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明細書 :血液情報の測定方法及び装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5901012号 (P5901012)
公開番号 特開2013-164372 (P2013-164372A)
登録日 平成28年3月18日(2016.3.18)
発行日 平成28年4月6日(2016.4.6)
公開日 平成25年8月22日(2013.8.22)
発明の名称または考案の名称 血液情報の測定方法及び装置
国際特許分類 G01N  21/27        (2006.01)
FI G01N 21/27 B
請求項の数または発明の数 15
全頁数 13
出願番号 特願2012-028231 (P2012-028231)
出願日 平成24年2月13日(2012.2.13)
審査請求日 平成27年2月13日(2015.2.13)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504179255
【氏名又は名称】国立大学法人 東京医科歯科大学
発明者または考案者 【氏名】迫田 大輔
【氏名】高谷 節雄
個別代理人の代理人 【識別番号】100080458、【弁理士】、【氏名又は名称】高矢 諭
【識別番号】100076129、【弁理士】、【氏名又は名称】松山 圭佑
【識別番号】100089015、【弁理士】、【氏名又は名称】牧野 剛博
審査官 【審査官】森口 正治
参考文献・文献 特開平9-311099(JP,A)
特表平1-500928(JP,A)
特開2008-224524(JP,A)
調査した分野 G01N 21/00-21/958
特許請求の範囲 【請求項1】
血漿と屈折率が異なる透明な材料で形成されたフローセル中を流れる血液の該フローセルとの境界面に90度より浅い角度で斜め方向から第1の測定光を入射し、
前記フローセルと血液の境界面で正反射された光を分光して、その吸収スペクトルから血漿成分の情報を取得することを特徴とする血液情報の測定方法。
【請求項2】
前記血漿成分の情報が血漿の屈折率であることを特徴とする請求項1に記載の血液情報の測定方法。
【請求項3】
前記反射された光が、前記境界面からの全反射光であることを特徴とする請求項1又は2に記載の血液情報の測定方法。
【請求項4】
前記フローセルを流れる血液のレイノルズ数又は流量を、所定の範囲とすることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の血液情報の測定方法。
【請求項5】
前記境界面にあてる第1の測定光の波長が600nm以下であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の血液情報の測定方法。
【請求項6】
前記境界面に対する第1の測定光の入射角度が45度以下であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の血液情報の測定方法。
【請求項7】
透明な材料で形成されたフローセルの血液流路と平行な側壁と垂直に第2の測定光を入射した時に、該フローセルの血液流路を透過し、その反対側から出射する透過光を分光して、その吸収スペクトルから血球及び血漿成分の情報を取得し、請求項1乃至6のいずれかに記載の測定方法で取得した血漿成分の情報と比較することで血球の情報を得ることを特徴とする血液情報の測定方法。
【請求項8】
血液流路側を底面とする台形状とされたフローセルの側壁の一方の斜面に前記第1の測定光を入射して請求項1乃至6のいずれかに記載の測定方法による血漿成分の測定を行うと共に、同じフローセルの血液流路と平行な側壁と垂直に前記第2の測定光を入射して請求項7に記載の測定方法による血球及び血漿成分の測定を行うことを特徴とする血液情報の測定方法。
【請求項9】
請求項1乃至6のいずれかに記載の測定方法による血漿成分の測定と、請求項7に記載の測定方法による血球及び血漿成分の測定を交互に行うことを特徴とする請求項8に記載の血液情報の測定方法。
【請求項10】
血液流路の一つの側壁が、外側に一対の斜面を有する、血漿と屈折率が異なる透明な材料で形成されたフローセルと、
