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明細書 :膨化食品用生地及び膨化食品

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2014-187990 (P2014-187990A)
公開日 平成26年10月6日(2014.10.6)
発明の名称または考案の名称 膨化食品用生地及び膨化食品
国際特許分類 A21D  13/04        (2006.01)
A23L   1/18        (2006.01)
A21D  13/06        (2006.01)
A23L   1/105       (2006.01)
A23J   3/16        (2006.01)
FI A21D 13/04
A23L 1/18
A21D 13/06
A23L 1/105
A23J 3/16 502
請求項の数または発明の数 6
出願形態 OL
全頁数 10
出願番号 特願2013-069224 (P2013-069224)
出願日 平成25年3月28日(2013.3.28)
発明者または考案者 【氏名】新井 映子
【氏名】野澤 聖明
出願人 【識別番号】507219686
【氏名又は名称】静岡県公立大学法人
個別代理人の代理人 【識別番号】100101742、【弁理士】、【氏名又は名称】麦島 隆
審査請求 未請求
テーマコード 4B023
4B025
4B032
Fターム 4B023LC09
4B023LE07
4B023LE30
4B023LK18
4B023LP16
4B025LB10
4B025LG02
4B025LG32
4B025LG42
4B025LG52
4B025LG56
4B025LP05
4B025LP19
4B032DB01
4B032DB05
4B032DG08
4B032DK33
4B032DK49
4B032DK54
4B032DL01
4B032DL20
4B032DP08
4B032DP33
4B032DP40
要約 【課題】良好な膨化作用が得られると共に、増粘多糖類の添加を必要としない、グルテン無添加の、米粉を主原料とした膨化食品用生地を提供する。
【解決手段】主原料である米粉に、大豆タンパク質含有液、卵白タンパク質及びイーストを配合してなる。大豆タンパク質分子は、発酵によって発生した炭酸ガスの気泡の周りに配向して被膜を形成し、これが発酵中継続し、焼成時において膨化に必要な核が生地中に多数存在するようになる。焼成時には、熱の影響によって気泡の破泡や複数の気泡の合一化が生じやすいが、本発明によれば、卵白タンパク質を含有するため、タンパク質が熱変性してデンプン粒子間に架橋を形成し、デンプンの糊化開始前から生地の粘度を上昇させて気泡を保護するため、きめ細やかな膨化食品を製造することができる。
【選択図】 図2
特許請求の範囲 【請求項1】
米粉を主原料とするグルテン無添加の膨化食品用生地であって、前記主原料に、大豆タンパク質含有液、卵白タンパク質及びイーストを配合してなり、前記米粉に対する卵白タンパク質の配合量が2~5質量%の範囲であることを特徴とする膨化食品用生地。
【請求項2】
前記大豆タンパク質含有液が、豆乳、又は、大豆タンパク質と水との溶液である請求項1記載の膨化食品用生地。
【請求項3】
前記大豆タンパク質含有液の大豆タンパク質濃度が1~5質量%の範囲である請求項1又は2記載の膨化食品用生地。
【請求項4】
前記大豆タンパク質含有液中の大豆タンパク質がグリニシンである請求項1~3のいずれかに記載の膨化食品用生地
【請求項5】
米粉:大豆タンパク質含有液の配合比が、1:1~1:1.2の範囲である請求項1~4のいずれか1に記載の膨化食品用生地。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1に記載の膨化食品用生地を用いて製造される膨化食品。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、パン、ケーキなどの膨化食品用生地、及び、この膨化食品用生地を用いた膨化食品に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、パン、ケーキ、ドーナツなどは小麦粉を主原料として製造されるが、近年、小麦アレルギー保有者が増加しており、これらの食品を小麦粉以外の原料、特に米粉を用いて製造することが研究されている。
【0003】
