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明細書 :光発電可能な調光素子およびその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5831975号 (P5831975)
公開番号 特開2013-109076 (P2013-109076A)
登録日 平成27年11月6日(2015.11.6)
発行日 平成27年12月16日(2015.12.16)
公開日 平成25年6月6日(2013.6.6)
発明の名称または考案の名称 光発電可能な調光素子およびその製造方法
国際特許分類 G02F   1/153       (2006.01)
G02F   1/15        (2006.01)
H01L  31/0468      (2014.01)
H01L  31/072       (2012.01)
FI G02F 1/153
G02F 1/15 502
H01L 31/04 532C
H01L 31/06 400
請求項の数または発明の数 3
全頁数 11
出願番号 特願2011-252632 (P2011-252632)
出願日 平成23年11月18日(2011.11.18)
審査請求日 平成26年10月31日(2014.10.31)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】000125370
【氏名又は名称】学校法人東京理科大学
発明者または考案者 【氏名】杉山 睦
【氏名】藁澤 萌
個別代理人の代理人 【識別番号】100078754、【弁理士】、【氏名又は名称】大井 正彦
審査官 【審査官】右田 昌士
参考文献・文献 特開2000-340809(JP,A)
特開2010-232460(JP,A)
特表2005-525463(JP,A)
特開平08-225937(JP,A)
特開2010-267865(JP,A)
特開2010-271720(JP,A)
米国特許第6118572(US,A)
調査した分野 G02F 1/15 - 1/163
H01L 31/04 - 31/078
C23C 14/00 - 14/58
特許請求の範囲 【請求項1】
酸化還元反応によって可視光の透過率を変化させることができる調光機能層を有する調光素子であって、
調光機能層がp型のNiOからなり、
当該調光機能層が、透光性基板上に裏面電極層およびn型半導体層がこの順に積層された当該n型半導体層上に積層され、さらに当該調光機能層上に透明導電層が積層された構成を有し、
可視光の透過率が10%以下の遮光状態において、200~380nmの紫外光および380~780nmの可視光の両方によって光発電されることを特徴とする光発電可能な調光素子。
【請求項2】
前記調光機能層のキャリア密度が、1×1015~5×1018cm-3であることを特徴とする請求項1に記載の光発電可能な調光素子。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の光発電可能な調光素子の製造方法であって、
n型半導体層上に、不活性ガスおよびO2 ガスからなる混合ガス雰囲気中においてNiまたは酸化ニッケル類をスパッタすることにより、p型のNiOからなる調光機能層を形成する工程を有し、
前記混合ガスにおけるO2 ガス濃度が0.01~5体積%であることを特徴とする光発電可能な調光素子の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、光発電可能な調光素子およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、可視光の透過率を変化させることができる調光機能を有する調光素子が開発されており(非特許文献1参照。)、例えば、酸化還元反応によって可視光の透過率を変化させることができるNiOなどの調光材料(非特許文献2、3参照。)などが知られており、また、可視光を透過させた状態と可視光を透過させずに反射させた状態が切り替えられる調光ミラーとして、2つの透明導電膜間に液晶などの化合物を挿入した構成のもの(特許文献1、2参照。)や、マグネシウム・カルシウム合金薄膜を用いた構成のもの(非特許文献4参照。)などが提案されている。
【0003】
一方、エネルギー資源問題や地球環境問題に対応するための有望な技術として、太陽光発電が注目されており、近年は、例えば建築物や車の窓ガラス、ビニールハウスなどの採光部を太陽電池化して、採光しながら光発電をする技術が検討されている(例えば、特許文献3、4および非特許文献5参照。)。
【0004】
然るに、現在のところ、調光機能および光発電機能を共に備えた機能層を有し、透光状態であっても遮光状態であっても光発電をすることができる調光素子は知られていない。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特開2011-40344号公報
【特許文献2】特開2009-36967号公報
【特許文献3】特開2002-170967号公報
【特許文献4】特開2005-197204号公報
【0006】

