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明細書 :ナトリウムイオン二次電池

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5800316号 (P5800316)
登録日 平成27年9月4日(2015.9.4)
発行日 平成27年10月28日(2015.10.28)
発明の名称または考案の名称 ナトリウムイオン二次電池
国際特許分類 H01M  10/054       (2010.01)
H01M  10/0569      (2010.01)
FI H01M 10/054
H01M 10/0569
請求項の数または発明の数 1
全頁数 16
出願番号 特願2011-505883 (P2011-505883)
出願日 平成22年3月25日(2010.3.25)
国際出願番号 PCT/JP2010/002149
国際公開番号 WO2010/109889
国際公開日 平成22年9月30日(2010.9.30)
優先権出願番号 2009079178
優先日 平成21年3月27日(2009.3.27)
優先権主張国 日本国(JP)
審判番号 不服 2014-009331(P2014-009331/J1)
審査請求日 平成25年3月4日(2013.3.4)
審判請求日 平成26年5月20日(2014.5.20)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】000125370
【氏名又は名称】学校法人東京理科大学
発明者または考案者 【氏名】駒場 慎一
【氏名】大関 朋彰
【氏名】村田 渉
【氏名】石川 徹
個別代理人の代理人 【識別番号】100106002、【弁理士】、【氏名又は名称】正林 真之
参考文献・文献 特開2010-34044(JP,A)
D.A.Stevens and J.R.Dahn,“The Mechanisms of Lithium and Sodium Insertion in Carbon Materials”,Journal of The Electrochemical Society,148(8) A803-811(2001)
調査した分野 H01M10/054
H01M10/0569
特許請求の範囲 【請求項1】
正極と、負極活物質を有する負極と、非水溶媒を含む非水電解液と、セパレータ(ただし、耐熱多孔層と多孔質フィルムとが積層された積層多孔質フィルムでなるセパレータを除く)とを備えるナトリウムイオン二次電池であって、
前記非水溶媒が、実質的にプロピレンカーボネート又は実質的にエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとの混合溶媒からなる非水溶媒であり、
前記負極活物質が、ハードカーボン(ただし、テトラフェニルカリックス[4]レゾルシナレーンを熱分解して得られたものを除く)であるナトリウムイオン二次電池。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、ナトリウムイオン二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、高エネルギー密度の二次電池として、電解質塩を非水溶媒に溶解させた非水電解液を使用し、リチウムイオンを正極と負極との間で移動させて充放電を行うようにしたリチウムイオン二次電池が多く利用されている。
【0003】
このようなリチウムウイオン二次電池においては、一般に正極としてニッケル酸リチウム(LiNiO)、コバルト酸リチウム(LiCoO)等の層状構造を有するリチウム遷移金属複合酸化物が使用されている。また、負極としてはリチウムの吸蔵及び放出が可能な炭素材料、リチウム金属、リチウム合金等が使用されている。
【0004】
また、非水電解液として、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート等の非水溶媒に四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF)、六フッ化リン酸リチウム(LiPF)等の電解質塩を溶解させたものが使用されている。
【0005】
一方、近年では、リチウムイオンの代わりにナトリウムイオンを利用したナトリウムイオン二次電池の研究が始められている。このナトリウムイオン二次電池の負極は、ナトリウムを含む金属により形成されている。したがって、ナトリウムイオン二次電池を作製する際には、ナトリウムが必要になる。ナトリウムは資源埋蔵量が豊富なため、リチウムイオンの代わりにナトリウムイオンを利用した二次電池が作製できれば、二次電池を低いコストで製造できる。
【0006】
ナトリウムイオン二次電池の実現には、負極においてナトリウムを吸蔵及び放出することが必要になる。そこで、負極活物質としてハードカーボンを用いた場合に、負極においてナトリウムを吸蔵及び放出できるという研究成果が報告されている(例えば、非特許文献1、2参照)。
【0007】
非特許文献1には、負極活物質としてハードカーボンを用いた場合、負極においてナトリウムを吸蔵及び放出する例が報告されているが、数サイクルしか吸蔵及び放出を繰り返すことができない。そこで、優れたナトリウムイオン二次電池の開発のため、電池のサイクル特性を改善する技術が求められている。
【0008】
非特許文献2にも非特許文献1と同様に負極活物質としてハードカーボンを用いた場合、負極においてナトリウムを吸蔵及び放出する例が報告されている。非特許文献2に記載の技術は、非水溶媒としてエチレンカーボネートを用い、電解質塩としてNaClOを用いる点で非特許文献1に記載の技術と異なる。非特許文献2に記載の技術は、非特許文献1に記載の技術と比較して、電池のサイクル特性の点で優れる。しかし、非水溶媒としてエチレンカーボネートを単独使用する場合には、エチレンカーボネートが室温で固体のため、室温で使用できない二次電池になる。したがって、室温で使用できるような二次電池に改良することも求められる。
【0009】
また、特定の炭素材料を負極活物質として用いるナトリウムイオン二次電池が開示されている(特許文献1)。特許文献1に記載のナトリウムイオン二次電池は、非水溶媒としてエチレンカーボネートとジエチルカーボネートとの混合溶媒を用いるため室温で充放電可能である。さらに、特許文献1に記載のナトリウムイオン二次電池は、可逆的な充放電を行うことが可能で、良好な充放電特性を得ることが可能とされている。しかし、特許文献1に記載される炭素材料を含めて一般的な炭素材料は積層構造を有するが、積層方向に対して垂直な方向の伝導性が悪いという問題が存在する。また、積層構造を有する炭素材料を使用すると、充放電時における体積変化が大きく、その体積変化によって電極が損傷する問題、プロピレンカーボネート等との有機溶媒と接触すると積層構造に層間剥離が起こり、電池性能を低下させる問題も生じる。
【0010】
上記の通り、ナトリウムイオン二次電池は有用であるが、従来のナトリウムイオン二次電池は室温で使用できない点、負極活物質として使用する炭素材料に起因する電池性能低下の点で問題となる。このため、室温で使用可能であり、且つ負極活物質が原因となる電池性能の低下を抑えたナトリウムイオン二次電池が求められている。
【先行技術文献】
【0011】

