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明細書 :しゃくとり虫型変形を利用した駆動装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2014-140271 (P2014-140271A)
公開日 平成26年7月31日(2014.7.31)
発明の名称または考案の名称 しゃくとり虫型変形を利用した駆動装置
国際特許分類 H02N   2/00        (2006.01)
FI H02N 2/00 C
請求項の数または発明の数 6
出願形態 OL
全頁数 13
出願番号 特願2013-008348 (P2013-008348)
出願日 平成25年1月21日(2013.1.21)
発明者または考案者 【氏名】長縄 明大
【氏名】小松 和三
出願人 【識別番号】504409543
【氏名又は名称】国立大学法人秋田大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100129838、【弁理士】、【氏名又は名称】山本 典輝
審査請求 未請求
テーマコード 5H680
Fターム 5H680AA06
5H680BB02
5H680BB09
5H680CC04
5H680CC06
5H680DD24
5H680DD64
5H680DD73
5H680DD82
要約 【課題】圧電素子の伸縮量を弾性部材によって拡大させることによって、小型化されながらも必要な駆動力を得て、物体を動作させることが可能な駆動装置を提供する。
【解決手段】第1固定手段1、第1圧電素子2、板状弾性部材3及び第2固定手段4がこの順に連結されてなるステータ5、並びに、ステータ5の板状弾性部材3との相互作用によって動作する可動部6、を備え、ステータ5は、第1固定手段1を固定端として第1圧電素子2が伸縮することによって第1圧電素子2の板状弾性部材3側の端部と第2固定手段4との距離が増減し、第1圧電素子2の板状弾性部材3側の端部と第2固定手段4との距離が減少するにつれて、板状弾性部材3に生じる撓みが増大するように構成されている、駆動装置10とする。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
第1固定手段、第1圧電素子、板状弾性部材及び第2固定手段がこの順に連結されてなるステータ、並びに、該ステータの前記板状弾性部材との相互作用によって動作する可動部、を備え、
前記ステータは、前記第1固定手段を固定端として前記第1圧電素子が伸縮することによって前記第1圧電素子の前記板状弾性部材側の端部と前記第2固定手段との距離が増減し、前記第1圧電素子の前記板状弾性部材側の端部と前記第2固定手段との距離が減少するにつれて、前記板状弾性部材に生じる撓みが増大するように構成されている、駆動装置。
【請求項2】
前記第1圧電素子の伸縮方向と直交する方向に凸となるように前記板状弾性部材が撓ませられる、請求項1に記載の駆動装置。
【請求項3】
前記板状弾性部材と前記第2固定手段とが、前記第1圧電素子とは異なる第2圧電素子を介して連結されている、請求項1又は2に記載の駆動装置。
【請求項4】
前記ステータが複数備えられる、請求項1~3のいずれかに記載の駆動装置。
【請求項5】
一つの前記第2固定手段に、複数の前記板状弾性部材が連結され、それぞれの板状弾性部材に前記第1圧電素子と前記第1固定手段とが連結されている、請求項1~4のいずれかに記載の駆動装置。
【請求項6】
前記板状弾性部材の撓みの方向を規制する規制手段をさらに備える、請求項1~5のいずれかに記載の駆動装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電素子の伸縮を利用した駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
圧電素子を用いた駆動装置の一つに超音波モータがある。超音波モータは、超音波領域の機械的振動により励振されたステータをロータやスライダと接触させて、機器を回転や直動動作させる摩擦駆動型のアクチュエータであり、カメラのオートフォーカスやXYステージのほか、セキュリティカメラや手術用機器に組み込まれる多次元モータ等、様々な分野で利用されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、弾性体の両端に、バイモルフ圧電素子を連結し、バイモルフ圧電素子の動きで、弾性体を変形させ、弾性体上の作動点を移動本体に接触させて、移動本体を動かすことが可能な、圧電電気機械式駆動装置が開示されている。しかしながら、特許文献1に開示されている駆動装置にあっては、作動点の変位量が小さく、移動本体の動作量、駆動量を大きくするためには、バイモルフ圧電素子を大きくする等、駆動装置を大型化しなければならない。そのため、例えば手術用機器等の小型機器に組み込むことは困難であった。
【0004】
或いは、特許文献2には、伸縮方向が同一平面となる様に配置した複数の圧電素子と、圧電素子を固定する基台と、圧電素子の伸縮端に固定したドーム状の弾性体とを具備した超音波振動子が開示されており、当該振動子により超音波モータ等の駆動装置を構成可能としている。しかしながら、特許文献2に開示された超音波振動子にあっては、圧電素子を複数用意する必要があり、また、ドーム状の弾性体を用いることが前提である。すなわち、圧電素子や弾性体を設置するために大きなスペースを要し、やはり駆動装置が大型化して、手術用機器等の小型機器に組み込むことは困難であった。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特許第4452275号
【特許文献2】特開平5-191988号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記の従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、圧電素子の伸縮量を弾性部材によって拡大させることによって、小型化されながらも必要な駆動力を得て、物体を動作させることが可能な駆動装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は以下の構成を採る。すなわち本発明は、
