TOP > 国内特許検索 > 多結晶チタン酸バリウム粒子の製造方法 > 明細書

明細書 :多結晶チタン酸バリウム粒子の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5552603号 (P5552603)
公開番号 特開2012-155346 (P2012-155346A)
登録日 平成26年6月6日(2014.6.6)
発行日 平成26年7月16日(2014.7.16)
公開日 平成24年8月16日(2012.8.16)
発明の名称または考案の名称 多結晶チタン酸バリウム粒子の製造方法
国際特許分類 C01G  23/00        (2006.01)
G02F   1/137       (2006.01)
FI C01G 23/00 C
G02F 1/137 500
請求項の数または発明の数 2
全頁数 21
出願番号 特願2012-109120 (P2012-109120)
分割の表示 特願2007-227178 (P2007-227178)の分割、【原出願日】平成19年8月31日(2007.8.31)
出願日 平成24年5月11日(2012.5.11)
審査請求日 平成24年5月11日(2012.5.11)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】803000115
【氏名又は名称】学校法人東京理科大学
発明者または考案者 【氏名】木練 透
【氏名】柳橋 由貴子
個別代理人の代理人 【識別番号】100115842、【弁理士】、【氏名又は名称】秦 正則
審査官 【審査官】田澤 俊樹
参考文献・文献 特開平11-116242(JP,A)
特開2002-274850(JP,A)
国際公開第2000/035811(WO,A1)
特開昭62-283816(JP,A)
国際公開第2008/102785(WO,A1)
特開2007-269601(JP,A)
調査した分野 C01G 1/00-99/00
G02F 1/00-1/39
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
JSTChina(JDreamIII)
特許請求の範囲 【請求項1】
環状アミド構造を持つビニル系ポリマーで保護されたバリウム化合物とチタン化合物を撹拌混合して液相合成した後、乾燥処理して粉末状のチタン酸バリウムとし、得られた前記粉末状のチタン酸バリウムを焼成処理して結晶化することを特徴とする多結晶チタン酸バリウム粒子の製造方法。
【請求項2】
前記環状アミド構造を持つビニル系ポリマーと前記バリウム化合物のモル量の比(環状アミド構造を持つビニル系ポリマーのモル量/バリウム化合物のモル量=R)が、R=0.5~2.0であることを特徴とする請求項1に記載の多結晶チタン酸バリウム粒子の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、多結晶チタン酸バリウム粒子の製造方法に関する。さらに詳しくは、電力消費量の低減を図ることができる液晶材料組成物に用いられる多結晶チタン酸バリウム粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶パネルとも呼ばれる液晶電気光学装置は、いわゆるブラウン管(CRT/Cathode Ray Tube)と比較して軽量かつコンパクトな画像表示装置として、コンピュータ、電卓、時計等幅といった幅広い分野で使用されている。かかる液晶パネルは、液晶材料の外場(電場、熱等)の印加に対する液晶分子の配向状態の変化や相転移によって、液晶材料の光学的性質(干渉、散乱、回折、旋光、吸収等)が変化することを動作原理としているものである。
【0003】
液晶パネルの構成や駆動手段は、一般に、少なくとも一方が透光性を有し、間隔が所定距離に保たれた2枚の基板の間に液晶材料を挟み、かかる2枚の基板の両方又はいずれか一方に形成された電極により液晶材料に電界を印加して液晶分子の配向状態を基板面内の画素毎に制御し、液晶パネルを透過する光量を制御することで画像表示を行うものである。また、液晶電気光学装置には、このような、液晶セルの外側に偏光板が配設され、その偏光板を通過した光(偏光)を利用して画像表示を行う偏光利用型と、偏光板を直接の構成要素とせず、偏光を利用しないで画像表示を行う偏光非利用型とが存在する。
【0004】
偏光利用型の液晶パネルで用いられる液晶表示モードとしては、例えば、電界印加時と電界非印加時の液晶材料の配向状態の違いによる液晶セルの液晶層の光の旋光性、光の干渉、光の複屈折率の違いを利用して、または液晶層に添加された二色性色素による光吸収を利用して、液晶層を通過する偏光の進行方向や波長を変えて画像表示を行うモードが知られている。液晶パネルで広く用いられている液晶表示モードとしては、TN(Twisted Nematic)型やSTN(Super Twisted Nematic)型というもので、これらはそれぞれ液晶材料の旋光性、複屈折光の干渉といった光学的性質を利用している。
【0005】
また、偏光利用型の液晶パネルで用いられるこれ以外の液晶表示モードとしては、例えば、ECB(Electrically Controlled Birefringence)、VAN(Vertically Aligned Nematic)、HAN(Hybrid Aligned Nematic)、IPS(In-Plane Switching)、BN(Bent Nematic)、OCB(Optically Compensated Bent)、GH(Guest Host)、BSN(Bistable Nematic)、EC(Electroclinic)、SSFLC(Surface Stabilized FLC)、AFLC(Anti FLC)、及びPSV-FLC(Polymer Stabilized FLC)等の液晶表示モードが知られている。
【0006】
前記したような偏光利用型の液晶パネルで画像を表示させる場合にあっては、数多くの画素を同時に動作制御するために、種々の方法が提案されている。この中でアクティブマトリクス駆動が高画質、高密度の表示が可能な方法として、広く用いられている。これは、各画素に非線型能動素子(ダイオード、トランジスタ等)を配置して、各画素を電気的に独立した関係になるようにし、余分な信号の干渉を排除し高画質を実現することを目的とするものである。また、この方法によれば各画素は電気的スイッチが接続されたコンデンサとして見ることができる。従って、必要に応じてスイッチをオン/オフさせることで画素に電荷を注入/流出させることができる。さらに、スイッチをオフにすれば画素に電荷を保持されるためメモリー性を付与することが可能となる。
【0007】
偏光利用型の液晶電気光学装置は、偏光非利用型の液晶電気光学装置と比較して、駆動電圧が低く、高いコントラスト比が実現可能で、さらに表示応答速度が速い等の利点があるため、時計や携帯電話等の電池で作動する携帯用電気機器、パーソナルコンピュータ、電子ペーパ及びテレビ等の画像表示装置に広く用いられている。このように、偏光利用型の液晶電気光学装置は、電力消費量の低減のために駆動電圧が低電圧であること、及び表示応答速度が速いことが特徴であるが、これらを実現するためには、液晶セルを構成する液晶材料について強誘電性を備えた材料を使用する場合が多く、液晶材料として強誘電性粒子を分散させた材料や、このような材料を用いた液晶セルないしは液晶電気光学装置が提供されている(例えば、特許文献1~特許文献6を参照。)。
【先行技術文献】
【0008】

