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明細書 :がんの予防用または治療用物質のスクリーニング方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6218210号 (P6218210)
公開番号 特開2014-158440 (P2014-158440A)
登録日 平成29年10月6日(2017.10.6)
発行日 平成29年10月25日(2017.10.25)
公開日 平成26年9月4日(2014.9.4)
発明の名称または考案の名称 がんの予防用または治療用物質のスクリーニング方法
国際特許分類 C12Q   1/02        (2006.01)
C12Q   1/68        (2006.01)
G01N  33/50        (2006.01)
C12N  15/09        (2006.01)
FI C12Q 1/02
C12Q 1/68 A
G01N 33/50 Z
C12N 15/00 A
請求項の数または発明の数 4
全頁数 17
出願番号 特願2013-030503 (P2013-030503)
出願日 平成25年2月20日(2013.2.20)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第2項適用 平成24年9月14日愛知県がんセンター研究所で開催された愛知県がんセンター研究所特別招聘セミナーで発表
特許法第30条第2項適用 第71回日本癌学会学術総会PROCEEDINGS(平成24年8月30日発行)第222頁に発表
特許法第30条第2項適用 平成24年9月20日ロイトン札幌において開催された第71回日本癌学会学術総会で発表
特許法第30条第2項適用 第8回血液免疫ネットワーク(平成24年10月1日発行)第2頁に発表
特許法第30条第2項適用 平成24年10月6日金沢都ホテルにおいて開催された第8回血液免疫ネットワークで発表
特許法第30条第2項適用 2012 KSMCB Annual Meeting(2012韓国分子細胞生物学会 年次学会)(平成24年10月7日発行)第50頁に発表
特許法第30条第2項適用 平成24年10月10日Seoul Coexにおいて開催された2012 KSMCB Annual Meeting(2012韓国分子細胞生物学会 年次学会)で発表
特許法第30条第2項適用 第3回 癌・炎症とαリポ酸研究会(平成24年11月9日発行)第10頁に発表
特許法第30条第2項適用 平成24年11月10日ゆふいん山水館において開催された第3回 癌・炎症とαリポ酸研究会(CIA研究会)で発表
特許法第30条第2項適用 平成25年1月19日東京ガーデンパレスにおいて開催された第六回お茶の水消化器セミナーで発表
特許法第30条第2項適用 3rd International Symposium on Carcinogenic Spiral & International Symposium on Tumor Biology in Kanazawa Program & Abstracts(第3回新学術領域発がんスパイラル国際シンポジウム&金沢国際がん生物学シンポジウム プログラム・抄録集)(平成24年12月27日発行)第8頁に発表
特許法第30条第2項適用 平成25年1月24日金沢エクセルホテル東急において開催された3rd International Symposium on Carcinogenic Spiral & International Symposium on Tumor Biology in Kanazawa(第3回新学術領域発がんスパイラル国際シンポジウム&金沢国際がん生物学シンポジウム)で発表
特許法第30条第2項適用 3rd International Symposium on Carcinogenic Spiral & International Symposium on Tumor Biology in Kanazawa Program & Abstracts(第3回新学術領域発がんスパイラル国際シンポジウム&金沢国際がん生物学シンポジウムプログラム・抄録集)(平成24年12月27日発行)第47頁に発表
特許法第30条第2項適用 平成25年1月24日-25日金沢エクセルホテル東急において開催された3rd International Symposium on Carcinogenic Spiral & International Symposium on Tumor Biology in Kanazawa(第3回新学術領域発がんスパイラル国際シンポジウム&金沢国際がん生物学シンポジウム)で発表
特許法第30条第2項適用 がん研究分野の特性等を踏まえた支援活動 公開シンポジウム(平成25年1月10日発行)第37頁に発表
特許法第30条第2項適用 平成25年1月29日-30日学術総合センター一橋記念講堂において開催されたがん研究分野の特性等を踏まえた支援活動 公開シンポジウムで発表
特許法第30条第2項適用 ウェブサイトhttp://ganshien.umin.jp/home/index.html(平成25年1月15日掲載)に発表
特許法第30条第2項適用 平成24年度「個体レベルでのがん研究支援活動」ワークショップ 個体レベルのがん研究による相乗効果 学際的インターラクションから創造へ プログラム・抄録集(平成25年2月6日発行)第16頁に発表
特許法第30条第2項適用 平成25年2月6日琵琶湖ホテルにおいて開催された平24年度「個体レベルでのがん研究支援活動」ワークショップ 個体レベルのがん研究による相乗効果 学際的インターラクションから創造へで発表
特許法第30条第2項適用 ウェブサイトhttp://immunesystem.jst.go.jp/sympo_inter/pdf/cci/CCI-25.pdf(平成24年12月4日掲載)に発表
特許法第30条第2項適用 JST-CREST国際シンポジウム“Frontiers in Immunology and Inflammation:from Molecules to Disease”(平成25年2月12日発行)第113頁に発表
特許法第30条第2項適用 平成25年2月12日-13日学術総合センター一橋記念講堂において開催されたJST-CREST国際シンポジウム“Frontiers in Immunology and Inflammation:from Molecules to Disease”で発表
審査請求日 平成28年1月20日(2016.1.20)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504160781
【氏名又は名称】国立大学法人金沢大学
発明者または考案者 【氏名】大島 正伸
【氏名】石川 智夫
【氏名】大島 浩子
個別代理人の代理人 【識別番号】100106909、【弁理士】、【氏名又は名称】棚井 澄雄
【識別番号】100188558、【弁理士】、【氏名又は名称】飯田 雅人
【識別番号】100161207、【弁理士】、【氏名又は名称】西澤 和純
【識別番号】100139686、【弁理士】、【氏名又は名称】鈴木 史朗
【識別番号】100192773、【弁理士】、【氏名又は名称】土屋 亮
【識別番号】100088904、【弁理士】、【氏名又は名称】庄司 隆
【識別番号】100124453、【弁理士】、【氏名又は名称】資延 由利子
【識別番号】100135208、【弁理士】、【氏名又は名称】大杉 卓也
【識別番号】100152319、【弁理士】、【氏名又は名称】曽我 亜紀
審査官 【審査官】市島 洋介
参考文献・文献 Free Radic. Biol. Med.,2007年,Vol.43,pp.1627-1638
