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明細書 :光電変換素子及びその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5920818号 (P5920818)
公開番号 特開2013-175507 (P2013-175507A)
登録日 平成28年4月22日(2016.4.22)
発行日 平成28年5月18日(2016.5.18)
公開日 平成25年9月5日(2013.9.5)
発明の名称または考案の名称 光電変換素子及びその製造方法
国際特許分類 H01L  31/0256      (2006.01)
FI H01L 31/04 320
請求項の数または発明の数 15
全頁数 12
出願番号 特願2012-037574 (P2012-037574)
出願日 平成24年2月23日(2012.2.23)
審査請求日 平成27年1月16日(2015.1.16)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504155293
【氏名又は名称】国立大学法人島根大学
発明者または考案者 【氏名】藤田 恭久
個別代理人の代理人 【識別番号】100097113、【弁理士】、【氏名又は名称】堀 城之
【識別番号】100162363、【弁理士】、【氏名又は名称】前島 幸彦
審査官 【審査官】吉岡 一也
参考文献・文献 特開2007-294639(JP,A)
米国特許出願公開第2004/0232412(US,A1)
特開2002-105625(JP,A)
特開2005-060145(JP,A)
特開2010-267865(JP,A)
特開2010-283322(JP,A)
特開2008-161854(JP,A)
調査した分野 H01L 31/02-31/07
H01L 31/18-31/20
特許請求の範囲 【請求項1】
基板上に、酸化亜鉛(ZnO)が含まれるn型層と、ZnOが含まれるp型層とが形成された構成を具備する光電変換素子であって、
前記p型層として、あるいは前記n型層と前記p型層の間に挿入された層として、
平均粒径が10~500nmの範囲でありZnOを主成分とするp型ZnO微粒子が少なくとも含まれる微粒子が結合されて構成され、光を吸収する微粒子層が形成されたことを特徴とする光電変換素子。
【請求項2】
前記微粒子層は前記p型層であり、前記p型ZnO微粒子は、窒素濃度1018~1020cm-3されたことを特徴とする請求項1に記載の光電変換素子。
【請求項3】
前記微粒子層は、前記p型ZnO微粒子と、窒化ガリウム(GaN)又は酸化錫(SnO)を主成分とする微粒子が混合されて構成されたことを特徴とする請求項1に記載の光電変換素子。
【請求項4】
前記微粒子層は、前記n型層と前記p型層の間に挿入された層であることを特徴とする請求項に記載の光電変換素子。
【請求項5】
前記微粒子層は、バインダーを介して前記微粒子が結合されて構成されたことを特徴とする請求項1から請求項までのいずれか1項に記載の光電変換素子。
【請求項6】
前記基板上に、導電層を介して、前記n型層と前記p型層とが形成されたことを特徴とする請求項1から請求項までのいずれか1項に記載の光電変換素子。
【請求項7】
前記基板及び前記導電層は前記微粒子層が吸収する光に対して透明であることを特徴とする請求項に記載の光電変換素子。
【請求項8】
基板上に、酸化亜鉛(ZnO)が含まれるn型層と、ZnOが含まれるp型層とが形成された構成を具備する光電変換素子の製造方法であって、
平均粒径が10~500nmの範囲でありZnOを主成分とするp型ZnO微粒子が少なくとも含まれる微粒子が混合された塗布液を塗布した後に焼成して、前記微粒子が焼結された微粒子層を、前記p型層として、あるいは前記n型層と前記p型層の間に挿入された層として形成する微粒子層形成工程、
を具備することを特徴とする光電変換素子の製造方法。
【請求項9】
前記微粒子層形成工程において、
前記塗布液に、窒化ガリウム(GaN)又は酸化錫(SnO)を主成分とする微粒子を混合してから前記塗布液を塗布することを特徴とする請求項に記載の光電変換素子の製造方法。
【請求項10】
前記微粒子層形成工程によって、前記微粒子層を前記n型層と前記p型層の間に挿入された層として形成することを特徴とする請求項に記載の光電変換素子の製造方法。
【請求項11】
前記微粒子層は前記p型層であり、前記p型ZnO微粒子は焼結後における窒素濃度が1018~1020cm-3されたことを特徴とする請求項に記載の光電変換素子の製造方法。
【請求項12】
減圧酸素雰囲気とされたチャンバー内において亜鉛材料をアーク放電によって蒸発させた状態から粒子化させることによって、前記p型ZnO微粒子を製造することを特徴とする請求項11に記載の光電変換素子の製造方法。
【請求項13】
前記基板上に、導電層及び前記n型層とをスパッタリング法によって順次形成する下地工程を具備し、
当該下地工程の後に、前記微粒子層形成工程によって前記p型層を前記n型層の上に形成することを特徴とする請求項11又は12に記載の光電変換素子の製造方法。
【請求項14】
前記微粒子層形成工程において、前記塗布液にはバインダーが混合されたことを特徴とする請求項から請求項13までのいずれか1項に記載の光電変換素子の製造方法。
【請求項15】
前記微粒子層形成工程において、焼成温度を300℃以下とすることを特徴とする請求項14に記載の光電変換素子の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化亜鉛を用いた光電変換素子及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
可視光を電気エネルギーに変換する太陽電池の種類として、単結晶シリコン太陽電池、シリコン薄膜太陽電池、色素増感太陽電池、有機太陽電池等が知られている。また、最近は、特に高効率である量子ドット型のものも知られている。こうした太陽電池においては、光電変換効率が高いことと、低コストで製造することができること、が共に要求されている。
【0003】
ここで、低コストで製造することができることとは、大面積のものを低コストで製造できることを意味する。単結晶シリコン太陽電池や量子ドット型太陽電池においては高い光電変換効率が得られるものの、この点の実現が極めて困難である。シリコン薄膜太陽電池、色素増感太陽電池、有機太陽電池等は、この点においては有利であるが、高い光電変換効率を得ることが原理的に困難である。このように、太陽電池における一般的な傾向として、エネルギー変換効率が高いことと低コストで製造できることはトレードオフの関係にある。
【0004】
酸化亜鉛(ZnO)も、このような太陽電池の材料として知られている。ZnOは安価でありかつ人体に対する毒性が少ないという利点を有している。例えば、ZnOを使用した色素増感型太陽電池が知られているが、前記の通り、高い光電変換効率を得ることは困難である。また、導電性のZnOは太陽電池の透明電極として広く使用されているが、例えば非特許文献1に示されたように、pn接合を構成する半導体としてZnOを使用し、紫外光で発電をする高い光電変換効率をもった透明太陽電池も検討されている。ただし、ZnOの導電型制御はシリコン等と比べると非常に困難であり、一般的には、n型の形成は容易であるが、p型を形成することは非常に困難である。このため、ZnOのpn接合を形成することは容易ではなく、非特許文献1の構成においては、n型ZnO層と他のワイドギャップ半導体(CuAlO等)のp型層を積層した構成を使用している。
【先行技術文献】
【0005】