【特許文献1】特開2007-35588号公報
【0012】

【非特許文献1】Journal of The Electrochemical Society, 148 (8) A803-A811 (2001)
【非特許文献2】Electrochimica Acta 47 (2002) 3303-3307
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、室温で使用可能であり、且つ負極活物質が原因となる電池性能の低下を抑えたナトリウムイオン二次電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、以上の課題を解決するために鋭意研究を重ねた。その結果、非水溶媒として実質的に飽和環状カーボネート(ただし、エチレンカーボネートの単独使用を除く)、又は飽和環状カーボネートと鎖状カーボネートとの混合溶媒を用い、負極活物質としてハードカーボンを用いることで上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。より具体的に、本発明は以下のものを提供する。
【0015】
(1) 正極と、負極活物質を有する負極と、非水溶媒を含む非水電解液とを備えるナトリウムイオン二次電池であって、前記非水溶媒が、実質的に飽和環状カーボネートからなるか、又は飽和環状カーボネートと鎖状カーボネートとの混合溶媒からなり(ただし、エチレンカーボネートの単独使用を除く)、前記負極活物質が、ハードカーボンであるナトリウムイオン二次電池。
【0016】
(2) 前記飽和環状カーボネートが以下の一般式(I)で表される化合物である(1)に記載のナトリウムイオン二次電池。
【化1】
JP0005800316B2_000002t.gif
(一般式(I)中のRは炭素数が2~4のアルキレン基である。)
【0017】
(3) 前記鎖状カーボネートが以下の一般式(II)で表される化合物である(1)又は(2)に記載のナトリウムイオン二次電池。
【化2】
JP0005800316B2_000003t.gif
(一般式(II)中のR、Rは互いに同一であっても、異なっていてもよく、炭素数3以下のアルキル基である。)
【0018】
(4) 前記非水溶媒が、実質的にプロピレンカーボネート、実質的にエチレンカーボネートとジエチルカーボネートとの混合溶媒、又は実質的にエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとの混合溶媒からなる非水溶媒である(1)から(3)のいずれかに記載のナトリウムイオン二次電池。
(5)正極と、負極活物質を有する負極と、非水溶媒を含む非水電解液と、セパレータ(ただし、耐熱多孔層と多孔質フィルムとが積層された積層多孔質フィルムでなるセパレータを除く)とを備えるナトリウムイオン二次電池であって、
前記非水溶媒が、実質的にプロピレンカーボネート、又は実質的にエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとの混合溶媒からなる非水溶媒であり、
前記負極活物質が、ハードカーボン(ただし、テトラフェニルカリックス[4]レゾルシナレーンを熱分解して得られたものを除く)であるナトリウムイオン二次電池。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、負極活物質としてハードカーボンを用いるため、負極活物質が原因となる電池性能の低下が非常に小さいナトリウムイオン二次電池が得られる。さらに、本発明のナトリウムイオン二次電池は、室温で使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1(a)】実施例1、参考例1~3で作製した電池の初回充放電曲線を示す図である。
【図1(b)】実施例1、参考例1~3で作製した電池のサイクル数と放電容量との関係を示す図である。
【図2(a)】実施例1~4で作製した電池の初回充放電曲線を示す図である。
【図2(b)】実施例1~4で作製した電池のサイクル数と放電容量との関係を示す図である。
【図3(a)】参考例4~6で作製した電池の初回充放電曲線を示す図である。
【図3(b)】参考例4~6で作製した電池のサイクル数と放電容量との関係を示す図である。
【図4(a)】参考例で作製した電池の初回充放電曲線を示す図である。
【図4(b)】参考例で作製した電池のサイクル数と放電容量との関係を示す図である。
【図5(a)】実施例1、5、6で作製した電池の初回充放電曲線を示す図である。
【図5(b)】実施例1、5、6で作製した電池のサイクル数と放電容量との関係を示す図である。
【図6(a)】実施例7、8で作製した電池の初回充放電曲線を示す図である。
【図6(b)】実施例7、8で作製した電池のサイクル数と放電容量との関係を示す図である。
【図7(a)】実施例で作製した電池の10サイクル目の充放電曲線を示す図である。
【図7(b)】実施例で作製した電池のサイクル数と放電容量との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。