【非特許文献1】河原秀夫、斎藤靖弘「光を制御するニューガラス」応用物理、第62巻、第4号、343-351ページ、1993年
【非特許文献2】Solar Energy Materials and Solar Cells 31 (1993) 291-299
【非特許文献3】Solid State Ionics 113-115 (1998) 449-456
【非特許文献4】プレスリリース 無色性と高い可視光透過率を両立した新規調光ミラー材料を開発、[online]2010年8月4日、産総研、[平成23年11月14日検索]、インターネット<URL:http://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2010/pr20100804/pr20100804.html>
【非特許文献5】プレスリリース 透明な太陽電池の試作に成功、[online]、2003年6月25日、産総研、[平成23年11月14日検索]、インターネット<URL:http://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2003/pr20030625/pr20030625.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、以上のような事情を考慮してなされたものであって、その目的は、可視光の透過率を変化させることができ、さらに、透光状態にあっても遮光状態にあっても光発電することができる光発電可能な調光素子およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の光発電可能な調光素子は、酸化還元反応によって可視光の透過率を変化させることができる調光機能層を有する調光素子であって、
調光機能層がp型のNiOからなり、
当該調光機能層が、透光性基板上に裏面電極層およびn型半導体層がこの順に積層された当該n型半導体層上に積層され、さらに当該調光機能層上に透明導電層が積層された構成を有し、
可視光の透過率が10%以下の遮光状態において、200~380nmの紫外光および380~780nmの可視光の両方によって光発電されることを特徴とする。
【0009】
本発明の光発電可能な調光素子においては、前記調光機能層のキャリア密度が、1×1015~5×1018cm-3であることが好ましい。
【0010】
本発明の光発電可能な調光素子の製造方法は、上記の光発電可能な調光素子の製造方法であって、
n型半導体層上に、不活性ガスおよびO2 ガスからなる混合ガス雰囲気中においてNiまたは酸化ニッケル類をスパッタすることにより、p型のNiOからなる調光機能層を形成する工程を有し、
前記混合ガスにおけるO2 ガス濃度が0.01~5体積%であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の光発電可能な調光素子によれば、特定の、p型のNiOよりなる調光機能層が備えられているために、可視光の透過率を変化させることができ、さらに、透光状態にあっても遮光状態にあっても光発電することができる。
また、本発明の製造方法によれば、上記の特定の、p型のNiOよりなる調光機能層を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の光発電可能な調光素子の構成の一例を示す説明用断面図である。
【図2】調光機能層サンプル〔α〕、調光機能層サンプル〔αH2 〕、調光機能層サンプル〔αO2 〕それぞれの透過スペクトルを示すグラフである。
【図3】調光機能層サンプル〔α〕、調光機能層サンプル〔αH2 〕、調光機能層サンプル〔αO2 〕それぞれのXRDパターンを示すグラフである。
【図4】調光素子〔1〕の波長領域280~1600nmの透過スペクトルを示すグラフである。
【図5】調光素子〔1〕のIV特性を示すグラフである。
【図6】調光素子〔1H2 〕のIV特定を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について具体的に説明する。

【0014】
〔光発電可能な調光素子〕
図1は、本発明の光発電可能な調光素子の構成の一例を示す説明用断面図である。
この光発電可能な調光素子10は、透光性基板15上に裏面電極層13が形成された当該裏面電極層13上にpn接合界面を有する光電変換層20が積層され、さらにこの光電変換層20上に透明導電層11が積層されてなる固体状のものである。
この光発電可能な調光素子10は、酸化還元反応によって可視光の透過率を変化させることができる調光機能を有すると共に、調光機能による可視光の透過率の程度に関わらず、すなわち、透光状態にあっても遮光状態にあっても光発電することができるものである。

【0015】
〔光電変換層〕
光電変換層20は、裏面電極層13上に形成されたn型半導体層20nと、当該n型半導体層20n上にpn接合するよう形成された、p型のNiOからなる調光機能層20pとよりなる。

【0016】
〔調光機能層〕
光電変換層20を構成する調光機能層20pは、p型のNiOからなるものである。ここに、NiOは、不純物をドーピングしない状態においてp型の性質を示すものであるが、調光機能層20pを構成するNiOは、不純物としてLi、Cuなどをドーピングさせたものであってもよい。

