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明細書 :糖誘導体及びそれを用いた抗菌剤

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2014-111562 (P2014-111562A)
公開日 平成26年6月19日(2014.6.19)
発明の名称または考案の名称 糖誘導体及びそれを用いた抗菌剤
国際特許分類 C07H   5/04        (2006.01)
A61P  31/04        (2006.01)
C08B  37/16        (2006.01)
C07C 211/25        (2006.01)
C07C 271/12        (2006.01)
FI C07H 5/04 CSP
A61P 31/04
C08B 37/16
C07C 211/25
C07C 271/12
請求項の数または発明の数 20
出願形態 OL
全頁数 17
出願番号 特願2013-165760 (P2013-165760)
出願日 平成25年8月9日(2013.8.9)
優先権出願番号 2012240414
優先日 平成24年10月31日(2012.10.31)
優先権主張国 日本国(JP)
発明者または考案者 【氏名】山村 初雄
【氏名】宮川 淳
出願人 【識別番号】304021277
【氏名又は名称】国立大学法人 名古屋工業大学
審査請求 未請求
テーマコード 4C057
4C090
4H006
Fターム 4C057BB03
4C057BB04
4C057CC03
4C090AA02
4C090AA09
4C090BA09
4C090BA97
4C090BB12
4C090BB52
4C090BB62
4C090BB77
4C090DA23
4H006AA01
4H006AA03
4H006AB84
4H006RA06
要約 【課題】合成が容易で、抗菌性に優れ、安価に大量合成が可能な人工的な抗菌剤を提供する。
【解決手段】下記一般式で示される誘導体又はその塩(ただし、R1はアルキレン基を示し、R2は分岐してもよくシクロ環を有してもよいアルキル基を示す)。R2は窒素に結合するメチレン基が好ましい。また、R2は2-メチルプロピル基、2-エチルブチル基、シクロブチルメチル基、シクロペンチルメチル基、又はシクロへシルメチル基とすることができる。nは2以上の整数を示す。
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【選択図】なし
特許請求の範囲 【請求項1】
下記一般式で示される単糖がグリコシド結合で鎖状又は環状に連結した糖誘導体又はその塩である。ここで、トリアゾールの窒素は単糖の一級水酸基と置換している。さらに、Rはアルキレン基を示し、Rは分岐してもよくシクロ環を有してもよいアルキル基を示す。nは2以上の整数を示す。
【化1】
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【請求項2】
R1はメチレン基であることを特徴とする請求項1記載の糖誘導体又はその塩。
【請求項3】
R2は炭素数7個、6個、5個又は4個からなるアルキル基であることを特徴とする請求項1又は2に記載の糖誘導体又はその塩。
【請求項4】
R2は窒素に結合するメチレン基を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の糖誘導体又はその塩。
【請求項5】
R2は2-メチルプロピル基、2-エチルブチル基、シクロブチルメチル基、シクロペンチルメチル基、又はシクロへシルメチル基であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の糖誘導体又はその塩。
【請求項6】
単糖が炭素6個からなるヘキソースであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の糖誘導体又はその塩。
【請求項7】
単糖がグルコースであり、このグルコースが環状に連結したオリゴ糖であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の糖誘導体又はその塩。
【請求項8】
nが8であることを特徴とする請求項7に記載の糖誘導体又はその塩。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか1項に記載の糖誘導体又はその塩を有効成分として含有する抗菌剤。
【請求項10】
抗菌剤を合成するための試薬としての、下記一般式で示される末端アルキン(ただし、Rはアルキレン基、Rは分岐してもよくシクロ環を有してもよいアルキル基を示し、R3は水素又は脱保護可能な置換基を示す)。
【化2】
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【請求項11】
R1はメチレン基であることを特徴とする請求項10記載の末端アルキン。
【請求項12】
R2は炭素数7個、6個、5個又は4個からなるアルキル基であることを特徴とする請求項10又は11に記載の末端アルキン。
【請求項13】
R2は窒素に結合するメチレン基を有することを特徴とする請求項10乃至12のいずれか1項に記載の末端アルキン。
【請求項14】
R2は2-メチルプロピル基、2-エチルブチル基、シクロブチルメチル基、シクロペンチルメチル基、又はシクロへシルメチル基であることを特徴とする請求項10乃至13のいずれか1項に記載の末端アルキン。
【請求項15】
R3は第三ブトキシカルボニル基であることを特徴とする請求項10乃至14のいずれか1項に記載の末端アルキン。
【請求項16】
抗菌剤を合成するための試薬として、下記一般式で示される単糖がグリコシド結合で鎖状又は環状に連結した糖のアジ化物(ここで、アジド基は単糖の一級水酸基と置換している。nは2以上の整数を示す。)。
【化3】
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【請求項17】
単糖が炭素6個からなるヘキソースであることを特徴とする請求項16に記載の糖のアジ化物。
【請求項18】
単糖がグルコースであり、このグルコースが環状に連結したオリゴ糖であることを特徴とする請求項16又は17に記載の糖のアジ化物。
【請求項19】
nが8であることを特徴とする請求項18に記載の糖のアジ化物。
【請求項20】
下記一般式で示される、単糖がグリコシド結合で鎖状または環状に連結した糖のアジ化物と、下記一般式で示される末端アルキンとを反応させることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の糖誘導体又はその塩の製造方法。
【化4】
