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明細書 :光散乱膜及びその製造方法、太陽電池

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6048920号 (P6048920)
公開番号 特開2013-175506 (P2013-175506A)
登録日 平成28年12月2日(2016.12.2)
発行日 平成28年12月21日(2016.12.21)
公開日 平成25年9月5日(2013.9.5)
発明の名称または考案の名称 光散乱膜及びその製造方法、太陽電池
国際特許分類 H01L  31/0392      (2006.01)
FI H01L 31/04 284
請求項の数または発明の数 11
全頁数 11
出願番号 特願2012-037568 (P2012-037568)
出願日 平成24年2月23日(2012.2.23)
審査請求日 平成27年1月16日(2015.1.16)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504155293
【氏名又は名称】国立大学法人島根大学
発明者または考案者 【氏名】藤田 恭久
個別代理人の代理人 【識別番号】100097113、【弁理士】、【氏名又は名称】堀 城之
【識別番号】100162363、【弁理士】、【氏名又は名称】前島 幸彦
審査官 【審査官】池谷 香次郎
参考文献・文献 再公表特許第2006/046397(JP,A1)
特開平11-278838(JP,A)
特開2005-060145(JP,A)
特開2007-268261(JP,A)
特開平10-326903(JP,A)
特開2001-278637(JP,A)
特開2012-253089(JP,A)
調査した分野 H01L 31/0236
特許請求の範囲 【請求項1】
入射した光を散乱させる光散乱膜であって、
基板と、
平均粒径が300nm~5μmの範囲でありシリカを主成分とするシリカ微粒子と、平均粒径50~500nmのZnO微粒子と、が少なくとも含まれる複数の種類の微粒子がバインダーを介して結合されて前記基板上に形成された微粒子層と、
を具備し、ヘイズ率が29.94%~68.97%の範囲であることを特徴とする光散乱膜。
【請求項2】
前記バインダーはSOG(Spin On Glass)であることを特徴とする請求項1に記載の光散乱膜。
【請求項3】
前記基板はガラス基板であることを特徴とする請求項1又は2に記載の光散乱膜。
【請求項4】
前記微粒子層の上に形成された、酸化亜鉛(ZnO)を主成分とする透明導電膜を具備することを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の光散乱膜。
【請求項5】
請求項1に記載の光散乱膜の製造方法であって、
前記シリカ微粒子と、前記ZnO微粒子と、が少なくとも含まれる複数の種類の微粒子が前記バインダーと共に混合された塗布液を基板上に塗布した後に焼成することによって、微粒子層を基板上に形成する微粒子層形成工程を具備することを特徴とする光散乱膜の製造方法。
【請求項6】
減圧酸素雰囲気とされたチャンバー内において亜鉛材料をアーク放電によって蒸発させた状態から粒子化させることによって、前記ZnO微粒子を製造することを特徴とする請求項5に記載の光散乱膜の製造方法。
【請求項7】
前記バインダーには、SOG(Spin On Glass)が含まれることを特徴とする請求項5又は6に記載の光散乱膜の製造方法。
【請求項8】
前記微粒子層形成工程において、焼成温度を300℃以下とすることを特徴とする請求項7に記載の光散乱膜の製造方法。
【請求項9】
前記基板はガラス基板であることを特徴とする請求項5から請求項8までのいずれか1項に記載の光散乱膜の製造方法。
【請求項10】
前記微粒子層の上に酸化亜鉛(ZnO)を主成分とする透明導電膜を形成する導電膜形成工程を具備することを特徴とする請求項5から請求項9までのいずれか1項に記載の発光素子の製造方法。
【請求項11】
請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の光散乱膜が用いられたことを特徴とする太陽電池。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池等に用いられ、光を散乱させるために用いられる光散乱膜及びその製造方法に関する。また、これを用いた太陽電池に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池として各種のものが知られており、特に低コスト化等のために薄膜状の太陽電池が多く開発されている。太陽電池は、光(可視光)を吸収してこれを電気エネルギーに変換する吸収層を具備する。この吸収層から電力を取り出すために電極が形成されるが、この電極の存在によって吸収層に入射する光量が減少することがある。これを抑制するために、光透過率が高く、かつ電気エネルギーを低損失で取り出すことのできる低抵抗の透明電極が用いられる。
【0003】
また、特に薄膜状の太陽電池においては、吸収層も薄く形成することが必要となるため、吸収層において充分に光を吸収させることが難しくなる。このため、透明電極等の表面に細かな凹凸を多く設けた構造(テクスチャ構造)を形成して光を散乱させ、吸収層における光の光路長を実質的に長くすることによって吸収の割合を高める構成が使用されている。この光散乱の効率を示す量として、拡散透過率/全光線透過率として定義されるヘイズ率がある。ここで、全光線透過率は、入射光に対して透過したすべての光線の割合を示し、拡散透過率とは、直入射した光線が方向を変えて(拡散されて)透過した割合である。上記の目的のためには、テクスチャ構造をもつ層が、高い全光線透過率と高いヘイズ率をもつことが求められる。
【0004】
高いヘイズ率を得るための構成として、各種の技術が提案されている。例えば、特許文献1、2には、太陽電池を構成する積層構造中に、透明な樹脂材料の中に散乱体となる粒子を分散させた散乱層を形成する技術が記載されている。また、特許文献3には、透明電極と対向する側に設けられた反射型の電極にテクスチャ構造を設ける構成が記載されている。
【0005】
また、太陽電池を構成する材料に対しては、大面積のものを安価に製造できることが要求される。この点においては、酸化亜鉛(ZnO)は有望である。酸化亜鉛は、人体に対して有害な元素を含まない点においても、好ましい材料である。ZnOは、半導体として使用することもできるが、特に高濃度のドーピングを行った場合には透明電極として使用することができる。特許文献4には、このZnO層をCVD法で形成する際に、成長の中断と再開を繰り返すことによってその表面にテクスチャ構造を形成する技術が記載されている。
【0006】
また、この他にも、機械加工によって、透明電極が形成される前のガラス基板の表面に凹凸を形成したり、透明電極が形成される前の樹脂基板に対してプレス加工を行うことによって凹凸を形成する技術が知られている。こうした場合にも、透明電極の表面にテクスチャ構造を形成することができる。
【0007】
このような光散乱膜を用いることによって、薄型の太陽電池においても、吸収層で充分に光を吸収することができ、高い光電変換効率を得ることができる。
【先行技術文献】
【0008】

