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明細書 :計測装置及び計測方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5901346号 (P5901346)
公開番号 特開2013-174530 (P2013-174530A)
登録日 平成28年3月18日(2016.3.18)
発行日 平成28年4月6日(2016.4.6)
公開日 平成25年9月5日(2013.9.5)
発明の名称または考案の名称 計測装置及び計測方法
国際特許分類 A61B  10/00        (2006.01)
G01N  21/65        (2006.01)
FI A61B 10/00 E
G01N 21/65
請求項の数または発明の数 8
全頁数 11
出願番号 特願2012-039854 (P2012-039854)
出願日 平成24年2月27日(2012.2.27)
審査請求日 平成27年2月3日(2015.2.3)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504013775
【氏名又は名称】学校法人 埼玉医科大学
発明者または考案者 【氏名】戸井田 昌宏
個別代理人の代理人 【識別番号】100090387、【弁理士】、【氏名又は名称】布施 行夫
【識別番号】100090398、【弁理士】、【氏名又は名称】大渕 美千栄
審査官 【審査官】門田 宏
参考文献・文献 国際公開第2013/047698(WO,A1)
特開2010-145270(JP,A)
特表2009-511175(JP,A)
特開平7-294435(JP,A)
特開2007-101249(JP,A)
特表2010-529465(JP,A)
戸井田昌宏,Coherent Anti-Stokes Raman Scatteringによる無侵襲血糖値モニターの研究,埼玉医科大学雑誌,日本,2012年 8月,第39巻,第1号,第19-23頁,URL,http://saitama-med.ac.jp/jsms/vol39/01/jsms39_019_023.pdf
調査した分野 A61B 10/00
A61B 5/00
G01N 21/65
特許請求の範囲 【請求項1】
被検体に照射するポンプ光及びストークス光を発生する光源部と、
前記ポンプ光のパルスを伸長して、前記ストークス光のパルス幅を前記ポンプ光のパルス幅よりも短くするパルス伸長部と、
前記ストークス光を分割する光分割部と、
パルス伸長された前記ポンプ光と前記光分割部で分割された一方のストークス光とを前記被検体上で走査させる光走査部と、
前記被検体からのアンチストークス光を検出して検出信号を出力する第1の光検出部と、
前記光分割部で分割された他方のストークス光と、前記被検体からのストークス光の反射光との干渉光を検出して検出信号を出力する第2の光検出部と、
前記第1の光検出部からの検出信号と、前記第2の光検出部からの検出信号に基づいて、画像生成処理を行う信号処理部とを含む、計測装置。
【請求項2】
請求項1において、
パルス伸長された前記ポンプ光は、ピコ秒パルスレーザー光であり、前記ストークス光は、フェムト秒パルスレーザー光である、計測装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記光源部が、
前記ポンプ光の第二高調波を励起光とする光パラメトリック発振器を備え、前記光パラメトリック発振器のアイドラー光を前記ストークス光として発生する、計測装置。
【請求項4】
請求項3において、
前記光パラメトリック発振器のシグナル光の波長を変調する光変調部を更に含み、
前記第1の光検出部が、
波長変調された前記シグナル光と、前記被検体からのアンチストークス光との干渉光を検出して検出信号を出力する、計測装置。
【請求項5】
被検体に照射するポンプ光及びストークス光を発生する光発生手順と、
前記ポンプ光のパルスを伸長して、前記ストークス光のパルス幅を前記ポンプ光のパルス幅よりも短くするパルス伸長手順と、
前記ストークス光を分割する光分割手順と、
パルス伸長された前記ポンプ光と前記光分割手順で分割された一方のストークス光とを前記被検体上で走査させる光走査手順と、
前記被検体からのアンチストークス光を検出して検出信号を出力する第1の光検出手順と、
前記光分割手順で分割された他方のストークス光と、前記被検体からのストークス光の反射光との干渉光を検出して検出信号を出力する第2の光検出手順と、
前記第1の光検出手順で出力した検出信号と、前記第2の光検出手順で出力した検出信号に基づいて、画像生成処理を行う信号処理手順とを含む、計測方法。
