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明細書 :手術支援装置および手術支援プログラム

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5807826号 (P5807826)
公開番号 特開2013-202312 (P2013-202312A)
登録日 平成27年9月18日(2015.9.18)
発行日 平成27年11月10日(2015.11.10)
公開日 平成25年10月7日(2013.10.7)
発明の名称または考案の名称 手術支援装置および手術支援プログラム
国際特許分類 A61B  19/00        (2006.01)
A61B   1/00        (2006.01)
FI A61B 19/00 502
A61B 1/00 320Z
請求項の数または発明の数 7
全頁数 17
出願番号 特願2012-077118 (P2012-077118)
出願日 平成24年3月29日(2012.3.29)
審査請求日 平成26年12月17日(2014.12.17)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】592031097
【氏名又は名称】パナソニックヘルスケア株式会社
【識別番号】308038613
【氏名又は名称】公立大学法人和歌山県立医科大学
【識別番号】513096761
【氏名又は名称】パナソニックメディカルソリューションズ株式会社
発明者または考案者 【氏名】竹村 知晃
【氏名】今中 良一
【氏名】今西 勁峰
【氏名】吉田 宗人
【氏名】木岡 雅彦
早期審査対象出願または早期審理対象出願 早期審査対象出願
個別代理人の代理人 【識別番号】110000202、【氏名又は名称】新樹グローバル・アイピー特許業務法人
審査官 【審査官】木村 立人
参考文献・文献 特開平11-161813(JP,A)
国際公開第2011/118208(WO,A1)
井上喜仁ほか7名,“内視鏡下脊椎後方手術計画支援のためのボリューム切削システムの開発”,電子情報通信学会技術研究報告,社団法人電子情報通信学会,2010年 1月21日,第109巻,第407号,p.31-35
調査した分野 A61B 1/00 — 1/32
A61B 19/00
CiNii
特許請求の範囲 【請求項1】
レトラクタの内部に内視鏡を挿入して行う手術中のシミュレーション画像を表示する手術支援装置であって、
手術の対象部位を含む範囲の断層画像情報を取得する断層画像情報取得部と、
前記断層画像情報取得部に接続されており、前記断層画像情報のボクセル情報を格納するメモリと、
前記メモリに接続されており、前記ボクセル情報に基づいて、視線に対して垂直の方向においてボクセル情報をサンプリングするボリュームレンダリング演算部と、
前記ボリュームレンダリング演算部によって生成された画像において、前記レトラクタの内壁によって表示が制限される表示制限エリアをマスキングし、または非表示とした、実際に内視鏡手術において表示される状態に近似した内視鏡画像を表示部に表示させる表示制御部と、
を備えている手術支援装置。
【請求項2】
前記内視鏡画像を表示する表示部を、さらに備えている、
請求項1に記載の手術支援装置。
【請求項3】
前記表示制御部は、シミュレーション画像上において、前記レトラクタが体内に挿入された状態において前記レトラクタと手術の対象部位の周辺の骨とが最初に接触する位置を挿入制限位置として検出して表示する、
請求項1または2に記載の手術支援装置。
【請求項4】
前記内視鏡は、斜視内視鏡である、
請求項1から3のいずれか1項に記載の手術支援装置。
【請求項5】
前記表示部に表示される画像の向きは、マウスの2次元入力によって調整可能である、
請求項1から4のいずれかに記載の手術支援装置。
【請求項6】
レトラクタの内部に内視鏡を挿入して行う手術中のシミュレーション画像を表示する手術支援プログラムであって、
手術の対象部位を含む範囲の断層画像情報を取得する取得ステップと、
前記断層画像情報のボクセル情報に基づいて視線に対して垂直の方向においてボクセル情報をサンプリングするボリュームレンダリングステップと、
前記ボリュームレンダリングステップにおいて生成された画像において、前記レトラクタの内壁によって表示が制限される表示制限エリアをマスキングし、または非表示とした、実際に内視鏡手術において表示される状態に近似した内視鏡画像を表示部に表示させる表示ステップと、
を備えた手術支援方法をコンピュータに実行させる手術支援プログラム。
【請求項7】
前記レトラクタが体内に挿入された状態において前記レトラクタと手術の対象部位の周辺の骨とが最初に接触する位置を挿入制限位置として検出して表示する検出ステップをさらに備えた手術支援方法をコンピュータに実行させる、
請求項6に記載の手術支援プログラム。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、医療従事者が手術のシミュレーションを行う際に活用する手術支援装置および手術支援プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
医療現場において、より適切な手術を行うために、手術のシミュレーションを行うことが可能な手術支援装置が活用されている。