【特許文献1】特開2009-16553号公報
【特許文献2】特開2011-40525号公報
【特許文献3】特開2009-194289号公報
【特許文献4】特開2011-129288号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1、2の構成においては、太陽電池を構成する積層構造中に、新たに光散乱層を挿入している。この際、光散乱層の透過率、特に全光線透過率を高くすることは実質的に困難である。すなわち、光散乱層においても光は吸収され、このために光電変換効率は低下する。このために、吸収を起こさずに散乱だけを起こすという本来の光散乱膜の目的から考えると充分な特性を得ることは困難であった。
【0010】
一方、特許文献3に記載の構成では、反射型の電極の構成のみが改良される。通常は太陽電池においては、一方の電極は反射型の電極、他方の電極は透明電極とされる。この際、両方の電極でテクスチャ構造を設けることが好ましいものの、特許文献3に記載の構成では、反射型の電極のみにテクスチャ構造が形成されている。このため、この技術を用いてもやはり高い光電変換効率を得ることは困難であった。
【0011】
特許文献4に記載の技術においては、透明電極にテクスチャ構造を形成することが可能である。このため、例えば特許文献3に記載の技術とこの技術を組み合わせれば、両電極側において高い散乱効率を得ることができる。しかしながら、特許文献4に記載の技術においては、透明電極(ZnO)の実質的な成膜速度が遅くなるために量産性が低下し、その工程も煩雑となった。また、通常このような凹凸が設けられた透明電極の電気抵抗は高くなるため、透明電極を介しての出力を取り出す際のロスが大きくなる。また、更に透明電極上に吸収層となる半導体層(例えばアモルファスSi等)を形成した場合において、透明電極表面の凹凸の影響のために、良好かつ均一な特性の半導体層を得ることは困難であった。
【0012】
また、透明電極を形成する基板の表面に凹凸を形成する場合にも、やはり透明電極における所望の電気的特性や光学的特性を得ることが困難であり、その再現性にも問題があった。この上に形成される半導体層の特性についても上記と同様である。
【0013】
このように、その上に良好な特性をもつ素子を形成することができ、かつ充分な光散乱特性をもつ光散乱膜を簡易な製造方法で得ることは困難であった。
【0014】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、上記の問題点を解決する発明を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、上記課題を解決すべく、以下に掲げる構成とした。
本発明の光散乱膜は、入射した光を散乱させる光散乱膜であって、基板と、平均粒径が300nm~5μmの範囲でありシリカを主成分とするシリカ微粒子と、平均粒径50~500nmのZnO微粒子と、が少なくとも含まれる複数の種類の微粒子がバインダーを介して結合されて前記基板上に形成された微粒子層と、を具備し、ヘイズ率が29.94%~68.97%の範囲であることを特徴とする。
本発明の光散乱膜において、前記バインダーはSOG(Spin On Glass)であることを特徴とする。
本発明の光散乱膜において、前記基板はガラス基板であることを特徴とする。
本発明の光散乱膜において、前記微粒子層の上に形成された、酸化亜鉛(ZnO)を主成分とする透明導電膜を具備することを特徴とする。
本発明の光散乱膜の製造方法は、前記光散乱膜の製造方法であって、前記シリカ微粒子と、前記ZnO微粒子と、が少なくとも含まれる複数の種類の微粒子が前記バインダーと共に混合された塗布液を基板上に塗布した後に焼成することによって、微粒子層を基板上に形成する微粒子層形成工程を具備することを特徴とする。
本発明の光散乱膜の製造方法は、減圧酸素雰囲気とされたチャンバー内において亜鉛材料をアーク放電によって蒸発させた状態から粒子化させることによって、前記ZnO微粒子を製造することを特徴とする。
本発明の光散乱膜の製造方法において、前記バインダーには、SOG(Spin On Glass)が含まれることを特徴とする。
本発明の光散乱膜の製造方法は、前記微粒子層形成工程において、焼成温度を300℃以下とすることを特徴とする。
本発明の光散乱膜の製造方法において、前記基板はガラス基板であることを特徴とする。
本発明の光散乱膜の製造方法は、前記微粒子層の上に酸化亜鉛(ZnO)を主成分とする透明導電膜を形成する導電膜形成工程を具備することを特徴とする。
本発明の太陽電池は、前記光散乱膜が用いられたことを特徴とする。

