TOP > 国内特許検索 > 有機フォトカソードおよびその製造方法 > 明細書

明細書 :有機フォトカソードおよびその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5943321号 (P5943321)
公開番号 特開2013-168296 (P2013-168296A)
登録日 平成28年6月3日(2016.6.3)
発行日 平成28年7月5日(2016.7.5)
公開日 平成25年8月29日(2013.8.29)
発明の名称または考案の名称 有機フォトカソードおよびその製造方法
国際特許分類 H01J   1/34        (2006.01)
H01J  40/06        (2006.01)
H01J   1/35        (2006.01)
H01J   9/12        (2006.01)
FI H01J 1/34 Z
H01J 40/06
H01J 1/35 Z
H01J 9/12 Z
請求項の数または発明の数 2
全頁数 5
出願番号 特願2012-031253 (P2012-031253)
出願日 平成24年2月16日(2012.2.16)
審査請求日 平成27年1月22日(2015.1.22)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504155293
【氏名又は名称】国立大学法人島根大学
発明者または考案者 【氏名】田中 仙君
【氏名】廣光 一郎
個別代理人の代理人 【識別番号】100116861、【弁理士】、【氏名又は名称】田邊 義博
審査官 【審査官】遠藤 直恵
参考文献・文献 特開平07-050129(JP,A)
特開平05-086199(JP,A)
特開2009-094366(JP,A)
調査した分野 H01J 1/34-1/35
H01J 9/12
特許請求の範囲 【請求項1】
銀微粒子が、有機半導体層である亜鉛フタロシアニン層またはポリ3ヘキシルチオフェン層の表面に散在しているフォトカソードであって、
有機半導体層のイオン化ポテンシャルと微粒子の仕事関数の何れよりも低いエネルギーの光照射により電子放出を生じることを特徴とするフォトカソード。
【請求項2】
有機半導体である亜鉛フタロシアニン層またはポリ3ヘキシルチオフェン層の表面に、超高真空下で微粒子を蒸着または堆積させ、有機半導体層のイオン化ポテンシャルと微粒子の仕事関数の何れよりも低いエネルギーの光照射により電子放出を生じるフォトカソードを製造するフォトカソード製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、有機分子層を用いたフォトカソードに関し、特に、素材自体のイオン化ポテンシャルや仕事関数より低いエネルギーの光であっても光電子放出を生じるフォトカソードに関する。
【背景技術】
【0002】
フォトカソードとは、物質の仕事関数程度のエネルギーをもつ光を照射することにより、物質から電子が放出される現象、すなわち、光電効果を動作原理とした電子源であり、光電子増倍管の受光部に利用されている。
【0003】
その素材は金属や無機半導体であり、エネルギーの小さな光を検出する場合などには、表面に特殊処理を施して仕事関数を小さくしたものが用いられる。
【0004】
フォトカソードを用いた電子源は、熱電子放出や電界放出を利用する電子源に比べて、放出される電子のエネルギー幅が狭く、また、電子ビームの時間的・空間的成形性などの観点から好適である。
【0005】
しかしながら、従来の技術では以下の問題点があった。
従来のフォトカソードは、アルカリ金属や無機半導体表面に特殊処理を施したものであり、素子の設計自由度に制限があるという問題点があった。また、表面処理などによる複雑な製造プロセスを必要とし、低コスト化が困難であるという問題点があった。
【先行技術文献】
【0006】

【特許文献1】特開2011-113886号
【特許文献2】特開2009-277515号
【特許文献3】特開2002-313218号
【特許文献4】特開2011-71455号
【0007】