従来の手術支援装置は、例えば、X線CT画像や核磁気共鳴画像(MRI画像)、PET(陽電子放射断層法)によって取得された画像等の断層画像情報を取得する断層画像情報取得部と、断層画像情報取得部に接続されたメモリと、メモリに接続されたボリュームレンダリング演算部と、ボリュームレンダリング演算部の演算結果を表示するディスプレイと、ディスプレイに表示された表示対象物に対して切削指示を行う入力部と、を備えていた。
【0003】
例えば、特許文献1には、MRI装置やCT装置等の撮像装置によって取得された断層画像を用いて内視鏡を用いた手術を表示画像によって支援する内視鏡手術支援装置について開示されている。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特許第4152402号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の手術支援装置では、以下に示すような問題点を有している。
すなわち、上記公報に開示された手術支援装置では、表示画面において手術対象部位の位置を術者に提供することで手術対象部位と内視鏡との位置関係を認識して手術を行うことは可能である。
しかしながら、これらの表示画面は手術計画と連携したものではないため、手術前のシミュレーションにおいて手術対象部位を正確に把握することは困難であった。
【0006】
ここで、上記内視鏡を用いた手術方法は、一般的に、開腹手術等と比較して傷口が小さく、患者への負担を大幅に軽減することができる。このため、近年、例えば、腰部脊椎管狭窄症に対する手術等、様々な手術において内視鏡を活用した手術が行われるようになっている。
このような内視鏡を用いた手術の場合には、筒状の開創器(以下、レトラクタと記す。)と呼ばれる筒状の部材を患者の体内へ装填し、その筒状部材に沿って内視鏡を挿入していくことで、手術の対象部位の周辺をモニタ画面で確認しながら手術を実施するものである。よって、一般的な開放手術と比較して、実際の手術において医師等が確認できるのは狭い範囲に限られていることから、手術前に実施される切削シミュレーションにおいても、実際に手術中のモニタ画面に表示される表示形態にできるだけ近似した表示がなされることが好ましい。
【0007】
本発明の課題は、内視鏡を用いた手術を行う場合でも、実際に表示画面に表示される表示態様に近似した表示を行いながら切削シミュレーションを実施することが可能な手術支援装置および手術支援プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明に係る手術支援装置は、レトラクタの内部に内視鏡を挿入して行う手術中のシミュレーション画像を表示する手術支援装置であって、断層画像情報取得部と、メモリと、ボリュームレンダリング演算部と、表示制御部と、を備えている。断層画像情報取得部は、手術の対象部位を含む範囲の断層画像情報を取得する。メモリは、断層画像情報取得部に接続されており、断層画像情報のボクセル情報を格納する。ボリュームレンダリング演算部は、メモリに接続されており、ボクセル情報に基づいて、視線に対して垂直の方向においてボクセル情報をサンプリングする。表示制御部は、ボリュームレンダリング演算部によって生成された画像において、レトラクタの内壁によって表示が制限される表示制限エリアをマスキングし、または非表示とした、実際に内視鏡手術において表示される状態に近似した内視鏡画像を表示部に表示させる。
【0009】
ここでは、例えば、複数のX線CT画像を用いて作成される3次元画像を用いて特定の骨や血管、臓器等の周辺を表示した状態で内視鏡を用いた手術のシミュレーションを実施する際に、内視鏡が挿入される術具によって制限される視野の部分まで反映させた表示を行う。
ここで、上記断層画像には、例えば、X線CTやMRI、PET等の医用機器を用いて取得された2次元画像が含まれる。また、上記術具には、内視鏡が挿入される筒状のレトラクタ等が含まれる。
【0010】
これにより、例えば、腰部脊椎管狭窄症に対する内視鏡手術のシミュレーションを実施する場合には、レトラクタ等の筒状の術具によって制限される部分については見えないように、例えば、マスキングした状態で表示させることで、実際の内視鏡画像と近似した状態でのシミュレーションを実施することができる。
この結果、内視鏡を用いた実際の手術中に表示される内視鏡画像に近似した表示を行うことができるため、効果的な手術シミュレーションを実施することができる。
【0011】
第2の発明に係る手術支援装置は、第1の発明に係る手術支援装置であって、内視鏡画像を表示する表示部を、さらに備えている。
ここでは、手術支援装置として、モニタ等の表示部を備えている。
これにより、上述した内視鏡手術のシミュレーション画像を表示部に表示させながら、手術支援を行うことができる。
【0012】
第3の発明に係る手術支援装置は、第2の発明に係る手術支援装置であって、表示制御部は、シミュレーション画像上において、レトラクタが体内に挿入された状態においてレトラクタと手術の対象部位の周辺とが接触する位置を挿入制限位置として検出して表示する。
ここでは、内視鏡が挿入されるレトラクタの手術対象部位に対する深さ位置を検出し、手術対象部位周辺の骨等とレトラクタとが接触する位置を挿入制限位置として検出して表示する。
【0013】