【発明の効果】
【0016】
本発明は以上のように構成されているので、その上に良好な特性をもつ素子を形成することができ、かつ充分な光散乱特性をもつ光散乱膜を簡易な製造方法で得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施の形態となる光散乱膜の断面図である。
【図2】本発明の実施の形態となる光散乱膜の製造方法を示す工程断面図である。
【図3】本発明の実施の形態となる光散乱膜において用いられるZnO微粒子の粒径分布の例である。
【図4】ZnO微粒子のみを用いた場合(a)シリカ粒子のみを用いた場合(b)の微粒子層の表面のSEM写真である。
【図5】実施例と比較例における全光線透過率の実測値である。
【図6】実施例と比較例におけるヘイズ率の実測値である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の光散乱膜は、少なくともその1種にシリカ微粒子が含まれる複数の種類の微粒子が焼結されて構成された微粒子層を用いた光散乱膜である。この光散乱膜は、基板上で微粒子がバインダー中で分散、焼結された構成を具備する。以下、本発明の実施の形態となる光散乱膜について説明する。

【0019】
図1は、この光散乱膜10の構成を示す断面図である。この光散乱膜10は、基板11上に、微粒子層12、透明導電膜13が積層されて構成される。

【0020】
基板11としては、例えばガラス基板を用いることができる。この場合には、図1中の下側から光(可視光)を基板11を透過させることが可能である。

【0021】
微粒子層12は、複数の種類の微粒子(第1の微粒子121、第2の微粒子122)が基板11上で分散され、焼結されることによって形成された層である。ここで、複数の種類とは、主成分が異なる場合、あるいはその製造方法が異なる場合に対応する。ただし、このうちの1種には、平均粒径が100nm~5μmの範囲でありシリカを主成分とするシリカ微粒子(第1の微粒子121)が含まれる。これと混合される他の成分としては、平均粒径が50~500nmであるZnO微粒子(第2の微粒子122)が好ましい。また、これらはバインダー123を用いて焼結することが可能であり、この際のバインダー123としては、SOG(Spin On Glass)を用いることが好ましい。

【0022】
透明導電膜13としては、ZnOを主成分とするものが用いられる。この場合には、例えばGaドープZnO膜を使用することができる。ここでは、ZnOにGaが多量(例えば5%)にドープされることによって導電性が付与され、かつ可視光に対しては高い透過率を具備する。不純物として、Ga以外のIII族元素(例えばAl)や、VII族元素(ハロゲン:Cl等)を用いてもよい。また、これらの不純物を含んだMgZn1-xO混晶薄膜(ただしX=0~0.3)を用いることもできる。この場合、Mgの添加により透明導電膜の吸収端が短波長側にシフトするため、光の吸収をより小さくすることができる。透明導電膜13は、例えばこの光散乱膜10が太陽電池に用いられる際には、透明電極として使用することができる。すなわち、透明導電膜13を介して太陽電池の出力を得ることができる。

