TOP > 国内特許検索 > 太陽電池アレイの診断方法、及びパワーコンディショナ > 明細書

明細書 :太陽電池アレイの診断方法、及びパワーコンディショナ

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5403608号 (P5403608)
登録日 平成25年11月8日(2013.11.8)
発行日 平成26年1月29日(2014.1.29)
発明の名称または考案の名称 太陽電池アレイの診断方法、及びパワーコンディショナ
国際特許分類 H01L  31/042       (2014.01)
FI H01L 31/04 R
請求項の数または発明の数 5
全頁数 13
出願番号 特願2009-217504 (P2009-217504)
出願日 平成21年9月18日(2009.9.18)
審査請求日 平成24年9月14日(2012.9.14)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】803000115
【氏名又は名称】学校法人東京理科大学
発明者または考案者 【氏名】平田 陽一
個別代理人の代理人 【識別番号】100079049、【弁理士】、【氏名又は名称】中島 淳
【識別番号】100084995、【弁理士】、【氏名又は名称】加藤 和詳
【識別番号】100085279、【弁理士】、【氏名又は名称】西元 勝一
【識別番号】100099025、【弁理士】、【氏名又は名称】福田 浩志
特許請求の範囲 【請求項1】
複数のセルを接続した太陽電池及び該太陽電池の故障時に通電されるバイパスダイオードを備えた複数の太陽電池モジュールとブロッキングダイオードとを直列接続した太陽電池ストリングスを、複数個並列に接続した太陽電池アレイの電気特性を診断する太陽電池アレイの診断方法であって、
前記太陽電池ストリングスの前記ブロッキングダイオードを除いた測定対象部位に、前記太陽電池が発電していない時間帯において、前記太陽電池ストリングス毎に充電したコンデンサを接続して放電させ、
放電時に前記測定対象部位の電圧及び電流を測定し、
測定した電圧及び電流から得られる電流-電圧特性の変化に基づいて、前記測定対象部位の電気特性を診断する
太陽電池アレイの診断方法。
【請求項2】
前記測定対象部位に、前記太陽電池の等価回路におけるダイオードの順方向に放電された場合には、前記電流-電圧特性の傾きの変化に基づいて、前記測定対象部位の前記太陽電池の電気特性を診断し、前記測定対象部位に、前記バイパスダイオードの順方向に放電された場合には、前記電流-電圧特性のパターンの変化に基づいて、前記測定対象部位の前記バイパスダイオードの電気特性を診断する請求項1記載の太陽電池アレイの診断方法。
【請求項3】
複数のセルを接続した太陽電池及び該太陽電池の故障時に通電されるバイパスダイオードを備えた複数の太陽電池モジュールとブロッキングダイオードとを直列接続した太陽電池ストリングスを、複数個並列に接続した太陽電池アレイの電気特性を診断する機能を備えたパワーコンディショナであって、
コンデンサと、
前記コンデンサを充電する充電手段と、
前記太陽電池ストリングスの前記ブロッキングダイオードを除いた測定対象部位に、前記太陽電池が発電していない時間帯において、前記太陽電池ストリングス毎に充電した前記コンデンサを接続する接続手段と、
前記コンデンサの放電時に前記測定対象部位の電圧及び電流を測定する測定手段と、
測定した電圧及び電流から得られる電流-電圧特性の変化に基づいて、前記測定対象部位の電気特性を診断する診断手段と、
を含むパワーコンディショナ。
【請求項4】
前記診断手段は、前記測定対象部位に、前記太陽電池の等価回路におけるダイオードの順方向に放電された場合には、前記電流-電圧特性の傾きの変化に基づいて、前記測定対象部位の前記太陽電池の電気特性を診断し、前記測定対象部位に、前記バイパスダイオードの順方向に放電された場合には、前記電流-電圧特性のパターンの変化に基づいて、前記測定対象部位の前記バイパスダイオードの電気特性を診断する請求項3記載のパワーコンディショナ。
【請求項5】
前記コンデンサは、前記太陽電池の発電時に用いられる入力コンデンサであり、前記測定手段は、前記太陽電池の発電時に出力電力を調整する際に用いられる電流センサ及び電圧センサである請求項3または請求項4記載のパワーコンディショナ。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池アレイの診断方法、及びパワーコンディショナに係り、特に、長期実使用状態における太陽電池アレイの電気特性を診断することができる太陽電池アレイの診断方法、及びパワーコンディショナに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、日射強度、セル温度、及び太陽光スペクトル分布等の定められた環境因子下における太陽電池の電流-電圧特性を測定することで、太陽電池の状態を分析することが行われている。
【0003】
例えば、太陽電池の電流-電圧特性を計測し、計測された電流-電圧特性を所定の基準状態に換算し、基準状態に換算された上記電流-電圧特性と、予め記憶しておいた複数の基準特性のそれぞれとを比較し、計測された電流-電圧特性がいずれの基準特性に最も近似するかを判定する太陽電池の特性評価装置が提案されている(特許文献1、及び特許文献2参照)。
【0004】
また、太陽電池に光照射が行われていない場合に、太陽電池にバイアス電圧を印加して、太陽電池の特性試験を実施する太陽電池の検査方法が提案されている(特許文献3参照)。
【0005】
また、太陽電池の寿命は、一般的に20年といわれており、故障が生じた場合には、長期にわたって大きな電力損失を招くおそれがあるため、迅速なシステムの保守、及び点検が重要になる。特に、複数の太陽電池セルで構成された複数の太陽電池モジュールが直並列に接続された太陽電池アレイにおいては、1つの太陽電池モジュールの故障により太陽電池アレイ全体が影響を受ける。具体的には、太陽電池モジュールを直列にx枚接続し、並列にy枚接続した太陽電池アレイでは、1つの太陽電池モジュールの故障により、直列(x-1)枚×並列y枚の太陽電池アレイか、直列x枚×並列(y-1)枚の太陽電池アレイと同等の発電性能になってしまう。すなわち、故障していない太陽電池モジュールについては、(y-1)並列枚数分か、(x-1)直列枚数分が発電に寄与できないことになる。このように1枚の太陽電池モジュールの故障であっても、大きな電力損失につながるため、早期に太陽電池モジュールの故障を発見する必要がある。
【先行技術文献】
【0006】