【特許文献1】特開昭63-96629号公報
【特許文献2】特開昭63-228125号公報
【特許文献3】特開2005-352415号公報
【特許文献4】特表2005-515495号公報
【特許文献5】特開2006-154778号公報
【特許文献6】特開2006-309082号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、前記した従来の液晶材料等は、強誘電性粒子を分散させているものの期待通りに駆動電圧が低くならなかったり、また、応答速度が速くならない場合もあるため、改善が望まれていた。
【0010】
本発明は、前記の課題に鑑みてなされたものであり、駆動電圧の低減化及び表示応答速度の高速化が確実になされ、電力消費量の低減を図ることができる液晶材料組成物に用いられる多結晶チタン酸バリウム粒子の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の請求項1に係る多結晶チタン酸バリウム粒子の製造方法は、環状アミド構造を持つビニル系ポリマーで保護されたバリウム化合物とチタン化合物を撹拌混合して液相合成した後、乾燥処理して粉末状のチタン酸バリウムとし、得られた前記粉末状のチタン酸バリウムを焼成処理して結晶化することを特徴とする。
【0015】
本発明の請求項2に係る多結晶チタン酸バリウム粒子の製造方法は、前記した請求項1において、前記環状アミド構造を持つビニル系ポリマーと前記バリウム化合物のモル量の比(環状アミド構造を持つビニル系ポリマーのモル量/バリウム化合物のモル量=R)が、R=0.5~2.0であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明の請求項1に係る多結晶チタン酸バリウム粒子の製造方法は、環状アミド構造を持つビニル系ポリマーで保護されたバリウム化合物とチタン化合物を撹拌混合して液相合成して、乾燥して得られた乾燥粉体を焼成処理して結晶化するので、一般的な固相反応法を採用した場合と比較して低温で焼成・焼結させることができるとともに、環状アミド構造を持つビニル系ポリマーを用いることにより、平均1次粒子径が100nm以下の多結晶チタン酸バリウム粒子を簡便に得ることができる。また、本発明の請求項1に係る多結晶チタン酸バリウム粒子の製造方法は、有機保護剤として環状アミド構造を持つビニル系ポリマーを採用するので、比較的弱い吸着力により、バリウム化合物を被覆保護することにより、当該バリウム化合物を安定化させ、反応系内で容易に分散させることができる。
【0022】
本発明の請求項2に係る多結晶チタン酸バリウム粒子の製造方法は、環状アミド構造を持つビニル系ポリマーとバリウム化合物のモル量の比が特定範囲であるので、環状アミド構造を持つビニル系ポリマーとバリウム化合物の量が適度であり、バリウム化合物ないしは生成物である多結晶チタン酸バリウムを環状アミド構造を持つビニル系ポリマーで確実に保護することができ、析出した多結晶チタン酸バリウム粒子の分散性等も良好となり、得られる多結晶チタン酸バリウム粒子の平均粒径を小さく、粒度分布も狭くすることができる。また、副生物の生成を抑えることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の液晶電気光学装置の一態様を示した断面図である。
【図2】本発明の液晶電気光学装置の他の態様を示した断面図である。
【図3】本発明の液晶電気光学装置のもう一つの態様を示した断面図である。
【図4】参考例1で得られたチタン酸バリウム粒子のX線回折スペクトルを示した図である。
【図5】参考例2で得られたチタン酸バリウム粒子のX線回折スペクトルを示した図である。
【図6】参考例3で得られたチタン酸バリウム粒子のX線回折スペクトルを示した図である。
【図7】参考例4で得られたチタン酸バリウム粒子のX線回折スペクトルを示した図である。
【図8】参考例5で得られたチタン酸バリウム粒子のX線回折スペクトルを示した図である。
【図9】参考例6で得られたチタン酸バリウム粒子のX線回折スペクトルを示した図である。
【図10】参考例1で得られたチタン酸バリウム粒子の900℃焼成におけるFE-SEM観察結果を示した図である。
【図11】参考例2で得られたチタン酸バリウム粒子の900℃焼成におけるFE-SEM観察結果を示した図である。
【図12】参考例5で得られたチタン酸バリウム粒子の900℃焼成におけるFE-SEM観察結果を示した図である。
【図13】参考例6で得られたチタン酸バリウム粒子の900℃焼成におけるFE-SEM観察結果を示した図である。
【図14】試験例1における実施例1のV-T曲線を示した図である。
【図15】試験例1における比較例1のV-T曲線を示した図である。
【図16】試験例1における実施例1の応答速度を示した図である。
【図17】試験例1における比較例1の応答速度を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の液晶材料組成物は、有機保護剤で保護された、平均1次粒子径が100nm以下の多結晶チタン酸バリウム粒子が、液晶材料中に分散されていることによりなる。