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(一般式中のアジド基は単糖の一級水酸基と置換している。nは2以上の整数を示す。)
【化5】
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(一般式中のRはアルキレン基、Rは分岐してもよくシクロ環を有してもよいアルキル基を示し、R3は水素又は脱保護可能な置換基を示す。)
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、糖誘導体及びそれを用いた抗菌剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ペニシリンの発見以来、様々な抗生物質や合成抗菌薬が開発され、感染症治療のために使用されてきた。しかし、メシチリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)に代表される既存の抗菌薬に対して耐性を持つ多剤耐性菌が深刻なまでに増加し、新たな抗菌薬の発展が渇望されている。
【0003】
一般に薬剤耐性が起こりにくい抗菌物質として、ポリミキシンBなどの膜作動型機構により抗菌性を示す物質が存在する。しかし、これらは複雑な構造を有する天然物であり、単離したり、人工合成したりすることは困難である。このため、人工的な抗菌性物質を合成することも行われており、特異な化学構造を有するシクロデキストリンを化学修飾して抗菌剤として用いることが行われている(例えば特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】WO2006-075580
【特許文献2】WO2006-083678
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
抗菌作用のメカニズムが詳細には解明されていないことが多く、人工的な抗菌性物質を合成しようとしても、どのような化学構造としたらよいのかが分からないという問題がある。また、たとえ人工的な抗菌性物質を見出したとしても、複雑な合成プロセスが必要であって技術的な困難性を有するのでは、製造コストが高騰化するという問題がある。さらには、ペプチドからなる抗菌剤ではアミノ酸配列を変化させることで二次構造も変化してしまう可能性が高く、その場合、細菌の細胞膜との相互作用に影響を生じ、抗菌性を消失すると考えられる。こうした人工的な抗菌性物質の合成の困難性から、抗菌剤は天然物から得られた抗菌物質と類似の化合物を合成し、その抗菌活性を調べることが主流とされていた。
【0006】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、抗菌性に優れ、少ないプロセスのために合成が容易で安価に大量合成が可能な化合物、その化合物の製造方法およびその化合物を用いた抗菌剤を提供することを解決すべき課題としている。また、その抗菌剤を合成するための試薬を提供することも解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
まず本発明者は、以下に示すシクロデキストリンの化学構造に着目し、これが新たな抗菌物質に利用できるのではないかと考え、次のような分子設計を考えた。
【0008】
シクロデキストリンは単糖であるグルコースが環状に連なった約1ナノメータの直径を持つ環状糖質である。グルコースの数が8個のものは、γシクロデキストリン[1]と呼ばれている(下記化1参照)。シクロデキストリンのグルコースの6位に存在する第一級水酸基は環状構造の一方の開口部に、2位と3位に存在する第二級水酸基は他方の開口部に配向している。また、上記それぞれの水酸基は反応性に違いがあり、選択的に化学修飾をすることが可能である。
【0009】
【化1】
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【0010】
環状糖質であるシクロデキストリンには、それを構成するグルコースの数が異なる類縁体があり、グルコースの数が5個以上のものが知られている。また、グルコースは2つ以上が鎖状に連なり、オリゴ糖~多糖を形成する。これにはアミロースに代表されるグルカンが含まれる。さらに、グルコースの異性体である単糖が連なった多糖があり、マンノースを繰り返し構造とするマンナンなどがある。これらもまた同様に、その繰り返し構造である単糖の上に反応性の異なる水酸基を持つため、選択的に化学修飾をすることが可能である。
【0011】
細菌に抗菌性を示すペプチドであるポリミキシンBの構造を化2に示す。これは天然に存在する環状ペプチドである。ポリミキシンBは、グラム陰性菌の外膜中のリポ多糖と結合して膜構造を破壊する。さらに細胞質膜をも傷害して抗菌性を示す。それを可能にする要因である構造的な特徴として、陽イオン性アミノ基と疎水性基をそれぞれ複数有することが挙げられる。
【0012】
【化2】
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【0013】
そこで、本発明者は細菌への抗菌性を実現するべく、シクロデキストリン上に陽イオン性アミノ基と疎水性アルキル基を複数個集積させることを考えた。このアミノ基がまず菌体膜のリン酸部と結合し、引き続きアルキル鎖が膜内部に侵入することで膜構造を破壊すると予想したのである。
【0014】
アミノ基の形成については、シクロデキストリン上に導入したアジド基を化学変換することでアミノ基を導入する方法を検討した。この化学変換の鍵段階はクリックケミストリーを採用した。クリックケミストリーとは、以下のような特徴を有する反応のことである。
(1)汎用性が高い
(2)高効率、高収率
(3)副生成物を生じない
(4)立体特異的である
(5)精製が容易である
(6)出発物質と試薬が手に入れやすい。
【0015】
クリックケミストリーとして最も一般的なものとされているのがHuisgen反応である(化3参照)。この反応は、アジドと末端アルキンがトリアゾール環を形成する反応である。銅を触媒にすることで1,4-二置換体が選択的に形成し、かつ反応は大幅に加速する。また、アジドとアルキンは互いの間でのみ穏やかに反応し、そして標準的な反応条件でよく用いられる求核剤、求電子剤および溶媒に対して安定である。生成するトリアゾール環も安定な官能基である。このような特徴からHuisgen反応は広い分野で利用されている。
【0016】
【化3】
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【0017】
本発明者らは、このHuisgen反応を利用し、シクロデキストリンに1級アミノ基を導入した化合物が抗菌剤として機能することを見出し、既に特許出願を行っている(特願2012-40934)。
【0018】
さらに、発明者らは、Huisgen反応を利用し、シクロデキストリンに2級アミノ基を導入した化合物の合成にも成功し、この化合物が抗菌剤として機能することを見出し、本発明を完成するに至った。