該フローセルの一方の斜面から第1の測定光を入射するための第1の光源と、
前記フローセルの血液流路と血液の境界面で反射され、該フローセルの他方の斜面から出射する反射光を分光して、その吸収スペクトルから血漿成分の情報を得るための第1の分光手段と、
を備えたことを特徴とする血液情報の測定装置。
【請求項11】
前記透明な材料が、ガラス、プラスチック及び/又はパラフィンであることを特徴とする請求項10に記載の血液情報の測定装置。
【請求項12】
フローセルの血液流路と平行な側壁と垂直に第2の測定光を入射するための第2の光源と、
前記フローセルの血液流路を透過し、その反対側から出射する透過光を分光して、その吸収スペクトルから血球及び血漿成分の情報を取得するための第2の分光手段と、
該第2の分光手段で取得した血球及び血漿成分の情報を、前記第1の分光手段で取得した血漿成分の情報と比較して、血球の情報を得るための計算手段と、
を更に備えたことを特徴とする請求項10又は11に記載の血液情報の測定装置。
【請求項13】
前記第1及び/又は第2の光源が白色光源であることを特徴とする請求項10乃至12のいずれかに記載の血液情報の測定装置。
【請求項14】
前記フローセルの一つの側壁が、血液流路側を底面とする台形状とされ、前記血漿成分の情報を得るためのフローセルと、前記血球及び血漿成分の情報を得るためのフローセルが共通とされていることを特徴とする請求項10乃至13のいずれかに記載の血液情報の測定装置。
【請求項15】
前記血漿成分の情報を得るためのフローセルと、前記血球及び血漿成分の情報を得るためのフローセルが独立して設けられていることを特徴とする請求項10乃至13のいずれかに記載の血液情報の測定装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、血液情報の測定方法及び装置に係り、特に、ヘマトクリットに依存することなく、血漿成分のみの情報を非侵襲的且つ連続的に得ることが可能な、溶血(血漿遊離ヘモグロビン濃度)や血液凝固度(血栓)などの血液情報を測定するための方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
人工的な循環回路によって体外に導かれた血液の溶血や血液凝固度を非侵襲的且つ連続的に測定することが望まれている。特に、透析におけるヘモグロビンモニタリングは、除水効率を見る指標として重要であるが、現在の連続ヘモグロビンモニタは信頼を得られていない。
【0003】
又、全ての血液循環系デバイスにおいて血液凝固リスクがあり、光によって血漿成分情報を抽出することで、抗凝固薬剤効果や血漿遊離ヘモグロビンなどを連続モニタリングすることは、頻繁な採血を必要としない低侵襲治療、そして患者と医療従事者双方にとって労働負担が少ない治療となるために必要不可欠な技術である。
【0004】
従来の血液情報を測定する技術として、特許文献1には、フローセルを透過した光から血液や尿などの試料液中に含まれる粒子(血球、細胞など)の形態情報、吸光情報などの特徴パラメータを得る粒子分析装置が記載されている。
【0005】
又、特許文献2には、透過光センサと散乱光センサとを互いに直角になるように配置し、透過光センサは、キュットの中を通る透過経路に沿う光を受光し、散乱光センサは、透過経路に対して90度に散乱した光を受光するようにし、散乱信号と透過信号との比を求めることにより、血液流の総ヘモグロビンあるいは赤血球の濃度を測定する技術が記載されている。
【0006】
又、特許文献3には、透過光センサと散乱光センサを平行に配置した血液の分光光分析技術が記載されている。
【0007】
又、特許文献4には、所定の試薬を添加した検体からの散乱光量値を所定の時間間隔で取得し、該散乱光量値の経時変化に基づいて凝固終了点を検出するようにした血液凝固分析装置が記載されている。
【0008】
又、特許文献5には、血液試料からの散乱光を受光し、血液試料に凝固用試薬が添加された後の散乱光量の時間的変化における飽和を測定して凝固時間を算出するようにした血液凝固測定装置が記載されている。
【0009】
又、発明者らは、非特許文献1、2で、血液内光伝搬のモンテカルロ・シミュレーション法を提案している。
【先行技術文献】
【0010】