【0027】
(I)多結晶チタン酸バリウム粒子:
液晶材料組成物を構成する多結晶チタン酸バリウム粒子は、チタン原子(Ti)を中心とし、八面体の各頂点に酸素原子(O)を配した骨格の隙間部分にバリウム原子(Ba)が入り込んだ結晶構造、いわゆるペロブスカイト構造を持っている人工鉱物である。チタン酸バリウムは、代表的な強誘電性化合物で、その強誘電性に基づく極めて高い比誘電率や圧電定数を持つことから、例えば、積層セラミックコンデンサ等の誘電体材料として広く使用されている。

【0028】
強誘電性粒子となる多結晶チタン酸バリウム粒子は、液晶材料組成物に分散されることにより、電気・光学特性を向上させる。また、多結晶チタン酸バリウム粒子は、液晶電気光学装置の液晶層を構成する液晶材料に分散させることにより、電界の印加によって分極し、液晶層全体の誘電率やその異方性を変化させ、かかる変化が液晶電気光学装置の駆動電圧の低減や高速応答をもたらすことができる。一方、強誘電性粒子は、一般に、ヒトの肉眼での視覚限界よりも小さく、液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)の外観に害を及ぼすことなく、増大された速度及び電界に対する感受性が要求される。よって、多結晶チタン酸バリウム粒子は、液晶の配向を乱すことなく液晶材料に分散されるように、十分に小さい粒径でなければならず、本発明にあっては、平均1次粒子径は約100nm以下とされ、5~50nmであることが好ましく、20~50nmであることが特に好ましい。なお、本発明において、「平均1次粒子径」とは、フィールドエミッション型走査型電子顕微鏡(FE-SEM)等を用いて得られた写真から100個を取り出し、平均することで求めた値とすればよい。

【0029】
ここで、本発明の液晶材料組成物に適用される多結晶チタン酸バリウムのような多結晶体(PolyCristaline)とは、結晶のどの位置であっても結晶軸の方向が変わらない単結晶(Single Cristal、monocristal)の集合体である。このように、多結晶体は、複数の単結晶体から構成されるので、隣接する単結晶体との間に結晶粒界と呼ばれる界面が存在する。本発明にあっては、多結晶体のチタン酸バリウム粒子を用いることにより、単結晶体の粒子と比較して、液晶材料として用いた場合に駆動電圧の低減化及び表示応答速度の高速化が可能となる。なお、一般に、単結晶体は作製することが非常に困難であり、また、機械的な粉砕処理が不可欠であるために、不純物等の混入も避けることが困難である。一方、後記するような液相合成法で作製した多結晶チタン酸バリウムは安価であり、不純物の混入も避けることが容易である。

【0030】
本発明の液晶材料組成物に適用される、平均1次粒子径が100nm以下の多結晶チタン酸バリウム粒子を簡便に得るためには、有機保護剤で保護されたバリウム化合物とチタン化合物を撹拌混合して液相合成した後、焼成処理して結晶化する方法を用いればよい。かかる方法を採用すれば、有機保護剤を用いることにより、平均1次粒子径が100nm以下の多結晶チタン酸バリウム粒子を簡便に得ることができるとともに、一般的な固相反応法を採用した場合と比較して低温で焼成・焼結させることができる。なお、多結晶チタン酸バリウム粒子が有機保護剤で保護された場合、粒子をより細かなものとすることができる一方、液晶材料組成物中での分散性も向上させることができる。

【0031】
かかる多結晶チタン酸バリウム粒子の製造方法において、バリウム源となるバリウム化合物としては、例えば、炭酸バリウム、バリウムアルコキシド、酢酸バリウム、水酸化バリウム、塩化バリウム、硫酸バリウム、硝酸バリウム等が挙げられる。また、チタン源となるチタン化合物としては、例えば、二酸化チタン、水酸化チタン、チタンアルコキシド、塩化チタン、硫酸チタン等が挙げられる。使用されるバリウム化合物とチタン化合物は、そのモル比を、バリウム化合物/チタン化合物=0.95/1~1.10/1程度としておけばよく、両者を等モルで使用することが好ましい。

