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明細書 :環状ペプチド化合物またはその薬理的に許容される塩およびその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5863651号 (P5863651)
登録日 平成28年1月8日(2016.1.8)
発行日 平成28年2月16日(2016.2.16)
発明の名称または考案の名称 環状ペプチド化合物またはその薬理的に許容される塩およびその製造方法
国際特許分類 C07K   7/64        (2006.01)
C07K   7/06        (2006.01)
C07K   1/02        (2006.01)
A61K  38/00        (2006.01)
A61P  17/00        (2006.01)
A61P  43/00        (2006.01)
FI C07K 7/64 ZNA
C07K 7/06
C07K 1/02
A61K 37/02
A61P 17/00
A61P 43/00 105
請求項の数または発明の数 6
全頁数 30
出願番号 特願2012-523910 (P2012-523910)
出願日 平成23年7月6日(2011.7.6)
国際出願番号 PCT/JP2011/065521
国際公開番号 WO2012/005313
国際公開日 平成24年1月12日(2012.1.12)
優先権出願番号 2010155576
優先日 平成22年7月8日(2010.7.8)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成26年4月21日(2014.4.21)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503092180
【氏名又は名称】学校法人関西学院
発明者または考案者 【氏名】平井 洋平
【氏名】奥川 洋司
個別代理人の代理人 【識別番号】110000796、【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
審査官 【審査官】野村 英雄
参考文献・文献 国際公開第2004/101610(WO,A1)
HIRAI, Y. et al.,"Structural optimization of pep7, a small peptide extracted from epimorphin, for effective induction of hair follicle anagen.",EXP. DERMATOL.,2005年 9月,Vol.14, No.9,P.692-699
OKUGAWA, Y. et al.,"Epimorphin-derived peptide antagonists remedy epidermal parakeratosis triggered by unsaturated fatty acid.",J. DERMATOL. SCI.,2010年 9月,Vol.59, No.3,P.176-183
調査した分野 C07K 1/00-19/00
C12N 15/00-15/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CA/REGISTRY(STN)
UniProt/GeneSeq
PubMed
特許請求の範囲 【請求項1】
式(I):
【化1】
JP0005863651B2_000015t.gif
式中、nは1を示す。なお、式中、CysとCysとの結合は、ペプチド結合またはジスルフィド結合を意味し、それ以外の結合はペプチド結合を意味する。〕
で表される環状ペプチド化合物またはその薬理的に許容される塩。
【請求項2】
式(I)において、CysとCysとがジスルフィド結合によって結合していることを特徴とする、請求項に記載の環状ペプチド化合物またはその薬理的に許容される塩。
【請求項3】
式(I):
【化2】
JP0005863651B2_000016t.gif
〔式中、nは1を示す。なお、式中、CysとCysとの結合は、ペプチド結合またはジスルフィド結合を意味し、それ以外の結合はペプチド結合を意味する。〕で表される環状ペプチド化合物またはその薬理的に許容される塩の製造方法であって、
式(IV):
【化3】
JP0005863651B2_000017t.gif
〔式中、nは式(I)におけるnと同じである〕
で表される化合物を環化させることを特徴とする環状ペプチド化合物またはその薬理的に許容される塩の製造方法。
【請求項4】
環状ペプチド化合物が、式(I)において、CysとCysとがジスルフィド結合によって結合している化合物であって、式(IV)で表される化合物の両末端のシステインのチオール基を酸化架橋することで環化させることを特徴とする請求項に記載する製造方法。
【請求項5】
請求項1または2に記載する環状ペプチド化合物またはその薬理的に許容される塩を有効成分とする経口投与形態を有する医薬組成物。
【請求項6】
不全角化に起因する皮膚状態異常の改善、エピモルフィンの過剰発現に起因する疾患の予防または治療、慢性閉塞性動脈硬化症状の予防または治療、バージャー病の予防または治療、及び損傷臓器の治療からなる群から選択される少なくとも1つの用途に使用される請求項に記載する医薬組成物。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、環状ペプチド化合物またはその薬理的に許容される塩およびその製造方法に関する。さらに詳しくは、不全角化を起因とする皮膚の状態異常の予防、治療または改善に有用な環状ペプチド化合物またはその薬理的に許容される塩およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトの表皮は、下層から順に、基底層と有棘層と顆粒層と角質層とからなる。ヒトの正常な皮膚では、前記角質層は、バリア機能を発現し、物理的刺激や化学的刺激から皮膚を保護している。
【0003】
正常な皮膚は、通常、28日間の周期でターンオーバーする。正常な皮膚のターンオーバーでは、ケラチノサイトが顆粒層から角質層へと押し上げられる。このとき、ケラチノサイトの分化により脱核が生じて有核細胞が消失し、成熟した角質層が形成される。しかしながら、ターンオーバーが早すぎる場合などには、最終分化段階のケラチノサイトにおいて、脱核が起こらず、角質層が不全角化の状態となり、皮膚のバリア機能が著しく低下する。このような不全角化と同様の状態は、オレイン酸を皮膚に塗布することによっても引き起こされる(非特許文献1)。
【0004】
一方、エピモルフィンは、上皮組織の形態形成の制御に関与している因子の1つであると考えられている(非特許文献2~5)。また、前記エピモルフィンのノックアウトにより、マウスにおける癌化誘導が減少することが報告されている(例えば、非特許文献6を参照)。
【0005】
前記上皮組織の形態形成を制御するために、エピモルフィンにより奏される上皮組織の形態形成促進作用を阻害するオリゴペプチドが提案されている(例えば、特許文献1および2を参照)。
【0006】
しかしながら、上皮組織の形態形成促進作用に対する前記オリゴペプチドの阻害作用は、上皮組織の形態形成を制御するには不十分であるため、エピモルフィンによって引き起こされる皮膚などの上皮細胞の形態・分化異常の発生などを高効率で抑制することができるさらに有用な化合物が求められている。
【先行技術文献】
【0007】

【特許文献1】特開平10-7698号公報
【特許文献2】特許第3922345号公報
【0008】

【非特許文献1】エクスペリメンタル・デルマトロジー(Experimental Dermatology)、1997年、第6巻、p.29-35
【非特許文献2】ザ・ジャーナル・オブ・デルマトロジー(The Journal of Dermatology)、1991年、第18巻、p.397-401
【非特許文献3】セル(Cell)、1992年、第69巻、p.471-481
【非特許文献4】ジャーナル・オブ・セル・バイオロジー(Journal of Cell Biology)、1998年、第140巻、p.159-169
【非特許文献5】ネイチャー・レビュー・モレキュラー・セル・バイオロジー(Nature Reviews Molecular Cell Biology)、2009年、第10巻、p.228-234
【非特許文献6】アニサ・シェーカー(Anisa Shaker)ら、「エピモルフィン欠損は、炎症誘導性結腸癌発生からマウスを守るとともに、幹細胞ニッチ筋線維芽細胞分泌を変える(Epimorphin deletion protects mice from inflammation-induced colon carcinogenesis and alters stem cell niche myofibroblast secretion)」、ザ・ジャーナル・オブ・クリニカル・インベスティゲーション(The Journal of Clinical Investigation)、2010年5月10日、第120巻、p.2081-2093
【非特許文献7】ラボラトリー・インベスティゲーション(Laboratory Investigation)、2010年、第90巻、p.867-880
【非特許文献8】キャンサー・リサーチ(Cancer Research)、2005年、第65巻、p.8617-8621
【非特許文献9】ディベロプメンタル・バイオロジー(Developmental Biology)、2006年、第291巻、p.25-37
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、前記従来技術に鑑みてなされたものであり、エピモルフィンまたはオレイン酸によってヒトの皮膚に引き起こされる皮膚の状態の異常の発生を抑制することができる環状ペプチド化合物またはその薬理的に許容される塩を提供することを目的とする。また、本発明は、前記環状ペプチド化合物またはその薬理的に許容される塩を簡便に製造することができる環状ペプチド化合物またはその薬理的に許容される塩の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち、本発明の要旨は、
(1) 式(I):
【0011】
【化1】
JP0005863651B2_000002t.gif

【0012】
〔式中、Xaa1およびXaa5はそれぞれ独立して、置換基を有してもよいセリル基、置換基を有してもよいスレオニル基または置換基を有してもよいチロシニル基、Xaa2は置換基を有してもよいイソロイシル基、置換基を有してもよいバリル基または置換基を有してもよいロイシル基、Xaa3およびXaa4はそれぞれ独立して、置換基を有してもよいアスパラギニル基、置換基を有してもよいグルタミニル基、置換基を有してもよいアスパラチル基または置換基を有してもよいグルタミル基、Cysはシステイニル基、R1は式(II):
【0013】
【化2】
JP0005863651B2_000003t.gif

【0014】
(式中、nは1~10の整数を示す)
で表される基または式(III):
【0015】
【化3】
JP0005863651B2_000004t.gif

【0016】
(式中、nは1~10の整数を示す)
で表される基を示す。なお、式中、CysとCysとの結合は、ペプチド結合またはジスルフィド結合を意味し、それ以外の結合はペプチド結合を意味する。〕
で表される環状ペプチド化合物またはその薬理的に許容される塩、
(2) 式(I)において、Xaa1がセリル基、Xaa2がイソロイシル基、Xaa3がグルタミル基、Xaa4がグルタミニル基、Xaa5がセリル基であり、R1が式(III)で表される基であり、nが1である前記(1)に記載の環状ペプチド化合物またはその薬理的に許容される塩、ならびに
(3) 式(I):
【0017】
【化4】
JP0005863651B2_000005t.gif

【0018】
〔式中、Xaa1およびXaa5はそれぞれ独立して、置換基を有してもよいセリル基、置換基を有してもよいスレオニル基または置換基を有してもよいチロシニル基、Xaa2は置換基を有してもよいイソロイシル基、置換基を有してもよいバリル基または置換基を有してもよいロイシル基、Xaa3およびXaa4はそれぞれ独立して、置換基を有してもよいアスパラギニル基、置換基を有してもよいグルタミニル基、置換基を有してもよいアスパラチル基または置換基を有してもよいグルタミル基、Cysはシステイニル基、R1は式(II):
【0019】
【化5】
JP0005863651B2_000006t.gif

【0020】
(式中、nは1~10の整数を示す)
で表される基または式(III):
【0021】
【化6】
JP0005863651B2_000007t.gif

【0022】
(式中、nは1~10の整数を示す)
で表される基を示す。なお、式中、CysとCysとの結合は、ペプチド結合またはジスルフィド結合を意味し、それ以外の結合はペプチド結合を意味する。〕
で表される環状ペプチド化合物またはその薬理的に許容される塩の製造方法であって、式(IV):
【0023】
【化7】
JP0005863651B2_000008t.gif