【非特許文献1】産業技術総合研究所プレスリリース:http://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2003/pr20030625/pr20030625.html
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、例えばスパッタリング法によって広い面積のn型ZnO層を形成することは容易であるのに対して、他のワイドギャップ半導体は他の成膜方法で形成する必要がある。この成膜方法としては、レーザー蒸着法等があるが、このような成膜方法では、n型ZnO層と比べて、広い面積で均一な特性のものを得ることが困難である。このため、結局、ZnOを用いて大面積の太陽電池を得ることは困難であった。
【0007】
すなわち、高い光電変換効率をもつ大面積の光電変換素子をZnOを用いて得ることは困難であった。
【0008】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、上記の問題点を解決する発明を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決すべく、以下に掲げる構成とした。
本発明の光電変換素子は、基板上に、酸化亜鉛(ZnO)が含まれるn型層と、ZnOが含まれるp型層とが形成された構成を具備する光電変換素子であって、前記p型層として、あるいは前記n型層と前記p型層の間に挿入された層として、平均粒径が10~500nmの範囲でありZnOを主成分とするp型ZnO微粒子が少なくとも含まれる微粒子が結合されて構成され、光を吸収する微粒子層が形成されたことを特徴とする
本発明の光電変換素子において、前記微粒子層は前記p型層であり、前記p型ZnO微粒子は、窒素濃度1018~1020cm-3されたことを特徴とする。
本発明の光電変換素子において、前記微粒子層は、前記p型ZnO微粒子と、窒化ガリウム(GaN)又は酸化錫(SnO)を主成分とする微粒子が混合されて構成されたことを特徴とする。
本発明の光電変換素子において、前記微粒子層は、前記n型層と前記p型層の間に挿入された層であることを特徴とする。
本発明の光電変換素子において、前記微粒子層は、バインダーを介して前記微粒子が結合されて構成されたことを特徴とする。
本発明の光電変換素子は、前記基板上に、導電層を介して、前記n型層と前記p型層とが形成されたことを特徴とする。
本発明の光電変換素子において、前記基板及び前記導電層は前記微粒子層が吸収する光に対して透明であることを特徴とする。
本発明の光電変換素子の製造方法は、基板上に、酸化亜鉛(ZnO)が含まれるn型層と、ZnOが含まれるp型層とが形成された構成を具備する光電変換素子の製造方法であって、平均粒径が10~500nmの範囲でありZnOを主成分とするp型ZnO微粒子が少なくとも含まれる微粒子が混合された塗布液を塗布した後に焼成して、前記微粒子が焼結された微粒子層を、前記p型層として、あるいは前記n型層と前記p型層の間に挿入された層として形成する微粒子層形成工程、を具備することを特徴とする
本発明の光電変換素子の製造方法は、前記微粒子層形成工程において、前記塗布液に、窒化ガリウム(GaN)又は酸化錫(SnO)を主成分とする微粒子を混合してから前記塗布液を塗布することを特徴とする。
本発明の光電変換素子の製造方法は、前記微粒子層形成工程によって、前記微粒子層を前記n型層と前記p型層の間に挿入された層として形成することを特徴とする。
本発明の光電変換素子の製造方法において、前記微粒子層は前記p型層であり、前記p型ZnO微粒子は焼結後における窒素濃度が1018~1020cm-3されたことを特徴とする。
本発明の光電変換素子の製造方法は、減圧酸素雰囲気とされたチャンバー内において亜鉛材料をアーク放電によって蒸発させた状態から粒子化させることによって、前記p型ZnO微粒子を製造することを特徴とする。
本発明の光電変換素子の製造方法は、前記基板上に、導電層及び前記n型層とをスパッタリング法によって順次形成する下地工程を具備し、当該下地工程の後に、前記微粒子層形成工程によって前記p型層を前記n型層の上に形成することを特徴とする。
本発明の光電変換素子の製造方法は、前記微粒子層形成工程において、前記塗布液にはバインダーが混合されたことを特徴とする。
本発明の光電変換素子の製造方法は、前記微粒子層形成工程において、焼成温度を300℃以下とすることを特徴とする。

