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明細書 :波形再構成装置、波形再構成システム及び波形再構成方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6025013号 (P6025013)
公開番号 特開2013-170905 (P2013-170905A)
登録日 平成28年10月21日(2016.10.21)
発行日 平成28年11月16日(2016.11.16)
公開日 平成25年9月2日(2013.9.2)
発明の名称または考案の名称 波形再構成装置、波形再構成システム及び波形再構成方法
国際特許分類 G01J  11/00        (2006.01)
G01J   3/28        (2006.01)
G02F   1/365       (2006.01)
FI G01J 11/00
G01J 3/28
G02F 1/365
請求項の数または発明の数 12
全頁数 26
出願番号 特願2012-034442 (P2012-034442)
出願日 平成24年2月20日(2012.2.20)
審査請求日 平成27年2月9日(2015.2.9)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
発明者または考案者 【氏名】小西 毅
【氏名】高橋 考二
【氏名】永島 知貴
個別代理人の代理人 【識別番号】100109210、【弁理士】、【氏名又は名称】新居 広守
審査官 【審査官】塚本 丈二
参考文献・文献 国際公開第2010/100891(WO,A1)
特開2010-204308(JP,A)
米国特許出願公開第2011/0311223(US,A1)
SULLIVAN,A. et.al.,“Quantitative investigation of optical phase-measuring techniques for ultrashort pulse lasers”,JOURNAL OF THE OPTICAL SOCIETY OF AMERICA B,1996年 9月 1日,VOLUME 13, ISSUE 9,PAGES 1965-1978
調査した分野 G01J 11/00
G01J 3/28
G02F 1/365
特許請求の範囲 【請求項1】
入力光信号の時間波形を再構成する波形再構成装置であって、
前記入力光信号のパワースペクトルを取得する入力スペクトル取得部と、
複数の強度の前記入力光信号について、非線形光学効果を有する光伝送媒体内を前記入力光信号が伝播した後に出力される出力光信号を計測することにより得られるパワースペクトルを計測パワースペクトルとしてそれぞれ取得する出力スペクトル取得部と、
(a)前記入力光信号の強度ごとに、前記入力光信号が所与の位相スペクトルを有すると仮定して前記入力光信号の前記光伝送媒体内の伝播シミュレーションを行うことにより、前記出力光信号の計算パワースペクトルを算出し、(b)前記計算パワースペクトルと前記計測パワースペクトルとの前記入力光信号の強度ごとの差分が小さくなるように前記所与の位相スペクトルを変化させて前記伝播シミュレーションを繰り返し行うことにより、前記入力光信号の位相スペクトルを探索する位相スペクトル算出部と、
前記位相スペクトル算出部により探索された位相スペクトルと、前記入力スペクトル取得部により取得されたパワースペクトルとを周波数/時間変換することにより、前記入力光信号の時間波形を再構成する波形再構成部とを備え、
前記位相スペクトル算出部は、前記伝播シミュレーションの繰り返しの少なくとも一部において、前記光伝送媒体の非線形定数γに比例する非線形光学効果と、前記光伝送媒体の2次分散β2以上の高次分散による分散効果とのうちの非線形光学効果のみに基づいて前記伝播シミュレーションを行う
波形再構成装置。
【請求項2】
前記位相スペクトル算出部は、さらに、前記伝播シミュレーションの繰り返しの少なくとも一部において、前記入力光信号が非線形光学効果及び分散効果のうちの分散効果のみを有する媒体内を伝播して得られた信号であると仮定した場合に満たされるべき位相スペクトルの制約条件に従って、前記所与の位相スペクトルを変化させる
請求項1に記載の波形再構成装置。
【請求項3】
前記位相スペクトル算出部は、前記入力光信号の位相スペクトルを探索する際に、前記制約条件に従って前記所与の位相スペクトルを変化させて前記伝播シミュレーションを行った後に、前記制約条件に関わらず前記所与の位相スペクトルを変化させて前記伝播シミュレーションを行う
請求項2に記載の波形再構成装置。
【請求項4】
前記位相スペクトル算出部は、前記非線形光学効果に関するパラメータのうち、自己位相変調に関するパラメータのみを用いて、前記伝播シミュレーションを行う
請求項1に記載の波形再構成装置。
【請求項5】
前記光伝送媒体は、光ファイバである
請求項1~4のいずれか1項に記載の波形再構成装置。
【請求項6】
入力光信号の時間波形を再構成する波形再構成システムであって、
前記入力光信号の強度を互いに異なる複数の強度に変化させる強度調節器と、
非線形光学効果を有する光伝送媒体であって、少なくとも非線形光学効果に関するパラメータが既知である光伝送媒体と、
前記強度調節器により強度が変化された前記入力光信号が前記光伝送媒体内を伝播した後に出力される出力光信号のパワースペクトルを前記入力光信号の強度ごとに計測するスペクトル計測器と、
請求項1に記載の波形再構成装置とを備え、
前記出力スペクトル取得部は、前記スペクトル計測器により計測されたパワースペクトルを計測パワースペクトルとして取得する
波形再構成システム。
【請求項7】
前記光伝送媒体は、光ファイバである
請求項6に記載の波形再構成システム。
【請求項8】
入力光信号の時間波形を再構成する波形再構成方法であって、
前記入力光信号のパワースペクトルを取得するステップと、
複数の強度の前記入力光信号について、非線形光学効果を有する光伝送媒体内を前記入力光信号が伝播した後に出力される出力光信号を計測することにより得られるパワースペクトルを計測パワースペクトルとしてそれぞれ取得するステップと、
前記入力光信号の強度ごとに、前記入力光信号が所与の位相スペクトルを有すると仮定して前記入力光信号の前記光伝送媒体内の伝播シミュレーションを繰り返し行うことにより、前記出力光信号の計算パワースペクトルを算出するステップと、
前記計算パワースペクトルと前記計測パワースペクトルとの前記入力光信号の強度ごとの差分が小さくなるように前記所与の位相スペクトルを変化させて前記伝播シミュレーションを行うことにより、前記入力光信号の位相スペクトルを探索するステップと、
前記入力光信号の位相スペクトルを探索するステップにおいて探索された位相スペクトルと、前記入力光信号のパワースペクトルを取得するステップにおいて取得されたパワースペクトルとを周波数/時間変換することにより、前記入力光信号の時間波形を再構成するステップとを含み、
前記入力光信号の位相スペクトルを探索するステップでは、前記伝播シミュレーションの繰り返しの少なくとも一部において、前記光伝送媒体の非線形定数γに比例する非線形光学効果と、前記光伝送媒体の2次分散β2以上の高次分散による分散効果とのうちの非線形光学効果のみに基づいて前記伝播シミュレーションを行う
波形再構成方法。
【請求項9】
請求項8に記載の波形再構成方法をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【請求項10】
入力光信号の時間波形を再構成する波形再構成装置であって、
前記入力光信号のパワースペクトルを示す情報を取得する入力スペクトル取得部と、
複数の強度の前記入力光信号について、非線形光学効果を有する光伝送媒体内を前記入力光信号が伝播した後に出力される出力光信号を計測することにより得られるパワースペクトルを計測パワースペクトルとしてそれぞれ取得する出力スペクトル取得部と、
(a)前記入力光信号の強度ごとに、前記入力光信号が所与の位相スペクトルを有すると仮定して前記入力光信号の前記光伝送媒体内の伝播シミュレーションを行うことにより、前記出力光信号の計算パワースペクトルを算出し、(b)前記計算パワースペクトルと前記計測パワースペクトルとの前記入力光信号の強度ごとの差異が小さくなるように前記所与の位相スペクトルを変化させて前記伝播シミュレーションを繰り返し行うことにより、前記入力光信号の位相スペクトルを探索する位相スペクトル算出部と、
前記位相スペクトル算出部により探索された位相スペクトルと、前記入力スペクトル取得部により取得された情報が示すパワースペクトルとを周波数/時間変換することにより、前記入力光信号の時間波形を再構成する波形再構成部とを備え、
前記位相スペクトル算出部は、前記伝播シミュレーションの繰り返しにおいて、非線形光学効果及び分散効果のうちの分散効果のみを有する媒体内を伝播して得られた信号であると仮定した場合に満たされるべき位相スペクトルの制約条件に従って前記所与の位相スペクトルを変化させて前記伝播シミュレーションを行った後に、前記制約条件に関わらず前記所与の位相スペクトルを変化させて前記伝播シミュレーションを行う
波形再構成装置。
【請求項11】
入力光信号の時間波形を再構成する波形再構成方法であって、
前記入力光信号のパワースペクトルを示す情報を取得するステップと、
複数の強度の前記入力光信号について、非線形光学効果を有する光伝送媒体内を前記入力光信号が伝播した後に出力される出力光信号を計測することにより得られるパワースペクトルを計測パワースペクトルとしてそれぞれ取得するステップと、
前記入力光信号の強度ごとに、前記入力光信号が所与の位相スペクトルを有すると仮定して前記入力光信号の前記光伝送媒体内の伝播シミュレーションを行うことにより、前記出力光信号の計算パワースペクトルを算出するステップと、
前記計算パワースペクトルと前記計測パワースペクトルとの前記入力光信号の強度ごとの差異が小さくなるように前記所与の位相スペクトルを変化させて前記伝播シミュレーションを繰り返し行うことにより、前記入力光信号の位相スペクトルを探索するステップと、
探索された前記位相スペクトルと、取得された前記情報が示すパワースペクトルとを周波数/時間変換することにより、前記入力光信号の時間波形を再構成するステップとを含み、
前記入力光信号の位相スペクトルを探索するステップでは、前記伝播シミュレーションの繰り返しにおいて、前記伝播シミュレーションの繰り返しにおいて、非線形光学効果及び分散効果のうちの分散効果のみを有する媒体内を伝播して得られた信号であると仮定した場合に満たされるべき位相スペクトルの制約条件に従って前記所与の位相スペクトルを変化させて前記伝播シミュレーションを行った後に、前記制約条件に関わらず前記所与の位相スペクトルを変化させて前記伝播シミュレーションを行う
波形再構成方法。
【請求項12】
請求項11に記載の波形再構成方法をコンピュータに実行させるためのプログラム。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、光信号の時間波形を再構成する波形再構成装置等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、非線形光学効果を利用した情報通信システム等の実用化に向け、光信号の正確な時間波形の情報を得ることは極めて重要となっている。そこで、光信号の正確な時間波形の情報を取得するために、光サンプリングオシロスコープ、オートコリレータなどを用いて、光信号の時間波形の強度分布が計測される。その結果、計測された強度分布から、光信号の振幅情報が取得される。しかしながら、計測された強度分布からは、光信号の位相情報は取得できない。つまり、光信号の強度分布を計測しただけでは、光信号の時間波形の情報を取得することはできない。
【0003】
そこで、光信号の位相を取得するための様々な方法が、提案されている(例えば、非特許文献1及び2を参照)。非特許文献1及び2に記載の方法は、時間分解分光に基づいて光信号の位相を取得する方法である。具体的には、非特許文献1及び2に記載の方法では、超高速時間ゲート又は参照光源を利用することにより、光信号の位相を取得する。そして、取得した位相を用いて、光信号の時間波形が再構成される。
【先行技術文献】
【0004】

