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明細書 :バイオ電池

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5059413号 (P5059413)
登録日 平成24年8月10日(2012.8.10)
発行日 平成24年10月24日(2012.10.24)
発明の名称または考案の名称 バイオ電池
国際特許分類 H01M   4/86        (2006.01)
H01M   4/90        (2006.01)
H01M   4/88        (2006.01)
H01M   8/16        (2006.01)
FI H01M 4/86 B
H01M 4/90 Y
H01M 4/88 C
H01M 8/16
請求項の数または発明の数 18
全頁数 26
出願番号 特願2006-547901 (P2006-547901)
出願日 平成17年11月28日(2005.11.28)
国際出願番号 PCT/JP2005/021801
国際公開番号 WO2006/057387
国際公開日 平成18年6月1日(2006.6.1)
優先権出願番号 2004341423
優先日 平成16年11月26日(2004.11.26)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成20年11月20日(2008.11.20)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京工業大学
発明者または考案者 【氏名】山口 猛央
【氏名】田巻 孝敬
個別代理人の代理人 【識別番号】100103447、【弁理士】、【氏名又は名称】井波 実
審査官 【審査官】前田 寛之
参考文献・文献 特開昭54-050396(JP,A)
特開2004-071559(JP,A)
特開2004-234976(JP,A)
特開2004-303651(JP,A)
調査した分野 H01M 4/86
H01M 4/88
H01M 4/90
H01M 8/16
特許請求の範囲 【請求項1】
7nm以上の細孔にかかる比表面積である外部比表面積が0.5m/g以上であるカーボン、レドックスポリマー、及び生体触媒又はその類似体を有する材料であって、
前記カーボンが重合開始基を有し、
前記レドックスポリマーは、該重合開始基からグラフト重合により形成され、その一端が前記カーボンに化学的に結合し、
前記レドックスポリマーは、酸化還元挙動を示す酸化還元部位を有し、且つ10-16S/cm以上の電子伝導性を示す、上記材料。
【請求項2】
前記材料と接触する第1の物質が前記生体触媒又はその類似体により酸化される際に生じる電子を前記レドックスポリマーを介して電子伝導体に伝達する請求項1記載の材料
【請求項3】
前記材料と接触する第2の物質が前記生体触媒又はその類似体により還元される際の電子を電子伝導体を介してレドックスポリマーに伝達する請求項1記載の材料
【請求項4】
前記カーボンが、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、及びカーボンナノホーンからなる群から選ばれる請求項1~3のいずれか1項記載の材料。
【請求項5】
前記カーボンの外部比表面積が1m/g以上である請求項1~のいずれか1項記載の材料。
【請求項6】
前記レドックスポリマーの酸化還元部位が、フェロセン誘導体類、キノン化合物、オスミウムビピリジン錯体類、オスミウムビイミダゾール錯体類、ビオローゲン、及び2,2-アゾビス(3-エチルベンゾチアゾリン-6-スルホネート)からなる群から選ばれる請求項1~のいずれか1項記載の材料。
【請求項7】
前記生体触媒が、グルコースオキシダーゼ、グルコースデヒドロゲナーゼ、グルコン酸2-デヒドロゲナーゼ、ケトグルコン酸2-デヒドロゲナーゼ、アルコールオキシダーゼ、アルコールデヒドロゲナーゼ、アルデヒドデヒドロゲナーゼ、ギ酸デヒドロゲナーゼ、乳酸デヒドロゲナーゼ、アルドースデヒドロゲナーゼ、オリゴ糖デヒドロゲナーゼ、ビリルビンオキシダーゼ、ラッカーゼ、及びシトクロームオキシダーゼからなる群から選ばれる請求項1~のいずれか1項記載の材料。
【請求項8】
前記材料が、電池用負極、又は電池用正極として用いられる請求項1~のいずれか1項記載の材料。
【請求項9】
7nm以上の細孔にかかる比表面積である外部比表面積が0.5m/g以上であるカーボン、レドックスポリマー、及び生体触媒又はその類似体を有する材料の製造方法であって、次のa)~c)を順不同に有するか及び/又はa)~c)のいずれか2つもしくは3つを同時に行う、上記方法:
a)重合開始基を有するカーボンとレドックスポリマー前駆体とを混合し、前記重合開始基からグラフト重合するポリマーを前記レドックスポリマー前駆体から形成し、前記カーボンと前記ポリマーとを化学的に結合する工程(但し、酸化還元部位を有しないレドックスポリマー前駆体を用いる場合、前記酸化還元部位をレドックスポリマー前駆体に導入しレドックスポリマーを形成する工程をa)~c)の工程のいずれかの前後又はa)~c)と同時に有する);
b)カーボンの粒子をカーボンの3次元的なネットワークへと形成する工程;及び
c)生体触媒又はその類似体を導入する工程。
【請求項10】
前記a)工程、前記b)工程及び前記c)工程の順で行う請求項9記載の方法であって、
前記b)工程は、前記a)工程で得られたカーボンの粒子を用いて、前記カーボンの3次元的なネットワークを形成し、
前記c)工程は、前記b)工程で得られた3次元的なネットワークへ、生体触媒又はその類似体を導入する、請求項9記載の方法。
【請求項11】
請求項1~8のいずれか1項記載の材料を有する負極;
電子伝導性及びプロトン伝導性を有する正極;及び
前記正極と前記負極とに挟まれた電解質;を有する電池
【請求項12】
前記負極がプロトン伝導性を有する請求項11記載の電池。
【請求項13】
前記正極が、請求項1~8のいずれか1項記載の材料を有する請求項11又は12記載の電池。
【請求項14】
請求項1~8のいずれか1項記載の材料を有する正極;
電子伝導性及びプロトン伝導性を有する負極;及び
前記正極と前記負極とに挟まれた電解質;を有する電池。
【請求項15】
前記正極は、プロトン伝導性を有する請求項14記載の電池。
【請求項16】
電池の燃料がメタノールであり、前記生体触媒がアルコールデヒドロゲナーゼ、アルデヒドデヒドロゲナーゼ、及びギ酸デヒドロゲナーゼである請求項11~15のいずれか1項記載の電池。
【請求項17】
電池の燃料がエタノールであり、前記生体触媒がアルコールデヒドロゲナーゼ、及びアルデヒドデヒドロゲナーゼである請求項11~15のいずれか1項記載の電池。
【請求項18】
電池の燃料がグルコースであり、前記生体触媒がグルコースオキシダーゼ、グルコン酸2-デヒドロゲナーゼ、及びケトグルコン酸デヒドロゲナーゼである請求項11~15のいずれか1項記載の電池。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、電子授受に関与する材料に関する。また、本発明は、該材料を電極として用いるバイオ電池、特にバイオ燃料電池、並びにそれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、燃料電池の研究・開発が特に盛んになっている。ここでの燃料電池は、水素源として、水素それ自体又はメタノールを用いている。
一方、触媒として生体触媒を用いるバイオ燃料電池がある。このバイオ燃料電池は、生体触媒(例えば酵素及び該酵素を含む生体物質)により燃料を酸化する際に生じた還元型の補酵素から、容易に酸化・還元反応を行うメディエータ(mediator)により、電子を外部回路に取り出すことで、燃料の持つ化学エネルギーを電気エネルギーへ変換するデバイスである。前述のように、バイオ燃料電池は、触媒が生体触媒(例えば酵素)であるため、該生体触媒の選択により、様々な基質を燃料として利用できる。そのため、従来の燃料電池では十分に検討されなかった、バイオマス由来の物質、例えばグルコース又はエタノールから電気エネルギーを取り出すデバイスとしてのバイオ燃料電池、生体内に存在するグルコース又は乳酸などにより作動するミクロな医療機器の動力源としてのバイオ燃料電池の開発が期待されている。

【非特許文献1】A.Heller, Phys. Chem. Chem. Phys., 6, 209(2004)。
【特許文献1】米国特許第6,531,239号。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記非特許文献1における、バイオ燃料電池の最大出力密度は、350μW/cmにとどまっている。これは、電極の見かけ面積、即ち投影面積あたりで有効に働く生体触媒の固定化量が少ないことが主として考えられる。
【0004】
そこで、本発明の目的は、出力密度を向上させたバイオ燃料電池、及びそれに用いられる電極用材料、並びにそれらの製造方法を提供することにある。