【特許文献1】特開平6-186156号公報
【特許文献2】特表2002-531824号公報
【特許文献3】特開平6-38947号公報
【特許文献4】特開2010-210759号公報
【特許文献5】特開平10-123140号公報
【0011】

【非特許文献1】D. Sakota et al., Journal of Biomedical Optics, vol.15(6), 065001(14 pp),2010
【非特許文献2】D. Sakota, S. Takatani, “Newly developed photon-cell interactive Monte Carlo (pciMC) simulation for non-invasive and continuous diagnosis of blood during extracorporeal circulation support,” Proc. SPIE 8092, 80920Y, 1-8 (2011)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
血液の光学特性は、赤血球の体積MCV(粒子体積)、赤血球内ヘモグロビン濃度MCHC(粒子屈折率)、ヘマトクリットHCT(粒子密度)、血漿の屈折率Np(粒子外溶媒の屈折率)に依存する。従って、血液内の光伝搬は、これらを変数とする関数であると捉えることができる。しかしながら従来は、血液中の血漿成分の情報Npを非侵襲的に且つ連続的に測定することができなかった。
【0013】
本発明は、前記従来の問題点を解決するべくなされたもので、血液成分を機械的又は化学的処理によって分離することなく、血液中の血漿成分の情報を非侵襲的且つ連続的に測定できるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
発明者等は、図1に模式的に示すように、血液10中の血漿層(単に血漿とも称する)12と屈折率が異なる透明な材料であるガラス20で形成されたフローセル中を流れる血液10のガラス20との境界面に、ガラス20と屈折率がほぼ同じパラフィン22中から、45度の斜め方向に第1の測定光(入射光とも称する)30を入射し、前記ガラス20と血液10の境界面で正反射(ここでは全反射)された光(反射光とも称する)32を分光したところ、血漿層12の情報を得ることが出来る事を見出した。即ち、血漿の屈折率Npは、Np=Np-r+i*Np-i(iは虚数単位)で表される複素数であり、一般に、Np-r=1.35でほぼ一定、ガラス20の屈折率Ngは1.5であるので、全反射の条件を満たす。ここで、Np-iが光の吸収にかかわり、これは吸収スペクトルを求めることで得られる。Np-iは血漿中に含まれる蛋白や血液凝固状態、即ち血漿の化学的組成によって変動する。スペクトル計測の原理は、ガラス・血漿層境界で反射した際に、境界によりエバネッセント光が発生する。このエバネッセント光と物質(血漿層)の相互作用により、光強度が減衰し、その波長ごとの減衰度を分光光度計により計測することで血漿成分の情報が得られる。この計測法は、対象である血液10を透過しないため、基本的に血球細胞に依存することなくNpを計測することができる。
【0015】
しかし、血漿中を浮遊する血球がガラス・血漿層境界に衝突した場合は、血球スペクトル情報も取り込まれるため、これはNpを計測する上ではノイズとなる。そこで、血液をフローセル内で流している状態で計測を行う。流体力学上、溶媒中の微小粒子は、流量の高いフローセル中心に集まる性質があるため、フローセル流量を上昇させると、壁境界に向かう血球が著しく減少し、ノイズ除去が可能となる。ただし、乱流となることを避けるため、レイノルズ数Reが2000以下となる流量(例えば5.28L/min以下)とすることが望ましい。
【0016】
図2に、循環回路流量を変化させていったときの各流量におけるスペクトル変化を示す。流量を上げると受光強度が増加する、つまり反射光強度が上昇しているのがわかる。
【0017】
図3は、図2の波形を積分し、流量0L/minに対するスペクトルの変化率を表したものである。これを見ると、流量1.35L/min以上で変化が少なくなり、ほぼ一定となっていくことがわかる。厳密に言えば、変化はしているがその偏差は1.47%ほどであり、実質計測に問題はない。
【0018】
従って、流量1.35L/min以上で、血中の赤血球の分布は配向が安定し、スペクトルが流量に依存せず安定し、計測がしやすくなる。もしくは、流量とスペクトルの変化率の関係を予め抑えておけば、補正ができ、どの流量でも計測はできる。