ここではシクロデキストリンから少ないプロセスで抗菌剤が容易に合成でき、数十段階以上のプロセスが必要な抗菌ペプチド合成に比べて著しく優れている。
【0019】
すなわち、本発明は下記一般式で示される、単糖がグリコシド結合で鎖状又は環状に連結した糖誘導体又はその塩である。ここで、トリアゾールの窒素は単糖の一級水酸基と置換している。さらに、Rはアルキレン基を示し、Rは分岐してもよくシクロ環を有してもよいアルキル基を示す。nは2以上の整数を示す。
【0020】
【化4】
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【0021】
ここで、R1はメチレン基とすることが好ましい。
【0022】
R2は炭素数7個、6個、5個又は4個からなるアルキル基であることが好ましい。
また、R2は窒素に結合するメチレン基を有することが好ましい。
【0023】
R2は2-メチルプロピル基、2-エチルブチル基、シクロブチルメチル基、シクロペンチルメチル基、又はシクロへシルメチル基であることが好ましい。
【0024】
nは実際に存在するオリゴ糖又は多糖を構成する数とする。例えば、1000以下とすることができる。nは5~50とすることが好ましい。
【0025】
本発明の化合物としては、単糖がグルコース、マンノース、フルクトース、またはガラクトースに代表される炭素6個からなるヘキソースである糖誘導体又はその塩が挙げられる。
【0026】
また、本発明の化合物としては、単糖がグルコースであり、このグルコースが環状に連結したオリゴ糖誘導体又はその塩が挙げられる。
【0027】
より具体的には、nが8であり、グルコースが環状に連結したオリゴ糖の誘導体又はその塩が挙げられる。
【0028】
また、本発明の抗菌剤は、上記した糖誘導体又はその塩を有効成分として含有することを特徴とする。ここで「有効成分として含有する」には、糖誘導体又はその塩が抗菌剤の構造全体を構成する場合に限らず、抗菌剤の構造の一部を構成する場合も含まれる。
【0029】
また、本発明は、抗菌剤を合成するための試薬としての、下記一般式で示される末端アルキンである。ただし、Rはアルキレン基、Rは分岐してもよくシクロ環を有してもよいアルキル基を示し、R3は水素又は脱保護可能な置換基を示す。この置換基は、例えばカルボニル基によってNに結合した基を示す。
【0030】
【化5】
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【0031】
ここで、R1はメチレン基とすることが好ましい。
【0032】
R2は炭素数7個、6個、5個又は4個からなるアルキル基であることを特徴とする。
【0033】
また、R2は窒素に結合するメチレン基を有することが好ましい。
【0034】
R2は2-メチルプロピル基、2-エチルブチル基、シクロブチルメチル基、シクロペンチルメチル基、又はシクロへシルメチル基であることが好ましい。
【0035】
R3は第三ブトキシカルボニル基であることが好ましい。
【0036】
また、本発明は、抗菌剤を合成するための試薬として、下記一般式で示される、単糖がグリコシド結合で鎖状または環状に連結した糖のアジ化物である。ここで、アジド基は単糖の一級水酸基と置換している。nは2以上の整数を示す。
【0037】
【化6】
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【0038】
nは実際に存在するオリゴ糖~多糖を構成する数とする。例えば、1000以下とすることができる。nは5~50とすることが好ましい。
【0039】
本発明の糖のアジ化物としては、単糖がグルコース、マンノース、フルクトース、またはガラクトース、に代表される炭素6個からなるヘキソースであるオリゴ糖又は多糖のアジ化物が挙げられる。
【0040】
また、本発明の糖のアジ化物としては、単糖グルコースが環状に連結したオリゴ糖のアジ化物が挙げられる。
【0041】
より具体的には、nが8であり、グルコースが環状に連結したオリゴ糖のアジ化物が挙げられる。
【0042】
下記一般式で示される、単糖がグリコシド結合で鎖状または環状に連結したオリゴ糖又は多糖のアジ化物と、下記一般式で示される末端アルキンとを反応させることを特徴とする請求項1~8に記載の糖誘導体又はその塩の製造方法。なお、この製造方法においては、上記反応後に、必要に応じて、脱保護を行ってもよい。
【0043】
【化7】
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【0044】
(一般式中のアジド基は単糖の一級水酸基と置換している。また、nについては、前述の糖のアジ化物と同じである。)
【0045】
【化8】
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【0046】
(一般式中のR1、R2、R3については、前述の末端アルキンと同じである。)
【発明を実施するための形態】
【0047】
<分子設計>
本発明の抗菌物質を合成するにあたっては、以下のコンセプトにより分子設計を行った。
細菌膜を傷害して細菌への抗菌性を実現するためには、親水性基と疎水性基が複数個存在し、かつそのバランスが重要になる。そこで、シクロデキストリン上にアルキルアミノメチルトリアゾール基を集積させる。そのために親水性であるシクロデキストリンのグルコース部分にトリアゾール部を介してアミノメチル部を連結することで、親水性でかつ陽イオン性部分を構成する。さらにアミノ基に結合したアルキル基が疎水性部分を形成する。細菌膜を傷害する際には、このアミノ基がまず細菌膜の陰イオン性リン酸部と結合し、引き続き疎水性アルキル部が膜内部に侵入することで膜構造を破壊する。
このようにアルキルアミノアルキルトリアゾール基を導入したグルコースを複数個含むことが、シクロデキストリン誘導体が抗菌物質として機能するために重要である。したがって同様にグルコースが鎖状に連なって形成された、オリゴ糖又は多糖グルカンにおいて、そのグルコース部に同様にアルキルアミノアルキルトリアゾール基を導入すれば抗菌性を現すと考えられる。
さらに、グルコースの異性体にはマンノースに代表される単糖ヘキソースがある。これらはグルコースと同じ数の炭素と水酸基を持ち、同様の親水性を持つ。そして、それが連なったオリゴ糖~多糖が存在し、代表としてマンナンがある。これらもまた、その繰り返し構造である単糖の上にアルキルアミノアルキルトリアゾール基を導入すれば抗菌性を現すと考えられる。

【0048】
そして、上記のいずれか1項に記載のオリゴ糖~多糖の誘導体又はその塩を有効成分として含有するものは抗菌剤となる。ここで「有効成分として含有する」には、オリゴ糖~多糖の誘導体又はその塩が抗菌剤の構造全体を構成する場合に限らず、抗菌剤の構造の一部を構成する場合も含まれる。