また、本発明の目的は、上記の燃料電池用の材料に限らず、電子授受に関与する材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、外部比表面積が大である電子伝導体を用い、該電子伝導体による3次元ネットワーク構造を形成することにより、電極の見かけ面積の増加を図ることにした。また、生体触媒又はその類似体(以下、単に「生体触媒など」と略記する場合がある)を該3次元ネットワーク中に固定化することにより、その固定化量を高めることとした。さらに、レドックスポリマーを含めることにより、該レドックスポリマーが生体触媒などと、比表面積の大きな、特に外部比表面積の大きな電子伝導体との電子のやりとりを仲介できることを見出した。
【0006】
具体的には、本発明者らは、以下の発明により、上記課題を解決できることを見出した。
<1> 7nm以上の細孔にかかる比表面積である外部比表面積が0.5m/g以上である電子伝導体、レドックスポリマー、及び生体触媒又はその類似体、例えば生体触媒を有する材料であって、
前記レドックスポリマーは、酸化還元挙動を示す酸化還元部位を有し、且つ10-16S/cm以上の電子伝導性を示す、上記材料。
【0007】
<2> 7nm以上の細孔にかかる比表面積である外部比表面積が0.5m/g以上である電子伝導体、レドックスポリマー、及び生体触媒又はその類似体、例えば生体触媒を有する材料であって、
前記レドックスポリマーは、酸化還元挙動を示す酸化還元部位を有し、且つ10-16S/cm以上の電子伝導性を示し、
前記材料と接触する第1の物質が前記生体触媒又はその類似体により酸化される際に生じる電子を前記レドックスポリマーを介して電子伝導体に伝達する、上記材料。
<3> 7nm以上の細孔にかかる比表面積である外部比表面積が0.5m/g以上である電子伝導体、レドックスポリマー、及び生体触媒又はその類似体、例えば生体触媒を有する材料であって、
前記レドックスポリマーは、酸化還元挙動を示す酸化還元部位を有し、且つ10-16S/cm以上の電子伝導性を示し、
前記材料と接触する第2の物質が前記生体触媒又はその類似体により還元される際の電子を電子伝導体を介してレドックスポリマーに伝達する、上記材料。
【0008】
<4> 上記<1>~<3>のいずれかにおいて、電子伝導体が、カーボン、導電性ポリマー、及び金属からなる群から選ばれるのがよい。なお、導電性ポリマーの場合、その分子量が50~100万、好ましくは1000~10万であるのがよい。
<5> 上記<1>~<4>のいずれかにおいて、電子伝導体は、その形状が粒状、又は棒状であるのがよい。粒状の場合はその粒径、棒状である場合はその断面の直径がそれぞれ、10μm以下、好ましくは1μm以下、より好ましくは100nm以下であるのがよい。
【0009】
<6> 上記<4>又は<5>において、カーボンが、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、及びカーボンナノホーンからなる群から選ばれるのがよい。
<7> 上記<1>~<6>のいずれかにおいて、電子伝導体の外部比表面積が1m/g以上、好ましくは6~5000m/g、より好ましくは10~800m/gであるのがよい。
<8> 上記<1>~<7>のいずれかにおいて、レドックスポリマーの酸化還元部位が、フェロセン誘導体類(例えばフェロセン基、カルボキシフェロセン、ジカルボキシフェロセン、メチルフェロセン、ジメチルフェロセン、ビニルフェロセンなど)、キノン化合物(例えばベンゾキノン、ヒドロキノン、ナフトキノン、ピロキノリンキノンなど)、オスミウムビピリジン錯体類([Os(4,4’-ジメチル-2,2’-ビピリジン)Cl]+/2+、[Os(4,4’-ジアミノ-2,2’-ビピリジン)Cl]+/2+、[Os(4,4’-ジメトキシ-2,2’-ビピリジン)Cl]+/2+、[Os(ターピリジン)(4,4’-ジメチル-2,2’-ビピリジン)Cl]2+/3+、[Os(4,4’-ジクロロ-2,2’-ビピリジン)Cl]+/2+など)、オスミウムビイミダゾール錯体類([Os(4,4’-ジアルキル化-2,2’-ビイミダゾール)2+/3+など)、ビオローゲン、及び2,2-アゾビス(3-エチルベンゾチアゾリン-6-スルホネート)からなる群から選ばれるのがよい。
【0010】
<9> 上記<1>~<8>のいずれかにおいて、レドックスポリマーは、その一端が電子伝導体に化学的に結合するのがよい。
<10> 上記<1>~<9>のいずれかにおいて、生体触媒が、オキシダーゼ又はデヒドロゲナーゼであるのがよく、特に、グルコースオキシダーゼ、グルコースデヒドロゲナーゼ、グルコン酸2-デヒドロゲナーゼ、ケトグルコン酸2-デヒドロゲナーゼ、アルコールオキシダーゼ、アルコールデヒドロゲナーゼ、アルデヒドデヒドロゲナーゼ、ギ酸デヒドロゲナーゼ、乳酸デヒドロゲナーゼ、アルドースデヒドロゲナーゼ、オリゴ糖デヒドロゲナーゼ、ビリルビンオキシダーゼ、ラッカーゼ、及びシトクロームオキシダーゼからなる群から選ばれるのがよい。
<11> 上記<1>~<10>のいずれかにおいて、材料が、電池用負極、又は電池用正極として用いられるのがよい。
【0011】
<12> 7nm以上の細孔にかかる比表面積である外部比表面積が0.5m/g以上である第1の電子伝導体、第1のレドックスポリマー、及び第1の生体触媒又はその類似体を有する負極;
プロトン伝導性を有する正極;及び
前記正極と前記負極とに挟まれた電解質;を有する電池であって、
前記第1のレドックスポリマーは、酸化還元挙動を示す第1の酸化還元部位を有し、且つ10-16S/cm以上の電子伝導性を示す、上記電池。
【0012】
<13> 上記<12>において、負極がプロトン伝導性を有するのがよい。特に、プロトン伝導性を示す材料、例えばNafion、炭化水素系プロトン伝導性ポリマーを有するのがよい。
<14> 上記<12>又は<13>において、第1の生体触媒が、グルコースオキシダーゼ、グルコースデヒドロゲナーゼ、グルコン酸2-デヒドロゲナーゼ、ケトグルコン酸2-デヒドロゲナーゼ、アルコールオキシダーゼ、アルコールデヒドロゲナーゼ、アルデヒドデヒドロゲナーゼ、ギ酸デヒドロゲナーゼ、乳酸デヒドロゲナーゼ、アルドースデヒドロゲナーゼ、及びオリゴ糖デヒドロゲナーゼからなる群から選ばれるのがよい。
【0013】
<15> 上記<12>~<14>のいずれかにおいて、第1の酸化還元部位が、フェロセン誘導体類(フェロセン基、カルボキシフェロセン、ジカルボキシフェロセン、メチルフェロセン、ジメチルフェロセン、ビニルフェロセンなど)、キノン化合物(ベンゾキノン、ヒドロキノン、ナフトキノン、ピロキノリンキノンなど)、オスミウムビピリジン錯体類([Os(4,4’-ジメチル-2,2’-ビピリジン)Cl]+/2+、[Os(4,4’-ジアミノ-2,2’-ビピリジン)Cl]+/2+、[Os(4,4’-ジメトキシ-2,2’-ビピリジン)Cl]+/2+など)、オスミウムビイミダゾール錯体類([Os(4,4’-ジアルキル化-2,2’-ビイミダゾール)2+/3+など)、及びビオローゲンからなる群から選ばれるのがよい。
<16> 上記<12>~<15>のいずれかにおいて、正極が第2の電子伝導体を有するのがよい。
<17> 上記<12>~<16>のいずれかにおいて、正極が第2のレドックスポリマーを有し、該レドックスポリマーは、酸化還元挙動を示す第2の酸化還元部位を有し、且つ10-16S/cm以上の電子伝導性を示すのがよい。
【0014】
<18> 上記<12>~<17>のいずれかにおいて、第2のレドックスポリマーが、オスミウムビピリジン錯体類([Os(ターピリジン)(4,4’-ジメチル-2,2’-ビピリジン)Cl]2+/3+、[Os(4,4’-ジクロロ-2,2’-ビピリジン)Cl]+/2+など)、及び2,2-アゾビス(3-エチルベンゾチアゾリン-6-スルホネート)からなる群から選ばれるのがよい。
<19> 上記<12>~<18>のいずれかにおいて、正極は、プロトン伝導性ポリマーを有するのがよい。
<20> 上記<12>~<19>のいずれかにおいて、正極が触媒を有するのがよい。
<21> 上記<20>において、触媒が第2の生体触媒又はその類似体であるのがよい。
<22> 上記<21>において、第2の生体触媒が、ビリルビンオキシダーゼ、ラッカーゼ、及びシトクロームオキシダーゼからなる群から選ばれるのがよい。
【0015】
<23> 上記<12>~<22>のいずれかにおいて、第1及び/又は第2の電子伝導体は、カーボン、導電性ポリマー、及び金属からなる群から選ばれるのがよい。なお、導電性ポリマーの場合、その分子量が50~100万、好ましくは1000~10万であるのがよい。
<24> 上記<12>~<23>のいずれかにおいて、第1及び/又は第2の電子伝導体は各独立に、その形状が粒状、又は棒状であるのがよい。粒状の場合はその粒径、棒状である場合はその断面の直径がそれぞれ、10μm以下、好ましくは1μm以下、より好ましくは100nm以下であるのがよい。
<25> 上記<23>又は<24>において、カーボンが、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、及びカーボンナノホーンからなる群から選ばれるのがよい。
<26> 上記<12>~<25>のいずれかにおいて、第1及び/又は第2の電子伝導体の外部比表面積が1m/g以上、好ましくは6~5000m/g、より好ましくは10~800m/gであるのがよい。
<27> 上記<12>~<26>のいずれかにおいて、電池は燃料電池であるのがよい。
【0016】