Mol. Biol. Cell,2010年,Vol.21,pp.4287-4298
Hum. Mol. Genet.,2013年 2月14日,[オンライン], Vol.22, No.11,pp.2169-2176
調査した分野 C12Q 1/00-3/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
特許請求の範囲 【請求項1】
TNF-αをコードする遺伝子若しくはTNFR1をコードする遺伝子の発現、または、TNF-α若しくはTNFR1の機能を抑制することにより、増殖が抑制される胃がん細胞における、Gna14遺伝子の発現若しくはGna14遺伝子にコードされるタンパク質の機能を抑制する被検物質、および/または、Noxo1遺伝子の発現若しくはNoxo1遺伝子にコードされるタンパク質の機能を抑制する被検物質を選択する工程を含む、がんの予防用または治療用物質のスクリーニング方法。
【請求項2】
前記胃がん細胞は、WntシグナリングおよびCOX-2/PGE2経路の両方が活性化している細胞である、請求項1に記載のスクリーニング方法。
【請求項3】
前記胃がん細胞は、未分化状態である、請求項1または2に記載のスクリーニング方法。
【請求項4】
1)TNF-αをコードする遺伝子若しくはTNFR1をコードする遺伝子の発現、または、TNF-α若しくはTNFR1の機能を抑制することにより、増殖が抑制される胃がん細胞と被験物質を接触させる工程;
2)前記胃がん細胞のNoxo1遺伝子および/またはGna14遺伝子の発現量を測定する工程、または、前記胃がん細胞のNoxo1および/またはGna14の発現量を測定する工程;
3)該発現量を被験物質と接触のない対照群の発現量または予め設定された基準発現量と比較する工程
を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のスクリーニング方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、がんの予防用または治療用物質のスクリーニング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(胃がん)
胃がんは、世界中の悪性腫瘍の中で4番目に多いがんであり、2番目の主要な死因である。ヘリコバクターピロリ感染は、胃悪性腫瘍の前兆となる可能性がある慢性胃炎を誘発する。ヘリコバクターピロリ由来毒性因子は胃腫瘍形成に関与するが、ヘリコバクターピロリ感染に対する炎症反応も胃がん発生に重要である。例えば、炎症誘発性サイトカイン遺伝子、IL-1β、IL-1受容体の内在性アンタゴニストをコードするIL-1RN、および腫瘍壊死因子(TNF)-αにおける遺伝子多型は、胃がんのリスクの増加に関連する。
さらに、IL-1β、IL-1RN、TNF-αおよびIL-10における特定の多型の組み合わせは、胃がんについてのオッズ比を27倍に増加させるが、このことは、胃腫瘍形成におけるこれらのサイトカインの重要な役割を示している。胃内でIL-1βを発現するトランスジェニックマウスは胃炎関連胃がんを発症したが、このことは、IL-1βが胃腫瘍形成を誘発する可能性があることを示している。一方、胃腫瘍形成におけるTNF-αの役割は、遺伝子モデル系を用いてまだ完全には検討されていない。
【0003】
(TNF-α)
以前からの報告により、TNF-αが、様々な器官におけるがん発生における重要なサイトカインであることが示されている。TNF-α産生は予後不良に関連し、一部の進行がん患者においてTNF-αの血漿濃度が増加する(非特許文献1)。マウスの遺伝子研究では、肝臓、皮膚および大腸におけるがん発生におけるTNF-αまたはTNFR1受容体シグナリングの役割が示されている(非特許文献2,3,4)。
さらに、TNF-αは、IL-6およびCXCL12を有する卵巣がん細胞内において腫瘍促進サイトカイン/ケモカインシグナリングネットワークを生成し、それは腹膜播種に重要である(非特許文献5)。これらの結果は、炎症性微小環境におけるTNF-αががん発生において主要な役割を果たすことを示す。
【0004】
(胃腫瘍形成におけるTNF-αの役割)
本発明者等は、Ganマウスを用いて胃腫瘍形成におけるTNF-αの役割を検討した。Ganマウスは、標準的なWntシグナリングおよびCOX-2/PGE2経路の両方の活性化を誘発する、腺胃内でそれぞれWnt1、COX-2およびmPGES-1をコードするWnt1、Ptgs2およびPtgesの同時発現によって引き起こされる腺型胃腫瘍を発症する(非特許文献6,7)。Wntシグナリング活性化は、ヒト胃がん発生の主要原因の1つである(非特許文献7,8)。COX-2/PGE2経路は、胃がんを含む広範囲にわたるがんにおいて誘発され、COX-2/PGE2経路に関連した炎症反応は、腫瘍発生にとって重要である(非特許文献9)。
さらに、ヘリコバクターピロリ感染関連前悪性および悪性胃がん組織においてCOX-2が発現し、そのレベルはヘリコバクターピロリの根絶によって低下するが(非特許文献10,11)、このことは、ヘリコバクターピロリ感染がCOX-2/PGE2経路誘発の原因の1つであることを示している。従って、Ganマウスは、ヒト胃がんと同様の分子メカニズムおよび宿主反応によって引き起こされる胃腫瘍を発症する。さらに、Ganマウス腫瘍の遺伝子発現プロファイルは、ヒトintestinal型胃がんと同様である(非特許文献12)。
【0005】
(Noxo1)
Noxo1は、NOXのサイトゾル調節サブユニットの成分であるNADPHオキシダーゼ(NOX)組織化タンパク質1をコードし、触媒アイソフォームNOX1に関連する(非特許文献13)。NOX1は、活性酸素種産生酵素であり、レドックス感受性シグナリング経路を調節するNOXファミリーメンバーの内の1つである。
【0006】
(Gna14)
Gna14については、ほとんど知られていない。Gna14は、グアニンヌクレオチド結合タンパク質サブユニットアルファ14(Gα14)(Gタンパク質のGqαサブファミリーのメンバー)をコードする(非特許文献14)。Gα14は、NF-κB経路を活性化するソマトスタチン2型受容体およびケモカイン受容体CCR1を含む様々なGタンパク質共役型受容体(GPCR)によって用いられる(非特許文献15、16)。
【先行技術文献】
【0007】

【非特許文献1】Balkwill F. Tumor necrosis factor and cancer. Nat Rev Cancer 2009;9:361-371.
【非特許文献2】Moore RJ, OwensDM, Stamp G, et al. Mice deficient in tumor necrosis factor-α are resistant to skin carcinogenesis. Nat Med 1999;5:828-831.
【非特許文献3】Arnott CH, Scott KA, Moore RJ, et al. Expression of both TNF-α receptor subtypes is essential for optimal skin tumour development. Oncogene 2004;23:1902-1910.
【非特許文献4】Popivanova BK, Kitamura K, Wu Y, et al. Blocking TNF-α in mice reduces colorectal carcinogenesis associated with chronic colitis. J Clin Invest 2008;118:560-570.