【非特許文献1】D.J.Kane、R.Trebino、「Characterization of arbitrary femtosecond pulses using frequency-resolved optical gating」、IEEE J.Quantum Electron、Vol.29、1993、pp571~pp579
【非特許文献2】C.Dorrer、M.Joffre、「Characterization of the spectral phase of ultrashort light pulses」、C.R.Acad.Sci.Paris、Vol.2、2001、pp1415
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の方法では、超高速時間ゲート又は参照光源を必要とするために、光信号とゲートとの時間調整並びに安定性及びSN(Signal-Noise)比の確保など非常に高い技術レベルが要求される。
【0006】
そこで、本発明は、光信号の時間波形を簡便に再構成できる波形再構成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係る波形再構成装置は、入力光信号の時間波形を再構成する波形再構成装置であって、前記入力光信号のパワースペクトルを取得する入力スペクトル取得部と、複数の強度の前記入力光信号について、非線形光学効果を有する光伝送媒体内を前記入力光信号が伝播した後に出力される出力光信号を計測することにより得られるパワースペクトルを計測パワースペクトルとしてそれぞれ取得する出力スペクトル取得部と、(a)前記入力光信号の強度ごとに、前記入力光信号が所与の位相スペクトルを有すると仮定して前記入力光信号の前記光伝送媒体内の伝播シミュレーションを行うことにより、前記出力光信号の計算パワースペクトルを算出し、(b)前記計算パワースペクトルと前記計測パワースペクトルとの前記入力光信号の強度ごとの差分が小さくなるように前記所与の位相スペクトルを変化させて前記伝播シミュレーションを行うことにより、前記入力光信号の位相スペクトルを探索する位相スペクトル算出部と、前記位相スペクトル算出部により探索された位相スペクトルと、前記入力スペクトル取得部により取得されたパワースペクトルとを周波数/時間変換することにより、前記入力光信号の時間波形を再構成する波形再構成部とを備え、前記位相スペクトル算出部は、非線形光学効果及び分散効果のうちの一方のみに基づいて、前記所与の位相スペクトルを変化させる、又は前記伝播シミュレーションを行う。
【0008】
この構成によれば、非線形光学効果を有する光伝送媒体内を入力光信号が伝播した後に出力される出力光信号のパワースペクトルを用いて、入力光信号の時間波形を再構成することができる。したがって、パワースペクトルを計測できれば入力光信号の時間波形を再構成できるので、光信号の時間波形を簡便に再構成することが可能となる。さらに、非線形光学効果及び分散効果のうちの一方のみに基づいて、所与の位相スペクトルを変化させる、又は伝播シミュレーションを行うことできる。したがって、非線形光学効果及び分散効果の両方に基づいて又は基づかずに、伝播シミュレーションを行う、又は所与の位相スペクトルを変化させる場合よりも、位相スペクトルの探索時間を短縮することが可能となる。
【0009】
また、前記位相スペクトル算出部は、前記入力光信号が非線形光学効果及び分散効果のうちの分散効果のみを有する媒体内を伝播して得られた信号であると仮定した場合に満たされるべき位相スペクトルの制約条件に従って、前記所与の位相スペクトルを変化させることが好ましい。
【0010】
この構成によれば、適切な制約条件に従って所与の位相スペクトルを変化させることができる。したがって、位相スペクトルの探索において、変数の数を減少させることができので、探索時間を短縮することが可能となる。
【0011】
また、前記位相スペクトル算出部は、前記入力光信号の位相スペクトルを探索する際に、前記制約条件に従って前記所与の位相スペクトルを変化させて前記伝播シミュレーションを行った後に、前記制約条件に関わらず前記所与の位相スペクトルを変化させて前記伝播シミュレーションを行うことが好ましい。
【0012】
この構成によれば、制約条件に従って所与の位相スペクトル変化させた後に、制約条件に関わらず所与の位相スペクトルを変化させることができる。したがって、位相スペクトルの探索において、探索精度の低下を抑制しつつ、探索時間を短縮することが可能となる。
【0013】
また、前記位相スペクトル算出部は、非線形光学効果と分散効果とのうち非線形光学効果に関するパラメータのみを用いて前記伝播シミュレーションを行うことが好ましい。
【0014】
この構成によれば、非線形光学効果と分散効果とのうち非線形光学効果に関するパラメータのみを用いて伝播シミュレーションを行うことができる。したがって、伝播シミュレーションが単純化されるので、計算速度を向上させることが可能となる。
【0015】
また、前記位相スペクトル算出部は、前記非線形光学効果に関するパラメータのうち、自己位相変調に関するパラメータのみを用いて、前記伝播シミュレーションを行っててもよい。
【0016】
この構成によれば、非線形光学効果に関するパラメータのうち、自己位相変調に関するパラメータのみを用いて、伝播シミュレーションを行うことができる。したがって、さらに伝播シミュレーションが単純化されるので、さらに計算速度を向上させることが可能となる。
【0017】
また、前記光伝送媒体は、光ファイバであることが好ましい。
【0018】
この構成によれば、非線形光学効果を有する光伝送媒体を簡易な構成とすることができる。
【0019】
また、本発明の一態様に係る波形再構成システムは、入力光信号の時間波形を再構成する波形再構成システムであって、前記入力光信号の強度を互いに異なる複数の強度に変化させる強度調節器と、非線形光学効果を有する光伝送媒体であって、少なくとも非線形光学効果に関するパラメータが既知である光伝送媒体と、前記強度調節器により強度が変化された前記入力光信号が前記光伝送媒体内を伝播した後に出力される出力光信号のパワースペクトルを前記入力光信号の強度ごとに計測するスペクトル計測器と、上記波形再構成装置とを備え、前記出力スペクトル取得部は、前記スペクトル計測器により計測されたパワースペクトルを計測パワースペクトルとして取得する。
【0020】
この構成によれば、非線形光学効果に関するパラメータが既知の光伝送媒体とスペクトル計測器とがあれば入力光信号の時間波形を再構成でき、光信号の時間波形を簡便に再構成することが可能となる。さらに、非線形光学効果及び分散効果のうちの一方のみに基づいて、所与の位相スペクトルを変化させる、又は伝播シミュレーションを行うことできる。したがって、非線形光学効果及び分散効果の両方に基づいて又は基づかずに、伝播シミュレーションを行う、又は所与の位相スペクトルを変化させる場合よりも、位相スペクトルの探索時間を短縮することが可能となる。
【0021】
また、前記光伝送媒体は、光ファイバであることが好ましい。
【0022】
この構成によれば、非線形光学効果を有する光伝送媒体を簡易な構成とすることができる。
【0023】
なお、本発明は、このような波形再構成装置として実現することができるだけでなく、このような波形再構成装置が備える特徴的な構成部の動作をステップとする波形再構成方法として実現することができる。さらに、波形再構成方法に含まれる各ステップをコンピュータに実行させるプログラムとして実現することもできる。そして、そのようなプログラムは、CD-ROM(Compact Disc-Read Only Memory)等の非一時的な記録媒体又はインターネット等の伝送媒体を介して配信することができるのは言うまでもない。
【発明の効果】
【0024】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、光信号の時間波形を簡便に再構成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1は、本発明の実施の形態1に係る波形再構成システムの全体的な構成を示す図である。
【図2】図2は、本発明の実施の形態1に係る波形再構成装置の特徴的な機能構成を示すブロック図である。
【図3】図3は、本発明の実施の形態1に係る波形再構成装置の処理動作を示すフローチャートである。
【図4】図4は、本発明の実施の形態1におけるスプリットステップフーリエ法を説明するための図である。
【図5】図5は、本発明の実施の形態1において分光器により計測された出力光信号のパワースペクトルの実験結果を示すグラフである。
【図6】図6は、本発明の実施の形態1において位相スペクトルの探索中における評価関数の変化の実験結果を示すグラフである。
【図7】図7は、本発明の実施の形態1において実験により得られたパワースペクトルと位相スペクトルとを示す図である。
【図8】図8は、本発明の実施の形態1において波形再構成装置により再構成された入力光信号の時間波形の実験結果を示す図である。
【図9】図9は、本発明の実施の形態1において7種類の入力光信号の強度に対応する出力光信号のパワースペクトルの実測値と計算値との比較結果を示すグラフである。
【図10】図10は、本発明の実施の形態1において分光器により計測された10種類の入力光信号の強度に対応する出力光信号のパワースペクトルのうち、位相スペクトルの算出に利用されなかった3種類の入力光信号の強度に対応する出力光信号のパワースペクトルの実測値と計算値との比較結果を示すグラフである。
【図11】図11は、本発明の実施の形態2の変形例の実験で用いた入力光信号のパワースペクトルを示すグラフである。
【図12】図12は、本発明の実施の形態2の変形例の実験において、2つの強度の入力光信号が高非線形光ファイバを伝播した後に分光器により計測されたパワースペクトルを示すグラフである。
【図13】図13は、本発明の実施の形態2の変形例に係る波形再構成装置による実験結果を示す図である。
【図14】図14は、本発明の実施の形態2の変形例に係る波形再構成装置による実験結果を示す図である。
【図15】図15は、本発明の実施の形態3の変形例に係る波形再構成装置による実験結果を示す図である。
【図16】図16は、コンピュータのハードウェア構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の一態様に係る波形再構成システム及び波形再構成装置は、ある複数のスペクトル変化の組合せを引き起こす時間波形は限定されるという非線形光学効果の特徴を利用し、入力光信号の時間波形の再構成を行う。具体的には、波形再構成システム及び波形再構成装置は、入力光信号の強度を変化させたときに得られる、非線形光学効果による複数のスペクトル変化を、実測値と計算値とで比較し、その比較結果を利用して入力光信号の時間波形の再構成を行う。時間波形の再構成に必要な位相スペクトルは、焼きなまし法などの最適化アルゴリズムに従ってシミュレーションにより計算された計算パワースペクトル(計算値)が計測パワースペクトル(実測値)に近づくように位相スペクトルを変化させていくことにより決定される。

