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明細書 :固体電子装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B1)
特許番号 特許第5278717号 (P5278717)
登録日 平成25年5月31日(2013.5.31)
発行日 平成25年9月4日(2013.9.4)
発明の名称または考案の名称 固体電子装置
国際特許分類 H01G   4/33        (2006.01)
FI H01G 4/06 102
請求項の数または発明の数 1
全頁数 28
出願番号 特願2012-551406 (P2012-551406)
出願日 平成24年10月25日(2012.10.25)
国際出願番号 PCT/JP2012/077624
優先権出願番号 2011245916
優先日 平成23年11月9日(2011.11.9)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成24年11月12日(2012.11.12)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】下田 達也
【氏名】▲徳▼光 永輔
【氏名】尾上 允敏
【氏名】宮迫 毅明
早期審査対象出願または早期審理対象出願 早期審査対象出願
個別代理人の代理人 【識別番号】100125450、【弁理士】、【氏名又は名称】河野 広明
審査官 【審査官】田中 晃洋
参考文献・文献 特開2007-051050(JP,A)
ALMEIDA J. S., SOMBRA A. S. B. , ALMEIDA J. S., FERNANDES T. S. M., SALES A. J. M., SILVA M. A. S., JUNIOR G. F. M. P., RODRIGUES H. O., SOMBRA A. S. B. , FERNANDES T. S. M., SALES A. J. M., JUNIOR G. F. M. P., RODRIGUES H. O.,Study of the structural and dielectric properties of Bi2O3 and PbO addition on BiNbO4 ceramic matrix for RF applications,J Mater Sci Mater Electron,英国,2011年 8月,Vol.22 No.8,Page.978-987
調査した分野 H01G 4/33
要約 本発明の1つの固体電子装置は、ビスマス(Bi)とニオブ(Nb)とからなる酸化物層(不可避不純物を含み得る)を備え、酸化物層が、パイロクロア型結晶構造及び/又はβ-BiNbO型結晶構造の結晶相を有し、酸化物層中の炭素含有率が1.5atm%以下である。
特許請求の範囲 【請求項1】
ビスマス(Bi)とニオブ(Nb)とからなる酸化物層(不可避不純物を含み得る)を備え、
前記酸化物層が、(Bi1.5Zn0.5)(Zn0.5Nb1.5)Oと略同じ構造であるパイロクロア型結晶構造の結晶相を有し、
前記酸化物層中の炭素含有率が1.5atm%以下である、
キャパシタ。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、固体電子装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、固体電子装置においては、高速動作の期待できる強誘電体薄膜を備えた装置が開発されている。固体電子装置に用いる誘電体材料として、金属酸化物が現在盛んに開発されているが、Pbを含まず、比較的低温で焼成可能な誘電セラミックスとして、BiNbOが挙げられる。このBiNbOについては、固相成長法によって形成されたBiNbOの誘電特性が報告されている(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【0003】

【非特許文献1】Effect of phase transition on the microwave dielectric properties of BiNbO4, Eung Soo Kim, Woong Choi, Journal of the European Ceramic Society 26 (2006) 1761-1766
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、固相成長法によって形成されたBiNbOによる絶縁体においては、比誘電率が大きくなく、固体電子装置の絶縁体として用いるには、さらに誘電特性を向上させる必要がある。
【0005】
また、製造面においても工業性ないし量産性に優れた製造方法によって得られる絶縁体を備えた固体電子装置が望まれる。
【0006】
従って、本発明は、固体電子装置として適用可能な電気特性を備えるとともに、製造プロセスが簡素である工業性ないし量産性に優れた固体電子装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明者らは、キャパシタや薄膜トランジスタ等の固体電子装置に適用することができるとともに、安価で簡便な手法を用いても形成することができる酸化物の研究に鋭意取り組んだ。多くの試行錯誤を重ねた結果、発明者らは、従来から広く採用されてきた酸化物に代わるある特定の酸化物材料が、比較的廉価であるとともに製造工程の簡素化がより図れ、比較的高い絶縁性と比誘電率を備えていることを知見した。また、その酸化物が固体電子装置にも適用が可能であることを知見した。本発明は上述の視点に基づいて創出された。
【0008】
第1の態様に係る固体電子装置は、ビスマス(Bi)とニオブ(Nb)とからなる酸化物層(不可避不純物を含み得る)を備え、酸化物層が、パイロクロア型結晶構造及び/又はβ-BiNbO型結晶構造の結晶相を有し、酸化物層中の炭素含有率が1.5atm%以下である。
【0009】
第2の態様に係る固体電子装置は、酸化物層が、パイロクロア型結晶構造及びβ-BiNbO型結晶構造の結晶相を有する。
【0010】
第3の態様に係る固体電子装置は、パイロクロア型結晶構造が、(Bi1.5Zn0.5)(Zn0.5Nb1.5)Oと略同じ構造である。
【0011】
第4の態様に係る固体電子装置は、前記酸化物層が、さらにアモルファス相を有する。
【0012】
第5の態様に係る固体電子装置は、キャパシタである。
【0013】
第6の態様に係る固体電子装置は、半導体装置である。
【0014】
第7の態様に係る固体電子装置は、MEMSデバイスである。
【発明の効果】
【0015】
第1の態様に係る固体電子装置によれば、高い比誘電率を有し、リーク電流が抑制された絶縁層となる酸化物を備えるので、電気特性が良好な固体電子装置を得ることが可能となる。
【0016】
第2の態様に係る固体電子装置から第3の態様に係る固体電子装置によれば、より優れた電気特性を得ることができる。
【0017】
第4の態様に係る固体電子装置によれば、リーク電流の低減を図ることができる。
【0018】
第5の態様に係る固体電子装置によれば、電気特性が良好なキャパシタを提供することが可能となる。
【0019】
第6の態様に係る固体電子装置によれば、電気特性が良好な半導体装置を提供することが可能となる。
【0020】
第7の態様に係る固体電子装置によれば、電気特性が良好なMEMSデバイスを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1の実施形態における固体電子装置の一例である薄膜キャパシタの全体構成を示す図である。
【図2】本発明の第1の実施形態における薄膜キャパシタの製造方法の一過程を示す断面模式図である。
【図3】本発明の第1の実施形態における薄膜キャパシタの製造方法の一過程を示す断面模式図である。
【図4】本発明の第1の実施形態における薄膜キャパシタの製造方法の一過程を示す断面模式図である。
【図5】本発明の第1の実施形態における薄膜キャパシタの製造方法の一過程を示す断面模式図である。
【図6】本発明の第2の実施形態における薄膜キャパシタの製造方法の一過程を示す断面模式図である。
【図7】本発明の第2の実施形態における薄膜キャパシタの製造方法の一過程を示す断面模式図である。
【図8】本発明の第2の実施形態における薄膜キャパシタの製造方法の一過程を示す断面模式図である。
【図9】本発明の第2の実施形態における薄膜キャパシタの製造方法の一過程を示す断面模式図である。
【図10】本発明の第2の実施形態における固体電子装置の一例である薄膜キャパシタの全体構成を示す図である。
【図11】本発明の第3の実施形態における固体電子装置の一例である薄膜キャパシタの全体構成を示す図である。
【図12】本発明の第3の実施形態における薄膜キャパシタの製造方法の一過程を示す断面模式図である。
【図13】本発明の第3の実施形態における薄膜キャパシタの製造方法の一過程を示す断面模式図である。
【図14】本発明の第3の実施形態における薄膜キャパシタの製造方法の一過程を示す断面模式図である。
【図15】本発明の第3の実施形態における薄膜キャパシタの製造方法の一過程を示す断面模式図である。
【図16】本発明の第3の実施形態における薄膜キャパシタの製造方法の一過程を示す断面模式図である。
【図17】本発明の第3の実施形態における薄膜キャパシタの製造方法の一過程を示す断面模式図である。
【図18】本発明の第3の実施形態における薄膜キャパシタの製造方法の一過程を示す断面模式図である。
【図19】本発明の第3の実施形態における薄膜キャパシタの製造方法の一過程を示す断面模式図である。
【図20】本発明の第3の実施形態における薄膜キャパシタの製造方法の一過程を示す断面模式図である。
【図21】本発明の第3の実施形態における薄膜キャパシタの製造方法の一過程を示す断面模式図である。
【図22】本発明の第4の実施形態における薄膜キャパシタの製造方法の一過程を示す断面模式図である。
【図23】本発明の第4の実施形態における薄膜キャパシタの製造方法の一過程を示す断面模式図である。
【図24】本発明の第4の実施形態における薄膜キャパシタの製造方法の一過程を示す断面模式図である。
【図25】本発明の第4の実施形態における固体電子装置の一例である薄膜キャパシタの全体構成を示す図である。
【図26】本発明の第1の実施形態における絶縁層となる酸化物層の結晶構造を示す断面TEM写真及び電子線回析像である。
【図27】比較例における絶縁層となる酸化物層の結晶構造を示す断面TEM写真及び電子線回析像である。
【符号の説明】
【0022】
10 基板
20,220,320,420 下部電極層
220a,320a,420a 下部電極層用前駆体層
30,230,330,430 酸化物層
30a,230a,330a,430a 酸化物層用前駆体層
40,240,340,440 上部電極層
240a,340a,440a 上部電極層用前駆体層
100,200,300,400 固体電子装置の一例である薄層キャパシタ
M1 下部電極層用型
M2 絶縁層用型
M3 上部電極層用型
M4 積層体用型
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の実施形態である固体電子装置を、添付する図面に基づいて詳細に述べる。なお、この説明に際し、全図にわたり、特に言及がない限り、共通する部分には共通する参照符号が付されている。また、図中、本実施形態の要素は必ずしも互いの縮尺を保って記載されるものではない。さらに、各図面を見やすくするために、一部の符号が省略され得る。