【発明の効果】
【0010】
本発明は以上のように構成されているので、高い光電変換効率をもつ大面積の光電変換素子をZnOを用いて得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態となる光電変換素子の断面図である。
【図2】p型ZnO微粒子の粒径分布を実測した結果である。
【図3】p型ZnO微粒子においてアーク電流と窒素濃度を実測した結果である。
【図4】p型ZnO微粒子において熱処理に際して脱離する酸素、窒素、水素濃度を測定した結果である。
【図5】ZnO微粒子とGaN微粒子が混在する際のバンド図を模式的に示す図である。
【図6】本発明の実施の形態となる発光素子において電流-電圧特性を実測した結果である。
【図7】本発明の実施の形態となる光電変換素子の製造方法を示す工程断面図である。
【図8】本発明の実施の形態となる光電変換素子の第一の変形例の断面図である。
【図9】本発明の実施の形態となる光電変換素子の第二の変形例の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の光電変換素子は、安価な酸化亜鉛(ZnO)を用いて構成される。この光電変換素子においては、以下に説明するように、ZnOのpn接合を大面積で容易に得ることができる。このため、この光電変換素子は、高い光電変換効率をもつ大面積の太陽電池となる。

【0013】
図1は、本発明の実施の形態に係る光電変換素子10の断面図である。この光電変換素子10においては、透明な基板11の上にZnO系透明導電膜12が形成され、その上にn型ZnO系薄膜13が順次形成されている。このn型ZnO系薄膜13の上に、微粒子層14が形成されている。図1中の左側においてはn型ZnO系薄膜13等は部分的に除去され、その上にn側電極15が形成されている。また、微粒子層14の上にはp側電極16が形成されている。この光電変換素子10においては、下側から基板11を通して入射した光によってpn接合に起電力が生じ、この出力がn側電極15とp側電極16を介して取り出される。