ここで、実際の内視鏡手術においては、レトラクタが骨等に接触する位置まで挿入された状態で内視鏡手術を行う。このようなレトラクタの深さ方向における位置を考慮しなければ、実際にはレトラクタが入り込めない位置まで表示可能となってしまうため、正確な手術シミュレーションを実施する上で好ましくない。
これにより、レトラクタと手術対象部位との位置関係を検出してレトラクタの深さ方向における位置を制限するために挿入限界位置を検出して表示することで、実際の内視鏡手術では見られない内視鏡画像が表示されてしまうことを防止して、より実際の内視鏡手術に近似した手術シミュレーションを実施することができる。
【0014】
第4の発明に係る手術支援装置は、第1から第3の発明のいずれか1つに係る手術支援装置であって、内視鏡は、斜視内視鏡である。
ここでは、手術シミュレーションを行う内視鏡手術に用いられる内視鏡として、斜視内視鏡を用いている。
これにより、直視内視鏡と比較してより視野の広い内視鏡を用いた内視鏡手術のシミュレーションを、実際の手術中の表示画像に近似した内視鏡画像を見ながら行うことができる。
【0015】
第6の発明に係る手術支援プログラムは、レトラクタの内部に内視鏡を挿入して行う手術中のシミュレーション画像を表示する手術支援プログラムであって、手術の対象部位を含む範囲の断層画像情報を取得する取得ステップと、断層画像情報のボクセル情報に基づいて視線に対して垂直の方向においてボクセル情報をサンプリングするボリュームレンダリングステップと、ボリュームレンダリングステップにおいて生成された画像において、レトラクタの内壁によって表示が制限される表示制限エリアをマスキングし、または非表示とした、実際に内視鏡手術において表示される状態に近似した内視鏡画像を表示部に表示させる表示ステップと、を備えている。
【0016】
ここでは、例えば、複数のX線CT画像を用いて特定の骨や血管、臓器等の周辺を表示した状態で内視鏡を用いた手術のシミュレーションを実施する際に、内視鏡が挿入される術具によって制限される視野の部分まで反映させた表示を行う。
ここで、上記断層画像には、例えば、X線CTやMRI、PET等の医用機器を用いて取得された2次元画像が含まれる。また、上記術具には、内視鏡が挿入される筒状のレトラクタ等が含まれる。
【0017】
これにより、例えば、腰部脊椎管狭窄症に対する内視鏡手術のシミュレーションを実施する場合には、レトラクタ等の筒状の術具によって制限される部分については見えないように、例えば、マスキングした状態で表示させることで、実際の内視鏡画像と近似した状態でのシミュレーションを実施することができる。
この結果、内視鏡を用いた実際の手術中に表示される内視鏡画像に近似した表示を行うことができるため、効果的な手術シミュレーションをコンピュータに実行させることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る手術支援装置によれば、内視鏡を用いた実際の手術中に表示される内視鏡画像に近似した表示を行うことができるため、効果的な手術支援を実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態に係るパーソナルコンピュータ(手術支援装置)を示す斜視図。
【図2】図1のパーソナルコンピュータの制御ブロック図。
【図3】図2の制御ブロックに含まれるメモリ内の内視鏡パラメータ格納部の構成を示すブロック図。
【図4】図2の制御ブロックに含まれるメモリ内の術具パラメータ格納部の構成を示すブロック図。
【図5】(a)は、図1のパーソナルコンピュータの動作フローチャート。(b)は、(a)のS6内のフローを示す動作フローチャート。
【図6】筒状の術具(レトラクタ)を用いた場合の術具の挿入位置を自動的に検出する方法について説明する図。
【図7】(a),(b)は、筒状の術具(レトラクタ)を用いた場合のマウス操作による2次元入力から内視鏡3次元操作へのマッピングについて説明する図。
【図8】マウス操作による2次元入力から内視鏡による3次元操作へのマッピングについて説明する図。
【図9】斜視内視鏡による任意の斜視角を反映させたボリュームレンダリング像の表示について説明する図。
【図10】(a)~(c)は、斜視内視鏡の先端位置および視線ベクトルを3面図上へ反映させた場合の表示を示す図。
【図11】図1のパーソナルコンピュータによって表示される斜視内視鏡画像を示す図。
【図12】(a)は、本実施形態に係る斜視内視鏡画像を示す図。(b)は、斜視内視鏡の代わりに直視内視鏡を用いた場合の内視鏡画像を示す図。
【図13】内視鏡画像の表示制限エリアを反映させたモニタ画面を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の一実施形態に係るパーソナルコンピュータ(手術支援装置)について、図1~図13を用いて説明すれば以下の通りである。
なお、本実施形態では、斜視内視鏡を用いて腰部脊椎管狭窄症に対する手術のシミュレーションを実施する場合について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
本実施形態に係るパーソナルコンピュータ1は、図1に示すように、ディスプレイ(表示部)2と、各種入力部(キーボード3、マウス4、およびタブレット5(図2参照))と、を備えている。

