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明細書 :慢性炎症治療剤及びこれに用いる抗体

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5590561号 (P5590561)
登録日 平成26年8月8日(2014.8.8)
発行日 平成26年9月17日(2014.9.17)
発明の名称または考案の名称 慢性炎症治療剤及びこれに用いる抗体
国際特許分類 C07K  16/18        (2006.01)
A61K  39/395       (2006.01)
A61P  43/00        (2006.01)
A61P  29/00        (2006.01)
FI C07K 16/18 ZNA
A61K 39/395 D
A61K 39/395 N
A61P 43/00 105
A61P 29/00
請求項の数または発明の数 3
全頁数 10
出願番号 特願2010-549514 (P2010-549514)
出願日 平成22年2月4日(2010.2.4)
国際出願番号 PCT/JP2010/051639
国際公開番号 WO2010/090272
国際公開日 平成22年8月12日(2010.8.12)
優先権出願番号 2009025707
優先日 平成21年2月6日(2009.2.6)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成25年2月4日(2013.2.4)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】803000115
【氏名又は名称】学校法人東京理科大学
発明者または考案者 【氏名】深井 文雄
個別代理人の代理人 【識別番号】100079049、【弁理士】、【氏名又は名称】中島 淳
【識別番号】100084995、【弁理士】、【氏名又は名称】加藤 和詳
【識別番号】100099025、【弁理士】、【氏名又は名称】福田 浩志
審査官 【審査官】幸田 俊希
参考文献・文献 国際公開第2009/089998(WO,A1)
国際公開第2004/000216(WO,A2)
国際公開第02/051448(WO,A1)
特開2004-217546(JP,A)
特開2004-138489(JP,A)
特開2002-234900(JP,A)
MIDWOOD,K. et al.,Tenascin-C is an endogenous activator of Toll-like receptor 4 that is essential for maintaining inflammation in arthritic joint disease.,Nat. Med.,2009年 7月,Vol.15, No.7,pp.774-80
SAITO,Y. et al.,A Peptide Derived from Tenascin-C Induces β1 Integrin Activation through Syndecan-4,J. Biol. Chem.,2007年11月30日,Vol.282, No.48,p.34929-37
TSUNODA,T. et al.,Involvement of Large Tenascin-C Splice Variants in Breast Cancer Progression,Am. J. Pathol.,2003年 6月,Vol.162, No.6,p.1857-67
BAIZA,E. et al.,Production and characterization of monoclonal antibodies specific for different epitopes of human tenascin.,FEBS Lett.,1993年10月11日,Vol.332, No.1-2,pp.39-43
CHIQUET-EHRISMANN,R. AND CHIQUET,M.,Tenascins: regulation and putative functions during pathological stress.,J. Pathol.,2003年 7月,Vol.200, No.4,pp.488-99
GULLBERG,D. et al.,Tenascin-C expression correlates with macrophage invasion in Duchenne muscular dystrophy and in myositis.,Neuromuscul. Disord.,1997年 1月,Vol.7, No.1,pp.39-54
CHIQUET-EHRISMANN,R. et al.,Tenascin interferes with fibronectin action.,Cell,1988年 5月 6日,Vol.53, No.3,pp.383-90
調査した分野 C12N 15/09
C07K 16/18
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
PubMed
Thomson Innovation
