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明細書 :変異型逆転写酵素

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2013-165669 (P2013-165669A)
公開日 平成25年8月29日(2013.8.29)
発明の名称または考案の名称 変異型逆転写酵素
国際特許分類 C12N  15/09        (2006.01)
C12N   9/12        (2006.01)
C12Q   1/68        (2006.01)
FI C12N 15/00 ZNAA
C12N 9/12
C12Q 1/68 A
請求項の数または発明の数 12
出願形態 OL
全頁数 33
出願番号 特願2012-030848 (P2012-030848)
出願日 平成24年2月15日(2012.2.15)
発明者または考案者 【氏名】保川 清
【氏名】小西 篤
【氏名】井上 國世
出願人 【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
個別代理人の代理人 【識別番号】110000280、【氏名又は名称】特許業務法人サンクレスト国際特許事務所
審査請求 未請求
テーマコード 4B024
4B050
4B063
Fターム 4B024AA20
4B024BA10
4B024CA02
4B024HA19
4B050CC04
4B050DD20
4B063QA01
4B063QQ52
4B063QR08
4B063QR32
4B063QR62
4B063QS25
4B063QS34
要約 【課題】二次構造の形成が抑制される温度条件下においても、効率よく逆転写反応を行なうことができる変異型逆転写酵素、その核酸、その製造方法、逆転写方法、逆転写反応キットおよび検出キットを提供すること。
【解決手段】逆転写酵素活性を有する変異型逆転写酵素であって、特定のアミノ酸配列からなる野生型逆転写酵素のDNA相互作用領域に局在するアミノ酸残基が、正電荷アミノ酸残基または非極性アミノ酸残基に置換されており、かつ前記野生型逆転写酵素のDNA相互作用領域よりも大きい正の実効電荷を有するDNA相互作用領域を有することを特徴とする変異型逆転写酵素、それをコードする核酸、製造方法、逆転写方法、逆転写反応キットおよび検出キット。
【選択図】なし
特許請求の範囲 【請求項1】
逆転写酵素活性を有する変異型逆転写酵素であって、配列番号:2に対応するアミノ酸配列からなる野生型逆転写酵素のDNA相互作用領域に局在するアミノ酸残基が、正電荷アミノ酸残基または非極性アミノ酸残基に置換されており、かつ前記野生型逆転写酵素のDNA相互作用領域よりも大きい正の実効電荷を有するDNA相互作用領域を有することを特徴とする変異型逆転写酵素。
【請求項2】
前記野生型逆転写酵素のDNA相互作用領域が、配列番号:2の1位のスレオニン残基~426位のアラニン残基に対応する配列からなる領域である請求項1に記載の変異型逆転写酵素。
【請求項3】
前記DNA相互作用領域に局在するアミノ酸残基が、配列番号:2の238位のバリン残基に対応するアミノ酸残基、388位のロイシン残基に対応するアミノ酸残基および450位のアスパラギン酸残基に対応するアミノ酸残基からなる群より選ばれた少なくとも1つのアミノ酸残基である請求項2に記載の変異型逆転写酵素。
【請求項4】
(a)配列番号:2の238位のバリン残基に対応する残基のアラニン残基、リジン残基またはアルギニン残基への置換、
(b)配列番号:2の388位のロイシン残基に対応する残基のアラニン残基、リジン残基またはアルギニン残基への置換、および
(c)配列番号:2の450位のアスパラギン酸残基に対応する残基のアラニン残基、リジン残基またはアルギニン残基への置換
からなる群より選択された少なくとも1つを有する請求項3に記載の変異型逆転写酵素。
【請求項5】
前記配列番号:2に対応するアミノ酸配列が、DNA相互作用領域中にアミノ酸残基の保存的置換を有するアミノ酸配列である請求項1~4のいずれかに記載の変異型逆転写酵素。
【請求項6】
前記配列番号:2に対応するアミノ酸配列が、
(1)配列番号:2に示されるアミノ酸配列において、DNA相互作用領域を除く配列中に1または数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入または付加をさらに有し、かつ逆転写酵素活性を有するポリペプチドのアミノ酸配列、または
(2)配列番号:2に示されるアミノ酸配列において、DNA相互作用領域を除く配列に対する配列同一性が少なくとも80%であり、かつ逆転写酵素活性を有するポリペプチドのアミノ酸配列
である請求項1~5のいずれかに記載の変異型逆転写酵素。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかに記載の変異型逆転写酵素をコードする核酸。
【請求項8】
請求項1~6のいずれかに記載の変異型逆転写酵素を製造する方法であって、
(A) 請求項7に記載の核酸を保持する細胞を培養して当該核酸にコードされた変異型逆転写酵素を発現させ、培養物を得る工程、および
(B) 前記工程で得られた培養物から変異型逆転写酵素を回収する工程
を含む、変異型逆転写酵素の製造方法。
【請求項9】
前記細胞が、昆虫細胞である請求項8に記載の変異型逆転写酵素の製造方法。
【請求項10】
請求項1~6のいずれかに記載の変異型逆転写酵素を用いてRNAからcDNAを合成することを特徴とする逆転写方法。
【請求項11】
逆転写反応を行なうためのキットであって、請求項1~6のいずれかに記載の変異型逆転写酵素を含有することを特徴とする逆転写反応キット。
【請求項12】
生体から得られたRNAを含む試料中のマーカーを検出するためのキットであって、請求項1~6のいずれかに記載の変異型逆転写酵素と前記マーカーの検出用試薬とを含有することを特徴とする検出キット。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、変異型逆転写酵素に関する。さらに詳しくは、本発明は、遺伝子解析、疾患などの検査などに有用な、変異型逆転写酵素、それをコードする核酸、前記変異型逆転写酵素を用いる逆転写方法、逆転写反応キットおよび検出キットに関する。
【背景技術】
【0002】
逆転写酵素は、RNA依存性DNAポリメラーゼ活性を有していることから、例えば、生体で発現しているタンパク質に対応するmRNAの量または塩基配列の解析、cDNAライブラリーの構築などの用途に用いられている。かかる用途には、従来、モロニーマウス白血病ウイルス逆転写酵素(以下、「MMLV逆転写酵素」という)またはトリ骨髄芽球症ウイルス逆転写酵素(以下、「AMV逆転写酵素」という)が用いられている。
【0003】
MMLV逆転写酵素は、遺伝子工学的手法により、大腸菌内で可溶性タンパク質として容易に生産させることができる。また、MMLV逆転写酵素は、単量体酵素であるので、異なる種類のサブユニットから構成されるヘテロ多量体酵素と比べて、当該MMLV逆転写酵素における特定アミノ酸残基の改変による酵素活性への影響が現れやすい傾向がある。
【0004】
一方、AMV逆転写酵素には、MMLV逆転写酵素よりもcDNA合成時における反応速度が大きいという長所がある。しかしながら、AMV逆転写酵素には、大腸菌など原核生物内では、可溶性タンパク質として生産させにくいという欠点がある。そこで、原核生物の生育温度を下げることによって可溶性のAMV逆転写酵素を発現させる方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
ところで、mRNAが二次構造を形成しやすい塩基配列を有する場合、逆転写酵素によるcDNAの合成が前記二次構造によって妨げられるため、反応温度を高くすることによって二次構造の形成を抑制しながらcDNAを合成することが望まれる。しかしながら、野生型AMV逆転写酵素は、RNAの二次構造の形成が抑制されるような温度では、失活することがある。また、野生型AMV逆転写酵素には、ヘテロ多量体酵素であることから、特定アミノ酸残基の改変によって改良しがたいという欠点がある。
【0006】
そこで、二次構造の形成が抑制される温度条件下においても用いることができ、効率よく逆転写反応を行なうことができ、汎用性の高い逆転写酵素が求められている。
【先行技術文献】
【0007】