【非特許文献5】Kulbe H, Chakravarty P, Leinster DA, et al. A dynamic inflammatory cytokine network in the human ovarian cancer microenvironment. Cancer Res 2012;71:66-75.
【非特許文献6】Oguma K, Oshima H, Aoki M, et al. Activated macrophages promote Wnt signalling through tumour necrosis factor-α in gastric tumour cells. EMBO J 2008;27:1671-1681.
【非特許文献7】Oshima H, Matsunaga A, Fujimura T, et al. Carcinogenesis in mouse stomach by simultaneous activation of the Wnt signaling and prostaglandin E2 pathway. Gastroenterology 2006;131:1086-1095.
【非特許文献8】Clements WM, Wang J, Sarnaik A, et al. β-catenin mutation is a frequent cause of Wnt pathway activation in gastric cancer. Cancer Res 2002;62:3503-3506.
【非特許文献9】Wang D, DuBois RN. Eicosanoids and cancer. Nat Rev Cancer 2010;10:181-193.
【非特許文献10】Jung JJY, LeungWK, Go MYY, et al. Cyclooxygenase-2 expression in Helicobacter pylori-associated premalignant and malignant gastric lesions. Am J Pathol 2000;157:729-735.
【非特許文献11】Thiel A, MrenaJ, Ristimaki A. Cyclooxygenase-2 and gastric cancer. Cancer Metastasis Rev 2011;30:387-395.
【非特許文献12】Itadani H,Oshima H, Oshima M, et al. Mouse gastric tumor models with prostaglandin E2 pathway activation show similar gene expression profiles to intestinal-type human gastric cancer. BMC Genomics 2009;10:615.
【非特許文献13】Block D, Gorin Y. Aiding and abetting roles of NOX oxidases in cellular transformation. Nat Rev Cancer 2012;12:627-637.
【非特許文献14】Kostenis E, Waelbroeck M, Milligan G. Techniques: Promiscous Gα proteins in basic research and drug discovery. TRENDS Pham Sci 2005;26:595-602.
【非特許文献15】Liu AMF, Wong YH. Activation of nuclear factor κB by somatostatin type 2 receptor in pancreatic acinar AR42J cells involves Gα14 and multiple signaling components. J Biol Chem 2005;280:34617-34625.
【非特許文献16】Lee MMK, Wong YH. CCR1-mediated activation of nuclear factor-κB in THP-1 monocytic cells involves pertussis toxin-insensitive Gα14 and Gα16 signaling cascade. J Leukoc Biol 2009;86:1319-1329.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、腫瘍形成におけるTNF-αの作用機構を解明し、抗がん剤の新規スクリーニング方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、前記課題を解決するために、腫瘍形成におけるTNF-αの作用機構を解明し、TNF-αによって誘発される腫瘍形成促進因子、Noxo1遺伝子およびGna14遺伝子を見出した。そして、これら遺伝子の発現を抑制する物質を選択することにより、がんの予防用薬および治療用薬を得ることができることを見出し、本発明を完成した。
【0010】
より、詳細には、本発明者等は、GanマウスとTnf-/-マウスを交配し、胃腫瘍形成がTNF-α遺伝子の破壊によって有意に抑制されたことを見出し、さらに、骨髄キメラ実験により、オートクリンまたはパラクリン的方法における骨髄由来細胞(BMDC)内におけるTNF-αシグナリングが胃腫瘍促進にとって重要であることを示した。
さらに、本発明者等は、Noxo1およびGna14がTNF-αに依存して胃腫瘍において誘発され、これらの分子が胃がん細胞の腫瘍形成性および幹細胞性にとって重要であることを見出した。
【0011】
すなわち、本発明は以下からなる。
1.TNF-αをコードする遺伝子若しくはTNFR1をコードする遺伝子の発現、または、TNF-α若しくはTNFR1の機能を抑制することにより、増殖が抑制される胃がん細胞における、Gna14遺伝子の発現若しくはGna14遺伝子にコードされるタンパク質の機能を抑制する被検物質、および/または、Noxo1遺伝子の発現若しくはNoxo1遺伝子にコードされるタンパク質の機能を抑制する被検物質を選択する工程を含む、がんの予防用または治療用物質のスクリーニング方法。
2.前記胃がん細胞は、WntシグナリングおよびCOX-2/PGE2経路の両方が活性化している細胞である、前項1に記載のスクリーニング方法。
3.前記胃がん細胞は、未分化状態である、前項1または2に記載のスクリーニング方法。
4.1)TNF-αをコードする遺伝子若しくはTNFR1をコードする遺伝子の発現、または、TNF-α若しくはTNFR1の機能を抑制することにより、増殖が抑制される胃がん細胞と被験物質を接触させる工程;
2)前記胃がん細胞のNoxo1遺伝子および/またはGna14遺伝子の発現量を測定する工程、または、前記胃がん細胞のNoxo1および/またはGna14の発現量を測定する工程;