特許請求の範囲 【請求項1】
以下のいずれかの抗体を含む免疫系細胞の浸潤抑制剤
(1)ヒトテネイシンCのフィブロネクチンIII様反復配列のA2配列部分に由来するペプチドを認識する抗体、及び
(2)配列番号2のアミノ酸配列で示されるペプチドを認識する抗体。
【請求項2】
以下のいずれかの抗体を含む炎症細胞の細胞死誘導剤
(1)ヒトテネイシンCのフィブロネクチンIII様反復配列のA2配列部分に由来するペプチドを認識する抗体、及び
(2)配列番号2のアミノ酸配列で示されるペプチドを認識する抗体。
【請求項3】
以下のいずれかの抗体を含む慢性炎症治療剤
(1)ヒトテネイシンCのフィブロネクチンIII様反復配列のA2配列部分に由来するペプチドを認識する抗体、及び
(2)配列番号2のアミノ酸配列で示されるペプチドを認識する抗体
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、慢性炎症治療剤及びこれに用いる新規抗体に関する。
【背景技術】
【0002】
テネイシンCは、免疫組織を除いた正常細胞においてはほとんど発現が認められないが、炎症、腫瘍等の病態時に発現が誘導される化合物である。
テネイシンCを検出する方法として、いくつかの抗テネイシンC抗体が知られている(例えば、特開2004-217546号公報及び特開2002-234900号公報参照)。またテネイシンCをマーカーとして、関節炎の診断を行なう方法が知られている(例えば、特開2004-138489号公報参照)。
【0003】
テネイシンCを構成するポリペプチドには、上皮増殖因子様ドメイン、フィブロネクチン(FN)III様ドメイン、およびフィブリノーゲン様ドメインが含まれている。このうちFNIII様ドメインでは、基本的な8種の反復配列(1-8)と、その5番目と6番目の間に挿入される9種のスプライシングされる反復配列(A1、A2、A3、A4、B、AD2、AD1、C、D)とが連続していることが知られている。またこれらのスプライシングされる反復配列部位は、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)で切断されやすい部位であり、テネイシンCがMMPにより切断されて生成するペプチドは種々の機能を有していると考えられている。
【0004】
一方、慢性炎症においては、マクロファージなどの単球やリンパ球などの免疫系細胞が、血管から血管内皮を浸潤し、血管基底膜を突き抜けてその炎症部位に集まっていることが知られている。このような炎症部位における免疫系細胞の浸潤は、免疫系細胞膜上の接着分子インテグリンを介した免疫系細胞と血管内皮細胞・細胞外マトリクスとの相互作用で調節されている。インテグリンには活性型と不活性型の2つのコンフォメーションがあり、活性型のみが細胞外マトリクスに接着しうることが知られている。
インテグリンの活性化を引き起こすペプチドとして、テネイシンCのFNIII様ドメインにおけるA2ドメインに由来するペプチド(以下、「TNIIIA2」ということがある)が知られている(例えば、J.Biol.Chem., Vol.282, pp.34929-34937(2007)参照)。
しかしながら、テネイシンCおよびそれに由来するペプチドの炎症部位における役割については詳細が不明であり、特に慢性炎症との関係性については明確な知見は得られていなかった。さらに従来知られている抗テネイシンC抗体では、炎症に対する作用が部位によって相反する場合があった。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、慢性炎症に効果的な新たな薬剤を提供することを課題とする。
本発明の第一の態様は、ヒトテネイシンCのフィブロネクチンIII様反復配列のA2配列部位に由来するペプチドを認識する抗TNIIIA2抗体を提供する。前記抗体は配列番号1のアミノ酸配列を含むペプチドを認識することが好ましい。
本発明の第二の態様は、前記抗体を含む免疫系細胞の血管からの浸潤抑制剤を提供する。
本発明の第三の態様は、前記抗体を含む炎症細胞の細胞死誘導剤を提供する。
本発明の第四の態様は、前記抗体を含む慢性炎症治療剤を提供する
本発明によれば、慢性炎症に対する新たな薬剤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】本発明の実施例1にかかるペプチドTNIIIA2誘導性の細胞接着に対する抗ヒトTNIIIA2抗体の抑制効果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の抗体は、ヒトテネイシンCのフィブロネクチンIII様反復配列のA2配列部位に由来するペプチドを認識する抗TNIIIA2抗体である。
本発明の抗体は、ヒトテネイシンCのフィブロネクチンIII様反復配列におけるA2配列部分に由来するペプチド(TNIIIA2)を認識する。前記抗体がTNIIIA2に選択的に結合することにより、TNIIIA2によって誘導され得る免疫系細胞の浸潤を、抑制することができる。
本発明者は、ヒトテネイシンCに由来するペプチドTNIIIA2が、免疫系細胞の浸潤および、炎症部位における炎症細胞の細胞死の誘導機構に関与することを見出した。本発明は、この知見に基づくものである。

