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明細書 :塗膜形成用組成物

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5019208号 (P5019208)
公開番号 特開2008-246846 (P2008-246846A)
登録日 平成24年6月22日(2012.6.22)
発行日 平成24年9月5日(2012.9.5)
公開日 平成20年10月16日(2008.10.16)
発明の名称または考案の名称 塗膜形成用組成物
国際特許分類 C09D 201/00        (2006.01)
B32B   5/16        (2006.01)
C08J   5/18        (2006.01)
C09D   5/29        (2006.01)
C08J   7/04        (2006.01)
FI C09D 201/00
B32B 5/16
C08J 5/18 CER
C09D 5/29
C08J 7/04 CEZZ
請求項の数または発明の数 2
全頁数 7
出願番号 特願2007-091043 (P2007-091043)
出願日 平成19年3月30日(2007.3.30)
審査請求日 平成22年3月19日(2010.3.19)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京工業大学
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
【識別番号】000202350
【氏名又は名称】綜研化学株式会社
発明者または考案者 【氏名】渡辺 順次
【氏名】近藤 晃次
【氏名】石井 正彦
【氏名】吉田 哲也
個別代理人の代理人 【識別番号】100079049、【弁理士】、【氏名又は名称】中島 淳
【識別番号】100084995、【弁理士】、【氏名又は名称】加藤 和詳
【識別番号】100085279、【弁理士】、【氏名又は名称】西元 勝一
【識別番号】100099025、【弁理士】、【氏名又は名称】福田 浩志
審査官 【審査官】福井 美穂
参考文献・文献 特開2006-208453(JP,A)
特開2007-033593(JP,A)
特開平07-198904(JP,A)
特開2006-247915(JP,A)
特開2005-296747(JP,A)
特開平08-234007(JP,A)
調査した分野 C09D 201,5
B32B 5
C08J 5,7
特許請求の範囲 【請求項1】
屈折率が1.4~1.6であり、平均粒径が300nm~1μmで、変動係数が10%以下の微粒子に最密充填構造が支持体上に粘着層を介して形成されているフィルムを粉砕して得られる粉砕フィルムを含有することを特徴とする塗膜形成用組成物
【請求項2】
前記フィルムに光を入射させた際に反射される反射光が、前記フィルム表面に対する正反射角θに加えてθ±15°よりも外側の角度にも反射光を有することを特徴とする請求項1に記載の塗膜形成用組成物
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、オパール調の遊色効果を発現する塗膜形成用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
宝石のオパールは、サブミクロンオーダーのシリカ微粒子が三次元に規則配列している(結晶構造をとる)ことにより可視光のブラッグ反射が起こり、構造色が見られる。オパールは見る部分により様々な色が表れる。このような現象は遊色効果と呼ばれている。遊色効果が見られる原因の1つとして、シリカ微粒子により形成される結晶格子により、様々な結晶面が見えるためであると考えられている。従って、遊色効果を考えるうえでは、この結晶面の研究が非常に重要となる。
【0003】
このような結晶面の検討の1つとして、固-液分散系サスペンジョンを乾燥させ、分散質の有機または無機の球状微粒子が粒子配列構造体として均質な3次元粒子整合体およびその製造方法に用いる球状微粒子の3次元整合体塗工膜の製造方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。そして、特許文献1によれば、自然光もしくは白色光の照射下に鮮明な有彩色発色を賦与させることができるとしている。しかし、特許文献1に記載の塗工膜は、特定の遊彩光発色であるため、十分に満足のいく遊色効果は得られない。

【特許文献1】特開平2005-60654号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記従来の問題を解決することを目的とする。すなわち、本発明は、顔料といった色材を含有させなくても、効率よく、良好な遊色効果を発揮させることが可能なフィルムおよび塗膜形成用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明者は、下記本発明に想到し当該課題を解決できることを見出した。