【特許文献1】特開2007-311487号公報
【特許文献2】特開2008-91807号公報
【特許文献3】特開昭59-68978号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1及び特許文献2の技術では、太陽電池が発電を行うことができる晴天時などの環境下において、発電処理を一旦停止させて電流-電圧特性を計測しているため、計測のために発電できない時間が発生する、という問題がある。また、計測の度に発電処理を停止させるため、頻繁なメンテナンスには適さず、早期に故障を発見することができない場合がある、という問題がある。
【0008】
また、特許文献3の技術では、暗状態で太陽電池の特性を検査しているものの、検査のために太陽電池を特別な試験装置にセットする必要があるため、実使用状態に適用することは困難である、という問題がある。
【0009】
また、計測時間を瞬時に終わらせる程短縮した場合には、等価回路に容量成分が現れ、電流-電圧特性が変化して分析が困難になる場合があるため、計測時間を発電の妨げにならない程度に短縮することは困難である、という問題がある。
【0010】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたもので、長期の実使用状態においても、太陽照射時の発電を妨げることなく太陽電池アレイの電気特性を診断して、太陽電池アレイの故障を早期に発見することができる太陽電池アレイの診断方法、及びパワーコンディショナを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の太陽電池アレイの診断方法は、複数のセルを接続した太陽電池及び該太陽電池の故障時に通電されるバイパスダイオードを備えた複数の太陽電池モジュールとブロッキングダイオードとを直列接続した太陽電池ストリングスを、複数個並列に接続した太陽電池アレイの電気特性を診断する太陽電池アレイの診断方法であって、前記太陽電池ストリングスの前記ブロッキングダイオードを除いた測定対象部位に、前記太陽電池が発電していない時間帯において、前記太陽電池ストリングス毎に充電したコンデンサを接続して放電させ、放電時に前記測定対象部位の電圧及び電流を測定し、測定した電圧及び電流から得られる電流-電圧特性の変化に基づいて、前記測定対象部位の電気特性を診断する方法である。
【0012】
本発明の太陽電池アレイの診断方法によれば、太陽電池が発電していない時間帯において診断を行うため、長期の実使用状態においても、太陽照射時の発電を妨げることなく太陽電池アレイの電気特性を診断して、太陽電池アレイの故障を早期に発見することができる。
【0013】
また、前記測定対象部位に、前記太陽電池の等価回路におけるダイオードの順方向に放電された場合には、前記電流-電圧特性の傾きの変化に基づいて、前記測定対象部位の前記太陽電池の電気特性を診断し、前記測定対象部位に、前記バイパスダイオードの順方向に放電された場合には、前記電流-電圧特性のパターンの変化に基づいて、前記測定対象部位の前記バイパスダイオードの電気特性を診断するようにすることもできる。これにより、太陽電池の故障のみならず、バイパスダイオードの故障も早期に発見することができる。
【0014】
また、上記目的を達成するために、本発明のパワーコンディショナは、複数のセルを接続した太陽電池及び該太陽電池の故障時に通電されるバイパスダイオードを備えた複数の太陽電池モジュールとブロッキングダイオードとを直列接続した太陽電池ストリングスを、複数個並列に接続した太陽電池アレイの電気特性を診断する機能を備えたパワーコンディショナであって、コンデンサと、前記コンデンサを充電する充電手段と、前記太陽電池ストリングスの前記ブロッキングダイオードを除いた測定対象部位に、前記太陽電池が発電していない時間帯において、前記太陽電池ストリングス毎に充電した前記コンデンサを接続する接続手段と、前記コンデンサの放電時に前記測定対象部位の電圧及び電流を測定する測定手段と、測定した電圧及び電流から得られる電流-電圧特性の変化に基づいて、前記測定対象部位の電気特性を診断する診断手段と、を含んで構成することができる。