【0024】
〔式中、Xaa1、Xaa2、Xaa3、Xaa4、Xaa5、CysおよびR1は式(I)におけるXaa1、Xaa2、Xaa3、Xaa4、Xaa5、CysおよびR1と同じである〕
で表される化合物を環化させることを特徴とする環状ペプチド化合物またはその薬理的に許容される塩の製造方法
に関する。
【発明の効果】
【0025】
本発明の環状ペプチド化合物またはその薬理的に許容される塩は、エピモルフィンに対し拮抗的に作用し、その生理活性を制御する。したがって、本発明の環状ペプチド化合物またはその薬理的に許容される塩によれば、エピモルフィンまたはオレイン酸によってヒトの皮膚に引き起こされる皮膚の状態の異常の発生を抑制することができるという優れた効果が奏される。本発明の環状ペプチド化合物またはその薬理的に許容される塩は、前記効果に基づき、医薬品の有効成分として有用である。また、本発明の環状ペプチド化合物またはその薬理的に許容される塩は、エピモルフィンの機能もしくは特性を解明または検証する実験系において、エピモルフィンの活性を制御、特に抑制するための試薬として用いることができる。さらに、エピモルフィンの拮抗剤として、エピモルフィンまたはエピモルフィン作用剤の活性や作用を評価するための試薬や対照薬として用いることができる。また、本発明の環状ペプチド化合物またはその薬理的に許容される塩の製造方法によれば、前記環状ペプチド化合物またはその薬理的に許容される塩を簡便に製造することができるという優れた効果が奏される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】参考例1において、HaCaT細胞における内因性エピモルフィンの発現量とオレイン酸との関係を調べた結果を示す図面代用写真である。
【図2】参考例2において、HaCaT-TE細胞の培養上清およびPT67-TE細胞の培養上清それぞれにおける分泌エピモルフィンの量とオレイン酸との関係を調べた結果を示す図面代用写真である。
【図3】実施例1において、ペプチドのマススペクトルを示すチャートである。
【図4】実施例1において、酸化後のペプチドのマススペクトルを示すチャートである。
【図5】(A)は、試験例2において、実験番号:11の培地を用いたときの細胞クラスターの形態を観察した結果を示す図面代用写真、(B)は実験番号:10の培地を用いたときの細胞クラスターの形態を観察した結果を示す図面代用写真である。
【図6】試験例2において、培地の種類と内腔形成率との関係を調べた結果を示すグラフである。
【図7】(A)は、試験例3において、実験番号:15の培地を用いたときの細胞クラスターの形態を観察した結果を示す図面代用写真、(B)は、実験番号:14の培地を用いたときの細胞クラスターの形態を観察した結果を示す図面代用写真である。
【図8】試験例3において、培地の種類と内腔形成率との関係を調べた結果を示すグラフである。
【図9】試験例4において、培地の種類とコーニファイドエンベロープ形成率との関係を調べた結果を示すグラフである。
【図10】試験例5において、培地の種類または細胞の種類とコーニファイドエンベロープ形成率との関係を調べた結果を示すグラフである。
【図11】試験例6において、試料の種類と表皮の厚さとの関係を調べた結果を示すグラフである。
【図12】試験例6において、試料の種類と全細胞中の染色細胞の割合との関係を調べた結果を示すグラフである。
【図13】(A)は、試験例7において、0.5体積%オレイン酸含有エタノール溶液を塗布せずに実験番号:36の試料を塗布したときの細胞構造体の組織形態を観察した結果を示す図面代用写真、(B)は、試験例7において、0.5体積%オレイン酸含有エタノール溶液および実験番号:37の試料を塗布したときの細胞構造体の組織形態を観察した結果を示す図面代用写真、(C)は、試験例7において、0.5体積%オレイン酸含有エタノール溶液および実験番号:38の試料を塗布したときの細胞構造体の組織形態を観察した結果を示す図面代用写真、(D)は、試験例7において、0.5体積%オレイン酸含有エタノール溶液および実験番号:39の試料を塗布したときの細胞構造体の組織形態を観察した結果を示す図面代用写真である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
1.環状ペプチド化合物またはその薬理的に許容される塩
本発明の環状ペプチド化合物またはその薬理的に許容される塩は、式(I):

【0028】
【化8】
JP0005863651B2_000009t.gif

【0029】
〔式中、Xaa1およびXaa5はそれぞれ独立して、置換基を有してもよいセリル基、置換基を有してもよいスレオニル基または置換基を有してもよいチロシニル基、Xaa2は置換基を有してもよいイソロイシル基、置換基を有してもよいバリル基または置換基を有してもよいロイシル基、Xaa3およびXaa4はそれぞれ独立して、置換基を有してもよいアスパラギニル基、置換基を有してもよいグルタミニル基、置換基を有してもよいアスパラチル基または置換基を有してもよいグルタミル基、Cysはシステイニル基、R1は式(II):

【0030】
【化9】
JP0005863651B2_000010t.gif

【0031】
(式中、nは1~10の整数を示す)
で表される基または式(III):

【0032】
【化10】
JP0005863651B2_000011t.gif

【0033】
(式中、nは1~10の整数を示す)
で表される基を示す。なお、式中、CysとCysとの結合は、ペプチド結合またはジスルフィド結合を意味し、それ以外の結合はペプチド結合を意味する。〕
で表される構造(配列番号:1)を有する。

【0034】
本発明者らは、
(A) ヒトの皮膚モデルとオレイン酸との接触および前記皮膚モデル中における外因性エピモルフィンの発現それぞれにより、皮膚モデルにおいて、同様の組織形態の異常が生じること、および
(B) Ser-Ile-Glu-Gln-Ser-Cys(配列番号:2)で示されるアミノ酸配列を含む直鎖状のペプチド(Ser-Ile-Glu-Gln-Ser-Cys-Asp、配列番号:3)は、エピモルフィンまたはオレイン酸によって引き起こされる皮膚モデルの組織形態の異常を抑制しないが、上記配列番号:2に示されるアミノ酸配列を有するとともに、かかるアミノ酸配列からなるペプチドが当該ペプチド鎖中のシステイニル基とこのペプチド鎖に、ジスルフィド結合またはペプチド結合によって付加したシステイニル基と式(II)で表される基とで環化させた環状ペプチド化合物やその薬理的に許容される塩は、前記組織形態の異常を抑制することを見出した。本発明は、これらの知見に基づくものである。

【0035】
本発明の環状ペプチド化合物またはその薬理的に許容される塩は、式(I)で表される構造を有する点に1つの大きな特徴がある。このように、本発明の環状ペプチド化合物またはその薬理的に許容される塩は、分子内に上記配列番号:2に示されるアミノ酸配列からなるペプチド鎖を当該ペプチド鎖中のシステイニル基とこのペプチド鎖に、ジスルフィド結合またはペプチド結合によって付加したシステイニル基と式(II)または式(III)で表される基とによって環化された構造を有しているので、エピモルフィンまたはオレイン酸によって引き起こされるヒトの組織などの状態の異常を抑制することができる。以下、エピモルフィンまたはオレイン酸によって引き起こされるヒトの組織などの状態の異常を抑制する作用を、単に「抑制作用」ともいう。

【0036】
Xaa1は、置換基を有してもよいセリル基、置換基を有してもよいスレオニル基または置換基を有してもよいチロシニル基である。前記置換基は、本発明の効果を阻害しない官能基であればよい。前記置換基としては、例えば、単糖または多糖から誘導されたチオグリコシル基、単糖または多糖から誘導されたO-グリコシル基、単糖または多糖から誘導されたN-グリコシル基、リン酸基などが挙げられる。前記Xaa1のなかでは、前記抑制作用を十分に発現させる観点から、好ましくはセリル基である。

【0037】
Xaa2は、置換基を有してもよいイソロイシル基、置換基を有してもよいバリル基または置換基を有してもよいロイシル基である。前記置換基は、本発明の効果を阻害しない官能基であればよい。前記置換基としては、例えば、炭素数1~3のアルキル基など、具体的にはメチル基、エチル基またはプロピル基が挙げられる。前記Xaa2のなかでは、前記抑制作用を十分に発現させる観点から、好ましくはイソロイシル基である。

【0038】
Xaa3は、置換基を有してもよいアスパラギニル基、置換基を有してもよいグルタミニル基、置換基を有してもよいアスパラチル基または置換基を有してもよいグルタミル基である。前記置換基は、本発明の目的を阻害しない官能基であればよい。Xaa3が置換基を有してもよいアスパラギニル基である場合、前記置換基としては、単糖または多糖から誘導されたチオグリコシル基、単糖または多糖から誘導されたO-グリコシル基、単糖または多糖から誘導されたN-グリコシル基などが挙げられる。Xaa3が置換基を有してもよいグルタミニル基である場合、前記置換基としては、アミノ基などが挙げられる。Xaa3が置換基を有してもよいアスパラチル基である場合、前記置換基としては、スクシンイミド基、リン酸基などが挙げられる。Xaa3が置換基を有してもよいグルタミル基である場合、前記置換基としては、カルボキシル基などが挙げられる。前記Xaa3のなかでは、前記抑制作用を十分に発現させる観点から、好ましくはグルタミル基である。

【0039】
Xaa4は、置換基を有してもよいアスパラギニル基、置換基を有してもよいグルタミニル基、置換基を有してもよいアスパラチル基または置換基を有してもよいグルタミル基である。前記置換基は、本発明の効果を阻害しない官能基であればよい。前記置換基としては、前記Xaa3における置換基と同様のものが挙げられる。前記Xaa4のなかでは、前記抑制作用を十分に発現させる観点から、好ましくはグルタミニル基である。

【0040】
Xaa5は、置換基を有してもよいセリル基、置換基を有してもよいスレオニル基または置換基を有してもよいチロシニル基である。前記置換基は、本発明の効果を阻害しない官能基であればよい。前記置換基としては、前記Xaa1における置換基と同様のものが挙げられる。前記Xaa5のなかでは、前記抑制作用を十分に発現させる観点から、好ましくはセリル基である。

【0041】
式(I)において、nは、1~10の整数である。前記nは、前記抑制作用を十分に発現させる観点から、10以下、好ましくは8以下であり、より好ましくは5以下、さらに好ましくは3以下、特に好ましくは1である。

【0042】
なお、Xaa1~Xaa5、R1およびCysは、それぞれ、L-体の官能基であってもよく、D-体の官能基であってもよい。ヒトの皮膚への適応性の観点から、Xaa1~Xaa5、R1およびCysは、好ましくはL-体の官能基である。