<28> 7nm以上の細孔にかかる比表面積である外部比表面積が0.5m/g以上である電子伝導体、レドックスポリマー、及び生体触媒又はその類似体を有する材料の製造方法であって、次のa)~c)を順不同に有するか及び/又はa)~c)のいずれか2つもしくは3つを同時に行う、上記方法:
a)電子伝導体とレドックスポリマー又はレドックスポリマー前駆体とを混合及び/又は結合する工程(但し、酸化還元部位を有しないレドックスポリマー前駆体を用いる場合、前記酸化還元部位をレドックスポリマー前駆体に導入しレドックスポリマーを形成する工程をa)~c)の工程のいずれかの前後又はa)~c)と同時に有する);
b)電子伝導体前駆体を3次元的な電子伝導体へと形成する工程;
c)生体触媒又はその類似体を導入する工程。
【0017】
<29> 上記<28>において、電子伝導体が、カーボン、導電性ポリマー、及び金属からなる群から選ばれるのがよい。なお、導電性ポリマーの場合、その分子量が50~100万、好ましくは1000~10万であるのがよい。
<30> 上記<28>又は<29>のいずれかにおいて、電子伝導体前駆体は、その形状が粒状、又は棒状であるのがよい。粒状の場合はその粒径、棒状である場合はその断面の直径がそれぞれ、10μm以下、好ましくは1μm以下、より好ましくは100nm以下であるのがよい。
【0018】
<31> 上記<29>又は<30>において、カーボンが、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、及びカーボンナノホーンからなる群から選ばれるのがよい。
<32> 上記<28>~<31>のいずれかにおいて、電子伝導体の外部比表面積が1m/g以上、好ましくは6~5000m/g、より好ましくは10~800m/gであるのがよい。
<33> 上記<28>~<32>のいずれかにおいて、レドックスポリマーの酸化還元部位が、フェロセン誘導体類(例えばフェロセン基、カルボキシフェロセン、ジカルボキシフェロセン、メチルフェロセン、ジメチルフェロセン、ビニルフェロセンなど)、キノン化合物(例えばベンゾキノン、ヒドロキノン、ナフトキノン、ピロキノリンキノンなど)、オスミウムビピリジン錯体類([Os(4,4’-ジメチル-2,2’-ビピリジン)Cl]+/2+、[Os(4,4’-ジアミノ-2,2’-ビピリジン)Cl]+/2+、[Os(4,4’-ジメトキシ-2,2’-ビピリジン)Cl]+/2+、[Os(ターピリジン)(4,4’-ジメチル-2,2’-ビピリジン)Cl]2+/3+、[Os(4,4’-ジクロロ-2,2’-ビピリジン)Cl]+/2+など)、オスミウムビイミダゾール錯体類([Os(4,4’-ジアルキル化-2,2’-ビイミダゾール)2+/3+など)、ビオローゲン、及び2,2-アゾビス(3-エチルベンゾチアゾリン-6-スルホネート)からなる群から選ばれるのがよい。
【0019】
<34> 上記<28>~<33>の工程a)において、電子伝導体とレドックスポリマー又はレドックスポリマー前駆体とは、該レドックスポリマー又はその前駆体の一端が電子伝導体又は電子伝導体前駆体に化学的に結合するのがよい。
<35> 上記<28>~<34>のいずれかにおいて、生体触媒が、グルコースオキシダーゼ、グルコースデヒドロゲナーゼ、グルコン酸2-デヒドロゲナーゼ、ケトグルコン酸2-デヒドロゲナーゼ、アルコールオキシダーゼ、アルコールデヒドロゲナーゼ、アルデヒドデヒドロゲナーゼ、ギ酸デヒドロゲナーゼ、乳酸デヒドロゲナーゼ、アルドースデヒドロゲナーゼ、オリゴ糖デヒドロゲナーゼ、ビリルビンオキシダーゼ、ラッカーゼ、及びシトクロームオキシダーゼからなる群から選ばれるのがよい。
<36> 上記<28>~<35>のいずれかにおいて、材料が、電池用負極、又は電池用正極として用いられるのがよい。
【0020】
<37> 燃料をn段階(nは2以上の整数)でn以上の生体触媒反応又は生体触媒類似反応で分解する、1~n個の電池領域を有する電池であって、
1~n個の電池領域が第1~第nの電池領域であり、該第1~第nの電池領域が直列及び/又は並列に配線され、
第1の電池領域は、第1の負極、第1の正極及び前記第1の正極と前記第1の負極とに挟まれた第1の電解質を有し、
第1の負極が7nm以上の細孔にかかる比表面積である外部比表面積が0.5m/g以上、好ましくは6~5000m/g、より好ましくは10~800m/gである第1の電子伝導体、第1のレドックスポリマー、及び第1の生体触媒又はその類似体を有し、前記第1のレドックスポリマーは、酸化還元挙動を示す第1の酸化還元部位を有し、且つ10-16S/cm以上の電子伝導性を示し、
第1の正極が電子伝導性を有し、
第mの電池領域(mは2からnまでのすべての整数)は各々、第mの負極、第mの正極及び前記第mの正極と前記第mの負極とに挟まれた第mの電解質を有し、
第mの負極が7nm以上の細孔にかかる比表面積である外部比表面積が0.5m/g以上である第mの電子伝導体(第mの電子伝導体は、第1~第(m-1)の電子伝導体と同じであっても異なってもよい)、第mのレドックスポリマー(第mのレドックスポリマーは、第1~第(m-1)のレドックスポリマーと同じであっても異なってもよい)、及び第mの生体触媒又はその類似体(第mの生体触媒又はその類似体は各々、第1~第(m-1)の生体触媒又はその類似体とは異なる)を有し、前記第mのレドックスポリマーは、酸化還元挙動を示す第mの酸化還元部位(第mの酸化還元部位は、第1~第(m-1)の酸化還元部位と同じであっても異なってもよい)を有し、且つ10-16S/cm以上の電子伝導性を示し、
第mの正極が電子伝導性を有し、
第1の負極において、燃料が第1の生体触媒又はその類似体により第1の分解物に分解されると共に1電子以上を生成し、
第mの負極の各々において、第(m-1)の分解物が第mの生体触媒又はその類似体により第mの分解物に分解されると共に1電子以上を生成する、上記電池。
【0021】
<38> 上記<37>において、第1~第nの電解質が略一平面に形成され、第1~第nの負極が該略一平面の一面に、第1~第nの正極が該略一平面の他面に形成され、且つ、第1~第nの負極が形成される略一平面の一面上に、燃料及び第1~第nの分解物が接触するように、第1~第nの負極が形成されるのがよい。
<39> 上記<37>又は<38>において、第(m-1)の正極と第mの負極とが通電され、第1~第nの電池領域が直列に配線されるのがよい。
【0022】
<40> 燃料をn段階(nは2以上の整数)でn以上の生体触媒反応又は生体触媒類似反応で分解する、1~n個の電池領域を有する電池であって、
1~n個の電池領域が第1~第nの電池領域であり、該第1~第nの電池領域が直列及び/又は並列に配線され、
第1の電池領域が、第1の負極、第1の正極及び前記第1の正極と前記第1の負極とに挟まれた第1の電解質を有し、
第1の負極が第1の電子伝導体、第1のレドックスポリマー、及び第1の生体触媒又はその類似体を有し、前記第1のレドックスポリマーは、酸化還元挙動を示す第1の酸化還元部位を有し、且つ10-16S/cm以上の電子伝導性を示し、
第1の正極が電子伝導性を有し、
第mの電池領域(mは2からnまでのすべての整数)は各々、第mの負極、第mの正極及び前記第mの正極と前記第mの負極とに挟まれた第mの電解質を有し、
第mの負極が第mの電子伝導体(第mの電子伝導体は第1~第(m-1)の電子伝導体と同じであっても異なってもよい)、第mのレドックスポリマー(第mのレドックスポリマーは第1~第(m-1)のレドックスポリマーと同じであっても異なってもよい)、及び第mの生体触媒又はその類似体(第mの生体触媒又はその類似体は各々、第1~第(m-1)の生体触媒又はその類似体とは異なる)を有し、前記第mのレドックスポリマーは、酸化還元挙動を示す第mの酸化還元部位(第mの酸化還元部位は第1~第(m-1)の酸化還元部位と同じであっても異なってもよい)を有し、且つ10-16S/cm以上の電子伝導性を示し、
第mの正極が電子伝導性を有し、
第1の負極において、燃料が第1の生体触媒又はその類似体により第1の分解物に分解されると共に1電子以上を生成し、
第mの負極の各々において、第(m-1)の分解物が第mの生体触媒又はその類似体により第mの分解物に分解されると共に1電子以上を生成し、
第1~第nの電解質が略一平面に形成され、第1~第nの負極が該略一平面の一面に、第1~第nの正極が該略一平面の他面に形成され、且つ、第1~第nの負極が形成される略一平面の一面上に、前記燃料及び第1~第nの分解物が接触するように、第1~第nの負極が形成される、上記電池。
【0023】
<41> 上記<40>において、第1~第nの電池領域が、燃料の流れる方向に沿って配置されるのがよい。
<42> 上記<40>又は<41>において、第(m-1)の正極と第mの負極とが通電され、第1~第nの電池領域が直列に配線されるのがよい。
<43> 上記<40>~<42>のいずれかにおいて、第1~第nの負極の第1~第nの電子伝導体は、7nm以上の細孔にかかる比表面積である外部比表面積が0.5m/g以上であるのがよい。
【0024】
<44> 上記<37>~<43>のいずれかにおいて、燃料がメタノールであり、nが3であり、第1の生体触媒がアルコールデヒドロゲナーゼであり、第1の分解物がホルムアルデヒドであり、第2の生体触媒がアルデヒドデヒドロゲナーゼであり、第2の分解物がギ酸であり、第3の生体触媒がギ酸デヒドロゲナーゼであり、第3の分解物が二酸化炭素であるのがよい。
