存在する場合の天然の立体構造と異なることが多く、固相化標的分子と候補化合物とのin vitroにおける相互作用は、生体内における相互作用を反映しているとは限らない。また、蛍光分子プローブは低分子化合物であり、標的分子と蛍光分子プローブの分子量が大きく異なる場合が多く、上記のような複合体と遊離の蛍光分子プローブとの分離が困難な場合が多い。さらに、固相化標的分子を用いる場合、標的分子、蛍光分子プローブ、候補化合物ともにある程度の量を用いる必要があり、微量分析には適さない。従って、標的分子は固相化せずに、分子が自由に運動できる溶液中で標的分子と候補化合物および蛍光分子プローブとの反応を測定することが望ましい。溶液中で標的分子と蛍光分子プローブとの結合を測定する方法として、1分子蛍光分析法がある。1分子蛍光分析法とは、単一分子レベルで蛍光分子を検出し得る方法であり、溶液中で蛍光分子プローブと標的分子が結合した場合の発せられる蛍光の変動を測定することにより、蛍光分子プローブと標的分子の結合を捉えることができる。一分子蛍光分析は、微小な共焦点領域に出入りする蛍光分子のゆらぎ運動を計測し、この計測により得られるデータを関数により解析することにより行う。1分子蛍光分析法には、蛍光相関分光法(Fluorescence Correlation Spectroscopy)による解析、蛍光強度分布解析(Fluorescence Intensity DistributionAnalysis)、およびこれら解析を同時に行う蛍光強度多分布解析(Fluorescence Intensity Multiple Distribution Analysis)が含まれる。
蛍光相関分光法は、蛍光分子プローブの溶液中でのゆらぎ運動を測定し、自己相関関数(Autocorrelation function)を用いることにより、個々のプローブ分子の微小運動を測定する方法である(D.Magde et al.,Biopolymers 1974 13(1)29-61)。蛍光相関分光法は、溶液中の蛍光分子プローブのブラウン運動をレーザ共焦点顕微鏡により微小領域で捉えることによって、蛍光強度のゆらぎから拡散時間を解析し、物理量(分子の数、大きさ)を測定することにより行われる。蛍光相関分光法において、試料中の微小視野領域から発生する蛍光信号を検出定量すればよい。媒質中の蛍光標識した標的分子は常に運動(ブラウン運動)しているので、標的分子がこの微小視野領域内に進入する頻度および前記領域内に留まる時間に応じて、検出される蛍光強度が変化する。例えば、蛍光分子プローブが標的分子に結合した場合、蛍光を発する複合体の分子量が大きいので、分子の運動は緩慢になり、見かけの分子数は減少する。その結果、微小視野領域内に入ってくる頻度は低下し、その結果蛍光強度が変化する。蛍光強度の変化をモニターすることにより、標的分子と蛍光分子プローブの結合を検出することができる。
蛍光強度分布解析は、サンプルにレーザ照射し、サンプル中から発せられる蛍光分子の励起光を、高感度フォト検出器によって計測し、計測した蛍光シグナルを、40μsという非常に短時間あたりに分解したフォトンカウントについて、ダブル・ポアソン分布関数解析し、統計処理解析する技術である(P Kask,et al;PNAS23,96,13756-13761,1999,WO98/16814)。蛍光強度分布解析を行うことにより、一分子あたりの蛍光強度(ブライトネス;qn)と蛍光分子の数(cn)が算出される。このとき、分子の種類が複数個あっても分布解析によって識別することができ、それぞれの分子種についてブライトネスと分子数を乗じた数値が総蛍光量として計算できる。
蛍光強度多分布解析は、蛍光相関分光法解析と蛍光強度分布解析を同時に行うものであり、蛍光分子の並進拡散時間、分子数、および一分子あたりの蛍光強度(ブライトネス)に関するデータを一度に取得することができる(K Palo,Biophysical Journal,79,2858-2866,2000)。1分子蛍光分析法は、特開2003-275000号公報、特開2003-279566号公報、WO2002/048693号国際公開パンフレット等の記載に従って行うことができる。また、市販の1分子蛍光分析装置、例えばオリンパス社製のMF20/MF10S等を用いて行うことができる。この際、本発明の方法においては、種々の標的分子に結合し得る種々の励起・蛍光波長を有する蛍光分子プローブを用いるため、励起波長および蛍光波長は連続的に可変である必要がある。