【0019】
図3の横軸は現在流量になっているが、フローセルの断面積で割れば平均流速に換算できる。
【0020】
更に、血液の粘性と密度を考慮すれば、次式で定義されるレイノルズ数Reを算出することができる。
Re=UD/(μ/ρ) ・・・(1)
【0021】
ここで、Uは特性流速[m/sec]、Dは特性長さ[m]、μは流体の粘性[Pa・s]、ρは流体の密度[kg/m3]である。レイノルズ数Reは粘性力と慣性力の比をあらわし、Reが大きいほど慣性力が強いことを意味する。粘性力とは、流体が動く(流れる)ときに流体自身が持つ粘性によって生じる摩擦抵抗のことであり、この力は周りの流体要素に引きずられて同様に動こうとする力となる。即ち、ある流速分布の流場において、その流線通りに流体が動こうとする力を表すので、レイノルズ数Reが低い(粘性力が高い)ほど、流れは乱れず流線に沿う層流となる。一方、慣性力はその逆を表し、流体が動いたことによって流体の質量によって生じる慣性のことであり、周りの流体要素に逆らって動こうとする力を表す。よって慣性力が強いほど、流体は粘性力に従うことなく勝手に振舞うことを意味するため、レイノルズ数Reが高い(慣性力が高い)ほど、流れは定常とならず混沌とする乱流となる。層流から乱流に推移する目安としてRe>2000といわれている。
【0022】
レイノルズ数Reは、流体の振る舞いがどれだけ秩序だつかを表す無次元の尺度であるので、流れの相似則として用いられる。例えば、ある管内の流れを考えたとき、その管径、または流体の粘性密度が異なっていても、レイノルズ数Reが同じであれば、その流れのパターンは同じになる。従って、フローセルの大きさが異なっていても(形は相似)、血液の密度や粘性が異なっていても、レイノルズ数Reからみて条件を満たせていれば、同様の測定をしたことになるので、正に測定条件そのものを数値で表現することができる。
【0023】
そこで、1.35L/minにおけるレイノルズ数Reを求める。式(1)の特性長さDとは、管の場合では管直径となる。現在のフローセルは断面が正方形で、この場合は正方形の辺の長さ、つまりD=10×10-3mとする。特性流速Uについては、
1.35[L/min]=1360[cm3/min]
=22.67[cm3/sec]
=22.67×103[mm3/sec]より、
U=(22.67×103[mm3/sec])/(100[mm2])
=226.7[mm/sec]
=0.2267[m/sec]
となる。
【0024】
粘性μと密度ρに対しては、血液のヘマトクリットまたはヘモグロビン量によって異なるため、ここでは典型的な値を採用する。成人男性の血液において、ρ=1.06×103[kg/m3]、μ=4.7×10-3[Pa・sec]であるから、これらを用いてレイノルズ数Reは、
Re=UD/(μ/ρ)=511.2
となる。よって、Re511.2以上でスペクトルは安定し、測定がし易くなる。
【0025】
レイノルズ数Reで分光の測定条件を言えば、流体が異なっていてもレイノルズ数Reが同じであれば同条件といえるため、流体における条件をいうには最もふさわしいパラメータであると考えられる。しかし、実際は血液の粘性と密度をその都度測定したりはしないため、流速Uで規定しても差し支えない。
【0026】
又、前記境界面に当たる光の波長は、600nm以下、より好ましくは500~600nmであることが良い。これは、図4(a)にHCTの微分スペクトルΔHCTを示す如く、波長500nm~600nmにおいて、ヘマトクリットHCTを変化させてもスペクトルに変化はほとんど見られないのに対し、図4(b)に血漿遊離ヘモグロビンfHbの微分スペクトルΔfHbを示す如く、溶血に関しては特徴があり、血漿遊離ヘモグロビンfHbに依存したヘモグロビンHbの吸光特性の特徴が得られ、この波長帯において血漿層境界反射分光ができるからである。一方、図5に示す如く600nm~800nmの波長帯においては、ヘモグロビンHbによる吸収は小さいため、赤血球による散乱光が検出され、図4に示した如く、ヘマトクリット及び溶血の変化に応じてスペクトルが変化した。
【0027】
なお、フローセルの材質によっては、入射角は45度以下に限定されず、又、全反射でなくても良く、更に、600nm以上の光波長であっても良い。
【0028】