しかし、米粉は小麦粉と異なりグルテンが存在しないため、焼成時に膨化の核となるイーストが発生する気泡(二酸化炭素)は生地表面から散逸してしまう。そのため、発酵中に生地の体積はほとんど増加せず、焼成しても小麦粉パンのようには膨化しない。そこで、特許文献1では、米粉を主原料とする生地を所定の粘度領域の生地にすることで、イーストの発酵作用による発泡を可能とした、グルテンを用いないパン生地に関する技術を開示している。特許文献2では、アルファ化米粉を配合した混合米粉を主原料とすることにより、小麦粉パンを製造する際の生地の粘度と同等領域の生地でも膨化が可能になったことが報告されている。また、特許文献3では、イーストの気泡を保持する手段として、増粘多糖類(キサンタンガムやグアガム等)を添加する技術を開示している。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特開2003-189786号公報
【特許文献2】特開2011-188852号公報
【特許文献3】特開2009-72099号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の技術は、生地のせん断粘度に着目したものであり、所定のせん断粘度に調製しなければ、イーストによる発泡作用が得られない。特許文献2の技術はアルファ化米粉を混合しなければならず手間、コストの点で不利である。特許文献3の技術は、増粘多糖類の添加により、ある程度の気泡の移動、接触あるいは合一を抑制することが可能となるが、発酵から焼成開始に至るまでの長時間気泡を保持し続けることは困難である。また、これらの増粘多糖類が異味を感じさせる場合もある。
【0006】
本発明は上記に鑑みなされたものであり、良好な膨化作用が得られると共に、増粘多糖類の添加を必要としない、グルテン(小麦粉を含む)無添加の、米粉を主原料とした膨化食品用生地及びそれを用いた膨化食品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の膨化食品用生地は、米粉を主原料とするグルテン無添加の膨化食品用生地であって、前記主原料に、大豆タンパク質含有液、卵白タンパク質及びイーストを配合してなり、前記米粉に対する卵白タンパク質の配合量が2~5質量%の範囲であることを特徴とする。
前記大豆タンパク質含有液が、豆乳、又は、大豆タンパク質と水との溶液であることが好ましい。前記大豆タンパク質含有液の大豆タンパク質濃度が1~5質量%の範囲であることが好ましい。前記大豆タンパク質含有液中の大豆タンパク質がグリシニンであることが好ましい。米粉:大豆タンパク質含有液の配合比が、1:1~1:1.2の範囲であることが好ましい。
【0008】
また、本発明の膨化食品は、上記の膨化食品用生地を用いて製造されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、主原料である米粉に、大豆タンパク質含有液、卵白タンパク質及びイーストを配合してなる。大豆タンパク質分子は、発酵によって発生した炭酸ガスの気泡の周りに配向して被膜を形成し、これが発酵中継続し、焼成時において膨化に必要な核が生地中に多数存在するようになる。その一方、焼成時には、熱の影響によって気泡の破泡や複数の気泡の合一化が生じやすいが、本発明によれば、卵白タンパク質を含有するため、タンパク質が熱変性してデンプン粒子間に架橋を形成し、デンプンの糊化開始以前に生地の粘度を上昇させることができる。その結果、気泡の合一化が抑制され、小さな気泡が焼成後も多数残存し、グルテンフリーでありながら、きめ細やかなパンなどの膨化食品を製造することができる。また、本発明では、米粉に対する卵白タンパク質の配合量が2~5質量%の範囲である。従って、卵白特有の臭いが焼成後のパン等の膨化食品特有の香味の妨げになることがない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、実施例1及び比較例1の生地の状態を示した図である。
【図2】図2は、実施例1及び比較例1の焼成品の断面を示した図である。
【図3】図3は、米粉を水で混合・撹拌したもの(比較例2)と、豆乳で混合・撹拌したもの(比較例1)との違いを説明するための図である。
【図4】図4(a),(b)は、試験例における体積増加率の違いを示した図であり、図4(c)は生地(バッター)中の気泡の様子を示した図である。
【図5】図5は、試験例の生地を焼成したパンの状態を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の膨化食品用生地の主原料である米粉としては、典型的には、粳米粉を用いることができるが、糯米粉を用いることも可能である。本発明では、増粘多糖類を配合せず、また、アルファ化米および部分的にアルファ化した米粉も使用しない。この点で、製造コストの低減に資する。