<45> 上記<37>~<43>のいずれかにおいて、燃料がエタノールであり、nが2であり、第1の生体触媒がアルコールデヒドロゲナーゼであり、第1の分解物がアセトアルデヒドであり、第2の生体触媒がアルデヒドデヒドロゲナーゼであり、第2の分解物が酢酸であるのがよい。
【0025】
<46> 上記<37>~<43>のいずれかにおいて、燃料がグルコースであり、nが3以上であり、第1の生体触媒がグルコースオキシダーゼであり、第1の分解物がグルコノラクトンであり、第2の生体触媒がグルコン酸2-デヒドロゲナーゼであり、第2の分解物が2-ケトグルコン酸であり、第3の生体触媒がケトグルコン酸デヒドロゲナーゼであり、第3の分解物が2,5-ジケトグルコン酸であるのがよい。
<47> 上記<37>~<46>のいずれかにおいて、第1~第nの負極がプロトン伝導性を有するのがよい。特に、プロトン伝導性を示す材料、例えばNafion、炭化水素系プロトン伝導性ポリマーを有するのがよい。
<48> 上記<37>~<47>のいずれかにおいて、第1~第nの電子伝導体が、カーボン、導電性ポリマー、及び金属からなる群から選ばれるのがよい。なお、導電性ポリマーの場合、その分子量が50~100万、好ましくは1000~10万であるのがよい。
【0026】
<49> 上記<37>~<48>のいずれかにおいて、第1~第nの電子伝導体は、その形状が粒状、又は棒状であるのがよい。粒状の場合はその粒径、棒状である場合はその断面の直径がそれぞれ、10μm以下、好ましくは1μm以下、より好ましくは100nm以下であるのがよい。
<50> 上記<48>又は<49>において、カーボンが、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、及びカーボンナノホーンからなる群から選ばれるのがよい。
<51> 上記<37>~<50>のいずれかにおいて、第1~第nの電子伝導体は、その各々の外部比表面積が1m/g以上、好ましくは6~5000m/g、より好ましくは10~800m/gであるのがよい。
【0027】
<52> 上記<37>~<51>のいずれかにおいて、第1~第nのレドックスポリマーの各々の第1~第nの酸化還元部位の各々が、フェロセン誘導体類(例えばフェロセン基、カルボキシフェロセン、ジカルボキシフェロセン、メチルフェロセン、ジメチルフェロセン、ビニルフェロセンなど)、キノン化合物(例えばベンゾキノン、ヒドロキノン、ナフトキノン、ピロキノリンキノンなど)、オスミウムビピリジン錯体類([Os(4,4’-ジメチル-2,2’-ビピリジン)Cl]+/2+、[Os(4,4’-ジアミノ-2,2’-ビピリジン)Cl]+/2+、[Os(4,4’-ジメトキシ-2,2’-ビピリジン)Cl]+/2+、[Os(ターピリジン)(4,4’-ジメチル-2,2’-ビピリジン)Cl]2+/3+、[Os(4,4’-ジクロロ-2,2’-ビピリジン)Cl]+/2+など)、オスミウムビイミダゾール錯体類([Os(4,4’-ジアルキル化-2,2’-ビイミダゾール)2+/3+など)、ビオローゲン、及び2,2-アゾビス(3-エチルベンゾチアゾリン-6-スルホネート)からなる群から選ばれるのがよい。
【0028】
<53> 上記<37>~<52>のいずれかにおいて、第1~第nのレドックスポリマーは、その一端が各々、第1~第nの電子伝導体に化学的に結合するのがよい。
<54> 上記<37>~<53>のいずれかにおいて、第1~第nの正極は各々が第1~第p(pは2~nのすべての整数)の電子伝導体を有するのがよい。
<55> 上記<54>において、第1~第pの電子伝導体は、カーボン、導電性ポリマー、及び金属からなる群から選ばれるのがよい。なお、導電性ポリマーの場合、その分子量が50~100万、好ましくは1000~10万であるのがよい。
【0029】
<56> 上記<54>又は<55>において、第1~第pの電子伝導体は、その形状が粒状、又は棒状であるのがよい。粒状の場合はその粒径、棒状である場合はその断面の直径がそれぞれ、10μm以下、好ましくは1μm以下、より好ましくは100nm以下であるのがよい。
<57> 上記<55>又は<56>において、カーボンが、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、及びカーボンナノホーンからなる群から選ばれるのがよい。
<58> 上記<54>~<57>のいずれかにおいて、第1~第pの電子伝導体は、その各々の外部比表面積が1m/g以上、好ましくは6~5000m/g、より好ましくは10~800m/gであるのがよい。
【0030】
<59> 上記<37>~<58>のいずれかにおいて、第1~第nの正極は各々が、プロトン伝導性を有するのがよい。
<60> 上記<37>~<59>のいずれかにおいて、第1~第nの正極は各々が第1~第p(pは2~nのすべての整数)のレドックスポリマーを有し、該第1~第pのレドックスポリマーは各々が、酸化還元挙動を示す第1~第pの酸化還元部位を有し、且つ10-16S/cm以上の電子伝導性を示すのがよい。
【0031】
<61> 上記<60>において、第1~第pのレドックスポリマーの各々の第1~第pの酸化還元部位の各々が、オスミウムビピリジン錯体類([Os(ターピリジン)(4,4’-ジメチル-2,2’-ビピリジン)Cl]2+/3+、[Os(4,4’-ジクロロ-2,2’-ビピリジン)Cl]+/2+など)、及び2,2-アゾビス(3-エチルベンゾチアゾリン-6-スルホネート)からなる群から選ばれるのがよい。
<62> 上記<37>~<61>のいずれかにおいて、第1~第nの正極は各々が、プロトン伝導性ポリマーを有するのがよい。
<63> 上記<37>~<62>のいずれかにおいて、第1~第nの正極は各々が触媒を有するのがよい。
【0032】
<64> 上記<63>において、触媒が正極用の生体触媒又はその類似体であるのがよい。
<65> 上記<64>において、正極用の生体触媒が、ビリルビンオキシダーゼ、ラッカーゼ、及びシトクロームオキシダーゼからなる群から選ばれるのがよい。
<66> 上記<37>~<65>のいずれかにおいて、第1~第nの正極は酸化性ガス又は酸化性液体(例えば、酸素ガス、酸素溶存液体、酸素キャリア含有液体(酸素キャリアとは、ヘモグロビン、ヘモグロビン模倣体など酸素運搬機能を有する化合物の総称をいう))と接触するように配置されるのがよい。
【発明の効果】
【0033】
本発明により、出力密度を向上させたバイオ燃料電池、及びそれに用いられる電極用材料、並びにそれらの製造方法を提供することができる。
また、本発明により、上記の燃料電池用の材料に限らず、電子授受に関与する材料を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、材料、特に電子授受に関与する材料を提供する。本発明の材料は、例えば電池用、例えばバイオ燃料電池用材料を提供する。また、本発明の材料は、燃料電池とは逆反応、即ち、水から水素及び/又は酸素をもたらす材料を提供する。さらに、本発明は、上記作用に限らず、電子授受に関与することができる材料を提供する。
【0035】
本発明の材料は、電子伝導体、レドックスポリマー、及び生体触媒又はその類似体(以下、単に「生体触媒」又は「生体触媒など」と略記する場合がある)を有する。
本発明の材料は、次のように作用する。即ち、本発明の材料と接触する第1の物質が生体触媒などにより酸化される際に生じる電子をレドックスポリマーを介して電子伝導体に伝達されるか、又は本発明の材料と接触する第2の物質が生体触媒などにより還元される際の電子を電子伝導体を介してレドックスポリマーに伝達される。
【0036】
<電子伝導体>
本発明の用いられる電子伝導体は、外部比表面積が0.5m/g以上、好ましくは1m/g以上、好ましくは6~5000m/g、より好ましくは10~800m/gであるのがよい。
ここで、外部比表面積とは、7nm以上の細孔にかかる比表面積を意味する。本発明において、「外部比表面積」とは、特記しない限り、上記の意味を有する。
【0037】
外部比表面積は、次のように概算することができる。即ち、後述するように、電子伝導体は、電子伝導性を有する粒状物質又は棒状物質などを3次元的に集積して形成したものとすることができる。これらの粒状物質又は棒状物質の粒子1個又は棒状物質1個の比表面積がそのまま「外部比表面積」として概算することができる。
例えば、電子伝導体が、粒状物質由来である場合、次のように、「外部比表面積」が概算される。即ち、粒子の半径r[m]、粒子の密度:d[g/m]とすると、外部比表面積S[m/g]は次のように表される。
【0038】
S=(粒子1個の表面積)/{(粒子1個の体積)×(密度)}
S=4πr/(4/3πr×d)=3/(r×d)。
【0039】
要するに、電子伝導体が粒状物質由来である場合、該粒状物質の半径r及び粒子の密度dから、外部比表面積を概算することができる。なお、粒状物質の半径rは、得られた電子伝導体の電子顕微鏡像の粒状物質の直径から求めることができる。また、粒子の密度は、質量と粒度分布から求めることができる。
【0040】