【0027】
以下に、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも本発明の好ましい一具体例を示す。つまり、以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置及び接続形態、ステップ、ステップの順序などは、本発明の一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、本発明の最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、より好ましい形態を構成する任意の構成要素として説明される。

【0028】
(実施の形態1)
<波形再構成システムの構成>
図1は、本発明の実施の形態1に係る波形再構成システム100の全体的な構成を示す図である。この波形再構成システム100は、入力光信号の時間波形を再構成するシステムである。図1に示すように、波形再構成システム100は、強度調節器110、高非線形光ファイバ120、分光器130及び波形再構成装置140を備える。

【0029】
強度調節器110は、光信号生成装置200により生成された入力光信号の強度を変化させる。

【0030】
高非線形光ファイバ120は、非線形光学効果を有する光伝送媒体の一例である。強度調節器110により強度が変化された入力光信号は、この高非線形光ファイバ120内を伝播する。

【0031】
高非線形光ファイバ120は、非線形光学効果に関するパラメータが既知のファイバである。本実施の形態では、高非線形光ファイバ120は、分散効果に関するパラメータも既知のファイバである。具体的には、例えば、2次及び3次に加え、4次分散に関するパラメータが既知である。

【0032】
分光器130は、スペクトル計測器の一例であり、出力光信号を波長ごとの光に分解し、波長ごとに分解した光をO/E変換及びA/D変換することにより、デジタル値で表されたパワースペクトルを生成する。すなわち、分光器130は、出力光信号のパワースペクトルを計測する。ここで出力光信号とは、入力光信号が高非線形光ファイバ120内を伝播した後に出力される光信号である。

【0033】
波形再構成装置140は、例えば、図16に示すようなコンピュータにより実現され、入力光信号の時間波形を再構成する。波形再構成装置140の詳細は図2を用いて後述する。