【0024】
<第1実施形態>
1.本実施形態の薄膜キャパシタの全体構成
図1は、本実施形態における固体電子装置の一例である薄膜キャパシタ100の全体構成を示す図である。図1に示すように、薄膜キャパシタ100は、基板10上に、基板10の側から下部電極層20、誘電体から構成される絶縁層である酸化物層30及び上部電極層40を備える。また、本実施形態はこの構造に限定されない。また、図面を簡略化するため、各電極層からの引き出し電極層のパターニングについての記載は省略する。

【0025】
基板10は、例えば、高耐熱ガラス、SiO/Si基板、アルミナ(Al)基板、STO(SrTiO)基板、Si基板の表面にSiO層及びTi層を介してSTO(SrTiO)層を形成した絶縁性基板等)、半導体基板(例えば、Si基板、SiC基板、Ge基板等)を含む、種々の絶縁性基材を用いることができる。

【0026】
下部電極層20及び上部電極層40の材料としては、白金、金、銀、銅、アルミ、モリブデン、パラジウム、ルテニウム、イリジウム、タングステン、などの高融点金属、あるいはその合金等の金属材料が用いられる。

【0027】
本実施形態においては、誘電体から構成される絶縁層が、ビスマス(Bi)とニオブ(Nb)とからなる(不可避不純物を含み得る)酸化物層30で構成されている。なお、ビスマス(Bi)とニオブ(Nb)とからなる酸化物層は、BNO層とも呼ばれる。また、酸化物層30は、結晶相及びアモルファス相を含んでいることが確認された。より詳細には、酸化物層30は、結晶相、微結晶相、及びアモルファス相を含む。なお、本出願において、「微結晶相」とは、ある層状の材料が形成されている場合に、その層の膜厚方向の上端から下端に至るまで一様に成長した結晶相ではない結晶相を意味する。より具体的には、BNO酸化物層は、A(但し、Aは金属元素、Bは遷移金属元素、以下、同じ)の一般式で示されるパイロクロア型結晶構造の微結晶相及び三斜晶(triclinic)のβ-BiNbO型結晶構造の結晶相のうちの少なくとも一方を有する。

【0028】
パイロクロア型結晶構造は、特に(Bi1.5Zn0.5)(Zn0.5Nb1.5)O型構造であるか、あるいは(Bi1.5Zn0.5)(Zn0.5Nb1.5)O型構造と略同一ないし近似するので、薄層キャパシタの絶縁層として、良好な電気特性が得ることが可能となる。さらに、絶縁層となる酸化物層は、パイロクロア型結晶構造の微結晶相及びβ-BiNbO型結晶構造の結晶相の双方を有することによって、固体電子装置の絶縁層として、より良好な電気特性が得ることが可能となる。

【0029】
また、酸化物層30中の炭素含有率が1.5atm%以下である、酸化物層中の炭素含有率が1.5atm%以下であることによって、リーク電流を抑制することができ、絶縁層となる酸化物層の電気特性が向上する。

【0030】
2.薄膜キャパシタ100の製造方法
次に薄膜キャパシタ100の製造方法の例を説明する。本実施形態においては、いわゆる溶液法に基づく製造方法について説明しているが、この方法に限られるものではない。他の実施形態についても同様である。なお、本出願における温度の表示は、ヒーターの設定温度を表している。図2乃至図5は、それぞれ、薄膜キャパシタ100の製造方法の一過程を示す断面模式図である。図2に示すように、まず、基板10上に下部電極層20が形成される。次に、下部電極層20上に酸化物層30が形成されて、その後、酸化物層30上に上部電極層40が形成される。

【0031】
(1)下部電極層の形成
図2は、下部電極層20の形成工程を示す図である。本実施形態においては、薄膜キャパシタ100の下部電極層20が、白金(Pt)によって形成される例を説明する。下部電極層20は、公知のスパッタリング法により基板10上に白金(Pt)よりなる層が形成される。

【0032】
(2)絶縁層としての酸化物層の形成
次に、下部電極層20上に酸化物層30が形成される。酸化物層30は、(a)前駆体層の形成及び予備焼成の工程、(b)本焼成の工程の順で形成される。図3及び図5は、酸化物層30の形成工程を示す図である。本実施形態においては、薄膜キャパシタ100の製造工程の酸化物層30が、ビスマス(Bi)とニオブ(Nb)とからなる酸化物によって形成される例を説明する。

【0033】
(a)前駆体層の形成及び予備焼成
図3に示すように、下部電極層20上に、公知のスピンコーティング法により、ビスマス(Bi)を含む前駆体及びニオブ(Nb)を含む前駆体を溶質とする前駆体溶液(前駆体溶液という。以下、前駆体の溶液に対して同じ。)を出発材とする前駆体層30aが形成される。ここで、酸化物層30のためのビスマス(Bi)を含む前駆体の例は、オクチル酸ビスマス、塩化ビスマス、硝酸ビスマス、又は各種のビスマスアルコキシド(例えば、ビスマスイソプロポキシド、ビスマスブトキシド、ビスマスエトキシド、ビスマスメトキシエトキシド)が採用され得る。また、本実施形態における酸化物層30のためのニオブ(Nb)を含む前駆体の例は、オクチル酸ニオブ、塩化ニオブ、硝酸ニオブ、又は各種のニオブアルコキシド(例えば、ニオブイソプロポキシド、ニオブブトキシド、ニオブエトキシド、ニオブメトキシエトキシド)が採用され得る。また、前駆体溶液の溶媒は、エタノール、プロパノール、ブタノール、2-メトキシエタノール、2-エトキシエタノール、2-ブトキシエタノールの群から選択される1種のアルコール溶媒、又は酢酸、プロピオン酸、オクチル酸の群から選択される1種のカルボン酸である溶媒であることが好ましい。

【0034】
その後、予備焼成として、酸素雰囲気中又は大気中(総称して、「酸素含有雰囲気中」ともいう。)で所定の時間、80℃以上250℃以下の温度範囲で予備焼成を行う。予備焼成では、前駆体層30a中の溶媒を十分に蒸発させるとともに、将来的な塑性変形を可能にする特性を発現させるために好ましいゲル状態(熱分解前であって有機鎖が残存している状態と考えられる)が形成される。前述の観点をより確度高く実現するために、予備焼成温度は、80℃以上250℃以下が好ましい。また、前述のスピンコーティング法による前駆体層30aの形成及び予備焼成を複数回繰り返すことによって、酸化物層30の所望の厚みを得ることができる。