3)該発現量を被験物質と接触のない対照群の発現量または予め設定された基準発現量と比較する工程
を含む、前項1~3のいずれか一に記載のスクリーニング方法
【発明の効果】
【0012】
本発明のスクリーニング方法において、物質選択の指標となるNoxo1遺伝子および/またはGna14遺伝子は、骨髄由来細胞(BMDC)内のTNF-αシグナリングにより誘発される腫瘍形成促進因子である。これら腫瘍形成促進因子は、細胞の未分化状態を維持することにより、腫瘍発生を促進する。
したがって、本発明のスクリーニング方法により選択された物質は、Noxo1遺伝子およびGna14遺伝子の発現を抑制し、細胞の未分化状態の維持を解除することにより、腫瘍の発生、維持を阻害することができる。
これにより、本発明のスクリーニング方法により選択された物質をがん予防用薬、がん治療薬として用いることができる。
【0013】
骨髄由来細胞(BMDC)内のTNF-αシグナリングにより腫瘍形成促進因子が誘発されるというTNF-αシグナリングの生体内機構、さらにはNoxo1遺伝子およびGna14遺伝子の作用についても、本発明で解明されたものである。したがって、本発明のスクリーニング方法は、従来知られていなかった作用機構に基づくものであり、優れた効果を奏する新規がんの予防薬および新規がん治療薬を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】Tnf遺伝子破壊による胃腫瘍形成の抑制を示す図である。(A)50週齢のTnf+/+、Tnf+/-およびTnf-/- Ganマウスの胃腫瘍の代表図である。スケールバーは、5mmを示す。(B)Tnf+/+ Ganマウス(上)およびTnf-/- Ganマウス(下)腫瘍の組織切片(H&E染色)の代表図である。矢印は、Tnf-/-Ganマウスの抑制腫瘍病変を示す。スケールバーは、5mmを示す。(C)Tnf+/+ Ganマウス胃腫瘍の高さの平均を100%としたときの、Tnf+/-、Tnf-/- Ganマウスの相対的な胃腫瘍の高さを示す。アスタリスクは「P<0.05」を意味する。(D)Tnf+/+ Ganマウス(左)およびTnf-/- Ganマウス(右)の腫瘍のanti-BrdU免疫染色の代表図を示す。アスタリスクは、Tnf-/- Ganマウス腫瘍中の制限増幅型領域を示す。スケールバーは、200μmを示す。(E)K19-Wnt1マウスの腫瘍発生前病変の組織(矢印)を示す代表図である{H&E染色(左)およびKi-67免疫染色(右)}。スケールバーは、400μmを示す。(F)Tnf+/+およびTnf-/- K19-Wnt1マウスの組織切片当たりの腫瘍発生前病変の平均数を示す図である。K+/ATPase、Ki-67、およびPAS-アルシアンブルー染色の免疫組織化学染色を示す。ポジティブ染色域は、点線によって示される。免疫染色の結合図(下右)を図式的に示した。PitとParは、それぞれ、Pit細胞および壁細胞系統に分化した細胞を示す。スケールバーは、800μmを示す。
【図3】骨髄由来細胞(BMDC)のTNF-αシグナリングに誘発された胃腫瘍形成を示す図である。(A)骨髄キメラマウス(2匹のマウス)の胃腫瘍の代表図およびGFP画像であり、GFP Tg →Tnf-/- Gan(上)。GFP画像(右上)の矢印は、非腫瘍領域を示す。GFP、F4/80の免疫組織化学染色、およびGFP(緑)およびF4/80(赤)のダブル蛍光免疫染色の図を示す(下)。蛍光免疫染色中の矢印は、GFPおよびF4/80(右下)の両方で発現している融合細胞を示す。スケールバーは、上下、それぞれ、5mmおよび100μmを示す。(B)野生型→ Gan(上)およびTnfrsf1a-/- → Gan(下)の骨髄キメラマウスの代表X線CT画像であり、骨髄移植の後、0週(左)およびの8週の(右)の画像を示す。腫瘍域は、点線によって示されている。(C)野生型→Gan(●)およびTnfrsf1a-/- →Gan(■)の骨髄キメラマウスのX線CT結果から計測された腫瘍域を示すグラフである。
【図4】TNF-α依存性腫瘍形成促進因子の候補遺伝子の抽出図である。(A)TNF-αに依存して胃腫瘍を誘導する遺伝子の選択方法を説明する図である。(B)Tnf+/+ Ganマウス腫瘍と比較したTnf-/- Ganマウス腫瘍における選択されたTNF-α依存157遺伝子の発現レベルの比率(Log2比率)を示す。アスタリスクは、CD44のための3本のプローブを示す。(C)「TNF-α依存機構により胃腫瘍を誘導する遺伝子(157遺伝子)」と「Lgr5+胃幹細胞において2倍以上上方制御される遺伝子(375遺伝子)」のベン図である。11遺伝子が腫瘍組織およびLgr5+幹細胞の両方において上方制御された。
【図5】軟寒天コロニー形成におけるNoxo1およびGna14の役割を示すグラフである。(A)指定のsiRNAがトランスフェクトされたKato-III細胞の、コントロールsiRNAの平均値に対する、相対的軟寒天細胞増殖(平均±s.d.)を示すグラフである。アスタリスクは、「P値<0.05対コントロール」を意味する。βカテニン遺伝子(Catnnb1)に対するsiRNAを陽性対照として用いた。(B-D)候補遺伝子のsiRNAがトランスフェクトされたKato-III細胞(B)、MKN45細胞(C)、およびMKN74細胞(D)のコントロールsiRNAの平均値に対する、軟寒天コロニーの相対数(平均±s.d.)を示すグラフである。個々の棒は、同じ遺伝子に対して異なるsiRNA配列での結果を示す。なお、(C)(D)のNoxo1の左側は配列番号1、2のsiRNA、真中は配列番号3、4のsiRNA及び右側は配列番号5、6のsiRNAであり、Gna14の左側は配列番号7、8のsiRNA及び右側は配列番号9、10のsiRNAである。アスタリスクは、「P値<0.05対コントロール」を意味する。(E、F)野生型マウス胃(WT St)およびGanマウス腫瘍(Gam Tm)の、組織(左)または単離された上皮細胞(右)におけるNoxo1(E)およびGna14(F)の相対的mRNAレベルを示すグラフである。アスタリスクは、「P値<0.05対野生型レベル(WT)」を意味する。【0015】
(本発明)
本発明は、「Gna14遺伝子および/またはNoxo1遺伝子の発現を抑制する被験物質を選択する工程を含む、がんの予防用または治療用物質のスクリーニング方法」に関する。より 詳しくは、下記の工程を含むスクリーニング方法であるが、特に限定されない。
1)がん由来細胞株と被験物質を接触させる工程
2)がん由来細胞株のNoxo1遺伝子および/またはGna14遺伝子の発現量を測定する工程
3)該発現量を被験物質と接触のない対照群の発現量または予め設定された基準発現量と比較する工程
なお、対照群とは、がん由来細胞株に限らない。

【0016】
(Noxo1遺伝子)