【0022】
本発明のナトリウムイオン二次電池は、正極と、負極活物質を有する負極と、非水溶媒を含む非水電解液とを備えるナトリウムイオン二次電池である。本発明は、非水溶媒として実質的に飽和環状カーボネート(ただし、エチレンカーボネートの単独使用を除く)、又は飽和環状カーボネートと鎖状カーボネートとの混合溶媒を用い、負極活物質としてハードカーボンを用いる点が特徴である。以下、本発明のナトリウムイオン二次電池について、負極、正極、非水電解液の順に説明する。

【0023】
<負極>
負極は集電体と、その集電体の表面に形成された負極活物質及び結着剤を含む負極活物質層とを有する。

【0024】
[負極活物質層]
負極活物質層は、上記の通り負極活物質及び結着剤を含む。以下、負極活物質層に含まれる負極活物質、結着剤及びその他の成分について説明する。

【0025】
(負極活物質)
本発明で用いる負極活物質は、ハードカーボンである。負極活物質として、ハードカーボンを使用することで、負極活物質が原因となる電池性能の低下を抑えられる。また、ハードカーボンと、実質的に飽和環状カーボネート(ただし、エチレンカーボネートの単独使用を除く)、又は飽和環状カーボネートと鎖状カーボネートとの混合溶媒からなる非水溶媒とを組み合わせることで、ナトリウムイオン二次電池は、優れた充放電効率及び充放電特性を持つ。

【0026】
ハードカーボンは、2000℃以上の高温で熱処理してもほとんど積層秩序が変化しない炭素材料であり、難黒鉛化炭素ともよばれる。ハードカーボンとしては、炭素繊維の製造過程の中間生成物である不融化糸を1000~1400℃程度で炭化した炭素繊維、有機化合物を150~300℃程度で空気酸化した後、1000~1400℃程度で炭化した炭素材料等が例示できる。ハードカーボンの製造方法は特に限定されず、従来公知の方法により製造されたハードカーボンを使用することができる。

【0027】
ハードカーボンの平均粒径、真密度、(002)面の面間隔等は特に限定されず、適宜好ましいものを選択して実施することができる。

【0028】
負極活物質の好ましい含有量は、負極活物質層の質量に対して80~99質量%である。より好ましい含有量は、90~99質量%である。

【0029】
(結着剤)
使用可能な結着剤としては特に限定されず、従来公知の結着剤を使用することができる。具体的には、ポリフッ化ビニリデン(以下、PVDFということがある。)、ポリテトラフルオロエチレン(以下、PTFEということがある。)、四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン・フッ化ビニリデン系共重合体、六フッ化プロピレン・フッ化ビニリデン系共重合体、四フッ化エチレン・パーフルオロビニルエーテル系共重合体等が挙げられる。これらをそれぞれ単独で用いてもよいし、二種以上を混合して用いてもよい。結着剤のその他の例示としては、例えば、デンプン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルヒドロキシエチルセルロース、ニトロセルロース等の多糖類及びその誘導体等が挙げられる。また、結着剤として、無機の微粒子、例えばコロイダルシリカ等を挙げることもできる。