【請求項6】
請求項5において、
パルス伸長された前記ポンプ光は、ピコ秒パルスレーザー光であり、前記ストークス光は、フェムト秒パルスレーザー光である、計測方法。
【請求項7】
請求項5又は6において、
前記光発生手順では、
前記ポンプ光の第二高調波を励起光とする光パラメトリック発振器のアイドラー光を前記ストークス光として発生する、計測方法。
【請求項8】
請求項7において、
前記光パラメトリック発振器のシグナル光の波長を変調する光変調手順を更に含み、
前記第1の光検出手順では、
波長変調された前記シグナル光と、前記被検体からのアンチストークス光との干渉光を検出して検出信号を出力する、計測方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、被検体の形態情報及び分子情報を計測する計測装置及び計測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生体を対象とした非侵襲的な計測では、各種の物理エネルギーの中で光の適応性が高い。一方、生体を生きたままの状態(in vivo)で光計測しようとすると、生体固有の困難な問題が存在する。第一に散乱現象による問題である。すなわち、散乱透過、散乱反射した光には、伝播履歴情報と位置情報が殆ど保持されないため、定量化と画像化が著しく困難である。第二は生体内在物質による妨害の問題である。生体内の特定分子を識別するには分光計測が有力であるが、生体内在物質には紫外光~可視光を吸収する蛍光物質が多種存在しアーティファクトの原因となる。このため、目的物質固有の信号の弁別が困難である。第三は波長のミスマッチの問題である。生体分子は、C-C、C-H、C-O等の振動吸収で特定可能であるが、これら振動吸収の波長帯は赤外域である。生体は約60%が水であり、水の吸収は赤外域で大きく、生体深部の振動分光計測を防げる。一方で、生体は0.7μm~1.2μmの波長域で透過性が良く、この波長域は生体の光学的窓とも呼ばれている。このように生体を生きたままの状態で光計測する際、計測対象物の光特性とプローブ波長のミスマッチが生体内部の情報取得を困難にしている。
【0003】
今後の健康医療に資する先端技術を考えるとき、疾病の進行プロセスとそこでの現状技術を対置させると理解しやすい。疾病の発現と進行は、遺伝子変化をトリガーに異常タンパク発現、細胞や組織の機能変化、形態変化、自覚症状発現といったプロセスを辿る。一方、診断技術は、疾病の進行プロセスを遡るように進展してきた。すなわち、医師の五感と経験に依拠した症状の補足から、早期の形態変化を補足する画像診断技術へと発展してきた。
【0004】
ところが、近年、遺伝子診断が長足の進歩を遂げ、遺伝的にどのような疾病リスクがあるかは個々に判る時代になってきた。ただし、発生の時期までは判らない。こうした現状を捉えると、今後は疾病の発生をいかにして早期に的確に捉え、より侵襲の少ない治療を実現していくことが重要である。疾病の早期発見には形態変化に至る前段階の機能変化を捉えることが肝要である。すなわち、恒常性を維持した組織構造をそのままに細胞内、組織内の特定タンパクなどの分子イメージングが求められる。
【0005】
光を用いた分子イメージングは、蛍光標識薬などのプローブ法と、生体内材物質の特質を活用したノンプローブ法に大別される。ノンプローブ法では、上述の生体計測における波長のミスマッチを解決する方法として、CARS(Coherent Anti-Stokes Raman Scattering)イメージングが知られている(例えば、特許文献1参照)。しかし計測対象の分子分布自体が元々空間的にメリハリのあるものではないため、分子イメージングの解像度は悪いのが一般的である。各種疾病の発症機構やその進展メカニズムの解明において、ターゲット分子の詳細な空間位置情報は必須の情報である。すなわち、形態情報に裏打ちされた分子イメージングが重要な課題である。
【0006】
非侵襲な生体の形態イメージング技術として、OCT(Optical Coherence Tomography)が知られている。近年では、短パルスレーザーを用いた光源の広帯域化によるin vivoな細胞イメージングが報告されている。また、光源の広い帯域特性を活かして、試料のスペクトル情報を抽出する分光OCTも提案されている。しかし、OCT信号は試料の吸収と散乱を反映したもので、低散乱試料ではスペクトル情報の抽出がある程度可能なものの、組織体のような散乱体では誤差が大きくなり、物質同定に耐えうる分光情報の取得は困難である。
【先行技術文献】
【0007】