【0043】
前記薬理的に許容される塩としては、酸付加塩および塩基付加塩が挙げられる。酸付加塩としては、例えば、無機酸塩、有機酸塩などが挙げられる。前記無機酸塩としては、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、ヨウ化水素酸塩、硝酸塩、リン酸塩などが挙げられる。また、有機酸塩としては、クエン酸塩、シュウ酸塩、酢酸塩、ギ酸塩、プロピオン酸塩、安息香酸塩、トリフルオロ酢酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、パラトルエンスルホン酸塩などが挙げられる。塩基付加塩としては、無機塩基塩、有機塩基塩などが挙げられる。無機塩基塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、アンモニウム塩などが挙げられる。有機塩基塩としては、例えば、トリエチルアンモニウム塩、トリエタノールアンモニウム塩、ピリジニウム塩、ジイソプロピルアンモニウム塩などの有機塩基塩などが挙げられる。

【0044】
式(I)で表される環状ペプチド化合物またはその薬理的に許容される塩のなかでは、前記抑制作用を十分に発現させる観点から、式(I)において、Xaa1がセリル基、Xaa2がイソロイシル基、Xaa3がグルタミル基、Xaa4がグルタミニル基、Xaa5がセリル基であり、R1が式(III)で表される基であり、nが1である化合物が好ましい。

【0045】
本発明の環状ペプチド化合物またはその薬理的に許容される塩による前記抑制作用は、例えば、
(a)エピモルフィンを発現するケラチノサイトを支持体上で三次元に培養して得られる分化細胞構築物の表面に本発明の環状ペプチド化合物を塗布すること、
(b)ケラチノサイトを支持体上で三次元に培養して得られる分化細胞構築物の表面にオレイン酸を塗布した後、さらに本発明の環状ペプチド化合物を塗布すること、
(c)エピモルフィンを発現するケラチノサイトの細胞凝集物をコラーゲンゲル中に包埋させ、当該細胞凝集物を、本発明の環状ペプチド化合物を含む培地中で培養すること、
(d)ケラチノサイトの細胞凝集物をコラーゲンゲル中に包埋し、当該細胞凝集物を、オレイン酸と本発明の環状ペプチド化合物とを含む培地中で培養すること、
(e)本発明の環状ペプチド化合物を含む培地中でエピモルフィンを発現するケラチノサイトを培養した後、得られたケラチノサイトを、カルシウムイオン導入剤を含む培地中で培養すること、または
(f)本発明の環状ペプチド化合物とオレイン酸とを含む培地中でケラチノサイトを培養した後、得られたケラチノサイトを、カルシウムイオン導入剤を含む培地中で培養すること
により、ケラチノサイトの形態の異常などが改善されることに基づいて評価することができる。

【0046】
本発明の環状ペプチド化合物またはその薬理的に許容される塩は、エピモルフィンに対し拮抗的に働き、エピモルフィンの生理活性を抑制し、当該エピモルフィンまたはオレイン酸によって引き起こされるヒトの組織の状態の異常を抑制することができるので、例えば、ヒトの皮膚の不全角化などの抑制、毛成長促進または毛成長抑制、血管などの再生に有用であり、医薬、医薬部外品、または化粧品の有効成分として、また、上記作用を評価する試薬などとして有用である。そのため、本発明の環状ペプチド化合物またはその薬理的に許容される塩によれば、ヒトの皮膚の不全角化を抑制することにより、前記不全角化に起因するヒトの状態の異常を改善することができる。したがって、本発明の環状ペプチド化合物またはその薬理的に許容される塩は、不全角化に起因するヒトの皮膚の状態の異常を改善する用途などに有用である。かかるヒトの皮膚の状態の異常としては、例えば、肌荒れ、ニキビ、タコ、イボ、乾癬などが挙げられる。

【0047】
また、エピモフィンは、内胚葉細胞に存在するレセプター型チロシンキナーゼを介して臓器の形成などに関与していることが知られている。また、エピモルフィンが過剰に発現した場合、例えば、慢性関節リウマチ、癌(例えば、腎細胞癌、皮膚癌など)、動脈硬化症、膠原病、造血器疾患、腎疾患、筋ジストロフィー、骨粗鬆症、神経線維腫症、Sturge-Weber症候群、結節性硬化症、神経管閉塞障害、分節異常、脳孔症、水頭症などの疾患が引き起こされる可能性がある〔ラボラトリー・インベスティゲーション(Laboratory Investigation)、2010年、第90巻、p.867-880(非特許文献7);キャンサー・リサーチ(Cancer Research)、2005年、第65巻、p.8617-8621(非特許文献8);ディベロプメンタル・バイオロジー(Developmental Biology)、2006年、第291巻、p.25-37(非特許文献9)〕。本発明の環状ペプチド化合物またはその薬理的に許容される塩によれば、エピモルフィンの生理活性を抑制することができることから、肺、肝臓、腎臓、胃、腸などの臓器の損傷の治療、血管再生、慢性閉塞性動脈硬化症状、バージャー病などの予防・治療、さらにはエピモルフィンの過剰発現に起因する疾患の予防または治療などの用途に有用である。したがって、本発明の環状ペプチド化合物またはその薬理的に許容される塩は、エピモルフィンの過剰発現に起因する疾患の予防または治療剤、慢性閉塞性動脈硬化症状、バージャー病などの予防または治療剤、損傷臓器の治療剤などの製剤として有用である。

【0048】
前記製剤においては、本発明の環状ペプチド化合物またはその薬理的に許容される塩は、器官、局所部位、組織などに導入するに適した薬理的に許容される担体に保持させてもよい。

【0049】
前記製剤中における本発明の環状ペプチド化合物またはその薬理的に許容される塩の含有量は、治療上有効量であり、前記製剤の用途、投与経路、適用対象となる疾患または損傷臓器の種類、剤形などによって異なることから一概には決定することができないが、前記製剤の用途、投与経路、適用対象となる疾患または損傷臓器の種類、剤形などに応じて適宜設定することができる。通常、前記製剤中における本発明の環状ペプチド化合物またはその薬理的に許容される塩の含有量は、0.0001~100質量%である。

【0050】
また、前記製剤は、前記製剤の用途、投与経路、適用対象となる疾患または損傷臓器の種類、剤形などに応じて、他の助剤をさらに含有していてもよい。前記助剤としては、例えば、本発明の環状ペプチド化合物またはその薬理的に許容される塩の効果を発現させる対象となる部位に到達するまでの間に、本発明の環状ペプチド化合物またはその薬理的に許容される塩の分解を抑制する性質を呈する薬理的に許容される助剤、賦形剤、結合剤、安定剤、緩衝剤、溶解補助剤、等張剤などが挙げられる。

【0051】
製剤の剤形は、適用対象となる疾患または損傷臓器の種類などによって適切な剤形が異なることから一概には決定することができないが、適用対象となる疾患または損傷臓器の種類などに応じて適宜決定することが好ましい。前記製剤の剤形としては、例えば、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、丸剤、シロップ剤、注射剤などが挙げられる。

【0052】
前記製剤の投与経路は、前記製剤の用途、適用対象となる疾患または損傷臓器の種類、投与対象となるヒトの年齢または体重などによって異なることから一概には決定することができないが、前記製剤の用途、適用対象となる疾患または損傷臓器の種類、投与対象となるヒトの年齢または体重などに応じて適宜決定することが好ましい。前記製剤の投与経路としては、例えば、局所投与、皮下注射、筋肉内注射、静脈内注射、経口投与などが挙げられる。

【0053】
前記製剤の投与量は、前記製剤の用途、適用対象となる疾患または損傷臓器の種類、投与対象となるヒトの年齢または体重などによって異なることから一概には決定することができないが、前記製剤の用途、適用対象となる疾患または損傷臓器の種類、投与対象となるヒトの年齢または体重などに応じて適宜決定することが好ましい。前記製剤の投与量は、例えば、投与対象となるヒトが成人である場合、1日あたり成人の体重1kgに対して、本発明の環状ペプチド化合物またはその薬理的に許容される塩の量が、エピモルフィンの生理活性を十分に抑制する観点から、好ましくは1μg以上、より好ましくは10μg以上となり、投与対象のヒトへの負荷を抑制する観点から、好ましくは10mg以下、より好ましくは1mg以下となるように調整されることが望ましい。

【0054】
2.環状ペプチド化合物またはその薬理的に許容される塩の製造方法
本発明の環状ペプチド化合物またはその薬理的に許容される塩の製造方法は、式(I)で表される環状ペプチド化合物またはその薬理的に許容される塩の製造方法であって、式(IV):

【0055】
【化11】
JP0005863651B2_000012t.gif

【0056】
〔式中、Xaa1、Xaa2、Xaa3、Xaa4、Xaa5、CysおよびR1は式(I)におけるXaa1、Xaa2、Xaa3、Xaa4、Xaa5、CysおよびR1と同じである〕
で表される化合物(配列番号:4)を環化させることを特徴とする。本発明の製造方法では、式(IV)で表される化合物を環化させるので、前記環状ペプチド化合物またはその薬理的に許容される塩を簡便に、かつ効率よく製造することができる。

【0057】
式(IV)で表される化合物は、例えば、式(IV)におけるCys、Xaa1、Xaa2、Xaa3、Xaa4、Xaa5およびCysそれぞれに対応するアミノ酸と、式(V):

【0058】
【化12】
JP0005863651B2_000013t.gif

【0059】
〔式中、nは式(I)におけるnと同じである〕
で表される化合物とを用い、ペプチドの化学合成法などを行なうことにより製造することができる。前記化学合成法としては、例えば、固相合成法、段階的伸長法、液相合成法などが挙げられる。前記化学合成法のなかでは、目的とする環状ペプチド化合物またはその薬理的に許容される塩の製造が容易であり、しかも、その収率および純度が高いことから、固相合成法が好ましい。前記固相合成法としては、例えば、Fmoc合成法、Boc合成法などが挙げられる。かかる固相合成法は、市販のペプチド合成機を用いて行なうことができる。

【0060】
固相合成法を行なう場合、固相として、例えば、ペプチド合成用樹脂などが用いられる。前記ペプチド合成用樹脂としては、例えば、PAM樹脂、クロロメチル樹脂、ヒドロキシメチル樹脂、ベンズヒドリルアミン樹脂、アミノメチル樹脂、4-ベンジルオキシベンジルアルコール樹脂、4-メチルベンズヒドリルアミン樹脂、4-ヒドロキシメチルメチルフェニルアセトアミドメチル樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、4-(2’,4’-ジメトキシフェニル-ヒドロキシメチル)フェノキシ樹脂などが挙げられる。

【0061】
固相合成法において、前記アミノ酸は、前記保護基によって分子内のアミノ基を予め保護して用いられる。前記保護基としては、例えば、9-フルオレニル-メトキシカルボニル(Fmoc)基、tert-ブチルオキシカルボニル(Boc)基などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。なお、前記アミノ酸は、必要に応じて、側鎖の官能基を当該官能基に応じた保護基により保護して用いることができる。なお、本明細書において、アミノ基や側鎖の官能基が保護されているアミノ酸を「保護アミノ酸」という。