本発明は、上記のような知見に基づいてなされたもので、血漿と屈折率が異なる透明な材料で形成されたフローセル中を流れる血液の該フローセルとの境界面に90度より浅い角度で斜め方向から第1の測定光を入射し、前記フローセルと血液の境界面で正反射された光を分光して、その吸収スペクトルから血漿成分の情報を取得することにより、前記課題を解決したものである。
【0029】
ここで、前記血漿成分の情報を血漿の屈折率とすることができる。
【0030】
又、前記反射された光を、前記境界面からの全反射光とすることができる。
【0031】
又、前記フローセルを流れる血液のレイノルズ数又は流量を、所定の範囲(例えばレイノルズ数Reでは511以上2000以下、流量では1.35L/min以上5.28L/min以下)とすることができる。
【0032】
又、前記境界面にあてる第1の測定光の波長を600nm以下とすることができる。
【0033】
又、前記境界面に対する第1の測定光の入射角度を45度以下とすることができる。
【0034】
又、透明な材料で形成されたフローセルの血液流路と平行な側壁と垂直に第2の測定光を入射した時に、該フローセルの血液流路を透過し、その反対側から出射する透過光を分光して、その吸収スペクトルから血球及び血漿成分の情報を取得し、前記方法で取得した血漿成分の情報と比較することで血球の情報を得ることができる。
【0035】
又、血液流路側を底面とする台形状とされたフローセルの側壁の一方の斜面に前記第1の測定光を入射して前記血漿成分の測定を行うと共に、同じフローセルの血液流路と平行な側壁と垂直に前記第2の測定光を入射して前記血球及び血漿成分の測定を行うことができる。
【0036】
又、前記血漿成分の測定と、前記血球及び血漿成分の測定を交互に行うことができる。
【0037】
本発明は、又、血液流路の一つの側壁が、外側に一対の斜面を有する、血漿と屈折率が異なる透明な材料で形成されたフローセルと、該フローセルの一方の斜面から第1の測定光を入射するための第1の光源と、前記フローセルの血液流路と血液の境界面で反射され、該フローセルの他方の斜面から出射する反射光を分光して、その吸収スペクトルから血漿成分の情報を得るための第1の分光手段と、を備えたことを特徴とする血液情報の測定装置により、前記課題を解決したものである。
【0038】
ここで、前記透明な材料を、ガラス、プラスチック及び/又はパラフィンとすることができる。
【0039】
又、フローセルの血液流路と平行な側壁と垂直に第2の測定光を入射するための第2の光源と、前記フローセルの血液流路を透過し、その反対側から出射する透過光を分光して、その吸収スペクトルから血球及び血漿成分の情報を取得するための第2の分光手段と、該第2の分光手段で取得した血球及び血漿成分の情報を、前記第1の分光手段で取得した血漿成分の情報と比較して、血球の情報を得るための計算手段と、を更に備えることができる。
【0040】
又、前記第1及び/又は第2の光源を白色光源とすることができる。
【0041】
又、前記フローセルの一つの側壁を、血液流路側を底面とする台形状とし、前記血漿成分の情報を得るためのフローセルと、前記血球及び血漿成分の情報を得るためのフローセルを共通とすることができる。
【0042】
又、前記血漿成分の情報を得るためのフローセルと、前記血球及び血漿成分の情報を得るためのフローセルを独立して設けることができる。
【発明の効果】
【0043】
本発明によれば、血液成分を機械的又は化学的処理によって分離することなく、ヘマトクリットに依存しない血漿成分のみの情報を非侵襲且つ連続的に測定することにより、溶血や血液凝固度などの血液情報を得ることが可能となる。従って、溶血や血栓の非侵襲連続計測が可能となり、抗凝固剤の薬剤効果や血球損傷度を知ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の原理を示すための概略図
【図2】同じく流量とスペクトルの関係の例を示す図
【図3】同じく図2に示した流量に対するスペクトルの変化率を示す図
【図4】同じく(a)ヘマトクリットHCTと(b)血漿遊離ヘモグロビンfHbの微分スペクトルを比較して示す図
【図5】同じくヘモグロビンHbの吸光特性を示す図
【図6】本発明の第1実施形態の構成を示す断面図
【図7】本発明の第2実施形態の構成を示す断面図
【図8】本発明の第3実施形態の構成を示す概略図
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下図面を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明する。