【0032】
液相合成を実施するに際しては、バリウム化合物は、有機保護剤で保護することにより、水溶液中でバリウム(Ba)イオンの表面が覆されるため、分散状態を保持したまま
加水分解速度を抑制しつつ、チタン(Ti)イオンと酸素(O)を介した結合を形成することができる。また、バリウム(Ba)イオンの表面を覆することにより、長期にわたり凝集することがなく、生成される多結晶チタン酸バリウム粒子の焼成時の凝集を抑制し、生成される粒子の粒径を小さくすることが可能となり、平均粒子径が100nm以下の多結晶チタン酸バリウム粒子を得ることができる。一方、有機保護剤が存在しない場合は、バリウム(Ba)イオンが選択的に加水分解してしまい、水酸化物として凝集し、一部は炭酸バリウムとなり、粒子が大きいままチタン(Ti)と固相反応を起こすため、平均粒子径が100nm以下の多結晶チタン酸バリウム粒子を得ることができない場合がある。使用可能な有機保護剤としては、例えば、ポリビニルピロリドン(Polyvinylpyrrolidone:PVP)(CNO)等の環状アミド構造を有するビニル系ポリマーを使用する。環状アミド構造を有するビニルポリマーを使用すれば、当該環状アミド構造を有するビニルポリマーは窒素(N)元素に不対電子を有しており、2価の陽イオンであるバリウム(Ba)イオンを配位させやすいために、バリウムの加水分解速度を制御できるため好ましい。

【0033】
多結晶チタン酸バリウム粒子を合成する際に使用される有機保護剤の分子量(重量平均分子量:M)は、生成される多結晶チタン酸バリウム粒子の平均粒径(平均1次粒子径)及び粒度分布を制御することができ、有機保護剤の分子量を、10000~400000とすることが好ましい。有機保護剤の分子量をかかる範囲とすれば、多結晶チタン酸バリウム粒子の平均1次粒子径を小さく(例えば、5~50nm)、かつ粒度分布を狭くすることができるため、5~50nm、好ましくは20~50nm程度の小さい平均1次粒子径の揃った多結晶チタン酸バリウム粒子を得ることができる。有機保護剤の分子量は、35000~360000とすることが特に好ましい。

【0034】
また、液相合成を実施するに際し、有機保護剤のモル数とバリウム化合物のモル量との関係として、バリウム化合物と有機保護剤のモル量の比(R)が、有機保護剤のモル量/バリウム化合物のモル量=0.5~2.0とすることが好ましい。Rをかかる範囲とすれば、有機保護剤とバリウム化合物の量が適度であり、バリウム化合物ないしは生成物である多結晶チタン酸バリウム粒子を有機保護剤で確実に保護することができ、多結晶チタン酸バリウム粒子の分散性等も良好となる。また、得られる多結晶チタン酸バリウム粒子の平均粒径を小さく、粒度分布も狭くすることができる。さらに、副生物である炭酸バリウム(BaCO)等の生成を抑えることができる。これに対して、Rが0.5より小さいと、バリウム化合物の量が多すぎるため、バリウムを有機保護剤で確実に保護することができずに、分散性が悪くなる場合があり、一方、Rが2.0を超えると、バリウム化合物の量が少なすぎ、溶液中に含まれるバリウムの濃度が低下してしまい、粘性も高くなる等といった点で問題となる場合がある。R(有機保護剤のモル量/バリウム化合物のモル量)=0.8~1.6とすることがさらに好ましく、R=0.8~1.2とすることが特に好ましい。

【0035】
液相合成を実施してチタン酸バリウムを生成するに際し、バリウム源となるバリウム化合物、及びチタン源となるチタン化合物は、それぞれ水、アルコール等、バリウム化合物及びチタン化合物の構造に対応した溶剤等を溶媒として選択してバリウム化合物水溶液とチタン化合物水溶液とし、このバリウム化合物水溶液とチタン化合物水溶液を用いて、混合、撹拌、乾燥等を行い、液相合成を実施すればよい。なお、本発明にあっては、バリウム化合物は、塩酸や酢酸等の酸性触媒を含むメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等の1価のアルコール化合物やエチレングリコール等の多価アルコール化合物等の溶媒に溶解させてバリウム化合物水溶液に、また、チタン化合物は、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等の1価のアルコール化合物等の溶媒に溶解させてチタン化合物水溶液にすればよい。なお、有機保護剤は、バリウム化合物水溶液に混合させておくことが好ましいが、後工程でバリウム化合物水溶液とチタン化合物水溶液を添加して混合することを考慮すれば、チタン化合物水溶液に添加しておくようにしてもよい。

【0036】
バリウム化合物水溶液とチタン化合物水溶液は、混合するに際して、-50~0℃で冷却混合することが好ましい。冷却混合を行うことにより、バリウム(Ba)とチタン(Ti)の加水分解反応を抑制することができる。一方、冷却混合を行わなかった場合には、バリウム化合物中のバリウム(Ba)が炭酸バリウムとして分離する場合がある。冷却混合は、10分~1時間程度行えばよい。

【0037】
また、冷却混合を実施する反応系には、水や1価のアルコールを加えることにより、加水分解反応を抑制させることができる。なお、水や1価のアルコールは、その1種を単独で使用してもよく、あるいはその2種以上を組み合わせて使用してもよい。

【0038】
バリウム化合物とチタン化合物の縮重合を進行させ、チタン酸バリウムにおけるBa-O-Tiの結合を確実に形成させるためには、冷却混合後に撹拌処理を施すことが好ましい。かかる撹拌処理は、まず、室温での撹拌処理(室温撹拌処理)を20~80時間程度行い、その後、40~80℃での撹拌処理(加熱撹拌処理)を20~50時間程度行うことが好ましい。

【0039】
なお、室温撹拌処理により、チタン酸バリウムにおけるBa-O-Tiの結合が徐々に形成されることになるが、溶媒の飛散を防止すべく、密閉状態で撹拌処理を行うようにしてもよい。また、加熱撹拌処理にあっては、水溶液中のバリウム化合物とチタン化合物の縮重合がさらに進行し、溶媒や、加水分解によって生成したアルコールが除去されることにより、チタン酸バリウムのゲル化物が形成される。