【特許文献1】特開平07-294435号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このように、生体(固体、器官、組織)を対象としたin vivoな非侵襲的な計測において、形態情報と同時に分子情報を計測することが求められている。
【0009】
本発明は、以上のような課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、被検体の形態情報と分子情報を同時に計測することが可能な計測装置及び計測方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)本発明に係る計測装置は、
被検体に照射するポンプ光及びストークス光を発生する光源部と、
前記ポンプ光のパルスを伸長して、前記ストークス光のパルス幅を前記ポンプ光のパルス幅よりも短くするパルス伸長部と、
前記ストークス光を分割する光分割部と、
パルス伸長された前記ポンプ光と前記光分割部で分割された一方のストークス光とを前記被検体上で走査させる光走査部と、
前記被検体からのアンチストークス光を検出して検出信号を出力する第1の光検出部と、
前記光分割部で分割された他方のストークス光と、前記被検体からのストークス光の反射光との干渉光を検出して検出信号を出力する第2の光検出部と、
前記第1の光検出部からの検出信号と、前記第2の光検出部からの検出信号に基づいて、画像生成処理を行う信号処理部とを含むことを特徴とする。
【0011】
また本発明に係る計測方法は、
被検体に照射するポンプ光及びストークス光を発生する光発生手順と、
前記ポンプ光のパルスを伸長して、前記ストークス光のパルス幅を前記ポンプ光のパルス幅よりも短くするパルス伸長手順と、
前記ストークス光を分割する光分割手順と、
パルス伸長された前記ポンプ光と前記光分割手順で分割された一方のストークス光とを前記被検体上で走査させる光走査手順と、
前記被検体からのアンチストークス光を検出して検出信号を出力する第1の光検出手順と、
前記光分割手順で分割された他方のストークス光と、前記被検体からのストークス光の反射光との干渉光を検出して検出信号を出力する第2の光検出手順と、
前記第1の光検出手順で出力した検出信号と、前記第2の光検出手順で出力した検出信号に基づいて、画像生成処理を行う信号処理手順とを含むことを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、ポンプ光のパルス伸長を行ってストークス光のパルス幅をポンプ光のパルス幅よりも短くすることで、アンチストークス光(CARS光)の検出信号のS/N比を向上させることができる。更に、本発明によれば、該ストークス光をOCT測定光とすることで、CARSとOCTの複合化における光パルスの不整合を回避してCARSとOCTの複合化を実現し、被検体の分子情報と形態情報とを同時に計測することが可能となる。
【0013】
(2)また本発明に係る計測装置及び計測方法では、
パルス伸長された前記ポンプ光は、ピコ秒パルスレーザー光であり、前記ストークス光は、フェムト秒パルスレーザー光であってもよい。
【0014】
本発明によれば、ポンプ光をピコ秒パルスレーザー光として、ストークス光をフェムト秒パルスレーザー光として、該ストークス光をOCT測定光とすることで、アンチストークス光(CARS光)の検出信号のS/N比を向上させるとともに、CARSとOCTの複合化における光パルスの不整合を回避してCARSとOCTの複合化を実現し、被検体の分子情報と形態情報とを同時に計測することが可能となる。
【0015】
(3)また本発明に係る計測装置では、
前記光源部が、
前記ポンプ光の第二高調波を励起光とする光パラメトリック発振器を備え、前記光パラメトリック発振器のアイドラー光を前記ストークス光として発生してもよい。
【0016】
また本発明に係る計測方法では、
前記光発生手順では、
前記ポンプ光の第二高調波を励起光とする光パラメトリック発振器のアイドラー光を前記ストークス光として発生してもよい。
【0017】
(4)また本発明に係る計測装置では、
前記光パラメトリック発振器のシグナル光の波長を変調する光変調部を更に含み、
前記第1の光検出部が、
波長変調された前記シグナル光と、前記被検体からのアンチストークス光との干渉光を検出して検出信号を出力してもよい。
【0018】
また本発明に係る計測方法では、
前記光パラメトリック発振器のシグナル光の波長を変調する光変調手順を更に含み、
前記第1の光検出手順では、
波長変調された前記シグナル光と、前記被検体からのアンチストークス光との干渉光を検出して検出信号を出力してもよい。
【0019】
本発明によれば、光パラメトリック発振器のシグナル光を参照光としたヘテロダイン検波を行うことで、アンチストークス光(CARS光)の信号を高感度に検出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】CARSにおける、光子と分子振動のエネルギー関係を示す図。
【図2】第1の実施の形態に係る計測装置の構成の一例を示す図。
【図3】ポンプ光、ストークス光及び対物レンズの位置関係を示す図。
【図4】被検体に照射されるポンプ光パルス及びストークス光パルスのパルスタイミングを示す図。
【図5】第2の実施の形態に係る計測装置の構成の一例を示す図。
【図6】光パラメトリック発振器からのシグナル光のパルスタイミングを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本実施形態について説明する。なお、以下に説明する本実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また本実施形態で説明される構成の全てが、本発明の必須構成要件であるとは限らない。