【0008】
本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけでなく、他の工程と明確に区別できない場合であっても本工程の所期の作用が達成されれば、本用語に含まれる。
また、本明細書において「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。
以下、本発明について説明する。

【0009】
本発明における抗TNIIIA2抗体は、ヒトテネイシンCのFNIII様ドメインのA2配列部分に由来するペプチド(TNIIIA2)を認識できるものであれば特に制限はなく、モノクローナル抗体であってもポリクローナル抗体であってもよい。

【0010】
TNIIIA2は、RSTDLPGLKAATHYTITIRGVC(配列番号1)の22個のアミノ酸からなるペプチドである(J.Biol.Chem., Vol.282, pp.34929-34937(2007)参照)。本発明の抗TNIIIA2抗体は、TNIIIA2を認識する抗体であって、配列番号1で示されるTNIIIA2のアミノ酸配列のうち少なくとも一部をエピトープとするものである。抗TNIIIA2に認識されるエピトープとしては、YTITIRGV(配列番号2)のアミノ酸配列を含む部分ペプチドであればよい。

【0011】
前記TNIIIA2を認識する抗体を作製するために用いられるペプチド、即ち本発明にかかる抗TNIIIA2抗体が認識するペプチド(標的ペプチド)としては、配列番号2を含むペプチドであればよく、全長(配列番号1)であってもよい。抗原性や安定性を高める観点から、配列番号2のアミノ酸配列を有するペプチドに、リンカー機能又はリンカー機能を有する1つ以上の化合物、例えばアミノ酸を追加してもよい。このような付加的なアミノ酸としては、キャリアタンパク質を結合するためのアミノ酸を配列番号2のアミノ酸配列を有するペプチドに付与可能とするアミノ酸を挙げることができ、例えばシステイン、酸性アミノ酸または塩基性アミノ酸等を挙げることができる。標的ペプチドとしては、中でも、CATHYTITIRGV(配列番号3)のアミノ酸配列であることが、抗体作製効率の観点から更に好ましい。

【0012】
前記TNIIIA2を認識する抗体は、上述した標的ペプチドを用いて、通常行われる方法によって調製することができる。
例えば、ポリクローナル抗体であれば、次のようにして得てもよい。前記配列番号1~配列番号3のアミノ酸配列のいずれか又はこれらの混合物を標的ペプチドとして使用し、この標的ペプチドをウサギ等の小動物に免疫して血清を得る。得られた血清を公知の抗体精製手段、例えば、硫安沈殿、プロテインA、プロテインGカラム、DEAEイオン交換クロマトグラフィー、前記特定ペプチドをカップリングしたアフィニティカラム等を用いることによって本抗体を精製することで調製できる。

【0013】
また、例えばモノクローナル抗体であれば、前記標的ペプチドを、マウスなどの小動物に免疫を行い、同マウスより脾臓を摘出し、これをすりつぶして細胞を分離し、マウスミエローマ細胞とポリエチレングリコールなどの試薬により融合させ、これにより形成された融合細胞(ハイブリドーマ)の中から、前記標的ペブチドと結合する抗体を産生するクローンを選択する。次いで選択したハイブリドーマをマウス腹腔内に移植し、同マウスより腹水を回収し、得られたモノクローナル抗体を、例えば、硫安沈殿、プロテインA、プロテインGカラム、DEAEイオン交換クロマトグラフィー、前記特定ペプチドをカップリングしたアフィニティカラム等を用いることによって本抗体を精製することで調製できる。

【0014】
なお標的ペプチドは、抗原性を高めるために公知のキャリアタンパク質との融合タンパク質として免役に用いてもよい。このようなキャリアタンパク質としては、この目的で使用される公知の分子であれば特に制限なく使用することができ、例えば、KLH、GST、BSAなどを挙げることができる。

