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明細書 :セシウムトランスポータおよびセシウム低吸収性イネ

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2013-158327 (P2013-158327A)
公開日 平成25年8月19日(2013.8.19)
発明の名称または考案の名称 セシウムトランスポータおよびセシウム低吸収性イネ
国際特許分類 C12N  15/09        (2006.01)
C07K  14/415       (2006.01)
FI C12N 15/00 ZNAA
C07K 14/415
請求項の数または発明の数 4
出願形態 OL
全頁数 14
出願番号 特願2012-024729 (P2012-024729)
出願日 平成24年2月8日(2012.2.8)
公序良俗違反の表示 1.テフロン
発明者または考案者 【氏名】秋廣 高志
【氏名】山木 智央
出願人 【識別番号】504155293
【氏名又は名称】国立大学法人島根大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100116861、【弁理士】、【氏名又は名称】田邊 義博
審査請求 未請求
テーマコード 4B024
4H045
Fターム 4B024AA08
4B024CA04
4B024CA20
4B024DA01
4B024DA12
4B024EA04
4B024GA11
4H045AA10
4H045BA10
4H045CA31
4H045EA05
4H045FA74
要約 【課題】セシウムの吸収性が低いイネ、また、セシウムトランスポータを提供する。
【解決手段】特定のアミノ酸配列を有するセシウムトランスポータ。また、上記タンパク質をコードする遺伝子、または、特定の配列のDNA、を欠損したまたは欠損させたことを特徴とするセシウム低吸収性イネ。
【選択図】図5
特許請求の範囲 【請求項1】
下記A1またはA2に示すタンパク質。
A1:配列番号2、4,6,8,10,12,14,16,18,20,22,24,26,28,30,または,32に記載のアミノ酸配列を有するセシウムトランスポータ。
A2:配列番号2、4,6,8,10,12,14,16,18,20,22,24,26,28,30,または,32に記載のアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入、付加、又は逆位を含むアミノ酸配列からなり、かつ、セシウム輸送活性を有するタンパク質。

【請求項2】
下記B1もしくはB2に示すタンパク質をコードするDNAまたは下記B3もしくはB4に示すDNA。
B1:配列番号2、4,6,8,10,12,14,16,18,20,22,24,26,28,30,または,32に記載のアミノ酸配列を有するセシウムトランスポータ。
B2:配列番号1~16のいずれか一つに記載のアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入、付加、又は逆位を含むアミノ酸配列からなり、かつ、セシウム輸送活性を有するタンパク質。
B3:配列番号33に記載のDNA。
B4:配列番号33に記載のDNAにおいて、配列中に置換、欠失、挿入、付加、又は逆位を含むDNAからなり、かつ、イネ中でセシウム輸送活性を有するタンパク質に翻訳されるDNA。

【請求項3】
下記C1もしくはC2に示すタンパク質をコードするDNAを含有するベクターまたは下記C3もしくはC4に示すDNAを含有するベクター。
C1:配列番号2、4,6,8,10,12,14,16,18,20,22,24,26,28,30,または,32に記載のアミノ酸配列を有するセシウムトランスポータ。
C2:配列番号2、4,6,8,10,12,14,16,18,20,22,24,26,28,30,または,32に記載のアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入、付加、又は逆位を含むアミノ酸配列からなり、かつ、セシウム輸送活性を有するタンパク質。
C3:配列番号33に記載のDNA。
C4:配列番号33に記載のDNAにおいて、配列中に置換、欠失、挿入、付加、又は逆位を含むDNAからなり、かつ、イネ中でセシウム輸送活性を有するタンパク質に翻訳されるDNA。