【0006】
本発明の第1のフィルムは、屈折率が1.4~1.6であり、平均粒径が300nm~1μmで、変動係数が10%以下の微粒子を含有し、当該微粒子により最密充填構造が形成されていることを特徴とする。単分散の微粒子を最密充填構造とし、上記所定の平均粒径で特定の屈折率の微粒子を使用することで、意図的に、効率よく、かつ良好な遊色効果を発揮させることができる。
【0007】
また、本発明の第2のフィルムは、微粒子を含有し、当該微粒子により最密充填構造が形成され、光を入射させた際に反射される反射光が、フィルム表面に対する正反射角θに加えてθ±15°よりも外側の角度にも反射光を有することを特徴とする。微粒子により最密充填構造が形成されることで、遊色効果が発現するが、このときに上記反射光の散乱角度を上記所定の範囲とすることで、意図的に、効率よく、かつ良好な遊色効果を発揮させることができる。
【0008】
また、本発明の塗膜形成用組成物は、既述の本発明のフィルムを粉砕して得られる粉砕フィルムを含有することを特徴とする。当該粉砕フィルムは、効率よく、かつ良好な遊色効果を発揮させるフィルムからなるため、これを含有する塗膜形成用組成物も、効率よく、かつ良好な遊色効果を発揮させることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、顔料といった色材を含有させなくても、効率よく、良好な遊色効果を発揮させることが可能な塗膜形成用組成物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
[第1のフィルム]
本発明の第1のフィルムは、屈折率が1.4~1.6であり、平均粒径が300nm~1μmで、変動係数が10%以下の微粒子を含有している。変動係数が10%以下でないと最密充填構造を形成できない。そして、最密充填構造とすることで、微粒子が密に集合し光の散乱効果が向上する。その結果、良好な遊色効果を発現させることができる。
【0011】
微粒子としては、ポリスチレン、PMMA(ポリ(メタ)アクリル酸メチル)、ポリメタクリル酸エステル、テトラフルオロエチレン、ポリ-4-メチルペンテン-1、ポリベンジル(メタ)アクリレート、ポリフェニレンメタクリレート、ポリシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ポリエチレンテレフタレート、スチレン・アクリロニトリル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリウレタン等といった材料から選択することができる。なかでも、ポリスチレン、PMMA(ポリ(メタ)アクリル酸メチル)、ポリメタクリル酸エステルが好ましい。上記のような平均粒径と変動係数で最密充填構造を形成できれば、微粒子同士が異なる材質であってもよい。なお、微粒子は、市販品(例えば、綜研化学株式会社製)のものを使用してもよい。
【0012】
また、光の干渉作用は光学的な距離で決まる。光学的な距離は、実際の距離と屈折率との積で決まる。光学的な距離が可視光に対し干渉回折作用をするような結晶面とする場合、上記微粒子の屈折率が1.4~1.6であり平均粒径が300nm~1μmであることが必要となる。
【0013】
微粒子の平均粒径が300nm未満で、かつ、屈折率が1.4未満であると、可視光に対してフィルム表面と平行な結晶面以外を得ることができない。平均粒径が1μmを超え、かつ、屈折率が1.6を超えると、ほとんどの反射光が可視光域より大きい波長となり色材として実用性がない。平均粒径は、300~500nmであることがより好ましい。
【0014】
屈折率、粒径(平均粒径)および変動係数は種々の方法で測定することができる。まず、粒径は、電子顕微鏡観察から大体の大きさを直接測定することができる。屈折率については、粒子と空間の体積分率から算出する方法がある。なかでも、本発明で規定される屈折率および粒径は、反射スペクトルから測定することが好ましい。以下、微粒子として、ポリメタクリル酸エステルを使用した場合を例に、当該測定方法について説明する。
【0015】
図1に示すように、基板(支持体)上に三次元規則配列したPME(ポリメタクリル酸エステル)微粒子のフィルム10からの正反射光12の反射スペクトル(反射光14)を、角度を変えながら測定をする。角度を変えることで、当該角度に対応する反射スペクトルが得られる。そこで、そのピーク波長を角度に対してプロットしたグラフを、スネルの法則(下記式(1))とブラッグの式(下記式(2))とを合わせた下記式(3)でフィッティングすることで、屈折率を決定できる。その屈折率と垂直反射光の波長からブラッグの式により粒径を算出できる。