【0014】
透明な基板11として、例えば、ガラス基板等を用いることができる。基板11の上にZnO系透明導電膜12とn型ZnO系薄膜13を順次成膜することができることが必要となる。ただし、これらの成膜は例えばマグネトロンスパッタリング法(スパッタリング法)等で行うことができ、この場合には成膜温度は低いため、透明な樹脂基板等を基板11として使用することも可能である。

【0015】
ZnO系透明導電膜12としては、例えばGaドープZnO膜を使用することができる。ここでは、ZnOにGaが多量にドープされることによって導電性が付与され、かつ可視光に対しては高い透過率を具備する。その厚さは、電気抵抗、可視光透過率やこの上におけるn側電極15の成膜のしやすさの観点から、例えば5%ガリウムドープZnO膜を用いる場合には、50~500nmとすることができる。

【0016】
また、ZnO系透明導電膜12に入れる不純物として、Ga以外のIII族元素(例えばAl)や、VII族元素(ハロゲン:F等)を用いてもよい。また、これらの不純物を含んだMgZn1-xO混晶薄膜(ただしX=0~0.3)を用いることもできる。この場合、Mgの添加によりZnO系透明導電膜12の吸収端が短波長側にシフトするため、微粒子層14が吸収すべき光のZnO系透明導電膜12による吸収を小さくすることができる。基板11上へのZnO系透明導電膜12の形成方法は、マグネトロンスパッタリング法やCVD法を用いることができる。

【0017】
n型ZnO系薄膜13は、この光電変換素子10においてpn接合を形成するn型層として機能する。n型ZnO系薄膜13としては、例えばGaやAlをドープしたZnOを用いることができる。ただし、そのドープ量はZnO系透明導電膜12よりも少ない。ただし、n型ZnO系薄膜13は単結晶である必要はない。n型ZnO系薄膜13としては、単結晶、多結晶、非晶質、微粒子あるいはこれらを複合したもののうちのいずれをも用いることができる。

【0018】
このため、n型ZnO系薄膜13の形成方法は、マグネトロンスパッタリング法やCVD法を使用することができる。この場合、基板11上にZnO系透明導電膜12とn型ZnO系薄膜13を連続して形成することも可能である。

【0019】
また、ZnO微粒子とMgO微粒子を混合した粉末をZnO系透明導電膜12上に塗布し、その後焼結してn型MgZn1-xO混晶薄膜(ただしX=0~0.3)をn型ZnO系薄膜13として用いることもできる。ここでX=0の場合はn型ZnOとなる。

【0020】
微粒子層14は、この光電変換素子10におけるpn接合を形成するためのp型層として機能する。微粒子層14は、微粒子が焼結されて構成されるが、この微粒子の中には、少なくとも平均粒径が10~500nmであるp型ZnO微粒子が含まれる。また、微粒子はバインダーを用いて焼結され、バインダーとしては、光硬化型バインダーやSOG(Spin On Glass)等を用いることができる。微粒子層14の詳細については後述する。

【0021】
n側電極15とp側電極16は、共に電気抵抗の低い金属で構成され、その材料としては、例えば金、アルミニウム等、あるいはこれらを含む積層構造を用いることができる。これらには図1に示されるように出力を取り出すための端子が接続されるため、その厚さは、この接続が可能な程度に適宜設定される。また、基板11やZnO系透明導電膜12とは異なり、可視光の透過性は不要である。

【0022】
図1の構造においては、n型ZnO系薄膜13と微粒子層14との間でpn接合が形成される。従来は、ZnOのp型層を形成するのが困難であったためにZnOのpn接合を形成することが困難であったのに対し、この構造においては、p型ZnO微粒子を用いてこのp型層を容易に形成することができる。このため、ZnOを用いた大面積の光電変換素子を容易に得ることができる。

【0023】
以下に、微粒子層14の詳細について説明する。この層は、微粒子141がn型ZnO系薄膜13上に塗布等の方法によって分散して配され、その後で焼成されることによって形成される。微粒子141には、少なくともZnO微粒子が含まれる。