【請求項4】
下記D1もしくはD2に示すタンパク質をコードする遺伝子、または、D3もしくはD4に示すDNA、を欠損したまたは欠損させたことを特徴とするセシウム低吸収性イネ。
D1:配列番号2、4,6,8,10,12,14,16,18,20,22,24,26,28,30,または,32に記載のアミノ酸配列を有するセシウムトランスポータ。
D2:配列番号2、4,6,8,10,12,14,16,18,20,22,24,26,28,30,または,32に記載のアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入、付加、又は逆位を含むアミノ酸配列からなり、かつ、セシウム輸送活性を有するタンパク質。
D3:配列番号33に記載のDNA。
D4:配列番号33に記載のDNAにおいて、配列中に置換、欠失、挿入、付加、又は逆位を含むDNAからなり、かつ、イネ中でセシウム輸送活性を有するタンパク質に翻訳されるDNA。

発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、セシウムトランスポータおよびセシウム低吸収性イネに関する。
【背景技術】
【0002】
福島原発事故以降、放射性元素のうち、飛散量が多く、かつ、半減期が長いものとして、セシウム(Cs)が問題視されている。特に、食品中に存在すると、体内被爆の原因となるので、原発隣接地域では出荷ができず、また、出荷制限地区に隣接等する特定地域ではサンプリング調査をおこない、基準値以下であることを確認して出荷されているのが現状である。
【0003】
食品のうち農産品は、土壌から栄養分を吸収するため、土着したCsの蓄積可能性が特に懸念される。加えて、Csは、植物の必須元素であるカリウムと同族であるため、上記可能性が一層懸念される。
【0004】
農産品のうち、米は全国的に栽培され、また、栽培面積も他の農作物に比べて圧倒的に多い。そして、水稲は、基本的に上流からの水を引き込むので、栽培地だけでなく広範囲かつ長期間にわたる監視が必要となる。
【0005】
一方で、Csを初めとする放射性元素ないしその同位体である安定同位元素の植物体内への吸収検討は、常時は必要とされないため、知見が少なく、米についても手探り的な状況であるのが実情である。
【0006】
消費者心理の観点からも、現象論的な裏付けより科学的根拠を以てセシウムを取り込まないまたは取り込んでいない米が潜在的に求められている。
【先行技術文献】
【0007】