本発明で、発現抑制されるNoxo1遺伝子は、NADPH oxidase organizer 1をコードしている遺伝子であり、GenBank Accession: NM_172167.2、NM_001267721.1、NM_172168.2、NM_144603.3等で示される遺伝子であるが、これらに限定されない。これら遺伝子のバリアントやこれらの遺伝子の一部を含む遺伝子を含む。好ましくは、これら遺伝子と塩基配列が80%以上同一の遺伝子を含む。より好ましくは、85%以上、さらに好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、最も好ましくは98%以上同一の塩基配列の遺伝子である。

【0017】
(Gna14遺伝子)
本発明で、発現抑制されるGna14遺伝子は、グアニンヌクレオチド結合タンパク質サブユニットアルファ14(Gα14)(Gタンパク質のGqαサブファミリーのメンバー)をコードする遺伝子であり、GenBank Accession: NM_004297.3等で示される遺伝子であるが、これらに限定されない。これら遺伝子のバリアントやこれらの遺伝子の一部を含む遺伝子を含む。好ましくは、これら遺伝子と塩基配列が80%以上同一の遺伝子を含む。より好ましくは、85%以上、さらに好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、最も好ましくは98%以上同一の塩基配列の遺伝子である。

【0018】
(遺伝子)
Noxo1遺伝子および/またはGna14遺伝子は、それぞれ単独で指標(ターゲット)としてもよいし、組み合わせて指標としてもよい。好ましくは組み合わせて指標する。
さらに、他の指標となる遺伝子と組み合せて指標とされてもよい。好ましい他の遺伝子としては、例えばProm1遺伝子(CD133:GenBank Accession: NM_001145847、NM_001145848.1、NM_001145849.1、NM_001145850.1、NM_001145851.1、NM_001145852.1、NM_006017.2 )等が挙げられるが、これらに限定されない。

【0019】
(がんの種類)
本発明の方法でスクリーニングされる物質は、がんの予防および治療に効果を奏する。がんの種類は、特に限定されるものではないが、TNF-αが発症に関与しているがん、炎症が発症に関与しているがんに好適に効果を奏する。具体的には、胃がん、皮膚がん、卵巣がん、肝臓がん、大腸がん等が挙げられる。特に胃がん、炎症起因の胃がんの予防、治療用の物質のスクリーニングに適している。

【0020】
(発現抑制の検出)
Noxo1遺伝子および/またはGna14遺伝子の発現を抑制する物質を選択する方法については限定されるものではない。
例えば、被験物質と細胞を接触させた後に、該遺伝子の発現量を測定し、対照群の発現量または予め設定されている基準発現量と比較して、発現量の低い物質を選択する方法を挙げることができる。基準発現量とは、事前に測定したNoxo1遺伝子および/またはGna14遺伝子の発現量を意味する。

【0021】
(被験物質)
被験物質は、特に限定されないが、例えば、低分子化合物、核酸、タンパク質、ペプチドが挙げられる。また、被験物質は、天然物質でも合成物であってもよい。

【0022】
(発現量の測定)
本発明における発現量の測定の方法は、発現量が測定できればよく、特に限定されるものではない。例えば、Noxo1遺伝子および/またはGna14遺伝子mRNAの量を測定する方法、発現タンパク質の量を測定する方法等が挙げられる。
mRNAを測定するには、例えば、RT-PCR、競合的RT-PCR、リアルタイムRT-PCR、RNase保護分析法、ノ-ザンブロットティングおよびDNAチップからなる群から選択されるいずれか一つを使用することができる。
発現タンパク質の発現量を測定するには、該タンパク質に特異的に結合する抗体またはリガンドを用いて検出する方法等が挙げられる。

【0023】
また、Noxo1遺伝子および/またはGna14遺伝子のプロモータを含む発現制御領域にレポーター遺伝子を結合した遺伝子構造体を作成して、レポーター遺伝子の発現量を測定する方法も挙げられる。この方法では、該遺伝子構造体を発現ベクターに導入した後、動物細胞に形質導入して形質転換体を製造する。この形質転換体に被検物質を接触させた後、レポーター遺伝子の発現量を測定し、被験物質と接触のない対照群と発現量を比較することができる。レポーター遺伝子としてルシフェラーゼ遺伝子等を使用することができるが、これに限定されない。

【0024】
スクリーニングに用いられる細胞は、限定されるものではない。好適には、哺乳動物由来細胞株を用いることができる。正常細胞由来細胞株、がん由来細胞株、形質導入された細胞株などが挙げられる。好ましくは、がん由来細胞株またはレポーター遺伝子が導入された細胞株が用いられる。また、ヒト以外の哺乳動物個体に被験物質を投与して遺伝子の発現量を測定および比較してもよい。

【0025】
本発明の方法では、好適には、被験物質を該遺伝子含有細胞と接触させる工程を含む。接触させる方法は限定されないない。例えば、培養細胞に被験物質を添加することができる。インキュベーション時間は限定されない。好適なインキュベーション時間は細胞の種類や環境により異なるが、24時間~1週間、好ましくは24時間~72時間、さらに好ましくは、24時間~60時間である。

【0026】
(がんの予防用または治療用組成物)
がんの予防用または治療用組成物として、以下のいずれか一のsiRNAを有効成分として含むことができる。
NOXO1用siRNA
s195651:CAAGAGGCUCCAAACGUUUTT(センスプライマー:配列番号1)
AAACGUUUGGAGCCUCUUGAT(アンチセンスプライマー:配列番号2)
s195652:UGCGCGUGUUGGAAACGUCTT(センスプライマー:配列番号3)
GACGUUUCCAACACGCGCACG(アンチセンスプライマー:配列番号4)
s195653:GGAGUUGGGACGAAUUCAGTT(センスプライマー:配列番号5)
CUGAAUUCGUCCCAACUCCTG(アンチセンスプライマー:配列番号6)
GNA14用siRNA
s18509:GGACCGAAACAGGAUGUCATT(センスプライマー:配列番号7)
:UGACAUCCUGUUUCGGUCCTG(アンチセンスプライマー:配列番号8)
s18510:GACUUUAUCCUGAAGCUUUTT(センスプライマー:配列番号9)
:AAAGCUUCAGGAUAAAGUCTC(アンチセンスプライマー:配列番号10)

【0027】
以下に示す実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。また、下記実施例の全ての動物実験は、金沢大学動物実験委員会によって承認されたプロトコルに従って実施した。
【実施例1】
【0028】
(材料および方法)
実施例で使用した材料および方法は、以下の通りである。
【実施例1】
【0029】
(動物実験)