また、電子伝導体が、棒状物質由来である場合、上記と同様に「外部比表面積」を概算することができる。即ち、棒状物質の断面の半径rrod[m]、棒状物質の長さL[m]、棒状物質の密度:d[g/m]とすると、外部比表面積S[m/g]は次のように表される。
【0041】
S=(棒状物質1個の表面積)/{(棒状物質1個の体積)×(密度)}
S=(2πrrod+2πrrod×L)/(πrrod×L×d)
ここで、「2πrrod」はほとんど無視できるので、Sは次のように概算できる。
S=2/(rrod×d)。
【0042】
要するに、電子伝導体が棒状物質由来である場合、該棒状物質の断面の半径rrod及び棒状物質の密度dから、外部比表面積を概算することができる。
【0043】
電子伝導体は、電子伝導性を有する粒状物質又は棒状物質などを3次元的に集積して形成したものであっても、当初より上記外部比表面積を有するものであってもよい。なお、粒子を3次元的に集積して形成する場合、該粒子は、その粒径が10μm以下、好ましくは1μm以下、より好ましくは100nm以下であるのがよい。また、棒状物質を3次元的に集積して形成する場合、その断面の直径が10μm以下、好ましくは1μm以下、より好ましくは100nm以下であるのがよい。また、この場合、粒状物質又は棒状物質自体の外部比表面積が上記数値を有していても、粒状物質又は棒状物質などの集積体全体が上記数値を有してもよい。
【0044】
電子伝導体として、その組成は、カーボン、導電性ポリマー、及び金属などを挙げることができるが、これらに限定されない。例えば、電子伝導体として、2つ以上の種類の材料を含んでもよい。なお、導電性ポリマーの場合、その分子量が50~100万、好ましくは1000~10万であるのがよい。
また、電子伝導体として、カーボンを用いる場合、該カーボンとして、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、及びカーボンナノホーンなどを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0045】
<レドックスポリマー>
本発明に用いられるレドックスポリマーは、酸化還元挙動を示す酸化還元部位を有するのがよい。また、レドックスポリマーは、電子伝導性を有するのがよい。レドックスポリマーの電子伝導性は、そのポリマー鎖長に依存するが、10-16S/cm以上であるのがよい。即ち、レドックスポリマーの鎖長が長い場合、より高い電子伝導性を有するのがよく、鎖長が短い場合、低い電子伝導性(但し、10-16S/cm以上)であってもよい。
レドックスポリマーは、酸化還元部位を有する。該部位を有するレドックスポリマーは、それを有するモノマーとそれ以外のモノマーとのブロック共重合体であっても、単独重合体又は共重合体に酸化還元部位を付与する反応により調製してもよい。なお、共重合体の場合、2元又は3元以上のモノマーからなってもよい。
【0046】
レドックスポリマーの酸化還元部位は、上述のように、酸化還元挙動を示すものであれば、特に限定されない。例えば、酸化還元部位として、フェロセン誘導体類(フェロセン基、カルボキシフェロセン、ジカルボキシフェロセン、メチルフェロセン、ジメチルフェロセン、ビニルフェロセンなど)、キノン化合物(ベンゾキノン、ヒドロキノン、ナフトキノン、ピロキノリンキノンなど)、オスミウムビピリジン錯体類([Os(4,4’-ジメチル-2,2’-ビピリジン)Cl]+/2+、[Os(4,4’-ジアミノ-2,2’-ビピリジン)Cl]+/2+、[Os(4,4’-ジメトキシ-2,2’-ビピリジン)Cl]+/2+、[Os(ターピリジン)(4,4’-ジメチル-2,2’-ビピリジン)Cl]2+/3+、[Os(4,4’-ジクロロ-2,2’-ビピリジン)Cl]+/2+など)、オスミウムビイミダゾール錯体類([Os(4,4’-ジアルキル化-2,2’-ビイミダゾール)2+/3+など)、ビオローゲン、及び2,2-アゾビス(3-エチルベンゾチアゾリン-6-スルホネート)などを挙げることができるが、これらに限定されない。なお、酸化還元部位として、上記のうち、2つ以上の種類のものを含んでもよい。
【0047】
レドックスポリマーは、その一端が電子伝導体に、もしくは電子伝導体を形成しうる粒状物質又は棒状物質に、化学的に結合するのがよい。
【0048】
<生体触媒又はその類似体>
本発明の材料は、生体触媒又はその類似体を有する。類似体とは、生体触媒と同様の機能を有する、天然又は人工の物質である。類似体として、天然の生体触媒の修飾体、又は天然の生体触媒を模した人工物質を挙げることができる。なお、本明細書において、生体触媒反応とは、生体触媒の有する作用による反応をいい、生体触媒類似反応とは、生体触媒の類似体による、生体触媒の有する作用と同様の作用による反応をいう。
【0049】
本発明に用いられる生体触媒は、オキシダーゼ、デヒドロゲナーゼであるのがよいが、これに限定されない。
例えば、生体触媒として、グルコースオキシダーゼ、グルコースデヒドロゲナーゼ、グルコン酸2-デヒドロゲナーゼ、ケトグルコン酸2-デヒドロゲナーゼ、アルコールオキシダーゼ、アルコールデヒドロゲナーゼ、アルデヒドデヒドロゲナーゼ、ギ酸デヒドロゲナーゼ、乳酸デヒドロゲナーゼ、アルドースデヒドロゲナーゼ、オリゴ糖デヒドロゲナーゼ、ビリルビンオキシダーゼ、ラッカーゼ、及びシトクロームオキシダーゼなどを挙げることができるがこれらに限定されない。なお、酸化還元部位として、上記のうち、2つ以上の種類のものを含んでもよい。
【0050】
また、用いる生体触媒によって、本発明の材料と接触する第1の物質、例えばバイオ燃料電池の場合、燃料が選択される。逆に言うと、用いる燃料により、本発明の材料に用いる生体触媒が選択される。例えば、グルコースオキシダーゼ又はグルコースデヒドロゲナーゼを生体触媒として用いる場合、燃料としてグルコースが用いられる。また、(ケト)グルコン酸2-デヒドロゲナーゼを生体触媒として用いる場合、燃料として(ケト)グルコン酸が用いられる。同様にして、アルコールオキシダーゼ又はアルコールデヒドロゲナーゼを生体触媒として用いる場合、燃料としてアルコールが用いられる。以下、生体触媒と燃料の対を(生体触媒、燃料)というように記載する。(アルデヒドデヒドロゲナーゼ、アルデヒド)、(ギ酸デヒドロゲナーゼ、ギ酸)、(乳酸デヒドロゲナーゼ、乳酸)、(アルドースデヒドロゲナーゼ、アルドース)、(オリゴ糖デヒドロゲナーゼ、オリゴ糖)、(ビリルビンオキシダーゼ、酸素)、(ラッカーゼ、酸素)及び(シトクロームオキシダーゼ、酸素)。
【0051】
本発明の材料は、上述のような要素により構成され、次のような作用を有する。この作用を説明するため、図1を用いる。図1は、電解質としてのポリマー電解質(polymer electrolyte)上に負極(anode)としての本発明の材料1を付着させた図、及び材料1の拡大概念図である。本発明の材料1は、複数のカーボンブラック粒子3の3次元ネットワークからなる電子伝導体4、酸化還元部位5を有するレドックスポリマー6、生体触媒7(例えばグルコースオキシダーゼ)を有する。グルコースが、負極(anode)、特に生体触媒7であるグルコースオキシダーゼと接触することにより、グルコノラクトンへと酸化される。生体触媒において生じた電子eは、酸化還元部位5を有するレドックスポリマー6を介して、電子伝導体4、即ちカーボンブラック粒子3へと伝達される。この電子伝達により、本発明の材料は、負極としての作用を有することができる。
【0052】
一方、正極(cathod)として作用する場合、次のようになる。即ち、正極に関しては図示しないが、ほぼ図1に示す負極と同様の構成を有する。即ち、正極は、電子伝導性及びプロトン伝導性を有する伝導体、レドックスポリマー、(生体触媒などを含む)触媒(例えばシトクロームオキシダーゼ)を有する。酸素が、正極、特に触媒であるシトクロームオキシダーゼと接触し、ポリマー電解質から移動してくるプロトンと、外部から伝達される電子と反応することにより、水が生成される。したがって、本発明の材料は、正極としての作用をも有することができる。
また、上記の負極と合わせて構成することにより、燃料電池としての作用を有することができる。
したがって、本発明の材料は、電池用材料、特に電池用負極、又は電池用正極として用いることができる。特に、電池用負極として用いるのが好ましい。
【0053】
本発明の材料は、上述の電池用材料、特に燃料電池用材料に限らず、種々の電子授受に関与する材料として作用する。例えば、燃料電池とは逆反応、即ち水から水素及び/又は酸素をもたらす材料として作用する。例えば、水から水素をもたらす場合、材料と接触する物質が水であり、生体触媒又はその類似体をポルフィリンとすることにより、水から水素をもたらす材料を提供することが可能である。
【0054】
本発明は、燃料電池、特にバイオ燃料電池をさらに提供する。
本発明の燃料電池、特にバイオ燃料電池は、負極;正極;及び正極と負極とに挟まれた電解質を有し、負極及び/又は正極が上述の材料を用いることにより構成される。
【0055】
<負極>
上述のように、負極は、上記材料を用いることができる。以下、本発明の材料を負極として用いる場合を説明する。
負極は、プロトン伝導性を有してもよい。特に、負極は、プロトン伝導性を示す材料、例えばNafion、炭化水素系プロトン伝導性ポリマーを有するのがよい。