さらに、蛍光偏光解析法で化合物をスクリーニングすることもできる。蛍光偏光解析法は液体中の蛍光性分子が平面偏光により励起されると、蛍光性分子中の蛍光団が励起状態かつ定常状態にある場合に、同一の偏光平面で蛍光を発するが、蛍光団の励起状態中に蛍光性分子が回転などの運動を行った場合に、励起平面とは異なった平面へ蛍光を発し蛍光偏光が解消されることを利用した解析方法である(J.Horinaka et al.,Polym.J.,31,172(1999);J.Horinaka et al.,Comp.Theor.Polym.Sci.,10,365(2000);H.Aoki et al.,Polym.J.,33,464(2001))。分子の運動は、分子量に影響を受け、蛍光性分子が低分子の場合は、運動速度が速いので、蛍光の偏光が解消され、蛍光偏光度は小さい。一方、高分子の場合は、励起状態の間の分子の運動が低下するので、蛍光は偏光が解消できず、大きな蛍光偏光度を示す。従って、蛍光分子プローブが標的分子に結合した場合の蛍光偏光度を測定することにより、蛍光分子プローブと標的分子の結合を検出することができる。蛍光偏光を測定するためには、励起光を偏光フィルターを通して照射し、さらに蛍光分子プローブが発する蛍光を励起光の偏光平面に垂直である垂直偏光面および水平である水平偏光面の両平面で測定する。蛍光偏光度は、式(平行偏光面の蛍光強度-垂直偏光面の蛍光強度)/(平行偏光面の蛍光強度+垂直偏光面の蛍光強度)により求めることができる。
標的分子に対する候補化合物と蛍光分子プローブの競合反応を溶液中で行う場合には、候補化合物と標的分子が結合可能な溶液で行えばよく、生理食塩水や中性付近のリン酸緩衝液等を使用すればよい。この際の温度、pH、反応時間等の反応条件は、標的分子の種類等に応じて適宜設定すればよい。
溶液中で行う競合反応を蛍光分子プローブを用いて測定するためには、上記の1分子蛍光分析装置の他、例えば、パーキンエルマー社のLS55、モレキュラーデバイス社のSpectra Max等をも用いることができる。
なお、本発明の方法の実施において、標的化合物と候補化合物の相互作用を検討するため、標的化合物、候補化合物および蛍光分子プローブは種々の濃度で反応させることが望ましい。そのため、一度に多数のアッセイを行うことが望ましい。このためには、本発明の装置は96ウェルプレート等を用いたマルチウェルアッセイを行い、ハイスループットスクリーニングを行うことができる装置であることが望ましい。
競合反応を行わせる場合の標的分子、蛍光分子プローブおよび候補化合物の量は、標的分子の種類、蛍光分子プローブの標的分子に対する親和性等により適宜設定すればよいが、標的分子は、最終濃度0.01nM~100μM程度、好ましくは0.1~10μM程度である。また、溶液中に添加する候補化合物は、最終濃度0.01nM~100μM程度、好ましくは0.1~10μM程度、さらに好ましくは0.01~100nM程度、さらに好ましくは0.1~50nM程度である。溶液中に添加する蛍光分子プローブは、0.01~100nM程度、好ましくは0.1~50nM程度である。
標的分子、蛍光分子プローブおよび候補化合物の反応は、試験管、ウェル、セル等の適当な容器中で行えばよい。容器サイズは限定されないが、反応は、数十μLから数mLで行われるため、その範囲の量を収容できる容器を用いればよい。
本発明の方法において、標的分子ごとに蛍光分子プローブの励起波長および蛍光波長は異なっているので、蛍光の検出には、蛍光分子プローブごとに励起波長および検出波長を変えて行う。励起光としては、450nm~650nmの範囲の光を用い、アルゴンイオンレーザ、ヘリウム・ネオンレーザ、クリプトン、キセノン、ヘリウム・カドミウムレーザ等の蛍光物質を励起することができる光を用いればよい。励起光の波長を変化させるには、所望の波長の光のみを通すバンドパスフィルター等のフィルターやビームスプリッターを用いればよい。また、分光器を用いて波長を変えることもできる。分光器としては、光学フィルターを用いた分光器、分散型分光器、フーリエ変換型分光器のいずれも用いることができる。また、光パラメトリックレーザ(OPOレーザ)等の波長可変レーザを用いてもよい。蛍光分子プローブが発した蛍光はその蛍光の波長の光のみを通すバンドパスフィルターを通して光検出器で検出すればよい。なお、この際、用いる光の励起波長および検出波長は蛍光分子プローブの最適励起波長および蛍光波長と完全に同一である必要はなく最適波長付近の波長ならばよい。用いる励起波長および検出波長は、最適励起波長の±30nm、好ましくは±20nm、さらに好ましくは±10nmの範囲に含まれていればよい。
上記の方法により、標的分子に結合している候補化合物と反応溶液中に遊離の状態で存在している候補化合物の存在比を測定することができ、候補化合物の標的分子に対する結合のし易さ(親和性)を結合定数として求めることができる。本発明では、候補化合物と標的分子との結合定数をz[M-1]、標的分子と蛍光分子プローブとの結合定数をy[M-1]とした場合に、z/y>1の式が成立する候補化合物を薬剤候補化合物として選択する。