K19-Wnt1およびGanマウスは、本発明者等の文献(非特許文献7およびOshima H, Oguma K, Du Y-C, et al. Prostaglandin E2, Wnt and BMP in gastric tumor mouse models. Cancer Sci 2009;100:1779-1785.)の記載の方法に従って、構築した。詳しくは、K19-Wnt1マウスは、胃上皮細胞内で転写的に活性なKrt19遺伝子プロモータで駆動されるWnt1を発現するが、Ganマウスは、Krt19プロモータで駆動されるWnt1、Ptgs2およびPtgesを発現する。Jackson Laboratories(Bar Harbor, ME)からTNF-α(Tnf)についてのマウスホモ接合ヌルを購入した。TNFR1(Tnfrsf1a)変異体マウスは、文献(非特許文献4)の記載の方法に従って、構築した。K19-Wnt1、GanおよびTnf-/-マウスの遺伝的背景はC57BL/6であり、Tnfrsf1a-/-マウスのそれはBALB/cだった。Tnfrsf1a-/-マウスからの骨髄移植にBLAB/c-Ganマウスを用いた。金沢大学のSPF施設で全マウスを維持した。腫瘍表現型分析のため、50週齢でGanマウスを安楽死させ、検討した(各遺伝子型についてn=8~10)。腺胃の半分を組織学的分析のために用い、残り半分をRNAまたはタンパク質試料調製のために用いた。
【実施例1】
【0030】
(腫瘍容積の測定と腫瘍発生前病変のスコアリング)
組織学的検査セクションを用いてGanマウス胃腫瘍の粘膜厚さ(腫瘍高さ)を測定した。Tnf+/+ Ganマウスのレベルの平均を100%として平均相対腫瘍粘膜厚さを算出した。独立した8つの組織学的検査セクションを用いてTnf+/+ K19-Wnt1およびTnf-/- K19-Wnt1マウス(各遺伝子型についてn=6)の腺胃内の腫瘍発生前病変の数を計数し、1セクション当たりの平均数を算出した。
【実施例1】
【0031】
{リアルタイム逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)}
トータルRNAを、ISOGEN(ニッポンジーン、東京、日本)を用いて胃腫瘍または正常組織、単離胃腺、または培養細胞から抽出し、PrimeScript RT reagent Kit(タカラバイオ、東京、日本)で逆転写させ、SYBR Premix ExTaqII(タカラバイオ)を用いてStratageneMx300P(Agilent Technologies, Santa Clara, CA)によりPCR増幅した。単一の胃腫瘍における分化および増殖状態の位置的差異を回避するため、腫瘍の異なる領域から2~3個の試料を回収し、RT-PCR分析に用いた。リアルタイムRT-PCR用プライマーについては、市販品(タカラバイオ)を使用した。
【実施例1】
【0032】
(骨髄移植)
ドナーマウスの大腿骨および脛骨から骨髄細胞の懸濁液を調製し、濾過した。レシピエントマウスに9-Gyを照射した後、1×107の骨髄細胞の静脈内注射を行った。以下の骨髄キメラマウスを作製した。GFPマウスからTnf-/- Ganマウス、野生型マウスからTnf+/+ Ganマウス、Tnfrsf1a-/-マウスからGanマウス、野生型マウスからBALB/c Ganマウス。Tnfrsf1a-/-からGanマウスおよび野生型マウスからBALB/c Ganマウスに対する骨髄移植のWeek 0および8に、LaTheta LCT-100(日立アロカメディカル、東京、日本)を用いて、生きているマウスの胃腫瘍のX線コンピュータートモグラフィー(CT)画像を検討した。
【実施例1】
【0033】
(組織学的検査および免疫組織化学法)
4%のパラホルムアルデヒド中で胃組織を固定し、パラフィン包埋し、4μmの厚さで切断した。これらの切片をH&Eで染色したか、または免疫組織化学法のために処理した。また、組織もOCT化合物内で包埋し、凍結し、10μmの厚さで切断した。それらの凍結切片をCD4およびCD8免疫染色のために用いた。一次抗体として、CD44(Millipore, Billerica, MA)、Muc5AC(Thermo Fischer Scientific, Ockford,IL)、H+K+/ATPase(MBL、名古屋、日本)、Ki-67(Dako,Carpinteria, CA)、F4/80(Serotec,Oxford, UK)、GFP(LifeTechnology, Grand Island, NY)、CD3ε(Santa Cruz Biotechnology, Santa Cruz, CA)、CD4およびCD8(BD Pharmingen, San Jose, CA)に対する抗体を用いた。Vectastain Elite Kit(Vector Laboratories,Burlingame, CA)を用いて染色シグナルを視覚化した。蛍光免疫染色のため、二次抗体としてAlexa Fluor 594またはAlexa Fluor 488抗体(MolecularProbes, Eugene, OR)を用いた。安楽死の1.5時間前にBrdUを1 ml(1 mg/ml、Roche Diagnostics, IN)マウスに注射した。パラフィン切片のために組織を処理し、抗BrdU抗体(Roche)で免疫染色した。5つの視野の内の1つの顕微鏡視野(200×)当たりの標識細胞を計数することによって平均BrdU標識指数を算出した。
【実施例1】
【0034】
(マイクロアレイ分析)
ISOGEN(ニッポンジーン、東京、日本)を用いてTnf+/+ GanマウスおよびTnf-/- Ganマウスの胃腫瘍と野生型マウスの正常な胃からトータルRNAを抽出した(各遺伝子型についてn=3)。発現プロファイル分析のためにGneChip Mouse Genome 430 2.0 Array(Affymetrix,Inc)を用いた。標準Affymetrixプロトコルを用いて標識cRNAを調製し、GeneChip Scanner 3000 7G(Affymetrix)を用いて走査し、Affymetrix Service Provider(タカラバイオ、東京、日本)によってプローブセットのシグナル強度を検出し、正規化した。GeneExpression Omnibus(GEO)に、マイクロアレイの結果を受託番号GSE43145として寄託した。
【実施例1】
【0035】
(細胞培養実験)
10% FBSを添加したRPMI1640またはDMEM中で、胃がん細胞株(MKN45、MKN74、Kato-III)(理化学研究所筑波研究所バイオリソースセンター、つくば、日本)およびAGS(ATCC)を培養した。Silencer Select Pre-designed siRNA(Life Technologies, Carlsbad,CA)を用いて、ノックダウン実験を行った。陰性対照のために非特異的siRNAを用いた。軟寒天増殖/コロニー形成アッセイのために、細胞を0.4%の寒天に混合し、96ウェルプレートまたは6ウェルプレート内に播種し、それぞれ1週間または3週間培養した。96ウェルプレートの軟寒天培養物にAlamarBlue試薬(Life Technologies)を染色し、蛍光強度を測定して、軟寒天内における細胞増殖を検討した。ギムザ溶液(和光純薬工業、大阪、日本)で6ウェルプレートを染色し、コロニーの数をスコアした。スフェアコロニー形成アッセイのために、1% N-2、2% B-27(LifeTechnologies)と20 ng/mlの塩基性FGF(PeproTech, Rocky Hill, NJ)と100 ng/mlのEGF(BD biosciences, Bedford, MA)とを添加した超低アタッチメントプレート(Corning, Corning, NY)内でMKN74細胞を平板培養し、3% O2および5% CO2の酸素圧低下状態で培養した。10日目にスフェアの数を計数した。