【0034】
光信号生成装置200は、入力光信号を生成する。具体的には、光信号生成装置200は、例えば、MLLD(Mode-Locked Laser Diode)と、SMF(Single Mode Fiber)と、EDFA(Erbium Doped Fiber Amplifier)とを備える。光信号生成装置200は、MLLDから出力された光パルスを、SMFにより分散補償し、EDFAにより増幅する。

【0035】
<波形再構成装置の構成>
図2は、本発明の実施の形態1に係る波形再構成装置140の特徴的な機能構成を示すブロック図である。図2に示すように、入力スペクトル取得部141、出力スペクトル取得部142、位相スペクトル算出部143及び波形再構成部144を備える。

【0036】
入力スペクトル取得部141は、光信号生成装置200により生成された入力光信号のパワースペクトルを取得する。例えば、光信号生成装置200により生成された入力光信号のパワースペクトルが既知である場合、入力スペクトル取得部141は、記憶手段等に格納されたパワースペクトルのデータを読み出すことにより、入力光信号のパワースペクトルを取得する。一方、光信号生成装置200により生成された入力光信号のパワースペクトルが既知でない場合、入力スペクトル取得部141は、図示していない分光器等を用いて計測された入力光信号のパワースペクトルを取得する。なお、入力スペクトル取得部141が取得するパワースペクトルとは、入力光信号の波長ごとの光の強度を示すデータである。

【0037】
出力スペクトル取得部142は、入力光信号が高非線形光ファイバ120内を伝播した後に出力される出力光信号のパワースペクトルであって、分光器130により計測されたパワースペクトルを計測パワースペクトルとして複数の強度の入力光信号ごとに取得する。ここで、計測パワースペクトルとは、出力光信号の波長ごとの光の強度を示すデータである。

【0038】
位相スペクトル算出部143は、入力光信号の強度ごとに、入力光信号が所与の位相スペクトルを有すると仮定して入力光信号の高非線形光ファイバ120内の伝播シミュレーションを行うことにより、出力光信号の計算パワースペクトルを算出する。そして、位相スペクトル算出部143は、計算パワースペクトルと、計測パワースペクトルとの強度ごとの差分値が小さくなるように所与の位相スペクトルを変化させて伝播シミュレーションを行うことにより、入力光信号の位相スペクトルを探索する。例えば、位相スペクトル算出部143は、所定のアルゴリズムに従って所与の位相スペクトルを変化させる。

【0039】
ここで、所定のアルゴリズムとは、与えられた関数の最適解を探索するためのアルゴリズムである。例えば、所定のアルゴリズムは、焼きなまし法、共役方向法、共役勾配法、遺伝的アルゴリズムなどである。なお、所定のアルゴリズムは、これらのアルゴリズムに限定される必要はなく、どのようなアルゴリズムであってもよい。

【0040】
なお、位相スペクトル算出部143が探索する位相スペクトルとは、光信号の波長ごとの位相を示すデータである。

【0041】
また、位相スペクトル算出部143により実行される伝播シミュレーションは、例えば、スプリットステップフーリエ法などによるパルス伝播シミュレーションである。すなわち、位相スペクトル算出部143により実行される伝播シミュレーションは、高非線形光ファイバ120に固有の既知のパラメータを利用して、出力光信号のパワースペクトルを計算するための光信号伝播シミュレーションである。ここで用いられるパラメータは、光学非線形効果に関するパラメータを含む。本実施の形態では、パラメータは、分散効果に関するパラメータも含む。

【0042】
また、所与の位相スペクトルとは、伝播シミュレーションにおいて与えられる位相スペクトルであって、入力光信号の仮想的な位相スペクトルである。つまり、所与の位相スペクトルとは、伝播シミュレーションで用いられる位相スペクトルである。最も評価が高い伝播シミュレーションで用いられた所与の位相スペクトルが、入力光信号の位相スペクトルとして決定される。

【0043】
波形再構成部144は、位相スペクトル算出部143により探索された位相スペクトルと、入力スペクトル取得部141により取得されたパワースペクトルとを周波数/時間変換することにより、入力光信号の時間波形を再構成する。具体的には、波形再構成部144は、例えば、位相スペクトルとパワースペクトルとを逆フーリエ変換することにより、時間波形を再構成する。

【0044】
<波形再構成装置の処理動作>
次に、以上のように構成された波形再構成装置140における各種動作について説明する。

【0045】
図3は、本発明の実施の形態1に係る波形再構成装置140における動作を示すフローチャートである。

【0046】
まず、入力スペクトル取得部141は、光信号生成装置200により生成された入力光信号のパワースペクトルを取得する(ステップS101)。続いて、出力スペクトル取得部142は、分光器130により計測された、複数の強度の入力光信号にそれぞれ対応する出力光信号のパワースペクトルを計測パワースペクトルとして取得する(ステップS102)。

【0047】
次に、位相スペクトル算出部143は、伝播シミュレーションで用いられる所与の位相スペクトルの初期値を設定する(ステップS103)。例えば、位相スペクトル算出部143は、任意の位相スペクトルを初期値として設定する。また、例えば、位相スペクトル算出部143は、入力光信号が予め定められた型のパルスであると仮定したときに得られる位相スペクトルを初期値として設定してもよい。

【0048】
そして、位相スペクトル算出部143は、入力光信号の強度ごとに、入力光信号が所与の位相スペクトルを有すると仮定して入力光信号の高非線形光ファイバ120内の伝播シミュレーションを行うことにより、出力光信号の計算パワースペクトルを算出する(ステップS104)。伝播シミュレーションの詳細は後述する。

【0049】
次に、位相スペクトル算出部143は、位相スペクトルの探索を終了するか否かを判定する(ステップS105)。例えば、位相スペクトル算出部143は、計算された複数の強度ごとの計算パワースペクトルと、分光器130により計測された(ステップS102において取得された)複数の強度ごとの計測パワースペクトルとの、各強度における差分値の合計が所定閾値以下か否かに基づいて、探索を終了するか否かを判定する。また例えば、位相スペクトル算出部143は、計算パワースペクトルと計測パワースペクトルとの差分の変化率に基づいて、探索を終了するか否かを判定してもよい。また例えば、位相スペクトル算出部143は、伝播シミュレーションの反復回数が上限回数に達したか否かに基づいて、探索を終了するか否かを判定してもよい。

【0050】
ここで、探索を終了しないと判定された場合(ステップS105のNo)、位相スペクトル算出部143は、計算パワースペクトルと計測パワースペクトルとの差分が小さくなるように所与の位相スペクトルを変化させる(ステップS106)。具体的には、位相スペクトル算出部143、伝播シミュレーションに用いる新たな所与の位相スペクトルを、例えば焼きなまし法に従って設定する。そして、再度、ステップS104からの処理が繰り返される。

【0051】
一方、探索を終了すると判定された場合(ステップS105のYes)、位相スペクトル算出部143は、最も小さな差分が得られた伝播シミュレーションで用いられた所与の位相スペクトルを入力光信号の位相スペクトルとして決定する(ステップS107)。

【0052】
このように、位相スペクトル算出部143は、探索を終了すると判定されるまで、所与の位相スペクトルを変化させながら伝播シミュレーションを繰り返すことにより、入力光信号の位相スペクトルを探索する。つまり、位相スペクトル算出部143は、計算パワースペクトルと計測パワースペクトルとの強度ごとの差分を評価関数として用いて、位相スペクトルの最適解を探索する。

【0053】
最後に、入力光信号のパワースペクトルと、決定された位相スペクトルとを周波数/時間変換することにより、入力光信号の時間波形を再構成し(ステップS108)、処理を終了する。

【0054】
以上の処理により、波形再構成装置140は、非線形光学効果を有する光伝送媒体内を入力光信号が伝播した後に出力される出力光信号のパワースペクトルを用いて、入力光信号の時間波形を簡便に再構成することが可能となる。