【0016】
式(1):nsinθ=nsinθ
式(2):mλ=2ndsinθ
式(3):2d(n-cosθ1/2=mλ
【0017】
上記式(3)でフィッティングする場合、反射光が得られたミラ一面を特定する必要がある。しかし、θが90°の時の反射スペクトル波長をλ90とすると、式(4-1)のようになるので、上記式(3)に下記式(4-2)を代入すると、下記式(5)のようになる。
【0018】
式(4-1):λ90=2ndsin90
式(4-2):d=λ90÷2÷n
式(5):λ90/n×(n-cosθ1/2=mλ
【0019】
そして、上記式(5)でフィッティングを行えばミラー面を特定することなくフィルムの平均屈折率を決定することができ、その値から粒子の充填率(74%)より微粒子の屈折率を算出することができる。そして、式(4-2)からdを算出できるが、dは最密充填面の面間距離(fccだと(111)面、hcpだと(002)面)であることがわかっている。このdと粒径の関係は下記式(6)のようになっているので、平均粒径を求めることができる。
【0020】
式(6):「d:粒径=21/2:31/2
【0021】
変動係数は、例えば、大塚電子株式会社のレーザーゼータ電位計ELS-8000を用い、粒径分布をヒストグラムで表し、粒径分布をCV値で算出して求めることができる。CV値とは粒子径の均一さを表す値で、平均粒径dで標準偏差σを割った値、すなわち、変動係数である。
【0022】
[第2のフィルム]
本発明の第2のフィルムは、微粒子を含有し、当該微粒子により最密充填構造が形成され、光を入射させた際に反射される反射光が、フィルム表面に対する正反射角θに加えてθ±15°よりも外側の角度にも反射光を有する。
【0023】
微粒子および最密充填構造などに関しては、本発明の第1のフィルムと同様である。本発明の第2のフィルムは、正反射以外にも特異的な光が反射光として生じる。そして、この特異的な光が遊色効果を示す1つの要因と考え、オパール調の色彩をより鮮やかに発現させると考えられる。上記反射光が、フィルム表面の正反射角θより15°以内である場合、オパール調特有の鮮やかな遊色効果が得られない。反射光の検出は、市販の装置(例えば、株式会社相馬光学のマルチチャンネル分光計FiberSpecS-2650)で容易に行うことができる。
【0024】
以上、本発明の第1および第2のフィルムは、種々の形態として利用に供することができる。例えば、支持体上に最密充填構造を形成する微粒子が塗膜として形成されたフィルムや、かかる支持体から塗膜を剥離し、当該塗膜だけの構成としたフィルムなどとして利用に供することができる。
【0025】
上記支持体としては、特に限定することなく、透明、半透明、不透明の何れにおいてもよく、部材としてプラスチックフィルム、硬質プラスチックシート、ガラス板、セラミックス板、各種の鋼板、ステンレス板、アルミニウム合金板、銅板、木板、布地等を挙げることができる。また、特にプラスチックス材においては、通常の有機ポリマーが用いられ、特に必要に応じて透明部材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリエチル(メタ)アクリレート等のアクリル系樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン等が挙げられる。
【0026】
ここで、上記塗膜の膜厚は、良好な遊色効果を発揮しながらひび割れなどの不具合を生じないようにするため、1μm~500μmとすることが好ましく、5μm~50μmとすることがより好ましい。本発明のフィルムは、例えば、意匠部品・小物への装飾や包装用など幅広い範囲で使用することができる。
【0027】
[塗膜形成用組成物]
本発明の塗膜形成用組成物は、既述のフィルムを粉砕して得られる粉砕フィルムを含有する。当該粉砕フィルムは、既述の本発明のフィルムからなるため、これを含有する塗膜形成用組成物フィルムも、効率よく、かつ良好な遊色効果を発揮させることができる。フィルムの粉砕方法は特に限定されず、粉砕フィルムの大きさは、5μm~300μmとすることが好ましい。塗膜形成用組成物は、さらに、塗膜形成のためのバインダーを含有している。当該バインダーとしては、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、フッ素樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、及びポリエーテル樹脂等が挙げられ、これらは2種以上を適宜組み合わせて使用することも可能である。特にアクリル樹脂、及びポリエステル樹脂が好ましく用いられる。