第1固定手段、第1圧電素子、板状弾性部材及び第2固定手段がこの順に連結されてなるステータ、並びに、ステータの板状弾性部材との相互作用によって動作する可動部、を備え、ステータは、第1固定手段を固定端として第1圧電素子が伸縮することによって第1圧電素子の板状弾性部材側の端部と第2固定手段との距離が増減し、第1圧電素子の板状弾性部材側の端部と第2固定手段との距離が減少するにつれて、板状弾性部材に生じる撓みが増大するように構成されている、駆動装置である。
【0008】
本発明において、「この順に連結されてなる」とは、各部が順番に直接的に連結された形態のほか、各部以外の何らかの部材を介して各部が順番に間接的に連結された形態をも含む概念である。「圧電素子」とは伸縮型の圧電素子をいい、主に積層型圧電素子がこれに相当する。「板状弾性部材」の「板状」とは、撓みが最も解消された状態において湾曲のない形状となることを意味する。ただし、第1圧電素子の伸縮量を板状弾性部材によって拡大させ得る限り、第1圧電素子の端部と第2固定手段との距離が最大の場合において、板状弾性部材が多少湾曲していてもよいものとする。多少湾曲させることによって、所望の方向にしゃくとり虫型に変形させやすくなるためである。
【0009】
本発明において、第1圧電素子の伸縮方向と直交する方向に凸となるように板状弾性部材が撓ませられることが好ましい。板状弾性部材の撓み量を最も増大させることができるためである。尚、本願において「第1圧電素子の伸縮方向と直交する方向」とは、第1圧電素子の伸縮方向と完全に直交する方向である必要はなく、物体を駆動させる変形であれば許容する主旨である。例えば、第1圧電素子の伸縮方向と板状弾性部材の撓みの凸方向とのなす角度が75°以上105°以下の場合、誤差範囲内として「第1圧電素子の伸縮方向と直交する方向」に含まれるものとする。
【0010】
本発明において、板状弾性部材と第2固定手段とが、第1圧電素子とは異なる第2圧電素子を介して連結されていてもよい。言い換えれば、板状弾性部材の両端に第1圧電素子と第2圧電素子とが備えられていてもよい。圧電素子を複数設けることで、既製品の素子を導入することができ、また、板状弾性部材の撓みの量や変形を精密に制御することも可能となるためである。
【0011】
本発明において、ステータが複数備えられていてもよい。すなわち、可動部の形態に応じてステータの設置数を増減させることで、より効率的に可動部を動作させることができる。また、ステータが複数備えられることで、例えば可動部を多次元に動作させることも可能となる。
【0012】
本発明において、一つの第2固定手段に、複数の板状弾性部材が連結され、それぞれの板状弾性部材に第1圧電素子と第1固定手段とが連結されていてもよい。言い換えれば、第2固定手段を中心とした円周方向に所定の間隔を設けつつ板状弾性部材等が複数連結された形態とすることが可能である。このような形態にあっては、例えば、第2固定手段近傍に可動部として球体を設置し、複数の板状弾性部材をそれぞれ任意の撓み量にて撓ませて球体に接触させることで、各板状弾性部材の撓みの増減によって球体を多次元に動作させることができる。
【0013】
本発明においては、板状弾性部材の撓みの方向を規制する規制手段をさらに備えることが好ましい。規制手段を設けることで、板状弾性部材の撓みの制御がより精密となり、可動部を効率的に動作させることができるためである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、固定手段の間に圧電素子と板状の弾性部材とを連結してステータを構成しており、圧電素子の伸縮量が弾性部材の撓み量(変形量)へと拡大可能な構成を採っている。そのため、小型の圧電素子を用いた場合或いは配置できる圧電素子の種類に制約がある場合でも、弾性部材の撓みによって大きな変形量を得ることができる。また、板状弾性部材を用いることでステータの設置スペースを極小化することも可能である。例えば、管内に駆動装置を設置したい場合、管の内壁面に沿って管長手方向或いは管周方向にステータを設置可能であり、管径方向の設置スペースを極小化することができる。このように、本発明によれば、圧電素子の伸縮量を弾性部材によって拡大させることによって、小型化されながらも必要な駆動力を得て、物体を動作させることが可能な駆動装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】第1実施形態に係る本発明の駆動装置10の動作態様を説明するための概略図である。
【図2】第1圧電素子2の伸縮量xと板状弾性部材3の撓み量yとの関係を説明するための図である。
【図3】駆動装置10を動作させる際、第1圧電素子2に印加する電圧の波形の一例を示す図である。
【図4】第1実施形態に係る本発明の駆動装置10の他の動作態様を説明するための概略図である。
【図5】第2実施形態に係る本発明の駆動装置20に設けられるステータ15を説明するための概略図である。
【図6】第3実施形態に係る本発明の駆動装置30を説明するための概略図である。
【図7】第3実施形態に係る本発明の駆動装置30を説明するための概略図である。
【図8】第4実施形態に係る本発明の駆動装置40に設けられるステータ35を説明するための概略図である。
【図9】規制手段7aを説明するための概略図である。
【図10】規制手段7bを説明するための概略図である。
【図11】実施例に係る駆動装置を説明するための概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
1.第1実施形態
図1を参照しつつ第1実施形態に係る本発明の駆動装置10について説明する。図1に示すように駆動装置10は、第1固定手段1、第1圧電素子2、板状弾性部材3及び第2固定手段4がこの順に連結されてなるステータ5、並びに、ステータ5の板状弾性部材3との相互作用によって動作する可動部6、を備えている。なお、図1に示した可動部6はロータ円板であるが、本発明は当該形態に限定されるものではなく、可動部としてスライダのような直線移動体を用いてもよい。

