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明細書 :バイナリー発電システム

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B1)
特許番号 特許第5531250号 (P5531250)
登録日 平成26年5月9日(2014.5.9)
発行日 平成26年6月25日(2014.6.25)
発明の名称または考案の名称 バイナリー発電システム
国際特許分類 F01K   7/44        (2006.01)
F01K  25/10        (2006.01)
FI F01K 7/44 A
F01K 25/10 R
請求項の数または発明の数 2
全頁数 10
出願番号 特願2013-053748 (P2013-053748)
出願日 平成25年3月15日(2013.3.15)
審査請求日 平成25年9月6日(2013.9.6)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】507214083
【氏名又は名称】メタウォーター株式会社
【識別番号】504209655
【氏名又は名称】国立大学法人佐賀大学
発明者または考案者 【氏名】三島 俊一
【氏名】木村 英人
【氏名】池上 康之
早期審査対象出願または早期審理対象出願 早期審査対象出願
個別代理人の代理人 【識別番号】100147485、【弁理士】、【氏名又は名称】杉村 憲司
【識別番号】100150360、【弁理士】、【氏名又は名称】寺嶋 勇太
【識別番号】100174001、【弁理士】、【氏名又は名称】結城 仁美
審査官 【審査官】瀬戸 康平
参考文献・文献 特開昭57-165611(JP,A)
特開昭53-072950(JP,A)
国際公開第2011/105064(WO,A1)
特開2011-085025(JP,A)
特表2007-500810(JP,A)
特開平02-245405(JP,A)
調査した分野 F01K 7/00,25/00
要約 【課題】システム全体としての熱エネルギーの利用効率を改善し、発電効率を向上させることができる、バイナリー発電システムを提供する。
【解決手段】低沸点媒体の蒸気を作動流体として用いるバイナリー発電システム10であって、低沸点媒体を加熱して低沸点媒体の蒸気を得る蒸発器3と、低沸点媒体の蒸気を加熱する蒸気過熱器5と、該蒸気過熱器5を経た低沸点媒体の蒸気の運動エネルギーを回転軸の回転エネルギーに変換するタービンTと、タービンTを経た低沸点媒体の蒸気を凝縮させる凝縮器9とを備え、且つ、内部で低沸点媒体を循環させる閉ループ状の循環系統15を有し、蒸発器3を通過した後であって蒸気過熱器5に流入する前の低沸点媒体と、タービンTを通過した後であって凝縮器9に流入する前の低沸点媒体との間で熱交換を行う第1熱交換器6を更に有するバイナリー発電システム10である。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
低沸点媒体の蒸気を作動流体として用いるバイナリー発電システムであって、
低沸点媒体を加熱して低沸点媒体の蒸気を得る蒸発器と、前記低沸点媒体の蒸気を加熱する蒸気過熱器と、該蒸気過熱器を経た前記低沸点媒体の蒸気の運動エネルギーを回転軸の回転エネルギーに変換するタービンと、前記タービンにおいて運動エネルギーの一部を前記回転軸の回転エネルギーに変換した前記低沸点媒体の蒸気を凝縮させる凝縮器とを備え、且つ、内部で前記低沸点媒体を循環させる閉ループ状の循環系統を有し、
前記蒸発器を通過した後であって前記蒸気過熱器に流入する前の前記低沸点媒体と、前記タービンを通過した後であって前記凝縮器に流入する前の前記低沸点媒体との間で熱交換を行う第1熱交換器を更に有し、
前記第1熱交換器を通過した後であって前記凝縮器に流入する前の前記低沸点媒体と、前記凝縮器を通過した後であって前記蒸発器に流入する前の前記低沸点媒体との間で熱交換を行う第2熱交換器を更に有し、
前記凝縮器を通過した後であって前記第2熱交換器に流入する前の前記低沸点媒体を加熱する加熱器と、
前記第1熱交換器を通過した後であって前記第2熱交換器に流入する前の前記低沸点媒体の温度を測定する第1温度センサと、
前記加熱器を通過した後であって前記第2熱交換器に流入する前の前記低沸点媒体の温度を測定する第2温度センサと、
前記加熱器を経た前記低沸点媒体を、前記第2熱交換器を経ずに前記蒸発器に流入させる迂回流路と、
前記加熱器を通過した後の前記低沸点媒体が流れる流路を、前記迂回流路と、前記第2熱交換器への流路との間で切り替える切替手段と、
前記第1及び第2温度センサの測温値に基づいて前記切替手段を制御する制御装置であって、該制御装置は、前記第1温度センサの測温値が前記第2温度センサの測温値よりも高い場合に、前記第2熱交換器への流路に切り替え、前記第1温度センサの測温値が前記第2温度センサの測温値以下の場合に、前記迂回流路に切り替える、制御装置と、
