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明細書 :グラフェンナノリボン及びグラフェンナノリボンの化学修飾方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2013-151387 (P2013-151387A)
公開日 平成25年8月8日(2013.8.8)
発明の名称または考案の名称 グラフェンナノリボン及びグラフェンナノリボンの化学修飾方法
国際特許分類 C01B  31/02        (2006.01)
FI C01B 31/02 101Z
請求項の数または発明の数 3
出願形態 OL
全頁数 7
出願番号 特願2012-012684 (P2012-012684)
出願日 平成24年1月25日(2012.1.25)
発明者または考案者 【氏名】高口 豊
【氏名】田嶋 智之
【氏名】福間 智彦
出願人 【識別番号】504147243
【氏名又は名称】国立大学法人 岡山大学
審査請求 未請求
テーマコード 4G146
Fターム 4G146AA01
4G146AB07
4G146CB10
4G146CB13
4G146CB21
4G146CB26
4G146CB35
要約 【課題】化学修飾が困難なグラフェンナノリボンを容易に化学修飾できる方法、及び高修飾率で化学修飾されたグラフェンナノリボンを提供する。
【解決手段】グラフェンナノリボンの化学修飾は、エッジ部分の炭素がカルボキシル基で修飾されているグラフェンナノリボンのカルボキシル基とエステル反応させて化学修飾するものであって、カルボキシル基で修飾されているグラフェンナノリボンと、ボキシル基とエステル反応するヒドロキシル基を有する修飾体と、4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-yl)-4-メチルモルフォリニウム クロライド n-ハイドレートとを溶液中で撹拌混合することにより行う。
【選択図】なし
特許請求の範囲 【請求項1】
エッジ部分の炭素がカルボキシル基で修飾されているグラフェンナノリボンの前記カルボキシル基とエステル反応させて化学修飾する方法であって、
前記カルボキシル基で修飾されているグラフェンナノリボンと、
前記ボキシル基とエステル反応するヒドロキシル基を有する修飾体と、
4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-yl)-4-メチルモルフォリニウム クロライド n-ハイドレートと
を溶液中で撹拌混合することにより行うグラフェンナノリボンの化学修飾方法。
【請求項2】
エッジ部分の炭素がカルボキシル基で修飾されたグラフェンナノリボンの前記カルボキシル基とエステル反応するヒドロキシル基を有する修飾体を、前記グラフェンナノリボンとエステル反応させて化学修飾したグラフェンナノリボンにおいて、
前記修飾体が、脂肪酸アルカノール・アミド、エチレンジアミン、N,N-ジメチルホルムアミドのいずれか一つであって、
この修飾体と、前記グラフェンナノリボンと、4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-yl)-4-メチルモルフォリニウム クロライド n-ハイドレートとを溶液中で撹拌混合して成るグラフェンナノリボン。
【請求項3】
前記修飾体が、脂肪酸アルカノール・アミドであって、この脂肪酸アルカノール・アミドのアルキル鎖の末端にチオールを修飾したグラフェンナノリボン。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、エッジ部分の炭素をカルボキシル基で修飾しているグラフェンナノリボンをエステル化により化学修飾して成るグラフェンナノリボン及びグラフェンナノリボンの化学修飾方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
昨今、電子デバイス材料や電極材料などとしてグラフェンが注目されている。グラフェンは、炭素原子同士がsp2結合して形成された六角格子構造を有するシート状となっているものであって、電気伝導性、熱伝導性、機械的特性などが優れていることが知られている。
【0003】
このようなグラフェンにおいて、細線状となっているものを特にグラフェンナノリボンと呼んでいる。なお、グラフェンナノリボンでは、一般的に、幅方向の寸法の数倍から十数倍程度の長さ寸法を有する短冊形状としていることが多い。なお、グラフェンナノリボンは、常に短冊形状となっているわけではなく、本発明では、短冊形状とはなっていないミクロンオーダー程度の大きさを有するグラフェンも含めてグラフェンナノリボンと呼ぶこととする。
【0004】
このようなグラフェンナノリボンでは、一般的に、グラフェンナノリボンのエッジ部分に位置する炭素をカルボキシル基で修飾し、比較的安定な状態に維持可能とするとともに、水溶性を付与可能としている。
【0005】