【0017】
1.1.第1固定手段1
駆動装置10において、第1固定手段1は、第1圧電素子2の一端2aを固定するための手段である。第1固定手段1の形態は、第1圧電素子2の一端2aを固定し、第1圧電素子2が当該第1固定手段1を固定端として伸縮可能な形態であれば、特に限定されるものではない。例えば、駆動装置10を設置する箇所(不図示)に固定された金属片やプラスチック片、セラミックス片等を第1固定手段1とすることができる。

【0018】
1.2.第1圧電素子2
駆動装置10において、第1圧電素子2は、一端2aが第1固定手段1に固定され、当該第1固定手段1を固定端として伸縮する素子である。第1圧電素子2は伸縮型の圧電素子であれば特に限定されるものではなく、例えば伸縮方向に圧電素子が複数積層されてなる積層型圧電素子を適用することができる。第1圧電素子2の伸長量ついては、板状弾性部材3や可動部6の形状、大きさ等に合わせて決定することができる。例えば、駆動装置10を動作させた場合において、板状弾性部材3の撓み量(変形量)が数ミクロン程度(0.1μm~30μm程度)となるようなものが好ましい。後述するように、駆動装置10においては、第1圧電素子2による伸縮量が板状弾性部材3の撓み量に拡大変換されるため、第1圧電素子2の伸縮量が小さくとも効率的な駆動が可能となる。