【0015】
本発明の抗TNIIIA2抗体によって浸潤が抑制される免疫系細胞としては、炎症部位において浸潤が観察される免疫系細胞であれば特に制限はない。このような免疫系細胞としては、好中球、好酸球、好塩基球、単球、リンパ球(プラスマ細胞を含む)やこれらの2種以上の組み合わせなどを挙げることができる。
本発明の抗TNIIIA2抗体は、特定理論に限定されないが、例えば、テネイシンC等によって誘導される免疫系細胞の表面に発現しているインテグリンの活性化を阻害することで、免疫系細胞の細胞外マトリクス(例えば、フィブロネクチン等)への接着を抑制することができると推測される。従って、本抗TNIIIA2抗体を用いることによって、免疫系細胞が血管内皮下へ浸潤することを抑制することができる。

【0016】
また、慢性炎症における炎症部位においては、活性化した常在の免疫系細胞又は浸潤した免疫系細胞(これらの細胞を総称して「炎症細胞」ということがある)が通常に比べて長期に渡って生存することが知られている。本発明の抗TNIIIA2抗体は、このような炎症細胞の細胞死を誘導して、長期生存を抑制することができる。

【0017】
本発明の慢性炎症治療剤は、前記抗TNIIIA2抗体を含む。
抗TNIIIA2抗体を含むことにより、炎症部位における免疫系細胞の浸潤を抑制し、さらに炎症細胞の細胞死を誘導して炎症細胞の長期生存を抑制することで、慢性炎症を治療することができる。
前記慢性炎症治療剤の治療対象は、哺乳動物であることが好ましく、ヒトであることがより好ましい。

【0018】
本発明の慢性炎症治療剤は、経口的にまたは非経口的に全身あるいは局所的に投与することができる。例えば、点滴などの静脈内注射、筋肉内注射、腹腔内注射、皮下注射、坐薬、注腸、経口性腸溶剤などを選択することができ、患者の年齢、症状により適宜投与方法を選択することができる。また投与量についても患者の年齢、症状等により適宜選択することができる。

【0019】
本発明の慢性炎症治療剤は、投与経路に応じて医薬的に許容される担体や添加物を共に含むものであってもよい。このような担体および添加物の例として、水、医薬的に許容される有機溶媒、コラーゲン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム、アルギン酸ナトリウム、水溶性デキストラン、カルボキシメチルスターチナトリウム、ペクチン、メチルセルロース、エチルセルロース、キサンタンガム、アラビアゴム、カゼイン、ゼラチン、寒天、ジグリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ワセリン、パラフィン、ステアリルアルコール、ステアリン酸、ヒト血清アルブミン(HSA)、マンニトール、ソルビトール、ラクトース、医薬添加物として許容される界面活性剤などが挙げられる。使用される添加物は、剤型に応じて上記の中から適宜選択されるが、これらに限定されるものではない。

【0020】
本発明の免疫系細胞の浸潤抑制剤は、前記抗TNIIIA2抗体を含む。
抗TNIIIA2抗体を含むことにより、免疫系細胞の血管内皮下への浸潤を抑制することができ、例えば、慢性炎症抑制作用等を示すことができる。
前記免疫系細胞の浸潤抑制剤は、必要に応じて他の成分をさらに含んで構成することができる。他の成分としては前記慢性炎症治療剤における医薬的に許容される担体や添加物を同様に用いることができる。

【0021】
本発明の炎症細胞の細胞死誘導剤は、前記抗TNIIIA2抗体を含む。抗TNIIIA2抗体を含むことにより、炎症部位において炎症細胞の細胞死を誘導して長期生存を抑制し、例えば、慢性炎症による症状の緩和作用等を示すことができる。
前記炎症細胞の細胞死誘導剤は、必要に応じて他の成分をさらに含んで構成することができる。他の成分としては前記慢性炎症治療剤における医薬的に許容される担体や添加物を同様に用いることができる。