を備えることを特徴とする、バイナリー発電システム。
【請求項2】
前記第1熱交換器は、前記蒸発器を通過し、前記蒸発器と前記蒸気過熱器との間に配置された分離器に流入する前の前記低沸点媒体と、前記タービンを通過した後であって、前記凝縮器に流入する前の前記低沸点媒体と、の間で熱交換可能な位置に設置された、ことを特徴とする、請求項に記載のバイナリー発電システム。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、低沸点媒体の蒸気を作動流体として用いるバイナリー発電システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、アンモニア等の水よりも沸点が低い低沸点媒体を加熱し、発生した蒸気を用いてタービン発電機のタービンの羽根車を回転させることにより発電するバイナリー発電システムが知られている。タービン発電機を用いた従来のバイナリー発電システムは、液状の低沸点媒体を加熱して気化させる蒸発器と、低沸点媒体の蒸気の運動エネルギーを回転軸の回転エネルギーに変換するタービンと、低沸点媒体の蒸気を凝縮させる凝縮器と、液状の低沸点媒体を蒸発器に送る媒体送液ポンプとを備える閉ループ内で低沸点媒体を循環させる。このようにして、従来のバイナリー発電システムでは、タービンで得た回転エネルギーがタービン発電機の発電機で電気エネルギーに変換される。
【0003】
ここで、このようなバイナリー発電システムにおいては、低沸点媒体を加熱して蒸発させるための熱源として廃熱などを有効利用し、発電効率を向上することが求められている。
【0004】
そこで、例えば特許文献1では、汚泥やごみを焼却する焼却炉で生じる高温の気体や高温の排水を熱源として用いたバイナリー発電システムが提案されている。この特許文献1に記載の発電システムでは、下水処理システムが備える焼却炉からの排ガスによって加熱された高温空気と、排ガスを洗浄した後に下水処理システムから排出される洗煙排水とを熱源として使用し、低沸点媒体を加熱している。具体的には、特許文献1の発電システムでは、蒸発器において、高温空気よりも温度が低い洗煙排水と低沸点媒体との間で熱交換を行って低沸点媒体を蒸発させると共に、蒸発器の後段側に設けられた蒸気過熱器において、高温空気と低沸点媒体の蒸気(作動流体)との間で熱交換を行うことにより、廃熱を有効利用しつつ、高温の作動流体を用いて発電効率を向上させている。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特開2011-174652号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に係る発電システム(バイナリー発電システム)によれば、温度の異なる2種類の熱源を用いて低沸点媒体を効率的に加熱し、高温の作動流体を用いてタービン発電機の羽根車を回転させることができるので、1種類の熱源のみを用いて低沸点媒体を加熱した場合と比較して、発電効率を向上させることができる。
【0007】
ここで、バイナリー発電システムでは、タービン発電機の羽根車を回転させた後の作動流体(低沸点媒体の蒸気)は、凝縮器において冷却され、凝縮される。しかし、温度の異なる2種類の熱源を用いた上記従来のバイナリー発電システムでは、高温の作動流体を用いてタービン発電機の羽根車を回転させており、タービン発電機の羽根車を回転させた後の作動流体の温度も比較的高い。
【0008】
そのため、温度の異なる2種類の熱源を用いた上記従来のバイナリー発電システムでは、2種類の熱の利用効率は良好であるものの、タービン発電機の羽根車を回転させた後の作動流体が有する熱エネルギーを有効利用できておらず、バイナリー発電システム全体としての熱エネルギーの利用効率に関しては、改善の余地があった。
【0009】
したがって、かかる事情に鑑みてなされた本発明の目的は、バイナリー発電システム全体としての熱エネルギーの利用効率を改善し、発電効率を向上させることができる、バイナリー発電システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決することを目的として、鋭意検討を行った。そして、本発明者らは、温度の異なる2種類の熱源を用いたバイナリー発電システムにおいて、タービン発電機の羽根車を回転させた後の作動流体の熱エネルギーを利用して作動流体を加熱することに着想した。更に、本発明者らは鋭意検討を重ね、2種類の熱源を用いたバイナリー発電システムでは、タービン発電機の羽根車を回転させた後の作動流体が高温であるため、蒸発器を通過させる前の作動流体の加熱に使用した場合には、低温の熱源を用いた蒸発器における作動流体(低沸点媒体)の加熱を効率的に行うことができなくなることを見出し、本発明を完成させた。
【0011】