【0021】
ディスプレイ2は、X線CT画像等の複数の断層画像から形成される臓器(図1の例では、内視鏡画像を表示)等の3次元画像を表示するとともに、切削シミュレーションの結果を表示する。
また、パーソナルコンピュータ1は、図2に示すように、内部に、断層画像情報取得部6等の制御ブロックを形成する。

【0022】
断層画像情報取得部6には、ボクセル情報抽出部7を介して、断層画像情報部8が接続されている。つまり、断層画像情報部8では、CTあるいはMRI、PET等の断層画像を撮影する機器から断層画像情報が供給され、この断層画像情報がボクセル情報抽出部7によってボクセル情報として抽出される。
メモリ9は、パーソナルコンピュータ1内に設けられており、ボクセル情報格納部10、ボクセルラベル格納部11、および色情報格納部12、内視鏡パラメータ格納部22、術具パラメータ格納部24を有している。また、メモリ9には、ボリュームレンダリング演算部13が接続されている。

【0023】
ボクセル情報格納部10は、ボクセル情報抽出部7から断層画像情報取得部6を介して受信したボクセル情報を格納している。
ボクセルラベル格納部11は、第1ボクセルラベル格納部、第2ボクセルラベル格納部、第3ボクセルラベル格納部を有している。これらの第1~第3ボクセルラベル格納部は、後述する予め設定されたCT値の範囲、つまり表示対象となる臓器にそれぞれ対応して設けられている。例えば、第1ボクセルラベル格納部は、肝臓を表示するCT値の範囲に対応しており、第2ボクセルラベル格納部は、血管を表示するCT値の範囲に対応しており、第3ボクセルラベル格納部は、骨を表示するCT値の範囲に対応している。

【0024】
色情報格納部12は、内部に複数の格納部を有している。各格納部は、予め設定されたCT値の範囲、つまり表示対象となる骨、血管、神経、臓器等にそれぞれ対応して設けられている。例えば、肝臓を表示するCT値の範囲に対応する格納部、血管を表示するCT値の範囲に対応する格納部、骨を表示するCT値の範囲に対応する格納部等が挙げられる。このとき、各格納部には、表示対象となる骨、血管、神経、臓器ごとにそれぞれ異なる色情報が設定されている。例えば、骨に対応するCT値の範囲には白色の色情報、血管に対応するCT値の範囲には赤色の色情報がそれぞれ格納されている。

【0025】
なお、表示対象となる骨や血管、神経、臓器ごとに設定されるCT値とは、人体におけるX線吸収の程度を数値化したものであり、水を0とする相対値(単位:HU)として表される。例えば、骨が表示されるCT値の範囲は500~1000HU、血液が表示されるCT値の範囲は30~50HU、肝臓が表示されるCT値の範囲は60~70HU、腎臓が表示されるCT値の範囲は30~40HUである。

【0026】
内視鏡パラメータ格納部22は、図3に示すように、第1内視鏡パラメータ格納部22a、第2内視鏡パラメータ格納部22b、第3内視鏡パラメータ格納部22cを有している。第1~第3内視鏡パラメータ格納部22a~22cには、例えば、内視鏡の斜視角、視野角、位置、姿勢等の情報がそれぞれ格納されている。また、内視鏡パラメータ格納部22は、図2に示すように、内視鏡パラメータ設定部23と接続されている。