【0040】
加熱処理後のゲル化物は乾燥処理することにより、粉末状のチタン酸バリウムを得ることができる。ゲル化物における水分等を除去するためには、例えば、100~150℃で20~50時間加熱して乾燥処理すればよい。また、エバポレータ等で溶剤を除去して、減圧乾燥等の乾燥処理を施すようにしてもよい。

【0041】
得られた粉末状のチタン酸バリウムは、焼成処理することにより焼結・結晶化され、多結晶チタン酸バリウム粒子となる。かかる焼成処理は、本焼成処理のみの一段階の焼成処理としてもよく、また、その前処理として、本焼成処理と比較して加熱温度が低い仮焼成処理を実施した後、本焼成処理を実施する多段階の焼成処理としてもよい。仮焼成処理及び本焼成処理とも、電気炉等の公知の加熱手段により実施することができる。これらの焼成処理は、空気または酸素ガス雰囲気下で行うことが好ましい。

【0042】
焼成処理条件として、仮焼成処理は、加熱温度を300~500℃とすることが好ましく、400~450℃とすることが特に好ましい。また、加熱時間は、5~15時間とすることが好ましく、10~15時間とすることが特に好ましい。

【0043】
一方、本焼成処理は、加熱温度を600~1000℃とすることが好ましく、800~900℃とすることが特に好ましい。また、加熱時間は、2~10時間とすることが好ましく、4~7時間とすることが特に好ましい。

【0044】
(II)液晶材料:
本発明の液晶材料組成物において用いる液晶材料は、誘電率異方性が正であっても負であってもよい。液晶材料の例としては、従来公知のネマチック液晶化合物、カイラルネマチック液晶化合物、スメクテック液晶化合物、強誘電性液晶化合物、反強誘電性液晶化合物、OCB液晶、及びこれらの液晶化合物を高分子化したもの等を挙げられる。また、液晶材料は、棒状であっても円盤状であってもよい。

【0045】
また、液晶材料に多結晶チタン酸バリウム粒子を分散させる方法としては、多結晶チタン酸バリウム粒子が分散されている粒子分散スラリーと液晶材料を混合した後、粒子分散スラリーを蒸発除去する方法を利用することができる。なお、液晶材料と粒子分散スラリーとの混合には、攪拌装置や超音波分散装置等の従来公知の混合装置を用いることができる。

【0046】
多結晶チタン酸バリウム粒子を分散させるために使用される粒子分散スラリーとしては、例えば、炭素原子数が3~5の1価アルコールを用いることが好ましい。1価アルコールの例としては、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、イソブチルアルコール、sec-ブチルアルコール、tert-ブチルアルコール、ペンチルアルコール、イソペンチルアルコールを挙げることができる。また、n-ヘプタン(n-C16)も使用することができる。粒子分散スラリーには、分散剤を添加してもよい。分散剤としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセロール、チオグリセロール等の多価アルコールやオレイン酸等を用いることができる。

【0047】
本発明の液晶材料組成物における多結晶チタン酸バリウム粒子の含有量は、液晶材料100質量部に対して0.001~1.0質量部であることが好ましい。多結晶チタン酸バリウム粒子の含有量をかかる範囲とすることにより、液晶材料に対する多結晶チタン酸バリウムの量が適量となり、無添加時の液晶材料の特性を低下させることなく、多結晶チタン酸バリウム粒子を均一に分散することができる。一方、多結晶チタン酸バリウム粒子の含有量が0.001質量部より小さいと、多結晶チタン酸バリウム粒子を添加した効果が現れない場合があり、また、多結晶チタン酸バリウム粒子の含有量が1.0質量部を超えると、液晶材料の粘度が増加し、流動性を失う場合がある。多結晶チタン酸バリウム粒子の含有量は、液晶材料100質量部に対して、0.001~0.5質量部であることがさらに好ましく、0.001~0.1質量%であることが特に好ましい。

【0048】
(III)液晶電気光学装置:
図1ないし図3を用いて、本発明の液晶電気光学装置を説明する。本発明の液晶電気光学装置は、偏光を利用する液晶表示モードにより画像表示を行う、いわゆる偏光利用型の液晶電気光学装置であって、液晶層を有する液晶セルと、液晶セルの少なくとも一方の外側に配設される偏光板を備え、液晶セルの液晶層が、前記した本発明の液晶材料組成物から構成される。

【0049】
本発明の液晶電気光学装置において、その駆動方式にはスタテッィク駆動方式、単純マトリックス駆動方式及びアクティブマトリックス駆動方式等の公知の駆動方式を用いることができる。また、液晶電気光学装置への電界の印加方式としては、例えば、オーバードライブ方式を利用することができる。

【0050】
図1は、本発明の液晶電気光学装置1の一態様を示した断面図であり、2枚の偏光板を備えた液晶電気光学装置の構成を示した図である。図1において液晶電気光学装置1は、液晶セル11と当該液晶セル11の上下両側に配設される2枚の偏光板121,122とからなる。液晶セル11は、図1の下(図1の※の位置)から順に透明基板131、電極層141、配向層151、多結晶チタン酸バリウム粒子(図示せず)が分散されている液晶層16、配向層152、電極層142、透明基板132からなる。なお、光出射側の透明基板131と偏光板121との間には、図示しないカラーフィルターや位相差板を挿入配設してもよい。かかる図1に示す液晶電気光学装置1において用いられる液晶表示モードは、例えば、前記したTNモード、STNモード、VAモード、VANモード、OCBモード、PSV-FLCモード等が挙げられる。