【特許文献1】特願2001-289857号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、前記従来技術に鑑みてなされたものであり、二次構造の形成が抑制される温度条件下においても用いることができ、効率よく逆転写反応を行なうことができ、汎用性の高い変異型逆転写酵素を提供することを目的とする。また、本発明は、前記変異型逆転写酵素を容易に得ることができる、核酸および前記変異型逆転写酵素の製造方法を提供することを目的とする。また、本発明は、二次構造の形成が抑制される温度条件下においても用いることができ、効率よく逆転写反応を行なうことができ、かつ汎用性が高い逆転写反応キットおよび検出キットを提供することを目的とする。さらに、本発明は、二次構造の形成が抑制される温度条件下においても、効率よく逆転写反応を行なうことができる逆転写方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本発明の要旨は、
〔1〕逆転写酵素活性を有する変異型逆転写酵素であって、配列番号:2に対応するアミノ酸配列からなる野生型逆転写酵素のDNA相互作用領域に局在するアミノ酸残基が、正電荷アミノ酸残基または非極性アミノ酸残基に置換されており、かつ前記野生型逆転写酵素のDNA相互作用領域よりも大きい正の実効電荷を有するDNA相互作用領域を有することを特徴とする変異型逆転写酵素、
〔2〕前記野生型逆転写酵素のDNA相互作用領域が、配列番号:2の1位のスレオニン残基~426位のアラニン残基に対応する配列からなる領域である前記〔1〕に記載の変異型逆転写酵素、
〔3〕前記DNA相互作用領域に局在するアミノ酸残基が、配列番号:2の238位のバリン残基に対応するアミノ酸残基、388位のロイシン残基に対応するアミノ酸残基および450位のアスパラギン酸残基に対応するアミノ酸残基からなる群より選ばれた少なくとも1つのアミノ酸残基である前記〔2〕に記載の変異型逆転写酵素、
〔4〕(a)配列番号:2の238位のバリン残基に対応する残基のアラニン残基、リジン残基またはアルギニン残基への置換、
(b)配列番号:2の388位のロイシン残基に対応する残基のアラニン残基、リジン残基またはアルギニン残基への置換、および
(c)配列番号:2の450位のアスパラギン酸残基に対応する残基のアラニン残基、リジン残基またはアルギニン残基への置換
からなる群より選択された少なくとも1つを有する前記〔3〕に記載の変異型逆転写酵素、
〔5〕前記配列番号:2に対応するアミノ酸配列が、DNA相互作用領域中にアミノ酸残基の保存的置換を有するアミノ酸配列である前記〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の変異型逆転写酵素、
〔6〕前記配列番号:2に対応するアミノ酸配列が、
(1)配列番号:2に示されるアミノ酸配列において、DNA相互作用領域を除く配列中に1または数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入または付加をさらに有し、かつ逆転写酵素活性を有するポリペプチドのアミノ酸配列、または
(2)配列番号:2に示されるアミノ酸配列において、DNA相互作用領域を除く配列に対する配列同一性が少なくとも80%であり、かつ逆転写酵素活性を有するポリペプチドのアミノ酸配列
である前記〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の変異型逆転写酵素、
〔7〕前記〔1〕~〔6〕のいずれかに記載の変異型逆転写酵素をコードする核酸、
〔8〕前記〔1〕~〔6〕のいずれかに記載の変異型逆転写酵素を製造する方法であって、
(A) 前記〔7〕に記載の核酸を保持する細胞を培養して当該核酸にコードされた変異型逆転写酵素を発現させ、培養物を得る工程、および
(B) 前記工程で得られた培養物から変異型逆転写酵素を回収する工程
を含む、変異型逆転写酵素の製造方法、
〔9〕前記細胞が、昆虫細胞である前記〔8〕に記載の変異型逆転写酵素の製造方法、
〔10〕前記〔1〕~〔6〕のいずれかに記載の変異型逆転写酵素を用いてRNAからcDNAを合成することを特徴とする逆転写方法、
〔11〕逆転写反応を行なうためのキットであって、前記〔1〕~〔6〕のいずれかに記載の変異型逆転写酵素を含有することを特徴とする逆転写反応キット、ならびに
〔12〕生体から得られたRNAを含む試料中のマーカーを検出するためのキットであって、前記〔1〕~〔6〕のいずれかに記載の変異型逆転写酵素と前記マーカーの検出用試薬とを含有することを特徴とする検出キット
に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の変異型逆転写酵素は、二次構造の形成が抑制される温度条件下においても用いることができ、効率よく逆転写反応を行なうことができ、汎用性が高いという特徴を有する。また、本発明の核酸および前記変異型逆転写酵素の製造方法は、前記変異型逆転写酵素を容易に得ることができるという優れた効果を奏する。さらに、本発明の逆転写反応キットおよび検出キットは二次構造の形成が抑制される温度条件下においても用いることができ、効率よく逆転写反応を行なうことができ、汎用性が高いという特徴を有する。また、本発明の逆転写方法は、二次構造の形成が抑制される温度条件下においても、効率よく逆転写反応を行なうことができるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】製造例1(1)で得られたpFastBac1-WTαの構造を示す概略説明図である。
【図2】製造例2(1)で得られたpFastBac1-WTβの構造を示す概略説明図である。
【図3】試験例2において、SDS-PAGEを行なった結果を示す図面代用写真である。
【図4】試験例3において、基質〔ポリ(rA)・p(dT)15〕濃度と、初期反応速度との関係を調べた結果を示すグラフである。
【図5】試験例4において、インキュベーション時間と、ln[残存活性(%)]との関係を調べた結果を示すグラフである。
【図6】試験例4において、熱処理温度と、1/T×103と、ln[kobs(s-1)]との関係を調べた結果を示すグラフである。
【図7】試験例5において、各反応温度での反応によって得られた産物をアガロースゲル電気泳動によって解析した結果を示す図面代用写真である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
1.変異型逆転写酵素
本発明の変異型逆転写酵素は、逆転写酵素活性を有する変異型逆転写酵素であって、配列番号:2に対応するアミノ酸配列からなる野生型逆転写酵素のDNA相互作用領域に局在するアミノ酸残基が、正電荷アミノ酸残基または非極性アミノ酸残基に置換されており、かつ前記野生型逆転写酵素のDNA相互作用領域よりも大きい正の実効電荷を有するDNA相互作用領域を有することを特徴とする。

【0013】
本発明の変異型逆転写酵素は、配列番号:2に対応するアミノ酸配列からなる野生型逆転写酵素のDNA相互作用領域に局在するアミノ酸残基が、正電荷アミノ酸残基または非極性アミノ酸残基に置換されており、かつ前記野生型逆転写酵素のDNA相互作用領域よりも大きい正の実効電荷を有するDNA相互作用領域を有するので、二次構造の形成が抑制される温度条件下においても、野生型逆転写酵素と比べて高い残存活性を有し、しかもMMLV逆転写酵素と比べてcDNA合成反応などの際の反応速度が大きい。そのため、本発明の変異型逆転写酵素は、二次構造の形成が抑制される温度条件下においても用いることができるうえ、効率よく逆転写反応を行なうことができ、汎用性が高い。したがって、本発明の変異型逆転写酵素によれば、鋳型となるRNAが二次構造を形成しやすい塩基配列を有する場合であっても、反応温度を高くすることができ、二次構造の形成を抑制しながらcDNAを合成することができる。

【0014】
なお、本明細書において、「野生型」とは、人為的に変異が導入されていないもの、「変異型」とは、人為的に変異が導入されたものを意味する。

【0015】
また、本明細書において、「配列同一性」は、BLASTアルゴリズムにより、Gap Costs(Existence 11、Extension 1)、Expect 10、Word Size 3の条件でアラインメントして算出した値をいう。

【0016】
配列番号:2は、野生型AMV逆転写酵素のアミノ酸配列である。本明細書において、「配列番号:2に対応するアミノ酸配列」とは、配列番号:2に示される配列との配列同一性が少なくとも20%であり、かつ野生型AMV逆転写酵素と同じ条件下に同等の酵素活性を示すポリペプチドのアミノ酸配列をいう。前記配列同一性は、cDNA合成反応などの際の反応速度を大きくする観点から、好ましくは50%以上、より好ましくは80%、特に好ましくは100%である。また、「野生型逆転写酵素のDNA相互作用領域に局在するアミノ酸残基に対応する残基」とは、配列番号:2に対応するアミノ酸配列において、野生型逆転写酵素のDNA相互作用領域に局在するアミノ酸残基と同じ機能を有する残基をいう。

【0017】
さらに、本明細書において、「DNA相互作用領域」とは、逆転写酵素中において、DNAとの間で、水素結合、静電結合、疎水性相互作用などを介して相互作用を生じるアミノ酸残基が局在する領域をいう。

【0018】
また、本明細書において、「野生型逆転写酵素のDNA相互作用領域よりも大きい正の実効電荷を有する」とは、逆転写反応を行なうに適したpH(例えば、pHが6.0~9.5)において、野生型逆転写酵素のDNA相互作用領域の正の実効電荷よりも大きいことを意味する。

【0019】
前記野生型逆転写酵素は、配列番号:2に対応するアミノ酸配列からなる。かかる野生型逆転写酵素は、DNA相互作用領域を除く配列中に1または数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入または付加をさらに有し、かつ逆転写酵素活性を有する酵素であってもよく、DNA相互作用領域を除く配列に対する配列同一性が少なくとも80%であり、かつ逆転写酵素活性を有する酵素であってもよい。

【0020】
前記「1または数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入または付加」は、逆転写酵素活性を示す範囲の個数のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入または付加を意味する。前記「1個もしくは数個」とは、1~30個をいう。前記「1個もしくは数個」は、好ましくは1~20個、より好ましくは1~10個、さらに好ましくは1~3個、特に好ましくは1個または2個をいう。

【0021】
前記DNA相互作用領域を除く配列に対する配列同一性は、逆転写酵素活性を示す範囲であればよく、cDNA合成反応などの際の反応速度を大きくする観点から、少なくとも80%、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、特に好ましくは100%である。

【0022】
また、前記野生型逆転写酵素は、本発明の目的を妨げない範囲で、DNA相互作用領域中にアミノ酸残基の保存的置換をさらに有していてもよい。前記保存的置換としては、例えば、特定のアミノ酸残基と、疎水性、電荷、pK、立体構造上における特徴などの点で当該特定のアミノ酸残基に類似した機能を発揮するアミノ酸残基との置換などが挙げられる。前記保存的置換としては、より具体的には、例えば、下記グループI~VIのいずれかに属する1つのアミノ酸残基を同じグループに属する他のアミノ酸残基に置換することなどが挙げられる。
グループI:グリシン残基およびアラニン残基
グループII:バリン残基、イソロイシン残基およびロイシン残基
グループIII:アスパラギン酸残基、グルタミン酸残基、アスパラギン残基およびグルタミン残基
グループIV:セリン残基およびスレオニン残基
グループV:リジン残基およびアルギニン残基
グループVI:フェニルアラニン残基およびチロシン残基

【0023】
前記野生型逆転写酵素のDNA相互作用領域は、二次構造の形成が抑制される温度条件下での高い熱安定性を確保する観点から、好ましくは配列番号:2の1位のスレオニン残基~426位のアラニン残基に対応する配列からなる領域である。