【0019】
1.3.板状弾性部材3
駆動装置10において、板状弾性部材3は、一端3aが第1圧電素子2の端部2bに連結され、当該第1圧電素子2の伸縮に伴って、撓みの発生・解消がなされる部材であり、第1圧電素子2の端部2bと第2固定手段4との間の距離に依存して撓み量が変化するものである。板状弾性部材3の構成材としては、弾性を有する材料であればよく、例えば、金属やプラスチック等から構成することができる。板状弾性部材3の形状は撓みが解消された状態において、湾曲のない形状であればよい。例えば、撓みが解消された状態において、第1圧電素子2の端部2bと第2固定手段4とを結ぶ直線に沿った形状とすることができる。ただし、後述するように、板状弾性部材3を多少湾曲させることで、板状弾性部材3の撓みの方向を規制してもよい。板状弾性部材3の厚みや大きさは、可動部6の形状や大きさ等に合わせて決定することができる。上述したように、第1圧電素子2の伸長によって、数ミクロン程度(0.1μm~30μm)の撓み(変形)を伴うものが好ましい。

【0020】
1.4.第2固定手段4
駆動装置10において、第2固定手段4は、板状弾性部材3の一端(第1圧電素子2とは反対側の端)3bを固定するための手段である。第2固定手段4の形態は、板状弾性部材3の一端3bを固定し、板状弾性部材3を第1圧電素子2と第2固定手段4との間に拘束可能な形態であれば、特に限定されるものではない。例えば、駆動装置10を設置する箇所(不図示)に固定した金属片やプラスチック片、セラミックス片等を第2固定手段4とすることができる。

【0021】
1.5.ステータ5
駆動装置10において、ステータ5は、上記した第1固定手段1、第1圧電素子2、板状弾性部材3及び第2固定手段4がこの順に連結されてなるものである。これによって、第1固定手段1を固定端として第1圧電素子2が伸縮することによって第1圧電素子2の板状弾性部材3側の端部2bと第2固定手段4との距離が増減し、第1圧電素子2の板状弾性部材3側の端部2bと第2固定手段4との距離が減少するにつれて、板状弾性部材3に生じる撓みが増大するように構成することができる。

【0022】
ここで、駆動装置10においては、第1圧電素子2による伸縮量が板状弾性部材3の撓み量に拡大変換される。図2を参照しつつ、第1圧電素子2の伸縮量と板状弾性部材3の撓み量との関係について説明する。

【0023】
駆動装置10における第1圧電素子2の伸縮量と板状弾性部材3の撓み量との関係については、図2に示すように、三角形に近似して考えることができる。第1圧電素子2に電圧を印加した結果、xだけ第1圧電素子2の端部2bと第2固定手段4との距離が減少したとする。板状弾性部材3の長さ(撓みが解消された状態における長さ)をaとすると、しゃくとり虫型に撓んだ場合の撓み量yは、y=(2ax-x1/2/2となる。例えばa=10mm、x=5μmの場合、y=158μmとなり、第1圧電素子2の伸縮量が板状弾性部材3の撓み量へと約32倍に拡大される。実際には板状弾性部材3が湾曲して変形するため、板状弾性部材3の材質や形状によって拡大率は小さくなるものの、いずれの場合でも第1圧電素子2の伸縮量を拡大することができる(以下、この効果を「変位量拡大効果」という場合がある。)。特に、第1圧電素子2の伸縮量xが小さい領域において、板状弾性部材3の撓みによる変位量拡大効果が大きくなる。具体的には第1圧電素子2の伸長量が板状弾性部材3の撓みによって、2~10倍程度に拡大される領域で使用することが好ましい。

【0024】
また、駆動装置10においては、撓みが解消された状態において、板状弾性部材3が第1圧電素子2の伸縮方向の延長上、且つ、略同一平面上にある。このような構成とすることで、第1圧電素子2の伸縮方向と直交する方向に凸となるように板状弾性部材3を撓ませることができ、変位量拡大効果が最大となる。すなわち駆動装置10の一層の小型化に繋がり好ましい。