負極の生体触媒(第1の生体触媒)として、グルコースオキシダーゼ、グルコースデヒドロゲナーゼ、グルコン酸2-デヒドロゲナーゼ、ケトグルコン酸2-デヒドロゲナーゼ、アルコールオキシダーゼ、アルコールデヒドロゲナーゼ、アルデヒドデヒドロゲナーゼ、ギ酸デヒドロゲナーゼ、乳酸デヒドロゲナーゼ、アルドースデヒドロゲナーゼ、及びオリゴ糖デヒドロゲナーゼなどを挙げることができるがこれらに限定されない。
【0056】
また、負極のレドックスポリマーの酸化還元部位(第1の酸化還元部位)として、フェロセン誘導体類(フェロセン基、カルボキシフェロセン、ジカルボキシフェロセン、メチルフェロセン、ジメチルフェロセン、ビニルフェロセンなど)、キノン化合物(ベンゾキノン、ヒドロキノン、ナフトキノン、ピロキノリンキノンなど)、オスミウムビピリジン錯体類([Os(4,4’-ジメチル-2,2’-ビピリジン)Cl]+/2+、[Os(4,4’-ジアミノ-2,2’-ビピリジン)Cl]+/2+、[Os(4,4’-ジメトキシ-2,2’-ビピリジン)Cl]+/2+、など)、オスミウムビイミダゾール錯体類([Os(4,4’-ジアルキル化-2,2’-ビイミダゾール)2+/3+など)、及びビオローゲンなどを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0057】
<正極>
正極は、プロトン伝導性を有する。正極は、プロトン伝導性を示す材料、例えばNafion、炭化水素系プロトン伝導性ポリマーを有するのがよい。
正極は、負極の電子導電体(第1の電子伝導体)と同じであっても異なってもよい第2の電子伝導体を有するのがよい。
また、正極は、負極のレドックスポリマー(第1のレドックスポリマー)と同じであっても異なってもよい第2のレドックスポリマーを有してもよい。該レドックスポリマーは、酸化還元挙動を示す第2の酸化還元部位を有し、且つ10-16S/cm以上の電子伝導性を示すのがよい。
さらに、正極は、生体触媒を含めた触媒を有する。
【0058】
正極の触媒は、金属(例えばPt)及び生体触媒又はその類似体(第2の生体触媒又はその類似体)であるのがよい。
第2の生体触媒として、ビリルビンオキシダーゼ、ラッカーゼ、及びシトクロームオキシダーゼを挙げることができるがこれらに限定されない。
【0059】
正極の第2の酸化還元部位として、オスミウムビピリジン錯体類([Os(ターピリジン)(4,4’-ジメチル-2,2’-ビピリジン)Cl]2+/3+、[Os(4,4’-ジクロロ-2,2’-ビピリジン)Cl]+/2+など)、及び2,2-アゾビス(3-エチルベンゾチアゾリン-6-スルホネート)などを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0060】
<電解質>
電解質として、従来より公知の電解質、特にプロトン伝導性を有する電解質を用いることができる。電解質は、正極と負極との間に配置する。
【0061】
上述のように、電池を構成することにより、次のように作用させることができる。即ち、負極が第1の生体触媒として例えばグルコースオキシダーゼを有する場合、該負極に接触する燃料としてグルコースが用いられる。負極において、グルコースがグルコースオキシダーゼによりグルコノラクトンへと変換される一方、電子が第1の生体触媒から第1のレドックスポリマーを介して第1の電子伝導体へと伝達される。なお、電子は、電池の負極から外部へと伝達される。
【0062】
一方、正極において、第2の生体触媒として例えばシトクロームオキシダーゼを用いる場合、該正極に接触する媒体として酸素が用いられる。(負極から電解質へと移動し且つ)電解質から移動してくるプロトンと酸素と外部から伝達される電子とが、正極、特に正極の第2の生体触媒において、反応することにより、水が生成される。
上記では、負極用の燃料としてグルコース、負極の第1の生体触媒としてグルコースオキシダーゼを用い、且つ正極用の燃料(媒体)として酸素、正極の第2の生体触媒としてシトクロームオキシダーゼを用いる例を説明したが、これに限定されるものではなく、上述の負極用の生体触媒と負極用の燃料を用いることができる。また、正極についても、その他の組み合わせを用いることができる。
このようにして、本発明は、バイオ燃料電池を提供することができる。なお、バイオ燃料電池として構成する場合、燃料供給用容器(負極用、正極用のそれぞれ)を有するのがよい。
【0063】
<多段階反応型電池>
本発明は、次に示す多段階反応型電池も提供する。
即ち、本発明は、燃料をn段階(nは2以上の整数)でn以上の生体触媒反応又は生体触媒類似反応で分解する、1~n個の電池領域を有する電池であって、
1~n個の電池領域が第1~第nの電池領域であり、該第1~第nの電池領域が直列及び/又は並列に配線され、
第1の電池領域は、第1の負極、第1の正極及び前記第1の正極と前記第1の負極とに挟まれた第1の電解質を有し、
第1の負極が7nm以上の細孔にかかる比表面積である外部比表面積が0.5m/g以上、好ましくは6~5000m/g、より好ましくは10~800m/gである第1の電子伝導体、第1のレドックスポリマー、及び第1の生体触媒などを有し、前記第1のレドックスポリマーは、酸化還元挙動を示す第1の酸化還元部位を有し、且つ10-16S/cm以上の電子伝導性を示し、
第1の正極が電子伝導性を有し、
第mの電池領域(mは2からnまでのすべての整数)は各々、第mの負極、第mの正極及び前記第mの正極と前記第mの負極とに挟まれた第mの電解質を有し、
第mの負極が7nm以上の細孔にかかる比表面積である外部比表面積が0.5m/g以上である第mの電子伝導体(第mの電子伝導体は、第1~第(m-1)の電子伝導体と同じであっても異なってもよい)、第mのレドックスポリマー(第mのレドックスポリマーは、第1~第(m-1)のレドックスポリマーと同じであっても異なってもよい)、及び第mの生体触媒など(第mの生体触媒などは各々、第1~第(m-1)の生体触媒などとは異なる)を有し、前記第mのレドックスポリマーは、酸化還元挙動を示す第mの酸化還元部位(第mの酸化還元部位は、第1~第(m-1)の酸化還元部位と同じであっても異なってもよい)を有し、且つ10-16S/cm以上の電子伝導性を示し、
第mの正極が電子伝導性を有し、
第1の負極において、燃料が第1の生体触媒などにより第1の分解物に分解されると共に1電子以上を生成し、
第mの負極の各々において、第(m-1)の分解物が第mの生体触媒などにより第mの分解物に分解されると共に1電子以上を生成する、上記電池を提供する。なお、第1~第nの電池領域に用いられる第1~第nの負極、及び第1~第nの正極などは、上述の電池と同様の材料も用いることができる。
【0064】
また、上述の電池において、第1~第nの電解質が略一平面に形成され、第1~第nの負極が該略一平面の一面に、第1~第nの正極が該略一平面の他面に形成され、且つ、第1~第nの負極が形成される略一平面の一面上に、燃料及び第1~第nの分解物が接触するように、第1~第nの負極が形成されるのがよい。
さらに、上述の電池において、第(m-1)の正極と第mの負極とが通電され、第1~第nの電池領域が直列に配線されるのがよい。直列配置することにより、高起電力を有する電池を提供できる点で好ましい。
【0065】
また、本発明は、次に示す多段階反応型電池の構成の一態様も提供する。
即ち、本発明は、燃料をn段階(nは2以上の整数)でn以上の生体触媒反応又は生体触媒類似反応で分解する、1~n個の電池領域を有する電池であって、
1~n個の電池領域が第1~第nの電池領域であり、該第1~第nの電池領域が直列及び/又は並列に配線され、
第1の電池領域が、第1の負極、第1の正極及び前記第1の正極と前記第1の負極とに挟まれた第1の電解質を有し、
第1の負極が第1の電子伝導体、第1のレドックスポリマー、及び第1の生体触媒などを有し、前記第1のレドックスポリマーは、酸化還元挙動を示す第1の酸化還元部位を有し、且つ10-16S/cm以上の電子伝導性を示し、
第1の正極が電子伝導性を有し、
第mの電池領域(mは2からnまでのすべての整数)は各々、第mの負極、第mの正極及び前記第mの正極と前記第mの負極とに挟まれた第mの電解質を有し、
第mの負極が第mの電子伝導体(第mの電子伝導体は第1~第(m-1)の電子伝導体と同じであっても異なってもよい)、第mのレドックスポリマー(第mのレドックスポリマーは第1~第(m-1)のレドックスポリマーと同じであっても異なってもよい)、及び第mの生体触媒など(第mの生体触媒などは各々、第1~第(m-1)の生体触媒などとは異なる)を有し、前記第mのレドックスポリマーは、酸化還元挙動を示す第mの酸化還元部位(第mの酸化還元部位は第1~第(m-1)の酸化還元部位と同じであっても異なってもよい)を有し、且つ10-16S/cm以上の電子伝導性を示し、
第mの正極が電子伝導性を有し、
第1の負極において、燃料が第1の生体触媒などにより第1の分解物に分解されると共に1電子以上を生成し、
第mの負極の各々において、第(m-1)の分解物が第mの生体触媒などにより第mの分解物に分解されると共に1電子以上を生成し、
第1~第nの電解質が略一平面に形成され、第1~第nの負極が該略一平面の一面に、第1~第nの正極が該略一平面の他面に形成され、且つ、第1~第nの負極が形成される略一平面の一面上に、前記燃料及び第1~第nの分解物が接触するように、第1~第nの負極が形成される、上記電池を提供する。なお、第1~第nの電池領域に用いられる第1~第nの負極、及び第1~第nの正極などは、上述の電池と同様の材料に限定されることはないが、上述の電池と同様の材料も用いることができる。