【0022】
まず、本実施形態に係る計測装置及び計測方法における計測原理について説明する。

【0023】
本実施形態に係る計測装置及び計測方法は、生体試料(固体、器官、組織)を対象とした、非侵襲な生体イメージングにおいて、光散乱下にあっても優れた形態イメージングを可能とするOCT(Optical Coherence Tomography)と、生体内分子を振動分光により弁別して分子イメージングを可能とするCARS(Coherent Anti-Stokes Raman Scattering)の複合化を実現するものである。

【0024】
OCTとCARSでは、それぞれの計測における最適光パルス幅が大きく異なるため、OCTとCARSの複合化は単純には成立しない。CARSでは、分子信号振動のS/N比は非共鳴信号により律速され、十分な共鳴信号/非共鳴信号比と、十分なスペクトル分解能(数cm-1)を確保するため、数p(ピコ)秒~数十p秒のパルス幅を有するポンプ光及びストークス光が用いられる。一方、OCTでは、高精細な形態イメージングを実現するため、数十f(フェムト)秒~数百f秒程度のパルス幅を有する超短パルス(スペクトル幅=1000cm-1程度)が用いられる。このように、OCTとCARSの複合化には、光パルスの不整合という課題が存在する。

【0025】
図1に、CARSにおける、光子と分子振動のエネルギー関係を示す。CARS信号には、分子振動のV=1準位を介したアンチストークス光ωas生成によるV=0準位への緩和である共鳴過程と、V=1準位を介さない(仮想準位aを介した)アンチストークス光ωas生成によるV=0準位への緩和である非共鳴過程に基づく2種類がある。非共鳴過程では、V=1準位を介さない(仮想準位aを介する)ため、ポンプ光とストークス光の同時性(ポンプ光パルスとストークス光パルスを同時に被検体に照射すること)が必須である。しかし、共鳴過程では、初段のポンプ光ωとストークス光ωのミキシングによりV=1準位へ励起された分子が、後段のポンプ光ω’でさらに励起されるため、後段の励起においては、ポンプ光ω’のみあればよくストークス光ωを必要としない。

【0026】
本実施形態の計測装置及び計測方法は、このようなCARSの共鳴過程と非共鳴過程の特質に注目し、CARS信号の共鳴過程/非共鳴過程比の向上を図るとともに、初段励起過程におけるストークス光ωをOCT計測光とすることで、CARSとOCTの複合化における光パルスの不整合を回避し、CARSとOCTの複合化を実現するものである。

【0027】
(第1の実施の形態)
図2に、第1の実施の形態に係る計測装置の構成の一例を示す。計測装置1は、被検体(試料)Sに照射するポンプ光及びストークス光を発生する光源部10と、ポンプ光及びストークス光の被検体Sへの照射タイミングを調整するための光遅延部20と、ポンプ光のパルス幅を伸長してストークス光のパルス幅をポンプ光のパルス幅よりも短くするパルス伸長部30と、OCT参照光となるストークス光と被検体Sからのストークス光の反射光とを干渉させるための光干渉部40と、ポンプ光とストークス光とを被検体S上で走査させる光走査部50と、ポンプ光とストークス光とを被検体S上に集光させる対物レンズ60と、被検体Sからのアンチストークス光(CARS光)を検出する第1の光検出部70と、OCT参照光となるストークス光と被検体Sからのストークス光の反射光との干渉光を検出する第2の光検出部80と、信号処理部90と、表示部92とを含む。

【0028】
光源部10は、f秒パルスの基本波と第二高調波を発生するレーザー光源12と、該第二高調波を励起光とする光パラメトリック発振器14(OPO)とを備える。レーザー光源12は、例えば、Yb:YAGレーザー結晶により構成することができる。Yb:YAGレーザーは、波長1034nmの基本波と、波長517nmの第二高調波を発生する。レーザー光源12からの基本波が、ポンプ光パルスとして取り出され、光パラメトリック発振器14からのアイドラー光が、ストークス光パルスとして取り出される。光パラメトリック発振器14は、基本波(ポンプ光)の角周波数ωと、アイドラー光(ストークス光)の角周波数ωの差が、計測対象分子の振動数ωγと等しくなるように(すなわち、ωγ=ω-ωとなるように)、その結晶軸の角度が調整される。