【0015】
本発明のパワーコンディショナによれば、充電手段が、コンデンサを充電し、接続手段が、太陽電池ストリングスのブロッキングダイオードを除いた測定対象部位に、太陽電池が発電していない時間帯において、太陽電池ストリングス毎に充電したコンデンサを接続する。そして、測定手段が、コンデンサの放電時に測定対象部位の電圧及び電流を測定し、診断手段が、測定した電圧及び電流から得られる電流-電圧特性の変化に基づいて、測定対象部位の電気特性を診断する。
【0016】
このように、太陽電池が発電していない時間帯において診断を行うため、長期の実使用状態においても、太陽照射時の発電を妨げることなく太陽電池アレイの電気特性を診断して、太陽電池アレイの故障を早期に発見することができる。
【0017】
また、前記診断手段は、前記測定対象部位に、前記太陽電池の等価回路におけるダイオードの順方向に放電された場合には、前記電流-電圧特性の傾きの変化に基づいて、前記測定対象部位の前記太陽電池の電気特性を診断し、前記測定対象部位に、前記バイパスダイオードの順方向に放電された場合には、前記電流-電圧特性のパターンの変化に基づいて、前記測定対象部位の前記バイパスダイオードの電気特性を診断するようにすることができる。これにより、太陽電池の故障のみならず、バイパスダイオードの故障も早期に発見することができる。
【0018】
また、前記コンデンサは、前記太陽電池の発電時に用いられる入力コンデンサとし、前記測定手段は、前記太陽電池の発電時に出力電力を調整する際に用いられる電流センサ及び電圧センサとすることができる。このように、本来パワーコンディショナが備えている発電時に用いられる入力コンデンサを、診断時に測定対象部位に放電するためのコンデンサとして用い、また、発電時に用いられる電流センサ及び電圧センサを電流-電圧特性を得るための電流及び電圧を測定する測定手段として用いるため、構成を複雑化することなくパワーコンディショナに診断機能を備えることができる。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように、本発明の太陽電池アレイの診断方法、及びパワーコンディショナによれば、太陽電池が発電していない時間帯において、コンデンサの放電特性を用いて得られた測定対象部位の電流-電圧特性の変化に基づいて太陽電池アレイの電気特性の診断を行うため、長期の実使用状態においても、太陽照射時の発電を妨げることなく太陽電池アレイの電気特性を診断して、太陽電池アレイの故障を早期に発見することができる、という効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】太陽電池アレイの等価回路を示す図である。
【図2】(A)シミュレーションにより求めた電圧Vに対する電流-I及び-Ishを示す図、及び(B)太陽電池モジュールのI-V特性を示すである。
【図3】本実施の形態のパワーコンディショナを備えた太陽光発電システムの構成を示す概略図である。
【図4】本実施の形態のパワーコンディショナにおける太陽電池アレイの診断処理ルーチンを示すフローチャートである。
【図5】太陽電池アレイの1個の太陽電池モジュールの故障を想定した直列抵抗を接続した実験装置の概略を示す回路図である。
【図6】(A)太陽電池アレイの計算値によるI-V特性を示す図、及び(B)直列抵抗の抵抗値を変化させたときの太陽電池アレイの測定値によるI-V特性を示す図である。
【図7】(A)太陽電池モジュールが1個の場合の故障想定抵抗値と測定値との関係を示す図、及び(B)太陽電池モジュール5個を直列接続した場合の故障想定抵抗値と測定値との関係を示す図である。
【図8】(A)直列抵抗が変化した場合のI-V特性を示す図、及び(B)分路抵抗が変化した場合のI-V特性の測定結果例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。まず、本実施の形態の原理について説明する。