【0017】
調光機能層20pのキャリア密度は、1×1015~5×1018cm-3であることが好ましく、1×1016~5×1017cm-3であることがより好ましく、1×1017cm-3であることが特に好ましい。
調光機能層20pのキャリア密度が上記の範囲にあることにより、酸化状態において高い可視光の透過率が確実に得られる。

【0018】
本発明において、調光機能層20pのキャリア密度は、van der Pauw法によって、磁場を印加しない場合の電流と電圧の関係が直線的となる電流値に設定して25℃で0.75テスラの磁場を印加した状態で測定されるものである。

【0019】
また、調光機能層20pの抵抗率は、1×104 ~1×100 Ωcmであることが好ましく、1×103 ~1×102 Ωcmであることがより好ましい。

【0020】
調光機能層20pの厚みは、例えば100~1000nmとされることが好ましい。

【0021】
調光機能層20pは、酸化還元反応によって可視光の透過率を変化させる調光機能を発揮し、また、当該調光機能層20pは、p型半導体としての性質を有して光発電機能に係る正孔輸送作用を担うものでもある。すなわち、当該調光機能層20pを有することによって、本発明の光発電可能な調光素子10が調光機能および光発電機能を共に有するものとなる。

【0022】
調光機能層20pは、酸化または還元することによって可視光の透過率を任意に変化させることができる。具体的には、調光機能層20pを酸化することによって可視光の透過率を高くすることができ、還元することによって透過率を低くすることができる。
調光機能層20pの可視光の透過率の変化は、透光状態と遮光状態とを2値的に切り替える構成とされてもよく、任意の透過率となるよう制御することができる構成とされてもよい。

【0023】
本発明の光発電可能な調光素子10においては、調光機能層20pにおいて吸収される光が光発電に寄与する。具体的には、可視光の透過率が例えば10%以下の遮光状態の場合においては、おおよそ、調光機能層20pによって吸収された200~380nm程度の紫外光と、380~780nm程度の可視光との両方によって光発電され、一方、可視光の透過率が例えば80%程度の透光状態の場合においては、主に紫外光によって光発電される。

【0024】
〔n型半導体層〕
光電変換層20を構成するn型半導体層20nを形成する半導体としては、n型の性質を示すと共に、可視光を透過し、高抵抗のものであれば特に限定されず、具体的には、例えばZnO、MgZnO、In2 3 などの酸化物半導体が挙げられ、これらの2種以上よりなる複合体を用いることもできる。また、これらは2種以上を混合して用いることもできる。
n型半導体層20nを構成する半導体としては、酸化物半導体であるという材料面の理由と、pn接合界面のバンド不連続量や内蔵電界の大きさなどの半導体物性の理由とから、特にZnOを用いることが好ましい。

【0025】
n型半導体層20nのキャリア密度は、調光機能層20pと同等のキャリア密度であることが好ましく、例えば1×1015~5×1018cm-3であることが好ましく、1×1016~5×1017cm-3であることがより好ましく、1×1017cm-3であることが特に好ましい。

【0026】
n型半導体層20nの抵抗率は、1×104 ~1×100 Ωcmであることが好ましく、1×103 ~1×102 Ωcmであることがより好ましい。

【0027】
n型半導体層20nの厚みは、調光機能層20pと同等の厚みであることが好ましく、例えば100~1000nmとされることが好ましい。

【0028】
〔透光性基板〕
透光性基板15としては、可視光を透過することができ、裏面電極層13、n型半導体層20n、調光機能層20pおよび透明導電層11を保持することができる材料からなるものであればよく、例えばガラス、石英、プラスチックなど種々の材料よりなるものを用いることができる。透光性基板15は、板状のものであってもよいが、フィルム状やシート状のフレキシブルなものとすることもできる。

【0029】
透光性基板15の厚みは、特に限定されず材質や用途に応じて選択することができ、例えば1~50mmとすることができる。

【0030】
〔裏面電極層〕
透光性基板15の一面に形成される裏面電極層13は、可視光を透過し、かつ、導電性を示す膜であればよく、例えば、ITO(スズ添加酸化インジウム、In2 3 :Sn)、IZO(酸化インジウム・亜鉛、In2 3 :ZnO)、IGZO(酸化インジウムガリウム亜鉛)、FTO(フッ素添加酸化スズ、SnO2 :F)、AZO(アルミ添加酸化亜鉛、ZnO:Al)、GZO(ガリウム添加酸化亜鉛、ZnO:Ga)、導電性プラスチックなどよりなるものが挙げられる。