【0025】
1.6.可動部6
このように、第1圧電素子2の伸縮が板状弾性部材3のしゃくとり虫型の撓みへと変換されることで、板状弾性部材3との相互作用によって駆動装置10の可動部を動作させることができる。可動部6の形態は、駆動装置に一般的に使用される形態であればよく、例えば、ロータや球体等の回転体、一次元或いは二次元に動作可能とされるスライダ等の直線移動体や棒状体、平板等とすることができる。以下、図1を参照しつつ、駆動装置10におけるステータ5と可動部(ロータ)6の動作について説明する。

【0026】
図1(A)に示すように、駆動装置10において、可動部6が板状弾性部材3の近傍となるようにステータ5と可動部6とを設置する。このような状態において第1圧電素子2に電圧を印加した場合、印加電圧に依存して第1圧電素子2の端部2bと第2固定手段4との距離が減少し、板状弾性部材3が押し上げられてしゃくとり虫型に撓む。第1圧電素子2の端部2bと第2固定手段4との距離が減少するにつれて、板状弾性部材3に生じる撓みが増大し、図1(B)に示すように、やがては板状弾性部材3の撓み部分が可動部6と接触する。ここから板状弾性部材3の撓みをさらに増大させることで、板状弾性部材3と可動部6との間の摩擦によって、可動部6を回転させることができる。

【0027】
ここで、駆動装置10においては、第1圧電素子2に印加する電圧の波形を調整することによって可動部6を連続的に回転させることが可能である。例えば、印加電圧の波形を正弦波形や台形波形、或いは図3に示すようなノコギリ波形などとすることが好ましい。すなわち、第1圧電素子2に印加する電圧を徐々に高くしていくと、板状弾性部材3がしゃくとり虫型にゆっくりと撓んで、可動部6と接触する。この後、さらに電圧を徐々に高くしていくと、図1(B)の矢印で示される方向に可動部6が回転する。そして、第1圧電素子2が急速に縮むように印加電圧を急激に減少させることによって、板状弾性部材3を滑らせつつ可動部6に逆方向の摩擦力をほとんど与えずに、可動部6を図1(B)の矢印の方向に回転させたままで、例えば図1(A)の状態に戻すことができる。このように、第1圧電素子2に、所定波形にて周期的に電圧を印加することによって、可動部6を連続的に回転させることができる。なお、駆動波形を間引くことにより、低速駆動を実現することができる。

【0028】
第1圧電素子2に印加する電圧の大きさについては、第1圧電素子2の特性や装置構成等に応じて決定され、特に限定されるものではない。また、電圧の周波数についても特に限定されるものではないが、例えば100Hz~20kHz程度とすることができるほか、電圧の周波数を約20kHz以上の超音波周波数とすることで、本発明の駆動装置をいわゆる超音波モータとして用いることも可能である。なお、駆動の際に周波数を変化させると、可動部の回転速度を変化させることができる。

【0029】
尚、上記説明においては、駆動装置10において、板状弾性部材3と可動部6とが非接触の状態から、板状弾性部材3の撓みを可動部6に接触させることによって、可動部6を動作させる場合について説明したが、駆動装置10における動作はこの態様に限定されるものではない。例えば、以下の態様とすることも可能である。すなわち、図4(A)に示すように、駆動装置10において、第1圧電素子2に所定の電圧を印加し、板状弾性部材3を上記と同様の原理にて撓ませて、可動部6と接触させておく。このような状態において、第1圧電素子2に印加する電圧を徐々に変化させた場合、印加電圧に依存して第1圧電素子2の端部2bと第2固定手段4との距離が徐々に増大し、板状弾性部材3の撓みが減少する。板状弾性部材3の撓みが減少する際、板状弾性部材3と可動部6との間に摩擦力が生じ、図4(B)のように、可動部を回転させることができる。

【0030】
或いは、上記説明では、可動部6に対して板状弾性部材3を非接触状態から接触状態とすることによって反時計回りに可動部6を回転させる形態(図1(B))、板状弾性部材3を接触状態から非接触状態とすることで時計回りに可動部6を回転させる形態(図4(B))について説明したが、可動部6の回転方向はこれらに限定されるものではなく、駆動電圧の波形を調整することで、例えば、可動部6に対して板状弾性部材3を非接触状態から接触状態とすることによって時計回りに可動部6を回転させる形態等、可動部6の回転方向を適宜変更可能である。