【非特許文献1】ChoiY.H. et al. Journal of Environmental Radioactivity, 80, 45-58 (2005) 'Transferof 137Cs to rice plants from various paddy soils contaminatedunder flooded conditions at different growth stages'
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記に鑑みて検討されたものであり、セシウムの吸収性が低いイネを提供し、また、今後の基礎研究に資するセシウムトランスポータ等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明は、下記A1またはA2に示すタンパク質。
A1:配列番号2、4,6,8,10,12,14,16,18,20,22,24,26,28,30,または,32に記載のアミノ酸配列を有するセシウムトランスポータ。
A2:配列番号2、4,6,8,10,12,14,16,18,20,22,24,26,28,30,または,32に記載のアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入、付加、又は逆位を含むアミノ酸配列からなり、かつ、セシウム輸送活性を有するタンパク質。
【0010】
請求項2に記載の発明は、下記B1もしくはB2に示すタンパク質をコードするDNAまたは下記B3もしくはB4に示すDNA。
B1:配列番号2、4,6,8,10,12,14,16,18,20,22,24,26,28,30,または,32に記載のアミノ酸配列を有するセシウムトランスポータ。
B2:配列番号2、4,6,8,10,12,14,16,18,20,22,24,26,28,30,または,32に記載のアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入、付加、又は逆位を含むアミノ酸配列からなり、かつ、セシウム輸送活性を有するタンパク質。
B3:配列番号33に記載のDNA。
B4:配列番号33に記載のDNAにおいて、配列中に置換、欠失、挿入、付加、又は逆位を含むDNAからなり、かつ、イネ中でセシウム輸送活性を有するタンパク質に翻訳されるDNA。
【0011】
請求項3に記載の発明は、下記C1もしくはC2に示すタンパク質をコードするDNAを含有するベクターまたは下記C3もしくはC4に示すDNAを含有するベクター。
C1:配列番号2、4,6,8,10,12,14,16,18,20,22,24,26,28,30,または,32に記載のアミノ酸配列を有するセシウムトランスポータ。
C2:配列番号2、4,6,8,10,12,14,16,18,20,22,24,26,28,30,または,32に記載のアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入、付加、又は逆位を含むアミノ酸配列からなり、かつ、セシウム輸送活性を有するタンパク質。
C3:配列番号33に記載のDNA。
C4:配列番号33に記載のDNAにおいて、配列中に置換、欠失、挿入、付加、又は逆位を含むDNAからなり、かつ、イネ中でセシウム輸送活性を有するタンパク質に翻訳されるDNA。
【0012】
請求項4に記載の発明は、下記D1もしくはD2に示すタンパク質をコードする遺伝子、または、D3もしくはD4に示すDNA、を欠損したまたは欠損させたことを特徴とするセシウム低吸収性イネ。
D1:配列番号2、4,6,8,10,12,14,16,18,20,22,24,26,28,30,または,32に記載のアミノ酸配列を有するセシウムトランスポータ。
D2:配列番号2、4,6,8,10,12,14,16,18,20,22,24,26,28,30,または,32に記載のアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入、付加、又は逆位を含むアミノ酸配列からなり、かつ、セシウム輸送活性を有するタンパク質。
D3:配列番号33に記載のDNA。
D4:配列番号33に記載のDNAにおいて、配列中に置換、欠失、挿入、付加、又は逆位を含むDNAからなり、かつ、イネ中でセシウム輸送活性を有するタンパク質に翻訳されるDNA。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、セシウムの吸収性が低いイネを提供し、また、今後の基礎研究に資するセシウムトランスポータ、DNA、または、ベクターを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】トランスポータの候補遺伝子を示すアクセッション番号の一覧である。
【図2】入手した3種のプラスミドマップである。
【図3】pYES2プラスミドのマップである。
【図4】液体培地におけるセシウムトランスポータを有する酵母の成長曲線を示した図である。
【図5】各種濃度のセシウムを含む固体培地における、セシウムトランスポータを有する酵母の培養結果を示した写真である。
【図6】それぞれのセシウムトランスポータ遺伝子の発現部位をRT-PCRによって調査した実験結果である。
【図7】アクセッション番号AK241580の遺伝子を酵母に導入した際の酵母中のセシウム吸収量の経時変化を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本実施の形態では、農業機器を含めて管理技術が普及している稲作、すなわち、米に着目して、セシウムトランスポータを特定することを主眼とし、また、セシウムトランスポータを欠損させることにより、セシウム低吸収性イネを作出する態様を説明する。

【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら詳細に説明する。
<候補遺伝子の選択>
まず、酵母ライブラリを構築することとした。イネの完全長cDNAはおおよそ32000個単離されているが、このうち、栄養素等を輸送するタンパク質、すなわちトランスポータもしくはその候補はおよそ1300個程度存在する。

【0017】
そこで、これらに本発明者らによるこれまでの研究結果を加え、イネトランスポータ候補遺伝子(完全長cDNA)をイネゲノムリソースセンタ(独立行政法人農業生物資源研究所)から約1350取り寄せた。そのアクセッション番号の一覧を図1に示した。

【0018】
これらの遺伝子は、原核生物である大腸菌で組換えタンパク質を発現するプラスミドの形態で分譲される。分譲されたプラスミドは3タイプあり、プラスミドマップをそれぞれ図2に示した。

【0019】
<pYES2への候補遺伝子の組み換え>
酵母中で組換えタンパク質を発現させる目的で、酵母タンパク質発現ベクターpYES2プラスミド(Invitrogen社)へ遺伝子を組み込む作業をおこなうこととした。このプラスミドは、ウラシル合成遺伝子も有するため、ウラシルを合成しない酵母を用いることにより、導入された遺伝子発現の評価もこなうことができる。また、ガラクトース誘導性のGAL1プロモーターの下流に遺伝子が挿入されるため、酵母内での導入遺伝子の発現を制御することが可能である。このプラスミドマップを図3に示した。なお、相同組換えに用いた配列を配列番号34と35に示した。