【実施例1】
【0036】
胃上皮細胞の一次培養は、文献 (Kong D,Piao Y-S, Yamashita S, et al. Inflammation-induced repression of tumor suppressor miR-7 in gastric tumor cells. Oncogene 2012;31:3949-3960)に記載の方法に従って行った。
詳しくは、マウス腺胃を0.1%コラゲナーゼで30分間処理した後、20 gで3分間遠心分離して胃腺を単離した。単離した腺をトリプシンで消化し、コラーゲン被覆皿上に播種した。Day 2に、一次培養細胞を10 mM EDTA-PBSで処理し、継代を行って分化を誘発した。発現分析のためにDay 2(P0)およびDay 6(P1)の一次培養細胞を用いた。
【実施例1】
【0037】
(免疫ブロット分析)
溶解緩衝液中で組織をホモジネートし、音波破砕し、20,000×gで遠心分離し、10%のSDS-ポリアクリルアミドゲル中で10μgの上澄みタンパク質試料を分離した。Tyr705でのリン酸化Stat3に対する抗体(Cell Signaling, Danvers, MA)を一次抗体として用いた。内部対照として抗β-アクチン(Sigma)を用いた。シグナルを検出するためにECL検出システム(GE Healthcare, Buckinghamshire, UK)を用いた。
【実施例1】
【0038】
(in vivo同所移植)
100μlのMatrigel(BDBiosciences San Jose, CA)にMKN74細胞(1.4×106)を懸濁させ、麻酔下ヌードマウス(日本チャールス・リバー、大阪、日本)の多重部位(1部位当たり約20μl)の腺胃の粘膜下組織に注射した。移植の2週間後に移植マウスの剖検を行い、組織学的分析によって腫瘍表現型を検討した。
【実施例1】
【0039】
(統計分析)
データは、対応のないt検定を用いて分析し、平均±標準偏差(s.d.)として示した。P < 0.05の値は、統計的に有意(アスタリスク、P < 0.05)と考えた。
【実施例2】
【0040】
(Tnf遺伝子の破壊による胃腫瘍形成の抑制)
GanマウスとTnfノックアウトマウスを交配し、50週齢での複合型変異体の腫瘍表現型を検討した。重要なことに、胃腫瘍発生はTnf-/- Ganマウスにおいて有意に抑制され(図1Aおよび1B)、平均腫瘍サイズは同腹仔Tnf+/+ Ganマウス(図1C)の約40.5%に減少した。これらの結果は、TNF-αが胃腫瘍発生に重要な役割を果たすことを示す。
Tnf+/- Ganマウスの平均腫瘍サイズは、Tnf+/+ Ganマウスと比較して減少したものの、それは有意な減少ではなかった。このことは、TNF-αのヘテロ接合性発現が腫瘍形成にとって十分であることを示している。Tnf-/- Ganマウス腫瘍において、BrdU標識指数は、Tnf+/+ Ganマウスと比較して有意に低下したが、このことは、TNF-αシグナリングの阻害によって腫瘍細胞増殖が抑制されたことを示している(図1D)。
【実施例2】
【0041】
K19-Wnt1トランスジェニックマウスは、Wnt活性化によって引き起こされた、Ki-67陽性増殖および異形成細胞からなる小さな腫瘍発生前病変を腺胃に発症する(図1E)。特に、Tnf-/- K19-Wnt1マウスは、Tnf+/+ K19-Wnt1マウスで見つかったものとほとんど同じ数の腫瘍発生前病変を発症したが(図1F)、このことは、腫瘍形成の開始段階にTNF-αシグナリングが必要ではないことを示している。
【実施例2】
【0042】
(Tnf-/- Ganマウスにおける腫瘍上皮細胞の分化)
腫瘍細胞の未分化状態を調べるために、Tnf-/- Ganマウス腫瘍におけるCD44(がん始原細胞のマーカー)発現を検討した。野生型マウス胃においては扁平円柱上皮接合部に位置する上皮細胞においてのみCD44発現が検出されたのに対して、Ganマウスにおいては大部分の腫瘍細胞がCD44を発現した(図2A)。一方、Tnf-/-Ganマウスにおいては、有意な数のCD44陰性腫瘍細胞を見出した。RT-PCRによって検出されるCD44 mRNAレベルに関し、Tnf+/+およびTnf+/- Ganマウス胃腫瘍レベルは野生型マウス胃レベルの8倍超えて有意に増加したが、Tnf-/- Ganマウスにおいては野生型レベルの約5倍低下した(図2B)。特に、Tnf-/-GanマウスにおけるCD44陰性腫瘍細胞は、それぞれピット細胞および壁細胞の分化マーカーであるMuc5ACおよびH+K+/ATPaseを発現したが、一方でCD44陽性細胞はそれらを発現しなかった(図2C)。ピット細胞系統への分化は、PAS染色陽性ムチンの検出によって確認された。特に、Ki-67陽性増殖細胞は、主にCD44陽性上皮細胞において見つかった。これらの結果は、未分化状態の腫瘍細胞の維持にとってTNF-αシグナリングが重要であり、それが腫瘍促進に寄与することを示す。
【実施例2】
【0043】
(腫瘍形成のための骨髄由来細胞におけるTNF-αシグナリングの役割)
腫瘍促進にとってのマクロファージ由来TNF-αの役割を調べるために、Tnf+/+ GFPトランスジェニックマウスからTnf-/- Ganマウスへの骨髄移植を実施した。特に、骨髄移植Tnf-/- Ganマウスにおいて胃腫瘍表現型が現れた(図3A)。強いGFP発現が胃腫瘍において検出されたが、骨髄キメラマウスの正常組織においては検出されず、このことは、骨髄由来細胞(BMDC)の腫瘍への重度の浸潤を示している。骨髄キメラマウスの腫瘍間質で多くのGFP陽性細胞ならびにF4/80陽性マクロファージが見つかったが、GFP発現細胞の78%はF4/80陽性マクロファージであった(図3A)。これらの結果は、マクロファージを含むBMDCによって発現したTNF-αが胃腫瘍発生にとって重要であることを示している。
【実施例2】
【0044】
次に、Tnfrsf1a-/-マウスからGanマウスへの骨髄キメラマウスを作製して、腫瘍形成に対するBMDCにおけるTNFR1シグナリングの役割を検討した。X線CT分析によって、Tnfrsf1a+/+骨髄移植を行った対照Ganマウスは、8週間で腫瘍サイズの有意な増加を示した(図3BおよびC)。それに対して、Tnfrsf1a-/-マウスからGanマウスへの骨髄キメラは、胃腫瘍成長の抑制を示した。これらの結果は、胃腫瘍成長にとって、オートクリンまたはパラクリンによるBMDCにおけるTNF-α刺激は腫瘍上皮細胞に対するTNF-αの直接刺激よりも重要であることを示す。
