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明細書 :bcc型FeCo合金粒子及びその製造方法並びに磁石

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5766637号 (P5766637)
公開番号 特開2013-185222 (P2013-185222A)
登録日 平成27年6月26日(2015.6.26)
発行日 平成27年8月19日(2015.8.19)
公開日 平成25年9月19日(2013.9.19)
発明の名称または考案の名称 bcc型FeCo合金粒子及びその製造方法並びに磁石
国際特許分類 B22F   9/22        (2006.01)
C22C  19/07        (2006.01)
C22C  38/00        (2006.01)
B22F   9/24        (2006.01)
B22F   1/00        (2006.01)
B22F   1/02        (2006.01)
H01F   1/06        (2006.01)
FI B22F 9/22 A
C22C 19/07 D
C22C 38/00 303A
B22F 9/24 A
B22F 1/00 Y
B22F 1/02 E
H01F 1/06 A
請求項の数または発明の数 16
全頁数 22
出願番号 特願2012-052330 (P2012-052330)
出願日 平成24年3月8日(2012.3.8)
審査請求日 平成25年11月14日(2013.11.14)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】国立研究開発法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】山内 美穂
【氏名】佃 達哉
【氏名】シャリフ モハメド ジャファル
個別代理人の代理人 【識別番号】110000109、【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
審査官 【審査官】田中 永一
参考文献・文献 特開2002-373803(JP,A)
特開2010-189679(JP,A)
特開2003-178907(JP,A)
特開2002-373804(JP,A)
特開2012-193409(JP,A)
国際公開第2012/141205(WO,A2)
特開昭58-159305(JP,A)
特開2010-024478(JP,A)
特開2013-106016(JP,A)
調査した分野 B22F 1/00
B22F 1/02
B22F 9/00 - 9/30
C22C 19/07
C22C 38/00
H01F 1/06
特許請求の範囲 【請求項1】
FexCo100-x(40≦x<100)で表されるbcc型鉄コバルト合金からなる粒子の製造方法であって、得られた液体に、前記鉄含有化合物に含まれる鉄イオン及び前記コバルト含有化合物に含まれるコバルトイオンに対する還元剤を添加して、鉄及びコバルトを含有する前駆体粒子を調製する工程(2)、及び
前記前駆体粒子を前記液体から分離し、水素含有雰囲気下で加熱して、前記前駆体粒子を還元し、かつ合金粒子の構造をbcc型にして前記bcc型鉄コバルト合金からなる粒子を得る工程(3)を含む、前記製造方法。
【請求項2】
前記工程(3)では、工程(2)で得た前記液体から前駆体粒子を分離し、分離した前駆体粒子を水素含有雰囲気下で加熱して還元することで、1~1,000nmの範囲の結晶子サイズを有するbcc型鉄コバルト合金からなる粒子を得る、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記工程(3)における水素含有雰囲気の水素含有率は10vol%超100vol%以下の範囲である請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記工程(3)における加熱は、200℃~1,000℃の範囲である請求項1~3のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記工程(2)で得られる鉄及びコバルトを含有する前駆体粒子は、少なくとも鉄酸化物及びコバルト酸化物を含有する粒子である請求項1~4のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項6】
前記工程(1)における溶媒は、鉄含有化合物、コバルト含有化合物及び保護ポリマーに対する親和性を有する溶媒である、請求項1~5のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項7】
前記保護ポリマーは極性官能基部分を有する化合物である請求項1~6のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項8】
前記保護ポリマーは、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルエーテル、ポリアクリレート、ポリ(メルカプトメチレンスリレン-N-ビニル-2-ピロリドン)、及びポリアクリロニトリルから成る群から選ばれる少なくとも1種の化合物である、請求項1~6のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項9】
工程(2)における還元は、0~200℃の範囲で行う請求項1~8のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項10】
前記bcc型鉄コバルト合金からなる粒子は、平均粒子径が1~200,000nmの範囲である請求項1~9のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項11】
前記bcc型鉄コバルト合金からなる粒子は、室温(300K)で強磁性体である請求項1~10のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項12】
FexCo100-x(40≦x<100)で表され、結晶子サイズが1~1,000nmの範囲であるbcc型鉄コバルト合金からなる粒子。平均粒子径が1~200,000nmの範囲である請求項12に記載のbcc型鉄コバルト合金粒子。
【請求項14】
炭素含有被覆層をさらに有する請求項12または13に記載のbcc型鉄コバルト合金粒子。
【請求項15】
前記炭素含有被覆層は、炭素含有被覆層及びbcc型鉄コバルト合金粒子の総質量の0.1~80%の範囲である請求項14に記載のbcc型鉄コバルト合金粒子。
【請求項16】
請求項12~15のいずれか1項に記載のbcc型鉄コバルト合金粒子を用いて製造された磁石。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、bcc型鉄コバルト(FeCo)合金粒子及びその製造方法に関する。さらに本発明は、bcc型鉄コバルト(FeCo)合金粒子を用いて作製した磁石に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に永久磁石として使われる大きな保磁力を示す磁石としてサマリウム磁石やネオジム磁石が知られている。これらの材料にはレアアースが含まれるため、昨今の原料流通事情を考えると、早急な代替材料の開発が望まれる。大きな保磁力を有する材料として、L10型の規則構造を有する合金は、その構造ゆがみに由来する一軸磁気異方性から、大きな保磁力をもつことが知られている。L10型合金としては、FePt、CoPt、FePdなどが知られているが、いずれも貴金属であるPtやPdを含むため実用材料としては好ましくない。
【0003】
そこで貴金属やレアアースを含まない磁性材料のひとつとしてFeCoが着目されている[非特許文献1~6]。
【先行技術文献】
【0004】