【0049】
上記のアルキルアミノメチルトリアゾール基の導入については、シクロデキストリン上に形成したアジド基を化学変換することで導入する方法を検討した。この化学変換法としては、クリック反応として最も一般的なHuisgen反応を採用した(前述した化3に示す反応式を参照されたい)。この反応は、アジドと末端アルキンがトリアゾール環を形成する反応である。銅を触媒にすることで1,4-二置換体が選択的に形成し、かつ反応は大幅に加速する。また、アジドとアルキンは互いの間でのみ穏やかに反応し、そして標準的な反応条件でよく用いられる求核剤、求電子剤および溶媒に対して安定である。
【実施例】
【0050】
以下に示す実施例1~5のシクロデキストリン誘導体(a)~(e)を合成した。以下、合成法について詳細に記載する。
【実施例】
【0051】
【化9】
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【実施例】
【0052】
(オクタアジ化γシクロデキストリン[3]の合成)
下記化6に示すように、Huisgen反応の原料となるオクタアジ化されたγシクロデキストリン[3]を、オクタクロロ化シクロデキストリン[2]を経由して合成した。具体的には、シクロデキストリン[1]をジメチルホルムアミドに溶解し、これに塩化メタンスルホニルを加えて65℃にて20時間攪拌することでオクタクロロ化シクロデキストリン[2]を得た。これをジメチルホルムアミドに溶解した後、アジ化ナトリウムを加え、100℃にて17時間反応してオクタアジ化γシクロデキストリン[3]を得た。その構造はH-NMR、IRによって確認した。
【実施例】
【0053】
【化10】
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【実施例】
【0054】
以下、オクタクロロ化シクロデキストリン[2]及びオクタアジ化γシクロデキストリン[3]の合成方法及び化合物データについて具体的に述べる。
(オクタクロロ化シクロデキストリン[2])
凍結乾燥したγシクロデキストリン[1] 2.11 g (1.62 mmol) を乾燥DMF 20 mlに溶解し、氷浴中で塩化メタンスルホニル 7.44 g (64.9 mmol) を加えた。アルゴン雰囲気下、室温で30分間攪拌し、その後、65 ℃の油浴中で20時間攪拌した。溶媒を減圧留去し、残渣にメタノール10 mlを加えた。氷浴中で3 M ナトリウムメトキシド/メタノール溶液をpH 9になるまで加え、生じた沈殿をろ取した。これを氷水を用いて洗浄し、凍結乾燥し、白色固体の目的物1.94 g (1.34 mmol, 83%) を得た。
Rf = 0.62 (H2O/1-PrOH/AcOEt=5/7/7 (v/v/v))
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ=3.33-3.40 (H-2,4), 3.60 (H-3), 3.82-3.84 (H-5,6), 4.02 (H-6), 4.98 (H-1), 5.94 (OH-3), 5.98 (OH-2)
MALDI-TOF-MS: [M+Na]+ Calcd. for C48H7235Cl637Cl2NaO32: 1467, Found: 1467.
[M+K]+ Calcd. for C48H7235Cl637Cl2KO32: 1483, Found: 1483.
(オクタアジ化γシクロデキストリン[3])
オクタクロロ化シクロデキストリン [2] 1.00 g (692 μmol) を乾燥DMF 20 mlに溶解し、アジ化ナトリウム1.80 g (27.7 mmol) を加え、アルゴン雰囲気下、100 ℃の油浴中で17時間攪拌した。溶媒を減圧留去し、水を用いた洗浄を3回行い、得られた固体を凍結乾燥し、白色固体の目的物909 mg (607 μmol, 88%) を得た。
Rf = 0.62 (H2O/1-PrOH/AcOEt=5/7/7 (v/v/v))
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6):δ=3.32-3.40 (H-4,6), 3.54-3.60 (H-5,6), 3.71-3.74 (H-2,3), 4.93 (H-1), 5.88-5.94 (OH)
FT-IR (KBr, cm-1) 669.18, 757.89, 842.74, 943.02, 1049.09, 1078.98, 1156.12, 1288.22, 1437.67, 1630.52, 1741.41, 2105.89, 2925.48, 3397.96
(実施例1)
・化合物(a)の合成
上記のようにして合成したオクタアジ化γシクロデキストリン[3] 200 mg (134 mmol) をDMSO 10 ml に溶解し、アスコルビン酸ナトリウム水溶液(265 mg/ml) を1 ml (265 mg, 1.34 mmol)、硫酸銅水溶液 (26.8 mg/ml) を1 ml (26.8 mg, 107 mmol)、シクロヘキシルメチルプロパルギルアミン(250 mg, 1.65 mmol)のDMSO溶液10 ml を加え、マイクロ波加熱(120 ℃)下で10分間攪拌した。これをろ過した後、溶媒を減圧留去し、残渣をアセトンで洗浄し、引き続き10% アンモニア水で洗浄し、得られた固体を凍結乾燥し、シクロヘキシルメチルアミノ部を持つ実施例1の化合物(a) 312 mg (86%) を得た

Rf = 0.00 (H2O/1-propanol/AcOEt (5/7/7))
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6): d = 0.78-1.59 (cyclohexane), 2.27-2.33 (CH2), 3.35-4.20 ( H-2,3,4,5,6), 5.09 (H-1), 6.02-6.17 (OH), 7.73 (triazole)
13C NMR (125 MHz, DMSO-d6): d = 25.6, 26.3, 31.0 (CH2), 37.3 (CH), 44.2 (CCH2NH), 49.5 (C-6), 55.5 (CH2NH), 69.8 (C-5), 72.1, 72.3 (C-2,3), 82.4 (C-4), 101.6 (C-1), 123.4 (C-5 triazole), 146.0 (C-4 triazole)
MALDI-TOF-MS: [M + K]+ Calcd. for C128H208KN32O32: 2744.5, Found: 2744.7.
Anal.: + 7.5H2O Calcd. for C128H223N32O39.5: C 54.09, H 7.91, N 15.77. Found: C 54.47, H 7.35, N 15.04.