【0024】
前記野生型逆転写酵素のDNA相互作用領域に局在するアミノ酸残基としては、例えば、配列番号:2の20位のヒスチジン残基~44位のグルタミン酸残基に対応する領域(以下、「領域H20-E44」という)に局在するアミノ酸残基、配列番号:2の55位のアスパラギン残基~114位のフェニルアラニン残基に対応する領域(以下、「領域N55-F114」という)に局在するアミノ酸残基、配列番号:2の148位のグルタミン残基~152位のシステイン残基に対応する領域(以下、「領域Q148-C152」という)に局在するアミノ酸残基、配列番号:2の178位のロイシン残基~191位のヒスチジン残基に対応する領域(以下、「領域L178-H191」という)に局在するアミノ酸残基、配列番号:2の215位のアスパラギン酸残基~233位のセリン残基に対応する領域(以下、「領域D215-S233」という)に局在するアミノ酸残基、配列番号:2の234位のスレオニン残基~240位のグリシン残基に対応する領域(以下、「領域T234-G240」という)に局在するアミノ酸残基、配列番号:2の254位のグルタミン酸残基~289位のアラニン残基に対応する領域(以下、「領域Q254-A289」という)に局在するアミノ酸残基、配列番号:2の310位のアラニン残基~328位のシステイン残基に対応する領域(以下、「領域A310-C328」という)に局在するアミノ酸残基、配列番号:2の349位のトリプトファン残基~390位のロイシン残基に対応する領域(以下、「領域W349-L390」という)に局在するアミノ酸残基および配列番号:2の408位のロイシン残基~417位のセリン残基に対応する領域(以下、「領域L408-S417」という)に局在するアミノ酸残基などが挙げられるが、本発明はかかる例示のみに限定されるものではない。これらのアミノ酸残基のなかでは、二次構造の形成が抑制される温度条件下での高い熱安定性を確保する観点から、好ましくは配列番号:2の238位のバリン残基に対応するアミノ酸残基、388位のロイシン残基に対応するアミノ酸残基および450位のアスパラギン酸残基に対応するアミノ酸残基からなる群より選ばれた少なくとも1つのアミノ酸残基である。

【0025】
DNA相互作用領域が、前記野生型逆転写酵素のDNA相互作用領域よりも大きい正の実効電荷を有するDNA相互作用領域を有するかどうかの評価は、例えば、
1)評価対象のDNA相互作用領域中に局在する正電荷アミノ酸残基であるリジン残基およびアルギニン残基それぞれの電荷スコアを「+1」、評価対象のDNA相互作用領域中に局在する負電荷アミノ酸残基であるアスパラギン酸残基およびグルタミン酸残基それぞれの電荷スコアを「-1」とした場合、評価対象のDNA相互作用領域中に局在するリジン残基、アルギニン残基、アスパラギン酸残基およびグルタミン酸残基それぞれの数に基づき、式(I):
[実効電荷の大きさのスコア]
=(+1×k)+(+1×r)+(-1×d)+(-1×e) (I)
(式中、kはリジン残基の数、rはアルギニン残基の数、dはアスパラギン酸残基の数、およびeはグルタミン酸残基の数を示す)
で表わされる式に基づいて算出する方法、
2) 評価対象のDNA相互作用領域からなるポリペプチドと、野生型逆転写酵素のDNA相互作用領域からなるポリペプチドとを等電点電気泳動に供して、各ポリペプチドの移動距離を相互に比較する方法
などにより、行なうことができる。これらの方法のなかでは、評価対象のDNA相互作用領域の正の実効電荷を簡便かつ高い精度で評価することができることから、好ましくは前記2)の方法である。

【0026】
本発明の変異型逆転写酵素のDNA相互作用領域は、前記式(I)を用いて正の実効電荷の大きさのスコアを算出した場合、野生型逆転写酵素のDNA相互作用領域における正の実効電荷のスコア(+2)よりも大きいスコアを示す。本発明の変異型逆転写酵素のDNA相互作用領域の正の実効電荷の大きさのスコアは、野生型逆転写酵素のDNA相互作用領域中のアミノ酸残基の組成などによって異なることから、一概には決定することができないので、野生型逆転写酵素のDNA相互作用領域中のアミノ酸残基の組成などに応じて、適宜決定することが望ましい。本発明の変異型逆転写酵素のDNA相互作用領域の正の実効電荷の大きさのスコアは、例えば、野生型逆転写酵素が配列番号:2に示されるアミノ酸配列からなる場合、二次構造の形成が抑制される温度条件下での高い熱安定性を確保する観点から、好ましくは+3~+12、より好ましくは+4~+10である。本発明の変異型逆転写酵素のDNA相互作用領域と野生型逆転写酵素のDNA相互作用領域との間の正の実効電荷の大きさのスコアの差は、二次構造の形成が抑制される温度条件下での高い熱安定性を確保する観点から、好ましくは1~10、より好ましくは2~8である。

【0027】
前記正電荷アミノ酸残基としては、例えば、アルギニン残基、リジン残基などが挙げられる。これらの正電荷アミノ酸残基のなかでは、逆転写反応を行なうに適したpH(例えば、pHが6.0~9.5)において、正に荷電しており、かかるpH条件下で高い熱安定性を確保することができることから、好ましくはアルギニン残基およびリジン残基である。

【0028】
前記非極性アミノ酸残基としては、例えば、アラニン残基、グリシン残基、バリン残基、ロイシン残基、イソロイシン残基、メチオニン残基、システイン残基、トリプトファン残基、フェニルアラニン残基、プロリン残基などが挙げられる。これらの非極性アミノ酸残基のなかでは、側鎖のサイズが小さく、かつ置換によりもたらされる形状の変化が小さいと考えられることから、好ましくはアラニン残基である。

【0029】
前記逆転写酵素活性は、下記ステップ1)~6):
1) 反応液〔組成:25mMトリス塩酸緩衝液(pH8.3)、50mM塩化カリウム、2mMジチオスレイトール、5mM塩化マグネシウム、12.5μMポリ(rA)・p(dT)15(p(dT)15換算濃度)、および0.2mM [メチル-3H]dTTP〕中で逆転写酵素を37℃でインキュベーションするステップ、
2) 前記ステップ1)で得られた産物20μLを採取し、ガラスフィルターにスポットするステップ、
3) 前記ステップ2)後のガラスフィルターを、冷却された5質量%トリクロロ酢酸水溶液で10分間洗浄した後、冷却された95体積%エタノール水溶液で洗浄して、前記ガラスフィルター上の産物からポリ(rA)・p(dT)15に取り込まれていない[3H]dTTPを除去するステップ、
4) 前記ステップ3)後のガラスフィルターを乾燥させた後、前記ガラスフィルターを、液体シンチレーション用試薬2.5mL中に入れ、放射活性をカウントするステップ、
5) 前記ステップ4)で得られた放射活性に基づき、ポリ(rA)・p(dT)15に取り込まれた[3H]dTTPの量(以下、「dTTP取り込み量」という)を算出するステップ、および
6) 前記ステップ5)で算出されたdTTP取り込み量に基づき、10分間にポリ(rA)・p(dT)15に1nmolのdTTPを取り込ませる逆転写酵素の量を求めるステップ
を行なうことによって測定することができる。

【0030】
本発明の変異型逆転写酵素は、二次構造の形成が抑制される温度条件下での高い熱安定性を確保する観点から、(a)配列番号:2の238位のバリン残基に対応する残基のアラニン残基、リジン残基またはアルギニン残基への置換、
(b)配列番号:2の388位のロイシン残基に対応する残基のアラニン残基、リジン残基またはアルギニン残基への置換、および
(c)配列番号:2の450位のアスパラギン酸残基に対応する残基のアラニン残基、リジン残基またはアルギニン残基への置換
からなる群より選ばれた少なくとも1つを有していることが好ましく、(a’)配列番号:2の238位のバリン残基に対応する残基のアルギニン残基への置換、
(b’)配列番号:2の388位のロイシン残基に対応する残基のアルギニン残基への置換、および
(c’)配列番号:2の450位のアスパラギン酸残基に対応する残基のアラニン残基への置換
からなる群より選ばれた少なくとも1つを有していることがより好ましい。なかでも、本発明の変異型逆転写酵素は、二次構造の形成が抑制される温度条件下での高い熱安定性を確保する観点から、前記(a’)~(c’)の置換を有する多重変異体であることが好ましい。

【0031】
2.変異型逆転写酵素をコードする核酸
本発明の核酸は、本発明の変異型逆転写酵素をコードする核酸である。本発明の核酸は、前記変異型逆転写酵素をコードしているため、当該核酸にコードされた変異型逆転写酵素を発現させることにより、前記変異型逆転写酵素を容易に得ることができる。

【0032】
核酸としては、例えば、DNA、mRNAなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。

【0033】
本発明の核酸は、例えば、野生型逆転写酵素をコードする核酸に対して、野生型逆転写酵素のDNA相互作用領域中のアミノ酸残基が正電荷アミノ酸残基または非極性アミノ酸残基に置換されるように部位特異的変異を導入することにより得ることができる。

【0034】
核酸への部位特異的変異の導入は、例えば、野生型逆転写酵素のDNA相互作用領域中のアミノ酸残基が正電荷アミノ酸残基または非極性アミノ酸残基に置換されるように設計されたプライマーを用いたPCRなどにより行なうことができる。

【0035】
3.変異型逆転写酵素の製造方法
本発明の変異型逆転写酵素は、本発明の核酸を用いて当該核酸にコードされた変異型逆転写酵素を発現させることにより得ることができる。本発明には、かかる変異型逆転写酵素の製造方法も包含される。

【0036】
本発明の製造方法は、前述した変異型逆転写酵素を製造する方法であって、
(A) 請求項5に記載の核酸を保持する細胞を培養して当該核酸にコードされた変異型逆転写酵素を発現させ、培養物を得る工程、および
(B) 前記工程で得られた培養物から変異型逆転写酵素を回収する工程
を含む方法である。

【0037】
まず、本発明の核酸を保持する細胞を培養して当該核酸にコードされた変異型逆転写酵素を発現させ、培養物を得る〔「工程(A)」〕。

【0038】
前記核酸を保持する細胞は、例えば、前記核酸を含む遺伝子導入用担体を用いて宿主細胞を形質転換することなどにより得られる。

【0039】
前記宿主細胞としては、例えば、昆虫細胞、酵母細胞、植物細胞、動物細胞、大腸菌などの細菌の細胞などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの宿主細胞のなかでは、可溶性の変異型逆転写酵素を大量に生産することができ、しかもその精製が容易であることから、好ましくは昆虫細胞、より好ましくはSf9などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。

【0040】
前記遺伝子導入用担体は、生物担体であってもよく、非生物担体であってもよい。生物担体としては、例えば、プラスミドベクター、ファージベクター、ウイルスベクターなどのベクターが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。また、非生物担体としては、例えば、金粒子、デキストラン、リポソームなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。かかる遺伝子導入用担体は、用いられる宿主細胞に応じて、適宜選択することができる。例えば、宿主細胞が昆虫細胞である場合、昆虫細胞に導入可能なバキュロウイルスのシャトルベクター、例えば、pFastBac1プラスミド〔インビトロジェン(Invitrogen)社製〕などを用いることができる。