上記アクリル樹脂としては、アクリル系モノマーと他のエチレン性不飽和モノマーとの共重合体を挙げることができる。上記共重合体に使用可能なアクリル系モノマーとしては、アクリル酸又はメタクリル酸のメチル、エチル、プロピル、n-ブチル、i-ブチル、t-ブチル、2-エチルヘキシル、ラウリル、フェニル、ベンジル、2-ヒドロキシエチル、2-ヒドロキシプロピル等のエステル化物類、アクリル酸又はメタクリル酸2-ヒドロキシエチルのカプロラクトンの開環付加物類、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、アクリルアミド、メタクリルアミド及びN-メチロールアクリルアミド、多価アルコールの(メタ)アクリル酸エステル等がある。これらと共重合可能な上記他のエチレン性不飽和モノマーとしては、スチレン、α-メチルスチレン、イタコン酸、マレイン酸、酢酸ビニル等がある。
上記ポリエステル樹脂としては、飽和ポリエステル樹脂や不飽和ポリエステル樹脂等が挙げられ、例えば、多塩基酸と多価アルコールを加熱縮合して得られた縮合物が挙げられる。多塩基酸としては、飽和多塩基酸、不飽和多塩基酸が挙げられ、飽和多塩基酸としては、例えば、無水フタル酸、テレフタル酸、コハク酸等が挙げられ、不飽和多塩基酸としては、例えば、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸等が挙げられる。多価アルコールとしては、例えば、二価アルコール、三価アルコール等が挙げられ、二価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール等が挙げられ、三価アルコールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン等が挙げられる。
【0028】
当該塗膜形成用組成物は、自動車用、建材用など幅広い範囲で使用することができる。
【実施例】
【0029】
(ポリメタクリル酸エステル単分散球状粒子(PME微粒子)の合成)
メタクリル酸メチル(MMA)(屈折率1.4118~1.4125)とメタクリル酸(MAA)(屈折率1.4288)とを混合したものをモノマーとし、乳化剤としてドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、開始剤に過硫酸カリウム(KPS)、分散媒にイオン交換水を用い、乳化重合によりPME微粒子分散液を調製した。この際、各種原料の量、重合温度、攪拌速度を制御することにより、粒径の揃った単分散の微粒子を合成できる。分散液のpHは3~4の酸性とすることが好ましい。合成したPME微粒子を電子顕微鏡により観察すると、ほぼ球形であり、単分散であることが確認された。具体的には、既述の方法で測定した微粒子の平均粒径は、427nmであり、変動係数は、6%であった。
【0030】
(フィルムの作製)
図2示すようにしてフィルムを作製した。まず、図2(A)に示すように、支持体としてのPETフィルム20の上にアクリル系粘着剤22を塗布した。その上にPME微粒子分散液を塗布して微粒子24を含有する塗膜26を形成し(図2(B))、75℃のオーブンで20分乾燥して、微粒子からなる膜28が形成されたフィルム(図2(C))を作製した。
【0031】
さらに、株式会社相馬光学のマルチチャンネル分光計FiberSpecS-2650を用い反射スペクトルを測定した。光源はハロゲンランプ、測定波長範囲は350nm~1050nmである。解析用のソフトウェアは、株式会社相馬光学のFastevert(Ver:1.3jB)を使用した。
【0032】
測定用のプローブは二種類あり、垂直反射光測定用および角度可変測定用である。垂直反射光測定用(垂直プローブ)は光源からの光ファイバーの回りに検出用の光ファイバーが付いている、一体型のプローブである。角度可変測定用は光源用の光ファイバーと検出用の光ファイバーが分かれており、それぞれ角度を変えて測定可能である。測定によりプローブを変えて測定を行った。
【0033】
その結果、光を60°の入射角で入射させた際に反射される反射光が、正反射の反射角θ=60°に加えて45°~75°より外側の角度(前記θより入射角側に75°)で観察された。また、外観も、オパールと同様の鮮やかな遊色効果を確認することができた。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】反射スペクトルの測定方法を説明する説明図である。
【図2】本発明のフィルムの製造工程を説明する工程図であり、(A)は粘着剤を支持体上に塗布した状態を示し、(B)は塗膜を形成した状態を示し、(C)はフィルムが完成した状態を示す。
【符号の説明】
【0035】
10・・・フィルム
12・・・正反射光
14・・・反射光
20・・・PETフィルム
22・・・アクリル系粘着剤
24・・・微粒子
26・・・塗膜
28・・・膜
図面
【図1】
0
【図2】
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