カルボキシル基が修飾されたグラフェンナノリボンに対し、いわゆるプラトー反応によりエステル化して化学修飾を行うことが提案されている(例えば、非特許文献1参照。)。あるいは、カルボキシル基が修飾されたグラフェンナノリボンに対し、ジアゾニウム塩を用いてエステル化して化学修飾を行うことが提案されている(例えば、非特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【0006】

【非特許文献1】Prato et al., ACS nano. 2010, 6, 3257
【非特許文献2】Tour et al., Chem. Mater. 2009, 21, 5284-5291
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、プラトー反応を用いた化学修飾や、ジアゾニウム塩を用いた化学修飾では、導入できる官能基に大きな制約があり、しかも修飾率が低いために実用性を有していなかった。
【0008】
本発明者は、このような現状に鑑み、より簡便で高修飾率の化学修飾方法を開発すべく研究を行って、本発明を成すに至ったものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のグラフェンナノリボンの化学修飾方法は、エッジ部分の炭素がカルボキシル基で修飾されているグラフェンナノリボンのカルボキシル基とエステル反応させて化学修飾する方法であって、カルボキシル基で修飾されているグラフェンナノリボンと、ボキシル基とエステル反応するヒドロキシル基を有する修飾体と、4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-yl)-4-メチルモルフォリニウム クロライド n-ハイドレートとを溶液中で撹拌混合することにより行うものである。
【0010】
また、本発明のグラフェンナノリボンは、エッジ部分の炭素がカルボキシル基で修飾されたグラフェンナノリボンのカルボキシル基とエステル反応するヒドロキシル基を有する修飾体を、前記グラフェンナノリボンとエステル反応させて化学修飾したグラフェンナノリボンであって、修飾体を、脂肪酸アルカノール・アミド、エチレンジアミン、N,N-ジメチルホルムアミドのいずれか一つとしているものである。
【0011】
特に、修飾体が、脂肪酸アルカノール・アミドであって、この脂肪酸アルカノール・アミドのアルキル鎖の末端にチオールを修飾しているものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明のグラフェンナノリボンの化学修飾方法では、4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-yl)-4-メチルモルフォリニウム クロライド n-ハイドレートから成る脱水縮合剤を用いてエステル反応を生じさせることにより、高効率で所望の化学修飾が成されたグラフェンナノリボンを生成できる。
【0013】
また、本発明では、従来では生成できなかった脂肪酸アルカノール・アミド、またはエチレンジアミン、若しくはN,N-ジメチルホルムアミドが化学修飾されたグラフェンナノリボンを提供でき、しかも安価に提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のグラフェンナノリボン及びグラフェンナノリボンの化学修飾方法では、エッジ部分の炭素がカルボキシル基で修飾されているグラフェンナノリボンに対し、脱水縮合剤を用いてカルボキシル基のエステル化を行って化学修飾を行っているものである。

【0015】
脱水縮合剤としては、4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-yl)-4-メチルモルフォリニウム クロライド n-ハイドレートを用いるものであり、一般的には、DMT-MMと呼ばれている。

【0016】
このDMT-MMを用いることにより、極めて容易に化学修飾を行うことができ、特に従来では行えなかった化学修飾を可能とすることができる。

【0017】
以下において、説明の便宜上、グラフェンナノリボンを「GNR」と呼ぶこととし、エッジ部分の炭素がカルボキシル基で修飾されているグラフェンナノリボンを、「GNR-COOH」と呼ぶこととする。
【実施例1】
【0018】
第1実施例として、GNR-COOHに対して脂肪酸アルカノール・アミドを化学修飾する場合を説明する。なお、GRNは、製造過程においてカルボキシル基で修飾され、GNR-COOHとなっている。
【実施例1】
【0019】
まず、8mgのGNR-COOHと、5gの脂肪酸アルカノール・アミドをリアクターに入れて、減圧しながらフレイムドライを行った。フレイムドライの後、アルゴン置換を行った。
【実施例1】
【0020】
アルゴン置換の後、超音波照射を15分間行って、脂肪酸アルカノール・アミド中にGNR-COOHを十分に分散させた。
【実施例1】
【0021】