【0041】
前記ベクターは、変異型逆転写酵素の精製をより容易にするためのエレメント、例えば、Hisタグ、細胞外分泌シグナルなどを含有していてもよい。

【0042】
前記遺伝子導入用担体が、前記生物担体であるベクターである場合、当該遺伝子導入用担体は、ベクターのクローニングサイトに前記核酸を挿入し、プロモーターの制御下に作動可能に連結させることにより作製することができる。なお、本明細書において、「作動可能に連結」とは、核酸によりコードされるポリペプチドの発現が、プロモーターなどのエレメントによる制御下に生物学的活性を示す状態で発現するように連結されていることを意味する。

【0043】
一方、前記遺伝子導入用担体が、前記非生物担体である場合、当該遺伝子導入用担体は、必要に応じて、前記核酸を、プロモーターの制御下に作動可能に連結させて得られた核酸構築物を、当該非生物担体に担持させることにより作製することができる。なお、かかる核酸構築物は、複製開始起点、ターミネーターなどの遺伝子の発現に必要なエレメントを適宜含有してもよい。

【0044】
宿主細胞への遺伝子導入用担体の導入は、用いられた遺伝子導入用担体の種類、宿主細胞の種類などに応じた方法で行なうことができる。かかる形質転換法としては、例えば、トランスフェクション法、エレクトロポレーション法、リン酸カルシウム法、DEAE-デキストラン法、パーティクルガン法などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。

【0045】
前記工程(A)において、前記核酸を保持する細胞の培養条件は、用いられた宿主細胞の種類などによって異なることから、一概には決定することができないので、用いられた宿主細胞の種類などに応じて適宜設定することが好ましい。前記核酸が誘導可能なプロモーターの制御下に作動可能に連結されている場合、かかるプロモーターの種類に応じた発現誘導条件下に、前記核酸を保持する細胞を培養すればよい。

【0046】
つぎに、前記工程(A)で得られた培養物から変異型逆転写酵素を回収する〔「工程(B)」〕。

【0047】
変異型逆転写酵素が細胞外に分泌される場合、培養物を遠心分離や濾過などに供して培養上清を回収し、培養上清中の変異型逆転写酵素を精製して単離することができる。かかる精製を行なう方法としては、遠心分離、超遠心分離、限外濾過、塩析、透析、イオン交換カラムクロマトグラフィー、吸着カラムクロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、ゲル濾過カラムクロマトグラフィーなどが挙げられるが、本発明は係る例示のみに限定されるものではない。一方、変異型逆転写酵素が細胞内に蓄積される場合、工程(B)において、培養物を遠心分離などに供して細胞を回収し、細胞から変異型逆転写酵素を単離することができる。この場合、例えば、前記細胞を超音波破砕法、溶菌法、凍結破砕法などによって破砕し、得られた細胞抽出液中の変異型逆転写酵素を精製して単離することができる。

【0048】
4.逆転写方法
本発明の逆転写方法は、本発明の変異型逆転写酵素を用いてRNAからcDNAを合成することを特徴としている。本発明の変異型逆転写酵素は、野生型逆転写酵素の熱安定性と比べて高い熱安定性を有している。そのため、本発明の逆転写方法によれば、RNAの二次構造の形成が抑制される温度を含む幅広い温度範囲で逆転写反応を行なうことができる。したがって、本発明の逆転写方法は、種々のRNAを鋳型として用いることができ、しかも効率よく逆転写反応を行なうことができる。

【0049】
本発明の逆転写方法では、前記変異型逆転写酵素と、RNAと、前記RNAに相補的なオリゴヌクレオチドプライマーと、4種のデオキシリボヌクレオシドトリホスフェートとを、逆転写反応用緩衝液中でインキュベーションすることにより逆転写反応を行なうことができる。

【0050】
逆転写反応における反応温度は、用いられるRNAの種類、用いられる変異型逆転写酵素の種類などによって異なることから、一概には決定することができないので、用いられるRNAの種類、用いられる変異型逆転写酵素の種類などに応じて適宜設定することが好ましい。前記反応温度は、例えば、用いられるRNAが野生型逆転写酵素の至適反応温度で二次構造を形成しにくいRNAである場合、当該至適反応温度に設定することができる。また、前記反応温度は、例えば、用いられるRNAが野生型逆転写酵素の至適反応温度で二次構造を形成しやすいRNAである場合、野生型逆転写酵素の至適反応温度よりも高い温度、例えば、45~65℃となるように設定することができる。

【0051】
逆転写反応の際の反応系中における逆転写酵素の濃度は、本発明の逆転写方法の用途などによって異なることから、一概には決定することができないので、前記用途などに応じて適宜設定することが好ましい。前記逆転写酵素の濃度は、通常、0.001~0.1μMである。

【0052】
逆転写反応の際の反応系中におけるオリゴヌクレオチドプライマーの濃度は、通常、0.1~10μMである。

【0053】
逆転写反応の際の反応系中における4種のデオキシリボヌクレオシドトリホスフェートの濃度は、標的となるRNAの濃度や長さなどに応じて異なることから、一概には決定することができないので、標的となるRNAの濃度や長さなどに応じて適宜設定することが好ましい。前記4種のデオキシリボヌクレオシドトリホスフェートの濃度は、通常、0.01~1μMである。

【0054】
前記逆転写反応用緩衝液は、用いられる変異型逆転写酵素の種類に応じて、適宜選択することができる。前記逆転写反応用緩衝液は、2価の陽イオン、例えば、マグネシウムイオン、マンガンイオンなどを含有してもよい。また、前記逆転写反応用緩衝液は、本発明の目的を妨げない範囲で、必要に応じて、還元剤(例えば、ジチオスレイトールなど)、安定化剤(例えば、グリセロール、トレハロースなど)、有機溶媒(例えば、ジメチルスルホキシド、ホルムアミドなど)などの成分を含有していてもよい。

【0055】
前記逆転写反応用緩衝液中における2価の陽イオンの濃度は、逆転写酵素の種類や逆転写反応用緩衝液に含まれる他の成分などに応じて異なることから、一概には決定することができないので、逆転写酵素の種類や逆転写反応用緩衝液に含まれる他の成分などに応じて適宜設定することが好ましい。前記2価の陽イオンの濃度は、通常、1~30mMである。

【0056】
前記逆転写反応用緩衝液のpHは、逆転写酵素の種類や逆転写反応用緩衝液に含まれる他の成分などに応じて異なることから、一概には決定することができないので、逆転写酵素の種類や逆転写反応用緩衝液に含まれる他の成分などに応じて適宜設定することが好ましい。前記逆転写反応用緩衝液のpHは、通常、6.0~9.5である。

【0057】
5.逆転写反応キット
本発明の逆転写反応キットは、逆転写反応を行なうためのキットであって、本発明の変異型逆転写酵素を含有することを特徴としている。本発明の逆転写反応キットは、高い熱安定性を有する本発明の変異型逆転写酵素を含有しているため、RNAの二次構造の形成が抑制される温度を含む幅広い温度範囲での逆転写反応に好適である。したがって、本発明の逆転写反応キットは、RNAの種類によらず、逆転写反応を効率よく行なうことができるので、汎用性が高い。

【0058】
本発明の逆転写反応キットは、前記変異型逆転写酵素に加えて、逆転写反応を行なうのに必要な試薬を含有していてもよい。かかる試薬としては、例えば、逆転写反応のテンプレートとして用いられるRNA、前記RNAに相補的なオリゴヌクレオチドプライマー、4種のデオキシリボヌクレオシドトリホスフェート、逆転写反応用緩衝液、有機溶媒などが挙げられる。なお、前記逆転写反応用緩衝液は、前記逆転写方法で用いられる逆転写反応用緩衝液と同様である。

【0059】
本発明の逆転写反応キットにおいて、前記変異型逆転写酵素は、グリセロール、トレハロースなどの安定化剤を含む保存用緩衝液が入った容器中に封入されていてもよい。かかる保存用緩衝液としては、前記変異型逆転写酵素のpH安定性に応じたpHを有する緩衝液が挙げられる。

【0060】
また、前記逆転写反応を行なうのに必要な試薬は、変異型逆転写酵素が入った容器とは異なる容器中に封入されていてもよく、また、前記試薬の保存中における逆転写反応の進行が停止されているのであれば、前記変異型逆転写酵素と同じ容器に封入されていてもよい。前記試薬は、逆転写反応を行なうのに適した量となるように容器に封入されていてもよい。これにより、ユーザーが、各試薬を逆転写反応に適した量となるように混合する必要がなくなるので、取り扱いが容易である。

【0061】
6.検出キット
本発明の検出キットは、生体から得られたRNAを含む試料中のマーカーを検出するためのキットであって、前記変異型逆転写酵素と前記マーカーの検出用試薬とを含有することを特徴としている。本発明の検出キットは、高い熱安定性を有する前記変異型逆転写酵素を含有しているため、RNAの二次構造の形成が抑制される温度を含む幅広い温度範囲での逆転写反応に好適である。したがって、本発明の検出キットは、種々の試料に対して用いることができ、汎用性が高い。

【0062】
前記マーカーとしては、生体中に含まれるウイルスまたは細菌に特有の塩基配列、疾患に特有の塩基配列を有するRNAなどが挙げられる。なお、本明細書において、「ウイルスまたは細菌に特有の塩基配列」とは、ウイルスまたは細菌には存在するが、生体には存在しない塩基配列をいう。また、「疾患に特有の塩基配列」とは、疾患に罹患した生体には存在するが、疾患に罹患していない正常な生体には存在しない塩基配列をいう。