【0066】
上述の電池において、第1~第nの電池領域が、燃料の流れる方向に沿って、第1の電池、第2の電池、第3の電池領域、・・・という順に、配置されるのがよい。このように配置することにより、燃料が第1の分解物、第1の分解物が第2の分解物、・・・というように、流れの方向に沿って、生体触媒反応又は生体触媒類似反応が行われるので、上記配置であるのが好ましい。
また、上述の電池と同様に、第(m-1)の正極と第mの負極とが通電され、第1~第nの電池領域が直列に配線されるのがよい。
さらに、上述の電池と同様に、第1~第nの負極の第1~第nの電子伝導体は、7nm以上の細孔にかかる比表面積である外部比表面積が0.5m/g以上であるのがよい。
【0067】
上述の多段階反応型電池について、図を用いて説明する。図2は、上述の多段階反応型電池20の一態様を示す断面概略図である。図2の略平板状の部分が負極部と正極部と該負極部と該正極部とに挟まれた電解質部を示し、図2の上部が負極側であり、下部が正極側である。以下、図2に関して、より詳細に説明する。
略平板状の部分は、第1の電池領域22、第2の電池領域23、第3の電池領域24、第4の電池領域25からなる。第1~第4の電池領域は各々、第1~第4の負極22a~25a、第1~第4の電解質22b~25b、第1~第4の正極22c~25cを有する。
第1の正極22cと第2の負極23aとは配線30により通電されている。同様に、第2の正極23cと第3の負極24aとは配線31により、第3の正極24cと第4の負極25aとは配線32により、通電されている。なお、絶縁体33は、第1と第2の電池領域を絶縁する一方、配線30を通す図示しない孔を設けられる。また、絶縁体34及び35も、絶縁体33と同様に設けられる。配線37及び配線38はそれぞれ、電池としての負極及び正極としての作用を有する。
【0068】
図2の上部の負極側には、右から左への方向(矢印Aの方向)に、第1~第4の領域、特に第1~第4の負極に燃料が接触するように、燃料が流入されるように構成される。一方、図2の下部の正極側には、右から左への方向(矢印Bの方向)に、第1~第4の領域、特に第1~第4の正極に酸化性ガス又は酸化性液体が接触するように、酸化性ガス又は酸化性液体が流入されるように構成される。
ここで、第1~第4の電解質は、プロトン伝導性を有する。なお、一般に、第1~第nの電解質は、用いる燃料及び酸化性ガス又は酸化性液体に依存して、種々の材質からなる、種々の特性を有する電解質を用いることができる。例えば、固体電解質膜、より具体的には、Nafionなどの通常用いられる固体電解質膜、多孔性膜の孔中にプロトン伝導性材料、例えばプロトン伝導性を有する液(例えば、プロトン伝導性を有するポリマー、プロトン伝導性を有する緩衝液など)を充填させてなる電解質膜などを用いることができる。
第1~第4の正極は、プロトン伝導性及び電子伝導性を有する。
【0069】
第1~第4の負極は各々、上述のように、それぞれが異なる第1~第4の生体触媒などを有してなる。第1の生体触媒などにより、第1の負極において、燃料は第1の分解物へと分解されると共に、該生体触媒反応又は生体触媒類似反応に伴い1電子以上及び1つ以上のプロトンが生成される。第1の分解物は、燃料と共に、流れ方向に沿って第2の負極近傍に流され、第2の負極において、第2の生体触媒などにより、第2の分解物へと分解される。また、この生体触媒反応又は生体触媒類似反応に伴い1電子以上が生成される。第2の分解物は、燃料及び第1の分解物と共に、流れ方向に沿って第3の負極近傍に流され、第3の負極において、第3の生体触媒などにより、第3の分解物へと分解される。また、この生体触媒反応又は生体触媒類似反応に伴い1電子以上及び1つ以上のプロトンが生成される。さらに、第3の分解物は、燃料並びに第1及び第2の分解物と共に、流れ方向に沿って第4の負極近傍に流され、第4の負極において、第4の生体触媒などにより、第4の分解物へと分解される。また、この生体触媒反応又は生体触媒類似反応に伴い1電子以上及び1つ以上のプロトンが生成される。
【0070】
第1~第4の電解質は、プロトン伝導性を有するため、第1~第4の負極で生成したプロトンをそれぞれ第1~第4の正極へと移動させることができる。
第1~第4の正極において、酸化性ガス、例えば酸素が、移動してきたプロトン及び電子と反応し、水を生成する。なお、一般に、正極は、酸化性ガス又は酸化性液体に含まれる酸素とプロトンと電子とから水を生成する反応における触媒を有するのがよい。該正極用触媒は、用いる酸化性ガス又は酸化性液体などに依存するが、上述の正極用の生体触媒などを用いることができる。
【0071】
このように、図2記載の電池は、第1の電池~第4の電池を直列に配置した電池である。用いる燃料、用いる第1~第4の生体触媒などを用いることにより、単一の電池領域で得られる電圧(起電力)よりも高い電圧(起電力)を提供する電池とすることができる。
【0072】
ここで、用いる燃料と負極に用いる第1~第nの生体触媒について、例を挙げて説明する。燃料としてメタノールを用いる例を以下に示す。
【0073】
【化1】
JP0005059413B2_000002t.gif

【0074】
メタノールを燃料として用いた場合、第1~第3の電池領域を有する電池とすることができ、第1の電池領域の第1の生体触媒として、アルコールデヒドロゲナーゼを用いることができる。また、第2の生体触媒としてアルデヒドデヒドロゲナーゼを、第3の生体触媒としてギ酸デヒドロゲナーゼを、それぞれ用いることができる。これにより、第1の負極においては、メタノールからホルムアルデヒドへの生体触媒反応と共に、2電子が生成する。また、第2の負極においては、ホルムアルデヒドからギ酸への生体触媒反応と共に、2電子が生成する。さらに、第3の負極においては、ギ酸から二酸化炭素への生体触媒反応と共に、2電子が生成する。したがって、メタノールを燃料として用い且つ第1~第3の電池領域からなる電池は、全体として6電子の生成する電池であり、該6電子反応に基づく高い電圧(起電力)を提供することができる。
【0075】
また、燃料としてエタノールを用いる例を以下に示す。
【0076】
【化2】
JP0005059413B2_000003t.gif

【0077】
エタノールを燃料として用いた場合、詳細は上述の式の通りであるが、エタノールからの酢酸への2段階反応により、合計4電子を生成する。これにより、エタノールを燃料として用い且つ第1及び第2の電池領域からなる電池は、全体として4電子の生成する電池であり、該4電子反応に基づく高い電圧(起電力)を提供することができる。
さらに、燃料としてグルコースを用いる例を以下に示す。
【0078】
【化3】
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【0079】
上記の例は、グルコースを燃料として用いた場合の一例である。ここでは、グルコースから2,5-ジケト-D-グルコン酸への3段階の生体触媒反応スキームであって、合計で6電子を生成する生体触媒反応スキームを示しているが、2,5-ジケト-D-グルコン酸を生体触媒反応によりさらに分解させ、例えば二酸化炭素にまで分解することもできる。この場合、即ちグルコースから二酸化炭素までの生体触媒反応スキームの場合、合計で24電子を生成することができる。したがって、グルコースを燃料として用いた場合、該24電子反応に基づく高い起電力をもたらす燃料を提供することができる。
【0080】
<材料の製造法>
本発明の材料は、次のような製法により調製することができる。
即ち、次のa)~c)を順不同に有するか及び/又はa)~c)のいずれか2つもしくは3つを同時に行うことにより、調製することができる。
a)電子伝導体とレドックスポリマー又はレドックスポリマー前駆体とを混合及び/又は結合する工程(但し、酸化還元部位を有しないレドックスポリマー前駆体を用いる場合、前記酸化還元部位をレドックスポリマー前駆体に導入しレドックスポリマーを形成する工程をa)~c)の工程のいずれかの前後又はa)~c)と同時に有する);
b)電子伝導体前駆体を3次元的な電子伝導体へと形成する工程;
c)生体触媒又はその類似体を導入する工程。
なお、ここで、「電子伝導体」、「レドックスポリマー」、「生体触媒又はその類似体」、「酸化還元部位」の語は、材料と同定義である。
【0081】
例えば、I.a)工程→b)工程→c)工程;II.a)工程→c)工程→b)工程;III.b)工程→a)工程→c)工程;IV.b)工程→c)工程→a)工程;V.c)工程→a)工程→b)工程;VI.c)工程→b)工程→a)工程;というように行うことができる。
また、a)工程とb)工程との同時に行い、その後にc)工程を行うなど、2つ以上の工程を同時に行うことができる。
さらに、a)工程において、酸化還元部位を有するレドックスポリマーの代わりに、酸化還元部位を有しないレドックスポリマー前駆体を用いる場合、該酸化還元部位を前駆体に導入する工程を、上記a)~c)工程の前後又は同時に行うこともできる。
【0082】