【0027】
内視鏡パラメータ設定部23は、キーボード3やマウス4を介して入力される内視鏡パラメータの設定を行い、内視鏡パラメータ格納部22へ送る。
術具パラメータ格納部24は、図4に示すように、第1術具パラメータ格納部24a、第2術具パラメータ格納部24b、第3術具パラメータ格納部24cを有している。第1~第3術具パラメータ格納部24a~24cには、例えば、術具を筒状のレトラクラ31(図6参照)とすると、筒状のレトラクタの筒形、筒長さ、位置、姿勢等の情報がそれぞれ格納されている。また、術具パラメータ格納部24は、図2に示すように、術具パラメータ設定部25と接続されている。

【0028】
術具パラメータ設定部25は、キーボード3やマウス4を介して入力されるレトラクタ等の術具パラメータの設定を行い、術具パラメータ格納部24へ送る。
術具挿入深度演算部26は、メモリ9内の術具パラメータ格納部24と接続されており、レトラクタ等の術具の挿入深度(手術部位における深さ位置)を演算する。
ボリュームレンダリング演算部13は、ボクセル情報格納部10に格納されているボクセル情報と、ボクセルラベル格納部11に格納されているボクセルラベルと、色情報格納部12に格納されている色情報と、に基づいて、視線に対して垂直で、かつZ方向の間隔が一定の複数枚のスライス情報を取得する。そして、ボリュームレンダリング演算部13は、その演算結果を3次元画像としてディスプレイ2に表示させる。

【0029】
また、ボリュームレンダリング演算部13は、内視鏡パラメータ格納部22に格納されている内視鏡情報と、術具パラメータ格納部24に格納されている術具情報と、に基づいて、内視鏡によって得られる画像情報に対してレトラクタ等の術具によって視野が制限される画像情報を反映させたマスキング状態で、ディスプレイ2に内視鏡画像を表示させる。具体的には、ボリュームレンダリング演算部13は、内視鏡パラメータ格納部22に格納された内視鏡に関する情報(斜視角、視野角、位置等)と、術具パラメータ格納部24に格納された術具に関する情報(径、長さ等)とに基づいて、内視鏡によって取得される内視鏡画像表示エリア(第1表示エリア)A1(図11参照)と表示制限エリア(第2表示エリア)A2(図11参照)とを設定する。

【0030】
ここで、内視鏡画像表示エリアA1とは、実際の内視鏡手術中においてディスプレイ2のモニタ画面上に表示される表示エリアである。表示制限エリアA2とは、筒状のレトラクタ等の術具の内壁部分等によって内視鏡によって取得される表示が制限される表示エリアであって、内視鏡手術シミュレーション上ではマスキングされて表示される領域を意味している(図11参照)。

【0031】
さらに、ボリュームレンダリング演算部13には、バス16を介して深さ検出部15が接続されている。
深さ検出部15は、レイキャスティング走査距離を測定するとともに、深さ制御部17とボクセルラベル設定部18とが接続されている。
ボクセルラベル設定部18は、ボクセルラベル格納部11と被切削ボクセルラベル算出表示部19とが接続されている。

【0032】
バス16には、上述したボリュームレンダリング演算部13および深さ検出部15に加えて、メモリ9内の色情報格納部12等、ウィンドウ座標取得部20が接続されており、キーボード3、マウス4、タブレット5等から入力された内容に基づいて、ディスプレイ2に3次元画像等を表示する。
ウィンドウ座標取得部20には、深さ検出部15と色情報設定部21とが接続されている。

【0033】
色情報設定部21は、メモリ9内の色情報格納部12に接続されている。
図5(a)および図5(b)は、本実施形態のパーソナルコンピュータ(手術支援装置)1における動作説明を行うための制御フローを示している。
本実施形態のパーソナルコンピュータ1では、図5(a)に示すように、まずS1において、上述したように、断層画像情報部8からの断層画像情報が入力され、これがボクセル情報抽出部7に供給される。

【0034】
次に、S2において、ボクセル情報抽出部7において、断層画像情報からボクセル情報が抽出される。抽出されたボクセル情報は、断層画像情報取得部6を介して、メモリ9のボクセル情報格納部10に格納される。ボクセル情報格納部10に格納されるボクセル情報は、例えば、I(x,y,z,α)で構成される点の情報である。このとき、Iは当該点の輝度情報であり、x,y,zは座標点を示し、αは透明度情報である。

【0035】
次に、S3において、ボリュームレンダリング演算部13が、ボクセル情報格納部10に格納されているボクセル情報に基づいて、視線に対して垂直で、かつ間隔が一定の複数のスライス情報を算出し、スライス情報群を取得する。そして、スライス情報群は、ボリュームレンダリング演算部13内に少なくとも一時的に格納される。
なお、上述した視線に対して垂直なスライス情報とは、視線に対して直交する面を意味している。例えば、ディスプレイ2を鉛直方向に沿って立てた状態で、これと顔の面とを平行にした状態で見た場合に、スライス情報が視線に対して垂直な面となる。