【0055】
<伝播シミュレーション>
次に、スプリットステップフーリエ法による伝播シミュレーションの詳細について説明する。まず、高非線形光ファイバ120内を伝播する光信号に影響を与える分散効果と非線形光学効果とについて説明する。

【0056】
分散効果とは、光と物質との相互作用が光の波長によって異なることに起因する現象である。分散効果によって、入力光信号の伝播速度が周波数に応じて変化する。つまり、入力光信号に含まれる各周波数成分の位相がずれ、入力光信号の時間波形が広がる。

【0057】
また、非線形光学効果とは、光(例えば超短光パルスのような非常に強い強度を有する光)と物質とが相互作用することにより引き起こされる非線形の多様な現象である。非線形光学効果としては、自己位相変調、自己急峻化、及びラマン応答などが挙げられる。

【0058】
まず、自己位相変調について説明する。光ファイバなどの光伝送媒体の屈折率は、その中を伝播する光信号の強度に比例してわずかに変化するため、光信号自身に位相変調が生じる。このようにして生じる位相変調を自己位相変調という。

【0059】
次に、自己急峻化について説明する。自己急峻化とは、時間波形が対称である入力光信号が光伝送媒体中を伝播するにつれて、時間波形が非対称となり、ピークが後ろの方へ移る現象である。自己急峻化は、群速度が強度に依存することから引き起こされる。

【0060】
最後に、ラマン応答について説明する。物質に光が入射した場合、入射光と等しい周波数をもつ強い弾性散乱(レーリー散乱)光と、入射光の周波数からわずかにずれた周波数をもつきわめて弱い非弾性散乱光とが散乱される。非弾性散乱光は、物質中の振動する原子やイオンにより散乱されるラマン散乱光と、物質中の音波によって散乱されるブリユアン散乱光とに分けられる。ラマン散乱において入射光の強度がある閾値を超えた場合にラマン散乱光が誘導放出により強く発生する現象を誘導ラマン散乱という。この誘導ラマン散乱により光伝送媒体内では光の高周波数成分から低周波数成分へエネルギーが移され、低周波成分が強められる。このような現象をラマン応答と呼ぶ。

【0061】
以上のような分散効果と非線形光学効果との影響を受けて高非線形光ファイバ120内を伝播する入力光信号の伝播方程式は、式(1)で表される。

【0062】
【数1】
JP0006025013B2_000002t.gif

【0063】
ここで、Eは光の電場成分を表し、zは高非線形光ファイバ120内の距離を表す。また、Dは分散効果とロスとを表し、Nは非線形光学効果を表す。D及びNは、次の式(2)及び式(3)で表される。

【0064】
【数2】
JP0006025013B2_000003t.gif
【数3】
JP0006025013B2_000004t.gif

【0065】
ここで、α、β、γは、高非線形光ファイバ120に固有のパラメータを表す。具体的には、αは、光の強度のロスに関するパラメータを表す。また、βは、各次数の分散効果に関するパラメータを表す。また、γは、非線形光学効果に関するパラメータを表す。なお、Tは時間を表す。

【0066】
式(2)の右辺において、第1項は2次分散を表し、第2項は3次分散を表し、第3項は4次分散を表し、最後の項は高非線形光ファイバ120内を伝播する光の強度のロスを表している。また、式(3)の右辺において、第1項は自己位相変調を表し、第2項は自己急峻化を表し、第3項はラマン応答を表している。

【0067】
この伝播方程式には、E自体に依存する項が含まれている。そのため、分散項(D)と非線形項(N)とを同時に計算することは困難である。そこで、スプリットステップフーリエ法では、図4に示すように、光信号の伝播方向に沿って高非線形光ファイバ120を短いステップに仮想的に区切る。そして、ステップごとに分散項と非線形項とを順に計算することにより、高非線形光ファイバ120中を伝播する光信号の近似解を求めることができる。

【0068】
<実験結果>
次に、本実施の形態に係る波形再構成システム100により得られた実験結果について説明する。

【0069】
本実験では、光信号生成装置200は、MLLDから10GHzの周期で出力された1.3psの光パルスを、65mのSMFにより分散補償した後に、EDFAにより増幅した。このようにEDFAにより増幅された光パルスを、光信号生成装置200は入力光信号として出力した。

【0070】
強度調節器110には、可変光減衰器(VOA:Variable Optical Attenuator)を用いた。強度調節器110は、電力を17.2mWから10.3mWずつ上げていくことにより、光信号生成装置200により生成された入力光信号の強度を10種類の異なる強度に変更した。そして、強度調節器110は、強度を変更した入力光信号を高非線形光ファイバ120に出力した。

【0071】
高非線形光ファイバ120には、2次及び3次に加え、4次分散まで考慮した、表1に示すパラメータを有する光ファイバを用いた。

【0072】
【表1】
JP0006025013B2_000005t.gif

【0073】
分光器130により計測された、入力光信号の10種類の強度に対応する出力光信号のパワースペクトルを、図5の(a)~(j)に示す。図において、グラフの横軸は波長(Wavelength(nm))を示し、縦軸は強度(Intensity(a.u.))を示す。また、図5の(a)~(j)に示すパワースペクトルのそれぞれは、強度調節器110の電力が順に17.2mW、27.5mW、37.8mW、48.1mW、58.4mW、68.7mW、79.0mW、89.4mW、99.7mW、及び110.0mWであるときの出力光信号のパワースペクトルである。

【0074】
本実験では、波形再構成装置140が備える位相スペクトル算出部143は、7種類の強度に対応する(図5の(a)~(g)に示す)出力光信号のパワースペクトルの実測値と、シミュレーションにより得られる出力光信号のパワースペクトルの計算値との差分値を評価関数として、焼きなまし法に従って位相スペクトルを変化させながら評価関数が最小となる位相スペクトルを探索した。その際、位相スペクトルの初期値には、オートコリレーションにより求めたパルス幅を元にGerchberg-Saxton法によりSech型光パルスに近似した際の位相スペクトルを用いた。このような位相スペクトルを初期値として利用することにより、早期に評価関数を収束させることが可能となった。

【0075】
図6は、位相スペクトルの探索中における評価関数の変化の実験結果を示すグラフである。図6において、グラフの横軸は評価関数の繰り返し計算回数(Number of iteration times)を示し、縦軸は評価関数の値(Evaluation function(a.u.))を示す。

【0076】
図6から明らかなように、比較的早期に評価関数が一定値に収束している。位相スペクトル算出部143は、評価関数が一定値に収束したとき(例えば、図6における2500回目)の位相スペクトルを入力光信号の位相スペクトルと決定した。

【0077】
図7は、実験により得られたパワースペクトルと位相スペクトルとを示す図である。図7において、横軸は波長(Wavelength(nm))を示す。また、縦軸は左側が強度(Intensity(a.u.))を示し、右側が位相(Phase(rad))を示す。ここで、パワースペクトル601が左側縦軸の強度に対応し、位相スペクトル602が右側縦軸の位相に対応する。

【0078】
波形再構成装置140が備える波形再構成部144は、図7のように算出された位相スペクトル602と、入力光信号のパワースペクトル601とを用いて、入力光信号の時間波形を再構成する。

【0079】
図8は、波形再構成装置140により再構成された入力光信号の時間波形の実験結果を示す図である。図8において、横軸は時間(Delay time(ps))を示し、縦軸は強度(Intensity(a.u.))を示す。

【0080】
図8から明らかなように、再構成された入力光信号の時間波形は、一般的なパルス光として近似されるSech型又はGaussian型の時間波形とは異なる。すなわち、波形再構成装置140は、一般的な近似により得られる時間波形よりも正確な時間波形を再構成できたと考えられる。