【0035】
(b)本焼成
その後、本焼成として、前駆体層30aを、酸素雰囲気中(例えば100体積%であるが、これに限定されない)で、所定の時間、520℃以上650℃以下の範囲の温度で加熱する。その結果、図4に示すように、電極層上に、ビスマス(Bi)とニオブ(Nb)とからなる酸化物層30(不可避不純物を含み得る。以下、同じ。)が形成される。ここで、溶液法における本焼成として、酸化物層を形成するための加熱温度は、520℃以上650℃以下であるが、上限を限定するものではない。しかし、加熱温度が、650℃を超える場合は、酸化物層の結晶化が進み、リーク電流量が顕著に増大してしまう傾向にある点から、加熱温度を650℃以下とすることがより好ましい。一方、加熱温度が、520℃未満の場合は、前駆体溶液の溶媒及び溶質中の炭素が残存し、リーク電流量が顕著に増大してしまうので、加熱温度は、520℃以上650℃以下とすることが好ましい。

【0036】
酸化物層30の結晶構造は、前駆体層30aの本焼成の温度により異なる。本実施形態においては、本焼成の温度が600℃及び650℃の場合に、β-BiNbO型結晶構造の結晶相が得られる。また、本焼成の温度が520℃、530℃、及び550℃の場合に、パイロクロア型結晶構造の微結晶相及びβ-BiNbO型結晶構造の結晶相の双方を得ることができる。

【0037】
また、酸化物層30の膜厚の範囲は30nm以上が好ましい。酸化物層30の膜厚が30nm未満になると、膜厚の減少に伴うリーク電流及び誘電損失の増大により、固体電子装置に適用するには、実用的ではなくなるため好ましくない。

【0038】
なお、酸化物層30におけるビスマス(Bi)及びニオブ(Nb)の原子組成比と、1KHzにおける比誘電率並びに0.5MV/cm印加時のリーク電流値の関係について測定した結果を表1に示す。

【0039】
【表1】
JP0005278717B1_000002t.gif

【0040】
ビスマス(Bi)及びニオブ(Nb)の原子組成比については、ラザフォード後方散乱分光法(RBS法)を用いて、ビスマス(Bi)及びニオブ(Nb)の元素分析を行い、ビスマス(Bi)及びニオブ(Nb)の原子組成比を求めた。比誘電率並びにリーク電流値の測定方法の詳細については後述しているが、表1については、1KHzの交流電圧印加時の比誘電率と、0.5MV/cmの電圧印加時のリーク電流値の結果を示している。表1に示すように、酸化物層30におけるビスマス(Bi)及びニオブ(Nb)の原子組成比については、(Bi)が1としたときにニオブ(Nb)が0.8以上3.3以下の範囲内においては、比誘電率並びにリーク電流値は、デバイスとして適用可能な値を示していた。

【0041】
(3)上部電極層の形成
次に、酸化物層30上に上部電極層40が形成される。図5は、上部電極層40の形成工程を示す図である。本実施形態においては、薄膜キャパシタ100の上部電極層40が、白金(Pt)によって形成される例を説明する。上部電極層40は、下部電極層20と同様、公知のスパッタリング法により酸化物層30上に白金(Pt)よりなる層が形成される。

【0042】
本実施形態によれば、ビスマス(Bi)とニオブ(Nb)とからなる酸化物層を備え、酸化物層が、パイロクロア型結晶構造及び/又はβ-BiNbO型結晶構造の結晶相を有し、酸化物層中の炭素含有率が1.5atm%以下であるので、良好な電気特性を備えるとともに、簡素な製造プロセスにより製造することができるので、工業性ないし量産性に優れる固体電子装置を得ることができる。

【0043】
<第2実施形態>
1.本実施形態の薄膜キャパシタの全体構成
本実施形態においては、固体電子装置の一例である薄膜キャパシタの下部電極層及び上部電極層が、金属酸化物からなる導電性酸化物(不可避不純物を含みうる)で構成されている。本実施形態における固体電子装置の一例である薄膜キャパシタ200の全体構成は、図10に示されている。本実施形態は、下部電極層及び上部電極層が、金属酸化物からなる導電性酸化物で構成されている以外は第1実施形態と同じである。従って、本実施の形態の構成については、前述の図1と対応する構成には同一の参照符号を付して説明を省略し、異なる構成について説明する。図10に示すように、薄膜キャパシタ200は、基板10を有し、基板10上に、基板10の側から下部電極層220、誘電体から構成される絶縁層である酸化物層30、上部電極層240を備える。

【0044】
下部電極層220及び上部電極層240の例としては、ランタン(La)とニッケル(Ni)とからなる酸化物層、アンチモン(Sb)と錫(Sn)とからなる酸化物層、インジウム(In)と錫(Sn)とからなる酸化物(但し、不可避不純物を含み得る。以下、同じ。)を採用することができる。

【0045】
2.薄膜キャパシタ200の製造工程
次に薄膜キャパシタ200の製造方法を説明する。図6乃至図9は、それぞれ、薄膜キャパシタ200の製造方法の一過程を示す断面模式図である。図6に示すようにまず、基板10上に下部電極層220が形成される。次に、下部電極層220上に酸化物層30が形成されて、その後、上部電極層240が形成される。なお、薄膜キャパシタ200の製造工程においては、第1実施形態と重複する説明は省略する。

【0046】
(1)下部電極層の形成
図6及び図7は、下部電極層220の形成工程を示す図である。本実施形態においては、薄膜キャパシタ200の下部電極層220が、ランタン(La)とニッケル(Ni)とからなる導電用酸化物層によって形成される例を説明する。下部電極層220は、(a)前駆体層の形成及び予備焼成の工程、(b)本焼成の工程の順で形成される。

【0047】
(a)前駆体層の形成及び予備焼成
図6に示すように、基板10上に、公知のスピンコーティング法により、ランタン(La)を含む前駆体及びニッケル(Ni)を含む前駆体を溶質とする前駆体溶液(下部電極層用前駆体溶液という。以下、下部電極層用前駆体の溶液に対して同じ。)を出発材とする下部電極層用前駆体層220aが形成される。ここで、下部電極層220のためのランタン(La)を含む前駆体の例は、酢酸ランタンである。その他の例として、硝酸ランタン、塩化ランタン、又は各種のランタンアルコキシド(例えば、ランタンイソプロポキシド、ランタンブトキシド、ランタンエトキシド、ランタンメトキシエトキシド)が採用され得る。また、下部電極層用前駆体層220aのためのニッケル(Ni)を含む前駆体の例は、酢酸ニッケルである。その他の例として、硝酸ニッケル、塩化ニッケル、又は各種のニッケルアルコキシド(例えば、ニッケルインジウムイソプロポキシド、ニッケルブトキシド、ニッケルエトキシド、ニッケルメトキシエトキシド)が採用され得る。

【0048】
なお、下部電極層としてアンチモン(Sb)と錫(Sn)とからなる導電用酸化物層を採用する場合、アンチモン(Sb)を含む下部電極層用前駆体の例として、酢酸アンチモン、硝酸アンチモン、塩化アンチモン、又は各種のアンチモンアルコキシド(例えば、アンチモンイソプロポキシド、アンチモンブトキシド、アンチモンエトキシド、アンチモンメトキシエトキシド)が採用され得る。また、錫(Sn)を含む前駆体の例として、酢酸錫、硝酸錫、塩化錫、又は各種の錫アルコキシド(例えば、アンチモンイソプロポキシド、アンチモンブトキシド、アンチモンエトキシド、アンチモンメトキシエトキシド)が採用され得る。さらに、下部電極層としてインジウム(In)と錫(Sn)とからなる導電用酸化物を採用する場合、インジウム(In)を含む前駆体の例は、酢酸インジウム、硝酸インジウム、塩化インジウム、又は各種のインジウムアルコキシド(例えば、インジウムイソプロポキシド、インジウムブトキシド、インジウムエトキシド、インジウムメトキシエトキシド)が採用され得る。また、錫(Sn)を含む下部電極層用前駆体の例は、前述の例と同じである。