超音波照射の後、リアクターに100mgのDMT-MMを加えて、70℃に加温しながらスターラーによる撹拌を行って十分に混合することにより、GNR-COOHと脂肪酸アルカノール・アミドとのエステル反応を生じさせて、脂肪酸アルカノール・アミドによる化学修飾を行った。すなわち、下記の化学式で示される反応を生じさせた。
【化1】
JP2013151387A_000002t.gif
【実施例1】
【0022】
このとき、脂肪酸アルカノール・アミドで修飾されたGNRの修飾率は、39%であった。
【実施例1】
【0023】
さらに、リアクターに1.6mgのチオールを加えてさらに撹拌することにより、脂肪酸アルカノール・アミドのアルキル鎖の末端にチオールを修飾した。
【実施例1】
【0024】
このように、アルキル鎖の末端にチオールを修飾したことにより、チオールを介してGNRを金電極に吸着させることが可能となった。
【実施例1】
【0025】
特に、GNRは、構造式上では、炭素原子1個分の厚みを有するシート状となっているが、実際には、分子間力等の影響により凸凹を有することとなっているために、GNR同士を密に重ね合わせることが困難であったが、脂肪酸アルカノール・アミドで修飾し、さらにチオールを修飾することによって、シート状の形態を保持させやすくすることができ、電子デバイス等での積層化の際にGNRを積み重ねたい場合に、容易に積み重ねることができる。
【実施例1】
【0026】
しかも、脂肪酸アルカノール・アミドで修飾し、さらにチオールが修飾されているGNRは、水溶性を有しているために、所望の溶液に溶解させてウエットプロセスでGNRの積み重ねを行うことができ、電子デバイスの製造工程での取扱性を向上させることができる。
【実施例1】
【0027】
あるいは、チオールが修飾されているGNRを塩化金(HAuCl4)水溶液に混合して、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4)液を添加することにより、チオール部分に金を吸着させたGNRとすることができ、新たな電子材料とすることができる。
【実施例2】
【0028】
第2実施例として、GNR-COOHに対してエチレンジアミンを化学修飾する場合を説明する。
【実施例2】
【0029】
まず、3mgのGNR-COOHを20mlの水に分散させた。このとき、超音波照射を15分間行った。
【実施例2】
【0030】
水にGNR-COOHを十分に分散させた後、氷冷下で20mlのエチレンジアミンを加え、さらに、100mgのDMT-MMを加えて、室温下でスターラーによる撹拌を行って十分に混合することにより、GNR-COOHと脂肪酸アルカノール・アミドとのエステル反応を生じさせて、脂肪酸アルカノール・アミドによる化学修飾を行った。すなわち、下記の化学式で示される反応を生じさせた。
【化2】
JP2013151387A_000003t.gif
【実施例2】
【0031】
このとき、エチレンジアミンで修飾されたGNRの修飾率は、17%であった。
【実施例3】
【0032】
第3実施例として、GNR-COOHに対してN,N-ジメチルホルムアミドを化学修飾する場合を説明する。
【実施例3】
【0033】
まず、8mgのGNR-COOHと、96,4mg(0.339mmol)のアミンをリアクターに入れ、さらに、100mg(0.339mmol)のDMT-MMを加え、さらに20mlのN,N-ジメチルホルムアミド(未蒸留)を加え、超音波照射を15分間行った。
【実施例3】
【0034】
超音波照射の後、45℃に加温しながらスターラーによる撹拌を行って十分に混合することにより、GNR-COOHとN,N-ジメチルホルムアミドとのエステル反応を生じさせて、N,N-ジメチルホルムアミドによる化学修飾を行った。すなわち、下記の化学式で示される反応を生じさせた。
【化3】
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【実施例3】
【0035】
このとき、N,N-ジメチルホルムアミドで修飾されたGNRの修飾率は、54%であった。
【実施例3】
【0036】
なお、エチレンオキシド鎖の長さは自由自在とすることができ、所望の長さとすることができる。特に、N,N-ジメチルホルムアミド等で修飾されたGNRは、クロロホルムに分散し、高分子材料との混和性が高いものとすることができる。
【実施例3】
【0037】
このように、DMT-MMを用いることにより、脂肪酸アルカノール・アミド、エチレンジアミン、N,N-ジメチルホルムアミドを、それぞれGNR-COOHに極めて容易に化学修飾することができ、しかもいずれも高い修飾率であるために、それぞれ修飾されたGNRを安価で提供できる。
【実施例3】
【0038】
なお、GNRの化学修飾は、脂肪酸アルカノール・アミド、エチレンジアミン、N,N-ジメチルホルムアミドで行う場合だけでなく、これらと同様にGNRのカルボキシル基とエステル反応するヒドロキシル基を有していれば、何であっても化学修飾することができる。