【0036】
このようにして得られた複数のスライス情報は、上述したように、I(x,y,z,α)で構成される点の情報を保有している。よって、スライス情報は、例えば、ボクセルラベル14がZ方向に複数枚配置されている。なお、ボクセルラベル14の集合体は、ボクセルラベル格納部11に収納されている。
次に、S4において、ディスプレイ2には、レンダリング像が表示される。このとき、ディスプレイ2では、マウス4等を用いてCT値の範囲が指定されることで、切削対象物となる骨や血管等が選択されて表示される。

【0037】
次に、S5において、ユーザから内視鏡の挿入方向・位置の指示が入力される。
次に、S6において、ユーザから内視鏡表示をするように指示を受け付けたか否かを判定する。ここで、内視鏡表示の指示を受け付けた場合には、S7へ進む。一方、内視鏡表示の指示を受け付けていない場合には、S3へ戻る。
次に、S7において、キーボード3やマウス4を用いて入力された情報に基づいて、術具の挿入深度を決定する。

【0038】
より詳細には、図5(b)に示すように、S71において、術具挿入深度演算部26が、術具パラメータ格納部24から術具形状に関する情報を取得する。
次に、S72において、術具挿入深度演算部26が、ボリュームレンダリング演算部13において生成された3次元画像に対する術具の挿入位置に関する情報(例えば、レトラクタの内径、レトラクタ内における内視鏡の中心からの距離等)を取得する。

【0039】
次に、S73において、術具挿入深度演算部26が、S72において取得された情報に基づいて、レトラクタ等の術具を挿入して行った際の3次元画像に含まれる骨等の部位へ衝突する深さ位置(術具挿入深度)、すなわち挿入限界位置を検出する。
これにより、レトラクタ等の術具が実際の内視鏡手術において挿入される限界位置を正確に把握して、術具が現実の挿入限界位置より深い位置に挿入された状態で手術シミュレーションが実施されてしまうことを回避することができる。
次に、S8において、ボリュームレンダリング演算部13は、術具パラメータ格納部24から筒状のレトラクタ等の術具に関する必要なパラメータを取得する。

【0040】
次に、S9において、ボリュームレンダリング演算部13は、内視鏡パラメータ格納部22から内視鏡に関する必要なパラメータを取得して、S3へ移行する。
ここで、S3では、S8およびS9において取得された術具パラメータおよび内視鏡パラメータに基づいて、ボリュームレンダリング演算部13が、ボリュームレンダリング演算部13において生成された3次元画像のうち、内視鏡によって取得される内視鏡画像表示エリアA1(図11参照)と表示制限エリアA2(図11参照)とを設定し、ディスプレイ2の表示画面に表示させる。

【0041】
すなわち、本実施形態のパーソナルコンピュータ1では、単に、ボリュームレンダリング演算部13において生成された3次元画像を表示するのではなく、内視鏡手術において実際に内視鏡によって取得可能な範囲の画像だけを表示し、レトラクタ31等の術具によって表示が制限される表示制限エリアA2を非表示とする(図11参照)。
これにより、内視鏡手術のシミュレーションを実施する際に、実際の内視鏡手術によって表示される状態に近似した表示態様でシミュレーションを行うことができる。この結果、より効果的な手術支援を実施することができる。

【0042】
ここで、図5(b)を用いて説明したレトラクタ31の挿入深度を決定する方法について、図6を用いて、レトラクタ挿入位置自動検出機能について説明する。
ここでは、レトラクタの径、長さ、移動方向(挿入方向)等のパラメータに基づいて、衝突が予想される部位と術具の外側に複数点のサンプリング点を配置するモデリングを行う。より詳細には、ボリュームレンダリング演算部13において生成された3次元画像に対して、レトラクタ31の先端に設定された全てのポイントについて移動方向における3次元画像中に含まれる骨等への接触点検出を行う。そして、3次元画像中に含まれる骨等に対して、レトラクタ31の先端が最初に接触を検出したポイントをレトラクタ31の挿入限界位置として設定する。

【0043】
次に、図7を用いて、マウス4の操作による2次元入力から内視鏡3次元操作へのマッピングについて説明する。
通常、レトラクタ31内に挿入された斜視内視鏡32(図7(a)等参照)は、レトラクタ31と一体化された図示しないアタッチメントに固定されることで、レトラクタ31内における周方向における移動が制限されている。