【0031】
裏面電極層13の厚みは、特に限定されないが、例えば100~3000nmとすることができる。

【0032】
〔透明導電層〕
透明導電層11は、ITO、IZO、IGZO、FTOなどのバンドギャップが3.7eV以上であるものよりなるものとすることができる。透明導電層11を構成する材料は、裏面電極層13を構成する材料と同じものであってもよく、異なるものであってもよい。

【0033】
透明導電層11の厚みは、特に限定されないが、例えば100~3000nmとすることができる。

【0034】
以上のような光発電可能な調光素子10によれば、特定のNiOよりなる調光機能層20pが備えられているために、可視光の透過率を変化させることができ、さらに、透光状態にあっても遮光状態にあっても光発電することができる。

【0035】
〔光発電可能な調光素子の製造方法〕
以上のような光発電可能な調光素子10は、例えば、透光性基板15上に、裏面電極層13、n型半導体層20n、調光機能層20pおよび透明導電層11の各層を、例えばRFマグネトロンスパッタ法、RFスパッタ法、DCマグネトロンスパッタ法、DCスパッタ法、パルスレーザー堆積(PLD)法などによって形成させることにより製造することができ、特に、各層を連続的に形成させる連続スパッタプロセスを経ることによって製造することが好ましい。
具体的には、例えばRFマグネトロンスパッタ法による各層の形成は、同一のRFマグネトロンスパッタ装置を用い、各層に係る適宜のターゲットを用いて、不活性ガスをプラズマソース源とし、O2 ガスを原料ガスとして、これらの混合ガスにおける各ガスの供給割合と総流量を調整して行うことができる。
不活性ガスとしては、特にArガスを用いることが好ましい。

【0036】
そして、本発明においては、連続スパッタプロセスにおける調光機能層20pの形成において、混合ガスにおけるO2 ガス濃度({O2 ガス/(不活性ガス+O2 ガス)}×100)は0.01~5体積%、好ましくは0.2~0.5体積%とされる。
混合ガスにおけるO2 ガス濃度が上記の範囲であることにより、調光機能層20pのキャリア密度を上記の範囲に調整することができ、その結果、当該調光機能層20pを酸化状態において高い可視光の透過率を得られるものとすることができる。
調光機能層20pの形成に用いられるターゲットはNiまたは酸化ニッケル類である。酸化ニッケル類としてはNiOやNiO2 などの種々の組成のものが挙げられる。

【0037】
また、n型半導体層20nの形成において、混合ガスにおけるO2 ガス濃度({O2 ガス/(不活性ガス+O2 ガス)}×100)は、例えば0~50体積%とすることが好ましく、さらには20~30体積%とすることが好ましい。
n型半導体層20nの形成に用いられるターゲットは、例えばZnOである。

【0038】
また、裏面電極層13および透明導電層11の形成において、混合ガスにおけるO2 ガス濃度({O2 ガス/(不活性ガス+O2 ガス)}×100)は、例えば0~3体積%とすることができる。
裏面電極層13および透明導電層11の形成に用いられるターゲットは、例えばITOである。

【0039】
以上のような製造方法によれば、連続スパッタプロセスを経ることにより、上記の特定のNiOよりなる調光機能層20pが形成された光発電可能な調光素子10を簡単に製造することができる。
しかも、積極的な加熱を要さないために、省エネルギー化が図られると共に、透光性基板15としてフレキシブルなシート状のプラスチックよりなるものを用いることにより、Roll-to-Roll法で製造することができ、工業上有利に製造することができる。
また、積極的な加熱を要さないことから、透光性基板15として耐熱性の小さい既存の太陽電池を選択することができ、これにより、積層型太陽電池を作製することができる。従って、例えば、色素増感型太陽電池は緑色や赤色などの多彩な色を発現するところ、例えば赤色の色素増感型太陽電池を透光性基板15として光発電可能な調光素子10を作製することにより黒色の積層型太陽電池を得ることができる。
また、有機溶剤、エッチング溶剤、特定高圧ガスなどの有害な物質を用いずに環境負荷を小さく抑制することができる。