【0022】
暗状態における太陽電池アレイの出力の電流-電圧特性(I-V特性)について、図1に示す太陽電池アレイの等価回路を用いて説明する。この等価回路で負荷に流れる電流Iは、下記(1)式で表される。ただし、Iphは光発生電流、Iはpn接合の順方向電流、及びIshはpn接合の漏れ電流である。

【0023】
=Iph-I-Ish ・・・(1)

【0024】
また、電流Iphは、日射強度に比例して発生することから、下記(2)式で表される。ただし、λは波長、E(λ)は入射光の波長分布、及びR(λ)は太陽電池アレイの分光感度特性である。

【0025】
ph=∫E(λ)・R(λ)dλ ・・・(2)

【0026】
また、電流Iとpn接合にかかる順電圧Vとの関係は、下記(3)式で表され、電流IshとVとの関係は、下記(4)式で表される。ただし、Aはpn接合の材料特性による係数、Bは材料による係数、kはボルツマン定数、Tは絶対温度、及びRshは接合欠陥による分路抵抗である

【0027】
【数1】
JP0005403608B2_000002t.gif

【0028】
(3)式及び(4)式は、光電流発生点を中心に考えた電圧Vの関数となっている。電圧Vは直列抵抗Rと負荷抵抗Rにより下記(5)式のように表せる。ただし、Vは負荷両端、つまり太陽電池出力端子間の電圧である。

【0029】
-I・R=V ・・・(5)

【0030】
(5)式を(3)式及び(4)式に代入して、さらに(1)式に代入すると、下記(6)式が得られる。

【0031】
【数2】
JP0005403608B2_000003t.gif

【0032】
ここで、暗状態、つまりE=0kW/mであればIph=0となる。太陽電池モジュールは、半導体ダイオードとして機能する太陽電池セルを直列、並列、または直並列に接続したものであるから、ダイオードとしての電気特性を取得し、(6)式に当てはめることで、その状態を各パラメータにより把握することができる。