【0044】
ここで、図7(a)に示すように、斜視内視鏡32をアタッチメントごと回転させたと仮定して、図7(b)に示すように、レトラクタ31の長さdr、レトラクタ31内における斜視内視鏡32の挿入深度deとすると、レトラクタ31の中心から斜視内視鏡32の中心までの距離Roの奥行き方向の軸Rzに対して、角度Θ回転した場合の回転行列RΘを算出する。

【0045】
次に、ベクトルRoEo’=RΘ×RoEoであるから、内視鏡先端位置は、内視鏡の挿入深度deを用いて、内視鏡先端位置Ec=Eo’+Rz*deの式によって算出することができる。
これにより、2次元のマウス操作によって、3次元の内視鏡先端位置を算出することができる。

【0046】
なお、斜視内視鏡32の挿入深度deは、マウス(例えば、マウスホイール)操作によって変更することができる。
次に、図8を用いて、マウス4の操作による2次元入力から内視鏡3次元操作へのマッピングに関連する他の例について説明する。
通常、内視鏡には、図示しないCCDカメラを格納したカメラヘッド部が後端部側に接続されている。ここでは、このカメラヘッド部を回転させた際の表示の回転について説明する。

【0047】
すなわち、実際の内視鏡手術において、ディスプレイ2の表示画面上に表示された画像が縦向きに表示されてしまった場合には、実際の患者の向きとディスプレイ2の表示の向きとを一致させるために、カメラヘッド部を回転させることで視野を変えずに画像のみ回転させる。
マウス4を用いた2次元入力によってこれを実現するために、図8に示すように、まず、ディスプレイ高とマウスドラッグ距離からΘ=360*Hd/Hを算出する。

【0048】
次に、ディスプレイ2の画面中心座標の奥行き方向の軸Ryに対し、角度Θ回転した場合の回転行列R2Θを算出する。
そして、視野の上方ベクトルUに対し、U'=R2Θ*Uを新たな上方ベクトルとすることで、ディスプレイ2に表示される画像を、視野を変えることなく、例えば、90度回転させることができる。

【0049】
これにより、マウス4を用いた2次元入力によって、容易にディスプレイ2に表示された画像を実際の内視鏡手術におけるモニタ画面と同じ向き(角度)に調整することができる。
次に、斜視内視鏡32の任意の斜視角を反映させたボリュームレンダリング像を生成するための方法について、図9を用いて説明する。

【0050】
すなわち、本実施形態では、斜視内視鏡32ごとに設定される斜視角に応じて、視野ベクトルに回転行列を適用する。
具体的には、まず、レトラクタ31の軸方向に対応する鏡軸ベクトルVsと斜視内視鏡32の斜視方向に対応する垂直ベクトルVuの外積Vcを算出する。
次に、Vc周りをΘ回転する回転行列Rsを算出する。

【0051】
そして、斜視角を反映した視野ベクトルVeは、Ve=Rs*Vs として求めることができる。
これにより、斜視内視鏡32ごとに斜視角度が異なる場合でも、内視鏡パラメータ格納部22に格納された情報等に基づいて視野ベクトルVeを算出することで、手術に使用される斜視内視鏡32ごとの視野範囲を設定することができる。

【0052】
なお、鏡軸ベクトルVsと視野ベクトルVeとを用いて、斜視内視鏡32の先端位置および視線ベクトルを3面図上への反映させた状態を、図10(a)~図10(c)に示している。
これにより、図10(a)~図10(c)に示すように、斜視内視鏡32を用いた腰部脊椎管狭窄症に対する手術のシミュレーションにおいて、正面図(患者側面から見た図)、平面図(患者背中から見た図)、側面図(患者の背骨方向から見た図)を用いて、斜視内視鏡32の挿入方向を容易に把握することができる。

【0053】
本実施形態のパーソナルコンピュータ1では、以上のような構成により、レトラクタ31の形状、斜視内視鏡32の斜視角や視野角等に基づいて、内視鏡手術シミュレーションを行う際に、図11に示すように、レトラクタ31によって遮られる表示制限エリアA2を反映させた内視鏡画像(内視鏡表示エリアA1)を表示させる。
これにより、実際の内視鏡手術においてレトラクタ31の内壁によって見えなくなる表示制限エリアA2を反映させた表示態様とすることで、実際の内視鏡手術において表示画面に表示される画像に近似した表示を行うことができる。よって、より効果的な手術支援を実施することができる。