FT-IR: (KBr, cm-1) 598.8, 1044.3, 1079.0, 1151.2, 1607.4, 1644.0, 2850.3, 2923.6, 3379.6
(実施例2)
シクロデキストリン誘導体(b)の合成
(アセチル化オクタアジ化γシクロデキストリン[4]の合成)
【実施例】
【0055】
【化11】
JP2014111562A_000012t.gif
【実施例】
【0056】
オクタアジ化γシクロデキストリン [3] 108 mg (72.3 μmol) を乾燥ピリジン3 mlで3回共沸し、そこに乾燥ピリジン1 ml、無水酢酸1 ml (10.6 mmol) を加え、アルゴン雰囲気下、室温で15時間攪拌した。溶液を減圧留去し、残渣にジクロロメタン20 mlを加え、水を用いた洗浄、飽和食塩水を用いた脱水後、硫酸ナトリウムを用いて乾燥した。それを順相シリカゲルカラム (ヘキサン/酢酸エチル ) にて精製した。該当分画を回収し, 溶媒を減圧留去し, 白色結晶[4]121 mg (56.0 μmol, 77%) を得た。
Rf = 0.58 (CH2Cl2/CH3OH=9/1 (v/v))
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ=2.08-2.09 (CH3), 3.60 (H-6), 3.71-3.79 (H-4,6), 3.96-3.98 (H-5), 4.77 (H-2), 5.16 (H-1), 5.32 (H-3)
MALDI-TOF-MS: [M + Na]+ Calcd. for C80H104N24NaO48: 2192, Found: 2192.
[M + K]+ Calcd. for C80H104KN24O48: 2208, Found: 2208.
(アセチル化オクタアジ化γシクロデキストリン[4]を用いたクリック反応)
硫酸銅 9.29 mg(3.69×10-5 mol)を120 μlの純水に溶かし、アスコルビン酸ナトリウム91.5 mg(4.61×10-4 mol)を280 μlの純水に溶かしたものを加えた。その溶液を、DMSO 2 mlに溶かした化合物[4] 100 mg(4.61×10-5 mol)に加えた。ここにDMSO2.5 mlに溶かした第三ブトキシカルボニル化2-エチルブチルアミノプロピン110.3 mg(4.61×10-4 mol)を加えた。これにマイクロ波を照射し加熱(10 min, 120℃)した後、酢酸エチルに溶かし、これを5 %EDTA二ナトリウム水溶液で洗浄し、減圧留去にて溶媒を除去した残渣をシリカゲルカラム(ヘキサン/酢酸エチル) により精製し、白色固体143 mgを得た(収率75.9 %)。
TLC Rf=0.74 (ヘキサン/酢酸エチル=1/9)
1H NMR (400 MHz, CDCl3):
δ= 0.82-0.86 (CH3), 1.24-1.28 (CH2), 1.41 (C(CH3)3), 1.60 (CH), 2.04-2.05 (COCH3), 3.11-3.16(CH2), 3.58 (H-4), 4.35-4.49 (H-5, 6), 4.67-4.69 (H-2), 4.83-4.98 (CH2), 5.39-5.40 (H-3), 5.65 (H-1), 7.71 (triazole)
13C NMR (100 MHz, CDCl3): d = 10.6-10.6 (CH3), 20.7-20.8 (CH3-acetyl), 23.1 (CH2), 28.0-28.4 ((CH3)3-Boc), 29.7 (CH), 39.0-39.4 (CH), 42.4 (C6), 49.8 (CH2-triazole), 50.4 (CH2-N(Boc)), 69.7-70.8 (C5, C2, C3, C4), 79.7 (C(CH3)3-Boc), 95.6 (C1), 124.7-125.3 (CH-triazole), 145.3 (=C-N-triazole), 155.5-155.9 (C=O-Boc) , 169.69-170.2 (C=O-acetyl)
FT-IR :(KBr, cm-1) 782.958, 878.417, 949.77, 1045.23, 1168.65, 1242.9, 1367.28, 1416.46, 1463.71, 1689.34, 1758.76, 2877.27, 2934.16, 2965.02, 3434.6
Calcd. for C192H304N32O64+ 2.0 H2O: C 55.96, H 7.53, N 10.88. Found: C 55.95, H 7.58, N 10.64
(第三ブトキシカルボニル基の脱保護)
上記のクリック反応生成物18.4 mg(4.50×10-6 mol)にトリフルオロ酢酸500 mlを加えて溶解させた。その後、20分攪拌し、減圧留去により白色固体18.9 mg (収率100 %)を得た。
【実施例】
【0057】
TLC Rf=0.05 (ヘキサン/酢酸エチル=1/9)
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ= 0.82-0.84 (CH3), 1.22-1.27 (CH2), 1.52-1.56 (CH), 1.98-2.07 (CO-acetyl), 2.77 (CH2), 3.50-3.70 (H-4), 4.19-4.32 (CH2) 4.44 (H-5), 4.61-4.64 (H-6), 4.76 (H-3), 5.27-5.31 (H-3), 5.39 (H-1), 8.19 ( H-triazole), 9.20 (NH)
(アセチル基の脱保護)
上記の第三ブトキシカルボニル基を脱保護された化合物18.9 mg(4.50×10-3 mol)にメタノール1 mlを加えて溶解させた。続いて、ナトリウムメトキシドを1.94 mg (3.6×10-2 mol)加え、室温で4時間攪拌した。その後、陽イオン交換樹脂をpH 7になるまで加えた。陽イオン交換樹脂を濾去し、減圧留去により実施例2のシクロデキストリン誘導体(b)を白色固体12.1 mg(収率76.1 %)として得た。