【非特許文献1】J. Am. Chem. Soc., 129, 7214-7215, 2007
【非特許文献2】Chem. Mater., 20, 6248-6253 (2008)
【非特許文献3】J. Appl. Phys, 107, 09A303, 2010
【非特許文献4】Phys. Chem. Lett., 1, 2042-2045 (2010)
【非特許文献5】J. Appl. Phys., 109, 07A313 (2011)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
非特許文献1は、Fe(III)(アセチルアセトナト)とFe(acac)3とCo(II) (アセチルアセトナト)とCo(acac)2にオレイン酸とオレイルアミンを加え、還元剤として1,2-ヘキサデカンジオールを混合してFeCo前駆体を調製し、得られた前駆体を93%Ar+7%H2で加熱することで、FeCoナノ粒子を提供するものである、Fe75Co25において飽和磁化Ms=245emu/gを示す磁性FeCoナノ粒子が得られたことを示す。
【0006】
非特許文献2は、水溶性のFeSO4・7H2OとCoCl2・6H2Oをpolyglycol(Mw~400)(Polyethylene glycolの間違いではないかと考えられる)とシクロヘキサンとともに水に溶解した混合溶液にヒドラジンとNaOHを加えてFeCo合金を作製した。得られたFeCo合金の磁性特性は以下の通りである。
【0007】
【表1】
JP0005766637B2_000002t.gif

【0008】
非特許文献3は、FexCo100-xナノ粒子を硫酸鉄(II)及び硫酸コバルト(II)をNaBH4及びクエン酸ナトリウムを用いて水溶液中で還元して合成し、さらに水素含有混合気体中で450 または600℃でアニールして磁性FeCo合金を得た。得られたFeCo合金の磁性特性は以下の通りである。
【0009】
【表2】
JP0005766637B2_000003t.gif

【0010】
非特許文献4は、オレイルアミン(OA)の表面層を有する前駆体Coz[Fe1.5-z[Fe(CN)6][FeCo(z)=1.0(1.25), 1.5(1), 2.0(0.83), 2.5(0.71)]をH2/N2 (10%H2)で500℃で加熱してグラファイトカーボン層を有するFeCoナノ粒子を調製した。
得られたFeCo合金の磁性特性等は以下の通りである。
【0011】
【表3】
JP0005766637B2_000004t.gif