この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明のバイナリー発電システムは、低沸点媒体の蒸気を作動流体として用いるバイナリー発電システムであって、低沸点媒体を加熱して低沸点媒体の蒸気を得る蒸発器と、前記低沸点媒体の蒸気を加熱する蒸気過熱器と、該蒸気過熱器を経た前記低沸点媒体の蒸気の運動エネルギーを回転軸の回転エネルギーに変換するタービンと、前記タービンにおいて運動エネルギーの一部を前記回転軸の回転エネルギーに変換した前記低沸点媒体の蒸気を凝縮させる凝縮器とを備え、且つ、内部で前記低沸点媒体を循環させる閉ループ状の循環系統を有し、前記蒸発器を通過した後であって前記蒸気過熱器に流入する前の前記低沸点媒体と、前記タービンを通過した後であって前記凝縮器に流入する前の前記低沸点媒体との間で熱交換を行う第1熱交換器を更に有し、前記第1熱交換器を通過した後であって前記凝縮器に流入する前の前記低沸点媒体と、前記凝縮器を通過した後であって前記蒸発器に流入する前の前記低沸点媒体との間で熱交換を行う第2熱交換器を更に有し、前記凝縮器を通過した後であって前記第2熱交換器に流入する前の前記低沸点媒体を加熱する加熱器と、前記第1熱交換器を通過した後であって前記第2熱交換器に流入する前の前記低沸点媒体の温度を測定する第1温度センサと、前記加熱器を通過した後であって前記第2熱交換器に流入する前の前記低沸点媒体の温度を測定する第2温度センサと、前記加熱器を経た前記低沸点媒体を、前記第2熱交換器を経ずに前記蒸発器に流入させる迂回流路と、前記加熱器を通過した後の前記低沸点媒体が流れる流路を、前記迂回流路と、前記第2熱交換器への流路との間で切り替える切替手段と、前記第1及び第2温度センサの測温値に基づいて前記切替手段を制御する制御装置であって、該制御装置は、前記第1温度センサの測温値が前記第2温度センサの測温値よりも高い場合に、前記第2熱交換器への流路に切り替え、前記第1温度センサの測温値が前記第2温度センサの測温値以下の場合に、前記迂回流路に切り替える、制御装置と、を備えることを特徴とする。
このように、蒸発器を通過した後であって蒸気過熱器に流入する前の低沸点媒体と、タービンの回転軸を回転させた後の低沸点媒体との間で熱交換を行うことにより、タービンの回転軸を回転させた後の低沸点媒体が有する熱エネルギーを有効利用して、バイナリー発電システム全体としての熱エネルギーの利用効率を改善することができる。また、タービンの回転軸を回転させた後の低沸点媒体との間で熱交換を行う対象を、蒸発器を通過した後の低沸点媒体とすれば、蒸発器における低沸点媒体の加熱に使用する熱源が低温の熱源であったとしても、蒸発器における低沸点媒体の加熱を効率的に行うことができる。因みに、蒸気過熱器を通過した後の低沸点媒体の蒸気の温度は、タービンの回転軸を回転させた後の低沸点媒体の温度よりも高いので、タービンの回転軸を回転させた後の低沸点媒体との間で熱交換を行う対象は、蒸気過熱器に流入する前の低沸点媒体とする。
【0012】
さらに、上述したように第1熱交換器に加えて、さらに第1熱交換器を経た低沸点媒体が有する熱エネルギーを蒸発器流入前の低沸点媒体に熱移動させる第2熱交換器を備えることで、第1熱交換器を経た低沸点媒体の有する熱エネルギーを有効利用して、バイナリー発電システム全体としての熱エネルギーの利用効率を一層向上させることができる。
【0013】
さらに、上述したように第1及び第2温度センサを設けて加熱器を経た低沸点媒体の温度と、第1熱交換器を通った低沸点媒体の温度とを比較して、後者の温度の方が高い場合にのみ、第1熱交換器を通った低沸点媒体から加熱器を通った低沸点媒体に熱移動させる(即ち、第2熱交換器を使用する)ことで、蒸発器や蒸気過熱器で使用する熱源に温度変化が生じた場合であっても、バイナリー発電システム全体としての熱エネルギーの利用効率を一層向上させることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明のバイナリー発電システムによれば、バイナリー発電システム全体としての熱エネルギーの利用効率を改善し、発電効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に従う代表的なバイナリー発電システムの概略構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づき詳細に説明する。
ここで、本発明のバイナリー発電システムでは、低沸点媒体の蒸気を作動流体として用いて発電を行う。本発明のバイナリー発電システムは、特に限定されることなく、水とアンモニアとの混合物を低沸点媒体として用いるカリーナサイクル方式のバイナリー発電システムでありうる。なお、本発明のバイナリー発電システムは、アンモニア、ブタン、ペンタン等の単体を低沸点媒体として用いるランキンサイクル方式のバイナリー発電システムであってもよい。