【0046】
本発明の第1実施形態は、図6に示す如く、断面が正方形の管状に形成された、血液流路を構成するガラス管42、該ガラス管42の一つの側壁(図では下方の側壁)に固定された台形状のガラス容器44、該ガラス容器44内に充填された液体パラフィン46で構成されるフローセル40と、白色光源50と、該白色光源50で発生された白色光を前記ガラス容器44の一方の斜面(図では左側の斜面)44Aにコリメータレンズ54を介して第1の測定光(入射光)30として入射するための入射ファイバ52と、血液10とガラス管42との境界面で正反射され、コリメータレンズ56を介して前記ガラス容器44の他方の斜面(図では右側の斜面)44Bから出射する反射光32を検出するための受光ファイバ58と、該受光ファイバ58により得られた反射光を分光して、その吸収スペクトルから血漿成分の情報Npを得るための第1の分光光度計60と、を備えている。

【0047】
前記ガラス管42は、例えば、ガラス壁厚さが1.25mm、角管部42Aの断面が10mm×10mmの正方形、長さが42.5mm、入口側と出口側の円管部42Bの直径が4.5mm、長さが15mmとされている。又、前記液体パラフィン46が充填する空間は、内径30mm、深さ15mmのシリンダ状とされている。

【0048】
前記白色光源50としては、例えば波長300nm~1100nmのハロゲン白色光源を用いることができる。

【0049】
以下、作用を説明する。

【0050】
前記フローセル40のガラス容器44の側面に入射ファイバ52で導いた白色光を入射する。入射軸とガラス側面とのなす角度は、ガラスを透過し、且つガラス・血漿層の境界で全反射する角度とする。反射光32を受光ファイバ58を介して第1の分光光度計60に導き、吸収スペクトルを求めることで、光の吸収率にかかわる屈折率Np-iを求めることができる。

【0051】
次に、本発明の第2実施形態を説明する。

【0052】
本実施形態は、図7に示す如く、第2の白色光源70と、第1実施形態と同様のフローセル40の血液流路(ガラス管42)と平行な側壁(図では下側の頂面)44Cから入射ファイバ72を介して白色光を入射し、該フローセル40の血液流路を透過し、その反対側42Cから出射する透過光を受光ファイバ74を介して受光し、その吸収スペクトルから血球及び血漿成分MCV、MCHC、HCT、Npの情報を得るための第2の分光光度計76と、該第2の分光光度計76で取得した血球及び血漿成分の情報を、前記第1実施形態の第1の分光光度計60で取得した血漿成分の情報Npと比較して、血球の情報MCV、MCHC、HCTを得るためのコンピュータ78を更に備えたものである。