【0012】
大豆タンパク質含有液は、豆乳を用いてもよいし、大豆タンパク質(例えば大豆タンパク質粉末)を水に溶かした溶液を使用してもよい。米粉に対する大豆タンパク質含有液の配合量は、米粉:大豆タンパク質含有液=1:1~1:1.2の範囲であることが好ましい。大豆タンパク質含有液中の大豆タンパク質濃度は1~5質量%の範囲であることが好ましく、4~5質量%の範囲ものがより好ましい。

【0013】
米粉に大豆タンパク質溶液を加えて十分撹拌すると、大豆タンパク質分子がほぐれて分子表面に疎水領域と親水領域が露出する。そこに発酵によってイーストから炭酸ガスが発生すると、大豆タンパク質分子は直ちに気泡の周りに配向して被膜を形成し、気泡を保護する。この状態が発酵中継続するため、焼成時に膨化に必要な核が生地中に多数存在することになり、パン等の膨化食品特有のすだち構造が形成される。

【0014】
大豆タンパク質は、グリシニン及びβ-コングリシニンを主要成分とし、これらをあわせて全体の70%程度を占める。豆乳は、この2つのタンパク質が共に溶け込んでいる。一方、大豆タンパク質粉末を水に溶かして大豆タンパク質含有液を得る場合、2つのタンパク質を共に含むものであってもよいし、いずれか一方を溶かした溶液を用いてもよい。いずれかのタンパク質を用いる場合、好ましくはグリシニンを用いる。後述の試験例から、グリシニン溶液を用いた生地では、小さな気泡が全体に一様に混入していたのに対し、β-コングリシニン溶液を用いた生地では、大きな気泡が不揃いに混入しており、気泡の保持にはグリシニンがより適切であったことによる。

【0015】
卵白タンパク質の約50~60質量%は、卵白アルブミンからなる。卵白アルブミンは熱凝固性タンパク質であり、熱凝固性タンパク質は、デンプンの糊化開始温度よりも低い温度で変性してデンプン粒子間に架橋を形成する。これによりデンプンの糊化以前に生地の粘度を上昇させる機能を果たす。卵白タンパク質(卵白アルブミン)を配合しなくても、上記のように大豆タンパク質によって生地中に気泡を保持することは可能である。しかし、焼成時の熱の影響によって一部の気泡は破泡したり、または合一化したりして徐々に巨大化する。この状態でデンプンが糊化して粘度が増していくと、巨大化した気泡が生地中にとどまり、焼成後のパンなどの膨化食品の中心部に大きな穴があいたり、内相が粗くなったりする。これに対し、卵白タンパク質(卵白アルブミン)を配合すると、上記のように、デンプンの糊化開始温度よりも低温で生地の粘度を高めることができるため、気泡の破泡や合一化を抑制できる。その結果、小さな気泡が焼成後も生地に多数存在することになり、従来のグルテンフリーの米粉パンと比較して、きめが細かく、軟らかなクラム及びクラストを有する米粉パン(膨化食品)を実現できる。

【0016】
卵白タンパク質は、上記した機能を果たすことができればよく、その配合量は限定されるものではないが、卵白タンパク質の配合量が多いと、卵白特有のにおいが膨化食品の香味に影響する。そのため、米粉に対する卵白タンパク質の配合量は2~5質量%の範囲とすることが好ましく、2.5~3質量%の範囲とすることがより好ましい。卵白タンパク質として、乾燥卵白粉末、又は卵白アルブミンの抽出物のみを配合するようにしてもよい。その場合、添加量は2~5質量%の範囲とすることが好ましい。