【0049】
その後、酸素含有雰囲気中で所定の時間、前述の第1実形態施の酸化物層と同様の理由により、80℃以上250℃以下の温度範囲で予備焼成を行う。また、前述のスピンコーティング法による下部電極層用前駆体層220aの形成及び予備焼成を複数回繰り返すことによって、下部電極層220の所望の厚みを得ることができる。

【0050】
(b)本焼成
その後、本焼成として、下部電極層用前駆体層220aを、酸素雰囲気中、約20分間、550℃に加熱する。その結果、図7に示すように、基板10上に、ランタン(La)とニッケル(Ni)とからなる下部電極層220(但し、不可避不純物を含み得る。以下、同じ。)が形成される。ここで、溶液法における本焼成として、導電用酸化物層を形成するための加熱温度は、第1実施形態の酸化物層と同様の理由により、520℃以上650℃以下が好ましい。なお、ランタン(La)とニッケル(Ni)とからなるとからなる導電用酸化物層は、LNO層とも呼ばれる。

【0051】
(2)絶縁層としての酸化物層の形成
次に、下部電極層220上に酸化物層30を形成する。本実施形態の酸化物層30は、第1実施形態と同様、(a)前駆体層の形成及び予備焼成の工程、(b)本焼成の工程の順で形成される。図8は、下部電極層220上に酸化物層30が形成された状態を示す図である。第1実施形態と同様、酸化物層30の膜厚の範囲は30nm以上が好ましい。

【0052】
(3)上部電極層の形成
次に、図9及び図10に示すように、上部電極層240を酸化物層30上に形成する。本実施形態においては、薄膜キャパシタ200の上部電極層240が、下部電極層220と同様に、ランタン(La)とニッケル(Ni)とからなる導電用酸化物層によって形成される例を説明する。上部電極層240は、下部電極層220と同様、(a)前駆体層の形成及び予備焼成の工程、(b)本焼成の工程の順で形成される。酸化物層30上に形成された下部電極層用前駆体層240aが、図9に示され、酸化物層30上に形成された上部電極層240が、図10に示されている。

【0053】
本実施形態においても、ビスマス(Bi)とニオブ(Nb)とからなる酸化物層を備え、酸化物層が、パイロクロア型結晶構造及び/又はβ-BiNbO型結晶構造の結晶相を有し、酸化物層中の炭素含有率が1.5atm%以下であるので、良好な電気特性を備えるとともに、簡素な製造プロセスにより製造することができるので、工業性ないし量産性に優れる固体電子装置を得ることができる。また、下部電極層、絶縁層となる酸化物層、及び上部電極層すべてが金属酸化物によって構成され、真空プロセスを用いることなく全ての工程を酸素含有雰囲気中で行うことができるため、工業性ないし量産性を格段に高めることが可能となる。

【0054】
<第3実施形態>
1.本実施形態の薄膜キャパシタの全体構成
本実施形態においては、固体電子装置の一例である薄膜キャパシタの全ての層の形成過程において型押し加工が施されている。本実施形態における固体電子装置の一例である薄膜キャパシタ300の全体構成は、図11に示されている。本実施形態では、下部電極層及び酸化物層が、型押し加工を施されている以外は第2実施形態と同じである。従って、本実施の形態の構成については、前述の図6と対応する構成には同一の参照符号を付して説明を省略し、異なる構成について説明する。図11に示すように、薄膜キャパシタ300は、基板10を有し、基板10上に、基板10の側から下部電極層320、誘電体から構成される絶縁層である酸化物層330、上部電極層340を備える。

【0055】
ところで、本願において、「型押し」は「ナノインプリント」と呼ばれることもある。

【0056】
2.薄膜キャパシタ300の製造工程
次に薄膜キャパシタ300の製造方法を説明する。図12乃至図21は、それぞれ、薄膜キャパシタ300の製造方法の一過程を示す断面模式図である。薄膜キャパシタ300は、まず基板10上に型押し加工が施された下部電極層320が形成される。次に、下部電極層320上に型押し加工が施された酸化物層330が形成される。その後、酸化物層330上に上部電極層340が形成される。薄膜キャパシタ300の製造工程においても第2実施形態と重複する説明は省略する。

【0057】
(1)下部電極層の形成
本実施形態においては、薄膜キャパシタ300の下部電極層320が、ランタン(La)とニッケル(Ni)とからなる導電用酸化物層によって形成される例を説明する。下部電極層320は、(a)前駆体層の形成及び予備焼成の工程、(b)型押し加工の工程、(c)本焼成の工程の順で形成される。初めに、基板10上に、公知のスピンコーティング法により、ランタン(La)を含む前駆体及びニッケル(Ni)を含む前駆体を溶質とする下部電極層用前駆体溶液を出発材とする下部電極層用前駆体層320aが形成される。

【0058】
その後、予備焼成として、酸素含有雰囲気中で所定の時間、下部電極層用前駆体層320aを80℃以上250℃以下の温度範囲で加熱する。また、前述のスピンコーティング法による下部電極層用前駆体層320aの形成及び予備焼成を複数回繰り返すことによって、下部電極層320の所望の厚みを得ることができる。

【0059】
(b)型押し加工
次に、下部電極層用前駆体層320aのパターニングを行うために、図12に示すように、80℃以上300℃以下の範囲内で加熱した状態で、下部電極層用型M1を用いて、1MPa以上20MPa以下の圧力で型押し加工が施される。型押し加工における加熱方法の例としては、チャンバー、オーブン等により、所定の温度雰囲気の状態にする方法、基板10を搭載する基台を下部からヒーターにより加熱する方法、また、予め80℃以上300℃以下に加熱した型を用いて型押し加工が施される方法等がある。この場合、基台を下部からヒーターにより加熱する方法と予め80℃以上300℃以下に加熱した型を併用することが加工性の面でより好ましい。

【0060】
なお、上述の型の加熱温度を80℃以上300℃以下としたのは、以下の理由による。型押し加工時の加熱温度が80℃未満である場合には、下部電極層用前駆体層320aの温度が低下することに起因して下部電極層用前駆体層320aの塑性変形能力が低下することになるため、型押し構造の成型時の成型の実現性、又は成型後の信頼性ないし安定性が乏しくなる。また、型押し加工時の加熱温度が300℃を超える場合には、塑性変形能の根源である有機鎖の分解(酸化熱分解)が進むため、塑性変形能力が低下するからである。さらに、前述の観点から言えば、下部電極層用前駆体層320aを、型押し加工の際、100℃以上250℃以下の範囲内で加熱することは、さらに好ましい一態様である。

【0061】
また、型押し加工における圧力は、1MPa以上20MPa以下の範囲内の圧力であれば、下部電極層用前駆体層320aが型の表面形状に追随して変形するようになり、所望の型押し構造を高い精度で形成することが可能となる。また、型押し加工が施される際に印加する圧力を1MPa以上20MPa以下という低い圧力範囲に設定する。その結果、型押し加工が施される際に型が損傷し難くなるとともに、大面積化にも有利となる。

【0062】
その後、下部電極層用前駆体層320aを全面エッチングする。その結果、図13に示すように、下部電極層に対応する領域以外の領域から下部電極層用前駆体層320aを完全に除去する(下部電極層用前駆体層320aの全面に対するエッチング工程)。

【0063】
また、上述の型押し加工において、予め、型押し面が接触することになる各前駆体層の表面に対する離型処理及び/又はその型の型押し面に対する離型処理を施しておき、その後、各前駆体層に対して型押し加工が施されることが好ましい。そのような処理を施す。その結果、各前駆体層と型との間の摩擦力を低減することができるため、各前駆体層に対してより一層精度良く型押し加工が施されることが可能となる。なお、離型処理に用いることができる離型剤としては、界面活性剤(例えば、フッ素系界面活性剤、シリコン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤等)、フッ素含有ダイヤモンドライクカーボン等を例示することができる。