【実施例2】
【0045】
(TNF-α経路によって誘発される候補腫瘍形成促進因子)
TNF-α依存性機構によって誘発される腫瘍形成促進因子を同定するため、Tnf-/- GanおよびTnf+/+ Ganマウス腫瘍ならびに野生型マウス胃を用いてマイクロアレイ分析を実施し、候補遺伝子を選択した(図4A)。まず、野生型マウス胃と比較して、Tnf+/+ Ganマウス腫瘍において2倍以上上方制御された遺伝子を抽出した。次に、Tnf+/+ Ganマウスと比較してP<0.05でTnf-/- Gan腫瘍において有意に下方制御された遺伝子を抽出した。これらの2つの遺伝子セットの比較によって、157の遺伝子がTNF-αに依存して胃腫瘍において上方制御される遺伝子であると同定した(図4B)。図2に示すように、TNF-αは、未分化状態の腫瘍細胞の維持にとって重要である。従って、選択された157の遺伝子とLgr5+胃幹細胞において2倍以上上方制御された遺伝子セット(Barker N, Huch M, Kujala P, et al. Lgr5(+ve) stem cells drive self-renewal in the stomach and buildlong-lived gastric units in vitro. Cell Stem Cell 2011;6:25-36)と比較し、157の遺伝子の中で11の遺伝子が胃幹細胞においても上方制御されることを確認した(図4C)。【0046】
(TNF-α依存性腫瘍形成促進因子の選択)
次に、選択された候補遺伝子のsiRNAをKato-III胃がん細胞にトランスフェクトし、軟寒天中での細胞増殖を検討した。特に、Noxo1、Gna14およびProm1発現の阻害によって軟寒天中の細胞増殖が有意に減少したが、他の9つの遺伝子についてのsiRNAは変化を引き起こさなかった(図5A)。更に、それぞれNoxo1、Gna14およびProm1の異なる配列を標的とする複数のsiRNAのトランスフェクションによってKato-III、MKN-45およびMKN-74胃がん細胞の腫瘍形成性を検討した。特に、Noxo1またはGna14に対するsiRNAは、全細胞株において軟寒天コロニー形成を抑制したが、Prom1 siRNAはKato-III細胞においてのみ抑制した(図5B~D)。これらの結果は、広範囲にわたる胃がん細胞の腫瘍形成性にNoxo1およびGna14が必須とされることを示す。
【実施例2】
【0047】
さらに、RT-PCRによって、Ganマウス胃腫瘍組織ならびに腫瘍上皮細胞におけるNoxo1およびGna14発現の増加を確認した(図5EおよびF)。
従って、TNF-αは、腫瘍細胞におけるNoxo1およびGna14の誘発によって腫瘍を促進する役割を果たすことが考えられる。
【実施例2】
【0048】
(上皮幹細胞性および腫瘍形成におけるNoxo1およびGna14の役割)
一次培養胃上皮細胞の分化は、Wnt標的遺伝子Sox9の下方制御とMuc5AC発現の誘発とに関連した(図6A)。特に、Noxo1およびGna14の両方の発現は、Sox9のような未分化細胞の場合と比較して、分化上皮細胞において有意に減少したが、このことは、未分化状態の上皮細胞の維持におけるNoxo1およびGna14の役割を示している。
【実施例2】
【0049】
胃がん細胞のスフェア形成におけるNoxo1およびGna14の役割を検討した。MKN74細胞は、がん幹細胞の特性を反映していると考えられる酸素圧低下状態下でスフェアコロニーを形成した。特に、複数のsiRNAによるNoxo1およびGna14発現の阻害によってスフェアコロニーの数が有意に減少した。この減少は、がん細胞の幹細胞性の維持におけるNoxo1およびGna14の役割を示している(図6B)。
【実施例2】
【0050】
最後に、in vivoでの腫瘍発生におけるNoxo1およびGna14の役割を検討した。免疫不全マウスの腺胃の粘膜下組織に細胞を同所的注射した場合、MKN74細胞は胃腫瘍を形成した。重要なことに、MKN74細胞におけるNoxo1またはGna14のいずれかの阻害は、in vivoでの腫瘍発生の有意な抑制を引き起こした(図6C)。これらの結果は、Noxo1およびGna14がinvivoで胃腫瘍発生を促進することを示す。
さらに、マクロファージを含むBMDCは、炎症微環境に召集されて、TNF-αを発現し、更に、TNF-αはTNFR1レセプタを介してBMDCを活性化する。これらは、腫瘍上皮細胞における、腫瘍形成促進因子であるNoxo1およびGna14の誘導に重要である(図6D)。
【実施例3】
【0051】
(予防・治療用物質のスクリーニング方法)
1.がん由来細胞株と被験物質との接触
被験物質として、Noxo1のsiRNAおよびGna14のsiRNAを使用する。
Noxo1のsiRNA、Gna14のsiRNAはそれぞれ、がん由来細胞株、Kato-III、MKN-45およびMKN-74にトランスフェクトし、導入された細胞を2日間培養する。陰性対照として非特異的siRNAを用いる。
【実施例3】
【0052】
2.がん由来細胞株のNoxo1遺伝子およびGna14遺伝子の発現量の測定
各siRNA導入細胞から、トータルRNAを抽出し、RT-PCRにより発現量を測定する。
【実施例3】
【0053】
3.各細胞の発現量の対照群発現量との比較
Noxo1のsiRNAをトランスフェクトしたKato-III、MKN-45およびMKN-74におけるNoxo1遺伝子の発現量が対照のNoxo1遺伝子の発現量と比較して50%以下である場合には、Noxo1のsiRNAは、がんの予防用または治療用物質として選択することができる。
Gna14のsiRNAをトランスフェクトしたKato-III、MKN-45およびMKN-74におけるGna14遺伝子の発現量が対照のGna14遺伝子の発現量と比較して50%以下である場合には、Gna14のsiRNAは、がんの予防用または治療法物質として選択することができる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明の新規スクリーニング方法により、新規がんの予防薬および新規がん治療薬を得ることができる。本発明のスクリーニング方法により得られた物質は、TNF-αシグナリングにより誘発されるNoxo1遺伝子およびGna14遺伝子の発現を抑制し、がんの未分化状態の維持を阻害することによりがんを予防し、治療することができる。
図面
【図1】
0
【図2】
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【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
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