【0012】
非特許文献5は、保護剤を使用すること無しに、Co2(CO)8とFe(CO)5をオレイン酸とオレイルアミンを混合したパラフィン中で熱分解してFeCo前駆体を調製し、前駆体をCH4雰囲気か500℃で過熱することで、Ms=144emu/gの磁性を示すグラファイトシェルを有するFeCoナノ粒子が得られたことを示す。
【0013】
上記非特許文献1~5に記載の方法では、飽和磁化Ms 及び保磁力Hcが共に高いFeCoナノ粒子を得るに至っていない。さらに、これらの方法では、FeCoナノ粒子の飽和磁化Ms 及び保磁力Hcを自由に制御することもできない。
【0014】
そこで本発明は、FeCoナノ粒子が有する飽和磁化Ms 及び保磁力Hcを自由に制御することができるFeCoナノ粒子の製造方法を提供することにある。さらに本発明は、上記方法を用いて、飽和磁化Ms 及び保磁力Hcが共に高いFeCoナノ粒子または、所望の飽和磁化Ms 及び保磁力Hcを有するFeCoナノ粒子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、以下の通りである。
[1]
FexCo100-x(40≦x<100)で表されるbcc型鉄コバルト合金粒子の製造方法であって、得られた液体に、前記鉄含有化合物に含まれる鉄イオン及び前記コバルト含有化合物に含まれるコバルトイオンに対する還元剤を添加して、鉄及びコバルトを含有する前駆体粒子を調製する工程(2)、及び
前記前駆体粒子を水素含有雰囲気下で加熱して、前記前駆体粒子を還元し、かつ合金粒子の構造をbcc型にする工程(3)を含む、前記製造方法。
[2]
前記工程(3)は、得られるbcc型鉄コバルト合金粒子が、1~1,000nmの範囲の結晶子サイズを有する条件で実施される[1]に記載の製造方法。
[3]
前記工程(3)における水素含有雰囲気の水素含有率は10vol%超100vol%以下の範囲である[1]に記載の製造方法。
[4]
前記工程(3)における加熱は、200℃~1000℃の範囲である[1]~[3]のいずれか1項に記載の製造方法。
[5]
前記工程(2)で得られる鉄及びコバルトを含有する前駆体粒子は、少なくとも鉄酸化物及びコバルト酸化物を含有する粒子である[1]~[4]のいずれか1項に記載の製造方法。
[6]
前記工程(1)における溶媒は、鉄含有化合物、コバルト含有化合物及び保護ポリマーに対する親和性を有する溶媒である、[1]~[5]のいずれか1項に記載の製造方法。
[7]
前記保護ポリマーは極性官能基部分を有する化合物である[1]~[6]のいずれか1項に記載の製造方法。
[8]
前記保護ポリマーは、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルエーテル、ポリアクリレート、ポリ(メルカプトメチレンスリレン-N-ビニル-2-ピロリドン)、及びポリアクリロニトリルから成る群から選ばれる少なくとも1種の化合物である、[1]~[6]のいずれか1項に記載の製造方法。
[9]
工程(2)における還元は、0~200℃の範囲で行う[1]~[8]のいずれか1項に記載の製造方法。
[10]
bcc型鉄・コバルト合金粒子は、粒子径が1~200,000nmの範囲である[1]~[9]のいずれか1項に記載の製造方法。
[11]
bcc型鉄コバルト合金粒子は、室温(300K)で強磁性体である[1]~[10]のいずれか1項に記載の製造方法。
[12]
FexCo100-x(40≦x<100)で表され、結晶子サイズが1~1,000nmの範囲であるbcc型鉄コバルト合金粒子。平均粒子径が1~200,000nmの範囲である[12]に記載のbcc型鉄コバルト合金粒子。
[14]
炭素含有被覆層を有する[12]または[13]に記載のbcc型鉄コバルト合金粒子。
[15]
前記炭素含有被きぎは、炭素含有被覆層及びbcc型鉄コバルト合金粒子の総質量の0.1~50%の範囲である[14]に記載のbcc型鉄コバルト合金粒子。
[16]
[12]~[15]のいずれか1項に記載のbcc型鉄コバルト合金粒子を用いて製造された磁石。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、FeCoナノ粒子が有する飽和磁化Ms 及び保磁力Hcを自由に制御することができるFeCoナノ粒子の製造方法を提供することができる。さらに本発明によれば、上記方法を用いて、飽和磁化Ms 及び保磁力Hcが共に高いFeCoナノ粒子または、所望の飽和磁化Ms 及び保磁力Hcを有するFeCoナノ粒子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施例1における加熱条件(試料を100℃で脱気した後、100kPaの水素ガスを導入し、段階的に500℃まで昇温)を示す。
【図2】実施例1において水素圧力下で加熱しながら測定したin situ XRDパターンを示す。
【図3】実施例1において水素圧力下で450℃に加熱し、室温に戻した試料の回折パターンを示す。
【図4】実施例1において得た(a)前駆体のTEM像、(b)水素下で加熱したFexCo100-xのX=70のナノ合金試料のTEM像、(c)水素下で加熱したFexCo100-xのX=50のナノ合金試料のTEM像、(d)HR画像、(e)水素下で加熱したFexCo100-xのX=50のナノ合金試料のTEM像(表面に一層の厚みが2-3nm程度のアモルファスな構造を有する炭素含有被覆層が形成していることが分かる)を示す。(f)実施例2において得た水素下、500℃で加熱したFexCo100-xのX=50のナノ合金試料のTEM像(表面に炭素含有被覆層が形成していることが分かる) を示す。
【図5】実施例1において得たbcc型ナノ粒子の300Kにおける磁化率を示す。
【図6】実施例2において得たbcc型Fe50Co50合金ナノ粒子のX線回折パターンを示す。
【図7】実施例2において得たbcc型Fe50Co50ナノ合金の300Kにおける磁化曲線(VSM法により測定)を示す。
【図8】FexCo100-xの格子定数とFe含有量の関係を示す。
【図9】FexCo100-xナノ合金の飽和磁化(Ms)および保磁力(Hc)の組成(x)依存性を示す。飽和磁化および保磁力の多項式近似曲線(3次)を実それぞれ線および点線で示す。
【図10】Fe50Co50ナノ合金の飽和磁化(Ms)と保磁力(Hc)の関係を示す。飽和磁化および保磁力の多項式近似曲線(3次)をそれぞれ実線および点線で示す。
【図11】Fe70Co30ナノ合金の飽和磁化(Ms)と保磁力(Hc)の関係を示す。飽和磁化および保磁力の近似直(1次)をそれぞれ実線および点線で示す。
【図12】Fe50Co50ナノ合金の格子定数と結晶子サイズの関係を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<bcc型鉄コバルト合金粒子の製造方法>
本発明は、FexCo100-x(40≦x<100)で表されるbcc型鉄コバルト合金粒子の製造方法に関する。この製造方法は、以下の工程を含む。工程(2): 得られた液体に、前記鉄含有化合物に含まれる鉄イオン及び前記コバルト含有化合物に含まれるコバルトイオンに対する還元剤を添加して、鉄及びコバルトを含有する前駆体粒子を調製する工程
工程(3) : 前記前駆体粒子を水素含有雰囲気下で加熱して、前記前駆体粒子を還元し、かつ合金粒子の構造をbcc型にする工程

【0019】
工程(1)
工程(1)では、鉄含有化合物、コバルト含有化合物及び保護ポリマーを溶媒に分散及び/又は溶解した液体を調製する。
鉄含有化合物は、鉄を含有する化合物であれば、特に制限はない。工程(1)に用いる溶媒に対する溶解性に優れたものであることが適当である。そのような化合物としては、例えば、塩化鉄、硫酸鉄、塩化鉄、硝酸鉄、およびそれらの水和物などの無機鉄含有化合物、さらには、鉄を含む錯体を挙げることができる。鉄を含む錯体としては、例えば、酢酸鉄、鉄アセチルアセトナト、テトラクロロ鉄(II)酸テトラエチルアンモニウム、テトラクロロ鉄(III)酸テトラエチルアンモニウム、ビス(スルフィド)テトラニトロシルに鉄(2-)ナトリウム八水和物、トリス(スルフィド)ヘプタニトロシル四鉄酸(1-)アンモニウム一水和物、ヘキサアンミン鉄(II)臭化物、テトラキス(チオフェノラト)鉄(II)酸テトラフェニルホスホニウム、テトラキス(2,3,5,6-テトラメチルフェノラト)鉄(III)酸テトラエチルアンモニウム、ヘキサシアノ鉄(II)酸カリウム、ヘキサシアノ鉄(III)酸カリウム、ペンタシアノアンミン鉄(II)酸ナトリウム三水和物、ペンタシアノアンミン鉄(III)酸ナトリウム三水和物、ペンタシアノニトロシル鉄(III)酸ナトリウム二水和物、ペンタシアノニトロ鉄(II)酸カリウム一水和物、テトラシアノ(エチレンジアミン)鉄(II)酸ナトリウム三水和物等を挙げることかできる。但し、これらの化合物は例示であって、これらの限定される意図ではない。