【0064】
(c)本焼成
次に、下部電極層用前駆体層320aに対して本焼成を行う。その結果、図14に示すように、基板10上に、ランタン(La)とニッケル(Ni)とからなる下部電極層320(但し、不可避不純物を含み得る。以下、同じ。)が形成される。

【0065】
(2)絶縁層となる酸化物層の形成
次に、下部電極層320上に絶縁層となる酸化物層330を形成する。酸化物層330は、(a)前駆体層の形成及び予備焼成の工程、(b)型押し加工の工程、(c)本焼成の工程の順で形成される。図15乃至図18は、酸化物層330の形成工程を示す図である。

【0066】
(a)前駆体層の形成及び予備焼成
図15に示すように、基板10及びパターニングされた下部電極層320上に、第2実施形態と同様に、ビスマス(Bi)を含む前駆体及びニオブ(Nb)を含む前駆体を溶質とする前駆体溶液を出発材とする前駆体層330aを形成する。その後、酸素含有雰囲気中で、80℃以上250℃以下に加熱した状態で予備焼成を行う。

【0067】
(b)型押し加工
本実施形態では、図16に示すように、予備焼成のみを行った前駆体層330aに対して、型押し加工が施される。具体的には、酸化物層のパターニングを行うため、80℃以上300℃以下に加熱した状態で、絶縁層用型M2を用いて、1MPa以上20MPa以下の圧力で型押し加工が施される。

【0068】
その後、前駆体層330aを全面エッチングする。その結果、図17に示すように、酸化物層330に対応する領域以外の領域から前駆体層330aを完全に除去する(前駆体層330aの全面に対するエッチング工程)。なお、本実施形態の前駆体層330aのエッチング工程は、真空プロセスを用いることないウェットエッチング技術を用いて行われたが、プラズマを用いた、いわゆるドライエッチング技術によってエッチングされることを妨げない。

【0069】
(c)本焼成
その後、第2実施形態と同様に、前駆体層330aを本焼成する。その結果、図18に示すように、下部電極層320上に、絶縁層となる酸化物層330(但し、不可避不純物を含み得る。以下、同じ。)が形成される。本焼成として、前駆体層330aを、酸素雰囲気中で、所定時間520℃以上650℃以下の温度範囲で加熱する。

【0070】
なお、前駆体層330aの全面に対するエッチング工程を本焼成後に行うことも可能であるが、前述のように、型押し工程と本焼成の工程との間に、前駆体層を全体的にエッチングする工程が含まれることは、より好ましい一態様である。これは、各前駆体層を本焼成した後にエッチングするよりも容易に不要な領域を除去することが可能なためである。

【0071】
(3)上部電極層の形成
その後、酸化物層330上に、下部電極層320と同様に、公知のスピンコーティング法により、ランタン(La)を含む前駆体及びニッケル(Ni)を含む前駆体を溶質とする前駆体溶液を出発材とする上部電極層用前駆体層340aが形成される。その後、上部電極層用前駆体層340aに対して酸素含有雰囲気中において80℃以上250℃以下の温度範囲で加熱して予備焼成を行う。

【0072】
続いて、図19に示すように、予備焼成が行われた上部電極層用前駆体層340aのパターニングを行うため、上部電極層用前駆体層340aを、80℃以上300℃以下に加熱した状態で、上部電極層用型M3を用いて、上部電極層用前駆体層340aに対して1MPa以上20MPa以下の圧力で型押し加工が施される。その後、図20に示すように、上部電極層用前駆体層340aを全面エッチングすることにより、上部電極層340に対応する領域以外の領域から上部電極層用前駆体層340aを完全に除去する。

【0073】
さらにその後、図21に示すように、本焼成として、酸素雰囲気中で、上部電極層用前駆体層340aを、所定の時間、530℃乃至600℃に加熱することにより、酸化物層330上に、ランタン(La)とニッケル(Ni)とからなる上部電極層340(但し、不可避不純物を含み得る。以下、同じ。)が形成される。

【0074】
本実施形態においても、ビスマス(Bi)とニオブ(Nb)とからなる酸化物層を備え、酸化物層が、パイロクロア型結晶構造及び/又はβ-BiNbO型結晶構造の結晶相を有し、酸化物層中の炭素含有率が1.5atm%以下であるので、良好な電気特性を備えるとともに、簡素な製造プロセスにより製造することができるので、工業性ないし量産性に優れる固体電子装置を得ることができる。

【0075】
また、本実施形態では、基板10上に、基板10の側から下部電極層320、誘電体から構成される絶縁層である酸化物層330、上部電極層340を備える型押し加工が施されることによって型押し構造を形成する、型押し加工が採用されている。その結果、真空プロセスやフォトリソグラフィー法を用いたプロセス、あるいは紫外線の照射プロセス等、比較的長時間、及び/又は高価な設備を必要とするプロセスが不要になる。また、本実施形態では、溶液法及び型押し加工を採用する。その結果、上部電極層及び酸化物層が、いずれも簡便にパターニングされ得るため、本実施形態の薄膜キャパシタ300は、極めて工業性ないし量産性に優れている。

【0076】
<第4実施形態>
1.本実施形態の薄膜キャパシタの全体構成
本実施形態においても、固体電子装置の一例である薄膜キャパシタの全ての層の形成過程において型押し加工が施されている。本実施形態における固体電子装置の一例である薄膜キャパシタ400の全体構成は、図25に示されている。本実施形態では、下部電極層、酸化物層、及び上部電極層は、各々の前駆体層を積層した後に予備焼成が行なわれる。そして、予備焼成が行なわれた全ての前駆体層は、型押し加工を施された後に本焼成が行われる。従って、本実施の形態の構成については、前述の図11と対応する構成には同一の参照符号を付して説明を省略し、異なる構成について説明する。図25に示すように、薄膜キャパシタ400は、基板10を有し、基板10上に、基板10の側から下部電極層420、誘電体から構成される絶縁層である酸化物層430、上部電極層440を備える。

【0077】
2.薄膜キャパシタ400の製造工程
次に薄膜キャパシタ400の製造方法を説明する。図22乃至図24は、それぞれ、薄膜キャパシタ400の製造方法の一過程を示す断面模式図である。薄膜キャパシタ400は、まず基板10上に、下部電極層420の前駆体層である下部電極層用前駆体層420a、酸化物層430の前駆体層である前駆体層430a、上部電極層440の前駆体層である上部電極層用前駆体層440aの積層体が形成される。次に、この積層体に型押し加工が施され、本焼成が行われる。薄膜キャパシタ400の製造工程においては、第3実施形態と重複する説明は省略する。

【0078】
(1)前駆体層の積層体の形成
図22に示すように、まず基板10上に、下部電極層420の前駆体層である下部電極層用前駆体層420a、酸化物層430の前駆体層である前駆体層430a、上部電極層440の前駆体層である上部電極層用前駆体層440aの積層体が形成される。本実施形態においては、第3実施形態と同様、薄膜キャパシタ400の下部電極層420及び上部電極層440が、ランタン(La)とニッケル(Ni)とからなる導電用酸化物層によって形成され、絶縁層となる酸化物層430がビスマス(Bi)及びニオブ(Nb)とからなる酸化物層によって形成される例を説明する。初めに、基板10上に、公知のスピンコーティング法により、ランタン(La)を含む前駆体及びニッケル(Ni)を含む前駆体を溶質とする下部電極層用前駆体溶液を出発材とする下部電極層用前駆体層420aが形成される。その後、予備焼成として、酸素含有雰囲気中で所定の時間、下部電極層用前駆体層420aを80℃以上250℃以下の温度範囲で加熱する。また、前述のスピンコーティング法による下部電極層用前駆体層420aの形成及び予備焼成を複数回繰り返すことによって、下部電極層420の所望の厚みを得ることができる。