【0063】
前記ウイルスとしては、特に限定されないが、例えば、HPV、HIV、インフルエンザウイルス、HCV、ノロウイルス、ウエストナイルウイルスなどが挙げられる。また、前記細菌としては、例えば、食中毒の原因となるバチルス・セレウス、サルモネラ、腸管出血性大腸菌、ビブリオ、カンピロバクター、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌などが挙げられる。前記疾患としては、癌、糖尿病、心臓病、高血圧、感染症などが挙げられる。

【0064】
前記マーカーの検出用試薬としては、例えば、前記マーカーとなるRNAに相補的であり、かつ蛍光物質または放射性物質が結合したプローブ、二本鎖核酸に特異的にインターカレートする蛍光物質(例えば、エチジウムブロマイドなど)などが挙げられる。

【0065】
本発明の検出キットは、前記変異型逆転写酵素および前記マーカーの検出用試薬に加えて、例えば、4種のデオキシリボヌクレオシドトリホスフェート、逆転写反応用緩衝液、有機溶媒、陽性対照となるRNA、陰性対照となるRNAなどを含有していてもよい。なお、前記逆転写反応用緩衝液は、前記逆転写方法で用いられる逆転写反応用緩衝液と同様である。

【0066】
本発明の検出キットにおいて、前記変異型逆転写酵素は、グリセロール、トレハロースなどの安定化剤を含む保存用緩衝液が入った容器中に封入されていてもよい。かかる保存用緩衝液は、前記逆転写反応キットにおける保存用緩衝液と同様である。

【0067】
また、前記4種のデオキシリボヌクレオシドトリホスフェート、逆転写反応用緩衝液などの試薬は、変異型逆転写酵素が入った容器とは異なる容器中に封入されていてもよく、また、かかる試薬の保存中における逆転写反応の進行が停止されているのであれば、前記変異型逆転写酵素と同じ容器に封入されていてもよい。前記試薬は、前記逆転写反応キットの場合と同様の観点から、逆転写反応を行なうのに適した量となるように容器に封入されていてもよい。