【0081】
次に、上記実験において位相スペクトル算出部143により実行されたシミュレーションと算出された位相スペクトルとの妥当性を検証する。

【0082】
図9は、7種類の入力光信号の強度に対応する出力光信号のパワースペクトルの実測値と計算値との比較結果を示すグラフである。なお、パワースペクトルの計算値は、繰り返し計算により評価関数が収束したときに得られたパワースペクトルの値である。また、入力光信号の7種類の強度は、強度調節器110の電力が17.2mW、27.5mW、37.8mW、48.1mW、58.4mW、68.7mW、及び79.0mWのときの強度である。

【0083】
図9の(a)~(g)に示すように、実測値801と計算値802とは略一致している。したがって、本実験において、入力光信号の時間波形に敏感に反応する、自己位相変調によるパワースペクトルの変化を正確にシミュレーションできていることが分かる。

【0084】
図10は、分光器130により計測された10種類の入力光信号の強度に対応する出力光信号のパワースペクトルのうち、位相スペクトルの算出に利用されなかった3種類の入力光信号の強度に対応する出力光信号のパワースペクトルの実測値と計算値との比較結果を示すグラフである。なお、パワースペクトルの計算値は、位相スペクトル算出部143により算出された入力光信号の位相スペクトルを用いてシミュレーションしたときの値である。また、位相スペクトルの算出に利用されなかった3種類の入力光信号の強度は、強度調節器110の電力が89.4mW、99.7mW、及び110.0mWのときの強度である。

【0085】
図10の(a)~(c)に示すように、実測値901と計算値902とは略一致している。つまり、焼きなまし法における評価関数の対象としなかった入力光信号の強度においても、位相スペクトル算出部143により算出された位相スペクトルを用いて出力光信号のパワースペクトルが正確に計算されている。したがって、位相スペクトル算出部143により算出された入力光信号の位相スペクトルの精度が高いことがわかる。つまり、位相スペクトル算出部143により算出された入力光信号の位相スペクトルを用いて再構成される入力光信号の時間波形の精度も高いということができる。

【0086】
以上のように、本実施の形態に係る波形再構成システム100及び波形再構成装置140は、自己位相変調を誘起する光ファイバ内を入力光信号が伝播した後に出力される出力光信号のパワースペクトルを用いて、入力光信号の時間波形を再構成することができる。したがって、波形再構成システム100及び波形再構成装置140では、時間分解分光データが必ずしも必要ではない。すなわち、波形再構成システム100は、光信号の時間波形を再構成するために、時間分解分光データを得るために必要な超高速時間ゲート又は参照光源が必ずしも備える必要がないので、光信号の時間波形を簡便に再構成することが可能となる。

【0087】
さらに、波形再構成システム100及び波形再構成装置140は、公知の技術である焼きなまし法に従って位相スペクトルを変化させながら、所定閾値以下となる差分値を探索することができるので、比較的短時間に精度の高い位相スペクトルを算出することが可能となる。

【0088】
(実施の形態2)
次に、本発明の実施の形態2について説明する。

【0089】
本実施の形態では、非線形光学効果及び分散効果のうちの分散効果のみに基づいて、所与の位相スペクトルを変化させる点が、実施の形態1と異なる。具体的には、波形再構成装置は、位相スペクトルの探索において探索時間を短縮するために、制約条件に従って所与の位相スペクトルを変化させる。以下、本実施の形態に係る波形再構成装置について、実施の形態1と異なる点を中心に説明する。

【0090】
なお、本実施の形態に係る波形再構成システムの構成と、波形再構成装置の機能構成及び処理動作とは、実施の形態1の図1~図3と同様であるので図示を省略する。

【0091】
本実施の形態において、位相スペクトル算出部143は、非線形光学効果及び分散効果のうち分散効果のみに基づいて、所与の位相スペクトルを変化させる。具体的には、位相スペクトル算出部143は、制約条件に従って、所与の位相スペクトルを変化させる。この制約条件とは、入力光信号が非線形光学効果及び分散効果のうちの分散効果のみを有する媒体内を伝播して得られた信号であると仮定した場合に満たされるべき位相スペクトルの制約条件である。

【0092】
ここで、制約条件ついてより詳細に説明する。

【0093】
レーザーから発振した直後の超短光パルスの波形は、歪みのないフーリエ変換限界パルス(TLP:Transform-LimitedPulse)であると仮定し、かつ、再構成の対象となる入力光信号は、TLPが媒体内を伝播した後に出力される光信号であると仮定する。この場合、TLPは、式(1)に従って媒体内を伝播する。

【0094】
しかし、TLPが伝播する媒体が一般的な媒体(つまり、特に高い非線形光学性を有していない媒体)であれば、非線形光学効果がTLPの伝播に及ぼす影響は小さい。つまり、式(1)においてNを省略して伝播計算を行っても、計算結果は大きく変わらない。したがって、入力光信号は、分散効果のみを有する媒体内をTLPが伝播した後に出力される光信号として表すことができる。ここで媒体内における分散効果は、テイラー展開により式(4)で表される。

【0095】
【数4】
JP0006025013B2_000006t.gif

【0096】
式(4)において、0次及び1次の項は、時間波形の時間シフトに影響を与えるだけであり、位相に影響を与えない。また、一般的に光ファイバなどの媒体内の光信号の伝播シミュレーションでは、4次分散まで考慮されれば十分である。そこで、分散効果によって歪んだ入力光信号の位相は、式(5)のような多項式関数として表すことができる。

【0097】
【数5】
JP0006025013B2_000007t.gif

【0098】
位相スペクトル算出部143は、この式(5)が満たされるように、所与の位相スペクトルを設定する。つまり、位相スペクトル算出部143は、式(5)で示す制約条件に従って、所与の位相スペクトルを変化させる。

【0099】
式(5)によれば、位相スペクトルは、a、b、cの3個の変数で表される。一方、実施の形態1では、位相スペクトルは、周波数成分ごとの変数(例えば512個の変数)で表される。つまり、本変形例によれば、位相スペクトルの探索において、実施の形態1よりも、変数の数を減少させることができ、探索空間を縮小することができる。したがって、本変形例によれば、位相スペクトルの探索時間を短縮することが可能となる。

【0100】
以上のように、本実施の形態に係る波形再構成装置140によれば、適切な制約条件に従って所与の位相スペクトルを変化させることができる。したがって、位相スペクトルの探索において、変数の数を減少させることができるので、探索時間を短縮することが可能となる。

【0101】
なお、ここでは、制約条件として、2次分散から4次分散までを考慮していたが、さらに高次の分散まで考慮しても構わない。例えば、位相スペクトルを探索する際に、制約条件として考慮する分散の次数を段階的に増やしても構わない。これにより、探索空間を段階的に広げることができ、探索時間の短縮と探索精度の向上とを図ることが可能となる。

【0102】
(実施の形態2の変形例)
次に、本発明の実施の形態2の変形例について説明する。

【0103】
実施の形態2では、入力光信号が分散効果のみを有する媒体内を伝播した後に出力される信号であると仮定していた。したがって、入力光信号が分散効果以外の影響を受けていた場合、探索精度が低下する。そこで、本変形例では、位相スペクトルの探索精度を向上させるために、実施の形態1及び実施の形態2の両方の方法を組み合わせて、位相スペクトルの探索を行う。

【0104】
具体的には、位相スペクトル算出部143は、入力光信号の位相スペクトルを探索する際に、制約条件に従って所与の位相スペクトルを変化させて伝播シミュレーションを行った後に、制約条件に関わらず所与の位相スペクトルを変化させて伝播シミュレーションを行う。ここで、制約条件は、実施の形態2の制約条件と同様である。

【0105】
つまり、位相スペクトル算出部143は、まず、実施の形態2に示すように制約条件に従って所与の位相スペクトルを変化させて、位相スペクトルを探索する。その後、位相スペクトル算出部143は、探索結果を所与の位相スペクトルの初期値として用いて、実施の形態1に示すように制約条件に関わらず位相スペクトルを変化させて、位相スペクトルを探索する。