【0051】
図2は、本発明の液晶電気光学装置の他の態様を示した断面図であり、2枚の偏光板を備えた液晶電気光学装置の構成を示した図である。図2において液晶電気光学装置1は、液晶セル11と当該液晶セルの上下両側に配設される偏光板121、122とからなる。液晶セル11は、図2の下(※の位置)から順に透明基板131、一対の電極層141,142、配向層151、多結晶チタン酸バリウム粒子(図示せず)が分散されている液晶層16、配向層152、透明基板132からなる。この液晶電気光学装置1では、透明基板121に対して水平方向の電界を用いて液晶材料の配列状態を変化させることにより画像表示を行う。このような液晶表示モードは、前記したIPSモードと呼ばれている。

【0052】
図3は、本発明の液晶電気光学装置のもう一つの態様を示した断面図であり、1枚の偏光板を備えた液晶電気光学装置の一例の構成を示した図である。図3において液晶電気光学装置1は、液晶セル11と、当該液晶セル11の上側に配設された偏光板12とからなる。液晶セル11は、図3の下(※の位置)から順に透明基板131、電極層141、配向層151、多結晶チタン酸バリウム粒子(図示せず)が分散されている液晶層16、配向層152、電極層142、透明基板132からなる。なお、この液晶電気光学装置1では、液晶層16に2色性色素(図示せず)が分散されていて、液晶材料とともに2色性色素の配列を変化させて、液晶セル11の光の吸収率を変化させることにより画像表示を行う。この液晶表示モードは、前記したGHモードと呼ばれている。

【0053】
本発明の液晶電気光学装置は、装置を構成する液晶セルの液晶層が、平均1次粒子径が100nm以下の多結晶チタン酸バリウム粒子が分散されている本発明の液晶材料組成物を備えているので、駆動電圧の低減化及び表示応答速度の高速化が確実になされ、電力消費量の低減を図ることができる偏光利用型の液晶電気光学装置となる。かかる本発明の液晶電気光学装置は、例えば、時計や携帯電話等の電池で作動する携帯用電気機器用の小型液晶ディスプレイ、パーソナルコンピュータ、電子ペーパ及び大型テレビ用の液晶ディスプレイ等の直視型液晶表示装置として利用することができる。また、電気光学部品として、液晶プロジェクタ(投写型液晶表示装置)の光学素子や、光通信における光変調電気光学部品としても利用することができる。

【0054】
なお、以上説明した態様は、本発明の一態様を示したものであって、本発明は、前記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の構成を備え、目的及び効果を達成できる範囲内での変形や改良が、本発明の内容に含まれるものであることはいうまでもない。また、本発明を実施する際における具体的な構造及び形状等は、本発明の目的及び効果を達成できる範囲内において、他の構造や形状等としても問題はない。本発明は前記した各実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形や改良は、本発明に含まれるものである。