【0030】
結着剤の含有量は、負極活物質層の質量に対して、20~1質量%であることが好ましく、より好ましくは、10~1質量%である。

【0031】
(他の成分)
負極活物質層は、結着剤及び負極活物質以外に必要があれば、本発明の効果を害さない範囲で、さらにその他の成分を有してもよい。例えば、導電助剤、支持塩、イオン伝導性ポリマー等が挙げられる。また、イオン伝導性ポリマーが含まれる場合には、そのポリマーを重合させるための重合開始剤が含まれてもよい。また、これらの成分の配合比は特に限定されず、ナトリウムイオン二次電池についての公知の知見を適宜参照することにより調整されうる。

【0032】
[集電体]
集電体は、ニッケル、銅、ステンレス(SUS)等の導電性の材料を用いた箔、メッシュ、エキスパンドグリッド(エキスパンドメタル)、パンチドメタル等から構成される。メッシュの目開き、線径、メッシュ数等は、特に限定されず従来公知のものが使用できる。集電体の一般的な厚さは、5~30μmである。ただし、この範囲を外れる厚さの集電体を用いてもよい。

【0033】
集電体の大きさは、電池の使用用途に応じて決定される。大型の電池に用いられる大型の電極を作製するのであれば、面積の大きな集電体が用いられる。小型の電極を作製するのであれば、面積の小さな集電体が用いられる。

【0034】
[負極の製造方法]
本発明のナトリウムイオン二次電池に用いられる負極の製造方法は特に限定されず、従来公知の知見を適宜参照することにより製造することができる。以下、その負極に製造方法を簡単に説明する。

【0035】
負極は、例えば、負極活物質、結着剤、及び溶媒を含む負極活物質スラリーを調製し、その負極活物質を集電体に上に塗布し、乾燥させた後プレスすることで作製できる。

【0036】
より具体的には、先ず、ハードカーボン、結着剤、及び必要に応じて他の成分を溶媒中で混合して負極活物質スラリーを調製する。負極活物質スラリー中に配合される各成分の具体的な形態については、上述の通りであるため説明を省略する。溶媒の種類や混合手段は特に限定されず、従来公知の知見が適宜参照されうる。

【0037】
次いで、上記で調製した負極活物質スラリーを、上記で準備した集電体の表面に塗布し、塗膜を形成する。負極活物質スラリーを塗布するための塗布手段も特に限定されないが、例えば、自走型コータ等の一般的に用いられている手段が採用されうる。ただし、塗布手段をして、インクジェット方式、ドクターブレード方式、又はこれらの組み合わせを用いると、薄い層が形成されうる。

【0038】
次いで、集電体の表面に形成された塗膜を乾燥させる。これにより、塗膜中の溶媒が除去される。塗膜を乾燥させるための乾燥手段は特に限定されず、電極製造について従来公知の知見が適宜参照されうる。例えば、加熱処理等が挙げられる。乾燥条件(乾燥時間、乾燥温度等)は負極活物質スラリーの塗布量やスラリーの溶媒の揮発速度に応じて適宜設定される。

【0039】
次いで、上記で準備した塗膜をプレスする。プレス手段については特に限定されず、従来公知の手段が適宜採用されうる。プレス手段の一例を挙げると、カレンダーロール、平板プレス等が挙げられる。

【0040】
<正極>
本発明のナトリウムイオン二次電池に使用する正極としては、ナトリウム金属又は正極活物質と集電体とを有する正極等が挙げられる。必要な場合には、さらに他の成分を有する。正極の集電体は、非双極型集電体においてはアルミニウムが用いられる。双極型電池においてはステンレスが用いられる。

【0041】
[正極活物質]
正極活物質としては、特に限定されないが、ナトリウム-遷移金属複合酸化物が好ましい。ナトリウム-遷移金属複合酸化物としては、例えば、NaMn、NaNiO、NaCoO、NaFeO、NaNi0.5Mn0.5、NaCrO等が挙げられる。場合によっては二種類以上の正極活物質が併用されてもよい。