【0031】
2.第2実施形態
本発明において、駆動装置に備えられるステータの形態は上記ステータ5のような形態に限定されるものではない。図5に、第2実施形態に係る本発明の駆動装置20に設けられるステータ15を概略的に示す。図5において、可動部については記載を省略している。また、図5において、駆動装置10と同様の構成については同一符号を付し、説明を省略する。

【0032】
図5に示すように、ステータ15は、第1固定手段1、第1圧電素子2、板状弾性部材3及び第2固定手段4がこの順に連結されてなり、且つ、板状弾性部材3と第2固定手段4とが、第1圧電素子2とは異なる第2圧電素子12を介して連結されていることに特徴を有する。言い換えれば、ステータ15においては、板状弾性部材3の両端が2つの圧電素子2、12によって挟まれるようにして連結されている。第2圧電素子12については、伸縮型の圧電素子とすることが好ましく、例えば、上記した第1圧電素子と同様の形態とすることができる。

【0033】
図5(A)~(D)に示すように、ステータ15によれば、第1圧電素子2、及び、第2圧電素子12に印加する電圧をそれぞれ調整することによって、板状弾性部材3の撓み量や撓みの位置を任意に調整することが可能であり、圧電素子が一つだけ備えられる形態と比較して、可動部6の動作を、より多くのバリエーションでもって精密に制御することが可能である。

【0034】
3.第3実施形態
本発明に係る駆動装置においては、ステータが複数備えられていてもよい。図6、7に第3実施形態に係る本発明の駆動装置30を概略的に示す。図6、7において、駆動装置10と同様の構成については同一符号を付し、説明を省略する。

【0035】
駆動装置30は、一つの第2固定手段4に、複数の板状弾性部材3、3、3が連結され、それぞれの板状弾性部材3に第1圧電素子2と第1固定手段1とが連結されている点に特徴を有する。図示した形態においては、第2固定手段4を中心として、ステータ5、5、5を120°間隔で周方向に設けている。このような構成とすることで、例えば、可動部として球体26を用いて、当該球体を多次元的に動作させることが可能となる。すなわち、ステータ5、5、5において、それぞれ印加する電圧を変化させ、板状弾性部材3の撓み量を調整することで、球体の回転方向を多次元に変更することができる。

【0036】
4.第4実施形態
駆動装置10~30においては、第1圧電素子2を伸長させることで第1圧電素子2の端部2bと第2固定手段4との距離を減少させて、板状弾性部材3に撓みを生じさせる形態について説明した。しかしながら、本発明は当該形態に限定されるものではない。図8に第4実施形態に係る本発明の駆動装置40に設けられるステータ35を概略的に示す。図8において、可動部については記載を省略している。また、図8において、駆動装置10と同様の構成については同一符号を付し、説明を省略する。

【0037】
図8において、ステータ35は、固定手段36(第1固定手段1)、第1圧電素子2、連結手段37、板状弾性部材3及び固定手段36(第2固定手段4)がこの順に連結されてなる。言い換えれば、ステータ35においては、固定手段36が、第1固定手段1及び第2固定手段4の双方として機能し、且つ、第1圧電素子2と板状弾性部材3とが連結手段37を介して連結されている点で、ステータ5とは異なる。尚、図8(A)において、第1圧電素子2は電圧が印加されて伸長状態にある。

【0038】
ステータ35において、連結手段37は第1圧電素子2と板状弾性部材3とを連結可能であり、且つ、第1圧電素子2の伸縮に追従して板状弾性部材3にしゃくとり虫型の撓みを生じさせるものであれば、その形態は特に限定されるものではない。例えば、金属片やプラスチック片、セラミックス片等を用いることができる。連結手段37と第1圧電素子2及び板状弾性部材3との連結方法については、特に限定されるものではなく、接着剤を用いた連結、溶接による連結等を採用することができる。