【0055】
例えば、液晶電気光学装置の構成については、図1ないし図3に示した液晶電気光学装置1を例に挙げて説明したが、これには限定されず、偏光利用型の液晶電気光学装置であって、本発明の液晶材料組成物を備えた液晶層を有する液晶セルと、当該液晶セルの外側の少なくとも一方に配設される偏光板を備えるものであれば、他の構成を採用しても問題はない。
その他、本発明の実施の際の具体的な構造及び形状等は、本発明の目的を達成できる範囲で他の構造等としてもよい。
【実施例】
【0056】
以下、実施例、比較例及び参考例に基づき本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【実施例】
【0057】
[参考例1~参考例6]
多結晶チタン酸バリウム粒子(BaTiO)の調製:
下記の方法を用いて、多結晶チタン酸バリウム粒子を、有機保護剤であるポリビニルピ
ロリドン(PVP)の存在下(参考例1を除く)で液相合成を用いて調製した。
【実施例】
【0058】
なお、保護剤であるポリビニルピロリドン(PVP)としては、PVP K90(M≒36000、pH=4.0~7.0)を使用し、かかるPVPの添加量を、R値(PVPのモル量/バリウム化合物(酢酸バリウム)のモル量)で0(PVPを使用せず)、0.2、0.4、0.6、0.8、及び1.0の6種類を採用し、順に参考例1、参考例2、参考例3、参考例4、参考例5、及び参考例6とした。
【実施例】
【0059】
(1)粉末状のチタン酸バリウムの調製:
ビーカー中で酢酸バリウム((CHCOBa)12.9g(0.050mol)を17Nの酢酸(CHCOOH)45mLに溶解させた。混合溶媒(CHOH/CHOCOH=60/40)を70mLと有機保護剤であるポリビニルピロリドン(PVP)(前記Rが0.2、0.4、0.6、0.8、1.0となるようなモル量。ただし参考例1については加えず。)を加え24時間攪拌してバリウム化合物水溶液とした。これをグローブボックス内に持ち込み、チタンイソプロポキシド(Ti(O-i-C)(0.048mol)をn-ヘプタン(n-C16)10mLに加えたチタン酸化合物水溶液をバリウム化合物水溶液の入ったビーカーに加え、-20℃で30分間冷却混合した。なお、冷却混合を実施している間に水9gとエタノール9gの混合溶媒を加えた。冷却混合後、ビーカーを密閉し、グローブボックス内から取り出した後、48時間密閉攪拌した。さらに60℃に加熱して48時間さらに撹拌し、120℃で48時間乾燥を行い、粉末状のチタン酸バリウム(乾燥粉末)を得た。
【実施例】
【0060】
(2)仮焼成処理及び本焼成処理:
(1)で得られた乾燥粉末を、電気炉を用いて450℃で6時間仮焼成処理した。仮焼成後、仮焼成処理と同様な電気炉を用いて、焼成温度を600℃、700℃、800℃、900℃の4種類の温度を用いて、それぞれ6時間本焼成処理を行い、焼成温度の異なる4種類の多結晶チタン酸バリウム粒子を得た。
【実施例】
【0061】
参考例1~参考例6で得られたチタン酸バリウム粒子は、X線回折装置(XRD/Rigaku Geigerflex 線源:CuΚα 設定:40kV 30mA)を用いてX線回折を測定した。参考例1~参考例6で得られたチタン酸バリウム粒子のX線回折スペクトル(乾燥粉体、焼成温度が450℃(仮焼成)、600℃、700℃、800℃及び900℃)を図4~図9に示す。図4~図9のXRDチャートパターンより、参考例1~参考例6で得られたチタン酸バリウム粒子はいずれも多結晶体であることが確認できた。
【実施例】
【0062】
また、参考例1~参考例6で得られた多結晶チタン酸バリウム粒子は、フィールドエミッション型走査型電子顕微鏡(FE-SEM)を用いて得られた写真から100個を取り出し、平均した値を求め、平均1次粒子径とした。参考例1(R=0)の900℃焼成におけるFE-SEM観察結果を図10に、参考例2(R=0.2)の900℃焼成におけるFE-SEM観察結果を図11に、参考例5(R=0.8)の900℃焼成におけるFE-SEM観察結果を図12に、参考例6(R=1.0)の900℃焼成におけるFE-SEM観察結果を図13に、それぞれ示す。
【実施例】
【0063】
参考例1(R=0)については、図4に示したXRD結果より、乾燥粉末と仮焼成後は全体的にアモルファスであったが、一部にBaCOのピークが確認された。また、600℃、700℃、800℃、及び900℃で焼成したものについては、焼成温度を上げるにつれBaCOのピークがだんだんと減少し、BaTiOのピークが成長していることが確認された。700℃、800℃、及び900℃で焼成したものについては、ピークサーチでは同定できなかった不純物ピークがみられた。FE-SEM観察結果より、得られた粒子は不定形であり、平均1次粒子径は100nm以上であった。
【実施例】
【0064】
参考例2(R=0.2)については、図5に示したXRD結果より、乾燥粉末と仮焼成後はピークが明確ではないが、BaCOのピーク付近に山がみられた。また、600℃、700℃、及び800℃で焼成したものについては、参考例1(R=0)と同様に、焼成温度を上げるにつれBaCOのピークが減少し、BaTiOのピークが成長しているが、BaCOの強度は小さかった。800℃、及び900℃で焼成したものについては、参考例1(R=0)とほぼ同様の不純物ピークがみられた。
【実施例】
【0065】
参考例3(R=0.4)については、図6に示したXRD結果より、乾燥粉末と仮焼成後はBaCOのピークが見られ、仮焼成することによりそのピークは大きくなっていた。600~900℃で焼成したものについては、R=0.2の結果とほぼ同様であった。
【実施例】
【0066】
参考例4(R=0.6)については、図7に示したXRD結果より、乾燥粉末と仮焼成後は参考例2(R=0.2)の結果とほぼ同様であった。また、600、及び700℃で焼成したものについては参考例2(R=0.2)及び参考例3(R=0.4)とほぼ同様であったが、800℃で焼成したものは単相のBaTiOが得られたことが確認された。なお、900℃で焼成すると強度は低いが、不純物のピークが確認できた。
【実施例】
【0067】
参考例5(R=0.8)については、図8に示したXRD結果より、乾燥粉末と仮焼成後はBaTi20が生成していることが確認された。また、600℃、700℃、800℃、及び900℃で焼成したものは単相のBaTiOが得られたことが確認された。以上の結果より、PVPの添加量には最適値が存在することが考えられた。一方、FE-SEM観察結果より、得られた粒子(1次粒子)は、球形であり、また、平均1次粒子径は100nm以下であることが確認できた。