【0020】
コバルト含有化合物は、コバルトを含有する化合物であれば、特に制限はない。工程(1)に用いる溶媒に対する溶解性に優れたものであることが適当である。そのような化合物としては、例えば、塩化コバルト、硝酸コバルトおよびそれらの水和物などの無機コバルト含有化合物、さらには、コバルトを含む錯体を挙げることができる。コバルトを含む錯体としては、例えば、酢酸コバルト、コバルトアセチルアセトナト、テトラクロロコバルト(II)酸テトラエチルアンモニウム、テトラブロモコバルト(II)酸テトラエチルアンモニウム、ヘキサアンミンコバルト(II)塩化物、ジニトロテトラアンミンコバルト(II)、テトラシアノコバルト(II)酸カリウム一水和物、ヘキサニトロコバルト(II)酸カリウムバリウム、トリス(エチレンジアミン)コバルト(II)硫酸塩、ビス(エチレンジアミン)ジアクアコバルト硝酸塩、エチレンジアミンテトラアクアコバルト(II)硫酸塩一水和物、ジニトロ(エチレンジアミン)コバルト(II)、ビス(N,N-ジメチルエチレンジアミン)コバルト(II)過塩素酸、ビス(2,3-ジメチル-2,3-ジアミノブタン)コバルト(II)ヨウ化物、ビス(ペルクロラト)テトラピリジンコバルト(II)、アセチルアセトナト(ニトラト)(N,N,N'、N'-テトラメチルエチレンジアミン)コバルト(II)等を挙げることかできる。但し、これらの化合物は例示であって、これらの限定される意図ではない。

【0021】
保護ポリマーは、前記鉄含有化合物及び/又はコバルト含有化合物に対して親和性を示し、さらに溶媒に対しても可溶性を示す、前記鉄含有化合物及び/又はコバルト含有化合物などの金属含有化合物に対して親和性を有する官能基部分、例えば極性官能基を有するポリマーであることが適当であり、水溶性のポリマーであることが好ましい。前記保護ポリマーとしては、例えば、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルエーテル、ポリアクリレート、ポリ(メルカプトメチレンスリレン-N-ビニル-2-ピロリドン)、ポリアクリロニトリルなどを挙げることかできる

【0022】
保護ポリマーの役割は、主に、工程(2)及(3)ので生成する前駆体粒子及び/又は合金粒子間の凝集を防止することと、生成する前駆体粒子及び/又は合金粒子の一次粒子及び/又は二次粒子サイズを制御することである。前駆体粒子は、平均一次粒子径は、例えば、1~200,000nm、望ましくは1~5,000nmであり、好ましくは1~1,000nmであり、より好ましくは1~200nmであり、さらに好ましくは1~100nmであり、さらに一層好ましくは1~50nmであり、より一層好ましくは1~20nmであり、さらにより一層好ましくは1~10nmであり、1~4nmの範囲とすることもできる。鉄コバルト合金ナノ粒子の平均粒子径については後述する。そのためこの粒子径を維持するために、各ナノ粒子を凝集等から保護する手段を用いることが好ましく、そのための手段として保護ポリマーを用いる。さらに、合金の粒子径は、金属と保護ポリマーの比率を調整することによって制御することが出来る。例えば、溶媒中における保護ポリマーの量を相対的に増やすと、析出する前駆体粒子及び/又は合金粒子の粒径は小さくなる。この現象を利用すれば前駆体粒子及び/又は合金粒子の粒径を制御できる。尚、析出する合金粒子の粒径は、鉄含有化合物及びコバルト含有化合物の濃度を調整することでも調整できる。

【0023】
前記溶媒は、鉄含有化合物、コバルト含有化合物及び保護ポリマーを溶解できる溶媒である。溶媒として、水及び/又は有機溶媒、その混合溶媒を用いることができる。有機溶媒は、水に親和性のある有機溶媒または極性部位を有する有機溶媒であることが、鉄含有化合物、コバルト含有化合物及び保護ポリマーに対する溶解性に優れるという観点から好ましい。溶媒は、水及び水に親和性のある有機溶媒の混合溶媒であることもできる。有機溶媒としては、鉄含有化合物、コバルト含有化合物及び保護ポリマーの種類等に応じて適宜選択するとよく、例えばエタノール、プロパノールやエチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリンなどの多価アルコールを用いることができる。水と有機溶媒の混合溶媒を用いる場合にも、鉄含有化合物、コバルト含有化合物及び保護ポリマーの溶解性等を考慮して、有機溶媒の種類や有機溶媒と水との混合比を適宜調整できる。