【0029】
光源部10からのポンプ光Pは、2つのミラー22、24を備えた光遅延部20によって遅延させられ、ミラー26を介してパルス伸長部30に入射する。パルス伸長部30は、例えば屈折率に負又は正の分散特性を有する光学材料で構成され、ポンプ光Pのパルス幅を伸長する。パルス伸長部30によってパルス幅が伸ばされたポンプ光Pは、ハーフミラー45、42を透過して光走査部50に入射する。

【0030】
一方、光源部10からのストークス光Sは、ダイクロイックミラー16で反射して、光干渉部40のハーフミラー41(本発明の光分割部に対応)で分割される。ハーフミラー41を透過した一方のストークス光は、測定光(被検体Sへの照射光)としてのストークス光Sとなり、ハーフミラー41で反射した他方のストークス光は、OCT参照光としてのストークス光Sとなる。参照光であるストークス光Sは、ミラー43、44によって光路長が調整され、ハーフミラー46を透過して第2の光検出部80に入射する。一方、測定光であるストークス光Sは、ハーフミラー42で反射して光走査部50に入射する。

【0031】
ポンプ光Pとストークス光Sは、平行ビームに調整され、光走査部50の走査ミラー52、54によって、被検体S上のXY平面内で光走査される。走査ミラー52、54の駆動は、信号処理部90によって制御される。また、ポンプ光Pとストークス光Sは、ダイクロイックミラー62を透過して、対物レンズ60によって被検体S上に集光される。対物レンズ60は、図示しない駆動部(図示せず)によりZ軸方向に移動可能に構成され、これにより被検体SにおけるZ軸方向(深さ方向、奥行き方向)の光走査を行う。対物レンズ60の駆動部は、信号処理部90によって制御される。

【0032】
ポンプ光P、ストークス光S及び対物レンズ60の位置関係は、図3に示すように調整される。すなわち、ポンプ光Pとストークス光Sの各光路が、対物レンズ60の光軸OAに対して対称な位置となるように調整される。なお、後述するアンチストークス光ASの光路は、光軸OA上に位置する。

【0033】
被検体S内の集束位置では、ポンプ光Pとストークス光Sが重なり合い、その位置の被検体S内の計測対象分子との相互作用により、アンチストークス光(CARS光)が発生する。被検体Sで発生したアンチストークス光ASは、対物レンズ60で集束され、ダイクロイックミラー62によりポンプ光P及びストークス光Sと分離されて、第1の光検出部70に入射する。第1の光検出部70は、例えばフォトダイオードで構成され、アンチストークス光ASを受光して、その検出信号をアンチストークス信号として信号処理部90に出力する。

【0034】
一方、被検体S内で散乱反射したストークス光S(ストークス光Sの反射光)は、光路を逆走し、対物レンズ60、ダイクロイックミラー62、光走査部50、光干渉部40のハーフミラー42、45、46を介して第2の光検出部80に入射する。ストークス光Sの反射光は、参照光であるストークス光Sと干渉し、第2の光検出部80で干渉光として検出される。干渉を発生させるために、ミラー43、44で構成される光路調整部は、ストークス光Sの反射光の光路長と、参照光であるストークス光Sの光路長が一致するように調整される。第2の光検出部80は、例えばフォトダイオードで構成され、当該干渉光の検出信号をOCT干渉信号として信号処理部90に出力する。

【0035】
信号処理部90(コンピュータ)は、第1の光検出部70からの検出信号(アンチストークス信号)と、第2の光検出部80からの検出信号(OCT干渉信号)に基づいて、画像を生成する処理を行う。また、信号処理部90は、走査信号を、光走査部50及び対物レンズ60の駆動部に供給して、走査ミラー52、54の駆動と対物レンズ60の駆動を制御する処理を行う。

【0036】
信号処理部90は、第1の光検出部70からのアンチストークス信号を、走査信号と同期された画像(CARS画像)とする処理と、第2の光検出部80からのOCT干渉信号を、走査信号と同期された画像(OCT画像)とする処理を行う。ポンプ光P及びストークス光Sの走査は、X-Y平面上とZ軸方向において行われるため、被検体SのX-Y平面における2次元画像と、被検体SのX-Z平面或いはY-Z平面における断層画像とを生成することができる。信号処理部90で生成されたCARS画像(分子情報を表す画像)及びOCT画像(形態情報を表す画像)は、表示部92(ディスプレイ)に表示される。なお、CARS画像と、OCT画像を、個別に表示部92に表示するようにしてもよいし、CARS画像とOCT画像とを重畳した画像を、表示部92に表示するようにしてもよい。