【0024】
ZnO微粒子とは、平均粒径が10~500nm程度のZnOで構成された微粒子であり、バルクのZnOとは異なる性質をもつ。その製造方法は、例えば特開2005-60145号公報に記載されている。この微粒子は、ガス中蒸発法で製造することができる。ここでは、その図1に示されるように、チャンバー内において亜鉛(Zn)で構成されたターゲットが設置される。チャンバー内を酸素を含む減圧雰囲気とした中で、このターゲットと近接して真空中に設置された電極とこのターゲット間でアーク放電を発生させることによって、ターゲット表面からZnを蒸発させる。蒸発したZnは、雰囲気中の酸素によって酸化されてZnOとなり、チャンバーの内壁に微粒子となって付着し、これがZnO微粒子となる。ターゲットの原料としては、濃度の高くない亜鉛インゴット、たとえば4N(純度99.99%)を用いることができる。このような純度の低い安価なインゴットを用いた場合であっても、ZnO微粒子においては、高品質なp型ZnO結晶が得られる。

【0025】
具体的には、チャンバー内の雰囲気として、例えば酸素ガスと窒素ガスを空気と同様の4:1のモル比としたものを用いることができる。このガス雰囲気を、アーク放電を生じやすい20×10Pa程度に減圧する。これにより、Znを酸化させてZnOとすると同時に、アクセプタとなる窒素(N)を同時に微粒子中に高濃度でドーピングすることができる。このため、形成されたZnO微粒子をp型とすることができる。また、特開2005-60145号公報に記載されたように、この微粒子内のZnOの結晶性は高い。このため、このp型ZnO微粒子における光電変換効率を高くすることができる。

【0026】
この際、ZnO微粒子の特性(粒子径、導電型、キャリア濃度等)は、雰囲気のガス成分、圧力、アーク放電の電流値等によって制御することが可能である。この際、ZnO微粒子の光吸収のピーク波長を調整することも可能である。

【0027】
また、前記のガス中蒸発法によってZnO微粒子が得られた後で、更にボールミル等を用いてこの微粒子を粉砕して、平均粒径を小さくすることもできる。これによっても、発光のピーク波長やそのスペクトルの広がりを変えることが可能である。図2は、特開2005-60145号公報に記載されたようにガス中蒸発法によって得られたZnO微粒子を更に粉砕した微粒子の平均粒径分布を測定した結果である。

【0028】
また、このZnO微粒子がガス中蒸発法で形成される際には、雰囲気中の窒素が導入されてアクセプタとなる。図3は、アーク放電の電流値とZnO微粒子中の窒素濃度の関係をHORIBA製EMGA930を用いて測定した結果である。ここで、放電の際には窒素と酸素が4:1のガスを5L/min流し、圧力は150Torrとしている。この結果より、窒素ドープ量は放電電流に大きく依存し、50Aの場合に最も多くドープされており、この場合の窒素濃度は7×1018cm-3程度であった。ホール測定によってこのZnO微粒子のキャリア濃度等を測定したところ、ホール濃度が9×1016~2.9×1017cm-3、移動度が0.53~0.21cm/V/sであるp型となっていることが確認された。

【0029】
ただし、アクセプタとなる窒素は熱処理によって脱離する。図4は、放電電流を20AとしたZnO微粒子に対して行った熱処理の温度と、熱処理の際に脱離する酸素、窒素、水素の濃度を図3と同様に測定した結果である。この結果より、窒素は300℃程度の熱処理で脱離することがわかる。このため、p型微粒子をp型層として使用する際には、その製造工程における最高温度を300℃以下とすることが好ましい。この温度を超えた場合には、pn接合が形成されない場合がある。

【0030】
このため、微粒子層14を形成するために微粒子141を焼結するための温度は300℃以下であることが好ましい。こうした低温で焼結を行うためには、バインダーとして光硬化型バインダーやSOG(Spin On Glass)を用いることが特に好ましい。

【0031】
この場合、焼成後の微粒子層14におけるp型ZnO微粒子中の窒素濃度を1018~1020cm-3の範囲とすることができる。これにより、微粒子層14を光電変換素子10におけるp型層(正孔輸送層)とすることができる。

【0032】
また、例えば微粒子層14を構成する微粒子として、他の材料を主成分とする微粒子をZnO微粒子と混合してもよい。この材料としては、例えばZnOと同様に広い禁制帯幅をもつ窒化ガリウム(GaN)や酸化錫(SnO)の微粒子を用いることができる。この場合には、微粒子層14中において、ZnOとこれらの材料との間でヘテロ接合が形成される。図5は、ZnOとGaNが混在して構成されたヘテロ接合のバンド構造を模式的に示す図である。このバンド構造においては、ZnOとGaNの伝導帯と価電子帯のエネルギーの違いによって、伝導体エネルギーEcと価電子帯エネルギーEvが界面で不連続的に変化する。ここで、Ec(ZnO)、Ev(ZnO)は、ZnOが単独で存在した際の伝導帯エネルギー、価電子帯エネルギーをそれぞれ表し、Ec(GaN)、Ev(GaN)は、GaNが単独で存在した際の伝導体エネルギー、価電子帯エネルギーをそれぞれ表す。