【0024】
前記鉄含有化合物、コバルト含有化合物及び保護ポリマーの溶媒中での存在状態は、特に制限はなく、分散及び/又は溶解した状態であることができる。分散した状態は分散液であり、溶解した状態は溶解液である。分散と溶解が併存する場合も含まれる。前記鉄含有化合物、コバルト含有化合物及び保護ポリマーが分散状態にあるか、溶解状態にあるか、両者の併存状態にあるかは、前記鉄含有化合物、コバルト含有化合物及び保護ポリマーの種類並びに溶媒、さらには、溶媒中の前記鉄含有化合物、コバルト含有化合物及び保護ポリマーの濃度により変化する。溶媒中の前記鉄含有化合物、コバルト含有化合物及び保護ポリマーの濃度は、それぞれ前駆体の組成や粒子径等を考慮して決められる。分散液または溶解液中の保護ポリマーの濃度、鉄イオンの濃度及びコバルトイオンの濃度は、例えば、保護ポリマーが1×10-7~10mol/Lの範囲、鉄イオンが1×10-10~10mol/Lの範囲、及びコバルトイオンが1×10-10~10mol/Lの範囲であることができる。

【0025】
分散液または溶解液の調製は、上記溶媒に保護ポリマー並びに鉄含有化合物及びコバルト含有化合物を加えて、溶解または分散することで行うことができる。保護ポリマー並びに鉄含有化合物及びコバルト含有化合物の添加順序には制限はない。保護ポリマーを分散または溶解した溶液と鉄含有化合物を溶解した溶液及びコバルト含有化合物を溶解した溶液を、適宜混合することで調製することもできる。

【0026】
前記鉄含有化合物、コバルト含有化合物及び保護ポリマーの溶媒への分散または溶解の操作は、常温または加温または冷却下で行うことができる。さらに、前記溶媒への分散または溶解の操作は、静置した状態で行っても、攪拌した状態で行ってもよい。

【0027】
工程(2)
工程(2)では、工程(1)で得られた前記前記鉄含有化合物、コバルト含有化合物及び保護ポリマーを含有する液体に、前記鉄含有化合物に含まれる鉄イオン及び前記コバルト含有化合物に含まれるコバルトイオンに対する還元剤を添加して、鉄及びコバルトを含有する前駆体粒子を調製する。

【0028】
還元剤としては、標準還元電位が室温における水素(0eV)よりも負である化合物を用いることが、鉄イオン及びコバルトイオンを金属に還元する力が強いという観点から適当である。そのような還元剤としては、例えば、MBH4,MEt3BH(M=Na, K), 水素化シアノホウ素ナトリウム NaBH3CN、水素化ホウ素リチウム LiBH4、水素化トリエチルホウ素リチウム LiBHEt3、ボラン錯体 BH3・L、トリエチルシラン Et3SiH、水素化ビス(2-メトキシエトキシ)アルミニウムナトリウム (Sodium Bis(2-methoxyethoxy)Alminium Hydride; Red-Al)などを挙げることができる。但し、これらの還元剤の中には、水と爆発的に反応して危険であるため水溶液中で使用できないものもあるので注意を要する。その場合は、溶媒として水以外の溶媒(例えば、テトラヒドロフラン、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキサイド等のアプロトニックな極性溶媒)を使用することが適当である。

【0029】
還元剤の使用量は、金属原料に含まれる鉄の物質量等を考慮して適宜決定され、例えば、還元すべき鉄イオン及びコバルトイオンの合計量の当量から200倍当量以下の範囲とすることができる。好ましくは鉄イオン及びコバルトイオンの合計量の当量から50倍当量以下の範囲とする

【0030】
還元剤の添加方法は、特に制限はされないが、例えば、粉末状又は顆粒状の還元剤を前記液体に添加することができる。あるいは、前記工程(1)で用いた溶媒に例えば、粉末状又は顆粒状の還元剤を溶解及び/又は分散し、溶解及び/又は分散液を前記液体に添加することもできる。使用する溶媒は、還元剤に対して不活性な物であることが、還元効率の観点から好ましい。

【0031】
上記還元剤で鉄イオン及びコバルトイオンを還元することで、前駆体粒子が調製される。上記還元剤での還元の温度は、還元により調製されるべき合金の結晶構造を考慮して決定され、例えば、0~200℃の範囲とすることが適当である。好ましくは25~160℃の範囲とすることがきる。

【0032】
工程(2)において、得られる前記鉄及びコバルトを含有する前駆体粒子は、鉄酸化物及びコバルト酸化物を含有する粒子であり、さらに鉄コバルト合金を含むこともある。鉄コバルト合金、鉄酸化物及びコバルト酸化物の割合は、還元剤による還元条件により変化するが、鉄コバルト合金、鉄酸化物及びコバルト酸化物の割合が、例えば、1:0.1~100:0.1~100の範囲であることができる。但し、この範囲に制限される意図ではない。

【0033】
前記鉄及びコバルトを含有する前駆体粒子におけるFe:Coモル比は、例えば、0.3:0.7~0.99:0.01の範囲であることができる。Fe:Coモル比は、好ましくは0.4:0.6~0.9:0.1の範囲、より好ましくは0.45:0.55~0.8:0.2の範囲、さらに好ましくは0.47:0.53~0.75:025の範囲である。前駆体粒子におけるFe:Coモル比は、最終的に得られる合金におけるFe:Coモル比に反映され、磁性特性に影響がある。但し、合金の磁性特性はFe:Coモル比のみに依存するものでなはく、結晶性や結晶子サイズ等にも依存する。前駆体粒子は、保護ポリマー及び溶媒等とともにそのまま工程(3)に用いることができ、あるいは前記溶液から、例えば、貧溶媒を用いることで沈殿させることができ、沈殿はそのまま工程(3)に用いることができ、あるいは適宜洗浄及び乾燥した後に、工程(3)に用いることができる。