【0033】
太陽電池アレイの電気的な故障については、直列抵抗R及び分路抵抗Rshの値の変化として表れると想定できる。そこで、太陽光発電システムの設置時等の正常時の太陽電池アレイにおけるI-V特性、及びバイパスダイオードのI-V特性を取得し、これを初期の基準特性として、等価回路を基に各パラメータを算出しておき、直列抵抗及び分路抵抗の基準値を求めておく。

【0034】
図2(A)に、(6)式を用いて、ある1個の太陽電池モジュールについてシミュレーションにより求めた電圧Vに対する(1)式における電流-I及び-Ishを示す。これより、-IshはV<20VでIに占める比率が支配的となり、-IはV>25VでIに占める比率が支配的となる。そこで、同図(B)に示すように、太陽電池のI-V特性から、(6)式の性質に基づいて、直列抵抗Rは25V以上の直線領域で、分路抵抗Rshは20V以下の直線領域で、その傾きからR及びRshを求める。なお、負電圧ではバイパスダイオードが働くため、分路抵抗Rshを求めるのは、0V以上の直線領域を使用する。ここでは、太陽電池モジュールが1個の例について説明したが、診断の対象となる太陽電池モジュールの直並列数に応じて、直列抵抗R及び分路抵抗Rshを求める領域は異なる(図6(A)も参照)。

【0035】
図3に、本実施の形態のパワーコンディショナ10を備えた太陽光発電システムの概略構成を示す。本実施の形態のパワーコンディショナ10は、太陽光を電力に変換する太陽電池アレイ12に接続されている。太陽電池アレイ12は、複数の太陽電池モジュール14とブロッキングダイオード18とを直列接続した太陽電池ストリングス16を、複数個並列に接続して構成されている。ここでは、n列の太陽電池ストリングス16が並列に接続されているものとする。なお、図3では、ブロッキングダイオード18を、太陽電池ストリングス16の正極側に接続した場合を示しているが、太陽電池ストリングス16の負極側に接続するようにしてもよい。

【0036】
また、太陽電池ストリングス16を構成する太陽電池モジュール14は、複数の太陽電池セルを直列、並列、または直並列に接続した太陽電池20、及び太陽電池20と並列に接続され、太陽電池20の故障時に通電されるバイパスダイオード21で構成されている。

【0037】
パワーコンディショナ10は、太陽電池アレイ12と接続されており、太陽電池アレイ12を流れる電流の電流値を検出して検出値を出力する電流センサ22、太陽電池アレイ12の両端子間の電圧を検出して検出値を出力する電圧センサ24、入力コンデンサ26、電流センサ22及び電圧センサ24の検出値に基づいて、太陽電池アレイ12の出力電力が最大になる点を追従するMPPT(Maximum Power Point Tracking)制御を行うMPPT制御部28、太陽電池アレイ12から出力された直流電流を交流電流に変換して負荷へ出力するためのDC-ACインバータ30、商用電源からの交流電流を直流電流に変換するAC-DCコンバータ32、発電時と診断時とで配線の切り替えを行うためのスイッチSW1、SW2、太陽電池アレイ12の診断処理の制御を行うCPU34、及び各種情報を記憶したメモリ35を含んで構成されている。

【0038】
また、パワーコンディショナ10と太陽電池アレイ12とは、太陽電池アレイ12で発電された電力を取り出すための発電用配線36、及び診断時に用いられる診断用配線38で接続されている。また、太陽電池アレイ12内には、発電時と診断時とで配線の切り替えを行うためのスイッチSW3iが太陽電池ストリングス16毎に設けられている。スイッチSW3iの切り替えにより、診断時には、電流の流れないブロッキングダイオード18を除いて、診断用配線38を測定対象部位に接続することができる。iは、1~n列のうち、i列目の太陽電池ストリングス16に対応していることを示している。

【0039】
また、入力コンデンサ26は、発電時の入力コンデンサ26として機能するだけでなく、診断時には、太陽電池アレイ12のI-V特性を取得するために、その放電特性が利用される。このため、入力コンデンサ26の耐電圧は発電時に太陽電池アレイ12の開放電圧に対して余裕を設けた値に設定されているが、それより若干大きい電圧を設定して、I-V特性において直列抵抗Rの直線領域が計測できるようにする。