【実施例】
【0058】

TLC Rf=0.57 (アンモニア/水/1-プロパノール/酢酸エチル=3/2/7/7)
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ=0.76-0.79 (CH3), 1.23-1.32 (CH2), 1.55-1.58 (CH), 2.81 (CH2), 3.50-3.70 (H-4, H-5, H-6), 3.68-3.70 (H-2), 4.12 (CH2), 4.47 (H-3), 5.11 (H-1),6.07-6.10 (OH), 8.09 (triazole) 9.12 (NH)
MS: [M+Na]+Calcd. for C120H208N32NaO32: 2632.5530, Found: 2632.5270, [M+K]+ Calcd. for C120H208KN32O32: 2648.5269, Found: 2648.5031
(実施例3)
シクロデキストリン誘導体(c)の合成
(化合物[4]を用いたクリック反応)
硫酸銅 10.2 mg (4.06×10-5mol)を250 μlの純水に溶かし、アスコルビン酸ナトリウム100.6 mg(5.07×10-4 mol)を250 μlの純水に溶かしたものを加えた。その溶液を、DMSO 2 mlに溶かした化合物[4] 122 mg(5.62×10-5 mol)に加えた。ここにDMSO 2 mlに溶かした第三ブトキシカルボニル化2-メチルプロピルアミノプロピン107.1 mg(5.07×10-4 mol)を加えた。これにマイクロ波を照射し加熱(90 min, 120℃)した後、酢酸エチルに溶かし、これを5 %EDTA二ナトリウム水溶液で洗浄し、減圧留去にて溶媒を除去した残渣をシリカゲルカラム (塩化メチレン/メタノール) により精製し、白色固体107.6 mg(収率49.6 %)を得た。
TLC Rf=0.48 (塩化メチレン/メタノール=20/1)
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ= 0.84 (CH3), 1.41 (C(CH3)3), 1.95 (CH), 2.04-2.09 (COCH3), 2.96-3.06 (CH2), 3.48-3.57(H-4), 4.39-4.55 (H-6,H-5), 4.66-4.68 (H-2), 4.86-4.89 (CH2), 5.38 (H-3), 5.62 (H-1), 7.68-7.73(triazole)
13C NMR (100 MHz, CDCl3): d = 20.0 (CH3), 20.7-21.9 (CH3-acetyl), 27.2-27.5 (CH2), 28.4 ((CH3)3-Boc), 29.70 (CH), 42.5-42.9 (CH), 49.4 (C6), 54.4 (CH2-triazole), 54.75 (CH2-N(Boc)), 70.9-70.6 (C5, C2, C3, C4), 79.7 (OC(CH3)3-Boc)], 95.7 (C1), 125.4 (CH2-triazole), 145.3 (=C-N-triazole), 155.9 (C=O-Boc), 169.6-170.2 (C=O-acetyl)
FT-IR :(KBr, cm-1) 408.835, 457.047, 599.753, 784.886, 1045.23, 1167.69, 1246.75, 1367.28, 1416.46, 1465.63, 1688.37, 1756.83, 2964.05, 3460.63
MS: [M+Na]+Calcd. for C176H272NaN32O64: 3880.9, Found: 3880.4
(第三ブトキシカルボニル基の脱保護)
上記のクリック反応生成物61.0 mg(1.58×10-5 mol)にトリフルオロ酢酸6 mlを加えて溶解させた。その後、30分攪拌し、減圧留去により白色固体62.7 mg(収率100.0 %)を得た。
【実施例】
【0059】
TLC Rf=0.15 (ヘキサン/酢酸エチル=1/9)
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ=0.85-0.88 (CH3), 1.88-1.96(CO-acetyl, CH), 2.50-2.73 (CH2), 3.57 (H-4), 4.18 (H-6), 4.35 (H-5), 4.64-4.71 (H-2, CH2), 5.28-5.03 (H-3), 5.38 (H-1), 8.14-8.25 ( H-triazole), 9.21 (NH)
(アセチル基の脱保護)
上記の第三ブトキシカルボニル基を脱保護された化合物30.0 mg(7.58×10-6 mol)にメタノール2 mlを加えて溶解させた。続いて、ナトリウムメトキシド3.28 mg(6.06×10-5 mol)を加え、室温で8時間攪拌した。その後、陽イオン交換樹脂をpH 7になるまで加えた。陽イオン交換樹脂を濾去し、減圧留去により実施例3の化合物(c)を白色固体22.9 mg(収率91.6 %)として得た。
TLC Rf=0.15 (アンモニア/水/1-プロパノール/酢酸エチル=0.5/2/5/3)、
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6,): δ= 0.88-0.89 (CH3), 1.90-1.93 (CH), 2.72 (CH2), 3.22-3.50 (H-4, H-5, H-6), 3.68-3.70 (H-2), 4.11 (CH2), 4.43 (H-3), 5.11 (H-1), 6.08-6.12 (OH]) 8.08 (triazole), 9.15 (NH).