【0062】
式(V)において、nが1である場合、式(V)で表される化合物として、グリシンを用いることができる。式(V)において、nが2である場合、式(V)で表される化合物として、β-アラニンを用いることができる。また、式(V)において、nが3である場合、式(V)で表される化合物として、4-アミノ酪酸を用いることができる。式(V)において、nが4~10の整数である場合、式(V)で表される化合物は、ストレッカー反応を利用した化学合成によって得ることができる。固相合成法において、かかる式(V)で表される化合物は、前記アミノ酸の場合と同様に、アミノ基および必要に応じて側鎖の官能基を当該官能基に応じた保護基により保護して用いる。なお、本明細書において、アミノ基や側鎖の官能基が保護されている式(V)で表される化合物を「保護化合物」という。

【0063】
固相合成法を行なう場合、式(IV)におけるCys、Xaa5、Xaa4、Xaa3、Xaa2、Xaa1、R1およびCysに対応する保護アミノ酸または保護化合物を、この順で、ペプチド合成用樹脂上で逐次的に縮合させ、つぎに、前記ペプチド合成用樹脂から式(IV)で表される化合物に対応する産物を切り出すと同時に保護基を除去する。

【0064】
前記縮合には、一般的なペプチド合成に用いられる活性化試薬などが用いられる。前記縮合の際の反応温度は、ペプチドの合成において一般的な温度であればよい。通常、前記反応温度は、約-20℃~50℃の範囲から適宜選択される。

【0065】
保護基の除去は、例えば、触媒の存在下での水素気流中での接触還元、酸処理、アルカリ処理などにより行なうことができる。

【0066】
式(IV)で表される化合物の製造後、必要に応じて、得られた生成物の精製を行なってもよい。前記精製は、例えば、逆相高速液体クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィーなどのクロマトグラフィーによって行なうことができる。

【0067】
式(IV)で表される化合物の環化は、かかる化合物の両末端のシステインのチオール基同士を酸化架橋させることにより行なうことができる。前記システイニル基同士のジスルフィド化は、例えば、式(IV)で表される化合物を、酢酸水溶液などの酸性水溶液中でヨウ素によって酸化させることによって形成させることができる。また、式(IV)で表される化合物の環化は、かかる化合物の両末端のシステイニル基同士をペプチド結合させることによっても行なうことができる。かかるペプチド結合は、式(IV)で表される化合物に通常のペプチド合成に用いられる縮合試薬を作用させることによって行うことができる。斯くして、式(I)で表される本発明の環状構造を有するペプチド化合物を調製することができる。

【0068】
得られた生成物が式(I)で表される化合物であることは、例えば、プロテインシークエンサーや質量分析装置などによって確認することができる。

【0069】
なお、式(I)で表される化合物が遊離体として得られた場合、式(I)で表される化合物の薬理的に許容できる塩は、得られた生成物を、必要に応じて、常法にしたがって薬理的に許容できる塩に変換することにより得ることができる。