【0017】
<バイナリー発電システム>
図1に、本発明に従うバイナリー発電システムの一例の概略構成を示す。このバイナリー発電システム10は、カリーナサイクル方式のバイナリー発電システムである。

【0018】
バイナリー発電システム10は、タービンTと発電機11とからなるタービン発電機を有している。そして、バイナリー発電システム10では、低沸点媒体タンク1と、媒体送液ポンプP1と、再生熱交換器として機能する加熱器2と、蒸発器3と、分離器4と、蒸気過熱器5と、タービンTと、第1熱交換器6と、吸収器8と、凝縮器9とを備える閉ループ状の循環系統15内で低沸点媒体を循環させることにより、タービン発電機を用いて発電を行う。バイナリー発電システム10は、更に、第2熱交換器7、第1温度センサ12、第2温度センサ13、切替手段14及び迂回流路17を備えることが好ましい。また、バイナリー発電システム10は、第3熱交換器20を備えても良い。

【0019】
ここで、低沸点媒体タンク1は、液状の低沸点媒体を貯留するタンクである。そして、低沸点媒体タンク1中の低沸点媒体(この一例のバイナリー発電システム10では、水とアンモニアとの混合物)は、媒体送液ポンプP1により、加熱器2を介して蒸発器3へと送られる。

【0020】
加熱器2は、低温の低沸点媒体と、後に詳細に説明する分離器4において分離された高温の蒸発残液との間で熱交換を行い、低沸点媒体が蒸発器3へと流入する前に低沸点媒体を予加熱する装置である。この加熱器2では、蒸発残液の有する熱エネルギーが低沸点媒体の予加熱に有効利用される。

【0021】
そして、加熱器2で予加熱された低沸点媒体は、蒸発器3において更に加熱され、少なくとも一部が蒸気となる。具体的には、蒸発器3では、低沸点媒体が加熱され、大部分がアンモニア蒸気よりなる低沸点媒体蒸気と、大部分が水よりなる蒸発残液との混合流体が生成する。ここで、蒸発器3では、例えば、第1温度の流体(例えば、温水)を熱源として用いて低沸点媒体を加熱する。第1温度は、例えば50℃~100℃でありうる。なお、蒸発器3において低沸点媒体を加熱する際の熱源としては、焼却炉等からの温排水、加熱炉の排気ガス、温泉水、蒸気などのバイナリー発電において通常用いられる熱源を使用することができる。

【0022】
分離器4は、蒸発器3から流出した低沸点媒体蒸気と蒸発残液との混合流体を、低沸点媒体蒸気と、蒸発残液とに気液分離する装置である。そして、分離器4で分離された低沸点媒体蒸気は、蒸気過熱器5へと送られる。また、蒸発残液は、蒸発残液流路16を通り、加熱器2を経て吸収器8へと送られる。なお、分離器4としては、ミストセパレーターやサイクロンなどの既知の気液分離装置を用いることができる。