【0034】
工程(3)
工程(3)は、前記前駆体粒子を水素含有雰囲気下で加熱して、前記前駆体粒子を還元し、かつ合金粒子の構造をbcc型にする工程である。

【0035】
上記工程(1)及び(2)により前駆体粒子を製造し、製造された前駆体粒子を水素含有雰囲気に暴露して、bcc型の結晶構造を有する鉄コバルト合金ナノ粒子を得る。

【0036】
上記方法により製造した前駆体粒子は、鉄酸化物及びコバルト酸化物を含有し、これら酸化物に加えて鉄コバルト合金を含有する場合もある。それに対して、水素含有雰囲気に暴露することで、鉄とコバルトの固溶し、かつ結晶性が向上して、bcc型の鉄コバルト合金粒子を得ることができる。本発明の方法は、鉄とコバルトとのがより均一に固溶し、かつ結晶性も向上したbcc型の鉄コバルト合金粒子が得られる点で優れた方法である。

【0037】
前記水素含有雰囲気への暴露処理は、上記工程(2)で得られた前駆体を所定の温度及び水素圧力に付して行うことができる。温度は、例えば、200℃~1000℃の範囲であり、水素圧力は0.01Pa~100MPaの範囲であることができる。水素雰囲気暴露処理の条件は、好ましくは350~950℃の範囲で、かつ水素圧0.1MPa~50MPaの範囲である。処理時間は、温度及び圧力に応じて適宜設定することができ、例えば、0.01~24時間の範囲とすることができる。但し、この範囲に限定される意図ではない。

【0038】
工程(3)は、得られるbcc型鉄コバルト合金粒子が、1~1,000nmの範囲の結晶子サイズを有する条件で実施されることが、磁性特性に優れた合金をえるという観点からは好ましい。bcc型鉄コバルト合金粒子の結晶子サイズは、好ましくは2~500nmの範囲、より好ましくは3~400nmの範囲、さらには好ましくは4~300nmの範囲、一層好ましくは5~200nmの範囲、より一層好ましくは10~100nmの範囲である。

【0039】
工程(3)で得られるbcc型鉄コバルト合金粒子は、炭素含有被覆層を有することができる。炭素含有被覆層は、炭素含有被覆層及びbcc型鉄コバルト合金粒子の総質量の0.1~99%の範囲であることができ、0.1~80%の範囲であることもできる。炭素含有被覆層は、工程(2)で調製した前駆体に含まれる保護ポリマー及び/又は溶媒に由来するもの考えられる。従って、炭素含有被覆層の量及び厚みは、工程(2)で調製した前駆体に含まれる保護ポリマー及び/又は溶媒の量、並びに水素含有雰囲気中での加熱処理条件に応じて適宜調整できる。

【0040】
本発明の製造方法で得られる鉄コバルト合金ナノ粒子は、磁性材料として様々な分野で応用が可能である。

【0041】
<bcc型鉄コバルト合金粒子>
本発明は、FexCo100-x(40≦x<100)で表され、結晶子サイズが1~1,000nmの範囲であるbcc型鉄コバルト合金粒子を包含する。本発明のbcc型鉄コバルト合金粒子は、上記本発明の製造方法によって製造することができる。本発明のbcc型鉄コバルト合金粒子は、40≦x<100であり、好ましくは40≦x≦90、より好ましくは45≦x≦80、さらに好ましくは47≦x≦75の範囲である。尚、本発明の合金の磁性特性はFe:Coモル比に依存するが、Fe:Coモル比にのみ依存するものでなはく、結晶性や結晶子サイズ等にも依存する。【0042】
本発明の鉄コバルト合金粒子は結晶子サイズが1~1,000nmの範囲である。磁性特性に優れた合金という観点からは、結晶子サイズが1~1,000nmの範囲とする。結晶子サイズは、好ましくは2~500nmの範囲、より好ましくは3~400nmの範囲、さらには好ましくは4~300nmの範囲、一層好ましくは5~200nmの範囲、より一層好ましくは10~100nmの範囲である。

【0043】
本発明の鉄コバルト合金粒子は、平均一次粒子径が、例えば、1~200,000nmの範囲であることが好ましく、微粒子という観点からは、望ましくは1~5,000nmであり、好ましくは1~1,000nmであり、より好ましくは1~200nmであり、さらに好ましくは1~100nmであり、さらに一層好ましくは1~50nmであり、より一層好ましくは1~20nmであり、さらにより一層好ましくは1~10nmであり、平均一次粒子径は1~4nmの範囲まで小さくすることが可能である。但し、磁性特性の観点からは、粒子径が、例えば、10nm~100nm、好ましくは10~50nmの範囲の粒子の含有量が多いことが望ましい。