【0022】
また、本発明は、慢性炎症を生じている又は生じることが予測される患者に対して、本発明にかかる上述した抗TNIIIA2抗体を含む薬剤を投与することを含む慢性炎症治療又は予防方法を含む。ここで、「慢性炎症治療」には、症状の改善であればよく、症状の緩和や、重症化の抑制も、この用語に包含される。これにより、慢性炎症の症状、又は炎症によって生じる症状を予防又は、軽減若しくは緩和することができる。

【0023】
患者への投与量としては、適用される薬剤の剤型や、患者の性別、年齢、症状等又はこれらの組み合わせによって異なるが、一般に、静脈内注射、筋肉内注射、腹腔内注射、皮下注射、坐薬、注腸、経口性腸溶剤、好ましくは静脈内注射とすることができる。
患者への投与方法としては、適用される薬剤の剤型や、患者の性別、年齢、症状等又はこれらの組み合わせによって異なるが、経口投与、静脈内注射、筋肉内注射、腹腔内注射、皮下注射、坐薬、注腸、経口性腸溶剤を挙げることができ、これらの投与方法から患者の状態によって適宜選択すればよい。本発明の抗体の治療上有効用量は、症状の程度や患者の状態によって異なるが、例えば、約0.1mg/kg体重~約50mg/kg体重とすることができるが、これに限定されない。また、投与頻度は、例えば、毎日2回ないし1週間に1回の範囲とすることができるが、これに限定されない。
【実施例】
【0024】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。尚、特に断りのない限り、「%」は質量基準である。
【実施例】
【0025】
[実施例1]
<抗ヒトTNIIIA2抗体の作製>
配列番号3のアミノ酸配列を有するペプチドを常法により合成した。合成したペプチドを、ハプテンとしてKLHに融合し、得られた融合ペプチドを抗原ペプチドとして用いた。免疫は家兎を用いた通常の方法に従って行った。得られた目的とする抗体を含む混合物を通常の方法により精製した。
以上のようにして、ヒトTNIIIA2に対するポリクローナル抗体(抗ヒトTNIIIA2抗体)を3種類(No.1~No.3)得た。
【実施例】
【0026】
<抗体活性の評価>
上記で得られた抗ヒトTNIIIA2ポリクローナル抗体の抗体活性を、ヒトTNIIIA2によって誘導される細胞接着の抑制作用を指標とし、以下のようにして評価した。結果を図1に示した。
【実施例】
【0027】
細胞培地としてRPMI1640(20%FBS添加)を用い、KOP2.16細胞(マウス骨髄由来血管内皮細胞株)を96穴プレートの各ウェルに5×10cells/200μL/wellの密度で播種し、37℃、5%COで4時間培養した。培養上清の100μLを取り除き、20%TCA水溶液を100μL添加した後、4℃で一晩もしくは常温で1時間放置して固相化した。これをPBS×5、RPMI1640(20%FBS添加)×1、PBS×1で順次洗浄し、各ウェルをKOP2.16細胞でコートした96穴プレートを作製した。
【実施例】
【0028】
上記で得られたKOP2.16細胞でコートした96穴プレートの各ウェルに12.5μg/mLのヒトTNIIIA2を含むRPMI1640(20%FBS添加)を加えた。上記で得られた抗ヒトTNIIIA2抗体(No.1~3)を濃度が1.5μg/mL、3μg/mL、6μg/mLとなるようにそれぞれ添加し、K562細胞(白血病細胞株)を1.5×10cells/wellの密度でそれぞれ播種して、37℃、5%COで1時間培養した。
ホルマリンを添加してさらに1時間常温で放置して固定した後、PBSで3回洗浄し、リリーマイヤー・ヘマトキシリン染色を行なった。光学顕微鏡で観察し、所定の視野内の接着細胞数を計数した。
【実施例】
【0029】