【0042】
[他の成分]
正極には、必要であれば正極活物質以外の成分が含まれてもよい。例えば、結着剤、導電助剤、支持塩、イオン伝導性ポリマー等が挙げられる。結着剤については、上記負極の説明の際に記載したものと同様のものを用いることができる。

【0043】
[正極の製造方法]
正極活物質と集電体とを有する正極の場合の正極の製造方法は、特に限定されないが、上記負極の製造と同様の方法で行うことができる。即ち、正極活物質、結着剤、及び必要に応じて他の成分を溶媒中で混合して正極活物質スラリーを調製し、調製した正極活物質スラリーを集電体表面に塗布して塗膜を形成させ、最後に塗膜を乾燥する方法で正極を製造することができる。

【0044】
<非水電解液>
本発明のナトリウムイオン二次電池では、実質的に飽和環状カーボネート(ただし、エチレンカーボネートの単独使用を除く)、又は飽和環状カーボネートと鎖状カーボネートとの混合溶媒からなる非水溶媒と電解質塩とを含む非水電解液が用いられる。

【0045】
[非水溶媒]
本発明のナトリウムイオン二次電池に用いられる非水溶媒は、実質的に飽和環状カーボネート(ただし、エチレンカーボネートの単独使用を除く)、又は飽和環状カーボネートと鎖状カーボネートとの混合溶媒からなることを特徴とする。負極活物質として上述のハードカーボンを用い、非水溶媒として実質的に飽和環状カーボネート(ただし、エチレンカーボネートの単独使用を除く)、又は飽和環状カーボネートと鎖状カーボネートとの混合溶媒を用いることで、ナトリウムイオン二次電池は、優れた充放電効率及び充放電特性を示す。また、非水溶媒として実質的に飽和環状カーボネート、又は飽和環状カーボネート(ただし、エチレンカーボネートの単独使用を除く)と鎖状カーボネートとの混合溶媒を用いることで、本発明のナトリウムイオン二次電池は、室温で使用可能な二次電池になる。

【0046】
「実質的に」とは、飽和環状カーボネートのみからなる非水溶媒(ただし、エチレンカーボネートの単独使用を除く)、飽和環状カーボネートと鎖状カーボネートとの混合溶媒からなる非水溶媒の他、充放電特性等のナトリウムイオン二次電池の性能に影響を与えない範囲で、他の溶媒を本発明に用いる上記非水溶媒に含んだ溶媒も含むことを指す。以下、飽和環状カーボネート、鎖状カーボネート、その他の溶媒の順で説明する。

【0047】
飽和環状カーボネートとしては、例えば、以下の一般式(I)で表される化合物が挙げられる。
【化3】
JP0005800316B2_000004t.gif
(一般式(I)中のRは炭素数が2~4のアルキレン基である。)

【0048】
上記一般式(I)で表される化合物とは、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネートである。

【0049】
鎖状カーボネートとしては、例えば、以下の一般式(II)で表される化合物が挙げられる。
【化4】
JP0005800316B2_000005t.gif
(一般式(II)中のR、Rは互いに同一であっても、異なっていてもよく、炭素数3以下のアルキル基である。)

【0050】
上記一般式(II)で表される化合物とは、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、エチルプロピルカーボネート、ジプロピルカーボネートである。

【0051】
その他の溶媒としては、テトラヒドロフラン等のエーテル,ヘキサン等の炭化水素,γ—ブチルラクトン等のラクトン、ビニレンカーボネートやエチレンサルファイトの様な(リチウムイオン電池で使用される)被膜形成添加剤、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。

【0052】
本発明に用いる非水溶媒として、実質的にプロピレンカーボネート、実質的にエチレンカーボネートとジエチルカーボネートとの混合溶媒、又は実質的にエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとの混合溶媒からなる非水溶媒を用いることで、ナトリウムイオン二次電池は、非常に優れたサイクル特性、非常に優れた電池性能を示す。

【0053】
上述の通り、本発明に用いる非水溶媒はエチレンカーボネートを含む場合がある。エチレンカーボネートは、常温で固体である。このため、非水溶媒としてエチレンカーボネートを単独で用いた場合には、常温で使用可能な二次電池にならない。しかし、エチレンカーボネートと鎖状カーボネートとの混合溶媒、又はエチレンカーボネートと他の飽和環状カーボネートとの混合溶媒にすることで、常温でも使用可能なナトリウムイオン二次電池になる。