【0020】
<目的遺伝子の増幅>
pYES2に挿入するcDNAフラグメントは、イネゲノムリソースセンタから入手したプラスミドを鋳型とし、PCRにより目的の部分のみを増幅することにより作成した。プラスミドは上述の通り3種類あるが、挿入遺伝子近辺の配列は、pME18FL-3とpCMVSPORT6とが同じであるため、PCRにより遺伝子近辺の配列ごと増幅するようなプライマセットを2組設計した。pFLC1用のフォワードプライマとリバースプライマをそれぞれ配列番号36と37に示し、pME18FL-3およびpCMVSPORT6用のフォワードプライマとリバースプライマをそれぞれ配列番号38と39に示す。

【0021】
なお、PCRには、合成速度と正確性の高さを考慮しPrime Star Max(Takara)を使用した。5μlの反応系に2.5μlの2x Prime Star Maxバッファ、プライマを0.125μl(フォワードプライマとリバースプライマがそれぞれ10pmolになるように調製したもの)、MQを4.875μl加えた。鋳型DNAはチップの先をプラスミド溶液に浸し、チップの先端にわずかについたものを利用した。PCRは98℃2分間の変性を行った後、98℃10秒、55℃5秒、72℃30秒間を30サイクル行い、最後に72℃3分間反応させた。

【0022】
<pYES2の準備>
pYES2は予め制限酵素XbaI、KpnI、HindIII(何れもTakara社)にて切断し、直鎖化した。切断反応はpYES2溶液72μl(10μg)に10×M Buffer 9μlと、XbaI、KpnI、HindIIIを3μlづつ加え、37℃で終夜反応させた。続いて、1%のアガロースゲル電気泳動にて分離した後、目的のバンドをゲルから切り出した。ゲルからのDNAの抽出は、Mag Extract(Toyobo社)を使用した。方法はマニュアルに従った。

【0023】
<PCR産物のpYES2への挿入>
サブクローニングに際しては、Gap-repair cloning法[Ma H, Kunes S, Schatz PJ, Botstein D (1987) “Plasmid construction
by homologous recombination in yeast” Gene; 58(2-3):201-16.]によった。先のPCRによって得られたDNA断片 100ng程度と、直鎖化したpYES2 5ng程度を同時に酵母(W303-1A株Genotype: MATa {leu2-3,112 trp1-1 can1-100
ura3-1 ade2-1 his3-11,15})に導入することにより目的のプラスミドを得た。

【0024】
<目的の遺伝子の挿入確認>
目的の遺伝子がプラスミドに正しく挿入されたことを確認するため、DNAシーケンサを用いて配列の確認を行った。まず、酵母からプラスミドを抽出し、得られたプラスミドを大腸菌に形質転換し、さらに大腸菌を培養しプラスミドを抽出した。

【0025】
酵母からのプラスミドの抽出は以下の方法により行った。
抽出にはプラスミド抽出キットHiYield Plasmid Mini Kit(RBC社)を用いた。3mlのSC-ura液体培地で終夜培養した酵母を丸底2mlチューブ(eppendorf)に移し、3000rpm、3分間、室温で遠心して集菌した。PDA1を200μl加え、そこにZymolyaseを10μl加え37℃で一時間反応させた。PDA2を200μl加えよく攪拌したのち、PDA3を300μl加えよく攪拌した。15000rpmで10分間室温で遠心し、上清をフィルタカラムに移した。吸引により溶液を濾過した後、W1バッファを400μl加え吸引濾過した。続いて600μlのWashバッファを加えて吸引濾過した。フィルタカラムをエンプティカラムに移し、15000rpmで1分間室温で遠心した。フィルタカラムを新しい1.5mlマイクロチューブに移し、Elutionバッファを30μl加えて1分間静置した。15000rpmで1分間室温で遠心し濾液をプラスミド溶液とした。