【0039】
ステータ35においては、第1圧電素子2が伸長状態から縮小することによって、板状弾性部材3に撓みが生じる。すなわち、ステータ35は、固定手段36を固定端として第1圧電素子2が伸長状態から縮小することによって第1圧電素子2の端部(連結手段37を介して板状弾性部材3側となる端部)2bと固定手段36との距離が減少し、第1圧電素子2の端部2bと固定手段36との距離が減少するにつれて、板状弾性部材3に生じる撓みが増大するように構成されている。

【0040】
このようなステータ35によっても、板状弾性部材3をしゃくとり虫型に撓ませることができ、上記した変位量拡大効果を得ることができる。ただし、ステータ35にあっては、第1圧電素子2が伸長状態から縮小する際、板状弾性部材3が撓みを解消しようとして連結手段37に第1圧電素子2から外れる方向の斥力が働く虞がある。そのため、経年劣化によって、第1圧電素子2と板状弾性部材3との連結が外れてしまう虞がある。また、ステータ35にあっては、図示したように第1圧電素子2と板状弾性部材3とが重ねられるように設けられるため、略平面体として構成される上記ステータ5や15よりも、空間的な阻害が大きい場合がある。

【0041】
5.その他構成
上述したように、本発明に係る駆動装置は、板状弾性部材をしゃくとり虫型に撓ませることによって、変位量拡大効果を得て、板状弾性部材を可動部に接触させることで、可動部を動作させている。よって板状弾性部材の撓みの方向(凸の方向)を可動部側に規制する規制手段を駆動装置に設けることが好ましい。

【0042】
図9に、駆動装置10において、板状弾性部材3の撓みの方向を規制する規制手段7aを設けた形態を概略的に示す。規制手段7aはステータ5とは別体で設けられる手段であり、板状弾性部材3の撓みが解消された状態において、板状弾性部材3と接触するように、或いは、板状弾性部材3の近傍となるように設けられている。板状弾性部材3に撓みが生じる場合、規制手段7aの存在によって、板状弾性部材3は常に規制手段7aとは反対側に凸となるように撓むものとされる。

【0043】
或いは、板状弾性部材3そのものに工夫を加えることで、板状弾性部材3の撓みの方向を規制してもよい。一例として、図10に板状弾性部材3に設けられる規制手段7b、7bを概略的に示す。尚、図10においては板状弾性部材3の厚み方向断面図を概略的に示している。図10に示すように板状弾性部材3の端部に規制手段7b、7bとして凸部を設けることで、板状弾性部材3の撓みの方向は図示した矢印の方向に規制される。

【0044】
また、本発明による変位量拡大効果を損なわない範囲で、板状弾性部材3を予め多少湾曲させておくことで、本発明に係る駆動装置を動作させる際、板状弾性部材3の撓みの方向を所望の方向に規制することもできる。

【0045】
以上の通り、本発明に係る駆動装置においては、固定手段の間に第1圧電素子と板状弾性部材とを連結してステータを構成しており、第1圧電素子の伸縮によって板状弾性部材をしゃくとり虫型に撓ませることで、第1圧電素子の伸縮量が板状弾性部材の撓み量(変形量)へと拡大可能な構成を採っている。そのため、圧電素子として第1圧電素子を一つだけ用い、且つ、それが小型の圧電素子である場合でも、板状弾性部材の撓みによって大きな変形量を得ることができる。また、弾性部材を板状とすることでステータの設置スペースを省略することも可能である。圧電素子を複数設ける、或いは、ステータを複数設けることで、可動部を多次元的に動作させることも可能である。このように、本発明に係る駆動装置によれば、第1圧電素子の伸縮量を板状弾性部材によって拡大させることによって、小型化されながらも必要な駆動力を得て、物体を動作させることが可能である。

【0046】
尚、上記説明では、駆動装置10~30において、第1固定手段1、第1圧電素子2、板状弾性部材3、(第2圧電素子12)、及び第2固定手段4が一の平面上に設置された形態を例示したが、本発明は当該形態に限定されるものではない。設置箇所の形状に応じて、例えば一部を湾曲させつつ設置することもできる。