【0070】
また、得られた生成物がその分子内に前記保護基を有する場合、常法に従って前記保護基を脱離させることができる。なお、保護基の導入と脱保護に関して、例えば、グリーンズ・プロテクティブ・グループス・イン・オーガニック・シンセシス第4版〔ペーター・G.M.ワッツ(Peter G.M.Wuts)およびテオドラ.W.グリーン(Theodora W.Greene)著、Greene’s Protective Groups in Organic Synthesis、2006年発行〕に記載の方法に従うこともできる。また、必要に応じて、得られた生成物の単離や精製を行なってもよい。前記生成物の単離や精製は、例えば、逆相高速液体クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィーなどのクロマトグラフィーなどによって行なうことができる。
【実施例】
【0071】
つぎに、本発明を実施例に基づいてさらに詳しく説明するが、本発明は、かかる実施例のみに限定されるものではない。なお、以下において、Cysはシステイニル基、Serはセリル基、Glnはグルタミニル基、Gluはグルタミル基、Ileはイソロイシル基、Glyはグリシル基を示す。
【実施例】
【0072】
(製造例1)
DMEM/HamF12(シグマ-アルドリッチ社製)に、熱不活性化ウシ胎児血清(FCS)を濃度が10質量%となるように添加し、熱不活性化FCS含有DMEM/HamF12培地(以下、「DH10培地」という)を得た。
【実施例】
【0073】
正常ヒト表皮ケラチノサイト細胞株であるHaCaT細胞を、前記DH10培地中、5体積%二酸化炭素雰囲気下に37℃で培養した。
【実施例】
【0074】
マウスエピモルフィンをコードするcDNA(GeneBankアクセッション番号:E06629、配列番号:5)におけるエピモルフィンのN末端側に対応する部位に、T7-タグをコードするDNA(配列番号:6)を付加し、T7-タグエピモルフィンをコードするcDNAを調製した。つぎに、前記T7-タグエピモルフィンをコードするcDNAを、レトロウイルス発現ベクターpQCXIN(クローンテック社製)のEcoRI認識部位に挿入し、T7-タグエピモルフィン用発現プラスミドを調製した。
【実施例】
【0075】
得られたT7-タグエピモルフィン用発現プラスミドを、遺伝子導入用試薬(インビトロジェン社製、商品名:リポフェクタミンおよびインビトロジェン社製、商品名:プラス試薬)を用いてパッケージング細胞(クローンテック社製:PT67細胞)に導入した。つぎに、得られた細胞のうち、500μg/mLのジェネティシン(ギブコ・ラボラトリー社製、商品名:G418)に対して耐性能を示す細胞から培養上清を回収した。
【実施例】
【0076】
回収された培養上清中から、レトロウイルスを得た。得られたレトロウイルスを前記HaCaT細胞に感染させ、500μg/mLジェネティシン(ギブコ・ラボラトリー社製、商品名:G418)の存在下に、5体積%二酸化炭素雰囲気下に37℃で8日間培養した。その後、培養後の細胞におけるエピモルフィン発現を調べることにより、T7-タグエピモルフィンを産生するケラチノサイト(HaCaT-TE細胞)を単離した。
【実施例】
【0077】
(製造例2)
線維芽細胞であるPT67細胞を、DH10培地中、5体積%二酸化炭素雰囲気下に37℃で培養した。
【実施例】
【0078】
前記製造例1のT7-タグエピモルフィン用発現プラスミドを、遺伝子導入用試薬(インビトロジェン社製、商品名:リポフェクタミンおよびインビトロジェン社製、商品名:プラス試薬)を用いて、PT67細胞に導入した。つぎに、得られた細胞を、500μg/mLジェネティシン(ギブコ・ラボラトリー社製)の存在下に、5体積%二酸化炭素雰囲気下に37℃で8日間培養した。その後、培養後の細胞におけるエピモルフィン発現を調べることにより、T7-タグエピモルフィンを産生する線維芽細胞(PT67-TE細胞)を単離した。
【実施例】
【0079】
(製造例3)
IL-2シグナルペプチドをコードする核酸(配列番号:7)を、エピモルフィンをコードするcDNA(配列番号:5)におけるエピモルフィンのN末端に対応する部位に付加し、IL-2シグナルペプチド結合エピモルフィンをコードする核酸を得た。得られた核酸をレトロウイルス発現ベクター(クローンテック社製、商品名:pQCXIN)のEcoRI認識部位に挿入して、細胞表面エピモルフィン用発現プラスミドを調製した。
【実施例】
【0080】
得られた細胞表面エピモルフィン用発現プラスミドを、商品名:リポフェクタミン(インビトロジェン社製)およびプラス試薬(インビトロジェン社製)を用いてパッケージング細胞PT67に導入した。前記製造例1と同様にして得られたレトロウイルスをHaCaT細胞に感染させた。つぎに、得られた細胞を、500μg/mLジェネティシン(ギブコ・ラボラトリー社製、商品名:G418)の存在下に、5体積%二酸化炭素下、37℃で8日間培養した。その後、培養後の細胞におけるエピモルフィン発現を調べることにより、細胞外エピモルフィンを産生する細胞(HaCaT-EPM細胞)を単離した。
【実施例】
【0081】
(参考例1)
HaCaT細胞をDH10培地(実験番号:1)、0.01体積%オレイン酸含有DH10培地(実験番号:2)または0.025体積%オレイン酸含有DH10培地(実験番号:3)中において、5体積%二酸化炭素雰囲気下に37℃で3日間培養した。
【実施例】
【0082】
培養後の細胞を単離し、得られた細胞を可溶化試薬〔組成:2体積%SDS、10体積%グリセロール、5体積%2-メルカプトエタノール、0.008体積%ブロモフェノールブルー、0.65Mトリス-塩酸緩衝液(pH約6.8)〕に溶解させることによって細胞抽出液を得た。
【実施例】
【0083】
得られた細胞抽出液と抗エピモルフィン抗体〔R&Dシステムズ社製〕とを用いてウエスタンブロッティングを行ない、HaCaT細胞における内因性エピモルフィンの発現量とオレイン酸との関係を調べた。なお、抗エピモルフィン抗体の代わりに抗β-アクチン抗体を用いたことを除き、前記と同様にして、HaCaT細胞におけるβ—アクチンの発現量とオレイン酸との関係を調べた。
【実施例】
【0084】
参考例1において、HaCaT細胞における内因性エピモルフィンの発現量とオレイン酸との関係を調べた結果を図1に示す。図1中、レーン1は実験番号:1の培地を用いたときの内因性エピモルフィンに対応するバンド、レーン2は実験番号:2の培地を用いたときの内因性エピモルフィンに対応するバンド、レーン3は、実験番号:3の培地を用いたときの内因性エピモルフィンに対応するバンドを示す。
【実施例】
【0085】
図1に示された結果から、HaCaT細胞における内因性エピモルフィンの発現量は、実験番号:1~3のいずれの培地を用いた場合であっても同程度であることがわかる。なお、HaCaT細胞におけるβ—アクチンの発現量も、実験番号:1~3のいずれの培地を用いた場合であっても同程度であることがわかる。したがって、これらの結果から、オレイン酸は、HaCaT細胞における内因性エピモルフィンの発現量には、ほとんど影響を与えないことがわかる。
【実施例】
【0086】
(参考例2)
製造例1で得られたHaCaT-TE細胞または製造例2で得られたPT67-TE細胞をDH10培地(実験番号:4)、0.01体積%オレイン酸含有DH10培地(実験番号:5)または0.025体積%オレイン酸含有DH10培地(実験番号:6)中において、5体積%二酸化炭素雰囲気下に37℃で3日間培養した。また、製造例1で得られたHaCaT-TE細胞または製造例2で得られたPT67-TE細胞に対して、照射量が10mJ/cm2となるように紫外線B(UVB)を照射し、その後、DH10培地中において、5体積%二酸化炭素雰囲気下に37℃で3日間培養した(実験番号7)。
【実施例】
【0087】
得られた培養物を遠心分離〔1000×gで30分間〕に供し、培養上清を得た。
【実施例】
【0088】
得られた培養上清から、抗T7タグ抗体〔ノバジェン社製〕と、プロテインGセファロースビーズ〔GEヘルスケア製〕とを用いて、分泌エピモルフィンを回収した。回収された分泌エピモルフィンのウエスタンブロッティングを行ない、HRP標識抗T7タグ抗体〔ノバジェン社製〕を用いて、HaCaT-TE細胞の培養上清およびPT67-TE細胞の培養上清それぞれにおける分泌エピモルフィンの量とオレイン酸との関係を調べた。
【実施例】
【0089】
参考例2において、HaCaT-TE細胞の培養上清およびPT67-TE細胞の培養上清それぞれにおける分泌エピモルフィンの量とオレイン酸との関係を調べた結果を図2に示す。図2中、レーン1は実験番号:4の培地を用いたときの分泌エピモルフィンに対応するバンド、レーン2は実験番号:5の培地を用いたときの分泌エピモルフィンに対応するバンド、レーン3は、実験番号:6の培地を用いたときの分泌エピモルフィンに対応するバンド、レーン4は、実験番号:7の培地を用いたときの分泌エピモルフィンに対応するバンドを示す。
【実施例】
【0090】
図2に示された結果から、ケラチノサイトであるHaCaT-TE細胞の培養上清における分泌エピモルフィンの量は、オレイン酸の濃度が最も高い実験番号:6の培地を用いた場合、最も多く、UVBが照射されたHaCaT-TE細胞の培養上清における分泌エピモルフィンの量と同程度であることがわかる。一方、HaCaT-TE細胞の培養上清における分泌エピモルフィンの量は、オレイン酸を含まない実験番号:4の培地を用いた場合、最も低くなることがわかる。これに対して、線維芽細胞であるPT67-TE細胞の培養上清においては、オレイン酸の濃度とは関係なく、分泌エピモルフィンが検出されないことがわかる。これらの結果から、オレイン酸は、ケラチノサイトからのエピモルフィンの分泌を引き起こすことがわかる。したがって、オレイン酸により引き起こされる皮膚の不全角化とエピモルフィンにより引き起こされる皮膚の状態の異常とが関連していることが示唆される。
【実施例】
【0091】
(実施例1)
式(I)において、Xaa1がセリル基、Xaa2がイソロイシル基を示し、Xaa3がグルタミル基、Xaa4がグルタミニル基、Xaa5がセリル基であり、n=1である化合物を以下のようにして、合成した。
【実施例】
【0092】
(1)ペプチドの合成
出発原料として、Fmoc-Cys(Trt)-Trt(2-Cl)樹脂〔2-クロロトリチルクロライド樹脂1gあたりFmoc-Cys(Trt)の量が0.70mmol〕0.25mmol相当量を、自動ペプチド合成装置〔アプライド・バイオシステム(Applied Biosystem)社製、商品名:430A〕に入れた。
【実施例】
【0093】
まず、自動ペプチド合成装置のプログラムの制御下に、Fmoc-アミノ酸誘導体であるFmoc-Ser(OBu)2mmolをカップリング剤〔0.45M O-(ベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスファート(以下、「HBTu」という)と0.45M1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(以下、「HOBt」という)とを含むジメチルホルムアミド〕で活性化させ、前記反応槽に入れた。これにより、前記反応槽内において、樹脂上のアミノ酸残基とFmoc-アミノ酸誘導体とのカップリング反応を行ない、Fmoc基保護ペプチド鎖を生成した。
【実施例】
【0094】
つぎに、樹脂上のFmoc基保護ペプチド鎖中におけるFmoc基を20体積%ピペリジン含有N-メチルピロリドン溶液で除去し(脱保護)、洗浄した。その後、Fmoc-Gln(Trt)、Fmoc-Glu(OBu)、Fmoc-Ile、Fmoc-Ser(OBu)、Fmoc-GlyおよびFmoc-Cys(Trt)をこの順で用いて前記と同様の操作を行なうことにより、Cys-Gly-Ser-Ile-Glu-Gln-Ser-Cys(配列番号:8)に示されるアミノ酸配列にしたがって、対応するFmoc-アミノ酸誘導体を樹脂上のFmoc基保護ペプチド鎖に逐次導入し、上記で示されるアミノ酸配列(配列番号:8)を有するFmoc基保護ペプチドを含む樹脂を得た。なお、カップリング反応の成否は、カイザーテストを行なうことにより適宜確認した。
【実施例】
【0095】