【0079】
次に、予備焼成が行われた下部電極層用前駆体層420a上に前駆体層430aを形成する。まず下部電極層用前駆体層420a上にビスマス(Bi)を含む前駆体及びニオブ(Nb)を含む前駆体を溶質とする前駆体溶液を出発材とする前駆体層430aを形成する。その後、予備焼成として、酸素含有雰囲気中で所定の時間、前駆体層430aを80℃以上250℃以下の温度範囲で加熱する。

【0080】
次に、予備焼成が行われた前駆体層430a上に、下部電極層用前駆体層420aと同様に、公知のスピンコーティング法により、ランタン(La)を含む前駆体及びニッケル(Ni)を含む前駆体を溶質とする前駆体溶液を出発材とする上部電極層用前駆体層440aが形成される。その後、上部電極層用前駆体層440aに対して酸素含有雰囲気中で80℃以上250℃以下の温度範囲で加熱して予備焼成を行う。

【0081】
(2)型押し加工
次に、各前駆体層の積層体(420a,430a,440a)のパターニングを行うために、図23に示すように、80℃以上300℃以下の範囲内で加熱した状態で、積層体用型M4を用いて、1MPa以上20MPa以下の圧力で型押し加工が施される。

【0082】
その後、各前駆体層の積層体(420a,430a,440a)を全面エッチングする。その結果、図24に示すように、下部電極層、酸化物層、及び上部電極層に対応する領域以外の領域から各前駆体層の積層体(420a,430a,440a)を完全に除去する(各前駆体層の積層体(420a,430a,440a)の全面に対するエッチング工程)。

【0083】
(3)本焼成
次に、各前駆体層の積層体(420a,430a,440a)に対して本焼成を行う。その結果、図25に示すように、基板10上に、下部電極層420、酸化物層430、上部電極層440が形成される。

【0084】
本実施形態においても、ビスマス(Bi)とニオブ(Nb)とからなる酸化物層を備え、酸化物層が、パイロクロア型結晶構造及び/又はβ-BiNbO型結晶構造の結晶相を有し、酸化物層中の炭素含有率が1.5atm%以下であるので、良好な電気特性を備えるとともに、簡素な製造プロセスにより製造することができるので、工業性ないし量産性に優れる固体電子装置を得ることができる。また、本実施形態では、予備焼成が行われた全ての酸化物層の前駆体層に対して型押し加工が行った後に本焼成が行われるので、より製造プロセスの簡素化を図ることが可能となる。

【0085】
<実施例>
以下、本発明をより詳細に説明するために、実施例及び比較例をあげて説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。

【0086】
実施例及び比較例については、以下の方法によって、固体電子装置の物性の測定及びBNO酸化物層の組成分析を実施した。
1.電気特性
(1)リーク電流
下部電極層と上部電極層の間に0.25MV/cmの電圧を印加して電流を測定した。この測定にはアジレントテクノロジー社製、4156C型を用いた。

【0087】
(2)誘電損失(tanδ)
実施例及び比較例の誘電損失は以下のようにして測定した。室温において、下部電極層と上部電極層の間に0.1Vの電圧、1KHzの交流電圧を印加して誘電損失を測定した。この測定には東陽テクニカ社製、1260-SYS型広帯域誘電率測定システムを用いた。

【0088】
(3)比誘電率
実施例及び比較例の比誘電率は以下のようにして測定した。下部電極層と上部電極層の間に0.1Vの電圧、1KHzの交流電圧を印加して比誘電率を測定した。この測定には東陽テクニカ社製、1260-SYS型広帯域誘電率測定システムを用いた。

【0089】
2.BNO酸化物層の炭素及び水素の含有率
National Electrostatics Corporation 製 Pelletron 3SDHを用いて、ラザフォード後方散乱分光法(Rutherford Backscattering Spectrometry:RBS分析法)、水素前方散乱分析法(Hydrogen Forward scattering Spectrometry:HFS分析法)、及び核反応解析法((Nuclear Reaction Analysis:NRA分析法)により元素分析を行い、実施例及び比較例におけるBNO酸化物層の炭素及び水素の含有率を求めた。

【0090】
3.BNO酸化物層の断面TEM写真及び電子線回析による結晶構造解析
実施例及び比較例におけるBNO酸化物層について断面TEM(Transmission Electron Microscopy)写真V及び電子線回析像による観察を行った。また、実施例及び比較例におけるBNO酸化物層の電子線回析像を用いて、ミラー指数及び原子間距離を求め、既知の結晶構造モデルとフィッティングを行うことにより構造解析を行った。既知の結晶構造モデルとして、(Bi1.5Zn0.5)(Zn0.5Nb1.5)O,β-BiNbO、及びBiNbOを用いた。

【0091】
(実施例1)
実施例1においては、本実施形態の実施形態の製造方法に基づき、薄膜キャパシタを作成した。まず、基板の上に下部電極層を形成し、次に、酸化物層を形成する。その後、酸化物層上に上部電極層を形成する。基板として、高耐熱ガラスを用いた。下部電極層は、公知のスパッタリング法により基板上に白金(Pt)よりなる層を形成した。このときの下部電極層の膜厚は200nmであった。絶縁層となる酸化物層のためのビスマス(Bi)を含む前駆体は、オクチル酸ビスマスを用い、ニオブ(Nb)を含む前駆体は、オクチル酸ニオブを用いた。予備焼成として、5分間、250℃に加熱し、スピンコーティング法による前駆体層の形成と予備焼成を5回繰り返した。本焼成として、前駆体層を、酸素雰囲気中で、約20分間、520℃に加熱した。酸化物層30の厚みを約170nmとした。各層の膜厚は、各層と基板の段差を触針法により求めた。酸化物層におけるビスマス(Bi)とニオブ(Nb)との原子組成比は、ビスマス(Bi)が1としたときにニオブ(Nb)を1とした。上部電極層は、公知のスパッタリング法により酸化物層上に白金(Pt)よりなる層を形成した。このときの上部電極層のサイズは100μm×100μmとし、膜厚は150nmであった。BNO酸化物層の結晶相の組成は、パイロクロア型結晶構造の微結晶相及びβ-BiNbO型結晶構造の結晶相の双方を得ることができた。また、パイロクロア型結晶構造は、より具体的には(Bi1.5Zn0.5)(Zn0.5Nb1.5)O型構造であるか、あるいは(Bi1.5Zn0.5)(Zn0.5Nb1.5)O型構造と略同一ないし近似していた。また、電気特性は、リーク電流値が、3.0×10-4A/cm、誘電損失が、0.025、比誘電率が62であった。

【0092】
(実施例2)
実施例2においては、本焼成として、前駆体層を、酸素雰囲気中で、1時間、520℃に加熱した以外は実施例1と同様の条件で薄膜キャパシタを作成した。BNO酸化物層の結晶相の組成は、パイロクロア型結晶構造の微結晶相及びβ-BiNbO型結晶構造の結晶相の双方を得ることができた。また、パイロクロア型結晶構造は、より具体的には(Bi1.5Zn0.5)(Zn0.5Nb1.5)O型構造であるか、あるいは(Bi1.5Zn0.5)(Zn0.5Nb1.5)O型構造と略同一ないし近似していた。また、炭素含有率は、1.5atm%以下と検出限界以下の小さな値となり、水素含有率が1.6atm%であった。また、電気特性は、リーク電流値が、3.0×10-8A/cm、誘電損失が、0.01、比誘電率が70であった。

【0093】
(実施例3)
実施例3においては、本焼成として、前駆体層を、酸素雰囲気中で、20分、530℃に加熱した以外は実施例1と同様の条件で薄膜キャパシタを作成した。BNO酸化物層の結晶相の組成は、パイロクロア型結晶構造の微結晶相及びβ-BiNbO型結晶構造の結晶相の双方を得ることができた。また、パイロクロア型結晶構造は、より具体的には(Bi1.5Zn0.5)(Zn0.5Nb1.5)O型構造であるか、あるいは(Bi1.5Zn0.5)(Zn0.5Nb1.5)O型構造と略同一ないし近似していた。電気特性は、リーク電流値が、3.0×10-6A/cm、誘電損失が、0.01、比誘電率が110であった。