【0037】
図4に、被検体Sに照射されるポンプ光パルス及びストークス光パルスのパルスタイミングを示す。図4に示すように、ストークス光パルスは、f秒(数十f秒~数百f秒)のパルス幅を有し、ポンプ光パルスは、パルス伸長部30でパルス幅が伸長されることで、p秒(数p秒~数十p秒)のパルス幅を有する。また、ストークス光パルスとポンプ光パルスは、パルスの立ち上がりが略一致するように、光遅延部20でポンプ光の光路長が調整されている。

【0038】
CARSの共鳴過程では、分子の振動エネルギーは、初段のストークス光パルスとポンプ光パルスの同時照射によりV=1準位(図1参照)に励起され、後段のポンプ光パルスのみの照射により更に励起され、V=0準位への緩和によってアンチストークス光が生成される。一方、非共鳴過程では、分子の振動エネルギーは、初段のストークス光パルスとポンプ光パルスの同時照射により仮想準位a(図1参照)に励起されるため、後段のポンプ光パルスのみの照射では更に励起され難くなり、アンチストークス光が生成される確率が低下する。すなわち、図4に示すように、ストークス光とポンプ光のパルスの立ち上がりを一致させつつ、ストークス光のパルス幅をポンプ光のパルス幅よりも短くして、後段の励起過程でストークス光を照射しないようにすることで、CARS信号の共鳴過程/非共鳴過程比(すなわち、CARS信号のS/N比)を向上させることができる。

【0039】
更に、ストークス光を、OCTの計測に適した数十f秒~数百f秒程度の超短パルスとし、当該ストークス光パルスをOCT計測光とすることで、CARSとOCTの複合化における光パルスの不整合を回避し、CARSとOCTの複合化を実現することができる。

【0040】
(第2の実施の形態)
図5に、第2の実施の形態に係る計測装置の構成の一例を示す。なお、図5において、図2に示した構成と同様の構成については同一の符号を付し、その説明を適宜省略する。

【0041】
図4に示したように、CARSの初段の励起過程でのパルス幅を数十f秒~数百f秒としているため、V=1準位への励起分布(population)が減少し、アンチストークス光の絶対強度が低下する。そこで、図5に示す計測装置1では、光パラメトリック発振器14からのシグナル光SGを参照光としたヘテロダイン検波を行うことで、アンチストークス信号を高感度に検出する。

【0042】
図5に示す計測装置1は、光パラメトリック発振器14からのシグナル光SGの光路長を調整するミラー17、18と、シグナル光SGの波長を変調する光変調部19と、ハーフミラー63を更に含む。光変調部19は、音響光学素子(AOM)で構成することができる。

【0043】
シグナル光SGは、ダイクロイックミラー16を透過し、ミラー17、18を介して、光変調部19に入射する。光変調部19で波長変調されたシグナル光SGは、ハーフミラー63を透過して第1の光検出部70に入射する。一方、被検体Sからのアンチストークス光ASは、ハーフミラー63で反射して第1の光検出部70に入射する。

【0044】
ここで、上述したように、光パラメトリック発振器14の励起光は、ポンプ光(角周波数ω)の第二高調波(角周波数2ω)であり、ポンプ光の角周波数ωと、ストークス光(光パラメトリック発振器14のアイドラー光)の角周波数ωは、ωγ=ω-ωとなるように調整されているため、アンチストークス光の角周波数は、ωas=2ω-ωとなり、光パラメトリック発振器14のシグナル光の角周波数と等しくなる。

【0045】
従って、ミラー17、18によって、図6に示すように、シグナル光SGのパルスタイミングがアンチストークス光ASのパルスタイミングと一致するように調整し、且つ光変調部19によりシグナル光SGの波長をシフトすれば、シグナル光SGとアンチストークス光ASとが干渉して光ビートが生じ、第1の光検出部70で検出される。第1の光検出部70は、検出した光ビートのビート信号をアンチストークス信号として信号処理部90に出力する。

【0046】
なお、本発明の適用は上述した実施例に限定されず、種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0047】
1 計測装置、10 光源部、12 レーザー光源、14 光パラメトリック発振器、16 ダイクロイックミラー、17,18 ミラー、19 光変調部、20 光遅延部、22,24,26 ミラー、30 パルス伸長部30、40 光干渉部、41,42 ハーフミラー、43,44 ミラー、45,46 ハーフミラー、50 光走査部、52,54 走査ミラー、60 対物レンズ、62 ダイクロイックミラー、63 ハーフミラー、70 第1の光検出部、80 第2の光検出部、90 信号処理部、92 表示部
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
4
【図6】
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