得られたFmoc基保護ペプチドを含む樹脂を、トリフルオロ酢酸(以下、「TFA」という)とトリイソプロピルシラン(以下、「TIS」という)と水とエタンジチオール(以下、「DT」という)の混合液〔TFA/TIS/水/DT(体積比)が92.5/2.5/2.5/2.5〕中、室温で2時間インキュベーションして脱保護および樹脂からのペプチド鎖の切り出しを行なった。インキュベーション後の混合液から2-クロロトリチルクロライド樹脂をろ別し、ろ液を得た。得られたろ液を減圧下に濃縮して当該ろ液からTFAを留去した。得られた残渣に、冷却ジエチルエーテルを添加して、ペプチドの粗生成物の沈殿物約700mgを回収した。
【実施例】
【0096】
得られた粗生成物約700mgを、逆相カラム〔ゾルバックス(Zorbax)社製、オクタデシルシリカカラム、カラムの内径:30mm、カラムの長さ250mm〕を備えた高速液体クロマトグラフィー分取装置〔(株)島津製作所製、商品名:モデルLC8A〕に供した。そして、0.1体積%トリフルオロ酢酸水溶液と0.1体積%トリフルオロ酢酸含有アセトニトリル溶液とを用い、溶離液中のアセトニトリルの濃度勾配が1~60体積%となるように溶離液中のアセトニトリルの濃度を調整しながら、流速:1.0mL/分で25分間クロマトグラフィーを行なった。目的のペプチドを含む画分を回収し、前記画分からアセトニトリルを留去した。つぎに、残渣を凍結乾燥させ、目的のペプチドのトリフルオロ酢酸塩110mgを得た。その後、目的のペプチドのトリフルオロ酢酸塩を脱塩し、目的のペプチド(直鎖状ペプチド)を得た。なお、カイザーテストの結果から、前記ペプチドは、Cys-Gly-Ser-Ile-Glu-Gln-Ser-Cys(配列番号:8)に示されるアミノ酸配列からなるペプチドであることが確認された。
【実施例】
【0097】
(2)ペプチドの環化
前記(1)で得られたペプチド110mg(0.135mmol)を50体積%酢酸水溶液130mLに添加した。得られた混合物に、0.5Mヨウ素水溶液210μL(0.8当量)を添加し、撹拌しながら室温で3時間混合した。これにより、ペプチド中の2つのシステイニル基のチオール基を酸化して、ジスルフィド結合を形成させた。その後、得られた混合物にアスコルビン酸70mgを添加した。
【実施例】
【0098】
つぎに、得られた混合物を、逆相カラム〔ズルバックス(Zorbax)社製、オクタデシルシリカカラム、カラムの内径:30mm、カラムの長さ250mm〕を備えた逆相高速クロマトグラフィー分取装置〔(株)島津製作所製、商品名:モデルLC8A〕に供した。そして、0.1体積%トリフルオロ酢酸水溶液と0.1体積%トリフルオロ酢酸含有アセトニトリル溶液とを用い、溶離液中のアセトニトリルの濃度勾配が1~60体積%となるように溶離液中のアセトニトリルの濃度を調整しながら、流速:1.0mL/分で25分間クロマトグラフィーを行なった。これにより、生成物20mgを得た。
【実施例】
【0099】
(3)環状ペプチド化合物の確認
前記(1)で得られたペプチドおよび前記(2)で得られた生成物(酸化後のペプチド)それぞれを質量分析装置〔(株)島津製作所製、商品名:LC-MS-2010〕に供し、前記(1)で得られたペプチドおよび前記(2)で得られた酸化後のペプチドそれぞれのマススペクトルを調べた。実施例1において、ペプチドのマススペクトルを図3に、実施例1において、酸化後のペプチドのマススペクトルを図4に示す。
【実施例】
【0100】
図3に示された結果から、前記(1)で得られたペプチドのマススペクトルでは、Cys-Gly-Ser-Ile-Glu-Gln-Ser-Cys(配列番号:8)に示されるアミノ酸配列からなるペプチドの理論値付近の826.2m/zにピークが見られることがわかる。この結果から、前記(1)で得られたペプチドが上記Cys-Gly-Ser-Ile-Glu-Gln-Ser-Cys(配列番号:8)に示されるアミノ酸配列からなるペプチドであることが裏付けられた。
【実施例】
【0101】
また、図3および4に示された結果から、前記(1)で得られたペプチドのマススペクトルでは、826.2m/zにピークが見られるのに対して(図3参照)、前記(2)で得られた酸化後のペプチドのマススペクトルでは、水素原子2個分少ない824.2m/zにピークが見られることがわかる(図4)。これらの結果から、前記(2)で得られた酸化後のペプチドは、2つのシステイニル基間でジスルフィド結合が形成されることによって、前記(1)で得られたペプチドが環化されていることが裏付けられた。したがって、前記(2)で得られた酸化後のペプチドは、式(I)において、Xaa1がセリル基、Xaa2がイソロイシル基、Xaa3がグルタミル基、Xaa4がグルタミニル基、Xaa5がセリル基であり、R1が式(III)で表される基であり、nが1である環状ペプチド化合物であることがわかる。なお、前記環状ペプチド化合物の純度をHPLCで調べたところ、98.2%であることが確認された。
【実施例】
【0102】
(実施例2)
実施例1において、n=1である化合物の代わりにn=5である化合物を用いたことを除き、実施例1と同様に操作を行ない、環状ペプチド化合物を得た。
【実施例】
【0103】
(実施例3)
実施例1において、n=1である化合物の代わりにn=8である化合物を用いたことを除き、実施例1と同様に操作を行ない、環状ペプチド化合物を得た。
【実施例】
【0104】
(比較例1)
実施例1(1)において、Fmoc-Cys(Trt)-Trt(2-Cl)樹脂の代わりにFmoc-Asp(OBu)-Alko-樹脂〔樹脂1gあたりFmoc-Asp(OBu)の量が0.70mmol〕0.25mmol相当量を用いたことと、Fmoc-アミノ酸誘導体として、Fmoc-Ser(OBu)、Fmoc-Gln(Trt)、Fmoc-Glu(OBu)、Fmoc-Ile、Fmoc-Ser(OBu)、Fmoc-GlyおよびFmoc-Cys(Trt)をこの順に用いる代わりに、Fmoc-Gln(Trt)、Fmoc-Glu(OBu)、Fmoc-IleおよびFmoc-Ser(OBu)をこの順に用いたことを除き、実施例1(1)と同様に操作を行ない、Ser- Ile-Glu-Gln-Ser-Cys-Asp(配列番号:3)で示されるアミノ酸配列からなる直鎖状ペプチドを得た。
【実施例】
【0105】
(試験例1)
実施例1で得られた環状ペプチド化合物をその濃度が10μg/mLとなるように精製水に添加し、試料を得た。つぎに、得られた試料を実施例1で得られた環状ペプチド化合物の濃度が0.001質量%となるようにDH10培地に添加した。得られた培地中において、製造例3で得られたHaCaT-EPM細胞を5体積%二酸化炭素雰囲気下に37℃で培養し、経時的に細胞を採取した。採取された細胞に、細胞計数用キット〔(株)同仁化学研究所製、商品名:Cell Counting Kit〕に添付の試薬A〔(株)同仁化学研究所製、商品名:WST-1〕と溶液Bとの混合溶液〔試薬Aと溶液Bとの体積比(試薬A/溶液B)=10/1〕110μLを添加し、3時間インキュベーションした。得られた混合物について、分光光度計(ワッラック(WALLAC)社製、商品名:ARVOtmSX 1420 MULTILABEL COUNTER)を用いて450nmにおける吸光度を測定し、HaCaT-EPM細胞の生育への影響を調べた。また、対照として、実施例1で得られた環状ペプチド化合物を添加した試料の代わりに、精製水を用いたことを除き、前記と同様に操作を行ない、HaCaT-EPM細胞の生育への影響を調べた。
【実施例】
【0106】
さらに、実施例1で得られた環状ペプチド化合物の代わりに実施例2で得られた環状ペプチド化合物、実施例3で得られた環状ペプチド化合物または比較例1で得られた直鎖状ペプチドを用いたことを除き、前記と同様に操作を行ない、HaCaT-EPM細胞の生育への影響を調べた。実施例1で得られた環状ペプチド化合物、実施例2で得られた環状ペプチド化合物、実施例3で得られた環状ペプチド化合物および比較例1で得られた直鎖状ペプチドそれぞれによるHaCaT-EPM細胞の生育への影響を調べた結果を表1に示す。なお、表1における評価基準は以下のとおりである。
【実施例】
【0107】
++:対照を用いたときと比べ、有意にHaCaT-EPM細胞の生育の回復が検出される(危険率0.01以下)。
【実施例】
【0108】
+ :対照を用いたときと比べ、有意にHaCaT-EPM細胞の生育の回復が検出される(危険率0.05以下)。
【実施例】
【0109】
- :HaCaT-EPM細胞の生育の回復が検出されない。
【実施例】
【0110】
【表1】
JP0005863651B2_000014t.gif
【実施例】
【0111】
表1に示された結果から、実施例1~3で得られた環状ペプチド化合物を含む培地で培養したHaCaT-EPM細胞は、生育状態が良好であることがわかる。なかでも、実施例1で得られた環状ペプチド化合物を含む培地で培養したHaCaT-EPM細胞は、生育状態が最も良好であることがわかる。これに対し、比較例1で得られた環状ペプチド化合物を含む培地で培養したHaCaT-EPM細胞は、生育状態が不良であることがわかる。HaCaT細胞において、エピモルフィンを発現させた場合、細胞の生育状態が不良になる。これらの結果から、実施例1~3で得られた環状ペプチド化合物は、エピモルフィンの生理活性を抑制して細胞の生育状態を改善していることが示唆される。
【実施例】
【0112】
(製造例4)
実施例1で得られた環状ペプチド化合物をその濃度が10μg/mLとなるように精製水に溶解させ、被験試料1を得た。また、比較例1で得られた直鎖状ペプチドをその濃度が10μg/mLとなるように精製水に溶解させ、被験試料2を得た。
【実施例】
【0113】
(試験例2)
以下の実験において、DH10を実験番号:8の培地として用いた。また、1体積%オレイン酸含有エタノール溶液を、オレイン酸の濃度が0.05体積%となるようにDH10に添加し、培地を得た(実験番号:9)。さらに、1体積%オレイン酸含有エタノール溶液と製造例4で得られた被験試料2とを、オレイン酸の濃度が0.05体積%となり、かつ直鎖状ペプチドの濃度が0.0001質量%となるようにDH10に添加し、培地を得た(実験番号:10)。また、1体積%オレイン酸含有エタノール溶液と製造例4で得られた被験試料1とを、オレイン酸の濃度が0.05体積%となり、かつ環状ペプチド化合物の濃度が0.0001質量%となるようにDH10に添加し、培地を得た(実験番号:11)。
【実施例】
【0114】
HaCaT細胞を、DH10培地中において、5体積%二酸化炭素雰囲気下に37℃で培養した。
【実施例】
【0115】
つぎに、得られたHaCaT細胞を、1000U/mL DNアーゼI(シグマ-アルドリッチ社製)含有DH10培地350μLに懸濁した。得られた懸濁物を、24-ウェルディッシュ(コーニング社製、超低接着表面)中、100min-1で回転させながら、5体積%二酸化炭素雰囲気下、37℃で24時間旋回培養して、平滑で丸い細胞凝集物を形成させた。
【実施例】
【0116】
形成された細胞凝集物を、0.5質量%タイプIAコラーゲン溶液〔(株)高研製〕で調製された高密度のコラーゲンゲル中に包埋した。
【実施例】
【0117】
つぎに、包埋後の細胞凝集物を、実験番号8:の培地、実験番号:9の培地、実験番号:10の培地または実験番号:11の培地中において、5体積%二酸化炭素雰囲気下に37℃で4日間培養して、細胞クラスターを形成させた。得られた細胞クラスターの形態を位相差顕微鏡下で観察した。
【実施例】
【0118】
細胞クラスター内において、最外層の細胞は、コラーゲンと接しているために未分化状態を保持している。しかしながら、前記最外層に存在する未分化状態の細胞の内側に位置する細胞は、通常、速やかに分化を開始し、アノイキスに至る。そのため、前記細胞クラスターでは、正常状態では培養開始から3~4日間経過時において、容易に判別できる内腔が形成される。そこで、ランダムに選択された100個の細胞クラスターを観察し、全100個の細胞クラスターにおける明らかな内腔形成が見られた細胞クラスターの割合を調べることにより、内腔形成率を算出した。
【実施例】
【0119】
試験例2において、実験番号:11の培地を用いたときの細胞クラスターの形態を観察した結果を図5(A)に、実験番号:10の培地を用いたときの細胞クラスターの形態を観察した結果を図5(B)に示す。図中、スケールバーは100μmの長さを示す。
【実施例】
【0120】
また、試験例2において、培地の種類と内腔形成率との関係を調べた結果を図6に示す。図中、レーン1は実験番号:8の培地を用いたときの細胞クラスターにおける内腔形成率、レーン2は実験番号:9の培地を用いたときの細胞クラスターにおける内腔形成率、レーン3は実験番号:10の培地を用いたときの細胞クラスターにおける内腔形成率、レーン4は実験番号:11の培地を用いたときの細胞クラスターにおける内腔形成率を示す。