【0033】
図5のバンド構造においては、矢印で示されるように、ZnOの伝導帯から隣接したGaNの価電子帯への電子の遷移が可能となる。この場合に得られる発光光子のエネルギーはEc(ZnO)とEv(GaN)の差分となり、これはZnOの禁制帯幅のエネルギー(Ec(ZnO)-Ev(ZnO))よりも小さくなる。すなわち、ZnOの禁制帯幅に対応する波長よりも長い波長の光を吸収させることが可能である。GaNの代わりにSnOを用いた場合であっても同様である。ZnOの禁制帯幅に対応した光は紫外光であるが、この光は可視光となる。

【0034】
図6は、p型ZnO微粒子を用いて微粒子層を形成した場合の図1の構造の光電変換素子の電流-電圧特性を実測した結果である。ダイオードとして機能していることが確認さた。このため、このダイオードは光起電力素子(光電変換素子)として機能する。

【0035】
次に、上記の光電変換素子10の製造方法について説明する。図7(a)~(e)は、この製造方法を示す工程断面図である。ここでは、微粒子層14を構成する微粒子141がp型ZnO微粒子一種である場合について記載するが、GaNやSnO微粒子を混合する場合についても同様である。

【0036】
まず、図7(a)に示されるように、基板11上にZnO系透明導電膜12、n型ZnO系薄膜13を連続して成膜する(下地工程)。これらの成膜は、前記の通り、マグネトロンスパッタリング法やCVD法によって行うことができる。この場合、例えばマグネトロンスパッタリング法においては同一チャンバー内でスパッタリングターゲットを切り替えること、CVD法においては同一CVD炉内においてガスを切り替えること、によって、基板11をチャンバーやCVD炉から取り出すことなしに、ZnO系透明導電膜12、n型ZnO系薄膜13を連続して成膜することが可能である。

【0037】
次に、図7(b)に示されるように、微粒子141をn型ZnO系薄膜13上に分散させる。この際には、まず、所定の混合比率で微粒子141をSOG(Spin On Glass)液等で構成されたバインダー、溶媒(例えばアルコール等の有機溶媒)と混合した液体中においてボールミル等を用いて混合した液体(塗布液)を製造する。この塗布液を、n型ZnO系薄膜13の全面上にスピンコート、ディップコート等の方法を用いて一様な膜厚で塗布する。あるいは、印刷法、インクジェット法等を用いた場合には、所望の領域のみにパターニングして塗布することも可能である。溶媒やバインダーの種類や粘度は、塗布の方法に応じて適宜選択することができる。

【0038】
その後、図7(c)に示されるように、焼成を行うことにより、分散された微粒子141が焼結して微粒子層14が形成される(微粒子層形成工程)。この焼成は、例えば大気中で200~300℃の温度範囲で行うことができる。前記の通り、焼結後におけるp型導電性を確保するためには、この温度を300℃以下とすることが好ましいが、SOGを使用した場合、焼結をこの温度範囲で行うことができる。また、SOG成分は可視光に対して透明であり、SOGに吸収される光成分を小さくすることができるため、高い光電変換効率を得る上でも好ましい。なお、基板11として例えば耐熱性の低い樹脂基板等を用いた場合には、紫外線により硬化する光硬化性バインダーを用いることや,フラッシュランプやパルスレーザー光を表面に照射することにより、表面の温度のみを局所的に高めてこの焼成を行うことも可能である。

【0039】
その後、図7(d)に示されるように、局所的に微粒子層14、n型ZnO系薄膜13をエッチングによって除去する(エッチング工程)。図7(d)においては、左側の領域において、微粒子層14、n型ZnO系薄膜13が除去されるために、ZnO系透明導電膜12が露出する。この工程は、例えば、フォトリソグラフィによって、微粒子層14等を除去しない領域においてフォトレジスト層を形成し、その後にウェットエッチングを行うことによって行うことができる。この際のエッチング液としては、例えば酢酸を用いることができる。この際、微粒子層14とn型ZnO系薄膜13に対して異なるエッチング液を使用することも可能である。