【0047】
また、上記説明では、駆動装置10~30に設けられる板状弾性部材3として、平面形状が長方形状の弾性部材を例示したが、本発明は当該形態に限定されるものではない。台形状、三角形状等、種々の平面形状を採用することができる。ただし、板状部材を両端から均等に撓ませ、略中心において凸となるように変形させる観点からは、平面形状が長方形状となる板状弾性部材を用いることが好ましい。

【0048】
また、上記説明では、一のステータに圧電素子を複数設ける場合について、板状弾性部材3と第2固定手段4との間に第2圧電素子12を設ける形態を例示したが、本発明は当該形態に限定されるものではない。板状弾性部材の形状に応じて、一のステータにおいて3つ以上の圧電素子を設けてもよい。ただし、駆動装置を小型化する観点からは、一の板状弾性部材に対する圧電素子の数は少ない方がよく、1~2個とすることが好ましい。

【0049】
また、上記説明では、ステータを複数設ける場合について、第2固定手段4を中心としてステータ5を120°間隔で3つ設ける形態を例示したが、本発明は当該形態に限定されるものではない。ステータの数やステータの設置形態については、可動部の形状や駆動装置を設置する箇所等に応じて決定することができる。

【0050】
また、上記説明では、規制手段として規制手段7a、7b、或いは板状弾性部材を多少湾曲させる形態のみを例示したが、規制手段の形態はこれらに限られるものではない。板状弾性部材3の撓みを規制可能な手段のいずれもが本発明に含まれる。
【実施例】
【0051】
以下、実施例により、本発明に係る駆動装置について、その効果をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の具体的形態に限定されるものではない。
【実施例】
【0052】
<駆動装置の構成>
図11に示す駆動装置を作製し、性能評価を行った。作製した駆動装置において、積層型圧電素子(NECトーキン、AE0203D16F)の長さは20mm、板状弾性部材(りん青銅)の長さは20mmとし、板状弾性部材の厚みは0.5mmとした。
【実施例】
【0053】
<変位量拡大効果の確認>
上記の通りに構成したステータについて、積層型圧電素子に140Vの電圧を印加した結果、積層型圧電素子の伸長量(図2の長さx)は13μmとなり、板状弾性部材の撓み量(図2の長さy)は50μmとなった。すなわち、約3.8倍の変位量拡大効果が得られた。尚、この拡大率は、板状弾性部材の形状寸法を変更することで、さらに向上させることができると考えられる。
【実施例】
【0054】
<駆動装置の動作実験>
図11に示すように、上記のステータと相互作用させることで直径30mmのロータを回転させた。積層型圧電素子に1kHz程度の台形波電圧を印加した結果、ロータを連続的に回転させることができた。その他の周波数においてもロータを連続的に回転させることができた。
【実施例】
【0055】
以上の通り、圧電素子の伸縮によって弾性部材をしゃくとり虫型に変形させ、圧電素子の伸縮量を弾性部材によって拡大させることによって、小型化されながらも大きな駆動力を得ることが可能な駆動装置を提供することができた。
【実施例】
【0056】
以上、現時点において、もっとも、実践的であり、かつ、好ましいと思われる実施形態に関連して本発明を説明したが、本発明は、本願明細書中に開示された実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲および明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う駆動装置もまた本発明の技術的範囲に包含されるものとして理解されなければならない。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明に係る駆動装置は機械的振動により励振されたステータを、ロータやスライダ等の可動部と接触させ、回転や直動動作させる摩擦駆動型のアクチュエータとして利用でき、例えば、カメラのオートフォーカスやXYステージのほか、セキュリティカメラや手術用機器、或いは自動車のドアミラーなどに組み込まれる多次元モータ等、様々な分野で好適に利用可能である。
【符号の説明】
【0058】
10 駆動装置
1 第1固定手段
2 第1圧電素子
3 板状弾性部材
4 第2固定手段
5 ステータ
6 可動部(ロータ)
7a、7b 規制手段
20 駆動装置
12 第2圧電素子
15 ステータ
30 駆動装置
26 可動部(球体)
40 駆動装置
35 ステータ
36 固定手段
37 連結手段
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図8】
6
【図9】
7
【図10】
8
【図11】
9
【図7】
10