【0054】
また、本実施形態では、レトラクタ31を挿入した状態において、骨等と接触してレトラクタ31が挿入限界位置に達していることをユーザに認識させるために、レトラクタ31と骨との接触部分を、例えば、赤色で表示する。
これにより、ユーザは、これ以上、深い位置までレトラクタ31が移動できないことを認識することができる。また、さらに深い位置を切削する必要がある場合は、骨とレトラクタが接触している箇所を切削する必要があることが分かる。よって、実際には表示され得ない深度における内視鏡画像がシミュレーション上で表示されてしまうことを回避して、実際の内視鏡手術において表示可能な画像のみをシミュレーション画像として表示することができる。

【0055】
なお、例えば、斜視内視鏡32の斜視角25度の場合には、図12(a)に示すように、レトラクタ31による表示制限エリアA2を反映させることで、手術対象部位は内視鏡表示エリアA1内に表示される。
さらに、本実施形態のパーソナルコンピュータ1のディスプレイ2に実際に表示される画面として、図13に示すように、例えば、切削対象部位Cの表示等と組み合わせて、表示制限エリアA2を反映させつつ、内視鏡表示エリアA1内に切削対象部位Cを表示することもできる。

【0056】
[他の実施形態]
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
(A)
上記実施形態では、手術支援装置として本発明を実現した例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、図5(a)および図5(b)に示す制御方法をコンピュータに実行させる手術支援プログラムとして、本発明を実現してもよい。

【0057】
(B)
上記実施形態では、斜視内視鏡を用いた内視鏡手術に本発明を適用した例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、図12(b)に示すように、斜視内視鏡の代わりに、直視内視鏡を用いた内視鏡手術のシミュレーションにも適用可能である。
なお、図12(b)では、図12(a)の斜視内視鏡と同一視点からの直視内視鏡による内視鏡表示エリアA1、表示制限エリアA2を示している。

【0058】
(C)
上記実施形態では、手術支援装置として、実際の手術中に表示される内視鏡画像に近い画像を表示させる例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、切削シミュレーション装置と組み合わせて、内視鏡画像を見ながら切削シミュレーションを実施してもよい。
これにより、より詳細に手術中の状態を再現して、効果的な手術支援を行うことができる。

【0059】
(D)
上記実施形態では、本発明に係る内視鏡を用いた手術シミュレーションの一例として、腰部脊椎管狭窄症に対する手術を例として挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、内視鏡を用いた他の手術に対して、本発明を適用してもよい。

【0060】
(E)
上記実施形態では、斜視内視鏡を用いた腰部脊椎管狭窄症に対する手術を例として挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、直視鏡を用いた手術に対しても、本発明の適用は可能である。

【0061】
(F)
上記実施形態では、3次元画像を形成するための断層画像情報として、X線CT画像を用いた例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、放射線を使用しない核磁気共鳴画像(MRI)によって取得された断層画像情報等を用いて3次元画像を形成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明の手術支援装置は、内視鏡を用いた実際の手術中に表示される内視鏡画像に近似した表示を行うことができるため、効果的な手術支援を実施することができるという効果を奏することから、内視鏡を用いた各種手術に対して広く適用可能である。
【符号の説明】
【0063】
1 パーソナルコンピュータ(手術支援装置)
2 ディスプレイ(表示部)
3 キーボード(入力部)
4 マウス(入力部)
5 タブレット(入力部)
6 断層画像情報取得部
7 ボクセル情報抽出部
8 断層画像情報部
9 メモリ
10 ボクセル情報格納部
11 ボクセルラベル格納部
12 色情報格納部
13 ボリュームレンダリング演算部(表示制御部)
14 ボクセルラベル
15 深さ検出部
16 バス
17 深さ制御部
18 ボクセルラベル設定部
19 被切削ボクセルラベル算出表示部
20 ウィンドウ座標取得部
21 色情報設定部
22 内視鏡パラメータ格納部
22a 第1内視鏡パラメータ格納部
22b 第2内視鏡パラメータ格納部
22c 第3内視鏡パラメータ格納部
23 内視鏡パラメータ設定部
24 術具パラメータ格納部
24a 第1術具パラメータ格納部
24b 第2術具パラメータ格納部
24c 第3術具パラメータ格納部
25 術具パラメータ設定部
26 術具挿入深度演算部
31 レトラクタ(術具)
31a 衝突部位
32 斜視内視鏡(内視鏡)
A1 内視鏡画像表示エリア(第1表示エリア)
A2 表示制限エリア(第2表示エリア)
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
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【図10】
9
【図11】
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【図12】
11
【図13】
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