【0044】
<磁性組成物>
本発明は、FexCo100-x(40≦x<100)で表され、結晶子サイズが1~1,000nmの範囲であるbcc型鉄コバルト合金粒子並びに保護ポリマー及び保護ポリマーに由来する変質物の少なくとも1種を含む磁性組成物を包含する。bcc型鉄コバルト合金粒子は、上記本発明のbcc型鉄コバルト合金粒子である。保護ポリマーに由来する変質物は、保護ポリマーが水素雰囲気暴露処理により変質して生成した物質である。保護ポリマーの種類及び水素雰囲気暴露処理の条件により、変質物の生成の有無及び程度は変化する。保護ポリマー及び保護ポリマーに由来する変質物の両方が含まれる場合、保護ポリマーのみが含まれる場合及び保護ポリマーに由来する変質物のみが含まれる場合のいずれも、本発明では包含する。【0045】
上記保護ポリマー及び保護ポリマーに由来する変質物の少なくとも1種は、前記bcc型鉄コバルト合金粒子の少なくとも一部の表面を被覆している。上記保護ポリマー及び保護ポリマーに由来する変質物の少なくとも1種は、好ましくは前記bcc型鉄コバルト合金粒子の表面の全部を被覆している。bcc型鉄コバルト合金粒子は、その表面を上記保護ポリマー及び保護ポリマーに由来する変質物の少なくとも1種で被覆されることで、外気との接触を回避でき、その結果、酸化を受けにくくなり、bcc型鉄コバルト合金の状態を維持しやすくなる。