(実施例4)
シクロデキストリン誘導体(d)の合成
(クリック反応)
硫酸銅 45.6 mg(2.30×10-4 mol)を100 μlの純水に溶かし、アスコルビン酸ナトリウム4.58 mg(1.84×10-4 mol)を100 μlの純水に溶かしたものを加えた。その溶液をDMSO 1 mlに溶かした化合物[4] 50 mg(2.30×10-5 mol)に加えた。ここにDMSO 1 mlに溶かした第三ブトキシカルボニル化シクロブチルメチルアミノプロピン 51.3 mg(2.30×10-4 mol)を加えた。これにマイクロ波を照射し加熱(30 min, 120℃)した。さらに硫酸銅45.6 mg(2.30×10-4 mol)を100 μlの純水に溶かし、アスコルビン酸ナトリウム4.58 mg(1.84×10-4 mol)を100 μlの純水に溶かしたものを加え、続いてDMSO 0.5 mlに溶かした第三ブトキシカルボニル化シクロブチルメチルアミノプロピン20.3 mg(9.10×10-5mol)を加えた。マイクロ波を照射して加熱(10 min, 120℃) した後、酢酸エチルに溶かし、これを5 %EDTA二ナトリウム水溶液で洗浄し、減圧留去にて溶媒を除去した残渣をシリカゲルカラム(塩化メチレン/メタノール)により精製し、白色固体71.5 mg (収率78.7 %)を得た。
TLC Rf=0.20 (塩化メチレン/メタノール=20/1 (v/v))
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ= 1.42 [C(CH3)3], 1.67 [CH2], 1.80-1.94 [CH2], 1.93 [CH2], 2.00-2.05 [CH3], 2.55 [CH2], 3.23-3.34 [CH2], 3.55-3.61 [CH], 4.34-4.48 [CH, CH2], 4.67-4.69 [CH], 4.86 [CH2], 5.36-5.40 [CH], 5.64 [CH], 7.69-7.71 [NH]
FT-IR (KBr, cm-1) 462.83, 601.68, 785.85, 881.31, 1046.19, 1145.51, 1168.65, 1245.79, 1368.25, 1413.57, 1458.89, 1625,70, 1692.23, 1757.80, 2974.66, 3446.17
(アセチル基の脱保護)
上記のクリック反応生成物40.0 mg(1.01×10-5 mol)にメタノール3 mlを加えて溶解させた。続いて、ナトリウムメトキシドをpH 9になるまで加え、室温で12時間攪拌した。その後、陽イオン交換樹脂をpH 7になるまで加えた。陽イオン交換樹脂を濾去し、減圧留去により白色固体35.1 mg (収率100 %)を得た。
TLC Rf=0.80 (アンモニア/水/1-プロパノール/酢酸エチル=3/2/7/7)
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ= 1.23 [C(CH3)3], 1.34 [CH2], 1.47 [CH2], 1.57 [CH2], 3.17-3.24 [CH2, CH2], 3.64-3.66 [CH], 4.03 [CH], 4.14 [CH], 4.35 [CH2], 5.11 [CH], 5.94 [OH], 7.69-7.71 [NH]
(第三ブトキシカルボニル基の脱保護)
アセチル基を脱保護された化合物30.3 mg(9.23×10-6 mol)にトリフルオロ酢酸1 mlを加えて溶解させた。その後、30分攪拌し、減圧留去により実施例4の化合物(d)を白色固体33.4 mg (収率100 %)として得た。
TLC Rf=0.35 (アンモニア/水/1-プロパノール/酢酸エチル=3/2/7/7 )
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ= 1.73 [CH2], 2.50-2.57 [CH], 2.95 [CH2], 3.39-3.40 [CH2], 3.68-3.70 [CH], 4.10 [CH], 4.45-4.53 [CH2], 5.11 [CH], 6.08 [OH], 8.08 [NH], 9.10 [NH2]
(実施例5)
シクロデキストリン誘導体(e)の合成
(クリック反応)
硫酸銅 4.57 mg(1.85×10-5 mol)を160 μlの純水に溶かし、アスコルビン酸ナトリウム45.2 mg(2.31×10-4 mol)を140 μlの純水に溶かしたものを加えた。その溶液をDMSO 1 mlに溶かした化合物[4] 50 mg(2.30×10-5 mol)に加えた。ここにDMSO1.3 mlに溶かした第三ブトキシカルボニル化シクロペンチルメチルアミノプロピン 54.6 mg(2.30×10-4 mol)を加えた。これにマイクロ波を照射し加熱(10 min, 120℃) した後、酢酸エチルに溶かし、これを5 %EDTA二ナトリウム水溶液で洗浄し、減圧留去にて溶媒を除去した残渣をシリカゲルカラム(ヘキサン/酢酸エチル) により精製し、白色固体60.1 mg(収率64.2 %)を得た。
TLC Rf=0.66 (ヘキサン/酢酸エチル=1/9 (v/v))
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ= 1.19 [CH2], 1.41 [C(CH3)3], 1.51 [CH2], 1.61 [CH2], 2.04-2.05 [COCH3], 2.17-2.21 [CH], 3.14-3.20 [CH2], 3.57 [H-4], 4.38-4.48 [H-5, H-6], 4.67-4.69 [H-2], 4.86 [CH2], 5.38 [H-3], 5.64 [H-1], 7.67-7.72 [triazole]
13C NMR (100 MHz, CDCl3): d = 20.7-20.9 [CH3CO], 24.9 [CH2], 28.4 [(CH3)3-Boc], 29.7-30.1 [CH2], 38.9 [CH], 42.1-42.5 [C6], 49.7 (CH2-triazole), 51.6 (CH2-N(Boc)), 69.6-70.7 [C5, C2, C3, C4], 79.6 [OC(CH3)3-Boc], 95.6 [C1], 124.7-125.3 [CH-triazol], 145.5 [=CN-triazol], 155.5-155.7 [C=O-Boc ], 169.6-170.2 [C=O-acetyl]
FT-IR :(KBr, cm-1) 460.904, 524.543, 566.005, 601.682, 647.965, 733.782, 782.958, 822.491, 879.381, 949.77, 1045.23, 1161.9, 1245.79, 1367.28, 1415.49, 1461.78, 1545.67, 1691.27, 1758.76, 2869.56, 2953.45, 3148.22, 3480.88
Anal.: Calcd. for C192H288N32O64+ 2.0 H2O: C 56.18, H 7.17, N 10.92. Found: C 56.27, H 7.25, N 10.63