【0054】
[電解質塩]
本発明に用いる電解質塩は、特に限定されず、ナトリウムイオン二次電池に一般的に用いられる電解質塩を使用できる。

【0055】
ナトリウムイオン二次電池に一般的に用いられる電解質塩としては、例えば、NaClO、NaPF、NaBF、CFSONa、NaAsF、NaB(C、CHSONa、CFSONa、NaN(SOCF、NaN(SO、NaC(SOCF、NaN(SOCF等を挙げることができる。なお、上記電解質塩のうち1種を用いてもよく、あるいは2種以上を組み合わせて用いてもよい。

【0056】
また、非水電解液中の電解質塩の濃度は、特に限定されないが、上記電解質塩の濃度は3~0.1mol/lであることが好まし、1.5~0.5mol/lであることがより好ましい。

【0057】
<ナトリウムイオン二次電池の構造>
本発明のナトリウムイオン二次電池の構造としては、特に限定されず、形態・構造で区別した場合には、積層型(扁平型)電池、巻回型(円筒型)電池等、従来公知のいずれの形態・構造にも適用しうるものである。また、ナトリウムイオン二次電池内の電気的な接続形態(電極構造)で見た場合、(内部並列接続タイプ)電池及び双極型(内部直列接続タイプ)電池のいずれにも適用しうるものである。
【実施例】
【0058】
以下、本発明について、実施例を挙げて詳細に説明する。なお、本発明は、以下に示す実施例に何ら限定されるものではない。
【実施例】
【0059】
<実施例1>
負極活物質である平均粒子径約10μmのハードカーボン(「カーボトロンP」、株式会社クレハ製)90質量%、結着剤であるポリフッ化ビニリデン10質量%からなる固形分に対し、溶媒であるNMP(N-メチルピロリドン)を適量添加して、負極活物質スラリーを調製した。
【実施例】
【0060】
一方、負極用の集電体として、ニッケルメッシュを準備した。準備した集電体の一方の表面に、上記で調製した負極活物質スラリーをドクターブレード法により塗布し、塗膜を形成させた。次いでこの塗膜を90℃中で真空乾燥させた。
【実施例】
【0061】
次いで、二極式のビーカー型及びコイン型ナトリウムイオン二次電池の作製を行った。作用極に上記のハードカーボンを用いて作製した電極を、対極にナトリウム金属を用意し、ビーカー型及びコイン型ナトリウムイオン二次電池を作製した。電池作製の際に使用した非水電解液は、1Mの電解質塩(NaClO)を非水溶媒(プロピレンカーボネート)に溶解させたものを用いた。また、ビーカー型及びコイン型ナトリウムイオン二次電池の作製はアルゴンを満たしたグローブボックス中にて行った。
【実施例】
【0062】
参考
1MのNaClOを、プロピレンカーボネートとジメチルカーボネートとを体積比1:1で混合した混合溶媒に溶解させた以外は、上記実施例1と同様の手法によりビーカー型ナトリウムイオン二次電池を作製した。
【実施例】
【0063】
参考
1MのNaClOを、プロピレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとを体積比1:1で混合した混合溶媒に溶解させた以外は、上記実施例1と同様の手法によりビーカー型ナトリウムイオン二次電池を作製した。
【実施例】
【0064】
参考
1MのNaClOを、プロピレンカーボネートとジエチルカーボネートとを体積比1:1で混合した混合溶媒に溶解させた以外は、上記実施例1と同様の手法によりビーカー型ナトリウムイオン二次電池を作製した。
【実施例】
【0065】
<評価1>
上記で作製した実施例1、参考例1~3の二極式ビーカー型電池の充放電評価を行った。各電極に対して電流密度が25mA/gの電流になるように設定し、0Vまで定電流充電を行った。充電後、各電極に対して電流密度が25mA/gの電流になるように設定し、2Vまで定電流放電を行った。なお、評価1の充放電は、温度25℃の条件下で行った。
【実施例】
【0066】
実施例1、参考例1~3で作製した電池の初回充放電曲線を図1(a)に、実施例1、参考例1~3で作製した電池のサイクル数と放電容量との関係を図1(b)に示した。
【実施例】
【0067】
図1(a)から、電池の初回充放電について、非水溶媒としてプロピレンカーボネートを使用した実施例1の電池と、非水溶媒としてプロピレンカーボネートと鎖状カーボネートとの混合溶媒を使用した参考の電池を比較すると、実施例1、参考例3の電池の放電容量は、参考の電池の放電容量と比較して高いことが確認された。また、図1(b)から実施例1の電池の放電容量は充放電を繰り返しても劣化しないことが確認された。また、参考の電池の放電容量は、充放電を繰り返しても劣化が非常に小さいことが確認された。