【0040】
また、電流センサ22及び電圧センサ24は、MPPT制御に用いられる電流及び電圧を検出する機能だけでなく、診断時には、太陽電池アレイ12のI-V特性を取得するための電流及び電圧を検出するためのセンサとしても用いられる。

【0041】
次に、本実施の形態のパワーコンディショナ10の動作について説明する。太陽電池が発電している時間帯においては、スイッチSW1は発電用配線36側(a側)、スイッチSW2はDC-ACインバータ30側(a側)、及びSW3iは発電用配線36側(a側)に接続されており、発電用配線36を介して太陽電池アレイ12から電力が取り出され、負荷へ供給されるようになっている。

【0042】
次に、図4を参照して、診断時の動作について説明する。CPU34が、図4に示す太陽電池アレイの診断処理ルーチンを実行することにより、各構成を制御して診断処理が実行される。

【0043】
ステップ100で、診断時期か否かを判定する。診断時期は、太陽光発電システムにより発電が行われていない時間帯に診断を行うように予め定めておく。また、診断の間隔も、例えば、毎晩や数日おきなどのように定めておく。なお、特性の取得にはセル温度が必要であるが、深夜であれば、外気温度とセル温度とがほぼ等しい状態にあるため、外気温度をセル温度に代用でき、また、日照時に比べてアレイ面の温度むらも少なくなるため、セル温度測定用のセンサをセルの裏面に取付けることを省略することができる。従って、このような深夜の時間帯を診断の時期として定めておくことが好ましい。診断時期であると判定された場合には、ステップ102へ移行し、診断時期ではないと判定された場合には、診断時期となるまで待機状態となる。

【0044】
ステップ102では、変数iに1をセットして、ステップ104へ移行する。ステップ104では、発電時に使用していた入力コンデンサ26とDC-ACインバータ30側との接続を切り離して、入力コンデンサ26を充電する。具体的には、発電用配線36側(a側)に接続されていたスイッチSW1を中立にして太陽電池アレイ12とパワーコンディショナ10との接続を切り、DC-ACインバータ30側(a側)に接続されていたスイッチSW2をAC-DCコンバータ32側(b側)に切り替える。そして、商用電源からの交流電流をAC-DCコンバータ32で変換した直流電流で入力コンデンサ26を充電する。この際、放電時に、太陽電池の等価回路におけるダイオード(図1のダイオードDpv)の順方向へ放電されるように充電する。充電完了後は、スイッチSW2を中立にして入力コンデンサ26とAC-DCコンバータ32とを切り離す。

【0045】
次に、ステップ106で、発電用配線36側(a側)に接続されていたi列目の太陽電池ストリングス16に対応したスイッチSW3iを、診断用配線38側(b側)に切り替える。

【0046】
次に、ステップ108で、スイッチSW1を診断用配線38側(b側)へ接続し、充電された入力コンデンサ26を放電させる。そして、この放電時の電流値及び電圧値を電流センサ22及び電圧センサ24から取得して、取得した電流値及び電圧値からI-V特性を計測する。

【0047】
次に、ステップ110で、I-V特性の所定の直線領域(例えば、太陽電池モジュール14が1個の場合には、図2(B)に示すように、直列抵抗Rについては25V以上、分路抵抗Rshをについては20V以下の直線領域)の傾きから直列抵抗R及び分路抵抗Rshを演算する。