【0026】
得られたプラスミドを大腸菌DH5α株に形質転換した。
コンピテントセルの作成はHanahanらの方法で作成した[Hanahan, D (1983) “Studies on transformation of Escherichia coli
with plasmids” Journal of Molecular Biology 166 (4): 557-580]。形質転換はFreeze-though法を用いて行った。100μlのコンピテントセルが完全に溶けきる前に酵母から抽出したプラスミド溶液10μlを加え軽く撹拌し、30分間氷上に静置した。その後、42℃で45秒間反応させた後、氷上で3分間静置した。その後、37℃に保温しておいたSOC培地を800μl加え、軽く撹拌したのち37℃のインキュベータ内にて30分間静置した。静置後、5000rpm、2分間遠心し集菌した後、デカンテーションで上清を捨てた。37℃に保温しておいたLA培地に植菌し終夜培養した。

【0027】
用いたLA培地の組成を表1に示す。
【表1】
JP2013158327A_000003t.gif
NaOHによりpHは7.2~7.5に調整する。
121℃20分間のオートクレーブ後、60℃程度まで培地温度が下がったところで
終わり濃度100ug/mlとなるようにアンピシリンナトリウム(Wako)を加
えた。

【0028】
大腸菌からのプラスミド抽出にはプラスミド抽出キットHiYield Plasmid Mini Kit(RBC社)を用いた。3mlのLA液体培地で終夜培養した大腸菌を丸底2mlチューブ(eppendorf)に移し、3000rpm、3分間、室温で遠心して集菌した。PDA1を200μl加え完全に懸濁した。続いて、PDA2を200μl加え10回上下転倒した後、2分間静置した、PDA3を300μl加えよく攪拌した。15000rpmで10分間室温で遠心し、上清をフィルタカラムに移した。吸引により溶液を濾過した後、W1バッファを400μl加え吸引濾過した。続いて600μlのWashバッファを加えて吸引濾過した。フィルタカラムをエンプティカラムに移し、15000rpmで1分間室温で遠心した。フィルタカラムを新しい1.5mlマイクロチューブに移し、Elutionバッファを30μl加えて1分間静置した。15000rpmで1分間室温で遠心し濾液をプラスミド溶液とした。

【0029】
シーケンサはABI社の3130DNAシーケンサを用いた。PCR反応液は、プラスミドDNA溶液を2μl(200~400ng)、BigDye(ABI社)を0.3μl、5×Sequence Buffer(ABI社)を4μl、Primer(12.5pmol/μl)を0.25μl、超純水を13.45μlとした。PCR反応は、サーマルサイクラ9700(ABI社)を用いて行った。PCRは96℃2分間の変性を行った後、96℃10秒、50℃5秒、60℃4分間を35サイクル行った。

【0030】
未反応のBigDyeの除去は、shephadex G-50(GEヘルスケア)を用いて行った。3gのshephadex G-50(Fine Grade)を50mlのファルコンチューブに入れ、超純粋を50ml加え一晩静置した。使用直前に、Shepadex溶液を良く混ぜマルチスクリーン(GEヘルスケア)に300μl加えた。マルチスクリーンをPCRプレート上に置き、1000rpm、室温で5分間遠心した。5分間遠心した後、プレートの中心側と外側を逆にして1000rpm、室温で5分間遠心した。ゲルの入ったマルチスクリーンを新たなPCRプレートに乗せかえ、ゲルの中央にシーケンス反応産物をアプライした。1000rpm、室温で5分間遠心した。濾液をシーケンサに供した。

【0031】
<目的の遺伝子が挿入されていることが確認できたプラスミドの酵母への導入>
酵母へのプラスミドの形質転換は、H Ito,Y Fukuda,K Murata, and A Kimura (1983) “Transformation of
intact yeast cells treated with alkali cations.” Journal of
bacteriology,163-168を一部改変して行った。