【実施例】
【0068】
<実施例
1MのNaClOを、プロピレンカーボネートとエチレンカーボネートとを体積比2:1で混合した混合溶媒に溶解させた以外は、上記実施例1と同様の手法によりビーカー型ナトリウムイオン二次電池を作製した。
【実施例】
【0069】
<実施例
1MのNaClOを、プロピレンカーボネートとエチレンカーボネートとを体積比1:1で混合した混合溶媒に溶解させた以外は、上記実施例1と同様の手法によりビーカー型ナトリウムイオン二次電池を作製した。
【実施例】
【0070】
<実施例
1MのNaClOを、プロピレンカーボネートとエチレンカーボネートとを体積比1:2で混合した混合溶媒に溶解させた以外は、上記実施例1と同様の手法によりビーカー型ナトリウムイオン二次電池を作製した。
【実施例】
【0071】
<評価2>
上記で作製した実施例の二極式ビーカー型電池の充放電評価を、評価1と同様の方法で行った。実施例1~4で作製した電池の初回充放電曲線を図2(a)に、実施例1~4で作製した電池のサイクル数と放電容量との関係を図2(b)に示した。
【実施例】
【0072】
図2(a)から、電池の初回充放電について、非水溶媒としてプロピレンカーボネートを使用した実施例1の電池と、非水溶媒としてプロピレンカーボネートとエチレンカーボネートとの混合溶媒を使用した実施例の電池を比較すると、実施例1、の電池の放電容量は、実施例の電池の放電容量と比較して高いことが確認された。また、図2(b)から実施例1~4の電池の放電容量は充放電を繰り返しても劣化しないことが確認された。
図1、2の結果から、非水溶媒が実質的にプロピレンカーボネートからなると、初回の放電容量が非常に高く、且つ充放電を繰り返しても放電容量が劣化しないことが確認された。
【実施例】
【0073】
参考
1MのNaClOを、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとを体積比1:1で混合した混合溶媒に溶解させた以外は、上記実施例1と同様の手法により二極式のビーカー型ナトリウムイオン二次電池を作製した。
【実施例】
【0074】
参考
1MのNaClOを、エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとを体積比1:1で混合した混合溶媒に溶解させた以外は、上記実施例1と同様の手法により二極式のビーカー型ナトリウムイオン二次電池を作製した。
【実施例】
【0075】
参考
1MのNaClOを、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとを体積比1:1で混合した混合溶媒に溶解させた以外は、上記実施例1と同様の手法により二極式のビーカー型ナトリウムイオン二次電池を作製した。
【実施例】
【0076】
<評価3>
上記で作製した参考例4~6の二極式ビーカー型電池の充放電評価を、評価1と同様の方法で行った。参考例4~6で作製した電池の初回充放電曲線を図3(a)に、参考例4~6で作製した電池のサイクル数と放電容量との関係を図3(b)に示した。
【実施例】
【0077】
図3(a)から、電池の初回充放電について、非水溶媒としてエチレンカーボネートと鎖状カーボネートとの混合溶媒を使用した参考例4~6の電池を比較すると、参考の電池の放電容量は、参考例4、5の電池の放電容量と比較して高いことが確認された。また、図3(b)から参考の電池の放電容量は充放電を繰り返しても劣化しないことが確認された。
図2、3から、室温では非水溶媒として単独使用が困難なエチレンカーボネートは、プロピレンカーボネートとの混合溶媒(実施例2の混合比)、又はジエチルカーボネートとの混合溶媒(混合比1:1)にして非水溶媒とすることで、電池の初回の放電容量が非常に高く、且つ充放電を繰り返しても電池の放電容量が劣化しないことが確認された。
また、図1、3から、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート等の飽和環状カーボネートと組み合わせる鎖状カーボネートとしては、ジエチルカーボネートが好ましいことが確認された。
【実施例】
【0078】
<参考例
1MのNaClOを、ブチレンカーボネートに溶解させた以外は、上記実施例1と同様の手法により二極式のビーカー型ナトリウムイオン二次電池を作製した。