【0068】
7.その他の応用
なお、配列番号:2の1位のスレオニン残基~426位のアラニン残基に対応するアミノ酸配列を含み、かつ配列番号:2の1位のスレオニン残基~426位のアラニン残基からなるDNA相互作用領域と立体構造上類似する核酸相互作用領域または配列番号:2の1位のスレオニン残基~426位のアラニン残基の配列との配列同一性が少なくとも80%であるアミノ酸配列からなる核酸相互作用領域を有する核酸関連酵素については、野生型核酸関連酵素をコードする核酸中の前記核酸相互作用領域に対応する塩基配列に対して、野生型核酸関連酵素の核酸相互作用領域中のアミノ酸残基が正電荷アミノ酸残基または非極性アミノ酸残基に置換されるように設計されたプライマーを用いたPCRなどにより、前記核酸相互作用領域中のアミノ酸残基を、正電荷アミノ酸残基または非極性アミノ酸残基に置換させる前記変異型逆転写酵素の場合と同様の変異を導入して、前記野生型核酸関連酵素の核酸相互作用領域よりも大きい正の実効電荷を有する核酸相互作用領域を形成させることによって熱安定性が向上した核酸関連酵素を得ることができることが期待される。熱安定性が向上した核酸関連酵素は、変異が導入された核酸を用い、前記変異型逆転写酵素の製造方法と同様の手法により製造することができる。変異の対象となるアミノ酸残基の位置は、核酸関連酵素の種類に応じて異なるが、核酸関連酵素の核酸相互作用領域中において、核酸のリン酸基と近接し、かつ核酸関連酵素の活性を妨げる形状の変化をもたらさないアミノ酸残基の位置、核酸関連酵素の負電荷を有するアミノ酸残基と近接し、かつ核酸関連酵素の活性を妨げる形状の変化をもたらさないアミノ酸残基の位置などが挙げられる。
【実施例】
【0069】
以下、実施例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例のみに限定されるものではない。
【実施例】
【0070】
なお、本実施例において、「V238R」は238位のバリン残基のアルギニン残基への置換、「L388R」は388位のロイシン残基のアルギニン残基への置換および「D450A」は450位のアスパラギン酸残基のアラニン残基への置換を示す。
【実施例】
【0071】
製造例1
(1)AMV逆転写酵素α鎖の発現プラスミドの構築
野生型AMV逆転写酵素α鎖(以下、「WTα」ともいう)をコードするDNA(配列番号:1)を、昆虫細胞での組換えタンパク質発現用キット〔インビトロジェン(Invitrogen)社製、商品名:Bac-to-BacTM Baculovirus Expression system〕に含まれるプラスミド(商品名:pFastBac1プラスミド)に挿入することにより、WTα発現プラスミドであるpFastBac1-WTα(製造例1)を構築した。WTα発現プラスミドは、C末端に(His)が付加されたHisタグポリペプチドとしてWTαを発現する。製造例1(1)で得られたpFastBac1-WTαの構造を図1に示す。図中、数字は配列番号:2におけるアミノ酸残基の番号を示す。
【実施例】
【0072】
(2)変異型AMV逆転写酵素(α鎖)の発現プラスミドの構築
配列番号:2に示されるアミノ酸配列中の238位のバリン残基をアルギニン残基に置換するための部位特異的変異用プライマー対(プライマーV238RおよびプライマーV238R_CP)、配列番号:2に示されるアミノ酸配列中388位のロイシン残基をアルギニン残基に置換するための部位特異的変異用プライマー対(プライマーL388RおよびプライマーL388R_CP)ならびに配列番号:2に示されるアミノ酸配列中の450位のアスパラギン酸残基をアラニン残基に置換するための部位特異的変異用プライマー対(プライマーD450AおよびプライマーD450_CP)を表1に示す。
【実施例】
【0073】
【表1】
JP2013165669A_000002t.gif
【実施例】
【0074】
前記(1)で得られたpFastBac1-WTαと、部位特異的変異用プライマー対と、部位特異的変異用キット〔ストラタジーン(Stratagene)社製、商品名:QuikchangeTM site-directed mutagenesis kit〕とを用い、pFastBac1-WTα中のWTαをコードするDNA中の238位のバリン残基、388位のロイシン残基および450位のアスパラギン酸残基それぞれに部位特異的変異を導入した。得られたプラスミド中のWTαをコードするDNAに部位特異的変異が導入されたかどうかを、DNAシークエンサー〔(株)島津製作所製、商品名:DSQ-2000〕によって確認した。その結果、AMV逆転写酵素のα鎖の多重変異体(V238R/L388R/D450A;以下、「AM4α」ともいう)(変異型AMV逆転写酵素)を発現させるためのプラスミドとして、変異体発現用プラスミドpFastBac1-ARTαAM4が得られた。
【実施例】
【0075】
製造例2
(1)AMV逆転写酵素β鎖の発現プラスミドの構築
WTβをコードするDNA(配列番号:3)を、前記pFastBac1プラスミドに挿入することにより、WTβ発現プラスミドであるpFastBac1-WTβを構築した(製造例2)。WTβ発現プラスミドは、C末端に(His)が付加されたHisタグポリペプチドとしてWTβを発現する。製造例2(1)で得られたpFastBac1-WTβの構造を図2に示す。図中、数字は配列番号:4におけるアミノ酸残基の番号を示す。
【実施例】
【0076】
(2)変異型AMV逆転写酵素(β鎖)の発現プラスミドの構築
WTαのアミノ酸配列(配列番号:2)は、WTβのアミノ酸配列である配列番号:4に示されるアミノ酸配列のうち、1位~572位のアミノ酸残基からなる配列と同一である。したがって、プライマーV238RおよびプライマーV238R_CPは、配列番号:3に示されるアミノ酸配列中の238位のバリン残基をアルギニン残基に置換するための部位特異的変異用プライマー対として用いることができる。また、プライマーL388RおよびプライマーL388R_CPは、配列番号:3に示されるアミノ酸配列中388位のロイシン残基をアルギニン残基に置換するための部位特異的変異用プライマー対として用いることができる。さらに、プライマーD450AおよびプライマーD450_CPは、配列番号:2に示されるアミノ酸配列中の450位のアスパラギン酸残基をアラニン残基に置換するための部位特異的変異用プライマー対として用いることができる。
【実施例】
【0077】
そこで、製造例1において、製造例1(1)で得られたpFastBac1-WTαの代わりに、製造例2(1)で得られたpFastBac1-WTβを用いたことを除き、製造例1と同様の操作を行ない、AMV逆転写酵素のβ鎖の多重変異体(V238R/L388R/D450A;以下、「AM4β」ともいう)(変異型AMV逆転写酵素)を発現させるためのプラスミドとして、変異体発現用プラスミドpFastBac1-ARTβAM4を得た。
【実施例】
【0078】
製造例3
(1)組換えバクミドの調製
製造例1(2)で得られたpFastBac1-ARTαAM4を用いて大腸菌DH10Bacを形質転換した。つぎに、得られた形質転換体から組換えバクミドを単離した。
【実施例】
【0079】
(2)変異型AMV逆転写酵素(AM4α)の昆虫細胞での発現
得られた組換えバクミドを昆虫細胞Sf9に導入し、得られた細胞を、3.5%ウシ血清〔インビトロジェン(Invitrogen)社製、商品名:非働化ウシ胎児血清〕を含有する昆虫細胞培養用培地〔インビトロジェン(Invitrogen)社製、商品名:IPL-41〕中、28℃で3日間培養した。得られた培養物100mLから組換えバキュロウイルスを含有する培養上清98mLを回収した。
【実施例】
【0080】
つぎに、1×10細胞/mLの昆虫細胞Sf9を含有する昆虫細胞培養用培地〔インビトロジェン(Invitrogen)社製、商品名:IPL-41〕100mLに、前記組換えバキュロウイルスを含有する培養上清1mLを添加して昆虫細胞Sf9に前記組換えバキュロウイルスを感染させた後、得られた細胞を28℃で5日間培養することにより、AM4αを発現させた。
【実施例】
【0081】
得られた細胞を、サスペンジョン緩衝液〔組成:10mMトリス-塩酸緩衝液(pH7.5)、0.4体積%TritonTM X-100、10体積%グリセロールおよび10体積%フェニルメタンスルホニルフルオリド〕20mLに懸濁し、超音波処理で破砕した。つぎに、得られた破砕物を遠心分離(5840×g)に供し、上清を回収して、AM4αを含有する可溶性画分を得た。
【実施例】
【0082】
製造例4
製造例3において、製造例1(2)で得られたpFastBac1-ARTαAM4の代わりに、製造例2(2)で得られたpFastBac1-ARTβAM4を用いたことを除き、前記と同様の操作を行ない、AM4βを含有する可溶性画分を得た。
【実施例】
【0083】
試験例1
製造例3で得られた可溶性画分または製造例4で得られた可溶性画分を、その濃度が10体積%となるように、反応液{組成:25mMトリス-塩酸緩衝液(pH8.3)、50mM塩化カリウム、2mMジチオスレイトール、5mM塩化マグネシウム、25μMポリ(rA)・p(dT)15〔p(dT)15換算濃度〕および0.2mM [メチル-3H]dTTP(1.85Bq/pmol)〔ジーイーヘルスケア(GE Healthcare)社製〕}0.066mLに添加した。その後、得られた混合物を37℃でインキュベーションした。
【実施例】
【0084】
インキュベーション開始から2.5分間、5.0分間または7.5分間経過後の産物20μLを採取し、すぐに、ガラスフィルター〔ワットマン(Whatman)社製、商品名:GF/C、直径2.5cm〕にスポットした。つぎに、前記ガラスフィルターを、氷上で冷却された5質量%トリクロロ酢酸水溶液で10分間洗浄した後、氷上で冷却された95体積%エタノール水溶液で洗浄することにより、ポリ(rA)・p(dT)15に取り込まれていない[3H]dTTPを除去した。かかるトリクロロ酢酸水溶液による洗浄は3回、エタノール水溶液による洗浄は1回行なった。
【実施例】
【0085】
つぎに、前記ガラスフィルターを乾燥させた。ガラスフィルターを、液体シンチレーション用試薬〔ナショナル・ダイアグノスティックス(National Diagnostics)製、商品名:Ecoscint H〕2.5mL中に入れ、液体シンチレーションカウンターで放射活性をカウントした。前記放射活性に基づき、ポリ(rA)・p(dT)15に取り込まれた[3H]dTTPの量(「dTTP取り込み量」という)を算出した。つぎに、dTTP取り込み量の経時的変化に基づいて初期反応速度を算出し、逆転写酵素活性を算出した。
【実施例】
【0086】
AM4αを含有する可溶性画分およびAM4βを含有する可溶性画分の逆転写酵素活性を調べた結果を表2に示す。なお、逆転写酵素活性における1ユニットは、10分間にポリ(rA)・p(dT)15に1nmolのdTTPを取り込ませる逆転写酵素の量として定義した。
【実施例】
【0087】
【表2】
JP2013165669A_000003t.gif
【実施例】
【0088】
表2に示された結果から、AM4αを含有する可溶性画分およびAM4βを含有する可溶性画分のいずれもが逆転写酵素活性を示すが、AM4αを含有する可溶性画分の全活性は、AM4βを含有する可溶性画分の全活性よりも顕著に高いことがわかる。
【実施例】
【0089】
なお、配列番号:2に示されるアミノ酸配列において、238位のバリン残基、388位のロイシン残基および450位のアスパラギン酸残基は、AMV逆転写酵素において、DNAと相互作用する領域(DNA相互作用領域)に存在すると考えられるアミノ酸残基である。また、238位のバリン残基のアルギニン残基への置換、388位のロイシン残基のアルギニン残基への置換および450位のアスパラギン酸残基のアラニン残基への置換は、DNA相互作用領域における正の実効電荷を、野生型AMV逆転写酵素のDNA相互作用領域における正の実効電荷と比べて、増加させていると考えられる。
【実施例】
【0090】
したがって、かかる結果から、野生型AMV逆転写酵素α鎖のDNA相互作用領域における正の実効電荷を増加させる変異は、野生型AMV逆転写酵素β鎖のDNA相互作用領域における正の実効電荷を増加させる変異と比べて、高い活性を確保することが可能であることが示唆される。
【実施例】
【0091】
実施例1
製造例3と同様の操作を行ない、AM4αを含有する可溶性画分を得た。この可溶性画分に固体の硫酸アンモニウムを40%飽和となるように添加した。得られた混合物を遠心分離(20000×g)に供して沈殿を得た。得られた沈殿を、0.02M PDGT溶液〔組成:20mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.2)、2.0mMジチオスレイトール、2.0体積%TritonTM X-100および10体積%グリセロール〕に溶解させた。得られた溶液を、0.02M PDGT溶液に対して透析した。