【0032】
まず、酵母(W303-1A株Genotype: MATa {leu2-3,112 trp1-1 can1-100
ura3-1 ade2-1 his3-11,15})を3mlのYPD培地にて30℃で終夜培養し前培養液とした。100mlのYPAD培地が入った300ml容量のコルベン(IWAKI)に前培養液3mlを加え、OD600=0.4~0.6程度になるまで30℃、90rpmで回転培養した。OD600=0.4~0.6程度になったところで2本の50mlのチューブ(Labcon)に移し、3000rpm、2分間、室温で遠心し集菌した。上清を捨てて25mlの滅菌水でリンスを一回行い、さらに集菌して上清を完全に除いた。2mlの0.1M酢酸リチウムをそれぞれ加えて懸濁し、3000rpm、2分間、室温で遠心して集菌した。

【0033】
上清を除いた後、50% PEG4000 6ml、1M酢酸リチウム 900μl、キャリアDNA(2.0mg/ml)625μl、ジメチルスルホキシド1ml、滅菌水1.25mlを加えてボルテックスした。2本を合して96穴プレートに200μlづつ分注し、それぞれにDNA溶液を加えた。もれのないようにシールし、その後30℃で30分間静置した。次に恒温機(TAITEC)により42℃で20分間ヒートショックを行った。ヒートショック中は3~5分間おきに上下転倒により混合した。3000rpm、10min、室温で遠心し、上清を完全に除き、200μlのYPAD液体培地を加え懸濁し、30℃、1時間保温した。3000rpm、10min、室温で遠心し、上清を完全に除き20μlの滅菌水に懸濁し、SC-ura固体培地に総て植菌した。

【0034】
<ライブラリのスクリーニング>
・酵母の菌株および培養条件:
酵母(W303-1A株Genotype: MATa {leu2-3,112 trp1-1 can1-100
ura3-1 ade2-1 his3-11,15})はSC-ura培地にて培養を行った。液体培養時はシェーカ(NR-3,TAITEC)で180rpmの回転培養を行った。前培養時はSC-ura培地を用いて、本培養時にはSG-ura+Gal培地を用いた。いずれも30℃で培養を行った。

【0035】
なお、SC-uraまたはSG-ura培地100 ml中の組成とおよび作成は次の通りである。
Yeast Nitrogen Base(日本BD社):0.67g
Drop out mix:0.182g
adenine(Wako):0.04g
saccinic acid buffer:5ml添加
これを脱イオン水で90mlとなるまで調製し、agarose(Wako)を2g添加して、121℃で20分間オートクレーブした。
SC-ura培地にはglucoseを2g添加
SG-ura培地にはgalactoseを2g添加

【0036】
・スクリーニング条件:
セシウムトランスポータのスクリーニングに際しては、塩化セシウム(Wako)を用いて評価をおこなった。
塩化セシウムを滅菌水に溶かして4Mセシウム溶液を作成し、オートクレーブ後にSG-ura培地またはSC-ura培地に添加することでセシウム含有培地を作成した。選択培地には培地中のpHを一定に揃えることを目的にコハク酸/Trisバッファを終濃度20mMになるように添加した。スクリーニング時、前培養は96穴マイクロタイタープレート(BM機器)で行った。各ウェルに100μlのSC-ura液体培地を分注し、酵母をピンレプリケータ(ワトソン)または楊枝を用いて植菌した後、恒温振とう機(タイテック社)を用い、180rpmで30℃、終夜培養した。続いて、1.5mlのディープウェルプレートの各ウェルに200μlのSC-ura培地を入れ、そこに前培養した酵母を20μl植菌し、30℃で4時間30分培養した。培養後、新しい96穴マイクロタイタープレートに100μl分注し、吸光度を測定した(Model680,BIO-RAD)。