a)工程において、「結合」は次のように行うのがよい。即ち、電子伝導体に重合開始基を導入し、該重合開始基とレドックスポリマー又はその前駆体とを結合させるのがよい。以下に、電子伝導体としてカーボンブラックを用いた場合であって、カーボンブラックへアゾ基(重合開始基)を導入する工程を例示する。
以下の、簡略化した化学反応式に示すように、カーボンブラックへのアゾ基導入を行った。これには、まず、カーボンブラック上のフェノール性OH基又はCOOH基へジイソシアネートを反応させることによりイソシアネート(-NCO)基を導入する。その後、このイソシアネート(-NCO)基と、両末端にカルボキシル基を有するアゾ化合物とを反応させることにより、アゾ(-N=N-)基をカーボンブラックに導入する。
【0083】
【化4】
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【0084】
b)工程において、電子伝導体前駆体は、その形状が粒状、又は棒状であるのがよい。粒状の場合はその粒径、棒状である場合はその断面の直径がそれぞれ、10μm以下、好ましくは1μm以下、より好ましくは100nm以下であるのがよい。電子伝導体前駆体として、カーボン、導電性ポリマー、及び金属を挙げることができるが、これらに限定されない。これら前駆体を3次元的に構築して3次元ネットワークを形成する。3次元ネットワークを形成することにより、外部比表面積が0.5m/g以上、好ましくは1m/g以上、好ましくは6~5000m/g、より好ましくは10~800m/gである電子伝導体を形成する。
【0085】
電子伝導体前駆体として粒径30nmのカーボンブラックを用いて、3次元ネットワークを有する電子伝導体を形成する方法を具体的に説明する。カーボンブラックと結着剤(例えばPTFE懸濁液)とを混合してカーボンインクを調製する。このカーボンインクをスクリーン印刷により塗布面へと塗布し、乾燥後、適切な温度及び圧力でホットプレスすることにより、3次元ネットワークを有する、カーボンブラックを有する電子伝導体を形成することができる。
【0086】
c)工程における「生体触媒又はその類似体の導入」は、単に材料へ混合すること(例えば、電子伝導体への混合、レドックスポリマーへの混合)によって導入しても、電子伝導体に化学的に結合するように導入しても、レドックスポリマーに化学的に結合するように導入してもよい。
「生体触媒又はその類似体の導入」は、単に材料への混合による導入であっても、例えば生体触媒同士の架橋反応、生体触媒とウシ血清アルブミンとグルタルアルデヒドとの架橋反応を用いることにより、材料に固定するように導入するのがよい。
【0087】
なお、生体触媒又はその類似体が失活した場合などは、その失活した生体触媒などを脱離し、その後、活性を有する生体触媒などを再結合させることもできる。例えば、当初の生体触媒などをレドックスポリマーと化学結合又は物理結合させる際、通常の電池操作においては切れない程度の弱い結合により脱離・再結合を行う。これにより、失活した生体触媒などを脱離させることができ、且つ活性を有する生体触媒などを再結合させることができる。この手法として、例えば、レドックスポリマーに荷電を有する官能基を導入し、静電相互作用により生体触媒などを固定化する手法がある。静電相互作用としては、本発明の材料を浸漬する液のpHの制御を挙げることができる。より具体的には、電池の操作時は、レドックスポリマー上の荷電官能基と生体触媒の荷電が逆となるpHに調整した液を用いることにより、官能基と生体触媒との間で静電吸着により、生体触媒などを固定化することができる。一方、レドックスポリマー上の荷電官能基と生体触媒の荷電とが等しくなるようにpHを調整した液(即ち、脱離液)を流すことにより、生体触媒などを脱離させることができる。なお、レドックスポリマーが電子伝導体と結合している場合、液のpH変化による生体触媒などの脱離化・再結合化の操作を行っても、液中にレドックスポリマーが漏出することがないため、好ましい。
【0088】
以下、実施例に基づいて、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は本実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0089】
<アゾ基(重合開始基)導入カーボンブラックの調製>
カーボンブラック(以下、単に「CB」と略記する)としてケッチェンブラック(比表面積:約800m/g;外部比表面積:約200m/g;粒径:30nm)を用いた。
CB2.5g、脱水ジメチルスルホキシド(以下、単に「DMSO」と略記する)65ml、α—ピコリン1ml、及び2,4-ジイソシアン酸トリレン1mlを、窒素雰囲気下、60℃で4時間反応させることで、CBにイソシアネート(-NCO)基を導入した。
反応溶液を室温まで冷却後、4,4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸)2.0gのDMSO(8ml)溶液を該反応溶液へ加え、窒素雰囲気下、室温で8時間反応させることにより、アゾ(-N=N-)基をCBに導入した。反応後、反応溶液を濾過により除去し、未反応物を除去するためにメタノール溶液中で10分間攪拌した。その後、減圧濾過を行い、メタノールにより数回洗浄した。なお、特記しない限り、試薬は精製せずに用いた。
【0090】
<レドックスポリマーのグラフト重合>
アゾ基導入CBへ、アクリルアミド(以下、単に「AAm」と略記する)、ビニルフェロセン(以下、単に「VFc」と略記する)のグラフト重合を行った。アゾ基導入CB0.3gへ、[AAm]=1.41mol/L、[VFc]=0.42mol/Lのジオキサン溶液を10ml加え、系内を脱気、窒素置換後、70℃で24時間反応させた。非グラフト性ポリマー、及び未反応物を除去するために、メタノール溶液中で10分間超音波洗浄した後、水を溶媒として24時間ソックスレー抽出を行った。
【0091】
<カーボン3次元電極の調製(スクリーン印刷)>
上記で得られた、レドックスポリマーをグラフト重合したCB又は未処理のCBと、結着剤としてPTFE懸濁液を混合したカーボンインクをスクリーン印刷によりカーボンペーパーへ塗布し、乾燥後、130℃、0.25MPaでホットプレスを行い、レドックスポリマーをグラフト重合したCBから調製したカーボン3次元電極Ered-1、及び未処理CBから調製したカーボン3次元電極E-2を得た。
【0092】
<生体触媒の導入>
上記で得られた3次元電極Ered-1を、30mg/mlグルコースオキシダーゼ(以下、単に「GOx」と略記する)を含む0.1Mリン酸緩衝液(PBS)へ10分間含浸させた後、0.1M PBSで30秒間洗浄を行った。続いて、20mg/mlのウシ血清アルブミン(BSA)を含む0.1M PBSへ10分間含浸させ、0.1M PBSで30秒間洗浄を行った。その後、2%のグルタルアルデヒド(GA)を含む0.1M PBSへ10分間含浸させ、0.1M PBSで1分間洗浄を行うことにより、生体触媒を3次元電極へ導入した電極Ered-1enを得た。
【0093】
<電気化学測定>
上記で得られた電極Ered-1、E-2、及びEred-1enに関して電気化学測定を行った。具体的には、各電極に金線をカーボンペーストにより固定化して作用極とし、電気化学測定を行った。参照極は飽和KCl中の銀・塩化銀電極、対極は白金黒電極を用いた。測定は、0.1Mグルコースを含むpH7.0の0.1M PBS中で行った。測定前に、測定溶液についてNバブリングを30分間行い、溶存酸素を除去した。
電気化学測定の結果を図3及び図4に示す。
【0094】
図3は、電極Ered-1及びE-2の電気化学測定の結果(サイクリックボルタムグラム(CV))を示す。なお、図3中、実線が電極Ered-1の結果、点線が電極E-2の結果を示す。図3から、電極Ered-1は、0.3V付近に酸化及び還元のピークを示した。このことから、レドックスポリマーのカーボンブラック上へのグラフト重合を確認した。
図4は、電極Ered-1enのCVの結果を示す。なお、図4中、実線は0.1Mグルコースを含む液での結果であり、点線はグルコースを含まない液での結果を示す。電極Ered-1enは、グルコース溶液中において、酸化ピーク電流が増加し、還元ピークがほぼみられないシグモイド型の応答が得られた。一方、グルコースを含まない液における電極E-1en(図4中、点線の結果)は、シグモイド型の応答が観察されなかった。これは、電極中の生体触媒がグルコースを酸化した際に生じた還元型の補酵素により、酸化型レドックスポリマーが還元されたためと考えられ、カーボン三次元電極中へ固定化した生体触媒は、レドックスポリマーと電子授受することが示された。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】ポリマー電解質(polymerelectrolyte)上に負極(anode)としての本発明の材料1を付着させた図、及び材料1の拡大概念図である。
【図2】多段階反応型電池20の一態様を示す断面概略図である。
【図3】電極Ered-1及びE-2の電気化学測定(サイクリックボルタムグラム(CV))の結果を示す。
【図4】電極Ered-1enのCVの結果を示す。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3