【0023】
この構成においては、テクスチャ構造が微粒子層12中の微粒子表面に対応する凹凸によって形成されるため、高い拡散透過率が得られる。また、微粒子層12を構成する微粒子は可視光に対して透明であるために、全光線透過率も高く保つことができる。また、以下に説明する製造方法によって、特に容易にこの光散乱膜10を製造することができる。

【0024】
図2(a)~(d)は、この製造方法を示す工程断面図である。まず、図2(a)に示されるように、平坦な基板11(例えばガラス基板)が準備される。

【0025】
次に、図2(b)に示されるように、第1の微粒子121、第2の微粒子122を基板11上に分散させる。この際、バインダー123としてSOGを用いれば、微粒子間の空隙を埋め、平坦化することができる。第1の微粒子121としては、シリカ微粒子を用いることができる。シリカ微粒子とは、平均粒径が100nm~5μm程度のシリカで構成された微粒子であり、通常知られる製造方法によって製造される。

【0026】
また、第2の微粒子122として、平均粒径が50~500nmであるZnO微粒子が特に好ましく用いられる。その製造方法は、例えば特開2005-60145号公報に記載されている。この微粒子は、ガス中蒸発法で製造することができる。ここでは、その図1に示されるように、チャンバー内において亜鉛(Zn)で構成されたターゲットが設置される。チャンバー内を酸素を含む減圧雰囲気とした中で、このターゲットと近接して真空中に設置された電極とこのターゲット間でアーク放電を発生させることによって、ターゲット表面からZnを蒸発させる。蒸発したZnは、雰囲気中の酸素によって酸化されてZnOとなり、チャンバーの内壁に微粒子となって付着し、これがZnO微粒子となる。ターゲットの原料としては、濃度の高くない亜鉛インゴット、たとえば4N(純度99.99%)を用いることができる。このような純度の低い安価なインゴットを用いた場合であっても、ZnO微粒子においては、高品質なZnO結晶が得られる。

【0027】
具体的には、チャンバー内の雰囲気として、例えば酸素ガスと窒素ガスを空気と同様の4:1のモル比としたものを用いることができる。このガス雰囲気を、アーク放電を生じやすい20×10Pa程度に減圧する。また、特開2005-60145号公報に記載されたように、この微粒子内のZnOの結晶性は高い。このため、このZnO微粒子の光透過率を高くすることができる。

【0028】
この際、ZnO微粒子の粒径等は、雰囲気のガス成分、圧力、アーク放電の電流値等によって制御することが可能である。あるいは、これを更にボールミル等を用いて粉砕処理することによってより小さな粒径とすることもできる。この粒径によって、テクスチャ構造の凹凸を設定することができる。前記の方法で得られたZnO微粒子の粒径分布(ヒストグラム)の一例を図3に示す。

【0029】
このような第1の微粒子121と第2の微粒子を基板11上に分散させるためには、これらとバインダー123を溶媒に混合した塗布液を基板11上に塗布することが好ましい。この際には、まず、所定の混合比率で第1の微粒子121と第2の微粒子をバインダー123(SOG液)と混合し、更に溶媒(例えばアルコール等の有機溶媒)においてボールミル等を用いて混合した液体(塗布液)を製造する。この塗布液を、基板11の全面上にスピンコート、ディップコート、スプレー等の方法を用いて一様な膜厚で塗布する。あるいは、印刷法、インクジェット法等を用いた場合には、所望の領域のみに塗布してパターニングすることも可能である。溶媒の種類や粘度は、塗布の方法や後述する焼成後におけるバインダーの形態に応じて適宜選択することができる。

【0030】
その後、図2(c)に示されるように、焼成を行うことにより、分散された第1の微粒子121、第2の微粒子122が焼結して微粒子層12が形成される(微粒子層形成工程)。例えば、SOGをバインダー123として用いた場合には、200~300℃でこの焼成を行うことができる。この際、微粒子とされたZnOはバルク結晶とは異なり、こうした低温においても凝集が起こり、焼結する。また、バインダー123の濃度や粘度等を調整することによって、微粒子間の空隙を埋め、平坦化することもできる。