【0106】
以上のように、本変形に係る波形再構成装置140によれば、制約条件に従って所与の位相スペクトル変化させた後に、制約条件に関わらず所与の位相スペクトルを変化させることができる。したがって、位相スペクトルの探索において、探索精度の低下を抑制しつつ、探索時間を短縮することが可能となる。

【0107】
<実験結果>
次に、本変形例に係る波形再構成装置140により得られた実験結果について説明する。

【0108】
本実験では、光信号生成装置200として、中心波長1546nm、繰り返し周波数25MHzの超短光パルスを生成するファイバレーザを用いた。また、高非線形光ファイバ120として、10mの長さのものを用い、実施の形態1よりも大きな非線形光学効果を有する光ファイバ(γ=21/W/km)を用いた。そして、生成された超短光パルスの強度を非線形光学効果が起きないほど弱めた光信号を入力光信号として用いた。

【0109】
図11は、本発明の実施の形態2の変形例の実験で用いた入力光信号のパワースペクトルを示すグラフである。図12の(a)及び(b)は、2つの強度の入力光信号が高非線形光ファイバ120を伝播した後に分光器130により計測されたパワースペクトルを示すグラフである。図12に示すように、本実験では、入力光信号の強度を2段階に変化させた。

【0110】
評価関数としては、分光器130で計測された計測パワースペクトルと、所与の位相スペクトルを用いた伝播シミュレーションによって得られた計算パワースペクトルとの周波数ごとの差分の和を正規化して用いた。位相スペクトル算出部143は、この評価関数が小さくなるように所与の位相スペクトルを変化させながら伝播シミュレーションを繰り返すことにより、位相スペクトルを探索した。このとき、所与の位相スペクトルの初期値として、全周波数で成分値が0の位相スペクトルを用いた。また、探索時の伝播シミュレーションの反復回数を1000回とした。

【0111】
このような条件で行われた実験結果を図13及び図14を用いて説明する。

【0112】
図13及び図14は、本発明の実施の形態2の変形例に係る波形再構成装置による実験結果を示す図である。

【0113】
図13において、横軸は波長を示し、縦軸は強度(左側)又は位相(右側)を示す。そして、破線は、パワースペクトルを表し、強度の縦軸に対応する。また、実線は、位相スペクトルを表し、位相の縦軸に対応する。また、図14において、横軸は反復回数を示し、縦軸は評価関数を示す。

【0114】
また、図13及び図14において、(a)は、実施の形態1に係る探索方法によって得られた実験結果を示し、(b)は、本変形例に係る探索方法によって得られた実験結果を示す。

【0115】
なお、実施の形態1に係る探索方法では、所与の位相スペクトルの各周波数成分値は、1000回の伝播シミュレーションのすべてで互いに独立して設定された。また、本変形例に係る探索方法では、所与の位相スペクトルの各周波数成分値は、1000回のうちのはじめの52回の伝播シミュレーションで、式(5)を満たすように各周波数成分値が設定された。また、残りの948回の伝播シミュレーションで、所与の位相スペクトルの各周波数成分値は、式(5)に関わらず互いに独立して設定された。

【0116】
図13及び図14から明らかなように、本変形例に係る探索方法では、実施の形態1に係る探索方法よりも、解が収束しやすくなり、探索速度が向上している。これは、制約条件によって、適切に探索空間を小さくすることができているからであると考えられる。

【0117】
なお、本実験において、実施の形態1に係る探索方法で1000回の伝播シミュレーションによって得られた評価関数の値は、本変形例に係る方法で293回の伝播シミュレーションによって得られた評価関数の値と同じであった。つまり、本変形例に係る探索方法は、実施の形態1に係る探索方法よりも約3.4倍の高速化を実現することができ、探索時間を短縮することができた。

【0118】
また、本実験のように、所与の位相スペクトルの初期値が最適解と大きく離れている場合には、本変形例に係る探索方法の方が、実施の形態1に係る探索方法よりも探索精度が向上する。これは、制約条件によって適切に探索空間を小さくすることができるので、局所的最適解に収束することを抑制することができるからであると考えられる。

【0119】
以上のように、本実験により、制約条件に従って所与の位相スペクトルを変化させることにより、探索精度を向上させることができるとともに、探索時間を短縮することができることを確認できた。

【0120】
(実施の形態3)
次に、本発明の実施の形態3について説明する。

【0121】
本実施の形態では、非線形光学効果及び分散効果のうち非線形光学効果のみに基づいて伝播シミュレーションを行う点が、実施の形態1と主として異なる。以下、本実施の形態に係る波形再構成装置について、実施の形態1と異なる点を中心に説明する。

【0122】
なお、本実施の形態に係る波形再構成システムの構成と、波形再構成装置の機能構成及び処理動作とは、実施の形態1の図1~図3と同様であるので図示を省略する。

【0123】
本実施の形態において、位相スペクトル算出部143は、非線形光学効果及び分散効果のうち非線形光学効果のみに基づいて、伝播シミュレーションを行う。具体的には、位相スペクトル算出部143は、非線形光学効果と分散効果とのうち非線形光学効果に関するパラメータのみを用いて伝播シミュレーションを行う。具体的には、位相スペクトル算出部143は、例えば、式(2)において2次分散、3次分散及び4次分散を表す項(第1項~第3項)を省略して、伝播シミュレーションを行う。つまり、位相スペクトル算出部143は、以下の式(6)~式(8)に基づいて、伝播シミュレーションを行う。

【0124】
【数6】
JP0006025013B2_000008t.gif

【0125】
なお、非線形光学効果が大きい光伝送媒体内の光信号の伝播では、非線形光学効果が支配的であり、分散効果は限定的である。つまり、入力光信号の高非線形光ファイバ120内の伝播シミュレーションに対して分散効果が与える影響は小さい。したがって、非線形光学効果に関するパラメータのみを用いて、入力光信号の高非線形光ファイバ120内の伝播シミュレーションを行っても、シミュレーションの精度が低下することを抑制することができる。

【0126】
また、このように分散効果を表す項を省略することで、式(6)において、DとNとを同時に計算することが可能となる。つまり、位相スペクトル算出部143は、スプリットステップフーリエ法を用いずに、1度の計算で伝播シミュレーションを行うことができる。したがって、伝播シミュレーションで計算速度を大幅に向上させることが可能となる。

【0127】
なお、高非線形光ファイバ120は、分散効果が「0」となる波長(以下、「ゼロ分散波長」という)を有する。入力光信号の周波数成分がゼロ分散波長に集中するほど、分散効果が光信号の伝播に与える影響が小さくなる。したがって、入力光信号の中心波長と高非線形光ファイバ120のゼロ分散波長との差分が小さいほど、分散効果を省略しても高い精度で伝播シミュレーションを行うことができる。

【0128】
したがって、入力光信号の中心波長が既知である場合には、その中心波長と近似する値のゼロ分散波長を有する高非線形光ファイバ120を用いることが好ましい。これにより、非線形光学効果と分散効果とのうち非線形光学効果に関するパラメータのみを用いて伝播シミュレーションを行った場合に、シミュレーション結果の精度の低下を抑制することができる。

【0129】
なお、実験によれば、高非線形光ファイバ120のゼロ分散波長が1550nmである場合に、入力光信号の中心波長が1520nm~1580nmであれば、シミュレーションの精度の低下を効果的に抑制することができた。

【0130】
以上のように、本実施の形態に係る波形再構成装置140によれば、非線形光学効果と分散効果とのうち非線形光学効果に関するパラメータのみを用いて伝播シミュレーションを行うことができる。したがって、伝播シミュレーションが単純化されるので、計算速度を向上させることが可能となる。