【0023】
蒸気過熱器5は、分離器4で分離された低沸点媒体蒸気を更に加熱し、バイナリー発電システム10の発電効率を向上させるための装置である。蒸気過熱器5では、蒸発器3において使用した熱源(流体)の温度である第1温度よりも高い第2温度の流体(例えば、温空気)を用いて、分離器4で分離された低沸点媒体蒸気を加熱する。第2温度は、例えば、100℃~400℃でありうる。なお、蒸気過熱器5において低沸点媒体蒸気を加熱する際の熱源としては、焼却炉等の排ガスやそれによって加熱された温空気、蒸気、及び温泉蒸気、又は太陽熱などを使用することができる。

【0024】
タービンTは、蒸気過熱器5から流出した低沸点媒体蒸気の運動エネルギーを回転軸の回転エネルギーに変換する装置である。そして、タービンTの回転軸は発電機11に接続されており、タービンTで得た回転エネルギーは、発電機11において電気エネルギーに変換される。タービンTを通過した後の低沸点媒体蒸気の温度は、例えば、100℃~300℃でありうる。

【0025】
第1熱交換器6は、蒸発器3を通過した後であって蒸気過熱器5に流入する前の低沸点媒体(低沸点媒体蒸気を含む)と、タービンTを通過した後であって凝縮器9に流入する前の低沸点媒体(低沸点媒体蒸気を含む)との間で熱交換を行う。タービンTを通過した後であって凝縮器9に流入する前(この一例のバイナリー発電システム10では、吸収器8に流入する前)の低沸点媒体は、その大部分が蒸気状態であり、蒸気過熱器5から流出した低沸点媒体蒸気と比較して、タービンTにおいて低沸点媒体蒸気の運動エネルギーの一部が回転軸の回転エネルギーに変換されたことにより熱エネルギーの一部を失ってはいるものの、未だ高温である。そこで、第1熱交換器6は、かかる低沸点媒体が有する熱エネルギーを、蒸発器3を通過した後であって蒸気過熱器5に流入する前の低沸点媒体に熱移動させる。これにより、タービンTを通過した後であって凝縮器9に流入する前の低沸点媒体が有する熱エネルギーを有効利用して、バイナリー発電システム10全体としての熱エネルギーの利用効率を改善することができる。

【0026】
ここで、蒸発器3において熱源として用いた第1温度の流体の温度は、タービンTを通過した後であって第1熱交換器6に流入する前の低沸点媒体の温度(第3温度)よりも通常低い。よって、仮に、蒸発器3に流入する前の低沸点媒体と第3温度の低沸点媒体との間で熱交換させてしまうと、蒸発器3に流入する前の低沸点媒体の温度が、第1温度よりも高くなることがある。そして、その場合には、蒸発器3は、第1温度の流体を熱源として低沸点媒体を加熱することができない(即ち、第1温度の流体の熱エネルギーを有効利用することができない)。したがって、第1熱交換器6は、蒸発器3を通過し、蒸気過熱器5に流入する前の低沸点媒体と、タービンTを通過した後であって凝縮器9に流入する前の低沸点媒体との間で熱交換が可能に構成される必要がある。
なお、第1熱交換器6は、蒸発器3を通過し分離器4に流入する前の低沸点媒体と、タービンTを通過した後であって凝縮器9に流入する前の低沸点媒体との間で熱交換が可能な位置に設置することが好ましい。分離器4を通過した後であって蒸気過熱器5に流入する前の低沸点媒体と、タービンTを通過した後であって凝縮器9に流入する前の低沸点媒体との間で熱交換を行う位置に第1熱交換器6を設置した場合と比較し、分離器4において分離される低沸点媒体蒸気の量を増加させることができるからである。そして、その結果、発電機11における発電量を大きくすることができると共に、例えば蒸発器3において用いている熱源の温度が経時変化した場合であっても安定的に発電することができるからである。
なお、第3温度は、前述した第1温度と第2温度の差が大きいほど第1温度よりも高温になり易く、特に、第1温度と第2温度との差が100℃以上の場合には、上述した熱交換の実施による熱エネルギーの利用効率の改善が著しい。