【0040】
以上、本発明の光発電可能な調光素子について説明したが、本発明は上記の態様に限定されるものではなく、種々の変更を加えることができる。
【実施例】
【0041】
以下、本発明の具体的な実施例について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0042】
<実施例1>
裏面電極層、調光機能層、n型半導体層、および透明導電層を、RFマグネトロンスパッタ法によって連続的に形成させる連続スパッタプロセスを経て、それぞれ成長させた。
RFマグネトロンスパッタ法による各層の成長は、RFマグネトロンスパッタ装置(河合光学社製)を用い、電極に高周波(13.56MHz)を印加し、Arガス(純度99.9999%)をプラズマソース源とし、O2 ガス(純度99.99%)を原料ガスとして、これらからなる混合ガス中のO2 ガス濃度({O2 ガス/(Arガス+O2 ガス)}×100)と総流量を下記のように変化させ、また、適宜のターゲットを用いて行った。
また、透光性基板としては厚み1.0mmのソーダライムガラス基板(松浪硝子工業社製)を用いた。
【実施例】
【0043】
(1)裏面電極層の形成
ターゲットとして純度99.99%、φ=4inchのITO(日鉱金属社製)を用い、透光性基板上に、ITOを35分間成長させて裏面電極層〔A〕を形成した。
具体的な条件としては、RF出力を150W、ターゲット-基板間距離を11.5cmとし、成長中のO2 ガス濃度を1.0体積%、ガス総流量を15sccmとし、また、成長中の真空度を0.4Paとした。
得られた裏面電極層〔A〕の厚みは500nm(デポレートは0.2~0.3nm/s)であった。
【実施例】
【0044】
(2)n型半導体層の形成
ターゲットとして純度99.99%、φ=4inchのZnO(豊島製作所社製)を用い、裏面電極層〔A〕上にZnOを140分間成長させてn型半導体層〔B〕を形成した。
具体的な条件としては、RF出力を150W、ターゲット-基板間距離を17cmとし、成長中のO2 ガス濃度を30体積%、ガス総流量を50sccmとし、また、成長中の真空度を0.8Paとした。
得られたn型半導体層〔B〕の厚みは300nm(デポレートは0.03~0.04nm/s)であった。
【実施例】
【0045】
(3)調光機能層の形成
ターゲットとして純度99.6%、φ=4inchのNi金属(ジャパンメタルサービス社製)を用い、n型半導体層〔B〕上にNiOを270分間成長させて調光機能層〔C〕を形成した。
具体的な条件としては、RF出力を150W、ターゲット-基板間距離を17cmとし、成長中のO2 ガス濃度を0.5体積%、ガス総流量を110sccmとし、また、成長中の真空度を3.8Paとした。
得られた調光機能層〔C〕の厚みは500nm(デポレートは0.02~0.03nm/s)であった。
【実施例】
【0046】
(4)透明導電層の形成
ターゲットとして純度99.99%、φ=4inchのITO(日鉱金属社製)を用い、調光機能層〔C〕上に、ITOを35分間成長させて透明導電層〔D〕を形成し、これにより、調光素子〔1〕を得た。
具体的な条件としては、RF出力を150W、ターゲット-基板間距離を11.5cmとし、成長中のO2 ガス濃度を1.0体積%、ガス総流量を15sccmとし、また、成長中の真空度を0.4Paとした。
得られた透明導電層〔D〕の厚みは500nm(デポレートは0.2~0.3nm/s)であった。
【実施例】
【0047】
なお、上記の連続スパッタプロセス中、すなわち裏面電極層〔A〕、n型半導体層〔B〕、調光機能層〔C〕および透明導電層〔D〕の形成中の全期間にわたって、積極的な加熱は行わず、試料面の温度が70℃を超えることはなかった。
【実施例】
【0048】
<調光機能層サンプルの作製例1>
また、本発明の光発電可能な調光素子を構成する調光機能層の性能を確認するための実験を行うための調光機能層のみを有するサンプルを作製した。
具体的には、実施例1において、ソーダライムガラス基板上に、直接、調光機能層〔C〕のみを成長させた。このようにして得られたサンプルを調光機能層サンプル〔α〕とする。
【実施例】
【0049】
<実験例1:還元>