【実施例】
【0079】
<参考例
1MのNaClOを、ブチレンカーボネートとジメチルカーボネートとを体積比1:1で混合した混合溶媒に溶解させた以外は、上記実施例1と同様の手法により二極式のビーカー型ナトリウムイオン二次電池を作製した。
【実施例】
【0080】
<評価4>
上記で作製した参考例の二極式ビーカー型電池の充放電評価を、評価1と同様の方法で行った。参考例で作製した電池の初回充放電曲線を図4(a)に、参考例で作製した電池のサイクル数と放電容量との関係を図4(b)に示した。
【実施例】
【0081】
図4(a)から、電池の初回充放電について、非水溶媒としてブチレンカーボネートを使用した参考例の電池と、非水溶媒としてブチレンカーボネートとジメチルカーボネートとの混合溶媒を使用した参考例の電池を比較すると、参考例の電池の放電容量は、参考例の電池の放電容量と比較して高いことが確認された。また、図4(b)から参考例の電池の放電容量は充放電を繰り返しても劣化しないことが確認された。
図1、4から、非水溶媒が実質的に飽和環状カーボネートからなると、初回の放電容量が非常に高く、且つ充放電を繰り返しても放電容量が劣化しないことが確認された。
【実施例】
【0082】
<実施例
1Mの電解質塩(NaPF)を非水溶媒(プロピレンカーボネート)に溶解させた以外は、上記実施例1と同様の手法により二極式のコイン型ナトリウムイオン二次電池を作製した。
【実施例】
【0083】
<実施例
1Mの電解質塩(NaTFSA)を非水溶媒(プロピレンカーボネート)に溶解させた以外は、上記実施例1と同様の手法により二極式のコイン型ナトリウムイオン二次電池を作製した。
【実施例】
【0084】
<評価5>
上記で作製した実施例5、6の二極式コイン型電池の充放電評価を、評価1と同様の方法で行った。実施例1、5、6で作製した電池の初回充放電曲線を図5(a)に、実施例1、5、6で作製した電池のサイクル数と放電容量との関係を図5(b)に示した。なお、図5(a)、(b)に示す実施例1の結果は、実施例1のコイン型ナトリウムイオン二次電池を評価した結果である。
【実施例】
【0085】
図5(a)から、電解質塩の種類によらず、初回の放電容量が高いことが確認された。図5(b)から、電解質塩の種類によらず、充放電を繰り返しても電池の放電容量が劣化しないことが確認された。
【実施例】
【0086】
<実施例
負極用の集電体として、銅箔を使用した以外は、上記実施例1と同様の手法により二極式のコイン型ナトリウムイオン二次電池を作製した。
【実施例】
【0087】
<実施例
負極用の集電体として、アルミニウム箔を使用した以外は、上記実施例1と同様の手法により二極式のコイン型ナトリウムイオン二次電池を作製した。
【実施例】
【0088】
<評価6>
上記で作製した実施例7、8の二極式コイン型電池の充放電評価を、評価1と同様の方法で行った。実施例7、8で作製した電池の初回充放電曲線を図6(a)に、実施例7、8で作製した電池のサイクル数と放電容量との関係を図6(b)に示した。
【実施例】
【0089】
図6(a)から、集電体の種類によらず、初回の放電容量が高いことが確認された。図6(b)から、集電体の種類によらず、充放電を繰り返しても電池の放電容量が劣化しないことが確認された。
【実施例】
【0090】
<実施例
対極にNaNi0.5Mn0.5を用い、1Mの電解質塩(NaTFSA)を非水溶媒(プロピレンカーボネート)に溶解させた以外は、上記実施例1と同様の手法により二極式のコイン型ナトリウムイオン二次電池を作製した。
【実施例】
【0091】
<評価7>
上記で作製した実施例の二極式コイン型電池の充放電評価を、評価1と同様の方法で行った。実施例で作製した電池の10サイクル目の充放電曲線を図7(a)に、実施例で作製した電池のサイクル数と放電容量との関係を図7(b)に示した。
【実施例】
【0092】
図7(a)から、正極にナトリウム-遷移金属複合酸化物を用いても、放電容量が高いことが確認された。図7(b)から充放電を繰り返しても電池の放電容量が劣化しないことが確認された。
図面
【図1(a)】
0
【図1(b)】
1
【図2(a)】
2
【図2(b)】
3
【図3(a)】
4
【図3(b)】
5
【図4(a)】
6
【図4(b)】
7
【図5(a)】
8
【図5(b)】
9
【図6(a)】
10
【図6(b)】
11
【図7(a)】
12
【図7(b)】
13