また、本発明の方法でスクリーニングされる標的分子と相互作用し得る化合物の競合阻害実験により得られるIC50値は、100μM以下程度である。
本発明における標的分子と相互作用し得る化合物の選択方法の概念図を図4に示す。
候補化合物から、選択された薬剤候補化合物は、さらに構造最適化を行ってもよい。この場合、選択された薬剤化合物は創薬のためのリード化合物として用いられる。
リード化合物の構造最適化は、リード化合物の官能基を置換、改変し、多様な構造を有する化合物を作成し、それらの化合物の標的分子への結合能を測定することにより行う。構造最適化は、上記のようにドッキングシミュレーションおよび実測を組合せて行うことにより行うことができる。
本発明は、標的分子に相互作用し得る化合物のスクリーニングであって、該標的分子に結合し得、蛍光ラベルすることなく固有に蛍光性を有するリガンドを前記標的分子特異的蛍光分子プローブとして用いる、スクリーニングのための蛍光分析装置をも包含する。本発明の装置は、少なくとも、用いる標的分子特異的蛍光分子プローブの励起光の波長の光を照射し得る連続的に照射光の波長を変え得る光照射手段、用いる標的分子特異的蛍光分子プローブの蛍光の波長の光を検出し得る連続的に検出光の波長を変え得る光検出手段、上記蛍光分子プローブと候補化合物とを標的分子との結合において競合反応させる反応手段を含む。光照射手段は、励起光を照射し得る光源を有し、光源としては、450nm~650nmの波長範囲の光であって、アルゴンイオンレーザ、ヘリウム・ネオンレーザ、クリプトン、キセノン、ヘリウム・カドミウムレーザ等の蛍光物質を励起することができる光源を用いればよい。照射光の波長を変化させるには、所望の波長の光のみを通すバンドパスフィルター等のフィルターやビームスプリッターを備えていればよい。また、分光器を用いて波長を変えることもできる。分光器としては、光学フィルターを用いた分光器、分散型分光器、フーリエ変換型分光器のいずれも用いることができる。また、光パラメトリックレーザ(OPOレーザ)等の波長可変レーザを用いてもよく、この場合も標的分子特異的蛍光分子プローブの励起光の波長の光を照射し得る連続的に照射光の波長を変え得る光照射手段に含まれる。光検出手段は、特定の波長の蛍光を検出し得る手段であり、フォトダイオード等の光検出器を含む。蛍光分子プローブが発した蛍光はその蛍光の波長の光のみを通すバンドパスフィルターを通して光検出器で検出すればよい。また、蛍光分子プローブと候補化合物とを標的分子との結合において競合反応させる反応手段は反応容器であり、試験管、ウェル、セル等を用いればよい。一度に多検体のアッセイを行えるようにするため反応手段はマルチウェルプレート等のマルチアッセイが可能なものが望ましい。反応手段は反応容器を収める反応容器台をも含む。さらに、本発明の装置は、データ処理手段も含み、上記の1分子蛍光分析、蛍光偏光解析のデータを処理し得る。さらに、本発明の装置は、多数検体を測定することができるように、自動化装置であってもよい。この場合、反応容器、試薬分注手段、データ処理手段等がコンピュータで制御され、自動的に多量検体を処理することができる。本発明の方法を1分子蛍光分析法で行う場合、反応手段中の微小領域の蛍光を測定するため、反応手段中の蛍光分子プローブが存在する領域に共焦点領域を設定し、該領域に励起光を照射し、該領域の蛍光を測定する必要がある。この場合、共焦点顕微鏡等の手段を用いればよい。さらに、本発明の装置は、光路上に適宜ミラー、レンズを設置すればよい。図5に本発明の装置の構成の一例を示すが、本発明の装置は該図によっては、限定されない。図5に示す装置は、励起光を照射する光照射手段(光源)1、励起光の波長を変化させるフィルター2、蛍光分子プローブから発せられた蛍光を検出する光検出手段3、蛍光の波長を変化させるフィルター4、光路を変更するミラー5、光を集光するレンズ6および反応手段7を含む。図5中の矢印は光路を示す。本発明の装置が1分子蛍光分析のための装置の場合は、例えばレンズ6の部分に共焦点顕微鏡を設置すればよい。
さらに、本発明は、標的分子に相互作用し得る化合物のスクリーニング用キットを包含する。該キットは、標的分子および該標的分子に結合し得、蛍光ラベルすることなく固有に蛍光性を有するリガンドである標的分子特異的蛍光分子プローブを含む。標的分子は、限定されず、DNA、RNA、タンパク質等の生体高分子を含む。該標的分子に結合し得、蛍光ラベルすることなく固有に蛍光性を有する標的分子特異的蛍光分子プローブは、上記のように化合物ライブラリーから蛍光分子プローブライブラリーを構築し、さらに標的分子との結合親和性を測定することにより得ることができる。本発明のキットは、その他反応用緩衝液等を含む。また、複数の標的分子およびそれぞれの標的分子に対する標的分子特異的蛍光分子プローブを含んでいてもよい。また、1つの標的分子に対して同じ結合部位または異なる結合部位に結合し得る複数の標的分子特異的蛍光分子プローブを含んでいてもよい。