【0053】
この第2実施形態においては、ガラス容器44の台形頂面44Cに入射ファイバ72で導いた白色光を垂直に入射する。光はガラスを透過し、更に血液を透過してフローセル入射反対面42Cに設置してある受光ファイバ74により受光し、第2の分光光度計76に導いて吸光スペクトルを計測する。第1実施形態と異なり、この計測の場合は、血液内は光が伝搬するため、光は主に赤血球によって吸収及び散乱される。代表的吸収体はヘモグロビンであるため、ヘモグロビンによる吸収が少ない、波長600nm以上の波長帯のスペクトルを用いる。更に、ヘモグロビンの吸収は血液酸素飽和度によって異なるが、これに対処するため、等吸収波長(酸素飽和度に吸収が依存しない波長)805nmにおける受光強度を基準にする。即ち、805nmを中心として、次に散乱に対する波長依存性が無い±30nmの範囲(775nm~835nm)の吸光スペクトルを用いる。

【0054】
一方で、この計測状態をコンピュータ78に入力し、発明者等が非特許文献1や2で提案した血液内光伝搬のモンテカルロ・シミュレーション(photon-cell interactive Monte Carlo simulation:pciMC)を行う。このシミュレーションは、血液の入力パラメータが、MCV、MCHC、HCT、Npとなっているので、Npは、第1実施形態により求めた値を入力する。他の3変数に関しては、適当な値を初期値として入力する。臨床上あり得る範囲を十分包含した範囲として、例えばMCVの範囲は70~110fL、MCHCは25~40g/dL、HCTの範囲は20~60%とすることができる。又、波長についても、775~835nmの範囲で設定し、pciMCシミュレーションを行って吸収スペクトルを得る。シミュレーション上で得られたスペクトルと、実際に計測されたスペクトルが一致するときのpciMCの入力値であるMCV、MCHC、HCTを探査する逆問題を行う(逆モンテカルロ法)。実際は、上記の入力パラメータの全範囲を予めシミュレーションして、そのデータベースを構築しておき、該データベース内から、計測結果と一致するMCV、MCHC、HCTを探索するという方法をとり、計算のコストを最小にすることができる。

【0055】
なお、第2実施形態では、台形型セル側面から光を照射することにより、光は境界で全反射することになるため、赤血球散乱は理論上0となる。従って、第1実施形態と比較して、ノイズが低減され、より純粋に血漿の屈折率情報を抽出できるようになるため、第1実施形態よりも精度高く計測することが可能となる。

【0056】
又、第2実施形態では、血漿成分及び血球成分を共に計測するため、入射箇所及び受光箇所がそれぞれ2箇所あるが、互いの光が干渉するのを避けるため、切換装置80を設けて、白色光源50と70を交互にオンオフし、血漿計測の入射と血球計測の入射を交互に行うことができる。このスイッチング周波数は1Hz程度とし、血漿計測をしている最中に血球出力計算、血球計測をしている最中に血漿出力計算をそれぞれ行って、スイッチング周波数間隔で、互いの計測値を間断なく出力することができる。

【0057】
あるいは、図8に示す第3実施形態のように、血漿計測用のフローセル40と別体の血球計測用のフローセル41をタンデムに配置して、血漿計測と血球計測を常時行うこともできる。この場合には、血液の流量に応じた遅延を行う遅延回路82を設けて、同じ血液部分の情報を得るように構成することができる。ここで遅延時間は、血液の流量を測定し、それに応じて変化させたり、あるいは、血液の流量を一定として、一定の遅延時間とすることができる。なお、血球計測用のフローセル41は、台形状でなく、単純な筒状であっても良い。

【0058】
前記実施形態においては、ガラス管42の断面積が1cm2とされていたが、血液流量が少ない場合には、小さくすることもできる。光源もハロゲン白色光源に限定されない。
【符号の説明】
【0059】
10…血液
12…血漿(層)
14…赤血球
30…入射光(第1の測定光)
32…反射光
40…フローセル
42…ガラス管(血液流路)
44…(台形状)ガラス容器
44A、44B…斜面
44C…頂面
46…液体パラフィン
50、70…白色光源
52、72…入射ファイバ
58、74…受光ファイバ
60、76…分光光度計
78…コンピュータ
80…切換装置
82…遅延回路
図面
【図1】
0
【図3】
1
【図5】
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【図6】
3
【図7】
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【図8】
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【図2】
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【図4】
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