【実施例】
【0121】
図5(A)、図5(B)および図6に示された結果から、実験番号:11の培地を用いたときの細胞クラスターは、内腔形成率が高いのに対して、実験番号:10の培地を用いたときの細胞クラスターは、内腔形成率が低いことがわかる。これらの結果から、実施例1で得られた環状ペプチド化合物は、オレイン酸により引き起こされる細胞クラスターにおける内腔形成の異常の発生を抑制しているが、比較例1で得られた直鎖状ペプチドは、オレイン酸により引き起こされる細胞クラスターにおける内腔形成の異常の発生を抑制していないことがわかる。かかる細胞クラスターにおける内腔形成は、皮膚における分化や状態を反映している。したがって、実施例1で得られた環状ペプチド化合物は、オレイン酸により引き起こされる皮膚の状態の異常の発生を抑制することができることが示唆される。
【実施例】
【0122】
(試験例3)
(1)培地の調製
以下の実験において、DH10培地を実験番号:12の培地として用いた。精製水1μLをDH10培地1mLに添加し、培地を得た(実験番号:13)。さらに、製造例4で得られた被験試料2を直鎖状ペプチドの濃度が0.0001質量%となるようにDH10培地に添加し、培地を得た(実験番号:14)。また、製造例4で得られた被験試料1を環状ペプチド化合物の濃度が0.0001質量%となるようにDH10培地に添加し、培地を得た(実験番号:15)。
【実施例】
【0123】
(2)細胞クラスター(細胞構造体)の形成および内腔形成率の算出
試験例2において、HaCaT細胞の代わりに製造例3で得られたHaCaT-EPM細胞を用いたことと、試験例2において、実験番号8:の培地、実験番号:9の培地、実験番号:10の培地または実験番号:11の培地の代わりに実験番号12:の培地、実験番号:13の培地、実験番号:14の培地または実験番号:15の培地を用いたこととを除き、試験例2と同様に操作を行ない、内腔形成率を算出した。
【実施例】
【0124】
試験例3において、実験番号:15の培地を用いたときの細胞クラスターの形態を観察した結果を図7(A)に、試験例3において、実験番号:14の培地を用いたときの細胞クラスターの形態を観察した結果を図7(B)に示す。図中、スケールバーは100μmの長さを示す。
【実施例】
【0125】
また、試験例3において、培地の種類と内腔形成率との関係を調べた結果を図8に示す。図中、レーン1は実験番号:12の培地を用いたときの細胞クラスターにおける内腔形成率、レーン2は実験番号:13の培地を用いたときの細胞クラスターにおける内腔形成率、レーン3は実験番号:14の培地を用いたときの細胞クラスターにおける内腔形成率、レーン4は実験番号:15の培地を用いたときの細胞クラスターにおける内腔形成率を示す。図中、データは、3回の計数に基づくものであり、平均±標準誤差で示す。また、図中、*は、P<0.05である。
【実施例】
【0126】
図7(A)、図7(B)および図8に示された結果から、実験番号:15の培地を用いたときの細胞クラスターは、内腔形成率が高いのに対して、実験番号:14の培地を用いたときの細胞クラスターは、内腔形成率が低いことがわかる。これらの結果から、実施例1で得られた環状ペプチド化合物は、エピモルフィンにより引き起こされる細胞クラスターにおける内腔形成の異常の発生を抑制しているが、比較例1で得られた直鎖状ペプチドは、エピモルフィンにより引き起こされる細胞クラスターにおける内腔形成の異常の発生を抑制していないことがわかる。したがって、実施例1で得られた環状ペプチド化合物は、エピモルフィンにより引き起こされる皮膚の状態の異常の発生を抑制することができることが示唆される。
【実施例】
【0127】
(試験例4)
(1)培地の調製
以下の実験において、DH10培地を実験番号:16の培地として用いた。また、1体積%オレイン酸含有エタノール溶液をオレイン酸の濃度が0.02体積%となるようにDH10培地に添加して、培地を得た(実験番号:17)。さらに、1体積%オレイン酸含有エタノール溶液と製造例4で得られた被験試料2とを、オレイン酸の濃度が0.02体積%となり、かつ直鎖状ペプチドの濃度が0.000001質量%となるようにDH10培地に添加して、培地を得た(実験番号:18)。また、1体積%オレイン酸含有エタノール溶液と製造例4で得られた被験試料1とを、オレイン酸の濃度が0.02体積%となり、かつ環状ペプチド化合物の濃度が0.000001質量%となるようにDH10培地に添加して、培地を得た(実験番号:19)。1体積%オレイン酸含有エタノール溶液と製造例4で得られた被験試料2とを、オレイン酸の濃度が0.02体積%となり、かつ直鎖状ペプチドの濃度が0.00001質量%となるようにDH10培地に添加して、培地を得た(実験番号:20)。1体積%オレイン酸含有エタノール溶液と製造例4で得られた被験試料1とを、オレイン酸の濃度が0.02体積%となり、かつ環状ペプチド化合物の濃度が0.00001質量%となるようにDH10培地に添加して、培地を得た(実験番号:21)。また、1体積%オレイン酸含有エタノール溶液と製造例4で得られた被験試料2とを、オレイン酸の濃度が0.02体積%となり、かつ直鎖状ペプチドの濃度が0.0001質量%となるようにDH10培地に添加して、培地を得た(実験番号:22)。1体積%オレイン酸含有エタノール溶液と製造例4で得られた被験試料1とを、オレイン酸の濃度が0.02体積%となり、かつ環状ペプチド化合物の濃度が0.0001質量%となるようにDH10培地に添加して、培地を得た(実験番号:23)。
【実施例】
【0128】
(2)コーニファイドエンベロープ形成率の算出
HaCaT細胞を、実験番号:16~23のいずれかの培地中において、5体積%二酸化炭素雰囲気下に37℃で3日間培養した。
【実施例】
【0129】
つぎに、得られたHaCaT細胞を、リン酸緩衝生理的食塩水で洗浄し、ついで、トリプシン-EDTA溶液〔シグマ(SIGMA)社製〕500μL中において、37℃で3分間インキュベーションした。
【実施例】
【0130】
その後、得られたHaCaT細胞を1.0×10細胞/mLとなるように無血清DH培地(DMEM/HamF12、シグマーアルドリッチ社製)に懸濁した。得られた懸濁液に、カルシウム流入を引き起こすカルシウムイオノフォアA23187(シグマ-アルドリッチ社製)を濃度が20ng/mLとなるように添加し、得られた混合物中に含まれるHaCaT細胞を5体積%二酸化炭素雰囲気下に37℃で5時間培養した。
【実施例】
【0131】
得られた細胞をリン酸緩衝化生理的食塩水で洗浄した。洗浄後の細胞を可溶化液〔組成:2質量%SDS、20mMジチオスレイトール、残部精製水〕中で10分間インキュベーションした。その後、カルシウムイオノフォアA23187によるカルシウム流入後の不溶性コーニファイドエンベロープに起因する残存不溶化細胞の数を光学顕微鏡下で計数し、全細胞の数と残存不溶化細胞の数とを用い、コーニファイドエンベロープ形成率を算出した。
【実施例】
【0132】
試験例4において、培地の種類とコーニファイドエンベロープ形成率との関係を調べた結果を図9に示す。図中、1は実験番号:16におけるコーニファイドエンベロープ形成率、2は実験番号:17におけるコーニファイドエンベロープ形成率、3は実験番号:18におけるコーニファイドエンベロープ形成率、4は実験番号:19におけるコーニファイドエンベロープ形成率、5は実験番号:20におけるコーニファイドエンベロープ形成率、6は実験番号:21におけるコーニファイドエンベロープ形成率、7は実験番号:22におけるコーニファイドエンベロープ形成率、8は実験番号:23におけるコーニファイドエンベロープ形成率を示す。図中、データは、3回の計数に基づくものであり、平均±標準誤差で示す。また、図中、**はP<0.01、***はP<0.001である。
【実施例】
【0133】
図9に示された結果から、実施例1で得られた環状ペプチド化合物を含む培地を用いたときのコーニファイドエンベロープ形成率〔実験番号:19(図中、4)、21(図中、6)および23(図中、8)〕は、比較例1で得られた直鎖状ペプチドを含む培地を用いたときのコーニファイドエンベロープ形成率〔実験番号:18(図中、3)、20(図中、5)および22(図中、7)〕と比べて高くなっていることがわかる。コーニファイドエンベロープの形成は、皮膚における分化状態を反映している。したがって、これらの結果から、実施例1で得られた環状ペプチド化合物は、オレイン酸により引き起こされる皮膚の状態の異常の発生を抑制することができることが示唆される。
【実施例】
【0134】
(試験例5)
(1)培地の調製
以下の実験において、DH10培地を実験番号:24または25の培地として用いた。製造例4で得られた被験試料2を、直鎖状ペプチドの濃度が0.000001質量%となるようにDH10培地に添加して、培地を得た(実験番号:26)。また、製造例4で得られた被験試料1を、環状ペプチド化合物の濃度が0.000001質量%となるようにDH10培地に添加して、培地を得た(実験番号:27)。製造例4で得られた被験試料2を、直鎖状ペプチドの濃度が0.00001質量%となるようにDH10培地に添加して、培地を得た(実験番号:28)。製造例4で得られた被験試料1を、環状ペプチド化合物の濃度が0.00001質量%となるようにDH10培地に添加して、培地を得た(実験番号:29)。また、製造例4で得られた被験試料2を、直鎖状ペプチドの濃度が0.0001質量%となるようにDH10培地に添加して、培地を得た(実験番号:30)。製造例4で得られた被験試料1を、環状ペプチド化合物の濃度が0.0001質量%となるようにDH10培地に添加して、培地を得た(実験番号:31)。
【実施例】
【0135】
(2)コーニファイドエンベロープ形成率の算出
HaCaT細胞を、実験番号:24の培地中において、5体積%二酸化炭素雰囲気下に37℃で3日間培養した。
【実施例】
【0136】
また、HaCaT-EPM細胞を用いた場合、HaCaT-EPM細胞を、実験番号:25~31のいずれかの培地中において、5体積%二酸化炭素雰囲気下に37℃で3日間培養した。
【実施例】
【0137】
つぎに、得られたHaCaT細胞またはHaCaT-EPM細胞を、リン酸緩衝生理的食塩水で洗浄し、ついで、トリプシン-EDTA溶液500μL中において、37℃で3分間インキュベーションした。
【実施例】
【0138】
その後、得られたHaCaT細胞またはHaCaT-EPM細胞を1.0×10細胞/mLとなるように無血清DH培地に懸濁した。得られた懸濁液に、カルシウム流入を引き起こすカルシウムイオノフォアA23187を濃度が20ng/mLとなるように添加し、得られた混合物中に含まれるHaCaT細胞を5体積%二酸化炭素雰囲気下に37℃で5時間培養した。
【実施例】
【0139】
試験例4と同様の操作を行なって、コーニファイドエンベロープ形成率を算出した。
【実施例】
【0140】
試験例5において、培地の種類または細胞の種類とコーニファイドエンベロープ形成率との関係を調べた結果を図10に示す。図中、1は実験番号:24におけるコーニファイドエンベロープ形成率、2は実験番号:25におけるコーニファイドエンベロープ形成率、3は実験番号:26におけるコーニファイドエンベロープ形成率、4は実験番号:27におけるコーニファイドエンベロープ形成率、5は実験番号:28におけるコーニファイドエンベロープ形成率、6は実験番号:29におけるコーニファイドエンベロープ形成率、7は実験番号:30におけるコーニファイドエンベロープ形成率、8は実験番号:31におけるコーニファイドエンベロープ形成率を示す。図中、データは、3回の計数に基づくものであり、平均±標準誤差で示す。また、図中、*はP<0.05、**はP<0.01である。
【実施例】
【0141】
図10に示された結果から、実施例1で得られた環状ペプチド化合物を含む培地を用いたときのコーニファイドエンベロープ形成率〔実験番号:27(図中、4)、29(図中、6)および31(図中、8)〕は、比較例1で得られた直鎖状ペプチドを含む培地を用いたときのコーニファイドエンベロープ形成率〔実験番号:26(図中、3)、28(図中、5)および30(図中、7)〕と比べて高くなっていることがわかる。したがって、これらの結果から、実施例1で得られた環状ペプチド化合物は、エピモルフィンにより引き起こされる皮膚の状態の異常の発生を抑制することができることが示唆される。
【実施例】
【0142】
(試験例6)
(1)試料の調製