(第三ブトキシカルボニル基の脱保護)
上記のクリック反応生成物のうち、42.3 mg(1.04×10-2 mol)にトリフルオロ酢酸 1 mlを加えて溶解させた。その後、20分攪拌し、減圧留去により白色固体41.0 mg(収率94.3 %)を得た。
【実施例】
【0060】
TLC Rf=0.05 (ヘキサン/酢酸エチル=1/9 (v/v)、ナフトレゾルシン発色)
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ=1.121-1.134 [CH2], 1.459-1.531 [CH2], 1.699-1.714 [CH2], 1.995 [COCH3], 2.065-2.103 [CH], 2.833 [CH2], 3.446-3.569 [H-4, CH2], 4.181 [H-6], 4.427 [H-5], 4.634-4.656 [H-2], 4.735 [CH2], 5.276-5.321[H-3], 5.380 [H-1], 8.186[H-triazol], 9.244[NH]
(アセチル基の脱保護)
上記の第三ブトキシカルボニル基を脱保護された化合物 28.2 mg(6.75×10-3mol)にメタノール1 mlを加えて溶解させた。続いて、ナトリウムメトキシドを2.91 mg(5.4×10-2 mol)加え、室温で4時間攪拌した。その後、陽イオン交換樹脂をpH 7になるまで加えた。陽イオン交換樹脂を濾去し、減圧留去により実施例5の化合物(e)を白色固体18.1 mg(収率76.7 %)として得た。
TLC Rf=0.15 (アンモニア/水/1-プロパノール/酢酸エチル=3/2/7/7)
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6,): δ= 1.149-1.233 [CH2], 1.475-1.547 [CH2], 1.722 [CH2], 2.083-2.103 [CH], 2.859 [CH2], 3.219-3.394 [H-4, H-6], 3.698 [H-5], 4.098 [CH2, H-2], 4.433 [H-3], 5.106 [H-1], 6.099 [OH], 8.080[triazole], 9.193 [NH]
MS: [M+H]+ Calcd. for C120H193N32O32: 2594.4546, Found: 2594.4702
[M+Na]+Calcd. for C120H192N32NaO32: 2616.4278, Found: 2616.4516

(評価)
上記のようにして合成した実施例1~5のシクロデキストリン誘導体(a)~(e)の抗菌性を最小発育濃度(MIC)で評価した。評価にはグラム陽性菌として黄色ブドウ球菌および枯草菌、グラム陰性菌として大腸菌、ネズミチフス菌、緑膿菌を使用した。
【実施例】
【0061】
評価方法は以下の通りである。
【実施例】
【0062】
すなわち、細菌は、一般細菌用乾燥ブイヨンあるいは大腸菌はポリペプトンを加えた最小塩培地で培養し、対数増殖期の状態のものを使用した。最小発育濃度は、Muller Hinton培地、菌液、各濃度の候補化合物溶液を、37℃で20時間、培養することにより、試験化合物がその細菌の生育を阻止した最小濃度とした。なお初期の菌濃度は1x10 細胞/mLとした。
【実施例】
【0063】
最小発育濃度(MIC)で評価の結果を表1に示す。
【実施例】
【0064】
【表1】
JP2014111562A_000013t.gif
【実施例】
【0065】
一般に最小発育濃度が1000μg/mLを上回る場合には、その物質には抗菌性はないと判断され、10~1000μg/mLの場合には中程度、10μg/mL以下では強力な抗菌性ありとされる。
【実施例】
【0066】
上記表1に示すように、末端が鎖上のアルキル部である2-メチルプロピルアミノメチルトリアゾール基を持つ実施例3の化合物(C)は、黄色ブドウ球菌に対して64μg/mLという中程度の抗菌性を示した。同じく末端が鎖上のアルキル部である2-エチルブチルアミノメチルトリアゾール基を持つ実施例2の化合物(b)は、グラム陽性菌である黄色ブドウ球菌および枯草菌、グラム陰性菌である大腸菌およびネズミチフス菌に対しては4または8μg/mLという強力な抗菌性を示し、緑膿菌に対しても64μg/mLという中程度の抗菌性を示した。
【実施例】
【0067】
一方、末端が環状のアルキル部である実施例1、4、5の化合物(a)、(d)、(e)については、グラム陽性菌である黄色ブドウ球菌および枯草菌、グラム陰性菌である大腸菌およびネズミチフス菌に対しては、いずれも抗菌性を示した。すなわち、シクロへキシル部を持つ実施例1の化合物(a)はグラム陰性菌である大腸菌およびネズミチフス菌に対する最小発育濃度はいずれも16μg/mLであり、グラム陽性菌には8μg/mLという強力な抗菌性を示した。また、シクロブチル部を持つ実施例4の化合物(d)は、ネズミチフス菌に対する最小発育濃度は32μg/mLであるものの、グラム陰性菌である大腸菌、およびグラム陽性菌には8μg/mLという強力な抗菌性を示した。さらに、シクロペンチル部を持つ実施例5の化合物(e)は、黄色ブドウ球菌、枯草菌、大腸菌およびネズミチフス菌の全てに対して4または8μg/mLという強力な抗菌性を示した。なお、グラム陰性菌である緑膿菌への最小発育濃度はいずれも128μg/mL超であった。
【実施例】
【0068】
以上の結果から、γシクロデキストリンに疎水性アルキル部を持つアミノトリアゾール基を導入した化合物は、抗菌性を発現する上で有効であることが分かった。また、アルキル部が鎖状または環状のいずれでも抗菌性を示すことが分かった。さらには、ここで示された抗菌性はその分子設計から膜傷害機構に起因するものと合理的に推定され、シクロデキストリンを利用して抗菌性を発現する物質を構築する前述の分子設計とその調製方法の有効性を実証している。
【実施例】
【0069】
そしてここでは、 親水性であるシクロデキストリンのグルコース部分にトリアゾール部を介してアルキルアミノメチル部を連結することで細菌への抗菌性を発現させた。これはグルコースの性質を利用して親水性と疎水性のバランスを適切に調節することにより抗菌物質ができることを示している。それゆえに、シクロデキストリンと同様にグルコースからなるオリゴ糖~多糖にアルキルアミノアルキルトリアゾール部を導入することで抗菌物質が合成できると考えられる。さらに、グルコースの異性体で同様の性質を持つ単糖からなるオリゴ糖~多糖からも抗菌物質が合成できることを合理的に推論できる。
【実施例】
【0070】
この発明は上記発明の実施の態様及び実施例の説明に何ら限定されるものではない。特許請求の範囲を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様もこの発明に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明の糖誘導体又はその塩は抗菌剤として利用可能である。また、本発明の試薬は、物質を抗菌化する方法に利用可能である。