本発明を以下の実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【実施例1】

DNaseγ阻害薬スクリーニング系の構築
DNaseγは分子量33kDa、至適pHを7.2にもつエンドヌクレアーゼである。DNaseγの属するDNaseIファミリーは現在DNaseI、DNaseX、DNaseγ、DNASIL2の4種類が知られている。さらに、細胞内でのアポトーシス誘発に伴い活性化し、ヌクレオソーム単位でのDNA断片化を引き起こすことができるのは、DNaseγのみであることが示されている。しかしながら、アポトーシスにおけるヌクレオソーム単位でのDNA断片化は、DNaseγ以外にもCAD、endonucleaseGなど複数のDNaseにより触媒されることが知られており、アポトーシスの誘導刺激、細胞の種類、分化状態などにより、どのように使い分けされているのかについては不明な点が多い。そこで、DNaseγを特異的に阻害し、アポトーシスにおけるDNA断片化を抑制するDNaseγ阻害剤は、生体内におけるDNaseγの作用機序および生理機能を解明するための重要なツールとなる。そればかりでなく、疾患により亢進されるアポトーシスにおいては、DNA保護薬としての作用も期待される。
本実施例において、本発明の方法を用いてDNaseγ阻害剤のスクリーニングを行った。
化合物ライブラリーは、スクリーニング化合物および一般試薬のサプライヤーが提供するライブラリーを収集して構築した。
該化合物ライブラリーから、部分構造検索、蛍光・吸収スペクトル予測または光吸収分析装置を用いた実測により約2000種類の化合物を含む蛍光分子プローブライブラリーを構築した。
該蛍光分子プローブライブラリーから、コンピュータ上でのドッキングスタディーを行い、DNaseγ特異的結合性蛍光分子プローブとして、キサンテン骨格を有するR396842(Sigma Aldrich社より入手)を最適蛍光分子プローブとして同定した。この際、望ましい結合定数として、予め1×10[M-1]を設定した。選択されたR396842の結合定数は、3.13×10[M-1]であった。図7にR396842の構造式を示す。ドッキングシミュレーションに用いたプログラムはAutoDock3.0であった。R396842の最適励起波長及び蛍光波長をモレキュラーデバイス社製のGeminiを用いて測定したところ、それぞれ468.5nm、514.5nmであった。この値から励起光としては、488nmのArレーザを用い、510-560nmのバンドフィルターを用いて蛍光の検出を行った。蛍光分析装置としては、1分子蛍光分析装置であるオリンパス社製のMF20を用いた。
2nMのR396842および0、3および10μMのDNaseγを用い、両者の結合を測定した。用いた緩衝液は、50mM Mops-NaOH(pH7.2)であった。存在率は、MF20附属ソフト中のTwo-component fit analysisにより算出した。
この検討により、DNaseγの濃度を3μM、R396842の濃度を2nMとし、さらにDNaseγの既知の阻害剤であるATA(Autin Tricarboxylic Acid、和光純薬工業株式会社より入手)を0、3および10μMの濃度で添加し、競合実験を実施した。
図9に結果を示す。ATA濃度依存的に、DNaseγと最適蛍光分子プローブ複合体の存在率が減少した。この結果は、ATAが最適蛍光分子プローブと競合的にDNaseγの標的部位に結合していることを示す。
【産業上の利用可能性】

本発明により、標的分子に結合するリガンドへの蛍光ラベルを行うことなく、固有に蛍光性を有し、標的分子に結合性を有する化合物を分子プローブとして用いて標的分子と相互作用し得る化合物をスクリーニングし得る。リガンドへの蛍光ラベルは、化合物によっては、蛍光ラベルが困難であり、さらにコストやリガンドの反応性の低下という問題点があり、標的分子によっては、相互作用し得る化合物のスクリーニングが困難であった。本発明は、標的分子に対して結合性を有し、かつ固有に蛍光性を有する蛍光分子化合物を用いるため、従来法の有していた問題を解消できる。
本明細書で引用した全ての刊行物、特許および特許出願をそのまま参考として本明細書にとり入れるものとする。
【符号の説明】
1 光照射手段
2 フィルター
3 光検出手段
4 フィルター
5 ミラー
6 レンズ
7 反応手段
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8