以下の実験において、50体積%エタノール水溶液を実験番号:32または33の試料として用いた。実施例1で得られた環状ペプチド化合物をその濃度が10ng/mLとなるように50体積%エタノール水溶液に添加し、試料を得た(実験番号:35)。
【実施例】
【0143】
比較例1で得られた直鎖状ペプチドをその濃度が10ng/mLとなるように50体積%エタノール水溶液に添加し、試料を得た(実験番号:34)。
【実施例】
【0144】
(2)試料の評価
メス7週齢ヘアレスマウスHos/hr-1(以下、「Hos/hr-1マウス」ともいう〔エスエルシー(SLC)社供給〕の背部の皮膚に実験番号:32~35のいずれかの試料100μLを飼育開始後1日目と3日目に塗布し、2日間飼育した。
【実施例】
【0145】
その後、実験番号:32においては、1日あたり2回3日間にわたって、前記Hos/hr-1マウスにおける塗布部位に、試料100μLを塗布後、エタノール100μLを塗布し、再度、試料100μLを塗布した。
【実施例】
【0146】
また、実験番号:33~35においては、1日あたり2回3日間にわたって、前記Hos/hr-1マウスにおける塗布部位に、実験番号:33~35のいずれかの試料100μLを塗布後、10体積%オレイン酸含有エタノール溶液100μLを塗布し、再度、実験番号:33~35のいずれかの試料100μLを塗布した。
【実施例】
【0147】
その後、前記Hos/hr-1マウスをさらに1日間飼育した。
【実施例】
【0148】
実験番号:32~35の試料の最初の塗布開始から8日目に、前記塗布部位から皮膚組織を採取した。採取した皮膚組織から凍結切片を作製した。かかる凍結切片をヘマトキシリン-エオシン染色により、細胞核を青紫色に染色するとともに、細胞質細胞質物質の大部分を赤色に染色し、表皮の厚さを測定した。
【実施例】
【0149】
試験例6において、試料の種類と表皮の厚さとの関係を調べた結果を図11に示す。図中、1は実験番号:32の試料を用いたときの表皮の厚さ、2は実験番号:33の試料を用いたときの表皮の厚さ、3は実験番号:34の試料を用いたときの表皮の厚さ、4は実験番号:35の試料を用いたときの表皮の厚さを示す。図中、データは、10回の計数に基づくものであり、平均±標準誤差で示す。図中、***はP<0.001である。
【実施例】
【0150】
また、前記塗布部位に対して、接着テープ〔住友スリーエム(株)社製〕を貼付することによって角質層を採取した。採取された角質層の核をヨウ化プロピジウム(シグマ-アルドリッチ社製)によって染色した。
【実施例】
【0151】
試験例6において、試料の種類と全細胞中の染色細胞の割合との関係を調べた結果を図12に示す。図中、1は実験番号:32の試料を用いたときの全細胞中の染色細胞の割合、2は実験番号:33の試料を用いたときの全細胞中の染色細胞の割合、3は実験番号:34の試料を用いたときの全細胞中の染色細胞の割合、4は実験番号:35の試料を用いたときの全細胞中の染色細胞の割合を示す。図中、データは、3回の計数に基づくものであり、平均±標準誤差で示す。図中、***はP<0.001である。
【実施例】
【0152】
図11に示された結果から、実施例1で得られた環状ペプチド化合物を含む実験番号:35の試料を用いたときの表皮の厚さは、比較例1で得られた直鎖状ペプチドを含む実験番号:34の試料を用いたときの表皮の厚さと比べて薄いことがわかる。また、図12に示された結果から、実施例1で得られた環状ペプチド化合物を含む実験番号:35の試料を用いたときの全細胞中の染色細胞の割合は、比較例1で得られた直鎖状ペプチドを含む実験番号:34の試料を用いたときの全細胞中の染色細胞の割合と比べて著しく小さいことがわかる。したがって、これらの結果から、実施例1で得られた環状ペプチド化合物は、オレイン酸により引き起こされる皮膚の状態の異常の発生を抑制することができることが示唆される。
【実施例】
【0153】
(試験例7)
以下の実験において、DH10培地を実験番号:36の試料として用いた。精製水1μLをDH10培地1mLに添加し、試料を得た(実験番号:37)。また、実施例1で得られた環状ペプチド化合物をその濃度が0.001質量%となるようにDH10培地に添加し、試料を得た(実験番号:38)。さらに、比較例1で得られた直鎖状ペプチドをその濃度が0.001質量%となるようにDH10培地に添加し、試料を得た(実験番号:39)。
【実施例】
【0154】
ヒト胎児肺線維芽細胞のMRC-5細胞を、10質量%熱不活性化FCSを含有するα-MEM(ギブコ・ラボラトリー社製)10mL中において、5体積%二酸化炭素雰囲気下に37℃で72時間培養した。
【実施例】
【0155】
24ウェル培養プレートのウェル内に支持体〔BDバイオサイエンス社製、商品名:セルカルチャーインサート〕を設置した。前記支持体中において、前記MRC-5細胞とコラーゲンゲル混合溶液(コラーゲンI型、新田ゼラチン株式会社製)とを混合した。得られた混合物をゲル化させて、細胞包埋ゲル(1.7×105/mL)を得た。得られた細胞包埋ゲルの上表面に、1mg/mLフィブロネクチン水溶液(BDバイオサイエンス社製)0.05mlを添加し、前記細胞包埋ゲルを室温で1時間放置した。つぎに、前記細胞包埋ゲル中のMRC-5細胞を、DH10培地中において、5体積%二酸化炭素雰囲気下に37℃で一晩インキュベーションした。
【実施例】
【0156】
その後、0.4μg/mLヒドロコルチゾン(シグマ-アルドリッチ社製)と100μg/mLゲンタマイシン(ギブコ・ラボラトリー社製)とインスリン(5μg/ml)と50μg/mLアスコルビン酸(シグマ-アルドリッチ社製)とを含有するDH10培地0.2mLに懸濁したHaCaT細胞(7.0×10細胞)を前記細胞包埋ゲル上に播種した。
【実施例】
【0157】
つぎに、前記HaCaT細胞が播種された細胞包埋ゲルを、24ウェル培養プレートのウェル中のDH10に浸漬させた。その後、細胞包埋ゲル中に含まれる細胞を、5体積%二酸化炭素雰囲気下に37℃で5日間インキュベーションし、細胞構築物を得た。つぎに、得られた細胞構築物中のHaCaT細胞の表面を、空気とDH10との接触面まで持ち上げて配置し、前記細胞構築物を、5体積%二酸化炭素雰囲気下に37℃で15日間培養し、HaCaT細胞を含む分化細胞構築物を得た。
【実施例】
【0158】
その後、実験番号:36においては、分化細胞構築物の表面に、実験番号:36の試料5μLを塗布し、分化細胞構築物を5体積%二酸化炭素雰囲気下に37℃でさらに1日間培養した。一方、実験番号:37~39においては、分化細胞構築物の表面に、0.5体積%オレイン酸含有エタノール溶液5μLと、実験番号:37~39のいずれかの試料5μLとを塗布し、分化細胞構築物を5体積%二酸化炭素雰囲気下に37℃でさらに1日間培養した。
【実施例】
【0159】
得られた細胞構造体から凍結切片を作製した。かかる凍結切片をヘマトキシリン-エオシン染色により、細胞核を青紫色に染色するとともに、細胞質細胞質物質の大部分を赤色に染色した。染色後の凍結切片を用い、細胞構造体の組織形態を位相差顕微鏡下で観察した。
【実施例】
【0160】
試験例7において、0.5体積%オレイン酸含有エタノール溶液を塗布せずに実験番号:36の試料を塗布したときの細胞構造体の組織形態を観察した結果を図13(A)に、試験例7において、0.5体積%オレイン酸含有エタノール溶液および実験番号:37の試料を塗布したときの細胞構造体の組織形態を観察した結果を図13(B)に、試験例7において、0.5体積%オレイン酸含有エタノール溶液および実験番号:38の試料を塗布したときの細胞構造体の組織形態を観察した結果を図13(C)に、試験例7において、0.5体積%オレイン酸含有エタノール溶液および実験番号:39の試料を塗布したときの細胞構造体の組織形態を観察した結果を図13(D)に示す。図中、スケールバーは、50μmの長さを示す。
【実施例】
【0161】
図13(A)および(C)に示された結果から、0.5体積%オレイン酸含有エタノール溶液と環状ペプチド化合物を含む実験番号:38の試料とを塗布したときの細胞構造体では、実験番号:36の試料を用いたときの細胞構造体と同様に、細胞核が見られないことがわかる。したがって、環状ペプチド化合物は、オレイン酸によって引き起こされる不全角化の発生を抑制することができることがわかる。
【実施例】
【0162】
一方、図13(D)に示された結果から、0.5体積%オレイン酸含有エタノール溶液と直鎖状ペプチドを含む実験番号:39の試料とを塗布したときの細胞構造体においては、細胞核が見られることがわかる。したがって、直鎖状ペプチドは、オレイン酸によって引き起こされる不全角化の発生を抑制することができないことがわかる。
【実施例】
【0163】
(試験例8)
試験例7において、実施例1で得られた環状ペプチド化合物の代わりに、式(I)で表される環状ペプチド化合物のうち、実施例1で得られた環状ペプチド化合物以外の化合物を用いたことを除き、試験例7と同様の操作を行ない、細胞構造体の組織形態を位相差顕微鏡下で観察する。
【実施例】
【0164】
その結果、実施例1で得られた環状ペプチド化合物を用いたときと同様の結果が得られる。
【実施例】
【0165】
以上の結果から、本発明の環状ペプチド化合物またはその薬理的に許容される塩によれば、エピモルフィンまたはオレイン酸によってヒトの皮膚に引き起こされる皮膚の状態の異常、特に不全角化の発生を抑制することができることがわかる。したがって、本発明の環状ペプチド化合物またはその薬理的に許容される塩は、不全角化に起因するヒトの皮膚の状態の異常を改善する用途などに有用であることが示唆される。
【配列表フリ-テキスト】
【0166】
配列番号:1は、環状ペプチド化合物の配列である。6番目のシステイニル基と7番目のシステイニル基とは、ジスルフィド結合又はペプチド結合によって結合されている。1番目のXaaは、置換基を有してもよいSer、置換基を有してもよいThrまたは置換基を有してもよいTyrである。2番目のXaaは、置換基を有してもよいIle、置換基を有してもよいValまたは置換基を有してもよいLeuである。3番目のXaaは置換基を有してもよいAsn、置換基を有してもよいGln、置換基を有してもよいAspまたは置換基を有してもよいGluである。4番目のXaaは、置換基を有してもよいAsn、置換基を有してもよいGln、置換基を有してもよいAspまたは置換基を有してもよいGluである。5番目のXaaは、置換基を有してもよいSer、置換基を有してもよいThrまたは置換基を有してもよいTyrである。1番目のXaaと7番目のCysはいずれも配列の末端残基ではなく、両者はR〔Rは、-CO-(CH2n-NH-、または-NH-(CH2n-CO-(式中、nは1~10の整数である)を意味する〕を介して結合している。
【0167】
配列番号:2は、直鎖状ペプチドまたは環状ペプチド化合物の部分配列である。
【0168】
配列番号:3は、直鎖状ペプチドの配列である。
【0169】
配列番号:4は、環状ペプチド化合物を製造するための環化前の鎖状アミノ酸配列である。1番目のCysと2番目のXaaは、R〔Rは、-CO-(CH2n-NH-、または-NH-(CH2n-CO-(式中、nは1~10の整数である)を意味する〕を介して結合している。2番目のXaaは、置換基を有してもよいSer、置換基を有してもよいThrまたは置換基を有してもよいTyrである。3番目のXaaは、置換基を有してもよいIle、置換基を有してもよいValまたは置換基を有してもよいLeuである。4番目のXaaは置換基を有してもよいAsn、置換基を有してもよいGln、置換基を有してもよいAspまたは置換基を有してもよいGluである。5番目のXaaは、置換基を有してもよいAsn、置換基を有してもよいGln、置換基を有してもよいAspまたは置換基を有してもよいGluである。6番目のXaaは、置換基を有してもよいSer、置換基を有してもよいThrまたは置換基を有してもよいTyrである。
【0170】
配列番号:6は、T7タグ配列である。
【0171】
配列番号:7は、IL-2シグナルペプチドの配列である。
【0172】
配列番号:8は、環状ペプチド化合物を製造するための環化前の鎖状アミノ酸配列である。
図面
【図1】
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【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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