【0048】
次に、ステップ112で、太陽光発電システムの設置時等の正常時の太陽電池アレイ12と診断用配線38を含む計測端から見たI-V特性から予め求めておいた直列抵抗の基準値RS0、及び分路抵抗の基準値Rsh0と、上記ステップ110で演算された直列抵抗R、及び分路抵抗Rshとを比較して、太陽電池アレイ12のi列目の太陽電池ストリングス16の電気特性を診断する。具体的には、RとRS0との差、またはRshとRsh0との差が所定値以上の場合には、i列目の太陽電池ストリングス16のいずれかの太陽電池20に故障または故障の予兆ありと診断したり、R及びRshの基準値からのずれ量に応じて、どのような故障が生じているかを診断したり、過去の診断結果も踏まえて、RとRS0との差、またはRshとRsh0との差の経時的変化からどのような故障が生じているか、または進行中であるかを診断したりすることができる。また、直列抵抗R及び分路抵抗Rshを用いた診断に加えて、予め記憶しておいた正常時または故障時のI-V特性のパターン(I-V特性の形状)と、上記ステップ108で計測したI-V特性のパターンとを比較することにより、故障か否か、または、どのような故障かを診断するようにしてもよい。i列目の太陽電池ストリングス16の診断結果を一旦メモリ35に記憶する。

【0049】
次に、ステップ114で、i=nとなったか否かを判定することにより、全ての太陽電池ストリングス16について診断が終了したか否かを判定する。まだ全ての太陽電池ストリングス16について診断が終了していない場合には、ステップ116へ移行して、iを1インクリメントして、ステップ104へ戻る。そして、ステップ104では、再びスイッチSW1を中立にして、(i-1)列目の太陽電池ストリングス16に対応したスイッチSW3(i-1)を発電用配線36側(a側)に切り替えて、i列目の太陽電池ストリングス16に対応したスイッチSW3iを診断用配線38側(b側)に切り替える。そして、ステップ114でi=nと判定されるまで、以降の処理を繰り返す。

【0050】
上記ステップ114で、i=nと判定された場合には、ステップ118へ移行し、メモリ35に記憶された太陽電池ストリングス16毎の診断結果を出力して、処理を終了する。診断結果は、外部接続された表示装置やプリンタ等にデータを出力して、表示装置に表示するようにしてもよいし、プリンタ等で印字出力するようにしてもよい。また、パワーコンディショナ10自体に表示機能やプリンタ機能を備えるようにしてもよい。さらに、表示装置やプリンタ等の外部からの出力指示があるまでは、診断結果をメモリ35に記憶しておき、出力指示を待って、診断結果を出力するようにしてもよい。

【0051】
引き続き、太陽電池アレイ12のバイパスダイオード21の電気特性についての診断も行う。バイパスダイオード21の電気特性の診断は、AC-DCコンバータ32の極性を変えて、入力コンデンサ26を、上記の太陽電池アレイ12の診断時とは逆電圧となるように充電する。すなわち、放電時に、バイパスダイオード21の順方向に放電されるように充電する。そして、放電時に得られたI-V特性の負電圧部分のパターンと、正常時のパターンとを比較することにより、故障か否かを診断する。それ以外の処理については、上記の太陽電池アレイ12の診断時の処理と同様である。これにより、バイパスダイオード21についても、太陽電池ストリングス16毎に電気特性を診断することができる。

【0052】
ここで、図5に示すように、太陽電池アレイ12の1個の太陽電池モジュール14の故障を想定した直列抵抗RStを接続した実験装置を用いた診断シミュレーションの結果を示す。図5の実験装置における直流電源50は、入力コンデンサ26の放電特性と同様に電圧が変化するようにプログラムされている。

【0053】
まず、図6(A)に、暗状態において、故障のない状態で太陽電池モジュール14が直列接続された場合の計算値によるI-V特性を示す。図6(A)では、太陽電池モジュール14が1個の場合、2個を直列接続した場合、3個を直列接続した場合、4個を直列接続した場合、及び5個を直列接続した場合のそれぞれのI-V特性を示している。直列抵抗が太陽電池モジュール14の個数毎に増加していることがわかる。