【実施例】
【0068】
参考例6(R=1.0)については、図9に示したXRD結果より、乾燥粉末、仮焼成(600℃)~700℃で焼成したものについては、BaCOのピークが見られた。同時に、600℃からBaTiOのピークが成長していることが確認された。また、800℃、900℃で焼成したものについては、単相のBaTiOが得られていることが確認された。
【実施例】
【0069】
以上の結果より、有機保護剤であるPVPを使用しない参考例1(R=0)については、乾燥粉末、仮焼成~700℃で焼成したものについては、BaCOのピークが確認された。また、得られた粒子は不定形で平均1次粒子径は100nm以上であった。一方、PVPを使用した場合、特にR=0.8の場合には、乾燥粉末、仮焼成後にBaTi20が生成していることが確認され、600℃以上で焼成することにより単相のBaTiOの単相が得られた。また、得られた粒子は、球形であった。平均1次粒子径はいずれも100nm以下であることが確認できた。
【実施例】
【0070】
そして、R=0~0.6(参考例1~参考例4)においてのXRD結果より、乾燥粉末でBaCOのピークがみられたことから、PVPの量が比較的少量であったため、保護されなかったバリウムイオン(Ba2+)が大気中のCOと反応してBaCOが生成してしまったことが考えられる。これは、R=0.8(参考例5)で単相のBaTiOが得られたことから、PVPはバリウムイオン(Ba2+)をほぼ1/1の割合で保護していると考えられる。また、乾燥粉末及び仮焼成後にBa欠損のBaTi20が生成していたことから、PVPはバリウムイオン(Ba2+)を保護していると考えられる。
【実施例】
【0071】
[実施例1]
TNセルの作製:
下記の方法を用いて、図1の液晶電気光学装置を構成する液晶セル(TNセル)を作製した。
【実施例】
【0072】
(1)液晶材料組成物の調製:
参考例5(R=0.8)で得られた、平均1次粒子径が100nm以下の多結晶チタン酸バリウム粒子0.001gを、n-ヘプタン(n-C16)/オレイン酸の混合溶媒(6.93mL/0.07mL)に加えて、超音波撹拌を1時間行って混合溶液を調製した。この混合溶液に、液晶材料であるMO-16 OCB液晶(Δn=0.252)を1.0048g添加し、さらに超音波撹拌を1時間行った。その後、60℃の湯浴中で2時間エバポレーションを行って混合溶媒を除去することにより、本発明の液晶材料組成物を得た。
【実施例】
【0073】
(2)TNセルの作製:
ホットプレートを110℃に加熱し、(1)で得られた液晶材料組成物を加熱処理した後、図1に示す構成のTNモード型液晶セル(セルギャップ:5μm)に注入し、25℃に冷却した後、セルの注入口をアラルダイトで封止し、さらに、封止部に導電性テープを付着して、TNセルを得た。
【実施例】
【0074】
[試験例1]
実施例1で得られたTNセルについて、下記の方法を用いて、駆動電圧(Vth)、最小透過率(Tmin)、コントラスト比、及び応答速度(立ち下がり時間、立ち上がり時間)を測定した。なお、評価にあたっては、参考例5の多結晶チタン酸バリウム粒子を添加しない以外は、前記した実施例1と同様な方法で作製したTNセルを比較例1として、比較・評価した。測定におけるTNセルは実施例1、比較例1とも各3個作製し、その平均を求めて結果とした。
【実施例】
【0075】
なお、作製したTNセルの実効駆動電圧は、瞬間マルチ測光システムLCD-5200(大塚電子(株)製)を用いて測定し、また、得られたV-T曲線より最小透過率Tminを求めた。コントラスト比は、最大透過率Tmaxを100[%]として、Tmax/Tminとして求めた。一方、応答速度(透過率90%から10%までのライズタイム)は、液晶電気光学装置に発振器((株)東陽テクニカ製、BIOMATION-2411B)を用いて、実効電圧が4V、周波数が100Hzのバースト波を印加して、これに応答する透過光の出力を光検出器(浜松フォトニクス(株)製、modelC3830)により計測し、これを二現象のデジタルオシロスコープ(横河電気(株)製、DL-1540)に表示させて、バースト波駆動に対する応答波形を比較することにより算出した。V90、V10はそれぞれ透過率が90%、10%に到達した時間(10-3秒:ミリ秒)であり、立ち下がり時間(いわゆるオフタイム)は透過率の落ち始めのV10-V90、立ち上がり時間(いわゆるオンタイム)は透過率が回復するV90-V10より求めた。実施例1のV-T曲線を図14に、比較例1のV-T曲線を図15に、実施例1の応答速度を図16に、比較例1の応答速度を図17にそれぞれ示す。また、駆動電圧(Vth)、最小透過率(Tmin)、コントラスト比の結果を表1に、応答速度の結果を表2にそれぞれ示す。
【実施例】
【0076】
(駆動電圧(Vth)、最小透過率(Tmin)、コントラスト比の結果)
【表1】
JP0005552603B2_000002t.gif
【実施例】
【0077】
(4Vにおける応答速度の結果)
【表2】
JP0005552603B2_000003t.gif
【実施例】
【0078】
図14、図15及び表1に示すように、実施例1は比較例1と比較して駆動電圧が31%減少(向上)し、コントラスト比は34%向上した。また、図16及び図17及び表2に示すように、実施例1は比較例1と比較して立ち下がり時間の応答速度は25%、立ち上がり時間の応答速度は57%向上した。この結果からも、本発明の液晶材料組成物を液晶材料に分散させた液晶層を備えたTNセルは、駆動電圧の低減化及び表示応答速度の高速化が可能となり、電力消費量の低減を図ることができるため、電力消費量の低減を目的とする液晶電気光学装置に最適であることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明は、小型液晶ディスプレイ、大型液晶ディスプレイといった各種液晶ディスプレイ、液晶プロジェクタ(投写型液晶表示装置)の光学素子、光通信における光変調電気光学部品等に使用される液晶材料組成物、液晶電気光学装置等として有利に使用することができる。
【符号の説明】
【0080】
1 液晶電気光学装置
11 液晶セル
121,122 偏光板
131,132 透明基板
141,142 電極層
151、152 配向層
16 多結晶チタン酸バリウム粒子が分散された液晶層
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図14】
9
【図15】
10
【図16】
11
【図17】
12
【図10】
13
【図11】
14
【図12】
15
【図13】
16