【0031】
ただし、バインダー123としてSOGを用いた場合、SOGとシリカの屈折率はほぼ同等である。このため、SOG/シリカ微粒子界面では反射や屈折を生ずる確率は低い。こうした場合であっても、第2の微粒子122(ZnO微粒子)と、シリカ粒子やSOGの屈折率は大きく異なるため、これらの界面で反射や屈折を生ずる。この際、テクスチャ構造における散乱確率を高めるためには、テクスチャ構造における凹凸の深さは散乱する光の波長よりも大きくすることが好ましい。これに対して、前記の通り、ZnO微粒子の平均粒径は50~500nmであり、可視光の波長よりも小さい。しかしながら、この際、微粒子とされたZnOはバルク結晶とは異なり、300℃以下の低温においても凝集が起こり、焼結する。これにより、微粒子層12におけるZnOで構成された凹凸を可視光の波長よりも大きくすることができ、高い拡散透過率を得ることが可能である。一方、上記の構成において、シリカ微粒子とSOGとは、微粒子層12の全光線透過率を高くすることに寄与する。

【0032】
基板11として例えば耐熱性の低い樹脂基板等を用いた場合には、パルスレーザー光を表面に照射することにより、表面の温度のみを局所的に高めてこの焼成を行うことも可能である。また、例えばスプレーによって塗布を行う場合には、塗布と焼成を同時に行うことも可能である。この場合、塗布と焼成を複数回繰り返すことによって微粒子層12の厚さを設定することが可能である。

【0033】
また、バインダー123として、光硬化性樹脂を用いることも可能である。この場合、微粒子層12をより低温で形成することも可能である。

【0034】
次に、図2(d)に示されるように、微粒子層12の上に、透明導電膜13を例えばマグネトロンスパッタリング法(スパッタリング法)によって成膜する(導電膜形成工程)。この際には、透明導電膜13と同様の材料で構成されたスパッタリングターゲットを使用することができる。この際、前記の通り、微粒子層12の表面を平坦化することができるため、透明導電膜13の下地となる表面の物理的な凹凸を小さくすることができる。この場合、透明導電膜13の膜質を高めることができるため、高い導電性、高い光透過率をもつ透明導電膜13を再現性よく得ることができる。更に、この上に、太陽電池における光の吸収層となるアモルファスSi層等の均一性も向上させることが可能であり、太陽電池の大面積化も容易となる。

【0035】
一方、光学的に機能する凹凸は、第2の微粒子122(ZnO微粒子)によって確保されるために、光を散乱する機能は維持される。このため、高い光散乱効率が得られる。

【0036】
すなわち、上記の光散乱膜10は、その上に良好な特性をもつ素子を形成することができ、かつ高い光散乱特性をもつ。このため、これを用いて、高い光電変換効率をもつ太陽電池を得ることができる。

【0037】
更に、上記の製造方法では、塗布と焼成という簡易でありかつ大規模な装置を必要としない方法で微粒子層12を形成することができる。すなわち、簡易な製造方法を用いて容易にこの光散乱膜を得ることができる。

【0038】
(実施例)
以下に、上記の光散乱膜を実際に製造した結果について説明する。

【0039】
図4(a)は、平均粒径100~200nmのZnO微粒子を用いた微粒子層をガラス基板の上に形成した例のSEM写真であり、図4(b)は、平均粒径3~5μmのシリカ粒子を用いた微粒子層をガラス基板の上に形成した例のSEM写真である。ここで、光硬化性樹脂(商品名:OX-SQ(東亜合成株式会社))をバインダーとして用いており、微粒子の焼結はされているが平坦化はされていない状態としている。どちらにおいても、テクスチャ構造が形成されていることが明らかである。ただし、どちらの場合においても、微粒子の凝集が発生している。特に、ZnO微粒子はシリカ粒子と比べて粒径が小さいものの、凝集性が強いためSEM写真(図4(a))においては、シリカ粒子と同等の大きさの凹凸が観測されている。このZnO微粒子の凝集は以降の実施例においても維持されている。

【0040】
次に、実際に光散乱膜の全光線透過率と、ヘイズ率を、SOG(商品名:Si-05S(株式会社 高純度化学研究所製))をバインダーとして用い、実際に図1における透明導電膜まで形成した構造で測定した。この際、透明導電膜表面の凹凸も測定した。