図1から、正常ウサギIgGではヒトTNIIIA2によって誘導される細胞接着は抑制されないのに対して、本発明の抗ヒトTNIIIA2抗体は細胞接着を用量依存的に抑制することが分かる。またNo.1~3のいずれの抗ヒトTNIIIA2抗体も同等の抗体活性を示すことが分かる。さらに本発明の抗ヒトTNIIIA2抗体は、マグネシウムイオンで誘導される細胞接着の抑制作用を示さなかった。
以上から、本発明の抗ヒトTNIIIA2抗体は、ヒトTNIIIA2に特異的に結合し、その機能を抑制できることが分かる。
【実施例】
【0030】
[実施例2]
<浸潤抑制性評価1>
抗ヒトTNIIIA2抗体による、Jurkat細胞(T細胞系細胞株)の血管内皮に対する浸潤抑制を以下のようにして評価した。
96穴プレートの各ウェルにヒトテネイシンCを5μg/mLの濃度で添加し、37℃で1時間インキュベートした。BSAを2.5mg/mLの濃度で加えて、37℃で1時間インキュベートしてブロッキングした。PBSで3回で洗浄し、各ウェルをヒトテネイシンCでコートしたアッセイ用ウェルプレートを得た。
次いで、このアッセイ用ウェルプレートの各ウェルに、DMEM(+)培地に懸濁したKOP2.16(マウス骨髄由来血管内皮細胞)を5.0×10cells/wellの条件で播種し、37℃、5%COで3時間培養した。これによりヒトテネイシンCでコートしたウェル上にKOP2.16細胞からなる単層を形成した。
【実施例】
【0031】
Jurkat細胞の懸濁液に、正常ウサギIgGまたは抗ヒトテネイシンC抗体を濃度が20μg/mLとなるように添加した後、KOP2.16細胞からなる単層上に1.0×10cells/wellの密度になるように静かに播種し、37℃、5%COで3時間培養した。
【実施例】
【0032】
ホルマリンを添加してさらに1時間常温で放置して固定した後、PBS(-)で3回洗浄し、リリーマイヤー・ヘマトキシリン染色を行なった。光学顕微鏡(×200)下で、予め定めた4つの領域内の浸潤数をそれぞれ3つのウェルについて計数し、その算術平均値を浸潤数とした。
ヒトテネイシンCを添加しなかった場合の浸潤数を同様にして計数し、これをバックグラウンドとして差し引いた浸潤数を表1に示した。さらに、正常ウサギIgGと抗ヒトTNIIIA2抗体とにおける浸潤数差の、正常ウサギIgGにおける浸潤数に対する比を浸潤抑制率(%)として算出した。
【実施例】
【0033】
また、Jurkat細胞の代わりに、THP-1(単球様細胞株)を用いた以外は上記と同様にして、抗ヒトTNIIIA2抗体による、THP-1の血管内皮に対する浸潤抑制を評価した。結果を表1に示した。
【実施例】
【0034】
【表1】
JP0005590561B2_000002t.gif
【実施例】
【0035】
表1から、本発明の抗ヒトTNIIIA2抗体は、Tリンパ球系細胞および単球様細胞のヒトテネイシンCに誘導された血管内皮細胞層への浸潤を効果的に抑制できることがわかる。
【実施例】
【0036】
[実施例3]
<浸潤抑制性評価2>
実施例1で得られた抗ヒトTNIIIA2抗体の浸潤抑制効果を、ヒトテネイシンCに対する他の抗体4F10TT及び正常ウサギIgGと以下のようにして比較した。
4F10TTは、ヒトテネイシンCの上皮増殖因子様ドメインのペプチド配列を認識するウサギIgG抗体であり、(株)免疫生物研究所より入手したものを使用した(Tsunoda T. et al., Am J Pathol 162: 1857-1867, 2003; Sato A. et al., J Am Coll Cardiol 47: 2319-2325, 2006)
上記の抗体をそれぞれ用いた以外は実施例2と同様にして、KOP2.16細胞の単層へ浸潤したJurkat細胞の個数を測定した。
【実施例】
【0037】
如何なる抗体も添加しない場合の浸潤数を同様にして計数した。抗体を添加しないときの浸潤数に対する浸潤数の比率を、正常マウスIgGを添加した場合(normal IgG)、4F10TTを添加した場合、抗ヒトTNIIIA2抗体を添加した場合をそれぞれについて算出した。結果を表2に示した(「Coated TNC」)。