【0054】
次に、図6(B)に、直列抵抗の抵抗値を故障想定抵抗値RStとして変化させたときの太陽電池モジュール14が1個の場合、及び5個を直列接続した場合の測定値によるI-V特性を示す。電流が-7A~-10Aの範囲の直線性の強い領域で直列抵抗の測定値RSmを求めたところ、故障想定抵抗値RStの変化に対し、測定値RSmに1次の相関関係が確認された。図7(A)に太陽電池モジュール14が1個の場合、同図(B)5個を直列接続した場合の故障想定抵抗値RStと測定値RSmとの関係を示す。これにより、直列抵抗Rの抵抗値の変化を分析することで、故障の早期予測・診断に寄与することが確認された。分路抵抗Rshについても同様に、I-V特性から得られる分路抵抗Rshの抵抗値の変化を分析することで、故障を診断することができる。

【0055】
図8に、太陽電池モジュール14の故障により、(A)直列抵抗Rが変化した場合、及び(B)分路抵抗Rshが変化した場合のI-V特性の測定結果例を示す(参考文献:土井・山田、「結晶系Si太陽電池モジュールへの順・逆方向電圧印加と発熱・破壊試験」、太陽/風力エネルギー公園論文集(2008)、No.71、pp.305-308)。このように、実際に故障した太陽電池モジュールのI-V特性から、直列抵抗R、及び分路抵抗Rshの初期状態からの変化が読み取れ、診断が可能となっている。

【0056】
以上説明したように、本実施の形態のパワーコンディショナによれば、太陽電池の発電時に使用される入力コンデンサの放電特性を利用して、診断時に太陽電池及びバイパスダイオードのI-V特性を取得するため、定期的に太陽光発電システムの発電を停止する必要がなく、太陽照射時の発電を妨げることなく太陽電池アレイの電気特性を診断して、太陽電池アレイの故障を早期に発見することができる。

【0057】
また、本来パワーコンディショナに備わっている入力コンデンサ、及びMPPT制御用の計測システム(電流センサ及び電圧センサ)を用いるため、診断機能にかかるコスト増を抑えることができ、構成も簡略化することができる。

【0058】
また、診断時期を毎晩または数日おきなどのように短い間隔で行うことにより、故障の早期発見に寄与することができ、システムの長期耐久性を保証し、信頼性を向上させることができる。

【0059】
また、メーカーによりシステム設置後10年保証期間中などに、数年毎に行われている定期点検の際には、太陽電池及びバイパスダイオードの電気特性に関する部分の点検が不要であり、定期点検の労力及び費用が削減できる。

【0060】
なお、上記実施の形態では、測定対象部位を、太陽電池ストリングス毎とした場合について説明したが、測定対象部位を、太陽電池モジュール毎、複数個の太陽電池モジュール毎、複数列の太陽電池ストリングス毎のようにしてもよい。その場合、診断用配線を測定対象部位毎に接続し、配線切替用のスイッチを測定対象部位毎に設けることで、所望の測定対象部位毎の電気特性を診断することができる。測定対象部位の範囲が小さいほど、故障した太陽電池モジュールの特定が容易となり、測定対象部位の範囲が大きいほど、診断用の回路構成を簡略化することができる。

【0061】
また、上記実施の形態では、パワーコンディショナ内のCPUにより、電流センサ及び電圧センサで検出された電流値及び電圧値を取得してI-V特性を求めて、直列抵抗及び分路抵抗を演算して診断する場合について説明したが、検出された電流値及び電圧値をそのまま出力し、外部接続されたパーソナルコンピュータ等の外部機器において診断したり、検出された電流値及び電圧値を、ネットワークを利用して診断センタ等のサーバへ転送し、診断センタ等で診断したりするようにしてもよい。
【符号の説明】
【0062】
10 パワーコンディショナ
12 太陽電池アレイ
14 太陽電池モジュール
16 太陽電池ストリングス
18 ブロッキングダイオード
20 太陽電池
21 バイパスダイオード
22 電流センサ
24 電圧センサ
26 入力コンデンサ
28 MPPT制御部
30 DC-ACインバータ
32 AC-DCコンバータ
34 CPU
35 メモリ
36 発電用配線
38 診断用配線
SW1、SW2、SW3i スイッチ
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7