【0041】
ここで、使用されたシリカ微粒子は平均粒径が300nmのものである。また、使用されたZnO微粒子は、特開2005-60145号公報に記載された方法において、アーク電流50A、圧力150Torr、窒素:酸素=4:1のガスを用いて製造された。

【0042】
微粒子層の上に形成される透明導電膜として、Gaが5%ドープされたZnOを成膜温度300℃でマグネトロンスパッタリング法によって300nm成膜した。

【0043】
表1に、シリカ微粒子とZnO微粒子を混合した参考例、実施例と、ZnO微粒子だけを用いた比較例について、波長400nm~700nmの平均の全光線透過率、ヘイズ率、透明導電膜のシート抵抗、凹凸(触針式の測定器で測定された平均粗さ)を測定した結果を示す。ここで、参考例1、実施例2(及び比較例1、2)はスピンコート、実施例3、4はスプレー塗布、実施例5は塗布液の滴下、によって塗布を行っている。参考例、実施例における塗布液の組成は同等であり、例えば参考例1、実施例2の間、実施例3、4の間では塗布の条件が異なっている。また、比較例2は、比較例1と比べて塗布液におけるZnO微粒子の濃度が半分とされている。また、図5に全光線透過率の波長依存性を、図6にヘイズ率の波長依存性をそれぞれ示す。


【0044】
【表1】
JP0006048920B2_000002t.gif

【0045】
この結果より、実施例と比較例では同等の全光線透過率、ヘイズ率が得られており、良好な光散乱特性が得られていることがわかる。しかしながら、表1の結果より、比較例1、2では透明導電膜のシート抵抗が高くなっている。このため、比較例の光散乱膜を用いた場合には、良好な光散乱特性は得られるものの、この上に良好な特性の太陽電池等を形成することは困難である。これに対して、実施例においては、いずれも透明導電膜のシート抵抗は低くなっているために、この上に良好な特性の太陽電池等を形成することができる。

【0046】
また、図5の結果より、比較例1、2においては、全光線透過率が実施例よりも低くなっている。更に、図6の結果より、比較例のヘイズ率は高いものの、実施例4(スプレー塗布)、実施例5(滴下)ではヘイズ率においても比較例と同等もしくはそれ以上の値が得られている。

【0047】
ZnO微粒子のみを用いた場合で全光線透過率が低くなる理由は、六方晶系の結晶型をもつZnOは粒子形状が六角柱状となりやすく、これが凝集した際の形状が、光を透過させにくい形状となっていることに起因すると考えられる。また、シリカの屈折率が1.45程度であるのに対して、ZnOの屈折率が2.0程度と大きいことも、全光線透過率が低い一因となっている。また、シリカ微粒子のみを用いた場合には、前記の通り、バインダーとなるSOGとシリカ粒子の屈折率が同等であるため、拡散透過率が低下する。

【0048】
以上より、シリカ微粒子とZnO微粒子を共に用いる場合に特に良好な結果が得られることが確認された。

【0049】
なお、ZnO微粒子の他に、可視光に対して透明であり、かつシリカと大きく異なる屈折率をもつ材料を用いることも可能である。同様に、バインダーとして、可視光に対して透明でありかつ上記と同様の構造を形成できる材料を用いることも可能である。

【0050】
以上の結果より、例えば上記の構造における透明導電層の上に太陽電池の吸収層(例えばpn接合が形成された半導体層)を形成し、更にその上に他の電極を形成すれば、太陽電池を形成することができる。この場合には、ガラス基板側から可視光を入射させる方式の太陽電池となり、上記の光散乱層のために吸収層における光吸収効率を高くすることができる。すなわち、高い光電変換効率を得ることができる。

【0051】
また、太陽電池以外についても、光を吸収させずに散乱させる特性が要求される素子に対しては同様に使用することができることは明らかである。例えば、この光散乱膜を発光素子に使用することもでき、この場合には高強度の発散光を得ることができる。この場合、表面凹凸が小さくかつ高い散乱効率をもつ光散乱膜として、上記の光散乱膜において透明電極(透明導電膜)を用いずに、使用することも可能である。この場合、基板も必ずしも透明であることは要求されない。すなわち、基板上に上記の微粒子層が形成された構成であれば、その他の点については、この光散乱膜が使用される素子に応じて適宜設定することが可能である。
【符号の説明】
【0052】
10 光散乱膜
11 基板
12 微粒子層
13 透明導電膜
121 第1の微粒子(シリカ微粒子)
122 第2の微粒子(ZnO微粒子)
123 バインダー
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図5】
3
【図6】
4
【図4】
5