【実施例】
【0038】
また、ヒトテネイシンCで各ウェルをコートしたアッセイ用プレートの代わりに、未コートの96穴プレートを用意し、ヒトテネイシンCを2μg/mLの濃度で各ウェル、総量100μLとなるように添加した以外は上記と同様にして、各抗体の細胞浸潤抑制効果を評価した。結果を表2に示した(「Soluble TNC」)。
【実施例】
【0039】
【表2】
JP0005590561B2_000003t.gif
【実施例】
【0040】
表2の結果から、ヒトテネイシンC由来のペプチドを認識する抗体であっても細胞浸潤抑制に対する効果が異なり、本発明にかかる抗TNIIIA2抗体は、4F10TTと比較して強い細胞浸潤抑制効果を示すことが分かる。
【実施例】
【0041】
[実施例3]
<長期生存抑制性評価>
ヒトテネイシンC存在下における、マクロファージの生細胞数の時間変化に対する抗ヒトTNIIIA2抗体の効果を以下のようにして評価した。
【実施例】
【0042】
PMAを濃度10ng/mLで添加した完全培地中で、THP-1細胞を37℃、5%COで24時間培養し、マクロファージに分化誘導した(以下、分化したTHP-1を「PMA-THP-1」という)。
【実施例】
【0043】
96穴プレートの各ウェルにフィブロネクチン(FN)を5μg/mLの濃度で添加し、37℃で1時間インキュベートした。BSAを2.5mg/mLの濃度で加えて、37℃で1時間インキュベートしてブロッキングした。PBS×3で洗浄し、各ウェルがFNコートされたプレートを作製した。
【実施例】
【0044】
FNコートしたウェルに、ヒトテネイシンCを最終濃度が2μg/mLとなるように添加したRPMI1640(無血清)培地を加え、さらに正常ウサギIgG、4F10TT抗体、または抗ヒトTNIIIA2抗体を最終濃度が50μg/mLとなるように加えた。ここにPMA-THP-1細胞を2~2.5×10cells/wellの密度になるように播種し、37℃、5%COで24時間培養した。
WST法に準じたCell Counting Kit(DOUJIN社製)を用いて細胞数を計数し、播種時の生細胞数(day0)に対する培養後の生細胞数(day2)の比率(生細胞数比)を算出した。結果を表3に示した。
【実施例】
【0045】
【表3】
JP0005590561B2_000004t.gif
【実施例】
【0046】
表3から、ヒトテネイシンCが存在するとマクロファージが増殖していることが分かる。これに対して抗ヒトTNIIIA2抗体を加えた場合には、マクロファージの増殖が抑制されること(抗体無添加の細胞数との比では0.61)、さらに生細胞数が減少していること(播種時の細胞数との比では0.93)が分かる。すなわち、抗ヒトTNIIIA2抗体は、ヒトテネイシンC存在下におけるマクロファージの長期生存を抑制できることが分かる。
また、抗ヒトTNIIIA2抗体による生細胞数の減少は、細胞死によるものであった。
【実施例】
【0047】
以上から、本発明の抗ヒトTNIIA2抗体は、免疫系細胞の血管内皮下への浸潤を抑制することができ、さらにヒトテネイシンC存在下における炎症細胞の細胞死を誘導することができることが分かる。
【実施例】
【0048】
2009年2月6日に出願された日本国特許出願第2009-025707号の開示はその全体が参照により本明細書に取り込まれる。
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、および技術規格は、個々の文献、特許出願、および技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に援用されて取り込まれる。
図面
【図1】
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