得られた調光素子〔1〕および調光機能層サンプル〔α〕について、水素アニールを行った。具体的には、1体積%のH2 ガスおよび99体積%のArガスからなる混合ガス中において、400℃で5分間加熱した。これらをそれぞれ調光素子〔1H2 〕および調光機能層サンプル〔αH2 〕とする。
【実施例】
【0050】
<実験例2:酸化>
水素アニールを行って得られた調光機能層サンプル〔αH2 〕に対して、酸素アニールを行った。具体的には、100体積%のO2 ガス中において、400℃で5分間加熱した。これを調光機能層サンプル〔αO2 〕とする。
【実施例】
【0051】
以上の調光機能層サンプル〔α〕、調光機能層サンプル〔αH2 〕および調光機能層サンプル〔αO2 〕について、それぞれ、透過スペクトル、および、XRDパターンを測定した。結果を図2および図3にそれぞれ示す。
図2は、調光機能層サンプル〔α〕、調光機能層サンプル〔αH2 〕、調光機能層サンプル〔αO2 〕それぞれの透過スペクトルを示すグラフであり、図中の「as depo」、「H2 anneal」、「O2 anneal」は、それぞれ調光機能層サンプル〔α〕、調光機能層サンプル〔αH2 〕、調光機能層サンプル〔αO2 〕を示す。
図3は、調光機能層サンプル〔α〕、調光機能層サンプル〔αH2 〕および調光機能層サンプル〔αO2 〕それぞれのXRDパターンを示すグラフであり、図中の「as depo」、「H2 anneal」、「O2 anneal」は、それぞれ調光機能層サンプル〔α〕、調光機能層サンプル〔αH2 〕、調光機能層サンプル〔αO2 〕を示す。
図4は、調光素子〔1〕の波長領域280~1600nmの透過スペクトルを示すグラフである。
【実施例】
【0052】
図2から明らかなように、本発明に係る調光素子においては、酸化反応および還元反応により、透光状態と遮光状態とに可逆的に変化させることができることが確認された。また、図3において、調光機能層サンプル〔αH2 〕のみに金属Niの存在が認められることから、水素アニールを行ったときだけ光が透過しなくなると考えられる。
また、図4から、調光素子〔1〕が可視光を高い割合で透過することが確認された。
【実施例】
【0053】
また、調光素子〔1〕および調光素子〔1H2 〕について、それぞれ、IV特性を測定し、光電変換効率を算出した。
具体的には、「ソーラーシミュレータ」(分光計器社製)を用いて、AM1.5、100mW/cm2 の擬似太陽光を照射しながら「6241型ソースメータ」(ADCMT社製)を用いてIV特性を測定して短絡電流、開放電圧、形状因子ffの値を得ると共に、これらの値を用いて下記式(1)により、光電変換効率を算出した。結果を図5および図6に示す。
式(1);光電変換効率(%)=[短絡電流値(mA/cm2 )×開放電圧値(V)×{形状因子ff/入射光(100mW/cm2 )}]×100
【実施例】
【0054】
調光素子〔1〕の光電変換効率は3.2×10-5%であり、調光素子〔1H2 〕の光電変換効率は1.4×10-6%であった。
図5は、調光素子〔1〕のIV特性を示すグラフである。
図6は、調光素子〔1H2 〕のIV特性を示すグラフである。
【実施例】
【0055】
図5および図6から明らかなように、本発明に係る調光素子においては、透光状態においても遮光状態においても光発電することができることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明の光発電可能な調光素子は、ブラインド機能を有する光発電窓ガラス、光発電することができる紫外線カットフィルター、遮光率を任意に変更することができる光発電ビニールハウス、スマートフォンなどの携帯機器におけるプライバシー保護機能を有する光発電表示部材、既存の太陽電池上に形成させた積層型太陽電池などとして利用することができる可能性がある。
【符号の説明】
【0057】
10 光発電可能な調光素子
11 透明導電層
13 裏面電極層
15 透光性基板
20 光電変換層
20n n型半導体層
20p 調光機能層


図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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