【0027】
第2熱交換器7は、第1熱交換器6を通過した後であって凝縮器9に流入する前の低沸点媒体と、凝縮器9を通過した後であって蒸発器3に流入する前の低沸点媒体との間で熱交換を行う。図1に示すバイナリー発電システム10では、第2熱交換器7は、第1熱交換器6を通過した後であって吸収器8に流入する前の低沸点媒体と、加熱器2を通過した後であって、蒸発器3に流入する前の低沸点媒体との間で熱交換を行うように構成した。このように、第2熱交換器7を備えることで、第1熱交換器6を経た低沸点媒体の有する熱エネルギーを有効利用して、バイナリー発電システム10全体としての熱エネルギーの利用効率を一層向上させることができる。

【0028】
吸収器8は、タービンTの回転軸を回転させ、第1熱交換器6及び第2熱交換器7を通過した後の低沸点媒体蒸気と、分離器4で分離した蒸発残液とを混合し、低沸点媒体蒸気の一部を蒸発残液に吸収させる装置である。なお、吸収器8としては、ラインミキサーやスプレー塔等の既知の気液混合装置を用いることができる。

【0029】
第3熱交換器20は、吸収器8を通過した後であって凝縮器9に流入する前の低沸点媒体と、媒体送液ポンプP1から送出された後であって加熱器2に流入する前の低沸点媒体との間で熱交換する。なお、バイナリー発電システム10において、第3熱交換器を設けることは必須ではない。また、吸収器8を通過した後であって凝縮器9に流入する前の低沸点媒体の温度は、媒体送液ポンプP1による圧縮作用により若干の温度上昇はあるものの、基本的に、媒体送液ポンプP1から送出された後であって加熱器2に流入する前の低沸点媒体の温度よりも高い。このため、第3熱交換器流路19には弁等を設けて、後述する第2熱交換器に関連した流路変更制御に類似した制御を実施することは必須ではなく、媒体送液ポンプP1から送出された低沸点媒体は、常に第3熱交換器20を通過するように、バイナリー発電システム10を構成することができる。

【0030】
凝縮器9は、吸収器8から流出した低沸点媒体蒸気と蒸発残液との混合流体を冷却し、低沸点媒体蒸気を凝縮させる装置である。そして、凝縮器9において低沸点媒体蒸気を凝縮させて得られる液状の低沸点媒体(低沸点媒体蒸気の凝縮物と蒸発残液との混合物)は、低沸点媒体タンク1に貯留された後、媒体送液ポンプP1により再び蒸発器3へと送られる。

【0031】
ここで、第2熱交換器7は、第1熱交換器6を通過した後であって凝縮器9に流入する前の低沸点媒体の温度(第4温度)が、加熱器2を通過した後であって、蒸発器3に流入する前の低沸点媒体の温度(第5温度)よりも高い場合に、蒸発器3に流入する前の低沸点媒体の温度を上昇させることができる。しかし、蒸発器3で使用する熱源の温度(第1温度)や、蒸気過熱器5で使用する熱源の温度(第2温度)が経時的に変化する場合などには、第4温度が第5温度よりも低くなることがあり得る。そして、第4温度が第5温度よりも低くなった場合には、第2熱交換器7を使用すると、蒸発器3に流入する前の低沸点媒体が冷却されることになり、バイナリー発電システム10全体としての熱エネルギーの利用効率が低下することになる。
そこで、第4温度が第5温度よりも低くなることがあり得る場合には、バイナリー発電システム10は、以下に説明する第1温度センサ12、第2温度センサ13、切替手段14及び迂回流路17を備えることが好ましい。

【0032】
第1温度センサ12は、第1熱交換器6を通過した後であって第2熱交換器7に流入する前の低沸点媒体の温度を測定するように構成される。また、第2温度センサ13は、加熱器2を通過した後であって第2熱交換器7に流入する前の低沸点媒体の温度を測定するように構成される。