【0037】
また、本培養液を10μl加えるとOD595が0.01となるように滅菌水を1.5mlのディープウェルプレートに加えた。この滅菌水に10μlの本培養液を加え総ての菌液の濁度を揃えた後、サージカルテープ(3M社)で蓋をして、3分間卓上ミキサーで良く攪拌した。懸濁液150μlを新しい96穴マイクロタイタープレートに分注した。この菌液を固体培地に植菌する際にはベル・ブロッター96穴リプリケーター(サンプラテック社)を使った。30℃で40~48時間培養を行った。

【0038】
セシウムは植物の生育に必要ではない。酵母においても同様で、酵母内のセシウム濃度が高まると、酵母増殖等が抑制される。液体培養による吸光度測定も、固体培地によるコロニー評価も、いずれも、ライブラリ中の17株にセシウム輸送活性があることが確認できた。図4は、液体培地におけるセシウムトランスポータを有する酵母の成長曲線を示した図である。図5は、各種濃度のセシウムを含む固体培地における、セシウムトランスポータを有する酵母の培養結果を示した写真である。
なお、ガラクトース誘導性とウラシル要求性も合わせて検討しており、これら17株のスクリーニングの適正を保証した。

【0039】
以上の実験により、アクセッション番号AK107688,AK107078,AK111959,AK058856,AK066194,AK068574,AK102180,AK058673,AK059035,AK065891,AK071118,AK070844,AK100524,AK105088,AK105667,AK241580,AK120821の遺伝子は、セシウムトランスポータを形成する遺伝子であると確認できた。なお、それぞれのDNAを配列番号1,3,5,7,9,11,13,15,17,19,21,23,25,27,29,31,33に示した。また、AK120821(配列番号33)を除き、翻訳されるタンパク質をそれぞれ配列番号2、4,6,8,10,12,14,16,18,20,22,24,26,28,30,32に示した。

【0040】
<セシウムトランスポータの発現部位>
次に、イネにおける発現部位を半定量的RT-PCR法を用いて調査した。28℃16時間、24℃8時間の環境で栽培した3葉期のイネからRNeasy Plant Mini Kit(キアゲン社)を用いてtotal RNAを抽出した。抽出方法はキット付属のマニュアルに従った。ただ一点変更した点は以下である。Buffer RW1処理を行った後、10μlのDNaseI(ニッポンジーン社)と70μlのBuffer RDDの混合液をカラムに加え、15分間室温で放置し、DNAの分解を行った。

【0041】
抽出したtotal RNA 5μgを鋳型として逆転写反応を行った。反応には、PrimeScript RT-PCR Kit(TaKaRa社)を用いた。方法は付属のマニュアルに従った。反応液60μlに240μlのTEを加えて5倍に希釈し、PCRまで-30度で保存した。PCRにはTaq DNA Polymerase(BioBasic社)を用いた。反応液の組成はマニュアルに従った。

【0042】
合成オリゴはリストのものを利用した。PCR反応は、94℃で2分間反応させた後、94℃30秒、55℃30秒、72℃30秒のサイクルを24-29サイクル行った。PCR産物を1.5%のアガロース電気泳動により分離し、エチジウムブロマイドにより染色した後、デジタルカメラでバンドを撮影した。写真を図6に示す。これから、アクセッション番号AK107078とAK068574の株を除き、根にセシウムトランスポータが形成されることが確認できる。

【0043】
なお、PCRに用いたプライマセットと配列番号との関係を表2に示す。
【表2】
JP2013158327A_000004t.gif

【0044】
<酵母における輸送活性>
次に、上記17株の酵母におけるセシウムトランスポータの輸送活性の測定をおこなった。3mlのSD-gal-Ura液体培地に酵母を植菌して、グロースチャンバーの温度を30℃、150rpmの振盪培養で終夜前培養を行った。翌朝に、3mlのSD-gal-Ura液体培地を前培菌液に追加し、全量を6mlとし、グロースチャンバーの温度を30℃、150rpmの振盪培養で3時間本培養した。135mlのSD-gal-Ura培地に、後に加える菌液を入れてCsCl濃度が30mMになるように4MのCsClを1050μl加えよく混ぜた。この培地を50mlのファルコンチューブに9mlずつ分注した。本培養菌液を1mlをファルコンチューブに入れた培地に植菌し、グロースチャンバーの温度を30℃、150rpmで30分~5時間振盪培養した。