【0040】
次に、図7(e)に示されるように、露出したZnO系透明導電膜12上と、残存した微粒子層14の上にそれぞれn側電極15とp側電極16を形成する(電極形成工程)。n側電極15とp側電極16は同じ材料で構成することもできる。この場合、DCスパッタリング法等によって図7(d)の構造の上面全体にこの材料を成膜した後に、前記のエッチング工程と同様に、n側電極15とp側電極16が存在する領域以外におけるこの材料をエッチングすることによって、図7(e)の構成とすることができる。あるいは、n側電極15とp側電極16が残存する領域以外の領域にフォトレジスト層を形成してからこの材料を全面に成膜した後に、フォトレジスト層を除去することによって、図7(e)の形態を実現することもできる(リフトオフ法)。

【0041】
最後に、n側電極15とp側電極16に配線を接続し、電源を接続すれば、図1の光電変換素子10が製造される。

【0042】
以上の製造方法においては、p型層となる微粒子層14を、微粒子層形成工程において、塗布液の塗布と焼成によって容易に形成することができる。その際の下地となるn型ZnO系薄膜13等の成膜は、基板11に応じた大面積で行うことができる。塗布液を塗布することによって、この上に微粒子層14を均一に形成することが可能である。すなわち、大面積の光電変換素子を容易に得ることができる。特に、上記の構成においては、p型層となる微粒子層14を容易に得ることができる。

【0043】
この際、微粒子141にGaN微粒子やSnO微粒子を混合する作業も、塗布液にこれらを混合するだけよいため、極めて容易である。

【0044】
すなわち、この製造方法を用いて、上記の光電変換素子10を容易に製造することができる。

【0045】
なお、上記の例では、微粒子層をp型層として用いたが、微粒子層をn型層(電子輸送層)とすることもでき、n型層とp型層の間の吸収層とすることもできる。

【0046】
図8は、微粒子層をn型層とした構成の光電変換素子20の構成を示す断面図である。この光電変換素子20においては、図1の構造と同様に、基板11の上にZnO系透明導電膜12が形成される。この上に、n型ZnO微粒子231で構成されたn型層となる微粒子層23が形成される。その上に、p型ZnO層24が形成され、図1の構造と同様にn側電極15、p側電極16が形成される。p型微粒子を用いずに例えばスパッタリング法によってp型ZnO層24を形成することが可能である場合には、この構成の光電変換素子20を製造することも可能である。

【0047】
図9は、微粒子層をn型層とp型層の間に光吸収層として配した構成の光電変換素子30の構成を示す断面図である。この光電変換素子30においても、図1の構造と同様に、基板11の上にZnO系透明導電膜12が形成される。この上に、n型ZnO系薄膜13が形成され、微粒子層34がこの上に形成される。その上にp型ZnO層35が形成され、図1の構造と同様にn側電極15、p側電極16が形成される。この場合には、ZnO微粒子341とGaN微粒子342を混合させて微粒子層34を形成することが好ましい。この場合には、前記の通り、ZnOの禁制帯幅に対応した波長よりも長い波長の光を微粒子層34で吸収させることができる。この波長の光はn型ZnO系薄膜13やp型ZnO層35には吸収されないため、微粒子層34で選択的に吸収され、これによって起電力が発生する。前記の通り、この光は可視光となる。すなわち、この光電変換素子30においては、可視光の照射によって出力が得られる。

【0048】
なお、上記の例では、基板として絶縁性のガラス基板を用い、その上に導電性のZnO系透明導電膜を形成したが、特に上側(基板と反対側)から光を照射する構成の場合には、基板として導電性の材料を用い、n型層(ZnO系薄膜あるいはn型ZnO微粒子で構成されたn型層)の下側にZnO系透明導電膜を形成しない構成とすることも可能である。また、ZnO系透明導電膜の上にp型ZnO層を形成することが可能であれば、上記の例におけるn型層、p型層の位置関係を逆転させることも可能である。
【符号の説明】
【0049】
10、20、30 光電変換素子
11 基板
12 ZnO系透明導電膜
13 n型ZnO系薄膜
14、23、34 微粒子層
15 n側電極
16 p側電極
24、35 p型ZnO層
141 微粒子
231 n型ZnO微粒子
341 ZnO微粒子
342 GaN微粒子
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8