【0094】
(実施例4)
実施例4においては、本焼成として、前駆体層を、酸素雰囲気中で、2時間、530℃に加熱した以外は実施例1と同様の条件で薄膜キャパシタを作成した。BNO酸化物層の結晶相の組成は、パイロクロア型結晶構造の微結晶相及びβ-BiNbO型結晶構造の結晶相の双方を得ることができた。また、パイロクロア型結晶構造は、より具体的には(Bi1.5Zn0.5)(Zn0.5Nb1.5)O型構造であるか、あるいは(Bi1.5Zn0.5)(Zn0.5Nb1.5)O型構造と略同一ないし近似していた。また、炭素含有率が1.5atm%以下と検出限界以下の小さな値となり、水素含有率が1.4atm%であった。電気特性は、リーク電流値が、8.8×10-8A/cm、誘電損失が、0.018、比誘電率が170であった。

【0095】
(実施例5)
実施例5においては、本焼成として、前駆体層を、酸素雰囲気中で、1分、550℃に加熱した以外は実施例1と同様の条件で薄膜キャパシタを作成した。BNO酸化物層の結晶相の組成は、パイロクロア型結晶構造の微結晶相及びβ-BiNbO型結晶構造の結晶相の双方を得ることができた。また、パイロクロア型結晶構造は、より具体的には(Bi1.5Zn0.5)(Zn0.5Nb1.5)O型構造であるか、あるいは(Bi1.5Zn0.5)(Zn0.5Nb1.5)O型構造と略同一ないし近似していた。電気特性は、リーク電流値が、5.0×10-7A/cm、誘電損失が、0.01、比誘電率が100であった。

【0096】
(実施例6)
実施例6においては、本焼成として、前駆体層を、酸素雰囲気中で、20分、550℃に加熱した以外は実施例1と同様の条件で薄膜キャパシタを作成した。BNO酸化物層の結晶相の組成は、パイロクロア型結晶構造の微結晶相及びβ-BiNbO型結晶構造の結晶相の双方を得ることができた。また、パイロクロア型結晶構造は、より具体的には(Bi1.5Zn0.5)(Zn0.5Nb1.5)O型構造であるか、あるいは(Bi1.5Zn0.5)(Zn0.5Nb1.5)O型構造と略同一ないし近似していた。また、炭素含有率が1.5atm%以下、水素含有率が1.0atm%以下と双方検出限界以下の小さな値となった。電気特性は、リーク電流値が、1.0×10-6A/cm、誘電損失が、0.001、比誘電率が180であった。

【0097】
(実施例7)
実施例7においては、本焼成として、前駆体層を、酸素雰囲気中で、12時間、550℃に加熱した以外は実施例1と同様の条件で薄膜キャパシタを作成した。BNO酸化物層の結晶相の組成は、パイロクロア型結晶構造の微結晶相及びβ-BiNbO型結晶構造の結晶相の双方を得ることができた。また、パイロクロア型結晶構造は、より具体的には(Bi1.5Zn0.5)(Zn0.5Nb1.5)O型構造であるか、あるいは(Bi1.5Zn0.5)(Zn0.5Nb1.5)O型構造と略同一ないし近似していた。電気特性は、リーク電流値が、2.0×10-5A/cm、誘電損失が、0.004、比誘電率が100であった。

【0098】
(実施例8)
実施例8においては、本焼成として、前駆体層を、酸素雰囲気中で、20分、600℃に加熱した以外は実施例1と同様の条件で薄膜キャパシタを作成した。BNO酸化物層の結晶相の組成は、β-BiNbO型結晶構造の結晶相を得ることができた。電気特性は、リーク電流値が、7.0×10-6A/cm、誘電損失が、0.001、比誘電率が80であった。

【0099】
(実施例9)
実施例9においては、本焼成として、前駆体層を、酸素雰囲気中で、20分、650℃に加熱した以外は実施例1と同様の条件で薄膜キャパシタを作成した。BNO酸化物層の結晶相の組成は、β-BiNbO型結晶構造の結晶相を得ることができた。電気特性は、リーク電流値が、5.0×10-3A/cm、誘電損失が、0.001、比誘電率が95であった。

【0100】
(実施例10)
実施例10においては、本実施形態の第4実施形態の製造方法に基づき、薄膜キャパシタを作成した。基板10として、高耐熱ガラスを用いた。下部電極層及び上部電極層は、ランタン(La)とニッケル(Ni)とからなる酸化物層を形成した。下部電極層及び上部電極層のためのランタン(La)を含む前駆体は、酢酸ランタンを用いた。また、絶縁層となる酸化物層は、ビスマス(Bi)とニオブ(Nb)とからなる酸化物層を形成した。酸化物層のためのビスマス(Bi)を含む前駆体は、オクチル酸ビスマスを用い、ニオブ(Nb)を含む前駆体は、オクチル酸ニオブを用いた。まず、基板の上に下部電極層の前駆体層を形成して予備焼成した。予備焼成として、約5分間、250℃に加熱し、スピンコーティング法による前駆体層の形成と予備焼成を5回繰り返した。次に、下部電極層の前駆体層の上に、絶縁層となるBNO酸化物層の前駆体層を形成し、予備焼成として、約5分間、250℃に加熱した。その後、BNO酸化物層の前駆体層の上に、下部電極層の前駆体層と同様の条件で上部電極層の前駆体層を形成した。次に予備焼成として、約5分間、150℃に加熱し、スピンコーティング法による前駆体層の形成と予備焼成を5回繰り返した。その後、これら前駆体層の積層体を本焼成として、酸素含有雰囲気中で、20分間、650℃に加熱した。絶縁層となる酸化物層の厚みは約170nmであった。BNO酸化物層におけるビスマス(Bi)とニオブ(Nb)との原子組成比は、ビスマス(Bi)が1としたときにニオブ(Nb)を1とした。上部電極層及び下部電極層の厚みは約60nmであった。このときの上部電極層のサイズを100μm×100μmとした。BNO酸化物層の結晶相の組成は、β-BiNbO型結晶構造の結晶相を得ることができた。電気特性は、リーク電流値が、2.4×10-5A/cm、誘電損失が、0.015、比誘電率が120であった。

【0101】
(比較例1)
比較例1においては、本焼成として、前駆体層を、酸素雰囲気中で、20分、500℃に加熱した以外は実施例1と同様の条件で薄膜キャパシタを作成した。BNO酸化物層の結晶相の組成は、パイロクロア型結晶構造の微結晶相及びβ-BiNbO型結晶構造の結晶相の双方を得ることができた。電気特性は、リーク電流値が、1.0×10-2A/cm、誘電損失が、0.001、比誘電率が100であった。

【0102】
(比較例2)
比較例2においては、本焼成として、前駆体層を、酸素雰囲気中で、2時間、500℃に加熱した以外は実施例1と同様の条件で薄膜キャパシタを作成した。BNO酸化物層の結晶相の組成は、パイロクロア型結晶構造の微結晶相及びβ-BiNbO型結晶構造の結晶相の双方を得ることができた。炭素含有率が6.5atm%、水素含有率が7.8atm%と大きい値となった。電気特性は、リーク電流値が、1.0×10-1A/cmと大きく、誘電損失が、0.007、比誘電率が180であった。

【0103】
(比較例3)
比較例3においては、下部電極層上に絶縁層となるBNO酸化物層を、公知のスパッタリング法により室温にて形成し、この後550℃で20分熱処理を行った。その他については、実施例1と同様の条件で薄膜キャパシタを作成した。BNO酸化物層の結晶相の組成は、BiNbO型結晶構造の微結晶相を得ることができた。また、炭素含有率が1.5atm%以下、水素含有率が1.0atm%以下と双方検出限界以下の小さな値となった。電気特性は、リーク電流値が、1.0×10-7A/cm、誘電損失が、0.005となり、比誘電率が50であった。