【非特許文献1】T. Nakamura et al.,"Photoemission enhancement induced bynear-fields via local surface plasmon resonance of silver nanoparticles on ahydrogen-terminated Si(111) surface" J. Phys. Chem. C, 114(39), 16270-16277(2010).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、設計自由度が高く、製造も容易なフォトカソードであって、素材自体のイオン化ポテンシャルや仕事関数より低いエネルギーの光であっても光電子放出を生じるフォトカソードを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、請求項1のフォトカソードは、銀微粒子が、有機半導体層である亜鉛フタロシアニン層またはポリ3ヘキシルチオフェン層の表面に散在しているフォトカソードであって、有機半導体層のイオン化ポテンシャルと微粒子の仕事関数の何れよりも低いエネルギーの光照射により電子放出を生じることを特徴とする。
【0012】
また、請求項に記載のフォトカソード製造方法は、有機半導体である亜鉛フタロシアニン層またはポリ3ヘキシルチオフェン層の表面に、超高真空下で微粒子を蒸着または堆積させ、有機半導体層のイオン化ポテンシャルと微粒子の仕事関数の何れよりも低いエネルギーの光照射により電子放出を生じるフォトカソードを製造するものである。な、真空蒸着法やスパッタリング法により微粒子を散在させる例を挙げることができる。
【0013】
上記発明において、有機半導体層とは、有機半導体によるフォトカソードの構成層と表現することもできる。また、有機半導体は膜状であってもよい。また、微粒子とは、粒状であるほか、有機半導体の表面上の広がりに対して厚みのない(すなわち扁平な)微片が蒸着している態様も含まれるものとする。なお、微粒子の大きさは、厚みとしては、1nm程度以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、設計自由度が高く、製造も容易なフォトカソードであって、素材自体のイオン化ポテンシャルや仕事関数より低いエネルギーの光であっても光電子放出を生じるフォトカソードを提供することができる。柔軟な基板上にも製造可能であり、また、大面積化にも対応可能となる(形状にバリエーションをもたせることができる)
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】有機フォトカソードの構造を示した模式図である。
【図2】銀の膜厚が0.05nmの有機フォトカソードの光電子スペクトルを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら詳細に説明する。
まず、銀製の導電性基板に、亜鉛フタロシアニン(ZnPc)を真空蒸着法によって室温で成膜した。膜厚は20nmとした。真空度は、10-6Paの超高真空とした。

【0017】
次に、この膜の上に、純度99.99%の銀を室温で真空蒸着して試料(有機フォトカソード)を複数作製した。真空度は、10-6Paの超高真空とした。このとき、銀の膜厚は、水晶振動子を用いた膜厚計で測定したところ0.05nm、0.20nm、0.50nm、1.0nm、3.0nmであった。用いた銀の量が微量であることから、3.0nm厚の銀を蒸着したものをのぞき、ZnPc表面上に膜を形成しておらず、微粒子として散在していることがわかった。フォトカソードの模式的な構造を図1に示す。

【0018】
次に、得られた試料の仕事関数を測定した。図2は、銀の膜厚が0.05nmの有機フォトカソードの光電子スペクトルを示した図である。図から明らかなように、光電子が観測され、そのスペクトルの半値幅は約0.15eVであった。なお、測定は、10-7Pa以下の真空中でおこない、照射光は3.44eV(波長360nm)のレーザ光を用いた。なお、試料には-10Vの電圧を印加した。

【0019】
ここで、銀の仕事関数は約4.5eVであり、ZnPcのイオン化ポテンシャルは約5.2eVである。従って、図2に示した結果は、素材(銀またはZnPc)単体では光電効果が生じ得ないエネルギーの光の照射で光電効果が観測されたことを示しており、本発明は、有機半導体を用いることができ、かつ、素材の仕事関数(ないしイオン化ポテンシャル)を小さくすることを可能とする、設計自由度に富むフォトカソードを提供するものであるといえる。

【0020】
なお、銀の膜厚が0.20nm、0.50nm、1.0nmの試料も同様に光電子が観測された。一方、銀の膜厚が3.0nmのものは光電子が観測されなかった。このことから、金属が有機層の上に散在していることが、換言すれば、金属が膜として蒸着または堆積していないことが、仕事関数の低下に関係することが確認できた。

【0021】
上記の例は、有機半導体にZnPcを用いた場合を説明したが、このほか、メタルフリーフタロシアニン、銅フタロシアニン、チタニルフタロシアニン、フラーレン、ポリ3ヘキシルチオフェンを用いることができる。同様に、金属微粒子としては、銀のほか、金を用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明によれば、有機半導体を用いるので、低温で成膜可能であり、大面積化にも対応ができ、また、プラスチックフィルムのような柔軟な基板上にも作成できる。金属に関しても、有機半導体状に、金属微粒子として散在させるので、膜を形成するよりも使用する原料が少なくて済み、好適である。
【0023】
このほか、上記の実験例では、近紫外光励起による光電子放出現象といえ、この観点からも応用が可能である。
図面
【図1】
0
【図2】
1