【0017】
本発明の膨化食品用生地を用いて製造される膨化食品としては、パン、ケーキ、ドーナツなどが挙げられる。特に、本発明では、大豆タンパク質の働きにより、良好な膨化が得られ、生地を型に流し込んだ発酵前の状態に対し、発酵後の生地の体積増加率が250~320%となる。従って、市販の食パン型を使用して、小麦粉パンと同様の大きさの食パンを得ることができる。

【0018】
(実施例)
新潟製粉(株)製米粉(パウダーライス)200gを主原料として用い、大豆タンパク質溶液として、大豆タンパク質濃度4.6質量%の豆乳(マルサンアイ(株)製有機豆乳無調整)を220mL用いた。卵白タンパク質として、乾燥卵白粉末(キューピータマゴ(株)製)を5g用い、イーストは、日清フーズ (株) 製ドライイースト(スーパーカメリヤ顆粒)を2.5g用いた。そのほか、砂糖(フジ日本精糖(株)製グラニュ糖)4.0g、食塩 ((財)塩事業センター製精製塩)2.5gを用い、これらを容器に投入し、ハンドミキサー (TESCOW (株) 製 THW26W) の目盛1 (650~1080rpm)で撹拌し、膨化食品用生地(バッター)を得た。この生地を食パン型(縦:120mm、横:120mm、高さ:120mm)に流し込んで発酵させた。発酵時間は120分で、温度38℃の環境下で行った。その後、オーブンに入れ、焼成温度170℃、焼成時間40分で焼成して実施例1の食パンを得た。なお、発酵開始前後の体積増加率は、約290%であった。

【0019】
一方、乾燥卵白粉末を配合しなかった点を除いて実施例1と同様の条件で生地を調製して焼成した食パンを得た(比較例1)。実施例1及び比較例1の生地状態及び焼成後の食パンの断面状態を比較したものが図1及び図2である。

【0020】
図1で示したように、生地(バッター)の状態では、実施例1では気泡が細かく均一化されているのに対し、比較例1では、気泡が不揃いであった。図2に示したように、焼成後の状態では、実施例1はきめ細かいすだちが見られるのに対し、比較例1では、中央付近に大きな穴が見られた。このことから、卵白タンパク質を配合することにより、生地状態では細かな気泡が得られ、焼成後はきめ細かいすだちが得られ、良好な食パンが得られることがわかる。

【0021】
また、比較例2として、比較例1で使用した豆乳に代えて水を使用して生地を調製し、焼成した食パンを製造した。比較例1と比較例2の生地の状態、焼成品の外観、焼成品の断面、発酵体積の違いを示したのが図3である。この比較から、大豆タンパク質を含有する比較例1は、比較例2よりも、生地状態、焼成品のいずれにおいても2倍程度体積が増加している。すなわち、大豆タンパク質が気泡を保護する能力が高いことがわかる。

【0022】
(試験例)
米粉50gを、グリシニン溶液で混練した場合、β-コングリシニン溶液で混練した場合のそれぞれについて、発酵実験を行い、水のみで混練したタンパク質無添加の場合と比較した。なお、いずれも卵白タンパク質は配合していない。

【0023】
図4(a),(b)は、生地(バッター)の発酵前後における体積増加率を示し、図4(c)は生地(バッター)の状態を示したものである。図4(a),(b)から、グリシニン溶液、β-コングリシニン溶液を用いたものは、タンパク質無添加のものと比較して体積増加率が有意に大きかった。この点でも大豆タンパク質が気泡の保持に大きく関与していることがわかる。また、図4(c)から、グリシニン溶液を用いたものと、β-コングリシニン溶液を用いたものとを比較すると、前者は小さな気泡が全体に一様に混入していたが、後者は大きな気泡が不揃いに混入しており、大豆タンパク質の中でもグリシニンを用いることがより好ましいと言える。これは、熱を加えた場合でも同様であり、図5に示したように、グリニシン溶液を用いたものが最もきめが細かく、ドーム状に焼き上がっている。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4