【実施例】
【0092】
得られた透析物にDGT溶液〔組成:2.0mMジチオスレイトール、2.0体積%TritonTM X-100および10体積%グリセロール〕54mLを添加した。得られた混合物を、0.02M PDGT溶液で予め平衡化された陰イオン交換レジン〔東ソー(株)製、商品名:DEAE650M〕が充填されたカラムに供した後、0.02M PDGT溶液で前記レジンを洗浄して未結合のタンパク質などを除去した。
【実施例】
【0093】
つぎに、溶出緩衝液として0.3M PDGT溶液〔組成:300mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.2)、2.0mMジチオスレイトール、2.0体積%TritonTM X-100および10体積%グリセロール〕を用いて前記カラムに吸着したタンパク質を溶出し、AM4αを含有する画分を回収した。回収した溶液を、透析溶液〔20mMイミダゾール含有0.02M PDGT溶液〕に対して透析した。
【実施例】
【0094】
得られた透析物を、20mMイミダゾール含有0.02M PDGT溶液で予め平衡化されたヒスチジンタグ結合タンパク質精製用プレパックカラム〔ジーイーヘルスケア(GE Healthcare)社製、商品名:HisTrap HP 1mL〕に供した。その後、洗浄溶液〔80mMイミダゾール含有0.02M PDGT溶液〕を用いてカラムを洗浄して未結合のタンパク質などを除去した。つぎに、溶出緩衝液〔500mMイミダゾール含有0.02M PDGT〕を用いて前記カラムに吸着したタンパク質を溶出し、AM4αを含有するアフィニティー精製画分を回収した。
【実施例】
【0095】
比較例1
製造例3において、製造例1(2)で得られたpFastBac1-ARTαAM4の代わりに、製造例1(1)で得られたpFastBac1-WTαを用いたことを除き、製造例3と同様の操作を行ない、WTαを含有するアフィニティー精製画分を得た。
【実施例】
【0096】
試験例2
実施例1で得られたAM4αを含有するアフィニティー精製画分および比較例1で得られたWTαを含有するアフィニティー精製画分をSDS-PAGEに供した。
【実施例】
【0097】
試験例2において、SDS-PAGEを行なった結果を図3に示す。図中、レーン1は分子量マーカー、レーン2は比較例1で得られたWTαを含有するアフィニティー精製画分、レーン3は実施例1で得られたAM4αを含有するアフィニティー精製画分およびレーン4はMMLV逆転写酵素標品を示す。
【実施例】
【0098】
図3に示された結果から、実施例1で得られたAM4αを含有するアフィニティー精製画分および比較例1で得られたWTαを含有するアフィニティー精製画分は、いずれも、63kDaの単一のバンドを示したことから、高い純度のAM4αおよびWTαが得られたことがわかる。
【実施例】
【0099】
試験例3
実施例1で得られた精製AM4αまたは比較例1で得られた精製WTαを、その濃度が10nMとなるように、反応液{組成:25mMトリス塩酸緩衝液(pH8.3)、50mM塩化カリウム、2mMジチオスレイトール、5mM塩化マグネシウム、0~25μMの範囲の濃度のポリ(rA)・p(dT)15〔p(dT)15換算濃度〕および0.2mM [メチル-3H]dTTP(1.85Bq/pmol)〔ジーイーヘルスケア(GE Healthcare)社製〕}に添加し、得られた混合物を37℃でインキュベーションした。
【実施例】
【0100】
インキュベーション開始から2.5分間、5.0分間または7.5分間経過後の産物20μLを採取し、すぐに、ガラスフィルター〔ワットマン(Whatman)社製、商品名:GF/C、直径2.5cm〕にスポットした。つぎに、前記ガラスフィルターを、氷上で冷却された5質量%トリクロロ酢酸水溶液で10分間洗浄した後、氷上で冷却された95体積%エタノール水溶液で洗浄することにより、ポリ(rA)・p(dT)15に取り込まれていない[3H]dTTPを除去した。かかるトリクロロ酢酸水溶液による洗浄は3回、エタノール水溶液による洗浄は1回行なった。
【実施例】
【0101】
その後、前記ガラスフィルターを乾燥させた。ガラスフィルターを、液体シンチレーション用試薬〔ナショナル・ダイアグノスティックス(National Diagnostics)製、商品名:Ecoscint H〕2.5mL中に入れ、液体シンチレーションカウンターで放射活性をカウントした。前記放射活性に基づいてdTTP取り込み量を算出した。
【実施例】
【0102】
前記dTTP取り込み量の経時的変化に基づいて初期反応速度を算出した。つぎに、グラフ作成ソフトウェア〔シナジー・ソフトウェア(Synergy Software)製、商品名:Kaleida Graph Version 3.5〕を用い、用いられた基質〔ポリ(rA)・p(dT)15〕濃度と、初期反応速度と、ミカエリス-メンテンの速度式とに基づいて非線形最小2乗回帰法にしたがって、kcat値、Km値およびkcat/Km値を算出した。試験例3において、基質〔ポリ(rA)・p(dT)15〕濃度と、初期反応速度との関係を調べた結果を図4に示す。図中、白三角は実施例1で得られたAM4α、白丸は比較例1で得られたWTαを示す。また、実施例1で得られたAM4αおよび比較例1で得られたWTαそれぞれのkcat値、Km値およびkcat/Km値を調べた結果を表3に示す。
【実施例】
【0103】
【表3】
JP2013165669A_000004t.gif
【実施例】
【0104】
図4に示された結果から、実施例1で得られたAM4αの初期反応速度は、比較例1で得られたWTαの初期反応速度と比べて大きいことがわかる。また、表3に示された結果から、実施例1で得られたAM4αのKm値は、比較例1で得られたWTαのKm値の40%であることがわかる。したがって、これらの結果から、テンプレートプライマー(DNA)に対する実施例1で得られたAM4αの親和性は、テンプレートプライマー(DNA)に対する比較例1で得られたWTαの親和性よりも高いことが示唆される。
【実施例】
【0105】
試験例4
実施例1で得られたAM4αまたは比較例1で得られたWTαを、その濃度が30nMとなるように、インキュベーション用溶液A〔組成:28μMポリ(rA)・p(dT)15、10mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.6)、2mMジチオスレイトール、0.2体積%TritonTM X-100および10体積%グリセロール〕に添加した。得られた混合物を46℃で5分間、10分間、15分間、20分間、25分間または30分間インキュベーションして実施例1で得られたAM4αまたは比較例1で得られたWTαに熱処理を施した。つぎに、熱処理後のAM4αまたは熱処理後のWTαを含有する混合物を、氷上で30~60分間インキュベーションした。
【実施例】
【0106】
つぎに、得られたAM4αまたはWTαを、その濃度が30nMとなるように、反応液{組成:25mMトリス塩酸緩衝液(pH8.3)、50mM塩化カリウム、2mMジチオスレイトール、5mM塩化マグネシウム、25μMポリ(rA)・p(dT)15〔p(dT)15換算濃度〕、0.2mM [メチル-3H]dTTP(1.85Bq/pmol)〔ジーイーヘルスケア(GE Healthcare)社製〕}に添加し、得られた混合物37℃でインキュベーションして逆転写酵素反応を行なった。
【実施例】
【0107】
インキュベーション開始から2.5分間、5.0分間または7.5分間経過後の産物20μLを採取し、すぐに、ガラスフィルター〔ワットマン(Whatman)社製、商品名:GF/C、直径2.5cm〕にスポットした。つぎに、前記ガラスフィルターを、氷上で冷却された5質量%トリクロロ酢酸水溶液で10分間洗浄した後、氷上で冷却された95体積%エタノール水溶液で洗浄することにより、ポリ(rA)・p(dT)15に取り込まれていない[3H]dTTPを除去した。かかるトリクロロ酢酸水溶液による洗浄は3回、エタノール水溶液による洗浄は1回行なった。
【実施例】
【0108】
その後、前記ガラスフィルターを乾燥させた。ガラスフィルターを、液体シンチレーション用試薬〔ナショナル・ダイアグノスティックス(National Diagnostics)製、商品名:Ecoscint H〕2.5mL中に入れ、液体シンチレーションカウンターで放射活性をカウントした。前記放射活性に基づいてdTTP取り込み量を算出した。
【実施例】
【0109】
また、インキュベーション用溶液Aの代わりに、インキュベーション用溶液B〔組成:10mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.6)、2mMジチオスレイトール、0.2体積%TritonTM X-100および10体積%グリセロール〕を用いたことを除き、前記と同様の操作を行ない、dTTP取り込み量を算出した。
【実施例】
【0110】
dTTP取り込み量の経時的変化に基づいて初期反応速度を算出した。つぎに、熱処理を行なっていない場合の初期反応速度(「初期反応速度a」という)と、熱処理を行なった場合の初期反応速度(「初期反応速度b」という)とから、残存活性を算出した。前記残存活性は、式(II):
[残存活性(%)]=(初期反応速度b/初期反応速度a)×100 (II)
で表わされる式に基づいて算出した。その後、熱処理におけるインキュベーション時間に対して残存活性の対数値をプロットした。試験例4において、インキュベーション時間と、ln[残存活性(%)]との関係を調べた結果を図5に示す。図中、ln[残存活性(%)]は、残存活性の自然対数値を示す。また、図中、白三角はポリ(rA)・p(dT)15を含まないインキュベーション用溶液B中で熱処理されたAM4α、黒三角はポリ(rA)・p(dT)15を含有するインキュベーション用溶液A中で熱処理されたAM4α、白丸はポリ(rA)・p(dT)15を含まないインキュベーション用溶液B中で熱処理されたWTα(比較例1)、黒丸はポリ(rA)・p(dT)15を含有するインキュベーション用溶液A中で熱処理されたWTα(比較例1)を示す。
【実施例】
【0111】
つぎに、式(III):
ln[B]=A-kobst (III)
(式中、Aは定数項を示し、Bは残存活性(%)を示し、tは熱処理時間を示す)
で表わされる式に基づいて熱不活性化一次速度定数kobsを決定した。
【実施例】
【0112】
また、熱処理温度に対してkobsの対数値をプロットした。試験例4において、熱処理温度と、1/T×103と、ln[kobs(s-1)]との関係を調べた結果を図6に示す。図中、ln[kobs(s-1)]は、kobsの自然対数値を示す。また、図中、白三角はポリ(rA)・p(dT)15を含まないインキュベーション用溶液B中で熱処理されたAM4α、黒三角はポリ(rA)・p(dT)15を含有するインキュベーション用溶液A中で熱処理されたAM4α、白丸はポリ(rA)・p(dT)15を含まないインキュベーション用溶液B中で熱処理されたWTα(比較例1)、黒丸はポリ(rA)・p(dT)15を含有するインキュベーション用溶液A中で熱処理されたWTα(比較例1)を示す。
【実施例】
【0113】
つぎに、図6に示された結果に基づき、実施例1で得られたAM4αおよび比較例1で得られたWTαそれぞれを10分間インキュベーションしたときにインキュベーション前の逆転写酵素活性の50%に減少させるのに必要な温度T50を算出した。
【実施例】
【0114】
さらに、図6に示された結果に基づき、式(IV):
ln(kobs)=A-(Ea/R)(l/T) (IV)
(式中、Aは定数項を示し、Rは気体定数(=8.314J/K・mol)を示し、Tは絶対温度(K)である)
で表わされる式に基づき、アレニウスプロットを用い、実施例1で得られたAM4αおよび比較例1で得られたWTαそれぞれの熱不活性化に対する活性化エネルギーEaを算出した。
【実施例】
【0115】
図5に示された結果から、比較例1で得られたWTαの残存活性は、25分間のインキュベーションで10%未満に減少するのに対し、実施例1で得られたAM4αの残存活性は、ほとんど減少しないことがわかる。したがって、これらの結果から、実施例1で得られたAM4αの46℃での熱安定性は、比較例1で得られたWTαの46℃での熱安定性と比べ、高いことがわかる。
【実施例】
【0116】
また、実施例1で得られたAM4αでは、ポリ(rA)・p(dT)15を含まないインキュベーション用溶液Bを用いたときのT50は50.1℃であるのに対して、ポリ(rA)・p(dT)15を含有するインキュベーション用溶液Aを用いたときのT50は49.3℃であると推定された。一方、比較例1で得られたWTαでは、ポリ(rA)・p(dT)15を含まないインキュベーション用溶液Bを用いたときのT50は44.3℃であるのに対して、ポリ(rA)・p(dT)15を含有するインキュベーション用溶液Aを用いたときのT50は44.1℃であると推定された。これらの結果から、実施例1で得られたAM4αのT50は、比較例1で得られたWTαのT50と比べて高いことがわかる。したがって、これらの結果から、実施例1で得られたAM4αの熱安定性は、比較例1で得られたWTαの熱安定性と比べ、高いことがわかる。また、これらの結果から、AM4αの熱失活の速度は、WTαの速度よりも遅いことがわかる。