【0104】
実施例1乃至7および比較例1乃至3における薄層キャパシタの構成及び酸化物層の成膜条件、得られた電気特性及びBNO酸化物層の炭素及び水素の含有率、結晶構造の結果を表2及び表3に示す。なお、表2及び表3における「結晶相の組成」とは、結晶相及び微結晶相を含む。また、表2及び表3におけるBiNbOは、β-BiNbOを示す。

【0105】
【表2】
JP0005278717B1_000003t.gif

【0106】
【表3】
JP0005278717B1_000004t.gif

【0107】
1.断面TEM写真及び電子線回析による結晶構造解析と電気特性
図26は、実施例6におけるBNO酸化物層の結晶構造を示す断面TEM写真及び電子線回析像である。図26(a)は、実施例6におけるBNO酸化物層の断面TEM写真である。図26(b)は、図26(a)に示したBNO酸化物層の断面TEM写真の領域Xにおける電子線回析像である。また、図27は、比較例3における絶縁層となる酸化物層の結晶構造を示す断面TEM写真及び電子線回析像である。図27(a)は、比較例3におけるBNO酸化物層の結晶構造を示す断面TEM写真である。図27(b)は、図27(a)に示したBNO酸化物層の断面TEM写真の領域Yにおける電子線回析像である。図26に示すように、断面TEM写真及び電子線回析像の結果から、本実施例のBNO酸化物層は、結晶相及びアモルファス相を含んでいることが確認された。より詳細に見れば、BNO酸化物層は、結晶相、微結晶相、及びアモルファス相を含んでいることが分かった。さらに、ミラー指数及び原子間距離から、既知の結晶構造モデルとフィッティングを行うことによって、BNO酸化物層は、A(但し、Aは金属元素、Bは遷移金属元素、以下、同じ)の一般式で示されるパイロクロア型結晶構造の微結晶相及び三斜晶(triclinic)のβ-BiNbO型結晶構造の結晶相うちの少なくとも一方を有していることが示された。また、さらに具体的には、パイロクロア型結晶構造は、(Bi1.5Zn0.5)(Zn0.5Nb1.5)O型構造であるか、あるいは(Bi1.5Zn0.5)(Zn0.5Nb1.5)O型構造と略同一ないし近似していることが判明した。

【0108】
パイロクロア型結晶構造の微結晶相及びβ-BiNbO型結晶構造の結晶相は、絶縁層となる酸化物層の前駆体層の本焼成の温度によって、出現性が異なる。実施例8,9,10に示すように、本焼成の温度が600℃及び650℃の場合に、β-BiNbO型結晶構造の結晶相を得ることができた。また、実施例1乃至7に示すように、本焼成の温度が520℃、530℃、及び550℃の場合に、パイロクロア型結晶構造の微結晶相及びβ-BiNbO型結晶構造の結晶相の双方を得ることができた。

【0109】
一方、比較例3におけるスパッタ法による酸化物層は、パイロクロア型結晶構造の微結晶相及びβ-BiNbO型結晶構造の結晶相が確認できず、BiNiO型結晶構造を有する微結晶相を有していた。

【0110】
測定した電気特性のうち、リーク電流については、表2及び表3に示すように、実施例では、いずれも0.25MV/cm印加時のリーク電流値が、5.0×10-3A/cm以下となり、キャパシタとしての十分な特性を得ることができた。誘電損失(tanδ)については、表2及び表3に示すように、実施例においては、誘電損失が1KHzにおいて、0.03以下となり、キャパシタとしての十分な特性を得ることができた。比誘電率については、表2及び表3に示すように、実施例においては、1KHzにおける比誘電率が60以上となり、キャパシタとしての十分な特性を得ることができた。一方、比較例3のBiNbO型結晶構造のBNO層は、比誘電率が50と低い結果が得られた。

【0111】
実施例の測定結果から、BNO層が、パイロクロア型結晶構造の微結晶相及びβ-BiNbO型結晶構造の結晶相の双方を有することによって、薄層キャパシタの絶縁層として、比較的良好な比誘電率が得られることが判明した。

【0112】
2.BNO酸化物層の炭素及び水素の含有率と電気特性
本焼成の温度が520℃~650℃の範囲である実施例2,4,6については、BNO酸化物層の炭素含有率が1.5atm%以下であった。ここで、本測定法による炭素含有率の測定下限値は、およそ1.5atm%であるため、実際の濃度は、この測定下限値以下であると考えられる。また、これらの実施例においては、炭素含有率が比較例3のスパッタ法によるBNO酸化物層と同様のレベルであることが判明した。一方、比較例2に示すように、本焼成の温度が500℃と低い場合には、前駆体溶液の溶媒中の炭素が残存すると考えられ、炭素含有率が6.5atm%と大きな値を示した。その結果、リーク電流1.0×10-1A/cmと大きい値になったものと考えられる。

【0113】
また、水素含有率については、本焼成の温度が520℃~650℃の範囲である実施例2,4,6については、BNO酸化物層の水素含有率が1.6atm%以下と良好な結果であった。ここで、本測定法による水素含有率の測定下限値は、およそ1.0atm%であるため、実施例6における実際の濃度は、この測定下限値以下であると考えられる。また、実施例6においては、水素含有率が比較例3のスパッタ法によるBNO酸化物層と同様のレベルであることが判明した。一方、比較例2に示すように、本焼成の温度が500℃と低い場合には、前駆体溶液の溶媒及び溶質中の水素が残存すると考えられ、水素含有率が7.8atm%と大きな値を示した。このように水素含有率が大きいことも、リーク電流が1.0×10-1A/cmと大きい値になった原因と考えられる。

【0114】
上述のとおり、上述の各実施形態における固体電子装置は、ビスマス(Bi)とニオブ(Nb)とからなる酸化物層を備え、酸化物層が、パイロクロア型結晶構造またはβ-BiNbO型結晶構造の結晶相、あるいは、パイロクロア型結晶構造及びβ-BiNbO型結晶構造の結晶相を有し、かつ酸化物層中の炭素含有率が1.5atm%以下であることによって、良好な電気特性を備えるものである。したがって、本発明の固体電子装置は、その絶縁層となる酸化物層中に従来汎用的に用いられてきた亜鉛(Zn)等を含ませることなく、ビスマス及びニオブのみからなる金属酸化物によって構成される絶縁層を備えることで固体電子装置の高性能化を実現することができる点で優れているといえる。

【0115】
<その他の実施形態>
以上、この発明の実施形態について説明したが、この発明は上記説明した内容のものに限定されるものではない。

【0116】
上述の各実施形態においては、BNO酸化物層の製造方法は、いわゆる溶液法に基づく製造方法について説明しているが、この方法に限られるものではなく、その他の化学的蒸着法または物理的蒸着法を用いることも可能である。

【0117】
上述の各実施形態における固体電子装置は、低い駆動電圧で大きな電流を制御する固体電子装置に適したものである。上述の各実施形態における固体電子装置として、上述した薄膜キャパシタ以外にも、例えば、積層薄膜キャパシタ、容量可変薄膜キャパシタ等のキャパシタ、また、金属酸化物半導体接合電界効果トランジスタ(MOSFET)、不揮発性メモリ等の半導体装置、さらに、マイクロTAS(Total Analysis System)、マイクロ化学チップ、DNAチップ等のMEMS(微少電気機械システム)デバイスとして適用することもできる。

【0118】
以上述べたとおり、上述の各実施形態の開示は、それらの実施形態の説明のために記載したものであって、本発明を限定するために記載したものではない。加えて、各実施形態の他の組合せを含む本発明の範囲内に存在する変形例もまた、特許請求の範囲に含まれるものである。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12
【図14】
13
【図15】
14
【図16】
15
【図17】
16
【図18】
17
【図19】
18
【図20】
19
【図21】
20
【図22】
21
【図23】
22
【図24】
23
【図25】
24
【図26】
25
【図27】
26