【0131】
(実施の形態3の変形例)
次に、実施の形態3の変形例について説明する。

【0132】
上記実施の形態3では、自己位相変調、自己急峻化、及びラマン応答を考慮して伝播シミュレーションを行った。自己急峻化及びラマン応答を表す項(式(8)の右辺の第2項及び第3項)には、時間波形の微分が含まれている。時間波形の微分とは、ある時間における時間波形の傾きに相当する。つまり、パルス幅が狭いほど、自己急峻化及びラマン応答が伝播に及ぼす影響が大きくなる。逆に言えば、パルス幅が広い場合には、自己急峻化及びラマン応答の項を省略して伝播シミュレーションを行っても、シミュレーション結果は大きく変化しないことが考えられる。

【0133】
そこで、本変形例において、位相スペクトル算出部143は、非線形光学効果に関するパラメータのうち、自己位相変調に関するパラメータのみを用いて、伝播シミュレーションを行う。具体的には、位相スペクトル算出部143は、例えば、式(3)において自己急峻化及びラマン応答を表す項(第2項及び第3項)を省略した式を用いて、伝播シミュレーションを行う。つまり、位相スペクトル算出部143は、以下の式(9)~式(11)に基づいて、伝播シミュレーションを行う。

【0134】
【数7】
JP0006025013B2_000009t.gif

【0135】
以上のように、本変形例に係る波形再構成装置140によれば、上記実施の形態3よりもさらに伝播シミュレーションを簡便化でき、伝播シミュレーションの計算速度をさらに向上させることができる。特に、入力光信号のパルス幅が広い場合には、シミュレーション精度の低下も抑制することができ、効果的である。なお、実験によれば、パルス幅が500fs以上であれば、シミュレーションの精度の低下を効果的に抑制することができた。

【0136】
<実験結果>
次に、本変形例に係る波形再構成装置140により得られた実験結果について説明する。ここでは、実施の形態2の変形例における実験と同様の条件で実験を行った。なお、本実験において、高非線形光ファイバ120のゼロ分散波長は1550nmであった。なお、探索方法としては、実施の形態2の変形例に係る探索方法を用いた。つまり、はじめに制約条件に従って所与の位相スペクトルを変化させた。

【0137】
図15は、本発明の実施の形態3の変形例に係る波形再構成装置による実験結果を示す図である。

【0138】
図15において、横軸は波長を示し、縦軸は強度(左側)又は位相(右側)を示す。そして、破線は、パワースペクトルを表し、強度の縦軸に対応する。また、実線は、位相スペクトルを表し、位相の縦軸に対応する。また、図15の(a)は、スプリットステップフーリエ法に基づく伝播シミュレーションによる実験結果を示す。また、図15の(b)は、本変形例に係る伝播シミュレーションによる実験結果を示す。

【0139】
スプリットステップフーリエ法に基づく伝播シミュレーションでは、式(1)~式(3)に基づいて計算を行った。また、本変形例に係る伝播シミュレーションでは、式(9)~式(11)に基づいて計算を行った。

【0140】
図15に示すように、伝播シミュレーションを繰り返して探索された位相スペクトルは、2つの伝播シミュレーションでほぼ同じであった。つまり、分散効果などを無視して伝播シミュレーションを行っても、探索結果はあまり変わらなかった。

【0141】
また、本変形例に係る伝播シミュレーションでは、スプリットステップフーリエ法に基づく伝播シミュレーションよりも、大幅に計算時間を削減することができた。具体的には、1000回の伝播シミュレーションに要した時間が、スプリットステップフーリエ法に基づく伝播シミュレーションでは9970msであったのに対して、本変形例に係る伝播シミュレーションではわずか567msであった。

【0142】
つまり、本実験により、非線形光学効果のうち自己位相変調のみを考慮して伝播シミュレーションを行うことにより、精度の低下を抑制しつつ、計算時間を短縮することができることを確認できた。

【0143】
以上、本発明の一態様に係る波形再構成装置及び波形再構成システムについて、実施の形態に基づいて説明したが、本発明は、これらの実施の形態に限定されるものではない。本発明の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を本実施の形態に施したもの、あるいは異なる実施の形態における構成要素を組み合わせて構築される形態も、本発明の範囲内に含まれる。

【0144】
例えば、上記実施の形態2又はその変形例と、上記実施の形態3又はその変形例とは、組みわせられてもよい。つまり、波形再構成装置は、制約条件に従って所与の位相スペクトルを変化させながら、非線形光学効果及び分散効果のうち非線形光学効果のパラメータのみを用いて伝播シミュレーションを繰り返してもよい。これにより、位相スペクトルの探索時間をさらに短縮することが可能となる。

【0145】
また、上記実施の形態1~3において、波形再構成システムは、高非線形光ファイバを備えていたが、光ファイバとは異なる光伝送媒体を備えてもよい。つまり、波形再構成システムは、非線形光学効果を有する光伝送媒体を備えればよい。

【0146】
また、本発明は、このような波形再構成装置の特徴的な構成要素が行う処理を実行する波形再構成方法として実現することもできる。また、その波形再構成方法を図16に示すようなコンピュータに実行させるためのプログラムとして実現することもできる。そして、そのようなプログラムは、CD-ROM等の記録媒体、インターネット等の伝送媒体を介して配信することができる。

【0147】
図16は、コンピュータのハードウェア構成の一例を示す図である。波形再構成方法をコンピュータに実行させるためのプログラムは、例えば、コンピュータが読取可能な媒体であるCD-ROM515に記憶され、CD-ROM装置514を介して読み出される。また例えば、波形再構成方法をコンピュータに実行させるためのプログラムは、有線若しくは無線ネットワーク、又は放送などを介して伝送される。

【0148】
コンピュータ500は、CPU(Central Processing Unit)501、ROM(Read Only Memory)502、RAM(Random Access Memory)503、ハードディスク504、通信インタフェース505等を備える。

【0149】
CPU501は、CD-ROM装置514を介して読み出されたプログラム、又は通信インタフェース505を介して受信したプログラムを実行する。具体的には、CPU501は、CD-ROM装置514を介して読み出されたプログラム、又は通信インタフェース505を介して受信したプログラムをRAM503に展開する。そして、CPU501は、RAM503に展開されたプログラム中のコード化された各命令を実行する。

【0150】
ROM502は、コンピュータ500の動作に必要なプログラム及びデータを記憶する読み出し専用メモリである。RAM503は、CPU501がプログラムを実行するときにワークエリアとして使用される。具体的には、RAM503は、例えば、プログラム実行時のパラメータなどのデータを一時的に記憶する。ハードディスク504は、プログラム、データなどを記憶する。

【0151】
通信インタフェース505は、ネットワークを介して他のコンピュータとの通信を行なう。バス506は、CPU501、ROM502、RAM503、ハードディスク504、通信インタフェース505、ディスプレイ511、キーボード512、マウス513及びCD-ROM装置514を相互に接続する。
【産業上の利用可能性】
【0152】
本発明の一態様に係る波形再構成装置及び波形再構成システムは、光通信等の研究分野で用いられる超高速光パルスの時間波形の測定装置として利用することができる。特に近年、位相を用いた光通信符号の利用及び光パルスの状態に敏感な非線形光信号処理が盛んに研究又は利用されるようになってきていることから、簡便に正確な時間波形を測定可能な波形再構成装置及び波形再構成システムは、産業分野だけでなく基礎科学分野にも非常に有用である。
【符号の説明】
【0153】
100 波形再構成システム
110 強度調節器
120 高非線形光ファイバ
130 分光器
140 波形再構成装置
141 入力スペクトル取得部
142 出力スペクトル取得部
143 位相スペクトル算出部
144 波形再構成部
200 光信号生成装置
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
14
【図16】
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