【実施例】
【0117】
さらに、実施例1で得られたAM4αでは、ポリ(rA)・p(dT)15を含まないインキュベーション用溶液Bを用いたときのEaは240kJ/mol、ポリ(rA)・p(dT)155を含有するインキュベーション用溶液Aを用いたときのEaは298kJ/molであると推定された。一方、比較例1で得られたWTαでは、ポリ(rA)・p(dT)15を含まないインキュベーション用溶液Bを用いたときのEaは194kJ/mol、ポリ(rA)・p(dT)155を含有するインキュベーション用溶液Aを用いたときのEaは244kJ/molと推定された。これらの結果から、実施例1で得られたAM4αのEaは、比較例1で得られたWTαのEaと比べて高いことがわかる。したがって、これらの結果から、実施例1で得られたAM4αの熱安定性は、比較例1で得られたWTαの熱安定性と比べ、高いことがわかる。また、これらの結果から、DNA相互作用領域の正の実効電荷を大きくする方法が、鋳型プライマー存在下と非存在下のいずれにおいても、AMV逆転写酵素の熱安定性を上げることに有効であることがわかる。
【実施例】
【0118】
以上の結果から、実施例1で得られたAM4αは、比較例1で得られたWTαよりも高い熱安定性を有しているため、配列番号:2で示されるアミノ酸配列中のDNA相互作用領域における正の実効電荷を増加させることによって、野生型逆転写酵素と比べて熱安定性を向上させることができることが示唆される。
【実施例】
【0119】
試験例5
PCR用チューブに、水12μLと10×逆転写酵素緩衝液〔組成:250mMトリス-塩酸緩衝液(pH8.3)、500mM塩化カリウムおよび20mMジチオスレイトール〕2μLと、2.0mM dNTP混合物1μLと、10μM RV-R26プライマー水溶液1μLと、標準RNA溶液(1.6pg/μL)1μLと、大腸菌RNA溶液(1.0μg/μL)1μLと、実施例1で得られたAM4αまたは比較例1で得られたWTαを含む酵素溶液〔10nM AM4αまたはWTα、10mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.6)、2mMジチオスレイトール、0.2体積%TritonTM X-100、10体積%グリセロール〕2μLとを入れて混合し、反応混合液20μLを得た。
【実施例】
【0120】
なお、標準RNAとして、バチルス・セレウス(Bacillus cereus)のcesA遺伝子(ジーンバンクアクセッション番号:DQ360825)の塩基配列の塩基番号:8353~9366に対応する1014ヌクレオチドからなるRNAをイン・ビトロ転写によって調製したものを用いた。なお、RV-R26プライマーの塩基配列および配列番号は、表4に示されるとおりである。
【実施例】
【0121】
【表4】
JP2013165669A_000005t.gif
【実施例】
【0122】
得られた反応混合液を、44℃、46℃、48℃、50℃、52℃、54℃、56℃、58℃、60℃、62℃、64℃または66℃の反応温度で30分間インキュベーションした後、95℃で5分間加熱した。つぎに、得られた産物3μLと、水18μLと10×PCR緩衝液〔組成:500mM塩化カリウム、100mMトリス-塩酸緩衝液(pH8.3)および15mM塩化マグネシウム〕3μLと、10μM F5プライマー水溶液1μLと、10μM RVプライマー水溶液1μLと、2.0mM dNTP混合物3μLと、組換Taqポリメラーゼ溶液〔東洋紡(株)製、1U/μL〕1μLとを混合し、PCR用混合物30μLを得た。得られたPCR用混合物を用いてPCRを行なった。PCRは、95℃で30秒間のインキュベーションの後、95℃で30秒間、55℃で30秒間および72℃で30秒間を1サイクルとする30サイクルの反応を行なうことによって実施した。なお、F5プライマーおよびRVプライマーそれぞれの塩基配列および配列番号は、表4に示されるとおりである。
【実施例】
【0123】
得られた増幅産物を、1.0質量%アガロースゲルを用いた電気泳動に供し、エチジウムブロマイド(1μg/mL)で染色した。試験例5において、各反応温度での反応によって得られた産物をアガロースゲル電気泳動によって解析した結果を図7に示す。図中、(A)は実施例1で得られたAM4α、(B)は比較例1で得られたWTαを示す。
【実施例】
【0124】
図7に示された結果から、実施例1で得られたAM4αは、反応温度が64℃までの範囲でcDNA合成活性を示すのに対して、比較例1で得られたWTαは、反応温度が60℃までの範囲でしかcDNA合成活性を示さないことがわかる。これらの結果から、実施例1で得られたAM4αは、比較例1で得られたWTαよりも高い温度でcDNA合成活性を示すことがわかる。
【実施例】
【0125】
以上の結果から、配列番号:2で示されるアミノ酸配列中のDNA相互作用領域における正の実効電荷を増加させることによって、野生型逆転写酵素と比べて熱安定性を向上させることができることが示唆される。
【実施例】
【0126】
実施例2
製造例1(1)で得られたpFastBac1-WTαを用い、製造例1(2)および実施例1と同様の操作を行ない、配列番号:2の1位のスレオニン残基~426位のアラニン残基からなる領域(DNA相互作用領域)中のアミノ酸残基に存在する負電荷アミノ酸残基(アスパラギン酸残基およびグルタミン酸残基)および当該配列番号:2の1位のスレオニン残基~426位のアラニン残基からなる領域中の他のアミノ酸残基を、対応する領域の正の実効電荷が配列番号:2の1位のスレオニン残基~426位のアラニン残基からなる領域の正の実効電荷よりも大きくなるように、正電荷アミノ酸残基(アルギニン残基もしくはリジン残基)または非極性アミノ酸残基(アラニン残基、グリシン残基、バリン残基、ロイシン残基、イソロイシン残基、メチオニン残基、システイン残基、トリプトファン残基、フェニルアラニン残基またはプロリン残基)に置換されたポリペプチドによって構成された変異型逆転写酵素を得る。
【実施例】
【0127】
つぎに、試験例3~5において、実施例1で得られたAM4αの代わりに、得られた変異型逆転写酵素を用いることを除き、試験例3~5と同様の操作を行ない、WTαに対する変異型逆転写酵素における耐熱性の向上の度合いを調べる。
【実施例】
【0128】
その結果、配列番号:2の1位のスレオニン残基~426位のアラニン残基からなる領域(DNA相互作用領域)、特に、領域H20-E44、領域N55-F114、領域Q148-C152、領域L178-H191、領域D215-S233、領域T234-G240、領域Q254-A289、領域A310-C328、領域W349-L390および領域L408-S417からなる群より選ばれた少なくとも1つにおける正の実効電荷を増加させることによって、野生型逆転写酵素と比べて熱安定性を向上させることができることがわかる。
【実施例】
【0129】
実施例1で得られたAM4αのDNA相互作用領域(配列番号:2の1位のスレオニン残基~426位のアラニン残基に対応する領域)においては、正電荷アミノ酸残基であるリジン残基およびアルギニン残基それぞれの電荷スコアを「+1」、負電荷アミノ酸残基であるアスパラギン酸残基およびグルタミン酸残基それぞれの電荷スコアを「-1」とすると、式(I)の値が6となり、WTαのものよりも+4大きくなっている。また、実施例2で得られた変異型逆転写酵素のDNA相互作用領域(配列番号:2の1位のスレオニン残基~426位のアラニン残基に対応する領域)においては、前記式(I)の値が+2~+8の範囲となる傾向が見られる。
【実施例】
【0130】
かかる結果より、配列番号:2の1位のスレオニン残基~426位のアラニン残基(野生型逆転写酵素のα鎖のDNA相互作用領域)に対応する領域において、前記式(I)の値が+2~+8の範囲となるように、配列番号:2の1位のスレオニン残基~426位のアラニン残基(野生型逆転写酵素のα鎖のDNA相互作用領域)中のアミノ酸残基に存在する負電荷アミノ酸残基および当該配列番号:2の1位のスレオニン残基~426位のアラニン残基からなる領域中の他のアミノ酸残基を、正電荷アミノ酸残基または非極性アミノ酸残基に置換することにより、野生型逆転写酵素と比べて高い熱安定性を有する変異型逆転写酵素を得ることができることが示唆される。
【実施例】
【0131】
以上説明したように、配列番号:2に対応するアミノ酸配列からなる野生型逆転写酵素のDNA相互作用領域(配列番号:2の1位のスレオニン残基~426位のアラニン残基に対応する領域)に局在するアミノ酸残基を、正電荷アミノ酸残基または非極性アミノ酸残基に置換し、かつ前記野生型逆転写酵素のDNA相互作用領域よりも大きい正の実効電荷を有するDNA相互作用領域とすることにより、二次構造の形成が抑制される温度での逆転写酵素の熱安定性が向上することから、二次構造の形成が抑制される温度条件下においても用いることができ、効率よく逆転写反応を行なうことができる汎用性の高い変異型逆転写酵素が得られることがわかる。
【実施例】
【0132】
かかる変異型逆転写酵素(本発明の変異型逆転写酵素)は、高い熱安定性を有していることから、高い反応温度での反応に用いた場合であっても、高い逆転写酵素活性を発現する。そのため、本発明の変異型逆転写酵素によれば、テンプレートとして用いられるRNAが二次構造を形成しやすい配列を含む場合であっても、逆転写反応の際の反応温度を高い温度に設定して二次構造の形成を抑制し、かつ逆転写することができる。
【実施例】
【0133】
したがって、本発明の変異型逆転写酵素は、用いられるRNA含有試料に制限されることのない汎用性の高い分析用試薬(例えば、逆転写反応キット)、ウイルス、細菌、疾患などの検出用試薬(例えば、検出キット)などとして有用であることが示唆される。
【実施例】
【0134】
処方例
以下、逆転写反応キットおよび検出キットの例を示す。
【実施例】
【0135】
(逆転写反応キット)
- 実施例1で得られたAM4α
- 10×逆転写酵素緩衝液
〔組成:250mMトリス-塩酸緩衝液(pH8.3)、500mM塩化カリウム、
20mMジチオスレイトール、5mM塩化マグネシウム、〕
- 2.0mM dNTP混合物
【実施例】
【0136】
(検出キット)
- 実施例1で得られたAM4α
- 10×逆転写酵素緩衝液
〔組成:250mMトリス-塩酸緩衝液(pH8.3)、500mM塩化カリウム、
20mMジチオスレイトール、5mM塩化マグネシウム、〕
- 2.0mM dNTP混合物
- 10μMプライマー水溶液(検出対象のウイルス、細菌、疾患に特異的な配列を
有するRNAを増幅するためのプライマー対を含有する水溶液)
- 標準RNA溶液(1.6pg/μL)
【実施例】
【0137】
実施例3
配列番号:2の1位のスレオニン残基~426位のアラニン残基に対応するアミノ酸配列を含み、かつ配列番号:2の1位のスレオニン残基~426位のアラニン残基からなるDNA相互作用領域と立体構造上類似する核酸相互作用領域または配列番号:2の1位のスレオニン残基~426位のアラニン残基の配列との配列同一性が少なくとも80%であるアミノ酸配列からなる核酸相互作用領域を有する核酸関連酵素をコードするDNAに対し、配列番号:2の238位のバリン残基に対応するアミノ酸残基、388位のロイシン残基に対応するアミノ酸残基および450位のアスパラギン酸残基に対応するアミノ酸残基からなる群より選ばれた少なくとも1つのアミノ酸残基を正電荷アミノ酸残基または非極性アミノ酸残基に置換するための変異を導入する。変異が導入されたDNAを細胞内で発現させる。得られた産物を用い、野生型核酸関連酵素の至適反応温度よりも高い温度で酵素反応を行ない、酵素活性を測定する。これにより、野生型核酸関連酵素を用いたときよりも高い酵素活性を示す熱安定性が高い核酸関連酵素を得る。
【配列表フリ-テキスト】
【0138】
配列番号:5は、プライマーV238Rの配列である。
配列番号:6は、プライマーV238R_CPの配列である。
配列番号:7は、プライマーL388Rの配列である。
配列番号:8は、プライマーL388_CPの配列である。
配列番号:9は、プライマーD450Aの配列である。
配列番号:10は、プライマーD450A_CPの配列である。
配列番号:11は、プライマーRV-R26の配列である。
配列番号:12は、プライマーF5の配列である。
配列番号:13は、プライマーRVの配列である。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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