【0045】
振盪中、20mMCaCl2を氷上に静置して冷やした。スイングローターで3500rpm、4℃で3分間遠心し、上清をデカンテーションで静かに除いた。以下テフロンチューブに菌液を移すまで氷上で作業を行った。上記の時間培養したチューブを氷上に置き、培養を止めた。スイングローターで3500rpm、4℃で3分間遠心した後、氷冷した20mM CaCl2を5ml加えてボルテックスで懸濁し、スイングローターで3500rpm、4℃で3分間遠心してリンスした。リンスは3回行った。最後のリンスの後、上清を少量だけ残し、ピペッティングでペレットを懸濁し、1.5mlエッペンチューブに移し、遠心機で10000rpm、4℃で1分間遠心し、上清を完全に除き、1mlのMQをそれぞれのエッペンチューブに加えた。

【0046】
各エッペンチューブから10μlを取り、cell counterで細胞数を3反復数えその平均を取った。990μl残っている残りのチューブを遠心機で10000rpm、4℃で1分間遠心し、デカントで上清を除いた。ペレットをピペッティングで懸濁しテフロンチューブに菌液を移し、ヒートブロックで30分間、80℃で完全に乾燥させた。テフロンチューブに硝酸125μlを加えて120℃で2時間静置し酵母を酸分解した。分解後、過酸化水素水を50μl各テフロンチューブに加え、遠心機で10000rpm、4℃で1分間遠心して10分間室温で静置した。静置後、MQを2950μl各テフロンチューブに加え、3mlにメスアップした。テフロンチューブをチューブラックにセットした後、超音波洗浄機にて10分間懸濁した。懸濁液を新しい15mlチューブに移し、測定まで4℃で保存した。サンプル中のセシウム濃度は、原子吸光度計(日立社製)にて測定した。

【0047】
結果を図7に示す。ここでは、アクセッション番号AK241580の遺伝子を酵母に導入した際の酵母中のセシウム吸収量の経時変化を示しているが、他の16株も同様の傾向が見られた。実際に酵母にセシウムトランスポータが形成されていることが確認できる。

【0048】
<セシウム低吸収性イネ>
セシウムトランスポータが欠失していれば、セシウムを植物体内に吸収しなくなるので、放射性セシウムが付着した土壌においても流通可能なイネの栽培が可能となる。すなわち、アクセッション番号AK107688,AK107078,AK111959,AK058856,AK066194,AK068574,AK102180,AK058673,AK059035,AK065891,AK071118,AK070844,AK100524,AK105088,AK105667,AK241580,またはAK120821の遺伝子を欠損したイネを用いることにより、または、当該遺伝子を欠損したイネを作出してこれを用いることにより、効率的にセシウム低吸収性イネを作出できる。なお、好ましくは、2つ以上の遺伝子を欠損させたイネであり、より好ましくは5以上欠損させたイネであり、さらに好ましくは10以上欠損させたイネであり、最も好ましくは17すなわち総ての遺伝子を欠損させたイネである。

【0049】
イネの作出の例としては、γ線照射等の変異源を用いて、セシウムトランスポータを欠損させ、これを戻し交配し、選抜することにより、食味よく、かつ、セシウムを取り込まない、若しくは、取り込みにくいイネを作出できる。戻し交配や選抜手法については、汎用技術を用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明のセシウムトランスポータを利用し、その輸送活性を高め、イネ植物体全体または特定の部位にセシウムを備蓄・濃縮させ、田畑その他の地面の徐染をおこなうこともできる。備蓄・濃縮されたものは適宜、さらに後工程で濃縮し、環境から分離することができる。
図面
【図1-1】
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【図1-2】
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【図1-3】
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【図1-4】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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