【0033】
切替手段14は、第1切替弁14A及び第2切替弁14Bにより構成される。第1切替弁14Aは、加熱器2を経た低沸点媒体を、第2熱交換器7を経ずに前記蒸発器3に流入させる迂回流路17上に配置されている。具体的には、第1切替弁14Aは、加熱器2の後段の循環系統15上であって、循環系統15を流れる低沸点媒体を第2熱交換器7に供給するための第2熱交換器流路18が分岐する位置より後段であって、第2熱交換器流路18が循環系統15と合流する位置より前段に設けられる。また、第2切替弁14Bは、循環系統15から第2熱交換器流路18が分岐する位置より後段の第2熱交換器流路18上に設けられる。即ち、第1切替弁14Aは、開いたときに、加熱器2を通過した低沸点媒体が第2熱交換器7を通ることなく循環系統15を通って蒸発器3へ流入可能なように配置され、第2切替弁14Bは、開いたときに、加熱器2を通過した低沸点媒体が第2熱交換器7に流入可能なように配置される。

【0034】
ここで、バイナリー発電システム10は、第1温度センサ12及び第2温度センサ13、並びに切替手段14を用いて、バイナリー発電システム10の動作を制御する図示しない制御装置を更に備えることが好ましい。ここでいう、バイナリー発電システム10の動作とは、主として、バイナリー発電システム10における低沸点媒体の流路の変更を指す。以下、制御装置による制御について説明する。

【0035】
<バイナリー発電システムの動作>
図示しない制御装置は、第1温度センサ12及び第2温度センサ13の測温値に基づいて切替手段14を制御する。具体的には、制御装置は、第1温度センサ12の測温値(第4温度)が第2温度センサ13の測温値(第5温度)よりも高い場合に、低沸点媒体の流路を第2熱交換器7への第2熱交換器流路18に切り替え、第1温度センサ12の測温値(第4温度)が第2温度センサ13の測温値(第5温度)以下の場合に、低沸点媒体の流路を迂回流路17に切り替える。このようにバイナリー発電システム10内における低沸点媒体の流路を変更することで、蒸発器3や蒸気過熱器5で使用する熱源(すなわち、温水や温空気)に温度変化が生じた場合であっても、バイナリー発電システムを安定的に駆動させ、バイナリー発電システム全体としての熱エネルギーの利用効率を一層向上させることができる。

【0036】
具体的には、蒸発器3において熱源として使用される温水の温度(第1温度)が一定であり、蒸気過熱器5において熱源として使用される温空気の温度(第2温度)が低下した場合には、第1温度センサ12の測温値が低下し、第2温度センサ13の測温値よりも低くなることが起こりうる。このような場合に、加熱器2を経た低沸点媒体を第2熱交換器7に流入させてしまうと、蒸発器3に供給される低沸点媒体にタービンTを通過した後の低沸点媒体が有する熱エネルギーを熱移動させるという本来の目的が達成できないばかりでなく、逆方向の熱移動が生じてしまう。すると、加熱器2で加熱した低沸点媒体から熱エネルギーが失われることとなり、バイナリー発電システム10においてエネルギーロスが生じる。したがって、制御装置は、第1温度センサ12の測温値が第2温度センサ13の測温値よりも低い場合には、第1切替弁14Aを開き、第2切替弁14Bを閉じて、第2熱交換器7を通過させることなく、低沸点媒体を蒸発器3に流入させるように制御する。逆に、制御装置は、第1温度センサ12の測温値が第2温度センサ13の測温値よりも高い場合には、第1切替弁14Aを閉じ、第2切替弁14Bを開いて第2熱交換器7に低沸点媒体を流入させように制御する。

【0037】
以上、一例を用いて本発明のバイナリー発電システムについて説明したが、本発明のバイナリー発電システムは、上記一例に限定されることはなく、本発明のバイナリー発電システムには、適宜変更を加えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明によれば、システム全体としての熱エネルギーの利用効率を改善し、発電効率を向上させることができるバイナリー発電システムを提供することができる。
【符号の説明】
【0039】
1 低沸点媒体タンク
2 加熱器
3 蒸発器
4 分離器
5 蒸気過熱器
6 第1熱交換器
7 第2熱交換器
8 吸収器
9 凝縮器
10 バイナリー発電システム
11 発電機
12 第1温度センサ
13 第2温度センサ
14 切替手段
15 循環系統
16 蒸発残液流路
17 迂回流路
18 第2熱交換器流路
19 第3熱交換器流路
20 第3熱交換器
P1 媒体送液ポンプ
T タービン
図面
【図1】
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