【0046】
<磁石>
本発明は、上記本発明のbcc型鉄コバルト合金粒子または上記本発明の磁性組成物から製造された磁石を包含する。磁石の組成は、bcc型鉄コバルト合金のみからなっていてもよいが、bcc型鉄コバルト合金以外の磁性材料との混合物であってもよい。磁石の製造方法は公知の方法を採用できる。磁石を製造する際に加熱が必要な場合は、bcc型鉄コバルト合金が、bcc型を維持しやすいという観点から、水素含有雰囲気、好ましくは水素雰囲気で実施することが適当である。より具体的には、上記本発明のbcc型鉄コバルト合金粒子または磁性組成物を所定形状に成形し、次いで、加熱処理することで磁石を製造することができる。加熱処理は、上記のように水素含有雰囲気、好ましくは水素雰囲気で実施することが適当であり、さらに、磁場中で、一定方向に結晶を配向させながら加熱処理することが適当である。
【実施例】
【0047】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。
【実施例】
【0048】
実施例1
(1)前駆体の作製
200mLのトリエチレングリコールに、金属原料である酢酸鉄(II)と酢酸コバルト(II)とを合計10mmol(FexCo100-x、20≦x≦100)、および保護被覆剤であるポリエチレングリコール(PEG)1540を200 mmol溶解した。この溶液をメカニカルスターラーを用い、超音波槽中25℃で30分機械的に攪拌した。マイクロウェーブ装置を用いて140℃まで加熱し、100mmolのNaBH4水溶液(25M)を滴下した。更に、マイクロウェーブ装置により180℃にて5分ほど加熱を行った。全ての反応はAr雰囲気中で実施した。室温に冷却後、分散液を600mLのアセトン:Et2O(1:1)混合溶媒に加えて沈殿させ、沈殿物を遠心分離により回収した。沈殿物は(a)水:アセトン(1:3)(b)EtOH:Et2O(1:5)で2回洗浄し、水素還元用の試料とした。
【実施例】
【0049】
(2)水素含有雰囲気処理によるbcc型FeCoナノ合金の作製
試料を100℃で脱気した後、100kPaの水素ガス200mL/minを導入し、段階的に500℃まで昇温した。(加熱条件は図1を参照)。水素圧力下で加熱しながら測定したin situ XRDパターンを図2に示す。350℃まで加熱すると、酸化物由来のピークが減少し、最強線がやや高角度にシフトし、400℃以上では短時間(15分程度)のうちに完全に酸化物のピークが消失した。
【実施例】
【0050】
図3に水素圧力下で450℃に加熱し、室温に戻した各試料の回折パターンを示す。図3に示すように得られたXRDパターンは何れも単相のbcc型のFeCoのものと一致した。粉末X線回折はBruker, D8 Advabceを用いた。
【実施例】
【0051】
前駆体及び水素下で加熱した試料のTEM像を図4に示す。一部の粒子は凝集して大きな粒子となっているが、中には小さい粒子も残っていることがわかる。このTEM像よりbcc型FeCoナノ合金のサイズを見積もると、FexCo100-xのX=70のナノ合金は30±5nmであることがわかった(図4(b))FexCo100-xのX=50のナノ合金は25±5nmであることがわかった(図4(c))。TEM像はJeol, JEM-2100Fを用いて観察した。さらに、上記水素ガス中450℃で加熱処理して得た粒子は、表面に一層の厚みが2-3nm程度のアモルファスな構造を有する炭素含有被覆層が形成していることが分かる(図4(e))。
【実施例】
【0052】
ICP-AES(Shimadzu ICPE-900)により決定した組成は、全金属含有量が78~90%であった。エネルギー分散型X線(EDX)による分析でもほぼ同様の結果が得られた。
【実施例】
【0053】
(3)bcc型FeCoナノ合金の磁化率
図5にbcc型ナノ粒子の300Kにおける磁化率を示す。測定には、超伝導(SQUID)磁力計を用いた。bccナノ粒子をアルミフォイルで包み、ストローに設置して測定試料を作製した。bcc型FeCoの磁化率は前駆体に比べて非常に増大し、磁化曲線には明確なヒステリシスが観測された。この結果から、作製したbcc型FeCoナノ合金が室温で強磁性体であることが明らかとなった。
【実施例】
【0054】
実施例2
PEG1540に替えてPVPを使いた以外は実施例1の(1)と同様にして前駆体を調製した。得られた前駆体を実施例1の(2)と同様に水素含有雰囲気処理してbcc型Fe50Co50ナノ合金を作製した。但し、加熱温度は450℃から500℃に変更した。加熱時間は5分と30分の2条件で実施した。加熱時間5分で作製したナノ粒子のTEM像を図4(f)に示す。
加熱時間は5分のナノ合金は平均粒径が18nmであった。図示しないが、加熱時間が30分のナノ合金は平均粒径が70nmであった。実施例1のPEGを用いた場合よりも小粒径の粒子が出来ることが分かり、さらにナノ粒子の表面に多層の炭素被覆層が形成していることも分かる。さらに得られたナノ粒子のx線回折パターンを図6に示す。ナノ粒子はbcc型FeCo合金であることが分かる。
【実施例】
【0055】
得られたbcc型FeCoナノ合金の磁化率。
PVPを使って作製したFe50Co50ナノ合金の300Kにおける磁化曲線(VSM法により測定)を求めた(図7)PEGを使って作製したナノ合金と同様に、粒径が小さいと保磁力増大し、大きいと飽和磁化が増大するという傾向が観測された。尚、粒子径18nmのナノ合金は、加熱時間が5分であり、粒子径70nmのナノ合金は、加熱時間が30分である。
【実施例】
【0056】
実施例1及び2で作製した各FexCo(100-x)ナノ合金について、XRDパターンの解析により、格子定数を求め、格子定数とFe含有量の関係を●で図8に示す。
バルクのα鉄とFe50Co50の格子定数(2.867及び2.552Å)からVegard's lawより導き出されるFexCo(100-x)(20<x<100)合金の格子定数a(Å)はと表すことが出来る。式(1)より計算されるバルクFexCo(100-x)の格子定数を図8に点線で示す。実際のバルク合金の格子定数は、式(1)で計算された値よりも大きいことが知られている。作製したFexCo(100-x)ナノ合金の格子定数はx=50でa=2.8553~2.856Åと式(1)で求めた値よりも大きい。さらに50≦x<100で、式(1)から求めた格子定数よりも大きいことがわかった。【実施例】
【0057】
FexCo(100-x)ナノ合金の磁化率と組成の関係
図9に飽和磁化(Ms/emu・g-1)および保磁力(Hc/Oe)とFe含有量の関係を示す。図9より、作製したナノ合金はx=70付近でMsの最大値(Ms=257.6 emu・g-1を示した。一原子当たりの磁気モーメントに換算すると2.64BMとこの値はバルクのFe-Co合金の2.5BMよりも大きく、遷移金属二元合金の中では最大であることが明らかとなった。また、保磁力はx=50付近で最大となり、通常のFe-Coナノ合金の中でも比較的大きな値であった。図9には飽和磁化および保磁力の三次の多項式で最小自乗平均した近似曲線を直線で示した。作製したナノ合金の飽和磁化および保磁力は近似曲線から大きくずれる場合があることがわかる。
【実施例】
【0058】
そこで、x=50およびx=70の飽和磁化および保磁力と格子定数の関係を図10,11に示す。図10、11には飽和磁化および保磁力を最小自乗法により最適化した近似値(Fe50Co50では3次の多項式、Fe70Co30では1次式で最適化)もプロットした。図10、11から、どちらの組成においても格子定数が大きくなると飽和磁化が大きく、小さくなると保磁力が大きくなることがわかった。この結果から、図9でみられる近似線からのずれは、同一組成のFe-Coナノ粒子であっても、格子定数が異なれば異なる磁気的性質を示すことが示唆された。
【実施例】
【0059】
次に、x=50において、XRDパターンの解析から見積もった結晶子サイズと格子定数の関係を図12に示す。図12より、粒子径が大きくなると格子定数も大きくなることがわかる。このことより、前駆体におけるFeとCoの混合状態および焼成条件などにより、結晶性が異なるため、結晶性が良く粒子径(結晶子サイズ)が良いものは格子定数が大きくなる傾向があることがわかった。つまり、本技術で作製された粒子には格子定数と結晶性に関係があるといえる。本実施例で得られた粒子(50≦x<100)の格子定数は報告にあるFe-Coナノ粒子のものよりも格子定数が大きいことから結晶性が非常に良いことと考えられる。結晶性の向上により、大きな飽和磁化が実現されたと考えられる。【0060】
報告例(非特許文献1)では、Fe-Coナノ合金の結晶化には、H2が7vol%含まれるArあるいはN2混合気体共存下、500℃で焼成して結晶化する行程を経る。本技術ではH2を10vol%以上含む気体を共存させて200-1000℃の高温下で前駆体の処理を行っている。これらの比較により、水素が前駆体のFeおよびCoイオンを効率的に還元し、さらに、生成した合金中における原子拡散頻度を高め、FeとCoの再配列による固溶と結晶化を促進したためであると考えられる。また、混合酸化物前駆体中にFeイオンとCoイオンが良く混合して分散した状態で存在することも重要なポイントである。
【実施例】
【0061】
単磁区構造の構造体の保磁力は多磁区構造を持つものよりも大きいことが知られている。本研究では直径20nm前後の粒子において、大きな保磁力が観測されたのは、単磁区構造に近い構造が形成されたため、磁壁のピニングが起きるためである。また、H2を高濃度含む雰囲気で熱処理を行ったことで、結晶性の良い単磁区構造が実現されたと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は、磁性材料に関連する分野に有用である。
図面
【図1】
0
【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
4
【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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